ナノ加工表面におけるDNA浄化および分析
人間の白血球からゲノムDNAを単離し、同時に、遺伝子分析を簡素化するためにDNAを補足して測定するマイクロ流体装置である。装置は、流体入口ポート、流体出口ポート、および流体入口ポートに連結したDNA結合チャネルを含み、DNA結合チャネルの少なくとも1つの表面の少なくとも一部が、DNAが表面に特異的に結合するように結合試薬で改質される。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[政府の関与]
この発明はSBIR許諾番号GM072178−01の下で政府の支援の下でなされた。政府はこの発明に関し所定の権利を有するかもしれない。
[関連出願の相互参照]
この出願は2005年1月26日に提出された米国特許出願第11/043,561により生じる利益を要求し、その出願の内容は参照してここに組み入れる。
【0002】
この発明は全般的にはDNAの浄化に関し、具体的には、DNAの浄化および分析におけるナノ加工表面の使用に関する。
【背景技術】
【0003】
ゲノムDNAの単離、操作、および測定を簡略化する技術が、携帯型の医療診断または生体防御の用途に必要とされている。人体の組織から単離された核酸の質は、再生産可能で正確で詳細な遺伝子分析データに決定的である。DNA単離製品は商業的に重要なので、この分野における研究も沢山ある。
【0004】
著しい進展が見られる1つの技術は遺伝子分析を行うためのマイクロ流体装置である。多くのマイクロアレイ分析フォーマットが入手可能であり、これらは共通して単一のサンプルから広範囲の遺伝子ターゲットを同時に調べることができる。
【0005】
二重螺旋DNA(dsDNA)の濃度を蛍光性マイナーグルーブ結合分子(MB)を利用して測定する高感度の液相分析が、すでに開発されている。DNAがないときには、その分子は溶液内で自由に回転でき、これは低蛍光背景に欠かせない。dsDNAに結合すると、この化合物は疎水性のマイナーグルーブにおいて堅固な平面配座を形成し、これが蛍光を増大させる。蛍光MBの表面への結合を注意深く操作することにより、マイクロ流体装置を通過するときに、DNAの料を測定できる。
【発明の開示】
【0006】
したがって、この発明の目的は、同時に、ゲノムDNAを単離し、精製したDNAの量を測定し、下流の分析のための特定の濃度の標準化DNA溶液を分配するマイクロ流体装置を提供することである。
【0007】
この発明のさらなる目的は、装置のコストおよび複雑さを最小化してDNAを単離して準備するDNA単離用のマイクロ流体装置を提供することである。
【0008】
この発明のさらなる目的は、同時に、生物学的流体から二重螺旋DNA(dsDNA)を補足し、固定化したDNAの料を測定することができるマイクロ流体装置を提供することである。
【0009】
この発明のさらなる目的は、求電子性または求核性リンカー基を具備する蛍光性マイナーグルーブバインダ薬剤(MB)を合成し、dsDNAの存在下で増大した蛍光性を明らかにすることである。
【0010】
この発明のこれらの目的および他の目的は以下の説明および図面からより容易に明らかになる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
dsDNAの濃度を測定する高感度の液相分析が蛍光性マイナーグルーブ結合(MB)試薬(Hoechst33258)を用いて開発されている。DNAがないときには、その分子は溶液内で自由に回転でき、これは低蛍光背景に欠かせない。dsDNAに結合すると、この化合物は疎水性のマイナーグルーブにおいて堅固な平面配座を形成し、これが蛍光を増大させる。蛍光MBの表面への結合を注意深く操作することにより、マイクロ流体装置を通過するときに、DNAの料を測定できる。共役化学を用いて、立体配座の自由度を最大化させターゲットDNAにアクセスするように設計された高分子構造上で蛍光体を位置決めする。
【0012】
Hoechst 33258分子は多環式構造を有し、これが、B−フォームDNAのマイナーグルーブに同等螺旋で合致する(isohelical)三日月構造を形成できる。図1は、合成12−merのDNA二本鎖に結合するHoechstの溶液NMR構造を示す。三日月形状の分子のフェノール末端は、共役基で結合するための便利な結合点である。液体溶液中の構造は柔軟であり、そうたいてきには非蛍光性である。未結合の分子を356nmの光で励起すると、492nmで弱い蛍光性を示す。ただし、dsDNAに結合すると、ベンズイミダゾール環が平坦配座に固定され、大規模な芳香族系が形成され458nmで強い蛍光を発散する。この分子はマイナーグルーブ中でむず分子から遮蔽され、これによりさらに蛍光が増大する。H33258noこのような蛍光性特徴によりdsDNAの濃度を測定する高感度な分析が開発され、これは簡単な分析であり、細胞係数に用いられる。
【0013】
DNAに結合するH33258の構造に関心がもたれてきた。MBは疎水性相互作用、バンデルワールス力およびイミダゾール残留による水素結合によって適所に保持される。H33258の強力なマイナーグルーブ結合によりdsDNAを直接に単離する機構も実現できる。アデニン/チミンが多い配列に対するMBのマイナーグルーブ結合が好ましく、DNA結合定数は挿入剤のような他の小さなMW試薬よりも大きなオーダーとなる。挿入蛍光試薬も十分に試された。このクラスのDNA結合試薬の例は臭化エチジウムであり、電気泳動後のゲル中のDNAを染色するために広く用いられている。メチジウム染料は、セファロース粒子に結合されてDNA単離製品を実現してきた。メチジウムのような挿入染料はマイナーグルーブバインダのクラスの染料ほど結合力が大きくない。メチジウムはセフロース粒子にカチオンスペルミンリンカーを利用して結合された。これは明らかにDNA結合を改善した。さらに、エチジウムは、dsDNAに結合して、量子収率をわずかだけ向上させる。メチジウム・セフロース粒子の蛍光特性は説明されていなかった。
【0014】
シアニン型の挿入染料はエチジウム挿入剤よりかなり多くの蛍光性を有する。チアゾールオレンジ(TO)は、2つの二環芳香族環構造からなる非対称なシアニン染料である。509nmの光で励起されると、これら2つの構造が相互に自由に回転し、蛍光性はほとんどない。しかし、dsDNAがあると、TOは塩基対の間に入り込み、環システムが平坦になるように強制する。強い蛍光を533nmで生じる大きな芳香族系ができる。TOはマイナーグルーブ結合試薬のように強固にdsDNAには結合しないが、2つのTO分子が一緒に結合して強固な結合二重挿入剤(bis−intercalator)を形成できる。
【0015】
高感度のDNA結合分析がシアニン型の染料の蛍光特性に基づいて開発されてきた。TOもRNAの存在下で3000倍までの増大を示す。この特性は興味深いものであり、RNA単離装置に適用できる。
【0016】
これら蛍光性化合物は、オリゴヌクレオチドに結合されて、ハイブリダイズ分析中でdsDNAの形成を監視するDNAプローブを形成してきた。H33258のいくつかの反応性誘導体はDNAプローブへの結合用に開発されてきた。図2は、DNAプローブのリンカーに結合させるために開発されたH33258のいくつかの反応性類似物を示す。
例えば、H33258のブロモアセチル類似物はスルフヒドリル改質オリゴヌクレオチドと共役であった。高感度のDNA結合分析がシアニン型の染料の蛍光特性に基づいて開発されてきた。TOもRNAの存在下で3000倍までの増大を示す。この特性は興味深いものであり、RNA単離装置に適用できる。
【0017】
これら蛍光性化合物は、オリゴヌクレオチドに結合されて、ハイブリダイズ分析中でdsDNAの形成を監視するDNAプローブを形成してきた。H33258のいくつかの反応性誘導体はDNAプローブへの結合用に開発されてきた。図2は、DNAプローブのリンカーに結合させるために開発されたH33258のいくつかの反応性類似物を示す。相補的な単一螺旋のDNAターゲットへのハイブリダイズは結合親和力を増大させ、結合時に蛍光を23倍まで増大させる。改善された結合効率(DNA溶融温度)は、配列特異的なものである。A/T領域がリガンドの結合点の近くに配置されると、TMが急激に増加し、H33258の強力なDNA結合作用を実現する。同様の合成化学を用いてこれら蛍光性染料の反応性類似物を準備してアミン改質ガラスまたはプラスチック表面と共役させることができる。
【0018】
オリゴのシアニン染料共役物は、相補的なDNA螺旋を付加したときに、予想通りのハイブリダイズ誘引の蛍光を示した。蛍光性は、形成された二本線の末端配列に応じて変化した。TOのDNA二重線への結合は、配列依存であることが知られている。シアニン染料のHNSエステル類似物はアミン改質オリゴヌクレオチドと反応して蛍光性「実時間」PCR分析に使用されるDNAプローブを実現した。蛍光の20倍までの増加がオリゴヌクレオチド共役物において観察された。MGBおよびシアニン型蛍光性オリゴヌクレオチド共役物の双方のDNAプローブへの適用は、染料の配列依存の結合ゆえに、複雑であった。DNAのゲノム片の異種集団に焦点があてられるので、結合部位の配列依存によりsDNAの結合測定が影響を受けないようにすべきである。
【0019】
核酸は、高濃度のカオトロピック塩溶液の存在下で、ガラス表面と極めて高い親和性を有し、多くのガラスベースのDNA単離製品が商業的に入手できる。これら製品は使いやすいけれども、複数のピペット操作、Eppendorfチューブまたは96ウェルプレート、ボルテックス(vortexer)、遠心分離機のような装置へのアクセスを必要とする。操作は開放された研究施設で行われ、溶液の蒸散による問題を回避するために比較的大きな資料体積を必要とする。DNA濃度は通常UV−vis分光光度計により測定され、再現可能な結果をえるためには良好な技術が必要とされる。それにもかかわらず、種々の生物学的資料からDNAを単離するためにガラスが使用され続けてきた。
【0020】
DNA結合のガラスへの初期の適用は、アガロースゲルから電気泳動的に浄化されたDNAを単離するためのものであった。ソーダライムまたはボロシリケートガラスのDNA結合能力は、800mm2あたりDNAを約300ngと同等のものであった。800mm2は、ほぼ、ガラス顕微鏡スライドおよび20×20mmカバースリップの間に形成されるチャンバの表面面積である。多くのマイクロ流体DNA単離アプリケーションでは、チューブまたはファイバーからの粉末ガラス、二酸化珪素、または珪藻のシリカスケルトンを利用する。これらのサポートは平坦な表面よりかなり大きな表面面積を確保できるからである。マイクロ流体装置は、溶液の体積が小さく(蒸散の問題がない)、PCRゲースのゲノム分析に必要とされる捕捉DNAの量が著しく少ないので、締結号の平坦なガラス表面を用いることができる。平坦なガラスは種々の組成物、サイズ、および、粗さで入手でき、より表面面積が必要ならばさらなるエッチングを行える。
【0021】
mRNAまたはDNAの液相分析は、一端に蛍光レポータ基を他端に蛍光消光分子を担持するDNAオリゴヌクレオチドプローブを用いてPCRサイクルにおいて実現される。1つのフォーマット(TaqMan分析)において、プローブは、Taqポリメラーゼの3'−エキソヌクレアーゼにより要約される短い単一螺旋のオリゴである。他の蛍光性フォーマット(分子ビーコン分析)は、幹部に隣接蛍光体および消光分子を具備するヘアピン形状のオリゴを用いる。ヘアピンは、相補的なDNA螺旋の存在下で開いて蛍光信号を付与する。これら蛍光性フォーマットの各々は、それぞれの増幅サイクルが成功して蛍光信号を増大させるので、PCRの進捗をモニターするのに用いることができる。これらPCRベースのフォーマットの双方は、分析サイズの下限が処理上の問題(小さな胆石の染色)および利用可能な装置の解像度のみに制約されるだけであるので、マイクロ流体ベースのプラットホームに理想的である。好評な(高スループット)の熱サイクル蛍光光度計は、ABI7900HTであり、これは384ウェルプレートを分析でき、PCRの間に測定される各遺伝子のウェル当たり10uLである。ウェルあたり10pg−10ngのゲノムDNAが好ましく、これはPCRシステムの効率およびDNAの量に左右される。
【0022】
ガラス顕微鏡スライドがDNAマイクロアレイの慣用的な基板である。多くのマイクロアレイ分析フォーマットが入手可能であり、これらは共通して単一のサンプルから広範囲の遺伝子ターゲットを同時に調べることができる。合成オリゴヌクレオチドのアレイは、ガラスサポートから直接に合成され、改質合成プローブの終点結合により準備されてきた。ガンマアミノプロピルシラン(GAPS)は、ガラス表面を官能化するのに用いることが可能な揮発性試薬であり、いくつかのGAPSスライドの製造者がある。GAPSスライドのアミン被覆表面を二官能性リンカーを用いて活性化して、アミン改質オリゴの溶液と反応する親電子性表面を生成できる。種々の共役化学を用いて蛍光性DNA結合染料を結合するのに用いることができる。
【0023】
オリゴヌクレオチドのアタッチメントの密度はハイブリダイズの効率上重要な要素である。高密度のオリゴはガラスから直接合成して実現できるけれども、捕捉プローブが過剰に緊密に包まれるときにラベルDNAターゲットのハイブリダイズが実際に落ちることが判明した。ガラスアタッチメント点およびオリゴヌクレオチド配列の間のリンカーの長さを長くしたときにハイブリダイズの効率が改善した。長さが80原子までのポリエチレングリコール(PEG)のリンカーハイブリダイズ信号を改善し続けた。このことは、液相パフォーマンスを再現するためには固体サポートおよびDNAプローブの間の長いリンカーが重要であることを示す。
【0024】
DNAプローブをガラス表面に長いポリエチレングリコールで結合すると効率を改善した。種々の官能基を伴う高分子PEGリンカーは商業的に入手可能であり(Quanta、Biodesign、Powell、Ohio)、薬物動態特性を改善するためにたんぱく薬剤に結合させるために主に用いられた。他の高分子構造が固定化DNAプローブの性能を改善するために採用された。例えば、ビオチン改質分子ビーコンがアビジン被覆ガラスサポートに結合されて配列特異的なDNA分析に用いられた。アビジンまたはストレプトアビジンをスペーサとして用いてDNAをガラス表面から離して配置することが、プローブの機能として同様に重要である。考慮すべき他のタイプの高分子リンカーはデンドリマーポリマーである。これら商業的に袖手可能な(Adrich Chemical Co.ワイオミング州、ミルオーキ)分子は、合成の「ジェネレーション」に応じてアミノ基およびカルボキシレート基の交互の層の中に合成される。これら分子の三次元構造は良好に制御され、その特定は良く理解できる。アミン豊富デンドリマー構造は、細胞中でDNAを包囲するのに重要なヒストンタンパク質と類似している。これらは、見込みのある遺伝子治療用途のために細胞中にDNA系列を導入するために成功裏に使用されてきた。デンドリマーリンカーは固定化MB分子をDNA豊富溶液中に実現する良好な骨格を形成すると考えられる。デンドリマーリンカーおよび蛍光性DNA検出分子(Sytox 13、分子プローブ)を含むバイオセンサーフィルムを用いてプラスチック表面上の生細菌のレベルを測定した。これら材料は、リンカー、蛍光性染料またはプラスチック表面の間に共有リンクを含まなかったけれども、疎水性力により一体になっていた。
【0025】
DNAマイクロアレイ技術は、閉鎖されているマイクロ流体処理から便宜を受ける小型分析を実現する。例えば、連続流で動作するマイクロマシン化化学増幅器は176−塩基対フラグメントの20サイクルのポリメラーゼチェーン反応(PCR)増幅を示した。流れチャンバーにおいて堰後方で捕捉された白血球からのゲノムDNAターゲットのPCR増幅は、シリカガラスマイクロチップ中の全血液から示された。DNAチップアレイを用いた中程度の密度のアレイメソッドが、PCR製品の診察用系列用に開発されて、使用する際のコストや手間が省かれた。抗生物質耐性臨床分離株が、PCR増幅の後、1時間以内に視覚的に検出された。他の用途は、漢方薬において用いられる毒性薬草のDNA系列ベースの特定である。2001年、Petrikは、C型肝炎ウイルスについて献血を大規模にスクリーニングするゲノムプロジェクト用に当初開発されたマイクロアレイデバイスの使用を調査した。PCR分析用に一体化したシステムは、二重ペルティエ熱電気要素を電気泳動サイジングおよび検出にマイクロチップ上で結合することにより取得できた。DNA濃縮注入スキームの使用により、10熱サイクル程度の回数でPCR生成物の検出が可能になった。マイクロ流体カートリッジは、超音波分断、崩壊した胞子へのPCR試薬の添加、およびPCRチューブ中の混合物の注入によりPCR分析用に胞子を準備するために開発された。胞子DNAの処理および検出は20分以内に完了された。単一DNAテンプレート分子の統計的PCR増幅を、これに続く生成物の電気泳動分析に組み合わせた一体化したマイクロ流体装置が、開発された。繰り返されたPCR分析から正規化されたピーク領域のヒストグラムが、反応装置中の単一の成長可能なテンプレート分子コピーによる量子化を示した。核酸系列ベースの増幅(NASBA)により増幅されたRNAを検出するためのマイクロ流体チップが開発された。クリプトスポリジウムパルバム(cryptosporidium parvam)のサンプルが検出され、増幅RNAをNASBA混合物から分離することなしに明瞭に比較例(control)から区別できた。ほおの細胞から直接にナロリットルDNA分析を行うための自動化マイクロ流体システムが開発された。これは、DNA分析に必要なすべてのステップ、すなわち、注入、混合、溶解、PCR、分離、サイジング、および検出を含む。このシステムをさらに小型化する可能性が確立された。一体化されたマイクロ流体チップベースシステムが、遺伝子組み替え型の、アデノウイルスの、治療プロダクトの品質制御テスト用に開発された。ウイルス特定テストがDNA断片の寸法を図り計量し、アガロースゲル法に較べて100倍少ないサンプルしか必要としない。
【0026】
少量の人の血液(<20μL)を処理して遺伝子分析用の標準化ゲノムDNAサンプルを放出するDNA単離装置を開発する必要がある。種々のDNA処理チャンバーを流れる流体の流れを制御するマイクロポンプ駆動機器中に挿入できる単一回数使用のマイクロ流体カードが開発できる。固定化さら計量化されたDNAも即座の使用のために溶液中に放出され、または将来の分析用に保存される。装置内の固定化DNAの捕捉および開放を蛍光性により測定する能力により、この新規なDNA処理システムの処理通の制御が可能になる。この技術は、分子生物学的な研究における汎用のスタンドアローン製品の開発に用いることができ、また生物医療用途の遺伝子分析を簡素化するためのより複雑な装置を開発するのに用いることができる。開発された単一ウェル装置で単離された、精製し、変性したDNAは、マイクロ流体チャネルを介して、実時間PCRまたはDNAマイクロアレイによる遺伝子分析のために種々のマイクロウェルフォーマットへ分配できる。図3は、細胞からゲノムDNAを単離するのに用いることができる小型生物医療装置の開発に必要なマイクロスケール物理過程を示すことを意図している。
【0027】
図3は、血液全体からDNAを単離することを目論むマイクロ流体装置のチャネル内を流れる血液全体および他の流体の間の相互作用を示す。小型化生物医療装置の開発において使用されるマイクロスケールの物理的過程を、細胞からゲノムDNAを単離するのに用いることが可能であることが示される。ここで図3を参照すると、血液全体54に含まれる小さな粒子52を含む第1の流れ50と、純粋な溶液60中の小さな粒子58を含む第2の流れ56が共通チャネル62に導入され、ここで、これらが層状の流体拡散インタフェース(LFDI)を形成する。粒子52、58は、それらの拡散係数に依存して、LFDIを境にして拡散を開始し、この場合、より小さな粒子58がより速く拡散する。この装置を用いて、小さな粒子を血液全体から抽出し、または、予想可能な連続的な手法で血液全体に試薬を導入できる。
【0028】
Hoechst染料の研究から得られる予備的な観察もこの用途に適切である。Hoechst染料の滴を水または緩衝溶液中に落とすと、その点が乾燥するときに、蛍光が増大する。これは、蛍光環境の「水和成分」(hydration content)に関係し、蛍光背景に影響を与える。蛍光体は低背景のために十分に水和されている必要があり、疎水性表面被覆の重要性を強調する。
【0029】
最初の焦点は、dsDNAを結合し測定する蛍光性固体サポートを合成し試験することにある。アミン反応性官能基を伴う蛍光性MBが初めに種々の既知の手法を用いて準備される。これらエージェントはアミン改質ガラスまたはプラスチックに固定化され、DNAで処理される前後で蛍光性が測定される。種々のリンカー構造が、DNA濃度に対する蛍光性を測定する能力に関連して評価される。結合されたMBを伴う蛍光性表面が加工されて、低蛍光背景および良好なDNA結合を実現する。研究対象の典型的な表面を図4に示す。固体サポート(ガラスまたはプラスチック)、リンカー化学、および蓋をなす基のような変更物が試される。蛍光性MBの化学量論(結合の密度)を試してDNA測定の最大ダイナミックレンジをなす表面を決定する。DNA結合能力も試験する。
【0030】
図4を参照すると、装置100は、マイナーグルーブバインダ(MB)104を具備するアミン改質表面102を有する。未反応のアミンを残してカチオン表面を実現できる。装置110はサクシニル化により未反応のアミンに蓋をしてアニオン表面112を実現できることを示す。装置120は、最初にポリマーアミン含有リンカー(星型デドリマー、ジアミノ−PEG、ポリ−L−リジン)を表面122に結合し、その後MB誘導体と反応させることによりMB104を溶液へと拡張できることを示す。
【0031】
所望の蛍光表面の開発と同時にDNA単離用のマイクロ流体装置も計画される。種々のサイズのDNAサンプルを取得して(Sigma)、同一の蛍光性化合物を用いて固相および液相の双方において捕捉効率が蛍光性測定により決定される。装置からのDNAの開放をモニターしてDNAの純化および復元が良好であることを確かめる。DNAの捕捉および開放の条件が、蛍光性プレートリーダーにより測定される。DNA結合能力および洗浄実験を行った後、蛍光装置が構築できる。蛍光性サポートを開発した後、装置のDNA捕捉および測定機能が組み合わされる。
【0032】
種々のアミン改質固体サポートが入手できるので、誘導体が、活性求電子官能基、例えば、ヨードアセテート基、塩化シアヌル基、NHSエステル基、および他のアミン反応性部分を用いて準備可能である。固体サポート上の相補的な官能基と反応可能な所望の求電子または求核「ハンドル」を具備するH33258類似体を実現する2つの合成手法が示されている。最も直接的なルートは、H33258の十分に組み合わされた複素環式環構造からのものである。PEGの臭素アルキル誘導体の反応が、アリールエステルを高効率に生成する条件下でH33258と反応することを示した。H33258はAldrich Chemical社(500mg=220.80ドル)から入手できる。t−ブチルオキシカルボニル防護のヘキシルアミンリンカーは容易に合成され、トシレート誘導体が製造できた。臭素誘導体は容易にアクセス可能で、H33258と反応可能と考えられ、これは図5に示す。図5を参照すると、H33258がアルキル化Boc誘導体と反応される。求核アミノアルキル基(R=H)を直接に求電子表面に固定化できる。代替的には、アミノ基を、図5に示すように、求核表面への固定化のために、求電子基、例えば、塩化シアヌル誘導体に変換できる。Bocは希釈酸による処理で除去され、塩基で中和され第1ヘキシルアミン基(R=H)を付与する。求核性の第1アミンは、第3アミンによる若干の競合的なアルキル化を伴う溶液中で選択的に求電子物質と反応できる。このような化学過程は、求電子官能基でコートされた固体表面の改質にも適用できるであろう。代替的には、H33258のヘキシルアミン類似体は求電子残留物を残す二官能性リンカーと反応できる。塩化シアヌルは二官能性リンカーのように振る舞い官能基を含むアミンと結合する。残っている3番目の塩素基は2つノアミノ気が結合した後は非反応性である。この共役化学過程は改質表面を合成するために後に使用できる。他の代替手法は、H33258をアニオン表面に結合することであり、カルボン酸基により生成されるものと同様である。これら表面は適宜に安定し、柔軟であり、DNAへの所望の蛍光性応答を実現できる。
【0033】
多くの固相化学過程と同様に、試薬を大幅に過剰にするのは容易であり(入手可能な表面基に対して)、過剰な試薬を洗浄して除去することも容易である。したがって、結合効率は極めて高い(高密度パックが実現できる)。ガラスおよびプラスチック基体の表面面積、固定化化学過程、リンカーのタイプ、および「結合可能」蛍光性化合物(蛍光体)は最適化される。商業的に入手可能なデンドリマーリンカー、ポリ−L−リジン、およびポリエチレングリコールジアミンは溶液中で蛍光体を表面からdsDNAへと離すように配置するであろう。目標は、固定化された蛍光体の配座自由度を最大化し、dsDNAへのアクセスを最大化することである(DNA結合および動力学を最適化することである)。
【0034】
アミン改質のガラスおよびプラスチックサポートは、1×3インチの顕微鏡スライドとして入手可能であり、DNAマイクロアレイ用の一般的な基体である。多くのガラススライドはソーダライムガラスから製造され(Erie Scientific、ニューハンプシャー州ポーツマス)、(ガンマ)アミノプロピルシラン基で改質されて第1アミンの密度を均一にする。GAPSスライドも他のガラスタイプとして入手可能であり(Corning Glass)、粗さが大きい(Erie)。アミノプロピル塗布のプラスチックスライドも入手して使用できる(Nunc、デンマーク)。アミンにより官能化されたポリエステルフィルム(Mylar)もシートとして入手可能であり(Diagnostic Laminations Enginnering、カリフォルニア州オーシャンサイド、またはAdhesive Research社、ペンシルバニア州グレンロック)、試験される。これら基体は求電子MB類似体を固定化するために直接的に用いてもよいし、求電子表面を実現するために二官能性リンカーで「活性化」(activated)されてもよい。図6は1つの実現可能な共益化学システムを示す。塩化シアヌルの活性化が、他の脂肪族の二官能性リンカー(Pierce Chemical社)と同様に試験されるべきである。ガラススライドは、疎水性求電子物質、例えば塩化シアヌルを伴う無水有機溶媒中で活性化して試薬の水和を回避し、求電子改質濃度を向上させることができる。このため、PEGアミン(または他のポリアミン)の高度の充填が期待できる。蛍光性MB求電子物質の直接の結合(例えば図5のシアヌレート)が初めに試され、この(リンカーがない)蛍光性表面が特性化され種々の蛍光性検討の比較例(コントロール)として用いられる。
【0035】
プラスチックスライドには穏やかな液体活性条件およびカルボジイミド結合または活性化されたエステルリンカーの使用が必要である。各末端にNHSエステルを含むPEG高分子が商業的に入手可能である。商業的に入手可能なポリカルボキシレートデンドリマーは、水溶性カルボジイミド(EDC)化学過程を用いてアミン含有サポートに結合できるであろう。親水性のGeneration3.5および4.5PAMAMデンドリマーは、それらの分子が64および128の表面カルボキシレートをそれぞれ具備するので、とくに魅力的である。これら分子は大きなデンドリマーに悪影響を与える、高密度に「星型」に群れることがない。表面の残りのアミンをブロックしたのち(無水酢酸により)、リンカーのカルボキシレートは再びEDCにより活性化されヘキシルアミン含有MBと結合可能となり、これは図5から理解できる。完全に洗浄した後、スライドに共有結合したMBの量をプレートリーダーの吸収により測定する。Hoechst 33258発色体は356nmで吸収を行い、Bio−Tekプレートリーダーは適当なフィルタを用いてこの波長を顕微鏡スライド上で直接に測定できる。このスライドは乾燥でき、将来の使用のために評価できる。表面上の単一層の蛍光染料の安定性(貯蔵状態)を調査すべきである。
【0036】
高分子リンカー構造は、溶液中で、蛍光性MBセンサをdsDNAに広げる骨格として働く。表面構造の蛍光特性がdsDNAがある場合とない場合で試験されるべきである。H33258誘導体はガラス上に歓送されているときに蛍光性があると知られているので、これら表面は、蛍光性DNA結合特性について評価されるときに十分に水和されていることが重要である。平衡時間はマイクロ流体環境において迅速であり、これは有利である。種々のリンカー構造の蛍光性背景が、「かん流チャンバー」(perfusion chamber)を対象のスライドの表面に結合することにより測定される。これらは、単純なゴムガスケットであり、これらをスライドに接着して、その後、入り口ポートおよび出口ポートを具備するカバースリップで被覆する。チャンバーが構築された後、目的の検体溶液がピペットで流入され、ポートは封止可能である。200μLのチャンバサイズが利用される。
【0037】
種々のDNAサンプルを外部ソース(Sigma Chemical社)から入手する。ゲノムDNAは、マイクロ流体装置内で採用される緩慢な流れの下でマイクロチャネルを通過するときにもつれないように刈り上げる必要があるであろう。ゲノムDNAの刈り込みは、18ゲージ針と通じて数階溶液を引き抜くことにより容易に実現される。種々の長さ(40kb、4000bp、400bp、および40bp)のMW標準も考慮されるべきである。最初に、中和緩衝剤を関心対象の蛍光性気体上に付加し、蛍光性背景(458nmおよび492nmで)をプレートリーダー(励起=356nm)上でゆっくり時間をかけて測定する。安定した背景測定は、MB被覆が十分に水和されているときに実現されるに違いない。そののち、種々の濃度のdsDNA(A260で測定される。50ugのdsDNA=10D単位)がかん流チャンバーに案内され、この場合、読取の間にチャンバーを確実に洗浄するようになす。458nmの蛍光(dsDNA結合の特性)は、DNA濃度が増加すると線形に増加する。MBの濃度は測定のダイナミックレンジに関係するようであり、これを考慮すべきである。先に説明したように、MBパックの濃度は基体のA356から決定される。マイクロ流体装置は高濃度のDNA溶液を処理し、それゆえ、蛍光のためのDNA濃度「閾値」(threshold)がゴールである。DNA濃度が蛍光閾値を下回れば、単離田潤を継続する。同様に、蛍光信号が閾値を越えると、要求される最少のDNA濃度が達成される。蛍光性ガラスサポートを用いたDNA検出は生理食塩濃度で検査されることに留意されたい。この場合にガラスによるDNA結合が最大化されるに違いない。
【0038】
蛍光性表面の開発と同時に、dsDNAのガラスに対する固定化および開放を効率的に行うために必要とされるパラメータも小体積の溶液を用いて検査される。dsDNAの小体積の緩衝剤への開放は数学モデルにより最適化される。DNAをガラスに結合するうえでの処理ステップは生物的サンプルの性質に依存し、その手法も多くの変形例がある。以下に説明されるステップは、DNA豊富なソースおよびシリカ粒子に対して実行された。細胞が、まず、グアニジンチオシアネート(GuSCN)緩衝液(pH6.4)の2Mの溶液を付加することにより溶解される。このカオトロピック塩溶液は、また、ゲノムDNAからヒストンタンパク質を除去し、ヌクレアーゼを非活性化し、DNA−シリカ錯体の形成を助長する。固定化されたDNA−シリカは渦巻き駆動され、また遠心分離処理され(これは長いDNA螺旋を刈り込むようである)、細胞の破片はより多くのGuSCN緩衝剤により洗い流される。最後にDNA−シリカが歓送され、純化されたDNAが低塩の緩衝在中に溶出されて260nmの吸収により測定される。このプロセスは単純であるけれども、これらステップはシリカ粒子が渦巻き処理の後に一様になることを確実にするために人での作業および人による入力を必要とする。マイクロ流体フォーマットは以下の表Aで説明されるような処理を合理化すべきである。
【0039】
表A
1.高濃度のGuSCNを用いて細胞を溶解し、ヒストンを除去し、DNAをガラスに結合する。
2.ガラス結合DNAを高濃度GuSCNで洗浄する。
3.生理食塩で結合DNAをガラスから開放する。
4.蛍光性基体を用いてチャンバー内の開放DNAの濃度を読み取る。
5.DNAを蛍光性基体から開放してPCRベースの分析に使用するために調整する。
【0040】
ガラス基体(顕微鏡スライド)のDNA結合能力を評価するために、ステップ2、3、4および5のみ試験する。処理ステップは、ガラスカバースリップを伴うかん流チャンバー内で実行できる。種々のサイズ・濃度のDNAをGuSCNで混合することがDNA結合で重要である。ゴールは、スライドのガラス表面およびカバースリップの間の300ngの発表されているDNA結合能力に接近させることである。結合後に、チャンバーから高濃度のGuSCNを引き抜き、生理食塩で満たす。平衡状態に達した後、結合DNAはチャンバー内で自由でチャンバーから回収できるに違いない。濃縮されたDNAの分割単位(aliquot)が、開放後に、H33258について公表されている蛍光手法を用いて測定される。DNAは最終的にはPCRベースの分析に用いられるので、溶出緩衝剤はこの用途と一貫性をもつものである。
【0041】
蛍光MB基体のDNA結合能力も試験される。同一のかん流チャンバーシステムが種々のDNA濃度を試験するのに用いられる。結合能力は、最終的な装置で遭遇する種々の緩衝剤を用いて試験される。dsDNAをMB被覆基体から開放することがとくに興味深い。結合DNA二本線は変性して基体から開放する必要があるであろう。なぜならば、これはメチジウムDNA補足ビーズを具備するケースだからである。この場合に、希釈NaOH溶液が用いられて、変性されたDNA溶液は、最終的に、アンモニウムアセテートにより中和される。
【0042】
精製された結合および開放データは、マイクロ流体装置の設計を支援するマルチフィジックスモデルのための基礎として用いられる。このモデルは、表面結合、核酸、移流、および塩およびDNAの最終的な各部の濃度を、プロトタイプの幾何、溶媒および溶質の特性、および精製されたデータによって特徴付けられる結合挙動に基づいて計算する。最良の予測性能を伴う装置設計が所望のプロトタイプ設計になる。全体としての性能はモデルの予想値と比較され、これが、実験的に取得できない装置内部の局所的な物理過程の情報を提供する。
【0043】
種々の表面の特性に依存して、いくつかの設計が実現可能であり、これは図7から理解できる。例えば、蛍光性MBサポート150がDNA結合および測定の二重の目的で働くことができるであろう。これはメチジウム粒子の使用に類似する。ガラス表面はより大きな結合能力を有しても良く、単一のチャンバー設計152は、DNA測定用の蛍光性MB表面を具備するガラス補足表面と組み合わせることができる。DNA結合および測定に異なる条件を要求しても良く、2つのチャンバーを用いる装置154が最良の設計であろう。予め行った計算によれば、図8に示すような、ガラス表面でDNA結合を行ない、プラスチックの対向表面でMB測定を行う単一チャンバー設計は、平滑なガラス表面であっても、84ngのDNAを補足して測定することが可能であることを示唆した(粗なガラス表面はより顕著に大きな量のDNAを結合するであろう)。
【0044】
図8は、62×40×3.55nmのマイクロ流体装置160を示し、これは、5μlのDNA結合チャンバー162、750μlの廃棄チャネル164、および2処理の最後に開放DNAを保持するための5μlのチャネル166を含む。流体はピペットにより注入ポート168を通じて注入される。流体は、廃棄排出口168または出力ポート170のどちらが開いているかに応じて廃棄チャネル164または開放DNAチャネル166へと進む。開放DNAはカード160からピペットを用いて生成物排出口172または出力ポート170を通じて除去される。図9は、装置を構成する5枚のラミネート層すべてを分解して示す。層180は0.125mmのビニルから構成され、層182は0.025mmの接着層であり、層184は3.175nmのPMMAであり、層186は0.100nmのACAであり、層188は0.125mmのビニルであり、層190は、層180に挿入されるPyrexカバースリップインサートである。各層は3つのレジスト穴192を整列用に含む。層182および186は、漏れ止めの態様で装置の各層を一体に保持する接着剤を含む。
【0045】
表Aの処理ステップは図10A〜Eに準じに示される。図10Aは、溶解したサンプル細胞を含む高濃度のGuSCN内のDNAの混合物202をピペットで注入した後のマイクロ流体装置160を示す。結合チャネル162を通じて棄チャネル164へと流される高濃度の塩、GuSCNを用いて洗浄したのち(図10B)、チャンバー162は生理食塩で洗い流され(図10C)、食塩205によりガラス190から開放されたDNAがMBに結合し、このMBがdsDNA濃度209が読み取れるように蛍光する(図10D)。最後に、脱イオン化された水(DI)が結合チャネル162を通じてピペット注入されDNAを押し出して開放DNAチャネル166に運び、チャンバー162から純化されたものを最終的に分配する。これを図10Eに示す。この時点で、生成物排出口132(図8参照)が開放されてDNAを取り出すことができるであろう。この装置は十分に小さく96−ウェルのプレートリーダー上に容易に配置でき、6ウェル中心ロケーションが結合チャネル内にあって正確にDNA濃度を多数読み出せるように設計される。この処理が最後に、固定化蛍光性MG基(おそらく、現時点では非蛍光性)が固定サポート上に残され、実験室廃棄物流に装置の残りが廃棄される。
【0046】
例
結合ヘキシルアミンがリンクされた蛍光性Hoechst染料の合成が実行された。ここで図11を参照すると、合成が図示される。とくに断らない限り、試薬はSigma−Adrichから取得した。無水性溶媒が確実に封止されたビン中に取得された。7cm長のTLCストリップを5×7cmのシリカ被覆アルミニウムシート(Merck)から切り出し、手持ち長波長UVランプを用いて照射して蛍光により全般的に視覚化した。溶媒前面(Rf)に対する蛍光スポットの移動をTLC分析のために測定した。蛍光性DNA結合分析用に用いられるHoechst33258標準(ビスベンズイミド、BB−OH)は、Sigma社から販売されているDNA Quantitation Kit中に取得した。このキットはビスベンズイミド(水中で10mg/mL)、10倍蛍光分析緩衝剤(10×FAB=100mMのトリス塩酸、10mMのEDTA、2MのNaCl、pH7.4)、およびDNA標準(刈り込まれたcarf胸腺DNA、1×FAB中に1mg/mL)を含む。このキットは、図12に示されるDNAの蛍光性測定の標準測定として用いられた。
【0047】
ブチルオキシカルボニル(Boc)防護アミノヘキサノール開始材料がSigma社から購入され、その500mgを、公表されている手順(KellerおよびHaner、Helv. Chimi. Acta,76(1993)884−892)に従って所望の臭化アルキルに変換した。この生成物は、カラムクロマトグラフィによりシリカゲルを介して単離され、生成物の292mg(45%の収率)を淡黄色の液体として生じる。他の汚染物から所望の生成物を分離するのは、臭化アルキル用の良好なTLCインジケータを欠いているので、困難であった。ヨウ素チャンバー中の汚染は低感度でしか動作しなかった。TLC(2:1のヘキサン/エチルアセテート):開始ROHのRf=0.17、RBrのRf=0.67である。
【0048】
Hoechst33258染料(ビスベンズイミド、BB−OH)が、Aldrich社からトリヒドロクロライド塩(ペンタハイドレート)として購入した。9.5mgの染料(15.2μモル)が、乾燥した15mL球底フラスコ中で15mLの乾燥DMF中に溶解された。36.5mg(265μモル)の炭酸カリウムおよび7.1μL(8.5mg、30.4μモル)のBoc防護臭化ヘキシルアミンである。混合物は53度で6時間、室温で日間、磁気的に攪拌された。TLC(10%メタノール、5%エチルジイソプロピルアミン、85%ジクロロメタン)が長波長のUVランプ(365nm)で照射したときに青色の蛍光スポットの混合を示した。開始BB−OH(Rf=0)が所望の生成物(Rf=0.3)および高移動度側生成物(Rf=0.5)に変換された。上澄みのDMF溶液は上澄み移動させられ、残りの炭酸カリウムは付加的な2mLのDMFで洗浄された。組み合わされた混合物は、真空下で回転蒸発により濃縮された。残留物は5%メタノール、5%エチルジイソプロピルアミン、90%ジクロロメタンの2mL中に溶解され、同一の溶媒でパックされた2×10cmのシリカゲルカラム(230−400メッシュ)に供給された。50mLの前留分が廃棄された後、高移動度側の生成物が約75mLで集められた。クロマトグラフィの進捗が、手持ちUVランプを用いて続けられる。溶質中のメタノールの百分率が10%に増大し、所望の生成物が90mLの溶媒中に単離された。回転蒸発器を用いて溶媒を除去して10.5mgの黄色の固体を得た(理論的な収率=9.5mg)。生成物はTLCによる1つの主たる青い蛍光バンドであり、他の蛍光汚染物のトレースを伴っていた。生成物は将来のNMRに備えて2mLの第2クロロホルム中に溶解された。CDCl3溶液の1mL部分は下記のように保護外とした。
【0049】
封止されたガラスアンプルからのトリフルオロ酢酸(1mL)が、1mLのCDCl3中の5mgのBB−NHBocに添加された。一様な溶液は封止された1ドラムのガラス製薬ビン中に保持された。保護解除はTLC(35%メタノール、5%エチルジイソプロピルアミン、60%ジクロロメタン)により引き継がれた。開始BB−NHBoc(Rf=0.7)は、ゆっくりと保護解除されて低移動度生成物(Rf=0)へと移行する低移動度塩(Rf=0.5)へと変換された。24時間後、100μLの分割単位(aliquot)の反応混合物が、過剰のTFAを回転蒸発器で除去し、メタノールに溶解させ、さらに少量の炭酸カリウムを添加することにより、無塩基へと変換された。室温で取得された無塩基形態のBB−NH2は単一の主たる蛍光バンド(Rf=0.07)および蛍光汚染物質のトレースを示した。バルクの反応混合物は上述したように無塩基へと変換され、3mLの2:1メタノール/クロロホルム中に溶解された。生成物は秤量されなかったが(約1.7mg/mL)、収率は、開始ビスベンズイミド染料(BB−OH)のUV吸収との比較から計算された。
【0050】
1×FAB中のBB−OHの10μM溶液のUV−visスペクトルは340nmの吸収極大(0.18ユニット)を有する。BB−NH2の溶液は、995.7μLの1×FAB中に、4.3μLの約1.7mg/mLの溶液を溶解することにより準備された。吸収極大は342nm(0.075ユニット)であった。BB−OHおよびBB−NH2は同一の減衰係数を有し、BB−NH2のUV−visサンプルの濃度が計算された(10μM×(0.075/0.18)=4.4μM)。この結果、約1.7mg/mLの溶液の測定濃度が0.7mg/mL(0.98mM)とされた。BB−NH2の収率(2.1mg、2.9mモル)は開始BB−OHからの38%収率に対応する。この分析は、少量を秤量するより収率の決定を正確に行える。秤量では、塩および不可視(NMRによる)のトリフルオロ酢酸が誤差を与えると考えられる。
【0051】
図12において220により示されるBB−OH分子の蛍光は、dsDNAの存在下では、492nmの弱い発光から458nmの強い発光へと変化する。Sigma社からのDNA定量(Quantitation)キット(BB−OHベース)を用いてBio−Tek FL600蛍光プレートリーダー上で標準曲線を生成した。分析は、供給されたプロトコルに従って96−ウェルの透明な底板中で実行された。0.1μg/mLのBB−OH濃度を、各DNA標準(20−1000μg/mL)に対する指示緩衝剤として用いた。結果を図12に示す。図12は、222で参照されるMM−NH2がビスベンズイミド染料の蛍光性DNA検出特性を保持していたことを示す。Hoechst33258分子上のフェノールの改質はUV−vis吸収(極大波長が約340nm)を変更せず、ヘキシルアミン改質類似体が360nm(40nmスリット幅)で励起されたときに強い蛍光信号(460nm、40nmのスリット幅での検出)を示した。ヘキシルアミンリンカーは、DNA特異性蛍光を改善し、これはDNAのカチオンの第1アミンに対して親和性が大きいからと考えられる。BB−NH2分子は、平坦なビスベンズイミド構造の各末端にカチオンのアミノ基を有し、このため、これをDNAのマイナーグルーブバインダにしっかりと固定させる。他のDNA親和剤(オリゴヌクレオチドのように)は溶液中で蛍光性プローブとしての機能を示した。
【0052】
蛍光性MB表面を準備するための種々の固定化の化学過程が考慮された。dsDNA検出表面の設計における3つの主たる要素は以下のとおりである。
1.インジケータ:
dsDNAの存在下でのみ蛍光性である。
リンカーはほとんど蛍光性を持たない背景とともにスペーサ分子に結合する。
2.基体:
関与対象のスペクトル領域で透明である。
スペーサ/インジケータ分子で簡単に被覆される。
3.スペーサ:
蛍光性インジケータおよび基体に対して簡易に共役化される。
蛍光性MBを立体障害を伴うことなくdsDNAにアクセス可能にする。
【0053】
図12に説明するBB−OHおよびBB−NH2 DNAインジケータは所望のDNA特異性蛍光特性を有し、結合点として働く特別な官能基を有する。求電子物質、例えば、活性化エステルまたは塩化シアヌルとの反応が分子中の多数の位置で起こり得、これら側部反応が所望のDNA特異性蛍光を減少させることがある。三日月形状のDNA結合領域中の「損傷」(damaged)構造がDNA特異性発光を変更する可能性がある。両分子は、環状の第3アルキルアミン基を1つの末端に有し、これがアルキル化され得る。イミダゾール基もアルキル化が発生可能なサイトを有する。種々の表面構造が所望のDNA特性蛍光を持ち得るけれども、一貫したDNA特異性蛍光を与える一様で再生成可能な表面構造を持つことが有益である。BB−NH2リンカーは求電子物質と選択的に反応可能な第1ヘキシルアミン基を含む。必要であれば、リンカーの腕をポリエチレングリコールにより延長可能である。Quantum Biodesign社はBoc防護されたカルボン酸を販売しており、これはより親水性で立体配座上柔軟な、BB蛍光体を固体サポート(基体)にけつごうさせるためのリンカーを提供する。
【0054】
プラスチック(mylar)基体への関心は、360nmで照射したとき460nmで顕著な背景蛍光が起こることが見いだされるかどうかに左右される。Scotch(商標)テープ(装置のポートを封止するのに用いられる)は顕著な460nmの蛍光性を有することも見いだされた。DNAマイクロアレイ用にオリゴヌクレオチドを1×3cmのスライドに固定化する多くの文献およびいくつかの化学過程が存在する。アミン被覆スライド(アミノプロピルシラン)を、リンカーおよびインジケータ分子をナノ加工するための基体としてSigma社から取得した。他の商業的に入手可能なスライド化学(Amersham Biosciences社からのCodeLink(商標))も試された。これらスライドは活性化エステル(N−ヒドロキシ琥珀酸エステル)基において終端する伸長したリンカー構造を有する。CodeLink社のスライダは「アミン末端オリゴヌクレオチドの固定化を可能にし、長いPEGリンカーを必要とすることなくハイブリダイズを行える」ことを宣伝文句としている。BB−NH2蛍光体はこの表面と直接に作用させられることが可能であろうから、最初に試験された。
【0055】
BB−NH2の固定化は3D−Linkスライドの上でカバースリップの下でpH8.5において試された。1つの巣零度あたり最高で16ウェルまで同時に試験することが可能な複数ウェルハイブリダイズチャンバー(Grace Bio−Labs)を購入した。種々の時間、反応させた後、スライドの過剰なBB−NH2を緩衝剤で洗浄し、同一のカバースリップ手法で蓋をした。蛍光性DNA結合特性を評価する前に、1×FABで最後に洗浄した。
【0056】
BB−NH2インジケータの特性が予想通りに改善できた。460nmでの蛍光背景は、最適化可能な重要な特性である。高い背景またはdsDNAの不十分な開放が問題ならば、他の表面が、アミン被覆スライドを用いて試される。CodeLinkスライドに関連して試される1つのキーとなる変更点は、BB−NH2の固定化の後に種々のアミンで蓋をする効果である。これにより、溶液中のBB蛍光性分子、スペーサ、およびdsDNAのインタフェースで分子特性が変更される。このインタフェースの性質は、蛍光体のdsDNAへの結合やDNAの固体表面への結合態様に影響を与えるようである。CodLink社は50mLのエタノールアミンで蓋をすることを推奨し、これが中性の表面被覆をなすに違いない。ジアミンまたは他のポリアミンによる蓋は正味で正の電荷をスライド表面に付与し、非可逆的に(開放なし)DNAを結合することができるであろう。他方、これら正の電荷が結合速度を高速にし、またdsDNAの局所的な濃度を増大できるであろう(寄り良好な信号となる)。活性化エステルをリジン基で蓋をすると、双性イオンのアミノ酸表面を実現し、これがDNAに対して非吸引的であり、このため表面を「不動態化」(passivating)する。カルボン酸基を表面に導入する他の方法は、BB−NH2の固定化の後に、HNSエステルを単純に加水分解することである。固定化は高pH(8.5)で起こるので、スライドを緩衝在中に1晩保持しておけば、スライド表面上の入手可能なNHSエステルが加水分解される傾向がある。これにより、スライド表面およびDNAのインタフェースに正味で負の電荷が付与され、蛍光信号および背景に影響を与えるであろう。これは、カチオンの蛍光性インジケータを固定化する手法としても採用できる。
【0057】
CodeKinkスライドはAmersham Biosciences社から入手し、以下のプロトコルに従って用いた。単一スライドを、16の異なる固定化反応の試験のために用いた。16ウェルシリコーンゴムガスケットを、「96−ウェルフォーマット」クランプシステム(ProPlate(商標)、Grace Bio−labs)を用いてプレートに接着させた。スライド上に形成された四角なウェルは300μLまでの体積を有し、透明なプラスチック接着封止フィルム(与えられている)でカバーできる。活性化エステルスライド表面は上方を向き、配向目的で、スライド状の「CodeLink」の名称がウェル1および2の頂部に位置するようになす。BB−OH(水中で1mg/mL)およびBB−NH2(メタノール中で0.7mg/mL)溶液が先に説明したように準備された。3mg/mLのアミノエタノール(50nM)を含むpH8.5の重炭酸塩(0.1M)をキャップ溶液として用いた。
【0058】
BB−NH2溶液(100μL)が300μLのメタノールと混合され、600mLのpH8.5の重炭酸ナトリウム(0.1M)で希釈した。この溶液(70μg/mL)を用いて、pH8.5の十炭酸塩中で7μg/mLのBB−NH2および0.7μg/mLの溶液を準備した。この溶液は、長波長UV(356nm)のランプの下で淡緑色の蛍光性を有する。pH8.5の絨毯酸塩中で10μg/mLのBB−OH溶液が1mg/mL溶液から準備された。CodeLinkスライド表面上の16個のウェルは以下のように処理された。ウェル1−4は0.7μg/mLのBB−NH2、ウェル5−8は7μg/mLのBB−NH2、ウェル9−12は70μg/mL、ウェル13−16は10μg/mLのBB−OHである。ウェルに充填した後(ウェル当たり0.2mL)、巣零度分子は接着フィルムで被覆されて室温で18時間保持された(暗所で)。フィルムが除去され、BB含有溶液が各ウェルから除去され、0.2mLのキャップ溶液が添加され、ウェルが再封止された。7時間後、キャップ溶液が各ウェルから除去され、ガスケットが洗浄のためにスライドから除去された。スライドは、50mL遠心分離チューブ中で20分、40mLの40%メタノール/60%重炭酸ナトリウム(0.1M)中に浸され、1×FAB中で20分、除去され、浸される。スライドを取り外し、蛍光プレートリーダー上で分析される。
【0059】
DNA指示表面の感度および精度は特徴的であった。BB−NH2含有スライド表面の評価は、先に説明したdsDNAと、類似のプレートリーダー分析フォーマットとを用いて試された。
【0060】
先に準備されたBB−NH2処理ウェルおよびBB−OH処理ウェルが評価された。16ウェルシリコーンゴムガスケットが処理されたCodeLinkスライド上に組み立て直された。残りの1×FAB緩衝剤はKimwaipeでたたいてスライド表面から除去した(わずかな滴は残った)。固定化混合物の各々のための4つのウェルの各々が以下の溶液の1つで再び水和される。すなわち、1000ng/mLのDNA、200ng/mLのDNA、1×FAB、液体なしである。用意したばかりの溶液が通常の460nmの蛍光について試験された(ボトムリード、感度=115)。ウェルを読み取った後に、脱イオン化水を用いて洗浄してDNAを除去し、再度測定した。
【0061】
BB処理したスライド表面のすべてはdsDNAの存在下で460nmの蛍光の増大を示した。これを図13に示す。最も大きな濃度のBB−NH2(70μg/mL)との固定化反応は、230で示され、最も大きな蛍光信号を示した。ただし、高注入レベルは高蛍光背景(DNAなしで50,000カウントより大きい)ももたらした。7μg/mLの固定化反応が、232で示され、最も良好な性能を示した。用量反応は最低で200μg/mLのDNAまで観測できた。固定化反応におけるBB−NH2の最低レベルは、234で示され、最低で200μg/mLのDNAまでの用量応答が実現された。信号は小さいけれども、BB−OHインジケータさえも、236で示すように、DNA濃度が増加すると460nmの蛍光の所望の増加を実現した。水でウェルのDNAを洗い落とした後、ウェルは460nmでDNA特異の蛍光の証拠を示さなかった。同一レベルの固定化蛍光体を伴うすべてのウェルは類似の蛍光性を有した。
【0062】
図13のデータにおいては溶液中に蛍光染料がない。DNA結合分析は固定化されたBB−NH2またはBB−OHを用いる。すべての表面は、DNAがない場合でさえ、460nmで所定の蛍光信号をBB−NH2固定化領域中で示す。dsDNAが結合表面に導入されると、460nmの蛍光が増大する。スライド表面のコントロール(比較)領域(DNAなし)を用いて、背景差分を可能にする。
【0063】
固定化BB−NH2蛍光体はdsDNAの存在下で良好な用量反応を実現する。460nmにおける蛍光信号の強さは、溶液中のBB−NH2反応とほぼ同じであるけれども、背景はより大きい(図13参照)。固定化BB−NH2の主たる利点は、小さな体積しか必要としないということである。液相分析で必要とされる200μLのウェルの容積と異なって、固定化BB表面を十分に塗らすに足るDNA溶液だけで十分である。これにより、DNA精製のマイクロ流体装置の準備が可能になる。
【0064】
ガラス表面を用いて複雑な生物学的混合物からDNAを精製することが他者により示されており、これら結果を蛍光性BB分析を用いて検証した。マイクロ流体装置に必要なステップは以下の表Bに示される。液相BB分析を用いて未改質ガラスのDNA結合および開放レベルを決定した。
【0065】
表B
1.高濃度のGuSCNを用いて、細胞を溶解し、ヒストンを除去し、DNAをガラスに結合する。
2.ガラス結合DNAを高濃度GuSCNで洗浄する。
3.生理食塩で結合DNAをガラスから開放する。
4.蛍光性基体を用いてチャンバー内の開放DNAの濃度を読み取る。
5.DNAを蛍光性基体から開放してPCRベースの分析に使用するために調整する。
【0066】
グアニジウムチオシアネート(10M)が、蛍光性DNA結合分析において試験され、高濃度で、460nmの蛍光性背景を実現することがわかった。DNAをガラスに結合するために用いる他の慣用的なカオトロープは沃化ナトリウム(12M)である。それは低いバックグラウンドを伴ったけれども、過塩素酸ナトリウムに較べより高価であり、より扱いにくい(溶液が変色する)。したがって、過塩素酸ナトリウム(6M)が開発用に選ばれた。0.1mL中に50、500または5000ngのDNAの溶液が6M過塩素酸ナトリウム(pH8 Tris)中で準備された。これらの0.1mL容積がポリスチレンのペトリー皿に移されて、22×22mmのカバースリップ(ガラスまたはプラスチック)がそれらの上に配置された。室温で1.5時間保持した後に、スリップを注意深く斜めに上げて残りの液体から取り除いた。このスリップをKimwipe上に載せ(DNAは下向き)いずれの残留滴を除去した。各スリップをペトリー皿中の0.1mLの容積の1×蛍光分析緩衝剤へと移した(1×FAB:10mMのTris HCl、1mMのEDTA、200mMのNaCl、pH7.4)。室温で4時間保持した後に、スリップを取り外し、DNA側を0.15mLの1×FABで洗浄した。各スライドからの組み合わせ緩衝剤は1×FABで0.27mLをもたらし、30μLの1μg/mLのビスベンズイミド(BB−OH)溶液(1×FAB中で)が付加された。各スリップから200マイクロリットルの容積がマイクロウェル(透明な底)へ移され、サンプルがBiotek FL−600プレートリーダー上で読み取られた。蛍光は460nmで読み取られ、DNA濃度は標準曲線から決定された。
【0067】
図14を参照すると、カバースリップに対するDNA補足および開放の効率が示される。プラスチックカバースリップは250で示すようにDNA結合を示さない。ガラスカバースリップに対するDNA補足および開放の効率は、252で示され、少量のDNAに対して最大となる。カバースリップ当たり50ngのDNAで、7.2ngが復元された(14%の効率)。カバースリップ当たり500ngのDNAで、68ngが復元された(14%の効率)。カバースリップ当たり5000ngのDNAで、113ngのDNAが復元された(2%の効率)。これらの結果から、ガラスカバースリットがμ流体DNA精製用に適した表面であり、少なくとも68ngのDNAが500ngのサンプルから効率的に復元することができることがわかる。
【0068】
プロトタイプカードが、手作業のピペットによる溶液の付加に対して最適化されており、1分当たり100μLの流速が、手慣れた作業およびRainin 200 μL Pipemanにより実現できた。より遅い流速(泡の形成を最小化するのに重要)は、実現がより困難であるけれども、200μLの分注器を成功裏に用いてDNA結合チャネル(20μL)を泡を導入することなしに満たすことができた。
【0069】
今まで検討したカードは、いくつかの小幅な変形例でもうまくいった。ガラスの一列のチャネルは低流速で十分に湿潤となり、流体は、チャネルを通じて空気を流すことにより除去できた。DNA捕捉ウェルは蛍光性プレートリーダーを用いた分析のために精製したDNAをすべて回収する設計とした。固定化BB表面を用いて、DNA捕捉ウェルは薄型のチャネルを実現する設計を採用でき、このチャネルは、蛍光性分析の後に、DNAを他のチャネルに分配させるように容易に構成できる。蛍光性BB染料は固定化されるので、精製DNAは、下流のDNA分析チャンバーにうちした時にも指示用蛍光体で汚染されているということがない。
【0070】
この発明は好ましい実施例との関連で開示され説明されてきたけれども、この発明はどの実施例にも制約されず、この発明の真実の精神および範囲は添付の実施例に規定され、これから逸脱することなしに変更を行えることに留意されたい。
【0071】
ここに開示された発明の例示的な実施例がこの発明の目的を達成することは明らかであるが、当業者が種々の変形や他の実施例を構成できることは容易に理解できる。さらに、任意の実施例の特徴および/または要素を、単独で、または他の実施例の特徴および/または要素と組み合わせて使用できる。添付の特許請求の範囲は、これらすべての変形例や実施例を、その趣旨を逸脱することなくカバーすることを意図するものであることは、容易に理解できる。
【0072】
添付図面は明細書の一部を形成し、明細書との関連において理解されるべきであり、種々の図において類似の参照番号は類似の部分を示すために用いられる。添付図面は以下のとおりである。
【図面の簡単な説明】
【0073】
【図1】合成12−merDNA二本鎖に結合したHoechst 33258の構造を示す図である。
【図2】DNAプローブ上のリンカーに結合するよう開発されたH33258no反応性類似物の構造を示す図である。
【図3】マイクロ流体装置内を流れる2つの流体の相互作用を示す図である。
【図4】蛍光性マイナーグルーブバインダ(MB)を連結させたいくつかのアミン改質表面を示す図である。
【図5】反応基をともなう蛍光性MBの合成を示す図である。
【図6】有機溶液中における塩化シアヌルによるスライドのアミン改質ガラス表面の活性化を示す図である。
【図7】この発明に使用して好適なマイクロ流体装置の実現可能なチャンバー設計を示す図である。
【図8】この発明に使用して好適なマイクロ流体カードの正面図である。
【図9】マイクロ流体カードをその層を分離して示す分解図である。
【図10】図9のカードの使用時の連続事象を示す正面図である。
【図11】結合したヘキシルアミンリンカーを伴う蛍光性Hoechst色素の合成を説明する図である。
【図12】360nmで励起された、BB−NH2分子 vs BB−OHの蛍光性を示す図である。
【図13】4つの異なるビスベンズイミド表面の460nmの蛍光性を示す図である。
【図14】ガラスおよびプラスチックカバースリップに対して付与されたDNAの量に対する結合されたDNAの量を示す図である。
【符号の説明】
【0074】
50 第1の流れ
52、58 小さな粒子
54 血液全体
56 第2の流れ
60 純粋な溶液
62 共通チャネル
【技術分野】
【0001】
[政府の関与]
この発明はSBIR許諾番号GM072178−01の下で政府の支援の下でなされた。政府はこの発明に関し所定の権利を有するかもしれない。
[関連出願の相互参照]
この出願は2005年1月26日に提出された米国特許出願第11/043,561により生じる利益を要求し、その出願の内容は参照してここに組み入れる。
【0002】
この発明は全般的にはDNAの浄化に関し、具体的には、DNAの浄化および分析におけるナノ加工表面の使用に関する。
【背景技術】
【0003】
ゲノムDNAの単離、操作、および測定を簡略化する技術が、携帯型の医療診断または生体防御の用途に必要とされている。人体の組織から単離された核酸の質は、再生産可能で正確で詳細な遺伝子分析データに決定的である。DNA単離製品は商業的に重要なので、この分野における研究も沢山ある。
【0004】
著しい進展が見られる1つの技術は遺伝子分析を行うためのマイクロ流体装置である。多くのマイクロアレイ分析フォーマットが入手可能であり、これらは共通して単一のサンプルから広範囲の遺伝子ターゲットを同時に調べることができる。
【0005】
二重螺旋DNA(dsDNA)の濃度を蛍光性マイナーグルーブ結合分子(MB)を利用して測定する高感度の液相分析が、すでに開発されている。DNAがないときには、その分子は溶液内で自由に回転でき、これは低蛍光背景に欠かせない。dsDNAに結合すると、この化合物は疎水性のマイナーグルーブにおいて堅固な平面配座を形成し、これが蛍光を増大させる。蛍光MBの表面への結合を注意深く操作することにより、マイクロ流体装置を通過するときに、DNAの料を測定できる。
【発明の開示】
【0006】
したがって、この発明の目的は、同時に、ゲノムDNAを単離し、精製したDNAの量を測定し、下流の分析のための特定の濃度の標準化DNA溶液を分配するマイクロ流体装置を提供することである。
【0007】
この発明のさらなる目的は、装置のコストおよび複雑さを最小化してDNAを単離して準備するDNA単離用のマイクロ流体装置を提供することである。
【0008】
この発明のさらなる目的は、同時に、生物学的流体から二重螺旋DNA(dsDNA)を補足し、固定化したDNAの料を測定することができるマイクロ流体装置を提供することである。
【0009】
この発明のさらなる目的は、求電子性または求核性リンカー基を具備する蛍光性マイナーグルーブバインダ薬剤(MB)を合成し、dsDNAの存在下で増大した蛍光性を明らかにすることである。
【0010】
この発明のこれらの目的および他の目的は以下の説明および図面からより容易に明らかになる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
dsDNAの濃度を測定する高感度の液相分析が蛍光性マイナーグルーブ結合(MB)試薬(Hoechst33258)を用いて開発されている。DNAがないときには、その分子は溶液内で自由に回転でき、これは低蛍光背景に欠かせない。dsDNAに結合すると、この化合物は疎水性のマイナーグルーブにおいて堅固な平面配座を形成し、これが蛍光を増大させる。蛍光MBの表面への結合を注意深く操作することにより、マイクロ流体装置を通過するときに、DNAの料を測定できる。共役化学を用いて、立体配座の自由度を最大化させターゲットDNAにアクセスするように設計された高分子構造上で蛍光体を位置決めする。
【0012】
Hoechst 33258分子は多環式構造を有し、これが、B−フォームDNAのマイナーグルーブに同等螺旋で合致する(isohelical)三日月構造を形成できる。図1は、合成12−merのDNA二本鎖に結合するHoechstの溶液NMR構造を示す。三日月形状の分子のフェノール末端は、共役基で結合するための便利な結合点である。液体溶液中の構造は柔軟であり、そうたいてきには非蛍光性である。未結合の分子を356nmの光で励起すると、492nmで弱い蛍光性を示す。ただし、dsDNAに結合すると、ベンズイミダゾール環が平坦配座に固定され、大規模な芳香族系が形成され458nmで強い蛍光を発散する。この分子はマイナーグルーブ中でむず分子から遮蔽され、これによりさらに蛍光が増大する。H33258noこのような蛍光性特徴によりdsDNAの濃度を測定する高感度な分析が開発され、これは簡単な分析であり、細胞係数に用いられる。
【0013】
DNAに結合するH33258の構造に関心がもたれてきた。MBは疎水性相互作用、バンデルワールス力およびイミダゾール残留による水素結合によって適所に保持される。H33258の強力なマイナーグルーブ結合によりdsDNAを直接に単離する機構も実現できる。アデニン/チミンが多い配列に対するMBのマイナーグルーブ結合が好ましく、DNA結合定数は挿入剤のような他の小さなMW試薬よりも大きなオーダーとなる。挿入蛍光試薬も十分に試された。このクラスのDNA結合試薬の例は臭化エチジウムであり、電気泳動後のゲル中のDNAを染色するために広く用いられている。メチジウム染料は、セファロース粒子に結合されてDNA単離製品を実現してきた。メチジウムのような挿入染料はマイナーグルーブバインダのクラスの染料ほど結合力が大きくない。メチジウムはセフロース粒子にカチオンスペルミンリンカーを利用して結合された。これは明らかにDNA結合を改善した。さらに、エチジウムは、dsDNAに結合して、量子収率をわずかだけ向上させる。メチジウム・セフロース粒子の蛍光特性は説明されていなかった。
【0014】
シアニン型の挿入染料はエチジウム挿入剤よりかなり多くの蛍光性を有する。チアゾールオレンジ(TO)は、2つの二環芳香族環構造からなる非対称なシアニン染料である。509nmの光で励起されると、これら2つの構造が相互に自由に回転し、蛍光性はほとんどない。しかし、dsDNAがあると、TOは塩基対の間に入り込み、環システムが平坦になるように強制する。強い蛍光を533nmで生じる大きな芳香族系ができる。TOはマイナーグルーブ結合試薬のように強固にdsDNAには結合しないが、2つのTO分子が一緒に結合して強固な結合二重挿入剤(bis−intercalator)を形成できる。
【0015】
高感度のDNA結合分析がシアニン型の染料の蛍光特性に基づいて開発されてきた。TOもRNAの存在下で3000倍までの増大を示す。この特性は興味深いものであり、RNA単離装置に適用できる。
【0016】
これら蛍光性化合物は、オリゴヌクレオチドに結合されて、ハイブリダイズ分析中でdsDNAの形成を監視するDNAプローブを形成してきた。H33258のいくつかの反応性誘導体はDNAプローブへの結合用に開発されてきた。図2は、DNAプローブのリンカーに結合させるために開発されたH33258のいくつかの反応性類似物を示す。
例えば、H33258のブロモアセチル類似物はスルフヒドリル改質オリゴヌクレオチドと共役であった。高感度のDNA結合分析がシアニン型の染料の蛍光特性に基づいて開発されてきた。TOもRNAの存在下で3000倍までの増大を示す。この特性は興味深いものであり、RNA単離装置に適用できる。
【0017】
これら蛍光性化合物は、オリゴヌクレオチドに結合されて、ハイブリダイズ分析中でdsDNAの形成を監視するDNAプローブを形成してきた。H33258のいくつかの反応性誘導体はDNAプローブへの結合用に開発されてきた。図2は、DNAプローブのリンカーに結合させるために開発されたH33258のいくつかの反応性類似物を示す。相補的な単一螺旋のDNAターゲットへのハイブリダイズは結合親和力を増大させ、結合時に蛍光を23倍まで増大させる。改善された結合効率(DNA溶融温度)は、配列特異的なものである。A/T領域がリガンドの結合点の近くに配置されると、TMが急激に増加し、H33258の強力なDNA結合作用を実現する。同様の合成化学を用いてこれら蛍光性染料の反応性類似物を準備してアミン改質ガラスまたはプラスチック表面と共役させることができる。
【0018】
オリゴのシアニン染料共役物は、相補的なDNA螺旋を付加したときに、予想通りのハイブリダイズ誘引の蛍光を示した。蛍光性は、形成された二本線の末端配列に応じて変化した。TOのDNA二重線への結合は、配列依存であることが知られている。シアニン染料のHNSエステル類似物はアミン改質オリゴヌクレオチドと反応して蛍光性「実時間」PCR分析に使用されるDNAプローブを実現した。蛍光の20倍までの増加がオリゴヌクレオチド共役物において観察された。MGBおよびシアニン型蛍光性オリゴヌクレオチド共役物の双方のDNAプローブへの適用は、染料の配列依存の結合ゆえに、複雑であった。DNAのゲノム片の異種集団に焦点があてられるので、結合部位の配列依存によりsDNAの結合測定が影響を受けないようにすべきである。
【0019】
核酸は、高濃度のカオトロピック塩溶液の存在下で、ガラス表面と極めて高い親和性を有し、多くのガラスベースのDNA単離製品が商業的に入手できる。これら製品は使いやすいけれども、複数のピペット操作、Eppendorfチューブまたは96ウェルプレート、ボルテックス(vortexer)、遠心分離機のような装置へのアクセスを必要とする。操作は開放された研究施設で行われ、溶液の蒸散による問題を回避するために比較的大きな資料体積を必要とする。DNA濃度は通常UV−vis分光光度計により測定され、再現可能な結果をえるためには良好な技術が必要とされる。それにもかかわらず、種々の生物学的資料からDNAを単離するためにガラスが使用され続けてきた。
【0020】
DNA結合のガラスへの初期の適用は、アガロースゲルから電気泳動的に浄化されたDNAを単離するためのものであった。ソーダライムまたはボロシリケートガラスのDNA結合能力は、800mm2あたりDNAを約300ngと同等のものであった。800mm2は、ほぼ、ガラス顕微鏡スライドおよび20×20mmカバースリップの間に形成されるチャンバの表面面積である。多くのマイクロ流体DNA単離アプリケーションでは、チューブまたはファイバーからの粉末ガラス、二酸化珪素、または珪藻のシリカスケルトンを利用する。これらのサポートは平坦な表面よりかなり大きな表面面積を確保できるからである。マイクロ流体装置は、溶液の体積が小さく(蒸散の問題がない)、PCRゲースのゲノム分析に必要とされる捕捉DNAの量が著しく少ないので、締結号の平坦なガラス表面を用いることができる。平坦なガラスは種々の組成物、サイズ、および、粗さで入手でき、より表面面積が必要ならばさらなるエッチングを行える。
【0021】
mRNAまたはDNAの液相分析は、一端に蛍光レポータ基を他端に蛍光消光分子を担持するDNAオリゴヌクレオチドプローブを用いてPCRサイクルにおいて実現される。1つのフォーマット(TaqMan分析)において、プローブは、Taqポリメラーゼの3'−エキソヌクレアーゼにより要約される短い単一螺旋のオリゴである。他の蛍光性フォーマット(分子ビーコン分析)は、幹部に隣接蛍光体および消光分子を具備するヘアピン形状のオリゴを用いる。ヘアピンは、相補的なDNA螺旋の存在下で開いて蛍光信号を付与する。これら蛍光性フォーマットの各々は、それぞれの増幅サイクルが成功して蛍光信号を増大させるので、PCRの進捗をモニターするのに用いることができる。これらPCRベースのフォーマットの双方は、分析サイズの下限が処理上の問題(小さな胆石の染色)および利用可能な装置の解像度のみに制約されるだけであるので、マイクロ流体ベースのプラットホームに理想的である。好評な(高スループット)の熱サイクル蛍光光度計は、ABI7900HTであり、これは384ウェルプレートを分析でき、PCRの間に測定される各遺伝子のウェル当たり10uLである。ウェルあたり10pg−10ngのゲノムDNAが好ましく、これはPCRシステムの効率およびDNAの量に左右される。
【0022】
ガラス顕微鏡スライドがDNAマイクロアレイの慣用的な基板である。多くのマイクロアレイ分析フォーマットが入手可能であり、これらは共通して単一のサンプルから広範囲の遺伝子ターゲットを同時に調べることができる。合成オリゴヌクレオチドのアレイは、ガラスサポートから直接に合成され、改質合成プローブの終点結合により準備されてきた。ガンマアミノプロピルシラン(GAPS)は、ガラス表面を官能化するのに用いることが可能な揮発性試薬であり、いくつかのGAPSスライドの製造者がある。GAPSスライドのアミン被覆表面を二官能性リンカーを用いて活性化して、アミン改質オリゴの溶液と反応する親電子性表面を生成できる。種々の共役化学を用いて蛍光性DNA結合染料を結合するのに用いることができる。
【0023】
オリゴヌクレオチドのアタッチメントの密度はハイブリダイズの効率上重要な要素である。高密度のオリゴはガラスから直接合成して実現できるけれども、捕捉プローブが過剰に緊密に包まれるときにラベルDNAターゲットのハイブリダイズが実際に落ちることが判明した。ガラスアタッチメント点およびオリゴヌクレオチド配列の間のリンカーの長さを長くしたときにハイブリダイズの効率が改善した。長さが80原子までのポリエチレングリコール(PEG)のリンカーハイブリダイズ信号を改善し続けた。このことは、液相パフォーマンスを再現するためには固体サポートおよびDNAプローブの間の長いリンカーが重要であることを示す。
【0024】
DNAプローブをガラス表面に長いポリエチレングリコールで結合すると効率を改善した。種々の官能基を伴う高分子PEGリンカーは商業的に入手可能であり(Quanta、Biodesign、Powell、Ohio)、薬物動態特性を改善するためにたんぱく薬剤に結合させるために主に用いられた。他の高分子構造が固定化DNAプローブの性能を改善するために採用された。例えば、ビオチン改質分子ビーコンがアビジン被覆ガラスサポートに結合されて配列特異的なDNA分析に用いられた。アビジンまたはストレプトアビジンをスペーサとして用いてDNAをガラス表面から離して配置することが、プローブの機能として同様に重要である。考慮すべき他のタイプの高分子リンカーはデンドリマーポリマーである。これら商業的に袖手可能な(Adrich Chemical Co.ワイオミング州、ミルオーキ)分子は、合成の「ジェネレーション」に応じてアミノ基およびカルボキシレート基の交互の層の中に合成される。これら分子の三次元構造は良好に制御され、その特定は良く理解できる。アミン豊富デンドリマー構造は、細胞中でDNAを包囲するのに重要なヒストンタンパク質と類似している。これらは、見込みのある遺伝子治療用途のために細胞中にDNA系列を導入するために成功裏に使用されてきた。デンドリマーリンカーは固定化MB分子をDNA豊富溶液中に実現する良好な骨格を形成すると考えられる。デンドリマーリンカーおよび蛍光性DNA検出分子(Sytox 13、分子プローブ)を含むバイオセンサーフィルムを用いてプラスチック表面上の生細菌のレベルを測定した。これら材料は、リンカー、蛍光性染料またはプラスチック表面の間に共有リンクを含まなかったけれども、疎水性力により一体になっていた。
【0025】
DNAマイクロアレイ技術は、閉鎖されているマイクロ流体処理から便宜を受ける小型分析を実現する。例えば、連続流で動作するマイクロマシン化化学増幅器は176−塩基対フラグメントの20サイクルのポリメラーゼチェーン反応(PCR)増幅を示した。流れチャンバーにおいて堰後方で捕捉された白血球からのゲノムDNAターゲットのPCR増幅は、シリカガラスマイクロチップ中の全血液から示された。DNAチップアレイを用いた中程度の密度のアレイメソッドが、PCR製品の診察用系列用に開発されて、使用する際のコストや手間が省かれた。抗生物質耐性臨床分離株が、PCR増幅の後、1時間以内に視覚的に検出された。他の用途は、漢方薬において用いられる毒性薬草のDNA系列ベースの特定である。2001年、Petrikは、C型肝炎ウイルスについて献血を大規模にスクリーニングするゲノムプロジェクト用に当初開発されたマイクロアレイデバイスの使用を調査した。PCR分析用に一体化したシステムは、二重ペルティエ熱電気要素を電気泳動サイジングおよび検出にマイクロチップ上で結合することにより取得できた。DNA濃縮注入スキームの使用により、10熱サイクル程度の回数でPCR生成物の検出が可能になった。マイクロ流体カートリッジは、超音波分断、崩壊した胞子へのPCR試薬の添加、およびPCRチューブ中の混合物の注入によりPCR分析用に胞子を準備するために開発された。胞子DNAの処理および検出は20分以内に完了された。単一DNAテンプレート分子の統計的PCR増幅を、これに続く生成物の電気泳動分析に組み合わせた一体化したマイクロ流体装置が、開発された。繰り返されたPCR分析から正規化されたピーク領域のヒストグラムが、反応装置中の単一の成長可能なテンプレート分子コピーによる量子化を示した。核酸系列ベースの増幅(NASBA)により増幅されたRNAを検出するためのマイクロ流体チップが開発された。クリプトスポリジウムパルバム(cryptosporidium parvam)のサンプルが検出され、増幅RNAをNASBA混合物から分離することなしに明瞭に比較例(control)から区別できた。ほおの細胞から直接にナロリットルDNA分析を行うための自動化マイクロ流体システムが開発された。これは、DNA分析に必要なすべてのステップ、すなわち、注入、混合、溶解、PCR、分離、サイジング、および検出を含む。このシステムをさらに小型化する可能性が確立された。一体化されたマイクロ流体チップベースシステムが、遺伝子組み替え型の、アデノウイルスの、治療プロダクトの品質制御テスト用に開発された。ウイルス特定テストがDNA断片の寸法を図り計量し、アガロースゲル法に較べて100倍少ないサンプルしか必要としない。
【0026】
少量の人の血液(<20μL)を処理して遺伝子分析用の標準化ゲノムDNAサンプルを放出するDNA単離装置を開発する必要がある。種々のDNA処理チャンバーを流れる流体の流れを制御するマイクロポンプ駆動機器中に挿入できる単一回数使用のマイクロ流体カードが開発できる。固定化さら計量化されたDNAも即座の使用のために溶液中に放出され、または将来の分析用に保存される。装置内の固定化DNAの捕捉および開放を蛍光性により測定する能力により、この新規なDNA処理システムの処理通の制御が可能になる。この技術は、分子生物学的な研究における汎用のスタンドアローン製品の開発に用いることができ、また生物医療用途の遺伝子分析を簡素化するためのより複雑な装置を開発するのに用いることができる。開発された単一ウェル装置で単離された、精製し、変性したDNAは、マイクロ流体チャネルを介して、実時間PCRまたはDNAマイクロアレイによる遺伝子分析のために種々のマイクロウェルフォーマットへ分配できる。図3は、細胞からゲノムDNAを単離するのに用いることができる小型生物医療装置の開発に必要なマイクロスケール物理過程を示すことを意図している。
【0027】
図3は、血液全体からDNAを単離することを目論むマイクロ流体装置のチャネル内を流れる血液全体および他の流体の間の相互作用を示す。小型化生物医療装置の開発において使用されるマイクロスケールの物理的過程を、細胞からゲノムDNAを単離するのに用いることが可能であることが示される。ここで図3を参照すると、血液全体54に含まれる小さな粒子52を含む第1の流れ50と、純粋な溶液60中の小さな粒子58を含む第2の流れ56が共通チャネル62に導入され、ここで、これらが層状の流体拡散インタフェース(LFDI)を形成する。粒子52、58は、それらの拡散係数に依存して、LFDIを境にして拡散を開始し、この場合、より小さな粒子58がより速く拡散する。この装置を用いて、小さな粒子を血液全体から抽出し、または、予想可能な連続的な手法で血液全体に試薬を導入できる。
【0028】
Hoechst染料の研究から得られる予備的な観察もこの用途に適切である。Hoechst染料の滴を水または緩衝溶液中に落とすと、その点が乾燥するときに、蛍光が増大する。これは、蛍光環境の「水和成分」(hydration content)に関係し、蛍光背景に影響を与える。蛍光体は低背景のために十分に水和されている必要があり、疎水性表面被覆の重要性を強調する。
【0029】
最初の焦点は、dsDNAを結合し測定する蛍光性固体サポートを合成し試験することにある。アミン反応性官能基を伴う蛍光性MBが初めに種々の既知の手法を用いて準備される。これらエージェントはアミン改質ガラスまたはプラスチックに固定化され、DNAで処理される前後で蛍光性が測定される。種々のリンカー構造が、DNA濃度に対する蛍光性を測定する能力に関連して評価される。結合されたMBを伴う蛍光性表面が加工されて、低蛍光背景および良好なDNA結合を実現する。研究対象の典型的な表面を図4に示す。固体サポート(ガラスまたはプラスチック)、リンカー化学、および蓋をなす基のような変更物が試される。蛍光性MBの化学量論(結合の密度)を試してDNA測定の最大ダイナミックレンジをなす表面を決定する。DNA結合能力も試験する。
【0030】
図4を参照すると、装置100は、マイナーグルーブバインダ(MB)104を具備するアミン改質表面102を有する。未反応のアミンを残してカチオン表面を実現できる。装置110はサクシニル化により未反応のアミンに蓋をしてアニオン表面112を実現できることを示す。装置120は、最初にポリマーアミン含有リンカー(星型デドリマー、ジアミノ−PEG、ポリ−L−リジン)を表面122に結合し、その後MB誘導体と反応させることによりMB104を溶液へと拡張できることを示す。
【0031】
所望の蛍光表面の開発と同時にDNA単離用のマイクロ流体装置も計画される。種々のサイズのDNAサンプルを取得して(Sigma)、同一の蛍光性化合物を用いて固相および液相の双方において捕捉効率が蛍光性測定により決定される。装置からのDNAの開放をモニターしてDNAの純化および復元が良好であることを確かめる。DNAの捕捉および開放の条件が、蛍光性プレートリーダーにより測定される。DNA結合能力および洗浄実験を行った後、蛍光装置が構築できる。蛍光性サポートを開発した後、装置のDNA捕捉および測定機能が組み合わされる。
【0032】
種々のアミン改質固体サポートが入手できるので、誘導体が、活性求電子官能基、例えば、ヨードアセテート基、塩化シアヌル基、NHSエステル基、および他のアミン反応性部分を用いて準備可能である。固体サポート上の相補的な官能基と反応可能な所望の求電子または求核「ハンドル」を具備するH33258類似体を実現する2つの合成手法が示されている。最も直接的なルートは、H33258の十分に組み合わされた複素環式環構造からのものである。PEGの臭素アルキル誘導体の反応が、アリールエステルを高効率に生成する条件下でH33258と反応することを示した。H33258はAldrich Chemical社(500mg=220.80ドル)から入手できる。t−ブチルオキシカルボニル防護のヘキシルアミンリンカーは容易に合成され、トシレート誘導体が製造できた。臭素誘導体は容易にアクセス可能で、H33258と反応可能と考えられ、これは図5に示す。図5を参照すると、H33258がアルキル化Boc誘導体と反応される。求核アミノアルキル基(R=H)を直接に求電子表面に固定化できる。代替的には、アミノ基を、図5に示すように、求核表面への固定化のために、求電子基、例えば、塩化シアヌル誘導体に変換できる。Bocは希釈酸による処理で除去され、塩基で中和され第1ヘキシルアミン基(R=H)を付与する。求核性の第1アミンは、第3アミンによる若干の競合的なアルキル化を伴う溶液中で選択的に求電子物質と反応できる。このような化学過程は、求電子官能基でコートされた固体表面の改質にも適用できるであろう。代替的には、H33258のヘキシルアミン類似体は求電子残留物を残す二官能性リンカーと反応できる。塩化シアヌルは二官能性リンカーのように振る舞い官能基を含むアミンと結合する。残っている3番目の塩素基は2つノアミノ気が結合した後は非反応性である。この共役化学過程は改質表面を合成するために後に使用できる。他の代替手法は、H33258をアニオン表面に結合することであり、カルボン酸基により生成されるものと同様である。これら表面は適宜に安定し、柔軟であり、DNAへの所望の蛍光性応答を実現できる。
【0033】
多くの固相化学過程と同様に、試薬を大幅に過剰にするのは容易であり(入手可能な表面基に対して)、過剰な試薬を洗浄して除去することも容易である。したがって、結合効率は極めて高い(高密度パックが実現できる)。ガラスおよびプラスチック基体の表面面積、固定化化学過程、リンカーのタイプ、および「結合可能」蛍光性化合物(蛍光体)は最適化される。商業的に入手可能なデンドリマーリンカー、ポリ−L−リジン、およびポリエチレングリコールジアミンは溶液中で蛍光体を表面からdsDNAへと離すように配置するであろう。目標は、固定化された蛍光体の配座自由度を最大化し、dsDNAへのアクセスを最大化することである(DNA結合および動力学を最適化することである)。
【0034】
アミン改質のガラスおよびプラスチックサポートは、1×3インチの顕微鏡スライドとして入手可能であり、DNAマイクロアレイ用の一般的な基体である。多くのガラススライドはソーダライムガラスから製造され(Erie Scientific、ニューハンプシャー州ポーツマス)、(ガンマ)アミノプロピルシラン基で改質されて第1アミンの密度を均一にする。GAPSスライドも他のガラスタイプとして入手可能であり(Corning Glass)、粗さが大きい(Erie)。アミノプロピル塗布のプラスチックスライドも入手して使用できる(Nunc、デンマーク)。アミンにより官能化されたポリエステルフィルム(Mylar)もシートとして入手可能であり(Diagnostic Laminations Enginnering、カリフォルニア州オーシャンサイド、またはAdhesive Research社、ペンシルバニア州グレンロック)、試験される。これら基体は求電子MB類似体を固定化するために直接的に用いてもよいし、求電子表面を実現するために二官能性リンカーで「活性化」(activated)されてもよい。図6は1つの実現可能な共益化学システムを示す。塩化シアヌルの活性化が、他の脂肪族の二官能性リンカー(Pierce Chemical社)と同様に試験されるべきである。ガラススライドは、疎水性求電子物質、例えば塩化シアヌルを伴う無水有機溶媒中で活性化して試薬の水和を回避し、求電子改質濃度を向上させることができる。このため、PEGアミン(または他のポリアミン)の高度の充填が期待できる。蛍光性MB求電子物質の直接の結合(例えば図5のシアヌレート)が初めに試され、この(リンカーがない)蛍光性表面が特性化され種々の蛍光性検討の比較例(コントロール)として用いられる。
【0035】
プラスチックスライドには穏やかな液体活性条件およびカルボジイミド結合または活性化されたエステルリンカーの使用が必要である。各末端にNHSエステルを含むPEG高分子が商業的に入手可能である。商業的に入手可能なポリカルボキシレートデンドリマーは、水溶性カルボジイミド(EDC)化学過程を用いてアミン含有サポートに結合できるであろう。親水性のGeneration3.5および4.5PAMAMデンドリマーは、それらの分子が64および128の表面カルボキシレートをそれぞれ具備するので、とくに魅力的である。これら分子は大きなデンドリマーに悪影響を与える、高密度に「星型」に群れることがない。表面の残りのアミンをブロックしたのち(無水酢酸により)、リンカーのカルボキシレートは再びEDCにより活性化されヘキシルアミン含有MBと結合可能となり、これは図5から理解できる。完全に洗浄した後、スライドに共有結合したMBの量をプレートリーダーの吸収により測定する。Hoechst 33258発色体は356nmで吸収を行い、Bio−Tekプレートリーダーは適当なフィルタを用いてこの波長を顕微鏡スライド上で直接に測定できる。このスライドは乾燥でき、将来の使用のために評価できる。表面上の単一層の蛍光染料の安定性(貯蔵状態)を調査すべきである。
【0036】
高分子リンカー構造は、溶液中で、蛍光性MBセンサをdsDNAに広げる骨格として働く。表面構造の蛍光特性がdsDNAがある場合とない場合で試験されるべきである。H33258誘導体はガラス上に歓送されているときに蛍光性があると知られているので、これら表面は、蛍光性DNA結合特性について評価されるときに十分に水和されていることが重要である。平衡時間はマイクロ流体環境において迅速であり、これは有利である。種々のリンカー構造の蛍光性背景が、「かん流チャンバー」(perfusion chamber)を対象のスライドの表面に結合することにより測定される。これらは、単純なゴムガスケットであり、これらをスライドに接着して、その後、入り口ポートおよび出口ポートを具備するカバースリップで被覆する。チャンバーが構築された後、目的の検体溶液がピペットで流入され、ポートは封止可能である。200μLのチャンバサイズが利用される。
【0037】
種々のDNAサンプルを外部ソース(Sigma Chemical社)から入手する。ゲノムDNAは、マイクロ流体装置内で採用される緩慢な流れの下でマイクロチャネルを通過するときにもつれないように刈り上げる必要があるであろう。ゲノムDNAの刈り込みは、18ゲージ針と通じて数階溶液を引き抜くことにより容易に実現される。種々の長さ(40kb、4000bp、400bp、および40bp)のMW標準も考慮されるべきである。最初に、中和緩衝剤を関心対象の蛍光性気体上に付加し、蛍光性背景(458nmおよび492nmで)をプレートリーダー(励起=356nm)上でゆっくり時間をかけて測定する。安定した背景測定は、MB被覆が十分に水和されているときに実現されるに違いない。そののち、種々の濃度のdsDNA(A260で測定される。50ugのdsDNA=10D単位)がかん流チャンバーに案内され、この場合、読取の間にチャンバーを確実に洗浄するようになす。458nmの蛍光(dsDNA結合の特性)は、DNA濃度が増加すると線形に増加する。MBの濃度は測定のダイナミックレンジに関係するようであり、これを考慮すべきである。先に説明したように、MBパックの濃度は基体のA356から決定される。マイクロ流体装置は高濃度のDNA溶液を処理し、それゆえ、蛍光のためのDNA濃度「閾値」(threshold)がゴールである。DNA濃度が蛍光閾値を下回れば、単離田潤を継続する。同様に、蛍光信号が閾値を越えると、要求される最少のDNA濃度が達成される。蛍光性ガラスサポートを用いたDNA検出は生理食塩濃度で検査されることに留意されたい。この場合にガラスによるDNA結合が最大化されるに違いない。
【0038】
蛍光性表面の開発と同時に、dsDNAのガラスに対する固定化および開放を効率的に行うために必要とされるパラメータも小体積の溶液を用いて検査される。dsDNAの小体積の緩衝剤への開放は数学モデルにより最適化される。DNAをガラスに結合するうえでの処理ステップは生物的サンプルの性質に依存し、その手法も多くの変形例がある。以下に説明されるステップは、DNA豊富なソースおよびシリカ粒子に対して実行された。細胞が、まず、グアニジンチオシアネート(GuSCN)緩衝液(pH6.4)の2Mの溶液を付加することにより溶解される。このカオトロピック塩溶液は、また、ゲノムDNAからヒストンタンパク質を除去し、ヌクレアーゼを非活性化し、DNA−シリカ錯体の形成を助長する。固定化されたDNA−シリカは渦巻き駆動され、また遠心分離処理され(これは長いDNA螺旋を刈り込むようである)、細胞の破片はより多くのGuSCN緩衝剤により洗い流される。最後にDNA−シリカが歓送され、純化されたDNAが低塩の緩衝在中に溶出されて260nmの吸収により測定される。このプロセスは単純であるけれども、これらステップはシリカ粒子が渦巻き処理の後に一様になることを確実にするために人での作業および人による入力を必要とする。マイクロ流体フォーマットは以下の表Aで説明されるような処理を合理化すべきである。
【0039】
表A
1.高濃度のGuSCNを用いて細胞を溶解し、ヒストンを除去し、DNAをガラスに結合する。
2.ガラス結合DNAを高濃度GuSCNで洗浄する。
3.生理食塩で結合DNAをガラスから開放する。
4.蛍光性基体を用いてチャンバー内の開放DNAの濃度を読み取る。
5.DNAを蛍光性基体から開放してPCRベースの分析に使用するために調整する。
【0040】
ガラス基体(顕微鏡スライド)のDNA結合能力を評価するために、ステップ2、3、4および5のみ試験する。処理ステップは、ガラスカバースリップを伴うかん流チャンバー内で実行できる。種々のサイズ・濃度のDNAをGuSCNで混合することがDNA結合で重要である。ゴールは、スライドのガラス表面およびカバースリップの間の300ngの発表されているDNA結合能力に接近させることである。結合後に、チャンバーから高濃度のGuSCNを引き抜き、生理食塩で満たす。平衡状態に達した後、結合DNAはチャンバー内で自由でチャンバーから回収できるに違いない。濃縮されたDNAの分割単位(aliquot)が、開放後に、H33258について公表されている蛍光手法を用いて測定される。DNAは最終的にはPCRベースの分析に用いられるので、溶出緩衝剤はこの用途と一貫性をもつものである。
【0041】
蛍光MB基体のDNA結合能力も試験される。同一のかん流チャンバーシステムが種々のDNA濃度を試験するのに用いられる。結合能力は、最終的な装置で遭遇する種々の緩衝剤を用いて試験される。dsDNAをMB被覆基体から開放することがとくに興味深い。結合DNA二本線は変性して基体から開放する必要があるであろう。なぜならば、これはメチジウムDNA補足ビーズを具備するケースだからである。この場合に、希釈NaOH溶液が用いられて、変性されたDNA溶液は、最終的に、アンモニウムアセテートにより中和される。
【0042】
精製された結合および開放データは、マイクロ流体装置の設計を支援するマルチフィジックスモデルのための基礎として用いられる。このモデルは、表面結合、核酸、移流、および塩およびDNAの最終的な各部の濃度を、プロトタイプの幾何、溶媒および溶質の特性、および精製されたデータによって特徴付けられる結合挙動に基づいて計算する。最良の予測性能を伴う装置設計が所望のプロトタイプ設計になる。全体としての性能はモデルの予想値と比較され、これが、実験的に取得できない装置内部の局所的な物理過程の情報を提供する。
【0043】
種々の表面の特性に依存して、いくつかの設計が実現可能であり、これは図7から理解できる。例えば、蛍光性MBサポート150がDNA結合および測定の二重の目的で働くことができるであろう。これはメチジウム粒子の使用に類似する。ガラス表面はより大きな結合能力を有しても良く、単一のチャンバー設計152は、DNA測定用の蛍光性MB表面を具備するガラス補足表面と組み合わせることができる。DNA結合および測定に異なる条件を要求しても良く、2つのチャンバーを用いる装置154が最良の設計であろう。予め行った計算によれば、図8に示すような、ガラス表面でDNA結合を行ない、プラスチックの対向表面でMB測定を行う単一チャンバー設計は、平滑なガラス表面であっても、84ngのDNAを補足して測定することが可能であることを示唆した(粗なガラス表面はより顕著に大きな量のDNAを結合するであろう)。
【0044】
図8は、62×40×3.55nmのマイクロ流体装置160を示し、これは、5μlのDNA結合チャンバー162、750μlの廃棄チャネル164、および2処理の最後に開放DNAを保持するための5μlのチャネル166を含む。流体はピペットにより注入ポート168を通じて注入される。流体は、廃棄排出口168または出力ポート170のどちらが開いているかに応じて廃棄チャネル164または開放DNAチャネル166へと進む。開放DNAはカード160からピペットを用いて生成物排出口172または出力ポート170を通じて除去される。図9は、装置を構成する5枚のラミネート層すべてを分解して示す。層180は0.125mmのビニルから構成され、層182は0.025mmの接着層であり、層184は3.175nmのPMMAであり、層186は0.100nmのACAであり、層188は0.125mmのビニルであり、層190は、層180に挿入されるPyrexカバースリップインサートである。各層は3つのレジスト穴192を整列用に含む。層182および186は、漏れ止めの態様で装置の各層を一体に保持する接着剤を含む。
【0045】
表Aの処理ステップは図10A〜Eに準じに示される。図10Aは、溶解したサンプル細胞を含む高濃度のGuSCN内のDNAの混合物202をピペットで注入した後のマイクロ流体装置160を示す。結合チャネル162を通じて棄チャネル164へと流される高濃度の塩、GuSCNを用いて洗浄したのち(図10B)、チャンバー162は生理食塩で洗い流され(図10C)、食塩205によりガラス190から開放されたDNAがMBに結合し、このMBがdsDNA濃度209が読み取れるように蛍光する(図10D)。最後に、脱イオン化された水(DI)が結合チャネル162を通じてピペット注入されDNAを押し出して開放DNAチャネル166に運び、チャンバー162から純化されたものを最終的に分配する。これを図10Eに示す。この時点で、生成物排出口132(図8参照)が開放されてDNAを取り出すことができるであろう。この装置は十分に小さく96−ウェルのプレートリーダー上に容易に配置でき、6ウェル中心ロケーションが結合チャネル内にあって正確にDNA濃度を多数読み出せるように設計される。この処理が最後に、固定化蛍光性MG基(おそらく、現時点では非蛍光性)が固定サポート上に残され、実験室廃棄物流に装置の残りが廃棄される。
【0046】
例
結合ヘキシルアミンがリンクされた蛍光性Hoechst染料の合成が実行された。ここで図11を参照すると、合成が図示される。とくに断らない限り、試薬はSigma−Adrichから取得した。無水性溶媒が確実に封止されたビン中に取得された。7cm長のTLCストリップを5×7cmのシリカ被覆アルミニウムシート(Merck)から切り出し、手持ち長波長UVランプを用いて照射して蛍光により全般的に視覚化した。溶媒前面(Rf)に対する蛍光スポットの移動をTLC分析のために測定した。蛍光性DNA結合分析用に用いられるHoechst33258標準(ビスベンズイミド、BB−OH)は、Sigma社から販売されているDNA Quantitation Kit中に取得した。このキットはビスベンズイミド(水中で10mg/mL)、10倍蛍光分析緩衝剤(10×FAB=100mMのトリス塩酸、10mMのEDTA、2MのNaCl、pH7.4)、およびDNA標準(刈り込まれたcarf胸腺DNA、1×FAB中に1mg/mL)を含む。このキットは、図12に示されるDNAの蛍光性測定の標準測定として用いられた。
【0047】
ブチルオキシカルボニル(Boc)防護アミノヘキサノール開始材料がSigma社から購入され、その500mgを、公表されている手順(KellerおよびHaner、Helv. Chimi. Acta,76(1993)884−892)に従って所望の臭化アルキルに変換した。この生成物は、カラムクロマトグラフィによりシリカゲルを介して単離され、生成物の292mg(45%の収率)を淡黄色の液体として生じる。他の汚染物から所望の生成物を分離するのは、臭化アルキル用の良好なTLCインジケータを欠いているので、困難であった。ヨウ素チャンバー中の汚染は低感度でしか動作しなかった。TLC(2:1のヘキサン/エチルアセテート):開始ROHのRf=0.17、RBrのRf=0.67である。
【0048】
Hoechst33258染料(ビスベンズイミド、BB−OH)が、Aldrich社からトリヒドロクロライド塩(ペンタハイドレート)として購入した。9.5mgの染料(15.2μモル)が、乾燥した15mL球底フラスコ中で15mLの乾燥DMF中に溶解された。36.5mg(265μモル)の炭酸カリウムおよび7.1μL(8.5mg、30.4μモル)のBoc防護臭化ヘキシルアミンである。混合物は53度で6時間、室温で日間、磁気的に攪拌された。TLC(10%メタノール、5%エチルジイソプロピルアミン、85%ジクロロメタン)が長波長のUVランプ(365nm)で照射したときに青色の蛍光スポットの混合を示した。開始BB−OH(Rf=0)が所望の生成物(Rf=0.3)および高移動度側生成物(Rf=0.5)に変換された。上澄みのDMF溶液は上澄み移動させられ、残りの炭酸カリウムは付加的な2mLのDMFで洗浄された。組み合わされた混合物は、真空下で回転蒸発により濃縮された。残留物は5%メタノール、5%エチルジイソプロピルアミン、90%ジクロロメタンの2mL中に溶解され、同一の溶媒でパックされた2×10cmのシリカゲルカラム(230−400メッシュ)に供給された。50mLの前留分が廃棄された後、高移動度側の生成物が約75mLで集められた。クロマトグラフィの進捗が、手持ちUVランプを用いて続けられる。溶質中のメタノールの百分率が10%に増大し、所望の生成物が90mLの溶媒中に単離された。回転蒸発器を用いて溶媒を除去して10.5mgの黄色の固体を得た(理論的な収率=9.5mg)。生成物はTLCによる1つの主たる青い蛍光バンドであり、他の蛍光汚染物のトレースを伴っていた。生成物は将来のNMRに備えて2mLの第2クロロホルム中に溶解された。CDCl3溶液の1mL部分は下記のように保護外とした。
【0049】
封止されたガラスアンプルからのトリフルオロ酢酸(1mL)が、1mLのCDCl3中の5mgのBB−NHBocに添加された。一様な溶液は封止された1ドラムのガラス製薬ビン中に保持された。保護解除はTLC(35%メタノール、5%エチルジイソプロピルアミン、60%ジクロロメタン)により引き継がれた。開始BB−NHBoc(Rf=0.7)は、ゆっくりと保護解除されて低移動度生成物(Rf=0)へと移行する低移動度塩(Rf=0.5)へと変換された。24時間後、100μLの分割単位(aliquot)の反応混合物が、過剰のTFAを回転蒸発器で除去し、メタノールに溶解させ、さらに少量の炭酸カリウムを添加することにより、無塩基へと変換された。室温で取得された無塩基形態のBB−NH2は単一の主たる蛍光バンド(Rf=0.07)および蛍光汚染物質のトレースを示した。バルクの反応混合物は上述したように無塩基へと変換され、3mLの2:1メタノール/クロロホルム中に溶解された。生成物は秤量されなかったが(約1.7mg/mL)、収率は、開始ビスベンズイミド染料(BB−OH)のUV吸収との比較から計算された。
【0050】
1×FAB中のBB−OHの10μM溶液のUV−visスペクトルは340nmの吸収極大(0.18ユニット)を有する。BB−NH2の溶液は、995.7μLの1×FAB中に、4.3μLの約1.7mg/mLの溶液を溶解することにより準備された。吸収極大は342nm(0.075ユニット)であった。BB−OHおよびBB−NH2は同一の減衰係数を有し、BB−NH2のUV−visサンプルの濃度が計算された(10μM×(0.075/0.18)=4.4μM)。この結果、約1.7mg/mLの溶液の測定濃度が0.7mg/mL(0.98mM)とされた。BB−NH2の収率(2.1mg、2.9mモル)は開始BB−OHからの38%収率に対応する。この分析は、少量を秤量するより収率の決定を正確に行える。秤量では、塩および不可視(NMRによる)のトリフルオロ酢酸が誤差を与えると考えられる。
【0051】
図12において220により示されるBB−OH分子の蛍光は、dsDNAの存在下では、492nmの弱い発光から458nmの強い発光へと変化する。Sigma社からのDNA定量(Quantitation)キット(BB−OHベース)を用いてBio−Tek FL600蛍光プレートリーダー上で標準曲線を生成した。分析は、供給されたプロトコルに従って96−ウェルの透明な底板中で実行された。0.1μg/mLのBB−OH濃度を、各DNA標準(20−1000μg/mL)に対する指示緩衝剤として用いた。結果を図12に示す。図12は、222で参照されるMM−NH2がビスベンズイミド染料の蛍光性DNA検出特性を保持していたことを示す。Hoechst33258分子上のフェノールの改質はUV−vis吸収(極大波長が約340nm)を変更せず、ヘキシルアミン改質類似体が360nm(40nmスリット幅)で励起されたときに強い蛍光信号(460nm、40nmのスリット幅での検出)を示した。ヘキシルアミンリンカーは、DNA特異性蛍光を改善し、これはDNAのカチオンの第1アミンに対して親和性が大きいからと考えられる。BB−NH2分子は、平坦なビスベンズイミド構造の各末端にカチオンのアミノ基を有し、このため、これをDNAのマイナーグルーブバインダにしっかりと固定させる。他のDNA親和剤(オリゴヌクレオチドのように)は溶液中で蛍光性プローブとしての機能を示した。
【0052】
蛍光性MB表面を準備するための種々の固定化の化学過程が考慮された。dsDNA検出表面の設計における3つの主たる要素は以下のとおりである。
1.インジケータ:
dsDNAの存在下でのみ蛍光性である。
リンカーはほとんど蛍光性を持たない背景とともにスペーサ分子に結合する。
2.基体:
関与対象のスペクトル領域で透明である。
スペーサ/インジケータ分子で簡単に被覆される。
3.スペーサ:
蛍光性インジケータおよび基体に対して簡易に共役化される。
蛍光性MBを立体障害を伴うことなくdsDNAにアクセス可能にする。
【0053】
図12に説明するBB−OHおよびBB−NH2 DNAインジケータは所望のDNA特異性蛍光特性を有し、結合点として働く特別な官能基を有する。求電子物質、例えば、活性化エステルまたは塩化シアヌルとの反応が分子中の多数の位置で起こり得、これら側部反応が所望のDNA特異性蛍光を減少させることがある。三日月形状のDNA結合領域中の「損傷」(damaged)構造がDNA特異性発光を変更する可能性がある。両分子は、環状の第3アルキルアミン基を1つの末端に有し、これがアルキル化され得る。イミダゾール基もアルキル化が発生可能なサイトを有する。種々の表面構造が所望のDNA特性蛍光を持ち得るけれども、一貫したDNA特異性蛍光を与える一様で再生成可能な表面構造を持つことが有益である。BB−NH2リンカーは求電子物質と選択的に反応可能な第1ヘキシルアミン基を含む。必要であれば、リンカーの腕をポリエチレングリコールにより延長可能である。Quantum Biodesign社はBoc防護されたカルボン酸を販売しており、これはより親水性で立体配座上柔軟な、BB蛍光体を固体サポート(基体)にけつごうさせるためのリンカーを提供する。
【0054】
プラスチック(mylar)基体への関心は、360nmで照射したとき460nmで顕著な背景蛍光が起こることが見いだされるかどうかに左右される。Scotch(商標)テープ(装置のポートを封止するのに用いられる)は顕著な460nmの蛍光性を有することも見いだされた。DNAマイクロアレイ用にオリゴヌクレオチドを1×3cmのスライドに固定化する多くの文献およびいくつかの化学過程が存在する。アミン被覆スライド(アミノプロピルシラン)を、リンカーおよびインジケータ分子をナノ加工するための基体としてSigma社から取得した。他の商業的に入手可能なスライド化学(Amersham Biosciences社からのCodeLink(商標))も試された。これらスライドは活性化エステル(N−ヒドロキシ琥珀酸エステル)基において終端する伸長したリンカー構造を有する。CodeLink社のスライダは「アミン末端オリゴヌクレオチドの固定化を可能にし、長いPEGリンカーを必要とすることなくハイブリダイズを行える」ことを宣伝文句としている。BB−NH2蛍光体はこの表面と直接に作用させられることが可能であろうから、最初に試験された。
【0055】
BB−NH2の固定化は3D−Linkスライドの上でカバースリップの下でpH8.5において試された。1つの巣零度あたり最高で16ウェルまで同時に試験することが可能な複数ウェルハイブリダイズチャンバー(Grace Bio−Labs)を購入した。種々の時間、反応させた後、スライドの過剰なBB−NH2を緩衝剤で洗浄し、同一のカバースリップ手法で蓋をした。蛍光性DNA結合特性を評価する前に、1×FABで最後に洗浄した。
【0056】
BB−NH2インジケータの特性が予想通りに改善できた。460nmでの蛍光背景は、最適化可能な重要な特性である。高い背景またはdsDNAの不十分な開放が問題ならば、他の表面が、アミン被覆スライドを用いて試される。CodeLinkスライドに関連して試される1つのキーとなる変更点は、BB−NH2の固定化の後に種々のアミンで蓋をする効果である。これにより、溶液中のBB蛍光性分子、スペーサ、およびdsDNAのインタフェースで分子特性が変更される。このインタフェースの性質は、蛍光体のdsDNAへの結合やDNAの固体表面への結合態様に影響を与えるようである。CodLink社は50mLのエタノールアミンで蓋をすることを推奨し、これが中性の表面被覆をなすに違いない。ジアミンまたは他のポリアミンによる蓋は正味で正の電荷をスライド表面に付与し、非可逆的に(開放なし)DNAを結合することができるであろう。他方、これら正の電荷が結合速度を高速にし、またdsDNAの局所的な濃度を増大できるであろう(寄り良好な信号となる)。活性化エステルをリジン基で蓋をすると、双性イオンのアミノ酸表面を実現し、これがDNAに対して非吸引的であり、このため表面を「不動態化」(passivating)する。カルボン酸基を表面に導入する他の方法は、BB−NH2の固定化の後に、HNSエステルを単純に加水分解することである。固定化は高pH(8.5)で起こるので、スライドを緩衝在中に1晩保持しておけば、スライド表面上の入手可能なNHSエステルが加水分解される傾向がある。これにより、スライド表面およびDNAのインタフェースに正味で負の電荷が付与され、蛍光信号および背景に影響を与えるであろう。これは、カチオンの蛍光性インジケータを固定化する手法としても採用できる。
【0057】
CodeKinkスライドはAmersham Biosciences社から入手し、以下のプロトコルに従って用いた。単一スライドを、16の異なる固定化反応の試験のために用いた。16ウェルシリコーンゴムガスケットを、「96−ウェルフォーマット」クランプシステム(ProPlate(商標)、Grace Bio−labs)を用いてプレートに接着させた。スライド上に形成された四角なウェルは300μLまでの体積を有し、透明なプラスチック接着封止フィルム(与えられている)でカバーできる。活性化エステルスライド表面は上方を向き、配向目的で、スライド状の「CodeLink」の名称がウェル1および2の頂部に位置するようになす。BB−OH(水中で1mg/mL)およびBB−NH2(メタノール中で0.7mg/mL)溶液が先に説明したように準備された。3mg/mLのアミノエタノール(50nM)を含むpH8.5の重炭酸塩(0.1M)をキャップ溶液として用いた。
【0058】
BB−NH2溶液(100μL)が300μLのメタノールと混合され、600mLのpH8.5の重炭酸ナトリウム(0.1M)で希釈した。この溶液(70μg/mL)を用いて、pH8.5の十炭酸塩中で7μg/mLのBB−NH2および0.7μg/mLの溶液を準備した。この溶液は、長波長UV(356nm)のランプの下で淡緑色の蛍光性を有する。pH8.5の絨毯酸塩中で10μg/mLのBB−OH溶液が1mg/mL溶液から準備された。CodeLinkスライド表面上の16個のウェルは以下のように処理された。ウェル1−4は0.7μg/mLのBB−NH2、ウェル5−8は7μg/mLのBB−NH2、ウェル9−12は70μg/mL、ウェル13−16は10μg/mLのBB−OHである。ウェルに充填した後(ウェル当たり0.2mL)、巣零度分子は接着フィルムで被覆されて室温で18時間保持された(暗所で)。フィルムが除去され、BB含有溶液が各ウェルから除去され、0.2mLのキャップ溶液が添加され、ウェルが再封止された。7時間後、キャップ溶液が各ウェルから除去され、ガスケットが洗浄のためにスライドから除去された。スライドは、50mL遠心分離チューブ中で20分、40mLの40%メタノール/60%重炭酸ナトリウム(0.1M)中に浸され、1×FAB中で20分、除去され、浸される。スライドを取り外し、蛍光プレートリーダー上で分析される。
【0059】
DNA指示表面の感度および精度は特徴的であった。BB−NH2含有スライド表面の評価は、先に説明したdsDNAと、類似のプレートリーダー分析フォーマットとを用いて試された。
【0060】
先に準備されたBB−NH2処理ウェルおよびBB−OH処理ウェルが評価された。16ウェルシリコーンゴムガスケットが処理されたCodeLinkスライド上に組み立て直された。残りの1×FAB緩衝剤はKimwaipeでたたいてスライド表面から除去した(わずかな滴は残った)。固定化混合物の各々のための4つのウェルの各々が以下の溶液の1つで再び水和される。すなわち、1000ng/mLのDNA、200ng/mLのDNA、1×FAB、液体なしである。用意したばかりの溶液が通常の460nmの蛍光について試験された(ボトムリード、感度=115)。ウェルを読み取った後に、脱イオン化水を用いて洗浄してDNAを除去し、再度測定した。
【0061】
BB処理したスライド表面のすべてはdsDNAの存在下で460nmの蛍光の増大を示した。これを図13に示す。最も大きな濃度のBB−NH2(70μg/mL)との固定化反応は、230で示され、最も大きな蛍光信号を示した。ただし、高注入レベルは高蛍光背景(DNAなしで50,000カウントより大きい)ももたらした。7μg/mLの固定化反応が、232で示され、最も良好な性能を示した。用量反応は最低で200μg/mLのDNAまで観測できた。固定化反応におけるBB−NH2の最低レベルは、234で示され、最低で200μg/mLのDNAまでの用量応答が実現された。信号は小さいけれども、BB−OHインジケータさえも、236で示すように、DNA濃度が増加すると460nmの蛍光の所望の増加を実現した。水でウェルのDNAを洗い落とした後、ウェルは460nmでDNA特異の蛍光の証拠を示さなかった。同一レベルの固定化蛍光体を伴うすべてのウェルは類似の蛍光性を有した。
【0062】
図13のデータにおいては溶液中に蛍光染料がない。DNA結合分析は固定化されたBB−NH2またはBB−OHを用いる。すべての表面は、DNAがない場合でさえ、460nmで所定の蛍光信号をBB−NH2固定化領域中で示す。dsDNAが結合表面に導入されると、460nmの蛍光が増大する。スライド表面のコントロール(比較)領域(DNAなし)を用いて、背景差分を可能にする。
【0063】
固定化BB−NH2蛍光体はdsDNAの存在下で良好な用量反応を実現する。460nmにおける蛍光信号の強さは、溶液中のBB−NH2反応とほぼ同じであるけれども、背景はより大きい(図13参照)。固定化BB−NH2の主たる利点は、小さな体積しか必要としないということである。液相分析で必要とされる200μLのウェルの容積と異なって、固定化BB表面を十分に塗らすに足るDNA溶液だけで十分である。これにより、DNA精製のマイクロ流体装置の準備が可能になる。
【0064】
ガラス表面を用いて複雑な生物学的混合物からDNAを精製することが他者により示されており、これら結果を蛍光性BB分析を用いて検証した。マイクロ流体装置に必要なステップは以下の表Bに示される。液相BB分析を用いて未改質ガラスのDNA結合および開放レベルを決定した。
【0065】
表B
1.高濃度のGuSCNを用いて、細胞を溶解し、ヒストンを除去し、DNAをガラスに結合する。
2.ガラス結合DNAを高濃度GuSCNで洗浄する。
3.生理食塩で結合DNAをガラスから開放する。
4.蛍光性基体を用いてチャンバー内の開放DNAの濃度を読み取る。
5.DNAを蛍光性基体から開放してPCRベースの分析に使用するために調整する。
【0066】
グアニジウムチオシアネート(10M)が、蛍光性DNA結合分析において試験され、高濃度で、460nmの蛍光性背景を実現することがわかった。DNAをガラスに結合するために用いる他の慣用的なカオトロープは沃化ナトリウム(12M)である。それは低いバックグラウンドを伴ったけれども、過塩素酸ナトリウムに較べより高価であり、より扱いにくい(溶液が変色する)。したがって、過塩素酸ナトリウム(6M)が開発用に選ばれた。0.1mL中に50、500または5000ngのDNAの溶液が6M過塩素酸ナトリウム(pH8 Tris)中で準備された。これらの0.1mL容積がポリスチレンのペトリー皿に移されて、22×22mmのカバースリップ(ガラスまたはプラスチック)がそれらの上に配置された。室温で1.5時間保持した後に、スリップを注意深く斜めに上げて残りの液体から取り除いた。このスリップをKimwipe上に載せ(DNAは下向き)いずれの残留滴を除去した。各スリップをペトリー皿中の0.1mLの容積の1×蛍光分析緩衝剤へと移した(1×FAB:10mMのTris HCl、1mMのEDTA、200mMのNaCl、pH7.4)。室温で4時間保持した後に、スリップを取り外し、DNA側を0.15mLの1×FABで洗浄した。各スライドからの組み合わせ緩衝剤は1×FABで0.27mLをもたらし、30μLの1μg/mLのビスベンズイミド(BB−OH)溶液(1×FAB中で)が付加された。各スリップから200マイクロリットルの容積がマイクロウェル(透明な底)へ移され、サンプルがBiotek FL−600プレートリーダー上で読み取られた。蛍光は460nmで読み取られ、DNA濃度は標準曲線から決定された。
【0067】
図14を参照すると、カバースリップに対するDNA補足および開放の効率が示される。プラスチックカバースリップは250で示すようにDNA結合を示さない。ガラスカバースリップに対するDNA補足および開放の効率は、252で示され、少量のDNAに対して最大となる。カバースリップ当たり50ngのDNAで、7.2ngが復元された(14%の効率)。カバースリップ当たり500ngのDNAで、68ngが復元された(14%の効率)。カバースリップ当たり5000ngのDNAで、113ngのDNAが復元された(2%の効率)。これらの結果から、ガラスカバースリットがμ流体DNA精製用に適した表面であり、少なくとも68ngのDNAが500ngのサンプルから効率的に復元することができることがわかる。
【0068】
プロトタイプカードが、手作業のピペットによる溶液の付加に対して最適化されており、1分当たり100μLの流速が、手慣れた作業およびRainin 200 μL Pipemanにより実現できた。より遅い流速(泡の形成を最小化するのに重要)は、実現がより困難であるけれども、200μLの分注器を成功裏に用いてDNA結合チャネル(20μL)を泡を導入することなしに満たすことができた。
【0069】
今まで検討したカードは、いくつかの小幅な変形例でもうまくいった。ガラスの一列のチャネルは低流速で十分に湿潤となり、流体は、チャネルを通じて空気を流すことにより除去できた。DNA捕捉ウェルは蛍光性プレートリーダーを用いた分析のために精製したDNAをすべて回収する設計とした。固定化BB表面を用いて、DNA捕捉ウェルは薄型のチャネルを実現する設計を採用でき、このチャネルは、蛍光性分析の後に、DNAを他のチャネルに分配させるように容易に構成できる。蛍光性BB染料は固定化されるので、精製DNAは、下流のDNA分析チャンバーにうちした時にも指示用蛍光体で汚染されているということがない。
【0070】
この発明は好ましい実施例との関連で開示され説明されてきたけれども、この発明はどの実施例にも制約されず、この発明の真実の精神および範囲は添付の実施例に規定され、これから逸脱することなしに変更を行えることに留意されたい。
【0071】
ここに開示された発明の例示的な実施例がこの発明の目的を達成することは明らかであるが、当業者が種々の変形や他の実施例を構成できることは容易に理解できる。さらに、任意の実施例の特徴および/または要素を、単独で、または他の実施例の特徴および/または要素と組み合わせて使用できる。添付の特許請求の範囲は、これらすべての変形例や実施例を、その趣旨を逸脱することなくカバーすることを意図するものであることは、容易に理解できる。
【0072】
添付図面は明細書の一部を形成し、明細書との関連において理解されるべきであり、種々の図において類似の参照番号は類似の部分を示すために用いられる。添付図面は以下のとおりである。
【図面の簡単な説明】
【0073】
【図1】合成12−merDNA二本鎖に結合したHoechst 33258の構造を示す図である。
【図2】DNAプローブ上のリンカーに結合するよう開発されたH33258no反応性類似物の構造を示す図である。
【図3】マイクロ流体装置内を流れる2つの流体の相互作用を示す図である。
【図4】蛍光性マイナーグルーブバインダ(MB)を連結させたいくつかのアミン改質表面を示す図である。
【図5】反応基をともなう蛍光性MBの合成を示す図である。
【図6】有機溶液中における塩化シアヌルによるスライドのアミン改質ガラス表面の活性化を示す図である。
【図7】この発明に使用して好適なマイクロ流体装置の実現可能なチャンバー設計を示す図である。
【図8】この発明に使用して好適なマイクロ流体カードの正面図である。
【図9】マイクロ流体カードをその層を分離して示す分解図である。
【図10】図9のカードの使用時の連続事象を示す正面図である。
【図11】結合したヘキシルアミンリンカーを伴う蛍光性Hoechst色素の合成を説明する図である。
【図12】360nmで励起された、BB−NH2分子 vs BB−OHの蛍光性を示す図である。
【図13】4つの異なるビスベンズイミド表面の460nmの蛍光性を示す図である。
【図14】ガラスおよびプラスチックカバースリップに対して付与されたDNAの量に対する結合されたDNAの量を示す図である。
【符号の説明】
【0074】
50 第1の流れ
52、58 小さな粒子
54 血液全体
56 第2の流れ
60 純粋な溶液
62 共通チャネル
【特許請求の範囲】
【請求項1】
流体入口ポートと、
上記流体入口ポートに接続されたDNA結合チャネルと、
流体出力ポートとを有し、
上記DNA結合チャネル内の少なくとも1つの表面の少なくとも一部が、DNAが特異的に上記表面に結合するような結合試薬により改質されたことを特徴とするマイクロ流体システム。
【請求項2】
上記結合チャネルは、基本的に矩形の断面を有し、頂壁、底壁、および2つの側壁を有する請求項1記載のマイクロ流体システム。
【請求項3】
上記結合チャネルは頂壁および底壁の間に200マイクロメータの距離を有し、結合試薬により改質された上記DNA結合チャネル内の上記表面は上記頂壁または上記底壁、または上記頂壁および上記底壁に位置する請求項2記載のマイクロ流体システム。
【請求項4】
上記流体入口ポートは、ピペット先端用の圧縮シールを実現する請求項1記載の装置。
【請求項5】
少なくとも1つの壁は他の壁と異なる材料で製造される請求項2記載の装置。
【請求項6】
上記少なくとも1つの壁はガラスで製造される請求項2記載の装置。
【請求項7】
上記DNA結合チャネルに結合された廃棄物貯蔵チャネルをも有する請求項2記載の装置。
【請求項8】
上記DNA結合チャネルに結合された生成物ウェルをも有する請求項2記載の装置。
【請求項9】
上記DNA結合チャネルに結合された生成物ウェルをも有する請求項2記載の装置。
【請求項10】
上記装置は、上記装置内に含まれる染料分子を励起する光、および、上記染料分子から発光される光を透過させることができる材料から製造される請求項1記載の装置。
【請求項11】
96ウェルプレートリーダー中での配置および読み出しに適合化されたサイズおよび幾何形状を有する請求項1記載の装置。
【請求項12】
ポリマー性DNAおよりRNAの濃度を決定するための、固定化された核酸(NA)指示蛍光分子を有する組成物。
【請求項13】
蛍光測定用の所望の光学特性を具備するNA指示分子を結合可能な基体をさらに有する請求項12記載の組成物。
【請求項14】
上記NA指示分子は二重螺旋DNAまたは単一螺旋DNAに特異的である請求項12記載の組成物。
【請求項15】
上記NA指示分子はベンズイミダゾール染料(Hoechst33258)およびDNAターゲットシアニン染料(ビス−シアニン染料)を含むグループから採用される請求項14記載の組成物。
【請求項16】
上記NA指示分子はRNAに対して特異的であり、チアゾールオレンジを含むグループから採用される請求項14記載の組成物。
【請求項17】
流体入口ポートと、
上記流体入口ポートに接続されたDNA結合チャネルと、
流体出力ポートとを有し、
上記DNA結合チャネル内の少なくとも1つの表面の少なくとも一部が、DNAが特異的に上記表面に結合するような結合試薬により改質され、上記結合試薬はポリマー性DNAまたはRNAの濃度を決定するための、固定化された核酸(NA)指示蛍光分子を有することを特徴とするマイクロ流体システム。
【請求項18】
核酸を単離し精製するための未改質の表面をも有する請求項17記載の装置。
【請求項19】
上記基体は、ガラス、プラスチック、ニトロセルロース、金属、または他のポリマー材料からなるグループから採用される請求項13記載の組成物。
【請求項20】
上記基体は、上記NA指示蛍光分子中のアミド基と結合可能な活性化エステル基またはシアヌル酸残余のような求電子基により活性化されたガラススライドを有する請求項13記載の組成物。
【請求項1】
流体入口ポートと、
上記流体入口ポートに接続されたDNA結合チャネルと、
流体出力ポートとを有し、
上記DNA結合チャネル内の少なくとも1つの表面の少なくとも一部が、DNAが特異的に上記表面に結合するような結合試薬により改質されたことを特徴とするマイクロ流体システム。
【請求項2】
上記結合チャネルは、基本的に矩形の断面を有し、頂壁、底壁、および2つの側壁を有する請求項1記載のマイクロ流体システム。
【請求項3】
上記結合チャネルは頂壁および底壁の間に200マイクロメータの距離を有し、結合試薬により改質された上記DNA結合チャネル内の上記表面は上記頂壁または上記底壁、または上記頂壁および上記底壁に位置する請求項2記載のマイクロ流体システム。
【請求項4】
上記流体入口ポートは、ピペット先端用の圧縮シールを実現する請求項1記載の装置。
【請求項5】
少なくとも1つの壁は他の壁と異なる材料で製造される請求項2記載の装置。
【請求項6】
上記少なくとも1つの壁はガラスで製造される請求項2記載の装置。
【請求項7】
上記DNA結合チャネルに結合された廃棄物貯蔵チャネルをも有する請求項2記載の装置。
【請求項8】
上記DNA結合チャネルに結合された生成物ウェルをも有する請求項2記載の装置。
【請求項9】
上記DNA結合チャネルに結合された生成物ウェルをも有する請求項2記載の装置。
【請求項10】
上記装置は、上記装置内に含まれる染料分子を励起する光、および、上記染料分子から発光される光を透過させることができる材料から製造される請求項1記載の装置。
【請求項11】
96ウェルプレートリーダー中での配置および読み出しに適合化されたサイズおよび幾何形状を有する請求項1記載の装置。
【請求項12】
ポリマー性DNAおよりRNAの濃度を決定するための、固定化された核酸(NA)指示蛍光分子を有する組成物。
【請求項13】
蛍光測定用の所望の光学特性を具備するNA指示分子を結合可能な基体をさらに有する請求項12記載の組成物。
【請求項14】
上記NA指示分子は二重螺旋DNAまたは単一螺旋DNAに特異的である請求項12記載の組成物。
【請求項15】
上記NA指示分子はベンズイミダゾール染料(Hoechst33258)およびDNAターゲットシアニン染料(ビス−シアニン染料)を含むグループから採用される請求項14記載の組成物。
【請求項16】
上記NA指示分子はRNAに対して特異的であり、チアゾールオレンジを含むグループから採用される請求項14記載の組成物。
【請求項17】
流体入口ポートと、
上記流体入口ポートに接続されたDNA結合チャネルと、
流体出力ポートとを有し、
上記DNA結合チャネル内の少なくとも1つの表面の少なくとも一部が、DNAが特異的に上記表面に結合するような結合試薬により改質され、上記結合試薬はポリマー性DNAまたはRNAの濃度を決定するための、固定化された核酸(NA)指示蛍光分子を有することを特徴とするマイクロ流体システム。
【請求項18】
核酸を単離し精製するための未改質の表面をも有する請求項17記載の装置。
【請求項19】
上記基体は、ガラス、プラスチック、ニトロセルロース、金属、または他のポリマー材料からなるグループから採用される請求項13記載の組成物。
【請求項20】
上記基体は、上記NA指示蛍光分子中のアミド基と結合可能な活性化エステル基またはシアヌル酸残余のような求電子基により活性化されたガラススライドを有する請求項13記載の組成物。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【公表番号】特表2008−532485(P2008−532485A)
【公表日】平成20年8月21日(2008.8.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−553214(P2007−553214)
【出願日】平成18年1月25日(2006.1.25)
【国際出願番号】PCT/US2006/002708
【国際公開番号】WO2006/081324
【国際公開日】平成18年8月3日(2006.8.3)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.PYREX
【出願人】(507253222)
【出願人】(507253233)
【出願人】(507253211)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成20年8月21日(2008.8.21)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年1月25日(2006.1.25)
【国際出願番号】PCT/US2006/002708
【国際公開番号】WO2006/081324
【国際公開日】平成18年8月3日(2006.8.3)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.PYREX
【出願人】(507253222)
【出願人】(507253233)
【出願人】(507253211)
【Fターム(参考)】
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