説明

ナノダイヤモンドの分散方法

【課題】ナノダイヤモンドの巨大凝集体のない安定的な分散を得る事。
【解決手段】水とエタノールの混合液にナノダイヤモンドを添加し、導入剤としてポリエチレングリコールユニット含有高分子アゾ重合剤(AZOPEG)を添加し、溶存酸素を除去後、60℃〜90℃に過熱し、20hr〜40hr攪拌し反応させることにより安定的なナノダイヤモンドの分散液を得、そして、それをメッキに使用する事によりナノダイヤモンドの凝集体の少ない共析メッキを得た。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ナノダイヤモンドの分散方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一次粒子の粒径が1nm〜10nmのナノダイヤモンドは、一次粒子のままでは安定的に存在する事は困難で、非常に大きな凝集体となって存在している。そして、これを工業的に利用する為に液体中に分散するようにして使用されてきていた。特にメッキ加工する場合に於いては水溶媒を使用する事が一般的には用いられてきた。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、例えば、上記メッキ加工に使用する場合に於いて、水溶媒を使用した場合は大きな凝集体が残り、相手材を傷つけたり、潤滑性が無く異常磨耗している箇所が見受けられた。
【課題を解決するための手段】
【0004】
上記課題を解決する為に本発明に於いては、先ず第一に、水とエタノールの混合液にナノダイヤモンドを添加し、導入剤としてポリエチレングリコールユニット含有高分子アゾ重合剤(AZOPEG)を添加し、溶存酸素を除去後、60℃〜90℃に過熱し、20hr〜40hr攪拌し反応させることを特徴とするナノダイヤモンドの分散方法を採用した。
【0005】
次に、水にナノダイヤモンドを添加し、環境応答性ポリマーを添加しミセルとし、更に硫酸ニッケルを添加後に0.5hr以上攪拌する事を特徴とするナノダイヤモンドの分散方法を採用した。
【0006】
次に、水にナノダイヤモンドを添加し、下記式によって表される物質(側鎖導入PEG)を0.5wt%未満添加しミセルとし、更に硫酸ニッケルを添加後に0.5hr以上攪拌する事を特徴とするナノダイヤモンドの分散方法を採用した。
【0007】
【化2】

【発明の効果】
【0008】
上記方法を採用した事により、ナノダイヤモンドの凝集体の殆どは分散され、メッキ加工に使用した場合に於いても、潤滑性も良くなり、相手材への攻撃性も少なくなり、良好な母材とナノダイヤモンドの共析メッキが得られた。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下実施例により実施形態を詳しく説明する。
【実施例1】
【0010】
第一の実施例を実験結果により説明すると、(a)はカーボンブラックの分散に使用される2,2‘−アゾビス(2−メチルプロピオーナミジン)ジ塩酸塩(以下AMPADと表記する)を導入剤として使用し、(b)は同じくカーボンブラックの分散に使用される2,2’−アゾビス[2−(イミダゾリンー2−イル)プロパン](以下AIPと表記する)を導入剤として使用し、そして、(c)の本発明の方法に使用するポリエチレングリコールユニット含有高分子アゾ重合剤(以下AZOPEGと表記する)を導入剤として使用した試料のそれぞれの実験結果を比較したのが表1である。
【表1】

【0011】
先ず(a)は水10ccとエタノール10ccの混合液にナノダイヤモンド1gを添加し、導入剤としてAMPADを1〜2g添加し、真空封管により溶存酸素を除去してから、56℃〜90℃に加熱し20hr〜40hr攪拌反応させた分散液であり、(b)は水10ccとエタノール10ccの混合液にナノダイヤモンド1gを添加し、導入剤としてAIPを1g添加し、真空封管により溶存酸素を除去してから、44℃〜90℃に加熱し20hr〜40hr攪拌反応させた分散液である。
【0012】
そして、(c)は、水0〜10ccとエタノール20〜10ccの混合液にナノダイヤモンド1g以内を添加し、導入剤としてAZOPEGを5g添加し、真空封管により溶存酸素を除去してから、60℃〜90℃に加熱し20hr〜40hr攪拌反応させた分散方法により得られた物である。
【0013】
上記表1からも解かるように、AMPAD及びAIPに於いては、両方ともカチオン性官能基の導入は確認出来なかった。それに引き換え、AZOPEGの使用に於いては3.5wt%の導入が確認出来た。
【0014】
又、上記(a)により得られた分散液と、(c)により得られた分散液を使用し、金−ナノダイヤモンド複合メッキを行いその分散状態を確認する為に電子顕微鏡写真、図1と図2を得た。
【0015】
図1はメッキ層中にナノダイヤモンドの凝集体すなわち偏析が見られる。一方図2の本発明の方法による分散液を使用したメッキ層に於いては、凝集体が見えず、グラフト重合により装飾されたナノダイヤモンドが共析し、良好な分散状態が得られているのが確認出来る。
【0016】
次に図3から図6は上記図1、図2によるメッキ試料について、SUS304(直径6μ)を相手材として、ボールオンディスク試験を行った。装置はボールオンディスク(ナノテック製、Tribometer)を用いた。
【0017】
図3は、図1のナノダイヤモンドの偏析が見られたメッキの表面のボールオンディスク試験後の電子顕微鏡写真であり、明らかに異常磨耗している箇所が見受けられる。これは、ナノダイヤモンドが巨大な凝集体で共析した為脆い凝集体の部分で破壊が起きた為と考えられる。図4は上記図2の本発明の分散方法により得られたメッキ表面のボールオンディスク試験後の電子顕微鏡写真であり、良好な分散効果により単位面積あたりの粒子数が多い為、全体的に磨耗が抑えられている事が確認出来る。
【0018】
又、図5、図6は相手材すなわち、ボールの磨耗痕の状態の電子顕微鏡写真であり、相手材に対する攻撃性を表している。図5は上記図1及び図3の場合の即ちナノダイヤモンドの偏析が見られた場合の相手材(ボール)の表面であり、凝集体による傷が深く攻撃性が高いと確認出来る。又、図6は、上記図2及び図4の場合の良好な分散状態に対する相手材(ボール)の表面電子顕微鏡写真であり、分散状態が良好な為に攻撃性が低く抑えられている。以上の様に、良好な分散により凝集体の少ない共析メッキが得られた。
【実施例2】
【0019】
次に請求項2に基づく第二の実施例として、以下の条件で試験を行った。水5ccにナノダイヤモンド5mgを添加し、下記式物質(側鎖導入PEG)0.1wt%、0.2wt%、0.5wt%をそれぞれ別々に添加したものに、硫酸ニッケル1.5gをそれぞれ添加後、超音波洗浄器(27khz)で30分攪拌して三つの分散液を得た。目視でそれぞれの分散程度を確認した所、0.1wt%、0.2wt%、の側鎖導入PEGを添加したものは透明で分散していたが、0.5wt%を添加したものは、目視で確認出来る1mm程度の粒子が見受けられ凝集が起きているのが確認出来た。
【0020】
【化3】

【産業上の利用可能性】
【0021】
メッキ加工分野、研磨材、潤滑分野、電子部品加工分野への応用が期待される。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】AMPADを導入剤として分散し得た共析メッキの電子顕微鏡写真
【図2】本発明の第一の実施例のAZOPEG導入剤による共析メッキの電子顕微鏡写真
【図3】図1に示されるメッキ表面へのボールオンディスク試験後の電子顕微鏡写真
【図4】本発明の実施例の図2に示されるメッキ表面へのボールオンディスク試験後の電子顕微鏡写真
【図5】図1に示されるメッキ表面へのボールオンディスク試験後の相手材(ボール)表面の電子顕微鏡写真
【図6】本発明の実施例の図2に示されるメッキ表面へのボールオンディスク試験後の相手材(ボール)表面の電子顕微鏡写真

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水とエタノールの混合液にナノダイヤモンドを添加し、導入剤としてポリエチレングリコールユニット含有高分子アゾ重合剤(AZOPEG)を添加し、溶存酸素を除去後、60℃〜90℃に過熱し、20hr〜40hr攪拌し反応させることを特徴とするナノダイヤモンドの分散方法。
【請求項2】
水にナノダイヤモンドを添加し、環境応答性ポリマーを添加しミセルとし、更に硫酸ニッケルを添加後に0.5hr以上攪拌する事を特徴とするナノダイヤモンドの分散方法。
【請求項3】
水にナノダイヤモンドを添加し、下記式(1)によって表される物質(側鎖導入PEG)を0.5wt%未満添加しミセルとし、更に硫酸ニッケルを添加後に0.5hr以上攪拌する事を特徴とするナノダイヤモンドの分散方法。
【化1】


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2008−150250(P2008−150250A)
【公開日】平成20年7月3日(2008.7.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−340916(P2006−340916)
【出願日】平成18年12月19日(2006.12.19)
【出願人】(391015638)アイテック株式会社 (16)
【Fターム(参考)】