ナノチューブ中での安定化による改良された爆発物
ナノチューブの壁によって規定される内部キャビティを持つナノチューブと、ナノチューブの内部キャビティ内に含有された爆発性化合物とを含む爆発性化合物を包含するナノチューブ、および爆発性化合物を含有するナノチューブを形成する方法。基板上の予め決定された位置にナノチューブを提供すること、ナノチューブを爆発性化合物に暴露すること、爆発性化合物をナノチューブ内で爆発させ、予め決定された位置でエネルギーを解放することを含む予め決定された位置にエネルギーを提供する方法。爆発性化合物を提供することであって、爆発性化合物が衝撃および/または摩擦に対して第1の感度を持つこと、爆発性化合物がキャビティに入るようにナノチューブのキャビティを爆発性化合物に暴露することを含み、キャビティ中で爆発性化合物が第1の感度に対して低下した衝撃および/または摩擦に対する第2の感度を持つ爆発性化合物を安定化する方法。
【発明の詳細な説明】
【発明の概要】
【0001】
背景
技術分野
本発明は爆発物の分野、特に、爆発性ナノチューブを作るためにナノチューブの領域内に爆発性化合物を配置することによる爆発性化合物の安定化、および爆発性ナノチューブの新規な用途での使用に関する。
【0002】
関連技術の記載
フラーレンは、典型的に六角形および五角形に配列された本質的にsp2混成炭素からなる、球状で、閉じた籠型の分子である。バックミンスターフラーレン、より一般的には「バッキーボール」としても知られるC60およびC70のようなフラーレンは、高温で気化された炭素から製造されている。フラーレンの研究が起源の発見であるカーボンナノチューブは、飯島らによって、最初に"Helical microtubules of graphitic carbon", NATURE, 354, 56 (1991)において、および後に "Single-shell carbon nanotubes of 1-nm diameter", NATURE, 363, 605-606 (1993)において初めて開示された。先のNATURE論文において、飯島らの報告によれば、径が4ないし30 nm、かつ長さが1マイクロメートルまでの範囲のグラファイト性炭素針が、100 Torrの圧力下、アルゴンを充填した容器中での、炭素のd.c.アーク放電気化において使用された炭素電極の陰極端上に成長した。このNATURE論文中で、2ないし7層を持つナノチューブが飯島らによって報告された。そのとき以来、両端が開いているか、または端部の封を形成する半フラーレン半球によって一方または両方の端が閉じられ得る単層および多層の管状構造が作られている。単層カーボンナノチューブ(SWCNT)、またはより一般的に「バッキーチューブ」として知られる単層炭素筒型構造、および多層カーボンナノチューブ(MWCNT)は、電気および熱伝導性ならびに高い強度の両方を含む特異な性質を持つ。ここで使用されるように、多層フラーレンを含むフラーレンまたはバッキーボールは、ナノチューブの定義の内に含まれる。したがって、ナノチューブに対するここでの全ての参照は、特定の形態のナノチューブを特に指示しない限り、これら全ての形態を含む。
【0003】
単層種が1ないしおよそ100ナノメートル(nm)の範囲の内径を持つナノチューブ、特にカーボンナノチューブが開発されている。単層ナノチューブ(SWNT)は、sp2グラフェン炭素の巻かれたシートで構成され、フラーレン炭素半球によって一方の端、または両方の端が終端しているか、または両端ともフラーレン炭素半球によって終端していないかであり得る。したがって、ナノチューブは本質的に細長いフラーレンみなすことができる。SWNTは、触媒的アーク気化またはレーザーアブレーションによって調製された場合、比較的限定された径の範囲内で、境界明瞭な円筒キャビティを形成する。鉄および/または他の触媒の存在下での一酸化炭素の熱分解のような、種々の、触媒で補助された分解技術によって大量のSWNTを製造することができる。
【0004】
爆発物は、しばしばまさにそれらの性質に起因して不安定である。周知の例は、例えばニトログリセリン、TATPおよび金属アジドを含む。以前は、これらの爆発物は不活性キャリアまたは反応性の低いキャリア内に含める、例えばダイナマイトを作るためにニトログリセリンを鋸屑中に含めることによって、または爆発性化合物の衝撃感度を抑制するように、珪藻土のような物質を使用することによって安定化されてきている。このような安定化のさらなる例は、凍結、または溶媒もしくは熱可塑性ポリマーのような不活性キャリアの使用を含む。このような方法は比較的安定な物質を製造するが、それはいまだにバルクな物質であり、かつ既知の方法は全ていくつかの問題を含み、完全に上手くいくものではない。さらに、バルク物質であるので、マイクロまたはナノ環境における使用のための備えは殆ど無い。
【0005】
爆発物を安定化する新規な方法についての需要が存在する。さらに、マイクロまたはナノ環境において使用され得、かつ、より標準的な爆発物としてバルクな状態でも使用することができる爆発物についての需要が存在する。
【0006】
概要
本発明の1つの側面によれば、爆発性化合物で充填されているか、または部分的に充填されているキャビティを持つナノチューブが提供される。爆発性化合物は、ナノチューブのキャビティ中に存在することによって安定化され得る。爆発性化合物は、結晶構造または他の物理特性のような、ナノチューブの中に存在することによって変更された他の特性を持ち得、同様にその反応性をも変えられる。爆発物を積んだナノチューブは、マイクロまたはナノスケールであり得る選択された位置または予め決められた位置に小さなエネルギーチャージを与えるために使用され得る。あるいは、爆発物を積んだナノチューブは、ダイナマイトが従来使用されていたようなマクロスケールにおいて有用なバルクな爆発性組成物を形成するために一まとめにして使用され得る。さらなる代替案としては、爆発物を積んだナノチューブは、一塊の通常の爆発物と混合することによって使用することができ、かつ起爆源として使用され得、その際、マイクロ波放射のような電磁放射が適用された場合に爆発性ナノチューブが実質的に同時に爆発を生じ、それにより従来の爆発物の塊全体の実質的に同時の爆発を可能にする。
【0007】
1つの態様において、本発明は、内部キャビティを持つナノチューブと、前記ナノチューブの内部キャビティ内に含有された爆発性化合物とを含む、爆発性化合物を含んだナノチューブを含む。1つの態様において、ナノチューブは単層カーボンナノチューブである。1つの態様においては、本発明のナノチューブはおよそ1ナノメートル(nm)ないしおよそ20 nmの範囲の内径を持つ。他の態様においては、本発明のナノチューブの内径はおよそ1 nmないしおよそ15 nmの範囲にあり、他の態様においては本発明のナノチューブの内径はおよそ1 nmないしおよそ10 nmの範囲にあり、他の態様においては本発明のナノチューブの内径はおよそ1 nmないしおよそ5 nmの範囲にある。本発明のナノチューブは、現在既知の調製方法のもとで、少なくとも20ミクロンの長さを持ち得、100ミクロンもの長さになり得る。
【0008】
1つの態様において、本発明のナノチューブは、例えば2ないしおよそ10以上の範囲の、任意の既知数の壁層を持つ多層ナノチューブである。多層ナノチューブにおいては、爆発性化合物は最も内側のナノチューブ中のキャビティ内に保持されるか、または多層ナノチューブのそれぞれの層のいずれかの間に保持され得る。理解されるであろうが、多層ナノチューブにおいては内径の範囲が存在し、最も内側のナノチューブの内径が先述の範囲にある。多層ナノチューブは、例えばより大きな(0,10)単層ナノチューブ内の(0,8)単層ナノチューブ等々のような、多層ナノチューブの層の総数について、同心円筒の形態にあり得る。多層ナノチューブが、自身の周りに巻き上げられたグラファイトの単一のシートに似て、同心円が存在しない羊皮紙の巻物または巻き上げられた新聞紙に似ていることもあり得る。多層ナノチューブの外径は、例えばおよそ150 nm以上までの範囲の任意の既知の径を持ち得る。理解されるだろうが、多層ナノチューブの外径は壁層の数および最も外側のナノチューブの径に依存する。
【0009】
先述したように、フラーレン(またはバッキーボール)はナノチューブの一種であるので、フラーレンの内径は一般に先述の範囲内に収まる。多層ナノチューブのように、フラーレンは、最も内側のフラーレンまたは殻の1つが爆発性化合物を含有して互いに入れ子となり得る。他の態様において、フラーレンまたは入れ子状のフラーレンは、単層または多層ナノチューブの内側に嵌め込まれ得る。したがって、1つの態様において、爆発性化合物をフラーレン(または入れ子状のフラーレン)の内側に配置することができ、1つ以上のこのようなフラーレン(または入れ子状のフラーレン)を単層または多層ナノチューブの内側に嵌め込むことができる。1つの態様において、フラーレンは、ナノチューブの内側に嵌め込まれて一緒に混合されたときに反応して例えば爆発性化合物を形成するか、または自発的に爆発する混合物(すなわち、混合された際に予め分離されていた化合物が爆発的に反応する)を形成するか、または混ざり合ってナノチューブの破裂をもたらす臨界量もしくは体積に至り、単数または複数の化合物を放出するかのいずれかである化合物の、隔離剤または分離材として機能する。
【0010】
1つの態様において、爆発性化合物は、トリアセトントリペルオキシド、ジアセトンジペルオキシド、ヘキサメチレントリペルオキシドジアミン、モノニトロトルエン、ジニトロトルエン、トリニトロトルエン、エチレングリコールジニトラート、ニトロメタン、ニトログリセリン、1,3,5-トリニトロ-1,3,5-トリアザシクロオクタン、1,3,5,7-テトラトニトロ-1,3,5,7-テトラアザシクロオクタン、ペンタエリスリトールテトラニトラート、1,2,3-プロパントリアルトリニトラート、金属アルミニウム+ Fe2O3、金属アルミニウム + PTFE(例えば、ナノサイズであり、かつ安定化されている)、金属アジド(例えば、XN3(ここで、Xは例えばNa、Pb、Cu、Agおよびそれらの混合物である))、硝酸アンモニウム (NH4NO3)、多形性窒素(例えば立方ゴーシュ構造を有する多形性窒素(cg-N)およびポリニトロキュバン)のうちの1つ以上を含む。他の既知の爆発性化合物を本発明に従って使用することができ、先述のものは例にすぎない。
【0011】
1つの例において、爆発性化合物は、ナノチューブの中に存在することにより、ナノチューブの外側の同じ化合物と比べて安定化される。他の態様において、爆発性化合物はより反応性となり、すなわち、ナノチューブの中に存在することによって、ナノチューブの外側の同じ化合物と比べて不安定化されるかまたは活性化される。化合物が安定化されるかまたは不安定化されるかは、ナノチューブ中への閉じ込めによってどの結晶形態が決定されるかに依存する。
【0012】
ここで使用されるとおり、爆発性化合物は、より低い反応性のもの、より低い摩擦感度のもの、より低い衝撃感度のものまたはより制御しやすく爆発されるものの1つ以上のものにするためにその特性を変えられる時に、「安定化」される。したがって、ナノチューブの内部への配置は、爆発性化合物をより低い反応性かつより低い衝撃感度のものにし得る。逆に、爆発性化合物がナノチューブの中に置かれることによってより反応性となる場合は、これらの特性のうちのいずれか1つ以上が増大される。したがって、ナノチューブの内部への配置は、爆発性化合物を、より反応性がありかつより衝撃感度のあるものにし得る。1つの態様において、ナノチューブ中に爆発性化合物を配置することは、或る特性に関しては化合物を安定化し得るが、その他の特性に関しては化合物を不安定化し得る。したがって、1つの態様においては、ナノチューブ中に爆発性化合物を配置することは、衝撃および摩擦に対して爆発性化合物をより感度の低いものにするが、或る選択された起爆機構に対してはその反応性を増大させる。他の態様において、ナノチューブ中に爆発性化合物を配置することは、衝撃および摩擦に対して爆発性化合物をより感度の低いものにし、したがって、ナノチューブ中への爆発性化合物の閉じ込めから得られるより減少された感度に起因して扱いの容易さおよび安全性を向上させる。
【0013】
1つの態様において、本発明はナノチューブを形成すること(前記ナノチューブは内部キャビティを持つ)、前記ナノチューブを爆発物に暴露すること(前記爆発物は例えば毛管作用によって内部キャビティに入る)を含む、爆発性ナノチューブを形成するための方法を含む。爆発物は、内部キャビティ中に入った後に内部キャビティ中に留まる。爆発物は、蒸気、液体、溶液または固体としてナノチューブに暴露される。他の態様において、爆発物は溶媒中(例えば、およそ室温下で)に提供され得るか、昇華気相中に提供され得るか、または二酸化炭素のような超臨界物質の成分として提供され得る。爆発物は、引続いてナノチューブの中に保持され、その後、選択された時間で爆発させ得る。
【0014】
1つの態様において、ナノチューブを形成する方法は、ナノチューブが多層ナノチューブの場合にはさらに、充填されたナノチューブに電子照射して、ナノチューブの径を収縮させ、ナノチューブの中の物質の結晶形を変えることを含む。この照射は、多層ナノチューブの壁に収縮を生じさせ、それによって多層ナノチューブを充填している物質に高圧を印加する。印加された高圧は、ナノチューブの中の物質に形状の変化を生じさせ得、いくつかの態様においてはその結晶形を変えさせ得る。この圧力の印加は、ナノチューブの中の物質を安定化するためかまたは不安定化するためかのいずれかに使用され得る。
【0015】
1つに態様において、方法はさらにナノチューブの中の爆発性化合物を爆発させることを含む。1つの態様において、爆発は電子ビーム、電磁放射、熱もしくは圧力、またはArもしくはHgイオンのような重イオン衝撃、または放射性物質からのアルファ、ベータもしくはガンマ線放射の適用によるものである。また、プラズモンおよび/またはフォノンのような他の関連する破壊機構を、爆発性化合物を爆発させるために使用することができる。
【0016】
1つの態様において、本発明は基板上の予め決められた位置にナノチューブを提供すること(前記ナノチューブは内部キャビティを持つ)、前記ナノチューブを爆発物に暴露すること(前記爆発物は前記内部キャビティに入る)、および前記ナノチューブ内の爆発物を爆発させて前記予め決められた位置でエネルギーを解放させることを含む、予め決められた位置にエネルギーを提供する方法を含む。したがって、本発明は、任意の種々の所望される目的のために、基板中の特定のターゲット部位のような予め決められた位置に、非常に小さな、例えばマイクロまたはナノスケールの爆発力を与えるために使用され得る。このような目的は、例えば、半導体デバイスのような基板においてヒュージブルリンクを溶融することのような所望される変化を生じさせるために、予め決められた量のエネルギーを選択された部位に提供すること、またはマイクロまたはナノスケールで化学反応を生じさせるために動力を提供することを含み得る。1つの態様において、基板は、一塊の通常の爆発物であり、爆発性ナノチューブは、該塊中に分布する。他の用途は、ここでの開示に基づいて当業者に明らかとなるであろうし、このような用途は本発明の範囲内で企図される。
【0017】
したがって、1つの態様にぉいて、本発明は爆発物を安定化する新規な方法についての需要に対する解決策を提供する。さらに、本発明は、通常の爆発物と混合されて通常の爆発物の爆発を制御するために使用され得、かつより通常の爆発物と同様にバルクな状態でも使用され得る、マイクロまたはナノ環境において使用され得る爆発物についての需要に対する解決策を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】図1は、端が開いた単層ナノチューブの概略透視図である。
【図2】図2は、典型的なナノチューブの3つの異なる形態または構造を描いた、3つの単層ナノチューブの概略透視図である。
【図3】図3は、C60フラーレンの概略透視図である。
【図4】図4は、本発明の1つの態様に従った、フラーレン分子内に封入された爆発性化合物のような分子を有するC60フラーレンの概略透視図である。
【図5】図5は、本発明の1つの態様に従った、キャビティ内に爆発性化合物を含有する単層ナノチューブの概略断面の描写である。
【図6】図6は、本発明の1つの態様に従った、AおよびBと標示された2つのナノチューブを含有するナノチューブの概略図である。
【図7】図7は、本発明の1つの態様に従った、各フラーレンが化合物A、BおよびCのうちの1つを含有する、フラーレンまたはバッキーボールを含むナノチューブの概略図である。
【図8】図8は、本発明の1つの態様に従った、フラーレンが化合物AとBの間に分離を与える隔離剤として働く、2つのフラーレンを含有するナノチューブの概略図である。
【図9】図9は、本発明の1つの態様に従った、爆発性化合物でナノチューブを充填する方法の概略図である。
【図10】図10は、本発明の1つの態様に従った、ナノチューブおよび方法のより詳細を示す、図4のもののような方法の概略図である。
【図11】図11は、本発明の1つの態様に従った、各々が爆発性化合物を含有するフラーレンまたは短いナノチューブでナノチューブを充填する他の方法の概略図である。
【図12】図12は、本発明の1つの態様に従った、充填されるナノチューブの壁の欠陥を通じて、ナノチューブまたはフラーレン(バッキーボール)のいずれかによってナノチューブを充填する他の方法の概略図である。
【図13】図13は、例えばSEM中での電子放射の、このような電子放射に供されたナノチューブに対する効果を示す概略図である。
【図14】図14は、キャビティ内に爆発性化合物を含有する複数のナノチューブが、巨視的な通常の爆発物の塊内に含まれる、本発明の他の態様の概略図である。
【図15】図15は、爆発性化合物の分子成分間の間隔に対する結合エネルギー(BE)のグラフである。
【0019】
図示の簡潔性および明確性のために、図に示される要素は、必ずしも縮尺どおりに描かれていないことが理解されるべきである。例えば、いくつかの要素の寸法は、明確性のために互いに対して誇張されている。さらに、適切であると考えられた場合、参照番号は、対応する要素を示すために図の間で繰り返されるであろう。
【0020】
詳細な説明
1つの態様において、本発明は、ナノチューブのキャビティが爆発性化合物を含むナノチューブに関する。ナノチューブは単層ナノチューブ(SWNT)または多層ナノチューブ(MWNT)であり得る。1つの態様において、ナノチューブはカーボンナノチューブ(「CNT」)である。本発明は、1つの態様においては単層カーボンナノチューブ(「SWCNT」)に関し、また他の態様においては多層カーボンナノチューブ(「MWCNT」)に関し、ナノチューブのキャビティ中、あるいは或る態様においてはMWCNTの壁の間に爆発性化合物を含む。本発明は主にカーボンナノチューブに関するが、ここでの教示はケイ素、またはチタンのような金属のような他の既知のタイプのナノチューブに当てはまるように広く考えられる。
【0021】
単層カーボンナノチューブのサイズおよび構造を規定することにおいて、DresselhausらによってScience of Fullerenes and Carbon Nanotubes, 1996, San Diego: Academic Press, Ch. 19に記載された命名の体系をここで使用する。単層カーボンナノチューブは、2つの指標(n, m)によって互いに区別され、ここでnおよびmは、条片が円筒の表面上に巻かれて(円筒の形状になる)場合に条片の側面端が継目無しに結合されるように、六角形のグラファイトの単一の条片をどのように切断するかを表す整数である。n = mのとき、チューブがチューブの軸に対して垂直に切断されたときに六角形の側面のみが露出され、チューブの端の外周まわりのそれらのパターンが、n回繰り返されるアームチェアの肘掛およびシートに似ているので、得られたチューブは「アームチェア」または(n, n)タイプのものと呼ばれる。m = 0のとき、チューブがチューブ軸に対して垂直に切断されたときに端がジグザグパターンであるので、得られたチューブは「ジグザグ」または(n, 0)タイプのものと呼ばれる。n≠mおよびm≠0の場合、得られたチューブはキラリティを持つ。電子的特性は構造に依存し、例えば、アームチェアチューブは金属性であり、かつ極めて高い電気伝導性を持つ。他のチューブのタイプはそれらの構造に依存して金属、金属性、半金属、半導体または電気絶縁体である。チューブのタイプに拘らず、全ての単層ナノチューブは極めて高い熱伝導性および抗張力を持つ。
【0022】
本発明のナノチューブは、任意の既知の方法によって調製され得、いくらかは市販されている。"Helical microtubules of graphitic carbon", NATURE, 354, 56 (1991)および"Single-shell carbon nanotubes of 1-nm diameter", NATURE, 363, 605-606 (1993)を含む飯島らによる初期の開示以来、CNTを製造するための多種多様な方法が発明されている。例えば、方法のいくつかは米国特許第7,052,668号で言及されており、SWCNTの調製に関するその開示はここに参照によって組入れられる。SWCNTは、今日では少量の商用量にて市販されている。カーボンナノチューブの合成のための種々の方法が既知であり、今日では3つの主なアプローチがある。これらは炭素のレーザーアブレーション(Thess, A. et al., SCIENCE 273, 483 (1996))、グラファイトロッドの電気アーク放電(Journet, C. et al., NATURE 388,756 (1997))、および炭化水素の化学気相堆積(Ivanov, V. et al., CHEM. PHYS. LETT. 223, 329 (1994); Li A. et al., SCIENCE 274, 1701 (1996))を含む。接触炭化水素クラッキングによる多層カーボンナノチューブの製造は、商用スケールで実施されるが(U.S. Pat. No. 5,578,543)、単層カーボンナノチューブの製造は、レーザー技術によるもの(Rinzler, A. G. et al., APPL. PHYS. A. 67, 29 (1998))およびアーク技術によるもの(Haffner, J. H. et al., CHEM. PHYS. LETT. 296, 195 (1998))でもいまだにグラムスケールであった(1998年のものとして)。本発明のナノチューブは、適切な純度および欠陥の要件が満たされることを前提として、当技術分野で既知の、任意の種々の技術によって調製され得る。このような欠陥は、1つ以上の欠損原子によって生じるナノチューブの単数または複数の壁中における穴または開口のような、既知のナノチューブの欠陥を含む。しかしながら、このような欠陥は、本発明の爆発性化合物のような分子の、ナノチューブの内部空間への挿入または導入における使用のためには望ましいであろう。当技術分野で既知のように、このような欠陥は、ナノチューブへの照射によってしばしば除去することができ、1つの態様においては、欠陥が爆発性化合物をナノチューブへ挿入または導入するために使用された後に、そのようにして充填されたナノチューブの欠陥が照射によって閉じられるかまたは除去される。
【0023】
1つの態様において、ナノチューブは固体基板上に配列されたSWCNTの制御されたパターンで形成され得る。1つの態様において、このような配向されているかまたは配列されたSWCNTのアレイの制御されたパターンは、McLean、Robert S.らによって"Controlled Two-Dimensional Pattern of Spontaneously Aligned Carbon Nanotubes", NANO LETTERS, Vol. 6, No. 1, pp. 55-60 (2006)に開示されたような方法によって固体基板上に形成され得る。
【0024】
1つの態様において、ナノチューブは結晶性サファイア基板上に、制御された密度を持って配向または配列されたアレイで形成され得る。1つの態様において、このような配列されているかまたは配向されているナノチューブのアレイは、Liu、Xiaoleiらによって"Novel Nanotube-on-Insulator (NOI) Approach toward Single-Walled Carbon Nanotube Devices", NANO LETTERS, Vol. 6, No. 1, pp. 34-39 (2006)に開示されたような方法によって形成され得る。この刊行物および先行する刊行物は、配列されたナノチューブのアレイを製造するための方法の例を提供する。
【0025】
1つの態様において、ナノチューブはターゲット基板上に直接、すなわち、インサイチュで、先述の方法または他の既知の方法のうちの1つによって形成される。したがって、例えば、半導体デバイスが、そこに配置された本発明の爆発性ナノチューブを選択された位置に有するものである場合は、適切な部位が選択され、該部位は選択のために活性化および/または隔離され、適切なナノチューブの製造方法が適用され得、それによりデバイス上の選択された位置に1つ以上のナノチューブを形成する。その後、デバイスがここに開示された方法のいずれかによって爆発性化合物に暴露される場合、爆発性化合物はナノチューブのキャビティに移動し、そしてその中に留まり、このようにして爆発性化合物を含有するナノチューブを形成する。
【0026】
単層カーボンナノチューブの製造に関して、この開示および添付された請求項において「エクスサイチュ(ex situ)」製造とは、単層カーボンナノチューブが後に使用されるデバイスおよび基板の形成とは別個の方法としての単層カーボンナノチューブの製造のことを言い、「インサイチュ」製造とは、デバイスまたは基板を形成する方法の間の単層カーボンナノチューブの製造のことを言う。本発明は、爆発性化合物含有ナノチューブを製造するための、ナノチューブのエクスサイチュおよびインサイチュ両方での製造ならびにそのための爆発性化合物の提供に広く適用可能である。
【0027】
他の態様において、単数または複数のナノチューブはエクスサイチュで製造され得、その後デバイスにおける所望の位置に移動されるか、またはより大きなスケールの爆発性デバイスの調製のような他の目的のために使用され得る。このようなより大きなデバイスの例は、ミサイルの弾頭、および例えば採鉱、爆破および建設作業における使用のための爆発物を含む。他の態様において、爆発物を含有するナノチューブは、微小金属成形、およびMEMS(微小電子機械システム)デバイスを構築することのような他の製造において使用され得る。
【0028】
1つの態様において、本発明のナノチューブはペンダント有機基、オリゴマー鎖もしくはポリマー鎖によって誘導体化または修飾されていない。すなわち、このような態様におけるナノチューブは修飾されていない。
【0029】
他の態様において、本発明のナノチューブはペンダント有機基、オリゴマー鎖もしくはポリマー鎖によって誘導体化または修飾されている。当業者に既知なように、いくつかの場合においてはナノチューブの外壁における欠陥はそのようなペンダント基のためのアンカー部位を与えるカルボン酸基(-COO-)の形態にあり得る。例えば、このようなペンダント基はポリマイミン鎖を含み得る。このような基は、溶解性のような特性を含むナノチューブの特性を修飾するために追加され得る。
【0030】
一旦ナノチューブが形成されると、それらは任意で精製されるかまたは同様に処理される。例えば、ナノチューブは酸洗浄、および/またはアニールされ得る。アニールはナノチューブの構造における欠陥を直すために使用され得る。
【0031】
爆発性化合物は、ナノチューブのキャビティに入る爆発性化合物をもたらす任意の適切な方法によってナノチューブに提供され得る。例えば、爆発性化合物は、蒸気、液体、溶液、固体の形態でまたは超臨界流体中でナノチューブのキャビティに提供されるか、または暴露され得る。硝酸アンモニウムは、その低い融点(169℃)に起因して、純溶融液体としてナノチューブのキャビティ中に容易に配置され得る。もちろん、どのこのような暴露方法は、明らかに危険な爆発物に起因して極度の注意の元に実行されなければならない。硝酸アンモニウムはいくつかの結晶形を持ち、どれを形成し得るかはナノチューブの径によって制限される。適切な結晶形でのナノチューブ閉じ込めは、硝酸アンモニウムを繰返し冷却し、融解するときの既知の不安定性の問題を解消し得る。1つの態様において、硝酸アンモニウムについての適切な結晶形は斜方晶である。斜方結晶形は、硝酸アンモニウム結晶に容易に吸収される水を含まない硝酸アンモニウムについて好ましい結晶形である。硝酸アンモニウムがナノチューブ中で結晶化される場合、該化合物は汚染から保護される。1つの態様において、硝酸アンモニウムがナノチューブ中にある場合、2つの硝酸アンモニウム分子毎に1つの炭素原子が存在する。
【0032】
ナノチューブのキャビティに爆発性化合物を暴露するに際し、1つの態様において化合物は純である、すなわち溶媒または他の希釈剤のないものである。溶媒または他の希釈剤が存しない場合は、したがって、ナノチューブのキャビティについて爆発性化合物と競合するものは何も存在しない。他の態様において、溶媒が使用され得、溶媒はナノチューブおよび/またナノチューブのキャビティから除去され得、キャビティが溶媒分子および爆発性化合物の両方で占有されているところであるキャビティ中に爆発性化合物を残す。この溶媒の除去は、例えば蒸発の補助に十分であるが爆発性化合物の爆発をもたらさらない任意の必要な熱または他のエネルギーにより、例えば単純に溶媒を蒸発させることによって(溶媒が爆発性化合物よりもより揮発性があると仮定した場合)達成され得る。爆発性化合物が超臨界物質の成分としてナノチューブのキャビティに提供されるかまたは暴露される1つの態様において、超臨界物質がナノチューブのキャビティから除去され、引き続き爆発性化合物のナノチューブのキャビティ中への導入が続くという同様の考えが溶媒についても適用され得る。ナノチューブのキャビティに爆発性化合物を提供するかまたは暴露することの例は、以下で図9および10の記述により与えられる。このような場合、爆発性化合物は例えば昇華によって、または爆発性化合物が蒸発し、その後ナノチューブのキャビティに暴露され、導入され得る密閉チャンバー中の十分な減圧によって蒸発され得る。固体の場合は、爆発性化合物は、爆発性化合物を毛管作用、浸透または拡散によってナノチューブのキャビティに移動させ得るために十分な程度にナノチューブと組合され、かつ混合され得る。1つの態様において、爆発性化合物は毛管作用によってナノチューブの内部キャビティに入る。すなわち、例えば爆発性化合物の個々の分子は毛管作用によって内部キャビティの中に引き込まれ得る。他の態様において、溶媒分子のような他の分子と一緒にある爆発性化合物が毛管作用によって部分的または完全にナノチューブの中に引き込まれ得、その後溶媒分子が除去されるかまたはそのまま抜ける。爆発性化合物をナノチューブの中に移動させることにおいて毛管作用が使用される場合、それは液体がガラス毛管に移動するときのようなより大きなスケールの毛管作用におけるものと同様の力および相互作用に基づいている。
【0033】
アレイの中でどれだけのナノチューブが充填されているか、およびナノチューブが充填される程度の測定は、例えばナノチューブのアレイまたは他の場所もしくは他の基板における個々のナノチューブの、透過型電子顕微鏡観察(TEM)または原子間力顕微鏡観察(AFM)によってなされ得る。
【0034】
図1は、単層ナノチューブ100の概略透視図である。図1に示されるナノチューブ100において、端100aおよび100bの両方は開いている。このようなナノチューブは、図示されたような開いた両端、閉じた両端、または開いた一方の端と閉じた他方の端とを持ち得る。閉じている場合は、単層カーボンナノチューブの端は、本質的にバッキーボールの半球を形成する。すなわち、SWCNTの閉じた端はバッキーボールの半分と同一であるかまたは同様に見え、もう1つの半分はナノチューブの円筒チューブに変換される。
【0035】
図2は、ナノチューブの3つの異なる構造を描く3つの単層ナノチューブ200、202および204の概略透視図である。ナノチューブ200は、一方の端が閉じており、他方の端200aはナノチューブ202の残りから分離されているかまたは切断されて示されている。ナノチューブ200は、(m,n) = (5,5)のナノチューブであって、したがって「アームチェア」タイプのナノチューブである。ナノチューブ202は一方の端が閉じており、他方の端202aはナノチューブ202の残りから分離されているかまたは切断されて示されている。ナノチューブ202は(m,n) = (9,0)のナノチューブであって、したがって「ジグザグ」タイプのナノチューブである。ナノチューブ204は一方の端が閉じており、他方の端204aはナノチューブ204の残りから分離されているかまたは切断されて示されている。ナノチューブ204は(m,n) = (10,5)のナノチューブであって、したがって「キラル」タイプのナノチューブである。
【0036】
図3は、C60フラーレンの概略透視図である。周知のことだが、フラーレンは、一般に五角形および六角形形態の系列で配列されたC60から一般に増加する範囲にあるいくつかの炭素原子を含む実質的に球面の構造である。既知でありかつ理解されるであろうが、ナノチューブは単にフラーレンが延長された形態であり、端部のキャップがフラーレン「球」の半球として見える半球状の端部のキャップの間に配列された追加の炭素原子を持つ。
【0037】
図4は、本発明の1つの態様に従った、フラーレン分子内に封入された爆発性化合物のような分子を有するC60フラーレンの概略透視図である。
【0038】
図5は、典型的な爆発性化合物を含有する単層ナノチューブまたはフラーレン300の高度に模式的な断面図である。爆発性化合物を含有する単層ナノチューブ300は、本発明の1つの態様に従った、爆発性化合物306が含有されたキャビティ304を持つSWNT 302を含む。キャビティ304は、ナノチューブの壁308によって規定される。図5に示されるように、1つの典型的な態様において、SWNT 302のキャビティ304は、およそ1ないしおよそ20ナノメートル(nm)の範囲にある、壁308で規定される内径を持ち得る。SWNT 302の壁の厚さは、当技術分野で既知のようにおよそ0.4 nmである。したがって、SWNT 302の外径は少なくともおよそ1.8 nmであろう。1つの態様において、SWNT 302の外径は、爆発性化合物がキャビティ304中に存在するか否か、および爆発性化合物306の正確なアイデンティティーに依存して変化し得る。爆発性化合物306は、示された「球」または円の各々が爆発性化合物306の1つ以上の原子を示すように高度に模式的に描かれている。爆発性化合物306は、ここで開示された任意の爆発性化合物であるか、または当技術分野で既知の、任意の他の適切な爆発性化合物であり得る。図5に示され、かつこの例に開示された典型的な内径は単に典型的なものであるだけであり、本発明に従ったナノチューブの内径はそれほど限定されず、爆発性分子の性質に基づいて適切に選択され得ることに留意する。爆発性分子の性質は、爆発性化合物の物理的および化学的特性の両方を含む。
【0039】
図6は、本発明の1つの態様に従ったAおよびBと標示された2つのナノチューブを含有するナノチューブの概略図である。図6に示された態様は閉じた端のナノチューブを含むが、ナノチューブは、一方または両方が開いている端も持ち得る。図6に示された態様は、封入されたナノチューブが封入されたナノチューブ内に化合物AおよびBを含有する2つのナノチューブをより大きなナノチューブの内部に含む。化合物AおよびBは同一または異なり、例えば、2つの異なる爆発性化合物、一緒に反応して爆発性化合物を形成し得る2つの化合物、第1のものは爆発性化合物であり、第2のものは第1の封入されたナノチューブ中で爆発性化合物によって分散される化学薬品のような或る他の非爆発性の効果を与える化合物であるという2つの化合物を含み得る。認識されるように、類似のまたは異なる性質を持った2つの異なる化合物だけでなく、互いに特性を調節するように働き得る、互いが類似のまたは異なる特性を持ち得るより多くの数の化合物も含む極めて多様な組合せが可能である。先述したものは図6に示された態様に当てはまるだけでなく、2つ以上の爆発物または1の爆発性化合物と他の化合物との組合せが、開示された組合せのうちの1つ以上で使用された1つ以上のナノチューブ(すなわち、単層および多層フラーレンならびに単層および多層ナノチューブを含む)内に提供され得る本発明の態様の全てにも当てはまる。
【0040】
図7は、本発明の1つの態様に従った、各フラーレンが化合物A、BおよびCのうちの1つを含有するフラーレン(またはバッキーボール)を含むナノチューブの概略図である。この態様において、認識されるであろうが、各化合物A、BおよびCは単一のフラーレン分子内に封入されており、このような充填されたフラーレンの組合せがナノチューブ内に配置されている。記載された他の態様についてと同様に、化合物A、B、Cは互いに同一または異なり、少なくとも1つが爆発特性を持つ限りにおいて種々の特性を持ち得る。
【0041】
図8は、本発明の1つの態様に従った、フラーレンが化合物AおよびBの間に分離を与える隔離剤として働く、2つのフラーレンを含むナノチューブの概略図である。図8に示された態様において、フラーレンは化合物AとBを互いに分離するための隔離剤として使用される。この態様において、AとBは互いに同一または異なり、例えば2つの異なる化合物は潜在的に互いに反応するものであり得るか、または本発明の他の態様に関して記載されたような爆発性化合物および他の化合物であり得る。図示された態様において、ナノチューブ内に含まれたフラーレンは、それらが含まれているナノチューブの内径と凡そ等しい外径を持つ。これは単なる例にすぎない。フラーレンは、それらの所望される機能と合致する任意の径を持ち得る。例えば、外径が隔離剤として働くために十分なサイズのフラーレンを提供する限りは、外径は、使用されるナノチューブの内径未満となり得る。他の態様において、以下に記載されるように、フラーレンは、最初にはフラーレンが配置されるナノチューブの内径未満の外径を持ち得るが、ナノチューブはその後、例えば照射によって処理され、ナノチューブのサイズは収縮し、その内径はナノチューブ内に含まれるフラーレンの外径により近くなるか、または実質的に同一となる。
【0042】
図9は、本発明の1つの態様に従った、爆発性化合物でナノチューブを充填する装置400および方法の概略図である。図9に図示されるように、装置400は、複数のナノチューブを保持するアレイ402と、トリアセトントリペルオキシド(「TATP」、時折、非公式に単にアセトンペルオキシドと呼ばれる)のような爆発性化合物406をその中に備えたチャンバー404と、ナノチューブへの爆発性化合物のアクセスを制御するためのバルブ408と、真空ポンプへの接続410とを含む。バルブ408は、チャンバー404を外部環境から隔離することを可能にし、かつ使用者がナノチューブ402を提供し、引続いて方法が完了したときに充填されたナノチューブを取り除くことができるようにする。真空への、例えば真空ポンプへの接続410は、爆発性化合物406に爆発性化合物の蒸気406aの形成を誘起するためにチャンバー404内の圧力を調節する機能を与える。爆発性化合物の蒸気406aは、アレイ402中のナノチューブのキャビティ中に拡散し得る。アレイ402は、1つの態様において、複数の配向されたSWCNTを含む。他の態様において、アレイ402は、1つ以上のSWCNTが選択された位置または予め決定された位置に配置されている1つ以上の基板を含む。
【0043】
図9に示されていないが、装置400はさらに、爆発性化合物406の気化を補助するために容器404にエネルギーを適用するための熱源のようなエネルギー源を含み得る。
【0044】
図10は本発明の1つの態様に従った、複数のナノチューブのうちの1つおよび爆発性化合物でナノチューブを充填する方法のより詳細を示す図4のもののような方法の概略図である。図10に示されるように、アレイ402は、爆発性化合物の蒸気406aに暴露されるナノチューブ302(存在し得る他のナノチューブは示されていない)がその上に配置されている。示されるように、蒸気406aはナノチューブ302内のキャビティに入り、例えば図5に示されるようにそこに留まる。
【0045】
図11は、本発明の1つの態様に従った、各々が爆発性化合物を含有するフラーレンまたは短いナノチューブでナノチューブを充填する他の方法の概略図である。この態様において、溶液は毛管作用により、より大きな径のナノチューブ内に引き込まれる。より大きなナノチューブの中に引き込まれる液体は、溶媒もしくはキャリア媒体中の爆発性化合物の溶液もしくは懸濁液もしくは他の混合物であり得るか、または主として液体爆発物を含み得るか、またはいくらかまたは全てのフラーレンもしくは短いナノチューブが爆発性化合物を含有するフラーレンおよび/または比較的短いナノチューブの懸濁液もしくは他の混合物である。図示された態様において、フラーレンまたは短いナノチューブの各々は化合物AおよびB(または他の態様においては追加の化合物Cなど)を含み得、化合物AおよびB(および任意で追加のもの)は、同一または異なる反応性、調節性などのような先に記載された特性を持ち得る。他の態様において、他の組合せが使用され得る。
【0046】
図12は、本発明の1つの態様に従った、充填されるナノチューブの壁の欠陥を通じて、ナノチューブまたはフラーレン(バッキーボール)のいずれかによってナノチューブを充填する他の方法の概略図である。この態様において、より大きなナノチューブは、爆発性化合物、フラーレンおよび/または比較的小さいナノチューブを、より大きなナノチューブの単数または複数の壁の欠陥を通じてその内部に引き込み得る。爆発性化合物、フラーレンまたは短いナノチューブは、例えば図11の態様または他の態様に関して先述したものと同じ混合物または組合せを含み得る。
【0047】
図13は、例えばSEM中での電子放射の、このような電子放射に供されたナノチューブに対する効果を示す概略図である。電子ビームは、欠陥をアニールすることができ、また、外側ナノチューブの収縮をもたらすことができる。この収縮は、より大きなナノチューブのキャビティ内の内側のナノチューブ、爆発物を含有するナノチューブもしくはフラーレンに対して、および/またはより大きなナノチューブ内に含まれる爆発性化合物に圧力の印加をもたらし得る。印加された圧力は、ナノチューブ内に含有された爆発性化合物の構造、例えば結晶構造に実質的な変化をもたらし得る。このような構造の変化は、含有された化合物の化学的特性に変化をもたらし得る。このような照射は、図12で先に示されたようなナノチューブ中の欠陥を閉じるか、または「治癒する」ためにも使用され得、その後、1つ以上の爆発性化合物、フラーレンまたは比較的短いナノチューブによるナノチューブの充填が続く。
【0048】
1つの態様において、方法は、ナノチューブ中の爆発性化合物を爆発させることをさらに含む。爆発は、例えば、電子ビーム、電磁放射、熱もしくは圧力、またはArもしくはHgイオンなどの重イオン衝撃、または放射性物質からのアルファ、ベータもしくはガンマ線の適用によるものであり得る。さらに、爆発性化合物を爆発させるために、プラズモンおよび/またはフォノンのような他の関連する破裂機構が使用され得る。これらの爆発方法の各々は、当技術分野で既知の方法および装置を用いて爆発性ナノチューブに適用され得る。
【0049】
1つの態様において、本発明の爆発性ナノチューブは、例えば、成形された装薬デバイスの爆発性部位における配列されたアレイに使用され得る。1つの態様において、爆発性化合物を含有する複数のナノチューブは、配列されたアレイに配置される。したがって、配列されたナノチューブのアレイは先述したように形成され得、その後ここで記載されたように充填され得、このようにして形成された成形された装薬デバイスは、例えば半導体または他のデバイス中に配置され得る。成形された装薬は、所望されるときに爆発され得、爆発に際して爆発力が適用される基板に穴またはキャビティを形成し得る。成形された装薬のサイズおよび形状は、所望される穴およびキャビティのサイズおよび形状、ならびに基板物質の性質に基づいて適切に決定され得る。基板は、例えば半導体デバイスの一部、MEMSデバイス、または爆発力が望ましく適用され得るその他のナノもしくはマイクロスケール構造であり得る。基板は、例えば、完全なデバイスの一部としてのトランジスタ、抵抗器、キャパシタおよび種々の他の電気もしくは電子部品のような追加の装置要素を含み得る。完全なデバイスは、例えばコンピュータープロセッサ、プリント回路板またはこのような部品を利用する任意の種々の具体的なデバイスのような任意の電子デバイスであり得る。配向されたナノチューブのアレイを爆発させるためのデバイスは、例えば、雷管制御、および内部命令信号源、および内部状況モニターを例えば含み得る命令および制御素子を含み得る。命令および制御素子は、例えば、当技術分野で既知の外部命令信号によって作動するように準備され得る。
【0050】
1つの態様において、電気的に作動し得る先述したようなナノ爆発物トリガーシステムが含まれ得る。他の態様において、トリガー機構は、スイッチを使用することなく、および/または電力供給もなく爆発物を直接爆発させることに適合したトリガー機構に直接外部信号を適用することによって作動し得る。
【0051】
他の態様において、選択された周波数の電磁エネルギー(例えば、マイクロ波放射のようなもの)、電子ビーム、熱エネルギー、またはここで先述したもののような他の重イオンもしくは粒子機構のような代替のエネルギー源が、爆発性化合物を含有するナノチューブの中の爆発性化合物306を爆発させるために使用されるようなトリガー機構が提供され得る。このような態様において、トリガー機構は、このようなエネルギーに対して感受性があり、かつ爆発性化合物を爆発させるために十分な電気チャージを爆発性化合物に発生および/または伝達することができる成分を含み得る。他のこのような態様において、トリガー機構606は、それ自体で爆発性化合物を爆発させるために必要なエネルギーを提供するために十分な電磁エネルギー源によって置き換えられ得る。
【0052】
1つの態様において、2つの比較的単純なトリガー機構のうちの1つが使用され得る。これらのうちの1つめは抵抗加熱によるものである。抵抗加熱によるCNTの破壊は、例えば半導体デバイスのようなデバイスにおける電子回路において実施され得る。これらのうちの2つめは電子ビームの適用によるものである。例えば走査型電子顕微鏡からの電子ビームは、例えば爆発物を爆発させるためにCNTの内側で化学反応を開始させるために使用され得る。いくつかのナノチューブは秀逸な電子電界放出デバイスであり、かつ極めて高温なナノスポットを発生させ得る。これら2つの比較的単純な機構は、化学反応を開始させるために、すなわちナノチューブ中の爆発性化合物を爆発させるために十分なエネルギーを供給するべきである。光活性化は、例えば選択された、ターゲット爆発物含有ナノチューブへのレーザー光の適用による、さらなるトリガー方法を提示する。1つの態様において、ナノチューブのアレイは、隣接するナノチューブを爆発させるのに十分なエネルギーを発生し得、これが次に隣のナノチューブなどを爆発させるために十分なエネルギーを解放する1つ以上の爆発を誘起することによる連鎖反応で爆発され得る。他の態様において、ナノチューブのアレイは、全体として単一の動作でアレイに対して誘起エネルギーを適用することにより多数のナノチューブ(しかし、全部よりは少ない)の爆発を誘起することによって実質的に同時に爆発され得る。
【0053】
1つの態様において、本発明の爆発性ナノチューブは、ナノサイズの成形された装薬デバイスの爆発性の部分の中に含められ得る。したがって、成形された装薬デバイス中に適切に配向されかつ配置されている配列されたアレイ中の個々のナノチューブは、このような成形された装薬デバイスの使用を制御する追加の手段を加えることができる。成形された装薬デバイス自体のおかげだけでなく、成形された装薬デバイスの爆発性の部分における本発明の爆発性ナノチューブの適切な位置および配列のおかげで、選択されたターゲットに爆発力が導かれ、成形された装薬デバイスから得られた爆発力の正確性および精密性を制御する追加の手段を得ることができる。
【0054】
図14は、キャビティ内に爆発性化合物を含有する複数のナノチューブが、巨視的な通常の爆発物の塊内に含まれる、本発明の他の態様の概略図である。すなわち、1つの態様において、本発明は複数の爆発性ナノチューブを含有する一塊の通常の爆発物を含む。1つの態様において、本発明に従った方法は、複数の爆発性ナノチューブと、一塊の通常の爆発物とを組合わせることをさらに含む。図15に示唆されるように、1つの態様において、複数の爆発性ナノチューブは少なくとも一部において、好ましくは通常の爆発物の塊全体に渡って実質的に均一に分布する。他の態様において、複数の爆発性ナノチューブは巨視的な一塊の通常の爆発物の少なくとも一部に分布する。すなわち、爆発性ナノチューブは塊全体に渡って実質的に均一に分布し得るか、または塊中の選択されたパターンで分布し得る。例えば、通常の爆発物の塊の爆発によって生じた力の方向を制御または調節することが望まれる場合は、爆発性ナノチューブは塊の選択された部分に分配され得る。
【0055】
1つの態様において、爆発性ナノチューブおよび爆発物の爆発を開始させるために、マイクロ波のエネルギーがナノチューブと爆発物の物質との組合せに対して適用され得る。他の形態の電磁エネルギーも使用され得るが、マイクロ波はナノチューブに良く吸収され、そして爆発性ナノチューブおよびその結果として通常の爆発物の塊を爆発させるための比較的単純な手段を提供する。爆発性ナノチューブを爆発させるためにこのようなエネルギーを使用することによって得られる利益の1つは、電磁エネルギー、例えばマイクロ波のエネルギーが実質的に全ての爆発性ナノチューブの実質的に同時の爆発を誘起することである。図15に描かれるように、誘起信号、電磁波、例えばマイクロ波放射は、通常の爆発物におけるようなより低速の衝撃波よりもむしろ、光速で、または光速近くで物質を通過する。したがって、塊全体は実質的に同時の爆発を生じ得る。
【0056】
安定化
1つの態様において、ナノチューブは爆発性化合物を安定化するために使用される。理論により拘束されるものではないが、爆発性分子が爆発性化合物の原子とナノチューブ壁の原子との間のファンデルワールス力によって、ナノチューブのキャビティ中に保持されると信じられる。このファンデルワールス相互作用は、ナノチューブのキャビティ中に無い同一の化合物に比べて、爆発性化合物の安定化をもたらすと信じられる。
【0057】
ナノチューブ内部での安定化の3つの基本的な方法が存在する。1つめは、分子が酸素などの外部の分子と相互作用することを防ぐような隔離である。2つめは、爆発性分子が状態を変えにくいように、チューブの壁との相互作用によって爆発性分子自体の分子結合エネルギーを調整することである。3つめは、爆発性分子内の隣接する分子または原子と相互作用するために分子が直角に回転できないような幾何的閉じ込め方法である。
【0058】
1つの態様において、爆発性化合物は、ナノチューブの壁の近接性、および爆発性化合物がナノチューブによって一般的な環境から隔離されるという事実によって安定化される。したがって、1つの態様において、考慮中の爆発性化合物は制御され得、特性は、ナノチューブのナノ閉じ込め境界機構(nano-confinement boundary mechanism)によって増強され得る。アルミニウム(Al)金属およびTATPが例を与える。ナノサイズのAlの微粒子は、ナノスケールで酸素と混合されて反応するときには非常に有用な爆発特性を持つ一方で、TATPは室温下で不安定である。アルミニウムのナノサイズの粒子は、酸素が利用可能な場合に爆発物となり得る。ナノチューブ中へアルミニウム粒子を配置する場合は酸素を排除するべきであり、それによりアルミニウムのナノサイズ粒子を尚早に爆発することから保護する。このようなアルミニウムを仕込まれたナノチューブを爆発させようとするとき、過圧または濃縮された形態の酸素が提供され得、アルミニウム粒子と酸素との間の反応、および爆発をもたらす。強力であり、アセトンと過酸化水素とから安価に作られる、TATPが窒素を含まないことは、それを、カーボンナノチューブ中に配置された場合に、検出することが難しい有望なステルス爆発物の候補とさせる。TATPのいくつかの特性は、TATPが室温の溶媒、昇華気相および超臨界二酸化炭素の使用を含む種々の方法によってナノチューブの中に仕込まれ得ることを示唆する。TATPが蒸気状もしくは昇華された状態でナノチューブに提供または暴露される例が以下に与えられる。TATP分子のサイズおよびナノチューブのキャビティの1〜2 nmのサイズに基づき、TATPはナノチューブ中に存在することによって安定化されるであろう。
【0059】
図15は、爆発性化合物の分子成分間の間隔に対する結合エネルギー(BE)のグラフである。分子動力学コード (MDC)は、TATPのような分子の結合エネルギー(BE)を計算するために使用され得る。BEは、分子の安定性の測定のために使用される基本的なパラメータである。バルクな形態にあるTATPのような爆発性化合物のBEを、種々のナノチューブによる閉じ込め環境中にある同一の化合物について計算されたBEと比較することができる。異なる径および対称性は、BEが爆発性分子およびナノチューブもしくはフラーレンのいくつかの立体配置については増大し、爆発性分子およびナノチューブもしくはフラーレンのいくつかの立体配置については減少することを示すために使用され得る。このことは、爆発すると本質的にまさに単純なガス成分に分解するTATPおよび金属アジドのような物質が関与する爆発反応について特に期待される。他の爆発性物質は、内蔵された酸化剤と、複雑な工程で再結合するが、これらの爆発性化合物もナノチューブのキャビティ中に存在することによって安定化されるであろうことが期待される。例えば、ナノチューブのキャビティにおいては、小さなサイズに起因して本質的にただ1つの分子しか、与えられた位置に存在し得ず、したがって分子内の酸化剤は反応できる部位から隔離され得る。他の視点において、爆発性化合物は、単に、それ自身の他の分子からの隔離に起因して安定化され得、やはりその隔離に起因して衝撃および摩擦の影響から隔離される。
【0060】
図15に示されるグラフにおいて、中ほどの曲線は、ナノチューブ内に閉じ込められていない場合の、すなわちバルクな爆発物である典型的な爆発性化合物である。上方の曲線は、閉じ込めが爆発性化合物をより不安定にする場合の態様におけるチューブの内部の爆発性化合物である。下方の曲線は、爆発性化合物がナノチューブの内部に存在することによってより安定となる(安定化される)態様におけるナノチューブ内に閉じ込められた場合の爆発性化合物についてのものである。先述したように、いくつかの態様において、爆発性化合物をナノチューブ内部に配置することは、その安定性を低下させ得る。
【0061】
したがって、1つの態様において、本発明は、爆発性化合物を提供すること(爆発性化合物は衝撃および/または摩擦に対して第1の感度を持つ)、ナノチューブの壁によって規定される内部キャビティを持つナノチューブを提供すること、ナノチューブを爆発性化合物に暴露すること(爆発性化合物は内部キャビティに入る)を含む、爆発性化合物を安定化する方法をさらに提供し、キャビティ中で爆発性化合物は衝撃および/または摩擦に対する第2の感度を持ち、第2の感度は前記第1の感度に対して低下している。
【0062】
この開示および添付された請求項に渡って使用されるように、ナノチューブについての参照は、端が開いたナノチューブ、一方または両方の端が閉じているナノチューブ、およびフラーレンを含むものとみなされる。したがって、これらの構造の特定の1つが特に指示されない限りは、ナノチューブについての参照はこれらの構造の全てを含む。
【0063】
本発明を或る態様に関して示し、記載したが、この明細書および添付の図面を読解および理解すると、当業者は均等の変形および変更に気付くであろう。先述したインテジャー(integer) (部品、アセンブリ、デバイス、組成物、工程など)によって達成される種々の機能、このようなインテジャーを記述するために使用された用語(「手段」の参照を含む)は、他に指示されない限り、本発明の単数または複数のここに示された典型的な態様における機能を実行する開示された構造と構造的に均等でないかぎりは、記述されたインテジャーの特定の機能を実行する任意のインテジャー(すなわち、機能的に均等である)に相当することが意図される。さらに、本発明の具体的な特徴がいくつかの図示された態様のうちの1つのみに関して先に記載されているが、任意の与えられた用途または具体的な用途について所望され、かつ有利であろうから、このような特徴は他の態様の1つ以上の他の特徴と組合せられ得る。したがって、本発明は、請求項の全てが多項従属形式であり、かつ先行または後行するかのいずれかであるいずれか他の請求項に従属する場合に得られるであろう全ての態様を含むと考えられる。それ故に、ここで開示された発明は、添付された請求項の範囲内にあるような変更をカバーすることを意図している。
【発明の概要】
【0001】
背景
技術分野
本発明は爆発物の分野、特に、爆発性ナノチューブを作るためにナノチューブの領域内に爆発性化合物を配置することによる爆発性化合物の安定化、および爆発性ナノチューブの新規な用途での使用に関する。
【0002】
関連技術の記載
フラーレンは、典型的に六角形および五角形に配列された本質的にsp2混成炭素からなる、球状で、閉じた籠型の分子である。バックミンスターフラーレン、より一般的には「バッキーボール」としても知られるC60およびC70のようなフラーレンは、高温で気化された炭素から製造されている。フラーレンの研究が起源の発見であるカーボンナノチューブは、飯島らによって、最初に"Helical microtubules of graphitic carbon", NATURE, 354, 56 (1991)において、および後に "Single-shell carbon nanotubes of 1-nm diameter", NATURE, 363, 605-606 (1993)において初めて開示された。先のNATURE論文において、飯島らの報告によれば、径が4ないし30 nm、かつ長さが1マイクロメートルまでの範囲のグラファイト性炭素針が、100 Torrの圧力下、アルゴンを充填した容器中での、炭素のd.c.アーク放電気化において使用された炭素電極の陰極端上に成長した。このNATURE論文中で、2ないし7層を持つナノチューブが飯島らによって報告された。そのとき以来、両端が開いているか、または端部の封を形成する半フラーレン半球によって一方または両方の端が閉じられ得る単層および多層の管状構造が作られている。単層カーボンナノチューブ(SWCNT)、またはより一般的に「バッキーチューブ」として知られる単層炭素筒型構造、および多層カーボンナノチューブ(MWCNT)は、電気および熱伝導性ならびに高い強度の両方を含む特異な性質を持つ。ここで使用されるように、多層フラーレンを含むフラーレンまたはバッキーボールは、ナノチューブの定義の内に含まれる。したがって、ナノチューブに対するここでの全ての参照は、特定の形態のナノチューブを特に指示しない限り、これら全ての形態を含む。
【0003】
単層種が1ないしおよそ100ナノメートル(nm)の範囲の内径を持つナノチューブ、特にカーボンナノチューブが開発されている。単層ナノチューブ(SWNT)は、sp2グラフェン炭素の巻かれたシートで構成され、フラーレン炭素半球によって一方の端、または両方の端が終端しているか、または両端ともフラーレン炭素半球によって終端していないかであり得る。したがって、ナノチューブは本質的に細長いフラーレンみなすことができる。SWNTは、触媒的アーク気化またはレーザーアブレーションによって調製された場合、比較的限定された径の範囲内で、境界明瞭な円筒キャビティを形成する。鉄および/または他の触媒の存在下での一酸化炭素の熱分解のような、種々の、触媒で補助された分解技術によって大量のSWNTを製造することができる。
【0004】
爆発物は、しばしばまさにそれらの性質に起因して不安定である。周知の例は、例えばニトログリセリン、TATPおよび金属アジドを含む。以前は、これらの爆発物は不活性キャリアまたは反応性の低いキャリア内に含める、例えばダイナマイトを作るためにニトログリセリンを鋸屑中に含めることによって、または爆発性化合物の衝撃感度を抑制するように、珪藻土のような物質を使用することによって安定化されてきている。このような安定化のさらなる例は、凍結、または溶媒もしくは熱可塑性ポリマーのような不活性キャリアの使用を含む。このような方法は比較的安定な物質を製造するが、それはいまだにバルクな物質であり、かつ既知の方法は全ていくつかの問題を含み、完全に上手くいくものではない。さらに、バルク物質であるので、マイクロまたはナノ環境における使用のための備えは殆ど無い。
【0005】
爆発物を安定化する新規な方法についての需要が存在する。さらに、マイクロまたはナノ環境において使用され得、かつ、より標準的な爆発物としてバルクな状態でも使用することができる爆発物についての需要が存在する。
【0006】
概要
本発明の1つの側面によれば、爆発性化合物で充填されているか、または部分的に充填されているキャビティを持つナノチューブが提供される。爆発性化合物は、ナノチューブのキャビティ中に存在することによって安定化され得る。爆発性化合物は、結晶構造または他の物理特性のような、ナノチューブの中に存在することによって変更された他の特性を持ち得、同様にその反応性をも変えられる。爆発物を積んだナノチューブは、マイクロまたはナノスケールであり得る選択された位置または予め決められた位置に小さなエネルギーチャージを与えるために使用され得る。あるいは、爆発物を積んだナノチューブは、ダイナマイトが従来使用されていたようなマクロスケールにおいて有用なバルクな爆発性組成物を形成するために一まとめにして使用され得る。さらなる代替案としては、爆発物を積んだナノチューブは、一塊の通常の爆発物と混合することによって使用することができ、かつ起爆源として使用され得、その際、マイクロ波放射のような電磁放射が適用された場合に爆発性ナノチューブが実質的に同時に爆発を生じ、それにより従来の爆発物の塊全体の実質的に同時の爆発を可能にする。
【0007】
1つの態様において、本発明は、内部キャビティを持つナノチューブと、前記ナノチューブの内部キャビティ内に含有された爆発性化合物とを含む、爆発性化合物を含んだナノチューブを含む。1つの態様において、ナノチューブは単層カーボンナノチューブである。1つの態様においては、本発明のナノチューブはおよそ1ナノメートル(nm)ないしおよそ20 nmの範囲の内径を持つ。他の態様においては、本発明のナノチューブの内径はおよそ1 nmないしおよそ15 nmの範囲にあり、他の態様においては本発明のナノチューブの内径はおよそ1 nmないしおよそ10 nmの範囲にあり、他の態様においては本発明のナノチューブの内径はおよそ1 nmないしおよそ5 nmの範囲にある。本発明のナノチューブは、現在既知の調製方法のもとで、少なくとも20ミクロンの長さを持ち得、100ミクロンもの長さになり得る。
【0008】
1つの態様において、本発明のナノチューブは、例えば2ないしおよそ10以上の範囲の、任意の既知数の壁層を持つ多層ナノチューブである。多層ナノチューブにおいては、爆発性化合物は最も内側のナノチューブ中のキャビティ内に保持されるか、または多層ナノチューブのそれぞれの層のいずれかの間に保持され得る。理解されるであろうが、多層ナノチューブにおいては内径の範囲が存在し、最も内側のナノチューブの内径が先述の範囲にある。多層ナノチューブは、例えばより大きな(0,10)単層ナノチューブ内の(0,8)単層ナノチューブ等々のような、多層ナノチューブの層の総数について、同心円筒の形態にあり得る。多層ナノチューブが、自身の周りに巻き上げられたグラファイトの単一のシートに似て、同心円が存在しない羊皮紙の巻物または巻き上げられた新聞紙に似ていることもあり得る。多層ナノチューブの外径は、例えばおよそ150 nm以上までの範囲の任意の既知の径を持ち得る。理解されるだろうが、多層ナノチューブの外径は壁層の数および最も外側のナノチューブの径に依存する。
【0009】
先述したように、フラーレン(またはバッキーボール)はナノチューブの一種であるので、フラーレンの内径は一般に先述の範囲内に収まる。多層ナノチューブのように、フラーレンは、最も内側のフラーレンまたは殻の1つが爆発性化合物を含有して互いに入れ子となり得る。他の態様において、フラーレンまたは入れ子状のフラーレンは、単層または多層ナノチューブの内側に嵌め込まれ得る。したがって、1つの態様において、爆発性化合物をフラーレン(または入れ子状のフラーレン)の内側に配置することができ、1つ以上のこのようなフラーレン(または入れ子状のフラーレン)を単層または多層ナノチューブの内側に嵌め込むことができる。1つの態様において、フラーレンは、ナノチューブの内側に嵌め込まれて一緒に混合されたときに反応して例えば爆発性化合物を形成するか、または自発的に爆発する混合物(すなわち、混合された際に予め分離されていた化合物が爆発的に反応する)を形成するか、または混ざり合ってナノチューブの破裂をもたらす臨界量もしくは体積に至り、単数または複数の化合物を放出するかのいずれかである化合物の、隔離剤または分離材として機能する。
【0010】
1つの態様において、爆発性化合物は、トリアセトントリペルオキシド、ジアセトンジペルオキシド、ヘキサメチレントリペルオキシドジアミン、モノニトロトルエン、ジニトロトルエン、トリニトロトルエン、エチレングリコールジニトラート、ニトロメタン、ニトログリセリン、1,3,5-トリニトロ-1,3,5-トリアザシクロオクタン、1,3,5,7-テトラトニトロ-1,3,5,7-テトラアザシクロオクタン、ペンタエリスリトールテトラニトラート、1,2,3-プロパントリアルトリニトラート、金属アルミニウム+ Fe2O3、金属アルミニウム + PTFE(例えば、ナノサイズであり、かつ安定化されている)、金属アジド(例えば、XN3(ここで、Xは例えばNa、Pb、Cu、Agおよびそれらの混合物である))、硝酸アンモニウム (NH4NO3)、多形性窒素(例えば立方ゴーシュ構造を有する多形性窒素(cg-N)およびポリニトロキュバン)のうちの1つ以上を含む。他の既知の爆発性化合物を本発明に従って使用することができ、先述のものは例にすぎない。
【0011】
1つの例において、爆発性化合物は、ナノチューブの中に存在することにより、ナノチューブの外側の同じ化合物と比べて安定化される。他の態様において、爆発性化合物はより反応性となり、すなわち、ナノチューブの中に存在することによって、ナノチューブの外側の同じ化合物と比べて不安定化されるかまたは活性化される。化合物が安定化されるかまたは不安定化されるかは、ナノチューブ中への閉じ込めによってどの結晶形態が決定されるかに依存する。
【0012】
ここで使用されるとおり、爆発性化合物は、より低い反応性のもの、より低い摩擦感度のもの、より低い衝撃感度のものまたはより制御しやすく爆発されるものの1つ以上のものにするためにその特性を変えられる時に、「安定化」される。したがって、ナノチューブの内部への配置は、爆発性化合物をより低い反応性かつより低い衝撃感度のものにし得る。逆に、爆発性化合物がナノチューブの中に置かれることによってより反応性となる場合は、これらの特性のうちのいずれか1つ以上が増大される。したがって、ナノチューブの内部への配置は、爆発性化合物を、より反応性がありかつより衝撃感度のあるものにし得る。1つの態様において、ナノチューブ中に爆発性化合物を配置することは、或る特性に関しては化合物を安定化し得るが、その他の特性に関しては化合物を不安定化し得る。したがって、1つの態様においては、ナノチューブ中に爆発性化合物を配置することは、衝撃および摩擦に対して爆発性化合物をより感度の低いものにするが、或る選択された起爆機構に対してはその反応性を増大させる。他の態様において、ナノチューブ中に爆発性化合物を配置することは、衝撃および摩擦に対して爆発性化合物をより感度の低いものにし、したがって、ナノチューブ中への爆発性化合物の閉じ込めから得られるより減少された感度に起因して扱いの容易さおよび安全性を向上させる。
【0013】
1つの態様において、本発明はナノチューブを形成すること(前記ナノチューブは内部キャビティを持つ)、前記ナノチューブを爆発物に暴露すること(前記爆発物は例えば毛管作用によって内部キャビティに入る)を含む、爆発性ナノチューブを形成するための方法を含む。爆発物は、内部キャビティ中に入った後に内部キャビティ中に留まる。爆発物は、蒸気、液体、溶液または固体としてナノチューブに暴露される。他の態様において、爆発物は溶媒中(例えば、およそ室温下で)に提供され得るか、昇華気相中に提供され得るか、または二酸化炭素のような超臨界物質の成分として提供され得る。爆発物は、引続いてナノチューブの中に保持され、その後、選択された時間で爆発させ得る。
【0014】
1つの態様において、ナノチューブを形成する方法は、ナノチューブが多層ナノチューブの場合にはさらに、充填されたナノチューブに電子照射して、ナノチューブの径を収縮させ、ナノチューブの中の物質の結晶形を変えることを含む。この照射は、多層ナノチューブの壁に収縮を生じさせ、それによって多層ナノチューブを充填している物質に高圧を印加する。印加された高圧は、ナノチューブの中の物質に形状の変化を生じさせ得、いくつかの態様においてはその結晶形を変えさせ得る。この圧力の印加は、ナノチューブの中の物質を安定化するためかまたは不安定化するためかのいずれかに使用され得る。
【0015】
1つに態様において、方法はさらにナノチューブの中の爆発性化合物を爆発させることを含む。1つの態様において、爆発は電子ビーム、電磁放射、熱もしくは圧力、またはArもしくはHgイオンのような重イオン衝撃、または放射性物質からのアルファ、ベータもしくはガンマ線放射の適用によるものである。また、プラズモンおよび/またはフォノンのような他の関連する破壊機構を、爆発性化合物を爆発させるために使用することができる。
【0016】
1つの態様において、本発明は基板上の予め決められた位置にナノチューブを提供すること(前記ナノチューブは内部キャビティを持つ)、前記ナノチューブを爆発物に暴露すること(前記爆発物は前記内部キャビティに入る)、および前記ナノチューブ内の爆発物を爆発させて前記予め決められた位置でエネルギーを解放させることを含む、予め決められた位置にエネルギーを提供する方法を含む。したがって、本発明は、任意の種々の所望される目的のために、基板中の特定のターゲット部位のような予め決められた位置に、非常に小さな、例えばマイクロまたはナノスケールの爆発力を与えるために使用され得る。このような目的は、例えば、半導体デバイスのような基板においてヒュージブルリンクを溶融することのような所望される変化を生じさせるために、予め決められた量のエネルギーを選択された部位に提供すること、またはマイクロまたはナノスケールで化学反応を生じさせるために動力を提供することを含み得る。1つの態様において、基板は、一塊の通常の爆発物であり、爆発性ナノチューブは、該塊中に分布する。他の用途は、ここでの開示に基づいて当業者に明らかとなるであろうし、このような用途は本発明の範囲内で企図される。
【0017】
したがって、1つの態様にぉいて、本発明は爆発物を安定化する新規な方法についての需要に対する解決策を提供する。さらに、本発明は、通常の爆発物と混合されて通常の爆発物の爆発を制御するために使用され得、かつより通常の爆発物と同様にバルクな状態でも使用され得る、マイクロまたはナノ環境において使用され得る爆発物についての需要に対する解決策を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】図1は、端が開いた単層ナノチューブの概略透視図である。
【図2】図2は、典型的なナノチューブの3つの異なる形態または構造を描いた、3つの単層ナノチューブの概略透視図である。
【図3】図3は、C60フラーレンの概略透視図である。
【図4】図4は、本発明の1つの態様に従った、フラーレン分子内に封入された爆発性化合物のような分子を有するC60フラーレンの概略透視図である。
【図5】図5は、本発明の1つの態様に従った、キャビティ内に爆発性化合物を含有する単層ナノチューブの概略断面の描写である。
【図6】図6は、本発明の1つの態様に従った、AおよびBと標示された2つのナノチューブを含有するナノチューブの概略図である。
【図7】図7は、本発明の1つの態様に従った、各フラーレンが化合物A、BおよびCのうちの1つを含有する、フラーレンまたはバッキーボールを含むナノチューブの概略図である。
【図8】図8は、本発明の1つの態様に従った、フラーレンが化合物AとBの間に分離を与える隔離剤として働く、2つのフラーレンを含有するナノチューブの概略図である。
【図9】図9は、本発明の1つの態様に従った、爆発性化合物でナノチューブを充填する方法の概略図である。
【図10】図10は、本発明の1つの態様に従った、ナノチューブおよび方法のより詳細を示す、図4のもののような方法の概略図である。
【図11】図11は、本発明の1つの態様に従った、各々が爆発性化合物を含有するフラーレンまたは短いナノチューブでナノチューブを充填する他の方法の概略図である。
【図12】図12は、本発明の1つの態様に従った、充填されるナノチューブの壁の欠陥を通じて、ナノチューブまたはフラーレン(バッキーボール)のいずれかによってナノチューブを充填する他の方法の概略図である。
【図13】図13は、例えばSEM中での電子放射の、このような電子放射に供されたナノチューブに対する効果を示す概略図である。
【図14】図14は、キャビティ内に爆発性化合物を含有する複数のナノチューブが、巨視的な通常の爆発物の塊内に含まれる、本発明の他の態様の概略図である。
【図15】図15は、爆発性化合物の分子成分間の間隔に対する結合エネルギー(BE)のグラフである。
【0019】
図示の簡潔性および明確性のために、図に示される要素は、必ずしも縮尺どおりに描かれていないことが理解されるべきである。例えば、いくつかの要素の寸法は、明確性のために互いに対して誇張されている。さらに、適切であると考えられた場合、参照番号は、対応する要素を示すために図の間で繰り返されるであろう。
【0020】
詳細な説明
1つの態様において、本発明は、ナノチューブのキャビティが爆発性化合物を含むナノチューブに関する。ナノチューブは単層ナノチューブ(SWNT)または多層ナノチューブ(MWNT)であり得る。1つの態様において、ナノチューブはカーボンナノチューブ(「CNT」)である。本発明は、1つの態様においては単層カーボンナノチューブ(「SWCNT」)に関し、また他の態様においては多層カーボンナノチューブ(「MWCNT」)に関し、ナノチューブのキャビティ中、あるいは或る態様においてはMWCNTの壁の間に爆発性化合物を含む。本発明は主にカーボンナノチューブに関するが、ここでの教示はケイ素、またはチタンのような金属のような他の既知のタイプのナノチューブに当てはまるように広く考えられる。
【0021】
単層カーボンナノチューブのサイズおよび構造を規定することにおいて、DresselhausらによってScience of Fullerenes and Carbon Nanotubes, 1996, San Diego: Academic Press, Ch. 19に記載された命名の体系をここで使用する。単層カーボンナノチューブは、2つの指標(n, m)によって互いに区別され、ここでnおよびmは、条片が円筒の表面上に巻かれて(円筒の形状になる)場合に条片の側面端が継目無しに結合されるように、六角形のグラファイトの単一の条片をどのように切断するかを表す整数である。n = mのとき、チューブがチューブの軸に対して垂直に切断されたときに六角形の側面のみが露出され、チューブの端の外周まわりのそれらのパターンが、n回繰り返されるアームチェアの肘掛およびシートに似ているので、得られたチューブは「アームチェア」または(n, n)タイプのものと呼ばれる。m = 0のとき、チューブがチューブ軸に対して垂直に切断されたときに端がジグザグパターンであるので、得られたチューブは「ジグザグ」または(n, 0)タイプのものと呼ばれる。n≠mおよびm≠0の場合、得られたチューブはキラリティを持つ。電子的特性は構造に依存し、例えば、アームチェアチューブは金属性であり、かつ極めて高い電気伝導性を持つ。他のチューブのタイプはそれらの構造に依存して金属、金属性、半金属、半導体または電気絶縁体である。チューブのタイプに拘らず、全ての単層ナノチューブは極めて高い熱伝導性および抗張力を持つ。
【0022】
本発明のナノチューブは、任意の既知の方法によって調製され得、いくらかは市販されている。"Helical microtubules of graphitic carbon", NATURE, 354, 56 (1991)および"Single-shell carbon nanotubes of 1-nm diameter", NATURE, 363, 605-606 (1993)を含む飯島らによる初期の開示以来、CNTを製造するための多種多様な方法が発明されている。例えば、方法のいくつかは米国特許第7,052,668号で言及されており、SWCNTの調製に関するその開示はここに参照によって組入れられる。SWCNTは、今日では少量の商用量にて市販されている。カーボンナノチューブの合成のための種々の方法が既知であり、今日では3つの主なアプローチがある。これらは炭素のレーザーアブレーション(Thess, A. et al., SCIENCE 273, 483 (1996))、グラファイトロッドの電気アーク放電(Journet, C. et al., NATURE 388,756 (1997))、および炭化水素の化学気相堆積(Ivanov, V. et al., CHEM. PHYS. LETT. 223, 329 (1994); Li A. et al., SCIENCE 274, 1701 (1996))を含む。接触炭化水素クラッキングによる多層カーボンナノチューブの製造は、商用スケールで実施されるが(U.S. Pat. No. 5,578,543)、単層カーボンナノチューブの製造は、レーザー技術によるもの(Rinzler, A. G. et al., APPL. PHYS. A. 67, 29 (1998))およびアーク技術によるもの(Haffner, J. H. et al., CHEM. PHYS. LETT. 296, 195 (1998))でもいまだにグラムスケールであった(1998年のものとして)。本発明のナノチューブは、適切な純度および欠陥の要件が満たされることを前提として、当技術分野で既知の、任意の種々の技術によって調製され得る。このような欠陥は、1つ以上の欠損原子によって生じるナノチューブの単数または複数の壁中における穴または開口のような、既知のナノチューブの欠陥を含む。しかしながら、このような欠陥は、本発明の爆発性化合物のような分子の、ナノチューブの内部空間への挿入または導入における使用のためには望ましいであろう。当技術分野で既知のように、このような欠陥は、ナノチューブへの照射によってしばしば除去することができ、1つの態様においては、欠陥が爆発性化合物をナノチューブへ挿入または導入するために使用された後に、そのようにして充填されたナノチューブの欠陥が照射によって閉じられるかまたは除去される。
【0023】
1つの態様において、ナノチューブは固体基板上に配列されたSWCNTの制御されたパターンで形成され得る。1つの態様において、このような配向されているかまたは配列されたSWCNTのアレイの制御されたパターンは、McLean、Robert S.らによって"Controlled Two-Dimensional Pattern of Spontaneously Aligned Carbon Nanotubes", NANO LETTERS, Vol. 6, No. 1, pp. 55-60 (2006)に開示されたような方法によって固体基板上に形成され得る。
【0024】
1つの態様において、ナノチューブは結晶性サファイア基板上に、制御された密度を持って配向または配列されたアレイで形成され得る。1つの態様において、このような配列されているかまたは配向されているナノチューブのアレイは、Liu、Xiaoleiらによって"Novel Nanotube-on-Insulator (NOI) Approach toward Single-Walled Carbon Nanotube Devices", NANO LETTERS, Vol. 6, No. 1, pp. 34-39 (2006)に開示されたような方法によって形成され得る。この刊行物および先行する刊行物は、配列されたナノチューブのアレイを製造するための方法の例を提供する。
【0025】
1つの態様において、ナノチューブはターゲット基板上に直接、すなわち、インサイチュで、先述の方法または他の既知の方法のうちの1つによって形成される。したがって、例えば、半導体デバイスが、そこに配置された本発明の爆発性ナノチューブを選択された位置に有するものである場合は、適切な部位が選択され、該部位は選択のために活性化および/または隔離され、適切なナノチューブの製造方法が適用され得、それによりデバイス上の選択された位置に1つ以上のナノチューブを形成する。その後、デバイスがここに開示された方法のいずれかによって爆発性化合物に暴露される場合、爆発性化合物はナノチューブのキャビティに移動し、そしてその中に留まり、このようにして爆発性化合物を含有するナノチューブを形成する。
【0026】
単層カーボンナノチューブの製造に関して、この開示および添付された請求項において「エクスサイチュ(ex situ)」製造とは、単層カーボンナノチューブが後に使用されるデバイスおよび基板の形成とは別個の方法としての単層カーボンナノチューブの製造のことを言い、「インサイチュ」製造とは、デバイスまたは基板を形成する方法の間の単層カーボンナノチューブの製造のことを言う。本発明は、爆発性化合物含有ナノチューブを製造するための、ナノチューブのエクスサイチュおよびインサイチュ両方での製造ならびにそのための爆発性化合物の提供に広く適用可能である。
【0027】
他の態様において、単数または複数のナノチューブはエクスサイチュで製造され得、その後デバイスにおける所望の位置に移動されるか、またはより大きなスケールの爆発性デバイスの調製のような他の目的のために使用され得る。このようなより大きなデバイスの例は、ミサイルの弾頭、および例えば採鉱、爆破および建設作業における使用のための爆発物を含む。他の態様において、爆発物を含有するナノチューブは、微小金属成形、およびMEMS(微小電子機械システム)デバイスを構築することのような他の製造において使用され得る。
【0028】
1つの態様において、本発明のナノチューブはペンダント有機基、オリゴマー鎖もしくはポリマー鎖によって誘導体化または修飾されていない。すなわち、このような態様におけるナノチューブは修飾されていない。
【0029】
他の態様において、本発明のナノチューブはペンダント有機基、オリゴマー鎖もしくはポリマー鎖によって誘導体化または修飾されている。当業者に既知なように、いくつかの場合においてはナノチューブの外壁における欠陥はそのようなペンダント基のためのアンカー部位を与えるカルボン酸基(-COO-)の形態にあり得る。例えば、このようなペンダント基はポリマイミン鎖を含み得る。このような基は、溶解性のような特性を含むナノチューブの特性を修飾するために追加され得る。
【0030】
一旦ナノチューブが形成されると、それらは任意で精製されるかまたは同様に処理される。例えば、ナノチューブは酸洗浄、および/またはアニールされ得る。アニールはナノチューブの構造における欠陥を直すために使用され得る。
【0031】
爆発性化合物は、ナノチューブのキャビティに入る爆発性化合物をもたらす任意の適切な方法によってナノチューブに提供され得る。例えば、爆発性化合物は、蒸気、液体、溶液、固体の形態でまたは超臨界流体中でナノチューブのキャビティに提供されるか、または暴露され得る。硝酸アンモニウムは、その低い融点(169℃)に起因して、純溶融液体としてナノチューブのキャビティ中に容易に配置され得る。もちろん、どのこのような暴露方法は、明らかに危険な爆発物に起因して極度の注意の元に実行されなければならない。硝酸アンモニウムはいくつかの結晶形を持ち、どれを形成し得るかはナノチューブの径によって制限される。適切な結晶形でのナノチューブ閉じ込めは、硝酸アンモニウムを繰返し冷却し、融解するときの既知の不安定性の問題を解消し得る。1つの態様において、硝酸アンモニウムについての適切な結晶形は斜方晶である。斜方結晶形は、硝酸アンモニウム結晶に容易に吸収される水を含まない硝酸アンモニウムについて好ましい結晶形である。硝酸アンモニウムがナノチューブ中で結晶化される場合、該化合物は汚染から保護される。1つの態様において、硝酸アンモニウムがナノチューブ中にある場合、2つの硝酸アンモニウム分子毎に1つの炭素原子が存在する。
【0032】
ナノチューブのキャビティに爆発性化合物を暴露するに際し、1つの態様において化合物は純である、すなわち溶媒または他の希釈剤のないものである。溶媒または他の希釈剤が存しない場合は、したがって、ナノチューブのキャビティについて爆発性化合物と競合するものは何も存在しない。他の態様において、溶媒が使用され得、溶媒はナノチューブおよび/またナノチューブのキャビティから除去され得、キャビティが溶媒分子および爆発性化合物の両方で占有されているところであるキャビティ中に爆発性化合物を残す。この溶媒の除去は、例えば蒸発の補助に十分であるが爆発性化合物の爆発をもたらさらない任意の必要な熱または他のエネルギーにより、例えば単純に溶媒を蒸発させることによって(溶媒が爆発性化合物よりもより揮発性があると仮定した場合)達成され得る。爆発性化合物が超臨界物質の成分としてナノチューブのキャビティに提供されるかまたは暴露される1つの態様において、超臨界物質がナノチューブのキャビティから除去され、引き続き爆発性化合物のナノチューブのキャビティ中への導入が続くという同様の考えが溶媒についても適用され得る。ナノチューブのキャビティに爆発性化合物を提供するかまたは暴露することの例は、以下で図9および10の記述により与えられる。このような場合、爆発性化合物は例えば昇華によって、または爆発性化合物が蒸発し、その後ナノチューブのキャビティに暴露され、導入され得る密閉チャンバー中の十分な減圧によって蒸発され得る。固体の場合は、爆発性化合物は、爆発性化合物を毛管作用、浸透または拡散によってナノチューブのキャビティに移動させ得るために十分な程度にナノチューブと組合され、かつ混合され得る。1つの態様において、爆発性化合物は毛管作用によってナノチューブの内部キャビティに入る。すなわち、例えば爆発性化合物の個々の分子は毛管作用によって内部キャビティの中に引き込まれ得る。他の態様において、溶媒分子のような他の分子と一緒にある爆発性化合物が毛管作用によって部分的または完全にナノチューブの中に引き込まれ得、その後溶媒分子が除去されるかまたはそのまま抜ける。爆発性化合物をナノチューブの中に移動させることにおいて毛管作用が使用される場合、それは液体がガラス毛管に移動するときのようなより大きなスケールの毛管作用におけるものと同様の力および相互作用に基づいている。
【0033】
アレイの中でどれだけのナノチューブが充填されているか、およびナノチューブが充填される程度の測定は、例えばナノチューブのアレイまたは他の場所もしくは他の基板における個々のナノチューブの、透過型電子顕微鏡観察(TEM)または原子間力顕微鏡観察(AFM)によってなされ得る。
【0034】
図1は、単層ナノチューブ100の概略透視図である。図1に示されるナノチューブ100において、端100aおよび100bの両方は開いている。このようなナノチューブは、図示されたような開いた両端、閉じた両端、または開いた一方の端と閉じた他方の端とを持ち得る。閉じている場合は、単層カーボンナノチューブの端は、本質的にバッキーボールの半球を形成する。すなわち、SWCNTの閉じた端はバッキーボールの半分と同一であるかまたは同様に見え、もう1つの半分はナノチューブの円筒チューブに変換される。
【0035】
図2は、ナノチューブの3つの異なる構造を描く3つの単層ナノチューブ200、202および204の概略透視図である。ナノチューブ200は、一方の端が閉じており、他方の端200aはナノチューブ202の残りから分離されているかまたは切断されて示されている。ナノチューブ200は、(m,n) = (5,5)のナノチューブであって、したがって「アームチェア」タイプのナノチューブである。ナノチューブ202は一方の端が閉じており、他方の端202aはナノチューブ202の残りから分離されているかまたは切断されて示されている。ナノチューブ202は(m,n) = (9,0)のナノチューブであって、したがって「ジグザグ」タイプのナノチューブである。ナノチューブ204は一方の端が閉じており、他方の端204aはナノチューブ204の残りから分離されているかまたは切断されて示されている。ナノチューブ204は(m,n) = (10,5)のナノチューブであって、したがって「キラル」タイプのナノチューブである。
【0036】
図3は、C60フラーレンの概略透視図である。周知のことだが、フラーレンは、一般に五角形および六角形形態の系列で配列されたC60から一般に増加する範囲にあるいくつかの炭素原子を含む実質的に球面の構造である。既知でありかつ理解されるであろうが、ナノチューブは単にフラーレンが延長された形態であり、端部のキャップがフラーレン「球」の半球として見える半球状の端部のキャップの間に配列された追加の炭素原子を持つ。
【0037】
図4は、本発明の1つの態様に従った、フラーレン分子内に封入された爆発性化合物のような分子を有するC60フラーレンの概略透視図である。
【0038】
図5は、典型的な爆発性化合物を含有する単層ナノチューブまたはフラーレン300の高度に模式的な断面図である。爆発性化合物を含有する単層ナノチューブ300は、本発明の1つの態様に従った、爆発性化合物306が含有されたキャビティ304を持つSWNT 302を含む。キャビティ304は、ナノチューブの壁308によって規定される。図5に示されるように、1つの典型的な態様において、SWNT 302のキャビティ304は、およそ1ないしおよそ20ナノメートル(nm)の範囲にある、壁308で規定される内径を持ち得る。SWNT 302の壁の厚さは、当技術分野で既知のようにおよそ0.4 nmである。したがって、SWNT 302の外径は少なくともおよそ1.8 nmであろう。1つの態様において、SWNT 302の外径は、爆発性化合物がキャビティ304中に存在するか否か、および爆発性化合物306の正確なアイデンティティーに依存して変化し得る。爆発性化合物306は、示された「球」または円の各々が爆発性化合物306の1つ以上の原子を示すように高度に模式的に描かれている。爆発性化合物306は、ここで開示された任意の爆発性化合物であるか、または当技術分野で既知の、任意の他の適切な爆発性化合物であり得る。図5に示され、かつこの例に開示された典型的な内径は単に典型的なものであるだけであり、本発明に従ったナノチューブの内径はそれほど限定されず、爆発性分子の性質に基づいて適切に選択され得ることに留意する。爆発性分子の性質は、爆発性化合物の物理的および化学的特性の両方を含む。
【0039】
図6は、本発明の1つの態様に従ったAおよびBと標示された2つのナノチューブを含有するナノチューブの概略図である。図6に示された態様は閉じた端のナノチューブを含むが、ナノチューブは、一方または両方が開いている端も持ち得る。図6に示された態様は、封入されたナノチューブが封入されたナノチューブ内に化合物AおよびBを含有する2つのナノチューブをより大きなナノチューブの内部に含む。化合物AおよびBは同一または異なり、例えば、2つの異なる爆発性化合物、一緒に反応して爆発性化合物を形成し得る2つの化合物、第1のものは爆発性化合物であり、第2のものは第1の封入されたナノチューブ中で爆発性化合物によって分散される化学薬品のような或る他の非爆発性の効果を与える化合物であるという2つの化合物を含み得る。認識されるように、類似のまたは異なる性質を持った2つの異なる化合物だけでなく、互いに特性を調節するように働き得る、互いが類似のまたは異なる特性を持ち得るより多くの数の化合物も含む極めて多様な組合せが可能である。先述したものは図6に示された態様に当てはまるだけでなく、2つ以上の爆発物または1の爆発性化合物と他の化合物との組合せが、開示された組合せのうちの1つ以上で使用された1つ以上のナノチューブ(すなわち、単層および多層フラーレンならびに単層および多層ナノチューブを含む)内に提供され得る本発明の態様の全てにも当てはまる。
【0040】
図7は、本発明の1つの態様に従った、各フラーレンが化合物A、BおよびCのうちの1つを含有するフラーレン(またはバッキーボール)を含むナノチューブの概略図である。この態様において、認識されるであろうが、各化合物A、BおよびCは単一のフラーレン分子内に封入されており、このような充填されたフラーレンの組合せがナノチューブ内に配置されている。記載された他の態様についてと同様に、化合物A、B、Cは互いに同一または異なり、少なくとも1つが爆発特性を持つ限りにおいて種々の特性を持ち得る。
【0041】
図8は、本発明の1つの態様に従った、フラーレンが化合物AおよびBの間に分離を与える隔離剤として働く、2つのフラーレンを含むナノチューブの概略図である。図8に示された態様において、フラーレンは化合物AとBを互いに分離するための隔離剤として使用される。この態様において、AとBは互いに同一または異なり、例えば2つの異なる化合物は潜在的に互いに反応するものであり得るか、または本発明の他の態様に関して記載されたような爆発性化合物および他の化合物であり得る。図示された態様において、ナノチューブ内に含まれたフラーレンは、それらが含まれているナノチューブの内径と凡そ等しい外径を持つ。これは単なる例にすぎない。フラーレンは、それらの所望される機能と合致する任意の径を持ち得る。例えば、外径が隔離剤として働くために十分なサイズのフラーレンを提供する限りは、外径は、使用されるナノチューブの内径未満となり得る。他の態様において、以下に記載されるように、フラーレンは、最初にはフラーレンが配置されるナノチューブの内径未満の外径を持ち得るが、ナノチューブはその後、例えば照射によって処理され、ナノチューブのサイズは収縮し、その内径はナノチューブ内に含まれるフラーレンの外径により近くなるか、または実質的に同一となる。
【0042】
図9は、本発明の1つの態様に従った、爆発性化合物でナノチューブを充填する装置400および方法の概略図である。図9に図示されるように、装置400は、複数のナノチューブを保持するアレイ402と、トリアセトントリペルオキシド(「TATP」、時折、非公式に単にアセトンペルオキシドと呼ばれる)のような爆発性化合物406をその中に備えたチャンバー404と、ナノチューブへの爆発性化合物のアクセスを制御するためのバルブ408と、真空ポンプへの接続410とを含む。バルブ408は、チャンバー404を外部環境から隔離することを可能にし、かつ使用者がナノチューブ402を提供し、引続いて方法が完了したときに充填されたナノチューブを取り除くことができるようにする。真空への、例えば真空ポンプへの接続410は、爆発性化合物406に爆発性化合物の蒸気406aの形成を誘起するためにチャンバー404内の圧力を調節する機能を与える。爆発性化合物の蒸気406aは、アレイ402中のナノチューブのキャビティ中に拡散し得る。アレイ402は、1つの態様において、複数の配向されたSWCNTを含む。他の態様において、アレイ402は、1つ以上のSWCNTが選択された位置または予め決定された位置に配置されている1つ以上の基板を含む。
【0043】
図9に示されていないが、装置400はさらに、爆発性化合物406の気化を補助するために容器404にエネルギーを適用するための熱源のようなエネルギー源を含み得る。
【0044】
図10は本発明の1つの態様に従った、複数のナノチューブのうちの1つおよび爆発性化合物でナノチューブを充填する方法のより詳細を示す図4のもののような方法の概略図である。図10に示されるように、アレイ402は、爆発性化合物の蒸気406aに暴露されるナノチューブ302(存在し得る他のナノチューブは示されていない)がその上に配置されている。示されるように、蒸気406aはナノチューブ302内のキャビティに入り、例えば図5に示されるようにそこに留まる。
【0045】
図11は、本発明の1つの態様に従った、各々が爆発性化合物を含有するフラーレンまたは短いナノチューブでナノチューブを充填する他の方法の概略図である。この態様において、溶液は毛管作用により、より大きな径のナノチューブ内に引き込まれる。より大きなナノチューブの中に引き込まれる液体は、溶媒もしくはキャリア媒体中の爆発性化合物の溶液もしくは懸濁液もしくは他の混合物であり得るか、または主として液体爆発物を含み得るか、またはいくらかまたは全てのフラーレンもしくは短いナノチューブが爆発性化合物を含有するフラーレンおよび/または比較的短いナノチューブの懸濁液もしくは他の混合物である。図示された態様において、フラーレンまたは短いナノチューブの各々は化合物AおよびB(または他の態様においては追加の化合物Cなど)を含み得、化合物AおよびB(および任意で追加のもの)は、同一または異なる反応性、調節性などのような先に記載された特性を持ち得る。他の態様において、他の組合せが使用され得る。
【0046】
図12は、本発明の1つの態様に従った、充填されるナノチューブの壁の欠陥を通じて、ナノチューブまたはフラーレン(バッキーボール)のいずれかによってナノチューブを充填する他の方法の概略図である。この態様において、より大きなナノチューブは、爆発性化合物、フラーレンおよび/または比較的小さいナノチューブを、より大きなナノチューブの単数または複数の壁の欠陥を通じてその内部に引き込み得る。爆発性化合物、フラーレンまたは短いナノチューブは、例えば図11の態様または他の態様に関して先述したものと同じ混合物または組合せを含み得る。
【0047】
図13は、例えばSEM中での電子放射の、このような電子放射に供されたナノチューブに対する効果を示す概略図である。電子ビームは、欠陥をアニールすることができ、また、外側ナノチューブの収縮をもたらすことができる。この収縮は、より大きなナノチューブのキャビティ内の内側のナノチューブ、爆発物を含有するナノチューブもしくはフラーレンに対して、および/またはより大きなナノチューブ内に含まれる爆発性化合物に圧力の印加をもたらし得る。印加された圧力は、ナノチューブ内に含有された爆発性化合物の構造、例えば結晶構造に実質的な変化をもたらし得る。このような構造の変化は、含有された化合物の化学的特性に変化をもたらし得る。このような照射は、図12で先に示されたようなナノチューブ中の欠陥を閉じるか、または「治癒する」ためにも使用され得、その後、1つ以上の爆発性化合物、フラーレンまたは比較的短いナノチューブによるナノチューブの充填が続く。
【0048】
1つの態様において、方法は、ナノチューブ中の爆発性化合物を爆発させることをさらに含む。爆発は、例えば、電子ビーム、電磁放射、熱もしくは圧力、またはArもしくはHgイオンなどの重イオン衝撃、または放射性物質からのアルファ、ベータもしくはガンマ線の適用によるものであり得る。さらに、爆発性化合物を爆発させるために、プラズモンおよび/またはフォノンのような他の関連する破裂機構が使用され得る。これらの爆発方法の各々は、当技術分野で既知の方法および装置を用いて爆発性ナノチューブに適用され得る。
【0049】
1つの態様において、本発明の爆発性ナノチューブは、例えば、成形された装薬デバイスの爆発性部位における配列されたアレイに使用され得る。1つの態様において、爆発性化合物を含有する複数のナノチューブは、配列されたアレイに配置される。したがって、配列されたナノチューブのアレイは先述したように形成され得、その後ここで記載されたように充填され得、このようにして形成された成形された装薬デバイスは、例えば半導体または他のデバイス中に配置され得る。成形された装薬は、所望されるときに爆発され得、爆発に際して爆発力が適用される基板に穴またはキャビティを形成し得る。成形された装薬のサイズおよび形状は、所望される穴およびキャビティのサイズおよび形状、ならびに基板物質の性質に基づいて適切に決定され得る。基板は、例えば半導体デバイスの一部、MEMSデバイス、または爆発力が望ましく適用され得るその他のナノもしくはマイクロスケール構造であり得る。基板は、例えば、完全なデバイスの一部としてのトランジスタ、抵抗器、キャパシタおよび種々の他の電気もしくは電子部品のような追加の装置要素を含み得る。完全なデバイスは、例えばコンピュータープロセッサ、プリント回路板またはこのような部品を利用する任意の種々の具体的なデバイスのような任意の電子デバイスであり得る。配向されたナノチューブのアレイを爆発させるためのデバイスは、例えば、雷管制御、および内部命令信号源、および内部状況モニターを例えば含み得る命令および制御素子を含み得る。命令および制御素子は、例えば、当技術分野で既知の外部命令信号によって作動するように準備され得る。
【0050】
1つの態様において、電気的に作動し得る先述したようなナノ爆発物トリガーシステムが含まれ得る。他の態様において、トリガー機構は、スイッチを使用することなく、および/または電力供給もなく爆発物を直接爆発させることに適合したトリガー機構に直接外部信号を適用することによって作動し得る。
【0051】
他の態様において、選択された周波数の電磁エネルギー(例えば、マイクロ波放射のようなもの)、電子ビーム、熱エネルギー、またはここで先述したもののような他の重イオンもしくは粒子機構のような代替のエネルギー源が、爆発性化合物を含有するナノチューブの中の爆発性化合物306を爆発させるために使用されるようなトリガー機構が提供され得る。このような態様において、トリガー機構は、このようなエネルギーに対して感受性があり、かつ爆発性化合物を爆発させるために十分な電気チャージを爆発性化合物に発生および/または伝達することができる成分を含み得る。他のこのような態様において、トリガー機構606は、それ自体で爆発性化合物を爆発させるために必要なエネルギーを提供するために十分な電磁エネルギー源によって置き換えられ得る。
【0052】
1つの態様において、2つの比較的単純なトリガー機構のうちの1つが使用され得る。これらのうちの1つめは抵抗加熱によるものである。抵抗加熱によるCNTの破壊は、例えば半導体デバイスのようなデバイスにおける電子回路において実施され得る。これらのうちの2つめは電子ビームの適用によるものである。例えば走査型電子顕微鏡からの電子ビームは、例えば爆発物を爆発させるためにCNTの内側で化学反応を開始させるために使用され得る。いくつかのナノチューブは秀逸な電子電界放出デバイスであり、かつ極めて高温なナノスポットを発生させ得る。これら2つの比較的単純な機構は、化学反応を開始させるために、すなわちナノチューブ中の爆発性化合物を爆発させるために十分なエネルギーを供給するべきである。光活性化は、例えば選択された、ターゲット爆発物含有ナノチューブへのレーザー光の適用による、さらなるトリガー方法を提示する。1つの態様において、ナノチューブのアレイは、隣接するナノチューブを爆発させるのに十分なエネルギーを発生し得、これが次に隣のナノチューブなどを爆発させるために十分なエネルギーを解放する1つ以上の爆発を誘起することによる連鎖反応で爆発され得る。他の態様において、ナノチューブのアレイは、全体として単一の動作でアレイに対して誘起エネルギーを適用することにより多数のナノチューブ(しかし、全部よりは少ない)の爆発を誘起することによって実質的に同時に爆発され得る。
【0053】
1つの態様において、本発明の爆発性ナノチューブは、ナノサイズの成形された装薬デバイスの爆発性の部分の中に含められ得る。したがって、成形された装薬デバイス中に適切に配向されかつ配置されている配列されたアレイ中の個々のナノチューブは、このような成形された装薬デバイスの使用を制御する追加の手段を加えることができる。成形された装薬デバイス自体のおかげだけでなく、成形された装薬デバイスの爆発性の部分における本発明の爆発性ナノチューブの適切な位置および配列のおかげで、選択されたターゲットに爆発力が導かれ、成形された装薬デバイスから得られた爆発力の正確性および精密性を制御する追加の手段を得ることができる。
【0054】
図14は、キャビティ内に爆発性化合物を含有する複数のナノチューブが、巨視的な通常の爆発物の塊内に含まれる、本発明の他の態様の概略図である。すなわち、1つの態様において、本発明は複数の爆発性ナノチューブを含有する一塊の通常の爆発物を含む。1つの態様において、本発明に従った方法は、複数の爆発性ナノチューブと、一塊の通常の爆発物とを組合わせることをさらに含む。図15に示唆されるように、1つの態様において、複数の爆発性ナノチューブは少なくとも一部において、好ましくは通常の爆発物の塊全体に渡って実質的に均一に分布する。他の態様において、複数の爆発性ナノチューブは巨視的な一塊の通常の爆発物の少なくとも一部に分布する。すなわち、爆発性ナノチューブは塊全体に渡って実質的に均一に分布し得るか、または塊中の選択されたパターンで分布し得る。例えば、通常の爆発物の塊の爆発によって生じた力の方向を制御または調節することが望まれる場合は、爆発性ナノチューブは塊の選択された部分に分配され得る。
【0055】
1つの態様において、爆発性ナノチューブおよび爆発物の爆発を開始させるために、マイクロ波のエネルギーがナノチューブと爆発物の物質との組合せに対して適用され得る。他の形態の電磁エネルギーも使用され得るが、マイクロ波はナノチューブに良く吸収され、そして爆発性ナノチューブおよびその結果として通常の爆発物の塊を爆発させるための比較的単純な手段を提供する。爆発性ナノチューブを爆発させるためにこのようなエネルギーを使用することによって得られる利益の1つは、電磁エネルギー、例えばマイクロ波のエネルギーが実質的に全ての爆発性ナノチューブの実質的に同時の爆発を誘起することである。図15に描かれるように、誘起信号、電磁波、例えばマイクロ波放射は、通常の爆発物におけるようなより低速の衝撃波よりもむしろ、光速で、または光速近くで物質を通過する。したがって、塊全体は実質的に同時の爆発を生じ得る。
【0056】
安定化
1つの態様において、ナノチューブは爆発性化合物を安定化するために使用される。理論により拘束されるものではないが、爆発性分子が爆発性化合物の原子とナノチューブ壁の原子との間のファンデルワールス力によって、ナノチューブのキャビティ中に保持されると信じられる。このファンデルワールス相互作用は、ナノチューブのキャビティ中に無い同一の化合物に比べて、爆発性化合物の安定化をもたらすと信じられる。
【0057】
ナノチューブ内部での安定化の3つの基本的な方法が存在する。1つめは、分子が酸素などの外部の分子と相互作用することを防ぐような隔離である。2つめは、爆発性分子が状態を変えにくいように、チューブの壁との相互作用によって爆発性分子自体の分子結合エネルギーを調整することである。3つめは、爆発性分子内の隣接する分子または原子と相互作用するために分子が直角に回転できないような幾何的閉じ込め方法である。
【0058】
1つの態様において、爆発性化合物は、ナノチューブの壁の近接性、および爆発性化合物がナノチューブによって一般的な環境から隔離されるという事実によって安定化される。したがって、1つの態様において、考慮中の爆発性化合物は制御され得、特性は、ナノチューブのナノ閉じ込め境界機構(nano-confinement boundary mechanism)によって増強され得る。アルミニウム(Al)金属およびTATPが例を与える。ナノサイズのAlの微粒子は、ナノスケールで酸素と混合されて反応するときには非常に有用な爆発特性を持つ一方で、TATPは室温下で不安定である。アルミニウムのナノサイズの粒子は、酸素が利用可能な場合に爆発物となり得る。ナノチューブ中へアルミニウム粒子を配置する場合は酸素を排除するべきであり、それによりアルミニウムのナノサイズ粒子を尚早に爆発することから保護する。このようなアルミニウムを仕込まれたナノチューブを爆発させようとするとき、過圧または濃縮された形態の酸素が提供され得、アルミニウム粒子と酸素との間の反応、および爆発をもたらす。強力であり、アセトンと過酸化水素とから安価に作られる、TATPが窒素を含まないことは、それを、カーボンナノチューブ中に配置された場合に、検出することが難しい有望なステルス爆発物の候補とさせる。TATPのいくつかの特性は、TATPが室温の溶媒、昇華気相および超臨界二酸化炭素の使用を含む種々の方法によってナノチューブの中に仕込まれ得ることを示唆する。TATPが蒸気状もしくは昇華された状態でナノチューブに提供または暴露される例が以下に与えられる。TATP分子のサイズおよびナノチューブのキャビティの1〜2 nmのサイズに基づき、TATPはナノチューブ中に存在することによって安定化されるであろう。
【0059】
図15は、爆発性化合物の分子成分間の間隔に対する結合エネルギー(BE)のグラフである。分子動力学コード (MDC)は、TATPのような分子の結合エネルギー(BE)を計算するために使用され得る。BEは、分子の安定性の測定のために使用される基本的なパラメータである。バルクな形態にあるTATPのような爆発性化合物のBEを、種々のナノチューブによる閉じ込め環境中にある同一の化合物について計算されたBEと比較することができる。異なる径および対称性は、BEが爆発性分子およびナノチューブもしくはフラーレンのいくつかの立体配置については増大し、爆発性分子およびナノチューブもしくはフラーレンのいくつかの立体配置については減少することを示すために使用され得る。このことは、爆発すると本質的にまさに単純なガス成分に分解するTATPおよび金属アジドのような物質が関与する爆発反応について特に期待される。他の爆発性物質は、内蔵された酸化剤と、複雑な工程で再結合するが、これらの爆発性化合物もナノチューブのキャビティ中に存在することによって安定化されるであろうことが期待される。例えば、ナノチューブのキャビティにおいては、小さなサイズに起因して本質的にただ1つの分子しか、与えられた位置に存在し得ず、したがって分子内の酸化剤は反応できる部位から隔離され得る。他の視点において、爆発性化合物は、単に、それ自身の他の分子からの隔離に起因して安定化され得、やはりその隔離に起因して衝撃および摩擦の影響から隔離される。
【0060】
図15に示されるグラフにおいて、中ほどの曲線は、ナノチューブ内に閉じ込められていない場合の、すなわちバルクな爆発物である典型的な爆発性化合物である。上方の曲線は、閉じ込めが爆発性化合物をより不安定にする場合の態様におけるチューブの内部の爆発性化合物である。下方の曲線は、爆発性化合物がナノチューブの内部に存在することによってより安定となる(安定化される)態様におけるナノチューブ内に閉じ込められた場合の爆発性化合物についてのものである。先述したように、いくつかの態様において、爆発性化合物をナノチューブ内部に配置することは、その安定性を低下させ得る。
【0061】
したがって、1つの態様において、本発明は、爆発性化合物を提供すること(爆発性化合物は衝撃および/または摩擦に対して第1の感度を持つ)、ナノチューブの壁によって規定される内部キャビティを持つナノチューブを提供すること、ナノチューブを爆発性化合物に暴露すること(爆発性化合物は内部キャビティに入る)を含む、爆発性化合物を安定化する方法をさらに提供し、キャビティ中で爆発性化合物は衝撃および/または摩擦に対する第2の感度を持ち、第2の感度は前記第1の感度に対して低下している。
【0062】
この開示および添付された請求項に渡って使用されるように、ナノチューブについての参照は、端が開いたナノチューブ、一方または両方の端が閉じているナノチューブ、およびフラーレンを含むものとみなされる。したがって、これらの構造の特定の1つが特に指示されない限りは、ナノチューブについての参照はこれらの構造の全てを含む。
【0063】
本発明を或る態様に関して示し、記載したが、この明細書および添付の図面を読解および理解すると、当業者は均等の変形および変更に気付くであろう。先述したインテジャー(integer) (部品、アセンブリ、デバイス、組成物、工程など)によって達成される種々の機能、このようなインテジャーを記述するために使用された用語(「手段」の参照を含む)は、他に指示されない限り、本発明の単数または複数のここに示された典型的な態様における機能を実行する開示された構造と構造的に均等でないかぎりは、記述されたインテジャーの特定の機能を実行する任意のインテジャー(すなわち、機能的に均等である)に相当することが意図される。さらに、本発明の具体的な特徴がいくつかの図示された態様のうちの1つのみに関して先に記載されているが、任意の与えられた用途または具体的な用途について所望され、かつ有利であろうから、このような特徴は他の態様の1つ以上の他の特徴と組合せられ得る。したがって、本発明は、請求項の全てが多項従属形式であり、かつ先行または後行するかのいずれかであるいずれか他の請求項に従属する場合に得られるであろう全ての態様を含むと考えられる。それ故に、ここで開示された発明は、添付された請求項の範囲内にあるような変更をカバーすることを意図している。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ナノチューブであって、前記ナノチューブの壁によって規定される内部キャビティを持つナノチューブと、
前記ナノチューブの前記内部キャビティ内に含有された爆発性化合物と
を含む爆発性化合物を含有するナノチューブ。
【請求項2】
前記ナノチューブが単層ナノチューブである請求項1のナノチューブ。
【請求項3】
前記内部キャビティがおよそ1ナノメートルないしおよそ20ナノメートルの範囲にある内径を構成する請求項1のナノチューブ。
【請求項4】
前記爆発性化合物が、トリアセトントリペルオキシド、ジアセトンジペルオキシド、ヘキサメチレントリペルオキシドジアミン、モノニトロトルエン、ジニトロトルエン、トリニトロトルエン、エチレングリコールジニトラート、ニトロメタン、ニトログリセリン、1,3,5-トリニトロ-1,3,5-トリアザシクロオクタン、1,3,5,7-テトラニトロ-1,3,5,7-テトラアザシクロオクタン、ペンタエリスリトールテトラニトラート、硝酸アンモニウム、1,2,3-プロパントリアルトリニトラート、金属アジド、多形性窒素およびポリニトロキュバンのうちの1つ以上を含む請求項1のナノチューブ。
【請求項5】
前記爆発性化合物が前記ナノチューブの前記内部キャビティ中への閉じ込めの結果として安定化される請求項1のナノチューブ。
【請求項6】
前記爆発性化合物を含有するナノチューブ自体がより大きなナノチューブに含有される請求項1のナノチューブ。
【請求項7】
複数の前記爆発性化合物を含有するナノチューブが、配向されたアレイ中に配列される請求項1のナノチューブ。
【請求項8】
通常の爆発物の巨視的な塊であって、前記巨視的な塊の少なくとも一部に分布する請求項1の複数の爆発性ナノチューブを含む巨視的な塊。
【請求項9】
ナノチューブであって、前記ナノチューブは前記ナノチューブの壁によって規定される内部キャビティを持つナノチューブを提供すること、
前記ナノチューブを爆発性化合物に暴露することであって、前記爆発性ナノチューブは前記内部キャビティに入ること
を含む爆発性ナノチューブを形成するための方法。
【請求項10】
前記爆発性化合物が、前記内部キャビティへの導入の後に前記内部キャビティ中に留まる請求項9の方法。
【請求項11】
前記暴露が、前記爆発性化合物を蒸気、液体、溶液、固体としてまたは超臨界流体中で前記ナノチューブに暴露することを含む請求項9の方法。
【請求項12】
充填の後に前記ナノチューブを電子で照射することを含む請求項9の方法。
【請求項13】
前記ナノチューブが多層ナノチューブである場合は、前記照射が前記ナノチューブの径を収縮させ、前記ナノチューブ中の物質の結晶形を変化させる請求項12の方法。
【請求項14】
前記ナノチューブを基板上の選択された位置に配置することをさらに含む請求項9の方法。
【請求項15】
前記爆発性化合物を前記ナノチューブ内で爆発させることをさらに含む請求項9の方法。
【請求項16】
前記爆発が、電流、電子ビーム、電磁放射、熱、圧力、重イオンビーム、アルファ線、ベータ線もしくはガンマ線、プラズモンおよび/またはフォノンの適用によるものである請求項15の方法。
【請求項17】
爆発性化合物を包含する前記ナノチューブをより大きなナノチューブ内に配置することをさらに含む請求項9の方法。
【請求項18】
前記提供が、配向されたアレイ中に複数の前記ナノチューブを配列することをさらに含む請求項9の方法。
【請求項19】
複数の前記爆発性ナノチューブを一塊の通常の爆発物と組合わせることをさらに含む請求項9の方法。
【請求項20】
前記複数の爆発性ナノチューブが、前記通常の爆発物の少なくとも一部中に実質的に均一に分布する請求項19の方法。
【請求項21】
前記組合されたナノチューブおよび一塊の通常の爆発物にマイクロ波エネルギーを適用し、前記爆発性ナノチューブと前記爆発物との爆発を誘起することをさらに含む請求項19の方法。
【請求項22】
前記マイクロ波エネルギーが、前記爆発性ナノチューブの実質的に全ての、実質的に同時の爆発を誘起する請求項21の方法。
【請求項23】
ナノチューブを基板上の予め決定された位置に提供することであって、前記ナノチューブは前記ナノチューブの壁によって規定される内部キャビティを持ち、
前記ナノチューブを爆発性化合物に暴露することであって、前記爆発物が前記内部キャビティに入り、
前記爆発性化合物を前記ナノチューブ内で爆発させ、前記予め決定された位置でエネルギーを解放すること
を含む予め決定された位置にエネルギーを提供する方法。
【請求項24】
前記ナノチューブが単層ナノチューブである請求項23の方法。
【請求項25】
前記爆発性化合物が、
トリアセトントリペルオキシド、ジアセトンジペルオキシド、ヘキサメチレントリペルオキシドジアミン、モノニトロトルエン、ジニトロトルエン、トリニトロトルエン、エチレングリコールジニトラート、ニトロメタン、ニトログリセリン、1,3,5-トリニトロ-1,3,5-トリアザシクロオクタン、1,3,5,7-テトラニトロ-1,3,5,7-テトラアザシクロオクタン、ペンタエリスリトールテトラニトラート、硝酸アンモニウム、1,2,3-プロパントリアルトリニトラート、金属アジド、多形性窒素およびポリニトロキュバンのうちの1つ以上を含む請求項23の方法。
【請求項26】
前記爆発性化合物が、前記ナノチューブの前記内部キャビティ中への閉じ込めの結果として安定化される請求項23の方法。
【請求項27】
爆発性化合物を含有する前記ナノチューブをより大きなナノチューブ内に配置することをさらに含む請求項23の方法。
【請求項28】
前記提供が、配向されたアレイ中に複数の前記ナノチューブを配列することを含む請求項23の方法。
【請求項29】
前記配向されたアレイが、成形された装薬爆発性デバイスの成分である請求項28の方法。
【請求項30】
前記基板が一塊の通常の爆発物であり、前記爆発の工程が前記基板上への前記ナノチューブの提供の工程に先立って実行され、前記提供の工程が前記ナノチューブを前記塊全体に渡って分布させることを含む請求項23の方法。
【請求項31】
爆発性化合物を提供することであって、前記爆発性化合物は衝撃および/または摩擦に対して第1の感度を持つこと、
前記ナノチューブの壁によって規定される内部キャビティを持つナノチューブを提供すること、
前記ナノチューブを前記爆発性化化合物に暴露することであって、前記爆発性化合物が前記内部キャビティに入ること
を含み、前記キャビティ中で前記爆発性化合物が衝撃および/または摩擦に対して第2の感度を持ち、前記第2の感度は前記第1の感度に対して低下している、爆発性化合物を安定化する方法。
【請求項32】
前記ナノチューブが単層ナノチューブである請求項31の方法。
【請求項33】
前記爆発性化合物が、トリアセトントリペルオキシド、ジアセトンジペルオキシド、ヘキサメチレントリペルオキシドジアミン、モノニトロトルエン、ジニトロトルエン、トリニトロトルエン、エチレングリコールジニトラート、ニトロメタン、ニトログリセリン、1,3,5-トリニトロ-1,3,5-トリアザシクロオクタン、1,3,5,7-テトラニトロ-1,3,5,7-テトラアザシクロオクタン、ペンタエリスリトールテトラニトラート、硝酸アンモニウム、1,2,3-プロパントリアルトリニトラート、金属アジド、多形性窒素およびポリニトロキュバンのうちの1つ以上を含む請求項31の方法。
【請求項34】
爆発性化合物を含有する前記ナノチューブをより大きなナノチューブ内に配置することをさらに含む請求項31の方法。
【請求項35】
前記提供が、配向されたアレイ中に複数の前記ナノチューブを配列することを含む請求項31の方法。
【請求項36】
前記配向されたアレイが、成形された装薬爆発物デバイスの成分である請求項35の方法。
【請求項1】
ナノチューブであって、前記ナノチューブの壁によって規定される内部キャビティを持つナノチューブと、
前記ナノチューブの前記内部キャビティ内に含有された爆発性化合物と
を含む爆発性化合物を含有するナノチューブ。
【請求項2】
前記ナノチューブが単層ナノチューブである請求項1のナノチューブ。
【請求項3】
前記内部キャビティがおよそ1ナノメートルないしおよそ20ナノメートルの範囲にある内径を構成する請求項1のナノチューブ。
【請求項4】
前記爆発性化合物が、トリアセトントリペルオキシド、ジアセトンジペルオキシド、ヘキサメチレントリペルオキシドジアミン、モノニトロトルエン、ジニトロトルエン、トリニトロトルエン、エチレングリコールジニトラート、ニトロメタン、ニトログリセリン、1,3,5-トリニトロ-1,3,5-トリアザシクロオクタン、1,3,5,7-テトラニトロ-1,3,5,7-テトラアザシクロオクタン、ペンタエリスリトールテトラニトラート、硝酸アンモニウム、1,2,3-プロパントリアルトリニトラート、金属アジド、多形性窒素およびポリニトロキュバンのうちの1つ以上を含む請求項1のナノチューブ。
【請求項5】
前記爆発性化合物が前記ナノチューブの前記内部キャビティ中への閉じ込めの結果として安定化される請求項1のナノチューブ。
【請求項6】
前記爆発性化合物を含有するナノチューブ自体がより大きなナノチューブに含有される請求項1のナノチューブ。
【請求項7】
複数の前記爆発性化合物を含有するナノチューブが、配向されたアレイ中に配列される請求項1のナノチューブ。
【請求項8】
通常の爆発物の巨視的な塊であって、前記巨視的な塊の少なくとも一部に分布する請求項1の複数の爆発性ナノチューブを含む巨視的な塊。
【請求項9】
ナノチューブであって、前記ナノチューブは前記ナノチューブの壁によって規定される内部キャビティを持つナノチューブを提供すること、
前記ナノチューブを爆発性化合物に暴露することであって、前記爆発性ナノチューブは前記内部キャビティに入ること
を含む爆発性ナノチューブを形成するための方法。
【請求項10】
前記爆発性化合物が、前記内部キャビティへの導入の後に前記内部キャビティ中に留まる請求項9の方法。
【請求項11】
前記暴露が、前記爆発性化合物を蒸気、液体、溶液、固体としてまたは超臨界流体中で前記ナノチューブに暴露することを含む請求項9の方法。
【請求項12】
充填の後に前記ナノチューブを電子で照射することを含む請求項9の方法。
【請求項13】
前記ナノチューブが多層ナノチューブである場合は、前記照射が前記ナノチューブの径を収縮させ、前記ナノチューブ中の物質の結晶形を変化させる請求項12の方法。
【請求項14】
前記ナノチューブを基板上の選択された位置に配置することをさらに含む請求項9の方法。
【請求項15】
前記爆発性化合物を前記ナノチューブ内で爆発させることをさらに含む請求項9の方法。
【請求項16】
前記爆発が、電流、電子ビーム、電磁放射、熱、圧力、重イオンビーム、アルファ線、ベータ線もしくはガンマ線、プラズモンおよび/またはフォノンの適用によるものである請求項15の方法。
【請求項17】
爆発性化合物を包含する前記ナノチューブをより大きなナノチューブ内に配置することをさらに含む請求項9の方法。
【請求項18】
前記提供が、配向されたアレイ中に複数の前記ナノチューブを配列することをさらに含む請求項9の方法。
【請求項19】
複数の前記爆発性ナノチューブを一塊の通常の爆発物と組合わせることをさらに含む請求項9の方法。
【請求項20】
前記複数の爆発性ナノチューブが、前記通常の爆発物の少なくとも一部中に実質的に均一に分布する請求項19の方法。
【請求項21】
前記組合されたナノチューブおよび一塊の通常の爆発物にマイクロ波エネルギーを適用し、前記爆発性ナノチューブと前記爆発物との爆発を誘起することをさらに含む請求項19の方法。
【請求項22】
前記マイクロ波エネルギーが、前記爆発性ナノチューブの実質的に全ての、実質的に同時の爆発を誘起する請求項21の方法。
【請求項23】
ナノチューブを基板上の予め決定された位置に提供することであって、前記ナノチューブは前記ナノチューブの壁によって規定される内部キャビティを持ち、
前記ナノチューブを爆発性化合物に暴露することであって、前記爆発物が前記内部キャビティに入り、
前記爆発性化合物を前記ナノチューブ内で爆発させ、前記予め決定された位置でエネルギーを解放すること
を含む予め決定された位置にエネルギーを提供する方法。
【請求項24】
前記ナノチューブが単層ナノチューブである請求項23の方法。
【請求項25】
前記爆発性化合物が、
トリアセトントリペルオキシド、ジアセトンジペルオキシド、ヘキサメチレントリペルオキシドジアミン、モノニトロトルエン、ジニトロトルエン、トリニトロトルエン、エチレングリコールジニトラート、ニトロメタン、ニトログリセリン、1,3,5-トリニトロ-1,3,5-トリアザシクロオクタン、1,3,5,7-テトラニトロ-1,3,5,7-テトラアザシクロオクタン、ペンタエリスリトールテトラニトラート、硝酸アンモニウム、1,2,3-プロパントリアルトリニトラート、金属アジド、多形性窒素およびポリニトロキュバンのうちの1つ以上を含む請求項23の方法。
【請求項26】
前記爆発性化合物が、前記ナノチューブの前記内部キャビティ中への閉じ込めの結果として安定化される請求項23の方法。
【請求項27】
爆発性化合物を含有する前記ナノチューブをより大きなナノチューブ内に配置することをさらに含む請求項23の方法。
【請求項28】
前記提供が、配向されたアレイ中に複数の前記ナノチューブを配列することを含む請求項23の方法。
【請求項29】
前記配向されたアレイが、成形された装薬爆発性デバイスの成分である請求項28の方法。
【請求項30】
前記基板が一塊の通常の爆発物であり、前記爆発の工程が前記基板上への前記ナノチューブの提供の工程に先立って実行され、前記提供の工程が前記ナノチューブを前記塊全体に渡って分布させることを含む請求項23の方法。
【請求項31】
爆発性化合物を提供することであって、前記爆発性化合物は衝撃および/または摩擦に対して第1の感度を持つこと、
前記ナノチューブの壁によって規定される内部キャビティを持つナノチューブを提供すること、
前記ナノチューブを前記爆発性化化合物に暴露することであって、前記爆発性化合物が前記内部キャビティに入ること
を含み、前記キャビティ中で前記爆発性化合物が衝撃および/または摩擦に対して第2の感度を持ち、前記第2の感度は前記第1の感度に対して低下している、爆発性化合物を安定化する方法。
【請求項32】
前記ナノチューブが単層ナノチューブである請求項31の方法。
【請求項33】
前記爆発性化合物が、トリアセトントリペルオキシド、ジアセトンジペルオキシド、ヘキサメチレントリペルオキシドジアミン、モノニトロトルエン、ジニトロトルエン、トリニトロトルエン、エチレングリコールジニトラート、ニトロメタン、ニトログリセリン、1,3,5-トリニトロ-1,3,5-トリアザシクロオクタン、1,3,5,7-テトラニトロ-1,3,5,7-テトラアザシクロオクタン、ペンタエリスリトールテトラニトラート、硝酸アンモニウム、1,2,3-プロパントリアルトリニトラート、金属アジド、多形性窒素およびポリニトロキュバンのうちの1つ以上を含む請求項31の方法。
【請求項34】
爆発性化合物を含有する前記ナノチューブをより大きなナノチューブ内に配置することをさらに含む請求項31の方法。
【請求項35】
前記提供が、配向されたアレイ中に複数の前記ナノチューブを配列することを含む請求項31の方法。
【請求項36】
前記配向されたアレイが、成形された装薬爆発物デバイスの成分である請求項35の方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【公表番号】特表2010−507549(P2010−507549A)
【公表日】平成22年3月11日(2010.3.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−527610(P2009−527610)
【出願日】平成19年9月10日(2007.9.10)
【国際出願番号】PCT/US2007/078029
【国際公開番号】WO2008/082724
【国際公開日】平成20年7月10日(2008.7.10)
【出願人】(503455363)レイセオン カンパニー (244)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成22年3月11日(2010.3.11)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年9月10日(2007.9.10)
【国際出願番号】PCT/US2007/078029
【国際公開番号】WO2008/082724
【国際公開日】平成20年7月10日(2008.7.10)
【出願人】(503455363)レイセオン カンパニー (244)
【Fターム(参考)】
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