説明

ドープ化または非ドープ化ZnO材料の製造方法およびその材料

本発明は、主に、ドープ化または非ドープ化ZnO材料を製造する方法、ならびに前記方法によって得られるドープ化または非ドープ化ZnO材料に関する。前記材料は非常に興味深い熱電特性を示す。前記方法は、a)ZnO、もし存在する場合にはドーピング元素の少なくとも1種類の酸化物、および少なくとも1種類の固体細孔形成剤、の各粉末を混合して混合物を得、ここで、前記少なくとも1種類の固体細孔形成剤が、開放細孔性の生成に適しており、かつ、ZnOおよび、もし存在する場合には少なくとも5重量%の前記ドーピング元素の少なくとも1種類の酸化物に対し、ある比率で用いられ、少なくとも10μmの平均寸法を有し、b)前記混合物を成形して成形未焼成体を得、c)前記成形未焼成体を熱処理して、開放細孔性を示す多孔性の焼結体を得、d)前記多孔性の焼結体を不活性雰囲気または還元性雰囲気下でアニールする、各工程を含む。

【発明の詳細な説明】
【関連出願の相互参照】
【0001】
本願は、2010年2月25日に出願した欧州特許出願第10305191.8号の優先権の利益を主張する。
【技術分野】
【0002】
本発明は、ドープ化または非ドープ化ZnO材料の製造方法、前記方法によって入手可能な材料、および前記材料のn型熱電材料としての使用に関する。
【0003】
本発明の方法は、非常に興味深い熱電特性、さらに具体的には、好ましい高い電気伝導性および好ましい低い熱伝導性を示す新素材の調製を可能にする。前記方法は、熱電材料として適した多孔性の酸化亜鉛材料を供給する。
【背景技術】
【0004】
熱電材料とは、材料のバルク体が熱電モジュール内で組み立てられるときに、熱から電気を発生させることができるものである。さまざまな用途に使用することができる費用効果的なデバイスの製造に対する課題は、数多く存在する。特に、モジュールの高温動作には、化学的および熱的に安定な材料が要求される。対処すべき別の課題は、ゼーベック係数、熱伝導性および電気伝導性といった熱電材料を特徴づける物理的特性の最適化である。電気伝導性は、化学組成、ドーピングする構造上の欠陥、微細構造、および多孔性を含めた材料設計に対し、非常に敏感である。良好な熱電材料は、高い電気伝導性、高いゼーベック係数および低い熱伝導性を有する。これら3つの特性は本質的に相関しており、よって、それらを個別に改善するのは非常に困難である。無次元の性能指数:ZT=TS2σ/κ[ここで、Sはゼーベック係数であり、σは電気伝導性であり、κは熱伝導性である(Tは温度)]は、材料の熱電特性を定義する。ZTは可能な限り高くする必要があり、費用は所望の用途に適合させなくてはならない。
【0005】
酸化亜鉛(ZnO)をベースとした材料は、中でも最高の熱電酸化物であるが、問題の1つは、熱伝導性が比較的高く、これがZTの最大化を制限することである。ナノ多孔性の構造の導入(特許文献1に例証される)は、ZTを増大させるのに十分ではない。他者も、特許文献2〜4などに、ZnOの熱電特性の改善について開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】米国特許第5,525,162号明細書
【特許文献2】特開第2007−246294号明細書
【特許文献3】特開第2006−347861号明細書
【特許文献4】米国特許出願公開第2007/0240749号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ZnOをベースとした材料の熱電特性の最適化は未だに困難な課題である。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の第1の目的は、熱電特性が改善された、新しいドープ化または非ドープ化バルクZnO材料の製造方法にある。
【0009】
前記方法は、3つの主要な工程、すなわち:1)粉末を混合し、得られた混合物を成形し、次に、2)前記粉末の成形混合物を熱処理し、3)不活性雰囲気下または還元雰囲気下でアニールすることを含む。
【0010】
本発明の第1の目的は、より正確には、ドーピング元素を含まないZnO材料または少なくとも1種類のドーピング元素を含むZnOをベースとした材料を製造する方法にある。特徴として、前記方法は、
a)ZnO、もし存在する場合にはドーピング元素の少なくとも1種類の酸化物、および、少なくとも1種類の固体細孔形成剤、の各粉末を混合して、混合物を得、ここで、
前記少なくとも1種類の固体細孔形成剤が、
開放細孔性を生じるのに適しており、
ZnO、およびもし存在する場合には少なくとも5重量%の前記ドーピング元素の少なくとも1種類の酸化物に対し、ある比率で用いられ、かつ、
少なくとも10μmの平均寸法を有し、
b)前記混合物を成形して成形未焼成体を得、
c)前記成形未焼成体を熱処理して、開放細孔性を示す多孔性の焼結体を得、
d)前記多孔性の焼結体を不活性雰囲気または還元性雰囲気下でアニールする、
各工程を含む。
【0011】
・前記方法の工程a)に関しては、以後、以下のことが非限定的な方法で展開される。
【0012】
ZnOは、最終生成物の基本的構成要素である。
【0013】
ZnOは、最終的な非ドープ化ZnO材料を得るための単一酸化物として用いることができる。高温において、このような最終的な非ドープ化ZnO材料は、非酸化(排他的)雰囲気下で有利に使用される。
【0014】
しかしながら、ZnOは、ドープ化ZnO材料の製造を考慮して、一般には、ドーピング元素の少なくとも1種類の酸化物とともに用いられる。よって、ドーピング元素の少なくとも1種類の酸化物が、一般に出発材料として用いられる(よって、ドーピング元素の少なくとも1種類の酸化物は調製混合物中に存在する)。対応する粉末は、ZnO粉末と混合される。少なくとも1種類のドーピング元素は、通常の量で用いられる。出発原料粉末の混合物は、一般に、ドーピング元素の少なくとも1種類の酸化物を含み、前記ドーピング元素の少なくとも1種類の酸化物は、一般に、前記混合物が、少なくとも1種類のドーピング元素を、Znに対し、最大で10原子%の比率、有利には0.1〜10原子%の比率で含むような量で存在する。当業者は、酸化物の添加量は原子%または重量%で同等に表わすことができることを理解している。前記量は、マトリクスまたは母材に対して過剰であるか、または代用される。本事例では、マトリクスまたは母材は、典型的にはZnOである。ZnOを混合することができるドーピング元素酸化物は、本発明の方法の工程a)によれば、Al、Ce、B、Zr、Ti、Ni、Sn、Fe、Ge、Ga、Mnの酸化物およびそれらの組合せからなる群より選択することができる。前記リストは限定的ではない。
【0015】
有利には、本発明の方法の工程a)に従って調製した混合物は、Al23およびドーピング元素の少なくとも1種類の他の酸化物を含み、前記ドーピング元素の少なくとも1種類の他の酸化物は、 非常に有利には、Ce、B、Zr、Ti、Ni、Sn、Fe、Ge、Ga、Mnの酸化物およびそれらの組合せからなる群より選択される。
【0016】
好ましい変形に従えば、前記混合物は、Al23とCeO2、またはAl23とGa23を含む。前記好ましい変形に従えば、本発明の方法に従って製造されたZnO材料は、AlとCeまたはAlとGaを用いてドープ化されたZnO材料である。
【0017】
それ自体既知の方法では、ドーピング元素(酸化物として添加)は、置換によって、または格子間元素として、またはマトリクスとの反応によって、ZnO材料の結晶構造に組み込まれて二次相を形成するか(マトリクス内に分散されている)、または反応しない酸化物粒として組み込まれる(これもまた前記マトリクス内に分散されている)。
【0018】
工程a)で調製された混合物は、少なくとも1種類の固体細孔形成剤を含む。少なくとも1種類の固体細孔形成剤は、接続されたマクロ孔を有する高度に多孔性の材料を作り出すのに適している。
【0019】
少なくとも1種類の固体細孔形成剤は、大量に用いられる。すなわち、ZnOおよび、もし存在する場合には少なくとも5重量%の前記ドーピング元素の少なくとも1種類の酸化物に対し、ある比率で用いられる。前記少なくとも1種類の固体細孔形成剤は、一般に、8〜70重量%、有利には8〜50重量%の上記定義された比率で用いられる。典型的には、それは、8〜25重量%の上記定義された比率で用いられる。それは、実際には、少なくとも10体積%の開放細孔率、一般には10〜70体積%、有利には20〜50体積%の開放細孔率を示す最終生成物の調製に適した比率で用いられる。
【0020】
少なくとも1種類の固体細孔形成剤は、少なくとも10μmの、大きい平均寸法を示す。前記平均寸法(等価直径)は、一般に10〜500μm、有利には20および200μmである。用いられる少なくとも1つの細孔形成剤は、本発明によれば、ナノ細孔を作り出すために用いられるのでないことは明らかである。細孔形成剤の平均寸法(等価直径)の上記所定の値は、本明細書で用いられる「マクロ孔」、「マクロ多孔性」の概念を定量するものである。目的とする材料は、対応する寸法、すなわち:少なくとも10μm、一般には10〜500μm、有利には20〜200μmの平均寸法を有する細孔を有するように意図される。本明細書では、少なくとも1つの細孔形成剤の寸法、ひいては、製造された多孔性の(ドープ化または非ドープ化)ZnO材料の細孔の寸法は、相対的価値である限り、少しも厳しく制限されることがないことに着目すべきである。大型のものが製造される場合、その大型の本体は、機械的性質が顕著に脆弱化することなしに、大きい細孔を含みうる。よって、少なくとも1種類の固体細孔形成剤は、少なくとも10μmの平均寸法を有し(本発明の意味合いではマクロ孔を生成するため)、はるかに大きい平均寸法を実際に有することができる。
【0021】
少なくとも1種類の固体細孔形成剤は、開放細孔性を創出することができる。それは、一般に、適合した幾何学的形状を示す。すなわち、先験的には、完全な球面幾何学ではない。使用する少なくとも1つの細孔形成剤(本発明の方法の工程c)における、熱の作用の際に通常は消失する)の量および寸法を考慮に入れれば、相互接続した細孔(開放細孔性)は、本明細書の文脈では容易に生成することに留意されたい。
【0022】
少なくとも1種類の固体細孔形成剤は、通常セラミックの調製方法に用いられる固体細孔形成剤のいずれかでありうる。それは、有利には、ジャガイモデンプン、グラファイト、糖類およびそれらの混合物からなる。非常に有利には、ジャガイモデンプンまたは(および)グラファイトが細孔形成剤として用いられる。
【0023】
少なくとも1種類の固体細孔形成剤は、本発明の方法の重要なキーである。その作用のおかげで、熱処理(本発明の方法の工程c))の間に進行し、マクロ多孔性の構造(高い開放細孔性を有する)が生成される。前記マクロ多孔性の構造は:
1)低い熱伝導性、したがって改善された熱電特性を示す、最終的なマクロ多孔性のドープ化または非ドープ化ZnO材料をもたらすことができる;
2)短縮した時間でアニール処理(本発明の方法の工程d))を効率的にできる(マクロ多孔性の構造内部のガス拡散が促進される;結晶構造内部の酸素欠損および/または酸素再分布が可能になる)。
【0024】
本明細書において着目すべきは、脆弱ではなく、もろくもない、このようなマクロ多孔性の構造をもたらすことができるとは全く予測できなかったこと、および、2つの特性、すなわち、マクロ多孔性の高い開放細孔率とアニール処理によって最終生成物の熱電特性に関して展開された相乗効果が実に驚くべきことであること、である。
【0025】
・本発明の方法の工程b)に関して、以後、以下のことが非限定的な方法で展開される。
【0026】
粉末の混合物(ZnO+もし存在する場合にはドーピング元素の少なくとも1種類の酸化物+少なくとも1つの細孔形成剤)は、成形、一般的には単軸法に従ってプレス成形される。前記混合物に形状が付与される。通常の成形法は、一般に、液体有機結合剤などの加工助剤を粉末の混合物に添加して、行うことができる。
【0027】
以下の通常の成形法を行うことができる:射出成形、押出成形、静水圧プレス成形、スリップキャスティング、ロール圧密成形またはテープ成形。前記リストは全く包括的ではない。
【0028】
本発明の方法の工程b)の最後に、成形未焼成体がもたらされる。
【0029】
・本発明の方法の工程c)に関して、以後、以下のことが非限定的な方法で展開される。
【0030】
未焼成体は、工程c)に従って、開放細孔性を有する多孔性の焼結体(セラミック)がもたらされるように、作用を発現させるために存在する少なくとも1種類の固体細孔形成剤と焼結すべき粉末の両方を有するように焼成される。
【0031】
未焼成体は、熱サイクルに従って空気中または酸素中で焼成され、以下のことを連続的に可能にする:
−第1に、「低温」(500℃を超える、一般には600℃を超える)において、少なくとも1つの細孔形成剤は燃焼するために存在し、それによって期待される開放マクロ多孔性が作り出され;
−第2に、より高温(600℃を超える、一般には750℃を超える、典型的には1350℃)において、多孔性の材料が焼結される。結晶相が作り出される。セラミックが得られる。
【0032】
このような熱処理は、それ自体既知である。本発明によれば、特定の原材料(ZnOおよびもし存在する場合にはドーピング元素の少なくとも1種類の酸化物)、および、大きい寸法の、大量に存在する、開放細孔性を生じるのに適した少なくとも1種類の固体細孔形成剤を用いて、特徴的に行われる。
【0033】
・本発明の方法の工程d)に関して、以後、以下のことが非限定的な方法で展開される。
【0034】
特徴として、得られた多孔性の焼結体は、不活性雰囲気または還元性雰囲気下でアニールされる。
【0035】
不活性雰囲気または還元性雰囲気とは、酸素を含有しない雰囲気のことをいう。有利には、アニール(本発明の方法の工程d))は、N2、Arおよび/またはH2雰囲気下で行われる。非常に有利には、アニールはN2またはAr/H2雰囲気下で行われる。好ましくは、N2雰囲気下で行われる。
【0036】
不活性雰囲気または還元性雰囲気下でのアニールは適切な温度で行われ、材料の構造に影響を与える。材料の許容できない脆弱化を防ぐために、前記適切な温度は、過度であるべきではない。アニールは、一般に、1100℃より低い温度で行われる。アニールは、一般に、600℃より高温、有利には750℃より高温、非常に有利には、800℃以上の温度で行われる。アニールは、典型的には、800℃の温度、または1000℃の温度で行われる。
【0037】
アニールは、本発明の方法の第2の重要なキーである。本発明者らは、非常に驚くべきことに、アニール(不活性雰囲気または還元性雰囲気下で)後に得られた材料が、不活性雰囲気または還元性雰囲気下で処理しなかったものと比較して、改善された熱電特性を有することを観察した。本発明者らは、開放細孔性を示すマクロ多孔性の構造(本発明の方法の工程c)の最後にもたらされる)において行われたアニールが、材料の電気伝導性の大幅な増大を暗に示していることを観察した。アニールはまた、材料の色の変化についても暗示している。
【0038】
よって、アニールは、材料上に、電気伝導性の改善に関与する痕跡を残す。
【0039】
このような痕跡は、本発明者らの知識によれば、材料内の酸素含有量および/または酸素分布の改良である。アニールした材料は、酸素が欠乏している(対応するドープ化または非ドープ化ZnOに関して)、および/または、酸素再分布を示す(対応するドープ化または非ドープ化ZnOのうち1つに関して)。
【0040】
このような痕跡は、X線光電子分光分析法(XPS)によって可視化することができることが当業者に知られている。
【0041】
本発明の方法は、特に、ZnOからの非常に効率的な熱電材料の簡単な製造(空間または材料に熱を取り込み、その熱から電気を生み出す、改善されたZnO熱電材料の簡単な製造)を可能にする限りにおいて、興味深いものである。
【0042】
ベースとなる出発材料、すなわちZnOは、豊富に使用することができ、低コストであり、環境に優しい(スクッテルダイトまたは他の非酸化物である危険物質と比較して、少なくとも環境に優しい)。
【0043】
最終的な熱電材料は、生産が容易であり、非常に興味深い熱電特性、すなわち、好ましくは低い熱伝導性および好ましくは高い電気伝導性を示す。
【0044】
本発明の方法は、改善された熱電変換効率を有し、したがって熱電用途に特に適した、ドープ化または非ドープ化ZnO材料の調製を可能にする。
【0045】
本発明の第2の目的は、前記材料にある。本発明の第2の目的は、上記方法によって得ることができる、ドーピング元素を含まないZnO材料、または少なくとも1種類のドーピング元素を含むZnOをベースとした材料にある。
【0046】
前記材料は、さらに具体的には、本発明の方法の工程c)およびd)のそれぞれの痕跡を有する。
【0047】
−前記材料は、細孔が少なくとも10μmの平均寸法(等価直径)を有する、少なくとも10体積%の開放細孔率を示す(前記特徴は、少なくとも1種類の固体細孔形成剤の上記使用に直接的に結びつく);
−前記材料は、酸素欠乏の状態にある、および/または酸素再分配されている(対応するドープ化または非ドープ化ZnOに関して)(前記特徴は、アニール処理によって直接的に生じる)。
【0048】
前記材料の少なくとも1種類のドーピング元素に関して、次の有利な変形が、個別にまたは組み合わせて考慮されうる:
−材料は、最大で10原子%(Znに対して)の少なくとも1種類のドーピング元素、有利には0.1〜10原子%(Znに対して)の少なくとも1種類のドーピング元素を含む;
−材料は、Al、Ce、B、Zr、Ti、Ni、Sn、Fe、Ge、Ga、Mnおよびそれらの組合せからなる群より選択される少なくとも1種類のドーピング元素を含む。
【0049】
−材料は、Alおよび少なくとも1つの他のドーピング元素を含み、前記1つの他のドーピング元素は、有利にはCe、B、Zr、Ti、Ni、Sn、Fe、Ge、Ga、Mnおよびそれらの組合せからなる群より選択される;
−材料は、AlとCe、またはAlとGaを用いてドープされる(本方法に関する本明細書の上記部分を参照のこと)。
【0050】
本発明の材料の相互接続した(開放性の)マクロ多孔性に関し、次の有利な変形もまた、個別に、または、有利には組み合わせて、考慮されうる:
−材料は、10〜500μm、有利には20〜200μmの平均寸法を有する細孔を有する、開放細孔性を示す(細孔の寸法と前記細孔の生成に用いる細孔形成剤の寸法との相関関係は当業者に知られている);
−前記材料は、10〜70体積%、有利には20〜50体積%の開放細孔率を示す(細孔の全体積と、用いる細孔形成剤の量との相関関係は当業者に知られている)
(本方法に関する本明細書の上記部分を参照のこと)。
【0051】
本発明の材料の対象とする熱電特性(その開放マクロ多孔性+その元来の酸素含有量および/または分布に起因して、それを得るための方法から生じる)は、先に示唆されており、以下の例において確認される。
【0052】
よって、本発明は、熱から電流を発生させるための活性材料としての前記材料の使用にも関する。言い換えれば、本発明は、n型熱電材料としての、上記材料、すなわちドープ化または非ドープ化ZnO材料にも関する。
【0053】
さらに具体的には、本発明はまた、n型部分およびp型部分を含む熱電素子であって、n型の部分が本発明に従った(ドープ化または非ドープ化ZnO)材料を含むことを特徴とする熱電素子にも関する。
【0054】
最後に、本発明はまた、上記材料の調製に有用な中間材料、すなわち上記方法の工程c)の終わりに得ることができる中間材料にも関することに着目されたい。前記中間材料、すなわちドーピング元素を含まないZnO材料または少なくとも1種類のドーピング元素を含むZnO材料は、その多孔性、すなわち:
−少なくとも10μm、一般には10〜500μm、有利には20〜200μmの平均寸法(等価直径)を有する細孔を有する、
−少なくとも10体積%、一般には10〜70体積%、有利には20〜50体積%の、
−開放細孔性、
によって特徴づけられる。
【0055】
特許請求の範囲に記載の発明を、これより、非限定的な方式で、以下の実施例および添付の図面によって例証する。
【図面の簡単な説明】
【0056】
【図1A】空気中、1350℃で行われた熱処理後に得られた、実施例1の多孔性の中間材料を示す走査電子顕微鏡画像。
【図1B】N2雰囲気下、1000℃で行われたアニール後に得られた、実施例1の最終的な多孔性材料を示す走査電子顕微鏡画像。
【実施例】
【0057】
比較実施例AおよびB
実施例A(細孔形成剤なし、アニールなし)
次の工程段階が連続的に行われる:
a)原材料の混合。Zn0.96Al0.02Ce0.02Oのモル組成の組成物が調製される。酸化亜鉛、酸化アルミニウムおよび酸化セリウムが、30分間、ボールミル粉砕される;
b)有機結合剤の添加。0.1重量%のロドビオール(Rhodoviol)水溶液(10重量%)が上記バッチ組成物と混合される;
c)10gの混合材料が10トンまで押圧されてペレットへと成形される;
d)ペレットは、20℃/時間で500℃まで加熱;60℃/時間で1350℃まで加熱;1350℃で20時間保持;120℃/時間で30℃まで冷却するサイクルで熱処理(焼成)される;
e)焼成されたペレットは、次に、棒状およびディスク状に切断される。
【0058】
電気伝導性およびゼーベック係数は、棒状の材料から測定され、熱伝導性はディスク状の材料から決定される。
【0059】
性能指数は、次式:ZT=TS2σ/κから計算され、ここで、Sはゼーベック係数であり、σは電気伝導性であり、κは熱伝導性であり、この式によって、材料の熱電特性が規定される。
【0060】
実施例B(細孔形成剤あり、アニールなし)
次の工程段階が連続的に行われる:
a)原材料の混合。Zn0.96Al0.02Ce0.02Oのモル組成の組成物が調製される。酸化亜鉛、酸化アルミニウム、酸化セリウムおよびジャガイモデンプン(全バッチの10重量%)(典型的には10μm〜200μmの平均寸法を有する市販のジャガイモデンプンが用いられる)が、30分間、ボールミル粉砕される;
b)有機結合剤の添加。0.1重量%のロドビオール(Rhodoviol)水溶液(10重量%)が上記バッチ組成物と混合される;
c)10gの混合材料が10トンまで押圧されてペレットへと成形される;
d)ペレットは、20℃/時間で500℃まで加熱;60℃/時間で1350℃まで加熱;1350℃で20時間保持;120℃/時間で30℃まで冷却するサイクルで熱処理(焼成)される;
e)焼成されたペレットは、次に、棒状およびディスク状に切断される。
【0061】
電気伝導性およびゼーベック係数は、棒状の材料から測定され、熱伝導性はディスク状の材料から決定される。
【0062】
性能指数は、次式:ZT=TS2σ/κから計算され、ここで、Sはゼーベック係数であり、σは電気伝導性であり、κは熱伝導性であり、この式によって、材料の熱電特性が規定される。
【0063】
結果は、比較実施例Aと比較して、多孔性が、ZT値におけるプラス効果を有することを示している。
【0064】
実施例1および2
次の工程段階が連続的に行われる:
a)原材料の混合。Zn0.96Al0.02Ce0.02Oのモル組成の組成物が調製される。酸化亜鉛、酸化アルミニウム、酸化セリウムおよびジャガイモデンプン(全バッチの10重量%)(典型的には10μm〜200μmの平均寸法を有する市販のジャガイモデンプンが用いられる)が、30分間、ボールミル粉砕される;
b)有機結合剤の添加。0.1重量%のロドビオール(Rhodoviol)水溶液(10重量%)が上記バッチ組成物と混合される;
c)10gの混合材料が10トンまで押圧されてペレットへと成形される;
d)ペレットは、20℃/時間で500℃まで加熱;60℃/時間で1350℃まで加熱;1350℃で20時間保持;120℃/時間で30℃まで冷却するサイクルで熱処理(焼成)される;
e)焼成されたペレットは、次に、棒状およびディスク状に切断される;
f)棒状およびディスク状の材料は、1000℃で24時間、N2下(実施例1)または800℃で24時間、N2下(実施例2)でアニールされる。
【0065】
電気伝導性およびゼーベック係数は、棒状の材料から測定され、熱伝導性はディスク状の材料から決定される。
【0066】
性能指数は、次式:ZT=TS2σ/κから計算され、ここで、Sはゼーベック係数であり、σは電気伝導性であり、κは熱伝導性であり、この式によって、材料の熱電特性が規定される。
【0067】
このように調製されたバルクZnベース材料のZTの測定値は、比較実施例のものよりも高い。上記熱サイクルの後、800℃でアニールすることにより、ZTの最高値を有する材料が得られる。
【0068】
1000℃でアニールを行って得られた本発明の材料は、40.5%(体積)の全マクロ多孔性を有する。
【0069】
結果は、接続したマクロ多孔性構造に起因する非常に低い熱伝導性を示すとともに、アニール処理をN2下で行ったことによって生じる、良好な電気伝導性を示している。
【0070】
図1Aは、空気中で熱処理を行った後に得られた多孔性の材料を示している。図1Bは、N2雰囲気下で前記多孔性の材料をアニールした後に得られた最終的な多孔性の材料を示している。材料の形態は、アニールすることによって明らかに改質されている。
【0071】
実施例3
行った方法は、次のモル組成:Zn0.96Al0.02Ga0.02Oを有する、実施例1のものである(1000℃でアニール)。原材料は、Al23およびGa23を含む。
【0072】
結果は、接続したマクロ多孔性構造から生じる非常に低い熱伝導性を示すとともに、アニール処理をN2下で行ったことに起因して、良好な電気伝導性を示している。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ドーピング元素を含まないZnO材料または少なくとも1種類のドーピング元素を含むZnOをベースとした材料を製造する方法であって、
a)ZnO、もし存在する場合にはドーピング元素の少なくとも1種類の酸化物、および、少なくとも1種類の固体細孔形成剤の、各粉末を混合して混合物を得、ここで、前記少なくとも1種類の固体細孔形成剤が、
開放細孔性を生じるのに適しており、
ZnO、およびもし存在する場合には少なくとも5重量%の前記ドーピング元素の少なくとも1種類の酸化物に対し、ある比率で用いられ、
少なくとも10μmの平均寸法を有し、
b)前記混合物を成形して成形未焼成体を得、
c)前記成形未焼成体を熱処理して、開放細孔性を示す多孔性の焼結体を得、
d)前記多孔性の焼結体を不活性雰囲気または還元性雰囲気下でアニールする、
各工程を含むことを特徴とする方法。
【請求項2】
前記混合物が、前記ドーピング元素の少なくとも1種類の酸化物を、Znに対する前記少なくとも1種類のドーピング元素の比で、最大10原子%、有利には0.1〜10原子%含むことを特徴とする請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記混合物が、Al、Ce、B、Zr、Ti、Ni、Sn、Fe、Ge、Ga、Mnの酸化物およびそれらの組合せからなる群より選択される、ドーピング元素の少なくとも1種類の酸化物を含むことを特徴とする、請求項1または2項記載の方法。
【請求項4】
前記混合物が、Al23および、ドーピング元素の少なくとも1種類の他の酸化物を含み、
前記ドーピング元素の少なくとも1種類の他の酸化物が、Ce、B、Zr、Ti、Ni、Sn、Fe、Ge、Ga、Mnの酸化物およびそれらの組合せからなる群より有利に選択されることを特徴とする、請求項1〜3いずれか1項記載の方法。
【請求項5】
少なくとも10体積%の開放細孔率を示し、
細孔が少なくとも10μmの平均寸法を有する
ことを特徴とする、ドーピング元素を含まないZnO材料または少なくとも1種類のドーピング元素を含むZnOをベースとした材料。

【図1A】
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【図1B】
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【公表番号】特表2013−520394(P2013−520394A)
【公表日】平成25年6月6日(2013.6.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−555092(P2012−555092)
【出願日】平成23年2月23日(2011.2.23)
【国際出願番号】PCT/US2011/025810
【国際公開番号】WO2011/106347
【国際公開日】平成23年9月1日(2011.9.1)
【出願人】(397068274)コーニング インコーポレイテッド (1,222)
【Fターム(参考)】