ドット記録システム、ドット記録方法、及び、コンピュータープログラム
【課題】画質を過度に劣化させることなく、ドット記録のための色材使用量を削減することのできる技術を提供する。
【解決手段】N回(Nは2以上の整数)の前記主走査パスにより主走査ラインに対して前記ドット記録を完了する場合に、1回以上N回未満の主走査パスにおいてドット記録を行わない間引き処理を実行する。また、第1の主走査ラインに対してドット記録を行う主走査パスの順序を示す第1の主走査パス番号と、第1の主走査ラインに対して副走査方向に隣接する第2の主走査ラインに対してドット記録を行う主走査パスの順序を示す第2の主走査パス番号とが近くなるように間引き処理を実行する
【解決手段】N回(Nは2以上の整数)の前記主走査パスにより主走査ラインに対して前記ドット記録を完了する場合に、1回以上N回未満の主走査パスにおいてドット記録を行わない間引き処理を実行する。また、第1の主走査ラインに対してドット記録を行う主走査パスの順序を示す第1の主走査パス番号と、第1の主走査ラインに対して副走査方向に隣接する第2の主走査ラインに対してドット記録を行う主走査パスの順序を示す第2の主走査パス番号とが近くなるように間引き処理を実行する
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、色材を出力してドット記録を行う技術に関する。
【背景技術】
【0002】
色材を出力してドット記録を行う代表的な装置は、インクジェットプリンターである。インクジェットプリンターでは、インクの使用量を出来る限り削減して、コストパフォーマンスを改善したいという要望がある。インク使用量を削減するために、インクドットを間引く方法が知られている(例えば特許文献1)。
【0003】
しかし、単純にインクドットを間引く方法では、印刷濃度の低下などによる画質劣化が過度に大きいという問題があった。このような問題は、インクジェットプリンターに限らず、色材を出力してドットをドット記録媒体上に記録する色材出力装置に共通する問題であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2001−30522号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、画質を過度に劣化させることなく、ドット記録のための色材使用量を削減することのできる技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上述の課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、以下の形態又は適用例として実現することが可能である。
【0007】
[適用例1]
副走査方向に複数のノズルを有する色材出力ヘッドを主走査方向に移動させつつ前記複数のノズルから色材を出力してドット記録媒体上にドットを記録する主走査パスを複数回行い、かつ、複数の前記主走査パスの合間に前記色材出力ヘッドと前記ドット記録媒体との相対位置を前記副走査方向に移動させるドット記録システムであって、
前記複数の前記主走査パスは、前記複数のノズルのうち第1のノズルにより前記主走査方向に記録する複数のドットの間に、前記複数のノズルのうち前記第1のノズルとは異なるノズルによりドットを記録する主走査パスと、前記第1のノズルにより前記副走査方向に記録する複数のドットの間に、前記複数のノズルのうち前記第1のノズルとは異なるノズルによりドットを記録する主走査パスとを含み、
N回(Nは2以上の整数)の前記主走査パスにより第1の主走査ラインに対してドットの記録を完了する場合に、1回以上N回未満の前記主走査パスにおいてドットの記録を行わない間引き処理を実行する間引き処理部を備え、
前記間引き処理部は、前記第1の主走査ラインに対してドットの記録を行う前記主走査パスの順序を示す第1の主走査パス番号と、前記第1の主走査ラインに対して前記副走査方向に隣接する第2の主走査ラインに対してドットの記録を行う前記主走査パスの順序を示す第2の主走査パス番号とが近くなるように前記間引き処理を実行する、ドット記録システム。
この構成によれば、副走査方向に隣接する主走査ラインにおいてドット記録を行う主走査パスの順序を示す主走査パス番号が、隣接する主走査ライン同士で近くなるように、主走査パスに基づいて各主走査ライン上において間引かれるドット位置を選択するので、隣接する主走査ラインを記録する主走査パスの間に累積される副走査送り誤差を低減することができる。この結果、画質を過度に劣化させることなく、間引きによって色材使用量を削減することが可能である。
【0008】
[適用例2]
適用例1記載のドット記録システムであって、
前記間引き処理部は、前記第1の主走査パス番号と前記第2の主走査パス番号との差分が最も小さくなるように前記間引き処理を実行する、ドット記録システム。
この構成によれば、隣接する主走査ラインにおいてドット記録を実行する主走査パス番号の差分が最も小さくなる主走査パスだけを残して、他の主走査パスを間引くので、隣接する主走査ラインを記録する主走査パスの間に累積される副走査送り誤差を小さくすることができる。
【0009】
[適用例3]
適用例1または適用例2記載のドット記録システムであって、
前記間引き処理部は、前記第1の主走査パス番号と前記第2の主走査パス番号とが連続するように前記間引き処理を実行するドット記録システム。
この構成によれば、隣接する2つの主走査ラインの少なくとも一方においてドット記録を行う主走査パス番号と連続するので、隣接する主走査ラインを記録する主走査パスの間に累積される副走査送り誤差を極めて小さくすることが可能である。
【0010】
[適用例4]
適用例1ないし3のいずれかに記載のドット記録システムであって、
前記間引き処理部は、前記第2の主走査ラインにおいて間引き処理を実行してから、前記第1の主走査ラインにおいて前記間引き処理を実行する場合に、前記第2の主走査パス番号に基づいて、前記第1の主走査パス番号を決める前記間引き処理を行うドット記録システム。
この構成によれば、単純なアルゴリズムに従って、隣接する主走査ラインにおいてドット記録を行う主走査パスの順序を示す主走査パス番号が、隣接する主走査ライン同士で可能な限り近くすることが可能である。
【0011】
なお、本発明は、種々の形態で実現することが可能であり、例えば、印刷方法および印刷装置、色材出力装置、印刷制御方法および印刷制御装置、それらの方法または装置の機能を実現するためのコンピュータープログラム、そのコンピュータープログラムを記録した記録媒体等の形態で実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の一実施例における印刷システムの構成を示す説明図である。
【図2】第1実施例におけるドット記録方法を示す説明図である。
【図3】インクジェットプリンターで形成可能なインクドットの種類を示す説明図である。
【図4】比較例における間引き処理を示す説明図である。
【図5】第1実施例における間引き処理を示す説明図である。
【図6】第1実施例において間引き対象ドットを選択する方法の一例を示すフローチャートである。
【図7】間引き無しでの印刷と比較例の間引き処理による印刷と実施例の間引きによる印刷結果を示す概念図である。
【図8】第1実施例における比較例(市松模様間引き)を示す説明図である。
【図9】間引き無しでの印刷と比較例の間引き処理による印刷と実施例の間引きによる他の印刷結果を示す概念図である。
【図10】第2実施例におけるドット記録方法を示す説明図である。
【図11】第2実施例における間引き処理を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
次に、本発明の実施の形態を以下の順序で説明する。
A.装置の構成:
B.第1実施例:
C.第2実施例:
D.変形例
【0014】
A.装置の構成:
図1は、本発明の一実施例における印刷システムの構成を示す説明図である。この印刷システム300は、画像処理装置としてのパーソナルコンピューター100と、パーソナルコンピューター100に接続されたプリンター200と、を備えている。
【0015】
パーソナルコンピューター100は、CPU110と、メモリー120と、入出力インターフェース(I/F)部130と、を備えている。メモリー120は、印刷データ(ドットデータ)を格納するための出力バッファー32を有している。パーソナルコンピューター100には、アプリケーションプログラム10やプリンタードライバー20などの各種のコンピュータープログラムがインストールされている。アプリケーションプログラム10やプリンタードライバー20は、所定のオペレーティングシステム(図示せず)の下でCPU110により実行される。なお、プリンタードライバー20は、コンピューター100内にて機能しても良く、あるいは、プリンター200内にて機能してもよい。
【0016】
アプリケーションプログラム10は、例えば画像編集機能を実現するためのプログラムである。ユーザは、アプリケーションプログラム10の提供するユーザインターフェースを介して、アプリケーションプログラム10により編集された画像を印刷する指示を与えることができる。アプリケーションプログラム10は、ユーザより印刷の指示を受けると、プリンタードライバー20に印刷の対象となる画像データを出力する。なお、本実施例では、画像データはRGBデータとして出力される。
【0017】
プリンタードライバー20は、アプリケーションプログラム10から出力された画像データに基づき印刷データを生成する機能を実現するためのプログラムである。ここで、印刷データは、プリンター200が解釈できる形式のデータであって、各種のコマンドデータとドットデータとを含む。コマンドデータは、プリンター200に特定の動作の実行を指示するためのデータである。ドットデータは、印刷される画像(印刷画像)を構成する画素(印刷画素)におけるドットの形成状態を表すデータであり、具体的には、各印刷画素にどの色のどのサイズのドットを形成するか(あるいはドットを形成しないか)を示すデータである。ここで、「ドット」とは、プリンター200から出力されたインクが印刷媒体に着弾して形成される1つのインク領域をいう。
【0018】
プリンタードライバー20は、アプリケーションプログラム10から出力された画像データを印刷データに変換する機能を有しており、解像度変換処理部21と、色変換処理部22と、ハーフトーン処理部23と、ラスタライズ処理部24と、間引き処理部25とを有している。
【0019】
解像度変換処理部21は、アプリケーションプログラム10から出力された画像データの解像度をプリンター200の印刷解像度に一致するように変換する。色変換処理部22は、画像データの色変換処理を行う。本実施例で用いられるプリンター200は、シアン(C)、マゼンダ(M)、イエロー(Y)、ブラック(K)の各色のインクを用いて印刷を行うプリンターである。そのため、色変換処理部22は、RGB値で表された画素値をCMYK値に変換する。ハーフトーン処理部23は、色変換後の画素値に関してハーフトーン処理を行ってドットデータを形成する。ハーフトーン処理としては、例えば誤差拡散法や、ディザマトリクスを用いたディザ法を利用することができる。なお、本実施例で用いられるプリンター200は、小ドットと中ドットと大ドットとの、3種類のサイズのドットを形成可能なプリンターである。但し、プリンター200としては、形成可能なインクドットのサイズは3種類に限られるものでなく、1種類以上のサイズのドットを形成できるものを利用することが可能である。ラスタライズ処理部24は、ハーフトーン処理で得られたドットデータを、プリンター200に転送すべき順序に並び替える。間引き処理部25は、ドットデータに対して、後述する間引き処理を実行する。間引き処理後のドットデータは、一旦出力バッファー32に格納され、入出力インターフェース部130を介してプリンター200に出力される。
【0020】
本実施例のプリンター200は、印刷媒体にインクドットを形成して画像を印刷するインクジェットプリンターである。プリンター200は、CPU210と、メモリー220と、入出力インターフェース(I/F)部230と、CPU210からの指示に従って各種のユニットを制御するユニット制御回路240と、ヘッドユニット250と、キャリッジユニット260と、搬送ユニット270と、を備えている。
【0021】
ヘッドユニット250は、印刷媒体にインクを出力するための印刷ヘッド(図示せず)を有している。ヘッドユニット250は、各インク毎に複数のノズルを有しており、各ノズルから断続的にインクを出力する。このヘッドユニット250はキャリッジユニット260に搭載されており、キャリッジユニット260が所定の走査方向(主走査方向)に移動すると、ヘッドユニット250も主走査方向に移動する。ヘッドユニット250は、主走査方向に移動しつつ、ノズルからインクを断続的に出力することにより、主走査方向に沿ったドットラインを印刷媒体上に形成する。なお、本明細書において、主走査ラインを「ラスターライン」とも呼ぶ。
【0022】
キャリッジユニット260は、ヘッドユニット250を主走査方向に往復移動させるための駆動装置である。キャリッジユニット260には、ヘッドユニット250の他、インクを収容するインクカートリッジも着脱可能に保持されている。搬送ユニット270は、印刷媒体を搬送することによって副走査を行うための駆動装置である。搬送ユニット270は、例えば、給紙ローラ、搬送モータ、搬送ローラ、プラテン、及び排紙ローラ(図示せず)などによって構成される。なお、印刷媒体の代わりに、印刷ヘッドを副走査方向に搬送してもよい。
【0023】
B.第1実施例:
図2は、第1実施例におけるドット記録方法を示す説明図である。図2の左側には、ヘッドユニットに設けられているノズル列250nが示されている。このノズル列250nは、1種類のインク(例えば黒インク)を吐出するための10個のノズルを有している。他のインク用のノズル列は、図示が省略されている。実際のプリンターではインク1種類当たり数十〜数百個のノズルが設けられているが、ここでは図示の便宜上、少ないノズル数のノズル列が描かれている。個々のノズル位置に付された番号0〜9は、ノズルを識別する番号(ID)である。ノズルの副走査方向のピッチkは、例えば180dpiであり、印刷画素のピッチは例えば720dpiである。この場合に、ノズルピッチkは4[ドット]である。一般に、ピッチkは2以上の整数とすることが好ましい。ノズル列250nは、主走査方向(図の左右方向)に沿って主走査が実行される途中において、印刷媒体上にドットを記録する。図2において、「パス」は主走査パスを意味している。主走査パスが1回行われるたびに、ノズル列250nは副走査方向(図の上下方向)に移動する。この例では、副走査送り量は5ドットの一定値であり、16回分の主走査パスにおけるノズル列250nの位置が示されている。なお、実際には、印刷媒体が移動するが、ここでは図示の便宜上、ノズル列250nが移動するものとして描かれている。
【0024】
図2の右側に描かれた番号付きの丸印は、記録されるインクドットを示しており、丸の中の番号はノズル番号を示している。符号「L1」〜「L48」は、主走査ラインに付した連続番号である。例えば、主走査ラインL1上においては、8番ノズルと3番ノズルによって1画素ずつ交互にドット記録が行われる。図2の左側を参照すれば理解できるように、主走査ラインL1上の8番ノズルによるドット記録はパス1において実行され、3番ノズルによるドット記録はパス5において実行される。この例では、各主走査ライン上の全ドットの記録が2回の主走査パスによって完了する。換言すれば、各主走査ライン上の全ドットの記録が2個の異なるノズルによって実行される。このような印刷を「2パス印刷」と呼ぶ。また、本明細書において、N回の主走査により、N個のノズルを用いて各主走査ライン上のドット記録を実行する印刷を、「Nパス印刷」、「Nパスオーバーラップ印刷」、又は、単に「オーバーラップ印刷」と呼ぶ。なお、各主走査ラインの印刷を完了するために必要な主走査パスの回数Nは、2以上の任意の数に設定可能である。一般に、複数回の主走査パスで各ラスターラインの印刷を実行する理由は、印刷ヘッドの製造誤差や副走査送り誤差に起因してドットの記録位置が多少ずれる可能性があるため、異なる複数のノズルで1ラインを印刷してドットのずれを目立ちにくくすることによって、画質を向上させるためである。
【0025】
図3(A),(B)は、インクジェットプリンターで形成可能なインクドットの種類を示す説明図である。このプリンターは、1印刷画素の領域に大ドットと中ドットと小ドットの3種類のドットを形成可能である。大ドットは、主にベタ領域や高濃度領域を印刷するために使用され、小ドットは主に低濃度領域を印刷するために使用される。例えば、ベタ領域は大ドットのみで印刷される場合が多く、ハイライト領域(極低濃度領域)は小ドットのみで印刷される場合が多い。中ドットは、中間的な濃度領域において、大ドットや小ドットよりも多く使用される。図3(B)は、大ドットを用いて3×5画素のベタ領域を印刷した様子を示している。1画素の範囲は破線で示されている。なお、1画素の形状は横長の長方形の場合もあり、また、正方形の場合もある。大ドットは、1画素の領域を完全に包含する広い領域に広がるドットであり、中央の大ドットは、その周囲の8個の大ドットのそれぞれとの間にかなり大きな重なりがある。また、通常は、主走査方向(図の左右方向)にヘッドが進行しながらインクが吐出されるので、印刷媒体上ではドットが左右に大きく広がる傾向にある。従って、インク量削減のためにドットを間引く場合、主走査方向に沿って1画素おきに間引くようにすれば、画質劣化があまり目立たないという利点がある。
【0026】
図4(A)は、図2におけるドット記録方法の詳細を示している。ここでは、1つの枠が1画素を意味しており、1画素の枠内に、その画素におけるドット記録を実行する主走査パス番号とノズル番号とが示されている。なお、ここでは各主走査ライン上の4画素のみを図示しているが、これと同じパターンが水平方向に沿って多数回繰り返される。図4(B)は、本発明による間引き方法に対する比較例として、図4(A)の中の偶数列(主走査ライン上の偶数画素位置)のドットを間引いた例を示している。この比較例の間引き方法は、最も単純な間引き処理の例である。
【0027】
図5(A),(B)は、第1実施例における間引き処理の内容を示している。図5(A)は、図4(A)と同じであり、図2におけるドット記録方法の詳細を示している。第1実施例の間引き処理は、以下のような特徴を有している。
<特徴1>1列全部や1行全部を間引くことなく、主走査ラインの主走査パスに基づいて、各列や各行において、それぞれ一部のドットを間引く。
<特徴2>隣接する主走査ラインの間で、ドット記録を実行する主走査パス番号の差分がなるべく小さくなるように、各主走査ライン上でドット記録を実行する主走査パス番号を選択する。
【0028】
上記特徴1を採用する理由は、例えば図4(B)のように、列全体を間引くようにすると、その列が白抜けとして目立ってしまい、過度の画質劣化が生じるためである。行(主走査ライン)全体を間引く場合も同様である。
【0029】
上記特徴2を採用する理由は、隣接する主走査ラインにおけるドット記録を担当する主走査パスの間における副走査送り誤差を低減するためである。すなわち、通常は副走査送りのたびに送り誤差が発生するため、n回の副走査送りを間に挟んだ任意の2つの主走査パスの間には、n回分の副走査送り誤差が累積する。そこで、隣接する主走査ラインの間で、ドット記録を実行する主走査パス番号の差分が可能な限り小さくなるように、各主走査ライン上でドット記録を実行する主走査パス番号を選択すれば、これらの主走査ライン間の副走査送り誤差を低減することができる。この結果、隣接する主走査ラインにおけるインクの着弾位置のずれの累積が低減し、これに起因する画質劣化を低減することができる。
【0030】
このような第1実施例における間引き処理は、オーバーラップ印刷において過度の画質劣化を防止するための工夫がなされている(特に、上記特徴2)。この意味で、この間引き処理を、「オーバーラップ考慮ドット間引き」とも呼ぶ。
【0031】
図6は、第1実施例の間引き処理において間引き対象ドットを選択する方法の一例を示すフローチャートである。この処理は、間引き処理部25(図1)によって実行される。ステップS100では、処理対象のラスタライン(主走査ライン)が、間引き対象領域の最初のラスターラインであるか否かが判断される。なお、間引き対象領域か否かは、予め設定された判断基準によって判定可能である。例えば、大ドットのみで印刷される黒ベタ領域のみを間引き対象領域としてもよい。間引き対象領域の最初のラスターラインである場合には、ステップS100からステップS180に移行し、そのラスターライン内の全ドット位置(画素位置)を参照して、最も小さい主走査パス番号Aが取得される。図5(A)の場合には、ラインL1の全ドット位置のうちで最も小さいパス番号Aは1である。ステップS190では、そのラインL1内のドットのうち、パス番号A(=1)で記録されるドットが間引かれる(図5(B)参照)。
【0032】
ステップS100において、処理対象のラスターラインが最初のラスターラインでない場合には、ステップS110に移行し、当該ラスターラインの直前のラスターラインを参照して、その直前のラスターラインにおいて間引かれずに残っているドットのパス番号B(以下、「直前ライン記録パス番号B」と呼ぶ)が取得される。例えば、図5(A),(B)において、ラインL2が処理対象となっている場合に、その直前のラインL1において間引かれずに残っているドットのパス番号Bは、5である。
【0033】
ステップS120では、現在のラスターラインの全ドットを参照し、全ドットを記録するためのすべてのパス番号X1〜Xnが取得される。ステップS130では、これらのパス番号X1〜Xnと、直前ライン記録パス番号Bとの差分がそれぞれ算出され、ステップS140では、それらの絶対値の最小値を与えるパス番号Xiが取得される。そして、ステップS150では、処理対象ラスターライン上のドットのうち、差分の絶対値が最小値を与えるパス番号Xi以外のパスで記録されるドットが間引かれる。図5(A),(B)の例において、ラインL2が処理対象の場合には、B=5,X1=2,X2=6なので、Bとの差分の絶対値が最小値を与えるパス番号Xiは6である。従って、間引かれるドットは、パス番号2のドットである。
【0034】
こうして、1本のラスターライン上において間引かれるドットが決定されると、ステップS160において副走査方向の次のラスターラインが処理対象として選択される。そして、この処理が最後のラスターラインまで完了していなければ、ステップS170からステップS100に戻って、ステップS100〜S170の処理が繰り返される。この結果、図5(B)に示したように、上記特徴1〜2を有する間引き処理が実現される。
【0035】
図4(B)に示した比較例の間引き結果と、図5(B)に示した第1実施例の間引き結果は、いずれも間引き率が50%で同一である。発明者は、実際に、黒インクの大ドットで印刷されるベタ領域を720dpiで印刷して、比較例と実施例の間引き結果を比較した。但し、印刷ヘッドとしては、黒インク用のノズル数が180個でノズルピッチが180dpi(k=4)のものを使用した。また、副走査送り量は90ドットの一定値とした。
【0036】
図7(A)〜(C)は、間引き無しと、比較例(偶数列間引き)と、実施例(オーバーラップ考慮間引き)の3つの場合における黒ベタ領域の印刷結果を示す概念図である。比較例の偶数列間引きでは、縦スジ(副走査方向の白スジ)だけでなく、バンディングと呼ばれる横スジ状の濃度ムラが目立つ結果が得られた。この理由は、図4(B)に示すように、偶数列間引きの結果、隣接する主走査ラインのドット記録を担当する主走査パス番号の差が大きくなるので、その間の副走査送り誤差による着弾位置ズレがバンディングとして現れたものと推測される。このようなバンディングは、単に市松模様にドットを間引いた場合にも同様に発生する。この理由は、市松模様にドットを間引いた例を示す図8(B)にて示されるように、隣接する主走査ラインのドット記録を担当する主走査パス番号の差が大きくなる場合があり、その間の副走査送り誤差による着弾位置ズレがバンディングとして現れたものと推測される。一方、実施例の間引き処理を使用した場合には、図7(C)のように、縦スジも横スジ(バンディング)もほとんど発生せず、画質劣化がほとんど目立たないという良好な結果が得られた。実施例でバンディングの発生が抑制された理由は、隣接する主走査ラインの間で、ドット記録を実行するパス番号の差分が可能な限り小さくなるように、各主走査ライン上でドット記録を実行するパス番号が選択されているので、隣接ラインの間の着弾位置ズレが小さいからである。
【0037】
図9(A)〜(C)は、間引き無しと、比較例(偶数列間引き)と、実施例(オーバーラップ考慮間引き)の3つの場合における文字の印刷結果を示す概念図である。比較例の間引き処理による印刷では、文字の内部における縦スジや横スジが目立ち、また、エッジ部分においてもジャギーが目立つ結果が得られた。一方、実施例の間引き処理による印刷では、バンディングはほとんど発生せず、また、エッジ部分のジャギーも無視できる程度であった。
【0038】
このように、第1実施例の間引き処理では、上記特徴1〜2を有するオーバーラップ考慮ドット間引きを実行するので、画質を過度に劣化させることなくインク使用量を削減することが可能である。
【0039】
C.第2実施例:
図10は、第2実施例におけるドット記録方法を示す説明図である。図2との違いは副走査送り量だけであり、他の走査パラメータや装置構成は第1実施例と同じである。図10のドット記録方法において、副走査送り量は、(3ドット,3ドット,3ドット,11ドット)というパターンが繰り返されている。このように、複数種類の副走査送り量を用いる副走査方法は、「変則送り」とも呼ばれている。一方、図2のように、一定の副走査送り量を用いる副走査方法は、「定則送り」とも呼ばれている。変則送りも、定則送りと同様に、印刷対象領域内のすべての画素位置においてドットを記録できるようにするための走査方法である。
【0040】
図11は、第2実施例における間引き処理を示す説明図である。図11(B)の間引き処理結果は、図6に示した処理フローに即して実行されたものである。この結果を図5(B)と比較すれば理解できるように、変則送りの場合にも、定則送りの場合と同様に、オーバーラップ考慮ドット間引きを実行すれば、画質を過度に劣化させることなくインク使用量を削減することが可能である。
【0041】
D.変形例:
なお、この発明は上記の実施例や実施形態に限られるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の態様において実施することが可能であり、例えば次のような変形も可能である。
【0042】
D1.変形例1:
オーバーラップ考慮ドット間引き処理の特徴としては、上述した特徴1,2に加えて、以下のような特徴3,4の少なくとも一方を追加してもよい。
<特徴3>間引き処理は、大ドットのみによって印刷される領域において実行する。
<特徴4>間引かれるドットは、主走査方向に沿って1ドットおきに選択する。
【0043】
上記特徴3は、中ドットや小ドットが用いられる領域では間引き処理を実行しないことを意味している。この理由は、大ドットでは、隣接ドット間での重なりが大きいので、一部の大ドットを間引いても過度の画質劣化を生じないからである。一方、中ドットは隣接ドット間の重なりが少なく、また、小ドットでは隣接ドット間で重なりがほとんど生じないので、ドット間引きを行うと、画質劣化が目立つ傾向にある。
【0044】
上記特徴4を採用する理由は、図3に示したようにドットが主走査方向に広がる傾向にあるため、主走査方向に1ドットおきに間引くと、副走査方向に1ドットおきに間引く場合に比べて画質劣化が生じにくいからである。なお、パス数Nが3以上の場合には、連続したNドットのうちのQドット(QはNを2で除した商)を、非連続的な画素位置で間引くようにしてもよい。
【0045】
なお、上記特徴4の代わりに、「間引かれるドットは、主走査方向に沿って各3ドット毎に1ドットの割合で選択する」という特徴4aを採用してもよい。この特徴4aは、例えば大ドットの重なりがそれほど大きくない場合に、1/3のドットを間引くことによって、過度の画質劣化を防止しつつインク量を削減できるという利点がある。これらの特徴4,4aは、「間引かれるドットは、主走査方向に沿って各Tドット毎にSドットの割合で選択する(Tは2以上の整数、Sは1以上T未満の整数)」という特徴4bに一般化することが可能である。このような特徴4bは、例えば、図6のS150において、パス番号がXi以外のドットのうちの任意の数のドットを、変数Bとの差分の絶対値が大きい順に間引くことによって実現することができる。
【0046】
また、オーバーラップ考慮ドット間引き処理において、隣接する主走査ラインは、可能な限り、連続する主走査パスによって記録することが好ましい。図5(B)の例では、主走査ラインL1〜L4においてドット記録を実行する主走査パスのパス番号は5〜8であり、これらは連続していることが理解できる。これは、ラインL5〜L9、ラインL10〜L14,L15〜L19,L20〜L24…においても同様である。このように、ほとんどの主走査ラインにおいて、ドット記録を実行する主走査パスのパス番号が連続するように間引き処理を実行すれば、副走査送り誤差を低減することができ、副走査送り誤差による画質劣化を大幅に低減することが可能である。
【0047】
D2.変形例2:
上記実施例では、パス数が2であるオーバーラップ印刷について説明したが、本発明は、パス数Nが2以外の任意のオーバーラップ印刷に適用可能である。2回のパスでドット記録が完了する主走査ラインと、3回のパスでドット記録が完了する主走査ラインが存在する場合には、例えば、2回のパスでドット記録が完了する主走査ラインではドット間引きを行わずに、3回のパスでドット記録が完了する主走査ラインにおいてドット間引きを行うようにしてもよい。なお、部分オーバーラップ印刷の方法は、例えば、特開2007−203717号公報や特開2007−055202号公報に開示されている。
【0048】
D3.変形例3:
上記実施例では、印刷ヘッドを主走査方向に移動させていたが、印刷ヘッドの代わりに印刷用紙を移動させるようにしてもよい。
【0049】
D4.変形例4:
上記実施例では、インクジェットプリンターについて説明したが、本発明は、ファクシミリやコピー機などの他の画像記録装置にも適用可能である。また、本発明は、液晶ディスプレー等のカラーフィルタの製造に用いられる色材出力装置や、有機ELディスプレー、FED(電界放出ディスプレー)等の電極形成に用いられる電極材料出力装置、バイオチップ製造に用いられる生体有機物出力装置などの他の色材出力装置にも適用可能である。なお、本明細書において「印刷ヘッド」とは、プリンター等の画像記録装置に用いられる各種の記録ヘッド、液晶ディスプレー等のカラーフィルタの製造に用いられる色材出力ヘッド、有機ELディスプレー、FED(電界放出ディスプレー)等の電極形成に用いられる電極材料出力ヘッド、バイオチップ製造に用いられる生体有機物出力ヘッド等に相当するものである。また、本発明における「印刷媒体」又は「ドット記録媒体」は、紙に限らず、ドットが形成される媒体を意味している。
【符号の説明】
【0050】
10…アプリケーションプログラム
20…プリンタードライバー
21…解像度変換処理部
22…色変換処理部
23…ハーフトーン処理部
24…ラスタライズ処理部
25…間引き処理部
32…出力バッファー
100…パーソナルコンピューター
110…CPU
120…メモリー
130…入出力インターフェース部
200…プリンター
210…CPU
220…メモリー
230…入出力インターフェース部
240…ユニット制御回路
250…ヘッドユニット
250n…ノズル列
260…キャリッジユニット
270…搬送ユニット
300…印刷システム
【技術分野】
【0001】
本発明は、色材を出力してドット記録を行う技術に関する。
【背景技術】
【0002】
色材を出力してドット記録を行う代表的な装置は、インクジェットプリンターである。インクジェットプリンターでは、インクの使用量を出来る限り削減して、コストパフォーマンスを改善したいという要望がある。インク使用量を削減するために、インクドットを間引く方法が知られている(例えば特許文献1)。
【0003】
しかし、単純にインクドットを間引く方法では、印刷濃度の低下などによる画質劣化が過度に大きいという問題があった。このような問題は、インクジェットプリンターに限らず、色材を出力してドットをドット記録媒体上に記録する色材出力装置に共通する問題であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2001−30522号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、画質を過度に劣化させることなく、ドット記録のための色材使用量を削減することのできる技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上述の課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、以下の形態又は適用例として実現することが可能である。
【0007】
[適用例1]
副走査方向に複数のノズルを有する色材出力ヘッドを主走査方向に移動させつつ前記複数のノズルから色材を出力してドット記録媒体上にドットを記録する主走査パスを複数回行い、かつ、複数の前記主走査パスの合間に前記色材出力ヘッドと前記ドット記録媒体との相対位置を前記副走査方向に移動させるドット記録システムであって、
前記複数の前記主走査パスは、前記複数のノズルのうち第1のノズルにより前記主走査方向に記録する複数のドットの間に、前記複数のノズルのうち前記第1のノズルとは異なるノズルによりドットを記録する主走査パスと、前記第1のノズルにより前記副走査方向に記録する複数のドットの間に、前記複数のノズルのうち前記第1のノズルとは異なるノズルによりドットを記録する主走査パスとを含み、
N回(Nは2以上の整数)の前記主走査パスにより第1の主走査ラインに対してドットの記録を完了する場合に、1回以上N回未満の前記主走査パスにおいてドットの記録を行わない間引き処理を実行する間引き処理部を備え、
前記間引き処理部は、前記第1の主走査ラインに対してドットの記録を行う前記主走査パスの順序を示す第1の主走査パス番号と、前記第1の主走査ラインに対して前記副走査方向に隣接する第2の主走査ラインに対してドットの記録を行う前記主走査パスの順序を示す第2の主走査パス番号とが近くなるように前記間引き処理を実行する、ドット記録システム。
この構成によれば、副走査方向に隣接する主走査ラインにおいてドット記録を行う主走査パスの順序を示す主走査パス番号が、隣接する主走査ライン同士で近くなるように、主走査パスに基づいて各主走査ライン上において間引かれるドット位置を選択するので、隣接する主走査ラインを記録する主走査パスの間に累積される副走査送り誤差を低減することができる。この結果、画質を過度に劣化させることなく、間引きによって色材使用量を削減することが可能である。
【0008】
[適用例2]
適用例1記載のドット記録システムであって、
前記間引き処理部は、前記第1の主走査パス番号と前記第2の主走査パス番号との差分が最も小さくなるように前記間引き処理を実行する、ドット記録システム。
この構成によれば、隣接する主走査ラインにおいてドット記録を実行する主走査パス番号の差分が最も小さくなる主走査パスだけを残して、他の主走査パスを間引くので、隣接する主走査ラインを記録する主走査パスの間に累積される副走査送り誤差を小さくすることができる。
【0009】
[適用例3]
適用例1または適用例2記載のドット記録システムであって、
前記間引き処理部は、前記第1の主走査パス番号と前記第2の主走査パス番号とが連続するように前記間引き処理を実行するドット記録システム。
この構成によれば、隣接する2つの主走査ラインの少なくとも一方においてドット記録を行う主走査パス番号と連続するので、隣接する主走査ラインを記録する主走査パスの間に累積される副走査送り誤差を極めて小さくすることが可能である。
【0010】
[適用例4]
適用例1ないし3のいずれかに記載のドット記録システムであって、
前記間引き処理部は、前記第2の主走査ラインにおいて間引き処理を実行してから、前記第1の主走査ラインにおいて前記間引き処理を実行する場合に、前記第2の主走査パス番号に基づいて、前記第1の主走査パス番号を決める前記間引き処理を行うドット記録システム。
この構成によれば、単純なアルゴリズムに従って、隣接する主走査ラインにおいてドット記録を行う主走査パスの順序を示す主走査パス番号が、隣接する主走査ライン同士で可能な限り近くすることが可能である。
【0011】
なお、本発明は、種々の形態で実現することが可能であり、例えば、印刷方法および印刷装置、色材出力装置、印刷制御方法および印刷制御装置、それらの方法または装置の機能を実現するためのコンピュータープログラム、そのコンピュータープログラムを記録した記録媒体等の形態で実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の一実施例における印刷システムの構成を示す説明図である。
【図2】第1実施例におけるドット記録方法を示す説明図である。
【図3】インクジェットプリンターで形成可能なインクドットの種類を示す説明図である。
【図4】比較例における間引き処理を示す説明図である。
【図5】第1実施例における間引き処理を示す説明図である。
【図6】第1実施例において間引き対象ドットを選択する方法の一例を示すフローチャートである。
【図7】間引き無しでの印刷と比較例の間引き処理による印刷と実施例の間引きによる印刷結果を示す概念図である。
【図8】第1実施例における比較例(市松模様間引き)を示す説明図である。
【図9】間引き無しでの印刷と比較例の間引き処理による印刷と実施例の間引きによる他の印刷結果を示す概念図である。
【図10】第2実施例におけるドット記録方法を示す説明図である。
【図11】第2実施例における間引き処理を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
次に、本発明の実施の形態を以下の順序で説明する。
A.装置の構成:
B.第1実施例:
C.第2実施例:
D.変形例
【0014】
A.装置の構成:
図1は、本発明の一実施例における印刷システムの構成を示す説明図である。この印刷システム300は、画像処理装置としてのパーソナルコンピューター100と、パーソナルコンピューター100に接続されたプリンター200と、を備えている。
【0015】
パーソナルコンピューター100は、CPU110と、メモリー120と、入出力インターフェース(I/F)部130と、を備えている。メモリー120は、印刷データ(ドットデータ)を格納するための出力バッファー32を有している。パーソナルコンピューター100には、アプリケーションプログラム10やプリンタードライバー20などの各種のコンピュータープログラムがインストールされている。アプリケーションプログラム10やプリンタードライバー20は、所定のオペレーティングシステム(図示せず)の下でCPU110により実行される。なお、プリンタードライバー20は、コンピューター100内にて機能しても良く、あるいは、プリンター200内にて機能してもよい。
【0016】
アプリケーションプログラム10は、例えば画像編集機能を実現するためのプログラムである。ユーザは、アプリケーションプログラム10の提供するユーザインターフェースを介して、アプリケーションプログラム10により編集された画像を印刷する指示を与えることができる。アプリケーションプログラム10は、ユーザより印刷の指示を受けると、プリンタードライバー20に印刷の対象となる画像データを出力する。なお、本実施例では、画像データはRGBデータとして出力される。
【0017】
プリンタードライバー20は、アプリケーションプログラム10から出力された画像データに基づき印刷データを生成する機能を実現するためのプログラムである。ここで、印刷データは、プリンター200が解釈できる形式のデータであって、各種のコマンドデータとドットデータとを含む。コマンドデータは、プリンター200に特定の動作の実行を指示するためのデータである。ドットデータは、印刷される画像(印刷画像)を構成する画素(印刷画素)におけるドットの形成状態を表すデータであり、具体的には、各印刷画素にどの色のどのサイズのドットを形成するか(あるいはドットを形成しないか)を示すデータである。ここで、「ドット」とは、プリンター200から出力されたインクが印刷媒体に着弾して形成される1つのインク領域をいう。
【0018】
プリンタードライバー20は、アプリケーションプログラム10から出力された画像データを印刷データに変換する機能を有しており、解像度変換処理部21と、色変換処理部22と、ハーフトーン処理部23と、ラスタライズ処理部24と、間引き処理部25とを有している。
【0019】
解像度変換処理部21は、アプリケーションプログラム10から出力された画像データの解像度をプリンター200の印刷解像度に一致するように変換する。色変換処理部22は、画像データの色変換処理を行う。本実施例で用いられるプリンター200は、シアン(C)、マゼンダ(M)、イエロー(Y)、ブラック(K)の各色のインクを用いて印刷を行うプリンターである。そのため、色変換処理部22は、RGB値で表された画素値をCMYK値に変換する。ハーフトーン処理部23は、色変換後の画素値に関してハーフトーン処理を行ってドットデータを形成する。ハーフトーン処理としては、例えば誤差拡散法や、ディザマトリクスを用いたディザ法を利用することができる。なお、本実施例で用いられるプリンター200は、小ドットと中ドットと大ドットとの、3種類のサイズのドットを形成可能なプリンターである。但し、プリンター200としては、形成可能なインクドットのサイズは3種類に限られるものでなく、1種類以上のサイズのドットを形成できるものを利用することが可能である。ラスタライズ処理部24は、ハーフトーン処理で得られたドットデータを、プリンター200に転送すべき順序に並び替える。間引き処理部25は、ドットデータに対して、後述する間引き処理を実行する。間引き処理後のドットデータは、一旦出力バッファー32に格納され、入出力インターフェース部130を介してプリンター200に出力される。
【0020】
本実施例のプリンター200は、印刷媒体にインクドットを形成して画像を印刷するインクジェットプリンターである。プリンター200は、CPU210と、メモリー220と、入出力インターフェース(I/F)部230と、CPU210からの指示に従って各種のユニットを制御するユニット制御回路240と、ヘッドユニット250と、キャリッジユニット260と、搬送ユニット270と、を備えている。
【0021】
ヘッドユニット250は、印刷媒体にインクを出力するための印刷ヘッド(図示せず)を有している。ヘッドユニット250は、各インク毎に複数のノズルを有しており、各ノズルから断続的にインクを出力する。このヘッドユニット250はキャリッジユニット260に搭載されており、キャリッジユニット260が所定の走査方向(主走査方向)に移動すると、ヘッドユニット250も主走査方向に移動する。ヘッドユニット250は、主走査方向に移動しつつ、ノズルからインクを断続的に出力することにより、主走査方向に沿ったドットラインを印刷媒体上に形成する。なお、本明細書において、主走査ラインを「ラスターライン」とも呼ぶ。
【0022】
キャリッジユニット260は、ヘッドユニット250を主走査方向に往復移動させるための駆動装置である。キャリッジユニット260には、ヘッドユニット250の他、インクを収容するインクカートリッジも着脱可能に保持されている。搬送ユニット270は、印刷媒体を搬送することによって副走査を行うための駆動装置である。搬送ユニット270は、例えば、給紙ローラ、搬送モータ、搬送ローラ、プラテン、及び排紙ローラ(図示せず)などによって構成される。なお、印刷媒体の代わりに、印刷ヘッドを副走査方向に搬送してもよい。
【0023】
B.第1実施例:
図2は、第1実施例におけるドット記録方法を示す説明図である。図2の左側には、ヘッドユニットに設けられているノズル列250nが示されている。このノズル列250nは、1種類のインク(例えば黒インク)を吐出するための10個のノズルを有している。他のインク用のノズル列は、図示が省略されている。実際のプリンターではインク1種類当たり数十〜数百個のノズルが設けられているが、ここでは図示の便宜上、少ないノズル数のノズル列が描かれている。個々のノズル位置に付された番号0〜9は、ノズルを識別する番号(ID)である。ノズルの副走査方向のピッチkは、例えば180dpiであり、印刷画素のピッチは例えば720dpiである。この場合に、ノズルピッチkは4[ドット]である。一般に、ピッチkは2以上の整数とすることが好ましい。ノズル列250nは、主走査方向(図の左右方向)に沿って主走査が実行される途中において、印刷媒体上にドットを記録する。図2において、「パス」は主走査パスを意味している。主走査パスが1回行われるたびに、ノズル列250nは副走査方向(図の上下方向)に移動する。この例では、副走査送り量は5ドットの一定値であり、16回分の主走査パスにおけるノズル列250nの位置が示されている。なお、実際には、印刷媒体が移動するが、ここでは図示の便宜上、ノズル列250nが移動するものとして描かれている。
【0024】
図2の右側に描かれた番号付きの丸印は、記録されるインクドットを示しており、丸の中の番号はノズル番号を示している。符号「L1」〜「L48」は、主走査ラインに付した連続番号である。例えば、主走査ラインL1上においては、8番ノズルと3番ノズルによって1画素ずつ交互にドット記録が行われる。図2の左側を参照すれば理解できるように、主走査ラインL1上の8番ノズルによるドット記録はパス1において実行され、3番ノズルによるドット記録はパス5において実行される。この例では、各主走査ライン上の全ドットの記録が2回の主走査パスによって完了する。換言すれば、各主走査ライン上の全ドットの記録が2個の異なるノズルによって実行される。このような印刷を「2パス印刷」と呼ぶ。また、本明細書において、N回の主走査により、N個のノズルを用いて各主走査ライン上のドット記録を実行する印刷を、「Nパス印刷」、「Nパスオーバーラップ印刷」、又は、単に「オーバーラップ印刷」と呼ぶ。なお、各主走査ラインの印刷を完了するために必要な主走査パスの回数Nは、2以上の任意の数に設定可能である。一般に、複数回の主走査パスで各ラスターラインの印刷を実行する理由は、印刷ヘッドの製造誤差や副走査送り誤差に起因してドットの記録位置が多少ずれる可能性があるため、異なる複数のノズルで1ラインを印刷してドットのずれを目立ちにくくすることによって、画質を向上させるためである。
【0025】
図3(A),(B)は、インクジェットプリンターで形成可能なインクドットの種類を示す説明図である。このプリンターは、1印刷画素の領域に大ドットと中ドットと小ドットの3種類のドットを形成可能である。大ドットは、主にベタ領域や高濃度領域を印刷するために使用され、小ドットは主に低濃度領域を印刷するために使用される。例えば、ベタ領域は大ドットのみで印刷される場合が多く、ハイライト領域(極低濃度領域)は小ドットのみで印刷される場合が多い。中ドットは、中間的な濃度領域において、大ドットや小ドットよりも多く使用される。図3(B)は、大ドットを用いて3×5画素のベタ領域を印刷した様子を示している。1画素の範囲は破線で示されている。なお、1画素の形状は横長の長方形の場合もあり、また、正方形の場合もある。大ドットは、1画素の領域を完全に包含する広い領域に広がるドットであり、中央の大ドットは、その周囲の8個の大ドットのそれぞれとの間にかなり大きな重なりがある。また、通常は、主走査方向(図の左右方向)にヘッドが進行しながらインクが吐出されるので、印刷媒体上ではドットが左右に大きく広がる傾向にある。従って、インク量削減のためにドットを間引く場合、主走査方向に沿って1画素おきに間引くようにすれば、画質劣化があまり目立たないという利点がある。
【0026】
図4(A)は、図2におけるドット記録方法の詳細を示している。ここでは、1つの枠が1画素を意味しており、1画素の枠内に、その画素におけるドット記録を実行する主走査パス番号とノズル番号とが示されている。なお、ここでは各主走査ライン上の4画素のみを図示しているが、これと同じパターンが水平方向に沿って多数回繰り返される。図4(B)は、本発明による間引き方法に対する比較例として、図4(A)の中の偶数列(主走査ライン上の偶数画素位置)のドットを間引いた例を示している。この比較例の間引き方法は、最も単純な間引き処理の例である。
【0027】
図5(A),(B)は、第1実施例における間引き処理の内容を示している。図5(A)は、図4(A)と同じであり、図2におけるドット記録方法の詳細を示している。第1実施例の間引き処理は、以下のような特徴を有している。
<特徴1>1列全部や1行全部を間引くことなく、主走査ラインの主走査パスに基づいて、各列や各行において、それぞれ一部のドットを間引く。
<特徴2>隣接する主走査ラインの間で、ドット記録を実行する主走査パス番号の差分がなるべく小さくなるように、各主走査ライン上でドット記録を実行する主走査パス番号を選択する。
【0028】
上記特徴1を採用する理由は、例えば図4(B)のように、列全体を間引くようにすると、その列が白抜けとして目立ってしまい、過度の画質劣化が生じるためである。行(主走査ライン)全体を間引く場合も同様である。
【0029】
上記特徴2を採用する理由は、隣接する主走査ラインにおけるドット記録を担当する主走査パスの間における副走査送り誤差を低減するためである。すなわち、通常は副走査送りのたびに送り誤差が発生するため、n回の副走査送りを間に挟んだ任意の2つの主走査パスの間には、n回分の副走査送り誤差が累積する。そこで、隣接する主走査ラインの間で、ドット記録を実行する主走査パス番号の差分が可能な限り小さくなるように、各主走査ライン上でドット記録を実行する主走査パス番号を選択すれば、これらの主走査ライン間の副走査送り誤差を低減することができる。この結果、隣接する主走査ラインにおけるインクの着弾位置のずれの累積が低減し、これに起因する画質劣化を低減することができる。
【0030】
このような第1実施例における間引き処理は、オーバーラップ印刷において過度の画質劣化を防止するための工夫がなされている(特に、上記特徴2)。この意味で、この間引き処理を、「オーバーラップ考慮ドット間引き」とも呼ぶ。
【0031】
図6は、第1実施例の間引き処理において間引き対象ドットを選択する方法の一例を示すフローチャートである。この処理は、間引き処理部25(図1)によって実行される。ステップS100では、処理対象のラスタライン(主走査ライン)が、間引き対象領域の最初のラスターラインであるか否かが判断される。なお、間引き対象領域か否かは、予め設定された判断基準によって判定可能である。例えば、大ドットのみで印刷される黒ベタ領域のみを間引き対象領域としてもよい。間引き対象領域の最初のラスターラインである場合には、ステップS100からステップS180に移行し、そのラスターライン内の全ドット位置(画素位置)を参照して、最も小さい主走査パス番号Aが取得される。図5(A)の場合には、ラインL1の全ドット位置のうちで最も小さいパス番号Aは1である。ステップS190では、そのラインL1内のドットのうち、パス番号A(=1)で記録されるドットが間引かれる(図5(B)参照)。
【0032】
ステップS100において、処理対象のラスターラインが最初のラスターラインでない場合には、ステップS110に移行し、当該ラスターラインの直前のラスターラインを参照して、その直前のラスターラインにおいて間引かれずに残っているドットのパス番号B(以下、「直前ライン記録パス番号B」と呼ぶ)が取得される。例えば、図5(A),(B)において、ラインL2が処理対象となっている場合に、その直前のラインL1において間引かれずに残っているドットのパス番号Bは、5である。
【0033】
ステップS120では、現在のラスターラインの全ドットを参照し、全ドットを記録するためのすべてのパス番号X1〜Xnが取得される。ステップS130では、これらのパス番号X1〜Xnと、直前ライン記録パス番号Bとの差分がそれぞれ算出され、ステップS140では、それらの絶対値の最小値を与えるパス番号Xiが取得される。そして、ステップS150では、処理対象ラスターライン上のドットのうち、差分の絶対値が最小値を与えるパス番号Xi以外のパスで記録されるドットが間引かれる。図5(A),(B)の例において、ラインL2が処理対象の場合には、B=5,X1=2,X2=6なので、Bとの差分の絶対値が最小値を与えるパス番号Xiは6である。従って、間引かれるドットは、パス番号2のドットである。
【0034】
こうして、1本のラスターライン上において間引かれるドットが決定されると、ステップS160において副走査方向の次のラスターラインが処理対象として選択される。そして、この処理が最後のラスターラインまで完了していなければ、ステップS170からステップS100に戻って、ステップS100〜S170の処理が繰り返される。この結果、図5(B)に示したように、上記特徴1〜2を有する間引き処理が実現される。
【0035】
図4(B)に示した比較例の間引き結果と、図5(B)に示した第1実施例の間引き結果は、いずれも間引き率が50%で同一である。発明者は、実際に、黒インクの大ドットで印刷されるベタ領域を720dpiで印刷して、比較例と実施例の間引き結果を比較した。但し、印刷ヘッドとしては、黒インク用のノズル数が180個でノズルピッチが180dpi(k=4)のものを使用した。また、副走査送り量は90ドットの一定値とした。
【0036】
図7(A)〜(C)は、間引き無しと、比較例(偶数列間引き)と、実施例(オーバーラップ考慮間引き)の3つの場合における黒ベタ領域の印刷結果を示す概念図である。比較例の偶数列間引きでは、縦スジ(副走査方向の白スジ)だけでなく、バンディングと呼ばれる横スジ状の濃度ムラが目立つ結果が得られた。この理由は、図4(B)に示すように、偶数列間引きの結果、隣接する主走査ラインのドット記録を担当する主走査パス番号の差が大きくなるので、その間の副走査送り誤差による着弾位置ズレがバンディングとして現れたものと推測される。このようなバンディングは、単に市松模様にドットを間引いた場合にも同様に発生する。この理由は、市松模様にドットを間引いた例を示す図8(B)にて示されるように、隣接する主走査ラインのドット記録を担当する主走査パス番号の差が大きくなる場合があり、その間の副走査送り誤差による着弾位置ズレがバンディングとして現れたものと推測される。一方、実施例の間引き処理を使用した場合には、図7(C)のように、縦スジも横スジ(バンディング)もほとんど発生せず、画質劣化がほとんど目立たないという良好な結果が得られた。実施例でバンディングの発生が抑制された理由は、隣接する主走査ラインの間で、ドット記録を実行するパス番号の差分が可能な限り小さくなるように、各主走査ライン上でドット記録を実行するパス番号が選択されているので、隣接ラインの間の着弾位置ズレが小さいからである。
【0037】
図9(A)〜(C)は、間引き無しと、比較例(偶数列間引き)と、実施例(オーバーラップ考慮間引き)の3つの場合における文字の印刷結果を示す概念図である。比較例の間引き処理による印刷では、文字の内部における縦スジや横スジが目立ち、また、エッジ部分においてもジャギーが目立つ結果が得られた。一方、実施例の間引き処理による印刷では、バンディングはほとんど発生せず、また、エッジ部分のジャギーも無視できる程度であった。
【0038】
このように、第1実施例の間引き処理では、上記特徴1〜2を有するオーバーラップ考慮ドット間引きを実行するので、画質を過度に劣化させることなくインク使用量を削減することが可能である。
【0039】
C.第2実施例:
図10は、第2実施例におけるドット記録方法を示す説明図である。図2との違いは副走査送り量だけであり、他の走査パラメータや装置構成は第1実施例と同じである。図10のドット記録方法において、副走査送り量は、(3ドット,3ドット,3ドット,11ドット)というパターンが繰り返されている。このように、複数種類の副走査送り量を用いる副走査方法は、「変則送り」とも呼ばれている。一方、図2のように、一定の副走査送り量を用いる副走査方法は、「定則送り」とも呼ばれている。変則送りも、定則送りと同様に、印刷対象領域内のすべての画素位置においてドットを記録できるようにするための走査方法である。
【0040】
図11は、第2実施例における間引き処理を示す説明図である。図11(B)の間引き処理結果は、図6に示した処理フローに即して実行されたものである。この結果を図5(B)と比較すれば理解できるように、変則送りの場合にも、定則送りの場合と同様に、オーバーラップ考慮ドット間引きを実行すれば、画質を過度に劣化させることなくインク使用量を削減することが可能である。
【0041】
D.変形例:
なお、この発明は上記の実施例や実施形態に限られるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の態様において実施することが可能であり、例えば次のような変形も可能である。
【0042】
D1.変形例1:
オーバーラップ考慮ドット間引き処理の特徴としては、上述した特徴1,2に加えて、以下のような特徴3,4の少なくとも一方を追加してもよい。
<特徴3>間引き処理は、大ドットのみによって印刷される領域において実行する。
<特徴4>間引かれるドットは、主走査方向に沿って1ドットおきに選択する。
【0043】
上記特徴3は、中ドットや小ドットが用いられる領域では間引き処理を実行しないことを意味している。この理由は、大ドットでは、隣接ドット間での重なりが大きいので、一部の大ドットを間引いても過度の画質劣化を生じないからである。一方、中ドットは隣接ドット間の重なりが少なく、また、小ドットでは隣接ドット間で重なりがほとんど生じないので、ドット間引きを行うと、画質劣化が目立つ傾向にある。
【0044】
上記特徴4を採用する理由は、図3に示したようにドットが主走査方向に広がる傾向にあるため、主走査方向に1ドットおきに間引くと、副走査方向に1ドットおきに間引く場合に比べて画質劣化が生じにくいからである。なお、パス数Nが3以上の場合には、連続したNドットのうちのQドット(QはNを2で除した商)を、非連続的な画素位置で間引くようにしてもよい。
【0045】
なお、上記特徴4の代わりに、「間引かれるドットは、主走査方向に沿って各3ドット毎に1ドットの割合で選択する」という特徴4aを採用してもよい。この特徴4aは、例えば大ドットの重なりがそれほど大きくない場合に、1/3のドットを間引くことによって、過度の画質劣化を防止しつつインク量を削減できるという利点がある。これらの特徴4,4aは、「間引かれるドットは、主走査方向に沿って各Tドット毎にSドットの割合で選択する(Tは2以上の整数、Sは1以上T未満の整数)」という特徴4bに一般化することが可能である。このような特徴4bは、例えば、図6のS150において、パス番号がXi以外のドットのうちの任意の数のドットを、変数Bとの差分の絶対値が大きい順に間引くことによって実現することができる。
【0046】
また、オーバーラップ考慮ドット間引き処理において、隣接する主走査ラインは、可能な限り、連続する主走査パスによって記録することが好ましい。図5(B)の例では、主走査ラインL1〜L4においてドット記録を実行する主走査パスのパス番号は5〜8であり、これらは連続していることが理解できる。これは、ラインL5〜L9、ラインL10〜L14,L15〜L19,L20〜L24…においても同様である。このように、ほとんどの主走査ラインにおいて、ドット記録を実行する主走査パスのパス番号が連続するように間引き処理を実行すれば、副走査送り誤差を低減することができ、副走査送り誤差による画質劣化を大幅に低減することが可能である。
【0047】
D2.変形例2:
上記実施例では、パス数が2であるオーバーラップ印刷について説明したが、本発明は、パス数Nが2以外の任意のオーバーラップ印刷に適用可能である。2回のパスでドット記録が完了する主走査ラインと、3回のパスでドット記録が完了する主走査ラインが存在する場合には、例えば、2回のパスでドット記録が完了する主走査ラインではドット間引きを行わずに、3回のパスでドット記録が完了する主走査ラインにおいてドット間引きを行うようにしてもよい。なお、部分オーバーラップ印刷の方法は、例えば、特開2007−203717号公報や特開2007−055202号公報に開示されている。
【0048】
D3.変形例3:
上記実施例では、印刷ヘッドを主走査方向に移動させていたが、印刷ヘッドの代わりに印刷用紙を移動させるようにしてもよい。
【0049】
D4.変形例4:
上記実施例では、インクジェットプリンターについて説明したが、本発明は、ファクシミリやコピー機などの他の画像記録装置にも適用可能である。また、本発明は、液晶ディスプレー等のカラーフィルタの製造に用いられる色材出力装置や、有機ELディスプレー、FED(電界放出ディスプレー)等の電極形成に用いられる電極材料出力装置、バイオチップ製造に用いられる生体有機物出力装置などの他の色材出力装置にも適用可能である。なお、本明細書において「印刷ヘッド」とは、プリンター等の画像記録装置に用いられる各種の記録ヘッド、液晶ディスプレー等のカラーフィルタの製造に用いられる色材出力ヘッド、有機ELディスプレー、FED(電界放出ディスプレー)等の電極形成に用いられる電極材料出力ヘッド、バイオチップ製造に用いられる生体有機物出力ヘッド等に相当するものである。また、本発明における「印刷媒体」又は「ドット記録媒体」は、紙に限らず、ドットが形成される媒体を意味している。
【符号の説明】
【0050】
10…アプリケーションプログラム
20…プリンタードライバー
21…解像度変換処理部
22…色変換処理部
23…ハーフトーン処理部
24…ラスタライズ処理部
25…間引き処理部
32…出力バッファー
100…パーソナルコンピューター
110…CPU
120…メモリー
130…入出力インターフェース部
200…プリンター
210…CPU
220…メモリー
230…入出力インターフェース部
240…ユニット制御回路
250…ヘッドユニット
250n…ノズル列
260…キャリッジユニット
270…搬送ユニット
300…印刷システム
【特許請求の範囲】
【請求項1】
副走査方向に複数のノズルを有する色材出力ヘッドを主走査方向に移動させつつ前記複数のノズルから色材を出力してドット記録媒体上にドットを記録する主走査パスを複数回行い、かつ、複数の前記主走査パスの合間に前記色材出力ヘッドと前記ドット記録媒体との相対位置を前記副走査方向に移動させるドット記録システムであって、
前記複数の前記主走査パスは、前記複数のノズルのうち第1のノズルにより前記主走査方向に記録する複数のドットの間に、前記複数のノズルのうち前記第1のノズルとは異なるノズルによりドットを記録する主走査パスと、前記第1のノズルにより前記副走査方向に記録する複数のドットの間に、前記複数のノズルのうち前記第1のノズルとは異なるノズルによりドットを記録する主走査パスとを含み、
N回(Nは2以上の整数)の前記主走査パスにより第1の主走査ラインに対してドットの記録を完了する場合に、1回以上N回未満の前記主走査パスにおいてドットの記録を行わない間引き処理を実行する間引き処理部を備え、
前記間引き処理部は、前記第1の主走査ラインに対してドットの記録を行う前記主走査パスの順序を示す第1の主走査パス番号と、前記第1の主走査ラインに対して前記副走査方向に隣接する第2の主走査ラインに対してドットの記録を行う前記主走査パスの順序を示す第2の主走査パス番号とが近くなるように前記間引き処理を実行する、ドット記録システム。
【請求項2】
請求項1記載のドット記録システムであって、
前記間引き処理部は、前記第1の主走査パス番号と前記第2の主走査パス番号との差分が最も小さくなるように前記間引き処理を実行する、ドット記録システム。
【請求項3】
請求項1または請求項2記載のドット記録システムであって、
前記間引き処理部は、前記第1の主走査パス番号と前記第2の主走査パス番号とが連続するように前記間引き処理を実行するドット記録システム。
【請求項4】
請求項1ないし3のいずれかに記載のドット記録システムであって、
前記間引き処理部は、前記第2の主走査ラインにおいて間引き処理を実行してから、前記第1の主走査ラインにおいて前記間引き処理を実行する場合に、前記第2の主走査パス番号に基づいて、前記第1の主走査パス番号を決める前記間引き処理を行うドット記録システム。
【請求項5】
請求項1ないし4のいずれかに記載のドット記録システムであって、
前記ドット記録システムは、インクジェットプリンターである、ドット記録システム。
【請求項6】
副走査方向に複数のノズルを有する色材出力ヘッドを主走査方向に移動させつつ前記複数のノズルから色材を出力ドット記録媒体上にドットを記録する主走査パスを複数回行い、かつ、複数の前記主走査パスの合間に前記色材出力ヘッドと前記ドット記録媒体との相対位置を前記副走査方向に移動させるドット記録方法であって、
前記複数の前記主走査パスは、前記複数のノズルのうち第1のノズルにより前記主走査方向に記録する複数のドットの間に、前記複数のノズルのうち前記第1のノズルとは異なるノズルによりドットを記録する主走査パスと、前記第1のノズルにより前記副走査方向に記録する複数のドットの間に、前記複数のノズルのうち前記第1のノズルとは異なるノズルによりドットを記録する主走査パスとを含み、
N回(Nは2以上の整数)の前記主走査パスにより第1の主走査ラインに対してドットの記録を完了する場合に、1回以上N回未満の前記主走査パスにおいてドットの記録を行わない間引き処理を実行し、
前記間引き処理において、前記第1の主走査ラインに対してドットの記録を行う前記主走査パスの順序を示す第1の主走査パス番号と、前記第1の主走査ラインに対して前記副走査方向に隣接する第2の主走査ラインに対してドットの記録を行う前記主走査パスの順序を示す第2の主走査パス番号とが近くなるように前記間引き処理を実行する、ドット記録方法。
【請求項7】
副走査方向に複数のノズルを有する色材出力ヘッドを主走査方向に移動させつつ前記複数のノズルから色材を出力してドット記録媒体上にドットを記録する主走査パスを複数回行い、かつ、複数の前記主走査パスの合間に前記色材出力ヘッドと前記ドット記録媒体との相対位置を前記副走査方向に移動させるドット記録装置を用いたドット記録を行うために、前記ドット記録装置に供給すべき印刷データをコンピューターに生成させるコンピュータープログラムであって、
前記複数の前記主走査パスは、前記複数のノズルのうち第1のノズルにより前記主走査方向に記録する複数のドットの間に、前記複数のノズルのうち前記第1のノズルとは異なるノズルによりドットを記録する主走査パスと、前記第1のノズルにより前記副走査方向に記録する複数のドットの間に、前記複数のノズルのうち前記第1のノズルとは異なるノズルによりドットを記録する主走査パスとを含み、
N回(Nは2以上の整数)の前記主走査パスにより主走査ラインに対してドットの記録を完了する場合に、1回以上N回未満の前記主走査パスにおいてドットの記録を行わない間引き処理を実行し、
前記間引き処理において、前記第1の主走査ラインに対してドットの記録を行う前記主走査パスの順序を示す第1の主走査パス番号と、前記第1の主走査ラインに対して前記副走査方向に隣接する第2の主走査ラインに対してドットの記録を行う前記主走査パスの順序を示す第2の主走査パス番号とが近くなるように前記間引き処理を実行する機能を、前記コンピューターに実現させるコンピュータープログラム。
【請求項1】
副走査方向に複数のノズルを有する色材出力ヘッドを主走査方向に移動させつつ前記複数のノズルから色材を出力してドット記録媒体上にドットを記録する主走査パスを複数回行い、かつ、複数の前記主走査パスの合間に前記色材出力ヘッドと前記ドット記録媒体との相対位置を前記副走査方向に移動させるドット記録システムであって、
前記複数の前記主走査パスは、前記複数のノズルのうち第1のノズルにより前記主走査方向に記録する複数のドットの間に、前記複数のノズルのうち前記第1のノズルとは異なるノズルによりドットを記録する主走査パスと、前記第1のノズルにより前記副走査方向に記録する複数のドットの間に、前記複数のノズルのうち前記第1のノズルとは異なるノズルによりドットを記録する主走査パスとを含み、
N回(Nは2以上の整数)の前記主走査パスにより第1の主走査ラインに対してドットの記録を完了する場合に、1回以上N回未満の前記主走査パスにおいてドットの記録を行わない間引き処理を実行する間引き処理部を備え、
前記間引き処理部は、前記第1の主走査ラインに対してドットの記録を行う前記主走査パスの順序を示す第1の主走査パス番号と、前記第1の主走査ラインに対して前記副走査方向に隣接する第2の主走査ラインに対してドットの記録を行う前記主走査パスの順序を示す第2の主走査パス番号とが近くなるように前記間引き処理を実行する、ドット記録システム。
【請求項2】
請求項1記載のドット記録システムであって、
前記間引き処理部は、前記第1の主走査パス番号と前記第2の主走査パス番号との差分が最も小さくなるように前記間引き処理を実行する、ドット記録システム。
【請求項3】
請求項1または請求項2記載のドット記録システムであって、
前記間引き処理部は、前記第1の主走査パス番号と前記第2の主走査パス番号とが連続するように前記間引き処理を実行するドット記録システム。
【請求項4】
請求項1ないし3のいずれかに記載のドット記録システムであって、
前記間引き処理部は、前記第2の主走査ラインにおいて間引き処理を実行してから、前記第1の主走査ラインにおいて前記間引き処理を実行する場合に、前記第2の主走査パス番号に基づいて、前記第1の主走査パス番号を決める前記間引き処理を行うドット記録システム。
【請求項5】
請求項1ないし4のいずれかに記載のドット記録システムであって、
前記ドット記録システムは、インクジェットプリンターである、ドット記録システム。
【請求項6】
副走査方向に複数のノズルを有する色材出力ヘッドを主走査方向に移動させつつ前記複数のノズルから色材を出力ドット記録媒体上にドットを記録する主走査パスを複数回行い、かつ、複数の前記主走査パスの合間に前記色材出力ヘッドと前記ドット記録媒体との相対位置を前記副走査方向に移動させるドット記録方法であって、
前記複数の前記主走査パスは、前記複数のノズルのうち第1のノズルにより前記主走査方向に記録する複数のドットの間に、前記複数のノズルのうち前記第1のノズルとは異なるノズルによりドットを記録する主走査パスと、前記第1のノズルにより前記副走査方向に記録する複数のドットの間に、前記複数のノズルのうち前記第1のノズルとは異なるノズルによりドットを記録する主走査パスとを含み、
N回(Nは2以上の整数)の前記主走査パスにより第1の主走査ラインに対してドットの記録を完了する場合に、1回以上N回未満の前記主走査パスにおいてドットの記録を行わない間引き処理を実行し、
前記間引き処理において、前記第1の主走査ラインに対してドットの記録を行う前記主走査パスの順序を示す第1の主走査パス番号と、前記第1の主走査ラインに対して前記副走査方向に隣接する第2の主走査ラインに対してドットの記録を行う前記主走査パスの順序を示す第2の主走査パス番号とが近くなるように前記間引き処理を実行する、ドット記録方法。
【請求項7】
副走査方向に複数のノズルを有する色材出力ヘッドを主走査方向に移動させつつ前記複数のノズルから色材を出力してドット記録媒体上にドットを記録する主走査パスを複数回行い、かつ、複数の前記主走査パスの合間に前記色材出力ヘッドと前記ドット記録媒体との相対位置を前記副走査方向に移動させるドット記録装置を用いたドット記録を行うために、前記ドット記録装置に供給すべき印刷データをコンピューターに生成させるコンピュータープログラムであって、
前記複数の前記主走査パスは、前記複数のノズルのうち第1のノズルにより前記主走査方向に記録する複数のドットの間に、前記複数のノズルのうち前記第1のノズルとは異なるノズルによりドットを記録する主走査パスと、前記第1のノズルにより前記副走査方向に記録する複数のドットの間に、前記複数のノズルのうち前記第1のノズルとは異なるノズルによりドットを記録する主走査パスとを含み、
N回(Nは2以上の整数)の前記主走査パスにより主走査ラインに対してドットの記録を完了する場合に、1回以上N回未満の前記主走査パスにおいてドットの記録を行わない間引き処理を実行し、
前記間引き処理において、前記第1の主走査ラインに対してドットの記録を行う前記主走査パスの順序を示す第1の主走査パス番号と、前記第1の主走査ラインに対して前記副走査方向に隣接する第2の主走査ラインに対してドットの記録を行う前記主走査パスの順序を示す第2の主走査パス番号とが近くなるように前記間引き処理を実行する機能を、前記コンピューターに実現させるコンピュータープログラム。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2010−179576(P2010−179576A)
【公開日】平成22年8月19日(2010.8.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−25561(P2009−25561)
【出願日】平成21年2月6日(2009.2.6)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年8月19日(2010.8.19)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年2月6日(2009.2.6)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】
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