ナノチューブファブリック層又はフィルム内の密度、多孔率及び/又は間隙サイズを制御するための方法
ナノチューブファブリック層内の密度、多孔率及び/又は間隙を制御する方法を開示する。一実施形態では、ナノチューブファブリック内のラフト化の度合いを制御することによりこれが達成される。当該方法は、ナノチューブ塗布溶液中に拡散した個々のナノチューブ要素の濃度を調整することを含む。高濃度の個々のナノチューブ要素は、このナノチューブ塗布溶液を使用して形成されるナノチューブファブリック層内のラフト化を促進する傾向にあり、他方、低濃度はラフト化を抑制する傾向にある。別実施形態では、当該方法は、ナノチューブ塗布溶液中に拡散したイオン粒子の濃度を調整することを含む。低濃度のイオン粒子は、このナノチューブ塗布溶液を使用して形成されるナノチューブファブリック層内のラフト化を促進する傾向にあり、他方、高濃度はラフト化を抑制する傾向にある。別実施形態では、これら両方の濃度パラメータが調整される。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般的にナノチューブファブリック(nanotub fabric)層及びフィルムに関し、特には、ナノチューブファブリック層及びフィルム内の密度、多孔率及び/又は間隙サイズを制御する方法に関する。
【0002】
(関連出願)
本発明は、2010年2月12日の米国仮特許出願61/304,045の優先権を主張するものであり、その内容を本文に援用する。本出願は、本特許出願の譲受人に譲渡された以下の米国特許にも関連し、これらの内容は本文に援用する。
【0003】
2002年4月23日出願のナノチューブフィルム及び物品(米国特許第6,835,591号)。
【0004】
2003年1月13日出願のカーボンナノチューブフィルム、層、ファブリック、リボン、要素及び製品を形成するためにプレフォーム(母材)ナノチューブを使用する方法(米国特許第7,335,395号)。
【0005】
2004年2月11日出願の水平配置ナノファブリック製品を有する装置及びその製造方法(米国特許第7,259,410号)。
【0006】
2004年2月11日出願の垂直配置ナノファブリック製品を有する装置及びその製造方法(米国特許第6,924,538号)。
【0007】
2005年9月20日出願のカーボンナノチューブを使用する抵抗素子(米国特許第7,365,632号)。
【0008】
2004年6月3日出願の高純度ナノチューブフィルムの形成のためのスピンコーティング可能な液体(米国特許第7,375,369号)。
【0009】
本出願は、以下の米国特許出願にも関連し、本特許出願の譲受人に譲渡されており、これらの内容は本文に援用する。
【0010】
2003年1月13日出願のカーボンナノチューブフィルム、層、ファブリック、リボン、要素及び製品の製造方法(米国特許出願第10/341,005号)。
【0011】
2004年6月3日出願の高純度ナノチューブファブリック及びフィルム(米国特許出願第10/860,332号)。
【0012】
2005年12月15日出願の水性カーボンナノチューブ塗布(アプリケータ)液、及び、その塗布液を製造する方法(米国特許出願第11/304,315号)
【0013】
2009年7月31日出願の異方性ナノチューブファブリック層及びフィルム、並びに、その製造方法(米国特許出願第12/533,687号)
【背景技術】
【0014】
本明細書を通して、関連技術の説明は、このような技術が広く知られている又は技術分野の一般知識の一部を形成することの告白とみなされるべきでない。
【0015】
ナノチューブファブリック(繊維)層及びフィルムが複数の電子構造及び装置に使用されている。例えば、バーティン等による米国特許出願第11/835,856号(その内容を本文に援用する。)は、ナノチューブファブリック層を使用して、限定されないが、ブロックスイッチ、プログラム可能な抵抗素子、プログラム可能な論理装置などの不揮発装置を実現する方法を教示する。バーティン等による米国特許第7,365,632号(その内容を本文に援用する。)は、薄いフィルムナノチューブに基づいた抵抗器の製造にこのようなファブリック層及びフィルムを使用することを教示する。ワード等による米国特許出願第12/066,063号(その内容を本文に援用する。)は、電子装置及びシステムに熱伝導素子を形成するようにこのようなナノチューブファブリック及びフィルムを使用することを教示する。
【0016】
様々な従来技術(詳細は本文に援用する。)を通して、ナノチューブ素子が、ナノチューブファブリック層又はフィルムの形成前又は後に導電性、非導電性、半導電性に構成され、このようなナノチューブファブリック層及びフィルムが、電子装置又はシステム内で複数の機能を発揮することを可能とする。さらに、場合によっては、ナノチューブファブリック層及びフィルムの導電性を、2又はそれ以上の不揮発状態の間で調整可能であり、これはバーティン等による米国特許出願第11/280,786号(その内容を本文に援用する。)に教示されている。これにより、このようなナノチューブファブリック層及びフィルムが電子システム内にメモリ又は論理素子として使用される。
【0017】
ワード等による米国特許第7,334,395号(その内容を本文に援用する。)は、プリフォーム(母材)ナノチューブを使用して基板素子にナノチューブファブリック層及びフィルムを形成するための複数の方法を教示する。該方法は、限定されないが、スピンコーティング(ここでは、ナノチューブ溶液が基板に配置され、そしてスピンし、当該溶液を均等に基板表面に亘って分配する。)、スプレーコーティング(ここでは、複数のナノチューブがエアロゾル溶液内に懸濁され、そして、基板に亘って分散される。)、及び、ディップコーティング(複数のナノチューブが溶液内に懸濁され、基板素子が溶液内に下がり、そして離脱する。)を含む。さらに、セン等による米国特許第7,375,369号(その内容を本文に援用する。)及びゲンシウ等による米国特許出願第11/304,315号(その内容を本文に援用する。)は、スピンコーティング工程を介して基板素子に亘ってナノチューブファブリック層を形成するのに適したナノチューブ溶液を教示している。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0018】
本発明は、ナノチューブファブリック層及びフィルム内の密度、多孔率及び/又は間隙サイズを制御する方法に関する。
【課題を解決するための手段】
【0019】
特には、本発明は、複数の個々のナノチューブ要素を含むナノチューブファブリック層を提供し、ナノチューブファブリック層内の個々のナノチューブ要素間の開領域がナノチューブファブリック層内の間隙(ギャップ)を定めると共に、当該間隙が物理的体積において制限されることにより、しきい値よりも小さい。実施形態によっては、ナノチューブスイッチング装置がこのようなナノチューブファブリック層を含む。
【0020】
また、本発明は、複数の個々のナノチューブ要素を含むナノチューブファブリック層を提供し、ナノチューブファブリック層内の個々のナノチューブ要素間の開領域がナノチューブファブリック層の多孔率を定めると共に、当該多孔率が選択されて、ナノチューブファブリック層内の均一な密度の個々のナノチューブ要素を提供する。実施形態によっては、ナノチューブファブリック層は高い多孔率を有している。実施形態によっては、ナノチューブファブリック層は低い多孔率を有している。実施形態によっては、ナノチューブスイッチング装置がこのようなナノチューブファブリック層を含む。
【0021】
また、本発明は、ナノチューブ塗布溶液(nanotube application solution)を準備する方法を提供する。方法は、原ナノチューブ塗布溶液を形成することを第1に含み、この原ナノチューブ塗布溶液は、液状媒体に分散した、第1濃度レベルの第1の複数のナノチューブ要素と、第2濃度レベルの第2の複数のイオン粒子とを含む。当該方法は、ナノチューブ塗布溶液を使用して形成されるナノチューブファブリック層内に発現するラフト化(rafting)の度合いを制御するように、第1の複数のナノチューブ要素の第1濃度レベル及び第2の複数のイオン粒子の第2濃度レベルの少なくとも一方を調整するステップをさらに含む。
【0022】
本発明の一実施形態によれば、第1の複数のナノチューブ要素がカーボンナノチューブである。
【0023】
本発明の別実施形態によれば、第1の複数のナノチューブ要素が単層カーボンナノチューブである。
【0024】
本発明の別実施形態によれば、第1の複数のナノチューブ要素が多層カーボンナノチューブである。
【0025】
本発明の別実施形態によれば、第2の複数のイオン粒子が硝酸アンモニウム塩を含む。
【0026】
本発明の別実施形態によれば、第2の複数のイオン粒子がギ酸アンモニウムを含む。
【0027】
本発明の別実施形態によれば、第2の複数のイオン粒子が酢酸アンモニウムを含む。
【0028】
本発明の別実施形態によれば、第2の複数のイオン粒子が炭酸アンモニウムを含む。
【0029】
本発明の別実施形態によれば、第2の複数のイオン粒子が重炭酸アンモニウム、イオン性有機種及びイオン性ポリマーを含む。
【0030】
本発明の別実施形態によれば、第2の複数のイオン粒子がイオン性有機種を含む。
【0031】
本発明の別実施形態によれば、第2の複数のイオン粒子がイオン性ポリマーを含む。
【0032】
本発明の別実施形態によれば、第2の複数のイオン粒子が無機塩を含む。
【0033】
本発明の別実施形態によれば、液状媒体が水性溶液を含む。
【0034】
本発明の別実施形態によれば、液状媒体が硝酸溶液を含む。
【0035】
本発明の別実施形態によれば、液状媒体が硫酸溶液を含む。
【0036】
本発明の別実施形態によれば、ナノチューブ塗布溶液中のナノチューブ要素の濃度レベルが増加して、この溶液で形成されるナノチューブファブリック層内のラフト化を促進する。
【0037】
本発明の別実施形態によれば、ナノチューブ塗布溶液中のナノチューブ要素の濃度レベルが減少して、この溶液で形成されるナノチューブファブリック層内のラフト化を抑制する。
【0038】
本発明の別実施形態によれば、ナノチューブ塗布溶液中のイオン粒子の濃度レベルが増加して、この溶液で形成されるナノチューブファブリック層内のラフト化を抑制する。
【0039】
本発明の別実施形態によれば、ナノチューブ塗布溶液中のイオン粒子の濃度レベルが減少して、この溶液で形成されるナノチューブファブリック層内のラフト化を促進する。
【0040】
本発明の他の特徴及び利点が、以下の図面に関連して提供される本発明の説明から明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】図1は、個々のナノチューブ要素が本質的にラフト化していないナノチューブファブリック層を示す。
【図2A】図2A〜Bは、個々のナノチューブ要素が本質的にラフト化していないナノチューブファブリック層の(異なる倍率の)SEM画像である。
【図2B】図2A〜Bは、個々のナノチューブ要素が本質的にラフト化していないナノチューブファブリック層の(異なる倍率の)SEM画像である。
【図3】図3は、本発明の一実施形態に従って、個々のナノチューブ要素の実質的なラフト化を表すナノチューブファブリック層を示す。
【図4A】図4A〜Bは、本発明の一実施形態に従った、個々のナノチューブ要素の実質的なラフト化を表すナノチューブファブリック層の(異なる倍率の)SEM画像である。
【図4B】図4A〜Bは、本発明の一実施形態に従った、個々のナノチューブ要素の実質的なラフト化を表すナノチューブファブリック層の(異なる倍率の)SEM画像である。
【図5】図5は、本発明に従って、高度にラフト化したナノチューブファブリック層を形成するように、ナノチューブ塗布溶液を準備する方法を示した工程概略図である。
【図6】図6は、本発明に従って、実質的にラフト化していないナノチューブファブリック層を形成するように、ナノチューブ塗布溶液を準備する方法を示した工程概略図である。
【図7】図7は、導電率読み取り値(μS/cm)対複数のナノチューブ塗布溶液で取得された硝酸アンモニウム塩のレベル(ppm)をプロットしたグラフである。
【図8A】図8A〜Cは、本発明の方法に従って形成された例示のナノチューブファブリック層のSEM画像(拡大した複数の倍率)であって、約11.6%のラフト化を表している。
【図8B】図8A〜Cは、本発明の方法に従って形成された例示のナノチューブファブリック層のSEM画像(拡大した複数の倍率)であって、約11.6%のラフト化を表している。
【図8C】図8A〜Cは、本発明の方法に従って形成された例示のナノチューブファブリック層のSEM画像(拡大した複数の倍率)であって、約11.6%のラフト化を表している。
【図9A】図9A〜Cは、本発明の方法に従って形成された例示のナノチューブファブリック層のSEM画像(拡大した複数の倍率)であって、約18.9%のラフト化を表している。
【図9B】図9A〜Cは、本発明の方法に従って形成された例示のナノチューブファブリック層のSEM画像(拡大した複数の倍率)であって、約18.9%のラフト化を表している。
【図9C】図9A〜Cは、本発明の方法に従って形成された例示のナノチューブファブリック層のSEM画像(拡大した複数の倍率)であって、約18.9%のラフト化を表している。
【図10A】図10A〜Cは、本発明の方法に従って形成された例示のナノチューブファブリック層のSEM画像(拡大した複数の倍率)であって、約5.5%のラフト化を表している。
【図10B】図10A〜Cは、本発明の方法に従って形成された例示のナノチューブファブリック層のSEM画像(拡大した複数の倍率)であって、約5.5%のラフト化を表している。
【図10C】図10A〜Cは、本発明の方法に従って形成された例示のナノチューブファブリック層のSEM画像(拡大した複数の倍率)であって、約5.5%のラフト化を表している。
【図11A】図11A〜Cは、本発明の方法に従って形成された例示のナノチューブファブリック層のSEM画像(拡大した複数の倍率)であって、約37.8%のラフト化を表している。
【図11B】図11A〜Cは、本発明の方法に従って形成された例示のナノチューブファブリック層のSEM画像(拡大した複数の倍率)であって、約37.8%のラフト化を表している。
【図11C】図11A〜Cは、本発明の方法に従って形成された例示のナノチューブファブリック層のSEM画像(拡大した複数の倍率)であって、約37.8%のラフト化を表している。
【図12A】図12A〜Cは、本発明の方法に従って形成された例示のナノチューブファブリック層のSEM画像(拡大した複数の倍率)であって、実質的にラフト化していない状態を表している。
【図12B】図12A〜Cは、本発明の方法に従って形成された例示のナノチューブファブリック層のSEM画像(拡大した複数の倍率)であって、実質的にラフト化していない状態を表している。
【図12C】図12A〜Cは、本発明の方法に従って形成された例示のナノチューブファブリック層のSEM画像(拡大した複数の倍率)であって、実質的にラフト化していない状態を表している。
【図13A】図13A〜Cは、本発明の方法に従って形成された例示のナノチューブファブリック層のSEM画像(拡大した複数の倍率)であって、実質的にラフト化していない状態を表している。
【図13B】図13A〜Cは、本発明の方法に従って形成された例示のナノチューブファブリック層のSEM画像(拡大した複数の倍率)であって、実質的にラフト化していない状態を表している。
【図13C】図13A〜Cは、本発明の方法に従って形成された例示のナノチューブファブリック層のSEM画像(拡大した複数の倍率)であって、実質的にラフト化していない状態を表している。
【図14A】図14A〜Cは、本発明の方法に従って形成された例示のナノチューブファブリック層のSEM画像(拡大した複数の倍率)であって、約13.1%のラフト化を表している。
【図14B】図14A〜Cは、本発明の方法に従って形成された例示のナノチューブファブリック層のSEM画像(拡大した複数の倍率)であって、約13.1%のラフト化を表している。
【図14C】図14A〜Cは、本発明の方法に従って形成された例示のナノチューブファブリック層のSEM画像(拡大した複数の倍率)であって、約13.1%のラフト化を表している。
【図15A】図15A〜Cは、本発明の方法に従って形成された例示のナノチューブファブリック層のSEM画像(拡大した複数の倍率)であって、約10.0%のラフト化を表している。
【図15B】図15A〜Cは、本発明の方法に従って形成された例示のナノチューブファブリック層のSEM画像(拡大した複数の倍率)であって、約10.0%のラフト化を表している。
【図15C】図15A〜Cは、本発明の方法に従って形成された例示のナノチューブファブリック層のSEM画像(拡大した複数の倍率)であって、約10.0%のラフト化を表している。
【図16A】図16A〜Cは、本発明の方法に従って形成された例示のナノチューブファブリック層のSEM画像(拡大した複数の倍率)であって、約35.0%のラフト化を表している。
【図16B】図16A〜Cは、本発明の方法に従って形成された例示のナノチューブファブリック層のSEM画像(拡大した複数の倍率)であって、約35.0%のラフト化を表している。
【図16C】図16A〜Cは、本発明の方法に従って形成された例示のナノチューブファブリック層のSEM画像(拡大した複数の倍率)であって、約35.0%のラフト化を表している。
【発明を実施するための形態】
【0042】
本発明は、ナノチューブファブリック層及びフィルムの所定領域の複数のナノチューブ要素の数を増減する方法を教示する。このアプローチにより、選択的に高密度、低多孔率のナノチューブファブリックを制御して形成可能である。このように、例えば、本質的に、ファブリック内のナノチューブ間の全間隙又は全ポア(孔)が所定サイズしかないナノチューブファブリックを形成可能である。これは、均一なナノチューブの分散が必要である非常に小さい回路サイズの装置にとって特に有用である。例えば、高密度及び低多孔率のファブリックがパターニング及びエッチングされて、残りのナノチューブ製品(nanotube article)が、ファブリック内の大きいポアの結果としてのナノチューブの欠損部とは対照的にナノチューブを含むことが効果的に保証される。現在実施されているリソグラフィ技術とともに形状寸法が小さくなるにつれて、多孔率を最小化することはより重要になり、ファブリックがエッチングされるときに機能性回路素子の高い歩留まりを確保する。例えば、高密度、低多孔率ファブリックは、最新のリソグラフィ技術による小回路のサイズよりも小さい、ナノチューブが存在しない領域(すなわち、ポア)を有することができる(例えば、ポアが約10nmより小さい)。すなわち、密度又はポアサイズが制御されることにより、動作に必要な最小数のナノチューブ要素が最新のリソグラフィ技術の臨界的な形状寸法(20nm以下)に利用可能であり、20nmより小さくすることができる。
【0043】
逆に、必要に応じて、高多孔率、低密度ファブリックを形成することに本方法を使用することが可能である。例えば、ナノチューブが分散されてナノファブリックの光学透過性を増加させる、ナノチューブファブリックが望まれている。他の用途では、ナノチューブファブリックの複数の層から形成されたより厚いファブリックが望まれている場合、ナノチューブの濃度を制限することにより、コスト及びファブリックの電気抵抗を低減することに好適であろう。さらに、低密度及び高多孔率のために、ナノチューブをファブリックに亘って均一に分散することもまた重要である。
【0044】
ファブリック多孔率及び密度は、限定されないが、ナノチューブファブリック内のラフト化(rafting)を制御する技術を含む種々の方法で制御可能である。これらファブリックは、ナノチューブスイッチング装置に使用可能である。
【0045】
セン等による米国特許第7,375,369号及びゲンシウ等による米国特許出願第11/304,315号(これら内容を本文に援用する。)に記載されているとおり、ナノチューブファブリック及びフィルムは、(例えば、限定されないが、複数の個々のナノチューブ要素が水溶液に懸濁された)ナノチューブ塗布溶液を基板素子に亘って適用することにより形成可能である。例えば、スピンコーティングプロセスを使用可能であり、基板素子に亘ってナノチューブ要素を均一に分布させ、実質的に均一なナノチューブ要素の層を作成する。他の場合では、他のプロセス(限定されないが、スプレーコーティングプロセス又はディップコーティングプロセス)を使用可能であり、基板素子に亘ってナノチューブ要素を適用及び分布させる。
【0046】
本明細書の実施形態で使用及び参照されるナノチューブ要素は、単層(単一壁)ナノチューブ、多層ナノチューブ、これらの混合物であり、且つ、可変長とすることができることに留意すべきである。さらに、ナノチューブは、導電性、半導電性又はその組み合わせであってもよい。
【0047】
多くの用途において、形成されたナノチューブファブリック層の多孔率を制御すること、つまり、ファブリック層内の個々のナノチューブ要素が一緒に近接して充填される度合い、或いは、まばらに分布される度合いを制御することが望まれている。一例では、高多孔率の均一なナノチューブファブリックが、約50nmの大きさのボイド(すなわちファブリック内の個々のナノチューブ要素間の間隙(gap))を有し得る。別例では、低多孔率の均一なナノチューブファブリック層が、約10nmの大きさのボイドを有し得る。
【0048】
用途によっては、ナノチューブファブリック層の多孔率又はファブリック内のナノチューブの密度を他の変数(限定されないが、例えば、ファブリック内の個々のナノチューブ要素の長さ、及び、ナノチューブファブリック層の厚み)とともに制御することによって、ナノチューブファブリック層のシート抵抗を制御可能である。ナノチューブファブリック層の多孔率を制御することにより、このようなファブリック層は、1kオーム/スクエアから約1Mオーム/スクエアのシート抵抗を有するように確実に構成可能である。
【0049】
別の応用では、ナノチューブファブリック層の多孔率を制限することにより、ナノチューブスイッチング装置のアレイ(配列)の密度を増加可能である。バーティン等による米国特許出願第11/280,786号(その内容を本文に援用する。)は、不揮発性の2つのターミナル(末端)ナノチューブスイッチング構造を教示する。このナノチューブスイッチング構造は、(少なくとも1つの実施形態において)2つの電気的に絶縁された電極素子間に配置されたナノチューブファブリック製品を有する。バーティンが教示するように、異なる電圧を上記電極素子に亘って配置することにより、ナノチューブファブリック製品の抵抗状態を、複数の不揮発状態の間で切り替え可能である。つまり、実施形態によっては、ナノチューブファブリック製品は、相対的に高い抵抗状態(結果として、本質的に2つの電極素子の間の開回路)と相対的に低い抵抗状態(結果として、本質的に2つの電極素子の間の短絡)との間で繰り返し切り替え可能である。
【0050】
このようなナノチューブスイッチング装置のアレイの製造は、ナノチューブファブリック層のパターニングを含み、これら複数のナノチューブファブリック製品を実現する。ナノチューブファブリック層の多孔率(又は、より具体的には、ナノチューブファブリック層内のボイドのサイズ)は、これらナノチューブファブリック製品がパターニングされる形状寸法を制限し得る。例えば、個々のナノチューブスイッチング装置が約20nm四方である(つまり、各装置内のナノチューブファブリック製品が本質的に20nm×20nmである)ナノチューブスイッチング装置アレイを製造するために、ナノチューブファブリック層内のボイドが約10nmであるような、ナノチューブファブリックアレイの多孔率が必要である。このように、(例えば、アレイ内の個々のナノチューブスイッチング要素がほぼ20nmの形状でパターニングされた)高密度ナノチューブメモリアレイは、高い密度(つまり、約10nm以下のボイドサイズを有する低多孔性)のナノチューブファブリック層を必要とする。
【0051】
ナノチューブファブリック層の多孔率を制御する1つの方法は、ナノチューブファブリック層内のラフト化の度合い(つまり、その側壁に沿って1つに束ねられる傾向にあるファブリック層内のナノチューブ要素のパーセンテージ)を制御することである。ナノチューブファブリック層の形成中に所定のパラメータを制御することにより、高度にラフト化(rafted)された(結果として、例えば、約10nmのボイドを有する高密度)、適度にラフト化された(結果として、例えば、約25nmのボイドを有する少しばかりの密度)、或いは、実質的にラフト化されていない(結果として、例えば、約50nmのボイドを有する高多孔率)状態に、ナノチューブファブリック層を形成可能である。
【0052】
図1は、実質的にラフト化されていないナノチューブファブリック層100を示している。上述したとおり、このようなファブリック層内の個々のナノチューブ要素110は、一様な高多孔性ファブリックに形成され、個々のナノチューブ要素が実質的にランダムな配向に配置される。例えば、このようなファブリック層100のボイドは、25nm〜50nmの範囲となり、これは単一ファブリック層内で約1000kオーム/スクエア〜1Mオーム/スクエアのシート抵抗に対応する。図1に示されたナノチューブファブリック層100上に複数のファブリック層を(例えば、マルチスピンコーティング工程を通して)適用することにより、実質的に同じ多孔率でより厚いファブリック層を形成してもよい。
【0053】
図2A及び2Bは、実質的にラフト化されておらず、図1で示したナノチューブファブリック層100の類似の例示されたナノチューブファブリック層(それぞれ201及び202)を示すSEM画像である。図2Aが10,000x倍率でのナノチューブファブリック層201を示し、図2Bが75,000x倍率でのナノチューブファブリック層202を示す。両方の画像では、ランダム配向(本質的なラフト化の完全な欠落)が、例示のナノチューブファブリック層において明らかとなっている。
【0054】
図3は、ナノチューブファブリック層300を示し、当該ナノチューブファブリック層300は、多くの束ねられていないナノチューブ要素310と同様に、適切な数のラフト化されたナノチューブ束(bundle)320を含んでいる。このようなファブリック層では、ラフト化された束320内の個々のナノチューブ要素が、ナノチューブファブリック層300の該領域内の多孔率を最少化するように、一緒に密に充填される。このように、ナノチューブファブリック層300は、図1に示されたファブリック層100と比較して明らかに高密度である。例えば、このようなファブリック層300内のボイドは、10nm〜20nmの範囲となり、これは単一ファブリック層内で約10kオーム/スクエア〜100kオーム/スクエアのシート抵抗に対応する。図3に示されたナノチューブファブリック層300上に複数のファブリック層を(例えば、マルチスピンコーティング工程を通して)適用することにより、実質的に同じ多孔率でより厚いファブリック層を形成してもよい。
【0055】
図4A及び4Bは、適度の量のラフト化を表し、図3で示したナノチューブファブリック層300の類似の例示されたナノチューブファブリック層(それぞれ401及び402)を示すSEM画像である。図4Aが10,000x倍率でのナノチューブファブリック層401を示し、図4Bが75,000x倍率でのナノチューブファブリック層402を示す。両方の画像では、ランダム配向のラフト化されたナノチューブ要素の束(それぞれ410、420)が、例示のナノチューブファブリック層において明らかとなっている。
【0056】
ある場合には、ナノチューブファブリック層の形成中に、ファンデルワールス相互作用(個々のナノチューブ要素間の原子間力)、又は、Π−Π相互作用(ナノチューブ構造に沿ったΠ軌道の自由電子の存在によるスタッキング効果)によって、ナノチューブ要素の群がそれらの側壁に沿って1つに束となるので、個々のナノチューブ要素のラフト化が起こり得る。塗布溶液(つまり、液状媒体内の個々のナノチューブ要素の分散)では、溶液内の所定のイオン種の存在により、ファンデルワールス及びΠ―Π相互作用を促進又は抑制可能である。このようなイオン種は、限定されないが、アンモニウム塩、硝酸塩、硝酸アンモニウム塩、ギ酸アンモニウム、酢酸アンモニウム、炭酸アンモニウム、重炭酸アンモニウム、イオン性有機種、イオン性ポリマー、及び、無機塩を含む。このようなイオン種の塗布溶液内の高い濃度(例えば、水性ナノチューブ塗布溶液中の約20ppm以上の硝酸アンモニウム塩)は、それらの相互作用を妨げる傾向にあり、そのため、この塗布溶液で形成されるナノチューブファブリック層内のラフト化の度合いを減少させる。反対に、このようなイオン種の塗布溶液内の低い濃度(例えば、水性ナノチューブ塗布溶液中の約10ppm以下の硝酸アンモニウム塩)は、複数のこれらラフト化した束をナノチューブファブリック層内に形成することを可能とする。
【0057】
複数のナノチューブ要素がそれらの側壁に沿って1つに束となり、秩序的にラフト(いかだ)のような構造を実現する、このラフト化効果は、ゲンシウ等による米国特許出願第11/304,315号(その内容を本文に援用する。)内で記述された所謂クランピング欠損(clumping defect)とは異なる。ゲンシウによって記述されたクランピング欠損は、溶液中の個々のナノチューブ要素の沈殿又は凝集の結果であり、溶液中で個々のナノチューブ要素が互いの周りに捩れてクランプ(塊)状構造に束となることにより特徴付けられる。このような望ましくないクランピング欠損は、非均一且つ非平面のナノチューブファブリック層を生成する。反対に、本発明に記述されたとおり、ほとんどの場合において、ラフト化されたナノチューブファブリックは、実質的に均一な状態のまま残り、すなわち、ナノチューブファブリック層の密度を制御するように採用可能である。さらに、ここで説明したラフトは、本質的に2次元のナノチューブ構造であり、すなわち、ラフトの高さは一般的に1つのナノチューブの厚みである。ゲンシウに参照されたクランピング欠損は、一般的に、3次元のナノチューブ塊体を生成する。
【0058】
また、塗布溶液でナノチューブ要素の濃度を制御することにより、つまり、塗布溶液中に存在する単位体積当たりの個々のナノチューブ要素の数を制御することにより、ラフト化を促進(又は抑制)可能である。高濃度の塗布溶液(例えば、約35の光学密度(optical density)を有する塗布溶液)内の近接配置されたナノチューブ要素間のファンデルワールス相互作用は、このような溶液で形成されたナノチューブファブリック層内のラフト化の発生を増加させる傾向にあり得る。反対に、比較的低濃度(例えば、約10の光学密度を有する塗布溶液)のナノチューブ要素は、これらファンデルワールス相互作用の状況を明らかに減少させ、結果としてラフト化を低減する。光学密度(本技術分野の当業者にとってよく知られている分光学技術)が塗布溶液中のナノチューブ要素の密度を特徴付けるのに典型的に使用されることに留意すべきである。該技術は、ナノチューブ塗布溶液により吸収された光量、つまり、本質的には、このような溶液内の個々のナノチューブ要素によって吸収された光量を測定することに依り、溶液内に分散したナノチューブ要素の濃度を決定する。例えば、光学密度30の溶液は、溶液中のナノチューブ要素の約0.1%の重量濃度に対応している。
【0059】
ナノチューブファブリック層内のラフト化の度合いを制御するための2つのパラメータ(塗布溶液中のイオン種濃度及び塗布溶液中のナノチューブ濃度)の使用について、図7A〜7C、8A〜8C、9A〜9C、10A〜10C及び11A〜11Cに示された例示のナノチューブファブリック層において図示し、詳細に説明する。
【0060】
さらに、所定の応用において、ナノチューブ塗布溶液の他のパラメータが、該溶液で形成されるナノチューブファブリック層がラフト化する度合いに貢献し得る。このようなパラメータは、限定されないが、他の炭素同素体(例えば、アモルファスカーボン)の存在、ウエハ又は他の基板表面にそれが適用されるときの塗布溶液の温度、使用される液状媒体の化学組成、ウエハ又は他の基板の表面に塗布溶液を堆積するために使用される方法、及び、溶液の酸性度を含む。
【0061】
図5は、ラフト化されたナノチューブファブリック層を形成するのに非常に適した本発明の開示の方法に従った、例示の塗布溶液の準備工程を示している。
【0062】
図5に示された塗布溶液の準備工程の最初の段階で、複数の個々のナノチューブ要素505が、液状媒体510(例えば、限定されないが、水性溶液、硫酸溶液又は硝酸溶液)内に分散されて、原ナノチューブ塗布溶液515を形成する。原ナノチューブ塗布溶液515は、複数の個々のナノチューブ要素560、複数の不純物565(例えば、限定されないが、残留金属触媒粒子、アモルファスカーボン粒子、及び他の炭素質不純物)、及び、所定濃度のイオン粒子570(例えば、限定されないが、アンモニウム塩、硝酸塩、硝酸アンモニウム塩、ギ酸アンモニウム、酢酸アンモニウム、炭酸アンモニウム、重炭酸アンモニウム、イオン性有機種、イオン性ポリマー、及び、無機塩)を含む。そして、原ナノチューブ塗布溶液515は、フィルタ/浄化工程520を通過し、かなりの割合の不純物565を除去して、浄化ナノチューブ塗布溶液525を実現する。また、図5の浄化ナノチューブ塗布溶液525に図示されているように、典型的なフィルタ/浄化工程520は、原ナノチューブ塗布溶液515内のある割合のイオン粒子570をも除去可能である。
【0063】
典型的な浄化ナノチューブ塗布溶液525は、1×1018原子/cm3よりも少ない不純物565を含むことができ、約500nmよりも大きい径を有する粒子の不純物565が実質的に存在しない。また、これは、100mg/lのナノチューブ濃度(メモリ及び論理用途に適当なナノチューブ濃度)を含むことができる。この典型的な浄化ナノチューブ塗布溶液525は、約15ppmの濃度で硝酸アンモニウム塩のイオン種をも含むことができる。
【0064】
ナノチューブ塗布溶液の形成及び浄化(上述)は、ゲンシウ等による米国特許出願第11/304,315号と同様にセン等による米国特許第7,375,369号において教示されている。両方の文献中に、複数のフィルタ/浄化工程が詳細化され、これはクロスフロー濾過、硝酸処理、塩酸処理及び高速遠心分離を含んでいる。
【0065】
図5に詳細化された例示の工程内で、浄化ナノチューブ塗布溶液525が、イオン粒子濃度レベル調整工程530を次に通過し、さらに浄化塗布溶液530中のイオン粒子570の濃度をさらに減少させ、その結果、中間塗布溶液535を生成する。例示の硝酸アンモニウム塩のイオン種にとって、この中間塗布溶液535は、10ppmよりも小さいイオン粒子濃度レベルを有することが可能である。このイオン粒子濃度レベル調整工程530は、さらなるフィルタ工程(例えば、限定されないが、クロスフロー濾過工程、超音波濾過工程及び遠心分離濾過工程)を通して実施可能である。
【0066】
次の工程ステップでは、中間塗布溶液535が、ナノチューブ濃度調整工程540を通過して、中間塗布溶液535中のナノチューブ要素の濃度を増加させて、結果として、ラフト化したナノチューブファブリック層を形成するのに良好に適した最終塗布溶液545を生成する。例えば、ナノチューブ塗布溶液は、最終塗布溶液545工程が約35の光学密度を有しているように調整され得る。典型的にこのようなナノチューブ濃度調整工程540は、この点で限定されないが本発明の開示の方法を通して、溶液から所定容量の液状媒体510を除去することにより実施される。
【0067】
図5の詳細な例示の工程では、スピンコーティング工程550が、シリコンウエハ上に最終ナノチューブ塗布溶液545を適用するのに使用されて、複数のラフト化したナノチューブ要素575の束がファブリック層に亘って分配された、ラフト化ナノチューブファブリック層555を実現する。
【0068】
このように、(好適にはセン及びゲンシウにより教示された方法に従って準備された)浄化ナノチューブ塗布溶液525が、一の操作において元の浄化溶液中のイオン粒子濃度を減少させることにより、且つ、第2操作において溶液中のナノチューブ要素濃度を増加させることにより、ラフト化したナノチューブファブリック層を形成するのに良好に適した塗布溶液545になる。
【0069】
本発明の開示の方法を説明するために、図5に詳述した例示の工程が特定のナノチューブ塗布溶液工程を説明したが、本発明の開示がこの特定の実施例に限定されないことに留意すべきである。例えば、ある応用では、イオン粒子濃度レベル調整工程530及びナノチューブ濃度調整工程540の順序を逆にすることもできる。(つまり、最初にナノチューブ濃度が増加した塗布溶液、次に、イオン粒子濃度が減少した塗布溶液)。さらに、ある応用では、イオン粒子濃度レベル調整工程530を完全に除去可能であり、ナノチューブ濃度調整工程540を単独で用いることにより、十分に、浄化ナノチューブ塗布溶液525を、ラフト化ナノチューブファブリック層を形成するのに適した溶液にすることができる。さらに他の応用において、ナノチューブ濃度調整工程540を完全に除去可能であり、イオン粒子濃度レベル調整工程を単独で用いることにより、十分に、浄化ナノチューブ塗布溶液525を、ラフト化ナノチューブファブリック層を形成するのに適した溶液にすることができる。
【0070】
図6は、本発明の方法に従った、ラフト化したナノチューブ要素の束が実質的に存在しないナノチューブファブリック層を形成するのに適した例示の塗布溶液の準備工程を示している。
【0071】
図6に説明した塗布溶液の準備工程の最初に、複数の個々のナノチューブ要素605が液状媒体610(例えば、限定されないが、水性溶液、硫酸溶液又は硝酸溶液)内に分散されて、原ナノチューブ塗布溶液615を形成する。原ナノチューブ塗布溶液615は、複数の個々のナノチューブ要素660を含み、複数の不純物665(限定されないが、残留金属触媒粒子、アモルファスカーボン粒子、他の炭素質不純物)、及び、所定濃度のイオン粒子670(例えば、限定されないが、アンモニウム塩、硝酸塩、硝酸アンモニウム塩、ギ酸アンモニウム、酢酸アンモニウム、炭酸アンモニウム、重炭酸アンモニウム、イオン性有機種、イオン性ポリマー、及び、無機塩)を含む。そして、原ナノチューブ塗布溶液615は、フィルタ/浄化工程620を通過し、かなりの割合の不純物665を除去して、浄化ナノチューブ塗布溶液625を実現する。また、図6の浄化ナノチューブ塗布溶液625に図示されているように、典型的なフィルタ/浄化工程620は、原ナノチューブ塗布溶液615内のある割合のイオン粒子670をも除去可能である。
【0072】
典型的な浄化ナノチューブ塗布溶液625は、1×1018原子/cm3よりも少ない不純物665を含むことができ、約500nmよりも大きい径を有する粒子の不純物665が実質的に存在しない。また、これは、100mg/lのナノチューブ濃度(メモリ及び論理用途に適当なナノチューブ濃度)を含むことができる。この典型的な浄化ナノチューブ塗布溶液625は、約15ppmの濃度で硝酸アンモニウム塩のイオン種をも含むことができる。
【0073】
ナノチューブ塗布溶液の形成及び浄化(上述)は、ゲンシウ等による米国特許出願第11/304,315号と同様にセン等による米国特許第7,375,369号において教示されている。両方の文献中に、複数のフィルタ/浄化工程が詳細化され、これはクロスフロー濾過、硝酸処理、塩酸処理及び高速遠心分離を含んでいる。
【0074】
図6に詳細化された例示の工程内で、浄化ナノチューブ塗布溶液625が、イオン粒子濃度レベル調整工程630を次に通過し、さらに浄化塗布溶液625中のイオン粒子670の濃度をさらに減少させ、その結果、中間塗布溶液635を生成する。例示の硝酸アンモニウム塩のイオン種にとって、この中間塗布溶液635は、30ppmよりも大きいイオン粒子濃度レベルを有することが可能である。このイオン粒子濃度レベル調整工程630は、追加量のイオン粒子670を浄化塗布溶液625に導入することを通して実施可能である。
【0075】
次の工程ステップでは、中間塗布溶液635が、ナノチューブ濃度調整工程640を通過して、中間塗布溶液635中のナノチューブ要素の濃度を減少させて、結果として、ラフト化したナノチューブ要素の束が実質的に存在しないナノチューブファブリック層を形成するのによく適した最終塗布溶液645を生成する。例えば、ナノチューブ塗布溶液は、最終塗布溶液645工程が約10の光学密度を有しているように調整され得る。典型的には、このようなナノチューブ濃度調整工程640は、この点で限定されないが本発明の開示の方法を通して、溶液に所定容量の液状媒体610を追加することにより実施される。
【0076】
図6の詳細な例示の工程では、スピンコーティング工程650が、シリコンウエハ上に最終ナノチューブ塗布溶液645を適用するのに使用されて、ラフト化したナノチューブ要素の束が実質的に存在しないナノチューブファブリック層655を実現する。
【0077】
このように、(好適にはセン及びゲンシウにより教示された方法に従って準備された)浄化ナノチューブ塗布溶液625が、一の操作において元の浄化溶液中のイオン粒子濃度を増加させることにより、且つ、第2操作において溶液中のナノチューブ要素濃度を減少させることにより、ラフト化したナノチューブ要素の束が実質的に存在しないナノチューブファブリック層を形成するのによく適した塗布溶液645になる。
【0078】
本発明の開示の方法を説明するために、図6に詳述した例示の工程が特定のナノチューブ塗布溶液工程を説明したが、本発明の開示がこの特定に実施例に限定されないことに留意すべきである。実際、ある応用では、イオン粒子濃度レベル調整工程630及びナノチューブ濃度調整工程640の順序を逆にすることもできる。(つまり、最初にナノチューブ濃度が減少した塗布溶液、次に、イオン粒子濃度が増加した塗布溶液)。さらに、ある応用では、イオン粒子濃度レベル調整工程630を完全に除去可能であり、ナノチューブ濃度調整工程640を単独で用いることにより、十分に、浄化ナノチューブ塗布溶液625を、ラフト化したナノチューブ要素の束が実質的に存在しないナノチューブファブリック層を形成するのに適した溶液にすることができる。さらに他の応用において、ナノチューブ濃度調整工程640を完全に除去可能であり、イオン粒子濃度レベル調整工程を単独で用いることにより、十分に、浄化ナノチューブ塗布溶液625を、ラフト化したナノチューブ要素の束が実質的に存在しないナノチューブファブリック層を形成するのに適した溶液にすることができる。
【0079】
以下の実施例は、本発明の開示の方法に従って、(ラフト化の度合いを変化させた状態の)複数のナノチューブファブリック層の形成を説明する。各実施例では、浄化ナノチューブ塗布溶液は、米国特許出願第11/304,315号にゲンシウによって教示された方法(図5及び図6参照)を通して最初に実現される。そして、この浄化ナノチューブ塗布溶液は、各実施例で特定されるように調整されて、特定のナノチューブ濃度及びイオン粒子濃度レベルを実現する。各例では、調整されるイオン種は硝酸アンモニウム塩である。そして、生成した溶液が4インチSi/SiO2ウエハ上にスピンコーティング操作を介して堆積される。全ての例では、ナノチューブ濃度が、光学密度(本技術分野の当業者にとってよく知られている分光学技術)によって測定され、硝酸アンモニウム塩濃度が溶液に対する100万分の1単位(ppm)で測定される。
【0080】
以下の実施例は、硝酸アンモニウム塩(各実施例で使用される例示のイオン種)のレベルをppmで特定するが、用途によっては、イオン種濃度レベルをトラッキングする別の方法がさらに便利であることが実証されるであろう。図7は、各塗布溶液における硝酸アンモニウム塩の濃度レベル(ppm)に対して複数のナノチューブ塗布溶液の導電率(μS/cm)をプロットしたグラフである。図7で観測されたとおり、これら塗布溶液の導電率は、それぞれに分散した硝酸アンモニウム塩の濃度を追尾する傾向にある。例えば、以下の実施例に使用される塗布溶液では、約700μS/cm以上の導電率の読み取り値は、塗布溶液がラフト化を促進し易いことを指し示す。反対に、約500μS/cm以下の導電率の読み取り値は、塗布溶液がラフト化を抑制し易いことを指し示す。このように、本発明の開示の方法の応用において、該塗布溶液中の特定のイオン種の濃度レベルの替わりに、ナノチューブ塗布溶液の導電率を追跡及び調整することは便利である。
【0081】
全ての例では、スピンコーティング操作は以下の通りである。生ウエハが、5分間、300℃、ホットプレート上で予備焼成される。約3mlの調整した溶液が、ウエハ上にプラスチックピペットを介して散布され、ウエハが60rpmで回転される。30秒後、スピン速度が2秒間、500rpmに増加し、そして、続く180秒間、50rpmに減少し、最後に、20秒間、2000rpmに増加する。そして、(塗布溶液で現在コーティングされた)ウエハは、2分間、300℃ホットプレートに配置される。冷却サイクルの後、全工程が再度、2回繰り返されて、ウエハ上に塗布溶液の3つのコーティングが適用される。
【0082】
以下の実施例に使用される塗布溶液にとって、概して、10ppm以下の硝酸アンモニウム塩の濃度レベルが、高度にラフト化したファブリックを生成する傾向にあることが分かった。さらに、概して、20ppm以上の硝酸アンモニウム塩の濃度レベルが、より低いラフト化発生率のファブリックを生成する傾向にあることが分かった。これらの範囲の硝酸アンモニウム塩の濃度レベルを有する塗布溶液は、適度にラフト化したファブリック層を生成することが分かった。
【0083】
さらに、以下の実施例に使用された塗布溶液にとって、概して、約10以下の光学密度が、低いラフト化発生率のファブリックを生成する傾向にあることが分かった。さらに、概して、30以上の光学密度が、非常に高いラフト化発生率のファブリックを生成する傾向にあることが分かった。これらの範囲の光学密度を有する塗布溶液は、適度にラフト化したファブリック層を生成することが分かった。
【0084】
実施例1
【0085】
図8A〜8Cは、本発明の開示の方法に従って準備された、異なる倍率(それぞれ801、802及び803)における例示のナノチューブファブリック層のSEM画像である。図8A〜8Cのナノチューブファブリック層は、19.11の光学密度、及び、16ppmの硝酸アンモニウム塩濃度を有する塗布溶液から形成された。これらパラメータは、適度な量のラフト化をナノチューブファブリック層内に生成する(801、802、803)。ナノチューブファブリック層全体の解析によれば、約11.6%のファブリック(領域別)が、ラフト化したナノチューブ要素の束からなる。これらラフト化したナノチューブ要素の束が、図8A(810)、図8B(820)及び図8C(830)において実証された。
【0086】
実施例2
【0087】
図9A〜9Cは、本発明の開示の方法に従って準備された、異なる倍率(それぞれ901、902及び903)における例示のナノチューブファブリック層のSEM画像である。図9A〜9Cのナノチューブファブリック層は、34.35の光学密度、及び、12ppmの硝酸アンモニウム塩濃度を有する塗布溶液から形成された。これらパラメータは、高度のラフト化をナノチューブファブリック層内に生成する(901、902、903)。ナノチューブファブリック層全体の解析によれば、約18.9%のファブリック(領域別)が、ラフト化したナノチューブ要素の束からなる。これらラフト化したナノチューブ要素の束が、図9A(910)、図9B(920)及び図9C(930)において実証された。
【0088】
実施例3
【0089】
図10A〜10Cは、本発明の開示の方法に従って準備された、異なる倍率(それぞれ1001、1002及び1003)における例示のナノチューブファブリック層のSEM画像である。図10A〜10Cのナノチューブファブリック層は、10.02の光学密度、及び、11ppmの硝酸アンモニウム塩濃度を有する塗布溶液から形成された。これらパラメータは、低度のラフト化をナノチューブファブリック層内に生成する(1001、1002、1003)。ナノチューブファブリック層全体の解析によれば、約5.5%のファブリック(領域別)が、ラフト化したナノチューブ要素の束からなる。これらラフト化したナノチューブ要素の束が、図10A(1010)、図10B(1020)及び図10C(1030)において実証された。
【0090】
実施例4
【0091】
図11A〜11Cは、本発明の開示の方法に従って準備された、異なる倍率(それぞれ1101、1102及び1103)における例示のナノチューブファブリック層のSEM画像である。図11A〜11Cのナノチューブファブリック層は、19.69の光学密度、及び、1.5ppmの硝酸アンモニウム塩濃度を有する塗布溶液から形成された。これらパラメータは、高度のラフト化をナノチューブファブリック層内に生成する(1101、1102、1103)。ナノチューブファブリック層全体の解析によれば、約37.8%のファブリック(領域別)が、ラフト化したナノチューブ要素の束からなる。これらラフト化したナノチューブ要素の束が、図11A(1110)、図11B(1120)及び図11C(1130)において実証された。
【0092】
実施例5
【0093】
図12A〜12Cは、本発明の開示の方法に従って準備された、異なる倍率(それぞれ1201、1202及び1203)における例示のナノチューブファブリック層のSEM画像である。図12A〜12Cのナノチューブファブリック層は、19.71の光学密度、及び、25ppmの硝酸アンモニウム塩濃度を有する塗布溶液から形成された。これらパラメータは、ラフト化をナノチューブファブリック層内に生成しない(1201、1202、1203)。ナノチューブファブリック層全体の解析によれば、ナノチューブファブリック層には、ラフト化したナノチューブ要素の束が実質的に存在しない。
【0094】
実施例6
【0095】
図13A〜13Cは、本発明の開示の方法に従って準備された、異なる倍率(それぞれ1301、1302及び1303)における例示のナノチューブファブリック層のSEM画像である。図13A〜13Cのナノチューブファブリック層は、10.02の光学密度、及び、27ppmの硝酸アンモニウム塩濃度を有する塗布溶液から形成された。これらパラメータは、ラフト化をナノチューブファブリック層内に生成しない(1301、1302、1303)。ナノチューブファブリック層全体の解析によれば、ナノチューブファブリック層には、ラフト化したナノチューブ要素の束が実質的に存在しない。
【0096】
実施例7
【0097】
図14A〜14Cは、本発明の開示の方法に従って準備された、異なる倍率(それぞれ1401、1402及び1403)における例示のナノチューブファブリック層のSEM画像である。図14A〜14Cのナノチューブファブリック層は、9.4の光学密度、及び、2.5ppmの硝酸アンモニウム塩濃度を有する塗布溶液から形成された。これらパラメータは、適度のラフト化をナノチューブファブリック層内に生成する(1401、1402、1403)。ナノチューブファブリック層全体の解析によれば、約13.1%のファブリック(領域別)が、ラフト化したナノチューブ要素の束からなる。これらラフト化したナノチューブ要素の束が、図14A(1410)、図14B(1420)及び図14C(1430)において実証された。
【0098】
実施例8
【0099】
図15A〜15Cは、本発明の開示の方法に従って準備された、異なる倍率(それぞれ1501、1502及び1503)における例示のナノチューブファブリック層のSEM画像である。図15A〜15Cのナノチューブファブリック層は、33.9の光学密度、及び、33ppmの硝酸アンモニウム塩濃度を有する塗布溶液から形成された。これらパラメータは、適度のラフト化をナノチューブファブリック層内に生成する(1501、1502、1503)。ナノチューブファブリック層全体の解析によれば、約10.0%のファブリック(領域別)が、ラフト化したナノチューブ要素の束からなる。これらラフト化したナノチューブ要素の束が、図15A(1510)、図15B(1520)及び図15C(1530)において実証された。
【0100】
実施例9
【0101】
図16A〜16Cは、本発明の開示の方法に従って準備された、異なる倍率(それぞれ1601、1602及び1603)における例示のナノチューブファブリック層のSEM画像である。図16A〜16Cのナノチューブファブリック層は、33.9の光学密度、及び、7.5ppmの硝酸アンモニウム塩濃度を有する塗布溶液から形成された。これらパラメータは、高度のラフト化をナノチューブファブリック層内に生成する(1601、1602、1603)。ナノチューブファブリック層全体の解析によれば、約35.0%のファブリック(領域別)が、ラフト化したナノチューブ要素の束からなる。これらラフト化したナノチューブ要素の束が、図16A(1610)、図16B(1620)及び図16C(1630)において実証された。
【0102】
ナノチューブファブリックの多孔率及び/又は密度を制御する複数の技術をここに説明した。また、当該技術は、ファブリック内のナノチューブの配置を制御すること、ナノチューブファブリック内の間隙の配置を制御すること、及び、ファブリック内のナノチューブの濃度を制御することにも言及され得る。例えば、これら技術は、低多孔性、高密度のファブリックを提供可能である。さらに、当該技術は、ナノチューブファブリック内のナノチューブの間隙を制御することとして説明可能である。すなわち、現在のリトグラフィの制限(例えば、約20nm)以下の大きさの装置を作成するための技術が開示された。低多孔率及び高密度のファブリックは、例えば、ナノチューブフィルムの間隙を追加のナノチューブ要素で充填することによっても作成可能である。別の実施形態では、高密度のファブリックは、ファブリックに物理的な力を適用することによって作成可能である。さらに、ファブリックの密度又は多孔率は、必要であれば、低密度及び高多孔率のナノチューブファブリックを作成するように制御可能である。
【0103】
さらに、本開示の方法は、ナノチューブファブリックを使用して、ファブリック内の個々のナノチューブ要素の濃度及びファブリック内の間隙の体積が、所定の許容内で適合することが求められている任意の用途に利用可能である。
【0104】
本発明は特定の実施形態に関して説明されたが、多くの他の変形及び改変並びに他の使用が当業者にとって明らかである。したがって、本発明はここにおける特定の開示によって限定されることはない。
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般的にナノチューブファブリック(nanotub fabric)層及びフィルムに関し、特には、ナノチューブファブリック層及びフィルム内の密度、多孔率及び/又は間隙サイズを制御する方法に関する。
【0002】
(関連出願)
本発明は、2010年2月12日の米国仮特許出願61/304,045の優先権を主張するものであり、その内容を本文に援用する。本出願は、本特許出願の譲受人に譲渡された以下の米国特許にも関連し、これらの内容は本文に援用する。
【0003】
2002年4月23日出願のナノチューブフィルム及び物品(米国特許第6,835,591号)。
【0004】
2003年1月13日出願のカーボンナノチューブフィルム、層、ファブリック、リボン、要素及び製品を形成するためにプレフォーム(母材)ナノチューブを使用する方法(米国特許第7,335,395号)。
【0005】
2004年2月11日出願の水平配置ナノファブリック製品を有する装置及びその製造方法(米国特許第7,259,410号)。
【0006】
2004年2月11日出願の垂直配置ナノファブリック製品を有する装置及びその製造方法(米国特許第6,924,538号)。
【0007】
2005年9月20日出願のカーボンナノチューブを使用する抵抗素子(米国特許第7,365,632号)。
【0008】
2004年6月3日出願の高純度ナノチューブフィルムの形成のためのスピンコーティング可能な液体(米国特許第7,375,369号)。
【0009】
本出願は、以下の米国特許出願にも関連し、本特許出願の譲受人に譲渡されており、これらの内容は本文に援用する。
【0010】
2003年1月13日出願のカーボンナノチューブフィルム、層、ファブリック、リボン、要素及び製品の製造方法(米国特許出願第10/341,005号)。
【0011】
2004年6月3日出願の高純度ナノチューブファブリック及びフィルム(米国特許出願第10/860,332号)。
【0012】
2005年12月15日出願の水性カーボンナノチューブ塗布(アプリケータ)液、及び、その塗布液を製造する方法(米国特許出願第11/304,315号)
【0013】
2009年7月31日出願の異方性ナノチューブファブリック層及びフィルム、並びに、その製造方法(米国特許出願第12/533,687号)
【背景技術】
【0014】
本明細書を通して、関連技術の説明は、このような技術が広く知られている又は技術分野の一般知識の一部を形成することの告白とみなされるべきでない。
【0015】
ナノチューブファブリック(繊維)層及びフィルムが複数の電子構造及び装置に使用されている。例えば、バーティン等による米国特許出願第11/835,856号(その内容を本文に援用する。)は、ナノチューブファブリック層を使用して、限定されないが、ブロックスイッチ、プログラム可能な抵抗素子、プログラム可能な論理装置などの不揮発装置を実現する方法を教示する。バーティン等による米国特許第7,365,632号(その内容を本文に援用する。)は、薄いフィルムナノチューブに基づいた抵抗器の製造にこのようなファブリック層及びフィルムを使用することを教示する。ワード等による米国特許出願第12/066,063号(その内容を本文に援用する。)は、電子装置及びシステムに熱伝導素子を形成するようにこのようなナノチューブファブリック及びフィルムを使用することを教示する。
【0016】
様々な従来技術(詳細は本文に援用する。)を通して、ナノチューブ素子が、ナノチューブファブリック層又はフィルムの形成前又は後に導電性、非導電性、半導電性に構成され、このようなナノチューブファブリック層及びフィルムが、電子装置又はシステム内で複数の機能を発揮することを可能とする。さらに、場合によっては、ナノチューブファブリック層及びフィルムの導電性を、2又はそれ以上の不揮発状態の間で調整可能であり、これはバーティン等による米国特許出願第11/280,786号(その内容を本文に援用する。)に教示されている。これにより、このようなナノチューブファブリック層及びフィルムが電子システム内にメモリ又は論理素子として使用される。
【0017】
ワード等による米国特許第7,334,395号(その内容を本文に援用する。)は、プリフォーム(母材)ナノチューブを使用して基板素子にナノチューブファブリック層及びフィルムを形成するための複数の方法を教示する。該方法は、限定されないが、スピンコーティング(ここでは、ナノチューブ溶液が基板に配置され、そしてスピンし、当該溶液を均等に基板表面に亘って分配する。)、スプレーコーティング(ここでは、複数のナノチューブがエアロゾル溶液内に懸濁され、そして、基板に亘って分散される。)、及び、ディップコーティング(複数のナノチューブが溶液内に懸濁され、基板素子が溶液内に下がり、そして離脱する。)を含む。さらに、セン等による米国特許第7,375,369号(その内容を本文に援用する。)及びゲンシウ等による米国特許出願第11/304,315号(その内容を本文に援用する。)は、スピンコーティング工程を介して基板素子に亘ってナノチューブファブリック層を形成するのに適したナノチューブ溶液を教示している。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0018】
本発明は、ナノチューブファブリック層及びフィルム内の密度、多孔率及び/又は間隙サイズを制御する方法に関する。
【課題を解決するための手段】
【0019】
特には、本発明は、複数の個々のナノチューブ要素を含むナノチューブファブリック層を提供し、ナノチューブファブリック層内の個々のナノチューブ要素間の開領域がナノチューブファブリック層内の間隙(ギャップ)を定めると共に、当該間隙が物理的体積において制限されることにより、しきい値よりも小さい。実施形態によっては、ナノチューブスイッチング装置がこのようなナノチューブファブリック層を含む。
【0020】
また、本発明は、複数の個々のナノチューブ要素を含むナノチューブファブリック層を提供し、ナノチューブファブリック層内の個々のナノチューブ要素間の開領域がナノチューブファブリック層の多孔率を定めると共に、当該多孔率が選択されて、ナノチューブファブリック層内の均一な密度の個々のナノチューブ要素を提供する。実施形態によっては、ナノチューブファブリック層は高い多孔率を有している。実施形態によっては、ナノチューブファブリック層は低い多孔率を有している。実施形態によっては、ナノチューブスイッチング装置がこのようなナノチューブファブリック層を含む。
【0021】
また、本発明は、ナノチューブ塗布溶液(nanotube application solution)を準備する方法を提供する。方法は、原ナノチューブ塗布溶液を形成することを第1に含み、この原ナノチューブ塗布溶液は、液状媒体に分散した、第1濃度レベルの第1の複数のナノチューブ要素と、第2濃度レベルの第2の複数のイオン粒子とを含む。当該方法は、ナノチューブ塗布溶液を使用して形成されるナノチューブファブリック層内に発現するラフト化(rafting)の度合いを制御するように、第1の複数のナノチューブ要素の第1濃度レベル及び第2の複数のイオン粒子の第2濃度レベルの少なくとも一方を調整するステップをさらに含む。
【0022】
本発明の一実施形態によれば、第1の複数のナノチューブ要素がカーボンナノチューブである。
【0023】
本発明の別実施形態によれば、第1の複数のナノチューブ要素が単層カーボンナノチューブである。
【0024】
本発明の別実施形態によれば、第1の複数のナノチューブ要素が多層カーボンナノチューブである。
【0025】
本発明の別実施形態によれば、第2の複数のイオン粒子が硝酸アンモニウム塩を含む。
【0026】
本発明の別実施形態によれば、第2の複数のイオン粒子がギ酸アンモニウムを含む。
【0027】
本発明の別実施形態によれば、第2の複数のイオン粒子が酢酸アンモニウムを含む。
【0028】
本発明の別実施形態によれば、第2の複数のイオン粒子が炭酸アンモニウムを含む。
【0029】
本発明の別実施形態によれば、第2の複数のイオン粒子が重炭酸アンモニウム、イオン性有機種及びイオン性ポリマーを含む。
【0030】
本発明の別実施形態によれば、第2の複数のイオン粒子がイオン性有機種を含む。
【0031】
本発明の別実施形態によれば、第2の複数のイオン粒子がイオン性ポリマーを含む。
【0032】
本発明の別実施形態によれば、第2の複数のイオン粒子が無機塩を含む。
【0033】
本発明の別実施形態によれば、液状媒体が水性溶液を含む。
【0034】
本発明の別実施形態によれば、液状媒体が硝酸溶液を含む。
【0035】
本発明の別実施形態によれば、液状媒体が硫酸溶液を含む。
【0036】
本発明の別実施形態によれば、ナノチューブ塗布溶液中のナノチューブ要素の濃度レベルが増加して、この溶液で形成されるナノチューブファブリック層内のラフト化を促進する。
【0037】
本発明の別実施形態によれば、ナノチューブ塗布溶液中のナノチューブ要素の濃度レベルが減少して、この溶液で形成されるナノチューブファブリック層内のラフト化を抑制する。
【0038】
本発明の別実施形態によれば、ナノチューブ塗布溶液中のイオン粒子の濃度レベルが増加して、この溶液で形成されるナノチューブファブリック層内のラフト化を抑制する。
【0039】
本発明の別実施形態によれば、ナノチューブ塗布溶液中のイオン粒子の濃度レベルが減少して、この溶液で形成されるナノチューブファブリック層内のラフト化を促進する。
【0040】
本発明の他の特徴及び利点が、以下の図面に関連して提供される本発明の説明から明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】図1は、個々のナノチューブ要素が本質的にラフト化していないナノチューブファブリック層を示す。
【図2A】図2A〜Bは、個々のナノチューブ要素が本質的にラフト化していないナノチューブファブリック層の(異なる倍率の)SEM画像である。
【図2B】図2A〜Bは、個々のナノチューブ要素が本質的にラフト化していないナノチューブファブリック層の(異なる倍率の)SEM画像である。
【図3】図3は、本発明の一実施形態に従って、個々のナノチューブ要素の実質的なラフト化を表すナノチューブファブリック層を示す。
【図4A】図4A〜Bは、本発明の一実施形態に従った、個々のナノチューブ要素の実質的なラフト化を表すナノチューブファブリック層の(異なる倍率の)SEM画像である。
【図4B】図4A〜Bは、本発明の一実施形態に従った、個々のナノチューブ要素の実質的なラフト化を表すナノチューブファブリック層の(異なる倍率の)SEM画像である。
【図5】図5は、本発明に従って、高度にラフト化したナノチューブファブリック層を形成するように、ナノチューブ塗布溶液を準備する方法を示した工程概略図である。
【図6】図6は、本発明に従って、実質的にラフト化していないナノチューブファブリック層を形成するように、ナノチューブ塗布溶液を準備する方法を示した工程概略図である。
【図7】図7は、導電率読み取り値(μS/cm)対複数のナノチューブ塗布溶液で取得された硝酸アンモニウム塩のレベル(ppm)をプロットしたグラフである。
【図8A】図8A〜Cは、本発明の方法に従って形成された例示のナノチューブファブリック層のSEM画像(拡大した複数の倍率)であって、約11.6%のラフト化を表している。
【図8B】図8A〜Cは、本発明の方法に従って形成された例示のナノチューブファブリック層のSEM画像(拡大した複数の倍率)であって、約11.6%のラフト化を表している。
【図8C】図8A〜Cは、本発明の方法に従って形成された例示のナノチューブファブリック層のSEM画像(拡大した複数の倍率)であって、約11.6%のラフト化を表している。
【図9A】図9A〜Cは、本発明の方法に従って形成された例示のナノチューブファブリック層のSEM画像(拡大した複数の倍率)であって、約18.9%のラフト化を表している。
【図9B】図9A〜Cは、本発明の方法に従って形成された例示のナノチューブファブリック層のSEM画像(拡大した複数の倍率)であって、約18.9%のラフト化を表している。
【図9C】図9A〜Cは、本発明の方法に従って形成された例示のナノチューブファブリック層のSEM画像(拡大した複数の倍率)であって、約18.9%のラフト化を表している。
【図10A】図10A〜Cは、本発明の方法に従って形成された例示のナノチューブファブリック層のSEM画像(拡大した複数の倍率)であって、約5.5%のラフト化を表している。
【図10B】図10A〜Cは、本発明の方法に従って形成された例示のナノチューブファブリック層のSEM画像(拡大した複数の倍率)であって、約5.5%のラフト化を表している。
【図10C】図10A〜Cは、本発明の方法に従って形成された例示のナノチューブファブリック層のSEM画像(拡大した複数の倍率)であって、約5.5%のラフト化を表している。
【図11A】図11A〜Cは、本発明の方法に従って形成された例示のナノチューブファブリック層のSEM画像(拡大した複数の倍率)であって、約37.8%のラフト化を表している。
【図11B】図11A〜Cは、本発明の方法に従って形成された例示のナノチューブファブリック層のSEM画像(拡大した複数の倍率)であって、約37.8%のラフト化を表している。
【図11C】図11A〜Cは、本発明の方法に従って形成された例示のナノチューブファブリック層のSEM画像(拡大した複数の倍率)であって、約37.8%のラフト化を表している。
【図12A】図12A〜Cは、本発明の方法に従って形成された例示のナノチューブファブリック層のSEM画像(拡大した複数の倍率)であって、実質的にラフト化していない状態を表している。
【図12B】図12A〜Cは、本発明の方法に従って形成された例示のナノチューブファブリック層のSEM画像(拡大した複数の倍率)であって、実質的にラフト化していない状態を表している。
【図12C】図12A〜Cは、本発明の方法に従って形成された例示のナノチューブファブリック層のSEM画像(拡大した複数の倍率)であって、実質的にラフト化していない状態を表している。
【図13A】図13A〜Cは、本発明の方法に従って形成された例示のナノチューブファブリック層のSEM画像(拡大した複数の倍率)であって、実質的にラフト化していない状態を表している。
【図13B】図13A〜Cは、本発明の方法に従って形成された例示のナノチューブファブリック層のSEM画像(拡大した複数の倍率)であって、実質的にラフト化していない状態を表している。
【図13C】図13A〜Cは、本発明の方法に従って形成された例示のナノチューブファブリック層のSEM画像(拡大した複数の倍率)であって、実質的にラフト化していない状態を表している。
【図14A】図14A〜Cは、本発明の方法に従って形成された例示のナノチューブファブリック層のSEM画像(拡大した複数の倍率)であって、約13.1%のラフト化を表している。
【図14B】図14A〜Cは、本発明の方法に従って形成された例示のナノチューブファブリック層のSEM画像(拡大した複数の倍率)であって、約13.1%のラフト化を表している。
【図14C】図14A〜Cは、本発明の方法に従って形成された例示のナノチューブファブリック層のSEM画像(拡大した複数の倍率)であって、約13.1%のラフト化を表している。
【図15A】図15A〜Cは、本発明の方法に従って形成された例示のナノチューブファブリック層のSEM画像(拡大した複数の倍率)であって、約10.0%のラフト化を表している。
【図15B】図15A〜Cは、本発明の方法に従って形成された例示のナノチューブファブリック層のSEM画像(拡大した複数の倍率)であって、約10.0%のラフト化を表している。
【図15C】図15A〜Cは、本発明の方法に従って形成された例示のナノチューブファブリック層のSEM画像(拡大した複数の倍率)であって、約10.0%のラフト化を表している。
【図16A】図16A〜Cは、本発明の方法に従って形成された例示のナノチューブファブリック層のSEM画像(拡大した複数の倍率)であって、約35.0%のラフト化を表している。
【図16B】図16A〜Cは、本発明の方法に従って形成された例示のナノチューブファブリック層のSEM画像(拡大した複数の倍率)であって、約35.0%のラフト化を表している。
【図16C】図16A〜Cは、本発明の方法に従って形成された例示のナノチューブファブリック層のSEM画像(拡大した複数の倍率)であって、約35.0%のラフト化を表している。
【発明を実施するための形態】
【0042】
本発明は、ナノチューブファブリック層及びフィルムの所定領域の複数のナノチューブ要素の数を増減する方法を教示する。このアプローチにより、選択的に高密度、低多孔率のナノチューブファブリックを制御して形成可能である。このように、例えば、本質的に、ファブリック内のナノチューブ間の全間隙又は全ポア(孔)が所定サイズしかないナノチューブファブリックを形成可能である。これは、均一なナノチューブの分散が必要である非常に小さい回路サイズの装置にとって特に有用である。例えば、高密度及び低多孔率のファブリックがパターニング及びエッチングされて、残りのナノチューブ製品(nanotube article)が、ファブリック内の大きいポアの結果としてのナノチューブの欠損部とは対照的にナノチューブを含むことが効果的に保証される。現在実施されているリソグラフィ技術とともに形状寸法が小さくなるにつれて、多孔率を最小化することはより重要になり、ファブリックがエッチングされるときに機能性回路素子の高い歩留まりを確保する。例えば、高密度、低多孔率ファブリックは、最新のリソグラフィ技術による小回路のサイズよりも小さい、ナノチューブが存在しない領域(すなわち、ポア)を有することができる(例えば、ポアが約10nmより小さい)。すなわち、密度又はポアサイズが制御されることにより、動作に必要な最小数のナノチューブ要素が最新のリソグラフィ技術の臨界的な形状寸法(20nm以下)に利用可能であり、20nmより小さくすることができる。
【0043】
逆に、必要に応じて、高多孔率、低密度ファブリックを形成することに本方法を使用することが可能である。例えば、ナノチューブが分散されてナノファブリックの光学透過性を増加させる、ナノチューブファブリックが望まれている。他の用途では、ナノチューブファブリックの複数の層から形成されたより厚いファブリックが望まれている場合、ナノチューブの濃度を制限することにより、コスト及びファブリックの電気抵抗を低減することに好適であろう。さらに、低密度及び高多孔率のために、ナノチューブをファブリックに亘って均一に分散することもまた重要である。
【0044】
ファブリック多孔率及び密度は、限定されないが、ナノチューブファブリック内のラフト化(rafting)を制御する技術を含む種々の方法で制御可能である。これらファブリックは、ナノチューブスイッチング装置に使用可能である。
【0045】
セン等による米国特許第7,375,369号及びゲンシウ等による米国特許出願第11/304,315号(これら内容を本文に援用する。)に記載されているとおり、ナノチューブファブリック及びフィルムは、(例えば、限定されないが、複数の個々のナノチューブ要素が水溶液に懸濁された)ナノチューブ塗布溶液を基板素子に亘って適用することにより形成可能である。例えば、スピンコーティングプロセスを使用可能であり、基板素子に亘ってナノチューブ要素を均一に分布させ、実質的に均一なナノチューブ要素の層を作成する。他の場合では、他のプロセス(限定されないが、スプレーコーティングプロセス又はディップコーティングプロセス)を使用可能であり、基板素子に亘ってナノチューブ要素を適用及び分布させる。
【0046】
本明細書の実施形態で使用及び参照されるナノチューブ要素は、単層(単一壁)ナノチューブ、多層ナノチューブ、これらの混合物であり、且つ、可変長とすることができることに留意すべきである。さらに、ナノチューブは、導電性、半導電性又はその組み合わせであってもよい。
【0047】
多くの用途において、形成されたナノチューブファブリック層の多孔率を制御すること、つまり、ファブリック層内の個々のナノチューブ要素が一緒に近接して充填される度合い、或いは、まばらに分布される度合いを制御することが望まれている。一例では、高多孔率の均一なナノチューブファブリックが、約50nmの大きさのボイド(すなわちファブリック内の個々のナノチューブ要素間の間隙(gap))を有し得る。別例では、低多孔率の均一なナノチューブファブリック層が、約10nmの大きさのボイドを有し得る。
【0048】
用途によっては、ナノチューブファブリック層の多孔率又はファブリック内のナノチューブの密度を他の変数(限定されないが、例えば、ファブリック内の個々のナノチューブ要素の長さ、及び、ナノチューブファブリック層の厚み)とともに制御することによって、ナノチューブファブリック層のシート抵抗を制御可能である。ナノチューブファブリック層の多孔率を制御することにより、このようなファブリック層は、1kオーム/スクエアから約1Mオーム/スクエアのシート抵抗を有するように確実に構成可能である。
【0049】
別の応用では、ナノチューブファブリック層の多孔率を制限することにより、ナノチューブスイッチング装置のアレイ(配列)の密度を増加可能である。バーティン等による米国特許出願第11/280,786号(その内容を本文に援用する。)は、不揮発性の2つのターミナル(末端)ナノチューブスイッチング構造を教示する。このナノチューブスイッチング構造は、(少なくとも1つの実施形態において)2つの電気的に絶縁された電極素子間に配置されたナノチューブファブリック製品を有する。バーティンが教示するように、異なる電圧を上記電極素子に亘って配置することにより、ナノチューブファブリック製品の抵抗状態を、複数の不揮発状態の間で切り替え可能である。つまり、実施形態によっては、ナノチューブファブリック製品は、相対的に高い抵抗状態(結果として、本質的に2つの電極素子の間の開回路)と相対的に低い抵抗状態(結果として、本質的に2つの電極素子の間の短絡)との間で繰り返し切り替え可能である。
【0050】
このようなナノチューブスイッチング装置のアレイの製造は、ナノチューブファブリック層のパターニングを含み、これら複数のナノチューブファブリック製品を実現する。ナノチューブファブリック層の多孔率(又は、より具体的には、ナノチューブファブリック層内のボイドのサイズ)は、これらナノチューブファブリック製品がパターニングされる形状寸法を制限し得る。例えば、個々のナノチューブスイッチング装置が約20nm四方である(つまり、各装置内のナノチューブファブリック製品が本質的に20nm×20nmである)ナノチューブスイッチング装置アレイを製造するために、ナノチューブファブリック層内のボイドが約10nmであるような、ナノチューブファブリックアレイの多孔率が必要である。このように、(例えば、アレイ内の個々のナノチューブスイッチング要素がほぼ20nmの形状でパターニングされた)高密度ナノチューブメモリアレイは、高い密度(つまり、約10nm以下のボイドサイズを有する低多孔性)のナノチューブファブリック層を必要とする。
【0051】
ナノチューブファブリック層の多孔率を制御する1つの方法は、ナノチューブファブリック層内のラフト化の度合い(つまり、その側壁に沿って1つに束ねられる傾向にあるファブリック層内のナノチューブ要素のパーセンテージ)を制御することである。ナノチューブファブリック層の形成中に所定のパラメータを制御することにより、高度にラフト化(rafted)された(結果として、例えば、約10nmのボイドを有する高密度)、適度にラフト化された(結果として、例えば、約25nmのボイドを有する少しばかりの密度)、或いは、実質的にラフト化されていない(結果として、例えば、約50nmのボイドを有する高多孔率)状態に、ナノチューブファブリック層を形成可能である。
【0052】
図1は、実質的にラフト化されていないナノチューブファブリック層100を示している。上述したとおり、このようなファブリック層内の個々のナノチューブ要素110は、一様な高多孔性ファブリックに形成され、個々のナノチューブ要素が実質的にランダムな配向に配置される。例えば、このようなファブリック層100のボイドは、25nm〜50nmの範囲となり、これは単一ファブリック層内で約1000kオーム/スクエア〜1Mオーム/スクエアのシート抵抗に対応する。図1に示されたナノチューブファブリック層100上に複数のファブリック層を(例えば、マルチスピンコーティング工程を通して)適用することにより、実質的に同じ多孔率でより厚いファブリック層を形成してもよい。
【0053】
図2A及び2Bは、実質的にラフト化されておらず、図1で示したナノチューブファブリック層100の類似の例示されたナノチューブファブリック層(それぞれ201及び202)を示すSEM画像である。図2Aが10,000x倍率でのナノチューブファブリック層201を示し、図2Bが75,000x倍率でのナノチューブファブリック層202を示す。両方の画像では、ランダム配向(本質的なラフト化の完全な欠落)が、例示のナノチューブファブリック層において明らかとなっている。
【0054】
図3は、ナノチューブファブリック層300を示し、当該ナノチューブファブリック層300は、多くの束ねられていないナノチューブ要素310と同様に、適切な数のラフト化されたナノチューブ束(bundle)320を含んでいる。このようなファブリック層では、ラフト化された束320内の個々のナノチューブ要素が、ナノチューブファブリック層300の該領域内の多孔率を最少化するように、一緒に密に充填される。このように、ナノチューブファブリック層300は、図1に示されたファブリック層100と比較して明らかに高密度である。例えば、このようなファブリック層300内のボイドは、10nm〜20nmの範囲となり、これは単一ファブリック層内で約10kオーム/スクエア〜100kオーム/スクエアのシート抵抗に対応する。図3に示されたナノチューブファブリック層300上に複数のファブリック層を(例えば、マルチスピンコーティング工程を通して)適用することにより、実質的に同じ多孔率でより厚いファブリック層を形成してもよい。
【0055】
図4A及び4Bは、適度の量のラフト化を表し、図3で示したナノチューブファブリック層300の類似の例示されたナノチューブファブリック層(それぞれ401及び402)を示すSEM画像である。図4Aが10,000x倍率でのナノチューブファブリック層401を示し、図4Bが75,000x倍率でのナノチューブファブリック層402を示す。両方の画像では、ランダム配向のラフト化されたナノチューブ要素の束(それぞれ410、420)が、例示のナノチューブファブリック層において明らかとなっている。
【0056】
ある場合には、ナノチューブファブリック層の形成中に、ファンデルワールス相互作用(個々のナノチューブ要素間の原子間力)、又は、Π−Π相互作用(ナノチューブ構造に沿ったΠ軌道の自由電子の存在によるスタッキング効果)によって、ナノチューブ要素の群がそれらの側壁に沿って1つに束となるので、個々のナノチューブ要素のラフト化が起こり得る。塗布溶液(つまり、液状媒体内の個々のナノチューブ要素の分散)では、溶液内の所定のイオン種の存在により、ファンデルワールス及びΠ―Π相互作用を促進又は抑制可能である。このようなイオン種は、限定されないが、アンモニウム塩、硝酸塩、硝酸アンモニウム塩、ギ酸アンモニウム、酢酸アンモニウム、炭酸アンモニウム、重炭酸アンモニウム、イオン性有機種、イオン性ポリマー、及び、無機塩を含む。このようなイオン種の塗布溶液内の高い濃度(例えば、水性ナノチューブ塗布溶液中の約20ppm以上の硝酸アンモニウム塩)は、それらの相互作用を妨げる傾向にあり、そのため、この塗布溶液で形成されるナノチューブファブリック層内のラフト化の度合いを減少させる。反対に、このようなイオン種の塗布溶液内の低い濃度(例えば、水性ナノチューブ塗布溶液中の約10ppm以下の硝酸アンモニウム塩)は、複数のこれらラフト化した束をナノチューブファブリック層内に形成することを可能とする。
【0057】
複数のナノチューブ要素がそれらの側壁に沿って1つに束となり、秩序的にラフト(いかだ)のような構造を実現する、このラフト化効果は、ゲンシウ等による米国特許出願第11/304,315号(その内容を本文に援用する。)内で記述された所謂クランピング欠損(clumping defect)とは異なる。ゲンシウによって記述されたクランピング欠損は、溶液中の個々のナノチューブ要素の沈殿又は凝集の結果であり、溶液中で個々のナノチューブ要素が互いの周りに捩れてクランプ(塊)状構造に束となることにより特徴付けられる。このような望ましくないクランピング欠損は、非均一且つ非平面のナノチューブファブリック層を生成する。反対に、本発明に記述されたとおり、ほとんどの場合において、ラフト化されたナノチューブファブリックは、実質的に均一な状態のまま残り、すなわち、ナノチューブファブリック層の密度を制御するように採用可能である。さらに、ここで説明したラフトは、本質的に2次元のナノチューブ構造であり、すなわち、ラフトの高さは一般的に1つのナノチューブの厚みである。ゲンシウに参照されたクランピング欠損は、一般的に、3次元のナノチューブ塊体を生成する。
【0058】
また、塗布溶液でナノチューブ要素の濃度を制御することにより、つまり、塗布溶液中に存在する単位体積当たりの個々のナノチューブ要素の数を制御することにより、ラフト化を促進(又は抑制)可能である。高濃度の塗布溶液(例えば、約35の光学密度(optical density)を有する塗布溶液)内の近接配置されたナノチューブ要素間のファンデルワールス相互作用は、このような溶液で形成されたナノチューブファブリック層内のラフト化の発生を増加させる傾向にあり得る。反対に、比較的低濃度(例えば、約10の光学密度を有する塗布溶液)のナノチューブ要素は、これらファンデルワールス相互作用の状況を明らかに減少させ、結果としてラフト化を低減する。光学密度(本技術分野の当業者にとってよく知られている分光学技術)が塗布溶液中のナノチューブ要素の密度を特徴付けるのに典型的に使用されることに留意すべきである。該技術は、ナノチューブ塗布溶液により吸収された光量、つまり、本質的には、このような溶液内の個々のナノチューブ要素によって吸収された光量を測定することに依り、溶液内に分散したナノチューブ要素の濃度を決定する。例えば、光学密度30の溶液は、溶液中のナノチューブ要素の約0.1%の重量濃度に対応している。
【0059】
ナノチューブファブリック層内のラフト化の度合いを制御するための2つのパラメータ(塗布溶液中のイオン種濃度及び塗布溶液中のナノチューブ濃度)の使用について、図7A〜7C、8A〜8C、9A〜9C、10A〜10C及び11A〜11Cに示された例示のナノチューブファブリック層において図示し、詳細に説明する。
【0060】
さらに、所定の応用において、ナノチューブ塗布溶液の他のパラメータが、該溶液で形成されるナノチューブファブリック層がラフト化する度合いに貢献し得る。このようなパラメータは、限定されないが、他の炭素同素体(例えば、アモルファスカーボン)の存在、ウエハ又は他の基板表面にそれが適用されるときの塗布溶液の温度、使用される液状媒体の化学組成、ウエハ又は他の基板の表面に塗布溶液を堆積するために使用される方法、及び、溶液の酸性度を含む。
【0061】
図5は、ラフト化されたナノチューブファブリック層を形成するのに非常に適した本発明の開示の方法に従った、例示の塗布溶液の準備工程を示している。
【0062】
図5に示された塗布溶液の準備工程の最初の段階で、複数の個々のナノチューブ要素505が、液状媒体510(例えば、限定されないが、水性溶液、硫酸溶液又は硝酸溶液)内に分散されて、原ナノチューブ塗布溶液515を形成する。原ナノチューブ塗布溶液515は、複数の個々のナノチューブ要素560、複数の不純物565(例えば、限定されないが、残留金属触媒粒子、アモルファスカーボン粒子、及び他の炭素質不純物)、及び、所定濃度のイオン粒子570(例えば、限定されないが、アンモニウム塩、硝酸塩、硝酸アンモニウム塩、ギ酸アンモニウム、酢酸アンモニウム、炭酸アンモニウム、重炭酸アンモニウム、イオン性有機種、イオン性ポリマー、及び、無機塩)を含む。そして、原ナノチューブ塗布溶液515は、フィルタ/浄化工程520を通過し、かなりの割合の不純物565を除去して、浄化ナノチューブ塗布溶液525を実現する。また、図5の浄化ナノチューブ塗布溶液525に図示されているように、典型的なフィルタ/浄化工程520は、原ナノチューブ塗布溶液515内のある割合のイオン粒子570をも除去可能である。
【0063】
典型的な浄化ナノチューブ塗布溶液525は、1×1018原子/cm3よりも少ない不純物565を含むことができ、約500nmよりも大きい径を有する粒子の不純物565が実質的に存在しない。また、これは、100mg/lのナノチューブ濃度(メモリ及び論理用途に適当なナノチューブ濃度)を含むことができる。この典型的な浄化ナノチューブ塗布溶液525は、約15ppmの濃度で硝酸アンモニウム塩のイオン種をも含むことができる。
【0064】
ナノチューブ塗布溶液の形成及び浄化(上述)は、ゲンシウ等による米国特許出願第11/304,315号と同様にセン等による米国特許第7,375,369号において教示されている。両方の文献中に、複数のフィルタ/浄化工程が詳細化され、これはクロスフロー濾過、硝酸処理、塩酸処理及び高速遠心分離を含んでいる。
【0065】
図5に詳細化された例示の工程内で、浄化ナノチューブ塗布溶液525が、イオン粒子濃度レベル調整工程530を次に通過し、さらに浄化塗布溶液530中のイオン粒子570の濃度をさらに減少させ、その結果、中間塗布溶液535を生成する。例示の硝酸アンモニウム塩のイオン種にとって、この中間塗布溶液535は、10ppmよりも小さいイオン粒子濃度レベルを有することが可能である。このイオン粒子濃度レベル調整工程530は、さらなるフィルタ工程(例えば、限定されないが、クロスフロー濾過工程、超音波濾過工程及び遠心分離濾過工程)を通して実施可能である。
【0066】
次の工程ステップでは、中間塗布溶液535が、ナノチューブ濃度調整工程540を通過して、中間塗布溶液535中のナノチューブ要素の濃度を増加させて、結果として、ラフト化したナノチューブファブリック層を形成するのに良好に適した最終塗布溶液545を生成する。例えば、ナノチューブ塗布溶液は、最終塗布溶液545工程が約35の光学密度を有しているように調整され得る。典型的にこのようなナノチューブ濃度調整工程540は、この点で限定されないが本発明の開示の方法を通して、溶液から所定容量の液状媒体510を除去することにより実施される。
【0067】
図5の詳細な例示の工程では、スピンコーティング工程550が、シリコンウエハ上に最終ナノチューブ塗布溶液545を適用するのに使用されて、複数のラフト化したナノチューブ要素575の束がファブリック層に亘って分配された、ラフト化ナノチューブファブリック層555を実現する。
【0068】
このように、(好適にはセン及びゲンシウにより教示された方法に従って準備された)浄化ナノチューブ塗布溶液525が、一の操作において元の浄化溶液中のイオン粒子濃度を減少させることにより、且つ、第2操作において溶液中のナノチューブ要素濃度を増加させることにより、ラフト化したナノチューブファブリック層を形成するのに良好に適した塗布溶液545になる。
【0069】
本発明の開示の方法を説明するために、図5に詳述した例示の工程が特定のナノチューブ塗布溶液工程を説明したが、本発明の開示がこの特定の実施例に限定されないことに留意すべきである。例えば、ある応用では、イオン粒子濃度レベル調整工程530及びナノチューブ濃度調整工程540の順序を逆にすることもできる。(つまり、最初にナノチューブ濃度が増加した塗布溶液、次に、イオン粒子濃度が減少した塗布溶液)。さらに、ある応用では、イオン粒子濃度レベル調整工程530を完全に除去可能であり、ナノチューブ濃度調整工程540を単独で用いることにより、十分に、浄化ナノチューブ塗布溶液525を、ラフト化ナノチューブファブリック層を形成するのに適した溶液にすることができる。さらに他の応用において、ナノチューブ濃度調整工程540を完全に除去可能であり、イオン粒子濃度レベル調整工程を単独で用いることにより、十分に、浄化ナノチューブ塗布溶液525を、ラフト化ナノチューブファブリック層を形成するのに適した溶液にすることができる。
【0070】
図6は、本発明の方法に従った、ラフト化したナノチューブ要素の束が実質的に存在しないナノチューブファブリック層を形成するのに適した例示の塗布溶液の準備工程を示している。
【0071】
図6に説明した塗布溶液の準備工程の最初に、複数の個々のナノチューブ要素605が液状媒体610(例えば、限定されないが、水性溶液、硫酸溶液又は硝酸溶液)内に分散されて、原ナノチューブ塗布溶液615を形成する。原ナノチューブ塗布溶液615は、複数の個々のナノチューブ要素660を含み、複数の不純物665(限定されないが、残留金属触媒粒子、アモルファスカーボン粒子、他の炭素質不純物)、及び、所定濃度のイオン粒子670(例えば、限定されないが、アンモニウム塩、硝酸塩、硝酸アンモニウム塩、ギ酸アンモニウム、酢酸アンモニウム、炭酸アンモニウム、重炭酸アンモニウム、イオン性有機種、イオン性ポリマー、及び、無機塩)を含む。そして、原ナノチューブ塗布溶液615は、フィルタ/浄化工程620を通過し、かなりの割合の不純物665を除去して、浄化ナノチューブ塗布溶液625を実現する。また、図6の浄化ナノチューブ塗布溶液625に図示されているように、典型的なフィルタ/浄化工程620は、原ナノチューブ塗布溶液615内のある割合のイオン粒子670をも除去可能である。
【0072】
典型的な浄化ナノチューブ塗布溶液625は、1×1018原子/cm3よりも少ない不純物665を含むことができ、約500nmよりも大きい径を有する粒子の不純物665が実質的に存在しない。また、これは、100mg/lのナノチューブ濃度(メモリ及び論理用途に適当なナノチューブ濃度)を含むことができる。この典型的な浄化ナノチューブ塗布溶液625は、約15ppmの濃度で硝酸アンモニウム塩のイオン種をも含むことができる。
【0073】
ナノチューブ塗布溶液の形成及び浄化(上述)は、ゲンシウ等による米国特許出願第11/304,315号と同様にセン等による米国特許第7,375,369号において教示されている。両方の文献中に、複数のフィルタ/浄化工程が詳細化され、これはクロスフロー濾過、硝酸処理、塩酸処理及び高速遠心分離を含んでいる。
【0074】
図6に詳細化された例示の工程内で、浄化ナノチューブ塗布溶液625が、イオン粒子濃度レベル調整工程630を次に通過し、さらに浄化塗布溶液625中のイオン粒子670の濃度をさらに減少させ、その結果、中間塗布溶液635を生成する。例示の硝酸アンモニウム塩のイオン種にとって、この中間塗布溶液635は、30ppmよりも大きいイオン粒子濃度レベルを有することが可能である。このイオン粒子濃度レベル調整工程630は、追加量のイオン粒子670を浄化塗布溶液625に導入することを通して実施可能である。
【0075】
次の工程ステップでは、中間塗布溶液635が、ナノチューブ濃度調整工程640を通過して、中間塗布溶液635中のナノチューブ要素の濃度を減少させて、結果として、ラフト化したナノチューブ要素の束が実質的に存在しないナノチューブファブリック層を形成するのによく適した最終塗布溶液645を生成する。例えば、ナノチューブ塗布溶液は、最終塗布溶液645工程が約10の光学密度を有しているように調整され得る。典型的には、このようなナノチューブ濃度調整工程640は、この点で限定されないが本発明の開示の方法を通して、溶液に所定容量の液状媒体610を追加することにより実施される。
【0076】
図6の詳細な例示の工程では、スピンコーティング工程650が、シリコンウエハ上に最終ナノチューブ塗布溶液645を適用するのに使用されて、ラフト化したナノチューブ要素の束が実質的に存在しないナノチューブファブリック層655を実現する。
【0077】
このように、(好適にはセン及びゲンシウにより教示された方法に従って準備された)浄化ナノチューブ塗布溶液625が、一の操作において元の浄化溶液中のイオン粒子濃度を増加させることにより、且つ、第2操作において溶液中のナノチューブ要素濃度を減少させることにより、ラフト化したナノチューブ要素の束が実質的に存在しないナノチューブファブリック層を形成するのによく適した塗布溶液645になる。
【0078】
本発明の開示の方法を説明するために、図6に詳述した例示の工程が特定のナノチューブ塗布溶液工程を説明したが、本発明の開示がこの特定に実施例に限定されないことに留意すべきである。実際、ある応用では、イオン粒子濃度レベル調整工程630及びナノチューブ濃度調整工程640の順序を逆にすることもできる。(つまり、最初にナノチューブ濃度が減少した塗布溶液、次に、イオン粒子濃度が増加した塗布溶液)。さらに、ある応用では、イオン粒子濃度レベル調整工程630を完全に除去可能であり、ナノチューブ濃度調整工程640を単独で用いることにより、十分に、浄化ナノチューブ塗布溶液625を、ラフト化したナノチューブ要素の束が実質的に存在しないナノチューブファブリック層を形成するのに適した溶液にすることができる。さらに他の応用において、ナノチューブ濃度調整工程640を完全に除去可能であり、イオン粒子濃度レベル調整工程を単独で用いることにより、十分に、浄化ナノチューブ塗布溶液625を、ラフト化したナノチューブ要素の束が実質的に存在しないナノチューブファブリック層を形成するのに適した溶液にすることができる。
【0079】
以下の実施例は、本発明の開示の方法に従って、(ラフト化の度合いを変化させた状態の)複数のナノチューブファブリック層の形成を説明する。各実施例では、浄化ナノチューブ塗布溶液は、米国特許出願第11/304,315号にゲンシウによって教示された方法(図5及び図6参照)を通して最初に実現される。そして、この浄化ナノチューブ塗布溶液は、各実施例で特定されるように調整されて、特定のナノチューブ濃度及びイオン粒子濃度レベルを実現する。各例では、調整されるイオン種は硝酸アンモニウム塩である。そして、生成した溶液が4インチSi/SiO2ウエハ上にスピンコーティング操作を介して堆積される。全ての例では、ナノチューブ濃度が、光学密度(本技術分野の当業者にとってよく知られている分光学技術)によって測定され、硝酸アンモニウム塩濃度が溶液に対する100万分の1単位(ppm)で測定される。
【0080】
以下の実施例は、硝酸アンモニウム塩(各実施例で使用される例示のイオン種)のレベルをppmで特定するが、用途によっては、イオン種濃度レベルをトラッキングする別の方法がさらに便利であることが実証されるであろう。図7は、各塗布溶液における硝酸アンモニウム塩の濃度レベル(ppm)に対して複数のナノチューブ塗布溶液の導電率(μS/cm)をプロットしたグラフである。図7で観測されたとおり、これら塗布溶液の導電率は、それぞれに分散した硝酸アンモニウム塩の濃度を追尾する傾向にある。例えば、以下の実施例に使用される塗布溶液では、約700μS/cm以上の導電率の読み取り値は、塗布溶液がラフト化を促進し易いことを指し示す。反対に、約500μS/cm以下の導電率の読み取り値は、塗布溶液がラフト化を抑制し易いことを指し示す。このように、本発明の開示の方法の応用において、該塗布溶液中の特定のイオン種の濃度レベルの替わりに、ナノチューブ塗布溶液の導電率を追跡及び調整することは便利である。
【0081】
全ての例では、スピンコーティング操作は以下の通りである。生ウエハが、5分間、300℃、ホットプレート上で予備焼成される。約3mlの調整した溶液が、ウエハ上にプラスチックピペットを介して散布され、ウエハが60rpmで回転される。30秒後、スピン速度が2秒間、500rpmに増加し、そして、続く180秒間、50rpmに減少し、最後に、20秒間、2000rpmに増加する。そして、(塗布溶液で現在コーティングされた)ウエハは、2分間、300℃ホットプレートに配置される。冷却サイクルの後、全工程が再度、2回繰り返されて、ウエハ上に塗布溶液の3つのコーティングが適用される。
【0082】
以下の実施例に使用される塗布溶液にとって、概して、10ppm以下の硝酸アンモニウム塩の濃度レベルが、高度にラフト化したファブリックを生成する傾向にあることが分かった。さらに、概して、20ppm以上の硝酸アンモニウム塩の濃度レベルが、より低いラフト化発生率のファブリックを生成する傾向にあることが分かった。これらの範囲の硝酸アンモニウム塩の濃度レベルを有する塗布溶液は、適度にラフト化したファブリック層を生成することが分かった。
【0083】
さらに、以下の実施例に使用された塗布溶液にとって、概して、約10以下の光学密度が、低いラフト化発生率のファブリックを生成する傾向にあることが分かった。さらに、概して、30以上の光学密度が、非常に高いラフト化発生率のファブリックを生成する傾向にあることが分かった。これらの範囲の光学密度を有する塗布溶液は、適度にラフト化したファブリック層を生成することが分かった。
【0084】
実施例1
【0085】
図8A〜8Cは、本発明の開示の方法に従って準備された、異なる倍率(それぞれ801、802及び803)における例示のナノチューブファブリック層のSEM画像である。図8A〜8Cのナノチューブファブリック層は、19.11の光学密度、及び、16ppmの硝酸アンモニウム塩濃度を有する塗布溶液から形成された。これらパラメータは、適度な量のラフト化をナノチューブファブリック層内に生成する(801、802、803)。ナノチューブファブリック層全体の解析によれば、約11.6%のファブリック(領域別)が、ラフト化したナノチューブ要素の束からなる。これらラフト化したナノチューブ要素の束が、図8A(810)、図8B(820)及び図8C(830)において実証された。
【0086】
実施例2
【0087】
図9A〜9Cは、本発明の開示の方法に従って準備された、異なる倍率(それぞれ901、902及び903)における例示のナノチューブファブリック層のSEM画像である。図9A〜9Cのナノチューブファブリック層は、34.35の光学密度、及び、12ppmの硝酸アンモニウム塩濃度を有する塗布溶液から形成された。これらパラメータは、高度のラフト化をナノチューブファブリック層内に生成する(901、902、903)。ナノチューブファブリック層全体の解析によれば、約18.9%のファブリック(領域別)が、ラフト化したナノチューブ要素の束からなる。これらラフト化したナノチューブ要素の束が、図9A(910)、図9B(920)及び図9C(930)において実証された。
【0088】
実施例3
【0089】
図10A〜10Cは、本発明の開示の方法に従って準備された、異なる倍率(それぞれ1001、1002及び1003)における例示のナノチューブファブリック層のSEM画像である。図10A〜10Cのナノチューブファブリック層は、10.02の光学密度、及び、11ppmの硝酸アンモニウム塩濃度を有する塗布溶液から形成された。これらパラメータは、低度のラフト化をナノチューブファブリック層内に生成する(1001、1002、1003)。ナノチューブファブリック層全体の解析によれば、約5.5%のファブリック(領域別)が、ラフト化したナノチューブ要素の束からなる。これらラフト化したナノチューブ要素の束が、図10A(1010)、図10B(1020)及び図10C(1030)において実証された。
【0090】
実施例4
【0091】
図11A〜11Cは、本発明の開示の方法に従って準備された、異なる倍率(それぞれ1101、1102及び1103)における例示のナノチューブファブリック層のSEM画像である。図11A〜11Cのナノチューブファブリック層は、19.69の光学密度、及び、1.5ppmの硝酸アンモニウム塩濃度を有する塗布溶液から形成された。これらパラメータは、高度のラフト化をナノチューブファブリック層内に生成する(1101、1102、1103)。ナノチューブファブリック層全体の解析によれば、約37.8%のファブリック(領域別)が、ラフト化したナノチューブ要素の束からなる。これらラフト化したナノチューブ要素の束が、図11A(1110)、図11B(1120)及び図11C(1130)において実証された。
【0092】
実施例5
【0093】
図12A〜12Cは、本発明の開示の方法に従って準備された、異なる倍率(それぞれ1201、1202及び1203)における例示のナノチューブファブリック層のSEM画像である。図12A〜12Cのナノチューブファブリック層は、19.71の光学密度、及び、25ppmの硝酸アンモニウム塩濃度を有する塗布溶液から形成された。これらパラメータは、ラフト化をナノチューブファブリック層内に生成しない(1201、1202、1203)。ナノチューブファブリック層全体の解析によれば、ナノチューブファブリック層には、ラフト化したナノチューブ要素の束が実質的に存在しない。
【0094】
実施例6
【0095】
図13A〜13Cは、本発明の開示の方法に従って準備された、異なる倍率(それぞれ1301、1302及び1303)における例示のナノチューブファブリック層のSEM画像である。図13A〜13Cのナノチューブファブリック層は、10.02の光学密度、及び、27ppmの硝酸アンモニウム塩濃度を有する塗布溶液から形成された。これらパラメータは、ラフト化をナノチューブファブリック層内に生成しない(1301、1302、1303)。ナノチューブファブリック層全体の解析によれば、ナノチューブファブリック層には、ラフト化したナノチューブ要素の束が実質的に存在しない。
【0096】
実施例7
【0097】
図14A〜14Cは、本発明の開示の方法に従って準備された、異なる倍率(それぞれ1401、1402及び1403)における例示のナノチューブファブリック層のSEM画像である。図14A〜14Cのナノチューブファブリック層は、9.4の光学密度、及び、2.5ppmの硝酸アンモニウム塩濃度を有する塗布溶液から形成された。これらパラメータは、適度のラフト化をナノチューブファブリック層内に生成する(1401、1402、1403)。ナノチューブファブリック層全体の解析によれば、約13.1%のファブリック(領域別)が、ラフト化したナノチューブ要素の束からなる。これらラフト化したナノチューブ要素の束が、図14A(1410)、図14B(1420)及び図14C(1430)において実証された。
【0098】
実施例8
【0099】
図15A〜15Cは、本発明の開示の方法に従って準備された、異なる倍率(それぞれ1501、1502及び1503)における例示のナノチューブファブリック層のSEM画像である。図15A〜15Cのナノチューブファブリック層は、33.9の光学密度、及び、33ppmの硝酸アンモニウム塩濃度を有する塗布溶液から形成された。これらパラメータは、適度のラフト化をナノチューブファブリック層内に生成する(1501、1502、1503)。ナノチューブファブリック層全体の解析によれば、約10.0%のファブリック(領域別)が、ラフト化したナノチューブ要素の束からなる。これらラフト化したナノチューブ要素の束が、図15A(1510)、図15B(1520)及び図15C(1530)において実証された。
【0100】
実施例9
【0101】
図16A〜16Cは、本発明の開示の方法に従って準備された、異なる倍率(それぞれ1601、1602及び1603)における例示のナノチューブファブリック層のSEM画像である。図16A〜16Cのナノチューブファブリック層は、33.9の光学密度、及び、7.5ppmの硝酸アンモニウム塩濃度を有する塗布溶液から形成された。これらパラメータは、高度のラフト化をナノチューブファブリック層内に生成する(1601、1602、1603)。ナノチューブファブリック層全体の解析によれば、約35.0%のファブリック(領域別)が、ラフト化したナノチューブ要素の束からなる。これらラフト化したナノチューブ要素の束が、図16A(1610)、図16B(1620)及び図16C(1630)において実証された。
【0102】
ナノチューブファブリックの多孔率及び/又は密度を制御する複数の技術をここに説明した。また、当該技術は、ファブリック内のナノチューブの配置を制御すること、ナノチューブファブリック内の間隙の配置を制御すること、及び、ファブリック内のナノチューブの濃度を制御することにも言及され得る。例えば、これら技術は、低多孔性、高密度のファブリックを提供可能である。さらに、当該技術は、ナノチューブファブリック内のナノチューブの間隙を制御することとして説明可能である。すなわち、現在のリトグラフィの制限(例えば、約20nm)以下の大きさの装置を作成するための技術が開示された。低多孔率及び高密度のファブリックは、例えば、ナノチューブフィルムの間隙を追加のナノチューブ要素で充填することによっても作成可能である。別の実施形態では、高密度のファブリックは、ファブリックに物理的な力を適用することによって作成可能である。さらに、ファブリックの密度又は多孔率は、必要であれば、低密度及び高多孔率のナノチューブファブリックを作成するように制御可能である。
【0103】
さらに、本開示の方法は、ナノチューブファブリックを使用して、ファブリック内の個々のナノチューブ要素の濃度及びファブリック内の間隙の体積が、所定の許容内で適合することが求められている任意の用途に利用可能である。
【0104】
本発明は特定の実施形態に関して説明されたが、多くの他の変形及び改変並びに他の使用が当業者にとって明らかである。したがって、本発明はここにおける特定の開示によって限定されることはない。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ナノチューブ塗布溶液であって、
液状媒体と、
第1所定濃度で前記液状媒体に分散した第1の複数のナノチューブ要素と、
第2所定濃度で前記液状媒体に分散した第2の複数のイオン粒子と、を備え、
前記第1の複数のナノチューブ要素の前記第1所定濃度、及び、前記第2の複数のイオン粒子の前記第2所定濃度の少なくとも一方が選択されて、当該ナノチューブ塗布溶液を使用して形成されるナノチューブファブリック層内に発現するラフト化の度合いを制御することを特徴とするナノチューブ塗布溶液。
【請求項2】
前記第1の複数のナノチューブ要素はカーボンナノチューブであることを特徴とする請求項2に記載のナノチューブ塗布溶液。
【請求項3】
前記カーボンナノチューブは単層カーボンナノチューブであることを特徴とする請求項1又は2に記載のナノチューブ塗布溶液。
【請求項4】
前記カーボンナノチューブは多層カーボンナノチューブであることを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載のナノチューブ塗布溶液。
【請求項5】
前記第2の複数のイオン粒子は、硝酸アンモニウム塩、ギ酸アンモニウムアセテート、炭酸アンモニウム、重炭酸アンモニウム、イオン性有機種、及び、イオン性ポリマーの少なくとも1つを含むことを特徴とする請求項1から4のいずれか一項に記載のナノチューブ塗布溶液。
【請求項6】
前記液状媒体は、水性溶液、硝酸溶液及び硫酸溶液の1つであることを特徴とする請求項1から5のいずれか一項に記載のナノチューブ塗布溶液。
【請求項7】
前記第1の複数のナノチューブ要素の前記第1所定濃度、及び、前記第2の複数のイオン粒子の前記第2所定濃度の少なくとも一方が選択されて、当該ナノチューブ塗布溶液を使用して形成されるナノチューブファブリック層内のラフト化を促進することを特徴とする請求項1から6のいずれか一項に記載のナノチューブ塗布溶液。
【請求項8】
前記第1の複数のナノチューブ要素の前記第1所定濃度、及び、前記第2の複数のイオン粒子の前記第2所定濃度の少なくとも一方が選択されて、当該ナノチューブ塗布溶液を使用して形成されるナノチューブファブリック層内のラフト化を抑制することを特徴とする請求項1から7のいずれか一項に記載のナノチューブ塗布溶液。
【請求項9】
請求項1から8のいずれか一項に記載のナノチューブ塗布溶液から形成されたナノファブリック。
【請求項10】
ナノチューブ塗布溶液を準備する方法であって、
液状媒体中に分散した第1濃度レベルの第1の複数のナノチューブ要素及び第2濃度レベルの第2の複数のイオン粒子を含む原ナノチューブ塗布溶液を形成するステップと、
前記ナノチューブ塗布溶液を使用して形成されるナノチューブファブリック層内に発現するラフト化の度合いを制御するように、前記第1の複数のナノチューブ要素の前記第1濃度レベル及び前記第2の複数のイオン粒子の前記第2濃度レベルの少なくとも一方を調整するステップと、を含むことを特徴とする方法。
【請求項11】
前記第1の複数のナノチューブ要素はカーボンナノチューブであることを特徴とする請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記カーボンナノチューブは単層カーボンナノチューブであることを特徴とする請求項10又は11に記載の方法。
【請求項13】
前記カーボンナノチューブは多層カーボンナノチューブであることを特徴とする請求項10から12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
前記第2の複数のイオン粒子は、硝酸アンモニウム塩、ギ酸アンモニウムアセテート、炭酸アンモニウム、重炭酸アンモニウム、イオン性有機種、及び、イオン性ポリマーの少なくとも1つを含むことを特徴とする請求項10から13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
前記液状媒体は、水性溶液、硝酸溶液及び硫酸溶液の1つであることを特徴とする請求項10から14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
前記第1の複数のナノチューブ要素の前記第1濃度レベル、及び、前記第2の複数のイオン粒子の前記第2濃度レベルの少なくとも一方を調整して、当該ナノチューブ塗布溶液を使用して形成されるナノチューブファブリック層内のラフト化を促進することを特徴とする請求項10から15のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
前記第1の複数のナノチューブ要素の前記第1濃度レベルを増加させることを特徴とする請求項10から16のいずれか一項に記載の方法。
【請求項18】
前記ナノチューブ塗布溶液内に追加容量の前記液状媒体を導入することにより、前記第1の複数のナノチューブ要素の前記第1濃度レベルを増加させることを特徴とする請求項10から17のいずれか一項に記載の方法。
【請求項19】
前記第2の複数のイオン粒子の前記第2濃度レベルを減少させることを特徴とする請求項10から18のいずれか一項に記載の方法。
【請求項20】
フィルタ工程を通して前記第2の複数のイオン粒子の前記第2濃度レベルを減少させることを特徴とする請求項10から19のいずれか一項に記載の方法。
【請求項21】
前記フィルタ工程は、クロスフロー濾過工程、超音波濾過工程及び遠心分離濾過工程のうちの1つであることを特徴とする請求項10から20のいずれか一項に記載の方法。
【請求項22】
前記第1の複数のナノチューブ要素の前記第1濃度レベル、及び、前記第2の複数のイオン粒子の前記第2濃度レベルの少なくとも一方を調整して、当該ナノチューブ塗布溶液を使用して形成されるナノチューブファブリック層内のラフト化を抑制することを特徴とする請求項10から21のいずれか一項に記載の方法。
【請求項23】
前記第1の複数のナノチューブ要素の前記第1濃度レベルを増加させることを特徴とする請求項10から22のいずれか一項に記載の方法。
【請求項24】
前記ナノチューブ塗布溶液の前記液状媒体の容量を削減することにより、前記第1の複数のナノチューブ要素の前記第1濃度レベルを減少させることを特徴とする請求項10から23のいずれか一項に記載の方法。
【請求項25】
前記第2の複数のイオン粒子の前記第2濃度レベルを増加させることを特徴とする請求項10から24のいずれか一項に記載の方法。
【請求項26】
前記ナノチューブ塗布溶液内への追加量の前記イオン粒子の導入を通して、前記第2の複数のイオン粒子の前記第2濃度レベルを増加させることを特徴とする請求項10から25のいずれか一項に記載の方法。
【請求項1】
ナノチューブ塗布溶液であって、
液状媒体と、
第1所定濃度で前記液状媒体に分散した第1の複数のナノチューブ要素と、
第2所定濃度で前記液状媒体に分散した第2の複数のイオン粒子と、を備え、
前記第1の複数のナノチューブ要素の前記第1所定濃度、及び、前記第2の複数のイオン粒子の前記第2所定濃度の少なくとも一方が選択されて、当該ナノチューブ塗布溶液を使用して形成されるナノチューブファブリック層内に発現するラフト化の度合いを制御することを特徴とするナノチューブ塗布溶液。
【請求項2】
前記第1の複数のナノチューブ要素はカーボンナノチューブであることを特徴とする請求項2に記載のナノチューブ塗布溶液。
【請求項3】
前記カーボンナノチューブは単層カーボンナノチューブであることを特徴とする請求項1又は2に記載のナノチューブ塗布溶液。
【請求項4】
前記カーボンナノチューブは多層カーボンナノチューブであることを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載のナノチューブ塗布溶液。
【請求項5】
前記第2の複数のイオン粒子は、硝酸アンモニウム塩、ギ酸アンモニウムアセテート、炭酸アンモニウム、重炭酸アンモニウム、イオン性有機種、及び、イオン性ポリマーの少なくとも1つを含むことを特徴とする請求項1から4のいずれか一項に記載のナノチューブ塗布溶液。
【請求項6】
前記液状媒体は、水性溶液、硝酸溶液及び硫酸溶液の1つであることを特徴とする請求項1から5のいずれか一項に記載のナノチューブ塗布溶液。
【請求項7】
前記第1の複数のナノチューブ要素の前記第1所定濃度、及び、前記第2の複数のイオン粒子の前記第2所定濃度の少なくとも一方が選択されて、当該ナノチューブ塗布溶液を使用して形成されるナノチューブファブリック層内のラフト化を促進することを特徴とする請求項1から6のいずれか一項に記載のナノチューブ塗布溶液。
【請求項8】
前記第1の複数のナノチューブ要素の前記第1所定濃度、及び、前記第2の複数のイオン粒子の前記第2所定濃度の少なくとも一方が選択されて、当該ナノチューブ塗布溶液を使用して形成されるナノチューブファブリック層内のラフト化を抑制することを特徴とする請求項1から7のいずれか一項に記載のナノチューブ塗布溶液。
【請求項9】
請求項1から8のいずれか一項に記載のナノチューブ塗布溶液から形成されたナノファブリック。
【請求項10】
ナノチューブ塗布溶液を準備する方法であって、
液状媒体中に分散した第1濃度レベルの第1の複数のナノチューブ要素及び第2濃度レベルの第2の複数のイオン粒子を含む原ナノチューブ塗布溶液を形成するステップと、
前記ナノチューブ塗布溶液を使用して形成されるナノチューブファブリック層内に発現するラフト化の度合いを制御するように、前記第1の複数のナノチューブ要素の前記第1濃度レベル及び前記第2の複数のイオン粒子の前記第2濃度レベルの少なくとも一方を調整するステップと、を含むことを特徴とする方法。
【請求項11】
前記第1の複数のナノチューブ要素はカーボンナノチューブであることを特徴とする請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記カーボンナノチューブは単層カーボンナノチューブであることを特徴とする請求項10又は11に記載の方法。
【請求項13】
前記カーボンナノチューブは多層カーボンナノチューブであることを特徴とする請求項10から12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
前記第2の複数のイオン粒子は、硝酸アンモニウム塩、ギ酸アンモニウムアセテート、炭酸アンモニウム、重炭酸アンモニウム、イオン性有機種、及び、イオン性ポリマーの少なくとも1つを含むことを特徴とする請求項10から13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
前記液状媒体は、水性溶液、硝酸溶液及び硫酸溶液の1つであることを特徴とする請求項10から14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
前記第1の複数のナノチューブ要素の前記第1濃度レベル、及び、前記第2の複数のイオン粒子の前記第2濃度レベルの少なくとも一方を調整して、当該ナノチューブ塗布溶液を使用して形成されるナノチューブファブリック層内のラフト化を促進することを特徴とする請求項10から15のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
前記第1の複数のナノチューブ要素の前記第1濃度レベルを増加させることを特徴とする請求項10から16のいずれか一項に記載の方法。
【請求項18】
前記ナノチューブ塗布溶液内に追加容量の前記液状媒体を導入することにより、前記第1の複数のナノチューブ要素の前記第1濃度レベルを増加させることを特徴とする請求項10から17のいずれか一項に記載の方法。
【請求項19】
前記第2の複数のイオン粒子の前記第2濃度レベルを減少させることを特徴とする請求項10から18のいずれか一項に記載の方法。
【請求項20】
フィルタ工程を通して前記第2の複数のイオン粒子の前記第2濃度レベルを減少させることを特徴とする請求項10から19のいずれか一項に記載の方法。
【請求項21】
前記フィルタ工程は、クロスフロー濾過工程、超音波濾過工程及び遠心分離濾過工程のうちの1つであることを特徴とする請求項10から20のいずれか一項に記載の方法。
【請求項22】
前記第1の複数のナノチューブ要素の前記第1濃度レベル、及び、前記第2の複数のイオン粒子の前記第2濃度レベルの少なくとも一方を調整して、当該ナノチューブ塗布溶液を使用して形成されるナノチューブファブリック層内のラフト化を抑制することを特徴とする請求項10から21のいずれか一項に記載の方法。
【請求項23】
前記第1の複数のナノチューブ要素の前記第1濃度レベルを増加させることを特徴とする請求項10から22のいずれか一項に記載の方法。
【請求項24】
前記ナノチューブ塗布溶液の前記液状媒体の容量を削減することにより、前記第1の複数のナノチューブ要素の前記第1濃度レベルを減少させることを特徴とする請求項10から23のいずれか一項に記載の方法。
【請求項25】
前記第2の複数のイオン粒子の前記第2濃度レベルを増加させることを特徴とする請求項10から24のいずれか一項に記載の方法。
【請求項26】
前記ナノチューブ塗布溶液内への追加量の前記イオン粒子の導入を通して、前記第2の複数のイオン粒子の前記第2濃度レベルを増加させることを特徴とする請求項10から25のいずれか一項に記載の方法。
【図1】
【図3】
【図5】
【図6】
【図7】
【図2A】
【図2B】
【図4A】
【図4B】
【図8A】
【図8B】
【図8C】
【図9A】
【図9B】
【図9C】
【図10A】
【図10B】
【図10C】
【図11A】
【図11B】
【図11C】
【図12A】
【図12B】
【図12C】
【図13A】
【図13B】
【図13C】
【図14A】
【図14B】
【図14C】
【図15A】
【図15B】
【図15C】
【図16A】
【図16B】
【図16C】
【図3】
【図5】
【図6】
【図7】
【図2A】
【図2B】
【図4A】
【図4B】
【図8A】
【図8B】
【図8C】
【図9A】
【図9B】
【図9C】
【図10A】
【図10B】
【図10C】
【図11A】
【図11B】
【図11C】
【図12A】
【図12B】
【図12C】
【図13A】
【図13B】
【図13C】
【図14A】
【図14B】
【図14C】
【図15A】
【図15B】
【図15C】
【図16A】
【図16B】
【図16C】
【公表番号】特表2013−519620(P2013−519620A)
【公表日】平成25年5月30日(2013.5.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−553069(P2012−553069)
【出願日】平成23年2月14日(2011.2.14)
【国際出願番号】PCT/US2011/024710
【国際公開番号】WO2011/100661
【国際公開日】平成23年8月18日(2011.8.18)
【出願人】(504022618)ナンテロ,インク. (8)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成25年5月30日(2013.5.30)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年2月14日(2011.2.14)
【国際出願番号】PCT/US2011/024710
【国際公開番号】WO2011/100661
【国際公開日】平成23年8月18日(2011.8.18)
【出願人】(504022618)ナンテロ,インク. (8)
【Fターム(参考)】
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