ニット構成要素を組み込んだアッパーを有する履物製品
【課題】アッパーに使用する要素および材料の数を減少させることにより、製造効率およびリサイクルの可能性を高めつつ、廃棄物を減少させられる履物製品を提供する。
【解決手段】履物製品10は、ニット構成要素を含むアッパー30と、アッパーに固定されたソール構造20とを有している。ニット構成要素は、一体のニット構成で形成されたチューブ42を区画していてもよく、ストランド43が、チューブの長さを通って延びていてもよい。別の例として、ニット構成要素は、一体のニット構成で形成された、少なくとも一部が同一の広がりを持つ1対のニット層を有していてもよく、複数のフローティングヤーンが、ニット層の間を延びていてもよい。いくつかの構成では、ニットの種類およびヤーンの種類が、ニット構成要素の異なる領域で変化して、異なる特性を付与していてもよい。
【解決手段】履物製品10は、ニット構成要素を含むアッパー30と、アッパーに固定されたソール構造20とを有している。ニット構成要素は、一体のニット構成で形成されたチューブ42を区画していてもよく、ストランド43が、チューブの長さを通って延びていてもよい。別の例として、ニット構成要素は、一体のニット構成で形成された、少なくとも一部が同一の広がりを持つ1対のニット層を有していてもよく、複数のフローティングヤーンが、ニット層の間を延びていてもよい。いくつかの構成では、ニットの種類およびヤーンの種類が、ニット構成要素の異なる領域で変化して、異なる特性を付与していてもよい。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ニット構成要素を組み込んだアッパーを有する履物製品に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の履物製品は一般に、アッパーおよびソール(履物の底)構造という2つの主要な要素を含んでいる。アッパーは、ソール構造に固定されて、足を快適にかつ安定して受け入れるために、履物の内部に空洞を形成する。ソール構造は、アッパーと地面との間に位置するように、アッパーの下面に固定される。例えば運動用の履物製品のいくつかでは、ソール構造はミッドソールおよびアウトソールを含んでいてもよい。ミッドソールは、地面の反力を弱めて、歩くこと、走ることおよび他の歩行活動中に足および脚にかかる応力を低減するポリマー発泡材料で形成されていてもよい。アウトソール、はミッドソールの下面に固定されて、耐久性のある耐摩耗性の材料で形成されたソール構造の地面係止部を形成する。ソール構造は、履物の快適さを高めるために、空洞内に配置され足の下面に近接する中敷きをも含んでいてもよい。
【0003】
アッパーは大略的に、足の甲および指(つま先)領域にわたり、足の内側側部(正中線側の部分)および外側側部(正中線と反対側の部分)に沿って、足のかかと区域の周りに延びている。バスケットボール用履物およびブーツなどのいくつかの履物製品では、アッパーは上方へと、足首の周りに延びて、足首に支持または保護を与えてもよい。アッパーの内部の空洞へのアクセスは一般に、履物のかかと領域にある足首開口部により行われる。アッパーの履き心地を調節するために、しばしば締めひもシステムが組み込まれ、それにより、アッパー内の空洞に足を入れること、および空洞から足を抜くことが可能となる。締めひもシステムにより、着用者がアッパーの特定の寸法(特に周長)を調節して、さまざまな寸法の足を収容できるようにすることもできる。くわえて、アッパーは、締めひもシステムの下方に延びて履物の調節可能性を高めるベロ(舌)を含んでいてもよく、アッパーは、かかとの動きを規制するために、ヒールカウンタを組み込んでいてもよい。
【0004】
さまざまな材料が従来より、アッパーを製造する際に使用されている。例えば運動用の履物のアッパーは、複数の材料要素で形成されていてもよい。耐伸張性、耐摩耗性、柔軟性、通気性、圧縮性および速乾性などを含むさまざまな特性に基づいて、材料を選択してもよい。アッパーの外側について、比較的程度の高い耐摩耗性を付与するために、足指区域およびかかと区域を、皮革、合成皮革またはゴム材料で形成してもよい。皮革、合成皮革またはゴム材料は、外側の他のさまざまな区域について、望ましい程度の柔軟性および通気性を示さない場合がある。したがって、外側の他の区域を、例えば合成繊維で形成してもよい。ゆえに、アッパーの外側は、それぞれがアッパーに異なる特性を付与する多数の材料要素で形成されていてもよい。アッパーの中間層または中央層を、クッションになり快適性を高める軽量のポリマー発泡材料で形成してもよい。同様に、アッパーの内側を、足を直接に包囲する区域からの汗を除去する快適で速乾性の織物で形成してもよい。さまざまな材料要素および他の構成要素を、接着剤または縫製により接合してもよい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】米国特許第6,931,762号明細書
【特許文献2】米国特許第7,347,011号明細書
【特許文献3】米国特許出願公開第2008/0110048号明細書
【特許文献4】米国特許第6,910,288号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
したがって、従来のアッパーは、それぞれが履物のさまざまな区域に異なる特性を付与するさまざまな材料要素で形成されている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
平編み処理または他のさまざまな編み処理を、履物製品のアッパー用のニット構成要素を形成するために使用してもよい。さまざまな特徴をニット構成要素に与えてもよい。例えば、ニット構成要素は、一体のニット構成で形成されたチューブを区画していてもよく、ストランド(撚り糸)がチューブをその長手方法に通って延びていてもよい。別の例として、ニット構成要素は、一体のニット構成で形成された少なくとも一部が同じ広がりを持つ一対のニット層を有していてもよく、複数のフローティングヤーン(定着していない糸)がニット層とニット層との間に延びていてもよい。いくつかの構成では、編みの種類またはヤーンの種類は、異なる特性を付与するために、ニット構成要素の異なる領域で変化してもよい。くわえて、ニット構成要素は、異なる特性を付与するために、ニット構成要素の異なる領域で溶融された熱可塑性のヤーンを組み込んでいてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】履物製品の斜視図である。
【図2】履物製品の外側側部の立面図である。
【図3】履物製品の内側側部の立面図である。
【図4】履物製品の平面図である。
【図5A】図2の5A−5A切断線による、履物製品の断面図である。
【図5B】図2の5B−5B切断線による、履物製品の断面図である。
【図5C】図2の5C−5C切断線による、履物製品の断面図である。
【図5D】図2の5D−5D切断線による、履物製品の断面図である。
【図6】履物製品のアッパーの一部を形成するニット構成要素の平面図である。
【図7A】図2に対応する側方立面図であり、履物製品のさらなる構成を示している。
【図7B】図2に対応する側方立面図であり、履物製品のさらなる構成を示している。
【図7C】図2に対応する側方立面図であり、履物製品のさらなる構成を示している。
【図7D】図2に対応する側方立面図であり、履物製品のさらなる構成を示している。
【図7E】図2に対応する側方立面図であり、履物製品のさらなる構成を示している。
【図7F】図2に対応する側方立面図であり、履物製品のさらなる構成を示している。
【図7G】図2に対応する側方立面図であり、履物製品のさらなる構成を示している。
【図8A】図5Dに対応する断面図であり、履物製品のさらなる構成を示している。
【図8B】図5Dに対応する断面図であり、履物製品のさらなる構成を示している。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の新規で特徴的な局面の長所および特徴は、添付の特許請求の範囲で特に指摘されている。しかし、発明の長所および特徴のよりよい理解を得るには、本発明に関するさまざまな構成および概念を説明および図示した以下の説明事項および添付図面を参照することができる。
上記概要および以下の詳細な説明は、添付図面とともに読むときに、よりよく理解されるであろう。
【0010】
以下の説明および添付図面は、ニット構成要素を含むアッパーを有する履物製品を開示している。履物製品は、歩くことまたは走ることに適した一般的な構成を有するものとして開示されている。アッパーを含む、履物と関連する概念も、野球靴、バスケットボールシューズ、クロストレーニングシューズ、サイクリングシューズ、フットボールシューズ、テニスシューズ、サッカーシューズ、ハイキング用ブーツなどを含む他の種類のさまざまな運動用の履物に適用されてもよい。この概念はまた、ドレスシューズ、ローファー、サンダルおよび作業用ブーツを含む、一般に非運動用とみなされている種類の履物に適用されてもよい。ゆえに、本明細書に開示する概念は、幅広い範囲の種類の履物に当てはまる。
全体的な履物構成
履物製品10が図1〜図5Dに示されており、ソール(履物の底)構造20およびアッパー30を含んでいる。参照の目的で、履物10は、3つの一般的な領域に分けられてもよい。それは、図2および図3に示すように、足先領域11、中足領域12およびかかと領域13である。履物10は、外側側部(体の正中線側に対応する部分)14および内側側部(体の正中線と反対側に対応する部分)15をも含んでいる。足先領域11は一般に、足指、および、中足骨と指骨とを接続する関節に対応する履物10の部分を含んでいる。中足領域12は一般に、足のアーチ区域に対応する履物10の部分を含み、かかと領域13は、踵骨を含む足の後部に対応している。外側側部14および内側側部15は、各領域11〜13を通って延びており、履物10の両側に対応する。領域11〜13および側部14、15は、履物10の厳密な区域を区別することを意図していない。むしろ、領域11〜13および側部14、15は、以下の説明の助けとして、履物10の一般的な区域を示すことを意図している。履物10に加えて、領域11〜13および側部14、15はまた、ソール構造20、アッパー30、および、それらの個々の要素に適用されてもよい。
【0011】
ソール構造20は、アッパー30に固定されていて、履物10を履いたときに、足と地面との間で延びる。ソール構造20の主要な要素は、ミッドソール21、アウトソール22および中敷き23である。ミッドソール21は、アッパー30の下面に固定されていて、歩いていて、走っていて、または他の歩行活動をしていて、足と地面との間で圧縮されたときに、地面の反力を緩和する(減衰させる、すなわち、クッションとなる)圧縮可能なポリマー発泡要素(例えば、ポリウレタンまたはエチルビニルアセテート発泡体)で形成されていてもよい。さらなる構成では、地面の反力を緩和する特性を補足する、流体を充填したブラダ(袋)を、ミッドソール21は組み込んでいてもよく、または、ミッドソール21は、流体を充填したブラダで主に形成されていてもよい。アウトソール22は、ミッドソール21の下面に固定されていて、牽引力(トラクション)を与えるように織られた耐磨耗性のゴム材料で形成されていてもよい。中敷き23は、アッパー30内に配置されていて、足の下面の下を延びるよう配置されている。ソール構造20用のこの構成は、アッパー30に関連して使用されてもよいソール構造の一例を提供しているが、ソール構造20用の他の従来のまたは従来にないさまざまなものを使用してもよい。したがって、ソール構造20、または、アッパー30とともに使用されるソール構造の構造および特徴は、大きく変化してもよい。
【0012】
アッパー30は、ソール構造20に対して足を受け入れ、かつ固定するための空洞を、履物10内に区画する。空洞は、足を収容する形状とされており、足の外側側部に沿い、足の内側側部に沿い、足の上方に、かかとを周りに、足の下方に延びている。少なくともかかと領域13に配置された足首開口部31により、空洞に到達(アクセス)することができる。ひも32が、以下に、より詳細に説明するように、アッパー30の一部を通って延びており、着用者が、アッパー30の寸法を調節し、足を、大きさに合わせて収容できるようにする。より詳しくは、ひも32は、着用者が、足の周りにアッパー30を締め付けることができるようにし、ひも32は、着用者が、アッパー30を緩めて、空洞から(すなわち、足首開口部31を介して)の足の出し入れを容易にできるようにする。くわえて、アッパー30は、ひも32の下方を延びているベロ33を含んでいる。
【0013】
アッパー30の大部分は、ニット構成要素40で形成されている。ニット構成要素40は例えば、平編み処理により製造されていてもよい。ニット構成要素40は、各領域11〜13を通って、外側側部14および内側側部15の両方に沿い、足先領域11の上方に、そしてかかと領域13の周りに延びている。くわえて、ニット構成要素40は、アッパー30の内面および反対側の外面の両方を形成している。このように、ニット構成要素40は、アッパー30内の空洞の少なくとも一部を区画しており、ニット構成要素40は、空洞へ到達できるようにするための足首開口部31も区画している。いくつかの構成では、ニット構成要素40はまた、足の下方に延びていてもよい。しかし、さまざまな図では例示の目的で、シュトローベル式中敷き34が、ニット構成要素40に固定されており、アッパー30の足の下方に延びる部分の大部分を形成している。この構成では、中敷き23は、シュトローベル式中敷き34の上方に延びており、足が置かれる表面を形成している。
ニット構成要素の構成
ニット構成要素40は、アッパー30の別個の区画に異なる特性を付与するさまざまな種類のニット(編んだ生地)を組み込んでいる。図1、図4および図5Aに示された例では、ニット構成要素40は、足先領域11においてアッパー30を通って延びるさまざまな開口部41を形成しているが、一方で、アッパー30の他の多くの区域は、より連続した、または開口部がより少ない構成を有している。アッパー30内で空気が循環するよう、より大きな透過性を付与することに加えて、開口部41は、足先領域11でアッパー30の柔軟性および伸張の両方を増加させてもよい。さらなる例として、ニット構成要素40の特定の区域のために特別な種類のニットを選択することにより変化させてもよい他の特性には、液体に対する透過性、ニット構成要素40が伸張するまたは伸張に抵抗する方向、ニット構成要素40の剛性、およびニット構成要素40の圧縮性が含まれる。異なる特性を付与するための異なる種類のニットを備えた区域を有する履物アッパー用のニット構成要素の追加の例が、上記特許文献1(Dua)および上記特許文献2(Dua, et al.)に見られるであろう。これらは両方とも、引用により本明細書に全体が組み込まれている。関連した事項として、ニット構成要素40内のニットの密度は、例えば浸透性がより少ない部分または剛性がより高い部分を設けるために、アッパー30の別個の区域間で変化してもよい。したがって、ニット構成要素40は、区域について選択された特定の種類のニットに応じて、別個の区域でさまざまな特性を示してもよい。
【0014】
ニット構成要素40は、アッパー30の別個の区域に異なる特性を付与するさまざまな種類のヤーン(糸)を組み込んでいてもよい。さらに、さまざまな種類のヤーンを、さまざまな種類の縫製(ステッチ)と組み合わせることにより、ニット構成要素40は、アッパー30の別個の区域に、ある範囲の異なる特性を付与してもよい。特定の種類のヤーンがニット構成要素40の一区域に付与することになる特性は、ヤーン内のさまざまなフィラメントおよびファイバを形成している材料に、部分的に依存している。例えば綿は、柔らかい、自然な美観を提供し、生分解性である。エラステインおよび伸張性ポリエステルはそれぞれ、十分な伸張および復元力を提供し、伸張性ポリエステルはリサイクル可能でもある。レーヨンは、光沢に優れ、吸湿性を有している。ウールも、絶縁性に加えて、高い吸湿性を有している。ナイロンは、高い伸張を有する、耐久性のある耐摩耗性材料である。ポリエステルは、疎水性の材料で、比較的高い耐久性をも示す。材料に加えて、ヤーンに関連する他の局面が、アッパー30の特性に影響する場合もある。例えば、ヤーンは、単繊維(モノフィラメント)ヤーンまたは多繊維(マルチフィラメント)ヤーンであってもよい。ヤーンはまた、それぞれが異なる材料で形成された別個のフィラメントを含んでいてもよい。ヤーンはまた、2種以上の異なる材料でそれぞれが形成されたフィラメント(例えば、さや−核構成を有するフィラメントまたは半分ずつ異なる材料で形成されたフィラメントによる複合繊維ヤーン)を含んでいてもよい。撚りおよび襞の程度を異ならせること、ならびに、デニールを異ならせることで、ヤーンが配置されたアッパー30の特性に影響を与えてもよい。したがって、ヤーンを形成する材料およびヤーンの他の性質の両方を、アッパー30の別個の区域にさまざまな特性を付与するために選択してもよい。
【0015】
ニットの種類およびヤーンの種類に加えて、ニット構成要素40は、さまざまなニット構造を組み込んでいてもよい。例えば図2および図3を参照して、ニット構成要素40は、ストランド(撚り糸)43が配置されたさまざまなチューブ42を含んでいる。チューブ42は大略的に、図5Bおよび図5Cに示すように、ニット材料の、2つの、重なり合った、少なくとも一部が同一の広がりを持つ層により形成された空洞の構造である。チューブ42を形成するニット材料の一方の層の側部および縁部は、他の層に固定されていてもよいが、中央の区域は一般に、他の要素(例えば、ストランド43)が、ニット材料の2つの層の間に配置されて、チューブ42を貫通することができるように、固定されていない。重なり合った、または少なくとも一部が同一の広がりを持つ層を有する履物アッパー用のニット構成要素の追加の例が、上記特許文献3(Dua, et al.)に見られるであろう。これは、引用により本明細書に組み込まれている。
【0016】
チューブ42は、外側側部14および内側側部15に沿って上方に延びている。各チューブ42は、少なくとも1つの他のチューブ42に隣接して、チューブ対を形成している。一般に、ストランド43の1つが、チューブ対の第1チューブ42を貫通して、第1チューブ42の上端から外部に向かって延び、アッパー30の外部にループ44を形成し、チューブ対の第2チューブ42の上端内へと延び、第2チューブ42を貫通している。すなわち、各ストランド43は、少なくとも2つのチューブ42を貫通しており、ストランド43の露出した部分はループ44を形成している。
【0017】
個々のストランド43は、ストランド43が単独のループ44を形成するよう、2つの隣接したチューブ42(すなわち、単独のチューブ対)を貫通しているだけでもよい。この構成では、ストランド43の端部が、2つの隣接したチューブ42の下端から出ており、当該端部がチューブ42の1つを通って引っ張られるのを防ぐため、例えば、シュトローベル式中敷き34の下方でソール構造20に固定されていてもよい。別の構成では、個々のストランド43は、各チューブ42を貫通して、複数のチューブ対を貫通し複数のループ44を形成していてもよい。さらに別の構成では、1つのストランド43が、外側側部14に配置された各チューブ42を貫通し、別のストランド43が、内側側部15に配置された各チューブ42を貫通していてもよい。ゆえに、一般に、個々のストランド43は、少なくとも1つのチューブ対を貫通して少なくとも1つのループ44を形成しているが、複数のチューブ対を貫通して複数のループ44を形成していてもよい。
【0018】
図1〜図4を参照して、ひも32は、各ループ44を通って延びており、かつ、各ループ44に隣接したニット構成要素40に形成されたさまざまな開口部41を貫通してもいる。ひも32、ひも32が中を通って延びる開口部41、外側側部14および内側側部15の両方にあるさまざまなチューブ42、ストランド43ならびにループ44が組み合わされて、アッパー30用の効果的な締めひもシステムを提供する。ひも32が引っ張り変形させられた場合(すなわち、着用者がひも32を結んだ場合)、ストランド43にも引っ張り変形が起きる場合がある。ストランド43がなければ、ニット構成要素40の他の部分が、引っ張り変形および結果として生じる締められたひも32からの張力に耐えることになる。しかし、ストランド43があれば、引っ張り変形および張力に耐える別個の要素が提供される。さらに、ニット構成要素40の大部分は全体として、引っ張り変形されたときに伸張する種類のニットおよびヤーンを選択して形成することができ、それにより、アッパー30が足の輪郭に一致するようにできる。しかし、ストランド43は一般に、アッパー30に比べて非伸張性であってもよい。
【0019】
ストランド43は、さまざまな材料で形成されていてもよく、例えば、ロープ、スレッド、網、ケーブル、ヤーン、フィラメントまたは鎖の構成を有していてもよい。いくつかの構成では、ストランドは、ニット構成要素40を形成する編み処理中にチューブ42内に配置される。このように、ストランド43は、ニット構成要素40を形成する編み機または他の装置で使用することのできる大略的に一次元の材料で形成されていてもよい。本発明に関連して使用する際、「一次元の材料」またはその変形例は、幅および厚みよりも実質的に大きい長さを持つ大略的に長尺の(細長い)材料を包含することを意図している。したがって、ストランド43に適した材料は、レーヨン、ナイロン、ポリエステル、ポリアクリル、絹、綿、炭素、ガラス、アラミド(例えば、パラアラミドファイバおよびメタアラミドファイバ)超高分子量ポリエチレンならびに液晶ポリマーで形成されたさまざまなフィラメント、ファイバおよびヤーンを含んでいる。フィラメントおよびヤーンに加えて、他の一次元の材料をストランド43に使用してもよい。一次元の材料はしばしば、幅および厚みが実質的に等しい断面(例えば、円形または正方形の断面)を有するものであるが、一次元の材料の中には、厚みよりもやや大きい幅を有するもの(例えば、矩形、楕円、または他の長尺の断面)があってもよい。幅がより大きくても、材料の長さが、材料の幅および厚みよりも実質的に大きければ、材料は一次元であるとみなすことができる。
【0020】
ニット構成要素40により形成される別の構造は、足首開口部31の少なくとも一部の周りに延びている当て物カラー45である。図1〜図3を参照して、カラー45は、ニット構成要素40の他の多くの部分よりも大きな厚みを有している。一般に、カラー45は、図5Dに示すように、ニット材料の、重なり合った、少なくとも一部が同一の広がりを持つ、2つの層(すなわち、チューブ状の構造)と、これらの層の間に延びた複数のフローティングヤーン(定着されていない糸)46とにより形成されている。カラー45を形成するニット材料の一方の層の側部または縁部は、ニット材料の他方の層に固定されていてもよいが、中央の区域は一般に固定されていない。このように、ニット材料の層は、チューブ42に類似したチューブまたはチューブ状の構造を効果的に形成しており、フローティングヤーン46は、ニット材料の2つの層の間に配置されまたは埋め込まれて、チューブを貫通していてもよい。すなわち、フローティングヤーン46は、ニット材料の層の間を延びており、ニット材料の表面に大略的に平行であり、また、層の間の内部空間を貫通および充填している。ニット構成要素40の大部分が、ニット構成要素を形成するよう機械的に操作されたヤーンで形成されているのに対し、フローティングヤーン46は一般に、拘束されておらず、またはカラー45の外部を形成するニット材料の層の間の内部空間内に他の仕方で埋め込まれている。
【0021】
チューブ42が単独のストランド43を含んでいるのに対し、カラー45は、ニット材料の層の間の区域を通って延びる複数のフローティングヤーン46を含んでいる。したがって、ニット構成要素40は、チューブ状の構造内に1本または複数のヤーンを有する大略的にチューブ状の構造を形成していてもよい。さらに、フローティングヤーン46は、さまざまな材料で形成されていてもよく、ニット構成要素40を形成する編み処理中に、カラー45内に配置されてもよい。このように、フローティングヤーン46は、ニット構成要素40を形成する編み機または他の装置で使用することのできる大略的に一次元の材料で形成されていてもよい。
【0022】
フローティングヤーン46があることで、カラー45に圧縮可能な性質が付与され、足首開口部31の区域での履物製品10の快適性が高められる。従来の履物製品の多くは、ポリマー発泡要素または他の圧縮可能な材料をカラー区域に組み込んでいる。従来の履物製品と異なり、カラー45は、フローティングヤーン46を使用して、圧縮可能な構造を提供している。
【0023】
チューブ42とストランド43との組み合わせにより、例えば、締めひもシステムでの伸張に抵抗する構造的な要素がアッパー30に設けられる。同様に、カラー45とフローティングヤーン46との組み合わせにより、例えば、圧縮されて足首開口部31の周りに、より大きな快適性を付与する構造的な要素がアッパー30に設けられる。これらのニット構造は、アッパー30に異なる長所を与えるものの、(a)一体のニット構成で形成されたニット材料の、2つの、重なり合った、少なくとも一部が同一の広がりを持つ層で形成されたチューブ構造と、(b)チューブ状の構造内に埋め込まれ、または他の仕方で配置され、チューブ状の構造の長さの少なくとも一部を通って延びる少なくとも1本のヤーン、ストランドまたは他の一次元の材料とを、それぞれが含んでいるという点で、これらのニット構造は類似している。
平編み処理
ニット構成要素40を製造するために、平編み処理を使用してもよい。平編みは、周期的に折り返されたニット材料を製造するための方法である(すなわち、材料は、両方の側から交互に編まれている)。材料の2つの側(または、面と呼ぶ)は従来から、表(おもて)側(すなわち、外側の、観察者に面する側)および裏側(すなわち、内側の、観察者から反対の側)と呼ばれている。平編みは、ニット構成要素40を形成するための適切なやり方を提供するが、ニット構成要素40に与えられる特徴により、他の編み処理を使用してもよい。使用してもよい他の編み処理の例には、太筒の丸編み、細筒の丸編みジャカード、縦編みの丸編みジャカード、二重編みの丸編みジャカード、縦編みのトリコット、縦編みのラッシェルおよび二重針棒のラッシェルが含まれる。
【0024】
ニット構成要素40を製造するために平編み処理を使用することの利点は、上記特徴のそれぞれを、平編み処理によりニット構成要素40に付与することができることにある。すなわち、平編み処理により、例えば、(a)アッパー30の別個の区域に異なる特性を付与するさまざまな種類のニット、(b)アッパー30の別個の区域に異なる特性を付与するさまざまな種類のヤーン、(c)チューブ42の重なり合ったニット層の構成を有するニット構成要素、(d)チューブ42に埋め込まれたストランド43などの材料、(e)カラー45の重なり合ったニット層の構成を有するニット構成要素、(f)カラー45のニット材料の層の間のフローティングヤーンを有するように、ニット構成要素40を形成することができる。さらに、他の特徴とともに、これらの特徴のそれぞれを、単独の平編み処理によりニット構成要素40に与えてもよい。このように、履物10にとって有利なさまざまな特性および構造的な特徴を有するようアッパー30を実質的に形成するために、平編み処理を使用してもよい。
【0025】
ニット構成要素40を形成するために、1つ以上のヤーンを、個人が機械的に操作してもよい(すなわち、ニット構成要素40を手で形成してもよい)が、平編み機により、比較的たくさんのニット構成要素40を形成する効率的なやり方を提供してもよい。平編み機はまた、足の長さおよび幅の一方または両方に基づく異なる寸法を有する履物に適したアッパー30を形成するため、ニット構成要素40の寸法を変更するために使用してもよい。くわえて、平編み機は、左足および右足の両方に適したアッパー30を形成するため、ニット構成要素40の構造を変更するために使用してもよい。また、個人に合った履き心地を提供するために、ニット構成要素40のさまざまな性質を変更してもよい。したがって、機械式の平編み機を使用することにより、異なる寸法および構成を有する複数のニット構成要素40を形成する有効なやり方を提供してもよい。
【0026】
ニット構成要素40は、一体のニット構成で形成されたさまざまな特徴および構造を組み込んでいる。一般に、これらの特徴および構造は、平編み処理のあとで行われる他の処理(たとえば、縫製、結合、成形)によってではなく、平編み処理によってニット構成要素40に組み込まれるときに、一体のニット構成で形成される。例として、チューブ42とカラー45の部分とは、ニット材料の、重なり合った、少なくとも一部が同一の広がりを持つ層で形成されており、一方の層の側部または縁部は、他方の層に固定されていてもよい。ニット材料の2つの層は全体として、平編み処理中に形成され、補完的な縫製、結合または成形処理を含まない。ゆえに、重なり合った層は、平編み処理により、一体のニット構成で形成されている。別の例では、開口部41を区画する種類のニットで形成されたニット構成要素40の領域が、平編み処理により、一体のニット構成で形成されている。さらに別の例では、フローティングヤーン46が、一体のニット構成で形成されている。
【0027】
平編み処理を使用してニット構成要素40を形成することのさらなる利点は、アッパー30に三次元的な性質を組み込むことができることにある。足の周りに延びて足の形に適合する、湾曲した構造、または他の三次元の構造を、アッパー30は有している。足の形を補完するために、平編み処理により、例えば、いくらか湾曲した、ニット構成要素40の区域を形成してもよい。三次元の性質を有する履物アッパー用のニット構成要素の例が、上記特許文献3(Dua, et al.)に見られるであろう。これは、引用により本明細書に組み込まれている。
【0028】
図6において、ニット構成要素40は、履物10から分離して示されており、平編み処理が施されている。多くの織物材料の縁部は、織物材料を形成するヤーンの端が露出するように切断されているが、ニット構成要素40は、仕上げの済んだ構成を有するよう形成されていてもよい。すなわち、平編みまたは他の編み技術を使用して、ニット構成要素40内のヤーンの端が、ニット構成要素40の縁部に実質的に存在しないよう、ニット構成要素40を形成してもよい。平編みにより形成された、仕上げの済んだ構成の利点は、ニット構成要素40の縁部を形成するヤーンが、よりほどけにくいことにある。これは、横編みニット材料に固有の性質である。仕上げの済んだ縁部を形成することにより、ニット構成要素40の一体性が強化され、ほどけることを防ぐために必要な後処理工程が少なくなるか、または、なくなる。くわえて、緩い(固定されていない)ヤーンはまた、アッパー30の美観を損なうことが、より少ない。すなわち、ニット構成要素40の仕上げの済んだ構成により、製造効率を高めつつ、アッパー20の耐久性および美的品質を向上させてもよい。
【0029】
ニット構成要素40により、履物10のアッパー30に適した構成の一例が提供される。履物製品の使用目的、履物製品の所望の特性および履物製品の有利な構造的属性などに依存して、ニット構成要素40に類似したニット構成要素を、平編みにより形成し、所望の特徴を持たせてもよい。すなわち、(a)ニット構成要素の所望の区域に、特定の種類のニットを配置するため、(b)ニット構成要素の所望の区域に、特定の種類のヤーンを配置するため、(c)ニット構成要素の所望の区域に、チューブ42およびカラー45に類似する重なり合ったニット層を形成するため、(d)ニット層の間に、ストランド43およびフローティングヤーン46に類似するストランドまたはフローティングヤーンを配置するため、(e)ニット構成要素に三次元的な性質を形成するため、ならびに、(f)仕上げの済んだ縁部を付与するために、平編みを使用してもよい。より詳しくは、例えば上記特徴のいずれかを、ニット構成要素内で併用および調和させて、履物アッパー用の特別な特性または構造的属性を形成してもよい。
さらなる構成
上述したアッパー30の特徴により、履物10用のふさわしい構成の一例が提供される。また、さまざまな他の構成を使用してもよい。例として、上記特徴のいくつかは、履物10のいくつかの構成において、ニット構成要素40に存在しなくてもよい。図7Aを参照して、カラー45は、ニット構成要素40に存在せず、ニット材料の単独の層が、足首開口部31の周りに延びる区域を形成している。同様に、チューブ42およびストランド43は、図7Bに存在しない。例えば特定の運動に有効な構造または特徴のみを使用することにより、履物10に、必要なまたは有利な要素のみを有する最小の構成を持たせてもよい。
【0030】
上述したように、アッパー30の別個の区域は、それらの区域で異なる種類のニットまたはヤーンを使用することにより、異なる特性を有していてもよい。特定の区域の特性を修正する別のやり方は、これらの区域のヤーンの熱可塑性材料を溶融することに関連する。すなわち、特定の区域を、熱可塑性ポリマー材料を組み込んだヤーンで形成してもよい。熱可塑性ポリマー材料を加熱することにより、隣接するヤーン、フィラメントまたはファイバが、これらの区域で互いに溶融(溶結)してニットループを互いに固定し、それにより剛性または耐磨耗性を向上してもよい。いくつかの構成では、ニット構成要素40の個々の層(例えば、チューブ42もしくはカラー45の外層もしくは内層)またはニット構成要素40内に埋め込まれたヤーン(すなわち、ストランド43もしくはフローティングヤーン46)を、熱可塑性ポリマー材料を組み込んだヤーンで形成してもよい。また、代わりに、ニット構成要素40全体を、熱可塑性ポリマー材料を組み込んだヤーンで形成してもよく、溶融された区域47に対応する部分のみを加熱して特性を修正してもよい。図7Cを参照して、ニット構成要素40は、2つの溶融された区域47を含んでいる。溶融された区域47の一方は、かかと領域13にあり、履物10にヒールカウンタを効果的に提供するために、より大きな剛性を付与してもよい。溶融された領域を有する履物アッパーの例が、上記特許文献4(Dua)に見られるであろう。これは、引用により本明細書に組み込まれている。別の溶融された区域47が足先領域11にあり、足先区域に、より大きな耐摩耗性を付与していてもよい。溶融はまた、開口部41を補強するため、柔軟性の低い区域を設けるため、または、透過性を減少するために使用されてもよい。
【0031】
ニット構成要素40の区域を溶融することで、これらの区域に、より大きな剛性および耐摩耗性を付与することができる一方で、別の方法により、特定の区域のニット密度を増加させてもよい。図7Dを参照して、ニット構成要素40は2つの密度の高い区域48を含んでいる。密度の高い区域48の一方は、かかと領域13にあり、履物10にヒールカウンタを効果的に提供するために、より大きな剛性を付与してもよい。別の密度の高い区域48が足先領域11にあり、足先区域に、より大きな耐摩耗性を付与していてもよい。溶融された区域47を形成するのと同様に、より密度の高いニットを形成することもまた、開口部41を補強するため、柔軟性の低い区域を設けるため、または、透過性を減少するために使用されてもよい。
【0032】
ニット構成要素40は、アッパー30の内面および反対側の外面の両方を形成している。履物10のいくつかの構成では、他の要素をニット構成要素40と組み合わせて使用してもよく、他の要素で、内面または外面の一部または全体を形成してもよい。図7Eを参照して、ヒールカウンタ35は、かかと領域13でニット構成要素40に固定されており、比較的剛性の高いポリマー材料で形成されていてもよい。接着剤結合処理を使用して、ヒールカウンタ35をニット構成要素40に接合してもよい。他の構成では、裏地を内面にわたって延ばして、アッパー30内に空洞の一部を形成してもよい。他の材料を、外面に溶融接合、接着または結合して、ニット構成要素40のニット構造を保護してもよく、または、履物10に他の利点を与えてもよい。
【0033】
図2および図3にはチューブ42が示されており、少なくとも1つの他のチューブ42に直接に隣接している。しかし、チューブ42の相対的な位置は、大きく変化してもよい。図7Fを参照して、チューブ42は、互いに分離されており、V字状の構造を形成している。チューブ42を締めひもシステムの一部として使用してもよいが、チューブ42または類似の構造を、長手方向の耐伸張性を付与するために使用してもよい。図7Gを参照して、チューブ42は長手方向に延びており、チューブ42内のストランド43は、領域11〜13それぞれを通しての伸張に抵抗してもよい。
【0034】
ヤーン46をカラー45に組み込むやり方は、大きく変化してもよい。上記構成では、フローティングヤーン46は、チューブ状の構造を通過するときに、カラー45を形成するニット材料の層と大略的に平行である。図8Aを参照して、ヤーン46は、ニット材料の1つの層からニット材料の別の層へと延びており、これらの層に大略的に垂直であり、それにより、平編み処理により形成されたスペーサ-ニット材料に類似した構造を付与する。図8Aの拡大された区域に示すように、ヤーン46は、ニット層を形成するヤーンの周りに延びていてもよい。1つの構成では、ヤーン46は、ニット層を形成するヤーンと同じであってもよい。すなわち、ヤーン46は、ニット層を形成するヤーンの編まれていない部分であってもよい。別の構成では、ヤーン46は、固定されていなくてもよく、または、他のやり方で、ニット層を形成するヤーンを分離していても(すなわち、ヤーンの周りに延びていなくても)よい。したがって、ヤーン46を、さまざまなやり方で、ニット構成要素40に組み込んでもよい。さらなる事項として、アッパー30のいくつかの構成は、ニット構成要素40の製造後に、ニット材料の層の間に配置されるポリマー発泡材料を含んでいてもよい。
【0035】
上述したように、カラー45は、スペーサ-ニット材料に類似した構造を有していてもよく、その際、ヤーン46は、ニット材料の1つの層からニット材料の別の層へと、これらの層に大略的に垂直な方向へ延びている。カラー45は、この構成を持たせるのに適した区域であるが、平編み処理を使用して、ニット構成要素40の区域にスペーサ-ニット材料の構造を付与してもよい。例えば、足先領域11または中足領域12の側部14および15のいずれかにスペーサ-ニット構成を配置して、アッパー20にクッション性の性質または圧縮可能な性質を付与してもよい。また、シュトローベル式中敷き24またはベロ33の一部を、平編み処理により形成して、スペーサ-ニット構成を持たせてもよい。さらに、単繊維ヤーンまたは織物ヤーンを含むさまざまな種類のヤーンを、スペーサ-ニット構成を有するニット構成要素40の区域用に使用してもよい。
【0036】
上述したさまざまな構成において、中敷き23は、アッパー20の空洞内に配置された別個の要素であり、シュトローベル式中敷き34は、ニット構成要素40の縁部に接合された別個の要素である。平編み処理はまた、図8Bに示すように、一体のニット構成の中敷き23およびシュトローベル式中敷き34を形成するために使用されていてもよい。カラー45と同様に、一体のニット構成の中敷き23は、圧縮可能な構成を付与するフローティングヤーン46を含むよう構成されていてもよい。また、平編み処理を使用して、一体のニット構成の他の要素(ベロ33など)を形成してもよい。
製造効率
背景技術で説明したように、例えば運動用の履物のアッパーは、履物のさまざまな区域に異なる特性をそれぞれが付与する複数の材料要素で形成されていてもよい。従来のアッパーを製造するために、材料要素を所望の形状に切断し、次いで、通常は縫製または接着剤結合により、互いに接合する。アッパーに組み込まれる材料要素の数および種類が増加すると、材料要素の輸送、保管、切断および接合に関連する時間および費用も増加する場合がある。切断および縫製処理による廃材も、アッパーに組み込まれる材料要素の数および種類が増加すると、よりたくさん蓄積される。さらに、より多くの材料、材料要素および他の構成要素を有する履物は、より少ない要素および材料で形成されたアッパーよりも、リサイクルが困難である。ゆえに、アッパーに使用する要素および材料の数を減少させることにより、製造効率およびリサイクルの可能性を高めつつ、廃棄物を減少させられる場合がある。
【0037】
複数の材料要素を含むさまざまな製造工程が従来のアッパーには必要であったが、ニット構成要素40は単独の平編み処理により形成することができる。平編み処理により、ニット構成要素40を履物10に組み込むために必要な工程の数が、比較的少なくなる。より詳しくは、シュトローベル式中敷き34をニット構成要素40の縁部に接合し、かかと領域13の2つの縁部を接合し、ひも32を組み込み、実質的に完成されたアッパー30をソール構造20に固定する。ニット構成要素40を使用することで、従来の製造処理に比べ、製造工程の全体的な数を低減することができる。くわえて、リサイクルの可能性を高めつつ、廃棄物を減少させられる場合がある。
【0038】
さまざまな構成を参照しつつ、上記および添付図面において、本発明を開示している。しかし、本開示の目的は、本発明に関するさまざまな特徴および概念の例を提供することであり、発明の範囲を限定することではない。添付の特許請求の範囲に規定された本発明の範囲を逸脱することなく、多くの変更および修正を上記構成に行えることを、当業者は理解するであろう。
【技術分野】
【0001】
本発明は、ニット構成要素を組み込んだアッパーを有する履物製品に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の履物製品は一般に、アッパーおよびソール(履物の底)構造という2つの主要な要素を含んでいる。アッパーは、ソール構造に固定されて、足を快適にかつ安定して受け入れるために、履物の内部に空洞を形成する。ソール構造は、アッパーと地面との間に位置するように、アッパーの下面に固定される。例えば運動用の履物製品のいくつかでは、ソール構造はミッドソールおよびアウトソールを含んでいてもよい。ミッドソールは、地面の反力を弱めて、歩くこと、走ることおよび他の歩行活動中に足および脚にかかる応力を低減するポリマー発泡材料で形成されていてもよい。アウトソール、はミッドソールの下面に固定されて、耐久性のある耐摩耗性の材料で形成されたソール構造の地面係止部を形成する。ソール構造は、履物の快適さを高めるために、空洞内に配置され足の下面に近接する中敷きをも含んでいてもよい。
【0003】
アッパーは大略的に、足の甲および指(つま先)領域にわたり、足の内側側部(正中線側の部分)および外側側部(正中線と反対側の部分)に沿って、足のかかと区域の周りに延びている。バスケットボール用履物およびブーツなどのいくつかの履物製品では、アッパーは上方へと、足首の周りに延びて、足首に支持または保護を与えてもよい。アッパーの内部の空洞へのアクセスは一般に、履物のかかと領域にある足首開口部により行われる。アッパーの履き心地を調節するために、しばしば締めひもシステムが組み込まれ、それにより、アッパー内の空洞に足を入れること、および空洞から足を抜くことが可能となる。締めひもシステムにより、着用者がアッパーの特定の寸法(特に周長)を調節して、さまざまな寸法の足を収容できるようにすることもできる。くわえて、アッパーは、締めひもシステムの下方に延びて履物の調節可能性を高めるベロ(舌)を含んでいてもよく、アッパーは、かかとの動きを規制するために、ヒールカウンタを組み込んでいてもよい。
【0004】
さまざまな材料が従来より、アッパーを製造する際に使用されている。例えば運動用の履物のアッパーは、複数の材料要素で形成されていてもよい。耐伸張性、耐摩耗性、柔軟性、通気性、圧縮性および速乾性などを含むさまざまな特性に基づいて、材料を選択してもよい。アッパーの外側について、比較的程度の高い耐摩耗性を付与するために、足指区域およびかかと区域を、皮革、合成皮革またはゴム材料で形成してもよい。皮革、合成皮革またはゴム材料は、外側の他のさまざまな区域について、望ましい程度の柔軟性および通気性を示さない場合がある。したがって、外側の他の区域を、例えば合成繊維で形成してもよい。ゆえに、アッパーの外側は、それぞれがアッパーに異なる特性を付与する多数の材料要素で形成されていてもよい。アッパーの中間層または中央層を、クッションになり快適性を高める軽量のポリマー発泡材料で形成してもよい。同様に、アッパーの内側を、足を直接に包囲する区域からの汗を除去する快適で速乾性の織物で形成してもよい。さまざまな材料要素および他の構成要素を、接着剤または縫製により接合してもよい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】米国特許第6,931,762号明細書
【特許文献2】米国特許第7,347,011号明細書
【特許文献3】米国特許出願公開第2008/0110048号明細書
【特許文献4】米国特許第6,910,288号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
したがって、従来のアッパーは、それぞれが履物のさまざまな区域に異なる特性を付与するさまざまな材料要素で形成されている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
平編み処理または他のさまざまな編み処理を、履物製品のアッパー用のニット構成要素を形成するために使用してもよい。さまざまな特徴をニット構成要素に与えてもよい。例えば、ニット構成要素は、一体のニット構成で形成されたチューブを区画していてもよく、ストランド(撚り糸)がチューブをその長手方法に通って延びていてもよい。別の例として、ニット構成要素は、一体のニット構成で形成された少なくとも一部が同じ広がりを持つ一対のニット層を有していてもよく、複数のフローティングヤーン(定着していない糸)がニット層とニット層との間に延びていてもよい。いくつかの構成では、編みの種類またはヤーンの種類は、異なる特性を付与するために、ニット構成要素の異なる領域で変化してもよい。くわえて、ニット構成要素は、異なる特性を付与するために、ニット構成要素の異なる領域で溶融された熱可塑性のヤーンを組み込んでいてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】履物製品の斜視図である。
【図2】履物製品の外側側部の立面図である。
【図3】履物製品の内側側部の立面図である。
【図4】履物製品の平面図である。
【図5A】図2の5A−5A切断線による、履物製品の断面図である。
【図5B】図2の5B−5B切断線による、履物製品の断面図である。
【図5C】図2の5C−5C切断線による、履物製品の断面図である。
【図5D】図2の5D−5D切断線による、履物製品の断面図である。
【図6】履物製品のアッパーの一部を形成するニット構成要素の平面図である。
【図7A】図2に対応する側方立面図であり、履物製品のさらなる構成を示している。
【図7B】図2に対応する側方立面図であり、履物製品のさらなる構成を示している。
【図7C】図2に対応する側方立面図であり、履物製品のさらなる構成を示している。
【図7D】図2に対応する側方立面図であり、履物製品のさらなる構成を示している。
【図7E】図2に対応する側方立面図であり、履物製品のさらなる構成を示している。
【図7F】図2に対応する側方立面図であり、履物製品のさらなる構成を示している。
【図7G】図2に対応する側方立面図であり、履物製品のさらなる構成を示している。
【図8A】図5Dに対応する断面図であり、履物製品のさらなる構成を示している。
【図8B】図5Dに対応する断面図であり、履物製品のさらなる構成を示している。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の新規で特徴的な局面の長所および特徴は、添付の特許請求の範囲で特に指摘されている。しかし、発明の長所および特徴のよりよい理解を得るには、本発明に関するさまざまな構成および概念を説明および図示した以下の説明事項および添付図面を参照することができる。
上記概要および以下の詳細な説明は、添付図面とともに読むときに、よりよく理解されるであろう。
【0010】
以下の説明および添付図面は、ニット構成要素を含むアッパーを有する履物製品を開示している。履物製品は、歩くことまたは走ることに適した一般的な構成を有するものとして開示されている。アッパーを含む、履物と関連する概念も、野球靴、バスケットボールシューズ、クロストレーニングシューズ、サイクリングシューズ、フットボールシューズ、テニスシューズ、サッカーシューズ、ハイキング用ブーツなどを含む他の種類のさまざまな運動用の履物に適用されてもよい。この概念はまた、ドレスシューズ、ローファー、サンダルおよび作業用ブーツを含む、一般に非運動用とみなされている種類の履物に適用されてもよい。ゆえに、本明細書に開示する概念は、幅広い範囲の種類の履物に当てはまる。
全体的な履物構成
履物製品10が図1〜図5Dに示されており、ソール(履物の底)構造20およびアッパー30を含んでいる。参照の目的で、履物10は、3つの一般的な領域に分けられてもよい。それは、図2および図3に示すように、足先領域11、中足領域12およびかかと領域13である。履物10は、外側側部(体の正中線側に対応する部分)14および内側側部(体の正中線と反対側に対応する部分)15をも含んでいる。足先領域11は一般に、足指、および、中足骨と指骨とを接続する関節に対応する履物10の部分を含んでいる。中足領域12は一般に、足のアーチ区域に対応する履物10の部分を含み、かかと領域13は、踵骨を含む足の後部に対応している。外側側部14および内側側部15は、各領域11〜13を通って延びており、履物10の両側に対応する。領域11〜13および側部14、15は、履物10の厳密な区域を区別することを意図していない。むしろ、領域11〜13および側部14、15は、以下の説明の助けとして、履物10の一般的な区域を示すことを意図している。履物10に加えて、領域11〜13および側部14、15はまた、ソール構造20、アッパー30、および、それらの個々の要素に適用されてもよい。
【0011】
ソール構造20は、アッパー30に固定されていて、履物10を履いたときに、足と地面との間で延びる。ソール構造20の主要な要素は、ミッドソール21、アウトソール22および中敷き23である。ミッドソール21は、アッパー30の下面に固定されていて、歩いていて、走っていて、または他の歩行活動をしていて、足と地面との間で圧縮されたときに、地面の反力を緩和する(減衰させる、すなわち、クッションとなる)圧縮可能なポリマー発泡要素(例えば、ポリウレタンまたはエチルビニルアセテート発泡体)で形成されていてもよい。さらなる構成では、地面の反力を緩和する特性を補足する、流体を充填したブラダ(袋)を、ミッドソール21は組み込んでいてもよく、または、ミッドソール21は、流体を充填したブラダで主に形成されていてもよい。アウトソール22は、ミッドソール21の下面に固定されていて、牽引力(トラクション)を与えるように織られた耐磨耗性のゴム材料で形成されていてもよい。中敷き23は、アッパー30内に配置されていて、足の下面の下を延びるよう配置されている。ソール構造20用のこの構成は、アッパー30に関連して使用されてもよいソール構造の一例を提供しているが、ソール構造20用の他の従来のまたは従来にないさまざまなものを使用してもよい。したがって、ソール構造20、または、アッパー30とともに使用されるソール構造の構造および特徴は、大きく変化してもよい。
【0012】
アッパー30は、ソール構造20に対して足を受け入れ、かつ固定するための空洞を、履物10内に区画する。空洞は、足を収容する形状とされており、足の外側側部に沿い、足の内側側部に沿い、足の上方に、かかとを周りに、足の下方に延びている。少なくともかかと領域13に配置された足首開口部31により、空洞に到達(アクセス)することができる。ひも32が、以下に、より詳細に説明するように、アッパー30の一部を通って延びており、着用者が、アッパー30の寸法を調節し、足を、大きさに合わせて収容できるようにする。より詳しくは、ひも32は、着用者が、足の周りにアッパー30を締め付けることができるようにし、ひも32は、着用者が、アッパー30を緩めて、空洞から(すなわち、足首開口部31を介して)の足の出し入れを容易にできるようにする。くわえて、アッパー30は、ひも32の下方を延びているベロ33を含んでいる。
【0013】
アッパー30の大部分は、ニット構成要素40で形成されている。ニット構成要素40は例えば、平編み処理により製造されていてもよい。ニット構成要素40は、各領域11〜13を通って、外側側部14および内側側部15の両方に沿い、足先領域11の上方に、そしてかかと領域13の周りに延びている。くわえて、ニット構成要素40は、アッパー30の内面および反対側の外面の両方を形成している。このように、ニット構成要素40は、アッパー30内の空洞の少なくとも一部を区画しており、ニット構成要素40は、空洞へ到達できるようにするための足首開口部31も区画している。いくつかの構成では、ニット構成要素40はまた、足の下方に延びていてもよい。しかし、さまざまな図では例示の目的で、シュトローベル式中敷き34が、ニット構成要素40に固定されており、アッパー30の足の下方に延びる部分の大部分を形成している。この構成では、中敷き23は、シュトローベル式中敷き34の上方に延びており、足が置かれる表面を形成している。
ニット構成要素の構成
ニット構成要素40は、アッパー30の別個の区画に異なる特性を付与するさまざまな種類のニット(編んだ生地)を組み込んでいる。図1、図4および図5Aに示された例では、ニット構成要素40は、足先領域11においてアッパー30を通って延びるさまざまな開口部41を形成しているが、一方で、アッパー30の他の多くの区域は、より連続した、または開口部がより少ない構成を有している。アッパー30内で空気が循環するよう、より大きな透過性を付与することに加えて、開口部41は、足先領域11でアッパー30の柔軟性および伸張の両方を増加させてもよい。さらなる例として、ニット構成要素40の特定の区域のために特別な種類のニットを選択することにより変化させてもよい他の特性には、液体に対する透過性、ニット構成要素40が伸張するまたは伸張に抵抗する方向、ニット構成要素40の剛性、およびニット構成要素40の圧縮性が含まれる。異なる特性を付与するための異なる種類のニットを備えた区域を有する履物アッパー用のニット構成要素の追加の例が、上記特許文献1(Dua)および上記特許文献2(Dua, et al.)に見られるであろう。これらは両方とも、引用により本明細書に全体が組み込まれている。関連した事項として、ニット構成要素40内のニットの密度は、例えば浸透性がより少ない部分または剛性がより高い部分を設けるために、アッパー30の別個の区域間で変化してもよい。したがって、ニット構成要素40は、区域について選択された特定の種類のニットに応じて、別個の区域でさまざまな特性を示してもよい。
【0014】
ニット構成要素40は、アッパー30の別個の区域に異なる特性を付与するさまざまな種類のヤーン(糸)を組み込んでいてもよい。さらに、さまざまな種類のヤーンを、さまざまな種類の縫製(ステッチ)と組み合わせることにより、ニット構成要素40は、アッパー30の別個の区域に、ある範囲の異なる特性を付与してもよい。特定の種類のヤーンがニット構成要素40の一区域に付与することになる特性は、ヤーン内のさまざまなフィラメントおよびファイバを形成している材料に、部分的に依存している。例えば綿は、柔らかい、自然な美観を提供し、生分解性である。エラステインおよび伸張性ポリエステルはそれぞれ、十分な伸張および復元力を提供し、伸張性ポリエステルはリサイクル可能でもある。レーヨンは、光沢に優れ、吸湿性を有している。ウールも、絶縁性に加えて、高い吸湿性を有している。ナイロンは、高い伸張を有する、耐久性のある耐摩耗性材料である。ポリエステルは、疎水性の材料で、比較的高い耐久性をも示す。材料に加えて、ヤーンに関連する他の局面が、アッパー30の特性に影響する場合もある。例えば、ヤーンは、単繊維(モノフィラメント)ヤーンまたは多繊維(マルチフィラメント)ヤーンであってもよい。ヤーンはまた、それぞれが異なる材料で形成された別個のフィラメントを含んでいてもよい。ヤーンはまた、2種以上の異なる材料でそれぞれが形成されたフィラメント(例えば、さや−核構成を有するフィラメントまたは半分ずつ異なる材料で形成されたフィラメントによる複合繊維ヤーン)を含んでいてもよい。撚りおよび襞の程度を異ならせること、ならびに、デニールを異ならせることで、ヤーンが配置されたアッパー30の特性に影響を与えてもよい。したがって、ヤーンを形成する材料およびヤーンの他の性質の両方を、アッパー30の別個の区域にさまざまな特性を付与するために選択してもよい。
【0015】
ニットの種類およびヤーンの種類に加えて、ニット構成要素40は、さまざまなニット構造を組み込んでいてもよい。例えば図2および図3を参照して、ニット構成要素40は、ストランド(撚り糸)43が配置されたさまざまなチューブ42を含んでいる。チューブ42は大略的に、図5Bおよび図5Cに示すように、ニット材料の、2つの、重なり合った、少なくとも一部が同一の広がりを持つ層により形成された空洞の構造である。チューブ42を形成するニット材料の一方の層の側部および縁部は、他の層に固定されていてもよいが、中央の区域は一般に、他の要素(例えば、ストランド43)が、ニット材料の2つの層の間に配置されて、チューブ42を貫通することができるように、固定されていない。重なり合った、または少なくとも一部が同一の広がりを持つ層を有する履物アッパー用のニット構成要素の追加の例が、上記特許文献3(Dua, et al.)に見られるであろう。これは、引用により本明細書に組み込まれている。
【0016】
チューブ42は、外側側部14および内側側部15に沿って上方に延びている。各チューブ42は、少なくとも1つの他のチューブ42に隣接して、チューブ対を形成している。一般に、ストランド43の1つが、チューブ対の第1チューブ42を貫通して、第1チューブ42の上端から外部に向かって延び、アッパー30の外部にループ44を形成し、チューブ対の第2チューブ42の上端内へと延び、第2チューブ42を貫通している。すなわち、各ストランド43は、少なくとも2つのチューブ42を貫通しており、ストランド43の露出した部分はループ44を形成している。
【0017】
個々のストランド43は、ストランド43が単独のループ44を形成するよう、2つの隣接したチューブ42(すなわち、単独のチューブ対)を貫通しているだけでもよい。この構成では、ストランド43の端部が、2つの隣接したチューブ42の下端から出ており、当該端部がチューブ42の1つを通って引っ張られるのを防ぐため、例えば、シュトローベル式中敷き34の下方でソール構造20に固定されていてもよい。別の構成では、個々のストランド43は、各チューブ42を貫通して、複数のチューブ対を貫通し複数のループ44を形成していてもよい。さらに別の構成では、1つのストランド43が、外側側部14に配置された各チューブ42を貫通し、別のストランド43が、内側側部15に配置された各チューブ42を貫通していてもよい。ゆえに、一般に、個々のストランド43は、少なくとも1つのチューブ対を貫通して少なくとも1つのループ44を形成しているが、複数のチューブ対を貫通して複数のループ44を形成していてもよい。
【0018】
図1〜図4を参照して、ひも32は、各ループ44を通って延びており、かつ、各ループ44に隣接したニット構成要素40に形成されたさまざまな開口部41を貫通してもいる。ひも32、ひも32が中を通って延びる開口部41、外側側部14および内側側部15の両方にあるさまざまなチューブ42、ストランド43ならびにループ44が組み合わされて、アッパー30用の効果的な締めひもシステムを提供する。ひも32が引っ張り変形させられた場合(すなわち、着用者がひも32を結んだ場合)、ストランド43にも引っ張り変形が起きる場合がある。ストランド43がなければ、ニット構成要素40の他の部分が、引っ張り変形および結果として生じる締められたひも32からの張力に耐えることになる。しかし、ストランド43があれば、引っ張り変形および張力に耐える別個の要素が提供される。さらに、ニット構成要素40の大部分は全体として、引っ張り変形されたときに伸張する種類のニットおよびヤーンを選択して形成することができ、それにより、アッパー30が足の輪郭に一致するようにできる。しかし、ストランド43は一般に、アッパー30に比べて非伸張性であってもよい。
【0019】
ストランド43は、さまざまな材料で形成されていてもよく、例えば、ロープ、スレッド、網、ケーブル、ヤーン、フィラメントまたは鎖の構成を有していてもよい。いくつかの構成では、ストランドは、ニット構成要素40を形成する編み処理中にチューブ42内に配置される。このように、ストランド43は、ニット構成要素40を形成する編み機または他の装置で使用することのできる大略的に一次元の材料で形成されていてもよい。本発明に関連して使用する際、「一次元の材料」またはその変形例は、幅および厚みよりも実質的に大きい長さを持つ大略的に長尺の(細長い)材料を包含することを意図している。したがって、ストランド43に適した材料は、レーヨン、ナイロン、ポリエステル、ポリアクリル、絹、綿、炭素、ガラス、アラミド(例えば、パラアラミドファイバおよびメタアラミドファイバ)超高分子量ポリエチレンならびに液晶ポリマーで形成されたさまざまなフィラメント、ファイバおよびヤーンを含んでいる。フィラメントおよびヤーンに加えて、他の一次元の材料をストランド43に使用してもよい。一次元の材料はしばしば、幅および厚みが実質的に等しい断面(例えば、円形または正方形の断面)を有するものであるが、一次元の材料の中には、厚みよりもやや大きい幅を有するもの(例えば、矩形、楕円、または他の長尺の断面)があってもよい。幅がより大きくても、材料の長さが、材料の幅および厚みよりも実質的に大きければ、材料は一次元であるとみなすことができる。
【0020】
ニット構成要素40により形成される別の構造は、足首開口部31の少なくとも一部の周りに延びている当て物カラー45である。図1〜図3を参照して、カラー45は、ニット構成要素40の他の多くの部分よりも大きな厚みを有している。一般に、カラー45は、図5Dに示すように、ニット材料の、重なり合った、少なくとも一部が同一の広がりを持つ、2つの層(すなわち、チューブ状の構造)と、これらの層の間に延びた複数のフローティングヤーン(定着されていない糸)46とにより形成されている。カラー45を形成するニット材料の一方の層の側部または縁部は、ニット材料の他方の層に固定されていてもよいが、中央の区域は一般に固定されていない。このように、ニット材料の層は、チューブ42に類似したチューブまたはチューブ状の構造を効果的に形成しており、フローティングヤーン46は、ニット材料の2つの層の間に配置されまたは埋め込まれて、チューブを貫通していてもよい。すなわち、フローティングヤーン46は、ニット材料の層の間を延びており、ニット材料の表面に大略的に平行であり、また、層の間の内部空間を貫通および充填している。ニット構成要素40の大部分が、ニット構成要素を形成するよう機械的に操作されたヤーンで形成されているのに対し、フローティングヤーン46は一般に、拘束されておらず、またはカラー45の外部を形成するニット材料の層の間の内部空間内に他の仕方で埋め込まれている。
【0021】
チューブ42が単独のストランド43を含んでいるのに対し、カラー45は、ニット材料の層の間の区域を通って延びる複数のフローティングヤーン46を含んでいる。したがって、ニット構成要素40は、チューブ状の構造内に1本または複数のヤーンを有する大略的にチューブ状の構造を形成していてもよい。さらに、フローティングヤーン46は、さまざまな材料で形成されていてもよく、ニット構成要素40を形成する編み処理中に、カラー45内に配置されてもよい。このように、フローティングヤーン46は、ニット構成要素40を形成する編み機または他の装置で使用することのできる大略的に一次元の材料で形成されていてもよい。
【0022】
フローティングヤーン46があることで、カラー45に圧縮可能な性質が付与され、足首開口部31の区域での履物製品10の快適性が高められる。従来の履物製品の多くは、ポリマー発泡要素または他の圧縮可能な材料をカラー区域に組み込んでいる。従来の履物製品と異なり、カラー45は、フローティングヤーン46を使用して、圧縮可能な構造を提供している。
【0023】
チューブ42とストランド43との組み合わせにより、例えば、締めひもシステムでの伸張に抵抗する構造的な要素がアッパー30に設けられる。同様に、カラー45とフローティングヤーン46との組み合わせにより、例えば、圧縮されて足首開口部31の周りに、より大きな快適性を付与する構造的な要素がアッパー30に設けられる。これらのニット構造は、アッパー30に異なる長所を与えるものの、(a)一体のニット構成で形成されたニット材料の、2つの、重なり合った、少なくとも一部が同一の広がりを持つ層で形成されたチューブ構造と、(b)チューブ状の構造内に埋め込まれ、または他の仕方で配置され、チューブ状の構造の長さの少なくとも一部を通って延びる少なくとも1本のヤーン、ストランドまたは他の一次元の材料とを、それぞれが含んでいるという点で、これらのニット構造は類似している。
平編み処理
ニット構成要素40を製造するために、平編み処理を使用してもよい。平編みは、周期的に折り返されたニット材料を製造するための方法である(すなわち、材料は、両方の側から交互に編まれている)。材料の2つの側(または、面と呼ぶ)は従来から、表(おもて)側(すなわち、外側の、観察者に面する側)および裏側(すなわち、内側の、観察者から反対の側)と呼ばれている。平編みは、ニット構成要素40を形成するための適切なやり方を提供するが、ニット構成要素40に与えられる特徴により、他の編み処理を使用してもよい。使用してもよい他の編み処理の例には、太筒の丸編み、細筒の丸編みジャカード、縦編みの丸編みジャカード、二重編みの丸編みジャカード、縦編みのトリコット、縦編みのラッシェルおよび二重針棒のラッシェルが含まれる。
【0024】
ニット構成要素40を製造するために平編み処理を使用することの利点は、上記特徴のそれぞれを、平編み処理によりニット構成要素40に付与することができることにある。すなわち、平編み処理により、例えば、(a)アッパー30の別個の区域に異なる特性を付与するさまざまな種類のニット、(b)アッパー30の別個の区域に異なる特性を付与するさまざまな種類のヤーン、(c)チューブ42の重なり合ったニット層の構成を有するニット構成要素、(d)チューブ42に埋め込まれたストランド43などの材料、(e)カラー45の重なり合ったニット層の構成を有するニット構成要素、(f)カラー45のニット材料の層の間のフローティングヤーンを有するように、ニット構成要素40を形成することができる。さらに、他の特徴とともに、これらの特徴のそれぞれを、単独の平編み処理によりニット構成要素40に与えてもよい。このように、履物10にとって有利なさまざまな特性および構造的な特徴を有するようアッパー30を実質的に形成するために、平編み処理を使用してもよい。
【0025】
ニット構成要素40を形成するために、1つ以上のヤーンを、個人が機械的に操作してもよい(すなわち、ニット構成要素40を手で形成してもよい)が、平編み機により、比較的たくさんのニット構成要素40を形成する効率的なやり方を提供してもよい。平編み機はまた、足の長さおよび幅の一方または両方に基づく異なる寸法を有する履物に適したアッパー30を形成するため、ニット構成要素40の寸法を変更するために使用してもよい。くわえて、平編み機は、左足および右足の両方に適したアッパー30を形成するため、ニット構成要素40の構造を変更するために使用してもよい。また、個人に合った履き心地を提供するために、ニット構成要素40のさまざまな性質を変更してもよい。したがって、機械式の平編み機を使用することにより、異なる寸法および構成を有する複数のニット構成要素40を形成する有効なやり方を提供してもよい。
【0026】
ニット構成要素40は、一体のニット構成で形成されたさまざまな特徴および構造を組み込んでいる。一般に、これらの特徴および構造は、平編み処理のあとで行われる他の処理(たとえば、縫製、結合、成形)によってではなく、平編み処理によってニット構成要素40に組み込まれるときに、一体のニット構成で形成される。例として、チューブ42とカラー45の部分とは、ニット材料の、重なり合った、少なくとも一部が同一の広がりを持つ層で形成されており、一方の層の側部または縁部は、他方の層に固定されていてもよい。ニット材料の2つの層は全体として、平編み処理中に形成され、補完的な縫製、結合または成形処理を含まない。ゆえに、重なり合った層は、平編み処理により、一体のニット構成で形成されている。別の例では、開口部41を区画する種類のニットで形成されたニット構成要素40の領域が、平編み処理により、一体のニット構成で形成されている。さらに別の例では、フローティングヤーン46が、一体のニット構成で形成されている。
【0027】
平編み処理を使用してニット構成要素40を形成することのさらなる利点は、アッパー30に三次元的な性質を組み込むことができることにある。足の周りに延びて足の形に適合する、湾曲した構造、または他の三次元の構造を、アッパー30は有している。足の形を補完するために、平編み処理により、例えば、いくらか湾曲した、ニット構成要素40の区域を形成してもよい。三次元の性質を有する履物アッパー用のニット構成要素の例が、上記特許文献3(Dua, et al.)に見られるであろう。これは、引用により本明細書に組み込まれている。
【0028】
図6において、ニット構成要素40は、履物10から分離して示されており、平編み処理が施されている。多くの織物材料の縁部は、織物材料を形成するヤーンの端が露出するように切断されているが、ニット構成要素40は、仕上げの済んだ構成を有するよう形成されていてもよい。すなわち、平編みまたは他の編み技術を使用して、ニット構成要素40内のヤーンの端が、ニット構成要素40の縁部に実質的に存在しないよう、ニット構成要素40を形成してもよい。平編みにより形成された、仕上げの済んだ構成の利点は、ニット構成要素40の縁部を形成するヤーンが、よりほどけにくいことにある。これは、横編みニット材料に固有の性質である。仕上げの済んだ縁部を形成することにより、ニット構成要素40の一体性が強化され、ほどけることを防ぐために必要な後処理工程が少なくなるか、または、なくなる。くわえて、緩い(固定されていない)ヤーンはまた、アッパー30の美観を損なうことが、より少ない。すなわち、ニット構成要素40の仕上げの済んだ構成により、製造効率を高めつつ、アッパー20の耐久性および美的品質を向上させてもよい。
【0029】
ニット構成要素40により、履物10のアッパー30に適した構成の一例が提供される。履物製品の使用目的、履物製品の所望の特性および履物製品の有利な構造的属性などに依存して、ニット構成要素40に類似したニット構成要素を、平編みにより形成し、所望の特徴を持たせてもよい。すなわち、(a)ニット構成要素の所望の区域に、特定の種類のニットを配置するため、(b)ニット構成要素の所望の区域に、特定の種類のヤーンを配置するため、(c)ニット構成要素の所望の区域に、チューブ42およびカラー45に類似する重なり合ったニット層を形成するため、(d)ニット層の間に、ストランド43およびフローティングヤーン46に類似するストランドまたはフローティングヤーンを配置するため、(e)ニット構成要素に三次元的な性質を形成するため、ならびに、(f)仕上げの済んだ縁部を付与するために、平編みを使用してもよい。より詳しくは、例えば上記特徴のいずれかを、ニット構成要素内で併用および調和させて、履物アッパー用の特別な特性または構造的属性を形成してもよい。
さらなる構成
上述したアッパー30の特徴により、履物10用のふさわしい構成の一例が提供される。また、さまざまな他の構成を使用してもよい。例として、上記特徴のいくつかは、履物10のいくつかの構成において、ニット構成要素40に存在しなくてもよい。図7Aを参照して、カラー45は、ニット構成要素40に存在せず、ニット材料の単独の層が、足首開口部31の周りに延びる区域を形成している。同様に、チューブ42およびストランド43は、図7Bに存在しない。例えば特定の運動に有効な構造または特徴のみを使用することにより、履物10に、必要なまたは有利な要素のみを有する最小の構成を持たせてもよい。
【0030】
上述したように、アッパー30の別個の区域は、それらの区域で異なる種類のニットまたはヤーンを使用することにより、異なる特性を有していてもよい。特定の区域の特性を修正する別のやり方は、これらの区域のヤーンの熱可塑性材料を溶融することに関連する。すなわち、特定の区域を、熱可塑性ポリマー材料を組み込んだヤーンで形成してもよい。熱可塑性ポリマー材料を加熱することにより、隣接するヤーン、フィラメントまたはファイバが、これらの区域で互いに溶融(溶結)してニットループを互いに固定し、それにより剛性または耐磨耗性を向上してもよい。いくつかの構成では、ニット構成要素40の個々の層(例えば、チューブ42もしくはカラー45の外層もしくは内層)またはニット構成要素40内に埋め込まれたヤーン(すなわち、ストランド43もしくはフローティングヤーン46)を、熱可塑性ポリマー材料を組み込んだヤーンで形成してもよい。また、代わりに、ニット構成要素40全体を、熱可塑性ポリマー材料を組み込んだヤーンで形成してもよく、溶融された区域47に対応する部分のみを加熱して特性を修正してもよい。図7Cを参照して、ニット構成要素40は、2つの溶融された区域47を含んでいる。溶融された区域47の一方は、かかと領域13にあり、履物10にヒールカウンタを効果的に提供するために、より大きな剛性を付与してもよい。溶融された領域を有する履物アッパーの例が、上記特許文献4(Dua)に見られるであろう。これは、引用により本明細書に組み込まれている。別の溶融された区域47が足先領域11にあり、足先区域に、より大きな耐摩耗性を付与していてもよい。溶融はまた、開口部41を補強するため、柔軟性の低い区域を設けるため、または、透過性を減少するために使用されてもよい。
【0031】
ニット構成要素40の区域を溶融することで、これらの区域に、より大きな剛性および耐摩耗性を付与することができる一方で、別の方法により、特定の区域のニット密度を増加させてもよい。図7Dを参照して、ニット構成要素40は2つの密度の高い区域48を含んでいる。密度の高い区域48の一方は、かかと領域13にあり、履物10にヒールカウンタを効果的に提供するために、より大きな剛性を付与してもよい。別の密度の高い区域48が足先領域11にあり、足先区域に、より大きな耐摩耗性を付与していてもよい。溶融された区域47を形成するのと同様に、より密度の高いニットを形成することもまた、開口部41を補強するため、柔軟性の低い区域を設けるため、または、透過性を減少するために使用されてもよい。
【0032】
ニット構成要素40は、アッパー30の内面および反対側の外面の両方を形成している。履物10のいくつかの構成では、他の要素をニット構成要素40と組み合わせて使用してもよく、他の要素で、内面または外面の一部または全体を形成してもよい。図7Eを参照して、ヒールカウンタ35は、かかと領域13でニット構成要素40に固定されており、比較的剛性の高いポリマー材料で形成されていてもよい。接着剤結合処理を使用して、ヒールカウンタ35をニット構成要素40に接合してもよい。他の構成では、裏地を内面にわたって延ばして、アッパー30内に空洞の一部を形成してもよい。他の材料を、外面に溶融接合、接着または結合して、ニット構成要素40のニット構造を保護してもよく、または、履物10に他の利点を与えてもよい。
【0033】
図2および図3にはチューブ42が示されており、少なくとも1つの他のチューブ42に直接に隣接している。しかし、チューブ42の相対的な位置は、大きく変化してもよい。図7Fを参照して、チューブ42は、互いに分離されており、V字状の構造を形成している。チューブ42を締めひもシステムの一部として使用してもよいが、チューブ42または類似の構造を、長手方向の耐伸張性を付与するために使用してもよい。図7Gを参照して、チューブ42は長手方向に延びており、チューブ42内のストランド43は、領域11〜13それぞれを通しての伸張に抵抗してもよい。
【0034】
ヤーン46をカラー45に組み込むやり方は、大きく変化してもよい。上記構成では、フローティングヤーン46は、チューブ状の構造を通過するときに、カラー45を形成するニット材料の層と大略的に平行である。図8Aを参照して、ヤーン46は、ニット材料の1つの層からニット材料の別の層へと延びており、これらの層に大略的に垂直であり、それにより、平編み処理により形成されたスペーサ-ニット材料に類似した構造を付与する。図8Aの拡大された区域に示すように、ヤーン46は、ニット層を形成するヤーンの周りに延びていてもよい。1つの構成では、ヤーン46は、ニット層を形成するヤーンと同じであってもよい。すなわち、ヤーン46は、ニット層を形成するヤーンの編まれていない部分であってもよい。別の構成では、ヤーン46は、固定されていなくてもよく、または、他のやり方で、ニット層を形成するヤーンを分離していても(すなわち、ヤーンの周りに延びていなくても)よい。したがって、ヤーン46を、さまざまなやり方で、ニット構成要素40に組み込んでもよい。さらなる事項として、アッパー30のいくつかの構成は、ニット構成要素40の製造後に、ニット材料の層の間に配置されるポリマー発泡材料を含んでいてもよい。
【0035】
上述したように、カラー45は、スペーサ-ニット材料に類似した構造を有していてもよく、その際、ヤーン46は、ニット材料の1つの層からニット材料の別の層へと、これらの層に大略的に垂直な方向へ延びている。カラー45は、この構成を持たせるのに適した区域であるが、平編み処理を使用して、ニット構成要素40の区域にスペーサ-ニット材料の構造を付与してもよい。例えば、足先領域11または中足領域12の側部14および15のいずれかにスペーサ-ニット構成を配置して、アッパー20にクッション性の性質または圧縮可能な性質を付与してもよい。また、シュトローベル式中敷き24またはベロ33の一部を、平編み処理により形成して、スペーサ-ニット構成を持たせてもよい。さらに、単繊維ヤーンまたは織物ヤーンを含むさまざまな種類のヤーンを、スペーサ-ニット構成を有するニット構成要素40の区域用に使用してもよい。
【0036】
上述したさまざまな構成において、中敷き23は、アッパー20の空洞内に配置された別個の要素であり、シュトローベル式中敷き34は、ニット構成要素40の縁部に接合された別個の要素である。平編み処理はまた、図8Bに示すように、一体のニット構成の中敷き23およびシュトローベル式中敷き34を形成するために使用されていてもよい。カラー45と同様に、一体のニット構成の中敷き23は、圧縮可能な構成を付与するフローティングヤーン46を含むよう構成されていてもよい。また、平編み処理を使用して、一体のニット構成の他の要素(ベロ33など)を形成してもよい。
製造効率
背景技術で説明したように、例えば運動用の履物のアッパーは、履物のさまざまな区域に異なる特性をそれぞれが付与する複数の材料要素で形成されていてもよい。従来のアッパーを製造するために、材料要素を所望の形状に切断し、次いで、通常は縫製または接着剤結合により、互いに接合する。アッパーに組み込まれる材料要素の数および種類が増加すると、材料要素の輸送、保管、切断および接合に関連する時間および費用も増加する場合がある。切断および縫製処理による廃材も、アッパーに組み込まれる材料要素の数および種類が増加すると、よりたくさん蓄積される。さらに、より多くの材料、材料要素および他の構成要素を有する履物は、より少ない要素および材料で形成されたアッパーよりも、リサイクルが困難である。ゆえに、アッパーに使用する要素および材料の数を減少させることにより、製造効率およびリサイクルの可能性を高めつつ、廃棄物を減少させられる場合がある。
【0037】
複数の材料要素を含むさまざまな製造工程が従来のアッパーには必要であったが、ニット構成要素40は単独の平編み処理により形成することができる。平編み処理により、ニット構成要素40を履物10に組み込むために必要な工程の数が、比較的少なくなる。より詳しくは、シュトローベル式中敷き34をニット構成要素40の縁部に接合し、かかと領域13の2つの縁部を接合し、ひも32を組み込み、実質的に完成されたアッパー30をソール構造20に固定する。ニット構成要素40を使用することで、従来の製造処理に比べ、製造工程の全体的な数を低減することができる。くわえて、リサイクルの可能性を高めつつ、廃棄物を減少させられる場合がある。
【0038】
さまざまな構成を参照しつつ、上記および添付図面において、本発明を開示している。しかし、本開示の目的は、本発明に関するさまざまな特徴および概念の例を提供することであり、発明の範囲を限定することではない。添付の特許請求の範囲に規定された本発明の範囲を逸脱することなく、多くの変更および修正を上記構成に行えることを、当業者は理解するであろう。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
アッパー、および、前記アッパーに固定されたソール構造を有する履物製品であって、前記アッパーが、
一体のニット構成で形成されたチューブ状の構造を形成するニット構成要素と、
一次元の材料の構成を有し、前記チューブの長手方向の少なくとも一部を通って延びるヤーンとを有する、履物製品。
【請求項2】
前記ニット構成要素が、前記アッパーの外側側部に沿い、前記アッパーの内側側部に沿い、前記アッパーの足先領域にわたり、そして前記アッパーのかかと領域の周りに延びている、請求項1に記載の履物製品。
【請求項3】
前記チューブ状の構造が、前記アッパーの前記外側側部に配置され、前記ソール構造に近接した区域から上方に延びるように方向付けられており、前記ヤーンが、前記チューブ状の構造の端から外側に向かって延びて、ひもを受け入れるループを形成している、請求項2に記載の履物製品。
【請求項4】
前記チューブ状の構造が、前記かかと領域に配置され、前記アッパーの足首開口部の少なくとも一部の周りに配置されており、前記ヤーンおよび複数の追加のヤーンが、前記チューブ状の構造内に配置されている、請求項2に記載の履物製品。
【請求項5】
アッパー、および、前記アッパーに固定されたソール構造を有する履物製品であって、前記アッパーが、
前記アッパーの外面の少なくとも一部を形成する第1ニット層と、
前記第1ニット層と一体のニット構成で形成された第2ニット層であって、前記第1ニット層に隣接して配置され、少なくとも一部が前記第1ニット層と同一の広がりを持っていて、前記第1ニット層と当該第2ニット層との間にチューブを区画する第2ニット層と、
一次元の材料の構成を有し、前記チューブを通って前記第1ニット層と前記第2ニット層との間を延びるストランドとを備えた、履物製品。
【請求項6】
前記第1ニット層が、前記アッパーの外側側部に沿い、前記アッパーの内側側部に沿い、前記アッパーの足先領域にわたり、そして前記アッパーのかかと領域の周りに延びている、請求項5に記載の履物製品。
【請求項7】
前記チューブが、前記ソール構造に近接した区域から上方に延びるように方向付けられており、前記ストランドの一部が、前記チューブの端から外側に向かって延びて、ひもを受け入れるループを形成している、請求項5に記載の履物製品。
【請求項8】
前記第1ニット層が、前記チューブの前記端に隣接した開口部を区画しており、前記ひもが、前記開口部を通って延びている、請求項7に記載の履物製品。
【請求項9】
前記ストランドが、前記第1ニット層および前記第2ニット層により形成された別のチューブ内へと延びている、請求項7に記載の履物製品。
【請求項10】
アッパー、および、前記アッパーに固定されたソール構造を有する履物製品であって、前記アッパーが、
それぞれが一体のニット構成で形成された第1チューブおよび第2チューブを区画するニット構成要素であって、前記第1チューブおよび前記第2チューブが、前記ソール構造に近接した区域から上方に延びており、前記第1チューブおよび前記第2チューブの端が、前記アッパーの上側の区域に配置されているニット構成要素と、
前記第1チューブおよび前記第2チューブを通って延びるストランドであって、当該ストランドの一部は、前記第1チューブおよび前記第2チューブの前記端から外側に向かって延びて、ループを形成しているストランドと、
前記ループを通って延びるひもとを備えた、履物製品。
【請求項11】
前記第1チューブおよび前記第2チューブが、互いに隣接しており平行である、請求項10に記載の履物製品。
【請求項12】
前記ニット構成要素が、前記第1チューブおよび前記第2チューブの前記端に隣接した開口部を区画しており、前記ひもが、前記開口部を通って延びている、請求項10に記載の履物製品。
【請求項13】
前記ニット構成要素が、
一体のニット構成で形成された、少なくとも一部が同一の広がりを持つ1対のニット層と、
前記ニット層の間を延びる複数のフローティングヤーンとを含む、請求項10に記載の履物製品。
【請求項14】
前記ニット層および前記フローティングヤーンが、前記アッパーの足首開口部に隣接して配置されている、請求項13に記載の履物製品。
【請求項15】
アッパー、および、前記アッパーに固定されたソール構造を有する履物製品であって、前記アッパーが、
一体のニット構成で形成された複数のチューブを区画するニット構成要素であって、前記チューブの第1部分が、当該履物の外側側部に配置され、前記チューブの第2部分が、当該履物の内側側部に配置されているニット構成要素と、
前記チューブを通って延び、前記チューブの端から外側に延びて複数のループを形成し、一次元の材料の構成を有するストランドと、
前記ループを通って延びるひもとを備えた、履物製品。
【請求項16】
前記ニット構成要素が、前記チューブの前記端に隣接した開口部を区画しており、前記ひもが、前記開口部を通って延びている、請求項15に記載の履物製品。
【請求項17】
前記チューブの少なくとも2つが、互いに隣接しており平行である、請求項15に記載の履物製品。
【請求項18】
前記ニット構成要素が、前記アッパーの外面の大部分を形成している、請求項15に記載の履物製品。
【請求項19】
前記ニット構成要素が、
一体のニット構成で形成された、少なくとも一部が同一の広がりを持つ1対のニット層と、
前記ニット層の間に配置され、前記ニット層に実質的に平行な方向に延びる複数のフローティングヤーンとを含み、
前記ニット層および前記フローティングヤーンが、前記アッパーの足首開口部に隣接して配置されている、請求項15に記載の履物製品。
【請求項20】
前記ニット構成要素の第1区域が第1のタイプのニットを有し、前記ニット構成要素の第2区域が第2のタイプのニットを有し、前記第1のタイプのニットが前記第2のタイプのニットと異なっている、請求項15に記載の履物製品。
【請求項21】
前記ニット構成要素の第1区域が第1のタイプのヤーンを有し、前記ニット構成要素の第2区域が第2のタイプのヤーンを有し、前記第1のタイプのヤーンが前記第2のタイプのヤーンと異なっている、請求項15に記載の履物製品。
【請求項22】
締めひもシステムを含むアッパーを有する履物製品であって、前記締めひもシステムが、
(a)一体のニット構成で形成されたチューブ、および、(b)前記チューブの端に隣接して配置された開口部を区画するニット構成要素と、
前記チューブを通って延び、ループを形成するストランドと、
前記ループおよび前記開口部を通って延びるひもとを備えた、履物製品。
【請求項23】
アッパー、および、前記アッパーに固定されたソール構造を有する履物製品であって、前記アッパーが、
少なくとも一部が互いに同一の広がりを持ち、一体のニット構成で形成された第1ニット層および第2ニット層と、
前記第1ニット層と前記第2ニット層との間に配置され、前記第1ニット層および前記第2ニット層に実質的に平行な方向に延びた複数のフローティングヤーンとを含む、ニット構成要素を備えた、履物製品。
【請求項24】
前記アッパーが、足を受け入れるための内部の空洞と、前記空洞にアクセスするための足首開口部とを区画しており、前記第1ニット層、前記第2ニット層、前記フローティングヤーンが、前記足首開口部に隣接して配置されている、請求項23に記載の履物製品。
【請求項25】
前記第1ニット層、前記第2ニット層および前記フローティングヤーンが、前記アッパーの内側側部および前記アッパーの外側側部に配置されている、請求項24に記載の履物製品。
【請求項26】
前記ニット構成要素が、一体のニット構成で形成されたチューブを区画し、ストランドが、前記チューブをその長手方向に通って延びている、請求項23に記載の履物製品。
【請求項27】
前記ニット構成要素の第1区域が第1のタイプのニットを有し、前記ニット構成要素の第2区域が第2のタイプのニットを有し、前記第1のタイプのニットが前記第2のタイプのニットと異なっている、請求項23に記載の履物製品。
【請求項28】
前記ニット構成要素の第1区域が第1のタイプのヤーンを有し、前記ニット構成要素の第2区域が第2のタイプのヤーンを有し、前記第1のタイプのヤーンが前記第2のタイプのヤーンと異なっている、請求項23に記載の履物製品。
【請求項29】
アッパー、および、前記アッパーに固定されたソール構造を有する履物製品であって、前記アッパーが、
一体のニット構成で形成された第1ニット層および第2ニット層であって、当該第1ニット層の少なくとも一部が、当該第2ニット層と同一の広がりを持っていて、当該第1ニット層と当該第2ニット層との間に内部の空間を区画している、第1ニット層および第2ニット層と、
前記内部の空間内に配置され、前記第1ニット層と前記第2ニット層との間を延びる複数のフローティングヤーンとを含む、ニット構成要素を備えた、履物製品。
【請求項30】
前記アッパーが、足を受け入れるための内部の空洞と、前記空洞にアクセスするための足首開口部とを区画しており、前記第1ニット層、前記第2ニット層および前記フローティングヤーンが、前記足首開口部に隣接して配置されている、請求項29に記載の履物製品。
【請求項31】
前記第1ニット層、前記第2ニット層および前記フローティングヤーンが、前記アッパーの内側側部および前記アッパーの外側側部に配置され、前記アッパーのかかと領域の周りに延びている、請求項30に記載の履物製品。
【請求項32】
アッパー、および、前記アッパーに固定されたソール構造を有する履物製品であって、前記アッパーが、着用者の足を受け入れるための内部の空洞を区画しており、前記アッパーが、前記空洞にアクセスするための足首開口部を有しており、前記アッパーが、
前記足首開口部に隣接し、前記アッパーの外面の少なくとも一部を形成する第1ニット層と、
前記足首開口部に隣接し、前記アッパーの内面の少なくとも一部を形成する第2ニット層と、
前記第1ニット層と前記第2ニット層との間に配置された複数のフローティングヤーンとを含む、ニット構成要素を備え、
前記第1ニット層および前記第2ニット層が、前記足首開口部および前記足首開口部から間隔を空けた箇所で、互いに接合されて、その間に分離された区域を区画しており、前記フローティングヤーンが、前記分離された区域に配置されている、履物製品。
【請求項33】
前記ニット構成要素が、前記アッパーの外側側部に沿い、前記アッパーの内側側部に沿い、前記アッパーの足先領域にわたり、そして前記アッパーのかかと領域の周りに延びている、請求項32に記載の履物製品。
【請求項34】
前記フローティングヤーンが、前記第1ニット層および前記第2ニット層に実質的に平行である、請求項32に記載の履物製品。
【請求項35】
前記ニット構成要素の一部が、一体のニット構成で形成されたチューブを区画する当該履物の中足領域に配置されており、ストランドが、前記チューブをその長手方向に通って延びている、請求項32に記載の履物製品。
【請求項36】
履物製品を製造する方法であって
平編み処理を使用して、熱可塑性ポリマー材料を組み込んだ少なくとも1本のヤーンを含むニット構成要素を形成するステップと、
前記ニット構成要素の少なくとも一区域を加熱して、前記熱可塑性ポリマー材料を組み込んだ前記ヤーンを溶融させるステップと、
前記ニット構成要素を、前記履物製品のアッパーに組み込むステップとを含む、履物製品を製造する方法。
【請求項37】
前記平編み処理を使用するステップが、前記熱可塑性ポリマー材料を組み込んだ前記ヤーンを、前記ニット構成要素の全体にわたって配置するステップを含む、請求項36に記載の方法。
【請求項38】
前記平編み処理を使用するステップが、前記熱可塑性ポリマー材料を組み込んだ前記ヤーンを、前記ニット構成要素の前記区域にのみ配置するステップを含む、請求項36に記載の方法。
【請求項39】
前記組み込むステップが、前記ニット構成要素の前記区域を、前記履物のかかと領域に配置するステップを含む、請求項36に記載の方法。
【請求項40】
前記組み込むステップが、前記ニット構成要素の前記区域を、前記履物の足先領域に配置するステップを含む、請求項36に記載の方法。
【請求項41】
履物製品を製造する方法であって
平編み処理を使用して、第1ニット層、第2ニット層、ならびに、前記第1ニット層および前記第2ニット層に固定され前記第1ニット層から前記第2ニット層へと延びる複数のヤーンを含むニット構成要素を形成するステップと、
前記ニット構成要素を、前記履物製品のアッパーに組み込むステップとを含む、履物製品を製造する方法。
【請求項42】
単繊維のヤーンとなるように前記ヤーンを選択するステップをさらに含む、請求項41に記載の方法。
【請求項1】
アッパー、および、前記アッパーに固定されたソール構造を有する履物製品であって、前記アッパーが、
一体のニット構成で形成されたチューブ状の構造を形成するニット構成要素と、
一次元の材料の構成を有し、前記チューブの長手方向の少なくとも一部を通って延びるヤーンとを有する、履物製品。
【請求項2】
前記ニット構成要素が、前記アッパーの外側側部に沿い、前記アッパーの内側側部に沿い、前記アッパーの足先領域にわたり、そして前記アッパーのかかと領域の周りに延びている、請求項1に記載の履物製品。
【請求項3】
前記チューブ状の構造が、前記アッパーの前記外側側部に配置され、前記ソール構造に近接した区域から上方に延びるように方向付けられており、前記ヤーンが、前記チューブ状の構造の端から外側に向かって延びて、ひもを受け入れるループを形成している、請求項2に記載の履物製品。
【請求項4】
前記チューブ状の構造が、前記かかと領域に配置され、前記アッパーの足首開口部の少なくとも一部の周りに配置されており、前記ヤーンおよび複数の追加のヤーンが、前記チューブ状の構造内に配置されている、請求項2に記載の履物製品。
【請求項5】
アッパー、および、前記アッパーに固定されたソール構造を有する履物製品であって、前記アッパーが、
前記アッパーの外面の少なくとも一部を形成する第1ニット層と、
前記第1ニット層と一体のニット構成で形成された第2ニット層であって、前記第1ニット層に隣接して配置され、少なくとも一部が前記第1ニット層と同一の広がりを持っていて、前記第1ニット層と当該第2ニット層との間にチューブを区画する第2ニット層と、
一次元の材料の構成を有し、前記チューブを通って前記第1ニット層と前記第2ニット層との間を延びるストランドとを備えた、履物製品。
【請求項6】
前記第1ニット層が、前記アッパーの外側側部に沿い、前記アッパーの内側側部に沿い、前記アッパーの足先領域にわたり、そして前記アッパーのかかと領域の周りに延びている、請求項5に記載の履物製品。
【請求項7】
前記チューブが、前記ソール構造に近接した区域から上方に延びるように方向付けられており、前記ストランドの一部が、前記チューブの端から外側に向かって延びて、ひもを受け入れるループを形成している、請求項5に記載の履物製品。
【請求項8】
前記第1ニット層が、前記チューブの前記端に隣接した開口部を区画しており、前記ひもが、前記開口部を通って延びている、請求項7に記載の履物製品。
【請求項9】
前記ストランドが、前記第1ニット層および前記第2ニット層により形成された別のチューブ内へと延びている、請求項7に記載の履物製品。
【請求項10】
アッパー、および、前記アッパーに固定されたソール構造を有する履物製品であって、前記アッパーが、
それぞれが一体のニット構成で形成された第1チューブおよび第2チューブを区画するニット構成要素であって、前記第1チューブおよび前記第2チューブが、前記ソール構造に近接した区域から上方に延びており、前記第1チューブおよび前記第2チューブの端が、前記アッパーの上側の区域に配置されているニット構成要素と、
前記第1チューブおよび前記第2チューブを通って延びるストランドであって、当該ストランドの一部は、前記第1チューブおよび前記第2チューブの前記端から外側に向かって延びて、ループを形成しているストランドと、
前記ループを通って延びるひもとを備えた、履物製品。
【請求項11】
前記第1チューブおよび前記第2チューブが、互いに隣接しており平行である、請求項10に記載の履物製品。
【請求項12】
前記ニット構成要素が、前記第1チューブおよび前記第2チューブの前記端に隣接した開口部を区画しており、前記ひもが、前記開口部を通って延びている、請求項10に記載の履物製品。
【請求項13】
前記ニット構成要素が、
一体のニット構成で形成された、少なくとも一部が同一の広がりを持つ1対のニット層と、
前記ニット層の間を延びる複数のフローティングヤーンとを含む、請求項10に記載の履物製品。
【請求項14】
前記ニット層および前記フローティングヤーンが、前記アッパーの足首開口部に隣接して配置されている、請求項13に記載の履物製品。
【請求項15】
アッパー、および、前記アッパーに固定されたソール構造を有する履物製品であって、前記アッパーが、
一体のニット構成で形成された複数のチューブを区画するニット構成要素であって、前記チューブの第1部分が、当該履物の外側側部に配置され、前記チューブの第2部分が、当該履物の内側側部に配置されているニット構成要素と、
前記チューブを通って延び、前記チューブの端から外側に延びて複数のループを形成し、一次元の材料の構成を有するストランドと、
前記ループを通って延びるひもとを備えた、履物製品。
【請求項16】
前記ニット構成要素が、前記チューブの前記端に隣接した開口部を区画しており、前記ひもが、前記開口部を通って延びている、請求項15に記載の履物製品。
【請求項17】
前記チューブの少なくとも2つが、互いに隣接しており平行である、請求項15に記載の履物製品。
【請求項18】
前記ニット構成要素が、前記アッパーの外面の大部分を形成している、請求項15に記載の履物製品。
【請求項19】
前記ニット構成要素が、
一体のニット構成で形成された、少なくとも一部が同一の広がりを持つ1対のニット層と、
前記ニット層の間に配置され、前記ニット層に実質的に平行な方向に延びる複数のフローティングヤーンとを含み、
前記ニット層および前記フローティングヤーンが、前記アッパーの足首開口部に隣接して配置されている、請求項15に記載の履物製品。
【請求項20】
前記ニット構成要素の第1区域が第1のタイプのニットを有し、前記ニット構成要素の第2区域が第2のタイプのニットを有し、前記第1のタイプのニットが前記第2のタイプのニットと異なっている、請求項15に記載の履物製品。
【請求項21】
前記ニット構成要素の第1区域が第1のタイプのヤーンを有し、前記ニット構成要素の第2区域が第2のタイプのヤーンを有し、前記第1のタイプのヤーンが前記第2のタイプのヤーンと異なっている、請求項15に記載の履物製品。
【請求項22】
締めひもシステムを含むアッパーを有する履物製品であって、前記締めひもシステムが、
(a)一体のニット構成で形成されたチューブ、および、(b)前記チューブの端に隣接して配置された開口部を区画するニット構成要素と、
前記チューブを通って延び、ループを形成するストランドと、
前記ループおよび前記開口部を通って延びるひもとを備えた、履物製品。
【請求項23】
アッパー、および、前記アッパーに固定されたソール構造を有する履物製品であって、前記アッパーが、
少なくとも一部が互いに同一の広がりを持ち、一体のニット構成で形成された第1ニット層および第2ニット層と、
前記第1ニット層と前記第2ニット層との間に配置され、前記第1ニット層および前記第2ニット層に実質的に平行な方向に延びた複数のフローティングヤーンとを含む、ニット構成要素を備えた、履物製品。
【請求項24】
前記アッパーが、足を受け入れるための内部の空洞と、前記空洞にアクセスするための足首開口部とを区画しており、前記第1ニット層、前記第2ニット層、前記フローティングヤーンが、前記足首開口部に隣接して配置されている、請求項23に記載の履物製品。
【請求項25】
前記第1ニット層、前記第2ニット層および前記フローティングヤーンが、前記アッパーの内側側部および前記アッパーの外側側部に配置されている、請求項24に記載の履物製品。
【請求項26】
前記ニット構成要素が、一体のニット構成で形成されたチューブを区画し、ストランドが、前記チューブをその長手方向に通って延びている、請求項23に記載の履物製品。
【請求項27】
前記ニット構成要素の第1区域が第1のタイプのニットを有し、前記ニット構成要素の第2区域が第2のタイプのニットを有し、前記第1のタイプのニットが前記第2のタイプのニットと異なっている、請求項23に記載の履物製品。
【請求項28】
前記ニット構成要素の第1区域が第1のタイプのヤーンを有し、前記ニット構成要素の第2区域が第2のタイプのヤーンを有し、前記第1のタイプのヤーンが前記第2のタイプのヤーンと異なっている、請求項23に記載の履物製品。
【請求項29】
アッパー、および、前記アッパーに固定されたソール構造を有する履物製品であって、前記アッパーが、
一体のニット構成で形成された第1ニット層および第2ニット層であって、当該第1ニット層の少なくとも一部が、当該第2ニット層と同一の広がりを持っていて、当該第1ニット層と当該第2ニット層との間に内部の空間を区画している、第1ニット層および第2ニット層と、
前記内部の空間内に配置され、前記第1ニット層と前記第2ニット層との間を延びる複数のフローティングヤーンとを含む、ニット構成要素を備えた、履物製品。
【請求項30】
前記アッパーが、足を受け入れるための内部の空洞と、前記空洞にアクセスするための足首開口部とを区画しており、前記第1ニット層、前記第2ニット層および前記フローティングヤーンが、前記足首開口部に隣接して配置されている、請求項29に記載の履物製品。
【請求項31】
前記第1ニット層、前記第2ニット層および前記フローティングヤーンが、前記アッパーの内側側部および前記アッパーの外側側部に配置され、前記アッパーのかかと領域の周りに延びている、請求項30に記載の履物製品。
【請求項32】
アッパー、および、前記アッパーに固定されたソール構造を有する履物製品であって、前記アッパーが、着用者の足を受け入れるための内部の空洞を区画しており、前記アッパーが、前記空洞にアクセスするための足首開口部を有しており、前記アッパーが、
前記足首開口部に隣接し、前記アッパーの外面の少なくとも一部を形成する第1ニット層と、
前記足首開口部に隣接し、前記アッパーの内面の少なくとも一部を形成する第2ニット層と、
前記第1ニット層と前記第2ニット層との間に配置された複数のフローティングヤーンとを含む、ニット構成要素を備え、
前記第1ニット層および前記第2ニット層が、前記足首開口部および前記足首開口部から間隔を空けた箇所で、互いに接合されて、その間に分離された区域を区画しており、前記フローティングヤーンが、前記分離された区域に配置されている、履物製品。
【請求項33】
前記ニット構成要素が、前記アッパーの外側側部に沿い、前記アッパーの内側側部に沿い、前記アッパーの足先領域にわたり、そして前記アッパーのかかと領域の周りに延びている、請求項32に記載の履物製品。
【請求項34】
前記フローティングヤーンが、前記第1ニット層および前記第2ニット層に実質的に平行である、請求項32に記載の履物製品。
【請求項35】
前記ニット構成要素の一部が、一体のニット構成で形成されたチューブを区画する当該履物の中足領域に配置されており、ストランドが、前記チューブをその長手方向に通って延びている、請求項32に記載の履物製品。
【請求項36】
履物製品を製造する方法であって
平編み処理を使用して、熱可塑性ポリマー材料を組み込んだ少なくとも1本のヤーンを含むニット構成要素を形成するステップと、
前記ニット構成要素の少なくとも一区域を加熱して、前記熱可塑性ポリマー材料を組み込んだ前記ヤーンを溶融させるステップと、
前記ニット構成要素を、前記履物製品のアッパーに組み込むステップとを含む、履物製品を製造する方法。
【請求項37】
前記平編み処理を使用するステップが、前記熱可塑性ポリマー材料を組み込んだ前記ヤーンを、前記ニット構成要素の全体にわたって配置するステップを含む、請求項36に記載の方法。
【請求項38】
前記平編み処理を使用するステップが、前記熱可塑性ポリマー材料を組み込んだ前記ヤーンを、前記ニット構成要素の前記区域にのみ配置するステップを含む、請求項36に記載の方法。
【請求項39】
前記組み込むステップが、前記ニット構成要素の前記区域を、前記履物のかかと領域に配置するステップを含む、請求項36に記載の方法。
【請求項40】
前記組み込むステップが、前記ニット構成要素の前記区域を、前記履物の足先領域に配置するステップを含む、請求項36に記載の方法。
【請求項41】
履物製品を製造する方法であって
平編み処理を使用して、第1ニット層、第2ニット層、ならびに、前記第1ニット層および前記第2ニット層に固定され前記第1ニット層から前記第2ニット層へと延びる複数のヤーンを含むニット構成要素を形成するステップと、
前記ニット構成要素を、前記履物製品のアッパーに組み込むステップとを含む、履物製品を製造する方法。
【請求項42】
単繊維のヤーンとなるように前記ヤーンを選択するステップをさらに含む、請求項41に記載の方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5A】
【図5B】
【図5C】
【図5D】
【図6】
【図7A】
【図7B】
【図7C】
【図7D】
【図7E】
【図7F】
【図7G】
【図8A】
【図8B】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5A】
【図5B】
【図5C】
【図5D】
【図6】
【図7A】
【図7B】
【図7C】
【図7D】
【図7E】
【図7F】
【図7G】
【図8A】
【図8B】
【公表番号】特表2012−512698(P2012−512698A)
【公表日】平成24年6月7日(2012.6.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−542154(P2011−542154)
【出願日】平成21年9月14日(2009.9.14)
【国際出願番号】PCT/US2009/056795
【国際公開番号】WO2010/080182
【国際公開日】平成22年7月15日(2010.7.15)
【出願人】(505424859)ナイキ インターナショナル リミテッド (249)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成24年6月7日(2012.6.7)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年9月14日(2009.9.14)
【国際出願番号】PCT/US2009/056795
【国際公開番号】WO2010/080182
【国際公開日】平成22年7月15日(2010.7.15)
【出願人】(505424859)ナイキ インターナショナル リミテッド (249)
【Fターム(参考)】
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