説明

ナノシート及びその製造方法並びに複合体

【課題】フラーレン誘導体を含有し、単離された材料として容易に得られ、各種用途においてそのまま使用することのできるナノシート及びその製造方法を提供すること。
【解決手段】下記一般式(1)で表される第1のフラーレン誘導体及び下記一般式(2)で表される第2のフラーレン誘導体を含有するナノシート。


[式(1)及び(2)中、Fuはフラーレンからなる2価の基、Fuはフラーレンからなる4価の基、R、R、R、R及びRはそれぞれ独立に置換基を有していてもよいアルキル基又は水素原子、X及びXはそれぞれ独立にハロゲン原子、をそれぞれ示す。]

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フラーレン誘導体を含有するナノシート及びその製造方法、並びにナノシートを含有する複合体に関する。
【背景技術】
【0002】
1985年にフラーレンC60の存在が初めて確認され、さらに、1991年にカーボンナノチューブが発見されて以来、いわゆるナノカーボン材料は、ナノサイエンスやナノテクノロジーにおけるトップランナーと見なされている。そして、電子デバイス、太陽電池、燃料電池、パネルディスプレイ材料、ガス吸着材料、MRIの造影剤などの各種用途において、ナノカーボン材料の応用・実用化研究が急速に進んでいるところである。このような広範囲の用途にわたる展開は、ナノカーボン材料の特異な物性に起因する。ナノカーボン材料の物性発現は、ナノカーボン材料が球殻状あるいはチューブ状といった特異な構造を有していることに由来すると考えられている。
【0003】
ところで、上記のような各種用途への適用にあたって、ナノカーボン材料を、サブミクロンオーダーの厚みを有する薄膜状材料である、いわゆるナノシートの形態で用いることができれば、微粒子状や繊維状等の形態で用いる場合と比較して、物性や取り扱い性等の点で多くの利点があると考えられている。例えば、色素増感型太陽電池の電解質への添加剤としてナノシートを用いることができれば、増感色素の安定性や耐久性が改善されることなどが期待される。また、ナノシートを樹脂への充填剤として用いた複合体においては、少ない添加量で大きな補強効果が得られると考えられる。
【0004】
従来、フラーレン誘導体を含有するナノシートは、CVD法、スパッタリング法、レーザーアブレーション法、LB(ラングミュア・ブロジェット)法などの方法で、基板に密着する薄膜として得られていた。また、フラーレン誘導体をポリマー溶液に溶かした塗工液を、スピンコートにより基板上に塗布して薄膜化した例(特許文献1)も知られている。
【0005】
一方、繊維状のナノカーボン材料(ナノファイバー)としては、例えば、フラーレン誘導体を含有し、直径14〜120nm、長さ70μm以上のナノファイバーを得た例について報告されている(非特許文献1)。
【特許文献1】特開2004−221291号公報
【非特許文献1】「アンゲヴァンドテ・ケミイ・インターナショナル・エディション(Angew. Chem. Int. Ed)」、1999年、第38巻、p.2403
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ナノシートを各種用途に適用するためには、ナノシートを一旦単独の材料として単離することが望ましい。ところが、上記のような従来の方法による場合、フラーレン誘導体を含有するナノシートは基板上に形成されるため、基板と一体化していない単離された材料としてのナノシートを得ることが困難であった。しかも、単離された材料としてナノシートを得ようとすれば、基板からナノシートを剥離させる工程を必要とするため、従来の製造方法の場合、著しく生産性に劣るものとならざるを得なかった。
【0007】
また、上記非特許文献1に開示されるように、フラーレン誘導体を含有しナノファイバーの形態を有する炭素材料であれば、基板を用いない方法でも得られることが知られていた。しかし、この場合はナノシートではなくナノファイバーの形態を有するものが得られるのであるし、しかも、このナノファイバーは、溶媒に分散した状態では安定であるものの、単独で取り出すとナノファイバーとしての形態を保つことが困難なものであった。
【0008】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、フラーレン誘導体を含有し、単離された材料として容易に得られ、各種用途においてそのまま使用することのできるナノシート及びその製造方法を提供することを目的とする。また、本発明はこのナノシートを含有する複合体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討した結果、特定の2種類のフラーレン誘導体を組み合わせた炭素材料が、基板等を用いなくとも容易にナノシートを形成し、単離したときにこれがナノシートとしての形態を保持することを見出し、本発明の完成に至った。
【0010】
すなわち、本発明は、下記一般式(1)で表される第1のフラーレン誘導体及び下記一般式(2)で表される第2のフラーレン誘導体を含有することを特徴とするナノシートである。なお、本発明における「ナノシート」とは、厚みが1μm未満のシート状の材料のことを意味する。
【0011】
【化1】

【0012】
式(1)及び(2)中、Fuはフラーレンからなる2価の基、Fuはフラーレンからなる4価の基、R、R、R、R及びRはそれぞれ独立に置換基を有していてもよいアルキル基又は水素原子、X及びXはそれぞれ独立にハロゲン原子、をそれぞれ示す。なお、「フラーレンからなる2価の基」とは、フラーレンが有する二重結合のうち1個が単結合となることによって生成する基を意味し、「フラーレンからなる4価の基」とは、フラーレンが有する二重結合のうち2個が単結合となることによって生成する基を意味する。
【0013】
上記のような第1及び第2のフラーレン誘導体をともに含有する炭素材料を用いたことによって、ナノシートが単独の自立した材料として容易に得られ、これを各種用途にそのまま用いることが可能となった。このような効果が得られる理由は必ずしも明らかではないが、例えば、第1及び第2のフラーレン誘導体におけるイオン化された窒素原子によるクーロン的な相互作用により、第1及び第2のフラーレン誘導体が規則的に配列して高次構造を形成し、全体としてシート状の形態を保持しやすくなった可能性が考えられる。
【0014】
上記ナノシートにおいては、第2のフラーレン誘導体を、第1のフラーレン誘導体及び第2のフラーレン誘導体の合計量に対して5〜80質量%含有することが好ましい。これにより、単離された材料としてナノシートを得ることが更に容易になる。
【0015】
また、本発明は、樹脂と、これに分散した上記本発明のナノシートとを含有することを特徴とする複合体である。この複合体は、上記本発明のナノシートを含有していることにより、サブミクロンオーダーの厚さのフィルムに成形したときでも十分な強度を有する。
【0016】
さらに、本発明は、下記一般式(11)で表される第1の前駆体及び下記一般式(21)で表される第2の前駆体を溶解した溶液に、下記一般式(3)で表されるハロゲン化アルキル化合物を混合して、下記一般式(1a)で表される第1のフラーレン誘導体及び下記一般式(2a)で表される第2のフラーレン誘導体を含有するナノシートを生成させる工程を備えることを特徴とするナノシートの製造方法である。
【0017】
【化2】

【0018】
【化3】

【0019】
【化4】

【0020】
式(11)、(21)、(3)、(1a)及び(2a)中、Fuはフラーレンからなる2価の基、Fuはフラーレンからなる4価の基、R、R、R及びRはそれぞれ独立に置換基を有していてもよいアルキル基又は水素原子、Xはハロゲン原子、をそれぞれ示す。
【0021】
上記本発明の製造方法によれば、単離された材料としてのナノシートを十分に高い生産効率で得ることができる。また、この方法は、上記本発明のナノシート製造するための方法として好適に採用することができる。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、フラーレン誘導体を含有し、単離された材料として容易に得られ、各種用途においてそのまま使用することのできるナノシート及びその製造方法、並びにこのナノシートを含有する複合体が提供される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
以下、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。
【0024】
本発明のナノシートは、上記一般式(1)で表される第1のフラーレン誘導体と、上記一般式(2)で表される第2のフラーレン誘導体とを含有する。
【0025】
第1及び第2のフラーレン誘導体において、2価の基としてのFu及び4価の基としてのFuを形成するフラーレンとしては、C60、C70、C76、C78、C82及びC84が挙げられ、これらの中でもC60が好ましい。また、Fu及びFuは互いに同一でも異なっていてもよいが、ナノシートの生成がより容易となる点で、Fu及びFuは互いに同一種のフラーレンで形成されることが好ましい。
【0026】
、R、R、R及びRは、それぞれ独立に、置換基を有していてもよいアルキル基または水素原子である。このアルキル基としては、炭素数1〜5のアルキル基が好ましく、炭素数1〜3のアルキル基がより好ましい。上記炭素数が5を超えると、置換基が嵩高くなって、ナノシートの形態を保つことが困難となる傾向にある。また、R及びRは互いに同じ炭素数のアルキル基であることが好ましく、R及びRも互いに同じ炭素数のアルキル基であることが好ましい。
【0027】
及びXは、それぞれ独立にハロゲン原子である。このハロゲン原子としては、ヨウ素原子、塩素原子又は臭素原子が好ましい。
【0028】
このような構造を有する第1及び第2のフラーレン誘導体は、例えば、「ジャーナル オブ アメリカン ケミカル ソサイエティ(Journal of American Chemical Society)」、Vol.115、p.9798に記載されているような公知の方法で合成できる。
【0029】
本発明のナノシートにおいて、第2のフラーレン誘導体の含有率は、第1及び第2のフラーレン誘導体の合計量に対して5〜80質量%であることが好ましく、10〜70質量%であることがより好ましい。上記含有率が5質量%未満であるか又は80質量%を超えると、シート状の形態を保持することが困難となる傾向にある。
【0030】
本発明のナノシートは、第1及び第2のフラーレン誘導体に加えて、本発明の効果を著しく損なわない程度の割合、好ましくはナノシート全体に対して3質量%以下程度の割合で、第1及び第2のフラーレン誘導体以外の他の成分を含有してもよい。他の成分としては、例えば、上記一般式(1)又は(2)で表され、X又はXがハロゲン原子以外のアニオンであるようなフラーレン誘導体が挙げられる。このようなアニオンとしては、ビスメタンスルホニルイミド、ビストリフルオロメタンスルホニルイミド、ビスブチルスルホニルイミド、ビスフルオロブチルメタンスルホニルイミド、ビスメタンスルホン酸、ビストリフルオロメタンスルホン酸、ジシアンジアミド等からプロトンが脱離して形成されるアニオンが挙げられる。
【0031】
また、本発明のナノシートは、例えば、下記一般式(4)で表されるフラーレン誘導体を更に含有していてもよい。なお、式(4)中、Fuはフラーレンからなる4価以上の基を示し、X、R、R及びRは一般式(2)におけるのと同様の内容を示し、n及びnはそれぞれ独立に正の整数を示す。n+nは3又は4であることが好ましい。
【0032】
【化5】

【0033】
以上のような本発明のナノシートは、例えば、上記一般式(11)で表される第1の前駆体及び上記一般式(21)で表される第2の前駆体をトルエン等の芳香族炭化水素系の溶媒に溶解した溶液に、上記一般式(3)で表されるハロゲン化アルキル化合物を混合して、上記一般式(1a)で表される第1のフラーレン誘導体及び上記一般式(2a)で表される第2のフラーレン誘導体を含有するナノシートを生成させる工程を備える製造方法によって、好適に得ることができる。
【0034】
式(11)、(21)、(3)、(1a)及び(2a)中、Fu、Fu、R、R及びRは、式(1)及び(2)におけるものと同様の内容を示す。また、Rは式(1)及び(2)におけるR及びRに相当し、Xは式(1)及び(2)におけるX及びXに相当するものである。すなわち、式(1a)及び(2a)は、式(1)及び式(2)において、R及びRが互いに同一で、X及びXも互いに同一である場合を表す式となっている。
【0035】
第1及び第2の前駆体は、公知の方法、例えば、フラーレンと、グリシン又はその誘導体とを、トルエン等の溶媒中で反応させる方法で合成することができる。この合成反応後の粗生成物は、通常、第1及び第2の前駆体を含有する混合物であるので、この粗生成物をカラムクロマトグラフィーで分離するなどして、第1及び第2の前駆体を単離し、これを任意の比率で併用して、ナノシートの製造のために用いることができる。
【0036】
式(3)で表されるハロゲン化アルキル化合物において、Rは炭素数1〜5のアルキル基であることが好ましく、炭素数1〜3のアルキル基であることがより好ましい。また、Xとしては、X及びXと同様に、ヨウ素原子、塩素原子又は臭素原子が好ましい。
【0037】
上記のナノシートの製造方法においては、第1及び第2の前駆体を溶解した溶液に、ハロゲン化アルキル化合物を混合して、好ましくは攪拌することにより、第1及び第2の前駆体とハロゲン化アルキル化合物との反応が進行して第1及び第2のフラーレン誘導体が生成するとともに、これらフラーレン誘導体を含有するナノシートが懸濁物として生成する。そして、この懸濁物をろ別等によって取り出すことで、フラーレン誘導体を含有するナノシートが得られる。
【0038】
第1及び第2の前駆体とハロゲン化アルキル化合物との反応は、20〜40℃で、24〜168時間かけて進行させるのがよい。また、反応は暗所で行うことが好ましい。また、フラーレンナノシート中のフラーレン内にNa、K、Cs、Rb、La、Snなどの金属を閉じ込めることもできる。
【0039】
本発明のナノシートは、樹脂の充填剤、あるいは、色素増感型太陽電池の電解質への添加剤、燃料電池、電気粘性流体などの電気化学的デバイスなどに好適に用いることができる。
【0040】
特に、本発明のナノシートを樹脂の充填剤として用いたときに得られる、樹脂と、これに分散したナノシートとを含有する複合体は、充填されるナノシート自体が十分薄いために、サブミクロンオーダーの厚さを有する極めて薄いフィルム(高分子ナノシート)に成形することが容易で、また、このように薄いフィルムに成形したときでも十分な機械強度を有する。
【0041】
上記複合体に用いる樹脂としては、熱硬化性樹脂でもよいし、熱可塑性樹脂でもよい。具体的には、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリイソブチレン、ポリスチレン、ポリエチレンオキシド、ポリフッ化ビニリデン、ナイロン、ポリペプチド等の、合成又は天然の直鎖状又は分岐状高分子を含んだ樹脂にナノシートを分散させて複合体を得ることができる。
【0042】
また、これらの樹脂に溶媒を含ませてゲルを形成することでゲル状の複合体を得、これをフィルム状に成形して、いわゆるゲルナノシートとしてもよい。この場合、樹脂としては、上記のような高分子を含んだものの他、ソルビトールなどの糖類化合物が物理架橋して形成される樹脂が挙げられる。
【実施例】
【0043】
以下、本発明について実施例及び比較例を挙げて具体的に説明する。但し、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
<前駆体の合成>
【0044】
(合成例)
フラーレンC60(東京化成社製)0.1gをトルエン100mLに50℃に加温しながら溶解し、これにパラホルムアルデヒド(アルドリッチ社製)23mg及びN−メチルグリシン(アルドリッチ社製)26mgを加え、直ちに120℃まで加熱して、トルエンを還流させた。2時間の還流後、反応液を室温まで冷却して、濃褐色の透明液体を得た。続いてこの透明液体をシリカゲルカラムクロマトグラフィーで分画して、下記一般式(11b)で表されRがメチル基である第1の前駆体及び下記一般式(21b)で表されR及びRがメチル基である第2の前駆体をそれぞれ単離した。
【0045】
【化6】

<ナノシートの作製>
【0046】
(実施例1)
合成例で得た25mgの第1の前駆体及び17mgの第2の前駆体を、サンプル瓶中でトルエン25mLに室温にて溶解した溶液に対して、ヨウ化メチル(東京化成社製)15mLを加えた。そして、サンプル瓶をアルミ箔で覆い、溶液を室温にて96時間攪拌した。その後、溶液中に生成した懸濁物をろ別及び乾燥して、フィルム状の固形物を得た。この固形物は、図1の走査型電子顕微鏡写真(倍率10000倍)に示すように、厚さが200nm程度の複数のナノシートで構成されていた。すなわち、下記一般式(1b)で表され、R及びRがメチル基、Xがヨウ素原子である第1のフラーレン誘導体、並びに下記一般式(2b)で表され、R、R及びRがメチル基、Xがヨウ素原子である第2のフラーレン誘導体を含有し、各種用途にそのまま用いることのできる単離された材料としてのフラーレンナノシート(フラーレン誘導体を主成分とするナノシート)が得られた。
【0047】
【化7】

【0048】
(実施例2)
10mgの第1の前駆体及び35mgの第2の前駆体を用いた他は、実施例1と同様にして、フラーレンナノシートが得られた。
【0049】
(実施例3)
40mgの第1の前駆体及び5mgの第2の前駆体を用いた他は、実施例1と同様にして、フラーレンナノシートが得られた。
【0050】
(実施例4)
ヨウ化メチルに代えてヨウ化エチルを用いて、式(1b)及び(2b)におけるRがエチル基である第1及び第2のフラーレン誘導体を生成させた他は、実施例1と同様にして、フラーレンナノシートが得られた。
【0051】
(実施例5)
N−メチルグリシンに代えてグリシンを用いて、式(11b)及び(1b)におけるR、並びに式(21b)及び(2b)におけるRを水素原子とした他は、実施例1と同様にして、フラーレンナノシートが得られた。
【0052】
(実施例6)
ヨウ化メチルに代えて臭化メチルを用いて、式(1b)及び(2b)におけるXが臭素原子である第1及び第2のフラーレン誘導体を生成させた他は、実施例1と同様にして、フラーレンナノシートが得られた。
【0053】
(実施例7)
実施例1と同様の第1及び第2のフラーレン誘導体をそれぞれ別途準備し、25mgの第1のフラーレン誘導体と、20mgの第2のフラーレン誘導体とをトルエン中に加えて高速攪拌し、生成した懸濁物をろ別して、フラーレンナノシートが得られた。
ただし、高速攪拌が必要な点、フラーレンナノシートの成長にやや長い時間を要する等の点で、実施例1の場合と比較してその生産性はやや劣るものであった。
【0054】
(比較例1)
実施例1と同様の第1の前駆体のみを溶解したトルエン溶液にヨウ化メチルを加えて、第1のフラーレン誘導体のみを含有する懸濁物を生成させたが、この懸濁物をろ別して取り出し、これを走査型電子顕微鏡で観察したところ、ランダムな長さの棒状で、シート状の形態を有していなかった。
【0055】
<複合体の作製>
(実施例8)
実施例1で得たナノシート20mgを、ポリスチレン(アルドリッチ社製、分子量12万)0.2gを溶解したトルエン1mLに溶解した溶液に加え、超音波により強制懸濁させた懸濁液をスライドガラス上にスピンコートした。真空圧下で乾燥後、スライドガラスから剥がして、フラーレンナノシートを含有し厚さ約500nmのフィルム状の複合体を得た。
【0056】
(実施例9)
実施例1で得たフラーレンナノシート20mgを、10%のNafion(登録商標)水溶液(アルドリッチ社製)に加え、超音波により強制懸濁させた懸濁液をテフロン(登録商標)シャーレ内にキャストし、真空圧下で乾燥後、シャーレから取り出して、フラーレンナノシートを含有しフィルム状で厚さ約20μmのプロトン伝導性の複合体を得た。
【産業上の利用可能性】
【0057】
本発明のナノシートは、樹脂の充填剤、あるいは、色素増感型太陽電池の電解質への添加剤、燃料電池、電気粘性流体などの電気化学的デバイスなどに好適に用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0058】
【図1】実施例1で得たナノシートの走査型電子顕微鏡写真を示す図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(1)で表される第1のフラーレン誘導体及び下記一般式(2)で表される第2のフラーレン誘導体を含有するナノシート。
【化1】

[式(1)及び(2)中、Fuはフラーレンからなる2価の基、Fuはフラーレンからなる4価の基、R、R、R、R及びRはそれぞれ独立に置換基を有していてもよいアルキル基又は水素原子、X及びXはそれぞれ独立にハロゲン原子、をそれぞれ示す。]
【請求項2】
前記第2のフラーレン誘導体を、前記第1のフラーレン誘導体及び前記第2のフラーレン誘導体の合計量に対して5〜80質量%含有する、請求項1に記載のナノシート。
【請求項3】
樹脂と、これに分散した請求項1又は2に記載のナノシートと、を含有する複合体。
【請求項4】
下記一般式(11)で表される第1の前駆体及び下記一般式(21)で表される第2の前駆体を溶解した溶液に、下記一般式(3)で表されるハロゲン化アルキル化合物を混合して、下記一般式(1a)で表される第1のフラーレン誘導体及び下記一般式(2a)で表される第2のフラーレン誘導体を含有するナノシートを生成させる工程を備える、ナノシートの製造方法。
【化2】

【化3】

【化4】

[式(11)、(21)、(3)、(1a)及び(2a)中、Fuはフラーレンからなる2価の基、Fuはフラーレンからなる4価の基、R、R、R及びRはそれぞれ独立に置換基を有していてもよいアルキル基又は水素原子、Xはハロゲン原子、をそれぞれ示す。]

【図1】
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【公開番号】特開2006−124298(P2006−124298A)
【公開日】平成18年5月18日(2006.5.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−312763(P2004−312763)
【出願日】平成16年10月27日(2004.10.27)
【出願人】(000003609)株式会社豊田中央研究所 (4,200)
【Fターム(参考)】