説明

ナノ構造およびナノ構造の作製方法

【課題】途中で折れ曲がったナノワイヤやリング構造を制御性よく作製できるようにする。
【解決手段】金属微粒子12を半導体基板11上に形成した後、第1の原料ガスと第2の原料ガスとを交互に切り替えながらVLS成長を行うことにより、ナノワイヤ13a〜13cの途中にノード14a、14bが挿入されたナノ構造を形成し、さらにナノワイヤ13a〜13cの端部に結合されたノード14a、14bを細線化した後、選択エピタキシャル成長を行うことにより、ノード14a、14bの周囲にリング15a、15bをそれぞれ選択的に形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はナノ構造およびナノ構造の作製方法に関し、特に、VLS(Vaper Liquid Solid)成長にてナノオーダーの結晶構造を作製する方法に適用して好適なものである。
【背景技術】
【0002】
受光発光素子で多く用いられる化合物半導体を使用したナノワイヤは、結晶が異なるSi上でも比較的良好に結合でき、光デバイスをSi回路上に容易に集積することが可能となることから、将来の有望な技術として期待されている。
このナノワイヤを作製する方法として、金属微粒子を用いたVLS(Vaper Liquid Solid)成長を用いる方法がある。
【0003】
このVLS成長では、SiまたはGaAsなどの化合物半導体上にAuなどの金属微粒子を形成し、Auなどの金属との共晶による融点の低下を利用し、金属微粒子の下に選択的に結晶成長を起こさせることができる。このVLS成長では、[111]B方向に柱状構造が成長し、成長条件によっては、柱の径が長さ方向で一定なナノワイヤを形成することができる。
【0004】
また、ナノワイヤにキャッピングを行うことで、発光部表面での非発光結合の割合を小さくすることができ、例えば、特許文献1には、コア−シェル構造にキャッピングを施す方法が開示されている。
また、量子リング構造を受光発光素子に応用することで、磁場による波長制御や偏波制御など様々な光制御が容易になる可能性がある。
【0005】
この半導体の量子リング構造として、特許文献2には、2次元エピタキシャル成長の途中で自己形成させる方法が開示されている。さらに、特許文献3には、量子リング構造において、エキシトンからの発光が磁場によって振動するAB(Aharonov−Bohm)振動が開示されている。
【非特許文献1】N.Skold et al.,Nano Lett.5(2005)1943.
【非特許文献2】B.C.Lee et al.,Nanotechnology 15(2004)848.
【非特許文献3】M.Bayer et al.,PRL90(2003)186801.
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、VLS成長にてナノワイヤを作製する方法では、GaAsなどのIII−V族化合物半導体の場合、[111]B方向のような特定の方向に成長しやすく、ナノワイヤの途中で成長方向を変化させることが難しいという問題があった。
また、従来のナノワイヤにキャッピングを行う方法では、ナノワイヤに部分的にコア−シェル構造を作製し、発光部のみを保護することが難しいという問題があった。
さらに、従来の量子リング構造の作製方法では、サイズを制御しながら自己整合的に半導体のリングを作製することが難しいという問題があった。
そこで、本発明の目的は、途中で折れ曲がったナノワイヤやリング構造を制御性よく作製することが可能なナノ構造およびナノ構造の作製方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述した課題を解決するために、請求項1記載のナノ構造の作製方法によれば、金属微粒子を基材上に形成する工程と、第1の原料ガスを供給しながらVLS成長を行うことにより、前記金属微粒子下にナノワイヤを形成する工程と、前記第1の原料ガスを第2の原料ガスに切り替えてVLS成長を行うことにより、前記ナノワイヤの端部に結合されたノードを形成する工程と、第3の原料ガスを供給しながらエピタキシャル成長を行うことにより、前記ノードの周囲にリングを選択的に形成する工程とを備えることを特徴とする。
これにより、ナノワイヤの端部に結合されたノードの部分にのみキャッピングを施したり、リング構造を作製したりすることができ、リング構造のサイズの制御性を向上させることができる。
【0008】
また、請求項2記載のナノ構造の作製方法によれば、前記ナノワイヤの途中にノードが挿入されるように、前記ナノワイヤおよびノードの形成を交互に繰り返すことを特徴とする。
これにより、ナノワイヤの途中にノードを挿入することができ、ノードを介してナノワイヤを折り曲げることが可能となることから、複雑な三次元構造にワイヤを通すことができる。
【0009】
また、請求項3記載のナノ構造の作製方法によれば、前記ナノワイヤと前記ノードとの間の格子定数差が前記ノードとリングとの間の格子定数差よりも大きくなるように、前記ナノワイヤ、ノードおよびリングの結晶構造が選択されるか、あるいは前記ノードとリングの結晶構造が同じでかつ前記ナノワイヤの表面の結晶構造と前記ノードの結晶構造とが異なるように、前記ナノワイヤ、ノードおよびリングの結晶構造が選択されることを特徴とする。
これにより、ナノワイヤの途中に挿入されたノードにのみリングを形成することができ、途中で折れ曲がったナノワイヤやリング構造を制御性よく作製することができる。
【0010】
また、請求項4記載のナノ構造の作製方法によれば、前記ノードの周囲にリングを選択的に形成する前に、前記ナノワイヤの端部に結合されたノードを細線化する工程をさらに備えることを特徴とする。
これにより、ナノワイヤの途中に挿入されたノードの位置で歪を与えながら、ノードの周囲にリングを作製することができ、ノードの位置でナノワイヤを折り曲げることができる。
【0011】
また、請求項5記載のナノ構造の作製方法によれば、前記ノードの周囲にリングを選択的に形成してから、前記ノードを選択的にエッチングする工程をさらに備えることを特徴とする。
これにより、リングがはめ込まれているノードを除去することができ、リング構造を単独で取り出すことが可能となることから、磁場による波長制御や偏波制御など様々な光制御を実現することが可能となる。
【0012】
また、請求項6記載のナノ構造の作製方法によれば、前記ナノワイヤ、ノードおよびリングの材料は、Si、Ge、GaInN、AlGaAs、GaInP、AlGaInNおよびAlGaInSbの中からそれぞれ選択されることを特徴とする。
これにより、途中で折れ曲がったナノワイヤやリング構造を様々の半導体を用いて作製することができ、様々の分野への応用が可能となる。
【0013】
また、請求項7記載のナノ構造によれば、第1の半導体材料から構成されたナノワイヤと、第2の半導体材料から構成され、前記ナノワイヤの途中に挿入されたノードと、第3の半導体材料から構成され、前記ノードの周囲に形成されたリングとを備えることを特徴とする。
これにより、ナノワイヤの端部に結合されたノードの部分にのみキャッピングを施したり、リング構造を作製したりすることができ、光分野への応用を拡大することが可能となる。
【0014】
また、請求項8記載のナノ構造によれば、第1の半導体材料から構成されたナノワイヤと、第2の半導体材料から構成され、前記ナノワイヤの途中に挿入されるとともに、前記ナノワイヤよりも細いノードと、第3の半導体材料から構成され、前記ノードの周囲に形成されたリングとを備え、前記ナノワイヤは前記ノードの部分で折れ曲がっていることを特徴とする。
これにより、ノードの部分で折れ曲がったナノワイヤを得ることができ、複雑な三次元構造にナノワイヤを通すことができる。
【発明の効果】
【0015】
以上説明したように、本発明によれば、ナノワイヤの途中にノードを挿入することができ、途中で折れ曲がったナノワイヤやリング構造を制御性よく作製することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、本発明の実施形態に係るナノ構造の作製方法について図面を参照しながら説明する。
図1は、本発明の第1実施形態に係るSi(111)基板上に配置されたAu微粒子を示す斜視図、図2(a)は、本発明の第1実施形態に係るナノ構造の作製方法を示す断面図、図2(b)は本発明の第1実施形態に係るナノ構造の構成を示すSEM像である。
である。
【0017】
図1において、金属微粒子12を半導体基板11上に形成する。なお、半導体基板11としては、例えば、Si(111)半導体基板、金属微粒子12としては、例えば、直径20nmのAu微粒子を用いることができる。また、金属微粒子12を半導体基板11上に形成する方法としては、例えば、金属の蒸着とアニールによる自己形成、EBリソグラフィによるパターニング、あるいは金属微粒子12を含む溶液の塗布などの方法を用いることができる。
【0018】
次に、図2に示すように、第1の原料ガスを供給しながらVLS成長を行うことにより、金属微粒子12下にナノワイヤ13aを形成した後、第1の原料ガスを第2の原料ガスに切り替えてVLS成長を行うことにより、ナノワイヤ13aの端部に結合されたノード14aを形成する。
さらに、ナノワイヤ13aの端部に結合されたノード14aを形成した後、第2の原料ガスを第1の原料ガスに切り替えてVLS成長を行うことにより、ノード14aに結合されたナノワイヤ13bを形成する。そして、ノード14aに結合されたナノワイヤ13bを形成した後、第1の原料ガスを第2の原料ガスに切り替えてVLS成長を行うことにより、ナノワイヤ13bの端部に結合されたノード14bを形成する。
【0019】
さらに、ナノワイヤ13bの端部に結合されたノード14bを形成した後、第2の原料ガスを第1の原料ガスに切り替えてVLS成長を行うことにより、ノード14bに結合されたナノワイヤ13cを形成する。
そして、ナノワイヤ13a〜13cの途中にノード14a、14bが挿入されたナノ構造が形成されると、ナノワイヤ13a〜13cの端部に結合されたノード14a、14bを細線化する。ここで、ノード14a、14bを細線化する方法としては、例えば、アニールによる蒸発や選択エッチングを用いることができる。
【0020】
そして、ナノワイヤ13a〜13cの端部に結合されたノード14a、14bが細線化されると、第3の原料ガスを供給しながら選択エピタキシャル成長を行うことにより、ノード14a、14bの周囲にリング15a、15bをそれぞれ選択的に形成する。
これにより、ナノワイヤ13a〜13cの途中に挿入されたノード14a、14bの位置で歪を与えながら、ノード14a、14bの周囲にリング15a、15bをそれぞれ作製することができ、ノード14a、14bの位置でナノワイヤ13a〜13cを折り曲げることが可能となることから、複雑な三次元構造にナノワイヤ13a〜13cを通すことができる。
【0021】
なお、ナノワイヤ13a〜13c、ノード14a、14bおよびリング15a、15bの材料は、Si、Ge、GaInN、AlGaAs、GaInP、AlGaInNおよびAlGaInSbの中から選択することができる。
ここで、ナノワイヤ13a〜13c、ノード14a、14bおよびリング15a、15bの材料を選択する場合、ナノワイヤ13a〜13cとノード14a、14bとの間の格子定数差が、ノード14a、14bとリング15a、15bとの間の格子定数差よりも大きくなるように、ナノワイヤ13a〜13c、ノード14a、14bおよびリング15a、15bの結晶構造を選択することができる。あるいはノード14a、14bとリング15a、15bの結晶構造が同じでかつナノワイヤ13a〜13cの表面の結晶構造とノード14a、14bの結晶構造とが異なるように、ナノワイヤ13a〜13c、ノード14a、14bおよびリング15a、15bの結晶構造を選択するようにしてもよい。
【0022】
例えば、ナノワイヤ13a〜13cの材料としてGaP、ノード14a、14bの材料としてGaAs、リング15a、15bの材料としてInPを選択することができる。そして、ナノワイヤ13a〜13cの材料としてGaP、ノード14a、14bの材料としてGaAs、リング15a、15bの材料としてInPを選択した場合、第1の原料ガスとして、TMGa(トリメチルガリウム)とTBP(ターシャリブチルフォスフィン)、第2の原料ガスとして、TMGa(トリメチルガリウム)とAsH(アルシン)、第3の原料ガスとして、TMIn(トリメチルインジウム)とTBP(ターシャリブチルフォスフィン)を用いることができる。
【0023】
そして、例えば、Au微粒子が形成されたSi(111)半導体基板を有機気相成長炉内に設置し、TMGa(トリメチルガリウム)を1×10−5mol/mim、TBP(ターシャリブチルフォスフィン)を6×10−4mol/mimだけ流しながら480℃で1分、TMGa(トリメチルガリウム)を1×10−5mol/mim、AsH(アルシン)を6×10−4mol/mimだけ流しながら460℃で20秒の成長を交互に繰り返し、ナノワイヤ13a〜13cの途中にノード14a、14bが挿入されたナノ構造として、GaP/GaAs/GaP/GaAs/GaPからなる積層構造を形成した。
【0024】
そして、TMIn(トリメチルインジウム)を1×10−5mol/mim、TBP(ターシャリブチルフォスフィン)を6×10−4mol/mimだけ流しながら550℃で20秒の選択エピタキシャル成長をGaAsの周囲に行うことにより、InPからなるリング15a、15bをGaAsの周囲に選択的に形成した。
ここで、VLS成長では、ナノワイヤ13a〜13cおよびノード14a、14bの幅は金属微粒子12の径で決まり、ナノワイヤ13a〜13cおよびノード14a、14bの長さは成長時間にほぼ比例することから、成長時間を制御することによりナノワイヤ13a〜13cおよびノード14a、14bの長さを制御することができる。
【0025】
また、図2(b)に示すように、ナノワイヤ13a〜13cの材料としてGaP、ノード14a、14bの材料としてGaAs、リング15a、15bの材料としてInPを選択した場合、ノード14a、14bの部分にのみリング15a、15bが形成されることが確認できた。
また、ナノワイヤ13a〜13cおよびノード14a、14bとしてGaP/GaAs/GaP/GaAs/GaPからなる積層構造を形成した後、InPからなるリング15a、15bを形成する時に温度を70℃だけ上昇させたことで、GaAsからなるノード14a、14bの部分が減量され細線化されたことから、InPの成長時に歪によってノード14a、14bの部分で折れ曲がった構造となった。
【0026】
そして、このサンプルからナノ構造をガラス基板上に掻き落してSNOM(走査型近接場顕微鏡)にて発光特性を調べたところ、室温で880nmにピークを持つ発光現象がノード14a、14bの部分で確認された。
なお、上述した実施例では、ナノワイヤ13a〜13cの材料としてGaP、ノード14a、14bの材料としてGaAs、リング15a、15bの材料としてInPを選択する方法について説明したが、ナノワイヤ13a〜13cの材料としてAlGaP、ノード14a、14bの材料としてAlGaAs、リング15a、15bの材料としてInAlPを選択するようにしてもよい。また、AlGaInNやAlGaInSbなどの材料を用いるようにしてもよい。
【0027】
さらに、p型不純物やn型不純物をナノ構造にドーピンングし、p−GaP/i−GaAs/n−GaPダイオード構造を形成してから、i−GaAsの周囲にInPを選択的にエピタキシャル成長させ、電流注入にてInPを発光させるようにしてもよい。
また、第1の原料ガスとしてSiHを用いることによりSiからなるナノワイヤ13a〜13cを形成するとともに、第2の原料ガスとしてTMGa(トリメチルガリウム)とAsH(アルシン)を用いることによりGaAsからなるノード14a、14bを形成した後、このサンプルを大気中に取り出し、ナノワイヤ13a〜13cの表面を酸化してから、このサンプルを有機気相成長炉内に再び設置し、第3の原料ガスとして、TMIn(トリメチルインジウム)とTBP(ターシャリブチルフォスフィン)を用いることによりInPからなるリング15a、15bをGaAsの周囲に選択的に形成するようにしてもよい。
ここで、Siからなるナノワイヤ13a〜13cの表面を酸化することで、ナノワイヤ13a〜13cの表面に形成された酸化膜がInPの成長温度で取れにくいことから、InPをGaAsの周囲に選択的に成長させやすくすることができる。
【0028】
図3は、本発明の第2実施形態に係るナノ構造の作製方法を示す断面図、図4は、本発明の第2実施形態に係るナノ構造の構成を示す斜視図である。
図3において、金属微粒子32を半導体基板31上に形成する。なお、半導体基板31としては、例えば、Si(111)半導体基板、金属微粒子32としては、例えば、直径20nmのAu微粒子を用いることができる。また、金属微粒子32を半導体基板31上に形成する方法としては、例えば、金属の蒸着とアニールによる自己形成、EBリソグラフィによるパターニング、あるいは金属微粒子12を含む溶液の塗布などの方法を用いることができる。
【0029】
次に、第1の原料ガスを供給しながらVLS成長を行うことにより、金属微粒子32下にナノワイヤ33aを形成した後、第1の原料ガスを第2の原料ガスに切り替えてVLS成長を行うことにより、ナノワイヤ33aの端部に結合されたノード34を形成する。
さらに、ナノワイヤ33aの端部に結合されたノード34を形成した後、第2の原料ガスを第1の原料ガスに切り替えてVLS成長を行うことにより、ノード34に結合されたナノワイヤ33bを形成する。
そして、ナノワイヤ33a、33bの途中にノード34が挿入されたナノ構造が形成されると、第3の原料ガスを供給しながら選択エピタキシャル成長を行うことにより、ノード34の周囲にリング35を選択的に形成する。
【0030】
次に、図4に示すように、ノード34の周囲にリング35が形成されると、ノード34を選択的にエッチング除去する。
これにより、ナノワイヤ33a、33bの途中に挿入されたノード34の部分にのみリング35を作製することが可能となるとともに、リング35がはめ込まれているノード34を除去することができ、リング35を単独で取り出すことが可能となることから、磁場による波長制御や偏波制御など様々な光制御を実現することが可能となる。
なお、ナノワイヤ33a、33b、ノード34およびリング35の材料は、Si、Ge、GaInN、AlGaAs、GaInP、AlGaInNおよびAlGaInSbの中から選択することができる。
【0031】
ここで、ナノワイヤ33a、33b、ノード34およびリング35の材料を選択する場合、ナノワイヤ33a、33bとノード34との間の格子定数差が、ノード34とリング35との間の格子定数差よりも大きくなるように、ナノワイヤ33a、33b、ノード34およびリング35の結晶構造を選択することができる。あるいはノード34とリング35の結晶構造が同じでかつナノワイヤ33a、33bの表面の結晶構造とノード34の結晶構造とが異なるように、ナノワイヤ33a、33b、ノード34およびリング35の結晶構造を選択するようにしてもよい。
【0032】
例えば、ナノワイヤ33a、33bの材料としてGaP、ノード34の材料としてGaAs、リング35の材料としてInPを選択することができる。そして、ナノワイヤ33a、33bの材料としてGaP、ノード34の材料としてGaAs、リング35の材料としてInPを選択した場合、第1の原料ガスとして、TMGa(トリメチルガリウム)とTBP(ターシャリブチルフォスフィン)、第2の原料ガスとして、TMGa(トリメチルガリウム)とAsH(アルシン)、第3の原料ガスとして、TMIn(トリメチルインジウム)とTBP(ターシャリブチルフォスフィン)を用いることができる。
【0033】
そして、例えば、Au微粒子が形成されたSi(111)半導体基板を有機気相成長炉内に設置し、TMGa(トリメチルガリウム)を1×10−5mol/mim、TBP(ターシャリブチルフォスフィン)を6×10−4mol/mimだけ流しながら480℃で1分、TMGa(トリメチルガリウム)を1×10−5mol/mim、AsH(アルシン)を6×10−4mol/mimだけ流しながら460℃で20秒、TMGa(トリメチルガリウム)を1×10−5mol/mim、TBP(ターシャリブチルフォスフィン)を6×10−4mol/mimだけ流しながら480℃で1分の成長を行い、ナノワイヤ33a、33bの途中にノード34が挿入されたナノ構造として、GaP/GaAs/GaPからなる積層構造を形成した。
【0034】
そして、TMIn(トリメチルインジウム)を1×10−5mol/mim、TBP(ターシャリブチルフォスフィン)を6×10−4mol/mimだけ流しながら550℃で20秒の選択エピタキシャル成長をGaAsの周囲に行うことにより、InPからなるリング35をGaAsの周囲に選択的に形成した。
ここで、VLS成長では、ナノワイヤ33a、33bおよびノード34の幅は金属微粒子32の径で決まることから、InPからなるリング35の内径を金属微粒子32の径で決めることができる。
【0035】
また、ナノワイヤ33a、33bおよびノード34の長さは成長時間にほぼ比例することから、成長時間を制御することにより、ナノワイヤ33a、33bおよびノード34の長さを制御することができ、ノード34の長さに従ってリング35の厚さを決めることができる。
この結果、金属微粒子32の径およびノード34の成長時間を制御することにより、リング35のサイズを調整することができ、リング35のサイズの制御性を向上させることができる。
【0036】
次に、このサンプルを有機気相成長炉から取り出した後、硫酸/過酸化水素水溶液を用いてGaAsのみを選択的にエッチング除去することにより、図4に示すように、InPからなるリング35を単独で取り出した。ここで、SEM観察により、Si(111)半導体基板上には、GaPからなるナノワイヤ33a、33bとInPからなるリング35が付着していることを確認した。
【0037】
そして、このサンプルをSNOM(走査型近接場顕微鏡)にて発光特性を調べたところ、室温で880nmにピークを持つリング状の発光現象がInPからなるリング35の部分で確認された。
なお、上述した実施例では、ナノワイヤ33a、33bの材料としてGaP、ノード34の材料としてGaAs、リング35の材料としてInPを選択する方法について説明したが、ナノワイヤ33a、33bの材料としてAlGaP、ノード34の材料としてAlGaAs、リング35の材料としてInAlPを選択するようにしてもよい。また、AlGaInNやAlGaInSbなどの材料を用いるようにしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】本発明の第1実施形態に係る半導体基板上に配置された金属微粒子を示す斜視図である。
【図2】図2(a)は、本発明の第1実施形態に係るナノ構造の作製方法を示す断面図、図2(b)は、本発明の第1実施形態に係るナノ構造の構成を示すSEM像である。
【図3】本発明の第2実施形態に係るナノ構造の作製方法を示す断面図である。
【図4】本発明の第2実施形態に係るナノ構造の構成を示す斜視図である。
【符号の説明】
【0039】
11、31 半導体基板
12、32 金属微粒子
13a〜13c、33a、33b ナノワイヤ
14a、14b、34 ノード
15a、15b、35 リング

【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属微粒子を基材上に形成する工程と、
第1の原料ガスを供給しながらVLS成長を行うことにより、前記金属微粒子下にナノワイヤを形成する工程と、
前記第1の原料ガスを第2の原料ガスに切り替えてVLS成長を行うことにより、前記ナノワイヤの端部に結合されたノードを形成する工程と、
第3の原料ガスを供給しながらエピタキシャル成長を行うことにより、前記ノードの周囲にリングを選択的に形成する工程とを備えることを特徴とするナノ構造の作製方法。
【請求項2】
前記ナノワイヤの途中にノードが挿入されるように、前記ナノワイヤおよびノードの形成を交互に繰り返すことを特徴とする請求項1記載のナノ構造の作製方法。
【請求項3】
前記ナノワイヤと前記ノードとの間の格子定数差が前記ノードとリングとの間の格子定数差よりも大きくなるように、前記ナノワイヤ、ノードおよびリングの結晶構造が選択されるか、あるいは前記ノードとリングの結晶構造が同じでかつ前記ナノワイヤの表面の結晶構造と前記ノードの結晶構造とが異なるように、前記ナノワイヤ、ノードおよびリングの結晶構造が選択されることを特徴とする請求項1または2記載のナノ構造の作製方法。
【請求項4】
前記ノードの周囲にリングを選択的に形成する前に、前記ナノワイヤの端部に結合されたノードを細線化する工程をさらに備えることを特徴とする請求項1から3のいずれか1項記載のナノ構造の作製方法。
【請求項5】
前記ノードの周囲にリングを選択的に形成してから、前記ノードを選択的にエッチングする工程をさらに備えることを特徴とする請求項1から4のいずれか1項記載のナノ構造の作製方法。
【請求項6】
前記ナノワイヤ、ノードおよびリングの材料は、Si、Ge、GaInN、AlGaAs、GaInP、AlGaInNおよびAlGaInSbの中からそれぞれ選択されることを特徴とする請求項1から5のいずれか1項記載のナノ構造の作製方法。
【請求項7】
第1の半導体材料から構成されたナノワイヤと、
第2の半導体材料から構成され、前記ナノワイヤの途中に挿入されたノードと、
第3の半導体材料から構成され、前記ノードの周囲に形成されたリングとを備えることを特徴とするナノ構造。
【請求項8】
第1の半導体材料から構成されたナノワイヤと、
第2の半導体材料から構成され、前記ナノワイヤの途中に挿入されるとともに、前記ナノワイヤよりも細いノードと、
第3の半導体材料から構成され、前記ノードの周囲に形成されたリングとを備え、
前記ナノワイヤは前記ノードの部分で折れ曲がっていることを特徴とするナノ構造

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2008−100335(P2008−100335A)
【公開日】平成20年5月1日(2008.5.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−286611(P2006−286611)
【出願日】平成18年10月20日(2006.10.20)
【出願人】(000004226)日本電信電話株式会社 (13,992)
【Fターム(参考)】