説明

ドラム装置

【課題】ドラムに巻装されたロープの張力に応じて、ロープを自動的に巻取り、繰出しを行うことができる小型で構造がシンプルなドラム装置を提供する。
【解決手段】主軸21と、これに軸支されたロープ3等を巻装する回転ドラム1と、主軸の一部に形成されたスクリューシャフト27と、スクリューシャフトに螺合されるブッシュ25を内包し、ドラムとともに回転可能、かつ主軸方向に移動可能に保持された摺動金物51と、ドラムの内側面と摺動金物との間に介装された緩衝機構とを具えるドラム装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、養殖生簀の係留や船舶の係船のために使用する索やロープの巻き取りドラム装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、養殖生簀や船舶などの浮体物を海底や岸壁に繋ぎ止めるために索やロープが使用されている。しかしながら、潮位の変化や波浪のために常に繰り返し荷重がロープに作用して、劣化が早まり、急激な異常に高い張力により破断する恐れもあった。
【0003】
このために、養殖生簀にあっては、生簀等の浮体物といかりとの間のロープに浮体、またはおもりを設けたり、急激な引っ張りに対応するための緩衝部材をロープの途中に取り付けたりしていた。このような構成の場合には水中部分の浮体やおもり、緩衝部材に藻や、かき、フジツボ等の水棲生物が付着しその手入れ・保守がめんどうで手間がかかるという不具合があった。また、時化や台風時には浮体物本体を波浪の底まで自動的に沈下させて荒波の影響を回避し、干満に対してはこれに追従して浮体物を上下揺動させ、しかも、時化や台風時及び干満時においても常に、同一張力の索条で浮体物を支持することのできる浮体物の繋留装置に関するものが特開平6−64582号公報に開示されている。
【0004】
しかし、このような装置は、ロープの張力に変動に起因する係留装置の疲労破壊を防ぐことができる点は認められるものの、ピストンが内蔵された索条調節器は水中に配置されることになるために水棲生物の付着は避けられず、また、全体として構造が非常に複雑で、設置費用も高価となり、保守に時間を要するという不具合があった。
【0005】
一方、船舶の係留に関しては、係留船舶の位置の変化を常時測定し、強風、潮流により船舶が流されるのを未然に防ぐ変位測定装置が実開平1−176593号公報で公知である。この中にオートテンション巻取機のケーブルを船舶側に固定し、スタート時点の船舶の位置を基準として、その後の船舶の移動によるケーブルの変化を計測しつつ船舶の異常離岸を検知し、係留装置を巻取って船舶の安全を保つことが記載されている。しかし、この装置ではケーブル張力計とオートテンション巻取機とを各々設けねばならず、張力は測定専用のケーブルで計測することになって、構造が複雑になるという問題点があった。
【0006】
さらに、係留索の張力を正確に検出して、係留索の張力異常に起因する事故を未然に防止するものが、特開平10−109686号公報に示されている。しかしながら、この発明は浮体用係留索に作用する張力を検出し、監視するもので、所定の張力より増加したり減少したりしたときに、索を繰り出したり巻き取ったりする機能は示されていない。
【0007】
【特許文献1】特開平6−64582号 公報
【特許文献2】実開平1−176593号 公報
【特許文献3】特開平10−109686号 公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明が解決しようとする課題は、従来のこれらの問題点を解消し、ドラムに巻装されたロープの張力に応じて、ロープを自動的に巻取り、繰出しを行うことができる小型で構造がシンプルなドラム装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、主軸と、同主軸に軸支されたロープを巻装するドラムと、前記主軸の一部に形成されたスクリューシャフトと、同スクリューシャフトに螺合されるブッシュを内包し前記ドラムとともに回転可能かつ前記主軸の軸方向に往復動可能に保持された摺動金物と、前記ドラムの内側面と前記摺動金物との間に介装された緩衝機構とを具えた。また前記緩衝機構は、一定の間隔離して平行に延びた細長の一対の平行板材をその一端の連結部で連接したコ字型の一対の金具を、上下逆にして、且つ互に90゜位相を変えて一方の金具の開放された側面に、他方の金具の平行板材が差し込まれるように互に嵌み合せ、嵌み合せられた前記一対の金具の平行板材と連結部とで囲まれる空間に弾性部材挿入し、前記一対の金具の連結部の反対端をそれぞれ摺動金物と上記ドラムにピン連結し、前記一対の金具の長手方向への相対的な変位によって弾性部材を緩衝機構の平行板材内面と接触しながら変形可能に形成した。さらにドラム内に潤滑剤が充填されていることを特徴とするドラム装置である。
【発明の効果】
【0010】
本発明装置は、係留や係船のためのロープの張力の変化を自動的に検知してドラムからロープを繰出し、または巻取り、常に設定値近傍の張力でロープを保持することができるものである。したがって省力化を達成できるとともに、ロープに衝撃荷重や過負荷応力が作用せず、ロープの寿命を大幅に伸ばすことができる。
また、ロープの径の大小にかかわらず、対応できるので、装置の軽量化にも貢献できるものである。さらに緩衝装置は、ドラムの内部に配置しているので、風雨にさらされず劣化なく長期間の使用が可能であり、メンテナンスや保守作業が不要となる効果がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明の一実施例を図面に基づいて説明する。図1はドラム装置本体の側面断面図。図2はロープに張力が作用した時のゴム球の圧縮の様子を示す説明図。図3は図1のA−A線断面図。図4は図1のB−B線断面図である。
【実施例】
【0012】
図1に図示する如く、ドラム1は、巻胴11および上下一対の側板12より構成されている。21はドラム1の主軸で、基板28に立設した取付台22の軸受23によって保持されている。24はワッシャ、25はオイルシール作用をするブッシュ、26は、主軸21の回転を止めるための回り止め金物。27は、前記主軸21のドラム内部の一部に形成されたスクリューシャフトである。3は、ドラム1の巻胴11に巻装されたロープ。4は、緩衝機構で次のように構成されている。
【0013】
図1、2中の41、42は図示すように一定の間隔離して平行に延びた細長の一対の平行板材をその一端の連結部で連接したコ字型の金具で、これらの金具41、42は、上下逆にして且つ互に90゜位相を変えて一方の金具41の解放された側面に他方の金具42の平行板材が差し込まれるように互いに嵌み合せられている。一対の金具41、42を互い違いに組合わせ金具41、42の間には複数の硬質弾性ゴム球43を互いに接触するように直列に並べて挟み、同ゴム球43を金具41、42で適度に圧縮した機構になっている。なお、金具41の端部はピン44で側板12に取りつけられている。
【0014】
51は、摺動金物で、前記緩衝機構4の金具42の端部をピン45で枢着されている。また、図3に図示する摺動金物51は、巻洞11の内部に凸設たれた一対のガイドプレート52に沿って前記主軸21の延伸方向に摺動できるようにローラ53が設けられている。54は、ガイドプレート52を補強するためのブラケット。55は、摺動金物51の中央部分に形成された前記スクリューシャフト27に螺合するブッシュである。
【0015】
このように構成された本発明ドラム装置は、次のように取り付けられ作動する。まず、図示省略の養殖生簀の筏、あるいは船舶を係船すべき岸壁もしくは船舶上に本発明ドラム装置を基板28を介して取り付ける。つぎに巻胴11に懸装されている係留索やロープ3をドラム1を回転させながら緊張する。このときドラム1の内室には、スクリューシャフト27が浸漬する程度ドラムに半分程度の潤滑剤を入れておく。ロープ3に所定の張力が保たれた状態で、主軸21を回り止め金物26で取付台22に固定する。
【0016】
潮位の変化や、波浪によって所定値異常の張力がロープ3に作用すると、ドラム1には回転力が働く。すると、スクリューシャフト27が固定されているためにこのスクリューシャフト27に噛合しているブッシュ55によって摺動金物51は回転しつつ第1図の右方向に移動する。摺動金物51がガイドプレート52に案内されながら右方向に移動すると、コ字型金具42も移動する。コ字型金具41、42は、上下逆にして且つ互に90゜位相を変えて一方の金具41の解放された側面に他方の金具42の平行板材が差し込まれるように互いに嵌み合せられており、さらに金具41はピン44で側板12に取り付けられ、金具42の端部はピン45で摺動金物51に枢着されている。
【0017】
そのため、摺動金物51の右方向への移動に伴って、金物41、42の間に配置されているゴム球43は圧縮されて変形する。ロープ3の張力に見合った量だけ弾性部材4が変形してロープ3を繰出す。両者が均衡した時点で繰出しは終わる。つまり、ロープ3に所定値以上の張力が働くと図1に示す状態から、図2に示す状態に変化しドラム1が回転してロープ3を繰出すのである。
【0018】
逆にロープ3の張力が弱まると、ゴム球43の復元力が優り、摺動金物51が図2の左方向に移動し、これに伴ってドラム1が回転することによりロープ3は巻き取られる。このような一連の張力調整、ロープ3の巻き取り、繰出しは自動的に行われる。
【0019】
摺動金物51がドラム1の回転を伴って右方向や左方向にスムーズに移動できるためには、スクリューシャフト27のねじり角は45度とするのが好ましい。また、ゴム球の弾性率、ゴム球の径、ゴム球の数、スクリューシャフトの径、巻胴の径などによって、その弾性係数、変位量を設定する。そのために、これらが最適なものを組み合わせて選択・選定することによって、使用目的に応じた装置とすることができる。また、ドラム内に充填する潤滑剤は、潤滑油のほか、グリース(グリス)を用いることもできる。
【0020】
さらに、ここでは弾性部材として、硬質弾性ゴム材を使用した場合について説明したが、このほか各種スプリングなどのバネ材を用いてもよい。また、ここで硬質弾性ゴム球43など球状体のものを使用する場合について説明したが、球状体に限定されるものではなく円柱型ゴム、ちょうちん型、ソーセージ型なども使用することができる。
さらにまた、本発明装置の主軸21に、モータ等の駆動装置を連結して、ウインチとして使用すれば、動き始めるときの高負荷や急激な負荷変動の際の衝撃緩和手段としても機能させることができ、ロープや索、ウインチを構成する部品を保護するのに役立つ。
【0021】
本発明によれば、ロープ3に設定負荷に対してこれより大きな張力や小さな張力が作用した場合、自動的にドラム1が回転してロープ3を繰り出しあるいは巻き取って調整し、常に設定負荷状態に維持する。したがって、作業者の手を煩わすことが少なく省力化に寄与する。また、ワイヤまたはロープ3に無理な力が働かないので傷つきにくく、耐久性を高く維持できる。さらに、張力は、ドラム1の内部に形成された緩衝機構によりの調整が行われるので、風雨にさらされることがなく、長持ちしメンテナンス作業も不要である。特に、ドラム内部に潤滑油を満たしいているので、摺動部材やねじ部の作動が極めてスムーズである。
【0022】
本発明装置は、停泊中の船舶の係船や養殖生簀の係留のほかに、浮き桟橋や、浮消波堤などの係留に使用出来る。また、運航中のフエリーや客船の桟橋への係船に使用すれば、従来のようにエンジンをかけっ放しにしてウインチを使用するものに比べて極めて経済的である。
さらに、吊具としてウインチやホイストに応用すれば、動き始めが緩やかで極めてなめらかになることから、衝撃緩和作用があり緩衝装置として機能するものである。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】ドラム装置本体の側面断面図。
【図2】ロープに張力が作用した時のゴム球の圧縮の様子を示す説明図。
【図3】図1のA−A線断面図。
【図4】図1のB−B線断面図。
【符号の説明】
【0024】
1 ドラム
11 巻胴
12 側板
21 主軸
22 取付台
23 軸受け
24 ワッシャ
25 ブッシュ
26 回り止め金物
27 スクリューシャフト
28 基板
3 ロープ
4 緩衝機構
41 コ字型金具
42 コ字型金具
43 ゴム球
44 ピン
45 ピン
51 摺動金物
52 ガイドプレート
53 ローラ
54 ブラケット
55 ブッシュ


【特許請求の範囲】
【請求項1】
主軸と、同主軸に軸支されたロープを巻装するドラムと、前記主軸の一部に形成されたスクリューシャフトと、同スクリューシャフトに螺合されるブッシュを内包し前記ドラムとともに回転可能かつ前記主軸の軸方向に往復動可能に保持された摺動金物と、前記ドラムの内側面と前記摺動金物との間に介装された緩衝機構とを具えたことを特徴とするドラム装置。
【請求項2】
前記緩衝機構は、一定の間隔離して平行に延びた細長の一対の平行板材をその一端の連結部で連接したコ字型の一対の金具を、上下逆にして且つ互に90゜位相を変えて一方の金具の開放された側面に、他方の金具の平行板材が差し込まれるように互に嵌み合せ、嵌み合せられた前記一対の金具の平行板材と連結部とで囲まれる空間に弾性部材挿入し、前記一対の金具の連結部の反対端をそれぞれ摺動金物と上記ドラムにピン連結し、前記一対の金具の長手方向への相対的な変位によって弾性部材を緩衝機構の平行板材内面と接触しながら変形可能に形成することを特徴とする請求項1に記載のドラム装置
【請求項3】
前記回転ドラム内に潤滑剤を充填されていることを特徴とする請求項1に記載のドラム装置


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2010−126259(P2010−126259A)
【公開日】平成22年6月10日(2010.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−299168(P2008−299168)
【出願日】平成20年11月25日(2008.11.25)
【出願人】(593106273)
【出願人】(593106262)
【出願人】(503461593)