説明

ナノ粒子

本発明の目的は、安全性が高く、造影と温熱療法とDDSを一度に行えることができ、かつ薬剤内包率が高いナノ粒子を提供すること。本発明は、表面に活性物質が固定化されている平均粒子粒径1〜500nmの無機ナノ粒子、及びポリマーから構成されるナノ粒子を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ライフサイエンス又は医療診断の分野において使用するためのナノ粒子に関する。より詳細には、本発明は、表面に活性物質が固定化されている無機ナノ粒子とポリマーとから構成されるナノ粒子に関する。
【背景技術】
【0002】
微粒子材料は、バイオテクノロジーにおいて幅広い利用が期待されている。特に近年、ナノテクノロジーの進展によって生み出されたナノ微粒子材料をバイオテクノロジーや医療に応用することが活発に検討され、研究成果も数多く報告されるようになってきている。微粒子材料の中でも、磁性微粒子材料は、バイオ領域において幅広く利用されてきている。例えば、抗体などが固定化されている磁性微粒子は免疫診断に利用されてきている。また、磁性微粒子表面にDNAを固定化して、mRNAや一本鎖DNAの分離、DNA結合タンパク質の分離等、遺伝子工学の広範な領域にも活用されている。さらに、磁気応答性粒子は、プロテオーム解析においても、その重要な柱の一つであるタンパク質相互作用解析において極めて有効である。
【0003】
上記粒子は、医療診断分野においても、MRI診断などの造影剤として、さらには癌の温熱治療法(ハイパーサーミア)などその有効性が示される。癌細胞は42.5℃以上に加温すると殺傷される(例えば、非特許文献1)。現行の温熱療法では、正常組織も腫瘍組織も区別なく加温するので、患者の負担を考慮して正常組織への影響があまりない温度である42.5℃付近までしか加温しない。しかし、加温する温度が高いほど癌細胞は死にやすいことは、自明である。したがって、もし、正常組織が加温されずに、腫瘍組織だけを特異的に加温することができれば、どのような種類の癌細胞であっても死滅させることが理論上可能となる。磁気応答性粒子であるマグネタイト(Fe3O4)を発熱体とする誘導加温型の温熱療法が開発され、現在までに様々な動物種(マウス、ラット、ハムスター、ウサギ)や癌種(脳腫瘍、皮膚癌、舌癌、乳癌、肝細胞癌、骨肉腫)で腫瘍の退縮に成功している(例えば、非特許文献2及び非特許文献3)。
【0004】
磁気応答性粒子は、その粒径がナノサイズと小さいため、従来使用されているミクロンサイズの磁性粒子やラテッテクスビーズに比べて、水溶液中での分散性および分子認識性が格段に向上する。その結果、従来法で使用されている磁性微粒子やラテックス担体などを置き換えるだけで、大幅な感度アップと測定時間の短縮が期待される。
【0005】
一方、薬剤送達システム(DDS)の分野では早くからナノ粒子への期待が強く、薬剤や遺伝子のキャリアーとしてナノ粒子が極めて有望である。抗癌剤の治療効率を向上させるには薬剤を癌細胞または癌病巣のみに作用させる、ターゲティングが要求されるが、上記ナノ粒子によれば、磁気の性質を利用して、非侵襲的に生体内である物質を誘導し、あるいは局所的に停滞させることが可能である。
【0006】
加藤らはマイトマイシンCとフェライト磁粉を封入した経約250μmのエチルセルロースマイクロカプセル(以下、FM-MMC-mc)を開発した。家兎下腿に移植したVX腫瘍に対する治療実験では、通常剤形のMMC投与と比較してFM-MMC-mcの磁気誘導群では著明な抗腫瘍効果がみられた。これは磁気で腫瘍部の微小動脈に集積したカプセルから、長時間にわたってMMCが周囲の腫瘍組織内に放出された結果である。この結果は、従来の方法では得られない強力なターゲティング療法が可能なことを強く示唆している(例えば、非特許文献4)。しかし、上記のFM-MMC-mcは、サイズが250μmと大きく、毛細血管などの微細な部位には到達できない。
【0007】
特許文献1には、ゲル体の少なくとも表層部に粒径5〜200nmの金属酸化物粒子が分散して存在することを特徴とする金属酸化物複合体が記載されている。特許文献2には、貴金属ナノ粒子含有天然高分子粉末が記載されている。特許文献3には、半導性材料または金属性材料を含む水分散性ナノ粒子が記載されている。これらは、活性物質(薬剤)を含んでいないためDDSとしての機能はない。
【0008】
特許文献4にはポリマー材料から作られるナノ粒子を用いた薬剤標的化システムが記載されている。特許文献5は、コア/シェル構造を有する医薬上または化粧上の活性物質のナノ粒子製剤が記載されている。特許文献6には、球状タンパク質粒子が記載されており、薬物を含有する組成物としての粒子サイズは1μm以上である。これらのシステム、製剤及び粒子は、磁気応答性粒子を含んでいないため、磁力によりナノ粒子を疾患部位に誘導することができない。
【0009】
また、特許文献7には、磁性金属酸化物でコーティングしたナノ粒子を調製するための方法が記載されている。特許文献8には、複数個の糖ナノ粒子リガンドと連結した金属または半導体原子が記載されている。
【0010】
【非特許文献1】Dewey,W.C.,Radiology.,123,463-474(1977)
【非特許文献2】Kobayashi.,T Jpn.J.Cancer Res.,89,463-469(1998)
【非特許文献3】Kobayashi.,T.,Melanoma Res.,13,129-135(2003)
【非特許文献4】加藤哲郎:マイクロカプセルの磁場誘導による抗癌剤の効果増強、癌と化学療法、8(5)、698-706、1981
【特許文献1】特開2000−256015号公報
【特許文献2】特開2004−244433号公報
【特許文献3】特表2004−517712号公報
【特許文献4】特表2001−502721号公報
【特許文献5】特表2002−531492号公報
【特許文献6】特表2005−500304号公報
【特許文献7】特表2002−517085号公報
【特許文献8】特表2004−511511号公報
【発明の開示】
【0011】
本発明は、安全性が高く、造影と温熱療法とDDSを一度に行えることができ、かつ薬剤内包率が高いナノ粒子を提供することを解決すべき課題とした。
【0012】
本発明者らは上記課題を解決するために鋭意検討した結果、表面に活性物質が固定化されている無機ナノ粒子と、タンパク質などのポリマーとを混合することによって上記課題を解決したナノ粒子を製造できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0013】
即ち、本発明によれば、表面に活性物質が固定化されている平均粒子粒径1〜500nmの無機ナノ粒子、及びポリマーから構成されるナノ粒子が提供される。
【0014】
好ましくは、無機ナノ粒子は磁性体ナノ粒子である。
好ましくは、無機ナノ粒子は酸化鉄、フェライト、酸化亜鉛、酸化チタン、シリカ、又はアルミナである。
好ましくは、表面にアミノ酸が固定化されている無機ナノ粒子の表面に、活性物質が物理吸着により固定化されている。
好ましくは、一般式:R−(OCH(R)CH−O−L−X
(式中、Rは、炭素鎖長1以上20以下のアルキル基あるいはアルケニル基、無置換又は炭素鎖長10以下のアルキル基若しくはアルコキシル基で置換されたフェニル基を表す;Rは、水素原子又はメチル基を表す;nは1以上20以下の整数を示し、Lは単結合、又は炭素数1〜10のアルキレン基を示し、Xはカルボン酸基、リン酸基、スルホン酸基又はホウ酸基を示す)で表される化合物で表面修飾されている無機ナノ粒子の表面にアミノ酸が固定化されており、さらにその表面に活性物質が物理吸着により固定化されている。
【0015】
好ましくは、本発明のナノ粒子は、平均粒子サイズ10〜1000nmを有する。
好ましくは、無機ナノ粒子は、平均粒子粒径1〜50nmを有する。
好ましくは、ポリマーに対して0.1〜100重量%の無機ナノ粒子を含む。
好ましくは、ポリマーに対して0.1〜100重量%の活性物質を含む。
【0016】
好ましくは、活性物質は、化粧品用成分、機能性食品用成分、又は医薬品成分である。
好ましくは、化粧品用成分が保湿剤、美白剤、又はアンチエイジング剤であり、機能性食品用成分がビタミン又は抗酸化剤であり、医薬品成分が制癌剤、抗アレルギー剤、抗血栓剤、又は抗炎症剤である。
【0017】
好ましくは、ポリマーは合成高分子、生分解性高分子、又は天然高分子である。
好ましくは、ポリマーはタンパク質である。
好ましくは、タンパク質はナノ粒子の形成中または形成後に架橋処理されている。
【0018】
好ましくは、タンパク質の重量に対して0.1〜100重量%の架橋剤を添加することによってタンパク質が架橋処理されている。
好ましくは、架橋剤は無機または有機の架橋剤、あるいは酵素などを用いることができる。無機または有機の架橋剤の具体例としては、クロム塩(クロム明ばん、酢酸クロムなど);カルシウム塩(塩化カルシウム、水酸化カルシウムなど);アルミニウム塩(塩化アルミニウム、水酸化アルミニウムなど);ジアルデヒド類(グルタルアルデヒドなど);カルボジイミド類(EDC,WSC、N-ヒドロキシ-5-ノルボルネン-2,3-ジカルボキシイミド(HONB)、N-ヒドロキシこはく酸イミド(HOSu)、ジシクロヘキシルカルボジイミド(DCC)など);N−ヒドロキシスクシイミド;オキシ塩化リンなどを挙げることができるが、これらに限定されるものではない。
酵素としては、タンパク質の架橋作用を有するものであれば特に限定されないが、好ましくはトランスグルタミナーゼを用いることができる。
好ましくは、タンパク質は有機溶媒中で架橋処理される。
【0019】
好ましくは、タンパク質は、リジン残基およびグルタミン残基を有する。
好ましくは、タンパク質はコラーゲン、ゼラチン、アルブミン、オバルブミン、カゼイン、トランスフェリン、フィブリン、フィブリノーゲン、又はこれらの混合物である。
好ましくは、タンパク質は酸処理ゼラチン又はアルブミンである。
【0020】
好ましくは、タンパク質は酸処理ゼラチンであり、ナノ粒子は、無機ナノ粒子及び酸処理ゼラチンから構成されるナノ粒子の形成中または形成後に、酸処理ゼラチンを酵素で架橋処理することにより調製される。
【0021】
好ましくは、本発明のナノ粒子は、下記の工程によって製造される。
(a)少なくとも1種の活性物質の溶液と無機ナノ粒子を混合することにより、無機ナノ粒子表面に活性物質を吸着させる工程;
(b)タンパク質を水性媒体に溶解させる工程;
(c)少なくとも1種の活性物質を吸着した無機ナノ粒子をタンパク質溶液と混合する工程;
(d)工程(c)で得た溶液を有機溶媒に注入する工程;及び
(e)架橋剤を添加してタンパク質を架橋する工程;
【0022】
好ましくは、本発明のナノ粒子は、下記の工程によって製造される。
(a)少なくとも1種の活性物質の溶液と無機ナノ粒子を混合することにより、無機ナノ粒子表面に活性物質を吸着させる工程;
(b)タンパク質を水性媒体に溶解させる工程;
(c)少なくとも1種の活性物質を吸着した無機ナノ粒子をタンパク質溶液と混合する工程;
(d)酵素を添加する工程;及び
(e)工程(d)で得た溶液を有機溶媒に注入して、タンパク質を酵素で架橋する工程;
【0023】
好ましくは、本発明のナノ粒子は、タンパク質を還元剤で処理してタンパク質分子内のジスルフィド結合を切断した後、該タンパク質のナノ粒子を形成し、さらに該タンパク質を酸化剤で処理することにより得られる。
好ましくは、タンパク質を酸化剤で処理する工程を、有機溶媒中に分散したタンパク質ナノ粒子を酸化剤で処理することによって行う。
好ましくは、タンパク質はアルブミン、オバルブミン、トランスフェリン、又はグロブリンである。
【0024】
好ましくは、本発明のナノ粒子は、下記の工程によって製造される。
(a)少なくとも1種の活性物質の溶液と無機ナノ粒子を混合することにより、無機ナノ粒子表面に活性物質を吸着させる工程;
(b)ジスルフィド結合を還元したタンパク質を水に溶解させる工程;
(c)少なくとも1種の活性物質を吸着した無機ナノ粒子をタンパク質溶液と混合する工程;
(d)工程(c)の溶液を有機溶媒に注入する工程;及び
(e)上記で得られたものを酸化剤で処理する工程;
【0025】
好ましくは、タンパク質はカゼインである。
好ましくは、本発明のナノ粒子は、下記の工程によって製造される。
(a)少なくとも1種の活性物質の溶液と無機ナノ粒子を混合することにより、無機ナノ粒子表面に活性物質を吸着させる工程;
(b)カゼインをpH8以上の塩基性水性媒体に溶解させる工程;
(c)少なくとも1種の活性物質を吸着した無機ナノ粒子をカゼイン溶液と混合する工程;及び
(d)工程(c)の溶液をpH3.5〜7.5の水性媒体に注入する工程;
【0026】
好ましくは、本発明のナノ粒子は、下記の工程によって製造される。
(a)少なくとも1種の活性物質の溶液と無機ナノ粒子を混合することにより、無機ナノ粒子表面に活性物質を吸着させる工程;
(b)カゼインをpH8以上の塩基性水性媒体に溶解させる工程;
(c)少なくとも1種の活性物質を吸着したナノ粒子をカゼイン溶液と混合する工程;及び
(d)工程(c)の溶液のpH をpH3.5〜7.5まで攪拌しながら下降させる工程;
【0027】
好ましくは、ポリマーの重量に対して0.1〜100重量%の脂質が添加されている。
好ましくは、ポリマーの重量に対して0.1〜100重量%のカチオン性またはアニオン性多糖が添加されている。
【0028】
好ましくは、ポリマーの重量に対して0.1〜100重量%のカチオン性タンパク質またはアニオン性タンパク質が添加されている。
好ましくは、ポリマーの重量に対して0.1〜100重量%のシクロデキストリンが添加されている。
【0029】
本発明の別の側面によれば、上記した本発明のナノ粒子を含む、温熱療法剤が提供される。
本発明のさらに別の側面によれば、上記した本発明のナノ粒子を含む、MRI造影剤が提供される。
本発明のさらに別の側面によれば、上記した本発明のナノ粒子を含む、薬物送達剤が提供される。
【0030】
本発明のさらに別の側面によれば、表面に活性物質が固定化されている平均粒子粒径1〜500nmの無機ナノ粒子、及びタンパク質から構成されるナノ粒子の製造方法において、ナノ粒子の形成中および/又は形成後にタンパク質の架橋処理を行うことを含むナノ粒子の製造方法が提供される。
【0031】
好ましくは、タンパク質は酵素により架橋処理される。
好ましくは、タンパク質は有機溶媒中において酵素により架橋処理される。
【0032】
本発明のさらに別の側面によれば、表面に活性物質が固定化されている平均粒子粒径1〜500nmの無機ナノ粒子、及びタンパク質から構成されるナノ粒子の製造方法において、タンパク質を還元剤で処理してタンパク質分子内のジスルフィド結合を切断した後、該タンパク質のナノ粒子を形成し、さらに該タンパク質を酸化剤で処理することを含むナノ粒子の製造方法が提供される。
【0033】
本発明のさらに別の側面によれば、表面に活性物質が固定化されている平均粒子粒径1〜500nmの無機ナノ粒子、及びタンパク質から構成されるナノ粒子の製造方法において、タンパク質を還元剤で処理してタンパク質分子内のジスルフィド結合を切断した後、該タンパク質のナノ粒子を形成し、さらに有機溶媒中に分散した該タンパク質を酸化剤で処理することを含むナノ粒子の製造方法が提供される。
【0034】
本発明のさらに別の側面によれば、表面に活性物質が固定化されている平均粒子粒径1〜500nmの無機ナノ粒子、及びカゼインから構成される平均粒経10〜1000nmのナノ粒子の製造方法において、下記の工程を含む上記方法が提供される。
(a)少なくとも1種の活性物質の溶液と無機ナノ粒子を混合することにより、無機ナノ粒子表面に活性物質を吸着させる工程;
(b)カゼインをpH8以上の塩基性水性媒体に溶解させる工程;
(c)少なくとも1種の活性物質を吸着した無機ナノ粒子をカゼイン溶液と混合する工程;及び
(d)工程(c)の溶液をpH3.5〜7.5の水性媒体に注入する工程;
【0035】
本発明のさらに別の側面によれば、表面に活性物質が固定化されている平均粒子粒径1〜500nmの無機ナノ粒子、及びカゼインから構成される平均粒経10〜1000nmのナノ粒子の製造方法において、下記の工程を含む上記方法が提供される。
(a)少なくとも1種の活性物質の溶液と無機ナノ粒子を混合することにより、無機ナノ粒子表面に活性物質を吸着させる工程;
(b)カゼインをpH8以上の塩基性水性媒体に溶解させる工程;
(c)少なくとも1種の活性物質を吸着した無機ナノ粒子をカゼイン溶液と混合する工程;及び
(d)工程(c)の溶液のpHをpH3.5〜7.5まで攪拌しながら下降させる工程;
【発明を実施するための最良の形態】
【0036】
以下、本発明の実施の形態について詳細に説明する。
本発明のナノ粒子は、表面に活性物質が固定化されている平均粒子粒径1〜500nmの無機ナノ粒子、及びポリマーから構成される。
【0037】
本発明のナノ粒子の平均粒子サイズは、通常は1〜1000nmであり、好ましくは10〜1000nmであり、より好ましくは30〜500nmであり、特に好ましくは50〜200nmである。上記したようなナノオーダーのサイズを有することにより、本発明のナノ粒子は、毛細血管などの微細な部位にも到達することが可能になる。
【0038】
本発明で用いる無機ナノ粒子の平均粒子粒径は1〜500nmであり、好ましくは1nm〜50nmであり、より好ましくは1nm〜30nmである。
【0039】
本発明において活性物質は無機ナノ粒子の表面に固定化されているが、ここで言う固定化とは、物理吸着、又は化学吸着の何れでもよい。吸着の種類としては、イオン相互作用による吸着、疎水性相互作用による吸着、配位結合による吸着などが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0040】
本発明で用いる無機ナノ粒子の分散液は、例えば、無機ナノ粒子の凝集物に、界面活性剤(例えば、ポリオキシエチレン(4,5)ラウリルエーテル酢酸など)の水溶液を加えて分散することにより無機ナノ粒子の分散液を調製することができる。しかし、無機ナノ粒子の分散液の調製方法はこれに限定されるものではなく、例えば、親水性ポリマー[ポリエチレングリコール、ポリリン酸ナトリウムなど]、あるいはリン脂質(ホスファチジルコリンなど)を無機ナノ粒子合成時又は合成後に共存させても良い。
【0041】
本発明のナノ粒子には、好ましくは、タンパク質などのポリマーの重量に対して0.1〜100重量%の無機ナノ粒子を含めることができる。
【0042】
本発明で用いる無機ナノ粒子としては、酸化鉄ナノ粒子、酸化亜鉛ナノ粒子、酸化チタンナノ粒子、シリカナノ粒子、アルミナナノ粒子などが挙げられるが、これらに限定されるものではない。好ましくは、磁気応答性粒子を挙げることができる。
【0043】
本発明で用いる磁気応答性粒子としては、電磁波を吸収して発熱し、人体に無害なものであれば、任意のものを使用することができるが、特に人体に吸収されにくい周波数の電磁波を吸収して発熱するものを使用することが好ましい。好ましい磁気応答性粒子は、鉄、白金、酸化鉄、又はフェライト(Fe,M)であり、特に好ましくは、酸化鉄粒子である。ここで酸化鉄には、とりわけFe(マグネタイト)、γ−Fe(マグヘマイト)、またはこれらの中間体、混合物が含まれる。また、磁気応答性粒子は、表面と内部の組成が異なるコアシェル型構造であってもよい。前記式中、Mは、該鉄イオンと共に用いて磁性金属酸化物を形成することのできる金属イオンであり、典型的には遷移金属の中から選択され、最も好ましくはZn2+、Co2+、Mn2+、Cu2+、Ni2+、Mg2+などであり、M/Feのモル比は、選択されるフェライトの化学量論的な組成に従って決定される。
【0044】
本発明において好ましくは、下記一般式で表わされる化合物で表面修飾されている無機ナノ粒子を用いることができる。
一般式:R−(OCH(R)CH−O−L−X
(式中、Rは、炭素鎖長1以上20以下のアルキル基あるいはアルケニル基、無置換又は炭素鎖長10以下のアルキル基若しくはアルコキシル基で置換されたフェニル基を表す;Rは、水素原子又はメチル基を表す;nは1以上20以下の整数を示し、Lは単結合、又は炭素数1〜10のアルキレン基を示し、Xはカルボン酸基、リン酸基、スルホン酸基又はホウ酸基を示す)
【0045】
炭素鎖長1以上20以下のアルキル基としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、t-ブチル基、オクチル基、セチル基などを挙げることができる。炭素鎖長1以上20以下のアルケニル基としては、上記のアルキル基において少なくとも1個以上の二重結合を有するものを挙げることができる。
【0046】
上記一般式で表わされる化合物の具体例としては、以下のものが挙げられるが、本発明においてはこれらに限定されるものではない。
【0047】
【化1】

【0048】
【化2】

【0049】
【化3】

【0050】
また、本発明で用いる無機ナノ粒子においては、好ましくは無機ナノ粒子1個に対して1から200分子、より好ましくは1から100分子のアミノ酸が固定化されていてもよい。固定化するアミノ酸としては、グリシン、アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、ノルバリン、ノルロイシン、セリン、トレオニン、アスパラギン酸、グルタミン酸、アスパラギン、グルタミン、リジン、アルギニン、システイン、メチオニン、オルニチン、シトルリン、フェニルアラニン、チロシン、トリプトファン、ヒスチジン、β-アラニン、γ-アミノ酪酸(GABA)、及びプロリンなどを挙げることができる。固定化するアミノ酸としては、水溶性アミノ酸が好ましく、例えば、グリシン、アラニン、セリン、トレオニン、アスパラギン酸、グルタミン酸、リジン、アルギニン、システイン、プロリン、β-アラニン、GABAなどから選択することができる。
【0051】
表面にアミノ酸が固定化されている無機ナノ粒子は、例えば、水に分散している平均粒子粒径1〜50nmの無機ナノ粒子を、アミノ酸の存在下において超音波を照射して処理することによって製造することができる。アミノ酸を無機ナノ粒子の表面に固定化するために行う超音波照射は、当業者に公知の常法により行うことができ、例えば、市販の超音波バスなどを用いて行うことができる。超音波照射はpH5.0以上の緩衝液中で行うことが好ましく、例えばリン酸緩衝液中で行うことができる。超音波の照射時間は、磁性ナノ粒子の表面にアミノ酸を固定化できる限り、特に限定されずに適宜設定することができ、一般的には、1分以上2時間以下である。また。超音波としては、高周波出力が0.1〜200Wの超音波を照射することが好ましい。
【0052】
本発明の無機ナノ粒子の表面には、活性物質が固定化されている。本発明に用いられる活性物質は、保湿剤、美白剤、アンチエイジング剤などの化粧品用成分、ビタミン、抗酸化剤などの機能性食品用成分、制癌剤、抗アレルギー剤、抗血栓剤、抗炎症剤などの医薬品成分である。
【0053】
本発明に用いられる保湿剤の具体例としては、ヒアルロン酸、セラミド、リピジュア、イソフラボン、アミノ酸、コラーゲンなどが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0054】
本発明に用いられる美白剤の具体例としては、ビタミンC、アルブチン、ハイドロキノン、コウジ酸、ルシノール、エラグ酸などが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0055】
本発明に用いられるアンチエイジング剤の具体例としては、レチノイン酸、レチノール、ビタミンC、カイネチン、β-カロテン、アスタキサンチン、トレチノインなどが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0056】
本発明に用いられる抗酸化剤の具体例としては、ビタミンC誘導体、ビタミンE、カイネチン、α−リポ酸、コエンザイムQ10などが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0057】
本発明に用いられる制癌剤の具体例としては、フッ化ピリミジン系代謝拮抗薬(5-フルオロウラシル(5FU)やテガフール、ドキシフルリジン、カペシタビンなど);抗生物質(マイトマイシン(MMC)やアドリアシン(DXR)など);プリン代謝拮抗薬(メソトレキサートなどの葉酸代謝拮抗薬、メルカプトプリンなど);ビタミンAの活性代謝物(ヒドロキシカルバミドなどの代謝拮抗薬、トレチノインやタミバロテンなど);分子標的薬(ハーセプチンやメシル酸イマチニブなど);白金製剤(ブリプラチンやランダ(CDDP)、パラプラチン(CBDC)、エルプラット(Oxa)、アクプラなど);植物アルカロイド薬(トポテシンやカンプト(CPT)、タキソール(PTX)、タキソテール(DTX)、エトポシドなど);アルキル化剤(ブスルファンやシクロホスファミド、イホマイドなど);抗男性ホルモン薬(ビカルタミドやフルタミドなど);女性ホルモン薬(ホスフェストロールや酢酸クロルマジノン、リン酸エストラムスチンなど);LH-RH薬(リュープリンやゾラデックスなど);抗エストロゲン薬(クエン酸タモキシフェンやクエン酸トレミフェンなど);アロマターゼ阻害薬(塩酸ファドロゾールやアナストロゾール、エキセメスタンなど);黄体ホルモン薬(酢酸メドロキシプロゲステロンなど);BCGなどが挙げられるが、これに限定されない。
【0058】
本発明に用いられる抗アレルギー剤の具体例としては、クロモグリク酸ナトリウムやトラニラストなどのメディエーター遊離抑制薬、フマル酸ケトチフェンや塩酸アゼラスチンなどのヒスタミンH1-措抗薬、塩酸オザグレルなどのトロンボキサン阻害薬、プランルカストなどのロイコトリエン拮抗薬、トシル酸スプラタストなどが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0059】
本発明に用いられる活性物質は、単独で使用してもよいし、2種以上を組み合わせて用いることもできる。
【0060】
本発明において活性物質を無機ナノ粒子の表面に固定化するために行う超音波照射は、当業者に公知の常法により行うことができ、例えば、市販の超音波バスなどを用いて行うことができる。超音波照射は、例えば水中で行うことができる。超音波の照射時間は、ナノ粒子の表面に活性物質を固定化できる限り、特に限定されずに適宜設定することができ、一般的には、1分以上2時間以下である。また。超音波としては、高周波出力が0.1〜200Wの超音波を照射することが好ましい。
【0061】
本発明で用いるポリマーの種類は特に限定されないが、合成高分子であってもよく、天然高分子であってもよい。好ましくは、生分解性高分子が挙げられるが、これに限定されるものではない。
【0062】
本発明で用いる合成高分子としては、ポリエーテル類、ポリアミン、ポリアクリレート類、ポリメタクリレート類、ポリシアノアタリレート類、ポリアリールアミド類、ポリラタタート類、ポリグリコレート類、ポリ無水物、ポリオルトエステル類、ポリスチレン類、ポリビニル類、ポリアクロレイン、ポリグルタルアルデヒド類、およびその誘導体、そのコポリマー、ならびにその混合物などを挙げることができるが、これらに限定されるものではない。好ましくは、ポリエチレングリコール、ポリビニルアルコール、ポリ乳酸、ポリビニルピロリドン、ポリアルギン酸などが挙げられる。
【0063】
本発明で用いる生分解性高分子は、ポリ乳酸、ポリグリコール酸、あるいはそのコポリマーなどを挙げることができるが、これらに限定されるものではない。
【0064】
本発明で用いる天然高分子は、タンパク質、又は多糖を挙げることができる。
本発明で用いるポリマーとしては、上記の中でも、タンパク質が特に好ましい。
【0065】
本発明で用いるタンパク質の種類は特に限定されないが、分子量1万から100万程度のタンパク質を用いることが好ましい。タンパク質の由来は特に限定されないが、例えば、コラーゲン、ゼラチン又は酸処理ゼラチン、アルブミン、グロブリン、カゼイン、又はトランスフェリン、フィブリン、フィブリノーゲンなどを使用することができる。ヒト由来のタンパク質を用いることが特に好ましい。
【0066】
本発明においては、遺伝子組み換えゼラチンを用いてもよい。遺伝子組み換えゼラチンは、天然ゼラチンと比較して、生体適合性及び非感染性に優れ、均一であり、また配列も決定されているため、その強度及び分解性は、以下に記載の通り架橋などによって正確に設計することができる。
【0067】
遺伝子組み換えゼラチンとしては、例えばEU1014176A2、US6992172に記載のものを用いることができるが、これらに限定されるものではない。
【0068】
また、該生体高分子は部分的に加水分解されていてもよい。該ゼラチンは生体由来のコラーゲンの配列とのアミノ酸同一性が40%であればよく、より好ましくは50%以上である。より好ましくは80%以上、最も好ましくは90%以上である。
【0069】
ここで言うコラーゲンとは天然に存在するものであればいずれであっても構わないが、好ましくはI型、II型、III型、IV型、およびV型のコラーゲンである。より好ましくは、I型、II型、III型のコラーゲンである。別の形態によると、該コラーゲンの由来は好ましくは、ヒト、ウシ、ブタ、マウス、ラットである。より好ましくはヒトである。
【0070】
遺伝子組み換えゼラチンの等電点は、好ましくは5〜10であり、より好ましくは6〜10であり、さらに好ましくは7〜9である。
【0071】
遺伝子組み換えゼラチンは、コラーゲンに特徴的なGXY部分を有し、分子量が好ましくは2 KDa以上100 KDa以下であり、より好ましくは2.5 KDa以上95KDa以下であり、より好ましくは5 KDa以上90 KDa以下であり、最も好ましくは、10 KDa以上90KDa以下である。
【0072】
好ましくは、該遺伝子組み換えゼラチンは脱アミン化されていない。
好ましくは、該遺伝子組み換えゼラチンはプロコラーゲンおよびプロコラーゲンを有さない。
好ましくは、該遺伝子組み換えゼラチンは天然コラーゲンをコードする核酸により調製された実質的に純粋なコラーゲン材料である。
【0073】
本発明のタンパク質ナノ粒子は、特開平6−79168号公報、又はC.Coester著、ジャーナル・ミクロカプスレーション、2000年、17巻、p.187−193に記載の方法に準じて作製することができる。好ましくは、グルタルアルデヒドの変わりに本明細書に記載の架橋剤を用いる。
【0074】
本発明のナノ粒子におけるタンパク質は、架橋処理されていてもよいし、架橋処理されていなくてもよいが、架橋処理されていることが好ましい。さらに好ましくは、タンパク質は、ナノ粒子の形成中または形成後に架橋処理されている。タンパク質の架橋処理は、架橋剤を用いて行ってもよいし、あるいはタンパク質分子内のジスルフィド結合を還元し、粒子形成後に再結合により架橋することもできる。 本発明において、タンパク質は1種類の架橋方法で架橋してもよいし、または2種以上の架橋方法を組み合わせて架橋してもよい。
【0075】
本発明においては、タンパク質は好ましくは有機溶媒中で架橋処理される。ここで用いる有機溶媒としては、エタノール、イソプロパノール、アセトン、THFなどの水溶性有機溶媒が好ましい。
【0076】
架橋剤を使用する場合、タンパク質の重量に対して、好ましくは0.1〜100重量%の架橋剤を添加して、タンパク質は架橋処理される。
【0077】
架橋剤としては、無機または有機の架橋剤、あるいは酵素などを用いることができる。無機または有機の架橋剤の具体例としては、クロム塩(クロム明ばん、酢酸クロムなど);カルシウム塩(塩化カルシウム、水酸化カルシウムなど);アルミニウム塩(塩化アルミニウム、水酸化アルミニウムなど);カルボジイミド類(EDC,WSC、N-ヒドロキシ-5-ノルボルネン-2,3-ジカルボキシイミド(HONB)、N-ヒドロキシこはく酸イミド(HOSu)、ジシクロヘキシルカルボジイミド(DCC)など);N−ヒドロキシスクシイミド;オキシ塩化リンなどを挙げることができるが、これらに限定されるものではない。酵素としては、タンパク質の架橋作用を有するものであれば特に限定されないが、好ましくはトランスグルタミナーゼを用いることができる。トランスグルタミナーゼで酵素架橋するタンパク質の具体例としては、リジン残基およびグルタミン残基を有するタンパク質であれば特に制限されない。その中でも、酸処理ゼラチン、コラーゲン、又はアルブミンが好ましい。
【0078】
トランスグルタミナーゼは、哺乳類由来のものであっても、微生物由来のものであってもよく、具体的には、味の素(株)製アクティバシリーズ、試薬として発売されている哺乳類由来のトランスグルタミナーゼ、例えば、オリエンタル酵母工業(株)製、Upstate USA Inc.製、Biodesign International製などのモルモット肝臓由来トランスグルタミナーゼ、ヤギ由来トランスグルタミナーゼ、ウサギ由来トランスグルタミナーゼなどが挙げられる。
【0079】
本発明に用いられる架橋剤の量は、タンパク質の種類に応じて適宜設定することが出来る。標準的には、タンパク質の重量に対して、0.1〜100重量%程度を添加することができ、好ましくは、1〜50重量%程度の架橋剤を添加することができる。
【0080】
架橋反応の時間は、タンパク質の種類、ナノ粒子サイズに応じて適宜設定することができるが、標準的には、1時間から72時間反応することができ、好ましくは、2時間から24時間反応することができる。
架橋反応の温度は、タンパク質の種類、ナノ粒子サイズに応じて適宜設定することができるが、標準的には、温度は0℃から80℃であり、好ましくは、25℃から60℃である。
本発明に用いられる架橋剤を単独で、または2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0081】
タンパク質を還元剤で処理してタンパク質分子内のジスルフィド結合を切断した後、該タンパク質のナノ粒子を形成し、さらに該タンパク質を酸化剤で処理する場合、タンパク質を酸化剤で処理することによって、タンパク質分子間のジスルフィド結合、および部分的に分子内のジスルフィド結合が再形成されることにより、タンパク質ナノ粒子が架橋され、水に不溶化するものと考えられる。この場合、本発明で用いるタンパク質の種類はジスルフィド結合を有するタンパクであれば特に制限されないが、分子量1万から100万程度のタンパク質を用いることが好ましい。タンパク質の由来は特に限定されないが、ヒト由来のタンパク質を用いることが好ましい。その中で好ましいものは、アルブミン、グロブリン、トランスフェリンである。
【0082】
本発明で用いる還元剤の具体例としては、ジチオトレイトール、チオグリコール酸またはチオグリコール酸アンモニウムなどのチオグリコール酸塩、システイン、システイン塩酸塩などのシステイン酸塩、N−アセチルシステイン、グルタチオンなどのシステイン誘導体、チオグリコール酸モノグリセリン、システアミン、チオ乳酸、亜硫酸塩、亜硫酸水素塩、メルカプトエタノールなどを挙げることができる。しかし、本発明における還元剤は、これらの化合物に限定されるものではない。
本発明で用いる還元剤は、単独で使用してもよいし、2種以上を組み合わせて用いることもできる。
【0083】
本発明で用いる還元剤の量は、タンパク質の種類に応じて適宜設定することができるが、標準的には、タンパク質の重量に対して、0.1〜100重量%程度の還元剤を添加することができ、好ましくは、1〜50重量%程度の還元剤を添加することができる。
タンパク質を還元剤で処理する還元反応の時間は、タンパク質の種類、ナノ粒子サイズに応じて適宜設定することができるが、標準的には、5分から72時間反応することができ、好ましくは、10分から12時間反応することができる。
還元反応の温度は、タンパク質の種類、ナノ粒子サイズに応じて適宜設定することができるが、標準的には、温度は0℃から80℃であり、好ましくは、25℃から40℃である。
【0084】
本発明で用いる酸化剤の具体例としては、酸素、過酸化水素、臭素酸ナトリウム、臭素酸カリウムなどの臭素酸塩、過ほう酸塩、過炭酸ナトリウムなどを挙げることができる。しかし、本発明における酸化剤はこれらの化合物に限定されるものではない。酸素としては、空気中の酸素を使用することができる。即ち、酸化剤として酸素を使用する場合には、ナノ粒子を含む分散液を空気中で攪拌することによって、タンパク質を酸素で処理することができる。本発明に用いられる酸化剤は、単独で使用してもよいし、2種以上を組み合わせて用いることもできる。
【0085】
本発明で用いる酸化剤の量は、タンパク質の種類に応じて適宜設定することが出来る。標準的には、タンパク質の重量に対して、0.1〜100重量%程度の酸化剤を添加することができ、好ましくは、1〜50重量%程度の酸化剤を添加することができる。
タンパク質を酸化剤で処理する酸化反応の時間は、タンパク質の種類、ナノ粒子サイズに応じて適宜設定することができるが、標準的には、5分から72時間反応することができ、好ましくは、10分から12時間反応することができる。
酸化反応の温度は、タンパク質の種類、ナノ粒子サイズに応じて適宜設定することができるが、標準的には、温度は0℃から80℃であり、好ましくは、25℃から60℃である。
【0086】
本発明の好ましい態様によれば、タンパク質としてカゼインを用いることができる。本発明に用いるカゼインの由来は特に限定されない。カゼインは乳由来であっても、豆由来であってもよく、α-カゼイン、β-カゼイン、γ-カゼイン、κ-カゼインおよびそれらの混合物を使用することが出来る。カゼインは、単独で、または2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0087】
本発明のカゼインナノ粒子の作製方法は、カゼインをpH8以上の塩基性水性媒体液に溶解し、pH3.5〜7.5の水性媒体中に注入する方法と、カゼインをpH8以上の塩基性水性媒体液に溶解し、攪拌しながら、得られた溶液のpHをpH3.5〜7.5に下降させる方法が挙げられる。
【0088】
カゼインをpH8以上の塩基性水性媒体液に溶解し、3.5〜7.5の水性媒体中に注入する方法としては、シリンジによるのが、操作が簡便であるため好ましい。しかし、注入速度、溶解性、温度、撹拌状態を満足する方法であれば特に限定しない。一般的には、注入速度は、1mL/minから100mL/minで注入することが出来る。塩基性水性媒体の温度は、適宜設定することができるが、標準的には、0℃から80℃にすることができ、好ましくは、25℃から70℃にすることができる。水性媒体の温度は、適宜設定することができるが、標準的には、0℃から80℃にすることができ、好ましくは、25℃から60℃ですることができる。攪拌速度は、適宜設定することができるが、標準的には、100rpmから3000rpmにすることができ、好ましくは、200rpmから2000rpmである。
【0089】
カゼインをpH8以上の塩基性水性媒体液に溶解し、攪拌しながら、得られた溶液のpHをpH3.5〜7.5に下降させる方法としては、酸を滴下するのが、操作が簡便であるため好ましい。しかし、溶解性、温度、撹拌状態を満足する方法であれば特に限定しない。塩基性水性媒体の温度は、適宜設定することができるが、標準的には、0℃から80℃にすることができ、好ましくは、25℃から70℃にすることができる。攪拌速度は、適宜設定することができるが、標準的には、100rpmから3000rpmにすることができ、好ましくは、200rpmから2000rpmである。
【0090】
本発明に用いる水性媒体は、水、生理食塩水、有機酸または塩基、無機酸または無機塩基の水溶液又は緩衝液を用いることができる。
具体的には、クエン酸、アスコルビン酸、グルコン酸、カルボン酸、酒石酸、コハク酸、酢酸またはフタル酸、トリフルオロ酢酸、モルホリノエタンスルホン酸、2-〔4-(2-ヒドロキシエチル)-1-ピペラジニル〕エタンスルホン酸のような有機酸;トリス(ヒドロキシメチル)、アミノメタン、アンモニアのような有機塩基;塩酸、過塩素酸、炭酸のような無機酸;燐酸ナトリウム、燐酸カリウム、水酸化カルシウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化マグネシウムのような無機塩基を用いた水溶液が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0091】
本発明に用いる水性媒体の濃度は、約10mMから約1Mが好ましい。より好ましくは、約20mMから約200mMである。
【0092】
本発明に用いる塩基性水性媒体のpHは好ましくは8以上であり、より好ましくはpH8〜11であり、さらに好ましくはpH10〜11である。8より低いpHではカゼインが溶解しない。
【0093】
本発明に用いる水性媒体のpHは、好ましいpHは3.5〜7.5である。より好ましくはpHは4〜6である。前述の範囲外では、7.5より高いpHでは粒子が溶解してしまい、3以下のpHでは粒子サイズが大きくなる傾向が見られる。
【0094】
本発明に用いられる脂質として具体例を列挙するが、本発明においてはこれらの化合物に限定されるものではない。ホスファチジルコリン(レシチン)、ホスファチジルエタノールアミン、ホスファチジルセリン、ホスファチジルイノシトール、ホスファチジルグリセロール、ジホスファチジルグリセロール、スフィンゴシン類、セラミド、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸、パルミチン酸、ミリスチン酸、ステアリン酸、大豆油、オリーブ油、スクワラン、などが挙げられる。
【0095】
本発明に用いられるアニオン性多糖とはカルボキシル基、硫酸基又はリン酸基等の酸性極性基を有する多糖類である。具体例としては、コンドロイチン硫酸、デキストラン硫酸、カルボキシメチルデキストラン、アルギン酸、ペクチン、カラギーナン、フコイダン、アガロペクチン、ポルフィラン、カラヤガム、ジェランガム、キサンタンガム、ヒアルロン酸類等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0096】
本発明に用いられるカチオン性多糖とは、アミノ基等の塩基性極性基を有する多糖類である。具体例としては、キチン、キトサンなどのグルコサミンやガラクトサミンを構成単糖として含むものなどが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0097】
本発明に用いられるアニオン性タンパク質とは等電点が生理的pHよりも塩基性側にあるタンパク質およびリポタンパク質である。具体例としては、ポリグルタミン酸、ポリアスパラギン酸、リゾチーム、チトクロムC、リボヌクレアーゼ、トリプシノーゲン、キモトリプシノーゲン、α−キモトリプシンなどが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0098】
本発明に用いられるカチオンタンパク質とは等電点が生理的pHよりも酸性側にあるタンパク質およびリポタンパク質である。具体例としては、ポリリジン、ポリアルギニン、ヒストン、プロタミン、オバルブミンなどが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0099】
本発明に用いられるシクロデキストリンとして具体例を列挙するが、本発明においてはこれらの化合物に限定されるものではない。α-シクロデキストリン、β-シクロデキストリン、γ-シクロデキストリン、2,6-ジ-O-メチル-α-シクロデキストリン、2,6-ジ-O-メチル-β-シクロデキストリン 、グルクロニルグルコシル-β-シクロデキストリン 、ヘプタキス(2,6-ジ-O-メチル)-β-シクロデキストリン、2-ヒドロキシエチル-β-シクロデキストリン 、 ヒドロキシプロピルβ-シクロデキストリン、6-O-α-マルトシル-α-シクロデキストリン、メチル-β-シクロデキストリン、2,3,6-トリ-O-メチル-β-シクロデキストリン 、6-O-α-D-グルコシル-α-シクロデキストリンモノ などが挙げられる。
【0100】
本発明における無機ナノ粒子が磁気応答性ナノ粒子である場合には、磁力により所定の部位に誘導することができる。即ち、本発明のナノ粒子は体内に投与し、磁力により疾患部位に誘導することができる、また上記のようにして疾患部位に誘導されたナノ粒子は、MRI造影により確認することができる。即ち、本発明のナノ粒子は、MRI用造影剤として有用である。
さらに本発明のナノ粒子は、上記の方法に従って疾患部位に誘導した後、高周波をあてて加熱し、ナノ粒子に内包した薬学的活性物質を放出させることができる。即ち、本発明のナノ粒子は、薬物送達剤として有用である。
【0101】
さらに本発明の磁性ナノ粒子は、分析診断用プローブとして使用することもできる。具体的には、各種アミノ酸受容体(グルタミン酸受容体、アスパラギン酸受容体、セリン受容体など)の検出、分析、濃縮,精製に用いることができる。
【0102】
本発明のナノ粒子の投与方法は特に限定されないが、経皮・経粘膜吸収、血管、体腔内又はリンパへ注射により投与することが好ましく、静脈注射が特に好ましい。
本発明のナノ粒子の投与量は、患者の体重、疾患の状態などに応じて適宜設定することができるが、ナノ粒子は、一般的には、1回の投与につき、10μg〜100mg/kg程度を投与することができ、好ましくは、20μg〜50mg/kg程度を投与することができる。
以下の実施例により本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【実施例】
【0103】
製造例1:磁気応答性粒子分散液の調製
塩化鉄(III)6水和物10.8gおよび塩化鉄(II)4水和物6.4gをそれぞれ1N−塩酸水溶液80mlに溶解した。この溶液を攪拌しながらこの中にアンモニア水(28重量%)96mlを2ml/分の速度で添加した。その後、混合物を80℃で30分加熱した後、室温に冷却した。得られた凝集物をデカンテーションにより水で精製した。結晶子サイズ約12nmのマグネタイト(Fe)の生成をX線回折法により確認した。
【0104】
この凝集物に、ポリオキシエチレン(4,5)ラウリルエーテル酢酸(日光ケミカルズ)2.3gを溶解した水溶液(NaOHでpHを6.8に調製したもの)100mlを加えて分散し、磁気応答性粒子分散液を調製した。
【0105】
製造例2:アスパラギン酸による磁気応答性粒子の表面修飾
製造例1で製造した界面活性剤(ポリオキシエチレン(4,5)ラウリルエーテル酢酸)で水に分散している磁気応答性粒子の分散液(酸化鉄含量18.2g/L)1.0 mlに、0.1Mリン酸緩衝液(pH7.6)1.0mlと1Mアスパラギン酸溶液100μl を加えた。混合物を超音波バスSharp UT-105で100Wで20分間超音波を照射した。磁石で凝集した磁性体を集め、上清を除去した。2.0mlのエタノールを加え、ボルテックスミキサーで凝集体を洗浄し、再び凝集体を磁石で集め、洗浄液は捨てた。次に、2.0mlの水を加え、ボルテックスミキサーで凝集体を洗浄し、再び凝集体を磁石で集め、洗浄液は捨てた。最後に2.0mlの水を加え、100Wで20分間超音波照射を行った。その結果、磁気応答性粒子は均一に再分散され、透明な分散液となった。磁気応答性粒子のゼータ電位を測定したところ、処理前の-31mVから-24mVに変化していた。この結果は、表面がアスパラギン酸に置換されていることを示す。
【0106】
実施例1:アドリアマイシン吸着酸化鉄粒子を内包したゼラチンナノ粒子
製造例2で作製したアスパラギン酸修飾磁気応答性粒子分散液(Fe3O4 含量1.0mg/ml )1.0 mlとアドリアマイシン水溶液(1.0mg/ml)を混合し、超音波バスSharp UT-105を用い100Wで20分間超音波を照射した。磁石で凝集した磁性体を集め、上清を分離した。上清の吸収スペクトルからアドリアマイシンの残存量(Abs.480nm)を測定し、磁性体表面に固定化されたアドリアマイシン量を算出した。また、磁石で分離した磁気応答性粒子凝集体は1.0mlの水を加えボルテックスミキサーで再分散させた。アドリアマイシンの固定化量は、200μg/1.0mgFeOであった。また、Zeta電位は-24mVから+17.7 mVに変化しており、磁性体表面にアドリアマイシンのアミノ基が存在していることを示している。
【0107】
上記の磁気応答性粒子水分散液を0.2mL、石灰処理ゼラチンを20mg、ダイキトサン1mg、イオン交換水を1.8mL混合する。前記溶液1mLを、外設40℃、800rpmの攪拌条件で、マイクロシリンジを用いて、エタノール10mL中に注入した。2.5μLグルタルアルデヒド(20%)を分散媒に滴下し、混合物を30分間攪拌することで、架橋されたゼラチンナノ粒子が得られた。上記粒子の平均粒経は、光散乱光度計、大塚電子(株)製DLS−7000を用い測定したところ、135nmであった。
【0108】
実施例2:5-フルオロウラシル吸着酸化鉄粒子を内包したアルブミンナノ粒子
製造例2で作製したアスパラギン酸修飾磁気応答性粒子分散液(Fe3O4 含量1.0mg/ml )1.0 mlと5-フルオロウラシル水溶液(1.0mg/ml)を混合し、超音波バスSharp UT-105を用い100Wで20分間超音波を照射した。磁石で凝集した磁性体を集め、上清を分離した。上清の吸収スペクトルから5-フルオロウラシルの残存量(Abs.254nm)を測定し、磁性体表面に固定化された5-フルオロウラシル量を算出した。また、磁石で分離した磁気応答性粒子凝集体は1.0mlの水を加えボルテックスミキサーで再分散させた。5-フルオロウラシルの固定化量は、200μg/1.0mgFe3O4であった。
【0109】
上記の酸化鉄ナノ粒子分散液を0.2mL、アルブミンを20mg、カルボキシメチルセルロース1mg、イオン交換水を1.8mL混合する。前記溶液1mLを、外設40℃、800rpmの攪拌条件で、マイクロシリンジを用いて、エタノール10mL中に注入した。2.5μLグルタルアルデヒド(20%)を分散媒に滴下し、混合物を30分間攪拌することで、架橋されたアルブミンナノ粒子が得られた。上記粒子の平均粒経は、光散乱光度計、大塚電子(株)製DLS−7000を用い測定したところ、130nmであった。
【0110】
実施例3:アスタキサンチン吸着酸化鉄粒子を内包したカゼインナノ粒子
製造例2で作製したアスパラギン酸修飾磁気応答性粒子分散液(Fe3O4 含量1.0mg/ml )1.0mlとアスタキサンチンのエタノール-水混合溶液(1.0mg/ml)を混合し、超音波バスSharp UT-105を用い100Wで20分間超音波を照射した。磁石で凝集した磁性体を集め、上清を分離した。上清の吸収スペクトルからアスタキサンチンの残存量(Abs.480nm)を測定し、磁性体表面に固定化されたアスタキサンチン量を算出した。また、磁石で分離した磁気応答性粒子凝集体は1.0mlの水を加えボルテックスミキサーで再分散させた。アスタキサンチンの固定化量は、200μg/1.0mgFeOであった。
【0111】
カゼイン20mgをpH10のリン酸バッファー1.8mLに溶かし、上記、酸化鉄ナノ粒子分散液0.2mLを添加する。前記溶液1mLを、外設40℃、800rpmの攪拌条件で、マイクロシリンジを用いて、pH5のリン酸バッファー10mL中に注入することで、カゼインナノ粒子が得られた。上記粒子の平均粒経は、光散乱光度計、大塚電子(株)製DLS−7000を用い測定したところ、135nmであった。
【0112】
実施例4:アドリアマイシン吸着酸化鉄粒子を内包したゼラチンナノ粒子
酸化鉄粒子の合成方法は実施例1と同様に行った。上記、酸化鉄分散液を0.2mL、酸処理ゼラチンを20mg、コンドロイチン硫酸-C2mg、トランスグルタミナーゼを10mg、イオン交換水を1.8mL混合する。前記溶液1mLを、外設40℃、800rpmの攪拌条件で、マイクロシリンジを用いて、エタノール10mL中に注入した。得られた分散液を外設55℃で5時間静置することで、架橋されたゼラチンナノ粒子が得られた。上記粒子の平均粒経は、光散乱光度計、大塚電子(株)製DLS−7000を用い測定したところ、85nmであった。
【0113】
実施例5:アドリアマイシン吸着酸化鉄粒子を内包したアルブミンナノ粒子
酸化鉄粒子の合成方法は実施例1と同様に行った。アルブミンを3mLの7Mグアニジン塩酸塩および10mM EDTAを含む0.5Mトリス−塩酸緩衝液(pH8.5)に溶解した。ジチオトレイトール10mgを加えて混合、室温で2時間還元した。ゲルろ過精製し、得られたアルブミン溶液に、上記、酸化鉄分散液0.2mLを添加した。前記溶液1mLを、外設40℃、800rpmの攪拌条件で、マイクロシリンジを用いて、エタノール10mL中に注入した。得られた分散液を空気中で40℃、3時間攪拌することで、架橋されたアルブミンナノ粒子が得られた。上記粒子の平均粒経は、光散乱光度計、大塚電子(株)製DLS−7000を用い測定したところ、180nmであった。
【0114】
(発明の効果)
本発明のナノ粒子は、生体適合性に問題のないタンパク等のポリマーを用いるため安全性が高い。また、本発明のナノ粒子は、磁気応答性粒子と薬剤を一緒に含有するため、造影と温熱療法とDDSを一度に行うことができる。さらに、本発明のナノ粒子においては、活性物質が無機粒子に吸着されているため、本ナノ粒子は安全性が高く、薬剤内包率が高い。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面に活性物質が固定化されている平均粒子粒径1〜500nmの無機ナノ粒子、及びポリマーから構成されるナノ粒子。
【請求項2】
無機ナノ粒子が磁性体ナノ粒子である、請求項1に記載のナノ粒子。
【請求項3】
無機ナノ粒子が酸化鉄、フェライト、酸化亜鉛、酸化チタン、シリカ、又はアルミナである、請求項1又は2に記載のナノ粒子。
【請求項4】
表面にアミノ酸が固定化されている無機ナノ粒子の表面に、活性物質が物理吸着により固定化されている、請求項1から3の何れかに記載のナノ粒子。
【請求項5】
一般式:R−(OCH(R)CH−O−L−X
(式中、Rは、炭素鎖長1以上20以下のアルキル基あるいはアルケニル基、無置換又は炭素鎖長10以下のアルキル基若しくはアルコキシル基で置換されたフェニル基を表す;Rは、水素原子又はメチル基を表す;nは1以上20以下の整数を示し、Lは単結合、又は炭素数1〜10のアルキレン基を示し、Xはカルボン酸基、リン酸基、スルホン酸基又はホウ酸基を示す)で表される化合物で表面修飾されている無機ナノ粒子の表面にアミノ酸が固定化されており、さらにその表面に活性物質が物理吸着により固定化されている、請求項1から4の何れかに記載のナノ粒子。
【請求項6】
平均粒子サイズ10〜1000nmを有する、請求項1から5の何れかに記載のナノ粒子。
【請求項7】
無機ナノ粒子が平均粒子粒径1〜50nmを有する、請求項1から6の何れかに記載のナノ粒子。
【請求項8】
ポリマーに対して0.1〜100重量%の無機ナノ粒子を含む、請求項1から7の何れかに記載のナノ粒子。
【請求項9】
ポリマーに対して0.1〜100重量%の活性物質を含む、請求項1から8の何れかに記載のナノ粒子。
【請求項10】
活性物質が、化粧品成分、機能性食品用成分、又は医薬品成分である、請求項1から9の何れかに記載のナノ粒子。
【請求項11】
化粧品成分が保湿剤、美白剤、又はアンチエイジング剤であり、機能性食品用成分がビタミン又は抗酸化剤であり、医薬品成分が制癌剤、抗アレルギー剤、抗血栓剤、又は抗炎症剤である、請求項1から10の何れかに記載のナノ粒子。
【請求項12】
ポリマーが合成高分子、生分解性高分子、又は天然高分子である、請求項1から11の何れかに記載のナノ粒子。
【請求項13】
ポリマーがタンパク質である、請求項1から12の何れかに記載のナノ粒子。
【請求項14】
タンパク質がナノ粒子の形成中または形成後に架橋処理されている、請求項1から13の何れかに記載のナノ粒子。
【請求項15】
タンパク質の重量に対して0.1〜100重量%の架橋剤を添加することによってタンパク質が架橋処理されている、請求項14に記載のナノ粒子。
【請求項16】
架橋剤が、無機または有機の架橋剤である、請求項15に記載のナノ粒子。
【請求項17】
架橋剤が酵素、好ましくはトランスグルタミナーゼである、請求項16に記載のナノ粒子。
【請求項18】
タンパク質が有機溶媒中で架橋処理されている、請求項14から17の何れかにに記載のナノ粒子。
【請求項19】
タンパク質が、リジン残基およびグルタミン残基を有する、請求項13から18の何れかに記載のナノ粒子。
【請求項20】
タンパク質がコラーゲン、ゼラチン、アルブミン、オバルブミン、カゼイン、トランスフェリン、フィブリン、フィブリノーゲン、又はこれらの混合物である、請求項13から19の何れかに記載のナノ粒子。
【請求項21】
タンパク質が酸処理ゼラチン又はアルブミンである、請求項13から20の何れかに記載のナノ粒子。
【請求項22】
タンパク質が酸処理ゼラチンであり、無機ナノ粒子及び酸処理ゼラチンから構成されるナノ粒子の形成中または形成後に、酸処理ゼラチンを酵素で架橋処理することにより得られる、請求項13から21の何れかに記載のナノ粒子。
【請求項23】
下記の工程によって製造される、請求項13から22の何れかに記載のナノ粒子。
(a)少なくとも1種の活性物質の溶液と無機ナノ粒子を混合することにより、無機ナノ粒子表面に活性物質を吸着させる工程;
(b)タンパク質を水性媒体に溶解させる工程;
(c)少なくとも1種の活性物質を吸着した無機ナノ粒子をタンパク質溶液と混合する工程;
(d)工程(c)で得た溶液を有機溶媒に注入する工程;及び
(e)架橋剤を添加してタンパク質を架橋する工程;
【請求項24】
下記の工程によって製造される、請求項13から22の何れかに記載のナノ粒子。
(a)少なくとも1種の活性物質の溶液と無機ナノ粒子を混合することにより、無機ナノ粒子表面に活性物質を吸着させる工程;
(b)タンパク質を水性媒体に溶解させる工程;
(c)少なくとも1種の活性物質を吸着した無機ナノ粒子をタンパク質溶液と混合する工程;
(d)酵素を添加する工程;及び
(e)工程(d)で得た溶液を有機溶媒に注入して、タンパク質を酵素で架橋する工程;
【請求項25】
タンパク質を還元剤で処理してタンパク質分子内のジスルフィド結合を切断した後、該タンパク質のナノ粒子を形成し、さらに該タンパク質を酸化剤で処理することにより得られる、請求項14に記載のナノ粒子。
【請求項26】
タンパク質を酸化剤で処理する工程を、有機溶媒中に分散したタンパク質ナノ粒子を酸化剤で処理することによって行う、請求項25に記載のナノ粒子。
【請求項27】
タンパク質がアルブミン、オバルブミン、トランスフェリン、又はグロブリンである、請求項25又は26に記載のナノ粒子。
【請求項28】
下記の工程によって製造される、請求項25から27の何れかに記載のナノ粒子。
(a)少なくとも1種の活性物質の溶液と無機ナノ粒子を混合することにより、無機ナノ粒子表面に活性物質を吸着させる工程;
(b)ジスルフィド結合を還元したタンパク質を水に溶解させる工程;
(c)少なくとも1種の活性物質を吸着した無機ナノ粒子をタンパク質溶液と混合する工程;
(d)工程(c)の溶液を有機溶媒に注入する工程;及び
(e)上記で得られたものを酸化剤で処理する工程;
【請求項29】
タンパク質がカゼインである、請求項13記載のナノ粒子。
【請求項30】
下記の工程によって製造される、請求項29に記載のナノ粒子。
(a)少なくとも1種の活性物質の溶液と無機ナノ粒子を混合することにより、無機ナノ粒子表面に活性物質を吸着させる工程;
(b)カゼインをpH8以上の塩基性水性媒体に溶解させる工程;
(c)少なくとも1種の活性物質を吸着した無機ナノ粒子をカゼイン溶液と混合する工程;及び
(d)工程(c)の溶液をpH3.5〜7.5の水性媒体に注入する工程;
【請求項31】
下記の工程によって製造される、請求項29に記載のナノ粒子。
(a)少なくとも1種の活性物質の溶液と無機ナノ粒子を混合することにより、無機ナノ粒子表面に活性物質を吸着させる工程;
(b)カゼインをpH8以上の塩基性水性媒体に溶解させる工程;
(c)少なくとも1種の活性物質を吸着したナノ粒子をカゼイン溶液と混合する工程;及び
(d)工程(c)の溶液のpH をpH3.5〜7.5まで攪拌しながら下降させる工程;
【請求項32】
ポリマーの重量に対して0.1〜100重量%の脂質が添加されている、請求項1から31の何れかに記載のナノ粒子。
【請求項33】
ポリマーの重量に対して0.1〜100重量%のカチオン性またはアニオン性多糖が添加されている、請求項1から32の何れかに記載のナノ粒子。
【請求項34】
ポリマーの重量に対して0.1〜100重量%のカチオン性タンパク質またはアニオン性タンパク質が添加されている、請求項1から33の何れかに記載のナノ粒子。
【請求項35】
ポリマーの重量に対して0.1〜100重量%のシクロデキストリンが添加されている、請求項1から34の何れかに記載のナノ粒子。
【請求項36】
請求項1から35の何れかに記載のナノ粒子を含む、温熱療法剤。
【請求項37】
請求項1から35の何れかに記載のナノ粒子を含む、MRI造影剤。
【請求項38】
請求項1から35の何れかに記載のナノ粒子を含む、薬物送達剤。
【請求項39】
表面に活性物質が固定化されている平均粒子粒径1〜500nmの無機ナノ粒子、及びタンパク質から構成されるナノ粒子の製造方法において、ナノ粒子の形成中および/又は形成後にタンパク質の架橋処理を行うことを特徴とするナノ粒子の製造方法。
【請求項40】
タンパク質が酵素により架橋処理されている、請求項39に記載のナノ粒子の製造方法。
【請求項41】
タンパク質が有機溶媒中において酵素により架橋処理されている、請求項40に記載のナノ粒子の製造方法。
【請求項42】
表面に活性物質が固定化されている平均粒子粒径1〜500nmの無機ナノ粒子、及びタンパク質から構成されるナノ粒子の製造方法において、タンパク質を還元剤で処理してタンパク質分子内のジスルフィド結合を切断した後、該タンパク質のナノ粒子を形成し、さらに該タンパク質を酸化剤で処理することを特徴とするナノ粒子の製造方法。
【請求項43】
表面に活性物質が固定化されている平均粒子粒径1〜500nmの無機ナノ粒子、及びタンパク質から構成されるナノ粒子の製造方法において、タンパク質を還元剤で処理してタンパク質分子内のジスルフィド結合を切断した後、該タンパク質のナノ粒子を形成し、さらに有機溶媒中に分散した該タンパク質を酸化剤で処理することを含むナノ粒子の製造方法。
【請求項44】
表面に活性物質が固定化されている平均粒子粒径1〜500nmの無機ナノ粒子、及びカゼインから構成される平均粒経10〜1000nmのナノ粒子の製造方法において、下記の工程を含む上記方法。
(a)少なくとも1種の活性物質の溶液と無機ナノ粒子を混合することにより、無機ナノ粒子表面に活性物質を吸着させる工程;
(b)カゼインをpH8以上の塩基性水性媒体に溶解させる工程;
(c)少なくとも1種の活性物質を吸着した無機ナノ粒子をカゼイン溶液と混合する工程;及び
(d)工程(c)の溶液をpH3.5〜7.5の水性媒体に注入する工程;
【請求項45】
表面に活性物質が固定化されている平均粒子粒径1〜500nmの無機ナノ粒子、及びカゼインから構成される平均粒経10〜1000nmのナノ粒子の製造方法において、下記の工程を含む上記方法。
(a)少なくとも1種の活性物質の溶液と無機ナノ粒子を混合することにより、無機ナノ粒子表面に活性物質を吸着させる工程;
(b)カゼインをpH8以上の塩基性水性媒体に溶解させる工程;
(c)少なくとも1種の活性物質を吸着した無機ナノ粒子をカゼイン溶液と混合する工程;及び
(d)工程(c)の溶液のpHをpH3.5〜7.5まで攪拌しながら下降させる工程;


【公表番号】特表2009−536151(P2009−536151A)
【公表日】平成21年10月8日(2009.10.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−502421(P2009−502421)
【出願日】平成19年3月30日(2007.3.30)
【国際出願番号】PCT/JP2007/057719
【国際公開番号】WO2007/116954
【国際公開日】平成19年10月18日(2007.10.18)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】