説明

ドアロックシステム

【課題】人体の静電気が所定電圧以下でなければ作業者が入室することができないドアロックシステムを提供する。
【解決手段】ドアロックシステム1は、ロック装置2と除電装置3とを備えている。ロック装置2は、人体9に帯電する静電気の電圧に基づいてドアの施解錠を行うロック機構部5およびロック機構部5に施解錠信号を供給する信号発生部4を有している。除電装置3は、人体9が接触するための接触部10、人体9が接触部10に触れることにより人体9に帯電する静電気の有無もしくは大きさを表示する表示部13および人体9に帯電した静電気を放電する放電部11を有している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、ドアロックシステム、さらに詳しくは、半導体等の静電気に敏感な装置が室内に存在する場合に用いられるドアロックシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
半導体等の静電気に敏感な装置の作業現場等において、静電気の発生により半導体の破壊や誤作動といった問題が生じる。すなわち、製造工程、組立工程、検査工程及び出荷工程等の生産ラインの様々な工程で静電気による精密機器の破壊が起これば、生産収率に直接影響を与える。そこで、人体に静電気を帯びた状態で作業者が自由に入室することができないドアロックシステムが望まれている。
【0003】
なお、特許文献1に、ドアロックシステムが提案されている。
【特許文献1】特開2003−74226号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献1のドアロックシステムでは、人体に静電気が帯びた状態であっても、カードキーなどによりドアを解錠することができる。これにより、人体が相対的に高い電圧の静電気を帯びたままの状態でも作業者の入室が可能となり、作業者に帯電する静電気が室内の精密機器などに悪影響を及ぼすことがあり問題となる。
【0005】
この発明の目的は、人体の静電気が所定電圧以下でなければ作業者が入室することができないドアロックシステムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明によるドアロックシステムは、人体が接触するための接触部、人体が接触部に触れることにより人体に帯電する静電気の有無もしくは大きさを表示する表示部および人体に帯電した静電気を放電する放電部を有する除電装置と、人体に帯電する静電気の電圧に基づいてドアの施解錠を行うロック機構部およびロック機構部に施解錠信号を供給する信号発生部を有するロック装置とを備えていることを特徴とするものである。
【0007】
除電装置は、据え置き型とされてもよく、壁などに埋め込む埋め込み型とされてもよい。
【0008】
接触部は、金属プレートなどの導電性の物質で形成される。また、接触部には、人体の帯電圧を測定するための電圧測定器が備えられる。
【0009】
放電部は、アース線が電子スイッチを介して接地されており、人体に帯電した静電気を接触部を介して放電することができるものとされる。これにより、空気中に放電するよりも、人体の確実な除電が要求される半導体製造等の現場において、より確実に静電気の除去を行うことができる。
【0010】
電子スイッチは、人体の帯電圧測定時にはOFF状態となっており、測定結果により人体が入室不可と判定された場合にON状態となる。電子スイッチがON状態になると、放電部が放電状態となり人体の電圧が放電される。
【0011】
表示部は、光によって除電の有無や大きさを表示する帯電表示灯と、帯電表示灯を点灯させる表示点灯回路と、人体が入室可能か否かを表示する入室許可表示灯とを備える。
【0012】
帯電表示灯は、例えば、LED(Light Emitting Diode)や液晶表示パネルなどの光により静電気の有無や大きさが確認できるものとされる。視認することにより作業者の除電が行われたこと及び帯電の有無を即座に確認することができる。
【0013】
帯電表示灯は、例えば、人体に静電気を帯びていない状態あるいは人体に帯びている静電気が低い状態(LOW状態)であることを示すLEDと、人体に帯びている静電気が高い状態(HIGH状態)であることを示すLEDと、人体に帯びている静電気がLOW状態とHIGH状態との中間の状態(MIDDLE状態)であることを示すLEDとから構成されてもよく、これに限定されるものではない。
【0014】
LOW状態を感知する電位レベルは、例えば、100V以下とされ、HIGH状態を感知する電位レベルは、例えば、100V以上とされ、室内の精密機器などの装置に応じて適宜決定される。
表示点灯回路は、人体が接触部に接触した際に、その帯電圧の電位レベルに応じて帯電表示灯を点灯させるものとされる。また、表示点灯回路は、帯電表示灯の点灯とともにブザーなどの音によって人体に帯びている静電気の状態を示すようにしてもよい。
【0015】
入室許可表示灯は、人体が入室可能な状態(OK状態)であることを示すランプと、人体が入室不可能な状態(NG状態)であることを示すランプとから構成される。人体が入室可能である場合、LOW状態を示すLEDが点灯するとともに、OK状態であることを示すランプが点灯する。また、人体が入室不可能である場合、HIGH状態またはMIDDLE状態を示すLEDが点灯するとともに、NG状態であることを示すランプが点灯する。
【0016】
ロック装置は、信号発生部およびロック機構部の他に、カードキーに対応する磁気読取部などを備えてもよい。
【0017】
信号発生部は、ロック機構部に施錠あるいは解錠のいずれかに対応した向きの信号を出力し、これにより、ロック機構部を作動させる信号出力部と、除電装置からの情報によって施錠信号および解錠信号を相互に切り換える信号を信号出力部に供給する信号切換部とを備える。ドアを施錠する場合に、すでにドアが施錠状態であれば、信号発生部はロック機構部に信号を供給しなくてもドアを施錠状態に維持することができるので、ドアがすでに施錠状態である場合、信号発生部は信号をロック機構部に供給しなくてもよくまた施錠に対応した信号を供給してもよい。
【0018】
ロック機構部は、例えば、ドアの外面もしくは内面に取り付けられてもよく、ドアに内蔵されてもよく、ドアを施解錠することができるものとされる。ロック機構部は、例えば、信号発生部から供給される信号により施解錠方向(突出及び後退方向)に動く鉄心を備えたソレノイドにより構成される。ソレノイドは、信号発生部からの信号により、鉄心を突出させてドアの施錠をあるいは鉄心を後退させてドアの解錠を行うことができる。
【0019】
除電装置およびロック装置に供給する電源は、例えば、商用電源に対応したACアダプターや太陽電池、さらにバッテリー等いずれの使用も可能である。
【0020】
従来のドアロックシステムは、ドアが除電装置に連動して解錠されるように構成されていなかった。したがって、人体の静電気が除電装置により除去されたか否かに関わらず、カードキーなどを使用することでドアを解錠することができる。そうすると、人体が相対的に高電圧の静電気を帯びたままの状態で入室することが可能となり、この人体の静電気が室内の半導体などの精密機器を故障させる原因となる。
【0021】
そこで、この発明のドアロックシステムのように、ドアが人体に帯電する静電気の電圧の状況に連動して解錠されるようにドアロックシステムを構成する。すなわち、除電装置によると、人体が接触部に接触したとき、接触部が人体の帯電圧を測定する。この結果、人体の帯電圧が100V以下と判定された場合、表示部がLOW状態を示すLEDを点灯させるとともにOK状態を示すランプを点灯させる。それと同時に、信号発生部が、ロック機構部に解錠に対応した信号を供給する。そうすると、ドアが解錠される。
【0022】
一方、人体の帯電圧が100V以下でないと判定された場合、表示部がHIGH状態を示すLEDまたはMIDDLE状態を示すLEDを点灯させるとともに、NG状態を示すランプを点灯させる。それと同時に、自動的に放電部の電子スイッチがON状態となり人体の除電動作が行われる。除電動作の結果、人体の帯電圧が100V以下となると、表示部がLOW状態を示すLEDを点灯させるとともにOK状態を示すランプを点灯させる。それと同時に、信号発生部が、ロック機構部に解錠に対応した信号を供給する。そうすると、ドアが解錠される。
【0023】
また、人体が帯電している状態において、作業者が接触部に触れずドアを解錠しようとしても、ドアロックシステムに備えられた除電装置により静電気を放電させる以外にドアを解錠することができないので、人体に静電気を帯びたまま作業者が入室することが防止される。
【発明の効果】
【0024】
この発明のドアロックシステムによると、ドアロックシステムに備えられた除電装置により人体の静電気が所定電圧以下と判定されなければ、作業者がドアを解錠することができないので、人体に比較的高い電圧の静電気を帯びたままの状態で作業者が入室することを防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
以下、図面を参照して、この発明の実施形態について説明する。
【0026】
図1は、この発明によるドアロックシステムの全体構成の一例を示している。
この発明によるドアロックシステム(1)は、ロック装置(2)と除電装置(3)とを備えている。
【0027】
ロック装置(2)は、施解錠信号を供給するための信号発生部(4)と、信号発生部(4)からの信号によりドアを施解錠するロック機構部(5)とを備えている。同図にロック装置(2)と除電装置(3)に電力を供給する電源(6)が示されている。また、同図に回路配線が二点鎖線で示されている。
【0028】
信号発生部(4)は、ドアの外面に取り付けられたロック機構部(5)に施錠あるいは解錠のいずれかに対応した向きの信号を出力し、これにより、ロック機構部(5)を作動させる信号出力部(4a)と、除電装置(3)からの情報によって施錠信号および解錠信号を相互に切り換える信号を信号出力部(4a)に供給する信号切換部(4b)とを備えている。
【0029】
ロック機構部(5)は、信号発生部(4)からの信号により施解錠方向(突出及び後退方向)に動かされる鉄心(7)を備えたソレノイド (8)で構成されている。ソレノイド (8)の鉄心(7)が後退方向に動かされるとドアは解錠され、ソレノイド (8)の鉄心(7)が突出方向に動かされるとドアは施錠される。
【0030】
除電装置(3)は、人体(9)が接触するための接触部(10)と、人体(9)が接触部(10)に触れることにより人体(9)に帯びている静電気が放電される放電部(11)と、人体(9)に帯電する静電気の有無および大きさを確認することができる表示部(13)とから構成されている。除電装置(3)は、壁に埋め込まれて取り付けられている。
【0031】
接触部(10)は、導電性の金属プレートが用いられており、人体(9)がこの接触部(10)に接触すると接触部(10)が帯電するものとされている。また、接触部(10)には、人体(9)の帯電圧を測定するための電圧測定器(12)が備えられている。
【0032】
放電部(11)には、アース線(15)が電子スイッチを介して接地されている。人体(9)が接触部(10)に接触すると、人体(9)に帯びている静電気が接触部(10)を介して放電部(11)により放電される。
【0033】
電子スイッチは、人体(9)の帯電圧測定時にはOFF状態となっており、測定結果により人体(9)が入室不可と判定された場合、自動的にON状態となる。電子スイッチがON状態になると、放電部(11)が放電状態となり人体(9)の静電気が放電される。人体(9)の帯電圧測定時から人体(9)の静電気が放電されるまでの間は、長くても約5秒間とされている。
【0034】
図2に、表示部(13)が示されており、表示部(13)は、3つの帯電表示灯(16)と表示点灯回路(17)と2つの入室許可表示灯(18)とを備えている。同図(a)は、3つの帯電表示灯(16)と表示点灯回路(17)とを示しており、同図(b)は、入室許可表示灯(18)を示している。
【0035】
帯電表示灯(16)は、人体(9)に帯びている静電気が低い状態(LOW状態)であることを示すLED(Light Emitting Diode)(16a)と、人体(9)に帯びている静電気が高い状態(HIGH状態)であることを示すLED(16b)と、人体(9)に帯びている静電気がLOW状態とHIGH状態との中間の状態(MIDDLE状態)であることを示すLED(16c)とから構成されている。
【0036】
表示点灯回路(17)は、人体(9)の帯電状態に対応するいずれかのLED(16a)(16b)(16c)を点灯させるものである。すなわち、人体(9)が接触部(10)に触れた際、人体(9)に帯電している静電気が非常に低い場合あるいは人体(9)に静電気が帯電していない場合、LOW状態を示すLED(16a)が点灯する。また、人体(9)が接触部(10)に触れた際、人体(9)に帯電している静電気が高い場合、HIGH状態を示すLED(16b)が点灯する。これにより、人体(9)に帯びている静電気の有無および大きさが確認できる。
【0037】
入室許可表示灯(18)は、作業者が入室可能か否かを表示するものであり、人体(9)が入室可能な状態(OK状態)であることを示すランプ(18a)と、作業者が入室不可能な状態(NG状態)であることを示すランプ(18b)とから構成されている。作業者が入室可能である場合、LOW状態を示すLED(16a)が点灯するとともに、OK状態であることを示すランプ(18a)が点灯する。また、作業者が入室不可能である場合、HIGH状態またはMIDDLE状態を示すLED(16b)(16c)が点灯するとともに、NG状態であることを示すランプ(18b)が点灯する。
【0038】
図3に示すように、除電装置(3)によると、人体(9)が接触部(10)に接触することにより、接触部(10)が人体(9)の帯電圧を測定し、その帯電圧が100V以下でないと判定された場合、その結果を表示部(13)に出力する。初期状態では、表示部(13)は、HIGH状態を表示する。放電が開始されて放電量が時間とともに増加するのに伴って人体(9)に帯びている静電気がある程度減少すると、表示部(13)は、MIDDLE状態を表示し、放電がさらに進んで人体(9)に帯びている静電気が所定量を下回る(帯電量がLOWレベルになる)と、表示部(13)は、LOW状態を表示する。この結果、初期状態でHIGH状態表示LED(16b)側にあったリレー(実線で示す)(13a)は、二点鎖線で示すリレー(13b)のようにLOW状態表示LED(16a)側に切り換えられる。また、人体(9)の帯電圧が100V以下と判定された場合、除電動作を経ずに、初期状態でHIGH状態表示LED(16b)側にあったリレー(実線で示す)(13a)は、二点鎖線で示すリレー(13b)のようにLOW状態表示LED(16a)側に切り換えられる。
【0039】
一方、ロック装置(2)では、通常、信号発生部(4)の信号出力部(4a)から、施錠信号がロック機構部(5)に出力されており、信号切換部(4b)から切換信号が信号出力部(4a)に入力された場合に、解錠信号がロック機構部(5)に出力される。信号切換部(4b)は、除電装置(3)の表示部(13)のLOW状態を表示する部分と接続されており、HIGH状態表示LED(16b)側にあったリレー(13a)がLOW状態表示LED(16a)側に切り換えられると、この操作に伴って、施錠から解錠への切換信号を信号出力部(4a)に出力する。したがって、放電が進んで人体(9)に帯びている静電気が所定量を下回る場合や人体(9)に静電気が帯電していない場合、LOW状態表示LED(16a)が点灯するとともに、図3に破線で示すLOW状態表示LED(16a)、信号切換部(4b)、信号出力部(4a)、解錠信号およびロック機構部(5)のルートにより、ロック機構部(5)が解錠される。
【0040】
図4に、ドアロックシステム(1)の動作のフローチャートが示されている。
【0041】
ドアロックシステム(1)の電源がオンにされると、ドアロックシステム(1)が作動し(S1)、初期状態として、ドアが施錠状態とされて、入室不許可表示が表示される(S2)とともに、除電装置(3)が作動して(S3)、その表示部(13)に除電未実施を示すHIGH状態が表示される(S4)。人体(9)が接触部(10)に接触すると(S5)、人体の帯電圧が測定される(S6)。人体の帯電圧が100V以下であると判定されると(S7)、LOW状態を示すLED(16a)が点灯し、これに伴い入室許可を示すランプ(18a)が点灯するとともに、ドアが解錠状態となり(S8)、作業者が入室することが可能となる(S9)。ここで、人体の帯電圧が100V以下でないと判定された場合、人体の帯電圧が100V以下になるまで施錠状態が継続され、除電動作が行われる(S10)。除電が行われて人体の帯電圧が100V以下になると(S11)、LOW状態を示すLED(16a)が点灯し、これに伴い入室許可を示すランプ(18a)が点灯するとともに、ドアが解錠状態となる(S8)。作業者が入室すると(S9)、ドアが再び施錠され(S12)、次の入室者を待つ状態であるステップ(S4)に戻る。
【0042】
こうして、人体の静電気が100V以下の場合に限りドアを解錠することができるので、相対的に高い電圧の静電気を人体(9)に帯びたまま、作業者が入室することを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】図1は、この発明によるドアロックシステムの全体構成を示す概念図である。
【図2】図2は、除電装置に備えられる表示部を示す概略図である。
【図3】図3は、この発明のドアロックシステムの動作を示すブロック図である。
【図4】図4は、この発明のドアロックシステムの動作を示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0044】
(1) ドアロックシステム
(2) ロック装置
(3) 除電装置
(4) 信号発生部
(5) ロック機構部
(9) 人体
(10) 接触部
(11) 放電部
(13) 表示部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
人体が接触するための接触部、人体が接触部に触れることにより人体に帯電する静電気の有無もしくは大きさを表示する表示部および人体に帯電した静電気を放電する放電部を有する除電装置と、人体に帯電する静電気の電圧に基づいてドアの施解錠を行うロック機構部およびロック機構部に施解錠信号を供給する信号発生部を有するロック装置とを備えていることを特徴とするドアロックシステム。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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