説明

ドリッパー

【課題】熱湯の注ぎ入れに十分な開口を形成するとともに、容器の大きさが異なっても、載置状態時における安定性を確保することができる組立て容易なドリッパーを提供する。
【解決手段】濾過用袋体2と、上下が開口するように前後両面の左右両側が相互に連結された状態で前記濾過用袋体が内部に固定される折畳み可能な支持用紙体3とからなるドリッパー1において、該支持用紙体3は、左右両側縁を逆ハの字状になす左右一対の折曲部11a,11bと、該折曲部を介して2つ折りとなるように左右両側の下部にそれぞれ形成され、展開用の山折り線20a及び20a’,20b及び20b’が設けられた左右一対の保形用突片12a,12bとを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、飲料を抽出するためにカップ等の容器に載置されるドリッパーに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、コーヒー等の飲料を簡便に抽出するものとして、濾過用の袋体を厚手の紙体に固定して支持する使い捨てのドリッパーが利用されている。例えば、特許文献1では、展開した矩形状支持体の蓋部を除去してから濾過袋を開封し、矩形状支持体の左右両側の一定領域を折り曲げて支持脚片とした状態でカップ等の容器に載置するコーヒー用の濾過器が開示されている。また、特許文献2では、ドリッパーの前後両面の上縁中央をそれぞれ指で掴んで外側に引っ張って袋体を開封し、筒状紙体の左右両側にある折込部を内方に折り込んで筒状紙体を変形させることで、袋体を開口状態にすることができるドリッパーが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特公昭63−52888号公報
【特許文献2】特開2008−245894号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記特許文献1の濾過器では、容器に載置する前に、支持体の展開、蓋部の除去、濾過袋の開封、支持脚の形成という複数の手順を経ることが必要なため、組立てが簡便でないという問題がある。一方、上記特許文献2のドリッパーでは、簡易に組み立てることが実現されているものの、筒状紙体の変形が小さく前後方向へ大きく膨出することがないため、袋体が十分に開口せず、熱湯の注ぎ入れが困難であるという問題がある。また、上記特許文献2のドリッパーを容器へ載置するには、係合フラップを容器の上縁部分に沿わせることになるが、上記特許文献2に開示された構成では、その位置を容器のサイズに対応させて変更することができないため、容器のサイズによっては、係合フラップを上縁部分に沿わせることができず、載置状態時にドリッパーが容器の上で動いてしまうという問題がある。
【0005】
そこで、本発明は、熱湯の注ぎ入れに十分な開口を形成するとともに、容器の大きさが異なっても、載置状態時における安定性を確保することができる組立て容易なドリッパーを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
かかる課題を解決するための手段として、本発明は、濾過用袋体と、上下が開口するように前後両面の左右両側が相互に連結された状態で前記濾過用袋体が内部に固定される折畳み可能な支持用紙体とからなるドリッパーにおいて、該支持用紙体は、左右両側縁を逆ハの字状になす左右一対の折曲部と、該折曲部を介して2つ折りとなるように左右両側の下部にそれぞれ形成され、展開用の山折り線が設けられた左右一対の保形用突片とを備える。
【0007】
前記山折り線は、前記保形用突片の基端部上に設けられているのが好ましい。
【0008】
前記支持用紙体は、前後両面の下部中央に形成された差込片と、該差込片から左右にそれぞれ間隔をあけて形成された外側突片とをさらに備えるのが好ましい。
【0009】
また、前記保形用突片は、押込部と、該押込部の左右両側にそれぞれ連設された一対の外側当接片とを備え、前記山折り線は、前記押込部と該外側当接片との境界線上に設けられ、前記折曲部と交差する保形用突片の基端部中央からそれぞれ斜め下に向かって延在する一対の山折り線からなるのが好ましく、この場合、前記支持用紙体が、前後両面の下部中央に形成された差込片をさらに備えるのがより好ましい。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、使用の際の組立てが容易なだけでなく、上部領域が大きく変形して濾過用袋体を十分に開口させ、熱湯の注ぎ入れを容易にすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】(a)は、本発明の第1実施形態に係るドリッパーの正面図であり、(b)は、その背面図である。
【図2】図1のドリッパーを構成する濾過用袋体の展開図である。
【図3】図1のドリッパーを構成する濾過用袋体の正面図である。
【図4】図3に示す濾過用袋体のIV−IV線断面図である。
【図5】図1のドリッパーを構成する支持用紙体の展開図である。
【図6】図1のドリッパーを容器に載置した状態の斜視図である。
【図7】(a)は、本発明の第2実施形態に係るドリッパーの正面図であり、(b)は、その背面図である。
【図8】図7のドリッパーを構成する支持用紙体の展開図である。
【図9】図7のドリッパーを容器に載置した状態の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明に係るドリッパーについて、添付の図面を参照しながら説明することとする。
【0013】
図1は、本発明の第1実施形態に係るドリッパー1を示している。ドリッパー1は、図1に示すように、濾過用袋体2と、支持用紙体3とからなり、図6に示すように、カップ17等の容器に載置されるものである。
【0014】
図2〜図4は、本実施形態に使用される濾過用袋体2を示している。濾過用袋体2は、図1に示すように、支持用紙体3の内側に差し込まれた状態で支持用紙体3に固定され、コーヒー粉末等の内容物を収納及び封入するとともに、飲料を抽出・濾過するものである。濾過用袋体2に使用される素材としては、濾過機能を果たすものであれば特に限定されるものではないが、加工のしやすさ等を考慮すれば、熱接着性のあるものが好ましく、例えば、最内層に変性ポリプロピレンを含有した三層構造の濾紙が挙げられる。濾過用袋体2は、例えば、図2に示すように、長辺中央が突出した一対の台形状領域4,4’と、該一対の台形状領域4,4’を短辺側で連結する横長な六角形状領域5とに区画された形状で断裁、打ち抜き等される。
【0015】
濾過用袋体2は、左右シール部6a,6bと、封止シール部7と、一対の固定用突片8,8’とを有する。左右シール部6a,6bは、六角形状領域5をW折り(ガゼット折り)にすることで対向した一対の台形状領域4,4’の左右両端の内面同士を接着して構成されたものであり、濾過用袋体2を袋状に構成する。封止シール部7は、弧状をなす上縁の下側で一対の台形状領域4,4’の内面同士を接着して構成されたものであり、内容物を濾過用袋体2の内部に封入する。一対の固定用突片8,8’は、濾過用袋体2の前後両面の上縁中央より突出する。一対の固定用突片8,8’は、後述の支持用紙体3の前後両面の上縁中央にそれぞれ当接させてから折り返され、前後両面の外面側に貼着される。
【0016】
図5は、本実施形態に使用される支持用紙体3の展開状態を示している。支持用紙体3は、図6に示すように、容器に載置された時、濾過用袋体2を支持する。支持用紙体3に使用される素材としては、容器に載置された状態で濾過用袋体2を支持するのに十分な剛性を有するものであれば特に限定されるものではないが、熱湯や湯気に対する耐性を考慮すれば、濾過用袋体2と当接する内面又は両面にポリエチレン等の樹脂を塗布した厚紙が使用されるのが好ましい。支持用紙体3に使用される厚紙は、図5に示すように、円弧状の前面領域9と、前面領域9の一方の側端に連結され、後面右側を除く領域を形成する円弧状の後面主領域10aと、前面領域9の他方の側端に連結され、後面右側領域を形成する貼合せ領域10bとに区画された形状で断裁、打ち抜き等される。前記厚紙は、後面主領域10aの上に貼合せ領域10bを重ね合わせて接着され、支持用紙体3を構成する。
【0017】
支持用紙体3は、左右一対の折曲部11a,11bと、左右一対の保形用突片12a,12bと、差込片13,13’と、左右一対の外側突片14a及び14b,14a及び14b’と、確認用窓部15,15’とを備える。
【0018】
左右一対の折曲部11a,11bは、前記厚紙の前面領域9と後面主領域10aの境界を折曲する山折り線と、前面領域9と貼合せ領域10bの境界を折曲する山折り線とからなり、使用前において、ドリッパー1を平坦状に構成する。一対の折曲部11a,11bは、支持用紙体3の左右両側縁を逆ハの字状になす。
【0019】
左右一対の保形用突片12a,12bは、それぞれ略半円状に構成され、支持用紙体3の左右両側の下部に形成される。左右一対の保形用突片12a,12bは、ドリッパー1の使用前においては、折曲部11a,11bを介して2つ折りにされた状態で折り畳まれている。保持用突片12a,12bの基端部には、山折り線16a,16bが設けられる。
【0020】
差込片13,13’は、横向きの略D字形状をなし、前後両面の下部中央にそれぞれ形成される。左右一対の外側突片14a及び14b,14a及び14b’は、略三角形状に構成され、保形用突片12a,12bにそれぞれ隣接し、保形用突片12a,12bの周縁に沿って湾曲しながら下方に延在する。左右一対の外側突片14a及び14b,14a及び14b’は、差込片13,13’から左右にそれぞれ間隔をあけて形成される。
【0021】
確認用窓部15,15’は、横向きの略D字形状をなし、支持用紙体3の前後両面の中央に形成される。
【0022】
次に、本実施形態に係るドリッパー1の使用方法とその作用について説明することとする。
【0023】
まず、ドリッパー1の前後両面の上縁中央をそれぞれ指で掴んで外側に引っ張り、封止シール部7を剥離して、濾過用袋体2を開封する。次に、山折り線16a,16bを介して保形用突片12a,12bを内側に折り曲げて展開する。
【0024】
保形用突片12a,12bの展開に伴って、支持用紙体3の前後両面が外方に湾曲し、支持用紙体3が上方に向かうに従って拡開するような漏斗状に変形した状態を維持する。これに伴い、濾過用袋体2の上側部分も大きく開口した状態となり、ドリッパー1の組立てが完了する。このように、使用者は比較的簡易な手順でドリッパー1の組立作業を完了することが可能である。
【0025】
上述の組立てが完了すると、次に、外側突片14a及び14b,14a及び14b’がカップ17の外側に位置するようにしながら、差込片13,13’をカップの内側に差し込んで、ドリッパー1をカップ17に載置する。この時、開口部のサイズが小さめのカップ17に対しては、差込片13,13’がカップ17上部の内周面に当接して、カップ17上でドリッパー1が移動することを禁止する。これに対して、開口部のサイズが大きめのカップ17に対しては、外側突片14a及び14b,14a及び14b’がカップ17上部の外周面に当接するか、その付近に位置して、カップ17上でドリッパー1が移動することを禁止するか、カップ17に対するドリッパー1の移動を最小限に抑制する。本実施形態に係るドリッパー1によれば、カップ17のサイズの大小にかかわらず、カップ17に対するドリッパー1の載置姿勢を安定させることができる。その結果、使用者が濾過用袋体2にお湯を注いでいる間、ドリッパー1がカップ17上で倒れたり、カップ17から落下したりする危険性がなく、抽出中のお湯が濾過用袋体2からこぼれて使用者に火傷を負わせる事故を招来するようなことがない。
【0026】
カップ17への載置が完了すれば、開口した濾過用袋体2へ所望量の熱湯を注ぎ、抽出液をカップ17内へ流下させることで適量のコーヒーを生成する。この時、確認用窓部15,15’は、濾過用袋体2に注ぎ入れた湯量を確認するために使用される。熱湯の注ぎ入れに際しては、濾過用袋体2は大きく開口しているため、熱湯を容易に注ぎ入れることが可能である。
【0027】
図7は、本発明の第2実施形態に係るドリッパー1を示している。本実施形態に係るドリッパー1は、支持用紙体3の左右両側の下部にそれぞれ形成された一対の保形用突片12a,12bの構成が異なる点を除き、上記第1実施形態と同様であるため、同一部分については同一の参照符号を付して説明を省略することとする。
【0028】
本実施形態では、図8に示すように、左右一対の保形用突片12a,12bは、矩形状に構成され、上記第1実施形態と同様、ドリッパー1の使用前においては、図7に示すように、折曲部11a,11bを介して2つ折りにされた状態で折り畳まれている。各保形用突片12a,12bは、二等辺三角形状の押込部18a,18bと、この押込部18a,18bの左右両側に連設されて直角三角形状に構成された一対の外側当接片19a及び19a’,19b及び19b’と、押込部18a,18bと各外側当接片19a及び19a’,19b及び19b’との境界線上に設けられた一対の展開用の山折り線20a及び20a’,20b及び20b’とからなる。一対の山折り線20a及び20a’,20b及び20b’は、折曲部11a,11bと交差する保形用突片12a,12bの基端部中央から先端部の左右両端近傍までそれぞれ斜め下に向かって延在している。
【0029】
本実施形態に係るドリッパー1を使用する場合、山折り線20a及び20a’,20b及び20b’を介して押込部18a,18bを内側に押し込むと、保形用突片12a,12bが展開して支持用紙体3の変形状態を維持し、カップ17上にドリッパー1を載置することが可能となる。本実形態に係るドリッパー1を開口部のサイズが大きめのカップに載置した場合、保形用突片12a,12bの一対の外側当接片19a及び19a’,19b及び19b’は、カップ17上部の外周面に当接するか、その付近に位置する。その結果、外側当接片19a及び19a’,19b及び19b’は、カップ17上でドリッパー1が移動することを禁止するか、カップ17に対するドリッパー1の移動を最小限に抑制して、カップ17に対するドリッパー1の載置姿勢を安定させ、上記第1実施形態の外側突片14a及び14b,14a及び14b’と同様の機能を発揮する。
【0030】
このように、本実施形態では、保形用突片12a,12bは、支持用紙体3の変形を維持するだけでなく、開口部のサイズが大きめのカップを使用した場合の安全性を確保する。この点において、本実施形態の保形用突片12a,12bは、上記第1実施形態の保形用突片12a,12bと機能が異なっている。
【0031】
本実施形態に係るドリッパー1の使用方法とその作用については、上記の点を除いて、第1実施形態と同様であるため、その他の説明については説明を省略することとする。
【符号の説明】
【0032】
1 ドリッパー
2 濾過用袋体
3 支持用紙体
4,4’ 台形状領域
5 六角形状領域
6a,6b 左右シール部
7 封止シール部
8,8’ 固定用突片
9 前面領域
10a 後面主領域
10b 貼合せ領域
11a,11b 折曲部
12a,12b 保形用突片
13,13’ 差込片
14a,14a’,14b,14b’ 外側突片
15,15’ 確認用窓部
16a,16b 山折り線
17 カップ
18a,18b 押込部
19a,19a’,19b,19b’ 外側当接片
20a,20a’,20b,20b’ 山折り線

【特許請求の範囲】
【請求項1】
濾過用袋体と、上下が開口するように前後両面の左右両側が相互に連結された状態で前記濾過用袋体が内部に固定される折畳み可能な支持用紙体とからなるドリッパーにおいて、
該支持用紙体は、左右両側縁を逆ハの字状になす左右一対の折曲部と、
該折曲部を介して2つ折りとなるように左右両側の下部にそれぞれ形成され、展開用の山折り線が設けられた左右一対の保形用突片とを備えることを特徴とする、ドリッパー。
【請求項2】
前記山折り線は、前記保形用突片の基端部上に設けられていることを特徴とする、請求項1に記載のドリッパー。
【請求項3】
前記支持用紙体は、前後両面の下部中央に形成された差込片と、
該差込片から左右にそれぞれ間隔をあけて形成された外側突片とをさらに備えることを特徴とする、請求項2に記載のドリッパー。
【請求項4】
前記保形用突片は、押込部と、該押込部の左右両側にそれぞれ連設された一対の外側当接片とを備え、
前記山折り線は、前記押込部と該外側当接片との境界線上に設けられ、前記折曲部と交差する保形用突片の基端部中央からそれぞれ斜め下に向かって延在する一対の山折り線からなることを特徴とする、請求項1に記載のドリッパー。
【請求項5】
前記支持用紙体は、前後両面の下部中央に形成された差込片をさらに備えることを特徴とする、請求項4に記載のドリッパー。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate


【公開番号】特開2013−81757(P2013−81757A)
【公開日】平成25年5月9日(2013.5.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−160231(P2012−160231)
【出願日】平成24年7月19日(2012.7.19)
【出願人】(000002897)大日本印刷株式会社 (14,506)
【Fターム(参考)】