説明

ナノインプリント用組成物、パターン形成方法、エッチングレジストおよび永久膜

【課題】微細パターン形成性およびエッチング耐性に優れるナノインプリント用組成物およびこれを用いたエッチングレジスト、または永久膜を提供する。
【解決手段】全繰り返し単位に対して少なくとも20mol%のアクリレート繰り返し単位を有する樹脂(A)を含有することを特徴とするナノインプリント用組成物。この組成物は、エステル基、エーテル基、カルボニル基および水酸基から選ばれる官能基を少なくとも1つ有する溶剤を含有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ナノインプリント用組成物およびそれを用いたパターン形成方法、エッチングレジストおよび永久膜に関する。より詳しくは、半導体集積回路、フラットスクリーン、マイクロ電気機械システム(MEMS)、センサ素子、光ディスク、高密度メモリーディスク等の磁気記録媒体、回折格子やレリーフホログラム等の光学部品、ナノデバイス、光学デバイス、フラットパネルディスプレイ製作のための光学フィルムや偏光素子、液晶ディスプレイの薄膜トランジタ、有機トランジスタ、カラーフィルタ、オーバーコート層、柱材、液晶配向用のリブ材、マイクロレンズアレイ、免疫分析チップ、DNA分離チップ、マイクロリアクター、ナノバイオデバイス、光導波路、光学フィルター、フォトニック液晶等の作製に用いられる微細パターン形成のためのインプリント用組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
ナノインプリント法は、光ディスク製作ではよく知られているエンボス技術を発展させ、凹凸のパターンを形成した金型原器(一般的にモールド、スタンパ、テンプレートと呼ばれる)を、レジストにプレスして力学的に変形させて微細パターンを精密に転写する技術である。モールドを一度作製すれば、ナノ構造等の微細構造が簡単に繰り返して成型できるため経済的であるとともに、有害な廃棄・排出物が少ないナノ加工技術であるため、近年、さまざまな分野への応用が期待されている。
【0003】
ナノインプリント法には、被加工材料として熱可塑性樹脂を用いる熱ナノインプリント法(例えば、非特許文献1参照)と、光硬化性組成物を用いる光ナノインプリント法(例えば、非特許文献2参照)の2通りの技術が提案されている。熱ナノインプリント法の場合、ガラス転移温度以上に加熱した高分子樹脂にモールドをプレスし、冷却後にモールドを離型することで微細構造を基板上の樹脂に転写するものである。この方法は多様な樹脂材料やガラス材料にも応用可能であるため、様々な方面への応用が期待されている。例えば、特許文献1および2には、熱可塑性樹脂を用いて、ナノパターンを安価に形成するナノインプリントの方法が開示されている。
【0004】
一方、透明モールドや透明基材を通して光を照射し、光ナノインプリント用硬化性組成物を光硬化させる光ナノインプリント方では、モールドのプレス時に転写される材料を加熱する必要がなく室温でのインプリントが可能になる。
【0005】
このようなナノインプリント法においては、以下のような応用技術が提案されている。
第一の技術としては、成型した形状(パターン)そのものが機能を持ち、様々なナノテクノロジーの要素部品、あるいは構造部材として応用できる場合である。例としては、各種のマイクロ・ナノ光学要素や高密度の記録媒体、光学フィルム、フラットパネルディスプレイにおける構造部材などが挙げられる。第二の技術は、マイクロ構造とナノ構造との同時一体成型や、簡単な層間位置合わせにより積層構造を構築し、これをμ−TAS(Micro - Total Analysis System)やバイオチップの作製に応用しようとするものである。第3の技術としては、形成されたパターンをマスクとし、エッチング等の方法により基板を加工する用途に利用されるものである。かかる技術では高精度な位置合わせと高集積化とにより、従来のリソグラフィ技術に代わって高密度半導体集積回路の作製や、液晶ディスプレイのトランジスタへの作製、パターンドメディアと呼ばれる次世代ハードディスクの磁性体加工等に応用できる。前記の技術を始め、これらの応用に関するナノインプリント法の実用化への取り組みが近年活発化している。
【0006】
ナノインプリント法のより具体的な応用例として、まず、高密度半導体集積回路作製への応用例を説明する。近年、半導体集積回路は微細化、集積化が進んでおり、その微細加工を実現するためのパターン転写技術としてフォトリソグラフィ装置の高精度化が進められてきた。しかし、さらなる微細化要求に対して、微細パターン解像性、装置コスト、スループットの3つを同時に満たすのが困難となってきていた。これに対し、微細なパターン形成を低コストで行うための技術として光ナノインプリント法が提案された。例えば、下記特許文献1および3にはシリコンウエハをスタンパとして用い、25nm以下の微細構造を転写により形成するナノインプリント技術が開示されている。しかし、さらに近年では、本用途においては数十nmレベルのパターン形成性と基板加工時にマスク(エッチングレジスト)として機能するための高いエッチング耐性とが要求されるようになってきている。
【0007】
次に、ナノインプリント法の次世代ハードディスクドライブ(HDD)作製への応用例を説明する。HDDは、ヘッドの高性能化とメディアの高性能化とを両輪とし、大容量化と小型化との歴史を歩んできた。HDDは、メディア高性能化という観点においては、面記録密度を高めることで大容量化を達成してきている。しかしながら記録密度を高める際には、磁気ヘッド側面からの、いわゆる磁界広がりが問題となる。磁界広がりはヘッドを小さくしてもある値以下には小さくならないため、結果としてサイドライトと呼ばれる現象が発生してしまう。サイドライトが発生すると、記録時に隣接トラックへの書き込み生じ、既に記録したデータを消してしまう。また、磁界広がりによって、再生時には隣接トラックからの余分な信号を読みこんでしまうなどの現象が発生する。このような問題に対し、トラック間を非磁性材料で充填し、物理的、磁気的に分離することで解決するディスクリートトラックメディアやビットパターンドメディアといった技術が提案されている。近年では、これらのディスクリートトラックメディアやビットパターンドメディア作製において磁性体あるいは非磁性体パターンを形成する方法としてナノインプリント法を応用することが提案されてきている。近年では、本用途においても数十nmレベルのパターン形成性が要求されており、基板加工時にマスク(エッチングレジスト)として機能するための高いエッチング耐性が要求されてきている。
【0008】
次に、液晶ディスプレイ(LCD)やプラズマディスプレイ(PDP)などのフラットディスプレイへのナノインプリント法の応用例について説明する。LCD基板やPDP基板の大型化や高精細化の動向に伴い、薄膜トランジスタ(TFT)や電極板の製造時に使用する従来のフォトリソグラフィ法に代わる安価なリソグラフィとしてナノインプリント法が、近年注目されている。そのため、従来のフォトリソグラフィ法で用いられるエッチングフォトレジストに代わる構造部材用のレジストの開発が必要になってきている。また、LCDなどの構造部材として、下記特許文献4および5に記載される透明保護膜材料や、あるいは下記特許文献5に記載されるスペーサなどに対するナノインプリント法の応用も検討され始めている。このような構造部材用のレジストは、前記エッチングフォトレジストとは異なり、最終的にディスプレイ内に残るため、“永久レジスト”、あるいは“永久膜”と称されることがある。また、液晶ディスプレイにおけるセルギャップを規定するスペーサも永久膜の一種であり、従来のフォトリソグラフィにおいては、樹脂、光重合性モノマーおよび開始剤からなる光硬化性組成物が一般的に広く用いられてきた(例えば、特許文献6参照)。スペーサは、一般には、カラーフィルタ基板上に、カラーフィルタ形成後、もしくは、前記カラーフィルタ用保護膜形成後、光硬化性組成物を塗布し、フォオトリソグラフィにより10μm〜20μm程度の大きさのパターンを形成し、さらにポストベイクにより加熱硬化して形成される。
【0009】
さらに、マイクロ電気機械システム(MEMS)、センサ素子、回折格子やレリーフホログラム等の光学部品、ナノデバイス、光学デバイス、フラットパネルディスプレイ製作のための光学フィルムや偏光素子、液晶ディスプレイの薄膜トランジタ、有機トランジスタ、カラーフィルタ、オーバーコート層、柱材、液晶配向用のリブ材、マイクロレンズアレイ、免疫分析チップ、DNA分離チップ、マイクロリアクター、ナノバイオデバイス、光導波路、光学フィルター、フォトニック液晶などの永久膜形成用途においてもナノインプリント法は有用である。
【0010】
これら永久膜用途においては、形成されたパターンが最終的に製品に残るため、耐熱性、耐光性、耐溶剤性、耐擦傷性、外部圧力に対する高い機械的特性、硬度など主に膜の耐久性や強度に関する性能が要求される。
【0011】
このように従来フォトリソグラフィ法で形成されていたパターンのほとんどがナノインプリントで形成可能であり、安価に微細パターンが形成できる技術として注目されている。これらの用途においては良好なパターンが形成されることが前提であるが、パターン形成においてナノインプリント法に関しては、モールドとナノインプリント用組成物との剥離性(モールド剥離性)が重要である。マスクと感光性組成物とが接触しないフォトリソグラフィ法に対し、ナノインプリント法においてはモールドとナノインプリント用組成物とが接触する。モールド剥離時にモールドに組成物の残渣が付着すると以降のインプリント時にパターン欠陥となってしまう問題がある。すなわち、ナノインプリント用組成物には基板や支持体等の基材への良好な密着性とモールドからの容易な剥離性という、相反する性能の両立が要求される。従来のナノインプリント用組成物の基材密着性と、モールド剥離性改良との両立という課題に対し、モールドの表面処理、具体的には、フロロアルキル鎖含有シランカップリング剤をモールド表面に結合させる方法や、モールドのフッ素プラズマ処理、フッ素含有樹脂モールドを用いる方法などにより付着問題を解決するなどの試みがこれまでになされてきた。しかしながら、前述してきたようにナノインプリント用組成物からの基材密着性とモールド剥離性改良との両立はこれらの技術である程度解決されてきたものの基材密着性とモールド剥離性を両立するナノインプリント用組成物を提供するには至っていなかった。近年、ナノインプリント法の実用化および工業化に際してパターンの量産化が求められるため、さらにモールドの数万回のインプリント耐久性をも両立することが求められてくることとなった。その際、モールド自体の表面処理技術では数万回のインプリント処理後によりモールド離型性が低下してしまうというという課題が新たに発生したため、ナノインプリント用組成物自体も高いモールド剥離性を有することが、生産性を高める観点から再度求められることとなった。
このような経緯から、近年では、ナノインプリント用組成物自体の基材密着性とモールド剥離性の両立、およびエッチング耐性の向上が求められることとなっている。特に、エッチング耐性の中でも工業上の有用性の観点から基板加工に用いられるドライエッチング耐性の向上が求められている。
【0012】
一方、前述のとおり得られたパターン自体の形状についても良好であることは、生産性を高める観点から重要である。例えば、パターンが劣化してT−トップ、ラウンドトップなどのパターン形状が形成されてしまうとエッチング工程に支障をきたし、著しく生産性が低下することとなる。また、エッチング工程を経ない場合であっても、ラウンドトップのような形状で形成されたパターンはパターン欠陥を生じやすい。そのため、ナノインプリント法の実用化および工業化においては、矩形の良好な微細パターンを得ることが求められてきた。したがって、さらに近年では、ナノインプリント用組成物自体の基材密着性とモールド剥離性の両立、およびエッチング耐性の向上に加え、特別な工程を経ることなく得られるパターンの形状が良好となるようなナノインプリント用組成物が求められている。とくに、エッチング工程を経る場合にはエッチング耐性に加えて良好な矩形形状の微細パターン形成性が求められている。
【0013】
特許文献1にはポリメチルメタクリレートを用いた熱ナノインプリント組成物が開示されている。この組成物は比較的均一なパターンが得られ、ある程度のモールド剥離性を有する一方で、基材密着性は十分でなく、基材密着性とモールド剥離性という観点からは十分ではなかった。さらに、ドライエッチング耐性が大量生産に求められるレベルからは不十分であり、エッチングの際にパターンの劣化が大きく、パターン形状がラウンドトップになってしまうといった問題があった。
【0014】
特許文献7には、モールドとの剥離性をよくするために、フッ素含有硬化性材料を用いたパターン形成方法が開示されている。しかしながらフッ素系材料をナノインプリント用組成物として用いた際には基材密着性が低下し、さらにエッチング耐性が低いためエッチングの際にパターンの劣化が大きいといった問題があった。
【0015】
また、特許文献8には、ドライエッチング耐性を付与する為に、環状構造を含む(メタ)アクリレートモノマーを用いるナノインプイリント用の光硬化性樹脂組成物の利用が開示されているが、この組成物は高いドライエッチング耐性に加え、基材密着性とモールド剥離性を両立するという観点からは十分ではなかった。
【0016】
【特許文献1】米国特許第5,772,905号公報
【特許文献2】米国特許第5,956,216号公報
【特許文献3】米国特許第5,259,926号公報
【特許文献4】特開2005−197699号公報
【特許文献5】特開2005−301289号公報
【特許文献6】特開2004−240241号公報
【特許文献7】特開2006−114882号公報
【特許文献8】特開2007−186570号公報
【非特許文献1】S.Chou et al.:Appl.Phys.Lett.Vol.67,3114(1995)
【非特許文献2】M.Colbun et al,:Proc.SPIE,Vol. 3676,379 (1999)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
上述のようにナノインプリント法を工業的に利用する上では、ナノインプリント用組成物のパターン形成性、特に得られるパターンの形状が極めて重要である。さらに、ナノインプリント用組成物には、用途に応じた膜特性が要求され、パターン耐久性、その中でもエッチング耐性、さらにその中でもドライエッチング耐性が要求される。しかし、従来の技術では、ナノインプリント用組成物のナノメートルパターンに対応可能な微細なパターン形成性と、基板加工用途に求められる高いエッチング耐性とを同時に達成することは困難であった。
【0018】
本発明の第1の目的は、微細パターン形成性およびエッチング耐性に優れるナノインプリント用組成物を提供することにある。本発明の第2の目的は、本発明のナノインプリント用組成物を用いたパターン形成方法を提供し、そのパターン形成方法によって形成されるエッチングレジストおよび永久膜を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0019】
発明者は、ただ単にエッチング耐性が優れているだけでは良好な矩形の微細パターンを得られるものではないことを見出し、鋭意検討を行った結果、本発明に至った。
本発明は、以下の通りである。
[1] 全繰り返し単位に対して少なくとも20mol%のアクリレート繰り返し単位を有する樹脂(A)を含有することを特徴とするナノインプリント用組成物。
[2] 前記樹脂(A)の全繰り返し単位に対するメタクリレート繰り返し単位含有量が、50mol%以下であることを特徴とする[1]に記載のナノインプリント用組成物。
[3] 前記樹脂(A)が芳香環を有する繰り返し単位を含有することを特徴とする[1]または[2]に記載のナノインプリント用組成物。
[4] さらに溶剤を含有することを特徴とする[1]〜[3]のいずれか一項に記載のナノインプリント用組成物。
[5] 前記溶剤として、エステル基、エーテル基、カルボニル基、および水酸基からなる群より選ばれる官能基を少なくとも1つ有する溶剤を含有することを特徴とする[4]に記載のナノインプリント用組成物。
[6] 前記溶剤として、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、2−ヘプタノン、シクロヘキサノン、乳酸エチル、エトキシプロピオン酸エチル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、およびガンマブチロラクトンからなる群より選ばれる少なくとも1種を含有することを特徴とする[4]または[5]に記載のナノインプリント用組成物。
[7] さらに界面活性剤を含むことを特徴とする[1]〜[6]のいずれか一項に記載のナノインプリント用組成物。
[8] 前記界面活性剤として、フッ素および/またはシリコン系界面活性剤を含有することを特徴とする[7]に記載のナノインプリント用組成物。
[9] [1]〜[8]のいずれか一項に記載のナノインプリント用組成物を用いて形成されたことを特徴とするエッチングレジストまたは永久膜。
[10] [1]〜[9]のいずれか一項に記載のナノインプリント用組成物を基材上に塗布してパターン形成層を形成する工程と、
前記パターン形成層を加熱する工程と、
前記パターン形成層にモールドを押圧する工程と、
前記モールドを押圧した前記パターン形成層を冷却する工程と、
前記モールドを剥離する工程と、
を含むことを特徴とするパターン形成方法。
[11] [10]に記載のパターン形成方法により形成されたことを特徴とするエッチングレジストまたは永久膜。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、微細パターン形成性およびエッチング耐性に優れたパターンを形成可能なナノインプリント用組成物を提供することができる。また、本発明のナノインプリント用組成物を用いた本発明のパターン形成方法によれば、微細パターン形成性およびエッチング耐性に優れたパターンを提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下において、本発明の内容について詳細に説明する。尚、本願明細書において「〜」とはその前後に記載される数値を下限値および上限値として含む意味で使用される。
【0022】
なお、本明細書中において、“(メタ)アクリレート”はアクリレートおよびメタクリレートを表し、“(メタ)アクリル”はアクリルおよびメタクリルを表し、“(メタ)アクリロイル”はアクリロイルおよびメタクリロイルを表す。また、本明細書中において、“単量体”と“モノマー”とは同義である。本発明における単量体は、オリゴマーおよびポリマーと区別され、重量平均分子量が1,000以下の化合物をいう。本明細書中において、“官能基”は重合反応に関与する基をいう。
なお、本発明でいう“ナノインプリント”とは、およそ数nmから数μmのサイズのパターン転写をいう。さらに、本明細書中において、“アクリレート“と“メタクリレート“は、それぞれ厳密に異なる概念を表す。
【0023】
なお、本明細書における基(原子団)の表記において、置換および無置換を記していない表記は、置換基を有さないものと共に置換基を有するものをも包含するものである。例えば、「アルキル基」とは、置換基を有さないアルキル基(無置換アルキル基)のみならず、置換基を有するアルキル基(置換アルキル基)をも包含するものである。
【0024】
[樹脂(A)]
本発明のナノインプリント用組成物(以下、単に「本発明の組成物」と称する場合もある)は、全繰り返し単位に対して少なくとも20mol%のアクリレート繰り返し単位を有する樹脂(A)を含有する。このようにアクリレート繰り返し単位を全繰り返し単位に対して少なくとも20mol%有することで、全繰り返し単位がメタクリレートで構成された樹脂を用い場合に比べ、パターン形成性、エッチング耐性が向上する。
【0025】
前記アクリレート繰り返し単位としては、アクリレート系の繰り返し単位であれば特に制限はなく、側鎖に置換基を有していてもよい。前記置換基としては、特に制限はないが、芳香環、脂環炭化水素が好ましく、芳香環を有する構造がより好ましい。
【0026】
前記樹脂(A)はアクリレート繰り返し単位を必須とするが、他の繰り返し単位を含有していてもよい。他の繰り返し単位としては特に制限はないが、スチレン系繰り返し単位、メタクリレート繰り返し単位が好ましい。
【0027】
本発明の組成物に含まれる樹脂(A)において、好ましいアクリレート繰り返し単位の含有量は全繰り返し単位に対し、20〜100mol%であり、より好ましくは50〜100mol%であり、さらに好ましくは60〜100mol%であり、最も好ましくは80〜100mol%である。アクリレート繰り返し単位の含有量が増えるほど、ドライエッチング耐性が良好となる傾向にあり、好ましい。
【0028】
前記樹脂(A)が2種以上の樹脂を含有する場合は、アクリレート繰り返し単位含有量と混合質量比の積を各樹脂について算出し、これの和によって定義する。例えば2種の樹脂YとZを用いた場合のアクリレート含有量は下記式(1)で表される。
式(1)
アクリレート繰り返し単位含有量=
樹脂Yのアクリレート繰り返し単位含有量(mol%)×全樹脂中の樹脂Yの質量比
+樹脂Zのアクリレート繰り返し単位含有量(mol%)×全樹脂中の樹脂Zの質量比
【0029】
前記樹脂(A)は全繰り返し単位に対するメタクリレート繰り返し単位含有量が80mol%未満であり、好ましくは50mol%未満であり、さらに好ましくは40mol%未満、最も好ましくは20mol%未満である。前記樹脂(A)が2種以上の樹脂を含有する場合のメタクリレート繰り返し単位含有量は、アクリレート繰り返し単位含有量と同様の手法により算出する。
【0030】
前記樹脂(A)は側鎖に芳香環を有する繰り返し単位を含有することが好ましい。芳香環はアクリレート繰り返し単位に含まれていてもよいし、他の繰り返し単位に含まれていてもよいが、アクリレート繰り返し単位に芳香環が含まれていることが好ましい。芳香環を有する繰り返し単位の含有量は全繰り返し単位に対し、40mol%以上が好ましく、より好ましくは60mol%以上、さらに好ましくは80mol%以上である。前記樹脂(A)が2種以上の樹脂を含有する場合の芳香環を有する繰り返し単位含有量は、アクリレート繰り返し単位含有量と同様の手法により算出する。芳香環を有する繰り返し単位としては芳香環を有する(メタ)アクリレート、ビニル芳香族誘導体(例えばスチレン誘導体、ビニルナフタレン誘導体などが挙げられる)。芳香環としては、ベンゼン構造、ナフタレン構造、アントラセン構造、フェナントレン構造、ピレン構造などの炭化水素系芳香環、あるいはインドール、カルバゾールなどのヘテロ芳香環が挙げられるが、炭化水素系芳香環が好ましく、より好ましくはベンゼン構造、ナフタレン構造である。
【0031】
下記に側鎖に芳香環を有する繰り返し単位の具体例を示す。なお、Raは水素原子またはメチル基を表す。
【0032】
【化1】

【0033】
本発明の樹脂の分子量はポリスチレン換算における重量平均分子量で3000〜100000が好ましく、より好ましくは5000〜70000、さらに好ましくは5000〜50000である。分子量を適切な範囲とすることでパターン形成性、塗布溶剤溶解性が良好となり、さらに経時における異物の発生が抑制できる。
【0034】
前記樹脂(A)は側鎖に親水性基を有する繰り返し単位を含有していることが好ましい。親水性基を有する繰り返し単位を含有することで基板密着性が向上し、微細パターン形成性も向上する。親水性基はアクリレート繰り返し単位に含まれていてもよいし、他の繰り返し単位に含まれていてもよい。親水性基としては、水酸基、アミド基、スルホンアミド基、スルホンイミド基、カルボキシル基、ラクトン基、ウレア基、ウレタン基、環状エーテル基、−CO−CH2−CO−を含む基などが挙げられる。親水性基を有する繰り返し単位は同時に芳香環を含有していることがさらに好ましい。親水性基を有する繰り返し単位の含有量としては、全繰り返し単位に対し、1〜50mol%が好ましく、より好ましくは5〜40mol%、さらに好ましくは10〜30mol%である。前記樹脂(A)が2種以上の樹脂を含有する場合の親水性基を有する繰り返し単位含有量は、アクリレート繰り返し単位含有量と同様の手法により算出する。
【0035】
側鎖に親水性基を有する繰り返し単位の具体例を以下に示す。なお、Raは水素原子またはメチル基を表す。
【0036】
【化2】

【0037】
本発明の樹脂はさらに他の繰り返し単位を含んでいてもよい。他の繰り返し単位としては、好ましくはシクロヘキシル(メタ)アクリレート、アダマンチル(メタ)アクリレート、トリシクロデカニル(メタ)アクリレート、テトラシクロドデカニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、イソボロニル(メタ)アクリレートなどの環状炭化水素基を有する(メタ)アクリレート類、あるいは離型性を向上する目的でフッ素原子を有するメタアクリレート類繰り返し単位も好ましく用いることができる。また、樹脂(A)が共重合体である場合は、ブロック共重合体であってもよく、ランダム共重合であってもよい。
【0038】
前記樹脂(A)の最も好ましい構成は、アクリレート繰り返し単位を全繰り返し単位に対し、少なくとも20mol%有し、且つ、メタクリレート繰り返し単位含有量が50mol%未満であって、側鎖に芳香環および/または親水性基を含有する樹脂である。
【0039】
本発明の樹脂(A)のガラス転移点(Tg)は40℃〜200℃が好ましく、より好ましくは60℃〜170℃、さらに好ましくは80℃〜150℃である。
【0040】
[樹脂(A)の製造方法]
本発明の樹脂(A)は、常法に従って(例えばラジカル重合)合成することができる。例えば、一般的合成方法としては、モノマー種および開始剤を溶剤に溶解させ、加熱することにより重合を行う一括重合法、加熱溶剤にモノマー種と開始剤の溶液を1〜10時間かけて滴下して加える滴下重合法などが挙げられ、滴下重合法が好ましい。反応溶媒としては、例えばテトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン、ジイソプロピルエーテルなどのエーテル類やメチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンのようなケトン類、酢酸エチルのようなエステル溶媒、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミドなどのアミド溶剤、さらには後述のプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテル、シクロヘキサノンのような本発明の組成物を溶解する溶媒が挙げられる。
重合反応は窒素やアルゴンなど不活性ガス雰囲気下で行われることが好ましい。重合開始剤としては市販のラジカル開始剤(アゾ系開始剤、パーオキサイドなど)を用いて重合を開始させる。ラジカル開始剤としてはアゾ系開始剤が好ましく、エステル基、シアノ基、カルボキシル基を有するアゾ系開始剤が好ましい。好ましい開始剤としては、アゾビスイソブチロニトリル、アゾビスジメチルバレロニトリル、ジメチル2,2‘−アゾビス(2−メチルプロピオネート)などが挙げられる。所望により開始剤を追加、あるいは分割で添加し、反応終了後、溶液のまま用いるか、所望の溶剤に置換して用いるか、または溶剤に投入して粉体あるいは固形回収等の方法で所望のポリマーを回収する。反応の濃度は5〜50質量%であり、好ましくは10〜30質量%である。反応温度は、通常10℃〜150℃であり、好ましくは30℃〜120℃、さらに好ましくは50〜100℃である。
【0041】
[樹脂(A)を含有するナノインプリント用組成物]
以下において、本発明の樹脂(A)を含有するナノインプリント用組成物(以下、本発明の組成物と言う)について説明する。
【0042】
本発明のナノインプリント用組成物は熱ナノインプリント用組成物であっても光ナノインプリント用組成物であっても構わないが、熱ナノインプリント用組成物であることが好ましい。
【0043】
(樹脂成分)
本発明の組成物は、前記樹脂(A)を含有する。
本発明の組成物は、樹脂(A)以外の他の樹脂成分を含有していてもよい。本発明の組成物に添加されてもよい他の樹脂成分としては、ポリスチレン系樹脂、ポリ(メタ)アクリレート樹脂、ポリシクロオレフィン系樹脂などが挙げられ、パターン形成性の観点からポリスチレン系樹脂、ポリ(メタ)アクリレート樹脂が好ましい。
【0044】
本発明の組成物に樹脂(A)成分の含有量は、熱ナノインプリント組成物の場合は、溶剤を除く成分中80質量%以上が好ましく、より好ましくは90質量%以上、より好ましくは95質量%以上である。また、光ナノインプリント組成物の場合はパターン形成性の観点から、溶剤を除く成分中1〜20質量%が好ましく、より好ましくは1〜15質量%、さらに好ましくは1〜10質量%である。
【0045】
(溶剤)
本発明のナノインプリント用組成物は、種々の必要に応じて、溶剤を用いることが好ましい。好ましい溶剤としては常圧における沸点が80〜200℃の溶剤である。溶剤の種類としては組成物を溶解可能な溶剤であればいずれも用いることができるが、好ましくはエステル構造、カルボニル構造(ケトン構造)、水酸基、エーテル構造のいずれか1つ以上を有する溶剤である。具体的に、好ましい溶剤としてはプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、シクロヘキサノン、2−ヘプタノン、ガンマブチロラクトン、プロピレングリコールモノメチルエーテル、乳酸エチルから選ばれる単独あるいは混合溶剤であり、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートを含有する溶剤が塗布均一性の観点で最も好ましい。
【0046】
(その他成分)
本発明のナノインプリント組成物は、本発明の効果を損なわない範囲で、界面活性剤、酸化防止剤、等その他の成分を含んでいてもよい。本発明のナノインプリント用組成物が光ナノインプリント用組成物であるばあいには、光重合開始剤を含有することが好ましく、光重合開始剤としては公知の光重合開始剤を用いることができる。本発明のナノインプリント組成物としては、フッ素系界面活性剤、シリコーン系界面活性剤、フッ素・シリコーン系界面活性剤、並びに、酸化防止剤から選ばれる少なくとも1種を含有することが好ましい。
【0047】
(界面活性剤)
本発明のナノインプリント組成物には、界面活性剤を含有することが好ましい。本発明に用いられる界面活性剤の含有量は、全組成物中、例えば、0.001〜5質量%であり、好ましくは0.002〜4質量%であり、さらに好ましくは、0.005〜3質量%である。2種類以上の界面活性剤を用いる場合は、その合計量が前記範囲となる。界面活性剤が組成物中0.001〜5質量%の範囲にあると、塗布の均一性の効果が良好であり、界面活性剤の過多によるモールド転写特性の悪化を招きにくい。
【0048】
前記界面活性剤としては、フッ素系界面活性剤、シリコーン系界面活性剤およびフッ素・シリコーン系界面活性剤の少なくとも1種を含むことが好ましく、フッ素系界面活性剤とシリコーン系界面活性剤との両方または、フッ素・シリコーン系界面活性剤を含むことがより好ましく、フッ素・シリコーン系界面活性剤を含むことが最も好ましい。尚、前記フッ素系界面活性剤およびシリコーン系界面活性剤としては、非イオン性の界面活性剤が好ましい。
ここで、前記“フッ素・シリコーン系界面活性剤”とは、フッ素系界面活性剤およびシリコーン系界面活性剤の両方の要件を併せ持つものをいう。
このような界面活性剤を用いることによって、半導体素子製造用のシリコンウエハや、液晶素子製造用のガラス角基板、クロム膜、モリブデン膜、モリブデン合金膜、タンタル膜、タンタル合金膜、窒化珪素膜、アモルファスシリコーン膜、酸化錫をドープした酸化インジウム(ITO)膜や酸化錫膜などの、各種の膜が形成される基板上に本発明のナノインプリント組成物を塗布したときに起こるストリエーションや、鱗状の模様(レジスト膜の乾燥むら)などの塗布不良の問題を解決するが可能となる。また、モールド凹部のキャビティ内への本発明の組成物の流動性の向上、モールドとレジストとの間の剥離性の向上、レジストと基板間との密着性の向上、組成物の粘度を下げる等が可能になる。特に、本発明のナノインプリント組成物は、前記界面活性剤を添加することにより、塗布均一性を大幅に改良でき、スピンコーターやスリットスキャンコーターを用いた塗布において、基板サイズに依らず良好な塗布適性が得られる。
【0049】
本発明で用いることのできる、非イオン性の前記フッ素系界面活性剤の例としては、商品名 フロラード FC−430、FC−431(住友スリーエム(株)製)、商品名サーフロン S−382(旭硝子(株)製)、商品名EFTOP EF−122A、122B、122C、EF−121、EF−126、EF−127、MF−100((株)ジェムコ製)、商品名 PF−636、PF−6320、PF−656、PF−6520(いずれもOMNOVA Solutions, Inc.)、商品名フタージェントFT250、FT251、DFX18 (いずれも(株)ネオス製)、商品名ユニダインDS−401、DS−403、DS−451 (いずれもダイキン工業(株)製)、商品名メガフアック171、172、173、178K、178A、F780F(いずれも大日本インキ化学工業(株)製)が挙げられる。
【0050】
また、非イオン性の前記シリコーン系界面活性剤の例としては、商品名SI−10シリーズ(竹本油脂(株)製)、商品名メガファックペインタッド31(大日本インキ化学工業(株)製)、商品名KP−341(信越化学工業(株)製)、が挙げられる。
【0051】
また、前記フッ素・シリコーン系界面活性剤の例としては、商品名 X−70−090、X−70−091、X−70−092、X−70−093、(いずれも、信越化学工業(株)製)、商品名メガフアックR−08、XRB−4(いずれも、大日本インキ化学工業(株)製)が挙げられる。
【0052】
[パターン形成方法]
次に、本発明のナノインプリント用組成物を用いたパターン(特に、微細凹凸パターン)の形成方法について説明する。本発明のパターン形成方法では、熱ナノインプリント法においては、本発明のナノインプリント用組成物を基板または支持体(基材)上に塗布してパターン形成層を形成する工程と、前記パターン形成層を加熱する工程と、前記パターン形成層にモールドを押圧する工程と、前記モールドを押圧した前記パターン形成層を冷却する工程と、前記モールドを剥離する工程を経て、微細な凹凸パターンを形成することができる。
また、光ナノインプリント法においては、本発明のナノインプリント用組成物に光重合剤を添加する工程と、光重合剤を添加前記組成物を基材上に塗布してパターン形成層を形成する工程と、前記パターン形成層表面にモールドを圧接する工程と、前記パターン形成層に光を照射する工程と、モールドを剥離する工程を経て、微細な凹凸パターンを形成することができる。
【0053】
以下において、本発明のナノインプリント用組成物を用いたパターン形成方法(パターン転写方法)について具体的に述べる。
本発明のパターン形成方法においては、まず、本発明の組成物を基材上に塗布してパターン形成層を形成する。
本発明のナノインプリント用組成物を基材上に塗布する際の塗布方法としては、一般によく知られた塗布方法、例えば、ディップコート法、エアーナイフコート法、カーテンコート法、ワイヤーバーコート法、グラビアコート法、エクストルージョンコート法、スピンコート方法、スリットスキャン法、インクジェット法などを挙げることができる。また、本発明の組成物からなるパターン形成層の膜厚は、使用する用途によって異なるが、0.05μm〜30μm程度である。また、本発明の組成物を、多重塗布により塗布してもよい。さらに、基材と本発明の組成物からなるパターン形成層との間には、例えば平坦化層等の他の有機層などを形成してもよい。これにより、パターン形成層と基板とが直接接しないことから、基板に対するごみの付着や基板の損傷等を防止することができる。尚、本発明の組成物によって形成されるパターンは、基材上に有機層を設けた場合であっても、有機層との密着性に優れる。
【0054】
本発明のナノインプリント用組成物を塗布するための基材(基板または支持体)は、種々の用途によって選択可能であり、例えば、石英、ガラス、光学フィルム、セラミック材料、蒸着膜、磁性膜、反射膜、Ni,Cu,Cr,Feなどの金属基板、紙、SOG(Spin On Glass)、ポリエステルフイルム、ポリカーボネートフィルム、ポリイミドフィルム等のポリマー基板、TFTアレイ基板、PDPの電極板、ガラスや透明プラスチック基板、ITOや金属などの導電性基材、絶縁性基材、シリコーン、窒化シリコーン、ポリシリコーン、酸化シリコーン、アモルファスシリコーンなどの半導体作製基板など特に制約されない。また、基材の形状も特に限定されるものではなく、板状でもよいし、ロール状でもよい。
【0055】
次いで、本発明のパターン形成方法においては、パターン形成層にパターンを転写するために、パターン形成層表面にモールドを押圧する。また、熱ナノインプリント法においてはパターン形成層を加熱する工程を行う。この際、前記パターン形成層を加熱する工程と前記モールドを押圧する工程はどちらの工程が先であってもよく、同時に行ってもよいが、生産性の観点から同時に行うことが好ましい。加熱モールドを押圧することによりパターン形成層を加熱してもよい。加熱温度は用いる樹脂のTg以上の温度であり、好ましくはTgよりも20〜100℃高い温度である。
【0056】
(モールド)
本発明のパターン形成方法で用いることのできるモールドについて説明する。
本発明で用いることのできるモールドは、転写されるべきパターンを有するモールドが使われる。前記モールド上のパターンは、例えば、フォトリソグラフィや電子線描画法等によって、所望する加工精度に応じてパターンが形成できるが、本発明では、モールド上のパターン形成方法は特に制限されない。
【0057】
本発明のパターン形成方法は、本発明の多環芳香族構造を有する繰り返し単位(a)を有するナノインプリント用組成物を用いるため、モールド離型性に優れるパターン形成方法である。特にモールド表面の離型処理によらずモールド離型性が優れるため、モールド耐久性が高く、高い生産性を長期に渡って維持できる点という特徴を有する。
【0058】
(モールド材)
本発明で用いることのできるモールド材について説明する。本発明の組成物を用いた光ナノインプリント法においては、モールド材および/または基材の少なくとも一方に、光透過性の材料を選択する。本発明に適用される光インプリントリソグラフィでは、基材の上に本発明のナノインプリント用硬化性組成物を塗布してパターン形成層を形成し、この表面に光透過性のモールドを押接し、モールドの裏面から光を照射し、前記パターン形成層を硬化させる。また、光透過性基材上に光ナノインプリント用硬化性組成物を塗布し、モールドを押し当て、基材の裏面から光を照射し、光ナノインプリント用硬化性組成物を硬化させることもできる。
【0059】
光ナノインプリント法において用いられる光透過性モールド材は、特に限定されないが、所定の強度、耐久性を有するものであればよい。具体的には、ガラス、石英、PMMA、ポリカーボネート樹脂などの光透明性樹脂、透明金属蒸着膜、ポリジメチルシロキサンなどの柔軟膜、光硬化膜、金属膜等が例示される。
本発明において使われる非光透過型モールド材としては、特に限定されないが、所定の強度を有するものであればよい。具体的には、セラミック材料、蒸着膜、磁性膜、反射膜、Ni、Cu、Cr、Feなどの金属基板、SiC、シリコーン、窒化シリコーン、ポリシリコーン、酸化シリコーン、アモルファスシリコーンなどの基板などが例示され、特に制約されない。また、モールドの形状も特に制約されるものではなく、板状モールド、ロール状モールドのどちらでもよい。ロール状モールドは、特に転写の連続生産性が必要な場合に適用される。
【0060】
本発明のパターン形成方法で用いられるモールドは、本発明のナノインプリント用組成物とモールド表面との剥離性をさらに向上させ、パターン生産性をより高めるために離型処理を行ったものを用いてもよい。このようなモールドの離型処理としては、例えば、シリコーン系やフッ素系などのシランカップリング剤による処理を挙げることができる。また、例えば、ダイキン工業(株)製のオプツールDSXや、住友スリーエム(株)製のNovec EGC−1720等の市販の離型剤も前記モールドの離型処理に好適に用いることができる。このように、離型処理を施したモールドを用い、さらに本発明のモールド離型性の高いナノインプリント用組成物を用いることで、より高いモールドのインプリント耐久性を得ることが可能となる。
【0061】
本発明の組成物を用いてナノインプリントリソグラフィを行う場合、本発明のパターン形成方法では、通常、モールド圧力を0.5〜30MPaで行うのが好ましい。モールド圧力を30MPa以下にすることによりモールドや基板が変形しにくくパターン精度が向上する傾向にあり、さらに、加圧が低いため装置を縮小できる傾向にあり、好ましい。モールド圧力が0.5〜30MPaである場合は、モールド凸部のナノインプリント用組成物の残膜が少なくなり、モールド転写の均一性が確保できるため好ましい。また、光インプリント法の場合モールド圧力を0.1〜1MPaで行うのが好ましい。この場合もモールド圧力の範囲であれば熱ナノインプリント時と同様の傾向が得られ、好ましい。
本発明のパターン形成方法中、前記パターン形成層に光を照射する工程における光照射の照射量は、硬化に必要な照射量よりも十分大きければよい。硬化に必要な照射量は、光ナノインプリント用硬化性組成物の不飽和結合の消費量や硬化膜のタッキネスを調べて適宜決定される。
また、本発明に適用される光インプリントリソグラフィにおいては、光照射の際の基板温度は、通常、室温で行われるが、反応性を高めるために加熱をしながら光照射してもよい。光照射の前段階として、真空状態にしておくと、気泡混入防止、酸素混入による反応性低下の抑制、モールドと光ナノインプリント用硬化性組成物との密着性向上に効果があるため、真空状態で光照射してもよい。また、本発明のパターン形成方法中、光照射時における好ましい真空度は、10-1Paから常圧の範囲である。
本発明のナノインプリント用硬化性組成物を硬化させるために用いられる光は特に限定されず、例えば、高エネルギー電離放射線、近紫外、遠紫外、可視、赤外等の領域の波長の光または放射線が挙げられる。高エネルギー電離放射線源としては、例えば、コッククロフト型加速器、ハンデグラーフ型加速器、リニヤーアクセレーター、ベータトロン、サイクロトロン等の加速器によって加速された電子線が工業的に最も便利且つ経済的に使用されるが、その他に放射性同位元素や原子炉等から放射されるγ線、X線、α線、中性子線、陽子線等の放射線も使用できる。紫外線源としては、例えば、紫外線螢光灯、低圧水銀灯、高圧水銀灯、超高圧水銀灯、キセノン灯、炭素アーク灯、太陽灯等が挙げられる。放射線には、例えばマイクロ波、EUVが含まれる。また、LED、半導体レーザー光、あるいは248nmのKrFエキシマレーザー光や193nmArFエキシマレーザーなどの半導体の微細加工で用いられているレーザー光も本発明に好適に用いることができる。これらの光は、モノクロ光を用いてもよいし、複数の波長の異なる光(ミックス光)でもよい。
露光に際しては、露光照度を1mW/cm2〜50mW/cm2の範囲にすることが望ましい。1mW/cm2以上とすることにより、露光時間を短縮することができるため生産性が向上し、50mW/cm2以下とすることにより、副反応が生じることによる永久膜の特性の劣化を抑止できる傾向にあり好ましい。露光量は5mJ/cm2〜1000mJ/cm2の範囲にすることが望ましい。5mJ/cm2未満では、露光マージンが狭くなり、光硬化が不十分となりモールドへの未反応物の付着などの問題が発生しやすくなる。一方、1000mJ/cm2を超えると組成物の分解による永久膜の劣化の恐れが生じる。
さらに、露光に際しては、酸素によるラジカル重合の阻害を防ぐため、チッソやアルゴンなどの不活性ガスを流して、酸素濃度を100mg/L未満に制御してもよい。
本発明のパターン形成方法においては、光照射によりパターン形成層を硬化させた後、必要におうじて硬化させたパターンに熱を加えてさらに硬化させる工程を含んでいてもよい。光照射後に本発明の組成物を加熱硬化させる熱としては、150〜280℃が好ましく、200〜250℃がより好ましい。また、熱を付与する時間としては、5〜60分間が好ましく、15〜45分間がさらに好ましい。
【0062】
また、本発明のパターン形成方法によって形成されたパターンは、エッチングレジストまたは永久膜として用いることができ、特にエッチングレジストとして有用である。本発明のナノインプリント用組成物をエッチングレジストとして利用する場合には、まず、基材として例えばSiO2等の薄膜が形成されたシリコンウエハ等を用い、基材上に本発明のパターン形成方法によってナノオーダーの微細なパターンを形成する。その後、ウェットエッチングの場合にはフッ化水素等、ドライエッチングの場合にはCF4等のエッチングガスを用いてエッチングすることにより、基材上に所望のパターンを形成することができる。本発明のナノインプリント用組成物は、特にドライエッチングに対するエッチング耐性が良好である。
【0063】
上述のように本発明のパターン形成方法によって形成されたパターンは、液晶ディスプレイ(LCD)などに用いられる永久膜(構造部材用のレジスト)やエッチングレジストとして使用することができる。また、前記永久膜は、製造後にガロン瓶やコート瓶などの容器にボトリングし、輸送、保管されるが、この場合に、劣化を防ぐ目的で、容器内を不活性なチッソ、またはアルゴンなどで置換しておいてもよい。また、輸送、保管に際しては、常温でもよいが、より永久膜の変質を防ぐため、−20℃から0℃の範囲に温度制御してもよい。勿論、反応が進行しないレベルで遮光することが好ましい。
【実施例】
【0064】
以下に実施例を挙げて本発明をさらに具体的に説明する。以下の実施例に示す材料、使用量、割合、処理内容、処理手順等は、本発明の趣旨を逸脱しない限り、適宜、変更することができる。従って、本発明の範囲は以下に示す具体例に限定されるものではない。
【0065】
[合成例1]樹脂A−1:ポリ(1ーナフチルメチルメタクリレート)の合成
メチルエチルケトン3.6gを窒素気流下80℃に加熱した。これに1ーナフチルメタクリレート8.9g、アゾビスイソブチロニトリル0.074gをメチルエチルケトン32gに溶解させた溶液を2時間かけて滴下した。さらに80℃で3時間反応させた後、これをメタノール500mlに注ぎ、析出した粉体をろ取、メタノールで洗浄した。得られた粉体を40℃で24時間乾燥し、ポリ(2−ナフチルメタクリレート)を得た。標準ポリスチレン換算における重量平均分子量は40000であり、分散度は1.9であった。樹脂A−1の繰り返し単位の構造を下記に示す。
【0066】
下記の繰り返し単位構造からなる他の樹脂A−2〜A−5およびB−1〜B−5についても、合成例1と同様の手法を用いることで合成した。なお、樹脂A−2〜5およびB−2〜B−4は下記の2種の単位構造からなる共重合体であり、共重合比を下記に示した。
【0067】
【化3】

【0068】
[実施例1]
(熱ナノインプリント用組成物の調製)
プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート38gに前記樹脂A−1 2gを溶解させ、さらにフッ素系界面活性剤(メガファックF780F(商品名、大日本インキ化学工業(株))0.01gを混合して実施例1の熱ナノインプリント用組成物を調製した。
【0069】
[実施例2]
樹脂A−1の代わりに前記樹脂A−2を用いた以外は実施例1と同様にして、実施例2の熱ナノインプリント用組成物を調整した。
【0070】
[実施例3]
樹脂A−1の代わりに前記樹脂A−3を用いた以外は実施例1と同様にして、実施例3の熱ナノインプリント用組成物を調整した。
【0071】
[実施例4]
樹脂A−1の代わりに前記樹脂A−4を用いた以外は実施例1と同様にして、実施例4の熱ナノインプリント用組成物を調整した。
【0072】
[実施例5]
樹脂A−1の代わりに前記樹脂A−5を用いた以外は実施例1と同様にして、実施例5の熱ナノインプリント用組成物を調整した。
【0073】
[比較例1]
樹脂A−1の代わりに前記樹脂B−1を用いた以外は実施例1と同様にして、比較例1の熱ナノインプリント用組成物を調整した。
【0074】
[比較例2]
樹脂A−1の代わりに前記樹脂B−2を用いた以外は実施例1と同様にして、比較例2の熱ナノインプリント用組成物を調整した。
【0075】
[比較例3]
樹脂A−1の代わりに前記樹脂B−3を用いた以外は実施例1と同様にして、比較例3の熱ナノインプリント用組成物を調整した。
【0076】
[比較例4]
樹脂A−1の代わりに前記樹脂B−4を用いた以外は実施例1と同様にして、比較例4の熱ナノインプリント用組成物を調整した。
【0077】
[比較例5]
樹脂A−1の代わりに前記樹脂B−5を用いた以外は実施例1と同様にして、比較例5の熱ナノインプリント用組成物を調整した。
【0078】
<ドライエッチング耐性>
実施例1〜5および比較例1〜4で得られたナノインプリント用組成物を用いてエッチング耐性を下記の方法により、評価した。
Siウェハ上に前記実施例1〜5および比較例1〜4のナノインプリント用組成物をそれぞれスピン塗布し、ホットプレート上で100℃、90秒加熱し、膜厚100nmの膜を得た。得られた膜に対し、日立ハイテクノロジー社製ドライエッチャー(U−621)を用いてAr/C46/O2=100:4:2のガスで2分間プラズマドライエッチングを行った後の残膜量を測定し、1秒間当りのエッチングレートを算出した。得られたエチングレートを比較例1の値が1となるように規格化し、その結果を下記表1に示す。値が小さいほどドライエッチング耐性が良好であることを示す。
【0079】
<パターン形成性>
Siウェハ上に前記実施例1〜5および比較例1〜4のナノインプリント用組成物をスピン塗布し、ホットプレート上で100℃、90秒加熱し、膜厚100nmの膜を得た。これに100nmのライン/スペース矩形パターンを有し、溝深さが100nmのシリコンを材質とするパターン表面がフッ素系処理されたモールドをのせ、150℃に加熱しながら加圧力10MPaにてモールドを圧接した。冷却後モールドを離し、パターンを得た。得られたパターンの形状を走査型電子顕微鏡で観察した。その結果を下記表1に示す。
【0080】
【表1】

【0081】
実施例1は繰り返し単位全てがアクリレートである樹脂であるが、比較例1の繰り返し単位全てがメタクリレートである樹脂を用いた場合に比べ、ドライエッチング耐性、パターン形成性が向上している。
実施例2、3はアクリレート繰り返し単位の含有量がそれぞれ20%、50%である樹脂を用いた。また、実施例3の組成物の樹脂は、メタクリレート繰り返し単位の含有量が50%でもある。比較例2のアクリレート繰り返し単位の含有量が10%である樹脂を用いた場合に比べ、ドライエッチング耐性、パターン形成性が向上している。
実施例4,5はアクリレート繰り返し単位の含有量が50%である樹脂を用いた。また、実施例4と5の組成物の樹脂は、それぞれメタクリレート繰り返し単位の含有量が0%と50%でもある。このアクリレート繰り返し単位を全てメタクリレート繰り返し単位に変えた比較例3,4に比べ、ドライエッチング耐性、パターン形成性が向上している。
比較例5は特許文献1に記載されているポリメチルメタクリレートを用いたが、パターン形成性は良好であるが、ドライエッチング耐性が実施例に比べ大きく劣る。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
全繰り返し単位に対して少なくとも20mol%のアクリレート繰り返し単位を有する樹脂(A)を含有することを特徴とするナノインプリント用組成物。
【請求項2】
前記樹脂(A)の全繰り返し単位に対するメタクリレート繰り返し単位含有量が、50mol%以下であることを特徴とする請求項1に記載のナノインプリント用組成物。
【請求項3】
前記樹脂(A)が芳香環を有する繰り返し単位を含有することを特徴とする請求項1または2に記載のナノインプリント用組成物。
【請求項4】
さらに溶剤を含有することを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載のナノインプリント用組成物。
【請求項5】
前記溶剤として、エステル基、エーテル基、カルボニル基、および水酸基からなる群より選ばれる官能基を少なくとも1つ有する溶剤を含有することを特徴とする請求項4に記載のナノインプリント用組成物。
【請求項6】
前記溶剤として、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、2−ヘプタノン、シクロヘキサノン、乳酸エチル、エトキシプロピオン酸エチル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、およびガンマブチロラクトンからなる群より選ばれる少なくとも1種を含有することを特徴とする請求項4または5に記載のナノインプリント用組成物。
【請求項7】
さらに界面活性剤を含むことを特徴とする請求項1〜6のいずれか一項に記載のナノインプリント用組成物。
【請求項8】
前記界面活性剤として、フッ素および/またはシリコン系界面活性剤を含有することを特徴とする請求項7に記載のナノインプリント用組成物。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれか一項に記載のナノインプリント用組成物を用いて形成されたことを特徴とするエッチングレジストまたは永久膜。
【請求項10】
請求項1〜9のいずれか一項に記載のナノインプリント用組成物を基材上に塗布してパターン形成層を形成する工程と、
前記パターン形成層を加熱する工程と、
前記パターン形成層にモールドを押圧する工程と、
前記モールドを押圧した前記パターン形成層を冷却する工程と、
前記モールドを剥離する工程と、
を含むことを特徴とするパターン形成方法。
【請求項11】
請求項10に記載のパターン形成方法により形成されたことを特徴とするエッチングレジストまたは永久膜。

【公開番号】特開2009−275194(P2009−275194A)
【公開日】平成21年11月26日(2009.11.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−130400(P2008−130400)
【出願日】平成20年5月19日(2008.5.19)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】