説明

ナノスケール粉末の均質化

同一または異なる化学的組成および/または構造であって、かつ固体の形でナノスケール粉末の混合物を、制御可能なガス流の存在下で容器中に導入し、その際、ガス流は、ナノスケール粉末を懸濁液の形で維持し、かつ完全に混合させ、その後に容器から除去される程度に調整していることを特徴とする、ナノスケール粉末を均質化するための方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ナノスケール粉末を均質化するための方法および装置に関する。
【0002】
化学分野において、反応パラメータにおける相対的に小さい多様性は、しばしば完全には回避することができないものである。たとえば、出発材料は、その組成物、反応流量または反応温度に対して可変的であってもよく、これは、製造サイクル中で時間に依存しての生成物の変化を導きうる。したがって、これは生成物の異なるバッチが一様でないことを意味しうる。多くの適用において、これらの変化は、概して極めて小さいもののみであるため、なんら役割を担うものではない。好ましい場合には、均一な生成物は異なるバッチの均質化によって得ることができる。
【0003】
ナノスケールの粉末が使用される適用において、たとえば、半導体基板の化学−機械的研磨は、ナノスケール粉末の生成物の質における極めて小さい変化であってさえも、研磨結果における顕著な差を招きうるものである。粗砕粉末とは対照的に、ナノスケール粉末の均質化には、均質化工程中の構造的変化を生じうるといった問題が生じる。すなわち、これらの凝集構造または凝塊構造は変化しうる。
【0004】
公知のホモジナイザーを用いて、その構造および性質を変更することなく、ナノスケール粉末を均質化することは不可能である。DE-A-19832304では、特に、ナノスケールの固体を混合可能な手段による方法を請求している。記載された方法において、粉砕装置が混合のために使用されているが、これは、混合物中における構造的な変更を導きうるものである。他の欠点は、助剤が混合工程において必要不可欠であることであり、この場合、これらの助剤は、後続の工程において再度除去しなければならない。この方法は、相対的に多量のナノスケール粉末を均質化するには非経済的である。
【0005】
本発明の課題は、ナノスケール粉末を、これらの構造を変化させないように均質化することが可能な方法および装置を提供することである。
【0006】
この課題は、ナノスケール粉末の均質化のための方法によって達成することができ、この場合、これらの方法は、同一または異なる化学的組成および/または構造を有するナノスケール粉末の混合物を、固体の形で、制御可能なガス流の存在下で、容器中に導入することによって特徴付けられ、この場合、ガス流は、ナノスケール粉末が懸濁液の形で維持され、かつ完全に混合する程度に調整する。
【0007】
本発明の範囲内における均質化とは、同一の化学的組成、たとえば二酸化ケイ素であるが、異なる構造および/または性質を有するナノスケール粉末を混合することを意味する。それぞれの粉末の構造および凝集または凝塊の程度は、均質化によっては変化しない。これは構造、たとえば圧縮の程度および液体媒体中での混和性により付与される性質の値が、それぞれの粉末の型の構造を方法により変化することなく、平均化することを意味する。
【0008】
さらに均質化は、異なる化学的組成、たとえば二酸化ケイ素および酸化アルミニウムのナノスケール粉末の密接混合を意味するものと理解される。この方法において、物理的に混合された酸化物は、粉末のそれぞれの型が別個に存在し、かつ粉末のそれぞれの型において構造的変化が生じないように形成される。
【0009】
本発明の範囲内のナノスケール粉末は、1〜100nmの一次粒子を有するものおよびそれ自体が凝集体または凝塊の形で存在するものを示すものと理解される。
【0010】
本発明の方法におけるガス流の性質は、均質化されるべき粉末と反応しない限り、制限されることはない。好ましくは、空気または窒素を使用することができる。ガス流の量は、適した装置によって、均質化すべき粉末が、懸濁液の形で維持される程度に調整されてもよい。この方法では、たとえば、粉末が沈降することなく、かつ圧縮されえないことが保証される。したがって、これは、粉末の性質が影響を受けないことを意味するものである。
【0011】
熱分解法由来の金属酸化物および/または半金属酸化物の形でのナノスケール粉末が、好ましくは、本発明の範囲内において使用される。これに関連して熱分解法とは、粉末が、フレーム酸化またはフレーム加水分解によって製造されることを意味する。特に適した粉末は、二酸化ケイ素、酸化アルミニウム、二酸化チタン、酸化セリウム、酸化亜鉛、前記化合物の混合酸化物の物理的または化学的混合物の形であってもよいか(コ−ヒュームド(co-fumed)酸化物)またはDE-A-19650500によるドープされた金属酸化物または半金属酸化物であってもよい。
【0012】
ナノスケール粉末は、連続的または回分的に容器中に導入されるか、および/または容器から除去されてもよい。本発明の範囲内では、粉末を連続的に、粉末密度が、粉末の化学的組成および構造に依存して達成されるまで容器中に導入し、その後に粉末で適した容器を充填することが好ましい。
【0013】
熱分解的に製造された金属酸化物または半金属酸化物の均質化のための本発明による方法は、特に好ましくは、製造工程およびその後の脱酸工程中で実施することができる。熱分解法金属酸化物または半金属酸化物の製造方法の簡単なフロー図は、Ulmann's Encyclopedia of Industrial Chemistry, Vol. A23, Page 636,5th Editionに記載されている。
【0014】
本発明による方法を実施するための適した装置は、図1中に示し、その際、1=出口開口部、2=調節装置、3=流動化リング(容器中のいくつかの箇所で空気または窒素を導入する)、4=入口開口部、5=フィルターを備えた廃気開口部。
【0015】
実施例
例1:
流動化ノズルを備え、かつ4mの全収容力を有する、図1によるサイロは、BET表面積145、155および158m/gを有し、かつ相当するpH値3.8、4.1および4.2を有するそれぞれ10kgの3個のバッチから、熱分解法により製造された二酸化ケイ素30kgの全量で充填した。同時に、空気(20Nm/時間)を、ノズルを介して供給し、その後に粉末を10kgバック中にパッケージングした。空気での処理の2時間後の第1バックの分析値、4時間後の第2バックの分析値および6時間後の第3バックの分析値を、第1表に示した。
【0016】
【表1】

【0017】
バッチの好ましい均質化を認識することができる。148〜152m/gの範囲の値を有するおおよその平均比表面積が得られた。得られた付加的なTEM画像は、均質化後も任意の構造的変化を示していない。
【0018】
例2:
流動化ノズルおよび6mの全収容力を有する、図1に記載のサイロは、連続的に、熱分解法二酸化ケイ素を製造するための方法から得られ、かつ約200m/g(サイロの上流の試料に基づいて定められた;第2表)のBET表面積を有する、熱分解法二酸化ケイ素60kg/時間で連続的に装填した。同時に、空気を25Nm/時間で、ノズルを介して供給し、かつ粉末を均質化した。同時に粉末を連続的に除去した。サイロ中の平均滞留時間は5〜15分の間であった。サイロの充填高さは一定であった。第1バックの分析値(試験の開始時)、第8バックの分析値(試験の中間時)および最終バックの分析値(試験の終了時)を第2表に示した。
【0019】
【表2】

【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明による方法を実施するための適した装置を示す図

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ナノスケール粉末を均質化するための方法において、同一または異なる化学的組成および/または構造であって、かつ固体の形でナノスケール粉末の混合物を、制御可能なガス流の存在下で容器中に導入し、その際、ガス流は、ナノスケール粉末を懸濁液の形で維持し、かつ完全に混合させ、その後に容器から除去される程度に調整していることを特徴とする、ナノスケール粉末を均質化するための方法。
【請求項2】
ナノスケール粉末が、熱分解法由来の金属酸化物粉末および/または半金属酸化物粉末である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
ナノスケール粉末を、連続的にかまたは不連続的に、容器中に導入するか、および/または、容器中から除去する、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
熱分解法由来の金属酸化物粉末および/または半金属酸化物粉末の均質化を、熱分解法酸化物の製造工程中、前記酸化物粉末の製造工程中、および引き続いての脱酸工程中に組み込む、請求項1から3までのいずれか1項に記載の方法。

【図1】
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【公表番号】特表2006−519094(P2006−519094A)
【公表日】平成18年8月24日(2006.8.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−501860(P2006−501860)
【出願日】平成16年2月17日(2004.2.17)
【国際出願番号】PCT/EP2004/001468
【国際公開番号】WO2004/076048
【国際公開日】平成16年9月10日(2004.9.10)
【出願人】(501073862)デグサ アクチエンゲゼルシャフト (837)
【氏名又は名称原語表記】Degussa AG
【住所又は居所原語表記】Bennigsenplatz 1, D−40474 Duesseldorf, Germany
【Fターム(参考)】