説明

ナノ構造をもつ熱電材料における高い示性数のための方法

高い示性数、ZT値をもつ熱電材料が開示されている。このような材料は、多くの場合、材料のZT値を増加する助けになる(例えば、粗粒の境界または粗粒/封入物の境界における界面により音子の散乱を増加することにより)と仮定されるナノサイズのドメイン(例えば、ナノ結晶)を含む。このような材料のZT値は、約1、1.2、1.4、1.5、1.8、2およびそれ以上より大きいことができる。このような材料は、それらからのナノ粒子、または、その後、新規のばら材料に圧密化させることができる(例えば、直流誘導ホットプレスにより)元素から機械的に合金されたナノ粒子、を形成することにより、熱電出発材料から製造することができる。出発材料の限定されない例は、合金することができる、原子の、そして/またはドープすることができる、ビスマス、鉛および/またはケイ素基剤の材料を含む。ナノ構造をもつ熱電材料の態様に関する種々の組成物および方法(例えば、制御ドーピング)が更に開示されている。

【発明の詳細な説明】
【関連出願の相互参照】
【0001】
本出願は「高い熱電示性数をもつナノ複合物」と題する、2004年10月29日出願の米国特許出願第10/977,363号の部分継続出願であり、「ナノ構造をもつ熱電材料における高い示性数のための方法」と題する、2006年12月1日出願の米国特許仮出願第60/872,242号の利益を主張する。これらすべての出願書の内容はそれらの全体を参照により本明細書に引用されたこととする。
【技術分野】
【0002】
本出願書は一般的に、熱電材料およびそれらの加工法、そして更に具体的には、高い熱電特性を示すような熱電材料に関する。
【背景技術】
【0003】
あらゆる材料の熱電特性はZ=Sσ/k[ここで、Sはゼーベック(Seebeck)係数であり、σは電気伝導度であり、そしてkは総熱伝導度である]として定義される、示性数Z(または無次元の示性数ZT)と呼ばれる量により特徴を表すことができる。高いZT値をもつ(例えば、低い熱伝導度kおよび/または高い力率Sσをもつ)材料を構成することが望ましい。一例として、このような材料は高い質の発電装置および冷却装置を構成するために使用することができる可能性がある。
【発明の概要】
【0004】
1つの態様において、本発明は熱電バルク材料のような出発材料から複数のナノ粒子を生成し、そしてこれらのナノ粒子を高温で圧力下で圧密化して、例えば約2000℃未満、約1000℃未満、約600℃未満、約200℃未満または約20℃未満の温度で、熱電出発材料より高いZT値を示す熱電材料を形成する工程により、熱電材料を加工する方法に関する。場合により、形成される材料のピークZT値は、出発材料のピークZT値より約25%〜約1000%大きいことができる。他の場合には、形成される材料のピークZT値は、出発材料のピークZTの1000%より実質的に大きいことができる。
【0005】
用語「ナノ粒子」は一般に当該技術分野で知られており、それは本明細書では、約1nm〜約1000nmの範囲内のような、約1ミクロン未満のサイズ(例えば平均または最大サイズ)をもつ材料の粒子を表すために使用される。サイズは好ましくは、約500ナノメーター(nm)未満、好ましくは約1〜約200nmの範囲内、そしてより好ましくは約1〜約100nmの範囲内であることができる。ナノ粒子は例えば、出発材料をナノサイズ片に破壊することにより(例えば、乾式粉砕、湿式粉砕または他の適当な方法のいずれかを使用する粉砕により)生成することができる。一例として、所望のナノ粒子を達成するためにボールミル粉砕法を使用することができる。粒子のサイズを更に縮小するために、ナノ粒子を生成中に、場合により、更に冷却を使用することができる(例えば、粉砕中に出発材料を冷却することができる)。ナノ粒子生成の幾つかの他の方法は、気相からの凝縮、湿式化学法およびナノ粒子を形成する他の方法を含むことができる。場合により、異なる元素材料(例えば、ビスマスまたはテルル)のナノ粒子を別々に生成し、その後、更に以下に考察されるように、生成される熱電材料に圧密化することができる。
【0006】
ナノ粒子は、生成される熱電材料を形成するために十分なナノ粒子間の電気的結合を誘発するように、選択された温度および選択された圧力下で圧密化することができる。一例として、ナノ粒子の圧密化を達成するために、電流誘発ホットプレス(プラズマ圧力圧縮、「PC」またはスパークプラズマ焼結、SPSとしても知られている)、単方向性ホットプレスおよびアイソスタチックホットプレス法を含むホットプレスを使用することができる。選択される圧力は例えば、約10MPa〜約900MPaの範囲内、または約40MPa〜約300MPaの範囲内、そして好ましくは約60MPa〜約200MPaの範囲内にあることができる。選択される温度は例えば、BiTe基材料の場合には、約200℃〜熱電材料のほぼ融点までの間の温度範囲内(例えば、200℃〜約2000℃)、または約400℃〜約1200℃の範囲内、または約400℃〜約600℃の範囲内、または約400℃〜約550℃の範囲内にあることができる。
【0007】
前記の方法における関連態様において、ナノ粒子を圧密化する工程は、それぞれの理論的密度の約90%〜約100%の範囲内の密度(例えば、約10%未満〜約1%未満の空隙率)を示す材料を提供するようにナノ粒子を圧密化する工程を表す。
【0008】
関連態様において、前記に考察されたような本発明の方法により生成される熱電材料は約1を超える、または約1.2を超える、または約1.4を超える、そして好ましくは約1.5を超える、そしてもっとも好ましくは約2を超えるZT値(例えば、ピークZT値)を示す。更に、多数の実施態様において、熱電材料は、例えば材料の融点に左右される可能性がある特定の作業温度(operating temperature)において、例えばBiTe−基材料に対して約300℃未満の温度において高いZT値を示す。高いZT値はまた、ドーピングレベルおよび/または材料の微細構造に左右され得る。
【0009】
多くの場合、出発熱電材料(例えば、出発バルク材料または、粒子を合成するための流体相の材料)は、約1未満、そして場合により約0.1を超えるZTを示し、そして出発材料からナノ粒子を生成し(例えば、粉砕または他の適当な方法により出発材料を破壊し)、そしてこれらのナノ粒子を圧密化することにより得られる最終熱電材料は、約1、1.1、1.2、1.3、1.4、1.5または2を超えるZT値を示す。
【0010】
発明の実施における出発材料としては種々の熱電材料を使用することができる。出発熱電材料はp−ドープまたはn−ドープすることができる。代表的な出発熱電材料は、限定はされないが、ビスマス−基剤、鉛−基剤またはケイ素−基材料を含む。例えば、出発熱電材料はビスマス−アンチモン−テルルの合金、ビスマス−セレン−テルルの合金、鉛−テルルの合金、鉛−セレンの合金またはケイ素−ゲルマニウムの合金(例えば、SiGe)を含んでなることができる。一例として、幾つかの実施態様において、熱電材料はBiTe3−xSe[ここでxは約0〜約0.8の範囲内にある]の合金であることができる。あるいはまた、幾つかの他の実施態様において、熱電材料はBiSb2−xTe[ここでxは約0〜約0.8の範囲内にある]の合金であることができる。幾つかの実施態様において、場合により、平均結晶粒度(grain size)(例えば、約1ミクロンより大きい)を含むことができる、多結晶構造を有する出発熱電材料を使用することができる。
【0011】
他の態様において、ナノ粒子は、生成されるナノ粒子が約1000nm未満、または約500nm未満、または約200nm未満、そして好ましくは約100nm未満、例えば約1nm〜約200nmの範囲内、または約1nm〜約100nmの範囲内、そして好ましくは約1nm〜約50nmの範囲内のサイズ(例えば、平均または最大サイズ)を有するように、出発熱電材料から生成することができる。このような粒度は、ボールミルまたは他の適当な方法により出発材料を粉砕する工程のような、本明細書で考察されたあらゆる方法により生成することができる。
【0012】
前記の方法における関連態様において、結果的に高められた熱電特性をもつ熱電材料を生成するために、ナノ粒子は一定期間、例えば、約1秒〜約10時間、圧力下、高温下に維持される。他の態様において、ナノ粒子は、結果的に熱電材料を形成されるために十分
な時間、低圧または外気圧下に維持されながら、選択される温度に暴露される。他の態様において、ナノ粒子は高圧下、室温で圧密化されて、高い理論密度(例えば、約100%)をもつ試料を形成し、次に高温で焼なまし(anneal)されて最終熱電材料を形成することができる。
【0013】
他の態様は、複数のナノ粒子を生成する工程を含む熱電材料を形成する方法に関する。一例として、粒子は1種または複数のバルクの元素材料を粉砕する工程により生成することができる。例えば、ナノ粒子は、あらゆる作業可能な割合の、ビスマスおよびテルル、ビスマスおよびセレン、アンチモンおよびテルル、アンチモンおよびセレン、並びにケイ素およびゲルマニウムのような、少なくとも2種の異なるバルクの元素材料を粉砕する工程により生成することができる。このような場合には、少なくとも2種のナノ粒子を形成することができる。異なる種類の粒子が別々に生成される場合は、粒子を混合して、更に粉砕して(例えば、ボールミル)、機械的に合金された粒子を形成することができる。あるいはまた、種々のバルク材料をすべて同時に粉砕して、機械的に合金された粒子を形成することができる。機械的合金形成を使用して形成されたナノ粒子または、元素、化合物または合金から別々に生成されたナノ粒子の混合物は圧力下および高温下で圧密化されて、約1より大きいZT値を示す熱電材料を結果的に生成することができる。場合により、混合物にドーパントを添加することができる。他の実施態様において、ナノ粒子は、良好なZT値(例えば、約0.5を超える)をもつ原料材料からの粒子および/またはミクロンサイズの粒子(例えば、約1ミクロン〜約10、50、100もしくは500ミクロンの平均サイズをもつ粒子)のような、他の種類の粒子とともに圧密化することができる。
【0014】
他の態様において、その構造物が約1を超えるZT値(例えば、ピークZT値)、そして好ましくは約1.2を超える、または約1.5を超える、または更に約2を超えるZT値を示す、約1nm〜約500nmの範囲内の平均サイズを有する複数の封入物(inclusions)を含んでなる材料の構造物を含む熱電材料が提供される。
【0015】
関連態様において、熱電材料は約2000℃未満、または約1000℃未満、または約600℃未満、または約200℃未満、または約20℃未満の温度で前記のZT値を示すことができる。更に、平均粒度(grain size)は約1〜約500nmの範囲内にあることができる。構造物は約500nmより大きい粗粒を実質的に含まない(例えば、約500nmを超える平均および/または最大ディメンションを有する粗粒を実質的に含まない)か、あるいは幾つかのより大きい(例えば、約1μmより大きい粒度の)粗粒を含むことができる。
【0016】
他の態様において、1個または複数の粗粒は、例えば、約1〜約50nmの範囲内、または約1nm〜約20nmの範囲内のサイズをもつことができる、1個または複数の沈殿物領域または他の封入物をその中に含む。沈殿物領域は異なる組成物および/または同一組成物であるが、異なる結晶方向、および/または粒子の残りに対して異なる相により特徴付けることができる。
【0017】
他の態様において、熱電材料はそれぞれの理論的密度の約90%〜約100%の範囲内の密度をもつことができる。一例として、熱電材料は約10%未満、そして好ましくは約1%未満の空隙率を示すことができる。
【0018】
関連態様において、熱電材料は相互に対してランダムに配向された小型結晶の粗粒(small crystalline grains)で形成された(例えば、約500nm未満、または約200nm未満、そして好ましくは約1nm〜約100nmの範囲内の平均サイズをもつ)多結晶構造を示す。
【0019】
発明の1つの態様は、複数の粗粒を有する材料構造物を含むことができる熱電材料に関する。粗粒は約1ミクロン〜約10ミクロンの範囲内、または約1ミクロン〜約5ミクロンの範囲内、または約1ミクロン〜約2ミクロンの範囲内の平均サイズをもつことができる。少なくとも幾つかの粗粒は、1個または複数の沈殿物領域あるいは他の種類の封入物を含むことができる。このような領域は約1nm〜約100nm、または約1nm〜約50nmの平均サイズをもつことができる。熱電材料は約1、1.2、1.5または2を超えるZT値をもつことができる。例えば、ZT値はまた、約1〜約5の範囲内にあることができる。熱電材料は約2000℃未満、または約1000℃未満、または約600℃未満、または約200℃未満、または約20℃未満の作業温度でそのようなZT値を示すことができる。粗粒はビスマス−基合金、鉛−基合金およびケイ素−基合金のあらゆる組み合わせ物のような種々の材料から形成することができる。
【0020】
発明の他の態様は、ホスト全体に複数の封入物または粒子を分散させているホスト材料を含む熱電材料に到達される。粒子または封入物は一定の閾値未満、例えば、約20ミクロン未満のサイズをもつことができる。ホスト材料は、その少なくとも幾つかの粗粒が約1ミクロンを超える、または約1ミクロン未満のサイズ(例えば、あらゆるディメンションの最大粒度および/または平均サイズ)をもつ、1個または複数の粗粒を含むことができる。幾つかの実施態様において、ホスト材料中の、例えば、50%、80%、90%、そして好ましくは99%を超える大部分の電荷担体(charge carrier)が、これらの封入物の存在によるために、ホスト材料は典型的な熱電材料におけるほど高度にドープされていない。幾つかの実施態様において、粒子はホスト材料より高度にドープされることができる。熱電材料は粒子または封入物が存在しないホスト材料の担体濃度および/または電荷担体の移動性のそれぞれより大きい担体濃度および/または電荷担体の移動性、並びにその結果、より高い力率(Sσ)を示すことができる。更に、またはそれに代り、熱電材料は、対応する電荷担体の種類に対するホスト材料の関連エネルギー帯に比較してより高いエネルギーをもつ、電荷担体の種類に対するエネルギー帯(例えば、伝導帯または価電子帯)を有する封入物により特徴付けることができる。熱電材料は場合により、熱電材料に関して本明細書で考察された多数の特性を含むことができる。例えば、熱電材料は約1、1.1、1.2、1.3、1.4、1.5または2より大きいZT値を示すことができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
本発明の幾つかの実施態様は、必ずしも実測値に描かれてはいない、以下の図面を参照してより良く理解することができる。
【図1A】本発明の幾つかの実施態様に従う、幾つかの粗粒が1個または複数の沈殿物領域を含む、熱電材料中の複数の粗粒のスキームである。
【図1B】本発明の幾つかの実施態様に従う、その中に包埋された封入物を伴うホスト材料のスキーム図である。
【図1C】図1Bに表された材料の伝導エネルギー図のスキームである。
【図2】幾つかの実施態様に従う、ボールミル粉砕により調製されたp−型のBiSbTeナノ粒子のXRD図である。
【図3A】図2のp−型のBiSbTeナノ粒子のSEM画像である。
【図3B】図2のBiSbTeナノ粒子の比較的低解像度のTEM顕微鏡写真である。
【図3C】図3Bに示されるBiSbTeナノ粒子の比較的高解像度のTEM顕微鏡写真である。
【図4】本発明の幾つかの実施態様とともに使用することができる、DCホットプレス(プラズマ圧力またはスパークプラズマ焼結法)の図および写真である。
【図5】図2の粒子から調製された熱電材料および、幾つかの実施態様に従うp−型のBiSbTe合金の現在の技術水準のバルク材料の電気伝導度の温度依存性を表すグラフである。
【図6】図2の粒子から調製された熱電材料および、幾つかの実施態様に従うp−型のBiSbTe合金の現在の技術水準のバルク材料のゼーベック係数の温度依存性を表すグラフである。
【図7】図2の粒子から調製された熱電材料および、幾つかの実施態様に従うp−型のBiSbTe合金の現在の技術水準のバルク材料の力率の温度依存性を表すグラフである。
【図8】図2の粒子から調製された熱電材料および、幾つかの実施態様に従うp−型のBiSbTe合金の現在の技術水準のバルク材料の熱伝導度の温度依存性を表すグラフである。
【図9】図2の粒子から調製された熱電材料および、幾つかの実施態様に従うp−型のBiSbTe合金の現在の技術水準のバルク材料の、示性数、ZTの温度依存性を表すグラフである。
【図10】図2の粒子から調製された熱電材料のTEM顕微鏡写真である。
【図11】密に充填されたナノ粒子のナノサイズを示す、図2の粒子から調製された熱電材料の拡大TEM顕微鏡写真である。
【図12】図11に示されるナノ粒子より大型粗粒の存在を示す、図2の粒子から調製された熱電材料のTEM顕微鏡写真である。
【図13】ナノドットの存在を示す、図2の粒子から調製された熱電材料のTEM顕微鏡写真である。
【図14】小角度境界をもつナノドットの存在を示す、図2の粒子から調製された熱電材料のTEM顕微鏡写真である。
【図15】Te沈殿物を示す、図2の粒子から調製された熱電材料のTEM顕微鏡写真であり、図の挿入図はTe沈殿物の電子回折図を示す。
【図16】幾つかの実施態様に従う、p−型のSiGeバルク出発材料から調製された熱電材料の電気伝導度の温度依存性を表すグラフである。
【図17】幾つかの実施態様に従う、p−型のSiGeバルク出発材料から調製された熱電材料のゼーベック係数の温度依存性を表すグラフである。
【図18】幾つかの実施態様に従う、p−型のSiGeバルク出発材料から調製された熱電材料の熱伝導度の温度依存性を表すグラフである。
【図19】幾つかの実施態様に従う、p−型のSiGeバルク出発材料から調製された熱電材料の示性数、ZTの温度依存性を表すグラフである。
【図20】幾つかの実施態様に従う、n−型のSiGeバルク出発材料から調製された熱電材料の電気伝導度の温度依存性を表すグラフである。
【図21】幾つかの実施態様に従う、n−型のSiGeバルク出発材料から調製された熱電材料のゼーベック係数の温度依存性を表すグラフである。
【図22】幾つかの実施態様に従う、n−型のSiGeバルク出発材料から調製された熱電材料の熱伝導度の温度依存性を表すグラフである。
【図23】幾つかの実施態様に従う、n−型のSiGeバルク出発材料から調製された熱電材料の示性数、ZTの温度依存性を表すグラフである。
【図24】本発明の幾つかの実施態様に従う、SiGeバルク出発材料のボールミル試料のTEM顕微鏡写真である。
【図25】挿入図が試料上の対応する電子回折図を示す、ホットプレス後の図24の粒子のTEM顕微鏡写真である。
【図26】図25に示されるホットプレス試料の高解像度のTEM顕微鏡写真である。
【図27】幾つかの実施態様に従う、p−型のBi0.3Sb1.7Teのバルク出発材料から調製された熱電材料の電気伝導度の温度依存性を表すグラフである。
【図28】幾つかの実施態様に従う、p−型のBi0.3Sb1.7Teのバルク出発材料から調製された熱電材料のゼーベック係数の温度依存性を表すグラフである。
【図29】幾つかの実施態様に従う、p−型のBi0.3Sb1.7Teのバルク出発材料から調製された熱電材料の熱伝導度の温度依存性を表すグラフである。
【図30】幾つかの実施態様に従う、p−型のBi0.3Sb1.7Teのバルク出発材料から調製された熱電材料の示性数、ZTの温度依存性を表すグラフである。
【図31】幾つかの実施態様に従う、p−型のBi0.5Sb1.5Teのバルク出発材料から調製された熱電材料の電気伝導度の温度依存性を表すグラフである。
【図32】幾つかの実施態様に従う、p−型のBi0.5Sb1.5Teのバルク出発材料から調製された熱電材料のゼーベック係数の温度依存性を表すグラフである。
【図33】幾つかの実施態様に従う、p−型のBi0.5Sb1.5Teのバルク出発材料から調製された熱電材料の熱伝導度の温度依存性を表すグラフである。
【図34】幾つかの実施態様に従う、p−型のBi0.5Sb1.5Teのバルク出発材料から調製された熱電材料の示性数、ZTの温度依存性を表すグラフである。
【発明の詳細な説明】
【0022】
1つの態様において、本発明は、高いZT値をもつ熱電材料およびこのような材料の製法に関する。一般に、このような熱電材料は典型的には、複数の粗粒を含んでなる。このような粗粒は例えば、出発熱電材料のようなバルク材料から得ることができるナノサイズの粗粒の形態にあることができる。本発明の実施態様に従う熱電材料は一般に、種々のサイズの粗粒を含むことができる。例えば、熱電材料は1μmより大きい幾つかの粗粒および1μmより小さい幾つかの粗粒を含むことができる。幾つかの実施態様において、熱電材料は材料のZT値に不都合に影響を与える可能性がある粗粒を実質的に含まないことができる(例えば、約5%、10%、15%、20%、25%、30%、40%または50%を超えるだけ全材料のZT値を減少させることができる不都合な粗粒を実質的に含まない)。幾つかの実施態様は、ミクロンの次元の(例えば、約1ミクロンを超える)平均粒度をもつ複数の粗粒を含む熱電材料に関する。幾つかの場合には、該材料は大型粗粒を実質的に含まない可能性がある。限定されない例は、約5000nm、1000nm、300nm、100nm、50nm、20nmまたは10nmより大きい粗粒を実質的に含まない例を含む。多くの場合、このような粗粒は場合により、例えば、約1nm〜約50nmの範囲内の平均サイズを有する1個または複数の沈殿物領域または他のタイプの封入物を含むことができる。幾つかの好適な実施態様において、少なくとも幾つかの、そして好ましくは実質的にすべての粗粒が沈殿物領域、ナノ粒子および/または他のタイプの封入物を含み、これらの種々の封入物は、化学反応により、そして/またはこのような封入物の挿入により、インサイチューで形成されることができる。更なる実施態様は、幾つかの粗粒が場合により沈殿物領域または他のタイプの封入物を含むことができる、複数の粒度をもつ材料(例えば、少なくとも幾つかのナノサイズの粗粒および幾つかの1ミクロンを超える粗粒)に関する。言い換えると、本発明の熱電材料は沈殿物領域を含んでも含まなくてもサブミクロンのサイズの粗粒、沈殿物領域を含んでも含まなくても1ミクロンを超える粗粒(例えば、制御ドーピング(modulation doping)を使用して)、または沈殿物領域を含んでも含まなくてもサブミクロンの粗粒および1ミクロンを超える粗粒の混合物、のあらゆる組み合わせ物を含むことができる。あらゆるこれらの粗粒は、それらに限定はされないが、材料の圧縮中の沈殿物領域の形成、ホストマトリックス中への粒子の挿入および/またはソリッドステートの化学反応による形成を含む、複数の機序により形成することができる。
【0023】
本発明の熱電材料のZT値は種々の値を採ることができる。例えば、材料のピークZT値または平均ZT値は、それから、出発材料をナノ粒子に転化させ、そして圧力下、高温下でナノ粒子を圧密化することにより熱電材料が形成される、対応する出発材料のピークZT値または平均ZT値より大きいことができる。例えば、材料のZT値は、出発材料のZT値より約25%〜約1000%大きいことができる。他の例においては、材料のZT値は出発材料のZT値の1000%より実質的に大きいことができる。出発材料はある範
囲のZT値をもつことができる。幾つかの実施態様において、形成された材料のZT値は約0.8、0.9、1、1.1、1.2、1.3、1.4、1.5、1.6、1.7、1.8、1.9または2より大きいことができる。幾つかの実施態様において、熱電材料はその下限が前記ZT値の1つであり、そしてその上限が約4、5または6の値に達する範囲内のZT値を示すことができる。
【0024】
これらの上昇したZT値は温度の制約なしに特定することができるが、幾つかの実施態様においては、熱電材料は特定の温度において、またはある温度範囲内で上昇したZT値を示すことができる。例えば、熱電材料は約2000℃未満、約1000℃未満、約800℃未満、約600℃未満または約400℃未満の温度で、上昇したZT値を示すことができる。他の例において、熱電材料は室温(例えば、約200℃未満、約150℃未満、約100℃未満、約60℃未満、約40℃未満、約30℃未満または約20℃未満の温度)に近づき始めるまたはそれを含む温度範囲で上昇したZT値を示すことができる。更に他の例において、熱電材料は極低温(例えば、約0℃未満、約−50℃未満または約−100℃未満の温度)に近づくまたはそれを含む温度範囲で上昇したZT値を示すことができ、このような材料は空調装置、冷蔵庫または超伝導体のような特定の冷却装置のために有用であることができる。幾つかの実施態様において、上昇したZT値が示される温度範囲は、熱電材料の組成に左右される可能性がある。幾つかの限定されない例において、ホウ素−カーバイド基組成物は、幾つかの実施態様においては、約2000℃未満で上昇したZT値を示すことができ、幾つかの実施態様においては、SiGe基組成物は約1000℃未満で上昇したZT値を示すことができ、幾つかの実施態様においては、PbTe基組成物は約600℃未満で上昇したZT値を示すことができ、そして/または幾つかの実施態様においては、BiTe基組成物は約200℃未満で上昇したZT値を示すことができる。他の限定しない例においては、熱電材料はBiSb1−xを含んでなり、室温未満(例えば、約20℃未満)で上昇したZT値を示す。
【0025】
必ずしも何か特定の説により限定はされないが、このような熱電材料の高いZT値は、熱伝導度、ゼーベック係数および電気伝導度のあらゆる組み合わせの変化の結果であることができると考えられる。熱伝導度は2種の寄与、格子および電子の寄与を有する。大型粗粒を含む単結晶または多結晶試料において、格子の熱伝導度は特定の物質に固定されている。しかし、バルク材料がナノサイズの粗粒および/またはナノ粒子より大きい粗粒内に包埋されたナノ粒子でなる場合は、ナノ粒子および/または包埋ナノ粒子からもたらされる3種の効果を考慮することができる。第1に、熱伝導度の格子の部分は音子(phonon)の界面散乱により低下する。第2に、ゼーベック係数は担体のフィルター効果のために増加することができ(通常、低エネルギーの電子/空孔が散乱され、それによりゼーベック係数を増加する)、そして第3に電気伝導度は制御ドーピング効果のために増加することができ―粒子が担体(電子および空孔)の寄与体として働き、従って均一にドープされる従来の材料に比較して不純物の散乱を減少する。バリヤーが他のタイプの担体に実質的に影響せずに1種類の電荷(charge)(電子または空孔)を優先的に散乱することができるために、熱伝導度に対する電子の寄与、特に熱伝導度に対する双極性の寄与は、電子の界面バリヤー散乱により減少される可能性がある。加えて、量子サイズ効果は更に、Sσが増加するように、ゼーベック係数および電気伝導度に影響を与えることができる。従って、本発明の幾つかの実施態様は、例えば、出発材料をボールミル粉砕して、PC、単方向性ホットプレス、アイソスタチックホットプレスを含むホットプレスにより密な試料(例えば、理論密度の約90%〜約100%)を調製することにより調製されるナノ粒子を利用することができる。これらのホットプレス試料は典型的には、バルクの相当物に比較して低い熱伝導度を示し、従ってZT値を高め、熱伝導度の低下からのZTの獲得が十分である場合は力率もまた低下することができるが、力率は通常は維持されるかまたは高められる。
【0026】
幾つかの実施態様において、熱電材料はバルクの熱電材料のようなバルク出発材料から生成される粗粒を含んでなることができる。例は大きい力率をもつバルク出発材料および/または良好なZT値(例えば、約0.1を超えるZT値)をもつ出発材料を含む。例えば、出発材料のZTは約0.05、0.1、0.2、0.3、0.4、0.5以上より大きいことができる。幾つかの限定されない例において、出発材料は約0.8、0.9、1、1.1、1.2、1.3、1.4、1.5または2未満のZT値をもつことができる。他の例において、出発熱電材料は、大きい熱伝導度(例えば、2W/mKより大きい)であるが、高い力率(例えば、20μW/cm−Kを超え、そして好ましくは40μW/cm−Kを超えるSσ)をもつことができる。このようなバルク熱電材料は特別に調製することができるかまたは、市販材料を使用することができる。多数のバルク出発材料は粗粒を生成するために破壊することができる固体であるが、ばらの出発材料はまた、気相凝縮物から粗粒を生成する時は気体、または、湿式化学法から粗粒を生成する時は液体のような、他の熱力学状態から生成することもできる。更に、粗粒は1種を超えるバルク出発材料、または異なる熱力学的相をもつ材料の混合物(例えば、液体および気体の混合物)から生成することができることは理解される。
【0027】
幾つかの実施態様において多数の出発材料を使用することができるが、バルク出発材料はビスマス−基材料、鉛−基材料および/またはケイ素−基材料、のあらゆる組み合わせ物から選択することができる。幾つかの実施態様において、バルク出発材料はビスマス−アンチモン−テルルの合金、ビスマス−セレン−テルルの合金、ビスマス−アンチモン−テルル−セレン−の合金、鉛−テルルの合金、鉛−セレンの合金、ケイ素−ゲルマニウムの合金またはあらゆるそれらの組み合わせ物のような種々の合金から誘導することができる。具体的な実施態様は、p−型またはn−型いずれかの材料であるバルク出発材料を使用する工程に関することができる。例えば、このような出発材料はBiTeのような親組成物の組成変更形態であることができる。一例として、n−型の材料は,バルク材料の化学量論的組成が式BiTe3−xSe[ここで、xは約0〜約0.8の範囲内にある]をもつように、BiTe中のテルルをセレンと置換することにより得ることができる。p−型の材料に対しては、例えば、アンチモンを使用して、バルク材料の化学量論的組成が式BiSb2−xTe[ここで、xは約0〜約0.8の範囲内にある]をもつように、ビスマスを置換することができる。具体的実施態様において、使用されるバルク出発材料はBi0.5Sb1.5Teである。一般に、バルク出発材料は結晶性材料または多結晶性材料(例えば、約1ミクロンを超える平均結晶粒度をもつ多結晶)であることができる。出発材料の他の例は、MgSi、InSb、GaAsCoSb、ZnSb、等を含む。幾つかの場合には、バルク出発材料は,例えば約20μV/cmKを超える、閾値の力率値Sσをもつ材料であることができる。このような場合には、バルク出発材料は、バルク出発材料の低い熱伝導度のために、かなりのZT値(例えば、約0.1を超える)を持つことができ、または、力率は閾値以上であることができるが、出発材料のZT値は、材料の比較的高い熱伝導度のために低い可能性がある。
【0028】
幾つかの実施態様において、1種または複数の出発材料を粉砕/ミル粉砕以外の方法により、熱電材料の粒子(例えば、ナノ粒子)は、バルク出発材料または元素材料から生成することができる。粒子は当業者に知られた方法を含む多数の方法により生成することができる。限定されない例は、気相凝縮、レーザーアブレーション、化学合成(例えば、湿式または乾式法)、スプレイの急速冷却、等を含む。従って、本出願書の範囲は本明細書に考察された特定の粒子生成法に限定されない。粒子生成法は圧密化のための材料を生成するために、あらゆる方法で組み合わせることができることは理解される。例えば、幾つかの粒子はボールミル(例えば、ホスト材料を生成するため)により生成することができ、他方、他の粒子は1種または複数の他の方法(例えば、気相凝縮、レーザーアブレーション、等)により生成することができる。
【0029】
熱電材料を形成する粗粒は、種々の特徴をもつことができる。幾つかの実施態様において、各粗粒は結晶性構造をもつ。このような場合には、熱電材料は、その粗粒が一般に好適な配向を欠く(例えば、ランダムに分配された)多結晶様構造を含んでなる可能性がある。幾つかの場合には、粗粒はまた、その粗粒の全体的結晶方向が相互に対してランダムでもまたはある好適な方向を示してもよい粗粒の形状により、あるタイプの好適な配向を示すことができる。従って、このような実施態様は、平均結晶構造における小さい欠陥または組成の不均一性にも拘わらず、平均的結晶構造(例えば、複数の半導体層の積層物として形成される超格子構造物を含む)を示す多数の知られた熱電材料と実質的に異なる。
【0030】
本明細書で考察された種々の熱電材料がそれからなる粗粒は種々のサイズをもつことができる。幾つかの実施態様において、サイズは一般にナノ−メーター規模であり、そして一般に1ミクロンより小さい。例えば、粗粒は約500nm未満、または約200nm未満、または約100nm未満、または約50nm未満、または約20nm未満の平均粒度をもつことができる。このような実施態様において、平均粒度はある下限閾値(例えば、約1nm)より大きいことができる。幾つかの場合には、平均粒度は当業者により理解される方法を含む種々の方法を使用して決定することができる。例えば、その場合、そのサイズを決定し、平均を計算することができる透過型電子顕微鏡(本明細書では「TEM」)を使用して粗粒を撮影することができる。粗粒は典型的には不規則な形状をもつので、粗粒の測定サイズは専門家に知られた方法を含む多数の方法を使用して決定することができる。例えば、画像(例えば、SEMおよび/またはTEM画像)からの粗粒の最大のディメンションを使用することができるか、あるいは、有効粒径を、画像からの粗粒の表面積測定または有効断面積に基づいて計算することができる。
【0031】
本発明の多数の実施態様において、熱電材料の粗粒は、最終生成物が上昇したZT値のような所望される特性を示すように圧密化することができる。幾つかの実施態様において、熱電材料は、上昇したZT値を獲得する支援をすることができる、低い空隙率を示す構造中に圧密化粗粒を含んでなる(例えば、最終生成物の実際の密度は、組成物、例えば幾つかの実施態様においてナノ粒子を製造するために使用されるバルク出発材料、の理論密度に近づくことができる)。空隙率は理論的密度で割算された、材料の理論的密度と実際の密度間の差と定義される。用語「理論的密度」は一般に当業者に知られている。材料の空隙率は約10%、5%または4%、または3%、または2%、または1%、または0.5%または0.1%未満であることができる。幾つかの実施態様において、熱電材料は理論的密度の100%に近い密度を示す。幾つかの実施態様において、熱電材料の密度はそれぞれの理論的密度の100%と、90%、95%、96%、97%、98%、99%、99.5%または99.9%の間であることができる。必ずしも説に制約されるとは限らないが、密度を高めることは材料の電気伝導度を維持する助けになることができる、粗粒間の接触を維持する助けになることができると考えられる。
【0032】
幾つかの実施態様は、1個または複数の粗粒が1個または複数の沈殿物領域を含むことができる、複数の粗粒から形成される熱電材料に関する。一例として、図1は複数の粗粒110を含む多結晶構造物を示すような熱電材料をスキームで表す。粗粒は更に、1個または複数の沈殿物領域120を含み、それが材料の熱電性を高めることができる。沈殿物領域は粗粒の残りの部分と異なる組成および/または相をもつような、組成の不均一性を特徴として示すことができる。沈殿物領域はまた、異なる結晶方向に配向されているが、それが包埋されているマトリックスに対して同様な結晶構造をもつという特徴を示すことができる。幾つかの実施態様において、1個または複数の沈殿物領域は粗粒中に包埋された別々の粒子(例えば、ナノ粒子)として具体化されることができるか、または、沈殿物領域の存在による欠陥を伴うにも拘わらず、粗粒全体が結晶として具体化されることができる。幾つかの実施態様において、熱電材料は沈殿物領域をもたない他の粗粒を含むことができる。代りの実施態様において、熱電材料を含んでなる、実質的にすべての粗粒が沈
殿物領域を含む。沈殿物領域は典型的には約10nm未満、または約50nm未満(例えば、約1nm〜約50nmの範囲)のサイズ(例えば、最大平均サイズ)をもつ。沈殿物領域の形成は、その全体を参照により本明細書に引用されたこととする、「高い熱電示性数をもつナノ複合物」と題する、2004年、10月29日出願の、米国特許出願番号第10/977,363号を担持する、米国特許出願公開第2006/0102224号中に考察された方法を含む種々の方法で達成することができる。
【0033】
幾つかの場合には、沈殿物領域は、例えば本明細書で考察された方法による熱電材料の形成により、自発的に生成される。他の場合には、沈殿物領域は異なる融点をもつ2種のナノ粒子を混合することにより生成される。例えば、一方の種類は他方より低い融点をもつことができる。ナノ粒子を混合し、そしてそれらを加熱/圧密化することにより(例えば、一方の種類のナノ粒子の融点に近いが、他の種類の融点より下の温度で)、より低い融点をもつナノ粒子が他の種類のナノ粒子の周囲に粗粒を形成することができる。言い換えると、一方の種類のナノ粒子で形成された粗粒は他方の種類のナノ粒子を包埋することができる。このような包埋ナノ粒子を形成するために使用することができる組み合わせ(ensemble)材料の例は、ビスマス−テルル材料系、鉛−テルル材料系、ケイ素−ゲルマニウム材料系、等を含む。
【0034】
前記の考察は明白に、熱電材料における沈殿物形成に関するが、マトリックス中に他の種類の封入物を利用することにより(例えば、ホスト中のナノ粒子の使用)他の材料が形成されることは理解されなければならない。例えば、2種以上のナノ粒子を一緒に混合して、沈殿物を含まないかも知れないが、まだ有益な特性(例えば、制御ドーピングの使用)をもつことができる熱電材料を形成することができる。従って、沈殿物に関する本明細書の開示物はまた、適当な場合に、他の種類の封入物に関して利用することができる。例えば、沈殿物または封入物領域は、SiGeホスト中のSiと反応して、MoSi、FeSi、MgSi、等の粒子を形成する、Mo、Fe、Mn、Mg、Ag、Cr、W、Ta、Ti、Cu、NiまたはV金属粒子のようなホストとの粒子のソリッドステート化学反応により形成することができる。
【0035】
どんな具体的な説にも制約はされないが、沈殿物領域または他の種類の封入物は熱電材料中の音子散乱を増加し、それが材料の熱伝導度の低下をもたらすことができると考えられる。更に、n−ドープまたはp−ドープ領域は例えば、制御ドーピング機序により材料の電気伝導度を高めることができる。このような場合には、幾らかのまたはすべての電荷担体(電子および空孔)を、より大型粗粒中に包埋された沈殿物領域または他の封入物により供与することができる。封入物領域間の距離は、均一にドープされた材料中の原子のドーパント間の距離より大きい可能性があるために、電荷担体の不純物散乱は、均一にドープされた材料におけるものに比較して減少される。このような制御ドーピング様機序が担体の移動性を改善することにより電気伝導度を増加させることができる。幾つかの場合には、これらの沈殿物領域または他の封入物はまた、より高いエネルギーの担体より低いエネルギー担体を散乱することによりゼーベック係数を改善することができる。従って、沈殿物領域または他の封入物は熱電材料のZTを改善することができる。
【0036】
他の実施態様において、沈殿物領域、あるいは粗粒領域または他の封入物は優先的にドーピングされることができる。このような環境において、これらの領域の担体は、それらがより高いポテンシャルエネルギーにある時に周囲のホスト媒質中に入り込む(fall into)ことができる。例えば、制御ドーピングの場合に、ホスト材料中のドーピングはそれに応じて減少されまたは完全に排除され、従ってイオン化された不純物の散乱を減少することにより、ホスト中の電子移動性を高めることができる。
【0037】
粗粒中に沈殿物領域または他の封入物を含む実施態様は、多数の粒度を示すことができ
る。幾つかの実施態様において、粒度は、一般に1ミクロンより小さい粗粒に対して、本明細書で記載のあらゆるサイズに従う。例えば、平均粒度は約500nm、約200nm、約100nm、約50nmまたは約20nm未満であることができる。あるいはまた、もしくは更に、平均粒度は約1nmより大きいことができる。1個または複数の封入物を含む他の実施態様において、粒度は1ミクロンより大きいことができる。例えば、複数の粗粒が約2ミクロン、5ミクロンまたは10ミクロンまでの平均サイズをもつことができる。具体的な実施態様において、複数の粗粒が約1ミクロン〜約10ミクロンの範囲、または約1ミクロン〜約5ミクロンの範囲、または約1ミクロン〜約2ミクロンの範囲内の平均サイズを有する。
【0038】
沈殿物領域または封入物のサイズもまたばらつく可能性がある。例えば、沈殿物領域のサイズはそれが包埋されている粗粒のサイズにより限定される可能性がある。多数の実施態様において、沈殿物領域または封入物は好ましくは、約1nm〜約50nmの範囲、または約1nm〜約20nmの範囲内の平均サイズをもつことができる。他の場合には、例えば、電子性能を増加するために制御ドーピング機序が使用される時は、沈殿物領域または封入物は、例えば1nm〜10ミクロンの、より大きいサイズをもつことができ、他方、合金形成またはナノ粒子形成により、周囲の領域中の音子の熱伝導度減少が達成される。
【0039】
幾つかの実施態様は、高い示性数を達成するための制御ドーピングを示す、加工された熱電材料に関する。幾つかの実施態様において、熱電材料はホスト材料中に包埋された粒子(例えばナノ粒子)または他の封入物を含むことができ、そこで封入物はホストに電荷担体(例えば、電子または空孔)を供与し、それによりホスト中の担体の移動性を増加する。これは材料全体の電気伝導度を有利に高めることができ、従って、例えば、材料のZT値により特徴付けられるその熱電性能を改善することができる。多数のこのような場合に、ホストは最初に、ドープされていないか、あるいは熱電材料に対する典型的なドーピング値より低いn−型またはp−型ドーピングレベル(典型的には、空間的に実質的に均一であるドーピングレベル)をもつように選択される。例えば、ホストの最初のドーピングレベルは従来の熱電材料より、1.5、2、5、10、100または1000のファクターで低いレベルであることができる。更に、包埋封入物(例えば、沈殿物サイトまたは識別可能な粒子)はドープ材料または非ドープ材料で形成することができる。
【0040】
一例によれば、図1Bは、複数の粒子(particle)140が包埋されている−該粒子は封入物として働く、ホスト130を含むような熱電材料をスキームにより表している。この場合、ホストは、場合により、約1ミクロン未満のサイズ(例えば、あらゆるディメンションの最大粒度)、例えば約500nm〜約1ミクロン未満の範囲内のサイズをもつ、複数の粗粒(grains)135、例えば複数の結晶性粗粒を含む。他の場合には、粒度は例えば、約1ミクロン〜約20ミクロンの範囲内でより大きいことができる。更に、場合により、粒子は約1ミクロン未満、例えば約1nm〜約200nmの範囲内、または約2nm〜約100nmの範囲内のサイズ(例えば、あらゆる方向の最大サイズ)をもつことができ、他の場合には、サイズは1ミクロンより大きい、例えば、約1ミクロン〜約10ミクロンの範囲内にあることができる。封入物140は種々の方法で形成することができる。例えば、それらは、本明細書の他の実施態様に関して考察されたものを含むあらゆる適当な方法を使用して、沈殿物領域として形成することができる。他の場合には、それらは、例えば「高い熱電示性数をもつナノ複合体」と題する前記に引用された特許出願物中で考察された方法を使用することにより、ホストの材料と異なる材料で形成することができる。更に他の場合には、粒子は例えば圧密化相の期間にソリッドステート化学反応により形成することができる。
【0041】
一般性を喪失せずに、この例においてホスト130は、複数のミクロンサイズおよび/
またはナノサイズの粗粒(grains)135をもつSiGe合金であると推定され、そして粒子(particle)140はSiGe合金中に包埋されているMoSi(モリブデンケイ化物)の粒子であることができる。このような熱電材料は、例えば以下の方法:SiGeにモリブデンを添加し、材料を溶融し、そして材料を冷却して(例えば、前記の方法で)インゴットを製造し、それを、必要に応じて粉砕し、圧密化する方法、で形成することができる。この方法で、MoSi粒子は、例えば冷却工程中に、SiとのMoのソリッドステート化学反応により形成される。この例において、SiGeホストは高度にはドープされないが、他の場合には、それは高度にドープすることができ、例えば、p−型ドープすることができるが、従来のSiGe熱電材料におけるより、2、5、10または100のファクターだけ低い。更に、空孔はMoSiの存在により生成することができる。ホストへの空孔のこのような供与が材料内の空孔移動性を高め、従って、材料の電気的伝導度およびその結果、熱電性能を改善することができる。他の場合には、粒子は、SiおよびGe元素あるいはSiGe結晶合金をFe、Mn、Mg、Cr、W、Ta、Ti、Cu、NiまたはVと粉砕して、FeSi、MgSi、等の粒子を形成するか、あるいはそれぞれのケイ化物をSiおよびGeまたはSiGe合金と一緒に粉砕することにより、ホスト中のSi(例えば、SiGe)のソリッドステート化学反応により形成することができる。それらの幾らかはn−型に適用可能であるが、他はp−型材料に適用可能である。Siと反応しない他のナノ粒子(例えば、金属および/または半導体ナノ粒子)もまた、封入物としてAgのような制御ドーピングを形成するために使用することができる。
【0042】
粒子からホストへの電荷担体のこのような供与の更なる説明のために、どんな特定の説にも限定はされないが、図1Cは、ホスト材料に対応する部分151、152、153および、ホスト中に包埋された粒子に対応する部分161、162を表す、仮説の熱電材料(例えば、その中にMoSi粒子を包埋されている前記のSiGe基剤の材料)に対応する、電荷担体のエネルギー図をスキームで表している。図はスキームであり、説明の目的のためにのみ与えられていることは理解される。粒子161、162のエネルギー帯(例えば、伝導帯または価電子帯)中の電荷担体(例えば、電子または空孔)は、伝導帯または価電子帯であることができるホスト151、152、153のエネルギー帯のものより高いエネルギーをもつことができる。従って、粒子中の更なるドーピングによる、または電子のその内在する大きい密度のいずれかによることができる(金属または半金属におけるような)粒子中の複数の電荷担体はホストに移動して、それらのエネルギーを低下することができる。粒子からホストへの電荷担体のこの移動は、例えば、ホスト材料中のドーパントを減少することにより、従ってイオン化した不純物の散乱を減少することにより、担体の移動性を有利に増加することができる。この方法で、より高い電気伝導度を達成することができる。幾つかの場合には、全体的により高い電子移動性は達成しないが、粗粒(grain)の境界がまだ電子を散乱するために、この制御ドーピング法は、電子粒界(electron grain boundary)散乱により移動性の減少を補償することにより、まだ有益であることができる。制御ドーピングに使用される粒子はまた、それらが低エネルギー担体を散乱し、そして音子および電子双方の熱伝導度を減少することができるので、より高いゼーベック係数をもたらす可能性がある。幾つかの他の場合には、ホストに電子を供与するよりむしろ、粒子はホストに空孔を供与することができる。再度、どんな特定の説にも限定されないが、粒子からホストへの電荷担体のこのような供与の機序は、幾つかの空孔が、粒子の価電子帯のより高いエネルギーレベルから、ホストの価電子帯のより低いエネルギーレベルへ移動する機序、あるいはホストの価電子帯の電子を粒子中に引き付けて、ホスト中に、より多数の空孔を形成する機序に基づくことができる。
【0043】
一般に、出発材料の種類、上昇したZTが測定される温度、粗粒の成分、形成法並びにこれらの実施態様と関連付けることができる他の特性および方法は、粒度、沈殿物領域お
よび/または記載された他の封入物に従う、本出願書内に考察されるすべての特徴(traits)および方法を含む。例えば、粗粒は前記に考察されたようなあらゆる適した熱電材料で形成することができ、そして更に、n−型またはp−型ドーパントを含むことができる。他の例において、形成される熱電材料は約1.0を超える、約1.5を超える、約2を超える、または約1〜約5の範囲内のZT値を有する。更に他の例において、形成される熱電材料は、約2000℃未満、約1000℃未満、約600℃未満、約200℃未満または約20℃未満の作業温度におけるZT値(例えば、出発材料に対して上昇した)を有する。他の例において、熱電材料の粗粒はビスマス−基材料(例えば、BiTeおよび/またはその関連合金)、ケイ素基材料および鉛基材料の少なくとも1種を含むことができる。このような材料を製造する工程に関し、バルク出発材料または元素材料からナノ粒子を形成する方法は、圧縮のために所望のナノ粒子の粒度を得るために、粉砕速度、期間および/または温度(極低温を含む)のようなパラメーターを調整することによるが、本明細書に考察されたように適用することができる。更に、ナノ粒子の粒度のそのような調整を使用して、最終熱電材料の所望の粒度(例えば、1ミクロン未満、または1ミクロンを超えるが10ミクロン未満)を得ることができる。更に、本明細書に考察され、当業者により適用されるような圧密化法を適用することができる。
【0044】
本出願書の他の実施態様は熱電材料の加工法に関する。このような方法において、熱電材料から複数のナノ粒子が生成される。ナノ粒子は圧力下、高められた温度で圧密化されて、熱電材料を形成することができる。ナノ粒子を生成するために使用することができる熱電出発材料の種類は、限定はされないが、本明細書に開示されたあらゆるバルク材料および当業者に知られたその他を含む。従って、実施態様は、約1を超えるZT値(例えば、約2000℃未満の温度の)をもつ熱電材料を含むことができる。更に、または、その代りに、その方法は、n−ドープまたはp−ドープされた出発材料(例えば、元素のおよび/または合金である、バルクの熱電体)を使用することができる。
【0045】
熱電材料からナノ粒子を生成するために種々の方法を使用することができる。幾つかの実施態様において、ナノ粒子は熱電材料を粉砕することにより製造される。粉砕はプラネタリー運動、八の字様運動または何か他の運動を使用するボールミルのようなミルを使用して実施することができる。ナノ粒子を生成する時には、幾つかの粉砕法のような幾つかの方法は実質的な熱を発生し、それがナノ粒子の粒度および特性に影響を与えることができる(例えば、粒子の凝集(agglomeration)をもたらす)。従って、幾つかの実施態様において、材料を粉砕中、熱電材料の冷却を実施することができる。このような冷却は熱電材料をより脆弱にさせ、そしてナノ粒子の生成を容易にするかも知れない。冷却および粒子生成は湿式ミルおよび/または極低温ミル(例えば、ミルの周囲のドライアイスまたは液体窒素の存在下で)により達成することができる。本発明の実施態様はまた、ナノ粒子を形成する他の方法を使用することができる。このような方法は気相凝縮、湿式化学法、高速における溶融材料のスピンおよび他の適当な方法を含むことができる。
【0046】
圧力下および高温下でのナノ粒子の圧密化は種々の条件下で種々の方法で実施することができる。スパークプラズマ焼結としても知られるホットプレス(本明細書では「PC」)のような方法を使用して、圧密化期間中に所望の圧力および温度をかけることができる。この方法の説明およびこの方法を実施するための装置は、本明細書にその全体を、参照により引用されたこととする、2004年10月29日に出願の米国特許出願番号第10/977,363号をもつ、米国特許出願第2006/0102224号中に利用可能である。
【0047】
使用される圧力は典型的には、ナノ粒子の圧密化を達成するための低温の使用を許す、超大気圧である。一般に、使用される圧力は、約10MPa〜約900MPaの範囲内に
あることができる。幾つかの実施態様において、圧力は約40MPa〜約300MPaの範囲内にある。他の実施態様において、圧力は約60MPa〜約200MPaの範囲内にある。
【0048】
高温に関しては、一定の温度範囲を使用することができる。一般に、温度は典型的には約200℃〜熱電材料のほぼ融点までの範囲内にある。幾つかの代表的実施態様において、温度は約400℃〜約2000℃、約400℃〜約1200℃、約400℃〜約600℃、約400℃〜約550℃の範囲内にある。幾つかの代表的n−ドープ材料に対する温度は約450℃〜約550℃の範囲内にあるが、幾つかの代表的p−ドープ材料に対する範囲は数度高い(例えば、約475℃〜580℃の範囲内)。nおよびp−型材料の処理に関連して他の温度範囲を使用することもできる。これらの具体的圧力および温度範囲は、好ましくはBiSbTe合金およびBiSeTe合金のような材料に適用することができるが、それらはどんな材料にも使用することができる。
【0049】
圧力および温度はナノ粒子の圧密化を許すために十分な時間維持することができる。幾つかの実施態様において、その時間は約1秒〜約10時間の範囲にある。
【0050】
他の圧密化もまた、本出願書に記載された熱電材料を形成するために使用することができる。例えばナノ粒子を他の微粒子に高速で衝突させて、低温圧密化を達成することができる。場合により、その後の加熱処理を、熱電材料を形成するために使用することができる。他の圧密化法は、粒子を圧密化するためにほとんどまたは全く圧力を使用せずに粒子(例えば、ナノ粒子)の焼きなましを使用することができる。このような場合には、焼きなまし期間中、どんな圧力下で試料が維持されても、粒子の焼きなましを誘導するように温度を選択することができる。他の場合には、比較的低温、高圧下で粒子を圧密化して、100%理論密度に近い密度をもつ材料のような圧密化材料を形成することができる。その後、圧密化材料は高温で焼きなまして、熱電材料を形成することができる。従って、圧密化法はPCまたはホットプレス法に限定される必要はない。
【0051】
代表的実施態様として、市販材料からの種々の物質のナノ粉末を高エネルギーボールミルにより製造して、1nmのように小さい粒度をもつナノ粒子を得ることができる。場合により、乾式ミルを湿式ミルおよび/または極低温ミルと組み合わせて、ミル期間中に生成される熱による、より大きい粒度の粒子中への粉砕粒子の凝集を妨げることができる。この方法で、より分散された粒子を得ることができる。これらの粉末はPC法を含むホットプレスにより固形試料に圧密化することができる。多数の実施態様において、理論値のほぼ100%の密度を、短期間以内に(典型的には、1試料当たり約1〜約10分間)この方法により達成することができる。これらの方法により調製されるホットプレス試料の格子熱伝導度は、バルク材料に匹敵する力率を維持しながら、n−型およびp−型双方における最初の値の一部にまで減少させ、それによりZT値を実質的に高めることができる。
【0052】
例えば、BiSb2−xTe[ここでxは約0〜約0.8の範囲にあることができる]のp−型市販材料においては、市販材料は約1の最高ZT値を有し、そこで、ボールミルおよびホットプレス後に、それは1.4以上の高さになることができる。これらの増加は主として、試料中のナノ構造物の存在に由来される減少した熱伝導度による。
【0053】
幾つかの実施態様において、熱電出発材料をナノ粒子に転化し(または何か他の粒子生成法を使用して)、そしてこれらのナノ粒子を圧密化する代りに、ナノ粒子を少なくとも2種の元素材料(例えば、元素のBiおよび元素のTe)から生成する(例えば、粉砕により)。次にナノ粒子を混合し、圧力および高められた温度で(例えば、前記に考察された圧力および温度)圧縮して、約1を超える、そして好ましくは約1.2、または約1
.5,または約2を超えるZT値を示す、最終的熱電材料(例えば、約500nm未満、そして好ましくは約1〜約100nmの範囲内のサイズをもつ粗粒を含む多結晶構造をもつもの)を生成する。
【0054】
代りの実施態様において、2種以上のバルク材料を同時に粉砕して、異なる組成を有する種々のナノ粒子を生成することができる。ナノ粒子を「機械的に合金させる」ために、粉砕法を使用することができる。機械的合金はまた2種以上の異なる粒子を別々に生成し、そして次に粒子を一緒に混合し、そして更にそれらを粉砕して、合金させ、そして粒子の粒度を減少させて合金のナノ粒子を形成することにより実施することができる。粒子を圧密化して、本出願書に考察された1種または複数の特性をもつ熱電材料を形成することができる。
【0055】
更に他の実施態様において、本明細書で考察されたいずれかの方法を使用して、異なる種類のナノ粒子を別々に生成し(例えば、ビスマスまたはテルルのようなバルクの元素材料を粉砕することにより)、次に一緒に混合し、圧密化すると、熱電材料を形成することができる。場合により、圧密化の前に、混合物の更なる粉砕を適用してもよい。これらの方法のいずれかにより形成される最終圧密化材料、例えば、BiTe2.8Se0.2のようなBiTe3−xSe[ここでxは約0〜約0.8の範囲内にある]、またはBi0.5Sb1.5TeのようなBiSb2−xTe[ここでxは約0〜約0.8の範囲内にある]は、本出願書内に記載される組成物のあらゆる特徴を持つことができる。
【0056】
熱電材料を形成する目的の、他の実施態様は、本明細書で考察されたような熱電体を形成するために使用される、1種または複数の工程の反復を使用する。例えば、粒子(例えば、ナノ粒子)を1種または複数の出発材料(例えば、バルク出発熱電材料または元素材料)から生成し、材料構造物に圧密化することができる。次に、生成される構造物を使用して新規の複数の粒子(例えば、材料構造物を粉砕することにより)を生成し、次にそれを圧密化して、他の材料構造物を形成することができる。この工程は最終熱電材料を形成するために何度でも反復してよい。このような工程は、完全に混合された小さい粒度を生成することを支援する。
【0057】
幾つかの実施態様に対して、生成されている(例えば、ボールミル工程中)粒子を酸化から保護することは有益であることができる。保護法の限定されない例は、生成された粒子(例えば、材料の粉砕が実施される環境)を相対的真空または大気圧に対して低い酸素を含む環境のような酸素枯渇環境に暴露する工程を含む。生成された微粒子はまた、表面に対する酸素暴露を減少させるためにある種の化学的コーティングにさらすことができ、そのコーティングは場合により、熱電材料の製造工程で、後に除去することができる。従って、保護スキームは、当業者に知られたものを含む多数の適当な方法を含むことができる。
【0058】
以下の実験部門は本発明の種々の態様の更なる例示のため、そして高い熱電特性を示す熱電材料を生成するための本発明の方法を使用する実行可能性を示すために提供されている。しかし、以下の実施例は表示の目的のためのみに提供され、必ずしも、本発明の方法を実行することにより達成可能な最適な結果を示すものではないことを理解しなければならない。
[実施例]
【実施例1】
【0059】
ナノ結晶バルクp−型BiSb2−xTe材料
市販材料(p−型のBiSbTe合金インゴット)を粉砕し、酸化を回避するためにア
ルゴン雰囲気下でグローブ箱中でジルコニアジャー中に充填した。幾つかのジルコニアのボール(5〜15mmの粒度)も添加して、シールした。シールしたジャーをボールミル中に入れ、100〜2000rpmの速度で合計約0.5〜50時間粉砕した。粉末を走査電子顕微鏡(SEM)、透過電子顕微鏡(TEM)およびx−線回折(XRD)を使用して特徴を調べた。
【0060】
図3はボールミル粉砕後のナノ粉末のx−線回折(XRD)図を示す。XRD図は、粉末が単一相であり、そしてBi0.5Sb1.5Teのものとよく合致することを示す。広がった回折ピークは、粒子が小さいことを示す。小さいサイズは図2Aに表されたナノ粉末の走査電子顕微鏡(SEM)像および図2Bに提示された粉末の低倍率の透過電子顕微鏡(TEM)像により確証される。図2Bの低解像度のTEM像は、ナノ粒子が数nm〜約50nmのサイズ、約20nmの平均サイズをもつことを明白に示す。図2Cにより提示される高解像度のTEM像は、良好な熱電特性に所望される、ナノ粒子の良好な結晶性および明白な粒子表面を確証した。図2Cの挿入図はまた、幾つかのナノ粒子は5nm未満ですらあることを示す。
【0061】
一旦粉末を得ると、粉末試料を、1/2”直径のダイ中に充填されたナノ粉末のホットプレスにより、1/2”の直径で、2〜12mmの厚さのバルクのディスク試料に加工した。酸化を防止するためにグローブ箱中に保存された粉砕後の粉末を、黒鉛のダイ中に充填し、DCホットプレス法を使用してペレットに圧縮した(図4参照)。ホットプレス条件のパラメーターは40〜160MPaおよび450℃〜600℃である。密度はすべての組成物に対し理論値の100%に近い。1/2”直径および2mm厚さのディスクおよび約2×2×12mmの棒を、DCおよびAC法双方を使用する電気および熱伝導度およびゼーベック係数の測定のために、圧縮ディスクから切断し、研磨した。
【0062】
ホットプレスした試料を調製する際に、典型的には、選択された圧力に粉末をさらし、装置を目標の加熱速度で稼働させる。選択された高温に到達すると、試料を、約0分〜約60分のいずれかの間、好ましくは約0分〜約30分間、約0分〜約10分間、または約0分〜5分未満の間(例えば、2分間)その温度および圧力に維持する。次に冷却を開始する。しかし、試料が高温に到達する途中またはその後に圧力をかけることができることは理解される。
【0063】
図5〜9はホットプレスしたナノ結晶材料(BP0572とラベル)および市販の材料(com ingotとラベル)のp−型BiSbTe合金インゴットの種々の特性の温度依存性を比較している。図5〜9においてすべての特性は同一試料から測定される。円筒状の厚いディスクをホットプレスし、プレス方向に沿って、そして垂直に切断し、次に測定する。ナノ結晶のばら試料の温度安定性を試験するために、同一試料を250℃まで反復して測定した。特性のどんな有意な劣化も認めなかった。
【0064】
図5はナノ結晶と市販の試料の電気伝導度の温度依存性を比較している。電気伝導度は4点電流切り替え法(four−point current−switching)により測定された。ナノ結晶バルク試料の電気伝導度は市販インゴットのものよりわずかに高い。
【0065】
図6はナノ結晶と市販の試料のゼーベック係数の温度依存性を示し、他方、図7は試料の力率(Sσ)の温度依存性を比較している。ゼーベック係数を、ディスク面に沿って切断された2×2mmの断面および12mmの長さのディメンションをもつ、同一の棒状の試料上で、市販の装置(ZEM−3、Ulvac,Inc.)を使用して、電圧対温度差曲線の勾配に基づく、スタティックDC法により測定した。これらの特性はまた、同一試料上で手作りの装置上で測定した。2組の測定値は相互に5%内にある。ナノ結晶試
料のゼーベック係数は温度に応じてインゴットの係数よりわずかに低いかまたは高く、それは、ナノ結晶の試料の力率を75℃未満の市販のインゴットの係数に匹敵させ、そして75℃を超える市販のインゴットの係数より高くさせる。
【0066】
図8はナノ結晶および市販の試料の熱伝導度の温度依存性を表す。熱伝導度は試料の熱拡散率および熱容量の測定から誘導される。熱拡散率は市販装置(Netzsch Instruments,Inc.)を使用して、ディスクの軸方向に沿ってディスク上でレーザー−フラッシュ法により測定した。レーザー−フラッシュ測定後、棒をディスクからダイス切断し、それらの熱拡散率を手製装置においてオングストローム法を使用して棒(ディスク面)方向に沿って測定した。棒およびディスクの熱拡散率値は5%以内で一致する。
【0067】
図9はナノ結晶および市販試料の温度の関数としての示性数、ZTの変化を記録している。ナノ結晶のバルク試料の熱伝導度は市販インゴットのものより有意に低く、そして更に重要なことには、その差が温度増加とともに増加するために、これは20〜250℃の温度範囲で有意に高いZTをもたらす。図9はまた、ピークZT値がより高温(100℃)に移動することを示す。ナノ結晶のバルク試料のピークZTは100℃で約1.4であり、それは市販のBiTe−基剤の合金の値より有意に高い。市販インゴットのZT値は75℃より上で低下を開始し、250℃で0.25未満に低下する。それに対し、ナノ結晶のバルク試料は250℃で0.8を超えるZTを示す。この温度範囲には高いZTをもつ現在利用可能な良好な材料が存在しないので、このようなZTの特徴は発電適用に非常に所望される。
【0068】
透過電子顕微鏡(TEM)を使用して、ナノ結晶のバルク試料について詳細な微細構造の試験を実施した。バルクのナノ結晶試料をダイス切断し、研磨し、そしてイオンミルすることによりTEM試験片を調製した。ホットプレスしたナノ結晶のバルクペレットを2×3×1mmのブロックに切断し、機械的Tripod Polisherを使用して2×3×0.002mmに粉砕した。試料を銅グリッドに糊付けし、3.5度の入射角で3.2kVの入射エネルギーおよび15μAのビーム電流により30分間Precision Ion Polishing System(Gatan Inc.)を使用して粉砕した。図10〜15は、観察された主要な構造特徴物を示す幾つかの代表的TEM顕微鏡写真を示す。
【0069】
図10および11に示すように、大部分の粗粒は一般に、ナノサイズである。更にナノ粒子は非常に明快な境界をもつ、高度に結晶性で、ランダムに配向されている(格子面中に大きい角度)。図11に示すように、ナノ粒子は完全な圧密化試料を示唆する密度測定値と一致して、密に圧縮されている可能性がある。幾つかのより大きい粗粒もまた、図12に示される。図13に示すような高解像度のTEM顕微鏡は、これらの粗粒が境界をもたない、2〜10nmの粒度のナノドットからなることを示す。これらのナノドットは典型的にはBi:Sb:Te=8:44:48に近い代表的組成を伴いSb濃度が高く、SbはTeに置き換えられる。幾つかのナノドットは図13に示すようにマトリックスと境界をもたないが、他の観察されたナノドットは図14に示すようにマトリックスと小角度の境界を含んだ。図15に示すように、5〜30nmの範囲内のサイズの純粋なTe沈殿物も認められた。図15の挿入図に示される、選択された領域の電子回折図がTe相を確証した。一般的に、ナノドットは各50nm直径領域内に認めることができた。
【0070】
必ずしも何か特定の説に制約はされないが、これらのナノドットはホットプレス加熱および冷却工程中に形成されることができたと仮定することができる。図12に示されるように、ナノドットを含む、より大型の粗粒は、ボールミル期間中のインゴットの不均一な粉砕の結果であることができると考えられる。これらの大型の粗粒は、Oswald R
ipeningによるホットプレス圧縮期間中に更に大きく成長したかも知れない。ナノ粒子のような我々の物質中に、多数のナノサイズの界面の特徴物が与えられたので、ナノドットが強力な音子散乱の唯一の理由ではないかも知れない。
【実施例2】
【0071】
ナノ結晶性SiGe材料
出発材料として、pおよびn−型双方のケイ素およびゲルマニウム元素材料を使用し、ボールミルを使用して粉砕して、約1〜約200nmの粒度をもつナノ粒子を形成した。これらの元素材料は、幾つかの場合には約0.01未満のZTをもつことができる。更に、粒子を形成するためにSiGe合金を使用して、最終製造材料に更なる改善をもたらすことができたと考えられることは理解される。試料を約40〜約200MPaの圧力および約900℃〜1300℃の温度でホットプレスして、熱電材料の試料を形成した。
【0072】
図16〜19はp−型SiGeのボールミルされたばら材料から形成された、ホットプレスしたナノ結晶性材料の種々の特性の温度依存性を示すグラフを表す。特性は図5〜9に以前に説明されたものと同様な方法を使用して測定した。図16はナノ結晶性p−型SiGe試料の電気伝導度の温度依存性を示す。図17はナノ結晶性p−型SiGe試料のゼーベック係数の温度依存性を表す。図18はp−型SiGe試料の熱伝導度の温度依存性を表す。図19はナノ結晶性p−型SiGe試料の温度の関数としての示性数、ZTの変化を記録する。
【0073】
図20〜23はn−型SiGeのボールミルされたバルク材料から形成された、ホットプレスされたナノ結晶性材料の種々の特性の温度依存性を示すグラフを表す。図20はナノ結晶性n−型SiGe試料の電気伝導度の温度依存性を示す。図17はナノ結晶性n−型SiGe試料のゼーベック係数の温度依存性を表す。図18はn−型SiGe試料の熱伝導度の温度依存性を表す。図19はナノ結晶性n−型SiGe試料の温度の関数としての示性数、ZTの変化を記録する。
【0074】
図24〜26はナノ結晶性材料と関連したp−型SiGe材料のTEM顕微鏡写真を表す。図24は、粉砕粒子のナノサイズの粒子を示す、SiGeバルク材料のボールミル粉末試料のTEM顕微鏡写真を表す。図25はホットプレス後のSiGe粉末試料のTEM顕微鏡写真を示す。顕微鏡写真は、密に圧密化され、ナノサイズの範囲内にあるホットプレスした材料の多数の粗粒を示す。図25の挿入図は、試料上で採られた選択された領域の電子回折図を与える。図26は試料の種々の粗粒のナノサイズを更に示すホットプレスしたSiGe試料の高解像度のTEMを表し、音子散乱を目標とした、多数の粗粒の境界を示す。
【実施例3】
【0075】
ナノ結晶性p−型BiSbTe材料の温度調整
示性数、ZTが種々の温度状態にいかにして調整されることができるかを示すために、ナノ結晶性p−型BiSbTe合金材料の試料を調製した。とりわけ、BiSb2−xTe型の材料を、選択されたxの値に応じて種々の化学量論的量で調製することができる。2種の具体的な例の試料:Bi0.3Sb1.7Teの化学量論的量をもつp−型ナノ結晶の、ホットプレスした材料およびBi0.5Sb1.5Teの化学量論的量をもつp−型ナノ結晶の、ホットプレスした材料、を調製した。適当なばらの出発材料をボールミルにより粉砕して、ナノ粒子試料を形成した。試料を40〜160MPaおよび450℃〜600℃で、約5分間まで圧縮した。
【0076】
図27〜30は、ナノ結晶性Bi0.3Sb1.7Te試料の電気伝導度、ゼーベック係数、熱伝導度およびZTそれぞれの温度依存性を表し、他方、図31〜34はナノ結
晶性Bi0.5Sb1.5Te試料の電気伝導度、ゼーベック係数、熱伝導度およびZTそれぞれの温度依存性を表す。測定は実施例1に記載のように実施した。図30および34に見ることができるように、Bi0.3Sb1.7Te試料のピークZT値は約150℃で測定され、他方、Bi0.5Sb1.5Te試料のピークZT値は約75℃で測定された。
【0077】
従って、結果は、ナノ結晶性材料のピークZTは特定の温度範囲の適用に対して調整することができることを示す。例えば、より低い温度ピークの材料は冷却のような室温に近い使用を目的とする適用に使用することができ−他方、より高い温度ピークの材料は発電のような高温の適用に使用することができる。
【0078】
本明細書に考察された種々の実施態様は、実験結果とともに、本発明の範囲を単に代表する、種々の方法および材料を説明することが理解される。実際、当業者は、本明細書に開示された方法および材料に対する多数の他の変更を実施することができることを容易に認めるであろう。すべてのこのような変更はこれも本発明の範囲内にある関連した実施態様を表す。同様に、明細書および請求項中に使用される成分、反応条件、等の量を表すすべての数値は、すべての場合に、用語「約」により修飾されているものと理解できる。従って、逆を言及されない限り、本明細書および添付請求項中に提示される数値パラメーターは、所望の特性に応じて変動することができる近似値である。
【図1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱電出発材料から複数のナノ粒子を生成し、そして
高められた温度、圧力下で前記ナノ粒子を圧密化して、少なくとも1の温度において熱電出発材料より高いZT値を有する、密度を高めた熱電材料を形成する工程
を含んでなる熱電材料を加工する方法。
【請求項2】
熱電材料が約1より大きいZT値を示すような圧力および高められた温度を選択する工程:
を更に含んでなる、請求項1の方法。
【請求項3】
熱電材料が約2000℃未満の温度で前記ZT値を示す、請求項1の方法。
【請求項4】
熱電材料が約1000℃未満の温度で前記ZT値を示す、請求項3の方法。
【請求項5】
熱電材料が約600℃未満の温度で前記ZT値を示す、請求項4の方法。
【請求項6】
熱電材料が約200℃未満の温度で前記ZT値を示す、請求項5の方法。
【請求項7】
熱電材料が約20℃未満の温度で前記ZT値を示す、請求項6の方法。
【請求項8】
複数のナノ粒子を生成する工程が、熱電材料を粉砕する工程を含む、請求項1の方法。
【請求項9】
熱電材料を粉砕しながら冷却する工程を更に含んでなる、請求項8の方法。
【請求項10】
熱電材料を粉砕する工程がボールミル粉砕を使用する工程を含んでなる、請求項9の方法。
【請求項11】
ナノ粒子を圧密化する工程が、プラズマ圧力圧縮法、単方向のホットプレス法およびアイソスタチックホットプレス法の少なくとも1種を使用する工程を含む、請求項1の方法。
【請求項12】
圧力を約10MPa〜約900MPaの範囲内にあるように選択する工程:
を更に含んでなる、請求項1の方法。
【請求項13】
圧力を約40MPa〜約300MPaの範囲内にあるように選択する工程:
を更に含んでなる、請求項12の方法。
【請求項14】
圧力を約60MPa〜約200MPaの範囲内にあるように選択する工程:
を更に含んでなる、請求項13の方法。
【請求項15】
高められた温度を、約200℃から熱電出発材料のほぼ融点の範囲内にあるように選択する工程:
を更に含んでなる、請求項1の方法。
【請求項16】
高められた温度を、約400℃〜約2000℃の範囲内にあるように選択する工程:
を更に含んでなる、請求項1の方法。
【請求項17】
複数のナノ粒子を生成する工程が、あらゆるp−ドープおよびn−ドープ材料を含んでなる熱電出発材料を使用する工程を含む、請求項1の方法。
【請求項18】
熱電出発材料が約1ミクロンより大きい平均結晶粒度をもつ多結晶性構造を示す、請求項1の方法。
【請求項19】
熱電出発材料を、ビスマス−基材料、鉛−基材料およびケイ素−基材料のいずれかを含むように選択する工程
を更に含んでなる、請求項1の方法。
【請求項20】
熱電材料をビスマス−アンチモン−テルルの合金、ビスマス−セレン−テルルの合金、鉛−テルルの合金、鉛−セレンの合金およびケイ素−ゲルマニウムの合金の少なくとも1種を含んでなるように選択する工程
を更に含んでなる、請求項1の方法。
【請求項21】
熱電材料をBiTe3−xSeの合金[ここでxは約0〜約0.8の範囲内にある]であるように選択する工程
を更に含んでなる、請求項1の方法。
【請求項22】
熱電材料をBiSb2−xTeの合金[ここでxは約0〜約0.8の範囲内にある]であるように選択する工程
を更に含んでなる、請求項1の方法。
【請求項23】
複数のナノ粒子を生成する工程が約500nm未満の平均粒子サイズをもつナノ粒子を生成する工程を含む、請求項1の方法。
【請求項24】
平均粒子サイズが約1nm〜約200nmの範囲内にある、請求項23の方法。
【請求項25】
約1秒〜約10時間の期間、前記の高められた温度でナノ粒子を維持する工程を更に含んでなる、請求項1の方法。
【請求項26】
約1nm〜約1000nmの範囲内の平均粒度をもつ複数の粗粒を含んでなる材料の構造物を含んでなり、
前記の構造物が約2000℃未満の温度で約1.0を超えるZT値を特徴として示す、熱電材料。
【請求項27】
材料が約1000℃未満の温度で前記のZT値を示す、請求項26の熱電材料。
【請求項28】
材料が約600℃未満の温度で前記のZT値を示す、請求項26の熱電材料。
【請求項29】
材料が約200℃未満の温度で前記のZT値を示す、請求項26の熱電材料。
【請求項30】
材料が約20℃未満の温度で前記のZT値を示す、請求項26の熱電材料。
【請求項31】
複数の粗粒の平均粒度が約1nm〜約500nmの範囲内にある、請求項26の熱電材料。
【請求項32】
複数の粗粒の少なくとも1個がその中の少なくとも1個の沈殿物領域を含む、請求項26の熱電材料。
【請求項33】
少なくとも1個の沈殿物領域が約1nm〜約20nmの範囲内のサイズを有する、請求項32の熱電材料。
【請求項34】
構造物が約1000nmを超える粗粒を実質的に含まない、請求項26の熱電材料。
【請求項35】
構造物が約10%未満の空隙率を有する、請求項26の熱電材料。
【請求項36】
空隙率が約1%未満である、請求項35の熱電材料。
【請求項37】
構造物のZT値が約1.2より大きい、請求項26の熱電材料。
【請求項38】
構造物のZT値が約1.5より大きい、請求項37の熱電材料。
【請求項39】
構造物のZT値が約2より大きい、請求項38の熱電材料。
【請求項40】
材料が約2000℃未満の温度で前記のZT値を示す、請求項37の熱電材料。
【請求項41】
材料が約1000℃未満の温度で前記のZT値を示す、請求項40の熱電材料。
【請求項42】
材料が約600℃未満の温度で前記のZT値を示す、請求項41の熱電材料。
【請求項43】
材料が約200℃未満の温度で前記のZT値を示す、請求項42の熱電材料。
【請求項44】
材料が約20℃未満の温度で前記のZT値を示す、請求項43の熱電材料。
【請求項45】
材料がそれぞれの理論密度の約90%〜約100%の範囲内の密度を示す、請求項26の熱電材料。
【請求項46】
複数の粗粒がn−ドープ材料およびp−ドープ材料の少なくとも一方を含んでなる、請求項26の熱電材料。
【請求項47】
複数の粗粒がビスマス−基材料、鉛−基材料およびケイ素−基材料の少なくとも1種を含んでなる、請求項26の熱電材料。
【請求項48】
複数の粗粒がビスマス−アンチモン−テルルの合金、ビスマス−セレン−テルルの合金、鉛−テルルの合金、鉛−セレンの合金およびケイ素−ゲルマニウムの合金の少なくとも1種を含んでなる、請求項47の熱電材料。
【請求項49】
複数の粗粒がビスマス−アンチモン−テルルの合金を含んでなる、請求項48の熱電材料。
【請求項50】
複数の粗粒が、BiTe3−xSe[そのxが約0〜約0.8の範囲内にある]の合金を含んでなる、請求項26の熱電材料。
【請求項51】
熱電材料が、BiSb2−xTe[そのxが約0〜約0.8の範囲内にある]の合金である、請求項26の熱電材料。
【請求項52】
複数の粗粒が異なる元素の組成をもつ、少なくとも2個の粒子を含んでなる、請求項26の熱電材料。
【請求項53】
封入物の平均サイズが約1nm〜約500nmの範囲内にある、相互に対してランダムに配置された、複数の圧縮された結晶性封入物を含んでなり、
前記圧縮された封入物が約1を超えるZTを示す熱電材料を提供する、
熱電材料。
【請求項54】
封入物が粗粒を含んでなる、請求項53の熱電材料。
【請求項55】
封入物の平均サイズが約1nm〜約100nmの範囲内にある、請求項53の熱電材料。
【請求項56】
封入物の平均サイズが約1nm〜約50nmの範囲内にある、請求項53の熱電材料。
【請求項57】
材料が約500nmを超える封入物を実質的に含まない、請求項53の熱電材料。
【請求項58】
材料が多結晶性構造を示す、請求項53の熱電材料。
【請求項59】
材料が約1.2を超えるZTを示す、請求項53の熱電材料。
【請求項60】
材料が約1.5を超えるZTを示す、請求項59の熱電材料。
【請求項61】
材料が約2を超えるZTを示す、請求項60の熱電材料。
【請求項62】
複数のナノ粒子を生成するように、少なくとも1種のバルクの元素材料を粉砕し、そして
約1を超えるZT値を示す熱電材料を生成するように、圧力下、そして高められた温度下で複数のナノ粒子を圧密化する工程、
を含んでなる、熱電材料を形成する方法。
【請求項63】
少なくとも1種のバルクの元素材料が少なくとも2種の異なるバルクの元素材料を含み、そして更に、粉砕の工程が少なくとも2種類のナノ粒子を生成する工程を含む、請求項62の方法。
【請求項64】
少なくとも2種の異なるバルクの元素材料がビスマスおよびテルルを含む、請求項63の方法。
【請求項65】
少なくとも2種の異なるバルクの元素材料がビスマス、テルルおよびアンチモンを含む、請求項63の方法。
【請求項66】
少なくとも2種の異なるバルクの元素材料がビスマス、テルルおよびセレンを含む、請求項63の方法。
【請求項67】
複数のナノ粒子にドーパントを添加する工程:
を更に含んでなる、請求項62の方法。
【請求項68】
合金および化合物の少なくとも一方である、約0.5を超えるZT値をもつ原料材料から粒子を提供する工程を更に含んでなり、
複数のナノ粒子を圧密化する工程が、原料材料からの粒子と一緒に、複数のナノ粒子を圧密化する工程を含んでなる、
請求項62の方法。
【請求項69】
ミクロンサイズの粒子を提供する工程を更に含んでなり、
複数のナノ粒子を圧密化する工程がミクロンサイズの粒子と複数のナノ粒子を圧密化す
る工程を含んでなる、請求項62の方法。
【請求項70】
約1nm〜約10ミクロンの範囲内の平均サイズをもつ複数の粗粒を含んでなる材料の構造物を含んでなり、
前記粗粒の少なくとも幾つかが約1nm〜約100nmの範囲内の平均サイズをもつ1個または複数の沈殿物領域を含み、そして前記材料が約1を超えるZT値を示す、
熱電材料。
【請求項71】
粗粒が約1nm〜約5ミクロンの範囲内の平均サイズをもつ、請求項70の熱電材料。
【請求項72】
粗粒が約1nm〜約2ミクロンの範囲内の平均サイズをもつ、請求項71の熱電材料。
【請求項73】
材料が約1〜約5の範囲内のZT値を示す、請求項70の熱電材料。
【請求項74】
材料が約1.5を超えるZT値を示す、請求項70の熱電材料。
【請求項75】
材料が約2を超えるZT値を示す、請求項70の熱電材料。
【請求項76】
材料が約2000℃未満の作業温度で前記ZT値を示す、請求項70の熱電材料。
【請求項77】
沈殿物領域が約1nm〜約50nmの範囲内の平均サイズを示す、請求項70の熱電材料。
【請求項78】
粗粒がビスマス−基合金、鉛−基合金およびケイ素−基合金の少なくとも1種から形式される、請求項70の熱電材料。
【請求項79】
ホスト材料および
約20ミクロン未満のサイズをもつ、ホスト中に分散された複数の粒子を含んでなり、
ここで熱電材料が、前記粒子の不在下の前記ホスト材料中のそれぞれの担体濃度を超える担体濃度を示す、
熱電材料。
【請求項80】
熱電材料の電荷担体の移動性が、前記粒子の不在下の、ホスト材料中のそれぞれの電荷担体の移動性より大きい、請求項79の熱電材料。
【請求項81】
複数の粒子がホスト材料より高度にドープされている、請求項79の熱電材料。
【請求項82】
熱電材料のZT値が約0.8より大きい、請求項79の熱電材料。
【請求項83】
ホスト材料が複数の粗粒を含んでなり、該粗粒の少なくとも幾つかは約1ミクロン未満のサイズを特徴として示す、請求項79の熱電材料。
【請求項84】
ホスト材料が複数の粗粒を含んでなり、該粗粒の少なくとも幾つかは約1ミクロンより大きいサイズを特徴として示す、請求項79の熱電材料。
【請求項85】
第1のエネルギー帯を特徴として示すホスト材料および
前記ホスト材料中に分散された、約20ミクロン未満のサイズをもち、第2のエネルギー帯を特徴として示す、複数の封入物、
を含んでなり、
ここで第2のエネルギー帯が第1のエネルギー帯に対して、より高いエネルギーをもつ
、熱電材料。
【請求項86】
エネルギー帯が伝導帯および価電子帯の少なくとも一方である、請求項85の熱電材料。
【請求項87】
熱電材料のZT値が約0.8より大きい、請求項85の熱電材料。
【請求項88】
ホスト材料が複数の粗粒を含んでなり、該粗粒の少なくとも幾つかは約1ミクロン未満のサイズを特徴として示す、請求項85の熱電材料。
【請求項89】
ホスト材料が複数の粗粒を含んでなり、該粗粒の少なくとも幾つかは約1ミクロンより大きいサイズを特徴として示す、請求項85の熱電材料。
【請求項90】
複数の封入物がドープされた材料を含んでなる、請求項85の熱電材料。
【請求項91】
気相の凝縮、レーザーアブレーション、化学的合成およびスプレイの急速冷却、の少なくとも1つを使用して複数のナノ粒子を生成する工程、および
前記ナノ粒子を、圧力下、高められた温度下で圧密化させて、約0.8より高いZT値をもつ、圧密化された熱電材料を形成する工程、
を含んでなる、熱電材料を加工する方法。
【請求項92】
少なくとも1種の出発材料をボールミル粉砕することにより、複数のホスト粒子を生成する工程を更に含んでなり、
ここで前記ナノ粒子を圧密化する工程が、前記ナノ粒子を前記複数のホスト粒子とともに圧密化する工程を含んでなる、
請求項91の方法。

【図1B】
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【図1C】
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【図2】
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【図3A】
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【図3B】
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【図3C】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【図30】
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【図31】
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【図32】
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【図33】
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【図34】
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【公表番号】特表2010−512011(P2010−512011A)
【公表日】平成22年4月15日(2010.4.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−539534(P2009−539534)
【出願日】平成19年12月3日(2007.12.3)
【国際出願番号】PCT/US2007/086291
【国際公開番号】WO2008/140596
【国際公開日】平成20年11月20日(2008.11.20)
【出願人】(591275056)マサチユセツツ・インスチチユート・オブ・テクノロジイ (9)
【氏名又は名称原語表記】MASSACHUSETTS INSTITUTE OF TECHNOLOGY
【出願人】(509132680)