説明

ドア用錠前のエスカチオン

【課題】カード挿入口から入り込んだ異物等に起因する内部電気部品への悪影響を抑制することができるドア用錠前のエスカチオンを提供する。
【解決手段】本発明に係るドア用錠前のエスカチオンは、ドアの外側面に固定される室外側装飾板本体22と、室外側装飾板本体22にスリット状に形成されて前記ドアの内部に向けてカードキーが挿入されるカード挿入口21と、カード挿入口21を開閉するカバー26と、を備えていることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ドア用錠前のエスカチオンに関し、例えば、ホテルの各客室用ドアにそれぞれ取り付けられたドア用錠前のエスカチオンに関する。
【背景技術】
【0002】
近年のホテルの各客室用ドアにあっては、シリンダーキー方式のドア用錠前では、客室番号を示すキーホルダーが大型化してしまう上、紛失やマスターキーの管理といった利便性の不具合から、磁気カードやICカードを利用したものが普及しつつある(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
図7及び図8は、このようなカード方式のドア用錠前の一例を示し、図7は廊下側(室外側)から見たドア要部の斜視図、図8は客室側(室内側)から見たドア要部の斜視図である。
【0004】
尚、当業者用語としての「エスカチオン」は、普通一般にドアに取り付けられた錠前の機構をカバーする装飾板としての意味合いを有する。
【0005】
図7において、客室と廊下との間を区画・連通するドア1の扉木口2には、フロント板3が固定されていると共に、このフロント板3の表面から常時は突出してドア開口縁部に設けられた係合穴(図示せず)と係合することによりドア閉成状態を維持するためのラッチボルト4と、フロント板3の表面から常時は埋没し且つ突出したときにドア開口縁部に設けられたロック穴(図示せず)と係合することによりドアロック状態を維持するための錠ボルトであるデッドボルト5と、が設けられている。
【0006】
また、ドア1の室外側には、カードキーとしての磁気カード6を挿入するカード挿入口7aを形成した室外側装飾板本体7と、この室外側装飾板本体7の上下開口端を閉成するキャップ8,9と、ドア1の開閉操作並びにラッチボルト4の出没操作を行うためのレバーハンドル10と、を備えている。
【0007】
図8において、ドア1の室内側には、室内側装飾板本体11と、この室内側装飾板本体11の上下開口端を閉成するキャップ12,13と、ドア1の開閉操作並びにラッチボルト4の出没操作を行うためのレバーハンドル14と、デッドボルト5によるドアロック・アンロックを操作するサムターン15と、を備えている。また、室内側装飾板本体11の内部には、図示を略するが、磁気カード6の読取装置、磁気カード6の読み取りに連動したデッドボルト5のドアロック・アンロックを実行するロック機構部、電源(バッテリ)、制御回路部等が設けられている。さらに、室内側装飾板本体11には、ドア1を貫通して室外側装飾板本体7の裏面側に設けられた雌ネジ部(図示せず)と螺合することでドア1を挟むように室内側装飾板本体11と室外側装飾板本体7とをドア1に固定するための固定用ネジ16が設けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特許第4111759号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、上述したドア用錠前のエスカチオンにあっては、室外側装飾板本体7に形成されたカード挿入口7aが単なる開口であるため、例えば、エスカチオンが屋外に設置されていた場合にあっては雨水等が内部に浸入し易く、また、エスカチオンがホテル等の屋内に設置されていた場合には廊下の清掃時やシーツ交換時に発生した塵埃等が内部に入り込み易いという問題が生じていた。
【0010】
さらに、季節や地域、あるいはエアコンの使用等によって室内側と室外側とで温度差が有る場合には、カード挿入口7aから入り込んだ空気温度と室外側装飾板本体7の内部温度(又は室内空気温度)との差によって室外側装飾板本体7の内部に結露が発生し易いという問題が生じていた。
【0011】
そして、このようにエスカチオンの内部に侵入した雨水・塵埃や内部に発生した結露といった異物は、電源や制御回路等の電気部品に悪影響を及ぼす要因になるといった問題があった。
【0012】
本発明は、上記した課題を解決すべくなされたものであり、カード挿入口から入り込んだ異物に起因する内部電気部品への悪影響を抑制することができるドア用錠前のエスカチオンを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明のドア用錠前のエスカチオンは、ドアの外側面に固定される室外側装飾板本体と、該室外側装飾板本体にスリット状に形成されて前記ドアの内部に向けてカードキーが挿入されるカード挿入口と、該カード挿入口を開閉するカバーと、を備えていることを特徴とする。
【0014】
これにより、常時は前記カバーによって前記カード挿入口を閉成することができ、該カード挿入口から異物等が入り込むのを防止し、電源や制御回路等の電気部品への悪影響を抑制することができる。
【0015】
また、本発明のドア用錠前のエスカチオンにおいて、前記室外側装飾板本体は上端に開口端を有し、該開口端を閉成するキャップを備え、該キャップに前記カード挿入口を開閉するカバーが回動可能に支持されていてもよい。
【0016】
この場合には、既存のキャップ付きエスカチオンへの装着が可能となり、汎用性を高めることができる。
【0017】
また、本発明のドア用錠前のエスカチオンにおいて、前記カバーには、前記カード挿入口に対向する位置にカードキー挿入用の開口が形成されていると共に、前記カードキーの挿入に連動して前記開口を裏面側から開閉するシャッターが設けられていてもよい。
【0018】
この場合には、前記カバーの開閉操作をすることなく、前記カードキーの操作を容易に行うことが可能となる。
【0019】
さらに、この際、前記シャッターは、前記カバーの裏面側に回動可能に設けられて前記開口を開閉するシャッター本体と、前記カバーの裏面側に回動可能に設けられて前記シャッター本体に当接する操作部材と、該操作部材を介して前記シャッター本体を開口閉成方向に付勢する付勢部材とを備えていてもよい。
【0020】
この場合には、前記カバーと前記室外側装飾板本体との対向間隔が狭くても前記カードキーの挿入・離脱操作に連動して前記開口を開閉することができる。
【発明の効果】
【0021】
本発明に係るドア用錠前のエスカチオンによれば、カード挿入口から入り込んだ異物等に起因する内部電気部品への悪影響を抑制することができる等、種々の優れた効果を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の一実施形態に係るドア用錠前のエスカチオンの正面図である。
【図2】本発明の一実施形態のドア用錠前のエスカチオンを示し、(A)はカバー閉成状態の要部の側面図、(B)はカバー開放状態の要部の側面図である。
【図3】本発明の一実施形態に係るドア用錠前のエスカチオンに適用されるキャップとカバーとの断面図である。
【図4】本発明の一実施形態に係るドア用錠前のエスカチオンに適用されるキャップの断面図である。
【図5】本発明の一実施形態に係るドア用錠前のエスカチオンに適用されるカバーの正面図である。
【図6】本発明の一実施形態に係るドア用錠前のエスカチオンに適用されるカバーの背面図である。
【図7】従来のドア用錠前のエスカチオンを示し、室外側エスカチオンを含むドア要部の斜視図である。
【図8】従来のドア用錠前のエスカチオンを示し、室内側エスカチオンを含むドア要部の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
次に、本発明の一実施形態に係るドア用錠前のエスカチオンについて、図面を参照して説明する。ここで、図1は本発明の一実施形態に係るドア用錠前のエスカチオンの正面図、図2は本発明の一実施形態のドア用錠前のエスカチオンを示し、(A)はカバー閉成状態の要部の側面図、(B)はカバー開放状態の要部の側面図、図3は本発明の一実施形態に係るドア用錠前のエスカチオンに適用されるキャップとカバーとの断面図、図4は本発明の一実施形態に係るドア用錠前のエスカチオンに適用されるキャップの断面図、図5は本発明の一実施形態に係るドア用錠前のエスカチオンに適用されるカバーの正面図、図6は本発明の一実施形態に係るドア用錠前のエスカチオンに適用されるカバーの背面図である。
【0024】
尚、以下に示す実施例は本発明のドア用錠前のエスカチオンにおける好適な具体例であり、技術的に好ましい種々の限定を付している場合もあるが、本発明の技術範囲は、特に本発明を限定する記載がない限り、これらの態様に限定されるものではない。
【0025】
図1に示すように、本実施の形態に係るエスカチオン20は、正面上部寄りにカードキー(例えば、ICカードや磁気カード)が挿脱可能なカード挿入口21が形成されていると共に上下に開口端が形成された室外側装飾板本体22と、室外側装飾板本体22の上下開口端を閉成するキャップ23,24と、ドア開閉操作並びにラッチボルト(図示せず)の出没操作を行うためのレバーハンドル(回動軸のみ断面図示)25と、を備えている。
【0026】
室外側装飾板本体22は、ドア(図示せず)の室外側に位置し、室内側に位置する室内側装飾板本体(図示せず)とドアを挟むように設けられ、ドアと室内側装飾板本体及び室外側装飾板本体22とは固定用ネジ16によって互いに固定される。
【0027】
キャップ23は、樹脂等の一体成形品により形成され、図2(A)に示すように、室外側装飾板本体22の上部寄り正面と両側面とを覆う閉成状態と、図2(B)に示すように、室外側装飾板本体22の上部寄りを開放する開放状態との間で回動可能なカバー26とを備えて構成されている。また、キャップ23は、従来技術で説明したキャップ8に換えて室外側装飾板本体22に装着することにより、既存の室外側のエスカチオンにカバー26を装着することができる。
【0028】
さらに、キャップ23には、図3及び図4に示すように、室外側装飾板本体22にキャップ23を支持させるために室外側装飾板本体22の両側面内壁に形成された被係合部(図示せず)と係合するランス状の係合脚部27と、カバー26の上端寄りを貫通する支持軸28の両端を支持する支持穴部29と、支持軸28の中央付近を支持する支持部30と、支持軸28の中央付近に巻き付けられてカバー26を閉成方向に付勢するコイルバネ部材31と、カバー26の最大開放位置を規定するようにカバー26と当接する傾斜当接面32と、が設けられている。
【0029】
カバー26は、図5及び図6に示すように、室外側装飾板本体22のカード挿入口21を含めた正面の上方を覆う正面カバー部33と、室外側装飾板本体22の両側面の上方を覆う側面カバー部34,35と、支持軸28の両端に固定支持される脚部36,37と、裏面側に形成された補強用のリブ38と、正面カバー部33に形成されて閉成状態にある時にカード挿入口21と対向してカードキーを挿脱可能な開口39とが一体に形成された樹脂の一体成形品により構成されている。なお、本例では、カバー26にカードキーを挿脱可能な開口39が形成されているが、この開口39は必ずしも形成されていなくてもよい。
【0030】
カバー26の裏面側には、室外側装飾板本体22の正面と当接することでカバー26の閉成位置を規定すると共にコイルバネ部材31の付勢によってカバー26の閉成方向の回動時の勢いによる傷付きや異音の発生を抑制するゴム等の弾性部材40とが設けられており、カバー26に開口39が形成されている場合には、この開口を常時は閉成してカードキーの挿入に連動して開口39を開閉するシャッター41が設けられる。
【0031】
この場合のシャッター41は、図3及び図5に良く示されているように、カバー26の裏面側に回動可能に設けられて開口39を開閉する板羽根状のシャッター本体42と、カバー26の裏面側にネジ固定されてシャッター本体42を回動可能に軸支する操作部材43と、操作部材43に保持されてシャッター本体42を開口閉成方向に付勢するコイルスプリング等の付勢部材44とを備えている。
【0032】
また、シャッター本体42は、操作部材43の中央付近に設けられた当接爪43aに回動可能に軸支され、その両端に設けられた軸部42aに付勢部材44の一端を当接することで常時開口閉成方向に付勢されている。
【0033】
上記した本実施の形態に係るエスカチオン20において、カバー26に開口39及びシャッター41が設けられていない場合には、カードキーを使用してユーザーが施錠又は解錠する際、カバー26の下縁部に指を引っ掛けてコイルバネ部材31の付勢に抗してカバー26を上方に回動させて開放し、カード挿入口21からカードキーを挿入する。そして、施錠又は解錠操作の終了後、カバー26から指を離すと、コイルバネ部材31の付勢によってカバー26は自動的に閉成状態へと復帰する。
【0034】
この場合、カード挿入口21にカードキーを挿入する間以外は、常時、カード挿入口21がカバー26によって覆われているため、カード挿入口21からの異物等の入り込みが抑制され、その入り込んだ異物等に起因する内部電気部品への悪影響を抑制することができる。
【0035】
一方、上記した本実施の形態に係るエスカチオン20において、カバー26に開口39及びシャッター41が設けられている場合には、カードキーを使用してユーザーが施錠又は解錠する際、カバー26を閉成状態としたままカードキーを開口39から挿入するだけで施錠又は解錠を行うことができる。
【0036】
この場合、開口39の裏面側にシャッター41が設けられているため、常時はシャッター41により開口39を閉成する一方、カードキーの挿入時にのみ開口39を開放することができ、カードキーの挿入を許容しつつ開口39からの異物の入り込みを抑制することができる。
【0037】
なお、上記した実施の形態では、上下の開口端を有する室外側装飾板本体22を備えたエスカチオン20において上側の開口端にキャップ23を装着することによりカバー26を取り付ける場合について説明したが、これは本発明の適用をこの場合に限定する趣旨ではなく、例えば、室外側装飾板本体にビスや接着剤等を使用してカバーを取り付けることにより、上下に開口端を有しない室外側装飾板本体に本発明のエスカチオンを適用することも可能である。
【符号の説明】
【0038】
20…エスカチオン
21…カード挿入口
22…室外側装飾板本体
23…キャップ
24…キャップ
25…レバーハンドル
26…カバー
39…開口
41…シャッター
42…シャッター本体
43…操作部材
43a…当接爪
44…付勢部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ドアの外側面に固定される室外側装飾板本体と、該室外側装飾板本体にスリット状に形成されて前記ドアの内部に向けてカードキーが挿入されるカード挿入口と、該カード挿入口を開閉するカバーと、を備えていることを特徴とするドア用錠前のエスカチオン。
【請求項2】
前記室外側装飾板本体は上端に開口端を有し、該開口端を閉成するキャップを備え、該キャップに前記カード挿入口を開閉するカバーが回動可能に支持されていることを特徴とする請求項1に記載のドア用錠前のエスカチオン。
【請求項3】
前記カバーには、前記カード挿入口に対向する位置にカードキー挿入用の開口が形成されていると共に、前記カードキーの挿入に連動して前記開口を裏面側から開閉するシャッターが設けられていることを特徴とする請求項1又は2に記載のドア用錠前のエスカチオン。
【請求項4】
前記シャッターは、前記カバーの裏面側に回動可能に設けられて前記開口を開閉するシャッター本体と、前記カバーの裏面側に回動可能に設けられて前記シャッター本体に当接する操作部材と、該操作部材を介して前記シャッター本体を開口閉成方向に付勢する付勢部材と、を備えていることを特徴とする請求項3に記載のドア用錠前のエスカチオン。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2011−184999(P2011−184999A)
【公開日】平成23年9月22日(2011.9.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−54153(P2010−54153)
【出願日】平成22年3月11日(2010.3.11)
【出願人】(390037028)美和ロック株式会社 (868)
【Fターム(参考)】