説明

ドラム式洗濯機

【課題】電力等の消費を少なくして、風路への泡の浸入を防止して洗浄効果を高める。
【解決手段】ドラム4内に乾燥用空気を導入する風路10と、ドラム4内に乾燥用空気を送風する送風用ファン(送風手段)13と、風路10に流入する泡を検知する泡検知手段21と、モータ9および送風用ファン13等を制御する制御手段25とを備え、泡検知手段21は、風路10の吹き出し口11から送風用ファン13に至るまでの風路10内に、送風方向の離れた位置に複数設け、洗い工程において、洗濯物がドラム4内で叩き洗いされる低速回転と、洗濯物がドラム4の内周面に張り付く高速回転をおこなうとともに、泡検知手段21により風路10内への泡の流入を検知すると送風用ファン13を動作し、上方から吹き下ろすように送風して風路10内の泡を水槽3側へ流出させるようにしたものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、衣類等の洗濯物の洗濯および乾燥をおこなうドラム式洗濯機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の乾燥機能を備えたドラム式洗濯機は、ドラム内と連通した乾燥装置を設け、洗濯物を収容したドラム内に乾燥用空気を送風するようにしている。乾燥装置は、ドラム内の洗濯物と接触して水分を奪った湿った空気を除湿する除湿手段と、冷却除湿された空気を加熱する加熱手段と、加熱された空気をドラム内へ送風する送風手段と、ドラム内に乾燥用空気を循環させる送風口および流出口等を有する構成が一般的である。
【0003】
洗い工程では、洗剤が溶け込んだ洗濯水を水槽に溜めた状態で、ドラムを回転させると泡が発生する。特に、汚れの程度に対して洗剤が適量以上に多く投入された場合や、ドラムの回転速度が速い場合は、多量の泡が発生し、乾燥用空気をドラム内へ送風する送風口から泡が浸入すると、ファンモータ等の電気部品を有する乾燥装置に不具合を生じさせる原因となることから、乾燥装置への泡の浸入を防止することが考えられている。
【0004】
その一例は、複数の1対の電極で泡の発生を検知し、洗濯動作を弱める、或いは、給水を停止する、さらには、洗濯水を排水する等によって泡の増大を防止して風路への浸入を阻止するようにしたものがある(例えば、特許文献1参照)。
【0005】
また、洗剤濃度を検知する第1の導電度センサと、風路内に浸入してくる泡を検知する第2の導電度センサを設け、洗剤濃度が高い場合は、給排水により洗剤濃度を低くして泡立ちを防ぎ、風路内に泡の浸入を検知した場合は、ドラムの回転を停止して泡の浸入を阻止することにより、風路内に設けられている送風機構までの到達を防止するようにしたものがある(例えば、特許文献2参照)。
【0006】
他の例は、発生した泡に熱風を吹き付けて泡を消すようにしたものがある(例えば、特許文献3参照)。図4は、特許文献3に記載された従来のドラム式洗濯機の概略構成図である。図4において、洗い工程での泡発生時の動作を簡略に述べる。洗濯槽51内に投入された洗濯衣類52の量に対して適量の水が水槽53内に給水された後、洗濯槽51が回転し、洗濯が開始される。この時、洗濯物の汚れに対して洗剤の量が多い場合等に、多量の泡54が発生し、乾燥時に温風が送風される送風路55内に浸入してくる。
【0007】
水槽53および洗濯槽51内で発生した泡54は、水槽53内の上部に設置された発泡検知センサ56に接触し、泡の発生が検知されると、吸気切り替え弁57によって外気導入口58から送風路55への風路が開放される。送風用ファン59によって外気が送風路55内へ導入され、途中に設けられたヒーターユニット60内においてヒーター61で加熱された後、矢印の方向に送風され、吹き出し口62から洗濯槽51内に熱風が吹き込まれる。発生した泡54が熱風によって温められると、泡54の形態を維持するための表面張力が低下し、破泡することによって消泡するようにしたものである。
【0008】
さらに、洗い工程時に送風機を駆動し、風路への泡の浸入を防止することが考えられている(例えば、特許文献4参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2006−136601号公報
【特許文献2】特開2008−110002号公報
【特許文献3】特開2008−73126号公報
【特許文献4】特開2008−6063号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、特許文献1、2に記載された従来の構成では、運転中の泡の異常発生を検知すると、ドラムの回転を一時的に停止、或いは、洗濯動作を弱めることや、洗濯水を追加給水した後、排水して洗剤濃度を低下させる等により、泡の発生を抑え、送風路への泡の浸入による不具合を防止するようにしたものであり、その結果、洗濯時間が長くなり、また、余分な給水をすることで水と洗剤が無駄になるという問題があった。
【0011】
また、特許文献3に記載された従来の構成では、消泡用の熱風を発生させるために加熱エネルギーが消費され、洗濯時の消費電力量が多くなるという問題があった。また、特許文献4に記載された従来の構成では、泡が液化し風路を伝って落下してくると、送風によって水槽へ戻すことができず、風路への泡の浸入を防止することができないという問題があった。
【0012】
そして、洗い工程において、洗濯物がドラムの内周面に張り付く速度でドラムを高速回転させると、洗浄効果を高めることができるが、泡が発生しやすくなり、風路への泡の浸入を防止することが一層難しくなることから、洗浄効果と泡の浸入防止の両立が課題であった。
【0013】
本発明は、前記従来の課題を解決するもので、洗濯時間が長くなることがなく、電力等の消費を少なくして、風路への泡の浸入を防止して洗浄効果を高めたドラム式洗濯機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
前記従来の課題を解決するために、本発明のドラム式洗濯機は、ドラム内に乾燥用空気を導入する風路と、前記風路を通して前記ドラム内に乾燥用空気を送風する送風手段と、前記風路に流入する泡を検知する泡検知手段と、前記モータおよび前記送風手段等を制御し、洗い、すすぎ、脱水、乾燥の各工程を制御する制御手段とを備え、前記泡検知手段は、前記風路の吹き出し口から前記送風手段に至るまでの前記風路内に、送風方向の離れた位置に複数設け、前記制御手段は、洗い工程において、洗濯物が前記ドラム内で叩き洗いされる低速回転と、洗濯物が前記ドラムの内周面に張り付く高速回転をおこなうとともに、前記泡検知手段により前記風路内への泡の流入を検知すると前記送風手段を動作し、上方から吹き下ろすように送風して前記風路内の泡を水槽側へ流出させるようにしたものである。
【0015】
これによって、洗い工程で泡を検知した場合でも洗濯時間が長くなることがなく、電力等の消費を少なくして、風路への泡の浸入を防止することができるとともに、洗浄効果を高めることができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明のドラム式洗濯機は、風路への泡の浸入を防止することができるとともに、洗浄効果を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の実施の形態1におけるドラム式洗濯機の断面図
【図2】同ドラム式洗濯機の風路の要部斜視図
【図3】同ドラム式洗濯機の洗い工程の動作を示すタイムチャート
【図4】従来のドラム式洗濯機の概略構成図
【発明を実施するための形態】
【0018】
第1の発明は、筐体内に弾性支持した水槽と、前記水槽内に回転可能に設けた有底筒状のドラムと、前記ドラムを回転駆動するモータと、前記ドラム内に乾燥用空気を導入する風路と、前記風路を通して前記ドラム内に乾燥用空気を送風する送風手段と、前記風路に流入する泡を検知する泡検知手段と、前記モータおよび前記送風手段等を制御し、洗い、すすぎ、脱水、乾燥の各工程を制御する制御手段とを備え、前記泡検知手段は、前記風路の吹き出し口から前記送風手段に至るまでの前記風路内に、送風方向の離れた位置に複数設け、前記制御手段は、洗い工程において、洗濯物が前記ドラム内で叩き洗いされる低速回転と、洗濯物が前記ドラムの内周面に張り付く高速回転をおこなうとともに、前記泡検知手段により前記風路内への泡の流入を検知すると前記送風手段を動作し、上方から吹き下ろすように送風して前記風路内の泡を前記水槽側へ流出させるようにしたことにより、洗濯物がドラムの内周面に張り付くような高速でドラムを回転させた場合に、泡が多量に発生し、乾燥用空気を送風する風路内に浸入してきた場合においても、風路の送風方向の離れた位置に複数配設された泡検知手段によって泡の浸入を検知すると、送風手段によって上方から吹き下ろすように送風し、風路内の泡を吹き出し口から水槽側へ流出させることができるので、ドラムの回転動作を一時的に弱めたり、停止させることなく、また、消泡用の熱風を発生させるための加熱エネルギーを消費することなく、また、泡が液化して風路を伝って浸入してくることなく、風路内に配設した送風手段等への泡の浸入を的確に防止することができる。また、泡検知手段を風路の送風方向の離れた位置に複数設けたことにより、泡の浸入を複数の段階で検知することができ、風路への泡の浸入の程度に応じて送風量を調整することができ、発生量が多いと風路の奥深くまで浸入するため、送風量を多く風速を速めることで浸入した泡を風路から確実に押し出すことができるようになる。これにより、洗い工程でのドラムの高速回転が可能になり、洗濯物に含まれた多量の洗濯水を高速回転による遠心力によって洗濯物から十分に排出することができ、繊維中から汚れの溶解した洗濯水を効果的に除去して洗浄効果を高めることができる。したがって、泡の浸入を防止することと、洗浄効果を高めることを同時に実現することができる。
【0019】
第2の発明は、特に、第1の発明の制御手段は、洗い工程におけるドラムの高速回転時に泡検知手段に通電し、風路内に浸入した泡を検知可能に構成したことにより、洗い工程で泡の発生が多くなるときに泡の浸入を検知可能な状態とすることができ、電力の消費を少なくして風路への泡の浸入を的確に防止することができる。
【0020】
第3の発明は、特に、第1または第2の発明の制御手段は、すすぎ工程におけるドラムの高速回転時に泡検知手段に通電し、風路内に浸入した泡を検知可能に構成したことにより、すすぎ工程で泡の発生が多くなるときに泡の浸入を検知可能な状態とすることができ、電力の消費を少なくして風路への泡の浸入を的確に防止することができる。
【0021】
第4の発明は、特に、第1〜第3のいずれか1つの発明の制御手段は、泡検知手段により検知した信号の出力間隔が短いほど、送風手段により送風する風量が多くなるようにしたことにより、複数の各々の泡検知手段によって泡を検知するまでの時間差を計測することで、泡の浸入速度、すなわち、泡の増大状況に対して浸入を阻止する最適な送風量で押し戻すことができるようになり、風路への泡の浸入を的確に防止することができる。
【0022】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。なお、この実施の形態によって本発明が限定されるものではない。
【0023】
(実施の形態1)
図1は、本発明の第1の実施の形態におけるドラム式洗濯機の断面図、図2は、同ドラム式洗濯機の風路の要部斜視図、図3は、同ドラム式洗濯機の洗い工程の動作を示すタイムチャートである。
【0024】
図1〜図3において、ドラム式洗濯機の筐体1内にダンパ2等で弾性支持した水槽3が設けられている。水槽3内には有底円筒状のドラム4が回転可能に設けられ、その回転軸5は前上がりに傾斜している。ドラム4の内周側面には回転軸5方向に向かって内方へ突出させた複数のバッフル6と、水槽3内と連通する多数の透孔7が設けられ、前面側には洗濯物Aを出し入れする開口部8が設けられている。
【0025】
水槽3の後面にドラム4を回転駆動するモータ9が取り付けられている。このモータ9はブラシレス直流モータで構成され、インバータ制御によって回転速度が自在に変化させることができるようになっている。水槽3内に洗濯水を給水する給水手段としての給水弁(図示せず)によって水槽3内に洗濯水を供給し、水槽3内に供給された洗濯水は透孔7からドラム4内に流入する。
【0026】
水槽3の後面からドラム4内に乾燥用空気を導入する風路10が設けられている。風路10の出口側に設けた吹き出し口11から水槽3およびドラム4内に乾燥用空気を吹き出す。水槽3およびドラム4内の乾燥用空気は、水槽3の上方前部に設けた吸い込み口12から流出し、風路10に流入する。
【0027】
風路10を通してドラム4内に乾燥用空気を送風する送風手段としての送風用ファン13は、ファンモータ14によって駆動され、送風用ファン13によって風路10に送風される乾燥用空気は、風路10を通って水槽3およびドラム4内へ循環する。
【0028】
風路10内には、吸い込み口12から風路10に流入した乾燥用空気を除湿する除湿手段15と、除湿手段15で冷却除湿された乾燥用空気を加熱する加熱手段16を設けている。除湿手段15および加熱手段16は、ヒートポンプ装置17で構成されている。
【0029】
ヒートポンプ装置17は、冷媒を圧縮する圧縮機18と、圧縮後の高温高圧の冷媒の熱を放熱する加熱手段としての凝縮器16と、高圧の冷媒の圧力を減圧するためのキャピラリーチューブからなる絞り手段19と、減圧されて低圧となった冷媒が周囲から熱を奪う除湿手段としての蒸発器15を冷媒が循環するように管路20で連結している。
【0030】
送風用ファン13によって送風される乾燥用空気は、ヒートポンプ装置17の蒸発器15で冷却除湿され、凝縮器16で加熱されて吹き出し口11からドラム4内へ供給され、ドラム4内で洗濯物Aと接触し水分を奪って湿った空気は、吸い込み口12から風路10に戻り、水槽3の上部で前方から後方へ流れて循環する。
【0031】
風路10の吹き出し口11の近傍には、風路10内に流入する泡を検知する泡検知手段21を設けている。泡検知手段21は、風路10内に近接して設けた一対の電極により構成され、その形状は板状または針状に形成している。一対の両電極に風路10内に浸入してきた泡が接触すると電極間が導通し、電流が流れることによって泡が検知される。
【0032】
泡検知手段21は、風路10の吹き出し口11から送風手段13に至るまでの風路10内に、送風方向の離れた位置に所定の間隔Lで複数設けている。泡検知手段21は、吹き出し口11から第1のセンサ21a、第2のセンサ21b、第3のセンサ21cの順に3箇所に設けている。
【0033】
一対の電極は、風路10内の中空に分離して近接配置するほか、基板上に電極を設けて構成することができる。さらに、電気的導通以外の手段によって泡を検知するようにしてもよい。
【0034】
ヒートポンプ装置17と送風用ファン13およびファンモータ14は、水槽3の上方に配設され、送風用ファン13によって送風される乾燥用空気は、水槽3の後面に設けた吹き出し口11に向かって下方に延びた風路10を上方から吹き下ろすように送風する。
【0035】
水槽3内の洗濯水は、排水弁22を開くことにより排水路23を通して機外へ排水される。また、筐体1の前面に設けた開閉自在な扉24を開くことにより、ドラム4の前面側に設けた開口部8から洗濯物Aを出し入れすることができる。
【0036】
筐体1内に設けた制御手段25は、モータ9、ヒートポンプ装置17の圧縮機18、送風手段としてのファンモータ14等を駆動し、洗濯、すすぎ、脱水、乾燥の各工程を逐次制御する。また、制御手段25は、泡検知手段21の第1のセンサ21a、第2のセンサ21b、第3のセンサ21cの各々から出力される泡検知信号を処理する信号処理部を含んでいる。なお、矢印イは、乾燥用空気の流れる方向を示し、矢印ロは、風路10に浸入してくる泡の流れる方向を示している。
【0037】
以上のように構成されたドラム式洗濯機において、以下その動作、作用を説明する。筐体1の前面側に開閉自在に設けた扉24を開いて開口部8からドラム4内に洗濯物Aを投入し、筐体1の上面前部に設けた操作部26の電源スイッチ(図示せず)をオンし、スタートスイッチ(図示せず)を操作して運転を開始すると、布量検知手段27によって投入された洗濯物の量が検知される。
【0038】
洗濯は、洗い工程、すすぎ工程、脱水工程の順に実行されるが、ここでは、図3のタイムチャートに基づき、洗い工程について詳細に説明する。本発明の洗い工程は、投入された洗濯物の量の判定に続いて開始され、検知した洗濯物の重量によってあらかじめ設定された水量が水槽3内へ導入され、所定量の洗剤を投入する。水槽3内に供給された洗濯水は透孔7からドラム4内に流入する。
【0039】
洗濯が開始され、洗い工程に入ると、制御手段25はモータ9を駆動し、洗濯物がドラム4内に設けられたバッフル6によってドラム4の回転方向に沿って持ち上げられ、ドラム4内の上部から重力によって落下し、落下時の機械力が洗濯物に効果的に加えられる回転速度、例えば、30〜50r/minに設定され、洗濯物の量にも依存するが、好ましくは40r/minであり、図3に示すように、正転と反転の動作を交互に繰り返す。これにより、洗濯物がドラム4内で叩き洗いされる。
【0040】
洗い工程は、洗濯物を叩き洗いする低速回転と、洗濯物がドラム4の内周面に張り付く高速回転をおこなう。高速回転でのドラム4の回転速度は、洗濯物に含まれている洗濯水を遠心力によって強制的に排出することができるように、例えば、150〜300r/minに設定され、好ましくは200r/minである。高速回転は、洗い工程時に少なくとも1回または複数回実行される。高速回転の時間は、低速回転の時間より短く設定している。
【0041】
これにより、ドラム4を高速で回転させることによる遠心力によって、洗濯物の繊維の間の洗濯水を除去することができ、連続的に繊維間の洗濯水の置換を行い、洗浄効果を高めることができる。
【0042】
洗い工程では、洗剤の溶け込んだ洗濯水が水槽3の底部に溜められた状態であるため、
ドラム4の下部が洗濯水に浸かった状態である。したがって、ドラム4を200r/minの高速で回転させると、洗濯水を撹拌して泡を発生させる。
【0043】
そのため、洗濯物がドラム4に張り付く高速で回転させると同時に泡検知手段21に通電し、風路10内に流入してきた泡を検知可能な状態にしている。そして、泡が電極に接触して泡検知手段21が泡の浸入を検知すると、送風手段13を動作させ、上方から吹き下ろすように送風して風路10内の泡を吹き出し口11から水槽3側へ流出させる。
【0044】
これにより、風路10に浸入した泡が風路10内で液化した場合でも、風路10内に配設されている送風手段21等に向かって流れ込むことがなく、送風によって容易に風路10から水槽3側へ押し出すことができる。
【0045】
風路10に3箇所に設けた泡検知手段21は、吹き出し口11から上方へ、第1のセンサ21a、第2のセンサ21b、第3のセンサ21cの順に、送風方向の離れた位置に所定の間隔Lで設けてあり、制御手段25は、泡検知手段21の第1のセンサ21a、第2のセンサ21b、第3のセンサ21cにより検知した信号の出力間隔が短いほど、送風手段13により送風する風量が多くなるようにしている。
【0046】
表1は、泡検知手段21の各センサ21a、21b、21cで検知した検知信号の間隔と、送風用ファン13による送風量の関係を示している。
【0047】
【表1】

【0048】
水槽3およびドラム4内で発生した泡が、吹き出し口11から風路10内に浸入し、第1のセンサ21aに接触すると、送風用ファン13による送風量を小とする。そして、第1のセンサ21aに続いて第2のセンサ21bでも泡を検知し、その時間の間隔が3秒以内であると、泡は引き続き勢いをもって増加し浸入してきていると判断し、送風用ファン13による送風量のレベルを一ランク上げて中とする。
【0049】
ここで、第1のセンサ21aで泡を検知してから第2のセンサ21bで泡を検知するまでの時間が3秒から5秒であると、泡の増加が抑制されていると判断し、送風量を小にして泡を押し返すようにする。さらに、5秒より長く時間がかかっている場合は、泡の浸入が抑えられていると判断し、送風量を小のままで第1のセンサ21aからの検知信号が無くなるまで送風を続けることとする。
【0050】
そして、泡の勢いが強く、第2のセンサ21bに続いて第3のセンサ21cでも泡を検知し、その時間の間隔が3秒以内であると、送風用ファン13による送風量を大とし、最も高いレベルでの送風量で泡を風路10から押し出すようにする。
【0051】
以下同様に、第2のセンサ21bで泡を検知してから第3のセンサ21cで泡を検知するまでの時間が3秒から5秒であると、送風量を中とし、さらに、5秒より長く時間がかかっている場合は、泡の浸入が抑えられていると判断し、送風量を小にして第1のセンサ21aからの検知信号が無くなるまで送風を続けることとする。
【0052】
なお、送風量の大、中、小は、例えば、大が送風用ファン13の送風能力の100%出力、中が50%出力、小が20%出力とするものとする。
【0053】
これにより、複数の泡検知手段21によって泡を検知するまでの時間差を計測することで、泡の浸入速度、すなわち、泡の増大状況に対して浸入を阻止する最適な送風量で押し戻すことができるようになり、風路10への泡の浸入を的確に防止することができる。
【0054】
送風により泡検知手段21から泡が水槽3側へ押し戻され、泡検知手段21から離れると泡検知がなくなる。泡検知手段21は、ドラム4の回転が高速から低速に移行してからONからOFFへ切替え、送風手段13は、ドラム4の回転が低速に移行してからさらに所定時間t1後に停止することにより、風路10内の泡をより確実に水槽3側へ流出させることができる。
【0055】
次に、洗い工程に続いて、すすぎ工程が実行される。このすすぎ工程においても、洗い工程と同様に、洗濯物がドラム4の内周面に張り付く高速回転をおこなうとともに、ドラム4の高速回転時に泡検知手段21に通電し、風路10内に流入した泡を検知可能にしている。これにより、すすぎ工程で泡の発生が多くなるときに泡の浸入を検知可能な状態とすることができ、風路10への泡の浸入を的確に防止することができる。
【0056】
以上のように、本発明のドラム式洗濯機は、風路10の吹き出し口11から送風手段13に至るまでの風路10内に、送風方向の離れた位置に泡検知手段21を複数設け、洗い工程において、洗濯物がドラム4内で叩き洗いされる低速回転と、洗濯物がドラム4の内周面に張り付く高速回転をおこなうとともに、泡検知手段21により風路10内への泡の流入を検知すると送風手段13を動作し、上方から吹き下ろすように送風して風路10内の泡を水槽3側へ押し戻すようにしたものであり、泡の浸入を複数の段階で検知することができ、風路10への泡の浸入の程度に応じて送風量を調整することができる。泡の発生量が多いと風路10の奥深くまで浸入するため、送風量を多く風速を速めることで浸入した泡を風路10から確実に押し出すことができるようになる。これにより、洗い工程でのドラム4の高速回転が可能になり、洗濯物に含まれた多量の洗濯水を高速回転による遠心力によって洗濯物から十分に排出することができ、繊維中から汚れの溶解した洗濯水を効果的に除去して洗浄効果を高めることができる。したがって、風路10内への泡の浸入を防止することと、洗浄効果を高めることを同時に実現することができる。
【0057】
なお、送風手段13は、泡検知手段21が泡の浸入を検知すると動作させるようにしているが、ドラム4が高速回転へ移行すると同時に送風手段13を動作させると、泡検知手段21によって泡の浸入を検知する前に吹き出し口11から送風することができ、泡の発生が多くなった場合でも吹き出し口11から風路10内へ浸入し難くすることができる。
【0058】
また、泡検知手段21の一対の電極を近接して風路10に設けているので、ドラム4の高速回転時に飛散して吹き出し口11から風路10内へ浸入した場合等、泡が水槽3内の洗濯水と繋がっていないときでも確実に泡の浸入を検知することができ、送風によって風路10から吹き出し口11外へ排出することができる。
【産業上の利用可能性】
【0059】
以上のように、本発明にかかるドラム式洗濯機は、風路への泡の浸入を防止することが
できるとともに洗浄効果を高めることができるので、ドラム式洗濯機として有用である。
【符号の説明】
【0060】
1 筐体
3 水槽
4 ドラム
9 モータ
10 風路
11 吹き出し口
13 送風用ファン(送風手段)
21 泡検知手段
25 制御手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
筐体内に弾性支持した水槽と、前記水槽内に回転可能に設けた有底筒状のドラムと、前記ドラムを回転駆動するモータと、前記ドラム内に乾燥用空気を導入する風路と、前記風路を通して前記ドラム内に乾燥用空気を送風する送風手段と、前記風路に流入する泡を検知する泡検知手段と、前記モータおよび前記送風手段等を制御し、洗い、すすぎ、脱水、乾燥の各工程を制御する制御手段とを備え、前記泡検知手段は、前記風路の吹き出し口から前記送風手段に至るまでの前記風路内に、送風方向の離れた位置に複数設け、前記制御手段は、洗い工程において、洗濯物が前記ドラム内で叩き洗いされる低速回転と、洗濯物が前記ドラムの内周面に張り付く高速回転をおこなうとともに、前記泡検知手段により前記風路内への泡の流入を検知すると前記送風手段を動作し、上方から吹き下ろすように送風して前記風路内の泡を前記水槽側へ流出させるようにしたドラム式洗濯機。
【請求項2】
制御手段は、洗い工程におけるドラムの高速回転時に泡検知手段に通電し、風路内に浸入した泡を検知可能に構成した請求項1記載のドラム式洗濯機。
【請求項3】
制御手段は、すすぎ工程におけるドラムの高速回転時に泡検知手段に通電し、風路内に浸入した泡を検知可能に構成した請求項1または2に記載のドラム式洗濯機。
【請求項4】
制御手段は、泡検知手段により検知した信号の出力間隔が短いほど、送風手段により送風する風量が多くなるようにした請求項1〜3のいずれか1項に記載のドラム式洗濯機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−110462(P2012−110462A)
【公開日】平成24年6月14日(2012.6.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−260861(P2010−260861)
【出願日】平成22年11月24日(2010.11.24)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】