説明

ナノパターンが形成されたバイオポリマー光学デバイスおよびその製造方法

ナノパターンが形成されたバイオポリマー光学デバイスの製造方法は、バイオポリマーを提供する工程と、このバイオポリマーを加工してバイオポリマーマトリックス溶液を得る工程と、ナノパターンが形成された表面を有する基材を提供する工程と、その基材のナノパターンが形成された表面の上にバイオポリマーマトリックス溶液をキャストする工程と、そのバイオポリマーマトリックス溶液を乾燥させて、基材の上に固化したバイオポリマー膜を形成させる工程とを含み、ここでその固化したバイオポリマー膜は、その上にナノパターンを有する表面を伴い形成される。また別の実施態様においては、この方法はさらに、固化したバイオポリマー膜をアニールする工程を含む。ナノパターンを有する表面を持つ固化したバイオポリマー膜を含む、ナノパターンが形成されたバイオポリマー光学デバイスもまた提供する。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、米国仮特許出願第60/856,297号明細書(出願日:2006年11月3日、発明の名称:「Biopolymer Devices and Methods for Manufacturing the Same」)の優先権の恩典を主張する。本出願はさらに、米国仮特許出願第60/907,502号明細書(出願日:2007年4月5日、発明の名称:「Nanopatterned Biopolymer Optical Device and Method of Manufacturing the Same」)の優先権の恩典を主張する。
【0002】
政府支援
本発明は、the Air Force Office of Scientific Researchにより交付番号FA95500410363号として与えられた政府支援のもとになされた。本発明に関して政府は一定の権利を保有している。
【0003】
発明の分野
本発明は、ナノパターンが形成されたバイオポリマー光学デバイスおよびそのようなデバイスを製造するための方法に関する。
【背景技術】
【0004】
関連技術の説明
光学分野は、十分に確立されている。光学の下位分野としては、回折光学素子、微小光学素子、フォトニクス、および導波光学素子などが挙げられる。研究用途および商業用途のための光学素子のこれらおよびその他の下位分野において、各種の光学デバイスが作製されてきた。たとえば、一般的な光学デバイスとしては、回折格子、フォトニック結晶、光流体デバイス、導波路などが挙げられる。
【0005】
これらの光学デバイスは、その用途およびその所望される光学的な特性に合わせて、各種の方法を用いて作製される。しかしながら、これらの光学デバイス、およびそれらを製造する際に採用される作製方法には、一般的に、非生分解性材料の顕著な使用が含まれる。たとえば、光学デバイスにおいては、ガラス、溶融シリカ、およびプラスチックが一般的に使用される。そのような材料は生分解性でなく、その光学デバイスが使用されなくなって廃棄された後でも、長期間にわたって環境の中に留まる。言うまでもないことであるが、それらの材料のいくつかは、リサイクルおよび再使用することが可能である。しかしながら、リサイクルにおいても、さらなる天然資源を消費することが必要であり、そのような材料に伴う環境コストが増大する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
したがって、環境に対するマイナスの影響を最小限とするような光学デバイスに対する必要性が、充足されないまま残っている。それに加えて、従来からの光学デバイスによっては得られなかった、さらなる機能的特徴を与える光学デバイスに対する必要性が、充足されないまま残っている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述のことを考慮に入れて、本発明の目的は、様々な用途において使用することが可能な、各種の新規なバイオポリマー光学デバイスおよびそのような光学デバイスを製造するための方法を提供することである。
【0008】
本発明の一つの態様は、ナノパターンが形成されたバイオポリマー光学デバイスを提供することである。
【0009】
本発明のまた別の態様は、そのようなナノパターンが形成されたバイオポリマー光学デバイスを製造するための方法を提供することである。
【0010】
本発明の一つの利点は、環境に対するマイナスの影響を最小限とする光学デバイスを提供する点にある。
【0011】
本発明のまた別の利点は、生体適合性がある光学デバイスを提供する点にある。
【0012】
本発明のさらにまた別の利点は、従来からの光学デバイスによっては得られなかった、さらなる機能的特徴を有する光学デバイスを提供する点にある。
【0013】
上記のことに関して、本発明の発明者らは、バイオポリマー、特に絹タンパク質が、新規な構造およびその結果としての機能を与えることを認識するに至った。たとえば、材料科学の観点からは、クモおよびカイコによって紡ぎ出される絹は、これまで知られている内では最も強く、最も強靱な天然繊維を代表するものであって、機能化、加工、および生体適合性において各種の機会を提供する。5000年を超える歴史の中で、絹は需要のある織物から、科学的に魅力のある繊維へと移行していった。その特徴によって昔の人々を魅了したのと同様に、絹は、その強度、弾性、および生化学的な性質のために、今日この時代においても大いに注目を集めている。自己集合および集合における水の役割についての知見によって、絹の新規な材料特性が拡張した。それらの知見から、ヒドロゲル、超薄膜、厚膜、コンフォーマルコーティング(conformal coating)、三次元多孔質マトリックス、固体ブロック、ナノスケール直径の繊維、および大直径の繊維を製造するための新規な加工方法が得られるようになった。
【0014】
絹ベースの材料は、熱力学的に安定なタンパク質二次構造、別な呼び方ではベータシート(βシート)の天然の物理的架橋を用いて、それらの印象的な機械的性質を達成している。したがって、材料を安定化させるための、外部からの架橋反応や後加工による架橋はまったく必要としない。絹タンパク質鎖の上に多様なアミノ酸側鎖化学基が存在していることによって、絹を官能化させるための、たとえばサイトカイン、モルフォゲン、および細胞結合ドメインなどとの結合化学反応が容易となる。機械的側面、水系加工、機能化の容易さ、多様な加工モード、自己形成架橋、生体適合性、および生分解性を考慮に入れると、この範囲の材料特性および生物学的界面を提供するような、合成ポリマーまたは生物学的に誘導されたポリマー系は、これまで知られていない。
【0015】
他のバイオポリマーまたは合成ポリマーでは、上述のような絹の特徴の範囲に合わせることは不可能ではあるものの、本発明の発明者らは、絹と同様の、または類似した各種の性質を示すいくつかの他のポリマーを同定した。具体的には、キトサン、コラーゲン、ゼラチン、アガロース、キチン、ポリヒドロキシアルカノエート、プラン、デンプン(アミロース アミロペクチン)、セルロース、ヒアルロン酸、および関連するバイオポリマー、またはそれらの組合せを含む、他の天然バイオポリマーが同定された。バイオポリマー、特に絹の上述の特徴を考慮に入れて、本発明は、様々な新規なナノパターンが形成されたバイオポリマー光学デバイスおよびそのようなデバイスを製造するための方法を提供する。
【0016】
本発明の一つの態様においては、ナノパターンが形成されたバイオポリマー光学デバイスの一つの製造方法には、バイオポリマーを提供する工程、そのバイオポリマーを加工してバイオポリマーマトリックス溶液を得る工程、ナノパターンが形成された表面を有する基材を提供する工程、その基材の、ナノパターンが形成された表面の上にバイオポリマーマトリックス溶液をキャストする工程、およびそのバイオポリマーマトリックス溶液を乾燥させて、その基材の上に固化したバイオポリマー膜を形成させる工程が含まれる。その固化したバイオポリマー膜は、その表面上にナノパターンが含まれる。また別の実施態様においては、その方法にはさらに、任意で、その固化したバイオポリマー膜をアニールする工程、さらにはそのアニールしたバイオポリマー膜を乾燥させる工程が含まれる。これに関しては、固化したバイオポリマー膜をアニールする任意の工程は、真空環境中、水蒸気環境中、またはその両方を組み合わせた環境中で実施してもよい。
【0017】
本発明の各種の実施態様においては、その基材と製造されたバイオポリマー光学デバイスは、レンズ、マイクロレンズアレイ、光学格子、パターン発生器、またはビームリシェーパーであってよい。一つの実施態様においては、そのバイオポリマーが絹であり、そのバイオポリマーマトリックス溶液が、およそ1.0重量%以上30重量%以下の絹を含む絹フィブロイン水溶液、たとえば、およそ8.0重量%の絹を含む絹フィブロイン水溶液である。言うまでもないことであるが、他の実施態様では各種の重量%の溶液を使用して、得られるナノパターンが形成されたバイオポリマー光学デバイスの可撓性または強度を、所望の光学的機能は維持しながらも、用途に合わせて、最適化させてもよい。他の実施態様においては、そのバイオポリマーが、キトサン、コラーゲン、ゼラチン、アガロース、キチン、ポリヒドロキシアルカノエート、プラン、デンプン(アミロース アミロペクチン)、セルロース、ヒアルロン酸、および関連するバイオポリマー、またはそれらの組合せであってもよい。
【0018】
また別の実施態様においては、ナノパターンが形成されたバイオポリマー光学デバイスの製造方法にはさらに、その固化したバイオポリマー膜の中に有機物質を包埋させる工程、および/またはそのバイオポリマーマトリックス溶液の中に有機物質を添加する工程が含まれる。その有機物質は、赤血球、セイヨウワサビペルオキシダーゼ、またはフェノールスルホンフタレイン、またはそれらの有機物質の組合せであってよい。有機物質はさらに、以下のものであってもよい:核酸、色素、細胞、抗体、酵素、たとえば、ペルオキシダーゼ、リパーゼ、アミロース、オルガノホスフェートデヒロドゲナーゼ、リガーゼ、制限エンドヌクレアーゼ、リボヌクレアーゼ、DNAポリメラーゼ、グルコースオキシダーゼ、ラッカーゼ、細胞、ウイルス、タンパク質、ペプチド、小分子、薬剤、色素、アミノ酸、ビタミン、抗酸化剤、DNA、RNA、RNAi、脂質、ヌクレオチド、アプタマー、糖質、発色団、発光性有機化合物、たとえばルシフェリン、カロチン、および発光性無機化合物、化学色素、抗生物質、抗真菌剤、抗ウイルス薬、集光性化合物、たとえばクロロフィル、バクテリオロドプシン、プロトロドプシン、およびポルフィリン、ならびに関連する電子的に活性な化合物、またはそれらの組合せ。
【0019】
所望される光学デバイスのタイプに応じて、バイオポリマー中、またはバイオポリマーマトリックス溶液中に、有機物質の代わりにまたは有機物質に加えて、他の物質を包埋させてもよい。
【0020】
本発明のまた別の態様においては、その上にナノパターンを有する表面を持つ固化したバイオポリマー膜を含む、ナノパターンが形成されたバイオポリマー光学デバイスが提供される。各種の実施態様においては、そのバイオポリマー光学デバイスが、光学格子、レンズ、マイクロレンズアレイ、パターン発生器、またはビームリシェーパーであってもよい。
【0021】
本発明のこれらおよびその他の利点および特徴は、添付の図面を併せて参照すれば、以下の本発明の好ましい実施態様の詳細な説明から、より明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の一つの実施態様による方法を説明する、概略フロー図である。
【図2】8%の絹濃度の体積と膜厚との間の関係を示すグラフである。
【図3A】パターンが形成されていない絹膜の写真である。
【図3B】図3Aのパターンが形成されていない絹膜の反射率のプリズム結合角度依存性を示すグラフである。
【図3C】図3Aの絹膜の光透過率の測定値を示すグラフである。
【図4A】本発明の一つの実施態様に従った、ナノパターンが形成されたバイオポリマー集束レンズの写真である。
【図4B】図4Aの、ナノパターンが形成されたバイオポリマー集束レンズの顕微鏡画像である。
【図5】図4Aの、ナノパターンが形成されたバイオポリマー集束レンズを通して見た文字画像の写真である。
【図6A】本発明のまた別の実施態様に従った、ナノパターンが形成されたバイオポリマーレンズアレイの写真である。
【図6B】図6Aの、ナノパターンが形成されたバイオポリマーレンズアレイを通して見た文字の写真である。
【図7A】本発明のまた別の実施態様に従った、ナノパターンが形成されたバイオポリマー回折格子の一部の走査型電子顕微鏡画像である。
【図7B】図7Aの、ナノパターンが形成されたバイオポリマー回折格子のまた別の部分の原子間力顕微鏡画像である。
【図7C】図7Aの、ナノパターンが形成されたバイオポリマー回折格子のまた別の部分の高分解能原子間力顕微鏡画像である。
【図8】本発明のまた別の実施態様に従ったまた別の、ナノパターンが形成されたバイオポリマー回折格子の一部分の高分解能原子間力顕微鏡画像である。
【図9A】本発明に従ったナノパターンが形成されたバイオポリマー回折格子の上へ衝突する超連続レーザー光源からの回折次数(diffracted orders)を示す写真である。
【図9B】本発明に従ったまた別の、ナノパターンが形成されたバイオポリマー回折格子の上へ衝突する超連続レーザー光源からの回折次数を示す写真である。
【図10A】本発明に従ったまた別の、ナノパターンが形成されたバイオポリマー回折格子の中を透過する広帯域白色光レーザーを示す写真である。
【図10B】本発明に従ったさらにまた別の、ナノパターンが形成されたバイオポリマー回折素子の中を透過する広帯域白色光レーザーを示す写真である。
【図11A】広帯域白色光レーザーを本発明によるナノパターンが形成されたバイオポリマー光学デバイスを透過させた後に撮影した遠視野像である。
【図11B】広帯域白色光レーザーを本発明によるナノパターンが形成されたバイオポリマー光学デバイスを透過させた後に撮影した遠視野像である。
【図11C】広帯域白色光レーザーを本発明によるナノパターンが形成されたバイオポリマー光学デバイスを透過させた後に撮影した遠視野像である。
【図12A】表面加工をする前の、ナノパターンが形成されたバイオポリマー回折格子の表面の走査型電子顕微鏡画像である。
【図12B】表面加工した後の図12Aの、ナノパターンが形成されたバイオポリマー回折格子の表面の走査型電子顕微鏡画像である。
【図12C】それぞれ図12Aおよび12Bに示した、ナノパターンが形成されたバイオポリマー回折格子の表面の概略図である。
【図12D】それぞれ図12Aおよび12Bに示した、ナノパターンが形成されたバイオポリマー回折格子の表面の概略図である。
【図13】角膜線維芽細胞の中へ絹フィブロイン回折格子を浸漬させた場合の概略図および回折におよぼすその影響を示す写真である。
【図14A】緩衝溶液の中の、ナノパターンが形成された絹回折格子を通してレーザービームを伝搬させて得られる効果的な回折を示す図である。
【図14B】角膜線維芽細胞溶液の中で絹回折格子を用いた場合の回折性の相対的な損失を示す図である。
【図15A】ドープしていない本発明に従った、ナノパターンが形成された絹回折格子に超連続光を透過させたときに生成するスペクトル画像の写真である。
【図15B】本発明に従って、フェノールスルホンフタレインを包埋させたまた別の、ナノパターンが形成された絹回折格子に超連続光を透過させたときに生成するスペクトル画像の写真である。
【図15C】図15Bの、ナノパターンが形成された絹回折格子に超連続光を透過させたとき、それを塩基性溶液に暴露させたときに生成するスペクトル画像の写真である。
【図16】赤血球をドープした絹回折格子の分光吸光度を示す結果のグラフである。
【図17】セイヨウワサビペルオキシダーゼを包埋させた絹回折格子の分光吸光度を示す結果のグラフである。
【図18】キトサンおよびコラーゲンを用いてキャストした回折バイオポリマー光学デバイスを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
発明の詳細な説明
以下に詳述されるように、本発明によるナノパターンが形成されたバイオポリマー光学デバイスは、絹のようなバイオポリマーを使用して作った。これに関しては、使用された絹はカイコ絹であった。しかしながら、たとえばクモの糸、トランスジェニックの絹、および遺伝子改変の絹、それらの変種および組合せ、ならびにその他の絹などを含む様々な異なる絹が存在し、本発明にしたがってそれらを代用品として使用して、ナノパターンが形成されたバイオポリマー光学デバイスを得てもよい。
【0024】
さらに、絹に代えて、その他の生分解性ポリマーを使用してもよい。たとえば、さらなるバイオポリマーたとえばキトサンは、所望の機械的性質を示し、水中で加工することが可能であり、一般的には光学的用途のための透明な膜を形成する。その他のバイオポリマー、たとえばキトサン、コラーゲン、ゼラチン、アガロース、キチン、ポリヒドロキシアルカノエート、プラン、デンプン(アミロース アミロペクチン)、セルロース、ヒアルロン酸、および関連するバイオポリマー、またはそれらの組合せを、特定の用途においては代わりに使用してもよいし、合成生分解性ポリマー、たとえばポリ乳酸、ポリグリコール酸、ポリヒドロキシアルカノエートおよび関連するコポリマーを選択的に使用してもよい。それらのポリマーのいくつかは、水中ではそれほど容易には加工できない。それにも関わらず、そのようなポリマーは、それら単独で、または絹と組み合わせた形で使用してもよいし、特定のバイオポリマー光学デバイスで使用してもよい。
【0025】
本発明に関連して使用するとき、「ナノパターンが形成された」という用語は、バイオポリマー光学デバイスの表面上に提供された極めて小さなパターニングを指す。そのパターニングは、そのサイズがナノメートルスケール(すなわち、10−9メートル)で適切に測定されうる、たとえば100nm〜数ミクロンの範囲のサイズであるような、構造的な特徴を有している。さらに、本発明のバイオポリマー光学デバイスには、様々な異なる光学デバイス、たとえばレンズ、回折格子、フォトニック結晶、導波路などを組み入れてもよい。
【0026】
図1は、本発明の一つの実施態様に従ったナノパターンが形成されたバイオポリマー光学デバイスの製造方法を示すフローダイヤグラム10の概略図である。ステップ11においてバイオポリマーマトリックス溶液が提供されているならば、プロセスは下に記載されているステップ16に進む。そうでない場合には、ステップ12においてバイオポリマーが提供される。そのバイオポリマーが絹であるような例では、カイコ(Bombyx mori)の繭からセリシンを抽出することによってバイオポリマーを得てもよい。ステップ14において、その提供されたバイオポリマーを加工して、バイオポリマーマトリックス溶液を得る。一つの実施態様においては、そのバイオポリマーマトリックス溶液は、水性マトリックス溶液である。しかしながら、他の実施態様においては、使用するバイオポリマーに合わせて、水以外の様々な溶媒、または水と他の溶媒との組合せを使用してもよい。
【0027】
したがって、絹の例においては、ステップ14において、絹フィブロイン水溶液をたとえば、8.0重量%に処理してから、それを用いて、ナノパターンが形成されたバイオポリマー光学デバイスを製造する。言うまでもないことであるが、他の実施態様においては、その溶液濃度を、たとえば浸透ストレスまた乾燥技術により希釈するかまたは濃縮することによって、極めて希薄(約1重量%)から極めて高濃度(最高30重量%まで)まで変化させてもよい。この点に関しては、他の実施態様においては、用途に合わせて、得られるナノパターンが形成されたバイオポリマー光学デバイスの可撓性または強度を最適化させるために、異なる重量パーセントの溶液を使用してもよい。絹フィブロイン水溶液の製造については、「Concentrated Aqueous Silk Fibroin Solution and Uses Thereof」と題された国際公開第2005/012606号に詳しい記載がある。
【0028】
ステップ16において基材を提供し、バイオポリマー光学デバイスを製造する際のモールドとして使用する。その基材の表面は、バイオポリマー光学デバイスの上に形成される、所望の特徴的な様相を有している。この点に関しては、その基材は、製造されるバイオポリマー光学デバイスにおいて望まれる光学的な特徴に合わせて、光学デバイスの表面上の適切なナノパターンであってもよいし、たとえばナノパターンが形成された光学格子のような光学デバイスであってもよい。次いでステップ18において、そのバイオポリマーマトリックス水溶液を基材の上にキャストする。次いでステップ20において、バイオポリマーマトリックス水溶液を乾燥させて、バイオポリマーマトリックス水溶液を固相に転移させる。これに関しては、バイオポリマーマトリックス水溶液をある一定時間たとえば24時間かけて乾燥させてよく、任意で、バイオポリマーマトリックス水溶液の乾燥を促進させるために、弱い加熱を加えてもよい。乾燥させると、基材の表面上に固化したバイオポリマー膜が形成される。バイオポリマー膜の厚みは、基材に適用したバイオポリマーマトリックス溶液の容積に依存する。
【0029】
バイオポリマーマトリックス溶液の溶媒を蒸発させてから、任意で、ステップ22においてその固化したバイオポリマー膜をアニールしてもよい。このアニールステップは、水蒸気環境中、たとえば水蒸気で充満されたチャンバー内で、所望の材料特性に応じて時間を変えて実施するのが好ましい。典型的には、アニールにかける時間は、たとえば2時間〜2日の範囲とするのがよく、真空環境中で実施してもよい。次いでそのアニールしたバイオポリマー膜を、ステップ24において基材から取り外し、ステップ26においてさらに乾燥させ、それによってバイオポリマー光学デバイスとする。上述の方法で製造されたアニールした膜は、基材の上に提供されていた表面に一致する機能性光学表面を有している。次いでそのアニールした膜は、本発明に従って、ナノパターンが形成されたバイオポリマー光学デバイスとして使用することができる。
【0030】
実験を実施して、様々なバイオポリマー光学デバイスを製造することによって、上述の方法の検証を行った。8重量%の絹濃度の絹フィブロイン水溶液の体積と、得られる絹膜の厚みとの間の関係を図2のグラフ30に示しているが、その絹フィブロイン水溶液は、およそ10平方センチメートルの基材の表面上にキャストした。X軸は絹フィブロイン溶液の体積(単位mL)を示し、Y軸は得られた膜の厚み(単位μm)を示している。
【0031】
言うまでもないことであるが、膜の性質、たとえば厚みおよびバイオポリマー含量、さらには光学的な特徴は、そのプロセスで使用されるフィブロインの濃度、堆積させた絹フィブロイン水溶液の体積、およびキャスト溶液を乾燥させてその構造を固定させるための堆積後(post deposition)プロセスなどに基づいて、変化させることができる。得られたバイオポリマー光学デバイスの光学的品質を確保し、バイオポリマー光学デバイスの様々な特性、たとえば透明度、構造的剛性、および可撓性を維持するためには、それらのパラメーターを正確に調節することが望ましい。さらに、バイオポリマーマトリックス溶液に対する添加剤を使用して、バイオポリマー光学デバイスの特徴、たとえば、形態、安定性などを変化させてもよく、そのようなものとしてはポリエチレングリコール、コラーゲンなどが知られている。
【0032】
10μmの厚みを有する、パターンが形成されていないバイオポリマー膜を、絹フィブロイン水溶液を使用して上述の方法で製造し、Metricon Corporation製の走査型プリズム結合反射率計で特性解析した。図3Aに、製造され特性解析された、パターンが形成されていないバイオポリマー膜34を示す。バイオポリマー膜34の屈折率を測定すると、633nmでn=1.55であった。これは従来のホウケイ酸ガラスの屈折率よりもやや高い。測定された屈折率により、この値が、たとえば空気−絹バイオフォトニック結晶(BPC)において光学的に使用するための妥当なコントラストを与えるのに、十分に高いことが確認された(Δnフィブロイン−Δn空気=0.55)。パターンが形成されていない絹膜34の特性解析が、図3Bのグラフ36に示されているが、これは明らかに、反射率のプリズム結合角度依存性を示している。グラフ36における振動は、導波光への結合によるものであって、導波路材料としての絹の使用を実証している。
【0033】
さらに、パターンが形成されていない絹膜34を解析して、透明度を求めた。図3Cは、様々な波長における絹膜34を通過する光の透過率の測定値を示すグラフ38である。透過率の測定から、パターンが形成されていない絹膜34が、可視スペクトル全体にわたって高い透明性を有していたことがわかる。比較のために、コラーゲン、およびポリジメチルシロキサン(PDMS)の同様の厚みの膜をキャストした。自立性についての構造的な安定性が劣っていることが見出され、また得られたバイオポリマー光学デバイスは、薄膜として実施したときに、自立性がなかった。しかしながら、そのようなバイオポリマーでも、構造的な安定性が重要と考えられないような用途では使用できる可能性がある。
【0034】
ここで重要なことは、様々な厚みを有する成形膜に、上述の図1の方法を使用してナノスケールでパターンを形成し、ナノパターンが形成されたバイオポリマー光学デバイスを得ることである。ナノパターンが形成された様々なバイオポリマー光学デバイスが、絹フィブロイン溶液を用いた上述の本発明の方法を使用して満足のいくレベルで製造された。それらのデバイスには、レンズ、マイクロレンズアレイ、光学格子、パターン発生器、およびビームリシェーパーが含まれる。具体的には、絹フィブロインの水溶液を、その上にパターンを有する特定の基材の上にキャストした。その基材の表面をTeflon(商標)で被覆しておいて、バイオポリマーマトリックス溶液が液相から固相へと転移した後に、均質に剥離されるようにした。バイオポリマー光学デバイスにおいて高度に規定された、ナノパターンが形成された構造を形成させるための、本発明のバイオポリマーキャスト方法の性能が、回折格子およびレンズをキャストすることによって検証された。210nmもの低い寸法と、20nm未満の局所的表面粗さを有する、規則的にパターンが形成された特徴が得られた。
【0035】
生体適合性材料をそのように規則的にパターニングさせることによって、フォトニックバンドギャップを与え、有機物を介して光を処理し、しかも機械的に頑強な光学デバイスを得るために使用することが可能な光学デバイスを製造することが可能となる。それらのデバイスは、以下においてさらに詳しく説明するように、包埋される光学素子の可撓性とタンパク質基材の特有の多様性とが組み合わさっている。本発明によって多くのメリットが得られるが、それには、絹のようなバイオポリマーの有機特性を、有機マトリックスの中に包埋された回折および伝送光学素子の性能と組み合わせて、生物学的に活性な光学素子を作り出すことが含まれる。絹は、分解の調節が可能で、生体適合性で、そして構造的に強い媒体を与え、それを用いて、本発明による光学デバイスを作製することができる。
【0036】
図4Aは、絹フィブロイン水溶液を用い上述の方法で製造した、ナノパターンが形成されたバイオポリマー集束レンズ40を示す写真である。そのバイオポリマー集束レンズ40は、1センチメートル未満の直径を有しており、その表面上に形成された、ナノパターンが形成された同心円を有している。図4Bは、図4Aに示したバイオポリマー集束レンズ40の顕微鏡画像42である。その顕微鏡画像42は明らかに、バイオポリマー集束レンズ上の、ナノパターンが形成された同心円44を示している。
【0037】
図5は、図4Aの、ナノパターンが形成された集束レンズ40を通して見た、文字「Tufts]の写真画像50を示している。この写真は明らかに、本発明の方法によって製造されたバイオポリマーから作った光学デバイスの光学的な応用可能性を示している。
【0038】
さらに、ナノパターンが形成されたバイオポリマー光学デバイスを、マイクロレンズアレイの上、および他のパターン発生器の上に絹フィブロイン水溶液をキャストすることによって製造した。具体的には、絹フィブロイン水溶液を光学素子の様々なパターンが形成された表面の上にキャストし、放置固化させ、次いで先に図1に関連して述べた方法に従って、アニールした。図6Aおよび6Bは、絹フィブロイン水溶液を用い、本発明に従って製造したレンズアレイ60の写真である。レンズアレイ60は、Digital Optics Corporation製のポリカーボネートフィルムの上にキャストした。そうして得られた絹のレンズアレイ60は、大きさがおよそ1cmであり、その上に12×12個のレンズ62がパターン形成されている。レンズアレイ60の上に得られたレンズ62は、モールドとしての機能を果たす基材の上に、バイオポリマーマトリックス溶液たとえば絹フィブロイン水溶液をキャストすることによって、精密にパターンが形成されたバイオポリマー光学デバイスを製造することが可能であることを実証している。図6Bは、その絹レンズアレイ60を通して見た文字の写真である。
【0039】
さらに、様々なラインピッチのホログラフィック回折格子を基材として使用し、本発明に従ったナノパターンが形成されたバイオポリマー回折格子を製造するために、その上に絹フィブロイン水溶液をキャストした。これに関しては、図7Aは、図1の方法に従い、2,400ライン/mmのホログラフィック回折格子の上に絹フィブロイン水溶液をキャストすることによって製造した、ナノパターンが形成されたバイオポリマー回折格子70の一部の走査型電子顕微鏡画像である。得られた絹のバイオポリマー回折格子70もまた、2,400ライン/mmの格子72を有している。図7Bおよび7Cはそれぞれ、ナノパターンが形成されたバイオポリマー回折格子70の表面の一部の原子間力顕微鏡(AFM)および高分解能AFM画像である。図7Cに示された回折格子70の部分は、およそ1μmである。これからも判るように、格子の隆起部の幅がおよそ200nm、半値全幅(FWHM)での間隔がおよそ200nmであった。山から谷までの高さの差は、150nmと観察された。
【0040】
図7Bおよび7CのAFM画像からも判るように、ナノパターンが形成されたバイオポリマー回折格子70は、ナノスケールで高度に規則的に構造化された格子72と、極めて滑らかな側壁74とを有している。格子72の山および格子72の間の谷における表面粗さのトポグラフィックな評価では、表面粗さの二乗平均平方根(RMS)値が20nm未満であることが判ったが、それでも構造的には安定している。これらの数値は、光学的および材料の観点から、卓越した分解能の展望を示している。
【0041】
光学的に平坦な表面上にキャストした絹膜の粗さを測定すると、2.5〜5ナノメートルの間の二乗平均平方根粗さ値と測定されたが、このことは、633nmの波長では、容易にλ/50未満の表面粗さであることを意味している。パターンが形成された絹回折光学素子の原子間力顕微鏡画像は、適切なモールドで絹膜をキャストおよびリフトさせることによって得られる超微細加工のレベルを示している。それらの画像は、数百ナノメートル範囲の解像度を示し、コーナーの鮮鋭度からは、数十ナノメートルまでの細かい忠実なパターニングの可能性が示唆される。
【0042】
図8は、3,600ライン/mmのピッチを有する光回折格子の上に絹フィブロイン水溶液をキャストすることにより、これもまた本発明の方法によって製造された、ナノパターンが形成された絹回折格子80の1μmの部分の高分解能原子間力顕微鏡(AFM)画像である。得られたバイオポリマー回折格子80もまた、3,600ライン/mmを有している。その構造化された格子82を測定すると、FWHMでの間隔が125nmで、山から谷までの高さの差が60nmであった。これからも判るように、顕著に滑らかな側壁を有する、ナノスケールの、高度に規則的な構造化された格子82が得られた。この場合もまた、その表面のトポグラフィックな解析から、RMS20ナノメートル未満の表面粗さであることが判った。
【0043】
ラインピッチが異なり、サイズがたとえば50×50mmのような大きさの、別の回折格子例もまた、本発明の方法を使用して製造した。これに関しては、600ライン/mmおよび1,200ライン/mmを有する回折格子をさらに使用して、ナノパターンが形成されたバイオポリマー回折格子を製造した。そうして得られたナノパターンが形成されたバイオポリマー回折格子は、RMS20nm未満の表面の滑らかさを有する微細な形状を再現し、しかも構造的に安定していることが見出された。ある種の領域においては、その滑らかさが、10nm未満のRMS粗さを有することが見出された。
【0044】
パターンが形成されたバイオポリマー回折格子の試料について、単一波長および白色(超連続)コヒーレント光の両方を、絹回折格子を透過させることによって光学的に解析して、その回折性を調べた。図9Aは、本発明に従って製造された絹回折格子の上に衝突する白色光レーザー光源からの回折次数を示す写真90である。これからも判るように、中央次数(central order)と3つの回折次数が観察された。m=1およびm=−1次の回折効率を測定すると、図示した実験ではおよそ37%であった。平均出力が1Wに達するような照射では、回折格子構造に損傷を与えることなく、首尾よく絹回折格子を透過した。
【0045】
図9Bは、本発明に従って作った1,200ライン/mmを有する絹回折格子の上に衝突させた超連続レーザー光源からの回折次数を示す、また別の写真96である。それらの回折次数は、絹回折格子から2cmのところで結像させた。この格子の回折効率は、633nmにおける一次では34%であることが判ったが、これは好適なことには従来からの伝送性ガラス格子に匹敵する。
【0046】
構造的に安定していることと、ナノ構造を忠実に再現することが可能であることが理由で、上述の方法は、各種の回折光学構造または屈折マイクロおよびナノ光学構造を製造するための優れたプロセスとなる。容易に製造可能な各種の光学デバイスとしては、光学格子、上述のようなマイクロおよびナノレンズアレイ、パターン発生器、ビームディフューザー、ビームホモジナイザー、または多層回折光学素子たとえばフォトニック結晶もしくは導波路などが挙げられる。
【0047】
上述の本発明の方法を使用して、伝送性の、ナノパターンが形成された回折性バイオポリマー光学デバイスを作った。それらの光学デバイスには、絹ディヒューザー、ラインパターン発生器、およびクロスパターン発生器が含まれる。そのような光学デバイスは、適切に形成された波長スケールの表面構造を使用して、光干渉を利用する、予め決められた一次元または二次元の光パターンを作り出す。従来の材料で作られたそのような光学デバイスは、いくつかの使用例を挙げれば、画像形成、分光法、ビームサンプリングおよびトランスフォーメーション、ならびに計量法などに適用されてきた。たとえば絹バイオポリマーのような生物学的マトリックスの中での光の送達を調節するためにこのアプローチ方法を拡張することによって、基材の中にフォトンを最適にカップリングさせる、または意図的な光学的な識別性、干渉、もしくは読取りが可能となる。
【0048】
図10Aは、絹光回折格子100を示し、図10Bは、絹光回折素子104を示す。いずれも本発明の例示実施態様であり、上述の方法で製造した。広帯域白色光レーザーをそれぞれの構造物に透過させた場合の、デバイスの写真を撮影した。
【0049】
図11A〜11Cはそれぞれ、各種の絹回折光学デバイスに広帯域白色光レーザーを透過させた後に写真撮影した各種の遠視野像を示している。得られたパターンは、画像を発生させるために使用した広帯域超連続レーザーの散乱のために多色となっている。図11Aは、ナノパターンが形成されたバイオポリマー光学デバイス111を通過するレーザー光の概略図であって、写真112に見られる光のパターンを生成させている。図11Bは、また別の、ナノパターンが形成されたバイオポリマー光学デバイスを通過させたレーザー光により生成した、また別のパターンの写真114である。図11Cは、さらに別の、ナノパターンが形成されたバイオポリマー光学デバイスを通過させた白色レーザー光により生成した、さらに別のパターンの写真116である。図11Cの、ナノパターンが形成されたバイオポリマー光学デバイスは、Charlotte,North CarolinaのDiffractive Optics,Inc.から市販されている回折パターンのレプリカである。
【0050】
本発明によるナノパターンが形成されたバイオポリマー光学デバイスの顕著な利点は、完全に有機的で、生体適合性で、極めて機能性の高い基材の中に光学素子を包埋させて、その光学素子を生物学的に活性とすることが可能である点にある。別の言い方をすれば、本発明の、ナノパターンが形成されたバイオポリマー光学デバイスは、有機物質たとえばタンパク質を、ナノパターンが形成されたバイオポリマー光学デバイスの中に包埋させることによって、生物学的に活性化させることができる。たとえば、上述の絹回折格子を加工して、格子の中で生物学的に変化を誘導しうるようにすることができる。この現象が、回折効率を局所的に変化させる。次いで、回折されたビームの変動を、生物学的レベルで起きている変化の指標として機能させることができる。そのような応答性の、ナノパターンが形成されたバイオポリマー光学デバイスは、以下のものを添加することによって実施することができる:核酸、色素、細胞、(さらに付属書Iに記載されているような)抗体、酵素、たとえば、ペルオキシダーゼ、リパーゼ、アミロース、オルガノホスフェートデヒロドゲナーゼ、リガーゼ、制限エンドヌクレアーゼ、リボヌクレアーゼ、DNAポリメラーゼ、グルコースオキシダーゼ、ラッカーゼ、細胞、ウイルス、バクテリア、タンパク質、分子認識のためのペプチド、小分子、薬剤、色素、アミノ酸、ビタミン、抗酸化剤、植物細胞、哺乳動物細胞など、DNA、RNA、RNAi、脂質、ヌクレオチド、アプタマー、糖質、光学活性発色団(ベータカロチンまたはポルフィリンを含む)、発光性有機化合物、たとえばルシフェリン、カロチン、および発光性無機化合物、化学色素、抗生物質、酵母、抗真菌剤、抗ウイルス剤、および複合体たとえばヘモグロビン、電子伝達鎖補酵素およびレドックス成分,集光性化合物、たとえばクロロフィル、フィコビリタンパク質、バクテリオロドプシン、プロトロドプシン、およびポルフィリン、ならびに関連する電子的に活性な化合物、またはそれらの組合せ。
【0051】
しかしながら、そのような物質を包埋させることは、コーティングするよりは好ましいが、その理由は、コーティングはより容易に剥がれる可能性があるからである。
【0052】
回折格子の回折次数は、次式から導かれる。
sinα+sinβ=mλ/d
式中、αおよびβはそれぞれ、入射光の入射角および回折角であり、mは回折次数であり、dは格子のピッチ(単位、ライン/mm)である。生物学的レベルでの変化によって誘発される、λの関数としてのdまたは吸光度における変動が、得られる光学的な特色に影響するであろう。そのために、光学的な特色におけるこの変化が、簡便で総合的な検出方法を与える。格子全体に影響がでるような肉眼的効果のために、表面の機能化を任意に調節することが可能であり、それによってスペクトル的な特色の変化を(たとえば、光リミッターと同様に)極めて劇的とすることができる。
【0053】
図12Aは、表面加工をする前の絹回折格子120の表面の走査型電子顕微鏡画像を示す。図12Bは、表面加工をした後の絹回折格子120の表面の走査型電子顕微鏡画像を示す。具体的には、図12Aおよび12Bに示した絹回折格子120の表面を加工して、回折格子120のトラフ124の上に結合(binding)が選択的に得られるようにし、それによって、ピッチおよび図12Bに示す回折格子120の光学構造を変化させる。図12Aでは、その他のトラフはすべて、結合126をもって充填されていた。この、他のトラフがすべて充填されていたということは、図12Aおよび12Bの走査型電子顕微鏡画像に対応する、図12Cおよび12Dの概略図にも示されている。光学的絹格子の機能化表面の実施化は、それが接触する絹表面に対する親和性が異なる多様な細胞系に、絹回折格子を暴露させることによって得られた。親和性が存在する場合には、細胞が表面上に堆積し、それらが格子によって起きる回折パターンを変化させる。このようにして、細胞の存在を容易に検出することができる。
【0054】
図13は、600ライン/mmを有する絹回折格子130を、その絹回折格子130を、角膜線維芽細胞134を含むプレーンな緩衝溶液132の中に浸漬させることによって、角膜線維芽細胞の細胞環境に暴露させることを概略的に示している。絹フィブロインは、線維芽細胞のための良好な基材であって、線維芽細胞が絹回折格子130の表面を被覆し、それにより、その回折性を無くす(または妨害する)。それとは対照的に、被覆には不適切な環境に暴露された格子は、それらの回折性を保持する。その妨害作用は、絹回折格子130を通過する光の透過率における変化をモニターすることによって検証することができるが、これもまた、図13のグラフ136に概略的に示している。
【0055】
図14Aは、プレーンな緩衝溶液を含む培養皿中のナノパターンが形成された絹回折格子を通してレーザービームを伝搬させたときに起きる、結果としての効果的な回折の写真140である。写真140には、結果として得られた回折次数142がはっきりと見える。それとは対照的に、図14Bは、角膜線維芽細胞溶液を含む培養皿中の同一のナノパターンが形成された絹回折格子を通してレーザービームを伝搬させたときに得られた回折の写真144である。明らかに判るように、ナノパターンが形成された絹回折格子を、堆積して回折の次数の変化を起こさせる角膜線維芽細胞の存在下に置いたときには、回折性にはかなりの低下が起きる。格子の回折性を検討することによって、回折格子の機能化された検出における変化を実証することができる。
【0056】
「活性な」バイオポリマー光学デバイスを実験的に実現させることを、様々な物質を加えて水性絹マトリックス溶液を変化させることにより検討した。次いで、その物質の機能性を、光学マトリックスの中で検証した。それらの実験には、絹マトリックス溶液の中に、生理的に関連のあるタンパク質、酵素、および小さな有機pH指示薬を包埋させることが含まれていた。それらの試料はすべて、絹フィブロイン水溶液の中に希釈し、それを回折格子の上にキャストして、ナノパターンが形成されたバイオポリマー光学デバイスを製造したが、そこでは、光学素子の回折性とそのドーパントの生物学的機能とが統合されている。
【0057】
一つの実験例の結果を、図15A〜15Cのスペクトル画像写真に示しているが、ここでは、350nmから1,000nmを超えるまでの超連続光を、本発明に従ったナノパターンが形成された絹回折格子の中に透過させた。ナノパターンが形成された絹回折格子から15cmの距離で、それらのスペクトル画像を撮った。参考とするためであるが、図15Aの写真150は、ナノパターンが形成されたドープしていない絹回折格子を通過させ、固定平面上に投射したときの、回折超連続光を示している。図15Bの写真152は、フェノールスルホンフタレイン(PSP)を用いて包埋させ、酸溶液に暴露させることにより活性化させたナノパターンが形成された絹回折格子の中を通過させたときの、回折された超連続光を示している。これからも判るように、絹回折格子のスペクトル的な吸収が変化して、回折された超連続スペクトルは、図15Aに見られるものからは変化している。図15Bにおいては、測定されたスペクトル透過率曲線154は、検出された回折超連続スペクトルにマッチさせるために、重ね合わされている。図15Cの写真156は、PSP包埋されたナノパターンが形成された絹回折格子を塩基性溶液に暴露させたときの、回折された超連続スペクトルを示している。測定されたスペクトル透過率曲線158もまた、検出された回折超連続スペクトルにマッチさせるために、重ね合わされている。これからも判るように、スペクトルの緑端(すなわち、短波長側)の方向に、より高い吸光度が示されている。
【0058】
ナノパターンが形成されたバイオポリマー光学デバイスの生体適合性を確認する目的で、上述のような図1に従って製造した、本発明による絹回折格子の中に赤血球(RBC)を組み入れた。そのRBC−絹フィブロイン溶液は、1mLの80%ヘマトクリットヒトRBC溶液と、5mLの8%絹溶液とを組み合わせることによって調製した。その混合物を、600ライン/mmの光学格子上にキャストし、一夜かけて放置乾燥させた。その膜を、光学格子から取り外し、2時間アニールした。そうして得られたRBCをドープした絹回折格子の中には、格子構造が観察された。
【0059】
次いで、そのRBCをドープした絹回折格子を試験して、回折次数を観察した。光学的透過率実験を実施して、ヘモグロビン(RBC中に含まれる酸素運搬タンパク質)が、絹回折格子のマトリックスの中でその活性を維持しているかどうかを調べた。図16にその結果のグラフ160を示すが、それは、RBCをドープした絹回折格子の中でヘモグロビン機能が維持されていることを示している。X軸は波長(単位nm)に相当し、Y軸は、RBCをドープした絹回折格子による吸光度を示している。
【0060】
具体的には、RBCをドープした絹回折格子を、蒸留水を充填した石英キュベットの中に挿入し、吸光度曲線を観察した。その結果を、結果のグラフ160の中の線(b)HbOによって示す。図から判るように、線(b)HbOによって示される吸光度曲線は、オキシヘモグロビンの吸収に典型的な二つのピークを示した。次いで、そのキュベットの中に窒素ガスをバブリングさせて、ヘモグロビンを脱酸素化させた。15分後に、オキシヘモグロビンの特性吸収ピークが吸光度曲線から消えた。この結果を、結果のグラフ160の中の線(a)Hbによって示す。これらの結果は、次いでキュベットへの窒素の流れを止めると、その結果として、オキシヘモグロビンのピークが再び現れるということで、さらに確認した。その結果を、結果のグラフ160の中の線(c)HbOによって示す。
【0061】
また別の実験例においては、セイヨウワサビペルオキシダーゼ(HRP)酵素を絹フィブロインマトリックス溶液に添加して、図1に関連して記載されたようにして製造された絹回折格子の中に包埋された酵素の濃度が0.5mg/mLとなるようにした。酵素活性を検証するために、テトラメチルベンジジン(TMB)を使用して、その絹回折格子の中の機能酵素活性を追跡した。TMBは、活性酵素の存在下では、HRPおよび過酸化水素と反応して、フリーラジカル反応によって発色する芳香族有機モノマーである。
【0062】
TMBの酸化反応生成物は、独特の青色を生ずるか(1電子酸化)、黄色を生ずる(2電子酸化)。図17の結果のグラフ170に、記録された吸収スペクトルを示すが、ここで、X軸は波長(単位、nm)に相当し、Y軸はHRP包埋された回折格子による吸光度を示す。吸収スペクトルは、光学素子をTMBに暴露させた直後、5、15、25、および35秒の、反応の初期の段階でのグラフ90に記録した。結果のグラフ170から判るように、600nm〜700nmの波長範囲における吸光度が徐々に高くなって、およそ655nmにピーク吸光度が観察されるが、それによって酵素活性が検証された。さらに、図17の結果のグラフ170に示されたこれらの測定は、HRP包埋された絹回折格子を調製してから30日後に、この期間この回折格子を室温で保存した後に行ったものであることにも注目すべきである。このことは、この期間のあいだ、HRPが絹タンパク質マトリックスの中で活性を維持していたことを示している。
【0063】
また別の例としては、有機pH指示薬のフェノールスルホンフタレイン(フェノールレッド)を絹フィブロイン水性マトリックス溶液と混合して、図1に関連して先に記載した方法で600ライン/mmの格子の上にキャストした。そうして得られた回折光学構造は、pH指示薬の機能と、絹回折格子の光学的機能とを維持していた。具体的には、超連続放射線が、フェノールレッド包埋の絹回折格子を通すことで回折された。ついで同一の回折格子を、1mMのNaOH、1mMのHCl、およびDI HOを含めて各種のpHレベルを有する溶液中に浸漬させた。絹回折格子を浸漬させた溶液の酸度に基づいて、分散スペクトルが変化することが観察された。先に記載したナノパターンが形成されたバイオポリマー光学デバイスの場合と同様に、生物活性絹回折格子が、機械的に頑強であり、室温で貯蔵することが可能であり、再使用することが可能であり、従来からの光学素子と同様に取り扱うことが可能であることが観察された。
【0064】
先にも説明したように、代わりのバイオポリマーを使用して、本発明によるナノパターンが形成されたバイオポリマー光学デバイスを作製してもよい。図18は、異なった材料を使用してキャストした他の回折性バイオポリマー光学デバイスを示す、写真180を示している。具体的には、キトサン光学デバイス182と、コラーゲン光学デバイス184をさらに、本発明に従って製造した。キトサンに関しては、絹と同様の光回折特性が観察された。
【0065】
上述の説明と、例に挙げて示し説明したナノパターンが形成されたバイオポリマー光学デバイスとから、本発明が、生分解性の、ナノパターンが形成されたバイオポリマー光学デバイスを提供することは明らかである。本来的に生体適合性であり、水の中で加工することが可能で、調節された寿命で分解することが可能な、高品質の、ナノパターンが形成されたバイオポリマー光学デバイスが製造された。先にも説明したとおり、本発明の、ナノパターンが形成されたバイオポリマー光学デバイスは、小さな有機物質を組み入れることによって、生物学的に活性化させてもよい。たとえば、その小有機物質は、複合体タンパク質たとえば赤血球中のヘモグロビンおよび酵素たとえばペルオキシダーゼであってよい。本発明は、ペプチド、酵素、細胞、抗体、または関連の系の形の不安定な生物学的受容体を直接的に組み入れることが可能になることから、光学デバイスの汎用性を広げ、そのような光学デバイスを生物学的検知デバイスとして機能させることも可能となる。
【0066】
本発明の、ナノパターンが形成されたバイオポリマー光学デバイスは、生体適合性および生分解性が最重要視される環境科学および生命科学において容易に使用することができる。たとえば、上述のようなナノパターンが形成されたバイオポリマー光学デバイスは、自然環境たとえば人体の中でのモニターをするのに、存在を感じさせずに使用することができるし、生体内に植え込んでも後日そのデバイスを回収する必要がない可能性もある。本発明の、ナノパターンが形成されたバイオポリマー光学デバイスの分解寿命は、製造プロセスを介して、たとえば溶液マトリックスキャストの比率および量を調節することによって、調節することができる。さらに、本発明の、ナノパターンが形成されたバイオポリマー光学デバイスは、環境中に分散させることが可能であり(この場合もまたそれらを後日回収する必要はない)、それによって、検知および検出のための新規で有用なデバイスが提供される。
【0067】
本発明の態様および実施態様についてのここまでの記述は、例示と説明のために提供してきたが、説明しつくした訳でもないし、開示されたそのままの形に本発明を限定することを意図したものでもない。当業者ならば、上述の教示を読めば、それらの実施態様のある種の修正、順序の入れ替え、追加、および組合せが可能であるか、または本発明の実施から学びうることはよく認識するところであろう。したがって、本発明には、添付の特許請求の範囲内に入る各種の修正および等価の変形もまた包含されている。
【0068】
付属書I
絹膜中における抗体の安定性
材料
抗IL−8モノクローナル抗体(IgG1)は、eBioscience,Inc.から購入した。ヒトポリクローナル抗体IgGおよびヒトIgG ELISA Quantitation Kitは、Bethyl Laboratories Inc.から購入した。研究において使用したその他の全ての化学薬剤は、Sigma−Aldrich(St.Louis,MO)から購入した。
【0069】
絹膜中への抗体の捕捉−ヒトポリクローナル抗体IgG
167mLの6%絹溶液と混合した10mLのIgG(1mg/mL)で、絹膜中IgG濃縮物(mg/g絹)を作製する。100μLの混合IgG溶液を、96ウェルプレートのそれぞれのウェルに添加し、カバーを開けて、換気フードの中に一夜置いた。その乾燥させた膜は、メタノールを用いて処理するか、未処理のままとした。メタノール処理の場合には、ウェルを90%メタノール溶液中に5分間浸漬させ、換気フードの中で乾燥させた。次いで、乾燥させた96ウェルプレートの全てを、4℃、室温、および37℃で保存した。
【0070】
抗IL−8モノクローナル抗体(IgG1)
83mLの6%絹溶液と混合した0.5mLのIgG1(1mg/mL)で、絹膜中IgG1濃縮物(0.1mg/g絹)を作製する。50μLの混合IgG1溶液を、96ウェルプレートのウェルに添加し、カバーを開けて、換気フードの中に一夜置いた。その乾燥させた膜は、メタノールを用いて処理するか、未処理のままとした。メタノール処理の場合には、ウェルを90%メタノール溶液中に5分間浸漬させ、換気フードの中で乾燥させた。次いで、乾燥させた96ウェルプレートの全部を、4℃、室温、および37℃で保存した。
【0071】
抗体測定
統計解析のため、同一の条件下で調製した5個のウェルについて測定した。純粋な絹(抗体なし)を対照として使用した。
【0072】
メタノール非処理試料の場合には、100μLのPBS緩衝液(pH、7.4)を、ウェルに添加し、それを室温で30分間さらにインキュベートして、膜を完全に溶解させた。次いで、溶液の一定分量を、抗体測定にかけた。メタノール処理試料については、100μLのHFIPをそれぞれのウェルに添加し、それを室温で2時間さらにインキュベートして、膜を完全に溶解させた。その絹HFIP溶液を、換気フード中で一夜乾燥させた。以後のステップはメタノール非処理試料の場合と同様であって、PBS緩衝液を添加し、抗体測定のために溶液をピペットで移した。
【0073】
ELISA
ポリスチレン(96ウェル)マイクロタイタープレートを、抗原コーティング緩衝液(重炭酸塩緩衝液、50mM、pH9.6)中で調製した10μg/mLの濃度の100μLの抗原抗ヒトIgG−アフィニティを用いてコーティングし、次いで室温で保存して一夜インキュベートした。次いでTBS−T緩衝液を用いて、それらのウェルを3回洗浄した。1%のBSA(TBS中)を各ウェル200μLずつ用いて非占有部位(unoccupied site)をブロックし、次いで室温で30分間インキュベートした。次いでTBS−Tを用いて、それらのウェルを3回洗浄した。次いで、連続希釈の血清100μLを用いて、試験ウェルおよび対照ウェルを希釈した。それぞれの希釈は、TBS緩衝液中で実施した。それぞれの希釈に対応する、連続希釈のブランクもまた存在させた。次いでそのプレートを、室温で1時間インキュベートした。プレートを、TBS−T緩衝液を用いて再び洗浄した(5回)。結合した抗体について、抗ヒトIgG−HRP(1:100,000)の適切な結合体を用いて試験したが、その100μLをそれぞれのウェルの中にコーティングし、室温で1時間維持した。TBS−Tを用いてプレートを(5回)洗浄した後に、それぞれのウェルに100μLのTMBを添加し、室温で5〜20分間インキュベートした。それぞれのウェルの450nmでの吸光度を、VersaMax・マイクロプレート・リーダー(Molecular devices、Sunnyvale,CA)を用いて測定した。


図A:2種の異なった様式で調製して3種の異なった温度で保存した絹膜中での初期活性に対する抗体IgG1活性


図B:2種の異なった様式で調製して3種の異なった温度で保存した絹膜中での初期活性に対する抗体IgG活性

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ナノパターンが形成された表面を有する基材を提供する工程と、
前記基材の前記ナノパターンが形成された表面の上に、バイオポリマーを含むバイオポリマーマトリックス溶液をキャストする工程と、
前記バイオポリマーマトリックス溶液を乾燥させて、前記基材の上に、その上にナノパターンを有する表面を伴って形成された固化したバイオポリマー膜を形成させる工程と
を含む、ナノパターンが形成されたバイオポリマー光学デバイスの製造方法。
【請求項2】
バイオポリマーを提供する工程と、
前記バイオポリマーを加工して、前記バイオポリマーマトリックス溶液を得る工程と
をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記固化したバイオポリマー膜をアニールする工程をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記固化したバイオポリマー膜をアニールする前記工程が、真空環境および水蒸気環境の内の少なくとも一つの中で実施される、請求項2に記載の方法。
【請求項5】
前記基材が、光学デバイスのためのテンプレートである、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記基材が、レンズ、マイクロレンズアレイ、光学格子、パターン発生器、およびビームリシェーパーの少なくとも一つのためのテンプレートである、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記バイオポリマーが絹である、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記バイオポリマーマトリックス溶液が、約1.0重量%以上30重量%以下の絹を含む絹フィブロイン水溶液である、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記絹フィブロイン水溶液が、およそ8.0重量%の絹を含む、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
バイオポリマーが、キトサン、コラーゲン、ゼラチン、アガロース、キチン、ポリヒドロキシアルカノエート、プラン、デンプン(アミロース アミロペクチン)、セルロース、ヒアルロン酸、および関連するバイオポリマーからなる群、またはそれらの組合せから選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
前記固化したバイオポリマー膜の中に有機物質を包埋させる工程をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
前記バイオポリマーマトリックス溶液に有機物質を添加する工程をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
有機物質が、赤血球、セイヨウワサビペルオキシダーゼ、およびフェノールスルホンフタレインからなる群、またはそれらの組合せから選択される、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
有機物質が、核酸、色素、細胞、抗体、酵素、たとえば、ペルオキシダーゼ、リパーゼ、アミロース、オルガノホスフェートデヒロドゲナーゼ、リガーゼ、制限エンドヌクレアーゼ、リボヌクレアーゼ、DNAポリメラーゼ、グルコースオキシダーゼ、ラッカーゼ、細胞、ウイルス、タンパク質、ペプチド、小分子、薬剤、色素、アミノ酸、ビタミン、抗酸化剤、DNA、RNA、RNAi、脂質、ヌクレオチド、アプタマー、糖質、発色団、発光性有機化合物、たとえばルシフェリン、カロチン、および発光性無機化合物、化学色素、抗生物質、抗真菌剤、抗ウイルス薬、集光性化合物、たとえばクロロフィル、バクテリオロドプシン、プロトロドプシン、およびポルフィリン、ならびに関連する電子的に活性な化合物からなる群、またはそれらの組合せから選択される、請求項12に記載の方法。
【請求項15】
前記基材の上にナノパターンを機械加工する工程をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項16】
前記基材の上にナノパターンを機械加工する工程が、レーザーを使用して実施される、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記機械加工する工程が、レーザーによって発生されるフェムト秒レーザーパルスによって実施される、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
その上にナノパターンを有する表面を持つ固化したバイオポリマー膜を含む、ナノパターンが形成されたバイオポリマー光学デバイス。
【請求項19】
レンズ、マイクロレンズアレイ、光学格子、パターン発生器、およびビームリシェーパーの少なくとも一つである、請求項18に記載のナノパターンが形成されたバイオポリマー光学デバイス。
【請求項20】
前記固化したポリマー膜が絹である、請求項18に記載のナノパターンが形成されたバイオポリマー光学デバイス。
【請求項21】
前記固化したバイオポリマー膜が、キトサン、コラーゲン、ゼラチン、アガロース、キチン、ポリヒドロキシアルカノエート、プラン、デンプン(アミロース アミロペクチン)、セルロース、ヒアルロン酸、および関連するバイオポリマーからなる群、またはそれらの組合せから選択される、請求項18に記載のナノパターンが形成されたバイオポリマー光学デバイス。
【請求項22】
前記固化したバイオポリマー膜の中に包埋された有機物質をさらに含む、請求項18に記載のナノパターンが形成されたバイオポリマー光学デバイス。
【請求項23】
有機物質が、赤血球、セイヨウワサビペルオキシダーゼ、およびフェノールスルホンフタレインからなる群、またはそれらの組合せから選択される、請求項22に記載のナノパターンが形成されたバイオポリマー光学デバイス。
【請求項24】
有機物質が、核酸、色素、細胞、抗体、酵素、たとえば、ペルオキシダーゼ、リパーゼ、アミロース、オルガノホスフェートデヒロドゲナーゼ、リガーゼ、制限エンドヌクレアーゼ、リボヌクレアーゼ、DNAポリメラーゼ、グルコースオキシダーゼ、ラッカーゼ、細胞、ウイルス、タンパク質、ペプチド、小分子、薬剤、色素、アミノ酸、ビタミン、抗酸化剤、DNA、RNA、RNAi、脂質、ヌクレオチド、アプタマー、糖質、発色団、発光性有機化合物、たとえばルシフェリン、カロチン、および発光性無機化合物、化学色素、抗生物質、抗真菌剤、抗ウイルス薬、集光性化合物、たとえばクロロフィル、バクテリオロドプシン、プロトロドプシン、およびポルフィリン、ならびに関連する電子的に活性な化合物からなる群、またはそれらの組合せから選択される、請求項22に記載のナノパターンが形成されたバイオポリマー光学デバイス。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7A】
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【図7B】
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【図7C】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11A】
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【図11B】
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【図11C】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【公表番号】特表2010−509645(P2010−509645A)
【公表日】平成22年3月25日(2010.3.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−536422(P2009−536422)
【出願日】平成19年11月5日(2007.11.5)
【国際出願番号】PCT/US2007/083642
【国際公開番号】WO2008/127404
【国際公開日】平成20年10月23日(2008.10.23)
【出願人】(303043726)トラスティーズ オブ タフツ カレッジ (26)
【Fターム(参考)】