説明

ニットデザインシステムとニットデザイン方法

【構成】
ニットデザインシステムは、編地の組織データを作成する組織データ作成部と、
組織データと合成する合成データの作成部と、組織データと合成データとの組み合わせに従って、組織データと合成データとを編目毎に合成することにより、組織データ及び組織データの外形を変更する合成部とを備えている。
【効果】
寄せ等の入力が容易になる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明はニット製品のデザイン環境を提供すると共に、作成したデザインを編成データに変換するニットデザインシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
傾斜しながら連続する縄柄などの寄せを伴うデザインは面倒である。ユーザは、柄の傾斜に応じて何コース毎に何ピッチ編目を寄せるのかを考え、傾斜した縄柄をニットデザインシステムに手入力する必要がある。特に編地の外形に沿って寄せを行う場合、外形が直線状でないと寄せは複雑になり、これに縄柄等のデザインを加わるので、ニットデザインシステムへの入力は難しい作業となる。
【0003】
関連する先行技術を示す。特許文献1(WO2007/058123)はハンドルにより縄柄等のモジュールを傾斜させることを開示している。しかしながら特許文献1はデザインデータの合成について検討しておらず、特に編地の外形に沿った寄せを実現することを検討していない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】WO2007/058123
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
この発明の課題は、寄せ等の入力を容易にするための新規な技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明のニットデザインシステムは、編地のデザインデータを作成するシステムであって、
編地の組織データを作成する組織データ作成部と、
前記組織データと合成する合成データの作成部と、
組織データと合成データとの組み合わせに従って、前記組織データと前記合成データとを編目毎に合成することにより、組織データ及び組織データの外形を変更する合成部とを備えていることを特徴とする。
【0007】
またこの発明のニットデザイン方法は、編地のデザインデータを作成する方法であって、 編地の組織データを作成するステップと、
前記組織データと合成する合成データを作成するステップと、
組織データと合成データとの組み合わせに従って、前記組織データと前記合成データとを編目毎に合成することにより、組織データ及び組織データの外形を変更するステップ、とを実行することを特徴とする。
【0008】
この発明では、組織データとは別に合成データを作成し、組織データと合成することにより、組織データ及び組織の外形データを変更できる。合成は編目単位で行うので、組織データを編目単位で変更できる。また寄せ等のデータは組織データとは別に合成データとして扱うので、寄せ等を伴う編地のデザインが容易になる。この明細書において、ニットデザインシステムに関する記載はそのままニットデザイン方法にも当てはまり、逆にニットデザイン方法に関する記載はそのままニットデザインシステムにも当てはまる。
【0009】
好ましくは、前記合成データは編目の寄せのデータであり、前記合成データの作成部には、ユーザにより指示される傾斜あるいは編地の外形から寄せ情報を取得する情報の取得手段と、取得した寄せ情報に基づいて合成データを作成する手段、を設ける。このようにすると寄せ情報を容易に発生させることができるので、組織データを任意の角度へ容易に傾斜させることができる。
【0010】
特に好ましくは、合成部により得られた組織データのユニットを、編地の外形データに対しリピートするように配置する際に、編地の外形からはみ出すユニットを削除する不具合修正部を備えている。このようにすると、組織データのユニットが外形からはみ出すことを防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】実施例のニットデザインシステムのブロック図
【図2】実施例のフローチャート
【図3】実施例での合成手順を示す図
【図4】合成での処理を示す図
【図5】ハンドルによる合成の例を示す図
【図6】編地の外形による合成の例を示す図
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下に、発明を実施するための最適実施例を示す。この発明の範囲は、特許請求の範囲の記載に、周知技術による変更の可能性を加味して解釈されるべきである。
【実施例】
【0013】
図1〜図6に、実施例のニットデザインシステム2とニットデザイン方法とを示す。図1はニットデザインシステム2の構成を示し、4はバスで、6は入力部である。入力部6はキーボード,マウス,ペンなどの手動入力手段と、LANインターフェース,USBインターフェースなどの入出力インターフェースとを備えている。7は編地データ作成部で、入力部6からの入力に従い、編地の外形データと組織データとを作成する。実施例では組織データ、合成データをカラーコードで表すが、これに限るものではない。
【0014】
8は合成部で、組織データと合成データとを合成する。なおこの明細書において合成データは、寄せ、度違い等の合成に用いるデータで、合成された結果のデータを合成結果という。合成部8の構成を図4に示し、合成部8は寄せにより組織データを傾斜させる傾きを取得する寄せ情報取得部44と、取得した寄せ情報等に基づき合成データを作成する合成データ作成部45と、作成した合成データに基づき編目毎に合成データと組織データ等を合成する合成処理部46とを備えている。寄せ情報取得部44は例えば組織データと重ねてモニタ18に表示するハンドルの傾き、あるいは編地の外形に合わせて、何コース毎に何ピッチ編目を寄せるかの寄せ情報を取得する。合成データ作成部45は寄せ情報等を合成データに変換する。合成処理部46は合成データと組織データを合成して組織データと組織データの外形を変更する。
【0015】
リピート部10は合成等により得られた組織データのユニットを編地の外形データ上に配列し、不具合修正部12は編地の外形からはみ出すユニットを削除する。不具合修正部12とリピート部10は設けなくても良い。データ変換部14は、合成結果などの編地のデザインデータを横編機等での編成データに変換する。なお組織データの外形は編地の外形データとは別のデータで、組織の外形を表すデータである。ただし編地の外形データを組織データの一部として、合成データにより組織データ中の外形データ、即ち組織データの外形を変更することも可能である。
【0016】
記憶部16は、デザイン過程での種々のデータを記憶し、特に、編地の外形を表す外形データ,編地上に配列するユニットのデータ,組織柄等の編地の組織を表す組織データ,合成に用いる合成データ及び合成結果などを記憶する。モニタ18は編地の外形データ,ユニットデータ,組織データ,合成データ,合成結果などを表示し、ユーザはこれらのデータに対し、入力部6から編集を行い、またこれらのデータを用いて編地をデザインする。出力部20は、記憶部16のデータ及びデータ変換部14で作成した編成データを出力する。出力部20はUSBインターフェース及びLANインターフェースなどから成り、物理的には入力部6と同じものでもよい。
【0017】
図2に合成に関する手順を示す。ステップ1で組織データを取得し、ステップ2で組織データを記憶する。ステップ3で、寄せ情報等を取得しこれに応じて合成データを作成する等により、合成データを取得し、ステップ4で合成データを記憶する。ステップ5で組織データと合成データとを合成することにより組織データを変更する。ステップ6で合成結果を表示し、ユーザが合成結果を確定させると(ステップ7)、合成結果を出力する(ステップ8)。合成結果自体を修正する場合、ステップ9で修正してステップ6へ戻り、組織データまたは合成データを修正する場合、ステップ10で修正し、ステップ5へ戻る。
【0018】
図3に、ステップ5の合成の詳細を示し、合成の例として、組織柄を左右に寄せることにより編目サイズを変化させることを示す。最初に合成の種類(合成データ)を判別し、次いで合成対象となる編地の部分の組織を調べ、合成の種類と組織とに合わせて組織を変更する。この処理では、表目、裏目、表目+右へ2ピッチ寄せ、重ね目を形成、等の編組織のデータ(組織データ)と、合成データとを編地の1目毎に組み合わせ、この組み合わせで定まる新たな編組織のデータを合成結果とする。また合成により組織データの外形を変更する。
【0019】
図4に合成での処理を示し、編地の外形データを41,編地の組織データを42,合成データを43とする。合成部8は前記のように寄せ情報取得部44と合成データ作成部45及び合成処理部46を備え、組織データ42と合成データ43とを合成して組織データ42と組織データ42の外形を変更し、合成後の組織データ42を編地の外形データ41に反映させる。変更後のデータを合成結果として記憶部16等に記憶し、モニタ18に表示する。合成に際して編地の外形データ41,編地の組織データ42,合成データ43が記憶部16に保存されているので、これらのデータに戻って合成をやり直すことも、合成結果のみを修正することもできる。従って例えば、合成前の組織データ42を編集し、あるいは寄せの傾き等を変更するように合成データ43を編集すると、合成結果が自動的に修正される。さらに合成結果を手修正することにより、寄せのピッチを変更し、あるいは編目の種類を変更する等のことができる。
【0020】
図5,図6に合成の例を示し、図5はハンドル51を用いて、例えば表目と裏目とのリブ編地からなる組織データ50を修正する例を示す。合成データ52を入力する手段として、合成部8の寄せ情報取得部44はモニタ上にハンドル51を表示する。ユーザはハンドル51を操作して、例えば図5の右上のように傾けると、寄せ情報取得部44はハンドル51の傾斜に沿って寄せを行うものと解釈する。これに従って合成データ作成部45は、図5の右下の合成データ52を作成し、横長の短冊状の部分は1ピッチ右寄せのデータである。
【0021】
合成処理部46により、組織データ50と合成データ52とを合成すると、図5の左下の合成結果53が得られ、合成データ52が無い部分では表目と裏目とが元のデザインとに従って配置され、合成データ52と重なる部分では、組織データでの表目のデータは表目+1ピッチ右寄せのデータとなり、裏目のデータは裏目+1ピッチ右寄せのデータとなる。この結果、編地はハンドル51の傾斜に応じて右側に寄せられ、組織データの外形も変更される。これらのため、寄せ等を無視して組織データ50を手入力し、もしくはLANインターフェース、USB等から入力し、ハンドル51を操作して合成データ52を作成することにより、寄せのデータを入力できる。このため寄せのある縄柄等の複雑な組織柄のデザインが容易となる。
【0022】
図6は、外形データ61に沿って合成データ62を発生させ、組織データ60と合成データ62を合成する例を示す。組織データ60を入力した後、入力部6から外形データ61の縁に沿って組織データ60を寄せる旨を入力すると、寄せ情報取得部44は外形データ61に沿った寄せ情報を発生させ、合成データ作成部45はこれに従って合成データ62を発生させる。ここで合成データ62中の横長の短冊は右側へ2ピッチ寄せることを意味している。合成処理部46により合成データ62と組織データ60とを合成すると、合成結果63となり、合成データ62と重なる編みで、表目と裏目とのデータに、2ピッチ右寄せのデータが追加される。このようにして組織データと組織データの外形とが変更される。
【0023】
合成データは寄せのデータのみに限らず、寄せの合成データと度違いの合成データの双方などでも良い。また合成データは組織データと合成する別のデータのレイヤであり、寄せの合成データのレイヤと、度違いの合成データのレイヤを別途に作成して、組織データにこれらの2レイヤのデータを合成してもよい。なお組織データを複数のレイヤで構成しても良い。
【0024】
実施例では以下の効果が得られる。
(1) 編地の組織データを任意の角度に容易に傾斜させることができる。
(2) 編地の外形に沿って寄せるように合成データを発生させると、外形を気にせずに組織データを入力し、複雑な外形でも自動的に寄せのデータを追加できる。
(3) 合成結果を表示させた後に、合成前の組織データ及び合成データの編集ができ、再度合成を行うことができる。
【符号の説明】
【0025】
2 ニットデザインシステム
4 バス
6 入力部
7 編地データ作成部
8 合成部
10 リピート部
12 不具合修正部
14 データ変換部
16 記憶部
18 モニタ
20 出力部
41 外形データ
42 組織データ
43 合成データ
44 寄せ情報取得部
45 合成データ作成部
46 合成処理部
50 組織データ
51 ハンドル
52 合成データ
53 合成結果
60 組織データ
61 外形データ
62 合成データ
63 合成結果

【特許請求の範囲】
【請求項1】
編地のデザインデータを作成するニットデザインシステムであって、
編地の組織データを作成する組織データ作成部と、
前記組織データと合成する合成データの作成部と、
組織データと合成データとの組み合わせに従って、前記組織データと前記合成データとを編目毎に合成することにより、組織データ及び組織データの外形を変更する合成部とを備えていることを特徴とする、ニットデザインシステム。
【請求項2】
前記合成データは編目の寄せのデータであり、
前記合成データの作成部は、ユーザにより指示される傾斜あるいは編地の外形から寄せ情報を取得する情報の取得手段と、取得した寄せ情報に基づいて合成データを作成する手段、とを備えていることを特徴とする、請求項1のニットデザインシステム。
【請求項3】
合成部により得られた組織データのユニットを、編地の外形データに対しリピートするように配置する際に、編地の外形からはみ出すユニットを削除する不具合修正部を備えていることを特徴とする、請求項1または2のニットデザインシステム。
【請求項4】
編地のデザインデータを作成するニットデザイン方法であって、
編地の組織データを作成するステップと、
前記組織データと合成する合成データを作成するステップと、
組織データと合成データとの組み合わせに従って、前記組織データと前記合成データとを編目毎に合成することにより、組織データ及び組織データの外形を変更するステップ、とを実行することを特徴とする、ニットデザイン方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−255240(P2012−255240A)
【公開日】平成24年12月27日(2012.12.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−129954(P2011−129954)
【出願日】平成23年6月10日(2011.6.10)
【出願人】(000151221)株式会社島精機製作所 (357)
【Fターム(参考)】