説明

ドレン排水試験装置

【課題】消費電力を小さくするとともに装置の小型化を図ることができ、また、フロートスイッチの作動信号を簡単に外部に取り出すことができる試験装置を提供する。
【解決手段】空気調和機の定格電圧とは異なる電源電圧を用いる、前記空気調和機の室内機のドレン排水試験装置(1)。前記電源電圧に基づいて前記ドレンポンプを駆動させる電源供給部(2)と、前記室内機のドレンパン内のドレン水位を検知するフロートスイッチ(11)と接続されることにより当該フロートスイッチ(11)の作動を知らせる報知部(3)とを備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はドレン排水試験装置に関する。さらに詳しくは、空気調和機の室内機のドレン配管の通水試験及びドレンポンプの機能試験を行うドレン排水試験装置に関する。
【背景技術】
【0002】
天井内設置型又は天吊型室内機のドレン配管の通水試験及びドレンポンプの機能試験は、通常、天井を施工する前に行われている。業務用の室内機を運転するにはAC200Vの定格電圧が必要であるが、天井施工前の段階の現場には、仮設電源(AC100V)は供給されているものの本設電源(AC200V)が供給されていないことが多い。
【0003】
そこで、従来、仮設電源をトランスで200Vに昇圧し、このAC200Vを室内機に供給し、ドレンポンプを含む室内機全体を運転させる試験装置が提案されている。この試験装置は、送水タンク、送水ポンプ及び送水流量計を内蔵しており、送水ポンプによりドレンパンに所定流量の水を供給してドレン配管の通水試験及びドレンポンプの機能試験を行っている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、前述した試験装置では、室内機全体を運転させており、機能確認の対象であるドレンポンプ以外のファンなどの部品へも電力を供給しているので、消費電力が大きく、また、その分装置自体が大型化して重くなり、現場でかさばってしまう。
【0005】
また、前述した試験装置を用いる場合、ドレンパンからドレンがオーバーフローするのを監視するフロートスイッチが作動したか否かのフィードバックがとりにくいという問題がある。すなわち、前述した試験装置では、室内機全体を運転させているので、当該室内機の制御部は室内機全体の運転調整をしており、ドレン配管の詰まりやドレンポンプの故障などでフロートスイッチが作動した場合、その信号によりリモコンに異常ランプが点灯するが、当該信号を外部に取り出すことが難しい。このため、フロートスイッチが作動したときに、前記送水ポンプの運転を自動停止させることが難しく、ドレンがドレンパンからオーバーフローするという問題がある。
【0006】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、消費電力を小さくするとともに装置の小型化を図ることができ、また、フロートスイッチの作動信号を簡単に外部に取り出すことができる試験装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
(1)本発明のドレン排水試験装置は、空気調和機の定格電圧とは異なる電源電圧を用いる、前記空気調和機の室内機のドレン排水試験装置であって、
前記電源電圧に基づいて前記ドレンポンプを駆動させる電源供給部と、
前記室内機のドレンパン内のドレン水位を検知するフロートスイッチと接続されることにより当該フロートスイッチの作動を知らせる報知部と
を備えたことを特徴としている。
【0008】
本発明のドレン排水試験装置では、従来のように室内機全体を運転させるのではなく、機能確認の対象であるドレンポンプだけを駆動させることができ、消費電力を、例えば従来の10分の1程度に低減させることができる。また、供給電力が小さくてすむため、装置の小型化及び軽量化を図ることができ、現場での取扱いが容易になる。
また、本発明の試験装置では、報知部によって、室内機のドレンパン内のドレン水位を検知するフロートスイッチの作動を知らせることができるので、ドレン配管の詰まりやドレンポンプの故障などに起因する排水不良を容易に把握して必要な対策を採ることができる。
【0009】
(2)前記(1)のドレン排水試験装置において、前記電源供給部は、AC100Vを前記空気調和機の定格電圧に昇圧するトランスを含んだものとすることができる。室内機のドレンポンプが、例えばAC200Vのように現場の仮設電源のAC100Vとは異なる定格電圧で駆動するタイプのものである場合、トランスで昇圧した定格電圧をドレンポンプに供給して当該ドレンポンプを駆動させることができる。
【0010】
(3)前記(1)又は(2)のドレン排水試験装置において、前記電源供給部は、交流を直流に変換する整流回路を含んでいることが好ましい。室内機のドレンポンプが直流で駆動するタイプのものである場合、整流回路により変換された直流をドレンポンプに供給して当該ドレンポンプを駆動させることができる。
(4)前記(1)〜(3)のドレン排水試験装置において、前記ドレンポンプに接続される配線の端部のコネクターが、前記室内機の制御用の基板に対して着脱可能であり、前記電源供給部は、外したコネクターに接続できるコネクターを備えており、且つ、
前記フロートスイッチに接続される配線の端部のコネクターが、前記室内機の制御用の基板に対して着脱可能であり、前記報知部は、外したコネクターに接続できるコネクターを備えていることが好ましい。この場合、コネクターの着脱により簡単に仮設電源に基づいてドレンポンプを駆動させることができる。また、コネクターを標準化することにより種々の機種に対しての使用が可能となり、ドレン排水試験装置の汎用性を高めることができる。さらに、ドレンポンプ側又はフロートスイッチ側のコネクターが標準とは異なっていても、アダプターを用いることでドレン排水試験装置を使用可能にすることができる。
【発明の効果】
【0011】
本発明のドレン排水試験装置によれば、消費電力を小さくするとともに装置の小型化を図ることができ、また、フロートスイッチの作動信号を簡単に外部に取り出すことができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明のドレン排水試験装置の第1実施形態の回路説明図である。
【図2】本発明のドレン排水試験装置の第2実施形態の回路説明図である。
【図3】第2実施形態に係るドレン排水試験装置においてバッテリーを使用しないときの回路説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、添付図面を参照しつつ、本発明のドレン排水試験装置の実施の形態を詳細に説明する。
【0014】
〔第1実施形態〕
図1は、本発明の第1実施形態に係るドレン排水試験装置1の回路説明図である。
本実施の形態のドレン排水試験装置1は、本設電源を受電する前の現場において、仮設電源を用いて空気調和機の室内機のドレンポンプの機能試験及びドレン配管の通水試験を行うものであり、電源供給部2と、報知部3とを備えている。ドレン排水試験装置1を構成する要素は、ケーシング4内に収容されるか、又は、ケーシング4の上面若しくは側面に配設されている。
【0015】
電源供給部2は、空気調和機の定格電圧とは異なる、仮設電源の電源電圧(AC100V)に基づいてドレンポンプを駆動させるものであり、トランス5、ダイオードブリッジを有する整流回路6、及びコネクター9、10を備えている。現場の仮設電源のコンセント(図示せず)にプラグ7を差し込んで、電源スイッチ8をオンにすることにより、トランス5によってAC100VがAC200Vに昇圧されるとともに、AC100VがAC17Vに降圧される。降圧されたAC17Vは、整流回路6によってDC12Vに変換される。AC100Vから昇圧されたAC200Vは、AC200V用のコネクター9まで供給される。AC17Vから変換されたDC12Vは、DC12V用のコネクター10及び14まで供給される。コネクター9及び10は、ドレンポンプ駆動用であり、コネクター14は、後述するフロートスイッチ11用である。なお、図1において、20はヒューズである。
【0016】
室内機のドレンパン(図示せず)内には、当該ドレンパン内のドレン水位を検知してドレンがドレンパンからオーバーフローするのを防止するフロートスイッチ11が配設されている。このフロートスイッチ11は、通常は「閉」の状態であり、ドレンパン内のドレン水位が所定レベル以上に達したときに開状態になる。
【0017】
フロートスイッチ11は、リレーコイル12aを経由してDC12Vに接続可能であり、ドレンパン内のドレン水位が所定レベル未満の正常時には、リレーコイル12aが励磁され、リレー接点12bが閉じてランプ30が点灯する。一方、ドレンパン内のドレン水位が所定レベル以上になると、フロートスイッチ11が作動して接点が開状態になるので、リレーコイル12aが消磁され、リレー接点12bが開いてランプ30が消灯する。かかるリレーコイル12a、リレー接点12b、ランプ30及びコネクター14により本実施の形態における報知部3が構成されている。
【0018】
室内機のプリント基板13には、当該室内機の運転を制御する制御部などとともに、ドレンポンプのコネクター15を接続する接続部15a及びフロートスイッチ11のコネクター16を接続する接続部16aが配設されている。通常は、コネクター15は接続部15aに接続され、コネクター16は接続部16aに接続されているが、これらコネクター15、16は前記プリント基板13に対して着脱可能である。また、コネクター9、10はコネクター15と接続可能であり、コネクター14はコネクター16と接続可能である。
【0019】
次に、前記ドレン排水試験装置1の使用方法について説明する。
室内機のプリント基板13からドレンポンプのコネクター15及びフロートスイッチ11のコネクター16を外すとともに、プラグ7を仮設電源のコンセントに接続する。
【0020】
外したフロートスイッチ11のコネクター16を、ドレン排水試験装置1のフロートスイッチ11用のコネクター14に接続する。一方、外したドレンポンプのコネクター15を、ドレンポンプの電源仕様に応じてAC200V用のコネクター9又はDC12V用のコネクター10に接続する。なお、同じAC200V駆動であっても機種によりコネクター15の形状が異なることがあるが、コネクターを標準化することにより種々の機種に対してドレン排水試験装置1を使用することが可能になる。また、機種によりコネクター15の形状が異なっていたとしても、コネクター15の種々の形状に対応した、例えばアダプターを用いることでドレンポンプのコネクター15とAC200V用のコネクター9とを接続することができる。このことは、ドレンポンプがDC駆動の場合でも同様である。
【0021】
ついで、電源スイッチ8をオンにすることで、ドレンポンプ、ランプ30、及びリレーコイル12aに電源を供給する。これにより、ドレンポンプが駆動するとともに、ランプ30が点灯する。この状態で、室内機の点検口の蓋を外して、当該点検口からドレンパンに水を供給すると、供給された水はドレンポンプによりドレンアップされて機外へ排水される。排水の通路のうち、室内機のケーシングを貫通する部分は透明な材料で作製されたキャップ部とされており、このキャップ部に排水ホースが接続される。機外に排出される水は、このキャップ部において目視により確認することができる。なお、通水試験用の水は、電源スイッチ8をオンする前に所定量をドレンパン内に供給しておいてもよい。
【0022】
ドレン配管に詰まりがなく、ドレンポンプが正常に作動しているときは、ドレンパン内に供給される水は機外に排出されるので、フロートスイッチ11が作動することはないので、ランプ30は点灯したままである。一方、ドレン配管の詰まりや、ドレンポンプの故障により所定の排水機能が発揮できない場合、ドレンパン内に水を供給し続けると、やがてドレン水位は所定レベルに達してフロートスイッチ11が作動して、当該フロートスイッチ11の接点が開状態になる。その結果、リレー接点12bが開いてランプ30が消灯する。これにより、ユーザは、何らかの異常によりドレンパン内のドレン水位が上昇してフロートスイッチ11が作動したことを知ることができ、ドレンパン内への水の供給を止めてフロートスイッチ11が作動した原因を探ることができる。
【0023】
〔第2実施形態〕
図2は、本発明の第2実施形態に係るドレン排水試験装置21の回路説明図である。第2実施形態に係るドレン排水試験装置21が、図1に示される第1実施形態に係るドレン排水試験装置1と異なる点は、直流電源としてバッテリー23からの電源も使用可能にしたことである。したがって、両実施形態において共通する構成ないし要素には同じ参照符号を付し、それらについての説明は省略し、相違点を中心に説明をする。
【0024】
本実施の形態では、トランス25の二次側において整流回路6と並行して充電回路22が設けられており、この充電回路22を介してバッテリー23が充電される。また、バッテリー23の使用時(放電時)と、非使用時(整流回路6で変換されたDCの使用時)とで線路を切り替える切替スイッチ24が設けられている。バッテリー23としては、例えば自動車などに用いられている鉛蓄電池やアルカリ電池などを採用することができる。
【0025】
バッテリー23を使用しないとき、換言すれば整流回路6で変換されたDCを使用するときは、切替スイッチ24により、図3に示されるように線路を切り替えて、整流回路6で変換されたDCをDC12V用のコネクター10まで供給する。また、充電回路22により、バッテリー23を充電する。
【0026】
一方、仮設電源のコンセントが近くに存在しないときなどには、切替スイッチ24により、図2に示されるように線路を切り替えて、バッテリー23からDC12V用のコネクター10までDC電源を供給する。
【0027】
本実施の形態の場合、仮設電源のコンセントが近くに存在しない場合でも、ドレンポンプがDC駆動タイプであるときは、バッテリー23に蓄えた電源を用いて、ドレン配管の通水試験及びドレンポンプの機能試験を行うことができる。
【0028】
〔その他の変形例〕
本発明のドレン排水試験装置は、前述した実施の形態に限定されるものではなく、種々の変更ないし改変が可能である。
例えば、前述した実施の形態では、ランプの消灯によりフロートスイッチが作動したことをユーザに知らせているが、ドレン廻りの何らかの異常に起因するフロートスイッチの作動を知らせる報知部としては、ランプ以外にブザーなどの音響手段を用いることができる。また、ランプなどの表示手段と音響手段とを併用することもできる。
【0029】
また、前述した実施の形態では、試験用の水をユーザがマニュアルでドレンパン内に供給しているが、送水タンク及び送水ポンプを用いてドレンパン内に水を供給することもできる。
【符号の説明】
【0030】
1 ドレン排水試験装置
2 電源供給部
3 報知部
4 ケーシング
5 トランス
6 整流回路
7 プラグ
8 電源スイッチ
9 AC200V用コネクター
10 DC12V用コネクター
11 フロートスイッチ
12a リレーコイル
12b リレー接点
13 プリント基板
14 フロートスイッチ用コネクター
15 ドレンポンプのコネクター
16 フロートスイッチのコネクター
20 ヒューズ
21 ドレン排水試験装置
22 充電回路
23 バッテリー
24 切替スイッチ
25 トランス
30 ランプ
32 電源供給部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
空気調和機の定格電圧とは異なる電源電圧を用いる、前記空気調和機の室内機のドレン排水試験装置(1、21)であって、
前記電源電圧に基づいて前記ドレンポンプを駆動させる電源供給部(2、32)と、
前記室内機のドレンパン内のドレン水位を検知するフロートスイッチ(11)と接続されることにより当該フロートスイッチ(11)の作動を知らせる報知部(3)と
を備えたことを特徴とするドレン排水試験装置(1、21)。
【請求項2】
前記電源供給部(2、32)は、AC100Vを前記空気調和機の定格電圧に昇圧するトランス(5、25)を含んでいる請求項1に記載のドレン排水試験装置(1、21)。
【請求項3】
前記電源供給部(2、32)は、交流を直流に変換する整流回路(6)を含んでいる請求項1又は2に記載のドレン排水試験装置(1、21)。
【請求項4】
前記ドレンポンプに接続される配線の端部のコネクター(15)が、前記室内機の制御用の基板に対して着脱可能であり、前記電源供給部(2、32)は、外したコネクター(15)に接続できるコネクター(9、10)を備えており、且つ、
前記フロートスイッチ(11)に接続される配線の端部のコネクター(16)が、前記室内機の制御用の基板に対して着脱可能であり、前記報知部(3)は、外したコネクター(16)に接続できるコネクター(14)を備えている請求項1〜3のいずれかに記載のドレン排水試験装置(1、21)。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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