説明

ナノセンサーおよび関連技術

本発明は、広くナノテクノロジーおよびサブミクロン電子回路に関し、並びに、関連する方法およびデバイス、例えば、試料中に存在すると思われる核酸または他の検体(例えば、その存在および/または動的情報)を例えば単一分子レベルで測定するために使われるナノスケールワイヤデバイスおよび方法、に関する。例えば、ナノスケールワイヤデバイスは、ある場合には、核酸中の一塩基ミスマッチを(例えば、会合および/または解離速度を測定することにより)検出するのに用いることができる。一様態では、結合定数、会合速度、および/または解離速度のような動的情報を、核酸または他の検体とナノスケールワイヤに対して固定化されている結合パートナーとの間で測定することができる。ある場合には、ナノスケールワイヤは、金属‐半導体化合物を含む第1部分および金属‐半導体化合物を含まない第2部分を含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願
この出願は、2006年6月12日に出願されたLieberらによる表題「Nanosensors and Related Technologies」の米国仮特許出願第60/812,884号(これは、参考として本明細書に援用される)の利益を主張する。
【0002】
政府の基金提供
本発明の様々な様態に導いた研究は、少なくとも一部、DARPAの許可番号第FA8650‐06‐C‐7622号および第FA9550‐05‐1‐0279号、並びに第N66001‐04‐1‐8903号による資金援助を受けたものである。米国政府は本発明に関する一定の権利を有する。
【0003】
本発明は、広くナノテクノロジーおよびサブミクロン電子回路に関し、さらに関連する
方法およびデバイス、例えば、試料中に存在すると思われる核酸または他の検体(例えば、その存在および/または動的情報)を、例えば単一分子レベルで、測定するために使用されるナノスケールワイヤのデバイスおよび方法に関する。例えば、ナノスケールワイヤデバイスは、核酸中の一塩基ミスマッチを(例えば、会合および/または解離速度を測定することにより)検出するために使用することができる。ある場合には、該デバイスは、金属ケイ化物のような金属‐半導体化合物を含むことができる。
【背景技術】
【0004】
ナノテクノロジー、特に半導体量子ドットおよびナノワイヤなどのサブミクロン電子技術、への関心は、ナノスケールにおける化学と物理の挑戦により、さらにこれらの構造のエレクトロニクスおよび関連デバイスにおける活用への見通しにより動機付けられてきた。ナノスコピックな物品は、電荷キャリアおよび励起子(例えば、電子、電子対など)を輸送するのに好適と考えられ、それ故にナノスケールの電子応用における構成単位として有用な可能性がある。ナノワイヤは、電荷キャリアおよび励起子を効率よく輸送するのによく適しており、従ってナノスケールのエレクトロニクスおよび光エレクトロニクスのための重要な構成単位として期待される。
【0005】
選択的に官能化された表面をもつナノスケールワイヤは、2002年8月29日に特許文献1として公開された“ナノセンサー(Nanosensors)”と題する2001年12月11日出願の米国特許出願第10/020004号、およびこれに対応する2002年6月20日に国際特許出願公開WO02/48701号として公開された2001年12月11日出願の国際特許出願PCT/US01/48230号に記載されている(各々が参照によりここに組み込まれる)。その記載にあるように、ナノスケールワイヤの官能化は、官能化されたナノスケールワイヤが分子的実体のような様々な実体と相互作用することを可能にし、該相互作用により官能化されたナノスケールワイヤの特性に変化が誘起され、それによりナノスケールセンサデバイスが試料中に存在すると思われる検体の有無を検出する仕組みが提供される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】米国特許出願公開第2002/0117659号明細書
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0007】
発明の要旨
本発明は、広くナノテクノロジーおよびサブミクロン電子回路に関し、さらに関連する方法およびデバイス、例えば、試料中に存在すると思われる核酸または他の検体(例えば、その存在および/または動的情報)を、例えば単一分子レベルで、測定するために使用されるナノスケールワイヤのデバイスおよび方法に関する。例えば、ナノスケールワイヤデバイスは、核酸中の一塩基ミスマッチを(例えば、会合および/または解離速度を測定することにより)検出するために使用することができる。本発明の主題は、ある場合には、相互に関連した製品、特定の問題に対する代わりの解決策、および/または一つまたはそれ以上のシステムおよび/または物品の複数の異なる使用法を含む。
【0008】
本発明は、一様態においては方法である。一組の実施形態では、本方法は、核酸と核酸の結合パートナーが固定化されているナノスケールワイヤとの間の結合定数および/または解離速度定数を測定する動作を含む。本方法は、また別の一組の実施形態では、検体と検体の結合パートナーが固定化されているナノスケールワイヤとの間の結合定数および/または解離速度定数を測定する動作を含む。
【0009】
本方法は、さらに別の一組の実施形態では、複数の核酸分子であって、各々がナノワイヤに固定化されているそれぞれの結合パートナーと会合する核酸分子を提供する動作と、複数の核酸分子の少なくともいくつかをそれぞれの結合パートナーから解離させる動作と、複数の核酸分子の少なくともいくつかがそれぞれの結合パートナーから解離する速度を測定する動作とを含む。
【0010】
ほかの一組の実施形態によれば、本方法は、金属の少なくとの一部をナノスケールワイヤの第1部分に、但しナノスケールワイヤの第2部分にではなく、拡散させる動作と、反応体(reaction entity)をナノスケールワイヤの第2部分に固定化する動作とを含む。
【0011】
さらに別の一組の実施形態では、本方法は、バルク金属を半導体ワイヤに隣接して提供する動作、およびバルク金属の少なくとも一部を半導体ワイヤの少なくとも一部中に、半導体ワイヤに沿う長手方向で少なくとも約10nmの距離にわたって拡散させる動作を含む。
【0012】
ほかの実施形態では、本方法は、検体の核酸と、核酸の結合パートナーに固定化されている結合パートナーとの間のミスマッチの数を、測定する動作を含む。
【0013】
また別の様態では、本発明は物品である。本物品は、一組の実施形態では、金属ケイ化物を含む第1部分を含むナノスケールワイヤ、および第1部分と異なる組成を有するナノスケールワイヤの第2部分に対して固定化されている反応体を含む。また別の実施形態では、本物品は、金属ケイ化物を含む第1部分と、第1部分と異なる組成を有する第2部分とを含むナノスケールワイヤを含む。ある場合には、第2部分は約100nm以下の最大寸法を有する。
【0014】
本物品は、さらに別の実施形態では、第1部分および第2部分を含むナノスケールワイヤを含み、第1部分には結合パートナーが固定化されている。ある例では、第2部分は結合パートナーを含まない。
【0015】
本発明のさらに別の態様は、広く溶液に関する。ある実施形態では、溶液は、検体と、第1部分および第2部分を含むナノスケールワイヤとを含む。第2部分には、検体に対する結合パートナーが固定化されていてもよく、第1部分には、結合パートナーがなくてもよい。一実施形態では、検体は、ナノスケールワイヤの第2部分の最大寸法より大きいデバイの遮蔽長を有する。
【0016】
また別の様態では、本発明は、ここに記載される一つまたはそれ以上の実施形態、例えば、ナノスケールワイヤを含むセンシング素子、を形成する方法に関する。さらに別の様態では、本発明は、ここに記載される一つまたはそれ以上の実施形態、例えば、ナノスケールワイヤを含むセンシング素子、を使用する方法に関する。
【0017】
本発明の他の利点および新規な特長は、本発明の様々な非限定的な実施形態に関する以下の詳細な記述を、添付図面と併せて考察することから明らかになるであろう。本明細書と参照により組み込まれる文献とが相反する、および/または、矛盾する開示を含む場合は、本明細書に従うものとする。もし参照により組み込まれる二つまたはそれ以上の文献が相互に反する、および/または、矛盾する開示を含む場合は、有効日が遅い方の文献に従うものとする。
【0018】
本発明の非限定的な実施形態は、例として添付図を参照して記載されるが、それらは図式的であり縮尺通りに描くことを意図したものではない。図示される各々同じまたはほぼ同じ構成要素は、一般的に単一の数字で表わされる。わかり易くするために、どの図でも構成要素すべてにラベル付けをしているわけではなく、当業者が発明を理解するのに図を必要としないところでは本発明の各実施形態の構成要素をすべて示しているわけではない。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1A】本発明の様々な実施形態を示す概念図である。
【図1B】本発明の様々な実施形態を示す概念図である。
【図1C】本発明の様々な実施形態を示す概念図である。
【図1D】本発明の様々な実施形態を示す概念図である。
【図1E】本発明の様々な実施形態を示す概念図である。
【図2A】本発明のある実施形態の作製に有用な様々な技術を示す概念図である。
【図2B】本発明のある実施形態の作製に有用な様々な技術を示す概念図である。
【図2C】本発明のある実施形態の作製に有用な様々な技術を示す概念図である。
【図2D】本発明のある実施形態の作製に有用な様々な技術を示す概念図である。
【図2E】本発明のある実施形態の作製に有用な様々な技術を示す概念図である。
【図2F】本発明のある実施形態の作製に有用な様々な技術を示す概念図である。
【図2G】本発明のある実施形態の作製に有用な様々な技術を示す概念図である。
【図2H】本発明のある実施形態の作製に有用な様々な技術を示す概念図である。
【図2I】本発明のある実施形態の作製に有用な様々な技術を示す概念図である。
【図2J】本発明のある実施形態の作製に有用な様々な技術を示す概念図である。
【図2K】本発明のある実施形態の作製に有用な様々な技術を示す概念図である。
【図3A】本発明の一実施形態による異なる濃度における核酸分子の結合パートナーに対する会合/解離の測定について示す。
【図3B】本発明の一実施形態による異なる濃度における核酸分子の結合パートナーに対する会合/解離の測定について示す。
【図3C】本発明の一実施形態による異なる濃度における核酸分子の結合パートナーに対する会合/解離の測定について示す。
【図3D】本発明の一実施形態による異なる濃度における核酸分子の結合パートナーに対する会合/解離の測定について示す。
【図3E】本発明の一実施形態による異なる濃度における核酸分子の結合パートナーに対する会合/解離の測定について示す。
【図3F】本発明の一実施形態による異なる濃度における核酸分子の結合パートナーに対する会合/解離の測定について示す。
【図3G】本発明の一実施形態による異なる濃度における核酸分子の結合パートナーに対する会合/解離の測定について示す。
【図4A】本発明の一実施形態による検体の結合パートナーとの会合および解離の反応速度の測定について示す。
【図4B】本発明の一実施形態による検体の結合パートナーとの会合および解離の反応速度の測定について示す。
【図4C】本発明の一実施形態による検体の結合パートナーとの会合および解離の反応速度の測定について示す。
【図4D】本発明の一実施形態による検体の結合パートナーとの会合および解離の反応速度の測定について示す。
【図4E】本発明の一実施形態による検体の結合パートナーとの会合および解離の反応速度の測定について示す。
【図4F】本発明の一実施形態による検体の結合パートナーとの会合および解離の反応速度の測定について示す。
【図4G】本発明の一実施形態による検体の結合パートナーとの会合および解離の反応速度の測定について示す。
【図5】本発明のある実施形態による個々の核酸分子の結合パートナーとの多数の会合の測定について示す。
【図6】図6A〜図6Bは、本発明の様々な実施形態によるセンサを示す。
【図7】本発明の一実施形態の概念図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0020】
配列の簡単な説明
配列番号1はATCATCTTTG、合成PNAの配列である。
配列番号2はCAAAGATGAT、合成DNAの配列である。
配列番号3はCAAACATGAT、合成DNAの配列である。
配列番号4はCAAACCTGAT、合成DNAの配列である。
配列番号5はATCAAAGATG、合成DNAの配列である。
配列番号6はTTTTTTTTTT、合成DNAの配列である。
配列番号7はCAAAGATG、配列番号5の一部である。さらに、配列番号8はCATCTTTG、配列番号1の一部である。
【0021】
詳細な説明
本発明は、広くナノテクノロジーおよびサブミクロン電子回路に関し、さらに関連する方法およびデバイス、例えば、試料中に存在すると思われる核酸または他の検体(例えば、その存在および/または動的情報)を、例えば単一分子レベルで、測定するために使用されるナノスケールワイヤのデバイスおよび方法に関する。例えば、ナノスケールワイヤデバイスは、ある場合には核酸中の一塩基ミスマッチを(例えば、会合および/または解離速度を測定することにより)検出するために使用することができる。一様態では、核酸または他の検体と、ナノスケールワイヤに対して固定された結合パートナーとの間の結合定数、会合速度、および/または、解離速度のような動的情報を測定することができる。ある場合には、ナノスケールワイヤは、金属‐半導体化合物を含む第1部分と、金属‐半導体化合物を含まない第2部分とを含む。結合パートナーは、ある実施形態では、ナノスケールワイヤの少なくとも第2部分に対して固定化され、ナノスケールワイヤの第2部分のサイズは、ある例では、最小化および/または制御することができる。ある実施形態では、ナノスケールより大きいサイズの物品およびデバイスも含まれる。本発明のさらに他の様態は、かかるナノスケールワイヤ、かかるナノスケールワイヤを作製および/または使用する方法などを含む検定、センサ、キット、および/または他のデバイスを含む。
【0022】
本発明の一様態は、一般的に動的情報、例えば、核酸のような検体と、検体に対する結合パートナーが固定化されているナノスケールワイヤとの間の結合定数、および/または会合および/または解離速度定数、を測定することに関する。ナノスケールワイヤは、以下により詳細に論じるように、例えば、ナノチューブ、または、例えば、半導体ナノワイヤ、金属ナノワイヤ、金属‐半導体ナノワイヤ(例えば、金属ケイ化物ナノワイヤ)などのナノワイヤであっても(または、を備えていても)よい。一組の実施形態では、検体(すなわち、ナノワイヤを用いて測定される物質)は核酸、例えば、DNA、RNA、PNAなど、およびそれらの組み合わせである。結合パートナーも同様に検体の核酸に対して実質的または完全に相補的な核酸とすることができる。しかし、他の実施形態では、以下に記載されるように、核酸以外の結合パートナー(例えば、検体の核酸を認識できる酵素)を用いてもよい。ナノスケールワイヤは、複数の結合パートナーが固定されていてもよく、それらは各々独立に同じか、または異なっていてもよい(例えば、同じ核酸配列からの多数の実質的に同一なコピー、および/または異なる核酸配列、および/またはそれらの組み合わせであってもよい)。ある実施形態では、検体は、高い感度で測定することができ、さらにある例では検体の一分子さえ測定することができる。
【0023】
核酸は、通常はポリマー主鎖を介して結合された複数の塩基を有する。非限定的な核酸の例は、RNA(リボ核酸:ribonucleic acid)、DNA(デオキシリボ核酸:deoxyribonucleic acid)、またはPNA(ペプチド核酸:peptide nucleic acid)を含む。一般的に、核酸は多数のヌクレオチド、例えば、アデノシン(“A”)、グアノシン(“G”)、チミン(“T”)、ウリジン(“U”)、またはシチジン(“C”)を含む。ヌクレオチドはしばしばリン酸基に連結した糖(例えば、リボースまたはデオキシリボース)および置換可能な有機塩基から形成される(但し、PNAは異なる主鎖、すなわち、ペプチド結合を含む主鎖をもつ)。糖(またはペプチド)および塩基(リン酸はない)は共にヌクレオシドを構成する。有機塩基の例は、種々のピリミジンまたはプリンを含むが、それらには限定されない。
【0024】
一組の実施形態では、結合パートナーは、検体の核酸(またはその一部)に対して実質的または完全に相補的な核酸である(または核酸配列を含む)。本明細書では、核酸の第1部分は、もし第1部分のヌクレオチドと第2部分のヌクレオチドとが全般的に相補的(すなわち、ワトソン‐クーリック対合、A対TまたはU、C対Gなど)であれば、核酸の第2部分に対して“相補的”である。一般的に、核酸は十分な相補性を有しており、明確に予測可能な方位に特異的に結合することができる。ある場合には、核酸の部分は、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、または少なくとも99%相補的である。完全に相補的な核酸は、100%相補的である。ある実施形態では、第1および第2部分は最大0、1,2、3、4、5、6、7、8、9、または10のミスマッチがあり、さらにある例では核酸間のミスマッチの数は、ここで論じられるように測定することができる。ヌクレオチドのミスマッチをもつ核酸の非限定的な例は、当業者によく知られたSNP(single nucleotide polymorphism)、すなわち一塩基変異多型である。核酸の相補的部分は、少なくとも5ヌクレオチド長、ある場合は、少なくとも7ヌクレオチド長、少なくとも約10ヌクレオチド長、少なくとも約12ヌクレオチド長、少なくとも約15ヌクレオチド長、少なくとも約20ヌクレオチド長、少なくとも約25ヌクレオチド長、少なくとも約50ヌクレオチド長などであってもよい。
【0025】
ある実施形態では、検体(例えば、核酸)の結合パートナーとの会合または結合は、ナノスケールワイヤの特性、例えば、もし検体が電荷を帯びているとナノスケールワイヤの導電率のような電気的特性、を変化させることができる。非限定的な例として、核酸のような負電荷を帯びた検体は、結合パートナーと会合してp型ナノスケールワイヤに固定され、p型ナノスケールワイヤの導電度を増加(またはn型ナノスケールワイヤの導電度を減少)させることができる。同様に、正電荷を帯びた検体は、n型ナノスケールワイヤの導電度を増加させるか、またはp型ナノスケールワイヤの導電度を減少させる。かかる導電度の変化は、通常は可逆的であり、すなわち、もし検体が次に結合パートナーから解離または解放されると、ナノスケールワイヤは一般的に元の導電度に戻る。それ故、ナノスケールワイヤの導電率または他の特性および/またはかかる導電率または他の特性の変化を測定することにより、検体の結合パートナーとの会合および/または解離を測定することが可能になる。
【0026】
一実施形態では、本発明のナノスケールワイヤセンサにおいて約1ナノジーメンス(nS)より小さい導電度(または導電度の変化)を検出することができる。また別の実施形態では、数千nS程度の導電度を検出することができる。他の実施形態では、約10マイクロジーメンスより小さい、約1マイクロジーメンスより小さい導電度、約100nSより小さい、または約10nSより小さい導電度を検出することができる。種または検体の濃度は、フェムトモル濃度から、ナノモル、マイクロモル、ミリモルまで、さらにモル濃度からそれ以上まで検出することができる。既知の検出器をもつナノスケールワイヤを用いることにより、ここに論じられるように、ある場合には感度を単一分子まで広げることができる。非限定的な例として、以下により詳細に論じるように、(DNAのような)第1の核酸と、単一の塩基が違う第2の核酸との違いを本発明のある実施形態を用いて、例えば単一分子レベルで測定することもできる。
【0027】
また別の非限定的な例として、核酸のような電荷をもつ検体は、ナノスケールワイヤの電気的特性の変化、例えば、電圧、電流、導電率、抵抗、インダクタンス、インピーダンス、電気的変化、電磁気的変化など、を測定することにより測定できる。電荷を帯びた検体をナノスケールワイヤに対して固定化するとナノスケールワイヤの導電率の変化を引き起こすことができ、さらにある場合には、電荷を帯びた検体とナノスケールワイヤとの距離がナノスケールワイヤの導電率の変化の大きさを決定することもあり得る。
【0028】
ある場合には、検体の付加的な特性を検体と結合パートナーとの会合に基づいて決定することができる。例えば、検体と結合パートナーとの会合および/または解離速度をナノスケールワイヤを用いて測定することができる。ある場合には、会合の結合定数を測定することもできる。結合定数は、一般的に言って、検体の結合パートナーとの会合および解離それぞれの速度の比率の尺度である。
【0029】
非限定的な例として、検体および結合パートナーは、各々(同じタイプ、または異なるタイプであってもよい)核酸であってもよく、核酸間の結合定数、会合速度、および/または解離速度のような動的情報をナノスケールワイヤを用いて測定することができる。ある実施形態では、結合定数および/または解離速度は、検体の核酸と結合パートナーの核酸とのミスマッチの数に敏感であり得る。例えば、一つまたはそれ以上のミスマッチが存在する場合には、完全に相補的な核酸と比較して、相対的な解離定数が実質的に異なる可能性がある。従って、(例えば、5またはそれより少ない、4またはそれより少ない、3またはそれより少ない、2またはそれより少ない、1またはそれより少ない)比較的少数のミスマッチでさえ、本発明の様々な実施形態を用いて検出することもでき、さらにある場合には、単一分子の単一ヌクレオチドのミスマッチを本発明のナノスケールワイヤを用いて測定することができる。それ故、本発明のまた別の様態では、本発明の二つの核酸、例えば、ナノスケールワイヤ(またはその一部)に対して固定化されている第1の核酸と、第1の核酸に対して実質的または完全に相補的な第2の核酸(すなわち、検体分子)とのミスマッチを測定するためにナノスケールワイヤ用いることができる。加えて、ここに論じられるように、ある場合には、第1の核酸および第2の核酸分子の間にあり得るミスマッチも含めて、単一の核酸分子(すなわち、第1の核酸分子と第2の核酸分子)を決定することもできる。
【0030】
会合および/または解離速度、および/または検体の結合パートナーに対する結合定数、および/または相補的な核酸におけるミスマッチの測定は、任意の適切な技術を用いて測定することもできる。一組の実施形態では、ナノスケールワイヤの導電率が、例えば、導電率を測定するための電界効果トランジスタ(“FET”:Field Effect Transistor)内のナノスケールワイヤを用いることにより、時間の関数として測定される。当業者は、FETとその作製および使用法を承知しているであろう。例えば、ある例では、検体と結合パートナーとの会合および/または解離を測定するために、交流(“AC”:alternating current)信号、例えば、10mVと30mVの間の振幅、および/または17Hzと500Hzの間の周波数をもつAC信号をFETを通して用いることができる。ナノスケールワイヤの導電率は、個々の検体分子とナノスケールワイヤに対して固定化されている結合パートナーとの会合および/または解離に対応して離散的または測定可能な増分だけ変化することができ、かかる変化を会合および/または解離(または結合/解除)速度を測定するために用いることができる。通常、かかる速度は、“速度定数”(例えば、konおよびkoff)および当業者に知られた同様のパラメータのような尺度を用いて定量化される。
【0031】
検体の結合パートナーとの相互作用は、例えば、結合パートナーとの電気的な結合を通じて、ナノスケールワイヤの特性に検出可能な変化または変調を引き起こすことができる。用語“電気的に結合した”または“電気結合すること”は、検体および結合パートナーに言及して用いられる時には、電子が一方から他方に移動できるような、または一方の電気的特性(または電気的特性の変化)が他方のひとつにより(例えば、容量結合、イオン濃度の過渡的な不均衡などを通じて)決定され得る、検体、結合パートナー、および/またはナノスケールワイヤいずれかの間の会合に適用される。これには、ナノスケールワイヤにより測定できるこれら実体間の電子の流れ、または荷電状態の変化、酸化などが含まれる。例えば、電気的結合または固定化は、検体とナノスケールワイヤとの直接的な共有結合性の連結、間接的な共有結合性の連結(例えば、一つのリンカー、および/または、例えば連鎖状の、複数のリンカーを介した)結合、検体とナノスケールワイヤとの直接的または間接的なイオン結合、検体およびナノスケールワイヤ双方の粒子への直接的または間接的な結合(すなわち、粒子は、検体とナノスケールワイヤの間のリンカーとして働く)、検体およびナノスケールワイヤ双方の共通な表面への直接的または間接的な結合(すなわち、表面はリンカーとして働く)、および/または他の種類の結合または相互作用(例えば、疎水性相互作用または水素結合)を含むことができる。ある場合には、実際の共有結合は必要なく、例えば、検体または他の部分がナノスケールワイヤと単に接触するだけでもよい。ナノスケールワイヤが、検体とナノスケールワイヤの間の電子トンネリングまたは他の効果が可能なほど検体に十分近接していれば、ナノスケールワイヤと検体または他の成分の間のいかなる接触も必ずしも必要ではない。
【0032】
このように、結合パートナーをナノスケールワイヤに対して固定化することができ、ナノスケールワイヤに検出可能な変化を引き起こすことができる。ある場合には、結合パートナーは、ナノスケールワイヤから約100nm以内、ナノスケールワイヤから約75nm以内、ナノスケールワイヤから約50nm以内、ナノスケールワイヤから約20nm以内、ナノスケールワイヤから約15nm以内、またはナノスケールワイヤから約10nm以内に配置される。実際の近接度は当業者により測定することができる。ある場合には、結合パートナーは、ナノワイヤから約5nmより近くに配置される。他の場合には、結合パートナーは、ナノワイヤから約4nm以内、約3nm以内、約2nm以内、または約1nm以内に配置される。
【0033】
ある実施形態では、結合パートナーは、例えば、ここにさらに記載されるように、ナノスケールワイヤに束縛または直接的に(例えば、共有結合的に)結合される。しかし、他の実施形態では、結合パートナーはナノスケールワイヤに直接的には結合されず、別の方法でナノスケールワイヤに対して固定化される、すなわち、上述のように、結合パートナーはナノスケールワイヤに対して間接的に固定化される。例えば、結合パートナーは、リンカー、すなわち、結合パートナーおよびナノスケールワイヤがそれに対して固定化される、たとえば、共有結合的または非共有結合的に結合される種(または複数の種)、を通してナノスケールワイヤに付着させてもよい。例として、リンカーをナノスケールワイヤに直接的に結合させてもよく、さらに結合パートナーをリンカーに直接的に結合させてもよく、または結合パートナーをリンカーに直接的に結合されるのではなく、例えば、(例えば、相補的な核酸‐核酸間の相互作用におけるような)水素結合、(例えば、炭化水素鎖間の)疎水性相互作用、エントロピー相互作用などのような非共有結合を用いて、リンカーに対して固定化してもよい。リンカーは、ナノスケールワイヤに直接的に(例えば、共有結合的に)結合してもよく、またはしなくてもよい。
【0034】
結合パートナーをナノスケールワイヤに対して、随意的に一つまたはそれ以上のリンカーを通して、固定化するのに適した化学反応の非限定的な例は、以下を含む。一組の実施形態では、ナノスケールワイヤの表面を官能化することができる。例えば、表面をアルデヒド、アミン、チオールなどで官能化してもよく、それらは窒素を含む、またはイオウを含む共有結合を形成することができる。ある実施形態では、例えば、結合パートナーを、アルデヒド部分、アミン部分、および/またはチオール部分のような部分を用いてナノスケールワイヤの表面に共有結合させることができる。
【0035】
ある実施形態では、ナノスケールワイヤをアルデヒド、アミン、および/またはチオールと反応させ、ナノスケールワイヤの表面が末端アルデヒド、アミン、および/またはチオール基を(例えば、単層として)含むように、然るべき部分でナノスケールワイヤを官能化する。ある実施形態では、溶液は、シランであって、アルデヒド部分、例えば、アルデヒドプロピルトリメトキシシラン((CHO)SiCHCHCHO)のようなアルデヒド、または、例えば、(OCHR)(RO)(RO)(RO)Si、(OCHR)RXSi、(OCHR)RSi、または(OCHR)XSiのような式をもつ他のアルデヒド、但し各々のRは独立にアルキルまたは他の炭素含有部分である、を含むシラン、アミン部分を含むシラン、チオール部分を含むシランなどを含有することができ、なお各々のXは独立にハロゲンである。ナノスケールワイヤの表面のすべてまたはただ一部だけを、例えば、アルデヒド部分で、官能化してもよい(例えば、表面をアルデヒド化する前に、ナノスケールワイヤの一部を遮るまたは遮蔽することができる)。
【0036】
適切なアミンまたはチオールのさらなる非限定的な例は、アミン‐およびチオール‐官能化シラン誘導体、例えば、アミノプロピルトリメトキシシラン((CHO)SiCHCHCHNH)またはトリメトキシプロピルチオールシラン((CHO)SiCHCHCHSH)を含み、これらは、形成するためにナノスケールワイヤ表面のすべて、またはただ一部だけと反応することができ、それぞれアミンまたはチオールで官能化された表面である。ほかに適切な可能性のあるアミンは、(ZNR)(RO)(RO)(RO)Siの式をもっていてもよく、但し、各々のRは独立にアルキルまたは他の炭素含有部分であり、各々のZは独立に‐Hまたはアルキルまたは他の炭素含有部分である。ほかに適切な可能性のあるチオールは、(HSR)(RO)(RO)(RO)Siの式をもっていてもよい。ある場合には、誘導体は一つ以上の官能基をもっていてもよく、例えば、誘導体は、アミン基およびチオール基、アミン基およびアルデヒド基、チオール基およびアルデヒド基などをもっていてもよい。
【0037】
結合パートナーをナノスケールワイヤに共有結合させるために、一つまたはそれ以上の結合パートナー、例えば、核酸、タンパク質、酵素、抗体、受容体、配位子など、をアルデヒド、アミン、および/またはチオール部分と反応させてもよい。例えば、核酸または他の結合パートナーをアミン基またはマレイミド基で修飾してもよい。結合パートナーは、次に、アミンとアルデヒドまたはエポキシの間、マレイミド基とチオールなどの間の反応を通じて表面に対して固定化することができる。
【0038】
ある場合には、結合パートナーがナノスケールワイヤに束縛された後、ナノスケールワイヤの表面は、任意の未反応な部分を含めて不活性化される、例えば、それらの部分を不活性にするための一つまたはそれ以上の化合物で遮蔽される。かかる不活性化剤の非限定的な例は、例えば、未反応のアルデヒド基を遮蔽するためのエタノールアミンを含む。例えば、一つまたはそれ以上の不活性化剤を含む溶液をナノワイヤに加えてもよい。
【0039】
結合パートナーをナノスケールワイヤに付着させるのに適した化学反応のさらなる非限定的な例は、2005年8月9日に出願され、参照によりここに組み込まれるLieberらによる“ナノスケールセンサ”と題する米国特許仮出願第60/707136号に開示されている。
【0040】
本発明は、ある実施形態では、(電子センシング要素となり得る)センシング要素を含み、該センシング要素は、サンプル曝露領域およびナノスケールワイヤを含み、該ナノスケールワイヤは、検体を含むかまたは含むと思われる試料(たとえば、液体試料)中の検体の有無、および/または検体の濃度を検出することができ、および/または動的情報、例えば、検体と結合パートナーとの会合および/または解離(例えば、会合速度、解離速度、結合定数、速度定数など)を測定することができる。“試料曝露領域”は、試料曝露領域にある試料がナノスケールワイヤの少なくとも一部分にアドレスすることのできる、ナノスケールワイヤに近接近した任意の領域であってよい。試料曝露領域の例は、限定なしに、ウェル、チャンネル、マイクロ流路チャンネル、またはゲルを含む。ある実施形態では、試料曝露領域は、試料をナノスケールワイヤに近接して保持することができ、および/または試料中の検体を測定するために試料をナノスケールワイヤに差し向けることができる。ナノスケールワイヤは、サンプル曝露領域に近接して、または、その中に配置することができる。代わりに、ナノスケールワイヤは、液体または液体流路中に挿入される探針であってもよい。ナノスケールワイヤ探針は、ある例では、ナノスケールワイヤが支持および/または一体化された極細針を含むこともでき、極細針は試料曝露領域にアドレスすることができる。この配置では、極細探針を試料に挿入するために構築かつ配置されたデバイスは、極細針を囲む或いは極細針と接触した、試料曝露領域を規定する領域を含むことができ、ナノスケールワイヤは試料曝露領域にある試料にアドレスすることができ、逆も同様である。液体流路は、1997年9月18日に国際特許出願公開 WO97/33737号として公開され、参照によりここに組み込まれる“キャピラリーマイクロモールディングによる物品の形成および表面パターニングの方法(Method of Forming Articles and Patterning Surfaces via Capillary Micromolding)”と題する1997年3月14日出願の国際特許出願PCT/US97/04005号に記載されたような様々な技術を用いて、本発明(例えば、マイクロチャンネル)に用いるのに有利なサイズおよび規模につくり出すことができる。
【0041】
非限定的な例として、測定すべき検体を含むと思われる液体のような試料を、ナノスケールワイヤを含むセンシング要素の試料曝露領域に呈することができる。液体中にありナノスケールワイヤに結合できる検体および/またはナノスケールワイヤに対して固定化されている結合パートナーは、結合時に、例えば、従来のエレクトロニクスにより測定可能なナノスケールワイヤの特性の変化を引き起こす。もし流体中に検体がない時には、ナノスケールワイヤの関連する特性は実質的に変化せず、検出器で有意義な変化は測定されない。それ故、特にこの例によれば、ナノスケールワイヤの特性の変化、またはその欠如をモニターすることにより検体の有無を決定することができる。ある場合には、もし検出器で変化が測定された時には、変化の大きさは、検体の濃度の関数、および/または検体の他の関連する特性(例えば、電荷またはサイズなど)の関数であり得る。それ故、ナノスケールワイヤの特性の変化を測定することにより、試料中の検体の濃度また他の特性を測定することができる。
【0042】
本明細書では“流体”は、流れる傾向をもち、容器の輪郭にかたちを合わせる物質に広く適用される。一般的に、流体は静的せん断応力に耐えることのできない材料である。流体にせん断応力が加わると、連続的かつ永続的な変形を生じる。一般的に、流体は、液体と気体を含むが、しかし、自由流動性の固体粒子、粘弾性流体などを含んでもよい。
【0043】
ナノスケールワイヤに関する特性を測定できる任意の検出器を検出器が存在するところに用いることができ、検体を測定するためにこれを使用することができる。特性は、電子的、光学的などであってもよい。ナノスケールワイヤの電子的特性は、先に述べたように、例えば、導電率、抵抗などであってもよい。例えば、電子的または磁気的特性(例えば、電圧、電流、導電率、抵抗、インピーダンス、インダクタンス、電荷など)の変化を測定するために検出器を構築することができる。検出器は、一般的に、電源と電圧計および/または電流計とを含む。一実施形態では、1nSより小さい導電度を検出することができる。ある場合には、数千nS程度の導電度を検出することができる。種または検体の濃度は、マイクロモル以下からモル濃度さらにそれ以上まで検出することができる。ナノスケールワイヤを既知の検出器とともに用いることにより、感度を、単一分子まで、および/または単一核酸分子内の単一ミスマッチまで広げることができる。
【0044】
また別の例として、同じまたは異なる検体を検出するために、検体の流速を測定するためになど、一つまたはそれ以上の異なるナノスケールワイヤが同じマイクロ流路を(例えば、異なる位置で)横切っていてもよい。また別の実施形態では、例えば、極細探針、ディップ・エンド・リード探針などにおける、複数の分析要素のひとつを形成するために、一つまたはそれ以上のナノスケールワイヤをマイクロ流路内に配置することができる。分析要素の探針は、ある実施形態によれば、埋め込み可能にでき、数個の検体を同時にリアルタイムで検出可能にできる。また別の実施形態では、カセットまたはラボ・オン・チップデバイスのためのマイクロアレイ内の分析要素を形成するために、一つまたはそれ以上のナノスケールワイヤをマイクロ流路内に配置してもよい。当業者は、高スループットの化学分析およびスクリーニング、コンビナトリアル創薬などに適したカセットまたはラボ・オン・チップデバイスの例を承知しているであろう。
【0045】
本発明のまた別の一組の実施形態は、ナノスケールワイヤの電気的特性の変化を測定するために構築かつ配置された一つまたはそれ以上のナノスケールワイヤと検出器とを含む物品を提供する。例えば、(ある場合には配列されていてもよい)ナノスケールワイヤの少なくとも一部は、検体を含むまたは含むと思われる試料によりアドレスすることができる。語句“流体によりアドレスすることができる”は、流体中に存在すると思われる検体がナノスケールワイヤと相互作用できるように、ナノスケールワイヤに対して配置される流体の能力として定義される。流体は、ナノスケールワイヤに対して近接していてもよく、または接触していてもよい。
【0046】
かかるシステム、およびかかるシステムを(例えば、“誤検出”事象を検出するために、多数の検体を同時および/または順次に検出するために、日付をリアルタイムおよび/または準リアルタイムに検出するために、検体の結合を時間の関数として検出するために、多数のナノスケールワイヤを含むアレイおよび/またはカセットを使用するために、コンピュータ制御および/または集積化デバイスのために、など)用いる技術のさらなる例は、Lieberらによる“ナノスケールセンサ(Nanoscale Sensors)”と題する2005年5月25日出願の米国特許出願第11/137784号、Lieberらによる“ナノスケールワイヤの方法およびデバイス(Nanoscale Wire Methods and Devices)”と題する2006年4月7日出願の米国特許仮出願第60/790322号、またはLieberらによる“ナノスケールセンサ(Nanoscale Sensors)”と題する2005年8月9日出願の米国特許仮出願第60/707136号に開示されており、各々は参照によりここに組み込まれる。
【0047】
本発明のある様態は、例えば、結合パートナーまたは他の反応体を固定化できる部分を含む、ナノスケールワイヤを作製するための技術を指向する。本発明に用いるためのナノスケールワイヤおよび他の導体または半導体を選択する基準は、ある例では、ナノスケールワイヤ自体が検体と相互作用できるかどうか、ナノスケールワイヤの表面に然るべき結合パートナーを容易に付着させることができるかどうか、および/または然るべき結合パートナーがナノスケールワイヤの表面近くにあるかどうかに基づく。適切な導体または半導体の選択についてはナノスケールワイヤを含めて本明細書が役立ち、当業者には明白かつ容易に再現が可能であろう。
【0048】
一様態では、本発明はナノ構造を調整する方法を提供する。一組の実施形態では、方法は、第1材料が第2材料の少なくとも一部に拡散することを可能にすることを含み、随意的に新しい化合物をつくり出すことを含む。例えば、第1および第2材料は、各々が金属または半導体とすることができ、一方の材料は金属とすることができかつ他方の材料は半導体とすることができる(例えば、金属‐半導体化合物が形成される)など。一組の実施形態では、半導体はアニールして金属にすることができる。例えば、いくらかの金属元素が半導体に拡散できるように、またはその逆になるように、半導体の一部および/または金属の一部を加熱することができる。ある実施形態では、例えば、2005年10月6日に国際特許出願公開WO 2005/093831号として公開されたLieberらによる“金属‐半導体化合物を含むナノ構造(Nanostructures Containing Metal‐Semiconductor Compounds)”と題する2005年2月14日出願の国際特許出願PCT/US2005/004459号、またはLieberらによる“ナノスケールセンサ(Nanoscale Sensors)”と題する2005年8月9日出願の米国特許仮出願第60/707136号、各々は参照によりここに組み込まれる、に開示されるように、金属電極(例えば、ニッケル、金、銅、銀、クロム電極など)を半導体のナノスコピックなワイヤと物理的に接触させて配置し、次に半導体の少なくとも一部が金属の少なくとの一部中に拡散するようにアニールすることができ、随意的に金属‐半導体化合物が形成される。例えば、半導体は、金属とともに約300℃、約350℃、約400℃、約450℃、約500℃、約550℃、約600℃などの温度で、少なくとも約30分、少なくとも約1時間、少なくとも約2時間、少なくとも約4時間、少なくとも約6時間などの時間アニールすることができる。かかるアニールにより、例えば、金属と半導体の間のより低い接触抵抗またはインピーダンスが得られる。
【0049】
本明細書では、“金属‐半導体化合物”は、半導体と組み合わされた少なくとも一つの金属を含む化合物である。本発明の金属‐半導体化合物において、化合物の少なくとも一部は、化学量論的に規定される比率で存在する金属および半導体を含む、すなわち、金属原子および半導体原子は、化学反応で規定される、すなわち、化合物中で金属原子および半導体原子が原子的に相互作用し、元素の存在比率が化学の結合原理(例えば、配位化学、原子および分子の軌道相互作用並びに構造、結晶充填、および/または同様のもの)により支配されることで規定される整数比で(すなわち、原子スケールで)化合物中に存在する。これは、物質中における二つまたはそれ以上の原子が単に混ぜ合わされて原子が任意の比率で混合でき、その比率は原子間の化学量論的な相互作用では決定されない合金または混合物、および、例えば、材料に対するドーパントのイオン照射により、ホスト材料中のドーパンドの非化学量論的な量が導入ドーパント量で支配されるドーピング、とは区別されるべきである。むしろ、金属‐半導体化合物中の金属原子および半導体原子は、規定された仕方で原子レベルで相互作用し、それ故に化合物中に金属原子および半導体原子が整数比で存在する金属‐半導体化合物が結果として生じる、すなわち、その比率は、化合物中における金属原子および半導体原子の原子相互作用で規定される。それ故に金属原子および半導体原子の化学量論比は、原子レベルで(すなわち、化合物中の任意の位置で)常に同じである。一例として、電荷中立のために、化合物中の金属原子および半導体原子の化学量論比が、例えば、Mを金属、Zを半導体としてMZ、MZ、M、MZ、Mなどとなるような、金属原子および半導体原子の間のイオン電荷の相互作用もあり得る。具体的な非限定の例は、ニッケルシリサイド、NiSiである。ある場合には、一つより多い種類の金属の原子および/または一つより多い半導体の原子が金属‐半導体化合物中に存在してもよい。もちろん、化合物中の二つまたはそれ以上の原子の比率の測定は、実験誤差および他の実際的制約から、必ずしも常に正確ではないことに留意すべきである。それ故にある場合には、そのように測定された比率は、実験による測定が整数比から幾分ずれたとしても実際には化学量論的であり得る。一例として、金属‐半導体化合物に対して実際に測定される比率は、化学量論的な整数比の約10%または約5%以内のこともあり得る。
【0050】
一組の実施形態では、金属‐半導体化合物中の金属は、遷移金属、例えば、第IB族、第IIB族、第IIIB族、第IVB族、第VB族、第VIB族、第VIIB族、または第VIIIB族である。ある場合には、第VIIIB族金属、例えば、ニッケル、鉄、パラジウム、白金、イリジウムなど、は金属‐半導体化合物中で特に有用であり得る。
【0051】
一実施形態では、第1材料を(例えば、堆積の既知の形態により)第2材料に隣接または近接して配置し、第1材料の原子が第2材料の少なくとも一部に拡散することを可能にする。第1および第2材料の少なくとも一つは、ナノスケールの材料とすることができる。それ故、一例として、図1Aにおいて、第1材料51は第2材料52に隣接して配置される。第1材料は、第2材料に接触するように、および/または第1材料からの原子が第2材料中に拡散できるように配置することができる(例えば、第1材料と第2材料の間に介在する材料またはスペーサーが存在してもよい)。図1Bに示すように、第1材料が次に第2材料の少なくとも一部中に拡散できるようにする。十分な拡散が生じた時(すなわち、第1材料の所望の量が第2材料中に拡散した時)、第1材料(または少なくともその一部)は、図1Cに示すように、随意的に除去してもよい。ナノスケ−ルワイヤにおいて、拡散は、軸方向、および/またはナノワイヤに沿って長手方向にでき、さらにある場合には、(例えば、いずれかまたは両方向の)拡散速度は、ナノスケールワイヤのサイズまたは直径を制御することにより制御できる。例えば、ある場合には、より細いナノスケールワイヤは、より高い拡散速度をもたらすことができる。
【0052】
一例として、金属‐半導体化合物を含むナノスケールワイヤをつくり出すために、金属を半導体に隣接または近接して(例えば、堆積の既知の形態により)配置することができ、さらに、例えば、ナノスケールワイヤ中に一つまたはそれ以上のヘテロ接合をつくり出すために、金属元素を半導体材料の少なくとも一部に拡散させることができる。金属はある場合にはバルク状金属、すなわち、少なくともナノスコピックの寸法(例えば、少なくとも1nmの最小寸法)からなる体積をもつ金属であってもよい。
【0053】
ある場合には、金属の半導体への拡散は、例えば、高圧および/または高温、例えば、少なくとも約500℃、少なくとも約550℃、少なくとも約600℃、少なくとも約700℃、またはある場合にはそれ以上の温度を印加することにより開始および/または促進することができる。拡散速度はアニール温度および/またはアニール時間により制御でき、拡散の量および/または長さは、ありふれた実験を用いて、特定の応用に応じて容易に最適化することができる。ある例では、金属原子の半導体中への実質的な拡散は、温度および/または圧力の上昇または変更なしには実質的に生じないこともある。ある場合には、金属原子の半導体(または、少なくともその一部)への拡散は、金属‐半導体化合物が(例えば、化学反応により)形成されるまで、および/または金属原子の半導体原子に対する化学量論比が確立した時まで進行する。特定の例として、もし金属がニッケルのような遷移金属であり、半導体材料がシリコンナノスケールワイヤであれば、ニッケルのシリコンナノスケールワイヤ中への拡散は、シリコンナノスケールワイヤ(または、少なくともニッケルにさらされたナノスケールワイヤの部分)がニッケルシリサイドに変換されるまで進行し得る。他の場合には、しかし、金属原子および半導体原子が化学量論比にないこともあり得る。ある例では、金属の半導体中への拡散は、金属‐半導体化合物の形成または化学量論的平衡が成立する前に停止することもでき、それ故、一実施形態では、ナノスケールワイヤは半導体原子に対して化学量論比にない金属原子を含むこともあり得る。金属の半導体への拡散は、SEM、TEM、AFM、EFMのような当業者に知られた技術を用いて測定することができる。
【0054】
金属が半導体中に拡散した後に、ある場合には、例えば、金属エッチング液のようなある種の適用により、過剰の金属を半導体から除去することができる。例えば、半導体に拡散した金属がニッケルであれば、適切なエッチング液は、硝酸、硫酸、塩酸、および/または(マサチュセッツ州ダンバースのTranseneが市販している)TFBまたはTFGのようなニッケルエッチング液を含んでもよい。ある例では、過剰な金属の半導体からの除去は、温度および/または圧力の上昇により促進できる。
【0055】
それ故、一実施形態では、金属のナノスケールワイヤへの拡散により決められる第1部分と、金属が拡散しなかった第2部分とを有するナノスケールワイヤを調整することができる。例えば、図1Dに示すように、第1部分および第2部分を有する半導体10は、ナノスケールワイヤの一部を金属15にさらし、さらに第1部分11および第2部分12をつくり出すために金属イオンを半導体中に拡散させることにより調整することができる。第1部分11は、金属の半導体への拡散により規定され、一方で第2部分12は金属のない半導体の部分で規定され、かかる部分をナノスケールワイヤの半径方向および/または長手方向に配置することができる。
【0056】
該部分のサイズは、例えば、半導体の温度および/またはアニール時間を制御することにより制御できる。例えば、金属を半導体に拡散させるためにナノスケールワイヤを加熱し、次に金属が半導体中に所定の距離を拡散した時点でナノスケールワイヤを冷やすことにより、第2部分のサイズを望み通りに制御することができる。例えば、図1Dを参照して、半導体の第1部分11のサイズは、金属15から約900nm以下、約750nm以下、約500nm以下、約300nm以下、約100nm以下、約50nm以下、約30nm以下、約10nm以下などとすることができ、および/または半導体の第2部分12のサイズは、約900nm以下、約750nm以下、約500nm以下、約300nm以下、約100nm以下、約50nm以下、約30nm以下、約10nm以下などとすることができる。ある場合には、第1および/または第2部分は、金属15から測った半導体10の全体長に対して測定することができる。例えば、半導体の約10%より小さい、約20%より小さい、約30%より小さい、約40%より小さい、約50%より小さい、約60%より小さい、約70%より小さい、約80%より小さい、約90%より小さいなどのところが第1部分を含むように、半導体10中に金属を拡散させることができる。
【0057】
上述したように、金属の半導体中への拡散は、例えば、高圧および/または高温、例えば、少なくとも約500℃、少なくとも約550℃、少なくとも約600℃、少なくとも約700℃、またはある場合にはそれより高い温度を印加することにより促進できる。ある例では、金属原子の半導体中への実質的な拡散は、温度および/または圧力の増加または変更なしには実質的に生じないこともあり得る。
【0058】
また別の組の実施形態では、ナノ構造は、第2材料の一部を第1材料にさらすことにより調整することができる。第1材料は、第1材料に隣接または近接した第2材料の領域に拡散することができ、一方で第1材料に隣接または近接していない第2材料の領域は実質的に第1材料がないままである。一例として、図1Eに示すように、ナノ構造がマスクで覆われた一つまたはそれ以上の領域60と、ナノ構造にマスクがない一つまたはそれ以上の領域65とを規定するために、マスク38をナノ構造37(または他のナノ構造)上にパターニングすることができる。マスクは、規定された任意のパターンを有することができ、特定の応用に応じて、ナノ構造上に2‐または3‐次元パターンを規定することができる。マスクを形成するために、任意の適切な材料を使うことができ、例えば、当業者に知られたフォトリソグラフィ技術によりマスクを規定するために、例えば、ナノ構造上にフォトレジストを形成してもよい。非限定的な例として、ナノワイヤに沿って一連のヘテロ接合をつくり出すために、一連の開口をもつフォトレジストをナノワイヤ上に形成することができ、或いは、ナノワイヤ(または他のナノ構造)上に形成しない場合には、ナノ構造上に材料が付着するのをマスクできるように、ナノワイヤに対して近接して配置することができる。また別の例として、マスクは、ナノスケールワイヤ、例えば、ナノスケールワイヤ、ナノチューブ、コア/シェルのナノスケールワイヤなど、から形成することができる。例えば、マスクとして用いるナノスケールワイヤは、ナノワイヤ(または他のナノ構造)の上にまたは近接して配置することができ、それ故、マスクとして用いられるナノスケールワイヤは、材料がナノワイヤに付着するのをマスクすることができる。
【0059】
マスクをナノ構造の第2材料上に、またはナノ構造とそこに堆積される材料の供給源との間に配置した後、第1材料をマスク上に堆積することができる。マスクのないナノ構造の領域65は、その上に堆積された第1材料をもつことになり、一方でマスクで覆われたナノ構造の領域60は、第1材料にさらされない。第1材料は、それ故、第1材料に隣接または近接した第2材料の部分中に拡散することができる。マスクは、第1材料の第2材料の部分中への拡散の前または後に除去することができる。拡散の後、マスクで規定された、一つまたはそれ以上のヘテロ接合67を有するナノ構造をつくり出すことができる。
【0060】
一組の実施形態では、反応体または結合パートナーは、ナノスケールワイヤのすべてに対して、またはナノスケールワイヤのただ一部だけに対して固定化することができ、例えば、ナノスケールワイヤの第2部分に対して固定化することができる。ある場合には、一つ以上の反応体および/または結合パートナーをナノスケールワイヤの第2部分、および/またはナノスケールワイヤの異なる部分に固定化することができる。
【0061】
それ故、ある場合には、金属‐半導体化合物を備えた第1部分と、金属‐半導体化合物を含まない第2部分を有するナノスケールワイヤを調整することができる。ナノスケールワイヤの第2部分(または、“チャンネル”)に対して固定化されるのは、上述したように、例えば、直接的に、或いは、例えばリンカーを介して間接的に、付着される一つまたはそれ以上の結合パートナーとすることができる。ナノスケールワイヤの第2部分のサイズをナノスケールワイヤの第1部分に対して最小化することは、例えば、第2部分の面積が小さく、そこに固定化される結合パートナーの数が比較的少ないために、ある場合には、核酸のような検体(例えば、その動力学的または他の動的情報)の測定を容易にすることができる。ある場合には、ナノスケールワイヤの他の部分(例えば、結合パートナーを有する、ナノスケールワイヤの他の部分)への結合事象は、それらの他の部分の電気的特性の変化に影響し得ない(または、より少ないかごく僅かな程度で影響することもある)(一例として、金属‐半導体化合物を有するナノスケールワイヤにおいて、金属‐半導体化合物のそれらの部分は金属的とすることができ、検体と、ナノスケールワイヤのそれらの部分に対して固定化されている結合パートナーとの結合によって、ナノスケールワイヤの電気的特性は実質的に変化し得ない)。加えて、ナノスケールワイヤの第2部分へのコンタクトのサイズおよび/またはそこからの静電界の影響を最小化することにより、検体のナノスケールワイヤへの結合による信号を高めることができる。それ故、例えば、ナノスケールワイヤの第2部分に結合した結合パートナーの少ない数および/または検体からの増強された信号により、検体のただ一つの分子(または少数の分子)の結合を、例えば、ナノスケールワイヤの電気的特性(例えば、抵抗または導電率)の変化として検出することができる。この感度の説明については、例5も参照。それ故、ある場合には、核酸のような検体のナノスケールワイヤへの単一結合事象を測定することができ、さらにある場合には、類似した検体の素性を、例えば、結合定数、会合および/または解離速度などの測定を通じて、例えば、結合特性の相違から、決定することができる。
【0062】
加えて、DNAのような核酸に関するある場合には、ナノワイヤに対して固定化されている結合パートナーに結合した検体は、他の電荷をもつ検体を“駆逐する”、または、それらが近くの結合パートナーに結合するのを阻止することがあり得る。この“電荷分離”効果は、例えば、“デバイの遮蔽長”を測定することにより、測定できる。当業者に知られるように、デバイの遮蔽長は、特定の溶液中の特定の検体に対して、たとえば、溶液中の他イオンの存在により変化し得る。一例として、DNAに対しては、通常のバッファ溶液中のデバイの遮蔽長は、30nmから100nmの間にあり得る。遮蔽効果により、ただ少数の検体のみがナノスケールワイヤに結合することができ、さらにある場合には、結合パートナーを有するナノスケールワイヤの部分が十分に小さければ、例えば、デバイの遮蔽長と同じ桁またはさらに小さければ、一つの検体分子だけ(例えば、一つの核酸分子)がナノスケールワイヤに対して固定化され得る。従って、一実施形態では、溶液は、検体と、検体に対する結合パートナーが固定化されている部分を含むナノスケールワイヤとを含むことができ、検体のデバイの遮蔽長は結合パートナーを有するナノスケールワイヤの部分の最大寸法より大きい。
【0063】
発明のある様態は、個々のナノスケールワイヤを作製または合成するために様々な技術を活用することができる。例えば、ある実施形態では、個々のナノスケールワイヤを合成するのに金属触媒CVD(“化学気相成長”:chemical vapor deposition)を用いることができる。個々のワイヤを直接に表面上におよびバルク状に調整するのに有用なCVD合成手順は広く知られており、当業者により容易に実施できる。
【0064】
ナノスケールワイヤの成長に使用できる一方法は、触媒化学気相成長(“C‐CVD”:catalytic chemical vapor deposition)である。C‐CVD法では、反応分子は、レーザー蒸発からとは対照的に、気相から形成される。C‐CVDでは、気相の反応物質にドーピング成分(例えば、p型およびn型ドープ領域に対してジボランおよびホスファン)を導入することにより、ナノスケールワイヤにドープすることができる。ドーピング濃度は、複合ターゲットに導入されるドーピング化合物の相対量を制御することにより制御することができる。
【0065】
ナノスケールワイヤは、レーザー触媒成長によっても成長できる。例えば、Morales,et al.,“A Laser Ablation Method for the Synthesis of Crystalline Semiconductor Nanowires,”Science,279:208‐211(1998)参照。レーザー触媒成長では、ドーパントはナノスケールワイヤの気相成長の間に制御性よく導入することができる。所望の材料(例えば、シリコンまたはリン化インジウム)および触媒材料(例えば、ナノ粒子触媒)からなる複合ターゲットのレーザー蒸発により高温、高濃度の蒸気がつくり出される。蒸気は、緩衝ガスとの衝突を通じて液体状のナノクラスターに凝縮する。成長は、液体状のナノクラスターが所望の相で過飽和になった時に開始でき、反応物質が利用できる限り継続できる。成長は、ナノスケールワイヤが高温の反応ゾーンから出た時、または温度が低下した時に停止できる。ナノスケールワイヤは、成長中に別の半導体の反応物質にさらにさらすことができる。もし(例えば、ナノクラスターがいかに均一かによるが10〜20%より小さい)均一な直径のナノクラスターを触媒クラスターとして用いると、均一なサイズ(直径)分布をもつナノスケールワイヤを生成することができ、ナノスケールワイヤの直径は触媒クラスターのサイズで決定される。
【0066】
ナノスケールワイヤのようなナノスケールの半導体を生成する他の技術も、本発明の範囲内である。例えば、様々な材料のいずれかからなるナノスケールワイヤはvapor‐solidプロセスを通じて気相から直接に成長することができる。加えて、ナノスケールワイヤは、蒸着により表面の段差端、または他のタイプのパターン付き表面の上に生成することもできる。さらに、ナノスケールワイヤは、任意の一般的に細長いテンプレートの中または上に気相堆積により成長できる。多孔質膜は、多孔質シリコン、陽極酸化アルミナ、2ブロック共重合体、または他の任意の同様の構造であってもよい。天然のファイバは、DNA分子、タンパク質分子 カーボンナノチューブ、または他の任意の細長い構造であってもよい。上記の技術に対して、原材料は、溶液または気体とすることができる。
【0067】
ある場合には、ナノスケールワイヤは、形成後にドーピングすることができる。ナノスケールワイヤの合成後にドーピングする一技術では、実質的に均質な組成をもつナノスケールワイヤが最初に合成され、その後に様々なドーパントが合成後にドーピングされる。かかるドーピングは、ナノスケールワイヤ全体にわたって生じてもよく、または、ナノスケールワイヤの一つまたはそれ以上の部分、例えば、組成の異なる多数の領域を有するワイヤで生じてもよい。それ故、特定の非限定的な例として、半導体のナノスケールワイヤを調整し、次に、ナノスケールワイヤの一つまたはそれ以上の部分をドーパントにさらし、かくして一連のドープされない半導体領域とドープされた半導体領域とを有する半導体ナノスケールワイヤが結果として生じる。
【0068】
一組の実施形態では、本発明は、単結晶のナノスケールワイヤ(またはナノ構造をもつ材料)を含む。本明細書では、“単結晶”品(例えば、半導体)は、品全体にわたって共有結合、イオン結合、またはそれらの組み合わせを有する品である。かかる単結晶品は、欠陥を含むこともあるが、イオン結合または共有結合しているのでなく単に相互に近接近しているだけの一つまたはそれ以上の結晶を含む品とは区別されるべきものである。
【0069】
本発明の様々な実施形態は、表面上へのナノスケールワイヤの組み立て、または制御された配置を含む。ナノスケールワイヤの配置のために、例えば、半導体を含む基板、金属を含む基板、ガラスを含む基板、ポリマーを含む基板、ゲルを含む基板、薄膜である基板、実質的に透明な基板、非平面な基板、フレキシブルな基板、彎曲した基板、など任意の基板を用いることができる。ある場合には、組み立ては、電界を用いてナノスケールワイヤを配列することにより実施できる。他の場合には、組み立ては、懸濁したナノスケールワイヤを含む流体を、ナノスケールワイヤが配置されることが望まれる位置に向けて、さらに向きを合わせて向かわせるための、流体の流れを方向づける器具を配置することを含む仕組みを用いて行うことができる。
【0070】
ある場合には、ナノスケールワイヤ(または他のナノ構造)は、基板の表面上に形成される、および/または基板上の凹凸により規定される。ある例では、ナノスケールワイヤのようなナノ構造は、次のように形成される。ナノスケールワイヤまたは他のナノ構造のようなパターンを規定するためにスタンプ、または、他の塗布器を用いて、基板にインプリントを行う。スタンプまたは他の塗布器を取り外した後、インプリント可能な層の少なくとも一部を、例えば、反応性イオンエッチング(RIE:reactive ion etching)、または他の既知の技術のようなエッチング工程を通じて除去する。ある場合には、インプリント可能な材料のない基板の部分が露出されるのに十分なインプリント可能な材料を基板から除去することができる。その後、金属または他の材料、例えば、金、銅、銀、クロムなど、を基板の少なくとも一部に堆積することができる。ある場合には、次に“リフトオフ”ステップを実施してもよく、インプリント可能な材料の少なくとも一部が基板から除去される。インプリント可能な材料の上に堆積された金属または他の材料は、インプリント可能な材料の除去とともに除去でき、例えば、一つまたはそれ以上のナノスケールワイヤを形成することができる。表面に堆積された構造は、ある場合には、一つまたはそれ以上の電極と接続することができる。基板は、例えば、半導体、金属、ガラス、ポリマー、ゲルなどを含めて、インプリント可能な材料を保持できる任意の適切な基板であってもよい。ある場合には、基板は、薄膜、実質的に透明、非平面状、フレキシブルおよび/または彎曲しているなどであってもよい。
【0071】
ある場合には、複数の実質的に整列したナノスケールワイヤを有する表面を供給すること、および複数のナノスケールワイヤの一つまたはそれ以上の一部分を表面から除去することにより、ナノスケールワイヤのアレイを生成することができる。表面に残ったナノスケールワイヤは、次に一つまたはそれ以上の電極と結合することができる。ある場合には、ナノスケールワイヤは相互に接触するように配置される、他の例では、しかし、整列したナノスコピックなワイヤは実質的に物理的に接触しないピッチをもってもよい。
【0072】
ある場合には、ナノスケールワイヤは、フロー技術、すなわち、一つまたはそれ以上のナノスケールワイヤを流体により基板に運ぶことができる技術、を用いて表面に近接して配置される。ナノスケールワイヤ(または任意の他の細長い構造)は、表面上にナノスケールワイヤの溶液の流れを誘起することにより配列させることができ、流れは、チャンネル流または任意の他の適切な技術による流れを含んでもよい。制御された位置と周期性をもつナノスケールワイヤのアレイは、基板の表面をパターニングすること、および/またはナノスケールワイヤの表面が異なる官能性をもつように処理することにより生成することができ、位置と周期性の制御は、パターンをもつ表面とナノスケールワイヤとの間に特異的に働く相補的な力を設計することにより達成できる。ナノスケールワイヤは、ラングミュア・ブロジェット(LB:Langmuir‐Blodgett)トラフを用いて組み立てることもできる。ナノスケールワイヤを最初に表面処理し、さらに液相の表面に分散させることができ、ラングミュア・ブロジェット膜が形成される。ある場合には、この液体は界面活性剤を含んでいてもよく、これにより、ある場合には、ナノスケールワイヤの凝集が低減される、および/またはナノスケールワイヤが相互作用する能力が低減される。ナノスケールワイヤは、この表面を圧縮するまたは表面積を低減することにより、(平行アレイまたはファイバーのような)異なるパターンに配列することができる。
【0073】
また別の配置は、ナノスケールワイヤを選択的に引き寄せない領域に囲まれたナノスケールワイヤを選択的に引き寄せる領域を含む、基板上の表面を形成することを含む。表面は、電子ビームパターニング、“ソフト‐リソグラフィ”のような既知の技術を用いてパターニングすることができる。“ソフト‐リソグラフィ”は、1996年7月26日に国際特許出願公開WO 96/29629号として公開された“表面上のマイクロコンタクトプリンティングおよび派生物品(Microcontact Printing on Surfaces and Derivative Articles)”と題する1996年3月1日出願の国際特許出願PCT/US96/03073号、または“表面上のマイクロスタンプされたパターンの形成と派生物品(Formation of Microstamped Patterns on Surfaces and Derivative Articles)”と題する1996年4月30日に発行された米国特許第5512131号、各々が参照としてここに組み込まれる、に記載されている。さらなる技術は、参照によりここに組み込まれる“分子ワイヤに基づくデバイスとそれらの作製方法(Molecular Wire‐Based Devices and Methods of Their Manufacture)”と題する1999年7月2日出願の米国特許出願第60/142216号に記載されている。流体流路は、1997年9月18日に国際特許出願公開WO 97/33737号として公開され、参照によりここに組み込まれる“キャピラリーマイクロ成型による物品形成および表面パターニングの方法(Method of Forming Articles and Patterning Surfaces via Capillary Micromolding)”と題する1997年3月14日出願の国際特許出願PCT/US97/04005号に記載されたような様々な技術を用いて、表面上にナノスケールワイヤを配置するのに有利なサイズの規模でつくり出すことができる。他の技術は、参照によりここに組み込まれる“3次元状アレイのチャンネルネットワークを含むマイクロ流体システム(Microfluidic Systems Including Three‐dimensionally Arrayed Channel Networks)”と題する2003年11月11日発行の米国特許第6645432号に記載されたものが含まれる。
【0074】
SAMから得られる表面以外の化学的にパターニングされた表面を用いることができ、表面を化学的にパターニングするための多くの技術が知られている。表面を化学的にパターニングするまた別の例としてミクロ相で分離されたブロック共重合体構造があり得る。これらの構造は、高密度の薄板状の相からなる積層を提供することができ、これらの相の切り口には一連の“レーン”が現れ、各レーンは単一層をなしている。ナノスケールワイヤを基板および電極上に組み立てるのに、ある場合には、2分子認識を役立てることができる。例えば、一方の生物学的結合パートナーをナノスケールワイヤ表面上に、他方を基板または電極上に、物理吸着または共有結合的な連結により固定化することができる。ナノスコピックなワイヤの基板上への組み立てに導く一例の技術は、“SAM:self‐assembled monolayer”すなわち自己組織化単分子膜、を用いることによる。任意の様々な基板およびSAMを形成する材料は、1996年7月26日に国際特許出願公開WO 96/29629号として公開され、参照によりここに組み込まれる“表面上のマイクロコンタクトプリンティングおよび派生物品(Microcontact Printing on Surfaces and Derivative Articles)”と題する1996年3月1日出願の国際特許出願PCT/US96/03073号に記載されたようなマイクロ接触プリンティング技術とともに用いることができる。
【0075】
ある場合には、ナノスケールワイヤのアレイは、例えば、スタンプ技術を用いて、他の基板に移すこともできる。ある例では、ナノスケールワイヤは、相補的な相互作用を用いて組み立てることができる、すなわち、一つまたはそれ以上のナノスケールワイヤを基板上に配置するのに、一つまたはそれ以上の相補的な化学的、生物学的、静電的、磁気的または光学的相互作用が用いられる。ある場合には、ナノスケールワイヤを表面に近接して配置するために、物理的なパターンを用いることができる。例えば、ナノスケールワイヤを物理的なパターンを用いて、例えば、表面段差の角を用いて、または基板上の溝に沿って表面上に配置することができる。
【0076】
また別の組の実施形態では、ナノスケールワイヤの少なくともいくつかを第2基板と接触させることにより、例えば、基板を相互に対して移動または“スライド”させることにより、ある場合にはナノスケールワイヤの第2基板上への配列を引き起こすことにより、ナノスケールワイヤを基板に移すことができる。例えば、一実施形態では、一つまたはそれ以上のナノスケールワイヤを一方から他方に移すために、複数のナノスケールワイヤをその上に有する第1基板を第2基板と接触させる。次に、ナノスケールワイヤの少なくともいくつかが第1基板から第2基板に移るように第1基板を第2基板に対して移動またはスライドさせる(および/または第2基板を第1基板に対して移動させる)ことができる。ナノスケールワイヤは、イオン相互作用、疎水性相互作用、ファン・デル・ワールス相互作用などを通じて第2基板に対して固定化できる。さらなる詳細、および本発明に有用なナノスケールワイヤを移す付加的な方法は、2006年4月7日に出願され、参照によりここに組み込まれる“ナノスケールワイヤの方法およびデバイス(Nanoscale Wire Methods and Devices)”と題する米国特許仮出願第60/790322号に論じられている。
【0077】
本発明は、広範な応用に役立つ。例えば、ある様態では、ここに記載される技術のいずれも、例えば、ガンまたは他の病状、毒素または他の環境要因、ウイルスなどを検出または診断するための、例えば、分析におけるように、ウイルス、細胞などの測定に用いることができる。具体的な非限定の例として、特定のDNAまたはRNAを検査中のウイルスから同定することができ、一方で既知の結合パートナーとのミスマッチの数からそのウイルスのウイルス株を示すことができる。また別の例として、(例えば、DNAまたはRNA中の)核酸の突然変異を、上記した本発明の様々なシステムと方法を用いて測定することができる、例えば、もし核酸に対する結合パートナーの配列が知られていれば、突然変異の度合いを、存在するミスマッチの数により示すことができる。核酸の試料は、たとえば、ヒトのような被検対象から採取することができる。さらなる別の例として、検体を結合パートナーと相互作用させることにより検体の特性を測定することができ、相互作用は、ある仕方で分析または測定、例えば、定量化することができる。ある場合には、例えば、ナノスケールワイヤおよび/または結合パートナーを検体に曝露した後に、ナノスケールワイヤの特性(例えば、導電度のような電気的特性)を測定することにより相互作用の度合いまたは量(例えば、結合定数)を決定することができる。
【0078】
また別の組の実施形態は、センシング領域の、マイクロアレイのような、アレイを指向する。ある場合には、センシング領域の少なくともいくつかは各々、個々にアドレス可能な一つまたは複数のナノスケールワイヤを含む。ある例では、ナノスケールワイヤの少なくともいくつかは、結合パートナーおよび/または上記のような反応体を含む。例えば、一実施形態では、複数の異なる検体、例えば、(ある場合には、上記したように、少数のミスマッチを除いて類似した核酸、例えば、SNPであってもよい)複数の異なる核酸を検出することができるように、いくつか或いはすべてのナノスケールワイヤは、固定化されている異なる結合パートナーを有することができ、随意的に、各々のナノスケールワイヤは、独立にアドレス可能および/または測定可能とすることができる。
【0079】
非限定的な例として、被験試料からのDNAを、SNPがしばしば起こる核酸領域に対する結合パートナー(例えば、それらの領域に相補的な核酸)を有するナノスケールワイヤのアレイに曝露することができ、DNA中のSNP対立遺伝子の存在、例えば、DNAの特定の部分がナノスケールワイヤアレイ上の結合パートナーと結合するか否か、および/またはどの程度結合するかを決定することができる。例えば、野生型SNP対立遺伝子のような第1のSNP対立遺伝子をもつ第1被験試料からのDNAは、アレイ上のナノワイヤに対して固定化されている核酸結合パートナーと完全に相補的かもしれず、一方で第2被験試料からのDNAは、核酸結合パートナーに対して一つまたはそれ以上のミスマッチを示すかもしれないが、かかるミスマッチは、例えばここに記載されるように、検出することが可能である。
【0080】
ある実施形態では、本発明は、少なくともいくつかが一つまたはそれ以上のナノスケールワイヤを備えた、複数のセンシング領域を含むマイクロアレイを含む。マイクロアレイは、センシング領域のいくつかまたはすべてを含めて、センサデバイスにおけるセンシング要素を規定する。少なくともいくつかのナノスケールワイヤは、マイクロアレイのセンシング領域が曝露される試料中に存在すると思われる検体を測定することができる、例えば、ナノスケールワイヤは、検体と相互作用することのできる反応体を含む。もしセンシング領域に一つより多いナノスケールワイヤが存在すれば、それらのナノスケールワイヤは、用途に応じて同じ検体および/または異なる検体を検出することができる。例えば、マイクロアレイのセンシング領域内のナノスケールワイヤは、1、2、3、4、5、6、8、10、12、14、16、18、20、22、24、26、28、30、40、50またはそれ以上の検体または検体の種類を測定することができる。一例として、マイクロアレイは、一つまたはそれ以上のセンシング領域を有し、少なくともそのいくつかは、例えば、ここに記載されるように、ナノスケールワイヤに対して固定化されている核酸を有するナノスケールワイヤを含む。マイクロアレイは、一つまたは多数の試料中の検体を測定するのに用いることができる。例えば、マイクロアレイは、少なくとの2個、少なくとも3個、少なくとも5個、少なくとも10個、少なくとも15個、少なくとも20個、少なくとも25個、少なくとも30個、少なくとも50個、少なくとも70個、少なくとも100個、少なくとも200個、少なくとも300個、少なくとも500個、少なくとも1000個、少なくとも3000個、少なくとも5000個、または少なくとも10000個またはそれ以上のセンシング領域を含むことができ、それらの少なくともいくつかは、センシング領域上に配置された試料の検体を測定するために用いることができる。ある場合には、マイクロアレイは、高密度のナノスケールワイヤを有することができ、少なくともそのいくつかは個々にアドレスすることができ、少なくともそのいくつかは試料中に存在すると思われる検体を測定するために用いることができる。例えば、ナノスケールワイヤの密度は、少なくとも約100ナノスケールワイヤ/cm、さらにある場合には、少なくとも約110ナノスケールワイヤ/cm、少なくとも約120ナノスケールワイヤ/cm、少なくとも約130ナノスケールワイヤ/cm、少なくとも約150ナノスケールワイヤ/cm、少なくとも約200ナノスケールワイヤ/cm、少なくとも約250ナノスケールワイヤ/cm、少なくとも約500ナノスケールワイヤ/cmとすることができる。
【0081】
センシング領域の一例を図6Aに示す。この図において、センシング領域220は、第1電極221と第2または対向電極222を含む。第1電極は、一般的に細長く(すなわち、電極の一次元の寸法は、一方の次元が他方より著しく長い)。一つまたはそれ以上のナノスケールワイヤ227は、第1電極221および第2電極222と電気的に通じており、少なくともいくつかのナノスケールワイヤは、検体と相互作用できる反応体を含むことができる。第1電極221は、電気接点またはリード線225と電子的な接続223(例えば、ワイヤまたはエッチングされた電子通路)を通して電子的に繋がっており、一方で第2電極222は、電気接点225と電子的な接続224を通して電子的に繋がっている。検体229は、センシング領域220内に配置された試料中に存在し、ナノスケールワイヤ227上に存在する反応体と(例えば共有結合性の、例えば結合により)相互作用することができる。かかる相互作用が生じると、ナノスケールワイヤの電気的特性、例えば、導電率が(例えば、検体とナノスケールワイヤとの電荷相互作用を通じて)変化し、ナノスケールワイヤの導電率の変化を測定することにより、例えば、電気接点225と電気接点226の間の導電率の変化を測定することにより、これを決定できる。
【0082】
追加のナノスケールワイヤをセンシング領域に追加することもできる。例えば、図6Bにおいて、センシング領域220は、5個の第2または対向電極222を有する。ナノスケールワイヤ211、212、213、214の少なくともいくつかは、第2電極222の少なくともいくつかを第1電極221と結合させ、ナノスケールワイヤの少なくともいくつかは、検体と相互作用できる反応体を含む。例えば、ナノスケールワイヤ211は第1検体と相互作用することができるが、しかし、第2検体または第3検体とは相互作用しない、一方でナノスケールワイヤ212は第2検体とのみ相互作用することができ、ナノスケールワイヤ213は第3検体とのみ相互作用することができる。検体と対応する反応体との結合事象が生じると、導電度のようなナノスケールワイヤの特性が変化することができ、上記のように測定することができる。
【0083】
本発明の様々な実施形態に有用なさらなるアレイおよびマイクロアレイは、Lieberらによる“ナノスケールセンサ(Nanoscale Sensors)”と題する2005年8月9日出願の米国特許仮出願第60/707136号に論じられている。
【0084】
一様態では、本発明は、上述の任意のデバイスを一まとめにパッケージして、随意的にデバイス使用説明書を含んで、提供される。本明細書では、“使用説明”は説明に役立つ構成要素(例えば、指示、案内、警告、ラベル、メモ、FAQ(“よくある質問”:Frequently Asked Questions)などを定義することができ、一般的には本発明の実装に関する或いは係わる書面化された使用説明を含む。使用説明は、使用説明がここで論じられるようなデバイスに関するものであることをユーザーが明確に認識できる仕方で提供される、任意の形態(例えば、口頭、電子的、デジタル、光学的、視覚的など)の使用説明に関するコミュニケーションも含むことができる。加えて、キットは、特定の応用に応じて、他の構成要素、例えば、容器、アダプター、シリンジ、針、交換部品などを含むことができる。
【0085】
ある実施形態では、ここに記載されるナノスケールワイヤの一つまたはそれ以上、および/またはここに記載されるデバイスまたは方法の一つまたはそれ以上は、販売促進することができる。本明細書では、“販売促進する”は、限定なしに、販売、宣伝、譲渡、ライセンス供与、契約、指導、教育、研究、輸入、輸出、交渉、融資、貸付、取引、自動販売、再販、流通、交換などの方法を含む、例えばここに論じられる、本発明の方法および構成要素と関連づけることができるビジネスを行うすべての方法を含む。販売促進は、ある場合には、医療を目的とした本発明の構成要素の販売について政府機関の承認を求めることも含む。販売促進の方法は、限定なしに、(公共または民間)会社、契約または下請契約機関、単科および総合大学のような教育機関、研究機関、病院および他の医療機関、政府機関など、を含む任意の団体により実施できる。販売促進活動は、本発明に明確に係る、任意の形態の使用説明またはコミュニケーション(例えば、書面、口頭、および/または、限定なしに、E‐メール、電話、ファクシミリ、インターネット、Webベースなどのような電子コミュニケーション)を含むことができる。
【0086】
以下の定義は、本発明の理解を助けるであろう。これらの定義とともにちりばめられて、本発明の様々な様態が付加的に開示されている。
【0087】
本発明のあるデバイスは、ナノメートル‐スケールのワイヤ相当の大きさのワイヤまたは他の構成要素を含むことができ、これにはナノチューブおよびナノワイヤが含まれる。ある実施形態では、しかし、本発明は、ナノメートルサイズより大きい(例えば、ミクロンサイズの)物品を含む。本明細書では、“ナノスコピック‐スケール”、“ナノスコピック”、“ナノメートル‐スケール”、“ナノスケール”、(例えば、“ナノ構造”のような)接頭語“ナノ‐”などは、一般的に約1ミクロンより小さい、さらにある場合には約100nmより小さい、幅または直径をもつ要素または物品に適用される。すべての実施形態において、指定された幅は最小の幅(すなわち、その場所で、物品は他の次元ではより大きい幅をもつことができるように指定された幅)、または最大の幅(すなわち、その場所で、物品は指定されたのより広くない幅をもつが、しかし、より大きい長さをもつことができる)とすることができる。
【0088】
本明細書では、“細長い”物品(例えば、半導体またはその一部)は、物品の縦軸に沿った任意の点において、その点における物品の長さの最大幅に対する比率が2:1より大きい物品である。
【0089】
物品の“幅”は、本明細書では、物品の周辺の一点から、物品の中心を通って、物品の周辺の他の点までの直線の距離である。本明細書では、物品の縦軸に沿ったある点における“幅”または“断面寸法”は、その点において物品の断面の中心を通り、断面の外周の2点を結ぶ直線に沿った距離である。物品の縦軸に沿ったある点における“断面”は、その点における面であって、物品を横切り、物品の縦軸に直交する面である。物品の“縦軸”は、物品の最大寸法に沿う軸である。同様に、物品の“長手方向断面”は、ゼロより大きく、物品の長さに等しいかそれより小さい任意の長さをもつことができる、縦軸に沿った物品の一部である。加えて、細長い物品の“長さ”は、縦軸に沿った物品の端から端までの距離である。
【0090】
本明細書では、“シリンダー状”の物品は、シリンダーのような形をした外観をもつ物品であるが、物品の内部に関するいかなる特性も定義または反映されない。言い換えれば、シリンダー状の物品は、中が詰まっていてもよく、中が空洞化されているなどでもよい。一般的に、シリンダー状の物品の断面は、円形またはほぼ円形に見えるが、六角形のような他の断面形状も可能である。断面は、限定なしに、正方形、長方形、または楕円形を含む任意の形状を有してもよい。規則的および不規則な形状も同様に含まれる。
【0091】
本明細書では、物品(例えば、ナノスコピックワイヤ)の“アレイ”は、複数の物品、例えば、相互に接続していてもまたはしていなくてもよい、一連の配列されたナノスケールワイヤを含む。本明細書では、“クロスしたアレイ”または“クロスバーアレイ”は、物品の少なくとも一つが、物品のもう一つまたは信号ノード(例えば、電極)のいずれかに接触しているアレイである。
【0092】
本明細書では、“ワイヤ”は、任意の半導体または任意の金属の、またはそれらと同様の大きさの導電率を有する、さらにある実施形態では二つの電子的な構成要素を相互に電子的に通じるように接続するのに使える、任意の材料に広く適用される。例えば、“電気的に伝導性”または“伝導体”または“電気伝導体”の用語は、“導電性”ワイヤまたはナノスケールワイヤに言及して用いられる時には、そのワイヤが電荷を通す能力に適用される。通常は、電気伝導性のナノスケールワイヤは、金属または半導体材料に匹敵する抵抗を有し、さらにある場合には、電気伝導性のナノスケールワイヤは、より低い抵抗、例えば、約100マイクロオームcm(μΩcm)より小さい抵抗をもつことができる。ある場合には、電気伝導性のナノスケールワイヤは約10−3オームメートルより小さい、約10−4オームメートルより小さい、約10−6オームメートルより小さいまたは−7オームメートルより小さい抵抗をもつことができる。
【0093】
本明細書では、“半導体”は、当分野における通常の意味をもつ、すなわち、半導体的または半金属的特性(すなわち、金属と非金属の間の特性)をもつ元素である。半導体の例はシリコンである。他の非限定的な例は、ガリウム、ゲルマニウム、ダイアモンド(炭素)、錫、セレン、テルル、ホウ素、またはリンを含む。
【0094】
“ナノスコピックワイヤ”(ここでは“ナノスコピック‐スケールワイヤ”または“ナノスケールワイヤ”としても知られる)は、一般的に、長さに沿った任意の点において、1ミクロンより小さい、500nmより小さい、200nmより小さい、150nmより小さい、100nmより小さい、70nmより小さい、50nmより小さい、20nmより小さい、10nmより小さい、または5nmより小さい、少なくとも一つの断面寸法、さらに、ある実施形態では二つの直交する次元の断面寸法、を有する。他の実施形態では、断面寸法は2nmまたは1nmより小さくてもよい。一組の実施形態では、ナノスケールワイヤは0.5nmから100nmまたは200nmに及ぶ少なくとも一つの断面寸法を有する。ある場合には、ナノスケールワイヤは電気伝導性である。ナノスケールワイヤが、例えば、コアおよび外部領域を有すると記載されるところでは、上記の寸法は、一般的にコアの寸法に関する。ナノスコピックなワイヤの断面は、限定なしに、円形、正方形、長方形、環状、多角形、または楕円形を含む任意の形状であってよく、さらに規則的または不規則な形状であってもよい。ナノスケールワイヤは中が詰まっていても、または中が空洞であってもよい。本発明のナノスケールワイヤをつくることのできる材料の例に関する非限定的なリストが以下に示される。別に指定がなければ、カーボンナノチューブ、分子ワイヤ(例えば、単一分子から形成されるワイヤ)、ナノロッド、ナノワイヤ、ナノウィスカ、有機または無機の導電性または半導体ポリマーなどを含む任意のナノスケールワイヤを、ここに記載される本発明のいずれの実施形態にも用いることができる。分子ワイヤではないかもしれないが、様々な小さいナノスコピック‐スケールの寸法をもつ他の導電性または半導体の要素、例えば、主族および金属ベースのワイヤ状シリコン、遷移金属を含むワイヤ、ヒ化ガリウム、窒化ガリウム、リン化インジウム、ゲルマニウム、セレン化カドミウムのような無機構造も、ある例において用いることができる。広範な種類のこれらおよび他のナノスケールワイヤは、例として用いた特定のナノスケールワイヤに係るここに記載される技術と似た仕方で、不適切な実験を伴うことなく、電子デバイスに有用なパターンのかたちで表面に成長または塗布することができる。ナノスケールワイヤは、ある場合には、少なくとも約1ミクロン、少なくとも約3ミクロン、少なくとも約5ミクロン、または少なくとも約10ミクロンまたは少なくとも約20ミクロンの長さの寸法に形成することができ、さらに、約100nmより小さい、約80nmより小さい、約60nmより小さい、約40nmより小さい、約20nmより小さい、約10nmより小さい、または約5nmより小さい厚さ(高さおよび幅)とすることができる。ナノスケールワイヤは、約2:1より大きい、約3:1より大きい、約4:1より大きい、約5:1より大きい、約10:1より大きい、約25:1より大きい、約50:1より大きい、約75:1より大きい、約100:1より大きい、約150:1より大きい、約250:1より大きい、約500:1より大きい、約750:1より大きい、約1000:1より大きい、またはある場合にはそれ以上のアスペクト比(長さ対厚さ)を有することができる。
【0095】
(例えば、シリコンおよび/またはもう一つの半導体材料例えば元素半導体、を含む)“ナノワイヤ”は、通常は固体のワイヤであるナノスコピックなワイヤであり、ある場合には細長くてもよい。好ましくは、ナノワイヤ(ここでは“NW”と略記する)は細長い半導体、すなわち、ナノスケールの半導体である。“非ナノチューブのナノワイヤ”は、ナノチューブではない任意のナノワイヤである。本発明の一組の実施形態では、ナノワイヤまたはナノチューブを使うことのできるここに記載される本発明のいかなる配置においても、(ナノチューブにとって固有でない、置かれた環境中の補助的な反応体は除いて)非修飾の表面を有する非ナノチューブのナノワイヤが用いられる。
【0096】
本明細書では、“ナノチューブ”(例えば、カーボンナノチューブ)は、当業者に知られたナノチューブを含めて、内部が空洞の、またはコアがくり抜かれたナノスコピックなワイヤである。“ナノチューブ”は、ここでは“NT”と略記される。ナノチューブは、本発明に使用するための微小なワイヤの一例として用いられ、ある実施形態では、本発明のデバイスは、ナノチューブ相当の大きさのワイヤを含む。本発明に使用できるナノチューブの例は、限定なしに、単層ナノチューブ(SWNT:single‐walled nanotube)を含む。構造的には、SWNTは、継ぎ目のないチューブ状に巻かれた単一のグラフェンシートからできている。直径およびヘリシティに依存して、SWNTは、一次元の金属および/または半導体として振舞うことができる。SWNT。SWNTを含めて、ナノチューブの製造および特性解析の方法が知られている。ナノチューブの端および/または側面を選択的に官能化する方法も知られており、本発明は、ある実施形態において、分子エレクトロニクスに対するこれらの能力を利用する。多層ナノチューブもよく知られており、同様に用いることができる。
【0097】
本発明に用いることのできるナノチューブの例は、分子エレクトロニクスに特に適した独特の電子的および/または化学的特性を示す単層ナノチューブ(SWNT)を含む。構造的には、SWNTは、直径がおよそ約0.5nmから約5nm程度で長さが約10ミクロンを越えることのできる寸法を有する、継ぎ目のないチューブ状に巻かれた単一のグラフェーンシーからできている。直径とヘリシティに依存して、SWNTは、一次元の金属および/または半導体として振舞うことができ、現在、金属的および半導体のナノチューブの混合物として購入できる。SWNTを含めて、ナノチューブの製造および特性解析の方法が知られている。ナノチューブの端および/または側面を選択的に官能化する方法も知られており、本発明は、分子エレクトロニクスに対するこれらの能力を利用する。ナノチューブの基本構造/電子的特性は、接続または入力/出力信号をつくり出すのに使うことができ、さらにナノチューブは分子サイズの構造と整合したサイズを有する。当業者は、ナノチューブを調整する方法を承知しているであろう。例えば、Kong,et al.,“Synthesis of Individual Single‐Walled Carbon Nanotubes on Patterned Silicon Wafers,”Nature,395:878‐881(1998)、またはKong,et al.,“Chemical Vapor Deposition of Methane for Single‐Walled Carbon Nanotubes,”Chem.Phys.Lett.,292:567‐574(1998)参照。
【0098】
本発明のあるナノスケールワイヤは、個々のナノスケールワイヤである。本明細書では、“個々のナノスケールワイヤ”は、もう一つのナノスケールワイヤと接触していない(但し、クロスバーアレイにおける個々のナノスケールワイヤ間に望まれ得るタイプの接触は別として)ナノスケールワイヤを意味する。例えば、“個々の”または“独立した”物品は、その寿命のある時点で、他の物品、例えば、他のナノスケールワイヤに付着していなくてもよく、または、独立した物品は溶液中にあってもよい。かかる独立した物品は、例えば、それがつくられた場所から、個々の物品として、取り除くことができ、別の場所に輸送して、ここに記載されるような、さらに当業者が本明細書を読んで考えるであろうような、機能デバイスをつくるために別の構成要素と組み合わせることができる。これは、単に化学的または物理的にin‐situに変更されることにより周囲の材料とは異なる、例えば、均一な物品の一部が選択的ドーピング、エッチング等により周囲とは異なる、物品の導電性部分とは対照的である。
【0099】
ある場合には、ナノスケールワイヤは、ここに記載されるように、第IV族、第III族/第V族、第II族/第VI族元素、遷移族元素などのような無機構造を含むことができる。例えば、ナノスケールワイヤは、シリコン、リン化インジウム、窒化ガリウムおよび他の半導体材料からできていてもよい。ナノスケールワイヤは、例えば、分極性または多価状態をもつ任意の有機、無機分子を含むこともできる。例えば、ナノスコピック‐スケールの構造は、主族および金属ベースのワイヤ状シリコン、遷移金属を含むワイヤ、ヒ化ガリウム、窒化ガリウム、リン化インジウム、ゲルマニウム、またはセレン化カドミウム構造を含むことができる。一組の実施形態では、ナノスケールワイヤは、金属‐半導体化合物を含む。
【0100】
ナノスケールワイヤは、半導体およびドーパントを含めて、様々な材料の組み合わせを含むことができる。以下は、ドーパントとして使える材料の非包括的な例である。例えば、ドーパントおよび/またはナノスケールワイヤは、元素半導体、例えば、シリコン、ゲルマニウム、スズ、セレン、テルル、ホウ素、ダイヤモンド、またはリンであってもよい。ドーパントは、様々な元素半導体の固溶体であってもよい。例としては、ホウ素と炭素との混合物、ホウ素とP(BP)との混合物、ホウ素とシリコンとの混合物、シリコンと炭素との混合物、シリコンとゲルマニウムとの混合物、シリコンとスズとの混合物、またはゲルマニウムとスズとの混合物が含まれる。
【0101】
ある実施形態では、ドーパントおよび/または半導体は、第IV族元素の混合物、例えば、シリコンと炭素との混合物、またはシリコンとゲルマニウムとの混合物、を含むことができる。他の実施形態では、ドーパントまたは半導体は、第III族および第V族の元素との混合物、例えば、BN、BP、BAs、AlN、AlP、AlAs、AlSb、GaN、GaP、GaAs、GaSb、InN、InP、InAs、またはInSb、を含むことができる。これらの混合物、例えば、BN/BP/BAs、またはBN/AlPの混合物も同様に用いることができる。他の実施形態では、ドーパントは、第III族および第V族元素の合金を含むことができる。例えば、合金は、AlGaN、GaPAs、InPAs、GaInN、AlGaInN,GaInAsPなどの混合物を含むことができる。他の実施形態では、ドーパントは、第II族および第VI族半導体の混合物も含むことができる。例えば、半導体は、ZnO、ZnS、ZnSe、ZnTe、CdS、CdSe、CdTe、HgS、HgSe、HgTe、BeS、BeSe、BeTe、MgS、MgSeなどを含むことができる。これらのドーパントの合金または混合物、例えば、(ZnCd)Se、またはZn(SSe)など、も同様に可能である。加えて、異なる群の半導体の合金、例えば、第II族‐第IV属および第III‐第V族半導体の組み合わせ、例えば、(GaAs)(ZnS)1−xも可能である。ドーパントの他の例は、GeS、GeSe、GeTe、SnS、SnSe、SnTe、PbO、PbS、PbSe、またはPbTeのような第IV族および第VI族元素の組み合わせを含むことができる。他の半導体の混合物は、CuF、CuCl、CuBr、CuI、AgF、AgCl、AgBr、AgIなどのような第I族および第VII族の組み合わせを含むことができる。他のドーパント化合物は、これらの元素の異なる混合物、例えば、BeSiN、CaCN、ZnGeP、CdSnAs、ZnSnSb、CuGeP、CuSi、Si、Ge、Al、(Al,Ga,In)(S,Se,Te)、AlCO、(Cu,Ag)(Al,Ga,In,Tl,Fe)(S,Se,Te)を含むことができる。
【0102】
第IV族ドーパント材料に対しては、例えば、p型ドーパントは第III族から選択することができ、n型ドーパントは第V族から選択することができる。シリコン半導体材料に対しては、p型ドーパントは、B、AlおよびInからなる群から選択でき、n型ドーパントは、P、AsおよびSbからなる群から選択できる。第III族‐第V族の半導体材料に対しては、p型ドーパントは、Mg、Zn、CdおよびHgを含む第II族またはCおよびSiを含む第IV族から選択できる。n型ドーパントは、Si、Ge、Sn、S、SeおよびTeからなる群から選択できる。当然のことながら、本発明は、これらのドーパントに限定されるものではなく、他の元素、合金または材料も同様に含むことができる。
【0103】
本明細書では、“族”は、周期律表に言及する場合には、当業者に理解される通常の定義が適用される。例えば、第II族元素は、MgおよびCaを含み、さらにZn、Cd、およびHgのような第II族遷移元素を含む。同様に、第III族元素は、B、Al、Ga、InおよびTlを含み、第IV族元素は、C、Si、Ge、Sn、およびPbを含み、第V族元素は、N、P、As、SbおよびBiを含み、さらに第VI族元素は、O、S、Se、TeおよびPoを含む。各々の族から一元素以上を含む組み合わせも可能である。例えば、第II−IV族材料は、例えば、ZnS、ZnSe、ZnSSe、ZnCdS、CdS、またはCdSeのように第II族から少なくとも一つの元素、および第VI族から少なくとも一つの元素材料を含むことができる。同様に、第III−V族材料は、例えば、GaAs、GaP、GaAsP、InAs、InP、AlGaAs、またはInAsPのように第III族から少なくとも一つの元素、および第V族から少なくとも一つの元素を含むことができる。これらの材料およびそれらの組み合わせとともに、他のドーパントは、例えば、Fe、Co、Te、Auなどのような遷移金属も含むことができる。本発明のナノスケールワイヤは、ある場合には、任意の有機または無機分子をさらに含んでもよい。ある場合には、有機または無機分子は、分極性および/または多価状態を有する。
【0104】
本明細書では、周期律表の遷移金属は、独立して(すなわち、主族元素への言及なしに)言及される場合には、“B”で示される。遷移金属元素は、第IB族元素(Cu、Ag、Au)、第IIB族元素(Zn、Cd、Hg)、第IIIB族元素(Sc、Y、ランタニド、アクチニド)、第IVB族元素(Ti、Zr、Hf)、第VB族元素(V、Nb、Ta)、第VIB族元素(Cr、Mo、W)、第VIIB族元素(Mn、Tc、Re)、および第VIIIB族元素(Fe、Co、Ni、Ru、Rh、Pd、Os、Ir、Pt)を含む。
【0105】
ある実施形態では、ナノスケールワイヤの少なくとも一部は、バルク‐ドープされた半導体であってもよい。本明細書では、“バルク‐ドープされた”物品(例えば、物品または物品の部分または領域)は、ドーパントが原子スケールで結晶格子の特定領域、例えば、表面上または外周上のみに導入されただけの物品とは対照的に、物品の結晶格子の実質的に至るところにドーパントが導入された物品である。例えば、カーボンナノチューブのような物品は、通常は基材を成長した後にドーピングを行う、それ故にドーパントは表面または外周から結晶格子の内部へ限定された距離広がるだけである。当然のことながら、“バルク‐ドープされた”は、半導体におけるドーピングの濃度または量を規定または反映するものではなく、ドーピングが均一であることも必ずしも示さない。特に、ある実施形態では、バルク‐ドープされた半導体は、二つまたはそれ以上のバルク‐ドープされた領域を備えていてもよい。それ故、本明細書でナノスコピックなワイヤを記述する時には、“ドープされた”は、バルク‐ドープされたナノスコピックなワイヤに適用し、従って、“ドープされたナノスコピックな(またはナノスケール)ワイヤ”は、バルク‐ドープされたナノスコピックなワイヤである。“高濃度にドープされた”および“低濃度にドープされた”は、その意味が当業者に理解される用語である。
【0106】
バルク‐ドープされた半導体は、他の半導体およびドーパントを含めて、様々な材料の組み合わせを含むことができる。一組の実施形態では、ナノスケールワイヤは、所望のn型またはp型半導体をつくり出すために然るべきドーパントがドープされた半導体を含むことができる。例えば、シリコンは、ホウ素、アルミニウム、リン、またはヒ素をドープすることができる。シリコンのナノスケールワイヤを気相成長している間に制御性よくドーパントを導入するためにレーザー触媒成長を用いることができる。ナノスケールワイヤの制御されたドーピングを、例えば、n型またはp型半導体を形成するために実施することができる。p型半導体を形成するためには、限定なしに、亜鉛、カドミウム、またはマグネシウムを含むドーパントを用いることができ、n型半導体を形成するためのドーパントとして、限定なしに、テルル、イオウ、セレン、またはゲルマニウムを含むドーパントを用いることができる。これらの材料は、直接バンドギャップ半導体材料を規定し、これらおよびドープされたシリコンは、当業者にはよく知られている。本発明は、上述したように、任意のドープされたシリコンまたは直接バンドギャップ半導体材料を様々な用途に用いることを意図している。ドープされた半導体の例は、2002年9月11日に米国特許出願公開第2002/0130311号として公開されたLieberらによる“ドープされた細長い半導体、かかる半導体の成長、かかる半導体を含むデバイス、およびかかるデバイスの作製(Doped Elongated Semiconductors, Growing Such Semiconductors, Devices Including Sucn Semiconductors, and Fabricating Such Devices)”と題する2001年8月22日出願の米国特許出願第09/935776号、または、2003年5月15日に米国特許出願公開第2003/0089899号として公開されたLieberらによる“ナノスケールワイヤおよび関連デバイス(Nanoscale Wires and Related Devices)”と題する2002年7月16日出願の米国特許出願第10/196337号、いずれも参照によりここに組み込まれる、に見られる。
【0107】
本発明は、先に記載されたように、試料中の検体に対してナノスケールワイヤが曝露される、該試料中の検体を測定するために構築かつ配置されるシステムの一部を構成する一つまたは複数のナノスケールワイヤを提供する。
【0108】
用語“試料”は、本発明により評価することのできる、任意の細胞、組織、または生物学的起源の流体(“生物学的試料”)、または、血清または水のような生物学的または非生物学的な任意の他の媒体に適用される。試料は、流体、例えば、溶液、に含まれていてもよい。試料は、限定なしに、生物(例えば、ヒト、ヒト以外の哺乳動物、無脊椎動物、植物、真菌、藻類、バクテリア、ウイルスなど)から取り出される生物試料、ヒトの食用につくられた食品から取り出される試料、家畜の飼料のような動物の食用につくられた食糧から取り出される試料、ミルク、臓器提供試料、血液供給予定の血液試料、給水からの試料などを含む。
【0109】
特定の成分を“含むと思われる試料”は、それに関して成分の中身が未知である試料を意味する。“試料”は、本文脈において自然に存在する試料、例えば、ヒトまたは他の動物からの生理学的な試料、食品サンプル、飼料サンプルなどを含む。ヒトまたは他の動物から採取される典型的な試料は、組織生検、細胞、全血、血清または他の血液分画、尿、眼液、唾液、または扁桃腺からの流体または他の試料、リンパ節、針生検などを含む。
【0110】
試料を本発明のナノスケールセンサに曝露するために、様々な実施形態においていろいろな試料サイズを用いることができる。例として、ナノスケールセンサに用いられる試料サイズは、約10マイクロリットル以下、約1マイクロリットル以下、または約0.1マイクロリットル以下であってもよい。試料サイズは、ある例では、約10ナノリットル、1ナノリットル、またはそれ以下と小さくてもよい。ナノスケールセンサは、生物学的種への独特の近接性を有することができ、生体内または生体外で用いることができる。生体内で用いる時には、ある場合には、ナノスケールセンサとこれに対応する方法により処置の侵襲性は最小限になる。
【0111】
本明細書で用いる“測定する”は、状態または状況を、例えば、定量的または定性的に、
分析することに一般的に適用される。例えば、種、またはシステムの電気的状態を測定することができる。“測定すること”は、例えば、定量的または定性的に、および/または、相互作用の有無を検出することにより、二つまたはそれ以上の種の間の相互作用を分析すること、例えば、二つの種の間の結合を測定することにも適用される。一例として、検体は、ナノスケールワイヤの電気的特性の測定可能な変化(例えば、電気伝導率、抵抗、インピーダンスなど)、ナノスケールワイヤの光学的特性の変化などを引き起こすことができる。測定技術の例は、限定なしに、導電度測定、電流測定、電圧測定、抵抗測定、圧電測定、電気化学的測定、電磁気的測定、光検出、機械的測定、音響測定、重量測定などを含む。“測定すること”は、種間の相互作用を検出または定量することも意味する。
【0112】
本明細書では、用語“反応体”は、ナノスケールワイヤの特性に検出可能な変化を引き起こすような仕方で検体と相互作用することのできる任意の実体に適用される。反応体は、検体が結合する結合パートナーを含むことができる。反応体は、結合パートナーの時には、検体に対する固有の結合パートナーを含む。ある場合には、反応体は、ナノワイヤ上の被覆物を形成する。反応体の非限定的な例は、例えば、ここで論じられるように、核酸(例えば、DNAまたはRNA)、抗体、糖または炭水化物、タンパク質または酵素、ガングリオシドまたは界面活性剤などを含む。
【0113】
一組の実施形態では、ナノスケールワイヤと結びついた反応体は、検体と相互作用することができる。ナノスケールワイヤと“結びついた”、または、に対して“固定化されている”反応体は、ナノスケールワイヤの特性または性質の変化を測定することにより検体の測定ができるように、ナノスケールワイヤと関係して(例えば、近接近または接触して)配置される。検体の反応体との相互作用は、例えば、反応体との電気的な結合を通じて、ナノスケールワイヤの特性に検出可能な変化または変調を引き起こすことができる。例えば、検体の反応体との相互作用は、ナノスケールワイヤの電気的特性、例えば、電圧、電流、導電率、抵抗、インダクタンス、インピーダンスの変化、電気的変化、電磁気的変化などを測定することにより測定することができる。
【0114】
本明細書では、もう一つの構成要素“に対して固定化される”構成要素は、他の構成要素に対して束縛されるか、或いは、例えば他の構成要素も同様に束縛される第3の構成要素に対して束縛されることにより他の構成要素に対して間接的に束縛されるかのいずれかである。例えば、もし第1実体の表面に束縛された種がある実体に付着し、第2実体の表面上の種が同じ実体に付着したとすると、第1実体は第2実体に対して固定化される、ただし該実体は、単一の実体、多数の種からなる複合的な実体であってもよい。ある実施形態では、もう一つの構成要素に対して固体化される構成要素は、例えば、溶液または懸濁液中で、安定な結合を用いて固定化される。ある実施形態では、構成要素のもう一つの構成要素に対する非特異的な結合は、構成要素が溶媒または熱の影響で容易に分離するかもしれず、好ましくない。
【0115】
本明細書では、“に対して束縛された、または束縛されるように適合化される”は、もう一つの種に対するある種、または物品(例えば、ナノスケールワイヤ)の表面に対するある種、またはもう一つの物品の表面に対するある物品の表面へ、の文脈で用いられる時には、種または表面は、共有結合的接続、特異的かつ生物学的な接続(例えば、ビオチン/ストレプトアビジン)、キレート/金属結合のような配位結合などにより、化学的または生化学的にそれぞれ相互に連結される、または連結するように適合化されることを意味する。例えば、本文脈における“束縛される”は、限定なしに、ナノスケールワイヤ上に合成されたペプチドのような結合種、ナノスケールワイヤに付着した、タンパク質Aのようなタンパク質に結合した抗体に対して特異的かつ生物学的に連結された結合種、分子の一部を形成する結合種であって、該分子がナノスケールワイヤの表面に共有結合的に束縛された結合パートナーに対して特異的かつ生物学的に結合される結合種などを含む、多数の化学的連結、多数の化学的/生物学的連結などを含む。同様に、ある種は、もし表面が特定のヌクレオチド配列を有し、該種が相補的なヌクレオチド配列を含めば、表面に束縛されるように適合化されている。
【0116】
“特異的に束縛される”または“特異的に束縛されるように適合化される”は、“束縛される、または束縛されるように適合化される”の定義に関連して上述したように、ある種が、それぞれもう一つの試料または表面に対して、但し、基本的にすべての非特異的な結合は除いて、化学的または生化学的に連結される、または連結されるように適合化されることを意味する。“共有結合的に束縛される”は、基本的に他でもない一つまたはそれ以上の共有結合により束縛されることを意味する。
【0117】
本明細書では、“に付着する”は、もう一つの種または物品の表面に対するある種に関する文脈においては、種が共有結合的な付着、特異的かつ生物学的な付着(例えば、ビオチン/ストレプトアビジン)、キレート/金属結合のような配位結合などにより、化学的または生化学的に連結されることを意味する。例えば、本文脈における“付着した”は、多数の化学的な連結、多数の化学的/生物学的連結など、例えば、ポリスチレンビーズ上に合成されたペプチドのような結合種、を含む。“共有結合的に付着した”は、一つまたはそれ以上の共有結合により付着することを意味する。
【0118】
用語“結合”は、限定なしに生化学的、生理学的、および/または化学的相互作用を含む、特異的または非特異的な結合または相互作用に一般的に起因して、相互の親和性または結合能力が示される、分子または表面の相対するペア間に働く相互作用に適用される。“生物学的な結合”は、タンパク質、核酸、糖タンパク質、炭水化物、ホルモンなどを含む、分子のペアの間に生じる相互作用のタイプと定義される。具体的な非限定の例は、抗体/抗原、抗体/ハプテン、酵素/基質、酵素/インヒビター、酵素/補因子、結合タンパク質/基質、運搬体タンパク/基質、レクチン/炭水化物、受容体/ホルモン、受容体/エフェクター、核酸の相補鎖、タンパク質/核酸リプレッサー/誘導因子、配位子/細胞表面受容体、ウイルス/配位子、ウイルス/細胞表面受容体などを含む。
【0119】
用語“結合パートナー”は、特定の分子との結合を生じる分子に適用される。生物学的な結合パートナーがその例である。例えば、タンパク質Aは、生体分子IgGの結合パートナーであり、逆も同様である。他の非限定的な例は、核酸‐核酸結合、核酸‐タンパク質結合、タンパク質‐タンパク質結合、酵素‐基質結合、受容体/配位子結合、受容体/ホルモン結合、抗体/抗原結合などを含む。結合パートナーは、当業者に知られているような特異的、半特異的、および非特異的な結合パートナーが含まれる。例えば、タンパク質Aは、通常は“非特異的”または半特異的な結合相手と見做されている。用語“特異的に結合する”は、結合パートナー(例えば、タンパク質、核酸、抗体など)に言及する時には、異種分子(例えば、タンパク質または他の生体関連物質)が混在する中で、結合パートナーいずれかの存在および/または素性を決定づける反応に適用される。それ故、例えば、受容体/配位子の結合ペアの場合には、配位子は、分子が複雑に混在する中から、特異的および/または選択的にその受容体を選別することになり、逆も同様である。酵素はその基質に特異的に結合し、核酸は相補鎖に特異的に結合し、さらに抗体はその抗原に特異的に結合することになる。他の例は、相補鎖に特異的に結合(ハイブリダイズ)する核酸、抗原に特異的に結合する抗体、上記のような結合ペアなどを含む。結合は、限定なしに、イオン相互作用、および/または共有結合性相互作用、および/または疎水性相互作用、および/またはファン・デル・ワールス相互作用などを含む様々なメカニズムの一つまたはそれ以上によることができる。
【0120】
以下の文献は、すべての目的でその全体が参照によりここに組み込まれるが、本発明とともに使用可能な教示に関する付加的な記述が含まれる。Lieberらによる“分子ワイヤベースのデバイスおよびその製造方法(Molecular Wire‐Based Devices and Methods of Their Manufacture)”と題する1999年7月2日出願の米国特許仮出願第60/142216号、2001年1月11日に国際特許出願公開WO 01/03208号として公開されたLieberらによる“ナノスコピックワイヤベースのデバイス、アレイ、およびその製造方法(Nanoscopic Wire‐Based Devices, Arrays, and Meoths of Their Manufacture)”と題する2000年6月30日出願の国際特許出願PCT/US00/18138号、Lieberらによる“半導体ナノワイヤ(Semiconductor Nanowires)”と題する2000年8月22日出願の米国特許仮出願第60/226835号、Lieberらによる“ナノワイヤおよびナノチューブナノセンサー(Nanowire and Nanotube Nanosensors)”と題する2000年12月11日出願の米国特許仮出願第60/254745号、Lieberらによる“放出要素およびセンサを含むナノワイヤデバイス(Nanowire Devices Including Emissive Elements and Sensors)”と題する2001年5月18日出願の米国特許仮出願第60/291896号、Lieberらによる“ナノワイヤおよびナノチューブのナノセンサー(Nanowire and Nanotube Nanosensors)”と題する2001年5月18日出願の米国特許仮出願第60/292035号、Lieberらによる“メモリおよびスイッチングデバイスを含むナノワイヤ電子デバイス(Nanowire Electronic Devices Including Memory and Switching Devices)”と題する2001年5月18日出願の米国特許仮出願第60/292045号、Lieberらによる“半導体ナノワイヤ(Semiconductor Nanowires)”と題する2001年5月18日出願の米国特許仮出願第60/292121号、2002年9月19日に米国特許出願公開第2002/0130311号として公開されたLieberらによる“ドープされた細長い半導体、かかる半導体の成長、かかる半導体を含むデバイス、およびかかるデバイスの作製(Doped Elongated Semiconductors,Growing Such Semiconductors, Devives Including Such Semiconductors, and Fabricating Such Devices)”と題する2001年8月22日出願の米国特許出願第09/935776号、2002年2月28日に国際特許出願公開WO 02/17362号として公開されたLieberらによる“ドープされた細長い半導体、かかる半導体の成長、かかる半導体を含むデバイス、およびかかるデバイスの作製(Doped Elongated Semiconductors,Growing Such Semiconductors, Devices Including Such Semiconductors, and Fabricating Such Devices)”と題する2001年8月22日出願の国際特許出願PCT/US01/26298号、2002年9月19日に米国特許出願公開第2002/0130353号として公開されたLieberらによる“ナノスコピックワイヤベースのデバイスおよびアレイ(Nanoscopic Wire‐Based Devices and Arrays)”と題する2001年10月24日出願の米国特許出願第10/033369号で2004年8月24日に発行された米国特許第6781166号、Lieberらによる“ナノワイヤ構成単位から組み立てられたトランジスタ、ダイオード、論理ゲートおよび他のデバイス(Transistors, Diodes, Logic Gates and Other Devices Assembled from Nanowire Building Blocks)”と題する2001年9月9日出願の米国特許仮出願第60/348313号、2002年8月29日に米国特許出願公開第2002/0117659号として公開されたLieberらによる“ナノセンサー(Nanosensors)”と題する2001年12月11日出願の米国特許出願第10/020004号、2002年6月20日に国際特許出願公開WO 02/48701号として公開されたLieberらによる“ナノセンサー(Nanosensors)”と題する2001年12月11日出願の国際特許出願PCT/US01/48230号、Lieberらによる“放出要素とセンサを含むナノワイヤデバイス(Nanowire Devices Including Emissive Elements and Sensors)”と題する2002年2月6日出願の米国特許仮出願第60/354642号、Lieberらによる“ナノスケールワイヤおよび関連デバイス(Nanoscale Wires and Related Devices)”と題する2002年5月20日出願の米国特許出願第10/152490号、2003年1月16日に国際特許出願公開WO 03/005450号として公開されたLieberらによる“ナノスケールワイヤおよび関連デバイス(Nanoscale Wires and Related Devices)”と題する2002年5月20日出願の国際特許出願PCT/US02/16133号、2003年5月15日に米国特許出願公開第2003/0089899号として公開されたLieberらによる“ナノスケールワイヤおよび関連デバイス(Nanoscale Wires and Related Devices)”と題する2002年7月16日出願の米国特許出願第10/196337号、Lieberらによる“ナノワイヤコヒアレント光学部品(Nanowire Coherent Optical Components)”と題する2002年7月19日出願の米国特許仮出願第60/357121号、Lieberらによる“ナノスケールワイヤおよび関連デバイス(Nanoscale Wires and Related Devices)”と題する2003年7月16日出願の国際特許出願PCT/US03/22061号、Lieberらによる“ナノワイヤコヒアレント光学部品(Nanowire Coherent Optical Components)”と題する2003年7月21日出願の米国特許出願第10/624135号、2004年1月29日に国際特許出願公開WO 2004/010552号として公開されたLieberらによる“ナノワイヤコヒアレント光学部品(Nanowire Coherent Optical Components)”と題する2003年7月21日出願の国際特許出願PCT/US03/117078号、Whangらによる“ナノスケールアレイおよび関連デバイス(Nanoscale Arrays and Related Devices)”と題する2003年11月20日出願の米国特許仮出願第60/524301号、2003年5月15日に米国特許出願公開第2003/0089899号として公開されたLieberらによる“ナノスケールワイヤおよび関連デバイス(Nanoscale Wires and Related Devices)”と題する2003年11月21日出願の米国特許出願第10/720020号、2004年10月28日に米国特許出願公開第2004/0213307号として公開された、Lieberらによる“ナノワイヤコヒアレント光学部品(Nanowire Coherent Optical Components)”と題する2003年12月11日出願の米国特許出願第10/734086号、Lieberらによる“金属‐半導体化合物を含むナノ構造(Nanostructures Containing Metal‐Semiconductor Compounds)”と題する2004年2月13日出願の米国特許仮出願第60/544800号、McAlpineらによる“強固なナノ構造(Robust Nanostructures)”と題する2004年3月8日出願の米国特許仮出願第60/551634号、2004年9月30日に米国特許出願公開第2004/0188721号として公開されたLieberらによる“ナノスコピックワイヤベースのデバイスおよびアレイ(Nanoscopic Wire‐Based Devices and Arrays)”と題する2004年3月29日出願の米国特許出願第10/812653号、Whangらによる“ナノセンサー(Nanosensors)”と題する2004年6月15日出願の米国特許仮出願第60/579996号、2005年6月2日に米国特許出願公開第2005/0117441号として公開されたLieberらによる“ナノスコピックワイヤベースのデバイスおよびアレイ(Nanoscopic Wire‐Based Devices and Arrays)”と題する2004年10月26日出願の米国特許出願第10/973665号、2005年11月17日に米国特許出願公開第2005/0253137号として公開されたWhangらによる“ナノスケールアレイと関連デバイス(Nanoscale Arrays and Related Devices)”と題する2004年11月22日出願の米国特許出願第10/995075号、Lieberらによる“ナノスケールワイヤベースのデータ蓄積(Nanoscale Wire Based Data Storage)”と題する2004年12月6日出願の米国特許仮出願第60/633733号、Lieberらによる“ナノスケールワイヤと関連デバイス(Nanoscale Wires and Related Devices)”と題する2005年2月14日出願の米国特許出願第11/058443号、2005年10月6日に国際特許出願公開WO 2005/093831号として公開されたLieberらによる“金属‐半導体化合物を含むナノ構造(Nanostructures Containing Metal‐Semiconductor Compounds)”と題する2005年2月14日出願の国際特許出願PCT/US2005/004459号、Lieberらによる“ナノスケールセンサ(Nanoscale Sensors)”と題する2005年5月25日出願の米国特許出願第11/137784号、Lieberらによる“ナノスケールセンサ(Nanoscale Sensors)”と題する2005年8月9日出願の米国特許仮出願第60/707136号、Lieberらによる“ナノスケールワイヤの方法およびデバイス(Nanoscale Wire Methods and Devices)”と題する2006年4月7日出願の米国特許仮出願第60/790322号、およびLieberらによる“ナノセンサーおよび関連技術(Nanosensors and Related Technologies)”と題する2006年6月12日出願の米国特許仮出願第60/812884号。
【0121】
以下の例は、本発明のある実施形態を説明することを企図するものであるが、本発明のすべての範囲を例示するものではない。
【実施例】
【0122】
(実施例1)
この実施例では、ナノワイヤの電界効果トランジスタが調整され、単一のDNA分子を検出するためにナノワイヤの一部の上にPNA配列が固定化される。
【0123】
図2Aにおいて、10nmの金のナノ粒子を触媒粒子として、シランを反応剤として、さらにp型ドーパントとしてジボランを4000:1のSi:B比で用いて、化学気相成長によりシリコンナノワイヤ20を形成した。フォトリソグラフィを用い、規定されたチャンネル長が約2ミクロンで、ナノワイヤ20の両端にコンタクト25をつくるために50nmのニッケルを蒸着したシリコンナノワイヤの電界効果トランジスタ(FET:field effect transistor)を含むデバイス40を作製した。リフトオフの後、デバイス40をH/Nフォーミングガス中において380℃で90秒間プレアニールした。その後、ニッケルの拡散およびシリコンナノワイヤに沿ったニッケルシリサイドの形成を促進するために(すなわち、ナノワイヤ21の第1部分を規定するために)、デバイス40を再度415℃でアニールした(図2B)。直径が10nmのシリコンナノワイヤに対しては、415℃で40秒のアニールにより、約70nmのチャンネルを有する特定のデバイスのSEM像に示されるように(図2D)、約100nmより小さいチャンネル長(すなわち、ナノワイヤの第2部分22)が生じた(図2C)。
【0124】
次に、デバイス40をアルデヒドプロピルトリメトキシシランまたは3‐メルカプトプロピルトリメトキシシラン(エタノール中2%シラン)に60分間さらした(図2Eおよび図2J)。シランは、ナノワイヤ22の第2部分の上の酸化シリコン表面と反応し、通常は60分以内に官能基の単分子層を生成できる。シランへの曝露とエタノールによる十分な洗浄の後、デバイス40をN中において120℃で10分間ベーキングした。その後、デバイスを、30マイクロモルのLys‐O‐PNA配列(アルデヒドシラン表面に対して)と4mMのNaBHCNを含む10mMのリン酸緩衝液20マイクロリットル中においてpH8.3で終夜、または、MCC‐OO‐PNA配列(すなわち、チオルシラン表面に対するマレイミド‐リンカー‐PNA部分)を含む10mMのリン酸緩衝液中においてpH7で4時間、インキュベーションした結果、ナノワイヤの第2部分22にPNA配列が固定化されている(図2F)。未反応のアルデヒド基は、10mM緩衝液中の4mMのNaBHCNの存在下でエタノールアミンとインキュベーションすることにより塞がれた。本実施例で用いたPNA配列はATCATCTTTG(配列番号1)であるが、他のPNA配列も同様に使用できる。加えて、PNA配列を固定化するのに、例えば、図2D〜2Fに示されるように、例えば、エポキシド開環反応を含む(図2I)、他の表面化学反応も用いることができる。
【0125】
次にデバイス40は、例えば、もしナノワイヤFETが電荷をもつ分子によりゲート開閉ができれば、センサとして用いることができる。例えば、以下の実施例で論じられるように、PNA配列を実質的に相補的なDNA配列(例えば、10マイクロモルのPBS中の1ナノモルのDNA)に曝露することにより、DNA配列のPNA配列への会合を測定することができる(図2G)(FETの電子回路を示す図2K参照)。
【0126】
(実施例2)
本実施例では、実施例1で作製した(該実施例で記載されたPNA結合パートナーを有する)ナノスケールセンサを、溶液中のDNA検体を測定するために用いた。PNA配列は、N端がナノワイヤ表面に付着したATCATCTTG(配列番号1)である。すべての測定に用いた緩衝液は10ミリモルのPBSである。DNA配列を同じ緩衝液中に溶解させた。本実施例に用いた二つのDNA配列は、TTTTTTTTTT(配列番号6)(“poly(T)10”)およびATCAAAGATG(配列番号5)である。DNA配列ATCAAAGATG(配列番号5)は、8塩基対の相互作用を通じて、すなわち、DNAのCAAAGATG(配列番号7)はPNAのCATCTTTG(配列番号8)配列に対して、PNAとハイブリダイズすると予測された。本実施例においてナノワイヤを通してかかるAC振幅は30mVであり周波数は17Hzであった。
【0127】
図3Aは、溶液を、緩衝液、1nMのpoly(T)10、緩衝液、1nMのATCAAAGATG(配列番号5)、緩衝液、10nMのATCAAAGATG(配列番号5)、緩衝液の順に供給した後のPNA修飾されたp型シリコンナノワイヤに対して記録された導電度(ナノジーメンス)vs.時間(秒)データを示す。緩衝液および1nMpoly(T)10の両溶液中では測定可能な導電度の信号は観測されなかった。しかし、マッチしたDNA配列ATCAAAGATG(配列番号5)を流すと、図3Aに示すように、一つのDNA分子が一つのPNA分子とハイブリダイズするように見えた。DNA上の負電荷がナノワイヤ中に正の鏡像電荷を発生させ、従ってp型ナノワイヤの導電度がより高い値へと急に変化し、それが図3Aの矢印に示されるようにリアルタイムで測定された。DNAが解離してナノワイヤ表面から離れる時に、ナノワイヤの導電度は急に元に戻った。この振舞(DNAの結合/解離の繰り返し)は、DNA溶液が本実施例で用いたナノワイヤを通り過ぎる間継続した。
【0128】
図3Bおよび図3Cは、1nMおよび10nMのDNA溶液に対する詳細な時間曲線を示す。これらの時間曲線の各々から、DNAがPNAプローブに着脱する滞在時間を測定することができ、図3D〜3Gに示すように、ナノワイヤ表面上のPNAプローブに対するDNA分子の解離および結合速度を測定するのにこれを用いることができた。これらの図において、Non(t)またはNoff(t)は、“オン”または“オフ”状態の滞在時間時間がtより短い事象の数を示し、これを開放または結合の速度定数(すなわち、解離/会合速度定数)の決定に用いることができた。これら図における灰色の線は、これらの過程を一つの指数関数でフィットさせたもので、これから、それぞれkoff(1nM)=0.0065s−1(図3D)、kon(1nM)=0.022s−1(図3E)、koff(10nM)=0.0068s−1(図3F)、およびkon(10nM)=0.14s−1(図3G)が得られた。本実施例において、解離速度定数は、1nMおよび10nMのDNA溶液に対して同様、すなわち、それぞれ0.0065s−1と0.0068s−1であることが見出された。しかし、結合過程に対しては、10nMのDNA溶液に対する速度定数は、1nMのDNA溶液に対するものより約6.4倍大きかった。
【0129】
この実施例は、シリコンナノワイヤ表面への単一分子の結合および解離事象を具体的に検出する、さらにDNAとPNAの間のハイブリダイゼーションに関する濃度に依存した結合および解離の速度定数を測定する、例えば、溶液中のDNA濃度を決定する、能力を実証するものである。
【0130】
(実施例3)
本実施例では、実施例1で作製した(該実施例で記載されたPNA結合パートナーを有する)ナノスケールセンサを、ミスマッチのあるDNAおよび完全にマッチしたDNAの配列を単一分子レベルで測定するために用いた。本実施例では、3つの種類のDNA、すなわち、配列CAAAGATGAT(配列番号2)を有する完全に相補的なDNA、または完全に相補的ではないが実質的に相補的で、但し1つまたは2つのミスマッチを有するDNA、それぞれCAAACATGAT(配列番号3)またはCAAACCTGAT(配列番号4)を用いた。DNAはすべて100nMの濃度であった。本実施例においてナノワイヤを通してかかるAC振幅は20mVで周波数は509Hzであった。
【0131】
図4A〜4Cは、中央部に一つのミスマッチを有するDNA、中央部に二つのミスマッチを有するDNA、および完全にマッチしたDNAを含む溶液に関する導電度(nS)の時間(s)に対するプロットである。実施例2におけるように“オン”および“オフ”状態の滞在時間を測定することにより、結合および解放(すなわち、会合/解離)の速度定数を、一つのミスマッチをもつDNAおよび二つのミスマッチをもつDNAに対して測定した。(それぞれ、koffに対して図4Cおよび図4Dさらに図4Aに対してkon、並びに、それぞれ、koffに対して図4Eおよび図4Fさらに図4Bに対してkon)。図4A〜4Cは、ナノワイヤがDNAに対して曝露された実験の一部を示すに過ぎないことを付記する。これらのデータの曲線フィッティングから、一つのミスマッチに対してkon=1.67s−1およびkoff=0.166s−1、さらに二つのミスマッチに対してkon=1.20s−1およびkoff=14.80s−1が得られた。それ故、結合速度定数は一つおよび二つのミスマッチをもつ配列に対して同程度である一方で、解離速度定数は顕著に異なり、二つのミスマッチは一つのミスマッチに比べて90倍も脱離しやすいことがわかった。さらに、実験の間(>2000s)に完全に相補的なDNAとそのPNA結合パートナーとの間の解離は生じないようであった。
【0132】
この実施例は、それ故、DNA配列における一塩基変異を識別するとともに、結合および解離ステップに内在する生化学的な関連性を明らかにする能力を実証している。
【0133】
(実施例4)
この実施例は、本発明のある実施例によれば、個々のDNAの多数の結合または会合を検出するためにナノワイヤが使えることを示す。
【0134】
本実施例では、実施例1に記載したのと同様の技術を用いてナノワイヤを調整し、その上にナノワイヤの一部PNA配列を固定化した。PNA配列は、ATCATCTTTG(配列番号1)である。PNAを配列CAAAGATGAT(配列番号2)を有するDNA、すなわち、完全に相補的なDNA、に曝露した。導電度vs.時間のデータを図5に示す。この図において、導電度は離散的な“ステップ”で増加し、それらの各々は、一つのDNA分子とナノワイヤ表面上の一つのPNA分子との個々の結合事象に対応する。注目すべきことに、PNAと完全に相補的なDNAの間で解離が検出されなかった。
【0135】
(実施例5)
本実施例では、図7を参照して、本発明のある実施形態に用いられるナノスケールワイヤの感度について説明する。しかし、この理論的な考察は、単に説明の手段として示されるもので、決して限定的と解釈されるべきではない。
【0136】
図7は、FETに用いられる、コンタクト抵抗R(ソース)およびR(ドレイン)を有するナノスケールワイヤを示す。全コンタクト抵抗Rは、
=R+Rとなる。
【0137】
ワイヤそのものにおいて、RとRは、“ゲートで開閉され”ない、または検体がナノスケールワイヤに対して(例えば、ナノスケールワイヤに対して固定化されている結合パートナーに対して)結合しても変化しない、ナノスケールワイヤの部分(それぞれlおよびlの長さを有する部分)の抵抗である。(例えば、シリコンナノワイヤにおける)拡散限界では、
+R=r(l+l)、
ここで、rはナノスケールワイヤの単位長さ当たりの抵抗率である。
【0138】
は、一つの検体分子が結合するとゲートが働く(変化する)ナノワイヤの部分の抵抗として定義できる。
【0139】
【数1】

を結合前の抵抗として、
【0140】
【数2】

を結合後の抵抗として定義すると、その差は、
【0141】
【数3】

であり、
ここで、ΔRは、抵抗変化である。抵抗変化は、例えば、検体(例えば、DNA)の電荷および/またはサイズ、ナノスケールワイヤの電気的特性、および/または検体とナノスケールワイヤとの距離、によって決定され得る。本実施例における取り扱いでは、この値は、所与の検体、ナノスケールワイヤ、およびデバイスの表面化学反応に対して一定として取り扱うことができる。
【0142】
これにより、以下の導電度の変化、ΔG、が得られる。
【0143】
【数4】

それ故、Rが減少するに従い、導電度変化の信号は増加し、さらに長さ(l+l)が減少すると、導電度変化の信号は増加する。加えて、ナノワイヤの良好な電子的特性、例えば、高移動度、さらに良好な表面化学反応により比較的高いΔRおよび比較的高いΔGを得ることができる。従って、より良好なコンタクト、より短い長さ、および/または良好なナノ材料および表面化学反応により一層高い感度、すなわち、ΔGを得ることができる。
【0144】
本発明のいくつかの実施形態がここに記載かつ図解されたが、当業者は、機能を実行するための、および/または結果および/またはここに記載された利点の一つまたはそれ以上を取得するための、様々な他の手段および/または構造を容易に思い巡らすであろうが、かかる変更および/または改良の各々は、本発明の範囲内と見做される。さらに一般的には、当業者は、ここに記載されるすべてのパラメータ、寸法、材料、および構成は、例示することを意図したものであり、実際のパラメータ、寸法、材料、および/または構成は、本発明が教示するところが使われる具体的な一つまたは複数の応用に依存することを理解するであろう。当業者は、ここに記載された発明の特定の実施形態と同等な多くの等価物を認識し、或いはただありきたりの実験を行うだけで確認できるであろう。従って、当然のことながら、前述の実施形態は、ただ例として示しただけであり、添付の請求項およびその等価物の範囲内において、本発明は、具体的に記載され請求されるのとは別のやり方で実施することができる。本発明は、ここに記載される各々の個々の特徴、システム、物品、材料、キット、および/または、方法を指向するものである。加えて、二つまたはそれ以上の特徴、システム、物品、材料、キット、および/または、方法の組み合わせも、もしかかる特徴、システム、物品、材料、キット、および/または、方法が相互に矛盾しないものであれば、本発明の範囲内に含まれる。
ここで定義されかつ使われるすべての定義は、辞書の定義、参照により組み込まれる文献における定義、および/または定義される用語の通常の意味、に優先されると解釈すべきである。
【0145】
本明細書および請求項において用いられる不定冠詞“a”および“an”は、逆のことが明示されなければ、“少なくとも一つ”と解釈すべきである。
【0146】
語句“および/または”は、本明細書および請求項では、そのように結合された要素の“いずれかまたは両方”、すなわち、ある場合には接続的に存在する、他の場合には離接的に存在する、要素と解釈すべきである。“および/または”を伴ってリストアップされた多数の要素も同様の仕方で、すなわち、そのように結合された要素の“一つまたはそれ以上”と解釈すべきである。“および/または”節により具体的に確認された要素とは別他の要素も、具体的に確認された要素と関係するか否かに関わらず、随意的に存在してもよい。それ故、非限定的な例として、“Aおよび/またはB”は、“を含む”のような限定的でない言葉とともに用いられる時には、一実施形態では、(随意的にB以外の要素を含む)Aだけに、また別の実施形態では、(随意的にA以外の要素を含む)Bだけに、さらに別の実施形態では、(随意的に他の要素を含む)AおよびBの両方に、言及することができる。
【0147】
本明細書および請求項では、用語“または”は、上記の定義のように“および/または”と同様の意味をもつと解釈すべきである。例えば、リスト中で項目を分ける時には、“または”または“および/または”は包括的と解釈すべきであり、すなわち、多数の要素または要素のリストのうちの少なくとも一つ、および一つ以上、さらに随意的にリストにない項目を追加的に含む包括的なものと解釈すべきである。“のただ一つ”または“のまさに一つ”のような、または、請求項中で用いられる場合、“のみからなる”のような、明確に逆を示す用語だけは、多数の要素または要素のリストのうちのまさに一つが包含されることに適用する。一般的に、本明細書で用いられる“または”は、“いずれか”、“のうちの一つ”、“のうちのただ一つ”または“のうちのまさに一つ”のような排他的な語句が先行する時には、排他的な選択肢(“一方または他方、但し両方ではない”)を示すものとしてのみ解釈すべきである。“のみから実質的になる”は、請求項中に用いられる時には、特許法の分野で用いられる通常の意味をもつ。
【0148】
本明細書および請求項では、語句“少なくとも一つ”は、一つまたはそれ以上の要素のリストに言及する時には、要素のリスト中の任意の一つまたはそれ以上の要素から選択された少なくとも一つの要素を意味し、但し、要素のリスト中に具体的にリストされた各々およびすべてのうちの少なくとも一つを必ずしも含むものではなく、かつ、要素のリスト中の要素の任意の組み合わせを排除するものではないと解釈すべきである。この定義によれば、具体的に確認される要素と関係ありなしに拘わらず、語句“少なくとも一つ”が言及する要素のリスト中で具体的に確認される要素以外の要素が随意的に存在してもよい。それ故、非限定的な例として、“AおよびBのうちの少なくとも一つ”(もしくは等価的に“AまたはBのうちの少なくとも一つ”、或いは等価的に“Aおよび/またはBのうちの少なくとも一つ”は、一実施形態では、随意的にAを一つとしてそれ以上を含みBは存在しない(さらに随意的にB以外の要素を含む)少なくとも一つに言及し、また別の実施形態では、随意的にBを一つとしてそれ以上を含みAは存在しない(さらに随意的にA以外の要素を含む)少なくとも一つに言及し、さらに別の実施形態では、随意的にAを一つとしてそれ以上を含む少なくとも一つおよび随意的にBを一つとしてそれ以上を含む(および随意的に他の要素を含む)少なくとも一つなどに言及する。
【0149】
当然のことながら、別に明示されなければ、一つ以上の段階または動作を含む、本明細書で請求されるいかなる方法においても、方法の段階または動作の順序は、方法の段階または動作が列挙された順序に必ずしも限定されるものではない。
【0150】
請求項、および上記の明細書において、“備える”、“含む”、“持つ”、“有する”、“伴う”、“保持する”“からなる”などの移行句は、非限定的、すなわち、包含するが限定されないことを意味すると解釈すべきである。“のみからなる”および“のみから実質的になる”だけは、米国特許審査手続便覧第2111.03号に示されるように、それぞれクローズドまたはセミクローズ(semi−closed)移行句である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
核酸と、該核酸の結合パートナーが固定化されているナノスケールワイヤとの間の結合定数および/または解離速度定数を測定する動作を含む、方法。
【請求項2】
前記核酸と前記結合パートナーとの間のミスマッチを測定することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記核酸と前記結合パートナーとの間の5塩基またはそれより少ないミスマッチを測定することを含む、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記核酸と前記結合パートナーとの間の3塩基またはそれより少ないミスマッチを測定することを含む、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記核酸と前記結合パートナーとの間の2塩基またはそれより少ないミスマッチを測定することを含む、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記核酸が単一の核酸分子である、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記結合パートナーが核酸である、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記結合パートナーが少なくとも約10塩基の長さを有する、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記結合パートナーがDNAである、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記結合パートナーがPNAである、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
前記ナノスケールワイヤが、約100nm以下の最大寸法をもつ該ナノスケールワイヤの領域において、該ナノスケールワイヤに対して各々が固定化されている複数の結合パートナーを有する、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
前記核酸がDNAである、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
前記ナノスケールワイヤがナノワイヤである、請求項1に記載の方法。
【請求項14】
前記ナノスケールワイヤがシリコンを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項15】
前記ナノスケールワイヤの少なくとも一部が金属ケイ化物を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項16】
前記ナノスケールワイヤがドープされている、請求項1に記載の方法。
【請求項17】
前記ナノスケールワイヤがコアおよび該コアの少なくとも一部を囲む殻を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項18】
前記ナノスケールワイヤがFETの一部である、請求項1に記載の方法。
【請求項19】
前記核酸が前記結合パートナーに特異的に結合する、請求項1に記載の方法。
【請求項20】
複数の核酸分子を提供する動作であって、各々がナノスケールワイヤに対して固定化されているそれぞれの結合パートナーと会合する、動作と、
該複数の核酸分子の少なくとも一部を該それぞれの結合パートナーから解離させる動作と、
該複数の核酸分子の少なくとも一部が該それぞれの結合パートナーから解離する速度を測定する動作と
を含む、方法。
【請求項21】
前記各々がそれぞれの結合パートナーと会合する複数の核酸分子を提供する動作が、
複数の結合パートナーが固定化されているナノスケールワイヤを提供することと、
該結合パートナーを、該結合パートナーの少なくとも一部に特異的に結合できる複数の核酸分子に曝露することと
を含む、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
前記核酸分子が実質的に同一である、請求項20に記載の方法。
【請求項23】
前記核酸分子と前記結合パートナーとの間のミスマッチを、前記解離速度に基づいて測定することを含む、請求項20に記載の方法。
【請求項24】
前記核酸と前記結合パートナーとの間の5塩基またはそれより少ないミスマッチを測定することを含む、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
前記それぞれの結合パートナーの少なくとも一部が核酸である、請求項20に記載の方法。
【請求項26】
前記それぞれの結合パートナーの少なくとも一部がDNAである、請求項20に記載の方法。
【請求項27】
前記結合パートナーが、約100nm以下の最大寸法を有する前記ナノスケールワイヤの領域において該ナノスケールワイヤに対して各々固定化されている、請求項20に記載の方法。
【請求項28】
検体と、該検体の結合パートナーが固定化されているナノスケールワイヤとの間の結合定数および/または解離速度定数を測定する動作
を含む、方法。
【請求項29】
前記検体が単一の検体分子である、請求項28に記載の方法。
【請求項30】
金属の少なくとも一部を、ナノスケールワイヤの第2部分ではなく、該ナノスケールワイヤの第1部分に拡散させる動作と、
反応体を該ナノスケールワイヤの第2部分に固定化する動作と
を含む方法。
【請求項31】
前記金属が遷移金属を含む、請求項30に記載の方法。
【請求項32】
前記金属がニッケルを含む、請求項30に記載の方法。
【請求項33】
前記ナノスケールワイヤが元素半導体を含む、請求項30に記載の方法。
【請求項34】
前記元素半導体がSiを含む、請求項30に記載の方法。
【請求項35】
前記反応体が核酸である、請求項30に記載の方法。
【請求項36】
前記反応体がDNAである、請求項30に記載の方法。
【請求項37】
前記第1部分が前記金属の前記ナノスケールワイヤへの前記拡散により規定される、請求項30に記載の方法。
【請求項38】
前記ナノスケールワイヤの前記第2部分が約100nm以下の最大寸法を有する、請求項30に記載の方法。
【請求項39】
前記ナノスケールワイヤの温度を制御することによって、該ナノスケールワイヤの前記第2部分のサイズを制御することを含む、請求項30に記載の方法。
【請求項40】
前記金属を前記ナノスケールワイヤ中に拡散させるために該ナノスケールワイヤを加熱することと、前記第2部分が所定のサイズより小さくなったときに該ナノスケールワイヤを冷却することとを含む、請求項39に記載の方法。
【請求項41】
前記反応体を前記ナノスケールワイヤの前記第2部分に固定化する前記動作が、該ナノスケールワイヤにアルデヒド部分を含むシランを付着させることと、反応体を該シランに付着させることとを含む、請求項30に記載の方法。
【請求項42】
金属ケイ化物を含む第1部分を含むナノスケールワイヤ、および
該第1部分と異なる組成を有する該ナノスケールワイヤの第2部分に対して固定化されている反応体
を含む物品。
【請求項43】
前記金属がニッケルを含む、請求項42に記載の物品。
【請求項44】
前記反応体が核酸である、請求項42に記載の物品。
【請求項45】
前記反応体がDNAである、請求項42に記載の物品。
【請求項46】
前記ナノスケールワイヤの前記第2部分が約100nm以下の最大寸法を有する、請求項42に記載の物品。
【請求項47】
前記ナノスケールワイヤの前記第2部分が約50nm以下の最大寸法を有する、請求項46に記載の物品。
【請求項48】
前記ナノスケールワイヤの前記第2部分が約30nm以下の最大寸法を有する、請求項47に記載の物品。
【請求項49】
前記ナノスケールワイヤが単結晶である、請求項42に記載の物品。
【請求項50】
前記ナノスケールワイヤが少なくとも4:1のアスペクト比を有する、請求項42に記載の物品。
【請求項51】
前記ナノスケールワイヤがFETの一部である、請求項42に記載の物品。
【請求項52】
前記金属ケイ化物が化学量論比のシリコンおよび少なくとも一種の金属を含む、請求項42に記載の物品。
【請求項53】
前記ナノスケールワイヤが約500nmより小さい最小寸法を有する少なくとも一つの部分を含む、請求項42に記載の物品。
【請求項54】
バルク金属を半導体ワイヤに隣接して提供する動作、および
該バルク金属の少なくとも一部を該半導体ワイヤの少なくとも一部中に、該半導体ワイヤに沿う長手方向で少なくとも約10nmの距離にわたって拡散させる動作
を含む、方法。
【請求項55】
前記金属を前記半導体ワイヤに沿う長手方向で少なくとも約100nmの距離にわたって拡散させることを含む、請求項54に記載の方法。
【請求項56】
前記金属を前記半導体ワイヤに沿う長手方向で少なくとも約300nmの距離にわたって拡散させることを含む、請求項55に記載の方法。
【請求項57】
前記金属を前記半導体ワイヤに沿う長手方向で少なくとも約500nmの距離にわたって拡散させることを含む、請求項56に記載の方法。
【請求項58】
前記金属を前記半導体ワイヤに沿う長手方向で少なくとも約750nmの距離にわたって拡散させることを含む、請求項57に記載の方法。
【請求項59】
前記バルク金属が遷移金属を含む、請求項54に記載の方法。
【請求項60】
前記バルク金属がニッケルを含む、請求項54に記載の方法。
【請求項61】
前記半導体が元素半導体を含む、請求項54に記載の方法。
【請求項62】
前記元素半導体がシリコン、ガリウム、ゲルマニウム、炭素、スズ、セレン、テルル、ホウ素、またはリンのうちの少なくとも一つを含む、請求項61に記載の方法。
【請求項63】
前記元素半導体がSiを含む、請求項61に記載の方法。
【請求項64】
金属ケイ化物を含む第1部分と、該第1部分と異なる組成を有する第2部分とを含むナノスケールワイヤを含む物品であって、該第2部分は、約100nm以下の最大寸法を有する、物品。
【請求項65】
前記ナノスケールワイヤの第2部分に対して固定化されている反応体をさらに含む、請求項64に記載の物品。
【請求項66】
前記反応体が核酸である、請求項64に記載の物品。
【請求項67】
前記反応体がDNAである、請求項64に記載の物品。
【請求項68】
前記ナノスケールワイヤの前記第2部分が約50nm以下の最大寸法を有する、請求項64に記載の物品。
【請求項69】
前記ナノスケールワイヤの前記第2部分が約30nm以下の最大寸法を有する、請求項68に記載の物品。
【請求項70】
前記ナノスケールワイヤがFETの一部である、請求項64に記載の物品。
【請求項71】
前記金属ケイ化物が化学量論比のシリコンおよび少なくとも一種の金属を含む、請求項64に記載の物品。
【請求項72】
前記ナノスケールワイヤが約500nmより小さい最小寸法を有する少なくとも一つの部分を含む、請求項64に記載の物品。
【請求項73】
第1部分および第2部分を含むナノスケールワイヤを含む物品であって、該第1部分は、該第1部分に固定化された結合パートナーを有し、該第2部分は該結合パートナーを含まない、物品。
【請求項74】
前記第2部分が前記第1部分と異なる組成を有する、請求項73に記載の物品。
【請求項75】
前記第2部分が約100nm以下の最大寸法を有する、請求項73に記載の物品。
【請求項76】
前記第1部分が金属ケイ化物を含む、請求項73に記載の物品。
【請求項77】
前記結合パートナーが核酸を含む、請求項73に記載の物品。
【請求項78】
検体と、
第1部分および第2部分を含むナノスケールワイヤであって、該第2部分は、該第2部分に固定化されている該検体に対する結合パートナーを有し、第1部分は該結合パートナーを含まない、ナノスケールワイヤと
を含む溶液であって、
該検体は該ナノスケールワイヤの該第2部分の最大寸法より大きいデバイの遮蔽長を有する、溶液。
【請求項79】
前記検体が核酸を含む、請求項78に記載の溶液。
【請求項80】
前記検体が荷電されている、請求項78に記載の溶液。
【請求項81】
検体の核酸と、該核酸の結合パートナーに固定化されている結合パートナー核酸との間のミスマッチの数を測定する動作、
を含む、方法。
【請求項82】
前記核酸と前記結合パートナーとの間の5塩基またはそれより少ないミスマッチを測定することを含む、請求項81に記載の方法。
【請求項83】
前記核酸と前記結合パートナーとの間の3塩基またはそれより少ないミスマッチを測定することを含む、請求項82に記載の方法。
【請求項84】
前記核酸と前記結合パートナーとの間の2塩基またはそれより少ないミスマッチを測定することを含む、請求項83に記載の方法。
【請求項85】
前記結合パートナー核酸がPNAである、請求項81に記載の方法。

【図1A】
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【図1B】
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【図1C】
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【図1D】
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【図1E】
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【図2A】
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【図2B】
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【図2C】
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【図2D】
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【図2E】
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【図2F】
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【図2G】
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【図2K】
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【図3A】
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【図3B】
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【図3C】
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【図3D】
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【図3E】
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【図3F】
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【図3G】
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【図4A】
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【図4B】
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【図4C】
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【図4D】
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【図4E】
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【図4F】
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【図4G】
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【図5】
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【図6A】
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【図6B】
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【図7】
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【公表番号】特表2009−540333(P2009−540333A)
【公表日】平成21年11月19日(2009.11.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−515441(P2009−515441)
【出願日】平成19年6月11日(2007.6.11)
【国際出願番号】PCT/US2007/013700
【国際公開番号】WO2008/051316
【国際公開日】平成20年5月2日(2008.5.2)
【出願人】(502072134)プレジデント アンド フェロウズ オブ ハーバード カレッジ (92)
【氏名又は名称原語表記】President and Fellows of Harvard College