説明

ナノワイヤ支援レーザー脱離/イオン化質量分析

本発明は試料のナノワイヤ支援質量分析方法に関する。さらに詳しくは、試料を固定し、照射される試料にレーザーエネルギーを効果的に伝達しながら試料の脱離/イオン化を行うことができるナノワイヤを用いることにより、それによって、マトリクス溶液なしで試料の質量分析を行うことを可能にする。本発明は、上記のナノワイヤを使用して効果的に試料の脱離/イオン化を行うことにより、低分子量の試料と同様に、試料の定性的、定量的、及び微量分析を効果的に行うことを可能にする。さらに、本発明はMALDI−Tof MSで用いられる典型的な質量分析計にも可能である。特に、本発明は、1000Daより小さい分子量の試料の質量分析を行うことができ、所定の領域に試料を固定すて定量的に分析を行うことができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は試料のナノワイヤ(nanowire)支援質量分析方法に関する。さらに詳しくは、本発明は、ナノワイヤを用いることにより、試料を固定し、照射される試料にレーザーエネルギーを効果的に伝達しながら試料の脱離/イオン化を行うことができ、それによって、マトリクス溶液なしで試料の質量分析を行う。
【背景技術】
【0002】
質量分析計は化合物の質量を測定する分析機器である。それは、一般的に、荷電させて化合物をイオン化することにより、質量対電荷(mass-to-charge;m/z)の値を測定することによって化合物の分子量を決定する。電子ビームを用いた電子イオン化、高速の原子の衝突、レーザーを用いた方法、及び試料を電場の中にスプレーする方法など、化合物をイオン化するためのたくさんの方法がある。
【0003】
タンパク質や核酸などの極めて大きな質量を有する生物化学的物質に対して、レーザーを用いるMALDI−Tof質量分析(マトリクス支援レーザー脱離/イオン化飛行時間質量分析;以降MALDIとする)が使用され、最近この種の様々な分析機器が開発され、現時点で購入することができきる。これらの機器は、分析しようとする物質へのエネルギーの伝達を支援するだけでなく、物質のイオン化を促進するマトリクスを用いることにより、分子量300kDa以上のポリマーの分子量を測定できる。さらに、それらの相対的に高い感度に起因して、フェムトモルレベルでの試料の分析が可能であり、イオン化工程における化合物の破損を大きく減少して混合物の分析を可能にするための助けともなる。
【0004】
MALDI支援質量分析のために、試料は下記のように準備される。
【0005】
(1)少量のマトリクス溶液を金属プレートからなるターゲット板上に加え、乾燥させ、それから、分析しようとする試料溶液をさらにその上に加えて乾燥させる。あるいは、
マトリクス物質を試料溶液に混合した後、ターゲットプレートに置き、結晶化させる。
【0006】
(2)マトリクスと結晶化した試料の領域にレーザーを照射し、マトリクスに支援されて試料が離脱/イオン化する。
【0007】
典型的な質量分析計は、イオン化した試料が電位の差異によりセンサー側に移動するように、試料が位置したターゲットプレートと質量分析用センサーの間に電場を印加する構造を有する。試料の電荷量が既知である場合、試料がセンサーに到着するのに要した時間などの変数を基にして試料の質量を分析することができる。
【0008】
上記のMALDI法は質量分析に大変有用であるが、試料の性質によってイオン化に適合したマトリクス物質を選択することがまた必要である。マトリクス物質の例は、ニコチン酸、桂皮酸、2,5−ジヒドロキシ安息香酸などである。これらのマトリクス物質は照射するエネルギーを吸収することでプロトンを発生させ、それを試料に結合させ、それによって試料のイオン化を促進することが知られている。しかし、正確なイオン化メカニズムはまだ解明されておらず、従って与えられた試料に適合したマトリクス物質を選定することは手腕を問われるところである。
【0009】
さらに、MALDIは、レーザーにより活性化されたマトリクスにより試料がイオン化される過程で、低分子量マトリクスとマトリクス分解性生物が質量分析スペクトル上に示されるため、その使用は1000Daより大きな分子量を有する物質に大きく制限されるという不利益を有する。
【0010】
また、マトリクスの選定によって分解生成物のイオン化が決定されるため、より適切なマトリクス物質の選定が必要となり、混合物の中の未知物質の分析を行うのは困難である(非特許文献1)。
【0011】
また、MALDI法は、試料の準備工程で得られた結晶化した試料の空間的分布が均一ではなく、従って、照射位置によってレーザーにより励起される試料の量が変化するという不利益を有する。従って、適切な定量分析のために、様々な位置を照射して得られた様々な結果が統計的に解釈される。MALDI法での定量分析に対して広く知られた方法は、分析しようとする化合物とほとんど同一構造を有する化合物に放射性同位元素でラベルした内部標準物質を一定の比率で混合してスペクトルを測定する方法が知られている(非特許文献2)。しかし、上記の方法でもMALDI法では試料の正確な定量分析を行うことは困難である。
【0012】
マトリクスを使用せずに試料の脱離/イオン化のエネルギー源としてレーザーを使用する質量分析法として、DIOS MS(Desorption Ionization on Silicon Mass Spectroscopy;以下DIOSとする)が知られている。一般的に、DIOSはマトリクスなしに多孔質シリコンをターゲットとして用いる試料の質量分析方法である。多孔質シリコンは電気エッチングにより形成され、多孔性と酸化の程度の調節によりDIOSが可能となる。DIOSに使用される多孔質シリコンは、マトリクスと同様にレーザーエネルギーを吸収することで試料のイオン化を供すると考えられているが、試料の離脱/イオン化のための正確なエネルギー伝達経路はまだ知られていない。
【0013】
DIOSはマトリクスを使用しなくても、相対的に低い分子量の化合物と同様に、タンパク質、核酸などの高い分子量の物質の定量分析を行うことを可能にすると知られている(特許文献1、非特許文献3、非特許文献4)。
【特許文献1】米国特許第6,288,390号B1
【非特許文献1】G. Suizdak, 1. Ion sources and sample introduction, In: Mass spectroscopy for biotechnology, Acedemic press, 1996, p13
【非特許文献2】M.J. Kang, E. Heinzle, Rapid Communications in Mass Spectrometry, 15(2001) 1327-1333
【非特許文献3】J. Wel, J. M. Burlak, G. Suizdak, Nature, 399(1999) 243-246
【非特許文献4】W.G. Lewis, Z. Shen, M.G. Finn, G. Suizdak, International Journal of Mass spectrometry, 226(2003) 107-116
【非特許文献5】1.J. Johnson, Heon-Jin Choi, K.P. Knutsen, R.D. Schaller, P. Yang, R.J. Saykally, “Single Gallium Nitride Nanowire Laser,” Nature Materials, 1, 2, 106-110 (2002)
【非特許文献6】J.M. Bermond, N, Lenoir, J.P. Prulhiere, M. Drechsler, Sur. Sci. 42, 306 (1974)
【非特許文献7】V.E. Frankevich, J. Zhang, S.D. Friess, M. Dashtiev, R. Zenobi, Anal. Chem. 2003, 75, 6063
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
一方、DIOSの場合、多孔質シリコン基板に試料溶液を注入する過程で、試料溶液が多孔質構造に浸透して結晶化し、このように、結晶のサイズを制限することを困難にしており、また、レーザー照射点に試料の結晶の中心を一致させることも難しい。このような理由により、1〜2回の試料測定を通した定量分析はほとんど不可能である。また、シリコンのみ適用可能であるため、様々な種類の試料に適合したエネルギー伝達媒体を選択することができない。また、レーザーエネルギーが2次元的にのみ伝達されるため、効果的な脱離/イオン化が困難となる。
【課題を解決するための手段】
【0015】
従って、上述の問題を解決するために、本発明は、従来の多孔質シリコンに代わって用いられるナノワイヤが、試料を固定でき、効果的にレーザーエネルギーを照射される試料に伝達して、マトリクス溶液を用いることなく試料の質量分析を行うことを可能にする、ナノワイヤ支援レーザー脱離/イオン化質量分析の方法を提供する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
(発明の詳細な説明)
以下、本説明を詳しく説明する。
【0017】
本発明の実施形態において、レーザーをエネルギー源として用いる脱離/イオン化による試料のナノワイヤ支援質量分析方法が提供され、
(a)電圧を印加することができる導電体または半導体の基板上の選択された領域に多数の微細なナノワイヤを成長させることによりナノワイヤスポットを形成する工程と、
(b)分析しようとする物質を含む試料をナノワイヤスポットに配置し、乾燥により結晶化させる工程と、
(c)基板に電圧を印加した状態で、減圧下で試料がナノワイヤに吸着及び結晶化したナノワイヤスポット上に同時にレーザーを照射して、ナノワイヤを通してエネルギーを試料に伝達して、イオン化された分析しようとする物質の質量分析を行う工程と
を有する。
【0018】
本発明の他の実施形態において、レーザーをエネルギー源として用いる脱離/イオン化による試料のナノワイヤ支援質量分析方法が提供され、
(a)多数の微細なナノワイヤを含有するナノワイヤ懸濁液を形成する工程と、
(b)電圧を印加することができる導電体または半導体の基板上の選択された領域に塗布されたナノワイヤ懸濁液を乾燥させてナノワイヤアイレット(islet)を形成する工程と、
(c)分析しようとする物質を含む前記試料をナノワイヤスポットに配置し、それの乾燥により結晶化させる工程と、
(d)前記基板に電圧を印加した状態で、減圧下で試料がナノワイヤに吸着及び結晶化した前ノワイヤスポット上に同時にレーザーを照射して、ナノワイヤを通してエネルギーを前記試料に伝達して、イオン化された分析しようとする物質の質量分析を行う工程と
を有する。
【0019】
本発明のさらに他の実施形態において、レーザーをエネルギー源として用いる脱離/イオン化による試料のナノワイヤ支援質量分析方法が提供され、
(a)多数の微細なナノワイヤと分析しようとする物質を含有する試料溶液を混合してナノワイヤ懸濁液を形成する工程と、
(b)電圧を印加することができる導電体または半導体の基板上の選択された領域に塗布されたナノワイヤ懸濁液を乾燥させて、ナノワイヤと前記ナノワイヤに吸着及び結晶化した試料を有するナノワイヤアイレット(islet)を形成する工程と、
(c)基板に電圧を印加した状態で、減圧下でナノワイヤスポット上に同時にレーザーを照射して、前記ナノワイヤを通してエネルギーを試料に伝達して、イオン化された分析しようとする物質の質量分析を行う工程と
を有する。
【0020】
添付の図面を参照して本発明をさらに詳しく説明する。
【0021】
本発明は、従来の多孔質シリコンの代わりに用いられるナノワイヤが、試料を固定し、照射される試料にレーザーエネルギーを効果的に伝達して、マトリクス溶液を用いずに試料の質量分析を行うことを可能にする、試料のナノワイヤ支援レーザー脱離/イオン化質量分析(NADI MS:Nanowire-Assisted Laser Desorption/Ionization Mass Spectrometric Analysis;以下NADIとする)の方法に関する。
【0022】
本発明の好ましい実施形態を以下に記載する。
【0023】
まず、基板上の選択された領域に多数の微細なナノワイヤを成長させ、それらは典型的なMALDI工程に用いられることができ、それらからナノワイヤスポットを形成する。ここで用いられる基板は電圧を印加することができる導電体または半導体の基板である。ナノワイヤは直径が500nm以下でアスペクト比が10以上であることが好ましい。直径が500nmを超えてナノワイヤが成長すると、照射されるレーザーエネルギーを増幅することや、あるいは試料内で分布を均一化させることが困難となり、一方、アスペクト比が10より小さくナノワイヤが成長すると、照射されるレーザーエネルギーを増幅させながらエネルギーを効率的に伝達することが難しくなる。
【0024】
ナノワイヤは、シリコンを含有する単一金属、酸化物、炭化物、窒化物、リン化物およびヒ化物半導体ナノワイヤからなる群から選択される。また、定量的観点から、ナノワイヤスポットの面積が試料の脱離/イオン化のために照射される面積と等しく、または、小さくなるように形成することが好ましい。
【0025】
それから、ナノワイヤに吸着し、乾燥により結晶化できるように、分析しようとする物質を含む試料が、MALDI工程における方法を用いてナノワイヤが成長した領域に配置される。試料は塩と分析しようとする物質を有し、塩の濃度は10mMより大きく、一方で分析しようとする物質の濃度は試料中に1フェムトモルより小さく含まれる。
【0026】
それから、MALDI工程で使用される機器と同様な真空状態で、ナノワイヤと結晶化した試料が吸着した基板がナノワイヤスポット上にレーザー照射され、一方、その間同時に、基板に電圧が印加された状態で、イオン化された試料が質量分析にかけられる。ここで、脱離/イオン化した試料は、質量分析を行うため、基板と分析用センサー間に印加された電場によりセンサーに移動される。
【0027】
本発明の別の好ましい実施形態を以下に記載する。
【0028】
まず、所定の基板に多数の微細なナノワイヤを成長させ、このナノワイヤを基板から分離し、ナノワイヤ物質の種類に従って蒸留水、水溶液またはアルコールなどの揮発性溶液と混合してナノワイヤ懸濁液を形成する。例えば、ナノワイヤを成長させた基板(以下、ナノワイヤチップとする)を揮発性溶液の中に入れ、超音波を印加してナノワイヤを基板から分離することにより、ナノワイヤ懸濁液を調製することができる。または、ナノワイヤを成長させた基板からナノワイヤをスクラッチング(scratching)により分離し、基板にスプレーするための揮発性溶液と混合することにより、ナノワイヤ懸濁液を調製することができる。ここで、第1の好ましい実施形態のように、各ナノワイヤは直径が500nm以下でアスペクト比が10以上であることが好ましい。さらに、ナノワイヤは、シリコンを含有する単一金属、酸化物、炭化物、窒化物、リン化物およびヒ化物半導体ナノワイヤからなる群から選択される。
【0029】
それから、典型的なMALDI工程において使用できる基板の選択された領域上に上記のナノワイヤ懸濁液をスプレーし、乾燥して、ナノワイヤアイレットを形成する。用いられる基板は、電圧を印加することができる導電体または半導体の基板である。さらに、ナノワイヤ懸濁液を基板上の選択された領域にスプレーすることによってナノワイヤアイレットを形成することができる。また、ナノワイヤアイレットの面積を、試料の脱離/イオン化のためのレーザーで照射される面積と等しく、または、小さくすることが好ましい。
【0030】
それから、質量分析のための物質を含む試料溶液を上述のナノワイヤアイレット上に塗布し、乾燥させ、結晶化させる。ここで、スプレー領域内で試料を保持するケージ(cage)として働くナノワイヤに試料が吸着されるようになって、結晶化された試料とナノワイヤとの混合物が適切に位置付けられる。試料は塩および分析しようとする物質とで構成される。好ましくは、塩の濃度は10mMより大きく、一方で分析しようとする物質の濃度は1フェムトモルより小さく含有される。
【0031】
それから、MALDI工程で使用される機器と同様な真空状態で、ナノワイヤと試料が脱離/結晶化した基板がナノワイヤアイレット上にレーザー照射され、一方、その間同時に、基板に電圧が印加された状態で、イオン化された試料が質量分析にかけられる。ここで、脱離/イオン化した試料は、質量分析を行うため、基板と分析用センサー間に印加された電場によりセンサーに移動される。
【0032】
本発明のまた別の好ましい実施形態を下記に記載する。
【0033】
まず、所定の基板に多数の微細なナノワイヤを成長させ、このナノワイヤを基板から分離し、分析しようとする物質を含む試料溶液と混合して、最終的にナノワイヤ懸濁液を調製する。例えば、ナノワイヤを成長させた基板(即ち、ナノワイヤチップ)を揮発性溶液に入れ、超音波を印加してナノワイヤを基板から分離させ、試料溶液が添加されることにより、ナノワイヤと試料を含むナノワイヤ懸濁液を調製することができる。または、ナノワイヤを成長させた基板からナノワイヤをスクラッチングにより分離して、基板へのスプレーを可能にする揮発性溶液と混合することにより、ナノワイヤ懸濁液を調製することができる。ここで、第1の好ましい実施形態のように、各ナノワイヤは直径が500nm以下でアスペクト比が10以上であることが好ましい。さらに、ナノワイヤは、シリコンを含む単一金属、酸化物、炭化物、窒化物、リン化物およびヒ化物半導体ナノワイヤからなる群から選択される。上記の試料は塩および分析しようとする物質とで構成される。好ましくは、塩の濃度は10mMより大きく、一方で分析しようとする物質の濃度は1フェムトモルより小さく含有される。
【0034】
それから、典型的なMALDI工程で使用できる基板の選択された領域に上記のナノワイヤ懸濁液をスプレーして乾燥させてナノワイヤアイレットを形成し、試料を結晶化させる。使用される基板は電圧を印加することができる導電体または半導体の基板である。さらに、ナノワイヤ懸濁液を基板上の選択された領域にスプレーすることによってナノワイヤアイレットを形成することが可能である。さらに、ナノワイヤアイレットの面積を、試料の脱離/イオン化のためのレーザーで照射される面積と等しく、または、小さくすることが好ましい。
【0035】
上記の好ましい実施形態に記載のように、ナノワイヤの種類によってナノワイヤのバンドギャップより大きいエネルギーを有するレーザーを用いて照射が施され、また、真空圧、即ち雰囲気圧力は10−16torrより低く設定される。
【0036】
さらに、基板上に電圧を印加する際、約5,000V〜30,000Vが印加され、分析しようとするイオン化物質を質量分析する過程でイオンの質量/電荷の値(m/z)を測定する。
【0037】
上述のNADI工程において、マトリクスなしにナノワイヤにより提供される効率的な試料の脱離およびイオン化の基本的原理を詳しく下記に説明する。
【0038】
ナノワイヤは、レーザー照射に曝されると、エネルギーを吸収して光子(photon)を生成することができ、ここで、ナノワイヤ自身は光子を増幅させることができるキャビティ(cavity)構造を有する(非特許文献5)。従って、ナノワイヤは外部から伝達されたレーザーエネルギーを自然に増幅でき、誘導放出の形態で増幅したエネルギーを試料に再び伝達することができる。従って、どんな形態の他のエネルギー伝達媒体よりも最も効率的にエネルギーを試料に伝達することができ、それによって比較的容易な試料の脱離/イオン化を促進できる。
【0039】
本発明で用いられるナノワイヤは、数(few)ナノメートルの直径と比較的大きなアスペクト比を有する針状の形状である。従って、ナノワイヤの両端は原子のレベルで非常に鋭い先端である。これらの幾何学的な構造は、質量分析用の装置で基板とセンサーの間に電場をかけると、ナノワイヤの前方の先端(front tip)に極めて高い電場を生成でき、ナノワイヤの前方の先端の高い電場は電界脱離(field desorption)を引き起こし、それによって試料の脱離/イオン化を可能にする。さらに、レーザー照射されると、それらはレーザに誘起されてナノワイヤの前方の先端に比較的高い電場を生成できる(非特許文献6)。極めて高い局在の電場の生成は、ナノワイヤの前方の先端における脱離/イオン放出の放出を加速することができ、それによって試料の脱離/イオン化を容易にする。
【0040】
さらに、ナノワイヤの前方の先端の幾何学的な形状は、電場が印加されたときに電子の放出を可能にし、この電子放出が試料のイオン化を容易にする(非特許文献7)。
【0041】
従来の多孔性シリコンを用いるDIOSの場合、多孔性構造に試料溶液を注入して乾燥するため、試料への二次元的なレーザー照射のみが可能である。しかし、本発明においては、多孔性シリコンとは異なって、ナノワイヤ上に形成された結晶化された試料はレーザーに3次元的に曝され、このように試料にレーザーエネルギーをより効果的に伝達でき、これによってより効果的な脱離/イオン化が行われる。
【0042】
上述のように、ナノワイヤの使用は効果的な試料へのエネルギー伝達を可能にし、容易な脱離/イオン化を促進し、従ってマトリクスなしでの質量分析を可能とする。
【0043】
また、本発明によるNADI工程において、結晶化された試料内の試料分布は、より正確なデータを保証する。即ち、ナノワイヤの使用は、基板上の触媒のパターンにより成長位置を正確に制御することができる。例えば、本発明における基板上にナノワイヤを成長させる工程で、特に(ナノワイヤスポットの形成における)シリコンのナノワイヤを成長させるとき、スパッタリング気相成長によりマスクを用いて触媒として働く金属であるAuを円形形状の所定の厚み及び直径を持つようにシリコン基板の表面に成長させた後、化学気相成長(CVD)によりシリコン基板上に500℃でSiClを供給することによりシリコンナノワイヤを成長させることができる。
【0044】
または、InNナノワイヤを成長させる場合、スパッタリング気相成長によりマスクを用いて触媒として働く金属であるAuを円形形状の所定の厚み及び直径を持つようにシリコン基板の表面に成長させた後、化学気相成長によりシリコン基板上に500℃でInCl及びNHを供給することによりInNナノワイヤを成長させることができる。
【0045】
さらに、ナノワイヤが成長したところに試料を位置させるとき、ナノワイヤが、試料が結晶化されるまで液体試料を保持する3次元的なケージの役割を果たし、それによってナノワイヤが位置するところに試料の結晶中心を形成する。試料の結晶中心のサイズが照射されるレーザーの直径と等しいサイズに調節されると、1〜2回のみのレーザー照射が試料の脱離/イオン化を十分に促進し、それが分子量の測定を可能にして、このようにして定量的な分析が可能となる。
【0046】
あるいは、ナノワイヤ溶液を用いる場合、広げられたナノワイヤが乾燥過程で試料を固定するケージの役割を果たし、これによって、レーザーの直径サイズ内で試料を固定することが可能となる。従って、1〜2回のみのレーザー照射が試料のイオン化を十分に促進し、それが分子量の測定を可能にして、このようにして定量的な分析が可能となる。
【0047】
典型的な多孔性シリコンは工程のために適切な物質の選択に制限があり、従ってレーザーエネルギーを効果的に利用するのにも制限がある。反対に、本発明によるナノワイヤを用いた脱離/イオン化法の場合、試料に伝達されるレーザーエネルギーは、様々なエネルギーギャップを有するナノワイヤを使用して望まれるエネルギーレベルの範囲内で適切に調製可能である。
【0048】
典型的な多孔性シリコンを利用したDIOSの場合、多孔性構造が制限された領域のみで使用されるという不利益がある。即ち、試料溶液の注入及び乾燥の過程で試料溶液が多孔性構造に浸透して結晶化し、このために、試料の結晶のサイズは制限されない。反対に、本発明によるNADIの場合、試料はナノワイヤケージを用いて結晶化し、これによって試料の結晶サイズを制限することができる。
【0049】
また、ナノワイヤを用いる本発明のNADIでは、使用済みターゲットのリサイクルが難しい典型的な多孔性シリコンを用いるDIOSの場合と異なり、ターゲットとして従来の金属プレート(plate)を用いることにより適切な洗浄後に使用済みターゲットをリサイクルすることができる。
【0050】
DIOSの場合、DIOSの効率は酸化により悪化すると報告がなされており、従って密閉された状態で保管されなければならない。しかし、ナノワイヤを使用したターゲットプレートは酸化した生成物の使用が可能で、従って簡易な包装が可能となり、また、大気中での長期保管が可能となる。
【0051】
NADI法を使用してマトリクスがなくても質量分析が可能であることを示すため、ZnOナノワイヤチップおよびペプチドを使用して実験を行った。シリコン基板の表面にスパッタリング気相成長法により触媒の役割をするAuを2nmの厚さで所定の領域に蒸着させ、化学気相成長法により500℃でジエチル亜鉛(diethylzinc)と酸素を供給し、それによってZnOナノワイヤの選択した領域への成長をallowすることにより、ZnOナノワイヤチップを形成した。このように形成されたナノワイヤを有する基板が質量分析計の試料検査プレートに挿入されたターゲットプレートを図1に示すように形成した。
【0052】
図1において、参照番号1は検査プレート、参照番号2はターゲットプレート、参照番号3は基板、参照番号4はナノワイヤスポットを示す。また、図1(a)は、ZnOナノワイヤスポットが形成された基板と、この基板が質量分析計の試料検査プレートに挿入されたターゲットプレートの写真を示す。図1(b)と(c)は、走査電子顕微鏡で撮影された成長したナノワイヤの拡大した写真を示す。ナノワイヤスポット(4)上に成長したに対するZnOの成長条件を、平均直径100nm、平均長さ3μm、平均密度約1×106ナノワイヤ(NWs)/mm2に制限した。ナノワイヤスポット(4)の直径を0.2mmに制限し、試料の結晶は試料のイオン化のためにレーザーの円形スポット(直径0.2mm)により照射された。上述のように、試料結晶の大部分がレーザーに曝され、従って、試料の結晶表面を通してイオン化した試料の量が試料の濃度と定量的な関係を持つようにした。
【0053】
質量分析には、Bruker Daltonics社(ドイツ)のリフレックス3を使用した。
【0054】
試料としては、ペプチドであるアンギオテンシン(MW1014、Sigma Chemical社、米国)とロイシンエンケファリン(MW588、Sigma Chemical社、米国)を各々使用した。
【0055】
図2は、ZnOナノワイヤ上に試料なしにレーザーを照射した後の分子量ピークを示したグラフである。図2に示すように、ZnOナノワイヤは試料のピークと混乱させうる分子量ピークを生成しない。
【0056】
図3は、ロイシンエンケファリンをZnOナノワイヤチップに各々0.13、0.25、0.50、及び1.0mg/mLの濃度でそれぞれ加えた後、質量分析を行った結果を示す。上記の結果から、ZnOナノワイヤチップを用いて質量分析が可能であることが分かった。また、ZnOナノワイヤチップの各々の濃度に対する質量比較の結果は、ロイシンエンケファリンの分子量に対するピークの高さと上記の濃度が定量関係を有することを示す。
【0057】
図4は、アンギオテンシンをZnOナノワイヤチップに各々0.25、0.50、1.0mg/mlの濃度でそれぞれ加えた後、質量分析を行った結果を示す。ロイシンエンケファリンの場合のように、質量比較の結果はアンギオテンシンの分子量に対するピークの高さと上記の濃度が定量関係を有することを示す。
【0058】
上述のように、本発明によるナノワイヤチップのターゲットプレートを用いるとき、マトリクスなしに質量分析を行うことが可能であり、また、定量分析が可能であることも示す。比較のために同一試料と典型的な金属ターゲットプレートを用いて質量分析を行ったところ、胆管癌(CCA)をマトリクスとして使用した場合にはCCA自体のピークとペプチドのピークがともに得られたが、マトリクスを使用しなかった場合は高濃度の試料でも分子量ピークが得られなかった。即ち、典型的な金属ターゲットプレートをマトリクスなしで用いる場合、試料の質量分析は不可能であった。
【0059】
一方、典型的なマトリクスを使用せずに質量分析が行える多孔性シリコンを用いたDIOS法において、シリコンを除いて他の物質を使用することができないため、用いるエネルギー伝達のための物質に制限がある。反対に、本発明のMALDIターゲットを用いると、多様なエネルギーギャップを有するナノワイヤ物質を選択することが可能であり、従って試料に応じて望まれる範囲内でレーザーエネルギーが伝達されるのを制御することができる。下記の表1に、種々のナノワイヤ物質に応じたバンドギャップに基づくDIOSとペプチドを使用したDIOS実験の実施を示す。
【0060】
【表1】

【0061】
本発明において、ナノワイヤスポットの代わりに、定量分析のための典型的なMALDIにおいて用いられる金属ターゲットプレートによるナノワイヤ懸濁液を用いる方法を提供する。この方法は、金属ターゲットプレートを変性せずに用いることにより、ナノワイヤスポットを用いずに、マトリクスのピークの干渉なしに、1000ダルトンの分子量の範囲で質量分析を行うことを可能にする。
【0062】
上述のナノワイヤチップを使用した定量実験で説明したように、試料の結晶中心がレーザー照射に対応できるように、金属ターゲットプレートの1つのスポットに焦点を決めてナノワイヤアイレットを形成し、また、この目的のために、アンカー(ankers)が配列されたターゲットプレート(MTPプレート、Bruker社、ドイツ)を使用した。
【0063】
水溶液の試料の場合、ターゲットプレートのアンカー点は、試料の溶媒が乾燥して結晶を形成する位置である。本発明において、水溶液中で調製されたナノワイヤ懸濁液の溶媒が乾燥してくる一方で、ナノワイヤアイレットがこのようなアンカー点に多量に形成されるようにした。即ち、ナノワイヤ懸濁液を揮発性イソプロンパノールと混合し、それを金属ターゲットプレートに分注することによりナノワイヤアイレットを形成した。さらに、ナノワイヤアイレットに少量の試料を分注し、その後に乾燥させることで試料の結晶を形成した。図5において、ZnO、SiC、SnO、GaNのナノワイヤ懸濁液を使用した。ここで、シリコン基板に約5000NWs/mmの密度で成長させたナノワイヤチップ(ナノワイヤを成長させた基板)を蒸留水に入れ、超音波を印加してナノワイヤを分離し、それによって上記の材料のナノワイヤおよび蒸留水のナノワイヤ懸濁液を形成した。
【0064】
図5は、上記の4つの異なる種類のナノワイヤを用いて得られたペプチドの分子量ピークを示す。上述のアンカーが配列されたターゲットプレート上にナノワイヤアイレットを形成した後、ペプチドであるロイシンエンケファリン(分子量1014、Sigma Chemical社、米国)を0.5mg/mLの濃度で調製し、それから各ナノワイヤアイレットに10μLずつ加え、室内で乾燥させた。質量分析のために、Bruker Daltonics社(ドイツ)のリフレックス3を使用した。
【0065】
多孔性シリコンは、酸化によりDIOSの効率が著しく落ちるという報告がなされており、従って商品化された多孔性シリコンからなるDIOS用ターゲットプレートは使い捨てとしてアルゴンを使用して個別に包装されている。上記の表1に示すように、ナノワイヤを用いたターゲットプレートは酸化した生成物の使用が可能であり、このために相対的な簡易な包装を提供でき、また、大気中で長期保管することも可能である。また、典型的金属プレートにおいてナノワイヤが用いられている本発明のターゲットプレートにおいて、適切な洗浄の後で再使用が可能である。反対に、多孔性シリコンを用いたDIOS用ターゲットプレートにおいては、多孔質シリコンの構造上の問題から使用済みのターゲットプレートにおいて試料結晶を洗浄することはできない。従って、多孔性シリコンの使用のためのDIOSターゲットプレートは一度使用したら廃棄される。反対に、ナノワイヤを用いたターゲットプレートにおいては、ターゲットプレートは、蒸留水、イソプロピル・アルコール、アセトンなどで順番に洗浄した後、再使用が可能であり、それは金属ターゲットプレートと同様である。
【0066】
図6は、ZnOナノワイヤチップを10回洗浄したリサイクルの後での、0.5mg/mLの濃度のロイシンエンケファリン(分子量1014、Sigma Chemical社、米国)の質量分析の結果を示す。結果は、洗浄後にナノワイヤチップを再使用することが可能であることを明確に示す。
【0067】
また、典型的な金属ターゲットを用い、ナノワイヤと試料を混合して形成された懸濁液を、MALDIターゲット基板にスプレーするとき、得られる試料は均一に分布して、結晶がレーザーエネルギーを効果的に吸収することができる。従って、これを考慮すると、再使用が可能な典型的なMALDIターゲットの独特な特徴を保持しながら、優れた質量分析の効果を達成することができる。
【0068】
本発明の上記及び他の目的及び特徴が、添付の図面に関連付けして、本発明の下記の記載から明らかになるだろう。
【0069】
以下、本発明の脱離/イオン化によるナノワイヤを用いた質量分析方法が、下記の実施例を基に以下に記載されるが、それらは本発明の範囲を限定するように解釈されるべきではない。
【0070】
(実施例)
(実施例1) ナノワイヤを用いた質量分析
シリコン基板の表面にスパッタリング気相成長法によりAuを2nmの厚さで堆積させ、ここで、堆積の領域はマスクを用いて直径200μmの円形に形成した。それから、化学気相成長法(CVD)により、基板にSiClを500℃で供給し、それによってシリコンナノワイヤが成長し、図1は基板上に成長したシリコンナノワイヤを示す。用いたシリコンナノワイヤは、長さが5μm、直径が100nm、密度が約1.8×10NWs/mmに制限した。このようにナノワイヤを成長させた基板を質量分析計の試料検査プレートに挿入した。質量分析は、Bruker Daltonics社(ドイツ)のリフレックス(Reflex)3を使用して行った。用いた試料は2種類のペプチド、アンギオテンシンとロイシンエンケファリンであった。ナノワイヤスポットの直径を0.2mmに制限し、試料のイオン化のために、レーザーの円形スポット(直径0.2mm)で試料の結晶を照射した。上記のように、試料の結晶の大部分がレーザーに曝され、このように、イオン化した試料の量は試料の量と定量的な関係を有するようにした。検査で、マトリクスなしでナノワイヤ試料プレートを用いたMALDIによるペプチドの質量分析が見出された。結果の比較のために質量分析計の試料検査プレートを使用したとき、ペプチドの質量分析を行うことはできなかった。また、実験結果から上記の方法で試料の定量が可能であることが見出された。
【0071】
(実施例2) ナノワイヤ懸濁液を利用した質量分析
シリコン基板の表面にスパッタリング気相成長法によりAuを2nmの厚さで堆積させ、ここで、化学気相成長法(CVD)によりInClおよびNHを500℃で供給することによって、InNナノワイヤを成長させた。上記のシリコン基板をイソプロピルアルコールに入れて10秒間超音波を印加して、基板からナノワイヤを分離することにより、ナノワイヤ懸濁液を調製した。典型的なマトリクスの代りにBruker Daltonics社(ドイツ)のMALDIターゲットを用いることにより、ナノワイヤ懸濁液を用いてMALDI測定を行った。試料の結晶中心がアンカーに集中するというMALDIターゲットの特別な特徴を利用して、少量のナノワイヤ懸濁液を処理してアンカーの周辺にナノワイヤアイレットを形成した。それから、上記のナノワイヤアイレットに試料のペプチドを滴下し、試料の結晶を形成させた。検査で、ナノワイヤ懸濁液はマトリクスに置き換えることができ、結果として定量的な結果が得られたことが見出された。
【0072】
(実施例3) ナノワイヤを用いた結合反応の検出
実施例1のようにナノワイヤが成長したナノワイヤターゲットにB型肝炎の抗原溶液を加え、ナノワイヤ上にB型肝炎の抗原が固定されるように1時間水分で飽和された37℃の恒温槽で培養した。それから、固定されなかったB型肝炎の抗原を分離するために、ナノワイヤターゲットを洗浄液に浸漬した。抗体−抗原反応を誘起するため、B型肝炎の抗原を含有する試料溶液をナノワイヤに加え、それから抗体−抗原反応の後で残された試料を除去するためにナノワイヤターゲットを洗浄溶液に入れた。それから、MALDIは、ナノワイヤと結合された抗原−抗体結合物の定性分析と同様に定量分析を行うことが可能であることが確認された。同じように、ナノワイヤMALDIターゲットを用いて、DNA間、DNAとRNA間、あるいはタンパク質間の結合体を定量的に検出することが可能である。さらに、有機物と無機物などのリガンド(ligand)およびレセプタ(receptor)間の結合体を定量的に検出することも可能である。
【0073】
本発明は、その好ましい実施形態を参照して詳細に説明された。しかし、開示の考察から、当業者が本発明の範囲及び趣旨内で修正及び改善を行えることが認識されるだろう。
【産業上の利用可能性】
【0074】
上述のように、ナノワイヤ支援レーザー脱離/イオン化質量分析によれば、試料を固定し、試料に照射されるレーザーエネルギーを効果的に伝達して試料の脱離/イオン化を行うことができるナノワイヤを用いることにより、マトリクスなしで試料の質量分析が可能である。
【0075】
即ち、本発明は、上記のナノワイヤを使用することにより、上述のナノワイヤを用いて効果的に試料を脱離/イオン化させることを可能にし、それによって低分子量の試料と同様に、試料の定性的、定量的、及び微量分析を効果的に行うことができる。さらに、本発明はMALDI−Tof MSで用いられる典型的な質量分析計にも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0076】
【図1】図1(a)はZnOナノワイヤスポットを形成させた基板およびこれを質量分析計の試料検査プレートに挿入したターゲットプレートを示す写真であり、図1(b)と(c)は走査電子顕微鏡で撮影した成長したナノワイヤの拡大写真を示す。ここで、参照番号1は検査プレートを示し、参照番号2はターゲットプレートを示し、参照番号3は基板を示し、参照番号4はナノワイヤしポットを示す。
【図2】図2はZnOナノワイヤ上に試料なしでレーザーを照射した後の分子量のピークを示すグラフである。
【図3】図3はロイシンエンケファリンをZnOナノワイヤチップに各々0.13、0.25、0.50、1.0mg/mLの濃度で加えた後の質量分析の結果を示す。
【図4】図4はアンギオテンシンをZnOナノワイヤチップに各々0.25、0.50、1.0mg/mLの濃度で加えた後の質量分析の結果を示す。
【図5】図5はZnO、SiC、SnO、GaNの4つの異なる種類のナノワイヤ懸濁液を用いて得られたペプチドの分子量のピークを示す。
【図6】図6はZnOナノワイヤチップの10回の洗浄でリサイクルした後の0.5mg/mLの濃度でロイシンエンケファリンの質量分析の結果を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
レーザーをエネルギー源として用いる脱離/イオン化による試料のナノワイヤ支援質量分析方法であって、
(a)電圧を印加することができる導電体または半導体の基板上の選択された領域に多数の微細なナノワイヤを成長させることによりナノワイヤスポットを形成する工程と、
(b)分析しようとする物質を含む前記試料を前記ナノワイヤスポットに配置し、乾燥により結晶化させる工程と、
(c)前記基板に電圧を印加した状態で、減圧下で前記試料が前記ナノワイヤに吸着及び結晶化した前記ナノワイヤスポット上に同時にレーザーを照射して、前記ナノワイヤを通してエネルギーを試料に伝達して、前記イオン化された分析しようとする物質の質量分析を行う工程と
を有するナノワイヤ支援質量分析方法。
【請求項2】
前記ナノワイヤスポットを形成する工程において、前記ナノワイヤは直径500nm以下であり、アスペクト比が10以上であるナノワイヤが成長を許容される
請求項1記載のナノワイヤ支援質量分析方法。
【請求項3】
前記ナノワイヤスポットを形成する工程において、成長させる前記ナノワイヤは、シリコンを含有する単一金属、酸化物、炭化物、窒化物、リン化物およびヒ化物半導体ナノワイヤからなる群から選択される
請求項1記載のナノワイヤ支援質量分析方法。
【請求項4】
前記ナノワイヤスポットを形成する工程において、前記ナノワイヤスポットの面積がレーザーの照射面積と等しく、または、小さくなるように形成する
請求項1記載のナノワイヤ支援質量分析方法。
【請求項5】
前記試料は塩および分析しようとする物質を有し、前記塩の濃度は10mMより大きい
請求項1記載のナノワイヤ支援質量分析方法。
【請求項6】
前記試料における前記分析しようとする物質の濃度は1フェムトモルより小さく含まれる
請求項1または請求項5記載のナノワイヤ支援質量分析方法。
【請求項7】
照射される前記レーザーは、選択されるナノワイヤの種類に応じて前記半導体の基板上に成長したナノワイヤのバンドギャップより大きいエネルギーを有する
請求項1記載のナノワイヤ支援質量分析方法。
【請求項8】
前記イオン化された物質の質量分析を行うときに、イオンの質量/電荷の値(m/z)を測定する
請求項1記載のナノワイヤ支援質量分析方法。
【請求項9】
レーザーをエネルギー源として用いる脱離/イオン化による試料のナノワイヤ支援質量分析方法であって、
(a)多数の微細なナノワイヤを含有するナノワイヤ懸濁液を形成する工程と、
(b)電圧を印加することができる導電体または半導体の基板上の選択された領域に塗布された前記ナノワイヤ懸濁液を乾燥させてナノワイヤアイレット(islet)を形成する工程と、
(c)分析しようとする物質を含む前記試料を前記ナノワイヤスポットに配置し、乾燥により結晶化させる工程と、
(d)前記基板に電圧を印加した状態で、減圧下で前記試料が前記ナノワイヤに吸着及び結晶化した前記ナノワイヤスポット上に同時にレーザーを照射して、前記ナノワイヤを通してエネルギーを前記試料に伝達して、前記イオン化された分析しようとする物質の質量分析を行う工程と
を有するナノワイヤ支援質量分析方法。
【請求項10】
前記ナノワイヤアイレットを形成する工程において、ナノワイヤを成長させた半導体の基板を揮発性溶液に入れた後、超音波を印加することによりナノワイヤを前記半導体の基板から分離させることで、前記揮発性溶液にナノワイヤを有する混合された状態として前記ナノワイヤ懸濁液が形成される
請求項9記載のナノワイヤ支援質量分析方法。
【請求項11】
前記ナノワイヤ懸濁液を形成する工程において、前記ナノワイヤは直径500nm以下であり、アスペクト比が10以上である
請求項9記載のナノワイヤ支援質量分析方法。
【請求項12】
前記ナノワイヤ懸濁液を形成する工程において、前記ナノワイヤはシリコンを含有する単一金属、酸化物、炭化物、窒化物、リン化物およびヒ化物半導体ナノワイヤからなる群から選択される
請求項9記載のナノワイヤ支援質量分析方法。
【請求項13】
前記ナノワイヤアイレットを形成する工程において、前記ナノワイヤ懸濁液は前記半導体の基板上の選択された領域へのスプレーにより形成される
請求項9記載のナノワイヤ支援質量分析方法。
【請求項14】
前記ナノワイヤアイレットを形成する工程において、前記ナノワイヤスポットの面積がレーザーの照射面積と等しく、または、小さくなるように形成する
請求項9記載のナノワイヤ支援質量分析方法。
【請求項15】
前記試料は塩および分析しようとする物質を有し、前記塩の濃度は10mMより大きい
請求項9記載のナノワイヤ支援質量分析方法。
【請求項16】
前記試料における前記分析しようとする物質の濃度は1フェムトモルより小さく含まれる
請求項9または請求項15記載のナノワイヤ支援質量分析方法。
【請求項17】
照射される前記レーザーは、選択されるナノワイヤの種類に応じて前記半導体の基板上に成長したナノワイヤのバンドギャップより大きいエネルギーを有する
請求項9記載のナノワイヤ支援質量分析方法。
【請求項18】
前記イオン化された物質の質量分析を行うときに、イオンの質量/電荷の値(m/z)を測定する
請求項9記載のナノワイヤ支援質量分析方法。
【請求項19】
レーザーをエネルギー源として用いる脱離/イオン化による試料のナノワイヤ支援質量分析方法であって、
(a)多数の微細なナノワイヤと分析しようとする物質を含有する試料溶液を混合してナノワイヤ懸濁液を形成する工程と、
(b)電圧を印加することができる導電体または半導体の基板上の選択された領域に塗布された前記ナノワイヤ懸濁液を乾燥させて、ナノワイヤと前記ナノワイヤに吸着及び結晶化した試料を有するナノワイヤアイレット(islet)を形成する工程と、
(c)前記基板に電圧を印加した状態で、減圧下で前記ナノワイヤアイレット上に同時にレーザーを照射して、前記ナノワイヤを通してエネルギーを前記試料に伝達して、前記イオン化された分析しようとする物質の質量分析を行う工程と
を有するナノワイヤ支援質量分析方法。
【請求項20】
前記ナノワイヤ懸濁液を形成する工程において、前記ナノワイヤは直径500nm以下であり、アスペクト比が10以上である
請求項19記載のナノワイヤ支援質量分析方法。
【請求項21】
前記ナノワイヤ懸濁液を形成する工程において、前記ナノワイヤはシリコンを含有する単一金属、酸化物、炭化物、窒化物、リン化物およびヒ化物半導体ナノワイヤからなる群から選択される
請求項19記載のナノワイヤ支援質量分析方法。
【請求項22】
前記試料は塩および分析しようとする物質を有し、前記塩の濃度は10mMより大きい
請求項19記載のナノワイヤ支援質量分析方法。
【請求項23】
前記試料における前記分析しようとする物質の濃度は1フェムトモルより小さく含まれる
請求項19または請求項22記載のナノワイヤ支援質量分析方法。
【請求項24】
前記ナノワイヤアイレットを形成する工程において、前記ナノワイヤ懸濁液は前記半導体の基板上の選択された領域へのスプレーにより形成される
請求項19記載のナノワイヤ支援質量分析方法。
【請求項25】
前記ナノワイヤスポットの面積がレーザーの照射面積と等しく、または、小さくなるように形成する
請求項19記載のナノワイヤ支援質量分析方法。
【請求項26】
照射される前記レーザーは、選択されるナノワイヤの種類に応じて前記半導体の基板上に成長したナノワイヤのバンドギャップより大きいエネルギーを有する
請求項19記載のナノワイヤ支援質量分析方法。
【請求項27】
前記イオン化された物質の質量分析を行うときに、イオンの質量/電荷の値(m/z)を測定する
請求項19記載のナノワイヤ支援質量分析方法。

【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図1】
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【公表番号】特表2007−529740(P2007−529740A)
【公表日】平成19年10月25日(2007.10.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−503828(P2007−503828)
【出願日】平成17年3月15日(2005.3.15)
【国際出願番号】PCT/KR2005/000738
【国際公開番号】WO2005/088293
【国際公開日】平成17年9月22日(2005.9.22)
【出願人】(595001181)コリア インスティテュート オブ サイエンス アンド テクノロジー (25)
【Fターム(参考)】