説明

ナノ構造体を有する光学素子用成形型、ナノ構造体用成形型及び光学素子

【課題】基板表面にナノオーダーの微細な凹凸面のナノ構造を有する光学素子用成形型、同ナノ構造を有するセンシングチップ用光学素子及び同ナノ構造有する蛍光測定用光学素子を実現する。
【解決手段】基板2上に1層以上のエッチング転写層3を形成し、このエッチング転写層3上に半球状の微粒子生成用の薄膜4を形成し、熱反応、光反応、ガス反応のいずれか、またはそれらの複合反応を用いて、薄膜4に、その物質の凝集作用、分解作用、または核形成作用を生じさせて、半球状の島状微粒子5を複数、形成し、複数の島状微粒子5を保護マスクとしてエッチング転写層3及び前記基板2を反応ガスによって順次エッチングして、基板2の微細な表面に錐形状のパターンを形成して、基板2表面に微細な凹凸面(ナノ構造型面)1’を有する光学素子用成形型1を製造する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バイオや医療分野の高感度検出に用いられるナノ構造体を有する光学素子用又はナノ構造体用成形型、および光学素子に関するものである。ナノ構造体用成形型は、「ナノ構造体を有する光学素子用成形型」の上位概念である。
【0002】
ここで言う「ナノ構造体」とは、バイオや医療分野の高感度検出に用いられる、高アスペクトのナノ構造体であり、「ナノ構造成形型」は、これら高アスペクトのナノ構造体の成形に用いられる成形型である。また、このナノ構造体は、たとえば、放熱制御、物質の熱伝導制御、ぬれ性制御に用いることが出来る。
【0003】
ここで言う「ナノ構造体を有する光学素子」とは、バイオや医療分野の高感度検出に用いられるセンシングチップ等であり、「ナノ構造体を有する光学素子用成形型」は、これらのセンシングチップ等の成形に用いられる成形型である。
【背景技術】
【0004】
従来、ナノ構造体はバイオや医療分野の蛍光分析、偏光分析などに用いる光学素子において、検出感度を向上させることが可能である。そのため、高検出感度を達成するために、基板表面に表面処理が行われている。この表面処理の具体的な方法として、基板表面に微細且つ緻密な凹凸形状を形成する方法が知られている。
【0005】
このように基板表面に周期的な凹凸形状を設けた場合、基板表面積を飛躍的に増大させることが可能になるために、検出感度を大幅に向上する事ができる(例えば、特許文献1、特許文献2参照)。
【0006】
このような微細なナノ構造体を実現するためには、波長以下の微細なパターンが必要とされるため、このような微細構造を作製するために、電子ビームリソグラフィー法を用いる方法が知られている。この方法は電子線レジストを塗布したのち、電子線を用いてパターニングを行い、反応性エッチングを用いて基板の加工(エッチング)を行う方法である。
【0007】
また、陽極酸化ポーラスアルミナを用いて、ナノ周期構造を作製し、微細なナノ構造体を作製する事が出来る事が知られている(例えば、特許文献3、特許文献4参照)。陽極酸化ポーラスアルミナを用いた作成方法は、アルミを例えば硫酸などの強アルカリ溶液中で陽極酸化させ、アルミ表面に周期的なナノホールを自己形成する方法である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2006−300726号公報
【特許文献2】特開2005−337771号公報
【特許文献3】特開2006−62049号公報
【特許文献4】特開2006−68827号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、電子線描画装置を用いてナノ構造を作製する方法は、電子ビームを走査しパターニングをする必要があるために、描画スループットが極めて遅く、パターン形成に時間を要する。また、そのことから、大面積化した光学素子へ対応するためには、コストが高くなる問題が発生している。
【0010】
また、陽極酸化ポーラスアルミナを用いて、微細なナノ構造体を作製する方法は、一括に大面積の周期的なナノ構造物を形成する事が出来るが、基板材料が限られてしまう問題がある。
【0011】
さらに、陽極酸化ポーラスアルミナを用いる方法は、大面積に均一なナノ構造体を作製するための、高精度な電圧/電流制御が求められる問題がある。また、これらは基板サイズ、加工面積によって加工条件が変化してしまい、再現性を得るのが難しい問題がある。
【0012】
本発明は、上記問題点を解決することを目的とするものであり、その課題とするところは、次のようなナノ構造体を有する光学素子用成形型、ナノ構造体用成形型、その製造方法および光学素子を実現する点である。
(1)本発明に係るナノ構造体を有する光学素子用又はナノ構造体用成形型は、大面積で且つ複雑な形状の構造体から成るナノ構造体を基板表面に、均一に安定してナノ構造体を有し、バイオや医療分野の蛍光分析、偏光分析などに用いる光学素子において、より検出感度を向上させることができるものである。
(2)本発明に係る光学素子用成形型若しくはナノ構造体の製造方法は、少ない行程で、且つ生産性の高いドライプロセスのみで製造することができる方法である。
(3)本発明に係る光学素子は、基板表面に微細な凹凸面のナノ構造を有し、ランダムに配置されて成る高アスペクト比のナノパターンを備え、好ましくは、このナノパターンは、光源の波長以下の間隔を保たれている構成であるナノパターンを備えた光学素子である。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明は上記課題を解決するために、基板表面に微細な凹凸面のナノ構造を有する光学素子用又はナノ構造体用成形型の製造方法であって、前記基板上に1層以上のエッチング転写層を形成し、該エッチング転写層上に島状微粒子生成用の薄膜を形成し、前記薄膜に、熱反応、光反応、化学反応のいずれか、またはそれらの複合反応を用いて、薄膜物質の凝集作用、分解作用、または核形成作用を生じさせて、島状微粒子を複数、形成し、前記複数の島状微粒子を保護マスクとしてエッチング転写層及び前記基板を順次エッチングして、基板の微細な表面に凸状の高アスペクト比のパターンを形成することを特徴とするナノ構造を有する光学素子用又はナノ構造体の製造方法を提供する。
【0014】
前記複数の島状微粒子は、それぞれの大きさはナノメータオーダであって、互いに対象とする互いに対象とする光源の波長以下の間隔を保ちながらランダムに配置されて成るナノパターンを形成することが好ましい。
【0015】
前記薄膜の材料は、銀、金、白金、若しくはパラジウムを主成分とする物質、又は、銀、金、白金、パラジウム、タングステン、ビスマス、テルルのいずれかの成分を主成分とする酸化物若しくは窒化物であることが好ましい。
【0016】
前記島状微粒子は、その平均粒径は5nm〜1000nmであり、複数の島状微粒子の平均間隔は、10nm〜2000nmであることが好ましい。
【0017】
前記基板は、石英ガラス、樹脂、シリコン、窒化ガリウム、砒化ガリウム、インジウム燐、ニッケル、鉄、チタン、炭素、サファイヤ、又は窒化カーボンを主成分とする金属または非金属であることが好ましい。
【0018】
前記エッチング転写層は、酸化物、窒化物若しくは炭化物の1層、又は酸化物、窒化物及び炭化物のいずれかから成る多層で構成されることが好ましい。
【0019】
本発明は上記課題を解決するために、表面に微細な凹凸面のナノ構造を有する光学素子又はナノ構造体を成形するための、光学素子用又はナノ構造体用成形型であって、基板の表面にランダムに配置されてなる錐形状の凸状のナノパターンを有し、前記ナノパターンは、前記基板上に1層以上のエッチング転写層を形成し、該エッチング転写層上に島状微粒子生成用の薄膜を形成し、前記薄膜に、熱反応、光反応、化学反応のいずれか、またはそれらの複合反応を用いて、薄膜物質の凝集作用、分解作用、または核形成作用を生じさせて、島状微粒子を複数形成し、前記複数の島状微粒子を保護マスクとしてエッチング転写層及び前記基板を順次エッチングして形成されたものであることを特徴とするナノ構造体を有する光学素子用又はナノ構造体用成形型を提供する。
【0020】
本発明は、表面に微細な凹凸面のナノ構造を有し、該ナノ構造は、ランダムに配置されて成る錐形状の凸状のナノパターンを備え、該ナノパターンは島状であり、複数の島の平均間隔が10nm〜2000nmであり、本発明の成形型を用いて成形されたものである、センシングチップ用光学素子を提供する。本発明は、表面に微細な凹凸面のナノ構造を有し、該ナノ構造は、ランダムに配置されて成る錐形状の凸状のナノパターンを備え、該ナノパターンは島状であり、複数の島の平均間隔が10nm〜2000nmであり、本発明の成形型を用いて成形されたものである、蛍光測定用光学素子を提供する。
【0021】
前記ナノ構造体を有する光学素子の前記ナノパターンは、光源の波長以下の間隔を保たれている構成であることが好ましい。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、次の効果が生じる。
(1)本発明に係る光学素子用成形型は、大面積で且つ複雑な自由曲面を持つ基板表面に、均一に安定してナノ構造体を有し、より安価に大面積の、バイオや医療に用いる高感度センサーチップを製造することができる。
(2)本発明に係るナノ構造体を有する光学素子用又はナノ構造体用成形型の製造方法は、少ない行程で、且つ生産性の高いドライプロセスのみで製造することができる。
(3)本発明に係る光学素子は、基板表面に微細な凹凸面のナノ構造を有し、ランダムに配置されて成る高アスペクト比のナノパターンを備え、好ましくは、このナノパターンは、光源の波長以下の間隔を保たれている構成であるナノパターンを備えた光学素子である。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明の実施例1を説明する図である。
【図2】本発明の実施例1を説明する図である
【図3】本発明の実施例1を説明する図である。
【図4】本発明の実施例2を説明する図である。
【図5】本発明の実施例1のナノ構造体を有する光学素子用成形型を利用した射出成形型の製造及びナノ構造体の成形、並びに光学素子を説明する図である。
【図6】本発明の実施例2のナノ構造体を有する光学素子用成形型を利用した射出成形型の製造及びナノ構造体を有する光学素子の成形を、並びに光学素子説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
本発明に係るナノ構造体を有する光学素子用又はナノ構造体用成形型、その製造方法および光学素子を実施するための最良の形態を実施例に基づいて図面を参照して、以下に説明する。
【0025】
本発明は、バイオや医療などの高感度センシング効果を得るための微細な凹凸構造(ナノ構造体)を表面に有する光学素子を成形するための光学素子用又はナノ構造体用成形型及びその製造方法である。本発明に係る光学素子用成形型の製造方法の工程は、次のとおりである。
(1)基板上への薄膜の形成工程
基板上に複数のエッチング転写層を形成し、さらに、一括に薄膜を形成する。これらの形成工程は、真空ドライプロセスで行う。
【0026】
(2)ナノパターンの形成
熱反応、光反応、ガス反応のいずれか、またはこれらの反応を2以上組み合わせた複合反応を用いて、上記薄膜に、薄膜物質の凝集作用、分解作用、または核形成を生じさせて、ナノメータオーダの微細な半球状の島状微粒子が、対象とする光源の波長以下の間隔でランダムに存在するナノパターンを形成する。
【0027】
島状微粒子となる物質は、銀、金、白金、パラジウムのいずれかを主成分とする材料、又は、銀、金、白金、パラジウム、タングステン、ビスマス、テルルのいずれかを主成分とする酸化物材料若しくは窒化物、を用いることで、複数の島状微粒子の間隔が狭いナノパターンを形成する事が可能である。このとき、半球状の島状微粒子の平均粒径は5nm〜1000nmであり、隣接する島状微粒子の平均間隔は10nm〜2000nm以下であることが好ましい。
【0028】
(3)形成したナノパターンを用いて、即ち、島状微粒子を保護マスクとして、エッチング転写層をエッチングし、さらに、最終的に目的とする基板へのエッチングを行い、基板表面に微細な錐形状のナノ構造体を形成し、ナノ構造を有する光学素子用成形型又はナノ構造用成形型を作製する。
【0029】
この場合、島状物質と基板との間に、上記のとおり、複数層のエッチング転写層を設けているので、高アスペクト比のナノ構造体を備えた光学素子を成形できる微細凹凸面(ナノ構造型面)を、光学素子用成形型の表面に、効率的に作製する事が可能である。
【0030】
この光学素子用成形型を使用すれば、以下の実施例において説明するように、基板表面に微細な凹凸面のナノ構造を有し、ランダムに配置されて成る高アスペクト比のナノパターンを備え、好ましくは、このナノパターンは、光源の波長以下の間隔を保たれている構成であるナノパターンを備えた光学素子が得られる。
【実施例1】
【0031】
以下、図面を参照して本発明に係る光学素子用成形型及びその製造方法の実施例1について詳細に説明する。図1は、本発明の実施例1に係る光学素子用成形型1を、反応性イオンエッチング法を用いて製造する製造方法の工程を説明する図である。
【0032】
(1)成膜装置(図示しない。)を用いて、平面状の基板2の表面に1層以上から構成されるエッチング転写層3と島状微粒子作製の為の薄膜4を成膜する(図1(a))。本発明者らは、実証試験により、銀、金、白金、パラジウムを主成分とする物質は、基板2の表面に、対象とする光源の波長以下の間隔で、ランダムに島状微粒子5を形成する為の薄膜4の材料として、効果的であることを確認している。
【0033】
(2)次に、凝集作用、核形成採用又は分解作用を用いて、波長以下の間隔で、ランダムに配置された島状微粒子5を作製する(図1(b))。図2(a)及び(b)は、基板2及びエッチング転写層3の上に形成された島状微粒子5を示す断面図及び平面図である。
【0034】
ところで、熱反応、光反応、ガス反応等をパラメータとすることにより、材料の凝集反応、核形成反応を制御して、島状微粒子5の平均粒径や間隔を制御することが可能である。また、本発明者らは、薄膜4の材料に不純物を添加することによって、島状微粒子5の平均粒径や間隔を制御可能な事を確認した。
【0035】
また、銀、金、白金、パラジウム、タングステン、ビスマス、テルルのいずれかの成分を主成分とする酸化物を用いた場合は、熱、光、またはガス分解作用を用いることにより、島状微粒子5の平均粒径や間隔を制御することが可能である。
【0036】
(3)次に、形成した島状微粒子5をマスキングとして、反応性ガス(例えば、CF4、CHF3、CH4、CF6、H2、CO、NH3、Cl2、BCl3)を用いて、エッチング転写層3のエッチングを行う(図1(c))。ここで、エッチング転写層3は、島状微粒子5と同等の形状を維持し、エッチングされ、順次、次のエッチング転写層3又は基板2のためのマスキング層として機能する。
【0037】
島状微粒子5を用いて、光学素子表面のナノ構造を形成するための略錐形状の微細な凹凸面(ナノ構造型面)1’を基板2の表面に形成する際に、上記のとおり、エッチング転写層3を設けることにより、高アスペクト比構造の略錐形状の作製が可能である。エッチング転写層3の材料としては、たとえば、銀を主成分とする島状微粒子5をマスキング層とする場合は、炭素を主成分とする材料やシリコン、シリコン酸化物、シリコン窒化物などが有効である。
【0038】
ここで、島状微粒子5の主成分を銀、エッチング転写層3を炭素、基板2を石英とした場合には、島状微粒子5とエッチング転写層3とのエッチング速度が「島状微粒子5のエッチング速度」<<「エッチング転写層3のエッチング速度」となるようなガス種をもちいた反応性エッチングをする。これにより、島状微粒子5がマスクキング効果を生じ、エッチング転写層3にパターンを形成する事が可能である。
【0039】
次にエッチング転写層3と基板2とのエッチングの場合には、エッチング速度比が、「エッチング転写層3のエッチング速度」<<「基板2のエッチング速度」となるようなガス種を用いた反応性エッチングを行う。これにより、基板2の表面に、島状微粒子5をもとにマスキングした略錐形状のナノ構造の作製が可能である。また、エッチング転写層3は単層である必要はなく、エッチングの為のプロセス設計により多層にしても、作製可能である。
【0040】
第2層以降のエッチング転写層3にも、同様のプロセスを行い(図1(d))、最終的には、基板2へのエッチングを行い、基板2表面に略錐形状の微細な凹凸面(ナノ構造型面)1’が形成された光学素子用成形型1を形成する(図1(f))。
【0041】
以上の製造方法を用いることにより、ドライプロセスのみで、基板2表面に対象とする光源の波長以下の間隔で緻密に、ランダムに略錐形状に形成された微細凹凸構造を有する事が可能である。これにより、複雑な形状を持つ光学基板においても、容易に作製可能であり、且つ作製プロセスの簡単化が実現できる。
【0042】
図3は、本発明者らが実施例1を実施して得られた島状微粒子5の代表的なSEM像(走査型電子顕微鏡像)を示す。これにより、基板2表面に対象とする光源の波長以下の間隔で、ランダムに島状微粒子5を形成できる事を確認した。また、このSEM像から、実施例1によって、有効的な薄膜4材料は、銀を主成分とする物質が効果的であることを確認した。
【0043】
また、本発明者ら、実施例1の実証試験を通じて、熱反応、光反応、またはガス反応を制御することにより、これらの材料の凝集反応、核形成反応を制御が実現され、島状微粒子5の平均粒径や間隔を制御することが可能であることも確認した。また、これらの材料に不純物を添加することによって、島状微粒子5の平均粒径や間隔を制御可能な事を確認した。
【0044】
さらに、島状微粒子5を形成する薄膜として、金、白金、パラジウム、タングステン、ビスマス、テルルのいずれかの成分を主成分とする酸化物を用いた場合にも、熱、光、またはガス分解作用を用いることにより、島状微粒子5の平均粒径や間隔を制御することが可能であることも確認した。
【0045】
実施例1によって製造したナノ構造体を有する光学素子用成形型1を用いて作製した光学素子用成形型1(光学素子そのものにではない。)を用いて、蛍光強度を測定した結果、ナノ構造体が無い場合に比べ、ナノ構造体がある場合には、50倍検出感度の向上が可能なことを確認した。
【0046】
このことから、本発明は、ドライプロセスのみで、基板2表面に略錐形状の微細な凹凸面(ナノ構造型面)1’を作製出来ることから、低コスト化と生産性に優れた手法であることを確認した。
【0047】
また、基板2の材料として、石英、ガラス、ポリカーボネイトやPMMAなどの樹脂、窒化ガリウム、砒化ガリウム、インジウム燐、ニッケル、鉄、チタン、炭素、サファイヤ、窒化カーボンなどを用いても、同様の効果があることを確認した。
【実施例2】
【0048】
図4は、本発明の実施例2に係る光学素子用成形型6の製造方法を、実施例1と同様に、反応性イオンエッチング法を用いて行う工程を説明する図である。この実施例2は、自由曲面を有する基板上にナノ構造体を有する光学素子を成形する光学素子用成形型に関するものであり、基板7は自由曲面を有する点で異なるが、その製造方法は同じであるので、その説明は省略する。
【0049】
この実施例2に係る製造方法で得られたナノ構造体を有する光学素子用成形型6は、基板6表面に略錐形状の微細凹凸面(ナノ構造型面)1’が形成されており、反射特性についても実施例1と同様の効果が得られる。
【0050】
(射出成形用型の製造方法及びナノ構造体を有する光学素子の成形)
次に、図5に示す模式図を用いて、上記説明したナノ構造体を有する光学素子用成形型1から射出成形用型の製造方法を説明するとともに、この射出成型用型を用いるナノ構造体を有する光学素子の量産方法の一例を説明する。
【0051】
図5(a)は、本発明の実施例1で得られたシリコン製のナノ構造体を有する光学素子用成形型1(石英ガラス製のナノ構造体を有する光学素子用成形型1でもよい。)を示す。このシリコン製のナノ構造体を有する光学素子用成形型1を用いて、図5(b)に示すように、通常のニッケル電鋳処理を行うことによって、図5(c)に示すような射出成形型8を作成する。
【0052】
次に、この射出成形型8を用いて図5(d)に示すように、射出成形型8を利用して、図5(e)に示すようなナノ構造体を有する光学素子9を量産することができる。この光学素子9は、基板表面に微細な凹凸面のナノ構造を有し、ランダムに配置されて成る高アスペクト比のナノパターンを備え、好ましくは、このナノパターンは、光源の波長以下の間隔を保たれている構成であるナノパターンを備えた光学素子である。
【0053】
具体的には、光学素子9のナノパターンは、島状であり、その平均径は5nm〜1000nmであり、隣接する島の平均間隔は10nm〜2000nm以下であることが好ましい。
【0054】
図6は、本発明の実施例2で得られたナノ構造体を有する光学素子用成形型6(図6(a)参照)を用いる方法を説明する図である。この方法は、図5に示す方法と全く同じであり、通常のニッケル電鋳処理を行うことによって(図6(b)参照)、射出成形型10(図6(c)参照)を作成する。
【0055】
さらに、この射出成形型10を用いて、射出成形型を利用してナノ構造体を有する光学素子を射出成形して(図6(d)参照)、ナノ構造体を有する光学素子11(図6(e)参照)も量産可能である。
【産業上の利用可能性】
【0056】
本発明は、以上のような構成であるから、光学素子一般(例えば、プロジェクター用レンズ、光ピックアップ、ディスプレイ等)、発光素子一般(例えば、LED、レーザ等)、受光素子一般(フォトダイオード、太陽電池等)、バイオ分析チップ、熱制御板、流体センサ、加速度センサに適用可能である。
【符号の説明】
【0057】
1 ナノ構造体を有する光学素子用成形型
2 基板
3 エッチング転写層
4 島状微粒子作製の為の薄膜
5 島状微粒子
6 ナノ構造体を有する光学素子用成形型
7 基板
8 射出成形型
9 ナノ構造体を有する光学素子
10 射出成形型
11 ナノ構造体を有する光学素子



【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面に微細な凹凸面のナノ構造を有する光学素子又はナノ構造体を成形するための、光学素子用又はナノ構造体用成形型であって、
基板の表面にランダムに配置されてなる錐形状の凸状のナノパターンを有し、
前記ナノパターンは、前記基板上に1層以上のエッチング転写層を形成し、該エッチング転写層上に島状微粒子生成用の薄膜を形成し、前記薄膜に、熱反応、光反応、化学反応のいずれか、またはそれらの複合反応を用いて、薄膜物質の凝集作用、分解作用、または核形成作用を生じさせて、島状微粒子を複数形成し、前記複数の島状微粒子を保護マスクとしてエッチング転写層及び前記基板を順次エッチングして形成されたものであることを特徴とするナノ構造体を有する光学素子用又はナノ構造体用成形型。
【請求項2】
前記島状微粒子は、その平均粒径は5nm〜1000nmであり、複数の島状微粒子の平均間隔は、10nm〜2000nmであることを特徴とする請求項1に記載のナノ構造体を有する光学素子用又はナノ構造体用成形型。
【請求項3】
表面に微細な凹凸面のナノ構造を有し、該ナノ構造は、ランダムに配置されて成る錐形状の凸状のナノパターンを備え、該ナノパターンは島状であり、複数の島の平均間隔が10nm〜2000nmであり、請求項1又は2記載の成形型を用いて成形されたものであることを特徴とするセンシングチップ用光学素子。
【請求項4】
表面に微細な凹凸面のナノ構造を有し、該ナノ構造は、ランダムに配置されて成る錐形状の凸状のナノパターンを備え、該ナノパターンは島状であり、複数の島の平均間隔が10nm〜2000nmであり、請求項1又は2記載の成形型を用いて成形されたものであることを特徴とする蛍光測定用光学素子。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−40878(P2012−40878A)
【公開日】平成24年3月1日(2012.3.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−202998(P2011−202998)
【出願日】平成23年9月16日(2011.9.16)
【分割の表示】特願2007−109956(P2007−109956)の分割
【原出願日】平成19年4月19日(2007.4.19)
【出願人】(301021533)独立行政法人産業技術総合研究所 (6,529)
【Fターム(参考)】