説明

ドレッシング材

【課題】貼着作業性に優れるドレッシング材を提供する。
【解決手段】基材1の一方の面に粘着層2を介して剥離紙3が積層され、他方の面に工程紙4が剥離可能に積層されたドレッシング材10であって、工程紙4はスリット5を備え、工程紙4のスリット5を挟む両側の端縁は互いに対向し、前記両側の端縁とその近傍は、工程紙4が基材1から剥離した一対の剥離部分6、6とされていることを特徴とするドレッシング材10。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、救急絆創膏、湿布等のドレッシング材に関する。さらに詳しくは、工程紙を備えるドレッシング材に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的に救急絆創膏等のドレッシング材(手当用品)では、柔軟で薄い基材を用いることが、皮膚貼付時に違和感が少ないことから好まれている。しかし、柔軟で薄い基材を用いると、取扱いが難しく製造時の加工性に問題がある。また、粘着面から剥離紙を引剥がした際、粘着面どうしが合着しやすく、使用時の貼着作業性に問題が生じやすい。また、伸度が大きいため、引伸ばされた状態で患部に貼着され、貼着後、圧迫感を感じるという問題もある。
そのため、柔軟で薄い基材の粘着面と反対側の面に工程紙を積層した救急絆創膏が用いられている(特許文献1)。
工程紙を積層した救急絆創膏は、工程紙により全体の剛性を補うことができるため、加工性、貼着作業性が改善されている。また、基材全体の伸度を抑制できるので、貼着後の圧迫感も生じにくい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平8−154965号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、工程紙を積層したドレッシング材は、患部に貼着後に工程紙を基材から剥離する必要がある。このとき、剥がし代は、ドレッシング材の端部に使用者が自分で作らなければならず面倒である。また、この剥がし代を作る際に基材を傷つけやすい。このように、貼着作業性に問題が残っていた。
工程紙にスリットを設けて、スリットを起点として工程紙を剥がすことができるようにした救急絆創膏も市販されている。しかし、剥がし代を使用者が自分で作らなければならないという事情は、スリットがない場合と同じである。さらに、スリット加工の際に、工程紙だけでなく基材上面にも刃が入っており、基材が千切れやすいという問題もあった。
本発明は、前記事情を鑑みてなされたものであり、貼着作業性に優れるドレッシング材を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決する本発明は、下記の態様を有する。
[1] 基材の一方の面に粘着層を介して剥離紙が積層され、他方の面に工程紙が剥離可能に積層されたドレッシング材であって、
前記工程紙はスリットを備え、
前記工程紙の前記スリットを挟む両側の端縁は互いに対向し、
前記両側の端縁とその近傍は、前記工程紙が基材から剥離した一対の剥離部分とされていることを特徴とするドレッシング材。
[2] 粘着層の剥離紙側の一部に、パッドが装着されている[1]に記載のドレッシング材。
【発明の効果】
【0006】
本発明のドレッシング材は、貼着作業性に優れる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】本発明の第1実施形態に係るドレッシング材の斜視図である。
【図2】図1のII−II断面図である。
【図3】本発明の第2実施形態に係るドレッシング材の断面図である。
【図4】スリット形成工程に使用するバイトの斜視図である。
【図5】スリットを形成している途中の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
[ドレッシング材]
図1、2を用いて、本発明のドレッシング材の第1実施形態について説明する。図1は本実施形態のドレッシング材10の斜視図、図2は図1のII−II断面図である。なお、図2は、説明の便宜上、厚み方向を強調している。
【0009】
図1、2に示すように、本実施形態のドレッシング材10は、基材1の一方の面に粘着層2を介して剥離紙3が積層され、他方の面に工程紙4が剥離可能に積層されて構成されている。工程紙4はスリット5を有し、スリット5の近傍には、基材1からの剥離部分6、6が形成されている。また、工程紙4には、剥離部分6、6を剥がし代として工程紙4を剥離する際の剥離方向を案内する矢印7、7・・・が印刷されている。
【0010】
基材1は、皮膚貼付時に違和感が少ないことから柔軟で薄いことが好ましい。また、患部の蒸れを防ぐため通気性に優れることが好ましい。さらに、患部を外部の水分から守るため、防水性にすぐれることが好ましい。
基材1の材質としては、ウレタン系樹脂、ポリアミド系樹脂、不織布、塩化ビニル樹脂、ポリオレフィン系樹脂が、柔軟性を満足させやすいので好ましい。中でも、ウレタン系樹脂、ポリアミド系樹脂、不織布は、通気性があることから特に好ましい。
基材1には、各種強度コントロール剤、無機粉体等の増量剤、染料、顔料等が配合されていてもよい。また、一軸延伸、二軸延伸、無延伸の何れの方法で製造されたものでもよい。また、一層だけでなく、異種又は同種の層を複数重ねた多層構造でもよい。
基材1の厚みは、柔軟性と通気性を得やすいことから、150g/m以下が好ましく、100g/m以下がより好ましく、80g/m以上がさらに好ましい。一方、強度が得やすいことから、15g/m以上が好ましく、20g/m以上がより好ましく、30g/m以上がさらに好ましい。
【0011】
本実施形態のドレッシング材10が絆創膏の場合、粘着層2は、基材1を被着体となる患部に貼着するための粘着剤で構成する。
粘着剤としては、ゴム系粘着剤、アクリル系粘着剤、シリコン系粘着剤等が挙げられる。基材1および被着体と粘着剤との密着性、粘着力を考慮して、イソシアネート系架橋剤、金属キレート系架橋剤、タッキファイヤー等を適宜添加してもよい。皮膚刺激性を低くする観点から、粘着剤の剥離力は低く設定することが好ましい。また、粘着剤成分の分子量を高く設定し、皮膚への浸透を抑制することが好ましい。
粘着剤を用いた粘着層2の厚みは、透湿性を得るためには、50μm以下が好ましく、30μm以下がより好ましい。一方、必要な接着力を得るために、10μm以上が好ましく、20μm以上がより好ましい。
【0012】
本実施形態のドレッシング材10が湿布の場合、粘着層2は、パップ剤やプラスター剤等の湿布薬で構成できる。
湿布薬には、サリチル酸メチル、dl-カンフル、l-メントール(冷湿布成分)、トウガラシエキス(温湿布成分)、インドメタシンなど、鎮痛、消炎等の作用を有する成分等を適宜含有させることができる。
【0013】
剥離紙3はドレッシング材に使用されている公知のものが採用できる。剥離紙3の材質としては、紙、フィルムなどが挙げられる。剥離紙3は、片面に剥離層を有する片面剥離紙であることが好ましい。
なお、使用時に剥離紙3の剥離が容易となるように、剥離紙3はスリットを有していてもよい。また、2枚の剥離紙3が、端部同士が重なり合うようにして粘着層2に積層された構成としてもよい。
【0014】
工程紙4としては、片面に基材1と擬似接着する擬似接着層を有するもの、ポリエステル不織布、ポリプロピレン不織布、ポリプロピレンフィルム、ポリエチレンテレフタレートフィルム、ポリエチレンフィルム等が挙げられる。
工程紙4の厚みは、使用適性を考慮すると、100g/m以下が好ましく、50g/m以下がより好ましい。一方、加工適性を考慮すると、15g/m以上が好ましく、20g/m以上がより好ましい。
基材1と工程紙4とは剥離可能に積層されている。両者の剥離力は、剥離速度0.3m/分において、20g/50mm〜100g/50mmであることが好ましい。
本実施形態におけるスリット5は、図1、2に示すように、工程紙4の幅方向中央に長さ方向に沿って形成されている。しかしながら、スリット5の形成位置に限定はなく、幅方向に沿って形成したり、何れかの側面近くに形成したりしてもよい。
【0015】
本実施形態のドレッシング材10を使用する場合は、剥離紙3を剥離し粘着層2を露出させて患部に貼着する。その後、工程紙4を剥離する。工程紙4を剥離する際には、剥離部分6、6を剥がし代として手でつまみ、矢印7、7・・・の案内に従い工程紙4をスリット5の両側に向けて引けばよい。したがって、本実施形態によれば、工程紙4の剥離作業が極めて容易である。
【0016】
次に図3を用いて、本発明のドレッシング材の第2実施形態について説明する。斜視図については、第1実施形態と同等なので図1を援用する。また、第1実施形態と同一の構成要素については、図1、2と同じ符号を付して、詳細な説明を省略する。図3は本実施形態における図1のII−II断面図である。なお、図2と同様に、図3は、説明の便宜上、厚み方向を強調している。
【0017】
図3に示すように、本実施形態のドレッシング材10’は、粘着層2の剥離紙3側の一部にガーゼ、不織布、コットン等のパッド8が装着されている。パッド8は、消毒剤等の薬物を含有したものでもよい。また、本実施形態では、剥離紙3が2枚の剥離紙3a、3bに分割されており、剥離紙3a、3bの端部同士は、パッド8の上で重なりあっている。
本実施形態のドレッシング材10’は、剥離紙3a、3bを剥離し粘着層2を露出させてパッド8が患部にあたるように貼着する。その後、図1のドレッシング材10と同様にして工程紙4を剥離する。
【0018】
なお、第2実施形態のドレッシング材10’において、剥離紙3は、第1実施形態のドレッシング材10と同様に分割されていない1枚のものでもよい。また、単にスリットにより剥離紙3a、3bに分割されているのみで、剥離紙3a、3bの端部同士が、パッド8の上で重なりあっていないものでもよい。
また、第1実施形態のドレッシング材10において、剥離紙3は、第2実施形態のドレッシング材10’と同様に2枚に分割されていてもよい。分割されている場合、剥離紙3は、単にスリットにより2枚に分割されているのみでも、分割された2枚の端部同士が、重なりあっていてもよい。
【0019】
[ドレッシング材の製造方法]
第1実施形態のドレッシング材10の製造方法は、基材1の一方の面に粘着層2を介して剥離紙3が積層され、他方の面に工程紙4が剥離可能に積層された積層体を得る積層工程と、工程紙4に、スリット5及びスリット5近傍の基材1からの剥離部分6、6を形成するスリット形成工程を有する。
【0020】
積層工程に特に限定はないが、予め基材1と工程紙4とを積層した工程紙付き基材を得、この工程紙付き基材と剥離紙とを粘着層2を介して貼着することが好ましい。
工程紙付き基材を得る方法としては、基材1の材料としてポリオレフィンフィルムなどの熱可塑性樹脂を用い、溶融化させた基材1の材料を工程紙4に貼合わせる方法;基材1の材料として塩化ビニル樹脂のオルガノゾル、ウレタン樹脂溶液など流延フィルムの製造に汎用されているものを用い、これらの材料を含む流延液を工程紙4に塗工、乾燥する方法;工程紙4に設けた擬似接着層を基材1に擬似接着する方法等が挙げられる。
【0021】
工程紙付き基材と剥離紙3とを粘着層2を介して貼着する方法としては、工程紙付き基材の基材1に直接粘着剤や湿布薬を塗布し、その後剥離紙を積層する直接法や、予め剥離紙3に粘着剤や湿布薬を塗布し、その後基材1を積層する転写法のどちらでも可能である。
【0022】
得られた積層体の工程紙4にスリット5及び剥離部分6、6を形成するスリット形成工程について、図4、図5を用いて説明する。図4は、スリット形成工程に使用するバイト20の斜視図、図5は、このバイト20を用いて積層体10aにスリット5を形成している途中の斜視図である。
【0023】
図4に示すように、バイト20は、シャンク11と、シャンク11の先端に略直角に取り付けられたガイド板12とガイド板12上に垂設された刃部13とを備えている。ガイド板12は、相対移動時の前方(図4の左下方向)がやや上向いた形状とされている。刃部13は、ガイド板12の相対移動時の前方を先端とし、後端はシャンク11に接して取り付けられている。刃部13には、先端からシャンク11にかけて徐々に立ち上がる略円弧状の切れ刃13aが設けられている。
【0024】
図5に示すように、積層体10aの基材1と工程紙4との間に刃部13を工程紙側としてバイト20のガイド板12を挿入し、挿入した状態のまま、積層体10aの面方向に沿ってガイド板12を積層体10aに対して相対移動させる。これにより、刃部13が通過した部分の工程紙4が切り開かれ、スリット5が形成される。このとき、刃部13はガイド板12の基材1と反対側に存在するので、基材1に刃が入ることはない。また、ガイド板12が通過した部分は工程紙4が基材1から剥離されるので、スリット5の両側近傍に剥離部分6、6が形成される。
【0025】
なお、スリット形成工程の後、所望の形状、大きさとするために、切断、打ち抜き等を適宜行うことができる。
また、2枚の剥離紙3が、端部同士が重なり合うようにして粘着層2に積層された構成とするためには、一旦剥離紙3を剥し、その後、一旦剥離した剥離紙3を切断して2枚としたもの、又は、別に用意した2枚の剥離紙3を、2枚の剥離紙3の端部同士が重なり合うようにして粘着層2に被せればよい。
また、図5では、積層体10aをシート状のものとして示したが、積層体10aを連続したウエブ状とする方が、製造工程上取り扱いやすい。
【0026】
第2実施形態のドレッシング材10’の製造方法は、第1実施形態のドレッシング材10の製造方法と同様に、スリット形成工程まで行った後、一旦剥離紙3を剥し、所要サイズのパッド8を粘着層2に装着する。その後、一旦剥離した剥離紙3を切断して2枚としたもの、又は、別に用意した2枚の剥離紙3を、剥離紙3a、3bとして用い、これらの端部同士がパッド8の上で重なり合うようにして粘着層2に被せる。その後、所望の形状、大きさとするために、切断、打ち抜き等を適宜行う。
【符号の説明】
【0027】
1…基材,2…粘着層,3…剥離紙,4…工程紙,5…スリット,6…剥離部分,
7…矢印,8…パッド,10、10’…ドレッシング材,10a…積層体,
11…シャンク,12…ガイド板,13…刃部,13a…切れ刃,20…バイト

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材の一方の面に粘着層を介して剥離紙が積層され、他方の面に工程紙が剥離可能に積層されたドレッシング材であって、
前記工程紙はスリットを備え、
前記工程紙の前記スリットを挟む両側の端縁は互いに対向し、
前記両側の端縁とその近傍は、前記工程紙が基材から剥離した一対の剥離部分とされていることを特徴とするドレッシング材。
【請求項2】
粘着層の剥離紙側の一部に、パッドが装着されている請求項1に記載のドレッシング材。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−210548(P2012−210548A)
【公開日】平成24年11月1日(2012.11.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−178563(P2012−178563)
【出願日】平成24年8月10日(2012.8.10)
【分割の表示】特願2006−338363(P2006−338363)の分割
【原出願日】平成18年12月15日(2006.12.15)
【出願人】(595178748)王子タック株式会社 (76)
【出願人】(000122298)王子製紙株式会社 (2,055)