説明

ドラム

【課題】軽量性を向上できるドラムを提供すること。
【解決手段】一端2bにヘッド3が張設されるシェル2の他端2cに配設される複数の固定具10を備え、固定具10は、シェル2の壁部2aの内周面2dまたは外周面2eに固定される壁部当接部11と、その壁部当接部11に突設されシェル2の他端2cに配設される他端配設部12と、その他端配設部12から延設され又は壁部当接部11に突設されると共にシェル2の外周に張り出して連結部20の一端部が連結される張出部13とを備えているので、シェル2に配設された複数の固定具10に張力を分散させてヘッド3を緊張させることができる。そのため、従来のような堅牢なリングを介さずに固定具10をシェル2に固定できる。よって、リングを不要として軽量性を向上できると共に、シェル2の外周面2eにラグを取り付けなくてもヘッド3に張力を付与できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ドラムに関し、特に軽量性を向上させるドラムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
ドラムはシェル(胴)の両端または片端にヘッド(膜)を配設し、そのヘッドの外周縁をフープで押さえ、そのフープをシェルの軸方向に沿ってフープ締付けボルトで締付けることによりヘッドを緊張させてヘッドに所定の張力を付与している。従来、シェルの外周面にボルト受け金具(以下「ラグ」と称する)を取り付け、フープ締付けボルトを螺合させて締め付けることにより、フープをシェルの軸方向に沿ってラグ側に締め付けるものが知られていた。しかし、シェルの外周面にラグを取り付けると、シェルが振動し難くなりドラムの音量や音質が変わることが知られている。
【0003】
そこで、シェルの外周面からラグを除去するため、特許文献1には、シェルとほぼ同径のリングをシェルの他端部に配設し、リングの外周に突設した張出部にパイプ状ナットを立設させるものが開示されている。特許文献1に開示される技術では、フープ締付けボルトをパイプ状ナットの先端に螺合させ、フープ締付けボルトを締め付けることにより、フープがパイプ状ナット側に締め付けられてヘッドを緊張させヘッドに張力が付与される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開昭59−69794号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に開示される技術では、フープ締付けボルトを締め付けることによりパイプ状ナットがフープ側に引っ張られる。その結果、パイプ状ナットを立設させる張出部に大きな曲げ方向の力が作用する。その力により張出部が曲がったり伸びたりするとヘッドに張力を付与できなくなるため、リング及び張出部は堅牢でなければならず、特に張出部の付け根は大きな機械的強度が要求される。リング及び張出部を堅牢化させるために、ドラムの一部品であるリング及び張出部の質量が大きくなる。その結果、ドラムが重くなるという問題点があった。
【0006】
本発明は、上述した問題点を解決するためになされたものであり、軽量性を向上させるドラムを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この目的を達成するために、請求項1記載のドラムは、筒状のシェルと、そのシェルの一端に張設されるヘッドと、そのヘッドの外周縁を押さえるフープと、前記シェルの他端に配設される複数の固定具と、その固定具を前記フープに連結し緊締することにより前記ヘッドを緊張させる連結部とを備え、前記固定具は、前記シェルの外周面または内周面に当接し前記シェルの壁部に固定される壁部当接部と、その壁部当接部に突設され前記シェルの他端に配設される他端配設部と、その他端配設部から延設され又は前記壁部当接部に突設されると共に前記シェルの外周に張り出して前記連結部の一端部が連結される張出部とを備えている。
【0008】
請求項2記載のドラムは、請求項1記載のドラムにおいて、前記壁部当接部は、前記シェルの内周面に当接する。
【0009】
請求項3記載のドラムは、請求項1又は2に記載のドラムにおいて、前記固定具は、前記壁部当接部に形成され止め具が挿入される取着穴と、前記シェルの壁部の所定箇所に係止される係止部とを備え、前記シェルは、前記取着穴と合致する位置に形成され前記止め具が挿入される挿入孔と、前記係止部と合致する位置に形成され前記係止部が係止される被係止部とを備えている。
【0010】
請求項4記載のドラムは、請求項1から3のいずれかに記載のドラムにおいて、前記連結部の一端部または前記張出部のいずれか一方に形成された取付孔と、前記連結部の一端部または前記張出部の他方に形成され前記取付孔に挿入される挿入部と、その挿入部から軸方向に漸次拡径して前記取付孔より大径に形成された抜け止め部とを備え、前記挿入部と前記取付孔との間に前記シェルの軸方向に対して直交方向の遊間が形成され、前記連結部が螺棒の回転により緊締される。
【0011】
請求項5記載のドラムは、請求項1から4のいずれかに記載のドラムにおいて、前記シェルの他端、前記固定具の他端配設部および前記張出部を被覆する弾性材で形成された他端カバー部材を備えている。
【発明の効果】
【0012】
請求項1記載のドラムによれば、一端にヘッドが張設されるシェルの他端に配設される複数の固定具を備え、固定具は、シェルの壁部の内周面または外周面に固定される壁部当接部と、その壁部当接部に突設されシェルの他端に配設される他端配設部と、その他端配設部から延設され又は壁部当接部に突設されると共にシェルの壁部の外周に張り出して連結部の一端部が連結される張出部とを備えているので、シェルの他端に配設された複数の固定具に張力を分散させてヘッドを緊張させることができる。そのため、従来のような堅牢なリングを介さずに固定具をシェルに固定できる。よって、リングを不要として軽量性を向上できる効果がある。
【0013】
また、固定具はヘッドの他端から外周に張り出す張出部を備え、連結部で張出部をフープに連結して緊締するので、シェルの外周面にラグを取り付けなくてもヘッドに張力を付与できる効果がある。
【0014】
また、固定具はシェルの他端に配設される他端配設部を備えているので、シェルの他端に他端配設部を配設し連結部で連結して緊締することにより、フープと固定具との間でシェルを挟み込むと同時にフープをシェルの軸方向に沿って固定具側に強く引き付けることができる。その結果、ヘッドを強く緊張させることができる効果がある。
【0015】
請求項2記載のドラムによれば、請求項1記載のドラムの奏する効果に加え、壁部当接部はシェルの内周面に当接するので、壁部当接部がシェルの外周面に露呈することを防ぎ、シェルの外観を美麗にできる効果がある。
【0016】
また、固定具の壁部当接部及び他端配設部がシェルの内周面及び他端に配設され、張出部だけがシェルの外周に張り出すため、連結部の緊締により張出部に曲げ力を作用させても、張出部を屈曲させることは困難である。その結果、大型で堅牢な固定具を使用しなくても、連結部を保持する機能が十分に発揮されるため、固定具を軽量化でき、ひいてはドラムの軽量性を向上できる効果がある。
【0017】
請求項3記載のドラムによれば、請求項1又は2に記載のドラムの奏する効果に加え、固定具は壁部当接部に形成された係止部を備え、シェルは係止部と合致する位置に形成され、係止部が係止される被係止部を備えているので、固定具の壁部当接部をシェルに取着する際の位置決めを容易に行うことができるという効果がある。さらに、固定具は壁部当接部に形成された取着穴を備え、シェルは取着穴と合致する位置に形成され、取着穴に挿入される止め具が挿入される挿入孔を備えているので、シェルの他端に固定具の他端配設部を配設させると共に、シェルの被係止部に固定具の係止部を係止させることができる。これにより、他端配設部と係止部との2か所で固定具を拘束して、止め具の取り付け時に固定具が移動することを防止できる。よって、止め具の取り付け作業性を向上できる効果がある。
【0018】
請求項4記載のドラムによれば、請求項1から3のいずれかに記載のドラムの奏する効果に加え、挿入部から軸方向に漸次拡径して取付孔より大径に形成された抜け止め部を備え、挿入部と取付孔との間にシェルの軸方向に対して直交方向の遊間が形成されているので、螺棒の軸の傾きに追従させて挿入部を傾かせることができると共に、取付孔の縁部に抜け止め部を当接させて強く緊締できる。これにより、螺棒の軸と挿入部の軸とを一致させて、連結部を緊締する螺棒に短手方向(螺棒の軸に対して直交方向)の力が作用するのを防ぐことができる。その結果、螺棒の着脱時に余分な力を必要とせずスムーズに着脱することができ、ひいては螺棒の着脱時にねじ山が潰れることを防ぎ、連結部の耐久性を向上させる効果がある。
【0019】
請求項5記載のドラムによれば、請求項1から4のいずれかに記載のドラムの奏する効果に加え、シェルの他端、固定具の他端配設部および張出部を被覆する弾性材で形成された他端カバー部材を備えているので、シェルの他端に固定された固定具の制振性能を向上させることができ、固定具にシェルの振動が伝達されてもドラムの音質が変化することを防止できる効果がある。この他端カバー部材による効果は、請求項4記載の挿入部と取付孔との間に遊間が形成されたドラムの場合に特に有効である。抜け止め部を備えると共に挿入部と取付孔との間に遊間が形成されていると、シェルの振動により固定具と連結部との間にノイズが発生し易くなるが、他端カバー部材により固定具の制振性能を向上させることができ、連結部に伝達される振動を低減できるからである。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の第1実施の形態におけるドラムの斜視図である。
【図2】第1実施の形態におけるドラムのフープ及びヘッドを取り外した状態を示す斜視図である。
【図3】(a)は固定具の平面図であり、(b)は固定具の側面図であり、(c)は固定具の正面図である。
【図4】図1のIV−IV線におけるドラムの断面図である。
【図5】(a)は張出部及び連結部の一端部を拡大して示した部分拡大断面図であり、(b)は図5(a)のVb−Vb線における張出部及び挿入部の部分断面図である。
【図6】本発明の第2実施の形態におけるドラムのフープ及びヘッドを取り外した状態を示す斜視図である。
【図7】(a)は本発明の第3実施の形態におけるドラムの断面図であり、(b)は本発明の第4実施の形態におけるドラムの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の好ましい実施の形態について、添付図面を参照して説明する。図1は本発明の第1実施の形態におけるドラム1の斜視図である。まず図1を参照してドラム1の外観構成について説明する。ドラム1は筒状のシェル(胴)2と、シェル2の一端に張設され打撃面となるヘッド(膜)3と、ヘッド3の外周縁を押さえるフープ4と、後述する固定具10とフープ4との間を連結し緊締することによりヘッド3を緊張させる連結部20とを主に備えて構成されている。
【0022】
連結部20は、後述する固定具10に立設され内側に螺子部が形成されたパイプ状部材21と、フープ4に挿通され端部がパイプ状部材21に螺合する螺棒22とを主に備えて構成されている。螺棒22を回転させてパイプ状部材21に緊締することにより、フープ4をパイプ状部材21側に引き付けてヘッド3を緊張させることができる。また、螺棒22を緩めてパイプ状部材21から取り外すことにより、フープ4及びヘッド3を取り外すことができる。
【0023】
なお、本実施の形態においては、ドラム1のシェル2の他端(図1下側)は、軟質の合成樹脂、エラストマー、ゴム等の弾性材で形成された他端カバー部材5で被覆されている。他端カバー部材5は、シェル2の他端が嵌挿される溝部が形成された円環部5aと、円環部5aの外周に等間隔に突設した突設部5bとを備えており、突設部5bにパイプ状部材21(連結部20)の一端部(図1下側)が被覆されている。また、シェル2の外周面2eにシート状の外周面カバー部材6が覆設されている。種々の色彩や模様が施された装飾用の外周面カバー部材6でシェル2の外周面2eを覆うことにより、演奏者の好みの色彩や模様をシェル2に付すことが可能となる。なお、シェル2には図示しない取付金具が装着される取付金具装着孔30が穿設されている。取付金具は図示しないスタンドの支持棒にドラム1を取り付ける部材である。
【0024】
次に、図2を参照してドラム1の内部構成について説明する。図2は、第1実施の形態におけるドラム1のフープ4及びヘッド3を取り外した状態を示す斜視図である。ドラム1はシェル2の他端(図2下側)に配設される複数の固定具10を備えている。固定具10はシェル2の複数個所に等間隔で配設されており、固定具10の底部は他端カバー部材5に埋没している。
【0025】
次に、図3を参照して固定具10の詳細構成について説明する。図3(a)は固定具10の平面図であり、図3(b)は固定具10の側面図であり、図3(c)は固定具の正面図10である。固定具10はシェル2の内周面2d(図2参照)に当接される壁部当接部11と、壁部当接部11と略直交する方向に壁部当接部11の底部に突設された他端配設部12と、他端配設部12の先端から延設された張出部13とを主に備えて構成されている。図3(c)に示すように、壁部当接部11は正面視して略矩形状に形成されている。図3(a)に示すように、他端配設部12は平面視して略矩形状に形成されており、張出部13は他端配設部12に延設され先端に向かって幅狭に形成されている。壁部当接部11と他端配設部12及び張出部13とは、金属製の板材を折曲することによって一体に形成されており、固定具10は、図3(b)に示すように側面視して略L字状に形成されている。壁部当接部11と他端配設部12との角部の内側にはリブ14が形成されている。リブ14が形成されていることにより、固定具10の剛性を向上させ壁部当接部11及び他端配設部12の変形を抑制できる。
【0026】
他端配設部12はシェル2(図2参照)の他端に配設される部位であり、シェル2の厚さと略等しい長さに形成されている。張出部13は、固定具10の他端配設部12をシェル2の他端に配設した際にシェル2の外周に張り出す部位である。張出部13は、略中央に多角形状に形成された取付孔15が穿設されている。取付孔15はパイプ状部材21(連結部20)の後述する挿入部23aが挿入される部位である。挿入部23aの外形形状を取付孔15の多角形状と略同一の形状にすることにより、取付孔15に挿入された挿入部23aが取付孔15内で回転することを防止できる。
【0027】
壁部当接部11は上端縁11aから延設された係止部16を備えている。係止部16は他端配設部12側に突出するように折曲形成されている(図3(b)参照)。また、壁部当接部11の上端縁11a近傍には内周面が螺刻された取着穴17が穿設されている。
【0028】
図2に戻って説明する。固定具10の壁部当接部11はシェル2の内周面2dに当接していると共に、係止部16はシェル2に形成された被係止部2fに係合されている。後述するように、固定具10の他端配設部12(図3参照)はシェル2の他端に配設され、張出部13(図3参照)はシェル2の外周に張り出している。パイプ状部材21(連結部20)は張出部13の取付孔15(図3参照)に挿入され張出部13に立設されている。また、シェル2は後述する挿入孔2gが形成されている一方、壁部当接部11は内周面が螺刻された取着穴17(図3参照)が形成されている。これにより、先端側に螺子が形成された止め具31をシェル2の外周面2eから挿入孔2gに挿入し、壁部当接部11の取着穴17に螺合することにより、シェル2の内周面2dに固定具10の壁部当接部11を固定できる。
【0029】
次に、図4を参照して固定具10の取付構造について説明する。図4は、図1のIV−IV線におけるドラム1の断面図である。シェル2は壁部2aを貫通する挿入孔2g及び被係止部2fが穿設されている。シェル2の他端2cから挿入孔2gまでの高さは、固定具10の他端配設部12から取着穴17までの高さと略同一である。また、シェル2の他端2cから被係止部2fまでの高さは、固定具10の他端配設部12から係止部16までの高さと略同一である。これにより、固定具10の壁部当接部11をシェル2の内周面2dに当接させると共に、固定具10の他端配設部12をシェル2の他端2cに配設することで、固定具10の係止部16をシェル2の被係止部2fに係合させると共に、シェル2の挿入孔2gと固定具10の取着穴17とを合致させることができる。また、壁部当接部11の垂線方向への係止部16の突出長さは、シェル2の壁部2aの厚さよりも短めに形成されているので、固定具10の係止部16をシェル2の被係止部2fに係合させた際に、係止部16がシェル2の外周面2eから突出することを防止できる。
【0030】
止め具31は先端側に螺子が形成された部材である。シェル2の他端2cに固定具10を配設した後、止め具31をシェル2の外周面2eから挿入孔2gに挿入し、固定具10の壁部当接部11の取着穴17に螺合することにより、シェル2の内周面2dに固定具10の壁部当接部11を固定できる。シェル2が木製の場合は、止め具31を取着穴17に螺合するトルクで、止め具31の頭部をシェル2の外周面2eに埋入させる。これにより、止め具31が緩み難くなると共に、止め具31の頭部がシェル2の外周面2eから突出することを防止できる。止め具31の頭部および係止部16の先端がシェル2の外周面2eから突出することを防止できるため、シェル2の外周面2eに配設したシート状で装飾用の外周面カバー部材6の表面が、止め具31や係止部16で凸凹になることを防止し、外周面カバー部材6の表面を美麗にすることができる。なお、硬質の合成樹脂製や金属製のシェル2の場合は、止め具31の頭部より少し大きめの窪みをシェル2の外周面2eに形成しておくことで、止め具31の頭部がシェル2の外周面2eから突出することを防止できる。
【0031】
また、固定具10は壁部当接部11に形成された係止部16を備え、シェル2は係止部16が係止される被係止部2fを備えているので、固定具10の壁部当接部11をシェル2に取着する際の位置決めを容易に行うことができる。さらに、固定具10は壁部当接部11に形成された取着穴17を備え、シェル2は取着穴17に挿入される止め具31が挿入される挿入孔2gを備えているので、シェル2の他端2cに固定具10の他端配設部12を配設すると共に、シェル2の被係止部2fに固定具10の係止部16を係止させることができる。これにより、他端配設部12と係止部16との2か所で固定具10を拘束して、止め具31の取り付け時に固定具10が移動することを防止でき、止め具31の取り付け作業性を向上できる。特に本実施の形態においては、固定具10の壁部当接部11に形成された取着穴17に螺合させるために止め具31を回転させると、止め具31の回転に伴い固定具10が回転しようとするが、他端配設部12と係止部16との2か所で固定具10を拘束することにより、止め具31の取り付け時に固定具10が回転することを防止でき、止め具31の取付作業性を向上できる。
【0032】
他端カバー部材5は軟質の合成樹脂、エラストマー、ゴム等の弾性材で形成されている。他端カバー部材5の円環部5aは、シェル2の他端2cが嵌挿される溝部が形成されており、シェル2に着脱可能である。シェル2に固定具10が配設される部位では、他端カバー部材5の円環部5aはシェル2の他端2c、固定具10の壁部当接部11の底部及び他端配設部12を被覆する。円環部5aの外周に突出した固定具10の張出部13は、他端カバー部材5の突設部5bが被嵌される。突設部5bはパイプ状部材21及び後述するボルト部材24が挿入される貫通孔5cが形成されている。貫通孔5cの内径は、張出部13に形成された取付孔15の内径より少し大きめとされている。ボルト部材24の挿入を容易にするためである。
【0033】
パイプ状部材21は連結部20の一部を構成する部材である。パイプ状部材21は突設部5bの貫通孔5cに挿入され、パイプ状部材21の一端部(図4下側)の内側にはナット状部材23が固着されている。ナット状部材23の一部はパイプ状21から突出しており、挿入部23a(連結部20の一端部)を構成する。挿入部23aはシェル2の外周から張り出した張出部13の取付孔15に挿入される部位である。パイプ状部材21の他端部(図4上側)の内側にはナット状部材26が固着されている。ナット状部材26の螺子部26aには、連結部20の一部を構成する螺棒22が螺合され、ナット状部材23の螺子部23bには、連結部20の一部を構成するボルト部材24が螺合される。
【0034】
ボルト部材24は、後述する抜け止め部24aの外径が取付孔15の内径より大きいので、ボルト部材24を突設部5bの貫通孔5cからパイプ状部材21のナット状部材23に挿入し、螺子部23bと螺合させることで、パイプ状部材21を取付孔15に固定することができる。これによりパイプ状部材21が張出部13に立設されると共に、他端カバー部材5の突設部5bが円環部5aに固定される。
【0035】
ヘッド3は外周縁がヘッド枠3aに保持されており、ヘッド枠3aはシェル2の一端2bの外周に嵌装されている。フープ4はシェル2の一端2bの外周に嵌装されヘッド枠3aを上方より押さえる。螺棒22は、フープ4に形成された孔部4aに挿通されパイプ状部材21のナット状部材26に螺合されている。螺棒22をナット状部材26に緊締することにより、フープ4を張出部13側に引き付けてヘッド3を緊張させることができる。
【0036】
ここで図5を参照して、螺棒22をナット状部材26に緊締した場合の張出部13について説明する。図5(a)は張出部13及び連結部20の一端部を拡大して示した部分拡大断面図であり、図5(b)は図5(a)のVb−Vb線における張出部13及び挿入部23aの部分断面図である。螺棒22をナット状部材26に緊締すると、螺棒22の締結による張力や張出部13の機械的強度にもよるが、図5(a)に示すように、張出部13に撓みが生じることがある。
【0037】
しかしながら、張出部13の取付孔15とパイプ状部材21(連結部20)の挿入部23aとの間には、シェル2の軸方向に対して直交方向の遊間25が形成されている。また、ボルト部材24は、挿入部23aから軸方向に漸次拡径して取付孔15より大径に形成された凸状の球面状の抜け止め部24aを備えている。さらに、挿入部23a及び取付孔15は、図5(b)に示すように、多角形状(本実施の形態においては六角形)に形成されている。このように抜け止め部24a及び遊間25が形成されているので、螺棒22の軸の傾きに追従させて挿入部23aを傾かせることができる。さらに、螺棒22を緊締することにより、取付孔15内で挿入部23aの回転は規制されると共に、傾いた側(図5(a)左側)の取付孔15の縁部に抜け止め部24aを当接させて強く緊締できる。その結果、螺棒22の軸と挿入部23aの軸とを一致させて、螺棒22に短手方向(螺棒22の軸に対して直交方向)の力が作用するのを防ぐことができる。これにより、螺棒22の着脱時に余分な力を必要とせずスムーズに着脱することができ、ひいては螺棒22の着脱時にねじ山が潰れることを防ぎ、連結部20の耐久性を向上できる。
【0038】
なお、取付孔15の縁部と抜け止め部24aとが当接する状態となるため、他端カバー部材5を備えていない場合は、ヘッド3の打撃によって生じたシェル2の振動により、固定具10と連結部20との間にノイズが発生し易い。本実施の形態におけるドラム1は、他端カバー部材5の円環部5aがシェル2の他端2c及び固定具10の他端配設部12を被覆し、突設部5bが固定具10の張出部13を被覆するので、固定具10の制振性能を向上させることができノイズの発生を防止できる。
【0039】
外周面カバー部材6は、種々の色彩や模様が施されたシート状の部材であり、シェル2の外周面2eに覆設される。外周面カバー部材6の一側縁(図4下側)は他端カバー部材5の円環部5aとシェル2の外周面2eとの間に差し込まれており、他方の側縁(図4上側)はヘッド枠3aとシェル2の外周面2eとの間に差し込まれる。これにより、外周面カバー部材6をシェル2の外周面2eに貼着することなく固定できる。なお、図1及び図2に示すように、外周面カバー部材6の両端部(巻き始め及び巻き終わり)は、取付金具装着孔30の両側に位置させる。次いで、取付金具装着孔30に装着する図示しない取付金具の装着面で、外周面カバー部材6の両端部を押止して見えなくする。これにより、外周面カバー部材6の縁が捲れることを防止して、シェル2の外周面2eに美麗に固定できる。
【0040】
また、パイプ状部材21から螺棒22を取り外すことによりフープ4及びヘッド3を取り外せば、シェル2の外周面2eを遮るものが何もなくなるため(図2参照)、外周面カバー部材6の一側縁を他端カバー部材5から引き抜いて、外周面カバー部材6をシェル2から取り外すことができる。これにより、外周面カバー部材6をシェル2の外周面2eに簡単に装着させることができ、シェル2の外周面2eを好みに応じて装飾できる。また、シェル2の外周面2eにラグ等の部材が取り付けられている場合は、部材を避けるための切り込みや穴あけ等の加工を外周面カバー部材6に施す必要があるが、シェル2の外周面2eを遮る部材が何もないので、外周面カバー部材6は切り込みや穴あけ等の加工が不要で、単なるシート状(帯状)のものを使用できる。よって、種々のシート状(帯状)の部材を外周面カバー部材6として採用できる。なお、演奏者がシェル2自体の色彩や質感を好む場合は、外周面カバー部材6でシェル2の外周面2eを覆う必要はない。
【0041】
以上のように、ドラム1はシェル2の他端2cに配設される複数の固定具10を備え、固定具10は、シェル2の壁部2aの内周面2dに固定される壁部当接部11と、その壁部当接部11から延設されシェル2の他端2cに配設される他端配設部12と、その他端配設部12から延設されると共にシェル2の壁部2aの外周に張り出して連結部20の一端部(挿入部23a)が連結される張出部13とを備えているので、シェル2の他端2cに配設された複数の固定具10に張力を分散させてヘッド3を緊張させることができる。そのため、従来のような堅牢なリングを介さずに固定具10をシェル2に固定できる。よって、リングを不要として軽量性を向上できる。
【0042】
また、ヘッド2の外周に張り出す張出部13を有する固定具10と、張出部13をフープ4に連結して緊締する連結部20とを備えているので、シェル2の外周面2eにラグを取り付けなくてもヘッド3に張力を付与できる。また、固定具10はシェル2の他端2cに配設される他端配設部12を備えているので、シェル2の他端2cに他端配設部12を配設し、連結部20で連結して緊締することにより、フープ4と固定具10との間でシェル2を挟み込むと同時に、フープ4をシェル2の軸方向に沿って固定具10側に強く引き付けることができる。その結果、ヘッド3を強く緊張させることができる。
【0043】
また、壁部当接部11はシェル2の内周面2dに当接するので、壁部当接部11がシェル2の外周面2eに露呈することを防ぎ、シェル2の外観を美麗にできる。また、固定具10の壁部当接部11及び他端配設部12がシェル2の内周面2d及び他端2cに配設され、張出部13だけがわずかにシェル2の外周に張り出しているため、張出部13に曲げ方向の多大な力を作用させても屈曲させることは困難である。そのため、板材で折曲形成した簡易な固定具10でも、ヘッド3を緊張させる連結部20を保持する機能を十分に発揮できる。よって固定具10を軽量化でき、ひいてはドラム1の軽量性を向上させる。
【0044】
また、止め具31が挿入される取着穴2gが壁部当接部11の上端縁11a近傍に形成されているため、他端配設部12(支点)から取着穴2g(作用点)までの長さを、他端配設部12(支点)から張出部13(力点)までの長さより長く形成できる。その結果、連結部20を緊締することによる力が張出部13(力点)に作用しても、てこの原理により、取着穴2g(作用点)に挿入した止め具31による軽微な力で固定具10の壁部当接部11をシェル2に固定できる。よって固定具10や止め具31を軽量化でき、ひいてはドラム1の軽量性を向上させる。
【0045】
次に、図6を参照して第2実施の形態について説明する。第1実施の形態においては、ヘッド3の打撃音を使って演奏するアコースティック式のドラムについて説明した。第2実施の形態においては、打撃によるヘッド3の振動を振動感知素子(打撃センサ48)で検出する電子式のドラム41について説明する。図6は、本発明の第2実施の形態におけるドラム41のフープ4及びヘッド3を取り外した状態を示す斜視図である。なお、第1実施の形態と同一の部分については同一の符号を付して、その説明を省略する。
【0046】
第2実施の形態におけるドラム41は、シェル2の内側に挿設されるフレーム42を備えている。フレーム42は外径がシェル2の内径より少し小さめの円盤状に形成された底部43と、底部43の周縁にシェル2の高さより少し低めの円筒状に立設された筒部44とを主に備えて構成されている。フレーム42は合成樹脂製で底部43と筒部44とが一体に形成されている。筒部44は上端縁の全周から外向きに延設された鍔部45を備えている。鍔部45はシェル2の一端2bに掛着される部位である。フレーム42は、鍔部45から底部43に向かうスリット状の切り込み46が、所定間隔で鍔部45及び筒部44の複数個所に形成されている。筒部44が鍔部45から底部43に向かう切り込み46を有しているので、フレーム42をシェル2の内側に挿入すると、切り込み46の幅が狭まり、フレーム42の筒部44をシェル2に嵌挿させることができ、シェル2内でのフレーム42の移動を規制する。また、フレーム42の底部43側の筒部44の所定箇所と底部43の所定箇所とには、シェル2に固定された固定具10の壁部当接部11を受け入れる窪み47が形成されている。フレーム42に窪み47が形成されていることにより、固定具10に邪魔されることなくフレーム42をシェル2内に深く挿入できる。
【0047】
フレーム42の底部43の略中心には打撃センサ48が突設されている。打撃センサ48は、シェル2にヘッド3を張設した際に、先端がヘッド3に接触するように高さが調整されている。これにより、打撃センサ48はヘッド3の振動を検出できる。打撃センサ48が検出した信号は、打撃センサ48に接続された図示しない配線に伝えられる。配線はシェル2の壁部2aに形成された配線用孔部32を通って、シェル2の外部に引き出される。また、フレーム42の底部43の打撃センサ48の周囲の所定箇所には、空気抜き49が形成されている。これにより、ヘッド3の打撃により振動するシェル2内の空気を空気抜き49から逃がし、ヘッド3に生ずる打撃音の音量を小さくすることができる。その結果、ヘッド3に生ずる打撃音が、打撃センサ48による検出信号に基づく演奏の邪魔になることを防止できる。
【0048】
第2実施の形態におけるドラム41においても、第1実施の形態におけるドラム1と同様に、ヘッド2の外周縁を保持するヘッド枠3aを、フレーム42の鍔部45及びシェル2の一端2bの外周に嵌装させると共に、フープ4をシェル2の一端2bの外周に嵌装する。次いで、フープ4に形成された孔部4aに螺棒22を挿通し、螺棒22をパイプ状部材21に螺合させることにより、フープ4でヘッド枠3aをパイプ状部材21側へ引き付け、ヘッド3を緊張させることができる。以上のように、第2実施の形態における電子式のドラム41においても、第1実施の形態におけるドラム1と同様に、従来のような堅牢なリングを介さずに固定具10をシェル2に固定できるため、軽量性を向上できる。
【0049】
次に、図7(a)を参照して第3実施の形態におけるドラム51について説明する。第1実施の形態においては、固定具10が側面視して略L字状に形成されている場合について説明したが、第3実施の形態におけるドラム51では、固定具60が側面視して略コ字に形成されている場合について説明する。また、第1実施の形態においては、連結部20の一部がパイプ状部材21で形成されている場合について説明したが、第3実施の形態におけるドラム51では、連結部70がパイプ状部材を有しておらず、箱状に形成された部材(受け具71)で連結部70の一部が形成されている場合について説明する。図7(a)は、本発明の第3実施の形態におけるドラム51の断面図である。なお、第1実施の形態と同一の部分については同一の符号を付して、その説明を省略する。
【0050】
図7(a)に示すように、固定具60は金属製の板材を折曲することによって、壁部当接部61と他端配設部62及び張出部63とが、側面視して略コ字状となるように一体に形成されている。張出部63は、先端側がシェル2の外周面2eと略平行方向に折曲され立設された立設部63aを備えている。壁部当接部61と他端配設部62との角部の内側および張出部63と立設部63aとの角部の内側にはリブ64が形成されている。固定具60の剛性を高めるためである。立設部63aの先端側には縦方向に並んで取付孔65が2個穿設されている。
【0051】
連結部70の一部を構成する受け具71は、略直方体の一面が開口する有底の箱状に形成された部材である。受け具71の側面(図7(a)上側)には、後述する螺棒72が挿通される貫通穴71aが形成されている。ナット状部材73は、貫通穴71aに回り止め及び抜け止め保持され傾動自在に遊貫されている。受け具71の底部71b(図7(a)左側)に、略L字状に形成された挿入部74が取付孔65に合致して2か所に突設されている。挿入部74が立設部63aに形成された取付孔65に挿入され取付孔65と係合することにより、受け具71は固定具60の立設部63aと連結される。
【0052】
連結部70の一部を構成する螺棒72は、フープ4の孔部4aに挿入されると共に受け具71の貫通穴71aに挿入され、ナット状部材73の螺子部と螺合する。螺棒72の頭部72aが回転することにより螺棒72がナット状部材73に緊締され、フープ4が張出部63側に引き付けられる。
【0053】
また、ドラム51はシェル2の他端2cに配設される複数の固定具60を備え、固定具60は、シェル2の壁部2aの内周面2dに固定される壁部当接部61と、その壁部当接部61から延設されシェル2の他端2cに配設される他端配設部62と、その他端配設部62から延設されると共にシェル2の壁部2aの外周に張り出して連結部70の一端部(受け具71の挿入部74)が連結される立設部63a(張出部63)とを備えているので、シェル2の他端2cに配設された複数の固定具60に張力を分散させてヘッド3を緊張させることができる。そのため、従来のような堅牢なリングを介さずに固定具60をシェル2に固定できる。よって、リングを不要として軽量性を向上できる。さらに、固定具60の張出部63に立設部63aが形成されているので、第1実施の形態において説明したようなパイプ状部材21を用いなくても、簡易な受け具71で固定具60とフープ4とを連結することができ、連結部70の軽量化を図ることができる。
【0054】
次に、図7(b)を参照して第4実施の形態におけるドラム52について説明する。第1実施の形態においては、固定具10の壁部当接部11がシェル2の内周面2dに当接される場合について説明したが、第4実施の形態におけるドラム52では、固定具80の壁部当接部81が、シェル53の壁部53aの外周面53eに当接される場合について説明する。図7(b)は、本発明の第4実施の形態におけるドラム52の断面図である。なお、第1実施の形態と同一の部分については同一の符号を付して、その説明を省略する。
【0055】
第4実施の形態におけるドラム52では、図7(b)に示すように、シェル53の壁部53aの他端53cの外周面53eに切欠部53fが形成されている。切欠部53fは固定具80の壁部当接部81の厚さよりわずかに深く、壁部当接部81の大きさよりわずかに広めに切欠されている。これにより、切欠部53fに壁部当接部81を収装させることができ、シェル53の外周面53eから壁部当接部81が突出することを防止できる。挿入孔53gは、シェル53の壁部53aの内周面53dと切欠部53fとを貫通して穿設されている。
【0056】
固定具80は、シェル53の外周面53e(切欠部53f)に当接する壁部当接部81と、シェル53の内周側を向いて壁部当接部81に突設されシェル53の他端53cに配設される他端配設部82と、シェル53の外周側を向いて壁部当接部81に突設されシェル53の外周に張り出す張出部83とを主に備えて構成されている。固定具80の壁部当接部81には取着穴85が形成されている。取着穴85は、シェル53に形成された挿入孔53gと合致する位置に形成されている。取着穴85の内周面には螺子部が螺刻されている。先端に螺子部が形成されたボルト状の止め具86を、シェル53の内周面53dの挿入孔53gから取着穴85に向かって挿入し取着穴85と螺合することにより、固定具80の壁部当接部81をシェル53の外周面53e(切欠部53f)に固定できる。なお、本実施の形態においては図示していないが、他の実施の形態と同様に、固定具80に係止部を設け、係止部に対応するシェル53の位置に被係止部を備える構成とすることも可能である。
【0057】
張出部83の略中央には取付孔84が形成されている。第1実施の形態と同様に、パイプ状部材21を貫通孔5cに挿入して固定し、フープ4に挿入された螺棒22でパイプ状部材21を緊締することによりヘッド3に張力を付与できる。これらの結果、第4実施の形態においても、従来のような堅牢なリングを介さずに固定具80をシェル53に固定できる。よって、リングを不要として軽量性を向上できる。さらに、シェル53の外周面53eに、固定具80の壁部当接部81が収装される切欠部53fを形成することにより、シェル53の外周面53eから壁部当接部81が突出することを防止し、シェル53の外周面53eに配設した外周面カバー部材6の表面が凸凹になることを防ぐことができる。
【0058】
なお、第4実施の形態においては、他端配設部82の先端を、シェル53の他端53cから内周面53dに沿って折り曲げて、シェル53に係合させる場合もある。この場合は、連結部20の緊締により壁部当接部81が撓曲することを防止できる。また、連結部20の緊締により張出部83が上方へ撓むことを考慮して、壁部当接部81と張出部83との角度を直角よりわずかに大きな角度としておくことが望ましい。
【0059】
以上、実施の形態に基づき本発明を説明したが、本発明は上記実施の形態に何ら限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内で種々の改良変形が可能であることは容易に推察できるものである。
【0060】
各実施の形態では、取着穴17,67,85の内周面は螺刻されており、止め具31,86と螺合する場合について説明したが、必ずしもこれに限定されるものではなく、他の取着穴や止め具が用いられる場合もある。他の取着穴としては、例えば内周面が螺刻されていない取着穴を挙げることができる。他の止め具としては、螺子部が形成されていないピンを挙げることができる。
【0061】
第1実施の形態では、固定具10は係止部16及び取着穴17を各々ひとつ備えている場合について説明したが、必ずしもこれに限定されるものではなく、係止部および取着穴が複数個形成されている場合もある。また、取着穴17だけを1個若しくは複数個形成することも可能である。
【0062】
各実施の形態において説明した固定具10,60,80の壁部当接部11,61,81は、少なくとも一部がシェル2,53に当接されていればよく、全面が当接している必要はない。壁部当接部11,61,81の少なくとも一部がシェル2,53に当接していれば、固定具10,60,80を固定できるからである。
【0063】
また、他端配設部12,62,82はシェル2,53に当接しない構成とすることも可能であるが、シェル2,53に当接していることが好ましい。他端配設部12,62,82がシェル2,53に当接することで、他端配設部12,62,82及び張出部13,63,83が連結部20,70の緊締によって上方へ撓む量を小さくできるからである。但し、他端配設部12,62,82の全面がシェル2,53の他端に当接されている必要はなく、少なくとも一部が当接していればよい。なお、連結部20,70の緊締により張出部13,63,83が上方へ撓むことを考慮して、壁部当接部11,61,81と張出部13,63,83とがなす角度を、直角よりわずかに大きな角度としておくことが望ましい。
【0064】
各実施の形態では、固定具10,60,80の張出部13,63,83に取付孔15,65,84が形成され、連結部20,70に挿入部23a,74が形成された場合について説明したが、必ずしもこれに限定されるものではなく、連結部20,70に取付孔が形成され、張出部13,63,83に挿入部が形成されている場合もある。これらの場合も、張出部13,63,83に連結部20,70を連結することは可能だからである。また、各実施の形態では、固定具10,60,80が板材で形成されている場合について説明したが、必ずしもこれに限定されるものではなく、棒材等で形成することも可能である。
【0065】
上記実施の形態では、固定具10,60の係止部16は他端配設部12側に突出するように折曲形成され、被係止部2fはシェル2の壁部2aに貫通形成された場合について説明したが、必ずしもこれに限定されるものではなく、他の係止部および被係止部を採用することは可能である。他の係止部および被係止部としては、凸起状の係止部および凹陥状の被係止部、凹陥状の係止部および凸起状の係止部などが挙げられる。
【0066】
第1実施の形態では、抜け止め部24aが凸状の球面状に形成されている場合について説明したが、必ずしもこれに限定されるものではなく、他の形状とすることが可能である。他の形状としては、例えば、挿入部23aから軸方向に漸次拡径する凹状の球面状、円錐状、角錐状などが挙げられる。また、挿入部23aを中心とする放射状の突条を形成し、中心から離れるにつれ軸方向に対して突条の高さを漸次低くすることにより抜け止め部とすることも可能である。いずれの場合も、螺棒22の軸の傾きに追従させて挿入部23aを傾けることができ、螺棒22の締結により取付孔15の縁部に抜け止め部24aを当接できる。
【0067】
また、第1実施の形態では、挿入部23a及び取付孔15が六角形の場合について説明したが、必ずしもこれに限定されるものではなく、取付孔15内での挿入部23aの回転を規制できる他の形状を採用することが可能である。他の形状としては、三角形等の多角形、長円などが挙げられる。
【符号の説明】
【0068】
1,51,52 ドラム
2 シェル
2a 壁部
2b 一端
2c 他端
2d 内周面
2e 外周面
2f 被係止部
2g 挿入孔
3 ヘッド
4 フープ
5 他端カバー部材
10,60,80 固定具
11,61,81 壁部当接部
12,62,82 他端配設部
13,63,83 張出部
63a 立設部(張出部)
15 取付孔
16 係止部
17 取着穴
20 連結部
22 螺棒(連結部)
23a 挿入部(連結部)
24a 抜け止め部(連結部)
25 遊間
31,86 止め具

【特許請求の範囲】
【請求項1】
筒状のシェルと、そのシェルの一端に張設されるヘッドと、そのヘッドの外周縁を押さえるフープと、前記シェルの他端に配設される複数の固定具と、その固定具を前記フープに連結し緊締することにより前記ヘッドを緊張させる連結部とを備え、
前記固定具は、前記シェルの外周面または内周面に当接し前記シェルの壁部に固定される壁部当接部と、その壁部当接部に突設され前記シェルの他端に配設される他端配設部と、その他端配設部から延設され又は前記壁部当接部に突設されると共に前記シェルの外周に張り出して前記連結部の一端部が連結される張出部とを備えていることを特徴とするドラム。
【請求項2】
前記壁部当接部は、前記シェルの内周面に当接することを特徴とする請求項1記載のドラム。
【請求項3】
前記固定具は、前記壁部当接部に形成され止め具が挿入される取着穴と、前記シェルの壁部の所定箇所に係止される係止部とを備え、
前記シェルは、前記取着穴と合致する位置に形成され前記止め具が挿入される挿入孔と、前記係止部と合致する位置に形成され前記係止部が係止される被係止部とを備えていることを特徴とする請求項1又は2に記載のドラム。
【請求項4】
前記連結部の一端部または前記張出部のいずれか一方に形成された取付孔と、前記連結部の一端部または前記張出部の他方に形成され前記取付孔に挿入される挿入部と、その挿入部から軸方向に漸次拡径して前記取付孔より大径に形成された抜け止め部とを備え、
前記挿入部と前記取付孔との間に前記シェルの軸方向に対して直交方向の遊間が形成され、前記連結部が螺棒の回転により緊締されることを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載のドラム。
【請求項5】
前記シェルの他端、前記固定具の他端配設部および前記張出部を被覆する弾性材で形成された他端カバー部材を備えていることを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載のドラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2010−286598(P2010−286598A)
【公開日】平成22年12月24日(2010.12.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−139243(P2009−139243)
【出願日】平成21年6月10日(2009.6.10)
【出願人】(000116068)ローランド株式会社 (175)