説明

ドアハンドル

【課題】ネジ等を使用せずに組み立てが可能であり、組み立てが容易なドアハンドルを開発する。
【解決手段】ドアハンドル1は、長軸一体側構造部材10と短軸側構造部材11及び把手部材6によって構成されている。二つの構造部材10,11は嵌合構造部13で結合されている。嵌合構造部13は、挿入片15と被挿入開口40によって構成される。ドアハンドル1を組み立てる際は、は、軸部5に把手部材6を装着した状態で、一方の構造部材11に設けられた挿入片15を被挿入開口40に挿入し、挿入片15又は被挿入開口40を回転させる。その結果挿入片15の係合凹部30が被挿入開口40のロック部55の位置に至る。ロック部55は自己の弾性力によって内側に移動し、ロック部55が係合凹部30と係合する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ドアに取り付けられるハンドルに関するものである。本発明のドアハンドルはスライド式ドア及びウイング式ドアの双方に利用することができる。また本発明は、固定式のドアハンドルにも可動式のレバーハンドルにも採用可能である。
【背景技術】
【0002】
ドアには使用者が操作し易い様にハンドルが取り付けられる。例えば固定式のハンドルであれば図12の様に二箇所でドア100に固定される。
固定式のドアハンドル101は、図12の用に上下にエンド部103があり、その中間に把手部材105が設けられている。
ドアハンドル101では、上下のエンド部103が図示しない軸によって連結されており、当該軸に筒状の把手部材105が装着されている。
また従来技術においては、エンド部103同士の結合や軸部と把手部材105との結合が、ネジやピン等の締結要素を使用して行われていた。
【特許文献1】特開2004−3356
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ドアハンドルは、把手部材に手を触れて操作するものであるから、把手部材の色、素材、触りこごちは重要な製品特性の一つである。
しかしながら、前記した色、素材、触りこごち等の善し悪しは、普遍的な判断基準がある訳ではなく、専ら使用者の好みや趣味によって善し悪しが決まる。そのためドアハンドルの製造者は、使用者の多様な好みに応じるために、色、素材の異なる把手部材を多種類用意し、使用者の好みに応じて把手部材を選択し、エンド部材等と共に組み立てて出荷することとなる。
【0004】
また輸送効率を上げるために、上記したエンド部材や把手部材をばらばらの状態で出荷し、施工現場でこれらを組み立てる場合もある。
【0005】
ドアハンドルは、前記した様に両端にエンド部があり、この間に把手部材が取り付けられたものであるが、エンド部材同士の結合や軸部と把手部材との結合は、前記した様にネジやピン等の締結要素を使用して行われていた。そのため従来技術のドアハンドルは、組み立てに手間どるという問題があった。特に施工現場で組み立てる場合は、作業者が不慣れであり、作業に手間取り、改善が望まれていた。
【0006】
そこで本発明は、従来技術の上記した問題点に注目し、組み立てが容易なドアハンドルを開発することを課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記した課題を解決するための請求項1に記載の発明は、軸部の両端にエンド部があり、軸部の周囲であってエンド部同士の間に把手部材が装着されたドアハンドルにおいて、少なくとも一方のエンド部と軸部の全部又は一部が一体化された構造部材と、少なくとも他方のエンド部が設けられたもう一つの構造部材と、把手部材とを備え、二つの構造部材は嵌合構造部によって結合され、当該嵌合構造部は一方の構造部材に設けられた挿入片と、他方の構造部材に設けられた被挿入開口によって構成され、前記被挿入開口にはロック部が設けられ、前記挿入片は被挿入開口に挿入された状態で回動可能であり、挿入片と被挿入開口とが特定の回転位置にあるときにロック部が挿入片の一部と係合して挿入片の回転を阻止し、且つ前記特定の回転位置にあるときには構造部材同士の軸方向への離脱が阻止され、把手部材は筒状であり、把手部材の内面の一部がロック部を押圧することによってロック部が挿入片から離脱することが阻止されることを特徴とするドアハンドルである。
【0008】
本発明のドアハンドルは、基本的に3個の部材によって構成され、これらを結合して作られるものである。本発明のドアハンドルは、軸部に把手部材を装着した状態で、一方の構造部材に設けられた挿入片を被挿入開口に挿入し、挿入片又は被挿入開口を回転させる。本発明のドアハンドルでは、一方のエンド部と一体化された構造部材と、他方のエンド部に設けられたもう一つの構造部材とを嵌合部で嵌合させるものであり、原則として両者の結合にネジ等を使用しない。
嵌合構造部は一方の構造部材に設けられた挿入片と、他方の構造部材に設けられた被挿入開口によって構成されている。挿入片は被挿入開口に挿入された状態で回動可能である。被挿入開口にはロック部が設けられ、挿入片と被挿入開口とが特定の回転位置にあるときにロック部が挿入片の一部と係合して挿入片の回転を阻止する。また当該回転位置にあるときには構造部材同士の軸方向への離脱が阻止される。従って挿入片を被挿入開口に挿入して回転すると、両者は特定の回転位置に至り、軸方向に分離できない状態となる。またロック部が挿入片の一部と係合することにより、挿入片と被挿入開口との相対回転が阻止されるので、構造部材同士は分離できない状態に固定される。
また本発明のドアハンドルでは、把手部材の内面の一部がロック部を押圧することによってロック部が挿入片から離脱することが阻止される。そのためドアハンドルをドアに取り付けたのちに、構造部材が分離してしまうということもない。
【0009】
請求項2に記載の発明は、挿入片には回転方向当接部材が設けられ、被挿入開口には被当接部があり、挿入片を挿入して回転すると挿入片の回転方向当接部材が被挿入開口の被当接部と当接してそれ以上の回転が阻止され、且つ当該回転位置においてロック部が挿入片の一部と係合することを特徴とする請求項1に記載のドアハンドルである。
【0010】
請求項2に記載の発明では、挿入片を相対回転させると当接部材と被当接部材が接し、それ以上回転させることができなくなる。そして当該位置においてロック部が挿入片の一部と係合する。そのため本発明のドアハンドルでは、ロック部の係合が確実である。即ち本発明では、挿入片を相対回転させると特定の位置で強制的に回転が停止されるので、ロック部が係合すべき位置を乗り越えたり、通過してしまうことがない。そのため本発明のドアハンドルでは、ロック部の係合が確実である。
【0011】
請求項3に記載の発明は、挿入片及び/又は被挿入開口は中心に対して非対称形状であり、挿入片を被挿入開口に挿入して一方方向に回転した時にロック部が挿入片の一部と係合する特定の回転角度に至り、逆方向に回転した場合は、挿入片と被挿入開口のいずれかの部位が衝突して前記特定の回転角度に至ることを阻止することを特徴とする請求項1又は2に記載のドアハンドルである。
【0012】
本発明のドアハンドルは、組み立て間違いを防止する機能を備えるものである。即ち本発明のドアハンドルでは、挿入片又は被挿入開口を特定の方向に回転した場合に限ってロック部を係合させることができる。そのため二つの構造部材は常に正規の位置関係で固定される。
【0013】
請求項4に記載の発明は、挿入片は軸線に垂直方向の断面形状が軸方向の部位に応じて異なり、断面積が大きな大断面積部と断面積が小さな小断面積部があり、被挿入開口についても軸線に垂直方向の開口形状が軸方向の部位に応じて異なり、開口面積が大きな大開口面積部と開口面積が小さな小開口面積部があり、挿入片が所定の挿入位置にあるときには挿入片の大断面積部及び小断面積部はそれぞれ被挿入開口の大開口面積部と小開口面積部に位置し、さらに挿入片には特定の回転姿勢の時に挿入片の挿入を許す切り欠き部が設けられていることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載のドアハンドルである。
【0014】
本発明のドアハンドルでは、挿入片に大断面積部と小断面積部が設けられ、挿入片が所定の挿入位置にあるときには挿入片の大断面積部及び小断面積部はそれぞれ被挿入開口の大開口面積部と小開口面積部に位置する。そのため二つの構造部材は、軸方向に嵌合状態となり、引張り力を加えても、挿入片の大断面積部と被挿入開口の小開口面積部が干渉して構造部材同士を引き離すことができない。
また挿入片には特定の回転姿勢の時に挿入片の挿入を許す切り欠き部が設けられているので、特定の回転姿勢にすれば挿入片を被挿入開口に挿入することができる。
【0015】
請求項5に記載の発明は、把手部材の内面には傾斜部又は凸部が設けられ、前記傾斜部または凸部によってロック部を押圧することを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載のドアハンドルである。
【0016】
本発明のドアハンドルでは、把手部材の内面に傾斜部又は凸部が設けられ、前記傾斜部または凸部によってロック部を押圧する。そのためロック部の押圧力が強く、ロック部が外れることがない。
また把手部材の傾斜部又は凸部が構造部材側に強く押しつけられるので、把手部材のがたつきが小さい。
【0017】
請求項6に記載の発明は、把手部材は一定の回転方向に回転させた場合に構造部材との結合強度が増加し、把手部材は逆転阻止機能を備え、把手部材は結合強度が増加する方向にのみ回転可能であることを特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載のドアハンドルである。
【0018】
本発明のドアハンドルは、一定方向に回転させることによってガタツキが減少し、さらに逆転阻止機能によって緩み方向の回転が阻止される。そのため簡単な操作によってがたつきを取ることができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明のドアハンドルは、軸部に把手部材を装着した状態で、一方の構造部材に設けられた挿入片を被挿入開口に挿入し、挿入片又は被挿入開口を回転させることによって組み立てが完了する。本発明のドアハンドルでは、原則としてネジ等を使用することなく組み立てを完了することができる。そのため本発明のドアハンドルは、組み立てが容易である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下さらに本発明の実施形態について説明する。
図1は、本発明の実施形態のドアハンドルの分解斜視図である。図2は、図1のドアハンドルの組み立て工程を示す斜視図である。図3は、図2に次ぐ組み立て工程を示す斜視図である。
【0021】
本実施形態のドアハンドル1は、図3に示すように二つのエンド部2,3があり、両エンド部2,3は軸部5で結合されている。逆に言えば軸部5の両端にエンド部2,3がある。そして軸部5の周囲であってエンド部2,3同士の間に把手部材6が装着された構造である。
【0022】
本実施形態のドアハンドル1は、図1に示すように長軸一体側構造部材10と短軸側構造部材11及び把手部材6によって構成されている。そして二つの構造部材10,11は嵌合構造部13で結合されている。嵌合構造部13は、後記する挿入片15と被挿入開口40によって構成されている。
長軸一体側構造部材10は、エンド部2と軸部5の略全部が結合したものであり、軸部5の先端に挿入片15が設けられている。
エンド部2は、公知のドアハンドルと同様に全体形状が「L」形をしており、ドアに取り付けられる取付け部16と、柱状部17及びエルボ部18を有している。
【0023】
長軸一体側構造部材10の軸部5は、前記した柱状部17及びエルボ部18よりも細く、柱状部17に対して垂直方向に延びている。
挿入片15は、本発明の特徴的な構成であり、詳細に説明する。
図4(a)は、本発明の実施形態のドアハンドルで採用する挿入片の拡大斜視図であり、(b)(c)(d)(e)は各部の断面図である。
挿入片15は、図4の様に軸方向に4つの領域に分かれている。
挿入片15の最も先端の領域(A−A断面領域)は、大断面積部20であり、挿入片15の中でもっとも面積が大きい領域である。
【0024】
大断面積部20の形状は、小判型であり、円を側面に切り欠き部21が設けられた形状である。即ち大断面積部20の断面形状は、2か所に円弧部22があり、その間に直線部23が設けられた形状をしている。円弧部22及び直線部23はそれぞれ対向位置にある。円弧部22及び直線部23は、それぞれ90°程度の角度領域を持っている。
【0025】
続く領域は、小断面積部25である。小断面積部25の断面形状は円形であり、挿入片15の中でもっとも断面積が小さい。具体的には、小断面積部25は、前記した大断面積部20の切り欠き部21間の幅を直径とする円である。
【0026】
さらに続く領域は、第一非対称断面部26である。非対称断面部26の断面形状は、円弧部27、短直線部28、カム部29、係合凹部30、突出部31、長直線部32によって囲まれる図形である。
即ち円弧部27は、軸部の軸線を中心とする円弧であり、90°程度の角度領域を持っている。
【0027】
短直線部28は、弦に相当する直線であり、90°程度の角度領域を持っている。
【0028】
カム部29は、短直線部28から角度的に離れるに従って、軸部の軸線からの距離が増大する曲線であり、カム面を構成している。
【0029】
係合凹部30は、カム部29の終端部と突出部31との境界部分にあり、凹状をしている。
係合凹部30と前記したカム部29とを合わせた領域は、90°程度の角度領域である。
突出部31は、第一非対称断面部26の中で最も突出した部分であり、突出面は壁状である。
長直線部32は、突出部31と円弧部27を直線で結ぶものであり、前記した短直線部28に対して平行である。また長直線部32と短直線部28の幅は、前記した切り欠き部21間の幅と等しい。
【0030】
第一非対称断面部26に軸方向に隣接する領域は、第二非対称断面部35である。
第二非対称断面部35は、前記した第一非対称断面部26と同一の断面形状であるが、位置の位相が180°ずれている。即ち第二非対称断面部35は、円弧部27、短直線部28、カム部29、係合凹部30、突出部31、長直線部32によって囲まれた形状をしており、それぞれの辺は、前記した第一非対称断面部26のそれに対して180°回転した位置にある。
【0031】
挿入片15の各領域を全体的に見渡すと、二面が削り取られた形状をしている。即ち前記した様に先端の大断面積部20には、切り欠き部21が設けられ、続く小断面積部25は大断面積部20の切り欠き部21間の幅を直径とする円であり、さらに続く第一非対称断面部26と第二非対称断面部35には短直線部28と長直線部32があって当該部分も切り欠き状となっている。そのため挿入片15の各領域を全体的に見渡すと、二面が削り取られた形状をしている。
【0032】
次に短軸側構造部材11について説明する。図5(a)は、本発明の実施形態のドアハンドルで採用する短軸側構造部材の拡大斜視図であり、(b)(c)(d)(e)(f)は各部の断面図である。
短軸側構造部材11はエンド部3と軸部5のごく一部が結合したものであり、軸部5の先端に被挿入開口40が設けられている。
エンド部3は、前記した長軸一体側構造部材10と同様に全体形状が「L」形をしており、ドアに取り付けられる取付け部16と、柱状部17及びエルボ部18を有している。
【0033】
短軸側構造部材11の軸部5は、極めて短く、その先端に被挿入開口40が設けられている。短軸側構造部材11の軸部5には、鉤状の突起41が設けられている。当該突起41は、後記する把手部材6の鉤状突起61と相まって逆転阻止機能を発揮するものである。
被挿入開口40についても前記した挿入片15と同様に4つの領域に分かれている。
挿入片15は先端側から順に説明したが、対応関係を明確にするために被挿入開口40は奥側から順次説明する。
【0034】
被挿入開口40の最も奥端の領域(A−A断面領域)は、大開口面積部46であり、被挿入開口40の中でもっとも開口面積が大きい領域である。大開口面積部46は図5の様に二部材57,58だけを残し、これに対して垂直方向の二面は開口している。二部材57,58の内壁は平行であり、その幅は、挿入片15の大断面積部20の円弧部22の直径に等しい。
二部材57,58の外周部には突条45がある。当該突条45は、図5(a)の様に軸部5から被挿入開口40の先端に至るまで設けられている。
【0035】
続く領域は、小開口面積部47である。小開口面積部47についても二部材57,58だけを残し、これに対して垂直方向の二面は開口している。小開口面積部47の二部材57,58の内壁は平行であり、その幅は、挿入片15の小断面積部25の直径に等しい。
【0036】
さらに続く領域は、第一非対称開口部51である。第一非対称開口部51は、前記した小開口面積部47に連続して二部材57,58を有するものである。
第一非対称開口部51は、取付け部16側の辺の一部にロック部55が形成されている。ロック部55は、内側に向かって突出した突起である。ロック部55は前記した二部材57,58の一方であって回転方向端部に設けられている。
【0037】
第一非対称開口部51に軸方向に隣接する領域は、第二非対称開口部56である。
第二非対称開口部56は、前記した第一非対称開口部51と同一の断面形状であるが、位置の位相が180°ずれている。
【0038】
被挿入開口40の各領域を全体的に見渡すと、片持ち状に突出した二部材57,58が対向して設けられた形状をしている。
【0039】
把手部材6は、樹脂、金属、木その他の素材によって作られたものであり、筒状をしている。
図6は、把手部材の斜視図(a)とその端面の拡大図(b)及びA−A断面図(c)である。
把手部材6は、前記した様に筒状をしているが、端部近傍には断面形状がカム面を呈している部位がある。即ち当該カム形成部60は、一定の回転方向に進むにつれて厚さがしだいに増加している。従ってこれを展開すると、傾斜面を形成している。
【0040】
また把手部材6の端面近傍には鋸歯状の突起部61が設けられている。突起部61は、断面形状が三角形の鉤状突起が多数並べられたものである。鉤状突起は、一方の傾斜面の傾斜が他方に比べて緩い。把手部材6の鋸歯状の突起部61の位置は、ドアハンドルを組み立てた状態において、前記した短軸側構造部材11の軸部5に設けられた鉤状の突起41と係合し得る位置である。
【0041】
次に本実施形態のドアハンドルの組み立て方法について説明する。
図7、図8は、組み立ての際の各部材の姿勢を示すドアハンドルの正面図とこの状態における各部の断面図を示す。
本実施形態のドアハンドル1は、図2の様に、短軸側構造部材11の軸部5に把手部材6を装着する。続いて長軸一体側構造部材10が短軸側構造部材11に対して90°回転した姿勢となる姿勢に保持して、長軸一体側構造部材10側の挿入片15を短軸側構造部材11側の被挿入開口40に挿入する。そして長軸一体側構造部材10と短軸側構造部材11を相対的に回転し、長軸一体側構造部材10と短軸側構造部材11の柱状部17を同一平面に揃える。
【0042】
ここで本実施形態では、挿入片15と被挿入開口40の形状が特殊であるから、長軸一体側構造部材10を短軸側構造部材11に対して90°回転した姿勢でなければ、挿入片15を短軸側構造部材11の被挿入開口40に挿入することができない。
また挿入自体は、長軸一体側構造部材10が短軸側構造部材11に対して90°回転した姿勢であれば可能であるが、正規の方向に90°回転した姿勢でなければ長軸一体側構造部材10を回転することができない。
【0043】
即ち本実施形態で採用する被挿入開口40は、前記した様に片持ち状に突出した二部材57,58が対向して設けられた形状をしている。
そして二部材57,58の幅は、挿入片15の大断面積部20の円弧部22の直径よりも狭い。そのため大面積の円弧部22の向きが二部材57,58の向きに一致すると、大断面積部20の円弧部22が二部材57,58と衝突し、挿入片15を短軸側構造部材11の被挿入開口40に挿入することができない。
【0044】
一方、挿入片15は、二面が削り取られた形状をしている。即ち前記した様に先端の大断面積部20に、切り欠き部21が設けられ、続く小断面積部25は大断面積部20の切り欠き部21間の幅を直径とする円であり、さらに続く第一非対称断面部26と第二非対称断面部35には短直線部28と長直線部32があって当該部分も切り欠き状となっているから、当該切り欠き状の部位を被挿入開口40の二部材57,58に面した姿勢とする場合に限り、挿入片15を短軸側構造部材11の被挿入開口40に挿入することができる。
【0045】
また挿入片15は、所謂二面取り形状であり、対する被挿入開口40は、二部材57,58が対向して突出しているから、挿入片15が180°回転した姿勢であっても被挿入開口40に挿入することができる。
しかしながら本実施形態では、正規の姿勢でなければ長軸一体側構造部材10を回転することができない。この理由については後記する。
【0046】
組み立て手順の説明に戻ると、長軸一体側構造部材10を短軸側構造部材11に対して図2の様に正規に90°回転した姿勢(反時計方向に90°回転)で把手部材6に挿入し、挿入片15が被挿入開口40に入り、挿入片15の先端が被挿入開口40の奥に突き当たると、図7の様に、挿入片15の大断面積部20が被挿入開口40の大開口面積部46に在る。また挿入片15の小断面積部25が被挿入開口40の小開口面積部47に在る。
また挿入片15の第一非対称断面部26は、被挿入開口40の第一非対称開口部51に、挿入片15の第二非対称断面部35は、被挿入開口40の第二非対称開口部56に位置する。
【0047】
そして挿入片15を短軸側構造部材11の被挿入開口40に挿入した後、長軸一体側構造部材10と短軸側構造部材11を特定の方向に向かって相対的に回転し、長軸一体側構造部材10と短軸側構造部材11の柱状部17を同一平面に揃える。
その結果、被挿入開口40の中で挿入片15が回転し、図7の状態から図8の状態に至る。
即ち挿入片15の大断面積部20は被挿入開口40の大開口面積部46に在るが、大断面積部20の円弧部22の直径は、被挿入開口40の二部材57,58の幅と等しいので、挿入片15の大断面積部20は被挿入開口40の大開口面積部46で回転することができる。
同様に挿入片15の小断面積部25は被挿入開口40の小開口面積部47に在るが、小断面積部25の直径は、被挿入開口40の二部材57,58の幅と等しいので、挿入片15の小断面積部25は被挿入開口40の小開口面積部47で回転することができる。
【0048】
また挿入片15の第一非対称断面部26は、被挿入開口40の第一非対称開口部51に、挿入片15の第二非対称断面部35は、被挿入開口40の第二非対称開口部56に位置するが、挿入片15を回転させると、被挿入開口40が僅かに開いて挿入片15の回転を許す。
即ち挿入片15の第一非対称断面部26及び第二非対称断面部35は、円弧部27とカム部29とを持つ。そして円弧面27の直径及びカム部29の基礎円は、被挿入開口40の第一非対称開口部51及び第二非対称開口部56の幅と略等しいが、カム部29は、回転に応じて基礎円から外側に膨出している。
そのため挿入片15を回転させると、被挿入開口40の内面を押すこととなる。しかしながら被挿入開口40は、前記した様に片持ち状に突出した二部材57,58が対向して設けられた形状をしており、且つ第一非対称開口部51及び第二非対称開口部56は、いずれも開放端寄りの位置に設けられているから、僅かな力で撓む。その結果、被挿入開口40の内面が押し広げられ、挿入片15が回転する。
【0049】
そしてさらに回転すると、遂には図8の様に挿入片15の突出部31が第一非対称開口部51及び第二非対称開口部56の部材の端面と当接し、これ以上の回転が阻止される。
この回転姿勢のとき、挿入片15の係合凹部30が被挿入開口40のロック部55の位置に至る。そのためロック部55が自己の弾性力によって内側に移動し、係合凹部30と係合する。即ち挿入片15と被挿入開口40とによって嵌合構造部13が完成する。
その結果、挿入片15は正逆いずれの方向にも回転できない状態となる。
なおロック部55が係合凹部30に係合する際にはパチンという挿入音が発生する。
【0050】
またこの状態においては、長軸一体側構造部材10と短軸側構造部材11は引き抜き方向の移動も阻止される。
即ち前記した様に、挿入片15の大断面積部20は被挿入開口40の大開口面積部46に在り、挿入片15の小断面積部25は被挿入開口40の小開口面積部47に在るが、挿入片15が相対的に回転されたことにより、挿入片15の大断面積部20の円弧部22が、小開口面積部47の二部材57,58の位置の裏面に重なる。そのため長軸一体側構造部材10と短軸側構造部材11を互いに引くと、挿入片15の大断面積部20の円弧部22が、小開口面積部47の二部材57,58と接し、引き抜き方向に移動しない。
【0051】
以上説明した手順は、長軸一体側構造部材10と短軸側構造部材11との接合前の姿勢が適正であり、且つ両者を適正な方向に回転した場合であり、この場合は、回転によって挿入片15の係合凹部30がロック部55の位置に至り、ロック部55が係合凹部30と係合する。
しかし接合前の挿入姿勢が適切でなかったり、回転方向が誤っていた場合は、上記の様にはならず、挿入片の係合凹部30がロック部材55の位置に至ることはない。
図9は、接合前の挿入姿勢が適切でなかったり、回転方向が誤っていた場合の挙動を示すドアハンドルの正面図とこの状態における各部の断面図である。
【0052】
この様な誤りがある場合は、例えば挿入片15側の回転によって突出部31の背面側(長直線部32)が被挿入開口40の第一非対称開口部51,第二非対称開口部56の二部材57,58と衝突し、挿入片15の係合凹部30がロック部55の位置に至る前に回転不能となる。
そのため本実施形態のドアハンドル1では、組み立て間違いが生じない。
【0053】
前述の様に、長軸一体側構造部材10と短軸側構造部材11との接合前の姿勢が適正であり、且つ両者を適正な方向に回転した場合に限り、回転によって挿入片の係合凹部30がロック部55の位置に至る。そしてロック部55が係合凹部30と係合し、係合音が発生する。作業者は、係合音が確認されると、続いて把手部材6を回転させる。
図10は、組み立ての際の各部材の姿勢を示すドアハンドルの正面図とこの状態における各部の断面図を示し、把手部材を回転した時の状態を示す。
図11は、把手部材を回転した時の把手部材と短軸側構造部材との関係をしめし、(a)は回転前の断面図であり、(b)は回転後の断面図である。
【0054】
把手部材6を回転させると、把手部材6のカム形成部60が被挿入開口40の二部材57,58の位置に至り、回転に応じて被挿入開口40の二部材57,58を締めつける。即ちカム面を呈している部位(カム形成部60)は、一定の回転方向に進むにつれて厚さがしだいに増加しているので、被挿入開口40の二部材57,58はカム面によって内面方向に押圧される。その結果、ロック部55が内面方向に押圧され、挿入片15の係合凹部30からの離脱が阻止される。
またカム形成部60によって被挿入開口40が締めつけられるので、把手部材6と構造部材10,11との隙間が減少し、両者のがたつきが解消される。
【0055】
また本実施形態では、短軸側構造部材11の軸部5に鉤状の突起41が設けられ、把手部材6の相当する位置には鋸歯状の突起部61が設けられている。そのため短軸側構造部材11の鉤状の突起41と、把手部材6の鋸歯状の突起部61が係合し、逆転阻止機構を構成している。また回転可能な方向は、把手部材6と短軸側構造部材11との結合強度が増加する方向に合致している。そのため使用者は把手部材6を握り、回転し易い方向に回転させ、さらに絞りあげて回転不能な状態まで回転させると、把手部材6と構造部材11との隙間が皆無となり、がたつきが解消されると共に把手部材6が正逆いずれの方向にも回転できない状況となる。
この様に把手部材6を回転不能な位置まで回転させることにより、本実施形態のドアハンドルの組み立てが完了する。
【0056】
以上説明した実施形態は、ドアに一体的に固定されてドアとの相対移動が無い構造のドアハンドルを例に上げたが、レバーハンドルの様にドアに対して相対移動する部材を備えたドアハンドルにも本発明を適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0057】
【図1】図1は、本発明の実施形態のドアハンドルの分解斜視図である。
【図2】図1のドアハンドルの組み立て工程を示す斜視図である。
【図3】図2に次ぐ組み立て工程を示す斜視図である。
【図4】(a)は、本発明の実施形態のドアハンドルで採用する挿入片の拡大斜視図であり、(b)(c)(d)(e)は各部の断面図である。
【図5】(a)は、本発明の実施形態のドアハンドルで採用する短軸側構造部材の拡大斜視図であり、(b)(c)(d)(e)(f)は各部の断面図である。
【図6】把手部材の斜視図(a)とその端面の拡大図(b)及びA−A断面図(c)である。
【図7】組み立ての際の各部材の姿勢を示すドアハンドルの正面図とこの状態における各部の断面図である。
【図8】組み立ての際の各部材の姿勢を示すドアハンドルの正面図とこの状態における各部の断面図である。
【図9】接合前の挿入姿勢が適切でなかったり、回転方向が誤っていた場合の挙動を示すドアハンドルの正面図とこの状態における各部の断面図である。
【図10】組み立ての際の各部材の姿勢を示すドアハンドルの正面図とこの状態における各部の断面図を示し、把手部材を回転した時の状態を示す。
【図11】把手部材を回転した時の把手部材と短軸側構造部材との関係を示し、(a)は回転前の断面図であり、(b)は回転後の断面図である。
【図12】一般的なドアハンドルの構造を示す斜視図である。
【符号の説明】
【0058】
1 ドアハンドル
2,3 エンド部
5 軸部
6 把手部材
10 長軸一体側構造部材
11 短軸側構造部材
13 嵌合構造部
15 挿入片
20 大断面積部
21 切り欠き部
25 小断面積部
28 短直線部
30 係合凹部
32 長直線部
40 被挿入開口
41 鉤状の突起
46 大開口面積部
47 小開口面積部
55 ロック部
57,58 二部材
60 カム形成部
61 突起部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸部の両端にエンド部があり、軸部の周囲であってエンド部同士の間に把手部材が装着されたドアハンドルにおいて、少なくとも一方のエンド部と軸部の全部又は一部が一体化された構造部材と、少なくとも他方のエンド部が設けられたもう一つの構造部材と、把手部材とを備え、二つの構造部材は嵌合構造部によって結合され、当該嵌合構造部は一方の構造部材に設けられた挿入片と、他方の構造部材に設けられた被挿入開口によって構成され、前記被挿入開口にはロック部が設けられ、前記挿入片は被挿入開口に挿入された状態で回動可能であり、挿入片と被挿入開口とが特定の回転位置にあるときにロック部が挿入片の一部と係合して挿入片の回転を阻止し、且つ前記特定の回転位置にあるときには構造部材同士の軸方向への離脱が阻止され、把手部材は筒状であり、把手部材の内面の一部がロック部を押圧することによってロック部が挿入片から離脱することが阻止されることを特徴とするドアハンドル。
【請求項2】
挿入片には回転方向当接部材が設けられ、被挿入開口には被当接部があり、挿入片を挿入して回転すると挿入片の回転方向当接部材が被挿入開口の被当接部と当接してそれ以上の回転が阻止され、且つ当該回転位置においてロック部が挿入片の一部と係合することを特徴とする請求項1に記載のドアハンドル。
【請求項3】
挿入片及び/又は被挿入開口は中心に対して非対称形状であり、挿入片を被挿入開口に挿入して一方方向に回転した時にロック部が挿入片の一部と係合する特定の回転角度に至り、逆方向に回転した場合は、挿入片と被挿入開口のいずれかの部位が衝突して前記特定の回転角度に至ることを阻止することを特徴とする請求項1又は2に記載のドアハンドル。
【請求項4】
挿入片は軸線に垂直方向の断面形状が軸方向の部位に応じて異なり、断面積が大きな大断面積部と断面積が小さな小断面積部があり、被挿入開口についても軸線に垂直方向の開口形状が軸方向の部位に応じて異なり、開口面積が大きな大開口面積部と開口面積が小さな小開口面積部があり、挿入片が所定の挿入位置にあるときには挿入片の大断面積部及び小断面積部はそれぞれ被挿入開口の大開口面積部と小開口面積部に位置し、さらに挿入片には特定の回転姿勢の時に挿入片の挿入を許す切り欠き部が設けられていることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載のドアハンドル。
【請求項5】
把手部材の内面には傾斜部又は凸部が設けられ、前記傾斜部または凸部によってロック部を押圧することを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載のドアハンドル。
【請求項6】
把手部材は一定の回転方向に回転させた場合に構造部材との結合強度が増加し、把手部材は逆転阻止機能を備え、把手部材は結合強度が増加する方向にのみ回転可能であることを特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載のドアハンドル。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2008−202242(P2008−202242A)
【公開日】平成20年9月4日(2008.9.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−36754(P2007−36754)
【出願日】平成19年2月16日(2007.2.16)
【出願人】(000147442)株式会社西製作所 (28)