説明

トンネル水噴霧散水設備

【課題】この発明は、本格散水よりも小流量の予告散水をすることで、安全かつ短時間のうちに水噴霧散水設備を作動させることができるトンネル内水噴霧散水設備を得ることを目的とする。
【解決手段】トンネル内火災位置に対応する水噴霧散水区画内に、本格散水実施以前に、本格散水よりも小流量で車両の運転者に該本格散水の開始を警告する予告散水をする小流量散水手段を備え、予告散水は、その散水域内で時間に対して周期的な散水である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、トンネル内の火災に対して消火液を噴霧あるいは散水して消火する水噴霧散水設備に関し、特に本格散水実施以前に予告散水をするトンネル水噴霧散水設備に関するものである。
【背景技術】
【0002】
水噴霧散水設備の設置されているトンネルでは、トンネル内で火災が発生した場合、当該設備を起動して火災の消火や抑制をする。しかし、当該設備を予告なしに起動し放水すると、その放水により当該区画の視界が確保できなくなるため、トンネル内の通行車両が事故(単独または追突事故)を起こしたり、避難者が迅速に避難できなくなる等の恐れがある。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
このため、従来の水噴霧散水設備においては、当該設備を作動する場合は、トンネル内通行車両の停止や避難者の避難完了等を確認する必要があった。
【0004】
この発明は、上述のような課題を解決するためになされたもので、本格散水よりも小流量の予告散水をすることで、安全かつ短時間のうちに水噴霧散水設備を作動させることができるトンネル内水噴霧散水設備を得ることを目的とする。また、予告散水をトンネル入口に適用することで、通行車両のトンネル内への進入を停止させることが可能となるトンネル内水噴霧散水設備を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
この発明に係るトンネル内水噴霧散水設備は、トンネル内火災位置に対応する水噴霧散水区画内に、本格散水実施以前に、該本格散水よりも小流量の予告散水をする小流量散水手段を備え、前記予告散水は、その散水域内で時間に対して周期的な散水である。
【発明の効果】
【0006】
この発明に係るトンネル内水噴霧散水設備は、トンネル内火災位置に対応する水噴霧散水区画内に、本格散水実施以前に、本格散水よりも小流量の予告散水をする小流量散水手段を備えている。そのため、運転者や避難者に対して後に本格散水が行われることを警告することができ、予告散水においては、視界が確保できる為、車両や避難者は迅速に避難することが可能となり、所定の時間の後、本格散水が行われるようにすれば、短時間のうちに水噴霧散水設備を起動させることができると共に、視界不良による2次災害がなくなる。さらに、予告散水は、その散水域内で時間に対して周期的な散水であるので、さらに効果的に車両に警告を発することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
実施の形態1.
図1はトンネル内水噴霧散水設備の配置状態を説明する図である。図1において、トンネル100内には、火災を感知する感知器1と、トンネル100内の幅方向一側(図1の上側)にトンネルの長手方向に整列して複数設けられた水噴霧ヘッド2と、各々の水噴霧ヘッド2に水を供給する配水本管3と、水槽4の水を配水本管3を介して水噴霧ヘッド2に供給するポンプ5とが設けられている。
【0008】
本実施の形態においては、水噴霧ヘッド2は1つの水噴霧散水区画内毎に例えば10個(図では簡略のため4個)が設けられ、水噴霧散水区画内の火災に対して十分に放水されるように10個が同時に作動する構造とされている。そして、各水噴霧散水区画毎に設けられた水噴霧ヘッド2群に対して、水を供給する水噴霧自動弁6が1個設けられている。
【0009】
感知器1は、一つの水噴霧散水区画に対して2個が設けられている。感知器1が、火災を感知するとその信号は制御盤7に伝達される。そして、制御盤7はこの信号に基づいて、対象となる水噴霧散水区画と該水噴霧散水区画の風下に隣接する水噴霧散水区画の2つの水噴霧散水区画に散水が行われるように自動弁6を開く動作をする。
【0010】
図2はこの発明のトンネル内水噴霧散水設備の予告散水の様子を示す図である。 本発明のトンネル内水噴霧散水設備においては、トンネル内火災位置に対応する水噴霧散水区画内に、本来の本格的な本格散水実施以前に、この本格散水よりも小流量の予告散水をする。本格散水がトンネルの幅方向ほぼ全域に渡って散水するのに対し、予告散水は小流量の散水であって、例えば図2に示す例の場合、トンネルの片側約半分の領域に散水(部分散水)する。この予告散水は、小流量の散水であるが、例えばその散水域内でほぼ一様な密度の散水とされている。また、部分散水とすることで、消火水を節約することができるものとされている。
【0011】
小流量の予告散水については、水噴霧ヘッド2から放水される水の量を本格散水よりも少なくすることで実現される。この小流量の予告散水をする小流量散水手段としては、以下に述べる方法を採用することが可能である。
【0012】
(1)還流弁方式
図3は還流弁方式を説明する要部の系統図である。
本方式においては、ポンプ5から延びる配水本管3に予告散水用の還流弁10を追加し、この還流弁10により配水本管3の水を一部環流させて圧力を大きく逃がし配水本管3の圧力を低下させることにより小流量の予告散水をする。すなわち、予告散水時には、予告散水用の還流弁10を全開にして放水を弱くする。一方、本格散水時には、予告散水用の還流弁10を全閉にして放水を通常の強さとする。この還流弁方式においては、水圧駆動式の還流弁10を用いることにより、還流弁10のサイズを大きくすることができる。
【0013】
(2)圧力制御弁方式
図4は圧力制御弁方式を説明する要部の系統図である。
本方式においては、ポンプ5から延びる配水本管3に予告散水用の圧力制御弁12を追加し、予告散水時には、予告散水ライン13を用いて圧力制御弁12を制御することで弱く散水し、一方、本格散水時には、本格散水ライン14を用いて圧力制御弁12を制御することで通常の強さで散水をする。予告散水から本格散水への切替えは図示しないタイマー等を用いて行う。尚、本実施の形態の圧力制御弁方式においては、予告散水ライン13には、圧力調整弁15が設けられ、配水本管3内の圧力制御が可能である。
尚、還流弁10は、ポンプ5に過動な圧がかからないようにするため、ポンプ5直後に配管本管3に設けられ水流を水槽4に戻すようにした逃がし弁があるが、これを上記目的で稼働させる還流弁として用いても良い。
【0014】
(3)予告散水ポンプ方式
図5は予告散水ポンプ方式を説明する要部の系統図である。
本方式においては、消火ポンプ5と並列に、消火ポンプ5より少容量供給あるいは低圧供給用の予告散水ポンプ18を増設する。そして、予告散水時には、予告散水ポンプ18を用いて弱く散水し、一方、本格散水時には、予告散水ポンプ18を停止後、消火ポンプ5を用いて本格散水をする。
【0015】
(4)インバータ制御方式
図6はインバータ制御方式を説明する要部の系統図である。
本方式においては、消火ポンプとしてインバータ制御式で回転数を変える消火ポンプ5aを用いる。そして、予告散水時には、回転数の小さな予告散水モードで放水し、一方、本格散水時には、大きな回転数の本格散水モードで放水する。このインバータ制御方式においては、1つのポンプ設備で予告散水、本格散水の切換えが可能である。
【0016】
(5)電動バタフライ弁方式
図7は電動バタフライ弁方式を説明する要部の系統図である。
本方式においては、自動弁の本体2次側に設けられる手動バタフライ弁を電動バタフライ弁21に変更する。また、自動弁は2次圧調整機能付き自動弁6aとする。図中、22は手動起動弁、23はパイロット弁、24は圧力調整弁である。そして、電動バタフライ弁21の開度を2段階に制御し予告散水時には圧力を下げて放水する。すなわち、予告散水時には、電動バタフライ弁21の開度を「小」とし、一方、本格散水時には、電動バタフライ弁21の開度を「全開」とする。
【0017】
(6)圧力調整弁方式
図8は圧力調整弁方式を説明する要部の系統図である。
本方式においては、自動弁6bに予告散水用の制御系を追加し、本格散水用の制御系と2系統にし、自動弁の開度を2段階に制御して予告散水時の圧力を下げて放水する。すなわち、予告散水時には、二次側圧力を低圧に調整する予告散水用制御系27を使用し自動弁の開度を「小」とし、本格散水時には、二次側圧力を高圧に調整する本格散水用制御系28を使用して開度を「全開」とする。図中、29は予告散水の圧力を調整する予告散水用圧力調整弁である。
【0018】
(7)バイパス回路方式
図9はバイパス回路方式を説明する要部の系統図である。
本方式においては、自動弁の1次側と2次側を電動弁31を用いたバイパス回路32を追加し、流路切換により放水する。すなわち、予告散水時には、バイパス回路32の電動弁31を開放し、本格散水時には、自動弁6aを開放する。図中、33は予告散水の圧力を調整する圧力調整弁であり、34は電動弁開閉試験用の試験弁である。
【0019】
このような構成のトンネル内水噴霧散水設備においては、本格散水よりも小流量の予告散水をすることで、運転者や避難者に対して後に本格散水が行われることを警告することができる。そして、予告散水においては、視界が確保できる為、車両や避難者は迅速に避難することが可能となり、所定の時間の後、本格散水が行われるようにすれば、短時間のうちに水噴霧散水設備を起動させることができると共に、視界不良による2次災害がなくなる。
【0020】
実施の形態2.
図10はこの発明のトンネル内水噴霧散水設備の他の例を示す予告散水の様子を示す図である。本実施の形態においては、トンネル内火災位置に対応する水噴霧散水区画より車両進行方向手前側で、本格散水実施以前に、本格散水よりも小流量の予告散水をする。図中矢印は車両進行方向を示し、本実施の形態は片側通行であるものとする。
【0021】
本実施の形態においては、水噴霧散水区画の端末の水噴霧ヘッド2に1個放水用自動弁38を有するバイパスライン39を自動弁6の1次側と接続して設け、予告散水時には1個放水用自動弁38を開放し、一方、本格散水時には本格散水用自動弁6を開放して放水する。予告散水の時間は、図示しないタイマー又は2系統制御により行う。図中、矢印は車両の進行方向を示し、また、40は予告散水時の逆流を防止する逆止弁を示す。
【0022】
このような構成のトンネル内水噴霧散水設備においては、車両進行方向手前側で、本格散水実施以前に、本格散水よりも小流量の予告散水をすることで、運転者や避難者に対して後に本格散水が行われることを警告することができる。そして、予告散水においては、視界が確保できると共に車両進行方向手前側である為、車両や避難者は迅速に避難することが可能となり、所定の時間の後、本格散水が行われるようにすれば、短時間のうちに水噴霧散水設備を起動させることができると共に、視界不良による2次災害がなくなる。
【0023】
尚、本実施の形態おいては、片側通行であるので、一つの水噴霧散水区画の一側端に予告散水用の水噴霧ヘッド2が設けられているが、対面通行の場合は、予告散水用の水噴霧ヘッド2は両端に設けられる。そして、一つの水噴霧散水区画の両端において、予告散水が行われる。
【0024】
また、本実施の形態おける予告散水は、水噴霧散水区画の一側端の水噴霧ヘッド2からのみ放水を行うことで予告散水としたが、予告散水としては、他にもいろいろな放水の形態が考えられる。そして、予告散水は対象となる水噴霧散水区画より車両進行方向手前側での部分的な散水である必要がある。ここで言う部分的な散水とは、トンネル長手方向においての一箇所の散水や複数箇所に分散した散水、トンネル断面方向における一部散水、例えば左側のみの散水や棒状散水、複数の棒状散水などが考えられる。本格散水で水がなくなることのないように、予告散水は、少ない水で効果的に運転者や避難者に注意を促せるようにすることが望ましい。
【0025】
実施の形態3.
図11はこの発明のトンネル内水噴霧散水設備のさらに他の例を示す予告散水の様子を示す図である。本実施の形態においては、実施の形態2と同じように、トンネル内火災位置に対応する水噴霧散水区画より車両進行方向手前側に、本格散水実施以前に、本格散水よりも小流量の予告散水をする。図中矢印は車両進行方向を示し、本実施の形態は片側通行であるものとする。
【0026】
本実施の形態においては、本格散水用とは別に予告散水用の専用配管43、専用自動弁44、専用水噴霧ヘッド45,46を設備し、トンネル断面をフィルム状又は帯状に遮断するように予告散水を行う。すなわち、専用水噴霧ヘッド45,46は、予告専用の水噴霧ヘッドであるので、運転者や避難者に警告を発することが目的である。そのため、トンネル断面すなわち走行部横断面をフィルム状又は帯状に遮断するように予告散水を行うことで、ここを通過する車両に一瞬だけ強い放水を浴びせ注意を引かせるものである。
【0027】
このような構成のトンネル内水噴霧散水設備においては、車両進行方向手前側で、本格散水実施以前に、本格散水よりも小流量の予告散水をすることで、運転者や避難者に対して後に本格散水が行われることを警告することができる。そして、予告散水においては、視界が確保できると共に車両進行方向手前側である為、車両や避難者は迅速に避難することが可能となり、所定の時間の後、本格散水が行われるようにすれば、短時間のうちに水噴霧散水設備を起動させることができると共に、視界不良による2次災害がなくなる。
【0028】
尚、実施の形態2及び3では、水噴霧散水区画より車両進行方向手前側に、本格散水実施以前に、本格散水よりも小流量の予告散水をすることとしているが、水噴霧散水区画の本格散水中に、この本格散水よりも小流量の予告散水を水噴霧散水区画より車両進行方向手前側で実施するようにしても良い。このような放水をすることで、本格散水の車両進行方向手前側で、車両に警告を発することができ、車両を本格散水に近づく前に停止させることができ、2次災害をさらに少なくすることができる。
【0029】
また、上記の各実施の形態においては、予告散水は、その散水域内でほぼ一様な密度の散水であったが、予告散水は、その散水域内で時間に対して周期的な散水としても良い。ここで、周期的な散水とは、時間的に間欠的な散水や密度が周期的に変化する散水を指し、その周期は一定でなくても構わない。周期的な散水は、例えば、制御盤7が実施の形態1の小流量散水手段を断続的に行って実施することができる。また、トンネルの断面方向に棒状放水を揺動させる揺動散水もさらに効果的である。揺動散水は、水噴霧ヘッド2をトンネルの断面内で回動するような構造とし、さらにこの水噴霧ヘッド2を揺動させる例えばアクチュエータ等の駆動手段を設けることで実現することができる。このような放水をすることで、さらに効果的に車両に警告を発することができる。
【0030】
さらに、予告散水は、その散水域内で火災地点に近づくにつれて散水を強くし警告の程度を強めて行くようにされても良い。ここで、散水を強くし警告の程度を強めるとは、散水密度を濃くすること、放水速度を速くすること、散水の長手方向の分散程度を密にすること、トンネル断面方向の散水領域面積を広くすること、散水周期を短くすることを含む。このような段階的な予告散水は、実施の形態1の小流量散水手段を段階的に行って実施することができる。このような予告散水を行うことで、さらに効果的に車両に警告を発することができる。また、予告散水は、その散水域内で本格散水の実施が時間的に近づくにつれて散水を強くし、警告の程度をだんだんと強めて行くようにされてもよい。このような予告散水を行うことで、さらに効果的に車両に警告を発することができる。
【0031】
尚、予告散水の行われる位置は、車両進行方向手前側、すなわち、本格散水の行われる位置から車両進行方向手前側のトンネル入口までの任意の位置であっても良いが、トンネル入口の位置であっても良い。予告散水をトンネル入口に適用することで、通行車両のトンネル内への進入を停止させることが可能となり、さらに2次災害を減少させることができる。
【0032】
実施の形態4.
図12から図14はこの発明のトンネル内水噴霧散水設備のさらに他の例を示す小流量散水手段の他の例を示す弁の動作工程図である。実施の形態1の小流量散水手段「(6)圧力調整弁方式」においては、予告散水と本格散水の制御を遠隔の制御部側で行うものであった。しかし、本実施の形態では、小流量散水手段のための制御機構が各地区の自動弁装置に組み込まれている。そのため、遠隔の制御部側から起動信号が送られてくるだけの動作で、各地区の自動弁装置で予告散水が行われ、自動弁装置に組み込まれている機械的なタイマーで遅延がかけられ、その後に本格散水が行われる。
【0033】
図に沿って動作を説明する。図12は監視状態の様子を示す。起動弁53、本弁50はともに全閉状態とされている。起動弁53はひとつであるが、タイマーユニット54を経由して、予告散水圧設定された調圧パイロット弁51と本格散水圧設定された調圧パイロット弁52の両方に接続されている。それぞれの調圧パイロット弁51,52は、二次圧監視ラインと、シリンダ加圧ラインに接続されている。
【0034】
図13は予告散水の様子を示す。起動信号を受け起動弁53が開放すると、一次圧力水がタイマーユニット54に流入する。同時にタイマーユニット54を経由して予告散水用調圧パイロット弁51を通過した圧力水は本弁50のシリンダを加圧し、本弁50から放水が開始される。このとき、調圧パイロット弁51は本弁50の二次圧力を監視しながら本弁20の開度を設定された予告散水圧となるようコントロールする。またタイマーユニット54は一次圧力を駆動源として内部のオイルの抵抗を受けながらゆっくりとスライド動作をする。
【0035】
図14は本格散水の様子を示す。タイマーユニット54が一次圧により動作し、本格散水圧放水用調圧パイロット弁52へのラインが十分に開くと、調圧パイロット弁52を通過した圧力水が本弁50のシリンダを加圧し、本弁50は更に開放する。二次側の圧力上昇により予告散水用調圧パイロット弁51は閉止しシリンダへの給水を停止するが、本格散水圧放水用調圧パイロット弁52による給水により本弁50は開放を継続し、調圧パイロット弁52は本弁50の二次圧を監視しながら、設定された本格散水圧力となるよう本弁50の開度をコントロールする。
【0036】
閉止時においては、起動弁53が閉止するとシリンダへの給水は停止され、本弁50は閉止する。同時に予告散水用調圧パイロット弁51、本格散水圧放水用調圧パイロット弁52、タイマーユニット54のすべてが監視状態に復旧する。
【0037】
実施の形態5.
図15から図17はこの発明のトンネル内水噴霧散水設備のさらに他の例を示す小流量散水手段の他の例を示す弁の動作工程図である。実施の形態4においては、機械的なタイマーで遅延がかけられその後本格散水が行われたが、本実施の形態においては、電気的なタイマーで遅延がかけられる。その他の構成は実施の形態4と同様である。
【0038】
図に沿って動作を説明する。図15は監視状態の様子を示す。起動弁63,64、本弁60はともに全閉状態とされている。本実施の形態においては、起動弁及び調圧パイロット弁を、予告散水用63,61と本格散水用64,62としてそれぞれ2セットが設けられている。並行した2つの加圧ラインを構成している2つの起動弁63,64は直列に配置してあり、予告散水用の起動弁63を閉止することにより本弁60は即座に閉止を開始するようになっている。
また、タイマーにはオンディレーオフディレー両用のタイマースイッチ65を用い、電力容量の問題から同時に2つの起動弁63,64が動作しないように構成している。
【0039】
図16は予告散水の様子を示す。起動信号を受けると予告散水用起動弁63は即座に開放し、予告散水圧に設定された調圧パイロット弁61を経由して本弁60が開放を始める。調圧パイロット弁61は本弁60の二次圧を監視し、予告散水圧となるよう本弁60の開度をコントロールする。
同時に電子タイマー65が本格散水用起動弁64を開放するためのカウントを開始する。
【0040】
図17は本格散水の様子を示す。電子タイマー65がカウントを始め、設定された時間が経過すると本格散水用起動弁64に通電され開放する。本格散水用起動弁64が開くと、本格散水用パイロット弁62を通過した圧力水が本弁60のシリンダを加圧し、本弁60は更に開放する。
本弁60の二次圧力が上昇するために予告散水用パイロット弁61は閉止するが、本格散水用パイロット弁62からの給水により本弁60は開放を継続し、本格散水用パイロット弁62は本弁60の二次圧を監視しながら、設定された規定圧力となるよう本弁60の開度をコントロールする。
【0041】
閉止時においては、閉止信号を受けると予告散水用起動弁63が先行して閉止し、シリンダへの給水は停止され、本弁60は閉止すると同時に電子タイマー65がカウントを開始し、予告散水用起動弁63が閉止する所要時間が経過した後に本格散水用起動弁64に通電し閉止する。
【0042】
実施の形態6.
図18はこの発明のトンネル内水噴霧散水設備のさらに他の例を示す小流量散水手段の要部の系統図である。本実施の形態の小流量散水手段は、実施の形態1の小流量散水手段「(5)電動バタフライ弁方式」に近いが、本実施の形態においては、二次圧調整機能付き自動弁70の二次側にバタフライ弁ではなく、小流量を通過させる開口を形成した弁体72を備えた一斉開放弁71が設けられている。そして、この二次側の弁71を全開させる制御機構が遠隔制御ではなく各地区の自動弁装置に組み込まれている。すなわち、遠隔制御部が起動信号のみを送ると、各地区の自動弁装置で予告散水が行われ、自動弁装置に組み込まれている機械的タイマー73で遅延がかけられ、その後、一斉開放弁71が全開となって本格散水が行われる。尚、タイマーは電気的なタイマーでも良い。
【0043】
実施の形態7.
図19はこの発明のトンネル内水噴霧散水設備のさらに他の例を示す要部の系統図である。本実施の形態は、トンネル内火災位置に対応する水噴霧散水区画の本格散水中に、本格散水よりも小流量の予告散水を水噴霧散水区画より車両進行方向手前側で実施する小流量散水手段を備えるものである。
【0044】
図19においては、車両進行方向一番手前側のヘッド80の一次側に二段階流量制御装置81を設けている。この二段階流量制御装置81は、機械式タイマと同様な構造となっているが、シリンダ81aとピストン81bとの間に所定の隙間が形成されており、オイルとオリフィスで遅動がかかっているピストン81bが端部まで移動するまでは、一次側からシリンダ81aに供給された消火水はこの隙間を介してヘッド80に通水される。したがって、この間は放水が制限されて小流量の予告放水となり、ピストン81bが端部まで移動したときに初めて本格放水がなされる。他のヘッド82は最初から本格放水がなされる。
尚、上述の実施の形態7では、予告散水用のヘッド80は1個であったが、複数設けるようにしても良い。
【0045】
実施の形態8.
図20はこの発明のトンネル内水噴霧散水設備のさらに他の例を示す要部の系統図である。本実施の形態は、トンネル内火災位置に対応する水噴霧散水区画内に、本格散水実施以前に、本格散水よりも小流量の予告散水をする小流量散水手段を備えるものである。
【0046】
図20においては、自動弁90の二次側で分岐配管92の手前に二段階流量制御装置91を設けている。この二段階流量制御装置91は、実施の形態7の二段階流量制御装置81と同様な構造で、シリンダ91aとピストン91bとの間に所定の隙間が形成されており、当初は制限されて小流量の予告放水となり、ピストン91bが端部まで移動したときに初めて本格放水がなされる。
【0047】
なお、上述の実施の形態7,8では、小流量のために、二段階流量制御装置81,91のシリンダ81a,91aとピストン81b,91bの間に円環状の隙間の流路を設けたが、円環状の隙間ではなくピストン81b,91bに形成された溝状の流路としてもよい。またシリンダ81a,91aと二次側配管、または一次側配管と二次側配管の間に小流量のための流路を設けて、シリンダ81a,91aとピストン81b,91bの間の流路を無くするようにしてもよい。
【0048】
また、上述の実施の形態7,8では、二段階流量制御装置81,91のシリンダ81a,91aとピストン81b,91bの間に小流量のための円環状の隙間の流路を設けたが、ピストン81b,91bの形状を円錐台状にして円環状の隙間がピストンの移動に伴って大きくなるようにすると、時間の経過に従って次第に流量が増加し警告の程度を強めるようにすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0049】
【図1】トンネル内水噴霧散水設備の配置状態を説明する図である。
【図2】この発明のトンネル内水噴霧散水設備の予告散水の様子を示す図である。
【図3】還流弁方式を説明する要部の系統図である。
【図4】圧力制御弁方式を説明する要部の系統図である。
【図5】予告散水ポンプ方式を説明する要部の系統図である。
【図6】インバータ制御方式を説明する要部の系統図である。
【図7】電動バタフライ弁方式を説明する要部の系統図である。
【図8】圧力調整弁方式を説明する要部の系統図である。
【図9】バイパス回路方式を説明する要部の系統図である。
【図10】この発明のトンネル内水噴霧散水設備の他の例を示す予告散水の様子を示す図である。
【図11】この発明のトンネル内水噴霧散水設備のさらに他の例を示す予告散水の様子を示す図である。
【図12】この発明のトンネル内水噴霧散水設備のさらに他の例を示す小流量散水手段の監視状態の様子を示す図である。
【図13】図12の小流量散水手段の予告散水の様子を示す図である。
【図14】図12の小流量散水手段の本格散水の様子を示す図である。
【図15】この発明のトンネル内水噴霧散水設備のさらに他の例を示す小流量散水手段の監視状態の様子を示す図である。
【図16】図15の小流量散水手段の予告散水の様子を示す図である。
【図17】図15の小流量散水手段の本格散水の様子を示す図である。
【図18】この発明のトンネル内水噴霧散水設備のさらに他の例を示す小流量散水手段の他の例を示す要部の系統図である。
【図19】この発明のトンネル内水噴霧散水設備のさらに他の例を示す要部の系統図である。
【図20】この発明のトンネル内水噴霧散水設備のさらに他の例を示す要部の系統図である。
【符号の説明】
【0050】
1 感知器、2 水噴霧ヘッド、3 配水本管、4 水槽、5 ポンプ、6 自動弁、7 制御盤、100 トンネル。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
トンネル内火災位置に対応する水噴霧散水区画内に、本格散水実施以前に、該本格散水よりも小流量の予告散水をする小流量散水手段を備え、
前記予告散水は、その散水域内で時間に対して周期的な散水であることを特徴とするトンネル水噴霧散水設備。
【請求項2】
前記予告散水は、その散水域内で火災地点に近づくにつれて散水を強くし警告の程度を強めて行くことを特徴とする請求項1記載のトンネル水噴霧散水設備。
【請求項3】
前記予告散水は、その散水域内で本格散水の実施が時間的に近づくにつれて散水を強くし警告の程度を強めて行くことを特徴とする請求項1記載のトンネル水噴霧散水設備。
【請求項4】
トンネル内火災位置に対応する水噴霧散水区画内に、本格散水実施以前に、該本格散水よりも小流量の予告散水をする小流量散水手段を備え、
前記予告散水は、その散水域内で本格散水の実施が時間的に近づくにつれて散水を強くし警告の程度を強めて行くことを特徴とするトンネル水噴霧散水設備。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【公開番号】特開2007−203103(P2007−203103A)
【公開日】平成19年8月16日(2007.8.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−128258(P2007−128258)
【出願日】平成19年5月14日(2007.5.14)
【分割の表示】特願2002−96558(P2002−96558)の分割
【原出願日】平成14年3月29日(2002.3.29)
【出願人】(000233826)能美防災株式会社 (918)
【出願人】(505398941)東日本高速道路株式会社 (66)
【出願人】(505398952)中日本高速道路株式会社 (94)
【出願人】(505398963)西日本高速道路株式会社 (105)