説明

ナノチューブ状物質の分離方法、製造方法及び分離装置

【課題】異なる誘電率を有するナノチューブ状物質の混合物から、所望の誘電率を有するナノチューブ状物質を簡便に分離することが困難である。
【解決手段】本発明のナノチューブ状物質の分離方法は、第1の誘電率を有する第1のナノチューブ状物質と第2の誘電率を有する第2のナノチューブ状物質とを少なくとも含むナノチューブ混合溶液中に、ナノチューブ状物質の長軸方向の長さの最大値とナノチューブ状物質の直径との間の孔径を有する細孔を備えたフィルタを配置し、ナノチューブ混合溶液に対して、フィルタのフィルタ面と略平行な基準方向に制御された電磁的作用を施し、第1のナノチューブ状物質または第2のナノチューブ状物質のいずれか一方を基準方向と略平行な方向に配向させ、フィルタとナノチューブ混合溶液を相対的に移動させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ナノチューブ状物質の分離方法、製造方法及び分離装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ナノメートル程度のサイズを持つチューブ状の物質からなるナノチューブ材料は、機械的、電気的、光学的な領域における応用が期待されている。ナノチューブ材料としては、単層カーボンナノチューブ、多層カーボンナノチューブ、窒化ホウ素(BN)ナノチューブ、有機ナノチューブ、シリコンナノワイヤ、酸化亜鉛ナノワイヤなどが知られている。これらのナノチューブ材料は、直径や構造の違いにより誘電率の異なるナノチューブ材料を含む混合材料となる場合がある。
【0003】
特に単層カーボンナノチューブについては、チューブの直径、巻き具合によって誘電率の異なるナノチューブが得られること、それらは金属性と半導体性という2つの異なる性質に分かれることが知られている。すなわち、現在知られている製造方法を用いて単層カーボンナノチューブを合成すると、半導体性を有する単層カーボンナノチューブと金属性を有する単層カーボンナノチューブが統計的に2:1の割合で含まれる混合材料が得られる。
【0004】
一方、半導体装置の分野では、半導体膜としてアモルファスまたは多結晶のシリコンを用いた薄膜トランジスタ(TFT:Thin Film Transistor)が知られており、アクティブマトリックス液晶ディスプレイ等のスイッチング素子として実用化されている。
【0005】
近年、TFT用の半導体膜の材料としてナノチューブ材料を用いることが検討されている。例えば、単層カーボンナノチューブを含む薄膜を用いて作製したTFTの一例が特許文献1に記載されている。このような単層カーボンナノチューブを用いたTFTには、アモルファスまたは多結晶のシリコンを用いたTFTに比べ、製造プロセスの低温化が図れるという利点がある。そのため、プラスチック基板上への回路の形成が可能になり、装置の軽量化、低コスト化が図れるなど、多くの効果が期待されている。
【0006】
しかしながら上述したように、現在の単層カーボンナノチューブの製造方法では、半導体性または金属性という異なる性質を有する二種類の単層カーボンナノチューブが含まれた混合材料しか得ることができない。したがって、単層カーボンナノチューブをチャネル層の薄膜として用いた関連するTFTにおいては、チャネル層の薄膜中に存在する金属性を有するカーボンナノチューブの影響により、TFTのOn/Off比の低下や短絡、TFT素子毎の電気特性のばらつきといった性能の低下が生じる。このことは、単層カーボンナノチューブに限らず、例えば、多層カーボンナノチューブ、窒化ホウ素(BN)ナノチューブなど、誘電率の異なるナノチューブを含む他の混合材料を用いた場合においても同様である。
【0007】
そこで、ナノチューブ材料を半導体装置に用いる場合には、例えば半導体性または金属性といった異なる誘電率を有する二種類の単層カーボンナノチューブを互いに分離することが重要となる。半導体性を有する単層カーボンナノチューブと金属性を有する単層カーボンナノチューブを分離する方法の一例が特許文献2に記載されている。特許文献2では、硫酸及び硝酸を混合した混酸溶液を製造し、この混酸溶液にカーボンナノチューブを分散させ、カーボンナノチューブ分散溶液を攪拌した後に、分散溶液をろ過し、ろ過されたカーボンナノチューブを加熱して官能基を除去することにより半導体性カーボンナノチューブを選別することとしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2008−071898号公報(段落「0020」〜「0032」)
【特許文献2】特開2005−194180(段落「0016」〜「0021」)
【非特許文献】
【0009】
【非特許文献1】「ナノ レターズ(NANO LETTERS)」、(米国)、アメリカ化学会(American Chemical Society)、2002年8月30日、第2巻、第10号、p.1137−1141
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、特許文献2に記載された半導体性カーボンナノチューブの選別方法においては、600〜1000℃の熱処理が必要であることから工程が複雑になる、という問題があった。また、特許文献2に記載されたカーボンナノチューブの選別方法では、金属性カーボンナノチューブは反応により結合が破壊され、その後、使用することができないため、半導体性カーボンナノチューブの選別にしか用いることができない、という問題があった。さらに、特許文献2の選別方法は、カーボンナノチューブ以外のナノチューブ状物質に適用可能か不明である。
【0011】
本発明の目的は、上述した課題である異なる誘電率を有するナノチューブ状物質の混合物から、所望の誘電率を有するナノチューブ状物質を簡便に分離することが困難である、という課題を解決するナノチューブ状物質の分離方法、製造方法及び分離装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明のナノチューブ状物質の分離方法は、第1の誘電率を有する第1のナノチューブ状物質と第2の誘電率を有する第2のナノチューブ状物質とを少なくとも含むナノチューブ混合溶液中に、ナノチューブ状物質の長軸方向の長さの最大値とナノチューブ状物質の直径との間の孔径を有する細孔を備えたフィルタを配置し、ナノチューブ混合溶液に対して、フィルタのフィルタ面と略平行な基準方向に制御された電磁的作用を施し、第1のナノチューブ状物質または第2のナノチューブ状物質のいずれか一方を基準方向と略平行な方向に配向させ、フィルタとナノチューブ混合溶液を相対的に移動させる。
【0013】
本発明のナノチューブ状物質の製造方法は、第1の誘電率を有する第1のナノチューブ状物質と第2の誘電率を有する第2のナノチューブ状物質とを少なくとも含むナノチューブ混合溶液中に、ナノチューブ状物質の長軸方向の長さの最大値とナノチューブ状物質の直径との間の孔径を有する細孔を備えたフィルタを配置し、ナノチューブ混合溶液に対して、フィルタのフィルタ面と略平行な基準方向に制御された電磁的作用を施し、第1のナノチューブ状物質または第2のナノチューブ状物質のいずれか一方を基準方向と略平行な方向に配向させ、フィルタとナノチューブ混合溶液を相対的に移動させ、フィルタを通過したナノチューブ混合溶液から、第1のナノチューブ状物質または第2のナノチューブ状物質のうち、配向されていないナノチューブ状物質を回収する。
【0014】
本発明のナノチューブ状物質の分離装置は、第1の誘電率を有する第1のナノチューブ状物質と第2の誘電率を有する第2のナノチューブ状物質とを少なくとも含むナノチューブ混合溶液を収容する収容部と、収容部に連結され、第1のナノチューブ状物質または第2のナノチューブ状物質を回収する回収部と、収容部に設けられ、ナノチューブ状物質の長軸方向の長さの最大値とナノチューブ状物質の直径との間の孔径を有する細孔を備えたフィルタと、ナノチューブ混合溶液に対して、フィルタのフィルタ面と略平行な基準方向に制御された電磁的作用であって、第1のナノチューブ状物質または第2のナノチューブ状物質のいずれか一方を基準方向と略平行な方向に配向させる電磁的作用を発生させる電磁的作用発生装置と、フィルタとナノチューブ混合溶液を相対的に移動させる移動機構、とを有する。
【発明の効果】
【0015】
本発明のナノチューブ状物質の分離方法によれば、所望の誘電率を有するナノチューブ状物質を簡便に分離することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の第1の実施形態に係るナノチューブ状物質の分離方法および製造方法を説明するためのフローチャートである。
【図2】本明細書におけるナノチューブ状物質の向きを模式的に示した概略図である。
【図3】電界中のナノチューブ状物質を模式的に示した概略図である。
【図4】本発明の第1の実施形態によるカーボンナノチューブ混合溶液を収容する容器及び容器内のカーボンナノチューブを模式的に示した概略図である。
【図5】本発明の第1の実施形態による別のカーボンナノチューブ混合溶液を収容する容器及び容器内のカーボンナノチューブを模式的に示した概略図である。
【図6】本発明の第1の実施形態による、さらに別のカーボンナノチューブ混合溶液を収容する容器及び容器内のカーボンナノチューブを模式的に示した概略図である。
【図7】本発明の第1の実施形態によるカーボンナノチューブ混合溶液中にフィルタを配置したときのカーボンナノチューブを模式的に示した概略図である。
【図8】関連するカーボンナノチューブ混合溶液中にフィルタを配置したときのカーボンナノチューブを模式的に示した概略図である。
【図9】本発明の第2の実施形態に係るナノチューブ状物質の分離装置の断面図である。
【図10】本発明の第3の実施形態に係るナノチューブ状物質の分離装置の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下に、図面を参照しながら、本発明の実施形態について説明する。
【0018】
〔第1の実施形態〕
図1は、本発明の第1の実施形態に係るナノチューブ状物質の分離方法および製造方法を説明するためのフローチャートである。本実施形態では、まず、第1の誘電率を有する第1のナノチューブ状物質と第2の誘電率を有する第2のナノチューブ状物質とを少なくとも含むナノチューブ混合溶液中に、フィルタを配置する(ステップS11)。このフィルタは細孔を備え、細孔の孔径はナノチューブ状物質の長軸方向の長さの最大値とナノチューブ状物質の直径との間の大きさである。
【0019】
このナノチューブ混合溶液に対して、フィルタのフィルタ面と略平行な基準方向に制御された電磁的作用を施し(ステップS12)、第1のナノチューブ状物質または第2のナノチューブ状物質のいずれか一方を基準方向と略平行な方向に配向させる(ステップS13)。そして、フィルタとナノチューブ混合溶液を相対的に移動させる(ステップS14)。これにより、配向されたナノチューブ状物質はフィルタ面上に捕獲され、配向されていないナノチューブ状物質はフィルタを通過するので、ナノチューブ状物質が有する誘電率に応じて、ナノチューブ状物質を簡便に分離することができる。また、フィルタ面上に捕獲されたナノチューブ状物質、またはフィルタを通過した配向されていないナノチューブ状物質を回収する(ステップS15)ことにより、第1の誘電率または第2の誘電率を有するナノチューブ状物質にそれぞれ分離したナノチューブ状物質を簡便に得ることができる。
【0020】
ここで、本明細書においてナノチューブ状物質とは、ナノチューブ材料およびシリコンナノワイヤ、酸化亜鉛ナノワイヤ、金属ナノロッド類などを含めたものをいう。ナノチューブ材料としては、単層カーボンナノチューブ、金属内包カーボンナノチューブ、フラーレン内包単層カーボンナノチューブ、多層カーボンナノチューブ等のカーボンナノチューブ類が好適に用いられるが、これに限らず、窒化ホウ素(BN)ナノチューブ、有機ナノチューブなどを用いることもできる。
【0021】
また、本明細書においてナノチューブ状物質の直径とは、ナノチューブ状物質の断面が円形である場合の直径に限らず、ナノチューブ状物質の長さ方向に垂直な断面における最大幅も含めて直径という。さらに、本明細書においてフィルタ面とは、フィルタとナノチューブ混合溶液の相対的な移動方向に垂直な面をいうものとする。
【0022】
また、本明細書における「ナノチューブ状物質の向き」について図2を用いて説明する。図2に示すように、ナノチューブ状物質100とナノチューブ状物質100を完全に内包する長方形の辺とが二点以上で接し、かつ、この長方形の面積が最小となる場合を考える。本明細書においては、このナノチューブ状物質を内包する長方形の短辺101とナノチューブ状物質を内包する長方形の長辺102の比が1:2となるとき、この長方形の長辺方向の向きを「ナノチューブ状物質の向き103」という。また本明細書においてナノチューブ状物質が「所定の方向に配向した状態」とは、所定の方向に対するナノチューブ状物質群の配向確率分布をp(θ)としたとき、p(θ)の半値全幅がθ=±15度以下である状態のことをいう。
【0023】
次に、本実施形態によるナノチューブ状物質の配向について(図1のステップS12、S13)、詳細に説明する。ここでは、電磁的作用として電場を印加する場合を例にとって説明する。図3は、電場中の1本のナノチューブ状物質111を模式的に示した概略図である。ナノチューブ状物質111は、例えば単層カーボンナノチューブで代表される。ナノチューブ状物質111を電場E(電場の方向112)の中に置くと、その両端に+qおよび−qの誘電分極が生じる。この誘電分極によって生じた双極子モーメントと電場Eにより、ナノチューブ状物質111にはトルクT(トルクの方向113)が生じる。このトルクTはナノチューブ状物質が電界の方向112と平行に配列するときに最小となる。したがって、特定の方向に制御された電磁的作用、例えば、直線偏光したレーザー光や交流電場をナノチューブ状物質に施すことにより、ナノチューブ状物質を電場の方向へ配向させることができる。
【0024】
このトルクTの強度は、ナノチューブ状物質の分極率により変化する。単層カーボンナノチューブについて、非特許文献1に開示されている一般的な数値を用いて分極率を求めると、半導体性を有する単層カーボンナノチューブの分極率は約50〜700Åであるのに対して、金属性を有する単層カーボンナノチューブの分極率は10のオーダとなる。そのため、金属性を有する単層カーボンナノチューブと半導体性を有する単層カーボンナノチューブに働くトルク強度には約10程度の差が生じる。誘電率は分極率にほぼ比例することから、単層カーボンナノチューブの誘電率に応じて、印加する電場の強度を制御することにより金属性を有する単層カーボンナノチューブのみを配向させることができる。
【0025】
以下にナノチューブ状物質を配向させるのに必要な電場の強度について、さらに詳細に説明する。ナノチューブ状物質と電場との相互作用は以下に示す式を用いて表すことができる。すなわち、孤立した一本のナノチューブ状物質において、ナノチューブ状物質の長さをL、ナノチューブ状物質と電場Eとの成す角をθ、ナノチューブ状物質の分極テンソルをαとすると、電場中のナノチューブ状物質に与えられるトルクTは次式で表される。
T(θ)=αLEsin(2θ) (1)
また、そのときにナノチューブ状物質が持つエネルギーUは
U(θ)=(1/2)αLEsin(θ) (2)
と表すことができる。ナノチューブ状物質が電場に対してθの角度へ向く確率p(θ)は、エネルギーの式とデバイ−ランジュバン(Debye−Langevin)の式から、
p(θ)∝a×exp(−αELsin2θ/2kT) (3)
となる。ここで、aは規格化定数、kはボルツマン定数、Tはナノチューブの温度である。配向した状態に必要な電場強度は、上述の定義よりp(θ)の半値全幅がθ=±15度となるのに必要な電場であるから、次の式が成り立つ。
0.5p(0)=p(15) (4)
この式を用いて、半導体性を有する単層カーボンナノチューブ及び金属性を有する単層カーボンナノチューブについて、配向した状態に必要な電場強度を求めると以下のようになる。ここで各数値には、それぞれ一般的に知られている値として以下のものを用いた。半導体性を有する単層カーボンナノチューブの分極テンソルαは非特許文献1より1.1×10とし、単層カーボンナノチューブの長さは1μm、温度Tは300Kとした。このとき、式(4)を満たす電場の強度Esは約100V/mとなる。一方、金属性を有する単層カーボンナノチューブの場合、分極テンソルαは非特許文献1より7.8×10とし、単層カーボンナノチューブの長さは1μm、温度Tは300Kとした。このとき、式(4)を満たす電場の強度Emは約3V/mとなる。
【0026】
以上より、金属性を有する単層カーボンナノチューブと半導体性を有する単層カーボンナノチューブをそれぞれ所定の方向に配向させるために必要な電場の強度には、約2桁の相違があることがわかる。このことから、金属性を有する単層カーボンナノチューブと半導体性を有する単層カーボンナノチューブが混在する領域に電場を作用させ、その電場の強度を制御することにより、金属性を有する単層カーボンナノチューブだけを電場の方向に配向させることができる。
【0027】
次に、本実施形態による、ナノチューブ混合溶液に含まれるナノチューブ状物質の配向方法について(図1のステップS12、S13)、図面を用いて詳細に説明する。ここでは、半導体性または金属性を示し、異なる誘電率を有する二種類の単層カーボンナノチューブの混合溶液を用いて説明するが、これに限らず、その他のナノチューブ状物質についても同様の方法により配向させることができる。
【0028】
図4は、電磁的作用としてレーザー光を照射する場合における、カーボンナノチューブ混合溶液を収容する容器及び容器内のカーボンナノチューブを模式的に示した概略図である。図4(a)に示すように、収容部としての容器201内に充填した単層カーボンナノチューブ混合溶液に対して、偏光方向を制御したレーザー光202を照射し、レーザー照射領域203および非照射領域204を形成する。図4(b)に、非照射領域204における金属性を有するカーボンナノチューブ205及び半導体性を有するカーボンナノチューブ206の状態を模式的に示す。容器壁207内に存在する金属性及び半導体性を有するカーボンナノチューブはいずれも溶液中においてランダムな方向に向いている。
【0029】
図4(c)に、レーザー照射領域203におけるカーボンナノチューブの状態を模式的に示す。本実施形態では、金属性を有するカーボンナノチューブ205はレーザー光202の光電場によりレーザー光202の偏光方向208に配向し、半導体性を有するカーボンナノチューブ206は自由に回転しランダムな方向に向くように、レーザー光202の強度を制御した。このとき、金属性を有するカーボンナノチューブ205はレーザー光202が照射され続ける限り、光電場の偏光方向208へと配向し続けるため、レーザー照射領域203は金属性を有するカーボンナノチューブ205が配向した領域となる。
【0030】
図5は、電磁的作用として交流電場を印加する場合における、カーボンナノチューブ混合溶液を収容する容器及び容器内のカーボンナノチューブを模式的に示した概略図である。図5(a)に示すように、容器201内に一対の交流電圧発生用電極209が設けられ、単層カーボンナノチューブ混合溶液が充填されている。交流電圧発生用電極209の間に交流電圧を印加し、容器201内に交流電場印加領域203−2および交流電場非印加領域204−2を形成する。図5(b)に、交流電場非印加領域204−2における金属性を有するカーボンナノチューブ205及び半導体性を有するカーボンナノチューブ206の状態を模式的に示す。容器壁207内に存在する金属性及び半導体性を有するカーボンナノチューブはいずれも溶液中においてランダムな方向に向いている。
【0031】
図5(c)に、交流電場印加領域203−2におけるカーボンナノチューブの状態を模式的に示す。本実施形態では、金属性を有するカーボンナノチューブ205は交流電圧発生用電極209間に印加された電場の方向210に配向し、半導体性を有するカーボンナノチューブ206は自由に回転しランダムな方向に向くように、交流電場の強度を制御した。このとき、金属性を有するカーボンナノチューブ205は交流電場が印加され続ける限り、電場の方向210へと配向し続けるため、交流電場印加領域203−2は金属性を有するカーボンナノチューブ205が配向した領域となる。
【0032】
図6に、交流磁場発生装置を用いて電磁的作用を施す場合における、カーボンナノチューブ混合溶液を収容する容器及び容器内のカーボンナノチューブを模式的に示した概略図を示す。図6(a)に示すように、容器201内に交流磁場発生装置211が設けられ、単層カーボンナノチューブ混合溶液が充填されている。交流磁場発生装置211による交流磁場によって誘導された交流電場を発生させ、容器201内に交流電場発生領域203−3および交流電場非発生領域204−3を形成する。図6(b)に、交流電場非発生領域204−3における金属性を有するカーボンナノチューブ205及び半導体性を有するカーボンナノチューブ206の状態を模式的に示す。容器壁207内に存在する金属性及び半導体性を有するカーボンナノチューブはいずれも溶液中においてランダムな方向に向いている。
【0033】
図6(c)に、交流電場発生領域203−3におけるカーボンナノチューブの状態を模式的に示す。交流磁場発生装置211によって発生した磁場の方向212と誘導された電場の方向213は垂直となる。本実施形態では、金属性を有するカーボンナノチューブ205は交流磁場発生装置211によって発生した磁場に誘導された電場の方向213に配向し、半導体性を有するカーボンナノチューブ206は自由に回転しランダムな方向に向くように、交流磁場の強度を制御した。このとき、金属性を有するカーボンナノチューブ205は交流磁場が印加され続ける限り、誘導された電場の方向213へと配向し続けるため、交流電場発生領域203−3は金属性を有するカーボンナノチューブ205が配向した領域となる。
【0034】
次に、本実施形態による、配向させたナノチューブ状物質を分離する方法について(図1のステップS11、S14)、図面を用いて詳細に説明する。図7は、カーボンナノチューブ混合溶液中にフィルタを配置したときのカーボンナノチューブを模式的に示した概略図である。図7(a)に示すように、フィルタ基材301に細孔302を備えたフィルタ303がカーボンナノチューブ混合溶液中に配置される(図1のステップS11)。カーボンナノチューブ混合溶液中には、金属性を有するカーボンナノチューブ305と半導体性を有するカーボンナノチューブ306が共にランダムな方向を向いている非配向領域307と、金属性を有するカーボンナノチューブ305が電磁的作用によりフィルタ面と平行な方向に配向した配向領域308が形成されている(図1のステップS12、S13)。ここで、フィルタ303とカーボンナノチューブ混合溶液を、図7(a)中に示す移動方向304の向きに相対速度vで相対的に移動させる(図1のステップS14)。フィルタ303とカーボンナノチューブ混合溶液を相対的に移動させる方法として、カーボンナノチューブ溶液をフィルタ303の方向へ流動させる方法と、カーボンナノチューブ混合溶液中においてフィルタ303を移動させる方法のいずれを用いることとしてもよい。図7ではフィルタ303を移動方向304の向きに移動させる場合を示す。
【0035】
図7(b)に、フィルタ303とカーボンナノチューブ混合溶液を相対的に移動させた後のカーボンナノチューブを模式的に示した概略図を示す。配向領域308の金属性を有するカーボンナノチューブ305はフィルタ303と平行な方向に配向している。そして細孔302の孔径は、カーボンナノチューブの長軸方向の長さの最大値とカーボンナノチューブの直径との間の大きさであり、好適には、金属性を有するカーボンナノチューブの長さの最小値と同程度とすることができる。したがって、金属性を有するカーボンナノチューブ305は細孔302を通過することができない。その結果、金属性を有するカーボンナノチューブ305はフィルタ303の表面に蓄積されカーボンナノチューブ残渣309を形成する。一方、半導体性を有するカーボンナノチューブ306はカーボンナノチューブ混合溶液中でランダムに回転することができる。そのため、細孔302を通過しフィルタ303の後方にカーボンナノチューブ溶液310を形成する。
【0036】
以上より、金属性を有するカーボンナノチューブはカーボンナノチューブ残渣309に、半導体性を有するカーボンナノチューブはカーボンナノチューブ溶液310に、それぞれ分離される。そして、カーボンナノチューブ残渣309から金属性を有するカーボンナノチューブを、カーボンナノチューブ溶液310から半導体性を有するカーボンナノチューブをそれぞれ回収することにより(図1のステップS15)、金属性または半導体性を有するカーボンナノチューブの一方を主成分とするナノチューブ状物質を簡易に得ることができる。
【0037】
上述のように回収したナノチューブ状物質について、紫外可視近赤外分光装置、顕微ラマン分光装置、質量分析装置、透過型電子顕微鏡、走査型電子顕微鏡などを用いて評価することにより、ナノチューブ状物質の物性を確認することができる。特に、ナノチューブ状物質が単層カーボンナノチューブである場合は、紫外可視近赤外分光装置と顕微ラマン分光装置を用いることにより、試料に含まれる金属性または半導体性を有するカーボンナノチューブの組成比率を測定することができる。本実施形態によるカーボンナノチューブ溶液310について測定した結果、半導体性を有する単層カーボンナノチューブの組成比率が向上していることが確認できた。
【0038】
図8に比較例として、関連するカーボンナノチューブ混合溶液中にフィルタを配置したときのカーボンナノチューブを模式的に示す。関連するカーボンナノチューブ混合溶液中においては、フィルタ303近傍の全域にわたって、金属性を有するカーボンナノチューブ305と半導体性を有するカーボンナノチューブ306はいずれもランダムな方向を向いている(図8(a))。ここで、カーボンナノチューブ混合溶液中でフィルタ303を移動方向304の向きに相対速度vで移動させる。この場合、フィルタ303の表面には細孔302を通過することができない残渣311と、細孔302を通過したカーボンナノチューブを含むフィルタ通過溶液312が形成される。しかしながら、カーボンナノチューブは柔軟性を有し、かつ、フィルタ303に対してランダムな方向を向いて接するため、金属性または半導体性を有するカーボンナノチューブはいずれも同じ割合で細孔302を通過する。そのため、残渣311とフィルタ通過溶液312における、金属性を有するカーボンナノチューブと半導体性を有するカーボンナノチューブの存在割合は変化しない。したがって、関連するカーボンナノチューブ混合溶液中にフィルタを配置し、カーボンナノチューブ混合溶液中でフィルタを移動させることとしても、金属性を有するカーボンナノチューブと半導体性を有するカーボンナノチューブを分離することはできない。
【0039】
〔第2の実施形態〕
次に、本発明の第2の実施形態について説明する。図9は、本発明の第2の実施形態に係るナノチューブ状物質の分離装置400の断面図である。ナノチューブ状物質の分離装置400は、ナノチューブ混合溶液を収容する収容部を構成する貯蔵容器401と流路402と、流路402の貯蔵容器401と反対側に接続された回収部としての回収容器403、流路402内に設けられたフィルタ404と、電磁的作用を発生させる電磁的作用発生装置としてのレーザー光源405とを有する。フィルタ404は、ナノチューブ状物質の長軸方向の長さの最大値とナノチューブ状物質の直径との間の孔径を有する細孔を備えている。ここで、貯蔵容器401と流路402は、ナノチューブ混合溶液が貯蔵容器から流出して流路402内を流動し、フィルタ404を通過するように配置されており、移動機構を構成している。
【0040】
ナノチューブ混合溶液には、第1の誘電率を有する第1のナノチューブ状物質と第2の誘電率を有する第2のナノチューブ状物質が含まれている。本実施形態では、第1の誘電率を有する第1のナノチューブ状物質として金属性を有する単層カーボンナノチューブを、第2の誘電率を有する第2のナノチューブ状物質として半導体性を有する単層カーボンナノチューブを用いた。金属性および半導体性を有する単層カーボンナノチューブの混合物を、ホーン(Horn)型超音波分散器により溶媒としての界面活性剤水溶液中に分散させた。この後に、超遠心分離を行って得られた溶液の上澄みを分取することにより、カーボンナノチューブ混合溶液が得られる。
【0041】
貯蔵容器401に導入されたカーボンナノチューブ混合溶液は、貯蔵容器401から流出し、流路402内を移動しながらフィルタ404を通過して回収容器403に至る移動経路406を流動する。本実施形態ではフィルタ404として細孔の平均直径が約0.5マイクロメートルであるメンブレンフィルタを用いた。
【0042】
フィルタ404近傍の貯蔵容器401側の流路内を流動するカーボンナノチューブ混合溶液に対して、レーザー光源405からレーザー光407が照射される。ここでレーザー光407は、フィルタ面と略平行な偏光方向408に制御されている。そして、レーザー光407の強度は、金属性を有するカーボンナノチューブがレーザー光407の光電場により偏光方向408に配向し、半導体性を有するカーボンナノチューブは自由に回転しランダムな方向に向くように制御した。金属性を有するカーボンナノチューブはレーザー光407が照射され続ける限り、光電場の偏光方向408へと配向し続けるため、レーザー光407が照射された領域に金属性を有するカーボンナノチューブが配向した配向領域409が形成される。
【0043】
フィルタ面と略平行な偏光方向408に配向した金属性を有するカーボンナノチューブはフィルタ404を通過できないので、フィルタ404の表面にカーボンナノチューブ残渣として堆積する。一方、半導体性を有するカーボンナノチューブは自由に回転しランダムな方向に向くことができるので、フィルタ404を通過しカーボンナノチューブ溶液410として流路402内を移動経路406に沿ってさらに流動し、回収容器403に至る。
【0044】
回収容器403から回収されたカーボンナノチューブ溶液410とフィルタ404の表面に堆積したカーボンナノチューブ残渣について、紫外可視近赤外吸光分析装置と顕微ラマン分光器を用いて組成の分析を行った。その結果、カーボンナノチューブ残渣においてはカーボンナノチューブ混合溶液と比べて、金属性を有する単層カーボンナノチューブの組成比率が増大していることがわかった。一方、カーボンナノチューブ溶液410においては、半導体性を有する単層カーボンナノチューブの組成比率が増大していることが確認できた。上述したように、本実施形態に係るナノチューブ状物質の分離装置400によれば、所望の誘電率を有するナノチューブ状物質を簡便に分離することができる。
【0045】
本実施形態では、電磁的作用発生装置としてレーザー光源を用いることとしたが、これに限らず、電場の振動方向がフィルタ面と略平行な交流電場を発生させる交流電場発生装置、または電場の振動方向がフィルタ面と略平行な交流電場を誘導する交流磁場を発生させる交流磁場発生装置を用いることとしてもよい。
【0046】
〔第3の実施形態〕
次に、本発明の第3の実施形態について説明する。図10は、本発明の第3の実施形態に係るナノチューブ状物質の分離装置500の断面図である。図10(a)に示すように、ナノチューブ状物質の分離装置500は、ナノチューブ混合溶液501を収容する収容部を構成する容器502と、この容器502内に設けられたフィルタ503と、電磁的作用発生装置としての交流電場発生装置を構成する電場印加用電極504とを有する。電場印加用電極504はフィルタ503の近傍に配置され、フィルタ移動装置505により両者は連動して容器502の上下方向に移動可能に構成されている。フィルタ503は、ナノチューブ状物質の長軸方向の長さの最大値とナノチューブ状物質の直径との間の孔径を有する細孔を備えている。本実施形態ではフィルタ503として細孔の平均直径が約0.5マイクロメートルであるメンブレンフィルタを用いた。
【0047】
ナノチューブ混合溶液501には、第1の誘電率を有する第1のナノチューブ状物質と第2の誘電率を有する第2のナノチューブ状物質が含まれている。本実施形態では、第1の誘電率を有する第1のナノチューブ状物質として金属性を有する単層カーボンナノチューブを、第2の誘電率を有する第2のナノチューブ状物質として半導体性を有する単層カーボンナノチューブを用いた。金属性および半導体性を有する単層カーボンナノチューブの混合物を、ホーン(Horn)型超音波分散器により溶媒としての界面活性剤水溶液中に分散させた。この後に、超遠心分離を行って得られた溶液の上澄みを分取することにより、カーボンナノチューブ混合溶液501が得られる。
【0048】
フィルタ503近傍のカーボンナノチューブ混合溶液501に対して、電場印加用電極504を介して交流電場が印加される。この交流電場は、フィルタ面と略平行な方向に電場の振動方向506が制御されている。そして、電場の強度は、金属性を有するカーボンナノチューブが電場の振動方向506に配向し、半導体性を有するカーボンナノチューブは自由に回転しランダムな方向に向くように制御した。金属性を有するカーボンナノチューブは交流電場が印加され続ける限り、電場の振動方向506へと配向し続けるため、交流電場が印加された領域に金属性を有するカーボンナノチューブが配向した配向領域507が形成される。
【0049】
次に、図10(b)に示すように、フィルタ移動装置505によりフィルタ503と電場印加用電極504を、ナノチューブ混合溶液501の表面に向かう方向(図10のフィルタ移動方向508)に移動させる。このときフィルタ面と略平行な電場の振動方向506に配向した金属性を有するカーボンナノチューブはフィルタ503を通過できないので、フィルタ503の表面にカーボンナノチューブ残渣509として堆積する。一方、半導体性を有するカーボンナノチューブは自由に回転しランダムな方向に向くことができるので、フィルタ503を通過しカーボンナノチューブ溶液510として容器502のフィルタ503よりも下部領域に残留する。
【0050】
図10(c)に示すように、フィルタ503と電場印加用電極504をナノチューブ混合溶液501の表面まで移動させる。この後に、フィルタ503の表面に堆積したカーボンナノチューブ残渣509と容器502に残留したカーボンナノチューブ溶液510について、紫外可視近赤外吸光分析装置と顕微ラマン分光器を用いて組成の分析を行った。その結果、カーボンナノチューブ残渣509においてはカーボンナノチューブ混合溶液501と比べて、金属性を有する単層カーボンナノチューブの組成比率が増大していることがわかった。一方、カーボンナノチューブ溶液510においては、半導体性を有する単層カーボンナノチューブの組成比率が増大していることが確認できた。上述したように、本実施形態に係るナノチューブ状物質の分離装置500によれば、所望の誘電率を有するナノチューブ状物質を簡便に分離することができる。
【0051】
本実施形態では、電磁的作用発生装置として交流電場発生装置を用いることとしたが、これに限らず、偏光方向がフィルタ面と略平行なレーザー光を発生させるレーザー光発生装置、または電場の振動方向がフィルタ面と略平行な交流電場を誘導する交流磁場を発生させる交流磁場発生装置を用いることとしてもよい。
【0052】
本発明は上記実施形態に限定されることなく、特許請求の範囲に記載した発明の範囲内で、種々の変形が可能であり、それらも本発明の範囲内に含まれるものであることはいうまでもない。
【符号の説明】
【0053】
100、111 ナノチューブ状物質
101 ナノチューブ状物質を内包する長方形の短辺
102 ナノチューブ状物質を内包する長方形の長辺
103 ナノチューブ状物質の向き
112 電場の方向
113 トルクの方向
201 容器
202、407 レーザー光
203 レーザー照射領域
203−2 交流電場印加領域
203−3 交流電場発生領域
204 非照射領域
204−2 交流電場非印加領域
204−3 交流電場非発生領域
205、305 金属性を有するカーボンナノチューブ
206、306 半導体性を有するカーボンナノチューブ
207 容器壁
208、408 偏光方向
209 交流電圧発生用電極
210 電場の方向
211 交流磁場発生装置
212 磁場の方向
213 誘導された電場の方向
301 フィルタ基材
302 細孔
303、404、503 フィルタ
304 移動方向
307 非配向領域
308、409、507 配向領域
309、509 カーボンナノチューブ残渣
310、410、510 カーボンナノチューブ溶液
400、500 ナノチューブ状物質の分離装置
401 貯蔵容器
402 流路
403 回収容器
405 レーザー光源
406 移動経路
501 ナノチューブ混合溶液
502 容器
504 電場印加用電極
505 フィルタ移動装置
506 電場の振動方向
508 フィルタ移動方向

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の誘電率を有する第1のナノチューブ状物質と第2の誘電率を有する第2のナノチューブ状物質とを少なくとも含むナノチューブ混合溶液中に、前記ナノチューブ状物質の長軸方向の長さの最大値と前記ナノチューブ状物質の直径との間の孔径を有する細孔を備えたフィルタを配置し、
前記ナノチューブ混合溶液に対して、前記フィルタのフィルタ面と略平行な基準方向に制御された電磁的作用を施し、
前記第1のナノチューブ状物質または前記第2のナノチューブ状物質のいずれか一方を前記基準方向と略平行な方向に配向させ、
前記フィルタと前記ナノチューブ混合溶液を相対的に移動させる、
ことを特徴とするナノチューブ状物質の分離方法。
【請求項2】
前記電磁的作用は偏光方向を制御したレーザー光を照射するものであり、前記基準方向は前記偏光方向であることを特徴とする請求項1に記載のナノチューブ状物質の分離方法。
【請求項3】
前記電磁的作用は交流電場を印加するものであり、前記基準方向は前記交流電場の振動方向であることを特徴とする請求項1に記載のナノチューブ状物質の分離方法。
【請求項4】
前記第1のナノチューブ状物質は金属性を有し、前記第2のナノチューブ状物質は半導体性を有することを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載のナノチューブ状物質の分離方法。
【請求項5】
第1の誘電率を有する第1のナノチューブ状物質と第2の誘電率を有する第2のナノチューブ状物質とを少なくとも含むナノチューブ混合溶液中に、前記ナノチューブ状物質の長軸方向の長さの最大値と前記ナノチューブ状物質の直径との間の孔径を有する細孔を備えたフィルタを配置し、
前記ナノチューブ混合溶液に対して、前記フィルタのフィルタ面と略平行な基準方向に制御された電磁的作用を施し、
前記第1のナノチューブ状物質または前記第2のナノチューブ状物質のいずれか一方を前記基準方向と略平行な方向に配向させ、
前記フィルタと前記ナノチューブ混合溶液を相対的に移動させ、
前記フィルタを通過したナノチューブ混合溶液から、前記第1のナノチューブ状物質または前記第2のナノチューブ状物質のうち、配向されていないナノチューブ状物質を回収する、
ことを特徴とするナノチューブ状物質の製造方法。
【請求項6】
第1の誘電率を有する第1のナノチューブ状物質と第2の誘電率を有する第2のナノチューブ状物質とを少なくとも含むナノチューブ混合溶液を収容する収容部と、前記収容部に連結され、前記第1のナノチューブ状物質または前記第2のナノチューブ状物質を回収する回収部と、
前記収容部に設けられ、前記ナノチューブ状物質の長軸方向の長さの最大値と前記ナノチューブ状物質の直径との間の孔径を有する細孔を備えたフィルタと、
前記ナノチューブ混合溶液に対して、前記フィルタのフィルタ面と略平行な基準方向に制御された電磁的作用であって、前記第1のナノチューブ状物質または前記第2のナノチューブ状物質のいずれか一方を前記基準方向と略平行な方向に配向させる電磁的作用を発生させる電磁的作用発生装置と、
前記フィルタと前記ナノチューブ混合溶液を相対的に移動させる移動機構、
とを有することを特徴とするナノチューブ状物質の分離装置。
【請求項7】
前記収容部は、前記ナノチューブ混合溶液を貯蔵する貯蔵容器と、前記ナノチューブ混合溶液を流通させる流路とを含み、
前記移動機構は、前記ナノチューブ混合溶液が前記貯蔵容器から流出して前記流路内を流動し、前記フィルタを通過するように前記貯蔵容器と前記流路が配置された構成を備える、
ことを特徴とする請求項6に記載のナノチューブ状物質の分離装置。
【請求項8】
前記移動機構は、前記フィルタを前記収容部内で移動させるフィルタ移動装置を有することを特徴とする請求項6に記載のナノチューブ状物質の分離装置。
【請求項9】
前記電磁的作用は偏光方向を制御したレーザー光を照射するものであり、前記電磁的作用発生装置は、前記偏光方向が前記基準方向と略平行なレーザー光を発生させるレーザー光発生装置であることを特徴とする請求項6から8のいずれか一項に記載のナノチューブ状物質の分離装置。
【請求項10】
前記電磁的作用は交流電場を印加するものであり、前記電磁的作用発生装置は、電場の振動方向が前記基準方向と略平行な交流電場を発生させる交流電場発生装置であることを特徴とする請求項6から8のいずれか一項に記載のナノチューブ状物質の分離装置。
【請求項11】
前記電磁的作用は交流電場を印加するものであり、前記電磁的作用発生装置は、電場の振動方向が前記基準方向と略平行な交流電場を誘導する交流磁場を発生させる交流磁場発生装置であることを特徴とする請求項6から8のいずれか一項に記載のナノチューブ状物質の分離装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2010−254494(P2010−254494A)
【公開日】平成22年11月11日(2010.11.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−104178(P2009−104178)
【出願日】平成21年4月22日(2009.4.22)
【出願人】(000004237)日本電気株式会社 (19,353)
【Fターム(参考)】