説明

ドア錠

【課題】 ラッチボルトが復帰する際に該ラッチボルト側に設けられたストッパが当り部に接当する際の接当音を小さくすることができるドア錠を提供する。
【解決手段】 ドア2に取り付けられる錠ケース3から出退自在とされると共にラッチスプリング21の付勢力によって突出するラッチボルト6を備え、このラッチボルト6は、ドア2を閉める際においてドア枠4側に設けられたストライク5に接当することによりラッチスプリング21の付勢力に抗して後退し、ドア2を閉め位置にしたときにラッチスプリング21の付勢力によって復帰すると共にラッチボルト6側に設けたストッパ22が該ラッチボルト6の突出方向Aの移動を規制する当り部15aに接当することにより突出位置に保持されるように構成されたドア錠において、前記ラッチボルト6の復帰時において、該ラッチボルト6の復帰速度を減速させる減速部材36を設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ドアに取り付けられるドア錠に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、ドアに取り付けられるドア錠として、ドアの自由端側に彫り込んで取り付けられる錠ケースから出退自在とされると共にラッチスプリングの付勢力によって突出するラッチボルトを備えているものがある(特許文献1参照)。
このドア錠にあっては、ラッチボルトは、ドアを閉める際においてドア枠側に設けられたストライクに接当することによりラッチスプリングの付勢力に抗して後退し、ドアを閉め位置にしたときにラッチスプリングの付勢力によって復帰してストライクのストライクボックスに挿入することでドアを閉め位置に保持する(ドアの開方向への移動を規制する)ように構成されている。
【0003】
また、ラッチボルトは、ラッチボルト側に設けられたストッパが、該ラッチボルトの突出方向への移動を規制する当り部に接当することにより突出した位置に保持される。
【特許文献1】特開2002−242492号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前記従来のドア錠にあっては、バネ板で形成された当り部にストッパを接当させるようにすることにより、ラッチボルトが復帰する際にストッパが当り部に接当する際の接当音を小さくするようにしているが、ラッチボルトが復帰する際には、ストッパは当り部に対してラッチボルトの出退方向で勢いよく接当するので、接当音を小さくするのに限界があった。
そこで、本発明は、前記問題点に鑑みて、ラッチボルトが復帰する際に該ラッチボルト側に設けられたストッパが当り部に接当する際の接当音を小さくすることができるドア錠を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
前記技術的課題を解決するために本発明が講じた技術的手段は、ドアに取り付けられる錠ケースから出退自在とされると共にラッチスプリングの付勢力によって突出するラッチボルトを備え、このラッチボルトは、ドアを閉める際においてドア枠側に設けられたストライクに接当することによりラッチスプリングの付勢力に抗して後退し、ドアを閉め位置にしたときにラッチスプリングの付勢力によって復帰すると共にラッチボルト側に設けたストッパが該ラッチボルトの突出方向の移動を規制する当り部に接当することにより突出位置に保持されるように構成されたドア錠において、
前記ラッチボルトの復帰時において、該ラッチボルトの復帰速度を減速させる減速部材を設けたことを特徴とする。
【0006】
また、ラッチボルトは錠ケースから出退するラッチヘッドと、錠ケース内に固定状に設けられたシャフトガイドに出退方向移動自在に支持されたラッチシャフトとを有し、錠ケース内には、ラッチボルトを後退操作するラッチハブが設けられ、このラッチハブはラッチボルトを後退操作すべくラッチシャフト後端の係合部に係合する後退操作部を備え、
減速部材は、ゴム様弾性材によってリング状に形成されていてラッチシャフトに密着状に外嵌され且つシャフトガイドと非操作位置にあるラッチハブの後退操作部とで挟まれて位置決めされるよう構成されるのがよい。
【発明の効果】
【0007】
ラッチボルトは、ドアを閉める際においてドア枠側に設けられたストライクに接当することによりラッチスプリングの付勢力に抗して後退し、ドアを閉め位置にしたときにラッチスプリングの付勢力によって復帰すると共にラッチボルト側に設けたストッパが該ラッチボルトの突出方向の移動を規制する当り部に接当するが、
本発明によれば、ドアが閉め位置に位置した際のラッチボルトの復帰速度が減速部材によって減速されるので、ストッパは比較的遅い速度で当り部に接当し、これによってストッパが当り部に接当する際の接当音を小さくすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下、本発明の実施の形態を図面を参照して説明する。
図1において、1はドア2の自由端側の縦框2Aに取り付けられるドア錠である。
なお、以下の説明において、ドア2の厚さ方向を左右方向とし、ドア2の厚さ方向と上下方向とに直交する方向を前後方向Aとし且つドア2の自由端側(可動端側)を前側とすると共にドア2の回転端側(ドア2がヒンジによって枢支される側)を後側として説明する。
前記ドア錠1は、図1、図2及び図3に示すように、ドア2の自由端側に彫り込んで取り付けられる錠ケース3と、この錠ケース3の前面から前方に向けて出退自在に突出して、ドア枠4のドア2の自由端側と対向する部分に設けたストライク5に係合するラッチボルト6と、このラッチボルト6を操作するラッチ操作機構7と、前記ラッチボルト6を後退不能にロックするロック機構8と、錠ケース3と共にドア2に取り付けられるアーマーフロント11とを備えている。
【0009】
錠ケース3は、左右一側が開放状とされた箱状のケース本体9と、このケース本体9の開口を塞ぐカバープレート10とを備えている。
ケース本体9に、ラッチボルト6、ラッチ操作機構7及びロック機構8が収納されている。
ケース本体9の前面側には、ケース本体9の前壁を構成するフェイスフロント9Aが設けられ、このフェイスフロント9Aはその前面に重ね合わされたアーマーフロント11と共にドア2の自由端側にネジ12によって止められている。
【0010】
フェイスフロント9A及びアーマーフロント11には、ラッチボルト6を突出させるための開口13,14が形成され、アーマーフロント11の開口14には該開口14の全周縁に沿うように形成されたスリーブ15が内嵌されている。
ラッチボルト6は、フェイスフロント9A及びアーマーフロント11の開口13,14を介して出退自在に突出するラッチヘッド16と、このラッチヘッド16から後方に向けて延出されたラッチシャフト17とから構成され、ラッチシャフト17の後端には鍔部18(係合部)が設けられている。
【0011】
ラッチシャフト17の後端側の鍔部18の前側には、ゴム又は軟質樹脂製の板材でリング状に形成された接当部材19が外嵌されている。
ラッチヘッド16はスリーブ15に前後方向A(ラッチボルト6の出退方向)に移動自在にガイドされ、ラッチシャフト17はケース本体9に固定されたシャフトガイド20を前後方向A移動自在に挿通していて該シャフトガイド20に前後方向Aに移動自在にガイドされている。これによってラッチボルト6が錠ケース3側に出退自在に支持されている。
【0012】
ラッチシャフト17には、ラッチヘッド16とシャフトガイド20との間に介在されたコイルバネからなるラッチスプリング21が套嵌されており、該ラッチスプリング21によってラッチボルト6が前方(突出方向)に付勢されている。
また、ラッチヘッド16の後部側(基部側)には、上下一対のストッパ22が設けられ、このストッパ22が前記スリーブ15の後面側に接当することにより、ラッチボルト6の前方移動が規制されるよう構成されている。
本実施形態では、スリーブ15のストッパ22が接当する部分が、ラッチボルト6の突出方向の移動を規制する当り部15aとされている。
【0013】
前記ラッチボルト6は、図4(a)に示すように、ドア2を閉める際においてラッチヘッド16がストライク5の接当部分5aに接当することによりラッチスプリング21の付勢力に抗して後退し、図4(b)に示すように、ドア2が閉位置に位置した際に、ラッチスプリング21の付勢力によって突出(復帰)してストライク5のストライクボックス23(受け孔)に挿入する。そして、ラッチボルト6のラッチヘッド16がストライクボックス23に挿入することにより、ドア2の開方向への移動が規制される。
前記ラッチ操作機構7は、図3に示すように、ドア2に設けられたハンドルレバーやノブ等のラッチ操作体24によって操作されてラッチボルト6を後退させるラッチハブ25と、このラッチハブ25を図1、2に示す非操作位置(ラッチ操作体24によって操作されていない位置)に戻す戻し部材26と、この戻し部材26を戻し方向に付勢する戻しスプリング27とから主構成されている。
【0014】
ラッチハブ25はラッチシャフト17の後部側下方に配置されていて錠ケース3に左右方向の軸芯X回りに回動自在に支持され、該ラッチハブ25の回動軸芯X部分には、前記ラッチ操作体24によって左右軸回りに回動操作される角芯が挿通される係合孔28が形成されている。
また、ラッチハブ25には、ラッチ操作体24を操作していない状態で、前記係合孔28が形成された中央部分29から上方に延出状とされた後退操作部30と該中央部分29から下方に延出状とされた戻し操作部31とが設けられている。
【0015】
後退操作部30は二股状に形成されており、この二股状の後退操作部30でラッチシャフト17後部の、前記シャフトガイド20より後方側(ラッチシャフト17のシャフトガイド20と鍔部18との間)を前後方向A相対移動可能に挟んでいる。
戻し部材26はラッチハブ25の戻し操作部31の前方側に位置しており、戻しスプリング27は戻し部材26を後方に付勢していて該付勢力によって戻し部材26をラッチハブ25の戻し操作部31に接当させている。
また、ラッチハブ25はシャフトガイド20に接当することにより、図1の反時計回りの回動が規制され、これにより、ラッチハブ25が非操作位置に保持されている。
【0016】
ドア2に設けられたラッチ操作体24を操作すると、ラッチハブ25が時計回り(図2の矢示B方向)に回動して後退操作部30が後方側に移動し、該後退操作部30がラッチシャフト17後端の鍔部18を接当部材19を介して後方側に押動する。
後退操作部30がラッチシャフト17後端の鍔部18を後方側に押動すると、ラッチボルト6がラッチスプリング21の不勢力に抗して後方移動し、ラッチヘッド16がストライク5のストライクボックス23から抜け出る。ラッチヘッド16がストライク5のストライクボックス23から抜け出ると、ドア2を開くことができる。
【0017】
一方、ラッチ操作体24でラッチハブ25が回動操作されると、戻し操作部31が戻しスプリング27の付勢力に抗して戻し部材26を前方に押動する。
したがって、ラッチ操作体24に対する操作力を解除すると、戻しスプリング27の付勢力によって戻し部材26がラッチハブ25の戻し操作部31を後方に押動してラッチハブ25を反時計回りに回動させ、ラッチハブ25を非操作位置に戻す。ラッチハブ25が非操作位置に戻ると、ラッチボルト6はラッチスプリング21の付勢力によって突出方向に移動する。
【0018】
前記ロック機構8は、ラッチハブ25の上方側に配置されたロックピース32と、このロックピース32を上方又は下方に付勢すべく付勢力が切り換えられるロックスプリング33と、ロックピース32を操作するロックハブ34とを備えている。
ロックハブ34はドア2に設けられたサムターン35によって回動操作され、サムターン35を回動操作することによりロックハブ34が回動操作されて該ロックハブ34によってロックピース32が上下方向に所定範囲で移動操作される。
ロックピース32は上位位置では、ラッチハブ25の後退操作部30から外れていてラッチハブ25の時計回りの回動を許容する。また、ロックピース32は上位位置では、ロックスプリング33の付勢力によって上方に付勢されていて、該ロックピース32が上位位置に保持されている。
【0019】
また、ロックピース32は下位位置では、ラッチハブ25の後退操作部30の後面側に接当してラッチハブ25の時計回りの回動を規制する。これによって、ラッチ操作体24が操作不能にロックされてラッチボルト6が後退操作不能とされる。また、ロックピース32は下位位置では、ロックスプリング33の付勢力が切り替わって該付勢力により下方に付勢されていて、該ロックピース32が下位位置に保持されている。
前記ラッチシャフト17の後部側には、ラッチボルト6が後退位置から復帰するときの復帰速度を減速させる減速部材36が設けられている。
【0020】
この減速部材36は、ゴム(又は軟質樹脂等のゴム様弾性材)によってリング状に形成されてラッチシャフト17に密着状に外嵌されていて、その内周面がラッチシャフト17に密着している(本実施形態では、0リングが採用されている)。
また、この減速部材36は、シャフトガイド20とラッチハブ25の後退操作部30との間に配置されており、ラッチハブ25が操作されていなく該ラッチハブ25が非操作位置にある時(ラッチ操作体24が操作されていない時)において、シャフトガイド20と後退操作部30とで挟まれていて該減速部材36はシャフトガイド20と後退操作部30とに接当しており、これによって該減速部材36の前後方向A(ラッチシャフト17の軸芯方向、ラッチボルト6の出退方向A)の移動が規制されている。
【0021】
したがって、ラッチハブ25の後退操作部30が減速部材36に接当することによっても、ラッチハブ25の反時計回りの回動が規制されている。
前記構成のドア錠1にあっては、ドア2を閉める際において、ラッチヘッド16がストライク5の接当部分5aに接当することによりラッチスプリング21の付勢力に抗してラッチボルト6が後退し、ドア2が閉位置に位置した際に、ラッチスプリング21の付勢力によってラッチボルト6が復帰してラッチヘッド16がストライクボックス23に挿入するが、このとき、ラッチシャフト17と減速部材36の内周面との間の摩擦抵抗により、ラッチボルト6の復帰速度が減速され、従来より遅い速度でラッチボルト6のストッパ22がスリーブ15に接当することにより、ラッチボルト6の復帰停止時の接当音が軽減される(接当音が小さくなる)。
【0022】
本実施形態では、前記スリーブ15がラッチボルト6の突出方向への移動を規制する部材とされているが、その他の構造でラッチボルト6の突出方向への移動規制がなされるものであってもよい。
一方、ラッチ操作体24によってラッチハブ25を操作してラッチボルト6を後退させるときには、後退操作部30が後方側に移動するので減速部材36の移動規制が解除され、減速部材36はラッチボルト6と共に後方移動する。
そして、ラッチハブ25が、ラッチ操作体24によって操作された操作位置から非操作位置に戻る際において、後退操作部30がゴム様弾性材によって形成された減速部材36に接当することにより、ラッチハブ25が復帰停止する際の接当音が軽減される。
【0023】
したがって、本実施形態の減速部材36は、ラッチボルト6の復帰速度を減速させる機能と、ラッチハブ25の復帰停止時の接当音を軽減させる機能とを有する。
また、前記構成の減速部材36にあっては、ラッチシャフト17に外嵌されてシャフトガイド20とラッチハブ25の後退操作部30との間で挟まれることにより、位置決めがなされているので、減速部材36を位置決めするための構造が別途必要ではなく、構造を簡素化することができる。
また、減速部材36を錠ケース3側に固定していると、ラッチ操作体24を操作するときに、減速部材36とラッチシャフト17との間の摩擦抵抗により、ラッチ操作体24を操作する操作力が若干重くなることとなるが、本実施形態では、ラッチ操作体24を操作するときには、減速部材36はラッチボルト6と一体移動するので、ラッチ操作体24を操作する操作力が重くなることはないという効果も奏する。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】ドア錠の正面図及び側面図である。
【図2】要部の断面図である。
【図3】ドア錠の取付状態を示す側面図である。
【図4】ドアを閉めるときのラッチボルトの作用を示す平面概略図である。
【符号の説明】
【0025】
2 ドア
3 錠ケース
4 ドア枠
5 ストライク
6 ラッチボルト
15a 当り部
16 ラッチヘッド
17 ラッチシャフト
18 係合部(鍔部)
20 シャフトガイド
21 ラッチスプリング
22 ストッパ
25 ラッチハブ
30 後退操作部
36 減速部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ドア(2)に取り付けられる錠ケース(3)から出退自在とされると共にラッチスプリング(21)の付勢力によって突出するラッチボルト(6)を備え、このラッチボルト(6)は、ドア(2)を閉める際においてドア枠(4)側に設けられたストライク(5)に接当することによりラッチスプリング(21)の付勢力に抗して後退し、ドア(2)を閉め位置にしたときにラッチスプリング(21)の付勢力によって復帰すると共にラッチボルト(6)側に設けたストッパ(22)が該ラッチボルト(6)の突出方向(A)の移動を規制する当り部(15a)に接当することにより突出位置に保持されるように構成されたドア錠において、
前記ラッチボルト(6)の復帰時において、該ラッチボルト(6)の復帰速度を減速させる減速部材(36)を設けたことを特徴とするドア錠。
【請求項2】
ラッチボルト(6)は錠ケース(3)から出退するラッチヘッド(16)と、錠ケース(3)内に固定状に設けられたシャフトガイド(20)に出退方向移動自在に支持されたラッチシャフト(17)とを有し、錠ケース(3)内には、ラッチボルト(6)を後退操作するラッチハブ(25)が設けられ、このラッチハブ(25)はラッチボルト(6)を後退操作すべくラッチシャフト(17)後端の係合部(18)に係合する後退操作部(30)を備え、
減速部材(36)は、ゴム様弾性材によってリング状に形成されていてラッチシャフト(17)に密着状に外嵌され且つシャフトガイド(20)と非操作位置にあるラッチハブ(25)の後退操作部(30)とで挟まれて位置決めされることを特徴とする請求項1に記載のドア錠。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2010−112070(P2010−112070A)
【公開日】平成22年5月20日(2010.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−285445(P2008−285445)
【出願日】平成20年11月6日(2008.11.6)
【出願人】(000152572)株式会社日中製作所 (30)