説明

ドアクローザ

【課題】火災等によってドアクローザの周囲の温度が異常に上昇したとしても、ドアクローザ本体から発煙したり、オイルに引火したりするおそれがなく、安全性の向上を図る。
【解決手段】本発明に係るドアクローザ1は、扉2と扉2の周囲部材5のいずれか一方の部材に中継部材3を介して取り付けられるドアクローザ本体4と、扉2と扉2の周囲部材5のいずれか他方の部材とドアクローザ本体4とを連結するアーム7とを備え、中継部材3は熱融解性を有する部材により形成されていることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、出入口等において開放された扉を自動的に閉めるために取り付けられるドアクローザに関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、玄関や室内の出入口等において開放された扉を自動的に閉めるためにドアクローザが取り付けられている。
【0003】
従来のドアクローザは、扉に取り付けられるドアクローザ本体と、扉枠に取り付けられるブラケットと、該ブラケットと前記ドアクローザ本体とを連結するリンク状のアームとを備えて構成されており、前記ドアクローザ本体に内蔵されたバネやオイルの粘性を利用した減速装置や調整弁の働きによって、開放された扉を安全な速度でスムーズに閉めることができるようになっている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−180036号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記した従来のドアクローザでは、火災等によって周囲の温度が異常に上昇すると、前記ドアクローザ本体の調整弁が緩んで落下し、内部のオイルが流出し、前記ドアクローザ本体から激しく発煙したり、流出したオイルに引火したりするおそれがあり、防災上問題が生じていた。
【0006】
本発明は、上記した課題を解決すべくなされたものであり、火災等によってドアクローザの周囲の温度が異常に上昇したとしても、ドアクローザ本体から発煙したり、オイルに引火したりするおそれがなく、防災上極めて安全なドアクローザを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係るドアクローザは、扉と該扉の周囲部材のいずれか一方の部材に中継部材を介して取り付けられるドアクローザ本体と、前記扉と該扉の周囲部材のいずれか他方の部材と前記ドアクローザ本体とを連結するアームとを備え、前記中継部材は熱融解性を有する部材により形成されていることを特徴とする。
【0008】
前記中継部材は、前記一方の部材の外面と前記ドアクローザ本体との間に介装されるプレートであってもよく、或いは、前記一方の部材の内面に取り付けられる補強プレートであってもよい。
【0009】
本発明に係るドアクローザにおいて、前記アームは、一方の端部が前記ドアクローザ本体に枢着される第1アームと、一方の端部が前記他方の部材側に枢着される第2アームとを備え、該第2アームの他方の端部は前記第1アームの他方の端部の上方で枢支されているのが好ましい。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、火災等によってドアクローザの周囲の温度が異常に上昇したとしても、ドアクローザ本体から発煙したり、オイルに引火したりするおそれがなく、安全性の向上を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の実施の形態に係るドアクローザを示す斜視図である。
【図2】本発明の実施の形態に係るドアクローザにおいてドアクローザ本体の取付方法を示す分解斜視図である。
【図3】本発明の実施の形態に係るドアクローザにおいてアームの取付方法を示す分解斜視図である。
【図4】本発明の実施の形態に係るドアクローザのブラケットを示す斜視図である。
【図5】ドアクローザを設置した場所の周囲の温度が異常に上昇した際に、従来のドアクローザ及び本発明の実施の形態に係るドアクローザが取り付けられる扉表面と、従来のドアクローザと、本発明の実施の形態に係るドアクローザのそれぞれの温度が時間経過と共にどのように変化するかについて測定した結果を比較して示す図である。
【図6】本発明の実施の形態に係るドアクローザの変形例を示す断面図である。
【図7】図6の一点鎖線部分の拡大断面図である。
【図8】本発明の実施の形態に係るドアクローザのさらなる変形例を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
次に、本発明の実施の形態に係るドアクローザについて、図面を参照して説明する。ここで、図1は本発明の実施の形態に係るドアクローザを示す斜視図、図2は本発明の実施の形態に係るドアクローザにおいてドアクローザ本体の取付方法を示す分解斜視図、図3は本発明の実施の形態に係るドアクローザにおいてアームの取付方法を示す分解斜視図、図4は本発明の実施の形態に係るドアクローザのブラケットを示す斜視図である。
【0013】
本発明の実施の形態に係るドアクローザ1は、扉2の上端外面に中継部材であるプレート3を介して取り付けられるドアクローザ本体4と、扉2の周囲部材である扉2の上方の扉枠5に取り付けられるブラケット6と、ドアクローザ本体4とブラケット6とを連結するアーム7とを備えて構成されている。
【0014】
図2に示されているように、プレート3は、矩形平板形状を成し、例えば鉛と錫の合金製で融点が180℃程度の熱溶解性を有する部材により形成されており、複数本のネジ8で扉2の上端外面側に固定されるようになっている。また、ドアクローザ本体4は、内蔵されたバネやオイルの粘性を利用した減速装置や調整弁の働きによって扉2の閉鎖速度を調整するものであり、直方体形状を成し、複数のネジ9でプレート3に固定されるようになっている。
【0015】
図4に良く示されているように、ブラケット6は、扉枠5に沿って鉛直姿勢を成すブラケット固定部10と、ブラケット固定部10の下端から水平に延出されるアーム支持部11とを備えて構成されている。ブラケット固定部10には、複数(図示では4箇所)のネジ孔12が形成されており、ネジ13を各ネジ孔12に通して螺挿することによりブラケット6が扉枠5に固定されるようになっている。また、アーム支持部11の上面中央には、係合突起部14が突設されている。
アーム7は、一方の端部16aがドアクローザ本体4の回転作用軸15の上端部に枢着される第1アーム16と、一方の端部17aがブラケット6のアーム支持部11の係合突起部14に枢着される第2アーム17とを備えて構成されている。そして、第1アーム16の他方の端部16bの上面には枢軸部18が突設されていると共に、第2アーム17の他方の端部17bにはこの枢軸部18が下方から挿入されて係合される丸孔19が形成されており、第2アーム17の他方の端部17bは第1アーム16の他方の端部16bの上方で枢支されている。また、第2アーム17は、入れ子状を成し、長手方向に沿って伸縮可能に形成されており、アームの長さを調整可能となっている。
【0016】
このような構成を備えたドアクローザ1を扉2及び扉枠5に取り付けた状態において、火災等が発生して周囲の温度が所定温度以上に上昇すると、プレート3は溶解する。この時、プレート3に固定されていたネジ9が緩むと共に、第1アーム16の枢軸部18は第2アーム17の丸孔19に下方から挿入されているだけで固定されていないため、第1アーム16と第2アーム17との係合状態は解除され、ドアクローザ本体4は第1アーム16を伴って落下する。
【0017】
ここで、図5は、ドアクローザを設置した場所の周囲の温度が異常に上昇した際に、従来のドアクローザ及び本発明の実施の形態に係るドアクローザ1が取り付けられる扉表面と、従来のドアクローザと、本発明の実施の形態に係るドアクローザ1のそれぞれの温度が時間経過と共にどのように変化するかについて測定した結果を比較して示す図である。この図5によれば、従来のドアクローザの温度は扉表面の温度が上昇するに伴って同じ様に上昇するのに対して、上記した本発明の実施の形態に係るドアクローザ1はプレート3の融点(180℃程度)付近でドアクローザ本体4が落下することにより、温度が40℃程度まで急激に低下し、それ以降その状態が保たれることが分かる。したがって、上記した本発明の実施の形態のドアクローザ1によれば、周囲の温度が異常に上昇したとしても、ドアクローザ本体4から激しく発煙したり、流出したオイルに引火したりするおそれがなく、安全性を向上させることができる。
【0018】
なお、中継部材としては、上記したプレート3の代わりに、図6及び図7に示すように、扉2の内面に取り付けた補強プレート21を使用してもよい。この補強プレート21は、矩形平板形状を成し、例えば鉛と錫の合金製で融点が180℃程度の熱溶解性を有する部材により形成されており、所定箇所に複数の雌ネジ22が螺刻されている。一方、扉2及びドアクローザ本体4には、雌ネジ22の位置に対応するように複数の通孔23,24がそれぞれ穿設されており、複数のネジ25を各通孔23,24に通して各雌ネジ22に螺挿することにより、ドアクローザ本体4が扉2に固定されるようになっている。なお、図6及び図7に示されているドアクローザ本体4は、他の図面に示されているドアクローザ本体4と形状等が多少異なっているが、実質的には同じものであるため、図6及び図7においても他の図面と同一符号を付している。
【0019】
また、上記した本発明の実施の形態の説明では、扉2にプレート3を介してドアクローザ本体4を取付けると共に扉枠5にブラケット6を介してアーム7を取り付けているが、本発明の適用はこの場合に限定されるものではなく、例えば、上記した実施の形態とは反対に、扉枠5にプレート3を介してドアクローザ本体4を取付けると共に扉2にブラケット6を介してアーム7を取り付けてもよい。
【0020】
この場合、図8に示すように、ブラケット6のアーム支持部11はブラケット固定部10の上端から水平に延出され、前記係合突起部18(図8では図示省略)はアーム支持部11の下面中央に突設される。また、アーム7の第1アーム16の一方の端部16aはドアクローザ本体4の前記回転作用軸15(図8では図示省略)の下端部に枢着され、前記枢軸部18(図8では図示省略)は第2アーム17の他方の端部17bの下面に突設され、この枢軸部は第1アーム16の他方の端部16bに形成された前記丸孔19(図8では図示省略)に上方から挿入される。
【0021】
また、上記した本発明の実施の形態の説明では、プレート3が180℃程度の融点の鉛と錫の合金により形成されているが、これは単なる例示に過ぎず、プレート3は、ドアクローザ本体4に内蔵されているオイルの発火点より低い融点を有する熱溶解性を有する部材によって形成されていれば、上記した材質以外の材質によって形成されていてもよい。
【符号の説明】
【0022】
1 ドアクローザ
2 扉
3 プレート(中継部材)
4 ドアクローザ本体
5 扉枠(扉の周囲部材)
7 アーム
16 第1アーム
16a 第1アームの一方の端部
16b 第1アームの他方の端部
17 第2アーム
17a 第2アームの一方の端部
17b 第2アームの他方の端部
21 補強プレート(中継部材)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
扉と該扉の周囲部材のいずれか一方の部材に中継部材を介して取り付けられるドアクローザ本体と、
前記扉と該扉の周囲部材のいずれか他方の部材と前記ドアクローザ本体とを連結するアームとを備え、
前記中継部材は熱融解性を有する部材により形成されていることを特徴とするドアクローザ。
【請求項2】
前記中継部材は、前記一方の部材の外面と前記ドアクローザ本体との間に介装されるプレートである請求項1に記載のドアクローザ。
【請求項3】
前記中継部材は、前記一方の部材の内面に取り付けられる補強プレートである請求項1に記載のドアクローザ。
【請求項4】
前記アームは、一方の端部が前記ドアクローザ本体に枢着される第1アームと、一方の端部が前記他方の部材側に枢着される第2アームとを備え、該第2アームの他方の端部は前記第1アームの他方の端部の上方で枢支されている請求項1〜3のいずれか1の請求項に記載のドアクローザ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−17646(P2012−17646A)
【公開日】平成24年1月26日(2012.1.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−105776(P2011−105776)
【出願日】平成23年5月11日(2011.5.11)
【出願人】(390037028)美和ロック株式会社 (868)
【Fターム(参考)】