説明

ナノ粒子表面への輸送特性およびナノ粒子表面からの輸送特性の制御

ナノ粒子および複数の高分子電解質安定化部分層を含む安定化された複合ナノ粒子を生成する方法、多層の安定化された複合ナノ粒子を生成する方法、ならびにこうしたナノ粒子。一つの実施形態において、本発明は安定化されるナノ粒子組成物を提供し、ここで安定剤は次の1つまたはそれ以上を可能にするように選択される:(a)特定のSCEに対する透過性の改善;(b)特定のSCEに対する透過性の減少;ならびに(c)第1のグループのSCEに対する透過性の改善および第2のグループのSCEに対する透過性の減少。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願への相互参照)
本願は、2007年2月13日に出願された米国仮特許出願第60/889,609号、および2007年3月5日に出願された米国仮特許出願第60/892,927号の優先権を主張し、この米国仮特許出願の全体は、本明細書中に参考として援用される。
【背景技術】
【0002】
(発明の背景)
ナノ粒子はナノメートルサイズの材料、たとえば金属、半導体、ポリマーなどであり、それらはサイズが小さいためにしばしば一意の特徴を有し得る。ナノ粒子は、触媒、光触媒、吸着剤、センサーおよび強磁性流体として使用できること、ならびに光学的、電子的および磁気的装置への適用ならびにプラスチックおよびその他の材料の配合に対する材料特性を有することから、特に興味深い。
【0003】
しかし、実際の適用においては、ナノ粒子の有用性は実験室で示される特性だけに依存するのではない。実際の適用においては、適用環境における化学物質との干渉および望ましくない反応のために、多くの興味深い実験室特性が実現されないことがある。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0004】
(発明の要旨)
さまざまな局面において、本発明は、安定剤を含むナノ粒子組成物(compositions)と、たとえばナノ粒子複合体(composite)に特定の可溶性および非凝集性の特徴を与えるように安定剤の透過性を合わせる方法とを提供する。たとえば、さまざまな実施形態においては、安定剤を変更することによって、ナノ粒子表面から周囲環境に、および/またはその反対に移動する材料に対して安定剤の透過性を調整してもよい。
【0005】
さまざまな局面において、本発明は、安定化されるナノ粒子を生成する方法を提供し、ここで安定剤は可溶性を提供し、および/または凝集を防ぎ、かつ選択された小さな化学的実体に対する選択された透過性を有する。たとえば、さまざまな実施形態において、本発明は安定化された複合ナノ粒子を生成するための方法を提供し、この方法はa)少なくとも1つのナノ粒子および少なくとも1つの安定化部分が分散された溶液を与えるステップと、b)溶液中の少なくとも1つの安定剤部分を変更してSCEに対する安定剤部分の透過性を変えるステップとを含む。
【0006】
たとえば、さまざまな実施形態において、本発明は安定化されるナノ粒子組成物を提供し、ここで安定剤は次の1つまたはそれ以上を可能にするように選択される:(a)特定のSCEに対する透過性の改善;(b)特定のSCEに対する透過性の減少;ならびに(c)第1のグループのSCEに対する透過性の改善および第2のグループのSCEに対する透過性の減少。
【0007】
本発明の好ましい実施形態において、安定化部分は1つまたはそれ以上のポリマー安定剤を含む。ナノ粒子輸送特性を変えるためにポリマー安定剤を変更するための好適な手段の例は、以下を含むがこれらに限定されない:(a)放射または化学物質に誘導される安定剤部分の内部および/または外部架橋、架橋の程度は層の透過性を制御する;(b)溶液状態の変更ならびに/または加熱および/もしくは冷却の使用によってポリマー安定剤層の膨張または収縮を誘導すること;(c)ポリマーネットワークに対する付加的な部分(吸着質)の吸着または脱着、これは化学結合形成または切断によって助けられてもよい;ならびに(d)それらの1つまたはそれ以上の組合せ。安定剤部分として用いるために好適なポリマー材料の非限定的な例が本明細書において考察されており、それらは合成または天然に生じてもよく、かつ直鎖、分岐鎖、ハイパーブランチ、および/またはデンドリマーであってもよい。
【0008】
本明細書において用いられる「安定化部分」または「安定剤」という用語は相互交換可能に使用され、(例、共有結合、非共有結合、イオン結合、ファンデルワールス結合などの結合を通じて)ナノ粒子と相互作用して、望ましい可溶性特徴を与えるか、および/またはナノ粒子の凝集を防ぐ材料を示す。
【0009】
本明細書において用いられる「吸着質」および「吸着質部分」という用語は相互交換可能に使用され、ポリマー安定化したナノ粒子に優先的に結合する実体を示す。この結合は、物理吸着、化学吸着、共有結合を通じたもの、静電相互作用を通じたもの、またはファンデルワールス力を通じたものなどであってもよい。
【0010】
本明細書において用いられる「小さな化学的実体(small chemical entities)」(SCEs)という用語は、サイズが約0.1ナノメートル(nm)から約5nmであって、かつナノ粒子が分散される溶剤に可溶性である、さまざまなタイプのカチオン、アニオンまたは中性種を示す。たとえばナノ粒子が単独で、または固体支持上で与えられるようなさまざまな実施形態において、SCEとは、サイズが0.1nmから約5nmであって気体状態にある、さまざまなタイプのカチオン、アニオンまたは中性種を示す。
【0011】
本明細書において用いられる、1つまたはそれ以上の安定剤部分を含むナノ粒子組成物を示すときの「ナノ粒子組成物」と、「安定化されたナノ粒子」という用語は、相互交換可能に用いられる。
【0012】
本明細書において用いられる「固体支持」および「支持」という用語は相互交換可能に用いられ、あらゆる固相材料を示す。固体支持の例は、樹脂、膜、ゲル、およびミクロンサイズまたはそれより大きな微粒子を含むが、それらに限定されない。固体支持は、1つまたはそれ以上の有機ポリマー、たとえばポリスチレン、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリフルオロエチレン、ポリエチレンオキシ、およびポリアクリルアミドなどからなっていてもよい。固体支持は、1つまたはそれ以上の無機材料、たとえばガラス、シリカ、制御多孔性ガラス、または逆相シリカなどからなっていてもよい。固体支持は多孔性または非多孔性であってもよく、膨潤または非膨潤の特徴を有してもよい。
【0013】
本発明に対する好適な安定化部分は、内部的または外部的に化学修飾することによって、1つまたはそれ以上の安定化部分の間に新たな分子内および/または分子間化学結合を導入できる、たとえば1つまたはそれ以上の安定化部分を架橋できるような安定化部分を含む。好適な安定化部分は、単独または組合せて取られる安定化部分であって、化学的または物理的変化を用いて膨張または収縮させることが可能な3次元構造を有する安定化部分も含む。好適な安定化部分は、単独または組合せて取られる安定化部分であって、その安定化部分を含有するナノ粒子に関する層の厚さまたは密度を増加または減少させるために変更されるような安定化部分も含む。
【0014】
さまざまな実施形態において、好適な安定化部分は、ポリマー、リガンド、配位イオン、配位複合体、またはそれらの組合せを含むがそれらに限定されない。
【0015】
さまざまな実施形態において、本発明は、たとえばスピンコーティング、押出し、共析、多層集合(layer−by−layer assembly)などの標準的な技術を用いて固体支持の上または中に組み込まれた安定化ナノ粒子を提供する。
【0016】
本発明の上述およびその他の局面、実施形態、目的、特徴および利点は、添付の図面を伴う説明によってより完全に理解できる。図面における類似の参照符号は、さまざまな図面を通じて一般的に類似の特徴および構造的構成要素を示す。この図面は必ずしも一定の比率ではなく、むしろ本発明の原理を例示するための強調が行なわれている。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】ナノ粒子(nanoparticle:NP)および安定剤部分層(104)を含むナノ粒子組成物(102)を概略的に示す図である;安定化部分の架橋(106)を増加させる(状況A)と、架橋の程度がより低い組成物(状況B)よりもSCE(108)に対する透過性が低減することを例示している。
【図2】ナノ粒子(NP)および安定剤部分層(204)を含むナノ粒子組成物(202)を概略的に示す図である;安定化部分と溶剤との好ましい相互作用が少ない(状況A)と、安定剤部分層の収縮(206)がもたらされて、SCE(208)に対する透過性が低減するのに対し、安定化部分と溶剤との好ましい相互作用をより多く有する組成物(状況B)では安定剤部分層の膨張(210)がもたらされて、SCEに対する透過性が増加することを例示している。
【図3】吸着質部分(306)の添加による、ナノ粒子(NP)および安定剤部分層(304)を含むナノ粒子組成物(302)の変更を概略的に示す図である;吸着質による安定化部分の変更(状況A)によって、吸着質を有さない組成物(状況B)よりもSCE(308)に対する透過性が低減することを例示している。
【図4】本発明のさまざまな実施形態に従ったナノ粒子組成物の多層集合を概略的に示す図である。
【図5】高分子電解質安定剤で処理された実施例2のCdTe−S量子ドットの光ルミネセンススペクトルを示す図である。点線は高強度UV放射(254nm)に露出されたサンプルに対するものであり、実線はUV放射に露出されなかったサンプルに対するものである。
【図6】安定剤で処理されていない実施例2のCdTe−S量子ドットの光ルミネセンススペクトルを示す図である。点線は高強度UV放射(254nm)に露出されたサンプルに対するものであり、実線はUV放射に露出されなかったサンプルに対するものである。
【図7】異なる時間に架橋されたCd2+/PAAを用いて形成された、実施例3のCdS/PAAに対するUV可視スペクトルおよび発光スペクトルを示す図である。
【図8】吸光度対時間のグラフを示す図である。
【図9】実施例5に従って調製された溶液中で測定されたCd濃度を示す図である。
【図10】CdTe−CdSの発光スペクトル(黄色)(励起=350nm)を示す図であって、発光最大値のPSSなし(λmax=570nm)から5%PSS(λmax=560nm)から25%PSS(λmax=555nm)までの青色シフトを示している。
【図11】CdTe−CdSの発光スペクトル(オレンジ)(励起=408nm)を示す図であって、発光最大値のPSSなし(λmax=645nm)から5%PSS(λmax=640nm)から25%PSS(λmax=630nm)までの青色シフトを示している。
【発明を実施するための形態】
【0018】
(種々の実施形態の説明)
本発明をさらに説明する前に、ポリマーおよびナノ粒子の一般的な考察を提供することが有用であると思われる。
【0019】
A.全般
溶液中のポリマーの立体構造は、その溶液のさまざまな状態、たとえば溶剤との相互作用、濃度、および存在し得る他の種の濃度などを含む状態によって決められる。たとえば、pH、イオン強度、架橋剤、温度および濃度などに依存して、ポリマーは立体構造の変化を起こし得る。高分子電解質に対しては、高い電荷密度において、たとえばポリマーの「モノマー」単位が完全に帯電されるときなどには、同様に帯電されたモノマー単位間の静電反発によって、伸長した立体構造が採用される。たとえば塩の添加またはpHの変化などによってポリマーの電荷密度を減少させると、伸長したポリマー鎖から、もっと密にパックされた球状の立体構造、すなわち折り畳まれた立体構造への遷移がもたらされ得る。こうした折り畳み遷移は、静電反発力を克服したポリマーセグメント間の誘引性の相互作用によって駆動される。ポリマーの溶剤環境を変えることによって同様の遷移を誘導できる。この折り畳まれたポリマーは、ナノスケールの寸法のナノ粒子であり得る。この折り畳まれた立体構造は、たとえば架橋などによって、折り畳まれたポリマーのセグメント間に分子内化学結合を形成することによって、不可逆にできる。
【0020】
本明細書において用いられる「折り畳まれた(collapsed)ポリマー」という用語は、ほぼ球状の形の、一般的には回転楕円体だが、伸長および/またはマルチローブの立体構造でもあり得る、ナノメートル寸法を有する折り畳まれたポリマーを示す。
【0021】
B.ナノ粒子組成物
さまざまな局面において、本発明は、1つまたはそれ以上の安定剤部分の層を有するナノ粒子を含むナノ粒子組成物を提供する。安定剤部分は、たとえばさまざまなSCEに対する透過性に対して選択されてもよく、すなわちSCEがナノ粒子に達し得るかまたはナノ粒子から離れ得ることの容易さまたは困難さを選択できる。材料がナノ粒子表面に、またはそこから移動できる程度、すなわち安定剤層を通ってナノ粒子環境の外または中に移動できる程度のことを「透過性」と呼ぶ。たとえば、SCEに対する透過性の高い安定剤層は、ナノ粒子表面と環境との間におけるSCEの容易な移動を可能にするが、不透過性の安定剤はこの移動を制限する。透過性は、安定剤層の通過を試みる種(SCE)のサイズおよび化学的特徴によって変動することが理解されるべきである。
【0022】
さまざまな実施形態において、本発明のナノ粒子組成物および/または本発明の方法によって形成されたナノ粒子組成物は、約1ナノメートル(nm)から約100nmの範囲の平均直径を有する。さまざまな実施形態において、複合ナノ粒子は、以下の範囲の1つまたはそれ以上の平均直径を有する:(a)約1nmから約10nm;(b)約10nmから約30nm;(c)約15nmから約50nm;および(d)約50nmから約100nm。「平均直径」という用語は、複合ナノ粒子のいかなる種類の特定の対称性(例、球形、楕円体など)をも意味することは意図されていないことが理解されるべきである。むしろ、複合ナノ粒子は高度に不規則および非対称であってもよい。
【0023】
ナノ粒子のさまざまな実際の適用においては、ナノ粒子の不活性化化合物との相互作用、可溶性、および/または望ましくない凝集が問題となり得る。本発明のさまざまな実施形態においては、可溶性を与え、および/または凝集を防ぐ一方で、ナノ粒子環境からナノ粒子表面へ、およびその逆への材料の輸送を可能にする安定剤を有するナノ粒子組成物が提供される。さまざまなバージョンにおいて、こうした実施形態は、たとえば緩効性医薬品、農薬、腐食防止剤など、ナノ粒子が放出されるべき活性薬剤を含むような領域における実際的適用を有し得る。安定剤層に対する変更を用いて、ナノ粒子組成物に調整放出プロファイル(たとえば、放出制御、徐放、遅延放出など);ナノ粒子への、および/またはナノ粒子からの輸送速度を与えてもよい。
【0024】
たとえば、さまざまな実施形態において、ナノ粒子への、およびナノ粒子からの特定のSCE輸送を可能にする安定剤層を含むナノ粒子組成物を触媒作用適用に用いてもよく、ここではたとえば、ナノ粒子の触媒活性のために化学試薬のナノ粒子表面への輸送が必要である。さまざまな実施形態においては、ナノ粒子の表面へのSCEの輸送特性が、SCEの反応生成物、(例、触媒活性化による)活性化SCEのSCEからの輸送特性と異なるように安定剤層を選択してもよい。こうした輸送特性の差を用いて、たとえば(例、触媒表面への輸送によって)反応速度を制御したり、(例、ナノ粒子表面からの輸送を調整することによって)触媒活性化のための十分な時間を与えたりできる。安定剤の選択および/または変更による、さまざまなSCEのナノ粒子表面への、およびそこからの輸送の制御を用いて、化学処理のその他の因子、たとえば気体発生の速度、熱増強などの、大容量化学処理において問題となり得る因子を調整または制御できる。さまざまな実施形態において、安定剤層は動的局面を有してもよく、たとえば触媒反応の間に安定剤が変化または一連の変化を受けることによってさらに下流の反応を促進してもよい。さまざまな実施形態において、動的変化は循環性(例、周期的)であってもよく、第1の反応に対して第1の安定剤層を与え、第2の反応に対して第2の安定剤層を与え(第2の安定剤は第1の層の変更によって形成される)、その後に新たな第1の反応のために第1の安定剤層を復帰させることを促進してもよい。3つ以上のこうしたサイクルまたは一連の安定剤層、たとえば3層サイクルまたはシリーズ、4層サイクルまたはシリーズなどが用いられてもよいことが理解されるべきである。安定剤層に対する変化は、インサイツで生成される化合物によって、ならびに/または化合物および/もしくは外部刺激(例、放射線、熱など)の添加によって開始されてもよい。
【0025】
本発明のさまざまな実施形態において、本発明の安定化されたナノ粒子、ナノ粒子組成物は、改善された光学的特性、たとえば、安定剤層を有さない実質的に類似のナノ粒子に比べてより狭い発光スペクトル、改善された蛍光収率、変更された蛍光寿命などの提供を容易にするか、および/または提供する。
【0026】
C.ナノ粒子
有機もしくは無機荷電イオンまたはそれらの組合せを含むがそれに限定されない多様な分子を用いてナノ粒子を形成できる。さまざまな好ましい実施形態において、ナノ粒子は元素金属、金属を含む合金、または金属種を含有する化合物を含み、その金属は好ましくはCd、Zn、Cu、Pb、Ag、Mn、Ni、Au、Mg、Fe、Hg、Ptまたはこれらの1つもしくはそれ以上の組合せもしくは合金である。本明細書において用いられる「金属種を含有する化合物」という用語は、あらゆる価電子状態の金属またはメタロイドを含有する化合物を意味する。さまざまな好ましい実施形態において、ナノ粒子はCdS、CdSe、CdTe、ZnS、ZnSe、ZnTe、PbS、PbSe、PbTe、CuI、HgS、HgSe、およびHgTeを含むがそれらに限定されない半導体結晶を含む。これらの半導体は三元または四元半導体であってもよく、CdTe/S、CdSe/S、CdTe/Se、Cd/ZnTe、Cd/ZnSe/Teなどを含むがそれらに限定されない。さまざまな好ましい実施形態において、ナノ粒子は酸化物、たとえばZnO、SnO、CoO、NiO、CdO、InOなどを含む。さまざまな好ましい実施形態において、ナノ粒子はもっと複雑な系を含み、それはAg/Au、Ag/Cu、Au/Cuなどの合金、LiFePOなどのリン酸塩、PbCrOなどのクロム酸塩などを含む。
【0027】
D.安定化部分
本発明のナノ粒子組成物は、好ましくは少なくとも1つの安定剤部分によって囲まれたナノ粒子を含む。本発明における使用に対する安定剤部分は、折り畳み可能なあらゆる分子であってもよく、それはモノマーの単位を含有し、合成または天然に生じるものであってもよく、かつ直鎖、分岐鎖、ハイパーブランチ、および/またはデンドリマーであってもよい。
【0028】
本発明のさまざまな実際の適用を考慮するとき、安定剤には3つの主要な機能がある。機能の1つは、たとえば特定の可溶性特徴を与えるため、または凝集を防ぐために、ナノ粒子同士の相互作用および/またはナノ粒子と溶剤との相互作用を変更および/または制御することであってもよい。第2の機能は、たとえば蛍光などのナノ粒子特性の不活性化をしばしばもたらし得る、ナノ粒子環境(例、組織、溶剤、空気など)に溶解される他の材料のナノ粒子表面への輸送を防ぐことであってもよい。第3の機能は、ナノ粒子を含む材料のナノ粒子環境(例、組織、溶剤、空気など)への放出を防ぐことによって、たとえばナノ粒子が分解もしくは溶解してその構成部分になったり、有害な応答を誘出したりすることなどを防ぐことであってもよい。第2および第3の機能は、液体環境中のナノ粒子だけでなく気体系中のナノ粒子にも適用され得ることが理解されるべきである。
【0029】
本発明のさまざまな好ましい実施形態において、安定化部分は、イオン化可能な基またはイオン化された基を有する1つまたはそれ以上のポリマーを含む。イオン化可能な部分または基とは、溶液状態を調整することによって帯電させることができるあらゆる化学官能基のことであり、一方イオン化された部分とは、溶液状態に関係なく帯電される化学官能基を示す。イオン化可能な部分には、放射線の使用によって、または静電磁場の使用によって帯電させることができるあらゆる化学官能基も含まれる。イオン化された、またはイオン化可能な部分または基は、カチオンまたはアニオンのいずれであってもよく、通常のポリマーの場合のように鎖全体に沿って連続的であってもよいし、ブロックポリマーの場合のように異なる官能基を含有するブロックによって中断されていてもよい。
【0030】
さまざまな実施形態において好適なポリマー安定剤の例は、高分子電解質、たとえばポリ(アクリル酸)、ポリ(スチレンスルホン酸塩)、ポリ(ジアリルジメチルアンモニウム塩化物)、ポリ(アリルアミン塩酸塩)(poly(allylamine hydrochloride):PAH)などを含むがそれらに限定されない。吸着質の好適な例は、同様の高分子電解質を含む。吸着質を使用するさまざまな好ましい実施形態において、ポリマー安定剤は吸着質部分よりも分子量が大きい。
【0031】
さまざまな実施形態において、好ましいカチオン基はアミノ基であり、好ましいアニオン基はカルボン酸、スルホン酸、リン酸塩などである。カチオンポリマーに対する例は、ポリ(アリルアミン)、ポリ(エチレンイミン)、ポリ(ジアリルジメチルアンモニウム塩化物)、ポリ(アルギニン)、キトサン、カチオン性の折り畳み可能なタンパク質、ポリ(メタクリルアミドプロピルトリメチルアンモニウム塩化物)およびポリ(リジン)を含むがそれらに限定されない。アニオンポリマーに対する例は、ポリ(アクリル酸)、ポリ(スチレンスルホン酸)、ポリ(グルタミン酸)、ポリ(メタクリル酸)、ポリ(アスパラギン酸)、核酸、アニオン性の折り畳み可能なタンパク質、ポリ(アネトールスルホン酸)、セルロース、ポリ(マレイン酸)、ポリ(ビニルリン酸)などを含むがそれらに限定されない。ブロックポリマーは、異なる官能基を有するポリマーのブロックでできている。ブロックポリマーは、上述のアニオンおよびカチオンポリマーのいずれか、ならびにブロックポリマーに特定の望ましい特性を与える別のポリマーのブロックでできていてもよい。
【0032】
E.ナノ粒子組成物の形成および安定剤層の変更
本発明のさまざまな好ましい実施形態において、本発明のポリマー安定化ナノ粒子組成物は、好適な溶剤中で、ナノ粒子またはナノ粒子前駆物質部分に関する安定剤部分の折り畳みによって生成される。多様な溶剤を用いて、本発明で用いる溶液を形成できる。さまざまな実施形態において、溶液は好ましくは水溶液である。
【0033】
本発明の好ましい実施形態においては、選択された安定剤部分を好適な溶剤に溶解することによって、安定剤の溶液を形成する。溶剤は水、有機溶剤またはこうした溶剤の2つもしくはそれ以上の混合物であってもよい。この溶液に折り畳み剤を加えることによって、ナノ粒子またはナノ粒子前駆物質に関する安定剤の折り畳みが誘導される。折り畳み剤自体がナノ粒子またはナノ粒子前駆物質であってもよい。たとえば、ナノ粒子またはナノ粒子前駆物質は、水溶性の無機塩であってもよく、この水溶性無機塩はMの形であり、ここでMは電荷+yを有する周期表のグループIからIVに属する金属カチオンであり、Aは電荷−xを有するMの対イオンまたはその組合せである。
【0034】
本発明のさまざまな好ましい実施形態は、折り畳まれた安定剤内のナノ粒子またはナノ粒子前駆物質の沈殿形成を誘導するイオンの添加による複合ナノ粒子の形成を含み、安定剤は分子内および/または分子間で架橋される。本明細書において用いられる、安定剤層を有するナノ粒子またはナノ粒子前駆物質の「沈殿」とは、溶液の溶剤に実質的に不溶性の化合物に対するイオンの変更を示す。
【0035】
折り畳み剤は通常は水溶性の無機塩であり、最も好ましくは金属カチオンおよび対応するアニオンを含有するものである。折り畳み剤の例は、Cd(NO、Zn(NO、Cu(SO)、Pb(NO、Pb(CHCOO)、Ag(NO)、Mn(SO)、Ni(NOを含むがそれらに限定されない。
【0036】
さまざまな技術を用いて、ナノ粒子またはナノ粒子前駆物質の周囲に安定剤を折り畳むことができる。たとえば、さまざまな実施形態において、異なる溶剤、イオン種(例、塩)またはそれらの組合せなどの折り畳み剤が用いられてもよい。さまざまな実施形態においては、ナノ粒子またはナノ粒子前駆物質自体が折り畳み剤として働くことが好ましい。複数の折り畳み剤が用いられてもよい。
【0037】
さまざまな実施形態においては、安定剤層の折り畳まれた立体構造を保持するために、ポリマーをγ放射またはUV放射に露出することによって、折り畳まれた安定剤の架橋を得る。好ましくは、UV放射はUVレーザー放射またはUVアークランプ放射である。さまざまな実施形態において、分子内架橋は、たとえばホモ二官能性架橋剤によるカルボジイミド化学作用などによって化学的に生成される。
【0038】
好ましい実施形態において、ポリマー安定剤部分は少なくとも部分的に架橋されることによって、ナノ粒子組成物の好ましい可溶性および非凝集性の特性が維持される。さまざまな実施形態において、安定剤層は分子間架橋によって安定化されることによってゲルを形成する。
【0039】
1.全般的な架橋
ポリマー安定剤は、化学的または物理的架橋を受けやすいように選択されることが好ましい。さまざまな実施形態において、安定剤のSCEに対する透過性の制御、たとえば安定剤層の変更などは、安定化ポリマーの架橋の程度を制御することによって達成される。たとえば、化学的架橋の程度を増やすことによって、安定剤のSCEに対する透過性を減少させることができる。
【0040】
たとえば以下のものなどの、多様な手段を用いて安定剤層を架橋できる:不飽和結合を含有するペンダント基のラジカル反応を通じた化学的手段;安定剤部分の官能基と反応できる多官能基を有する分子の使用を通じた手段;高エネルギー放射、たとえばガンマ放射などを通じた手段。
【0041】
架橋は、架橋剤として多座配位性分子を導入することを通じた化学的手段を通じて達成できる。これらの分子は、安定剤部分の官能基と共有結合を形成できる複数の官能基を含有する。これらの分子は直鎖、分岐鎖、またはデンドリマーであってもよい。たとえば、複数のアミン基を含有する分子、たとえば2,2’−エチレンジオキシジエチルアミンなどは、ポリ(アクリル酸)の分子内架橋をもたらすことができる。この場合の架橋反応は、典型的にアミド結合形成のために用いられる活性化剤、たとえばカルボジイミドなどの添加によって促進できる。
【0042】
化学処理を行なって安定剤層を誘導体化することによって、イオン化可能な基の画分を、フリーラジカル反応を通じて架橋できる基に転換してもよい。一例は、ポリ(アクリル酸)のカルボン酸基のいくつかをアリルエステルに転換することである。次いでこのアリル基を反応させて、ラジカル化学作用を通じて分子内結合を形成してもよい。
【0043】
照射による架橋は、折り畳まれた安定剤の溶液を電磁放射線源に露出することによってもたらされてもよい。放射線源は、たとえばエキシマレーザー、水銀アークランプ、発光ダイオード、UV殺菌ランプまたはガンマ線などであってもよい。この明細書の目的に対しては、照射などの手段による架橋は「物理的架橋」と呼ばれる。
【0044】
化学的架橋の程度は、多座配位性分子、活性化剤、またはその他の反応基の相対濃度を制御することによって制御できる。物理的架橋の程度は、ポリマー安定化ナノ粒子が露出される放射線の用量、波長、またはタイプを制御することによって制御できる。
【0045】
2.安定化層の変更
さまざまな局面において、本発明は、安定剤の特性を変更することによって、さまざまな実施形態において、材料のナノ粒子環境へのおよび/またはそこからの、ナノ粒子表面へのおよび/またはそこからの、ならびにその逆の特定の所望の輸送特性を有する安定剤を有するナノ粒子組成物を生成できる方法も提供する。
【0046】
さまざまな好ましい実施形態において、安定剤層を変更するステップは、ナノ粒子またはナノ粒子前駆物質に関する安定剤部分の折り畳みの後だが安定剤層の架橋よりも前に;実質的に安定剤層の架橋の間または架橋と同時に;安定剤層の架橋の後に;または安定剤層の架橋の前、間、同時および後のうちの1つもしくはそれ以上の組合せにおいて起こる。
【0047】
さまざまな実施形態において、安定剤層の透過性および/またはその他の特性の選択は、安定剤部分の分子内および/または分子間架橋の程度を選択することによって与えられる。図1は、ナノ粒子(NP)またはナノ粒子前駆物質および安定剤部分層(104)を含むナノ粒子組成物(102)を概略的に示す。図1は、安定化部分の分子内架橋(106)の程度を増加させる(状況A)と、安定剤層のSCE(108)に対する透過性が減少するのに対し、分子内架橋の程度を減少させる(状況B)と層の透過性が増加することを例示している。
【0048】
本発明のさまざまな実施形態において、ポリマー安定化ナノ粒子は好適な溶剤中に与えられる。ポリマー安定剤部分は、溶液の状態、たとえばpH、温度、溶剤、イオン強度などに対する感受性のある三次元構造を有するように選択される。こうしたポリマーの非限定的な例には、イオン化可能な基を有するポリマーがあり、これらのイオン化可能な基の間の相互作用によってポリマーの三次元構造を制御できる。こうした実施形態のさまざまなバージョンにおいては、溶液状態の変化を用いて三次元構造を制御することを通じて、安定剤のSCEに対する透過性の制御を達成できる。好ましい実施形態において、ポリマー安定剤部分は少なくとも部分的に架橋されることによって、ナノ粒子組成物の好ましい可溶性および非凝集性の特性が維持される。
【0049】
イオン化ポリマーまたはイオン化可能なポリマーの三次元構造の変化は、たとえばpH、温度、溶剤、イオン強度などの変化を用いることなどによってもたらされてもよい。通常溶液中で、高電荷密度においては、たとえば安定剤ポリマーの「モノマー」単位が完全に、または高度に帯電されるとき、同様に帯電したモノマー単位間の静電反発によって、伸長した立体構造がとられる。塩の添加またはpHの変更によってポリマーの電荷密度を減少させることができるが、このとき伸長したポリマー鎖の折り畳まれた立体構造への遷移がもたらされ得る。ポリマーが溶液と自由に相互作用できずに非伸長の立体構造であるとき、ポリマーの電荷密度の変更はポリマーの膨潤または収縮をもたらし得る。たとえば、ポリマーが折り畳まれた立体構造を形成した後に化学的または物理的に内部架橋されたときなどには、たとえ高電荷密度においても非伸長の立体構造が起こり得る。たとえば、折り畳みの最初の原因が取除かれても、ポリマーはその基本的な折り畳まれた形を保持する可能性があるが、状態に依存してポリマーは膨潤または収縮し得る。これは、ポリマーが他のポリマーと外部的に架橋されて(分子間架橋)、たとえばゲルを形成するときにも起こり得る。(分子内および/または分子間架橋の両方による)安定剤層の架橋は、ポリマー系に実質的に柔軟性がない形を与え得る。1つまたはそれ以上の安定剤層が実質的に柔軟性がない形を有するとき、電荷密度の増加によって安定剤ポリマーのモノマー間の反発がもたらされ得る。このポリマーは伸長した立体構造をとることができないため、代わりに膨潤して、層の形は実質的に維持するが多孔性を増加させる。同様に、電荷密度の減少によってポリマーのモノマーの反発的相互作用が低減されて、安定剤層の収縮がもたらされ得る。
【0050】
ポリマー安定剤層の収縮または膨潤は、溶剤の状態を変えることによっても同様にもたらされ得る。たとえば、第1の溶剤を、ポリマーとの好ましい相互作用が減少するような第2の溶剤で置換すると、ポリマー安定剤の収縮が促進される。同様に、第1の溶剤を、ポリマーとの好ましい相互作用が増加するような第2の溶剤で置換すると、ポリマー安定剤の膨潤が促進される。これらの実施形態のさまざまなバージョンにおいて、好適な安定剤は、イオン化可能な基を有し、かつ異なる溶剤との相互作用が異なるポリマー安定剤を含む。さまざまな好ましい実施形態において、安定化ナノ粒子の好ましい可溶性および非凝集性の特性を維持するために、ポリマー安定剤は第1および第2の溶剤の両方に可溶性である。
【0051】
好適な溶剤系の例は、以下を含むがそれらに限定されない:水溶性ポリマー、ここで第1の溶剤は水性であり、第2の溶剤は水とエタノールとの組合せである;アルコール溶性ポリマー、ここで第1の溶剤は短鎖アルコールであり、第2の溶剤はより長鎖のアルコールなどである。
【0052】
たとえばポリマーの膨潤または収縮などによるポリマー安定剤の三次元構造の変更を用いて、SCEに対するポリマー安定剤の透過性を変更できる。たとえば図2は、ナノ粒子(NP)またはナノ粒子前駆物質および安定剤部分層(204)を含むナノ粒子組成物(202)を概略的に示す。図2は、層の安定化部分(204)と溶剤との好ましい相互作用が少ない(状況A)と、安定剤部分層の収縮(206)がもたらされて、SCE(208)に対する透過性が低減し得ることを例示している。安定化部分と溶剤とのより多くの好ましい相互作用を有する組成物(状況B)では安定剤部分層の膨張(210)がもたらされて、SCE(208)に対する透過性が増加する。
【0053】
安定剤を変更してそのSCEに対する透過性を変えるための好適な手段は、安定化部分を変更して安定化部分のサイズを増加または減少させるための方法も含む。この手段は、たとえば付加的な化学的実体(例、吸着質)の物理的または化学的な吸収または脱着などを含んでもよく、この付加的な化学的実体はポリマー、リガンド、配位複合体、またはそれらの組合せであってもよい。この手段は、吸着または脱着プロセスを助けるための化学反応をさらに含んでもよい。たとえば、さまざまな実施形態において、安定化部分はさらに機能化されることによって、さらに吸着される種との適合性を改善する。さまざまな実施形態において、この吸着または脱着プロセスは、安定化ナノ粒子の生成後、安定化ナノ粒子の生成中、またはその両方において起こる。
【0054】
たとえば、さまざまな実施形態において、ポリマー安定化ナノ粒子が合成されているときに、ポリマー安定化ナノ粒子に吸着質部分が加えられる。さまざまな好ましい実施形態において、ポリマー安定剤はイオン化可能な基を有するポリマー、たとえば高分子電解質などであり、ナノ粒子はこの高分子電解質の折り畳み遷移を用いて形成される。吸着質部分は、折り畳み遷移の前、折り畳み遷移の後、またはその両方において溶液に加えられ、折り畳まれた高分子電解質と相互作用する。さまざまな好ましい実施形態において、吸着質はポリマー安定剤よりも低分子量の高分子電解質である。非限定的な例として、折り畳みおよび安定剤層を有するナノ粒子の形成の前に、高分子量PAAのポリマー溶液に低分子量PAAまたはPAHが加えられてもよい。低分子量の高分子電解質は、ポリマー安定剤と相互作用してSCEに対する安定剤層の透過性を減少させることができる。
【0055】
本発明のさまざまな実施形態において、ポリマー安定化ナノ粒子は好適な溶剤中に与えられる。ポリマー安定化ナノ粒子を吸着質部分で後処理することによって、より厚い、またはより密なポリマー−吸着質複合安定剤層がもたらされる。この吸着質はポリマー安定剤に化学的および/または物理的に吸着されてもよく、たとえば吸着質はポリマー安定剤に共有結合されるか、物理吸着されるなどしてもよい。ポリマー−吸着質複合安定剤は、SCEに対する安定剤層の透過性を減少できる。
【0056】
さまざまな実施形態において、ポリマー安定化ナノ粒子の安定剤層は、ポリマー安定剤から脱着または切断され得る成分を含むことによって、SCEに対する透過性が増加した、立体的により厚みまたは密度が少ないポリマー安定剤層がもたらされる。
【0057】
たとえば、図3は、ナノ粒子(NP)またはナノ粒子前駆物質および安定剤部分層(304)を含むナノ粒子組成物(302)の変更を概略的に示す。たとえば機能化、吸着、吸収、切断などによる吸着質部分(306)の添加を用いて安定剤層を変更(状況A)して、吸着質を有さない実質的に同様の安定剤層(状況B)よりもSCE(308)に対する透過性を低減させることができる。
【0058】
さまざまな実施形態において、吸着質部分は、安定化ナノ粒子を相補的官能基を含有する他の分子と接合するために用いられ得る1つまたはそれ以上の官能基を有する。こうした分子の例は、タンパク質、リガンド、オリゴヌクレオチド、アプタマー、炭水化物、脂質、他のナノ粒子、親和性結合対(たとえば、抗原−抗体、DNA−タンパク質、DNA−DNA、DNA−RNA、ビオチン−アビジン、ハプテン−抗ハプテン、タンパク質−タンパク質、酵素−基質など)のあらゆるメンバー、およびそれらの組合せを含むがそれらに限定されない。
【0059】
さまざまな実施形態において、吸着質部分の官能基の少なくとも部分を変更して、たとえば接合などのために使用できる他の官能基に転換してもよい。たとえば、アミン基と潜在的チオール基とを含有するヘテロ二官能性分子を、アミド結合形成を通じてポリ(アクリル酸)吸着ナノ粒子と反応させることによって、カルボン酸をチオール基に転換してもよい。このチオール基は、たとえばチオール反応基を含有する他の分子への接合などに用いられてもよい。
【0060】
さまざまな実施形態において、ポリマー−吸着質安定剤層の厚さまたは密度を変更することに加えて、吸着質は、ポリマー−吸着質安定剤の化学的特性を変更できる。さまざまな実施形態においては、このことを用いて、ポリマー−吸着質安定剤の厚さまたは密度の変化によってもたらされるSCEに対する安定剤層の透過性の変化を増強するかまたは遅らせてもよい。たとえば、ポリマー安定剤単独とは異なる正味電荷を有するポリマー−吸着質安定剤は、正味電荷を変更することによって、帯電したSCEに対する安定剤層の透過性を変更するために用いられてもよい。
【0061】
さまざまな好ましい局面において、安定剤層は1つまたはそれ以上の二重層からなる。たとえば、さまざまな好ましい実施形態において、ポリマー安定化ナノ粒子は好適な溶剤中に与えられる。ポリマー安定剤はイオン化可能な基を有する1つまたはそれ以上のポリマー部分であり、イオン化可能な基の少なくともいくつかは部分的または完全にイオン化されている。イオン化された基の存在は、ポリマー安定剤にたとえば正または負の正味電荷を与える。反対の電荷を有するポリマーまたはその他の吸着質を加えることによって、最初のポリマー安定剤層への吸着質の吸着をもたらすことができ、その結果ポリマー−吸着質安定剤が得られる。このプロセスをいわゆる「多層(layer−by−layer)」のやり方で続けて、反対の電荷の吸着質の層を交互に加えてもよい。反対の電荷の、後で加えられる一対の部分(例、吸着質、安定剤など)は、本明細書において二重層と呼ばれる。
【0062】
本発明のさまざまな実施形態において、安定剤部分の個々の層および吸着したポリマー安定化層は、放射を用いて、化学的に、または加熱によって、ともに架橋できる。UVランプ、ガンマ照射、粒子状放射などの形の高エネルギー放射を用いて、架橋プロセスに関与するフリーラジカルを生成できる。さまざまな実施形態においては、EDCなどの二官能リガンドを用いて、隣接する層からのカルボキシレート基をともに共有結合させることができる。さまざまな実施形態においては、加熱を用いて安定化ポリマーの2つの層の間に架橋を生成できる。このプロセスの例は、第1の層がカルボキシレート基を含有し、第2の層がアミン基を含有する場合であり、加熱によってこの2層間のアミド共有結合の形成が促進される。
【0063】
たとえば、図4は「多層」集合のさまざまな実施形態を例示する。ナノ粒子(NP)またはナノ粒子前駆物質、および正味電荷を有する安定剤部分層(404)を含むナノ粒子組成物(402)が、反対の正味電荷を有する別の安定剤部分または吸着質(406)と接触して(ステップ1)、新たなナノ粒子組成物(408)を形成する。このステップは繰り返されてもよく、進行部分(406)と反対の正味電荷の安定剤部分または吸着質部分が加えられる(410)ことによって、安定化ナノ粒子(402)上に付加的な層(例、高分子電解質の完全な、または部分的な二重層)が集合する。
【0064】
F.透過性
安定剤層の透過性は、いくつかの方法によって確認できる。たとえば、安定化ナノ粒子をエッチング液(例、CdSに対するHCl)に加えて溶解速度を測定してもよく、この溶解速度はH+が入ってCdが出る速度に比例し、この速度はたとえばCdSの蛍光ピークの強度および位置を見ることなどによってモニタできる。別の方法は、たとえば生物学的利用率の研究などのように、金属ナノ粒子が安定化ナノ粒子から溶液中にカチオン金属として(すなわち安定剤層の外側に)溶解/浸出する速度を測定するステップを含む。別のアプローチは、ナノ粒子またはナノ粒子前駆物質の特性を不活性化する化合物の存在下で、安定剤部分の折り畳みおよび/または変更の際のナノ粒子またはナノ粒子前駆物質の特性をモニタするもので、たとえば、CdS蛍光の不活性化物質であるEDTAの存在下でCdS蛍光をモニタすることなどである。
【0065】
G.触媒支持
さまざまな局面において、本発明は、基材によって支持された安定化ナノ粒子を提供する。さまざまな実施形態において、支持され安定化されたナノ粒子を、たとえば支持されたナノ粒子が気体および/または液体媒介性のSCEと相互作用するような異種プロセス、たとえば異種触媒作用などに使用できる。たとえば、さまざまな実施形態においては、気体および/または液体媒介性のSCEの触媒のために、安定化ナノ粒子は基材(例、活性炭素)の上、メソポーラス材料の細孔の表面上、またはそれらの組合せの上に支持される。メソポーラス材料の例は、ゼオライト材料、アルミノケイ酸塩、粘土、およびその他の多孔性ケイ酸塩を含むがそれらに限定されない。
【0066】
多様な基材を支持として用いることができ、それには安定化されたナノ粒子を固定できるあらゆる固相材料が含まれる。基材材料の例は、活性炭素、メソポーラス材料、ゼオライト、有機ポリマー、無機表面、たとえばガラス、制御細孔ガラス、シリカ、金属、合金など、およびそれらの組合せを含むがそれらに限定されない。支持はさまざまな形および形要素を有してもよく、それはビーズ、球体、粒子、顆粒、ゲル、膜、表面を含むがそれらに限定されない。表面は、平面か、実質的に平面か、または非平面を含むがそれらに限定されないさまざまな形であってもよい。支持は多孔性か、非多孔性か、またはその両方の組合せであってもよく、膨潤性および/または非膨潤性の特徴を有してもよい。
【0067】
さまざまな好ましい実施形態において、本明細書のたとえばセクションFに記載されるような「多層」集合プロセスを用いて、支持され安定化されたナノ粒子を形作ることができる。たとえば、さまざまな好ましい実施形態において、ポリマー安定化ナノ粒子は好適な溶剤中に与えられる。ポリマー安定剤はイオン化可能な基を有する1つまたはそれ以上のポリマー部分を含み、イオン化可能な基の少なくともいくつかは部分的または完全にイオン化されている。イオン化された基の存在は、ポリマー安定剤にたとえば正または負の正味電荷を与えることができる。反対の性質の正味表面電荷を有する基材をこのナノ粒子の溶液に露出させてもよく、その結果表面へのナノ粒子の吸収がもたらされ得る。反対の電荷を有するポリマー、安定化ナノ粒子、裸のナノ粒子、またはその他の吸着質を加えることによって、最初の安定化ナノ粒子層への吸着質の吸着をもたらすことができる。このプロセスをいわゆる「多層」のやり方で続けて、反対の電荷の吸着質の層を交互に加えてもよい。対の一方の構成要素は正の正味電荷を有し、他方は負の正味電荷を有するような一対の部分(例、吸着質、安定剤など)は、本明細書においてまとめて二重層と呼ばれてもよい。
【0068】
さまざまな実施形態において、各二重層は、その一方および/または両方の層に適切な電荷の安定化ナノ粒子を含んでいてもよく、それを用いて、たとえば積層された基材中の安定化ナノ粒子の負荷を変更してもよい。さまざまな実施形態において、二重層の1つまたはそれ以上は、たとえば積層された基材におけるナノ粒子の負荷を減少させるために、ナノ粒子を含まないか、および/または実質的に含まない。
【0069】
たとえばpH、イオン強度、溶剤、濃度などの沈着の際の溶液状態を変えることなどによって、積層された基材の多孔性を変更できる。多孔性を増加させると積層基材を通る材料の拡散の改善を容易にするのに対し、多孔性を減少させると、たとえば配位およびバリア効果の強度を増すことができる。
【0070】
さまざまな実施形態において、積層基材には、たとえば金属、金属合金、酸化物など、特定の触媒活性を有する安定化ナノ粒子が装填される。さまざまな実施形態において、安定剤はSCEに対する増加または減少した多孔性を有する。
【0071】
さまざまな実施形態において、ナノ粒子を含む積層基材は、炉の中で焼結されることによって、ナノ粒子の相互接続性を高めたり、ならびに/または安定剤および/もしくはその他の吸着質部分を燃焼させたりする。その結果、たとえば少なくとも1つのタイプのナノ粒子を含む多孔性基材などが得られてもよい。さまざまな実施形態において、この多孔性基材は触媒として用いられる。さまざまな実施形態において、多孔性基材は酸化物を含む。さまざまな実施形態において、多孔性基材は、触媒反応においてたとえばルイス塩基として作用し得る多孔性酸化物を含む。
【実施例】
【0072】
本発明のさまざまな局面および実施形態は、以下の実施例に照らしてさらに理解されるであろう。これらの実施例は網羅的ではなく、あらゆる態様で本発明の範囲を制限するものと解釈されるべきではない。
【0073】
実施例1:PAAに封入されたCdTe−CdSナノ粒子の調製
適切な量のナトリウム亜テルル酸塩を計量して脱イオン水(ddHO)に溶解することによって、10mMのナトリウム亜テルル酸塩(NaTeO)溶液を調製した。加熱マントルを>100℃に加熱した。50mLのCd−PAA溶液(1.67mMのCd、254nmの光で1時間照射)を、1首の丸底フラスコ(round bottom flask:rbf)に入れた。クエン酸三ナトリウム(50mg)および水素化ホウ素ナトリウム(NaBH、25mg)を1つの部分として、撹拌されたCd−PAA溶液に加えた。上述において調製された1.25mLのNaTeO溶液をCd−PAA溶液に加えた。rbf上にコンデンサを置いて、反応混合物を加熱して加熱マントル中を還流させ、4時間還流させた。一方、別の加熱マントルを50℃に予熱した。4時間の還流後、反応フラスコを加熱マントルから取出して室温まで冷却した。一方で、適切な量のチオアセタミドを計量して脱イオン水(ddHO)に溶解することによって、チオアセタミドの100mM溶液を調製した。緑で放射する量子ドットのために、33μLのチオアセタミド溶液を反応混合物に加えた。黄色の量子ドットに対しては、150μLのチオアセタミドを用いた。オレンジの量子ドットに対しては、675μLのチオアセタミド溶液を用いた。チオアセタミドを加えた後、フラスコを50℃に予熱した加熱マントルに入れた。50℃にて16時間反応させた後、室温まで冷却した。黄色およびオレンジの量子ドットの蛍光をそれぞれ図10および図11に示す。
【0074】
実施例2:PAA/PSSに封入されたCdTe−CdSナノ粒子の調製
適切な量のナトリウム亜テルル酸塩を計量して脱イオン水(ddHO)に溶解することによって、10mMのナトリウム亜テルル酸塩(NaTeO)溶液を調製した。加熱マントルを>100℃に加熱した。50mLのCd−PAA/PSS(PSSは重量でPAAの5%または25%)溶液(1.67mMのCd、254nmの光で1時間照射)を、1首の丸底フラスコ(rbf)に入れた。クエン酸三ナトリウム(50mg)および水素化ホウ素ナトリウム(NaBH、25mg)を1つの部分として、撹拌されたCd−PAA溶液に加えた。上述において調製された1.25mLのNaTeO溶液をCd−PAA溶液に加えた。rbf上にコンデンサを置いて、反応混合物を加熱して加熱マントル中を還流させ、4時間還流させた。一方、別の加熱マントルを50℃に予熱した。4時間の還流後、反応フラスコを加熱マントルから取出して室温まで冷却した。一方で、適切な量のチオアセタミドを計量して脱イオン水(ddHO)に溶解することによって、チオアセタミドの100mM溶液を調製した。緑で放射する量子ドットのために、33μLのチオアセタミド溶液を反応混合物に加えた。黄色の量子ドットに対しては、150μLのチオアセタミドを用いた。オレンジの量子ドットに対しては、675μLのチオアセタミド溶液を用いた。チオアセタミドを加えた後、フラスコを50℃に予熱した加熱マントルに入れた。50℃にて16時間反応させた後、室温まで冷却した。5%および25%のPSSを有する黄色およびオレンジの量子ドットの蛍光をそれぞれ図10および図11に示す。
【0075】
実施例3:高分子電解質の二重層で被覆されたCdTe−CdSナノ粒子の調製
PAAおよびPAHの1、2または3つの二重層で被覆された量子ドットのサンプルを調製した。実施例2に従ってPAA安定剤を有する緑のCdTe−CdS量子ドットを調製し、エタノールによる沈殿によって精製し、(固体ベースで)元の濃度の16倍に再構成した。次いでこれを脱イオン蒸留水(deionized,distilled water:ddH2O)で333倍希釈した。この溶液100μLに、PAH(MW=15,000、40μL、0.03mg/mL)およびPAA−Na(MW=2,100、5μL、0.3mg/mL)の溶液を交互に加えた。各添加の後に混合物をオービタルシェーカーの上に5分間置き、次いで次の溶液を加えた。
【0076】
1つの二重層を有する(すなわちPAHおよびPAA−Naの1回の交互添加後の)CdTe−CdSナノ粒子に対しては、PAHおよびPAA−Naの1回の交互添加の後に溶液をシェーカーから取出して、90μLの脱イオン蒸留水を加えた。2つの二重層を有するCdTe−CdSナノ粒子に対しては、PAHおよびPAA−Naの2回の交互添加の後に溶液をシェーカーから取出して、45μLのddH2Oを加えた。3つの二重層を有するCdTe−CdSナノ粒子に対しては、PAHおよびPAA−Naの3回の交互添加の後に溶液をシェーカーから取出して使用した。
【0077】
実施例4:CdTe−CdS量子ドット光ルミネセンスに対する高分子電解質安定剤の影響
実施例1の変更バージョンを用いて、量子ドットの2組のサンプルを調製した。この場合には、実施例1に従って緑のCdTe−CdS量子ドットを調製し、10倍希釈した。加えたPAAおよびPAA−Naの量も変更した。すなわち各二重層は、それぞれ0.5mg/mLおよび0.05mg/mLの濃度の各溶液の10μLの添加を含んだ。
【0078】
量子ドットの1つの組は高強度のUV放射(254nm)に30分間露出されたのに対し、別の組はアルミ箔テープで覆われたままだった。光ルミネセンススペクトルを図5に示す。対照として、PAAおよびPAA−Naの二重層を有さない量子ドットの2組の溶液を調製して10倍希釈した;1つの組は高強度のUV放射(254nm)に30分間露出されたのに対し、別の組はアルミ箔テープで覆われたままだった。光ルミネセンススペクトルを図6に示す。
【0079】
実施例5:CdS量子ドット光ルミネセンスに対する架橋の影響
等体積の水性2mg/mLポリアクリル酸(120万MW、Sigma)と3.3mMのCd(NOとを混合することによって、Cd2+/PAAを調製した。簡単に述べると、10.0mLのポリアクリル酸溶液を10mLの水とともにプラスチックビーカに入れ、磁気撹拌バーで強く撹拌した。この溶液に、90mLのポリアクリル酸溶液を90mlのCd(NOとともに、強い撹拌のもとで5ml/分の速度で滴状に加えた。その結果得られた溶液に、さらに10mlのCd(NOを、強い撹拌のもとで2〜3ml/分の速度で滴状に加えた。その結果得られた溶液は透明な液体であった。
【0080】
UV殺菌ランプの下でCd2+/PAAを架橋し、異なる架橋時間のアリコートを取った(0分、30分、1時間、1.5時間、および2時間)。(異なる時間架橋された)Cd2+/PAAを用いてCdS/PAAを作成した。すなわち、180μLの2.8mMのNaS溶液を500μLのCd2+/PAA溶液に加えた。異なる時間(0時間、30分、1時間、および2時間)架橋されたCd2+/PAAを用いて形成されたCdS/PAAに対して、結果的に得られたUV可視スペクトルおよび発光スペクトルを図7に示す。
【0081】
実施例6:ZnOナノ粒子の光触媒活性
100μLのメチレンブルー溶液(0.1mM)を、PAA安定剤(PAA濃度に基づいて0.5mg/mL)を有する100μLのZnOナノ粒子を含有する2つの別個の溶液に加えた。ZnOナノ粒子は、GohらのPCT出願CD2006/001686号に記載されるとおりに調製した。100μLのddH2Oおよび100μLのメチレンブルー溶液によって、2つの対照溶液も作成した。これらの溶液を暗所に置いた。
【0082】
3.5時間後、ZnOナノ粒子を有する1つの溶液およびZnOナノ粒子を有さない1つの溶液をUV放射(302nm)に露出し、それ以外の溶液はアルミ箔で覆ったままにした。5、30、60、および189分後に吸光度測定を行ない、その結果を図8に示す。ZnOナノ粒子が存在しないときには吸光度の減少はほとんど観察されず、ZnOが存在するときにはメチレンブルーに対する破壊の促進が示された。
【0083】
実施例7:安定化CdTe−CdSナノ粒子に対する非結合形のカドミウム含有量の測定
実施例1に記載されるとおりに、PAAおよびPAHの1、2および3つの二重層を有する緑のCdTe−CdSナノ粒子を調製した。135μLから100μLの希釈CdTe−CdS溶液を加えることによって、0個の二重層を有するCdTe−CdSナノ粒子の対照溶液も調製した。添加の合間にオービタルシェーカー上で5分間振とうしながら、100μLのddH2Oに40μLのPAHおよび40μLのPAA−Naを交互に3回加えることによって、高分子電解質の対照溶液も調製した。
【0084】
2つの対照溶液および1、2および3つの二重層を有するCdTe−CdSの各々30μLを、165μLのddH2Oで個別に希釈した。調製された各溶液のカドミウム含有量を、Measure iT Lead and Cadmium Assayキット(Invitrogen、カタログ番号M36353)を用いて定めた。その結果を図9に示しており、ここでは高分子電解質の二重層が加えられると測定Cd濃度に明らかな変化が観察される。
【0085】
付加的な実施例:
この出願に引用される、特許、特許出願、記事、本、学術論文、学位論文およびウェブページを含むすべての文献および類似の材料は、こうした文献および類似の材料の形式に関らず、その全体が明白に引用により援用される。援用された文献および類似の材料の1つまたはそれ以上が、定義される用語、用語の用法、記載される技術などを含めてこの出願と異なるかまたは矛盾する場合には、この出願が優先されるものとする。
【0086】
本明細書において用いられるセクション見出しは組織化の目的のみに対するものであって、いかなる態様でも記載される内容を制限するものと解釈されるべきではない。
【0087】
本発明をさまざまな実施形態および実施例に関連して説明したが、本発明がこうした実施形態または実施例に制限されることは意図されない。逆に、本発明は、当業者に認識されるとおりのさまざまな代替形、変更および同等物を包含する。したがって、説明、方法および図面は、その旨が述べられていない限り記載される構成要素のオーダーに制限されると読取られるべきではない。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
安定化された複合ナノ粒子を生成する方法であって、
ナノ粒子および複数の高分子電解質安定化部分を含む溶液を与えるステップと;
前記溶液に折り畳み剤を加えて、前記ナノ粒子に関して前記複数の高分子電解質安定化部分を折り畳んで複合ナノ粒子を形成するステップと;
前記溶液中の前記複数の高分子電解質安定化部分を変更してその輸送特性を変えるステップと
を含む、方法。
【請求項2】
前記ポリマー安定化部分を架橋するステップをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記加えるステップは、前記溶液に水溶性無機塩を加えることによって前記ポリマー安定化部分を折り畳むステップを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記与えるステップは、約1nmから約100nmの範囲の平均直径を有するナノ粒子を与えるステップを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記変更するステップは、溶液のpHを変えるステップ、溶剤を変えるステップ、塩を加えるステップ、前記溶液の温度を変えるステップ、付加的な化学的部分を前記ポリマーに吸着させるステップ、および化学的部分を前記ポリマーに脱着させるステップのうちの1つを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記架橋するステップは、電磁放射線への露出、化学的に誘導される架橋、または熱によって誘導される架橋のうちの1つを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記変更するステップは、前記ナノ粒子の環境と前記ナノ粒子の表面との間の前記輸送特性を変える、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記変更するステップは、前記ナノ粒子複合体の光学的特性を変える、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記変更するステップは、前記ナノ粒子複合体の蛍光収率を改善する、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記変更するステップは、前記ナノ粒子複合体の蛍光寿命を改善する、請求項8に記載の方法。
【請求項11】
前記変更するステップは、前記ナノ粒子複合体の発光スペクトルを狭くする、請求項8に記載の方法。
【請求項12】
前記変更するステップは、前記ナノ粒子複合体の可溶性を変える、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
前記変更するステップは、前記ナノ粒子複合体の凝集を変える、請求項1に記載の方法。
【請求項14】
前記変更するステップは、特定の小さな化学的実体に関する前記安定化部分の透過性を変える、請求項1に記載の方法。
【請求項15】
前記変更するステップは、特定の小さな化学的実体に関する前記安定化部分の透過性を選択的に増加させ、特定の他の小さな化学的実体に関する前記安定化部分の前記透過性を減少させる、請求項1に記載の方法。
【請求項16】
前記変更するステップは、前記安定化部分層の厚さを変える、請求項1に記載の方法。
【請求項17】
前記変更するステップは、前記安定化部分層の密度を変える、請求項1に記載の方法。
【請求項18】
前記与えるステップは、イオン化可能なポリマー、イオン化されたポリマー、単一のポリマー分子、そのコポリマー、およびポリマー化合物の組合せのうちの1つを含むポリマー安定化部分を与えるステップを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項19】
前記与えるステップは、高分子電解質を含むポリマー安定化部分を与えるステップを含む、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記与えるステップは、ポリ(スチレンスルホン酸塩)、ポリ(ジアリルジメチルアンモニウム塩化物)、ポリ(アクリル酸)、ポリ(エチレンイミン)およびポリ(アリルアミン塩酸塩)のうちの1つを含むポリマー安定化部分を与えるステップを含む、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
安定化された複合ナノ粒子を生成する方法であって、
複数の高分子電解質を含む安定化部分層内に実質的に収容されたナノ粒子を与えるステップと;
前記安定化部分層を変更してその輸送特性を変えるステップと
を含む、方法。
【請求項22】
前記ポリマー安定化部分を架橋するステップをさらに含む、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
前記与えるステップは、安定化部分層内に実質的に収容された約1nmから約100nmの範囲の平均直径を有するナノ粒子を与えるステップを含む、請求項21に記載の方法。
【請求項24】
前記変更するステップは、溶液のpHを変えるステップ、前記溶剤を変えるステップ、塩を加えるステップ、前記溶液の温度を変えるステップ、付加的な化学的部分を前記ポリマーに吸着させるステップ、および化学的部分を前記ポリマーに脱着させるステップのうちの1つを含む、請求項21に記載の方法。
【請求項25】
前記架橋するステップは、電磁放射線への露出、化学的に誘導される架橋、または熱によって誘導される架橋のうちの1つを含む、請求項21に記載の方法。
【請求項26】
前記変更するステップは、前記ナノ粒子の環境と前記ナノ粒子の表面との間の前記輸送特性を変える、請求項21に記載の方法。
【請求項27】
前記変更するステップは、前記ナノ粒子複合体の光学的特性を変える、請求項21に記載の方法。
【請求項28】
前記変更するステップは、前記ナノ粒子複合体の蛍光収率を改善する、請求項27に記載の方法。
【請求項29】
前記変更するステップは、前記ナノ粒子複合体の蛍光寿命を改善する、請求項27に記載の方法。
【請求項30】
前記変更するステップは、前記ナノ粒子複合体の発光スペクトルを狭くする、請求項27に記載の方法。
【請求項31】
前記変更するステップは、前記ナノ粒子複合体の可溶性を変える、請求項21に記載の方法。
【請求項32】
前記変更するステップは、前記ナノ粒子複合体の凝集を変える、請求項21に記載の方法。
【請求項33】
前記変更するステップは、特定の小さな化学的実体に関する前記安定化部分の透過性を変える、請求項21に記載の方法。
【請求項34】
前記変更するステップは、特定の小さな化学的実体に関する前記安定化部分の透過性を選択的に増加させ、特定の他の小さな化学的実体に関する前記安定化部分の前記透過性を減少させる、請求項21に記載の方法。
【請求項35】
前記変更するステップは、前記安定化部分層の厚さを変える、請求項21に記載の方法。
【請求項36】
前記変更するステップは、前記安定化部分層の密度を変える、請求項21に記載の方法。
【請求項37】
前記与えるステップは、イオン化可能なポリマー、イオン化されたポリマー、単一のポリマー分子、そのコポリマー、およびポリマー化合物の組合せのうちの1つを含むポリマー安定化部分を与えるステップを含む、請求項21に記載の方法。
【請求項38】
前記与えるステップは、高分子電解質を含むポリマー安定化部分を与えるステップを含む、請求項37に記載の方法。
【請求項39】
前記与えるステップは、ポリ(スチレンスルホン酸塩)、ポリ(ジアリルジメチルアンモニウム塩化物)、ポリ(アクリル酸)、ポリ(エチレンイミン)およびポリ(アリルアミン塩酸塩)のうちの1つを含むポリマー安定化部分を与えるステップを含む、請求項38に記載の方法。
【請求項40】
約1nmから約100nmの範囲の平均直径を有するナノ粒子を含み、前記ナノ粒子は複数の高分子電解質安定化部分内に実質的に収容される、ナノ粒子複合体。
【請求項41】
1つまたはそれ以上の前記高分子電解質安定化部分は架橋される、請求項40に記載の複合ナノ粒子。
【請求項42】
前記架橋は、電磁放射線に誘導される架橋、化学的に誘導される架橋、または熱によって誘導される架橋のうちの1つによって達成される、請求項41に記載の複合ナノ粒子。
【請求項43】
前記ポリマー安定化部分層は、小さな化学的実体に対して多孔性である、請求項40に記載の複合ナノ粒子。
【請求項44】
前記小さな化学的実体は約1nmから約5nmの範囲の平均サイズを有する、請求項43に記載の複合ナノ粒子。
【請求項45】
前記ポリマー安定化部分層は、イオン化可能なポリマー、イオン化されたポリマー、単一のポリマー分子、そのコポリマー、およびポリマー化合物の組合せのうちの1つを含む、請求項40に記載の複合ナノ粒子。
【請求項46】
前記ポリマー安定化部分層は高分子電解質を含む、請求項45に記載の複合ナノ粒子。
【請求項47】
前記ポリマー安定化部分は、ポリ(スチレンスルホン酸塩)、ポリ(ジアリルジメチルアンモニウム塩化物)、ポリ(アクリル酸)、ポリ(エチレンイミン)およびポリ(アリルアミン塩酸塩)のうちの1つを含む、請求項46に記載の複合ナノ粒子。
【請求項48】
前記ポリマー安定化部分層は正味電荷を有する、請求項40に記載の複合ナノ粒子。
【請求項49】
基材によって支持され、前記基材上に安定化ナノ粒子層を形成する、請求項48に記載の複合ナノ粒子。
【請求項50】
前記基材の表面は正味電荷を有する、請求項49に記載の複合ナノ粒子。
【請求項51】
前記第1のナノ粒子複合体と反対の電荷極性を有する第2のナノ粒子複合体が前記安定化ナノ粒子層に吸着される、請求項49に記載の複合ナノ粒子。
【請求項52】
前記ナノ粒子および基材は焼結される、請求項49に記載のナノ粒子複合体。
【請求項53】
多層の安定化された複合ナノ粒子を生成する方法であって、
ナノ粒子および正味電荷を有する第1の高分子電解質安定化部分層を含む複合ナノ粒子を与えるステップと;
前記ナノ粒子複合体を、前記のポリマー安定化部分層と反対の電荷極性を有する第2の高分子電解質安定化部分および吸着質のうちの1つと接触させて、多層の安定化された複合ナノ粒子を形成するステップと
を含む、方法。
【請求項54】
電磁放射線への露出、化学的に誘導される架橋、または熱架橋のうちの1つを含む方法によってポリマー安定化部分層を架橋するステップをさらに含む、請求項53に記載の方法。
【請求項55】
ポリマー安定化部分層および吸着質のうちの1つを変更するステップをさらに含む、請求項53に記載の方法。
【請求項56】
前記変更するステップは、前記ナノ粒子の環境と前記ナノ粒子の表面との間の輸送特性を変更する、請求項55に記載の方法。
【請求項57】
前記変更するステップは、前記ナノ粒子複合体の光学的特性を変える、請求項55に記載の方法。
【請求項58】
前記変更するステップは、前記ナノ粒子複合体の蛍光収率を改善する、請求項57に記載の方法。
【請求項59】
前記変更するステップは、前記ナノ粒子複合体の蛍光寿命を改善する、請求項57に記載の方法。
【請求項60】
前記変更するステップは、前記ナノ粒子複合体の発光スペクトルを狭くする、請求項57に記載の方法。 前記変更するステップは、前記ナノ粒子複合体の前記可溶性を変える、請求項55に記載の方法。
【請求項61】
前記変更するステップは、前記ナノ粒子複合体の凝集を変える、請求項55に記載の方法。
【請求項62】
前記変更するステップは、特定の小さな化学的実体に関する前記安定化部分の透過性を変える、請求項55に記載の方法。
【請求項63】
前記変更するステップは、特定の小さな化学的実体に関する前記安定化部分の透過性を選択的に増加させ、特定の他の小さな化学的実体に関する前記安定化部分の前記透過性を減少させる、請求項55に記載の方法。
【請求項64】
前記変更するステップは、前記安定化部分層の厚さを変える、請求項55に記載の方法。
【請求項65】
前記変更するステップは、前記安定化部分層の密度を変える、請求項55に記載の方法。
【請求項66】
前記与えるステップは、イオン化可能なポリマー、イオン化されたポリマー、単一のポリマー分子、そのコポリマー、およびポリマー化合物の組合せのうちの1つを含むポリマー安定化部分層を与えるステップを含む、請求項53に記載の方法。
【請求項67】
前記与えるステップは、高分子電解質を含むポリマー安定化部分層を与えるステップを含む、請求項66に記載の方法。
【請求項68】
前記与えるステップは、ポリ(スチレンスルホン酸塩)、ポリ(ジアリルジメチルアンモニウム塩化物)、ポリ(アクリル酸)、ポリ(エチレンイミン)およびポリ(アリルアミン塩酸塩)のうちの1つを含むポリマー安定化部分層を与えるステップを含む、請求項67に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公表番号】特表2010−520312(P2010−520312A)
【公表日】平成22年6月10日(2010.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−548768(P2009−548768)
【出願日】平成20年2月15日(2008.2.15)
【国際出願番号】PCT/IB2008/000817
【国際公開番号】WO2008/099285
【国際公開日】平成20年8月21日(2008.8.21)
【出願人】(509227322)バイブ ナノ, インコーポレイテッド (3)
【Fターム(参考)】