説明

ニトリルゴムのメタセシス用のルテニウムベース触媒

本発明は、ニトリルゴムのメタセシス分解のための特定の触媒の存在下でのニトリルゴムのメタセシス方法に関する。本発明はさらに、特定の新規メタセシス触媒に、およびニトリルゴムのメタセシスのためのそれらの使用に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ニトリルゴムのメタセシス分解のための特定の触媒の存在下でのニトリルゴムのメタセシス方法に関する。本発明はさらに、特定の新規メタセシス触媒に関する。
【背景技術】
【0002】
略して「NBR」とも言われる、用語ニトリルゴムは、少なくとも1種のα,β−不飽和ニトリル、少なくとも1種の共役ジエンおよび、必要ならば、1種以上のさらなる共重合可能なモノマーのコポリマーまたはターポリマーであるゴムを意味する。
【0003】
略して「HNBR」とも言われる、水素化ニトリルゴムは、ニトリルゴムの水素化によって製造される。したがって、共重合ジエン単位のC=C二重結合は、HNBRにおいては完全にまたは部分的に水素化されている。共重合ジエン単位の水素化度は通常、50〜100%の範囲にある。
【0004】
水素化ニトリルゴムは、非常に良好な耐熱性、優れた耐オゾン性および耐化学薬品性ならびにまた優れた耐油性を有する特殊ゴムである。
【0005】
HNBRの上述の物理的および化学的特性は、非常に良好な機械的特性、特に高い耐摩耗性と関係している。そのため、HNBRは様々な用途において幅広い使用を見いだしてきた。HNBRは、たとえば、自動車部門においてシール、ホース、ベルトおよび締め付けエレメント向けに、また、石油抽出の分野において固定子、油井シールおよびバルブシール向けにそしてまた航空機産業、エレクトロニクス産業、機械工学および造船において多数の部品向けに使用されてきた。
【0006】
商業的に入手可能なグレードのHNBRは通常、約150,000〜500,000の範囲の重量平均分子量M(測定の方法:ポリスチレン同等物に対するゲル浸透クロマトグラフィー(GPC))に相当する、39〜130の範囲のムーニー(Mooney)粘度(100℃でのML 1+4)を有する。分子量分布の幅に関する情報を与える、多分散性指数PDI(PDI=M/M、ここで、Mは重量平均分子量であり、Mは数平均分子量である)は、ここでは測定すると2〜5であった。残存二重結合含有率は通常、1〜18%の範囲にある(IR分光法で測定される)。
【0007】
HNBRの加工性は、比較的高いムーニー粘度の結果として厳しい制限を受ける。多くの用途のためには、より低い分子量、したがってより低いムーニー粘度を有するグレードのHNBRを有することが望ましいであろう。これは、加工性を決定的に向上させるであろう。
【0008】
分解によるHNBRの鎖長を短くするために多くの試みがこれまで行われてきた。たとえば、分子量は、たとえばロールミル上でまたはスクリュー装置中で、熱機械的処理(素練り)によって下げることができる(特許文献1)。しかし、この熱機械的分解は、ヒドロキシル、ケト、カルボキシルおよびエステル基などの官能基が部分酸化の結果として分子中に組み込まれそして、さらに、ポリマーの微細構造が実質上変化するという欠点を有する。
【0009】
55未満の範囲のムーニー粘度(100℃でのML 4+1)または約M<200,000g/モルの数平均分子量に相当する低いモル質量を有するHNBRの製造は、第1に、ムーニー粘度の急な増加がNBRの水素化で起こるため、第2に、生成物が余りにも粘着性であるため利用可能な工業プラントにおいて他の方法でワークアップをもはや実施することができないことから、水素化に使用されるNBR原料のモル質量を随意に下げることができないため、確立された製造方法によっては長い間可能ではなかった。確立された工業プラントにおいて難なく処理することができるNBR原料の最低のムーニー粘度は約30ムーニー単位である(100℃でのML 4+1)。そのようなNBR原料を使用して得られる水素化ニトリルゴムのムーニー粘度は約55ムーニー単位である(100℃でのML 4+1)。
【0010】
より最近の先行技術において、この問題は、30ムーニー単位未満のムーニー粘度(100℃でのML 1+4)またはM<70,000g/モル未満の数平均分子量までの分解によって水素化前のニトリルゴムの分子量を下げることによって解決されている。分子量の低下は、低分子量1−オレフィンが通常添加されるメタセシスによってここでは達成される。分解したNBR原料が、分解反応が完了した後、水素化にかけられる前に溶媒から単離されなくてもよいように、メタセシス反応は水素化反応と同じ溶媒中で(その場で)有利に実施される。極性基への、特にニトリル基への耐性を有するメタセシス触媒が、メタセシス分解反応を触媒するために使用される。
【0011】
メタセシス触媒は、とりわけ、(特許文献2)および(特許文献3)から公知である。それらは原則として次の構造:
【化1】

(式中、Mはオスミウムまたはルテニウムであり、RおよびRは、広範囲の構造変動を有する有機ラジカルであり、XおよびXはアニオン性配位子であり、LおよびLは非帯電の電子供与体である)を有する。一般に使用される用語「アニオン性配位子」は、金属中心から切り離して考慮されるときに、閉電子殻で常に負に帯電している配位子を記述するために、そのようなメタセシス触媒に関する文献において使用されている。そのような触媒は、閉環メタセシス(RCM)、交差メタセシス(CM)および開環メタセシス(ROMP)に好適である。
【0012】
さらに、(特許文献4)は、「Grubbs(II)触媒」として当該技術分野において知られている触媒群を開示している。前記触媒は、イミダゾリジンベース配位子を含み、閉環メタセシス(RCM)、交差メタセシス(CM)、アクリルオレフィンの反応および開環メタセシス重合(ROMP)に好適である。
【0013】
さらに、(特許文献5)において式(1)
【化2】

(式中、
XおよびX’はアニオン性配位子、好ましくはハロゲン、より好ましくはClまたはBrであり;
Lは中性配位子であり;
a、b、c、dは独立してH、−NO、C1〜12アルキル、C1〜12アルコキシまたはフェニルであり、ここで、フェニルは、基C1〜6アルキルおよびC1〜6アルコキシから選択される残基で置換されていてもよく;
はC1〜12アルキル、C5〜6シクロアルキル、C7〜18アラルキル、アリールであり;
はH、C1〜12アルキル、C5〜6シクロアルキル、C7〜18アラルキル、アリールであり;
はH、C1〜12アルキル、C5〜6シクロアルキル、C7〜18アラルキル、アリールである)
のメタセシス触媒が開示されている。
【0014】
式(1)の触媒は、それぞれ1つのオレフィン二重結合を有する2つの化合物が反応させられるかまたは化合物の1つが少なくとも2つのオレフィン二重結合を含む方法でメタセシス反応に、閉環メタセシス(RCM)または交差メタセシス(CM)に使用される。
【0015】
(特許文献6)において遷移金属ベースのメタセシス触媒および樹枝状錯体を含むそれらの有機金属錯体、たとえば1,3−ジメシチル−4,5−ジヒドロイミダゾール−2−イリデンおよびスチリルエーテル配位子を持つRu錯体が開示されている。この触媒は、閉環メタセシス(RCM)、交差メタセシス(CM)、開環重合メタセシス(ROMP)およびアクリルジエンメタセシス(ADMET)を触媒するために使用することができる。
【0016】
しかし、上述の触媒は、ニトリルゴムの分解を実施するために必ずしも好適ではない。
【0017】
(特許文献7)および(特許文献8)は、オレフィンメタセシスによるニトリルゴム出発ポリマーの分解およびその後の水素化を含む方法を記載している。ここでは、ニトリルゴムは、第1工程においてコオレフィンフィンとオスミウム、ルテニウム、モリブデンまたはタングステン錯体をベースとする特定の触媒との存在下に反応させられ、第2工程において水素化される。30,000〜250,000の範囲の重量平均分子量(M)、3〜50の範囲のムーニー粘度(100℃でのML 1+4)および2.5未満の多分散性指数PDIを有する水素化ニトリルゴムを、(特許文献8)によるこのルートで得ることができる。
【0018】
さらに、ニトリルゴムのメタセシスは、「Grubbs(I)触媒」群からの触媒を使用して成功裡に実施することができる((特許文献8)、(特許文献9)、(特許文献10))。好適な触媒は、たとえば、特定の置換パターンを有するルテニウム触媒、たとえば下に示されるビス(トリシクロヘキシルホスフィン)ベンジリデンルテニウムジクロリドである。
【化3】

【0019】
メタセシスおよび水素化後に、ニトリルゴムは、先行技術に従ってこれまでに製造することができた水素化ニトリルゴムより低い分子量およびまた狭い分子量分布を有する。
【0020】
しかし、メタセシスを実施するために用いられるGrubbs(I)触媒の量は多い。(特許文献9)の実験において、それらは、たとえば、使用されたニトリルゴムを基準として307ppmおよび61ppmのRuである。必要な反応時間もまた長く、分解後の分子量は依然として比較的高い(M=180,000g/モルおよびM=71,000g/モルである、(特許文献9)の実施例3を参照されたい)。
【0021】
(特許文献11)は、二峰性または多峰性分子量分布を有する低分子量HNBRゴムをベースとするブレンドおよびまたこれらのゴムの加硫ゴムを記載している。メタセシスを実施するために、使用されるニトリルゴムを基準として614ppmのルテニウムに相当する、0.5phrのGrubbs I触媒が実施例により使用される。
【0022】
(特許文献4)に述べられている「Grubbs(II)触媒」、たとえば1,3−ビス(2,4,6−トリメチルフェニル)−2−(イミダゾリデニリデン)(トリシクロヘキシルホスフィン)ルテニウム(フェニルメチレン)ジクロリドがNBRメタセシスのために使用される場合、これはまた、コオレフィンフィンの使用なしに成功する(特許文献12)。好ましくはその場で実施される、その後の水素化後に、水素化ニトリルゴムは、Grubbs(I)型の触媒を使用するときより低い分子量および狭い分子量分布(PDI)を有する。分子量および分子量分布の観点から、メタセシス分解はこのように、Grubbs I型の触媒を使用するときよりGrubbs II型の触媒を使用するときにより効率的に進行する。しかし、この効率的なメタセシス分解のために必要なルテニウムの量は依然として比較的高い。長い反応時間もまた、Grubbs II触媒を使用するメタセシスを実施するために依然として必要とされる。
【化4】

【先行技術文献】
【特許文献】
【0023】
【特許文献1】欧州特許出願公開第A−0 419 952号明細書
【特許文献2】国際公開第A−96/04289号パンフレット
【特許文献3】国際公開第A−97/06185号パンフレット
【特許文献4】国際公開第A−00/71554号パンフレット
【特許文献5】国際公開第A1−2008/034552号パンフレット
【特許文献6】米国特許出願公開第2002/0107138 A1号明細書
【特許文献7】国際公開第A−02/100905号パンフレット
【特許文献8】国際公開第A−02/100941号パンフレット
【特許文献9】国際公開第A 03/002613号パンフレット
【特許文献10】米国特許出願公開第2004/0127647号明細書
【特許文献11】米国特許出願公開第2004/0127647 A1号明細書
【特許文献12】米国特許出願公開第2004/0132891号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0024】
ニトリルゴムの上述のメタセシス分解方法すべてにおいて、比較的大量の触媒が使用されなければならず、所望の低い分子量ニトリルゴムを製造するために長い反応時間が必要とされる。
【0025】
それ故、本発明の目的は、ニトリルゴムのメタセシス分解をゲル化なしに可能にし、かつ、同程度の貴金属含有率で、分解ニトリルゴムのより低い分子量の設定を可能にする触媒を提供することである。
【0026】
本発明のさらなる目的は、ニトリルゴムのメタセシスのための新規触媒を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0027】
これらの目的は、新規の、かつ発明の方法および触媒によって意外にも達成された。
【0028】
本発明は、一般式(I)
【化5】

(式中、
Mはルテニウムまたはオスミウム、好ましくはルテニウムであり、
Yは酸素(O)、硫黄(S)、NラジカルまたはPラジカル、好ましくは酸素(O)またはNラジカルであり、
およびXは同一のまたは異なる配位子であり、
は水素またはアルキル、アルケニル、アルキニルもしくはアリールラジカルであり、
、R、R、Rは同一であるかまたは異なり、それぞれ水素、有機または無機ラジカルであり、
はアルキル、シクロアルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、アルコキシ、アルケニルオキシ、アルキニルオキシ、アリールオキシ、アルコキシカルボニル、アルキルアミノ、アルキルチオ、アリールチオ、アルキルスルホニルまたはアルキルスルフィニルラジカルであり、そのそれぞれは1つ以上のアルキル、ハロゲン、アルコキシ、アリールもしくはヘテロアリールラジカルで場合により置換されていてもよく、
は水素またはアルキル、シクロアルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、アルコキシ、アルケニルオキシ、アルキニルオキシ、アリールオキシ、アルコキシカルボニル、アルキルアミノ、アルキルチオ、アリールチオ、アルキルスルホニルもしくはアルキルスルフィニルラジカルであり、そのそれぞれは1つ以上のアルキル、ハロゲン、アルコキシ、アリールもしくはヘテロアリールラジカルで場合により置換されていてもよく、
Lは配位子である)
の少なくとも1種の触媒の存在下でのニトリルゴムのメタセシス方法を提供する。
【0029】
一般式(I)の触媒は原則として公知である。このクラスの化合物の代表的なものは、国際公開第A1−2008/034552号パンフレットにArltらによって記載されている触媒である。これらの触媒は商業的に入手可能であるかまたは引用された参考文献に記載されているように製造することができる。
【0030】
一般式(I)の構造特徴を有する触媒を使用してニトリルゴムのメタセシス分解をゲル形成なしに実施することが意外にも可能であり、そのような触媒を使って、それによって、同等の貴金属含有率で、Grubbs II触媒が用いられるときより低い分子量の分解ニトリルゴムを得ることがさらに可能である。
【0031】
本発明はさらに、式(Ia)および(Ib)
【化6】

(ここで、
式(Ib)におけるMはルテニウムまたはオスミウムであり、
式(Ia)におけるYは酸素(O)、硫黄(S)、NラジカルまたはPラジカルであり、
式(Ib)におけるY’は硫黄(S)、NラジカルまたはPラジカルであり、
およびXは同一のまたは異なる配位子であり、
は水素またはアルキル、アルケニル、アルキニルもしくはアリールラジカルであり、
、R、R、Rは同一であるかまたは異なり、それぞれ水素、有機または無機ラジカルであり、
はアルキル、シクロアルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、アルコキシ、アルケニルオキシ、アルキニルオキシ、アリールオキシ、アルコキシカルボニル、アルキルアミノ、アルキルチオ、アリールチオ、アルキルスルホニルまたはアルキルスルフィニルラジカルであり、そのそれぞれは1つ以上のアルキル、ハロゲン、アルコキシ、アリールもしくはヘテロアリールラジカルで場合により置換されていてもよく、
は水素またはアルキル、シクロアルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、アルコキシ、アルケニルオキシ、アルキニルオキシ、アリールオキシ、アルコキシカルボニル、アルキルアミノ、アルキルチオ、アリールチオ、アルキルスルホニルもしくはアルキルスルフィニルラジカルであり、そのそれぞれは1つ以上のアルキル、ハロゲン、アルコキシ、アリールもしくはヘテロアリールラジカルで場合により置換されていてもよく、
Lは配位子である)
の触媒に関する。
【発明を実施するための形態】
【0032】
本特許出願の目的のために使用される用語「置換(されている)」は、示された原子の原子価が超過されておらず、置換が安定な化合物をもたらすという条件で、示されたラジカルまたは原子上の水素原子が、いずれの場合にも示された基の1つに取って代わられていることを意味する。
【0033】
本特許出願および本発明の目的のためには、一般用語でまたは好ましい範囲で上にまたは下に示されるラジカルの定義、パラメータまたは説明は、何らかの方法で、すなわちそれぞれの範囲および好ましい範囲の組み合わせを含めて、互いに組み合わせることができる。
【0034】
一般式(Ia)および(Ib)の新規触媒および一般式(I)の触媒において、Lは配位子、通常、電子供与機能を有する配位子である。LはP(Xラジカル(式中、ラジカルXはそれそれ、互いに独立して、C〜Cアルキル、C〜Cシクロアルキルまたはアリールである)であることができるか、またはLは置換もしくは非置換イミダゾリジンラジカル(「Im」)である。
【0035】
〜Cアルキルは、たとえば、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、第二ブチル、第三ブチル、n−ペンチル、1−メチルブチル、2−メチルブチル、3−メチルブチル、ネオペンチル、1−エチルプロピルまたはn−ヘキシルである。
【0036】
〜Cシクロアルキルは、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチルおよびシクロオクチルを包含する。
【0037】
アリールは、6〜24個の骨格炭素原子を有する芳香族ラジカルを包含する。6〜10個の骨格炭素原子を有する好ましい単環式、二環式または三環式炭素環芳香族ラジカルは、たとえば、フェニル、ビフェニル、ナフチル、フェナントレニルおよびアントラセニルである。
【0038】
イミダゾリジンラジカル(Im)は通常、一般式(IIa)または(IIb)
【化7】

(式中、
、R、R10、R11は同一であるかまたは異なり、それぞれ水素、直鎖もしくは分岐のC〜C30アルキル、好ましくはC〜C20アルキル、C〜C20シクロアルキル、好ましくはC〜C10シクロアルキル、C〜C20アルケニル、好ましくはC〜C10アルケニル、C〜C20アルキニル、好ましくはC〜C10アルキニル、C〜C24アリール、好ましくはC〜C14アリール、C〜C20カルボキシレート、好ましくはC〜C10カルボキシレート、C〜C20アルコキシ、好ましくはC〜C10アルコキシ、C〜C20アルケニルオキシ、好ましくはC〜C10アルケニルオキシ、C〜C20アルキニルオキシ、好ましくはC〜C10アルキニルオキシ、C〜C24アリールオキシ、好ましくはC〜C14アリールオキシ、C〜C20アルコキシカルボニル、好ましくはC〜C10アルコキシカルボニル、C〜C20アルキルチオ、好ましくはC〜C10アルキルチオ、C〜C24アリールチオ、好ましくはC〜C14アリールチオ、C〜C20アルキルスルホニル、好ましくはC〜C10アルキルスルホニル、C〜C20アルキルスルホネート、好ましくはC〜C10アルキルスルホネート、C〜C24アリールスルホネート、好ましくはC〜C14アリールルスルホネート、またはC〜C20アルキルスルフィニル、好ましくはC〜C10アルキルスルフィニルである)
の構造を有する。
【0039】
ラジカルR、R、R10、R11の1つ以上は、互いに独立して、1つ以上の置換基、好ましくは直鎖もしくは分岐のC〜C10アルキル、C〜Cシクロアルキル、C〜C10アルコキシまたはC〜C24アリールで場合により置換されていてもよく、ここで、これらの上述の置換基は同様に、好ましくはハロゲン、特に塩素もしくは臭素、C〜Cアルキル、C〜Cアルコキシおよびフェニルからなる群から選択される、1つ以上のラジカルで置換されていてもよい。
【0040】
一般式(I)の触媒の好ましい実施形態ならびに一般式(Ia)および(Ib)の新規の触媒の好ましい実施形態において、RおよびRはそれぞれ、互いに独立して、水素、C〜C24アリール、特に好ましくはフェニル、直鎖もしくは分岐のC〜C10アルキル、特に好ましくはプロピルもしくはブチルであるか、または一緒に、それらが結合している炭素原子を包含して、シクロアルキルもしくはアリールラジカルを形成し、ここで、上述のラジカルはすべて同様に、直鎖もしくは分岐のC〜C10アルキル、C〜C10アルコキシ、C〜C24アリールならびにヒドロキシ、チオール、チオエーテル、ケトン、アルデヒド、エステル、エーテル、アミン、イミン、アミド、ニトロ、カルボキシル、ジスルフィド、カーボネート、イソシアネート、カルボジイミド、カルボアルコキシ、カルバメートおよびハロゲンからなる群から選択される官能基からなる群から選択される1つ以上のさらなるラジカルで置換されていてもよい。
【0041】
一般式(I)の触媒の好ましい実施形態ならびに一般式(Ia)および(Ib)の新規の触媒の好ましい実施形態において、ラジカルR10およびR11は同一であるかまたは異なり、それぞれ直鎖もしくは分岐のC〜C10アルキル、特に好ましくはi−プロピルもしくはネオペンチル、C〜C10シクロアルキル、好ましくはアダマンチル、C〜C24アリール、特に好ましくはフェニル、C〜C10アルキルスルホネート、特に好ましくはメタンスルホネート、C〜C10アリールスルホネート、特に好ましくp−トルエンスルホネートである。
【0042】
好ましいとして上に述べられているこれらのラジカルR10およびR11は、直鎖もしくは分岐のC〜Cアルキル、特にメチル、C〜Cアルコキシ、アリールならびにヒドロキシ、チオール、チオエーテル、ケトン、アルデヒド、エステル、エーテル、アミン、イミン、アミド、ニトロ、カルボキシル、ジスルフィド、カーボネート、イソシアネート、カルボジイミド、カルボアルコキシ、カルバメートおよびハロゲンからなる群から選択される官能基からなる群から選択される1つ以上のさらなるラジカルで場合により置換されていてもよい。
【0043】
特に、ラジカルR10およびR11は同一であるかまたは異なり、それぞれi−プロピル、ネオペンチル、アダマンチルまたはメシチルである。
【0044】
特に好ましいイミダゾリジンラジカル(Im)は、式中、Mesがいずれの場合にも2,4,6−トリメチルフェニルラジカルである、構造(IIIa〜f)を有する。
【化8A】

【化8B】

【0045】
一般式(I)の触媒ならびに一般式(Ia)および(Ib)の新規の触媒の好ましい実施形態において、XおよびXは同一であるかまたは異なる配位子であり、たとえば、水素、ハロゲン、擬ハロゲン、直鎖もしくは分岐のC〜C30アルキル、C〜C24アリール、C〜C20アルコキシ、C〜C24アリールオキシ、C〜C20アルキルジケトネート、C〜C24アリールジケトネート、C〜C20カルボキシレート、C〜C20アルキルスルホネート、C〜C24アリールスルホネート、C〜C20アルキルチオール、C〜C24アリールチオール、C〜C20アルキルスルホニルまたはC〜C20アルキルスルフィニルであることができる。
【0046】
上述のラジカルXおよびXはまた、1つ以上のさらなるラジカルで、たとえばハロゲン、好ましくはフッ素、C〜C10アルキル、C〜C10アルコキシまたC〜C24アリールラジカルで置換することができ、ここで、後者ラジカルはまた同様に、ハロゲン、好ましくはフッ素、C〜Cアルキル、C〜Cアルコキシおよびフェニルからなる群から選択される1つ以上の置換基で場合により置換されていてもよい。
【0047】
好ましい実施形態においては、XおよびXは同一であるかまたは異なり、それぞれハロゲン、具体的にはフッ素、塩素、臭素、ベンゾエート、C〜Cカルボキシレート、C〜Cアルキル、フェノキシ、C〜Cアルコキシ、C〜Cアルキルチオール、C〜C24アリールチオール、C〜C24アリールまたはC〜Cアルキルスルホネートである。
【0048】
特に好ましい実施形態においては、XおよびXは同一であり、それぞれハロゲン、特に塩素、CFCOO、CHCOO、CFHCOO、(CHCO、(CF(CH)CO、(CF)(CHCO、PhO(フェノキシ)、MeO(メトキシ)、EtO(エトキシ)、トシレート(p−CH−C−SO)、メシレート(2,4,6−トリメチルフェニル)またはCFSO(トリフルオロメタンスルホネート)である。
【0049】
一般式(I)ならびに一般式(Ia)および(Ib)において、ラジカルRおよびRは、アルキル、シクロアルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、アルコキシ、アルケニルオキシ、アルキニルオキシ、アリールオキシ、アルコシキシカルボニル、アルキルアミノ、アルキルチオ、アリールチオ、アルキルスルホニルまたはアルキルスルフィニルラジカルであり、そのそれぞれは1つ以上のアルキル、ハロゲン、アルコキシ、アリールもしくはヘテロアリールラジカルで場合により置換されていてもよい。
【0050】
ラジカルRおよびRは通常、C〜C30アルキル、C〜C20シクロアルキル、C〜C20アルケニル、C〜C20アルキニル、C〜C24アリール、C〜C20アルコキシ、C〜C20アルケニルオキシ、C〜C20アルキニルオキシ、C〜C24アリールオキシ、C〜C20アルコキシカルボニル、C〜C20アルキルアミノ、C〜C20アルキルチオ、C〜C24アリールチオ、C〜C20アルキルスルホニルまたはC〜C20アルキルスルフィニルラジカルであり、そのそれぞれは1つ以上のアルキル、アルコキシ、アリールもしくはヘテロアリールラジカルで場合により置換されていてもよい。
【0051】
ラジカルRはまた水素であることができる。
【0052】
およびRは好ましくはC〜C20シクロアルキルラジカル、C〜C24アリールラジカルまたは直鎖もしくは分枝のC〜C30アルキルラジカルであり、後者は場合により、1つ以上の二重もしくは三重結合または1つ以上のヘテロ原子、好ましくは酸素もしくは窒素で割り込まれることができる。
【0053】
〜C20シクロアルキルラジカルは、たとえば、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチルおよびシクロオクチルを包含する。
【0054】
〜C12アルキルラジカルは、たとえば、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、第二ブチル、第三ブチル、n−ペンチル、1−メチルブチル、2−メチルブチル、3−メチルブチル、ネオペンチル、1−エチルプロピル、n−ヘキシル、n−ヘプチル、n−オクチル、n−デシルまたはn−ドデシルであることができる。特に、Rはメチルまたはイソプロピルである。
【0055】
〜C24アリールラジカルは、6〜24個の骨格炭素原子を有する芳香族ラジカルである。6〜10個の骨格炭素原子を有する特に好ましい単環式、二環式または三環式炭素環芳香族ラジカルとして、例として、フェニル、ビフェニル、ナフチル、フェナントレニルまたはアントラセニルが挙げられてもよい。
【0056】
一般式(I)ならびに一般式(Ia)および(Ib)において、ラジカルR、R、RおよびRは同一であるかまたは異なり、水素、有機または無機ラジカルであることができる。
【0057】
好ましい実施形態においては、R、R、R、Rは同一であるかまたは異なり、それぞれ水素、ハロゲン、ニトロ、CF、アルキル、シクロアルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、アルコキシ、アルケニルオキシ、アルキニルオキシ、アリールオキシ、アルコキシカルボニル、アルキルアミノ、アルキルチオ、アリールチオ、アルキルスルホニルまたはアルキルスルフィニルであり、そのそれぞれは1つ以上のアルキル、アルコキシ、ハロゲン、アリールもしくはヘテロアリールラジカルで場合により置換されていてもよい。
【0058】
、R、R、Rは通常同一であるかまたは異なり、それぞれ水素、ハロゲン、好ましくは塩素もしくは臭素、ニトロ、CF、C〜C30アルキル、C〜C20シクロアルキル、C〜C20アルケニル、C〜C20アルキニル、C〜C24アリール、C〜C20アルコキシ、C〜C20アルケニルオキシ、C〜C20アルキニルオキシ、C〜C24アリールオキシ、C〜C20アルコキシカルボニル、C〜C20アルキルアミノ、C〜C20アルキルチオ、C〜C24アリールチオ、C〜C20アルキルスルホニルまたはC〜C20アルキルスルフィニルであり、そのそれぞれは1つ以上のC〜C30アルキル、C〜C20アルコキシ、ハロゲン、C〜C24アリールもしくはヘテロアリールラジカルで場合により置換されていてもよい。
【0059】
特に有用な実施形態においては、R、R、R、Rは同一であるかまたは異なり、それぞれニトロ、直鎖もしくは分岐のC〜C30アルキルまたはC〜C20シクロアルキルラジカル、直鎖もしくは分岐のC〜C20アルコキシラジカルまたはC〜C24アリールラジカル、好ましくはフェニルまたはナフチルである。C〜C30アルキルラジカルおよびC〜C20アルコキシラジカルは、1つ以上の二重もしくは三重結合または1つ以上のヘテロ原子、好ましくは酸素もしくは窒素で場合により割り込まれていてもよい。
【0060】
さらに、ラジカルR、R、RまたはRの2つ以上は、脂肪族または芳香族構造を介して架橋することができる。たとえば、RおよびRは、式(I)のフェニル環においてそれらが結合している炭素原子を包含して、全体でナフチル構造が生じるようにフェニル上で縮合した環を形成することができる。
【0061】
一般式(I)ならびに一般式(Ia)および(Ib)において、Rは水素またはアルキル、アルケニル、アルキニルもしくはアリールラジカルである。Rは好ましくは水素またはC〜C30アルキルラジカル、C〜C20アルケニルラジカル、C〜C20アルキニルラジカルもしくはC〜C24アリールラジカルである。Rは特に好ましくは水素である。
【0062】
本発明による方法に使用するための特に好適な触媒は、一般式(IV)
【化9】

(式中、
M、L、X、X、R、R、R、R、R、RおよびRは、一般式(I)について与えられた意味を有する)
の触媒である。
【0063】
式(I)の触媒の幾つかは、たとえば国際公開第2008/034552 A1号パンフレット(Arltら)から、原則として公知であり、そこに示されている製造方法または類似の製造方法で得ることができる。
【0064】
Mがルテニウムであり、
およびXが両方ともハロゲン、特に、両方とも塩素であり、
が水素であり、
、R、R、Rが、一般式(I)について与えられた意味を有し、
、Rが、一般式(I)について与えられた意味を有し、
Lが、一般式(I)について与えられた意味を有する
一般式(IV)の触媒が特に好ましい。
【0065】
Mがルテニウムであり、
およびXが両方とも塩素であり、
が水素であり、
、R、R、Rがすべて水素であり、
がメチルであり
がメチルであり、および
Lが、式(IIa)または(IIb)
【化10】

(式中、
、R、R10、R11は同一であるかまたは異なり、それぞれ水素、直鎖もしくは分枝のC〜C30アルキル、C〜C20シクロアルキル、C〜C20アルケニル、C〜C20アルキニル、C〜C24アリール、C〜C20カルボキシレート、C〜C20アルコキシ、C〜C20アルケニルオキシ、C〜C20アルキニルオキシ、C〜C24アリールオキシ、C〜C20アルコキシカルボニル、C〜C20アルキルチオ、C〜C24アリールチオ、C〜C20アルキルスルホニル、C〜C20アルキルスルホネート、C〜C24アリールスルホネートまたはC〜C20アルキルスルフィニルである)
の置換もしくは非置換イミダゾリジンラジカルである
一般式(IV)の触媒が非常に特に好ましい。
【0066】
一般構造式(IV)の部類に入る非常に特に好ましい触媒は、本明細書において「Arlt触媒」とも呼ばれる式(V)
【化11】

のものである。
【0067】
一般構造式(IV)の部類に入るさらなる好適な触媒は、式中、Mesがいずれの場合にも2,4,6−トリメチルフェニルラジカルである、式(VI)、(VII)、(VIII)、(IX)、(X)、(XI)、(XII)および(X11)
【化12A】

【化12B】

のものである。
【0068】
一般式(Ia)および(Ib)の好ましい新規触媒は、次式(Iaa)
【化13】

(式中、
およびXは同一のまたは異なる配位子であり、
は水素またはアルキル、アルケニル、アルキニルもしくはアリールラジカルであり、
、R、R、Rは同一であるかまたは異なり、それぞれ水素、有機または無機ラジカルであり、
はアルキル、シクロアルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、アルコキシ、アルケニルオキシ、アルキニルオキシ、アリールオキシ、アルコキシカルボニル、アルキルアミノ、アルキルチオ、アリールチオ、アルキルスルホニルまたはアルキルスルフィニルラジカルであり、そのそれぞれは1つ以上のアルキル、ハロゲン、アルコキシ、アリールもしくはヘテロアリールラジカルで場合により置換されていてもよく、
は水素またはアルキル、シクロアルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、アルコキシ、アルケニルオキシ、アルキニルオキシ、アリールオキシ、アルコキシカルボニル、アルキルアミノ、アルキルチオ、アリールチオ、アルキルスルホニルもしくはアルキルスルフィニルラジカルであり、そのそれぞれは1つ以上のアルキル、ハロゲン、アルコキシ、アリールもしくはヘテロアリールラジカルで場合により置換されていてもよく、
Lは配位子である)
の触媒である。
【0069】
式(Ia)および(Ib)の触媒、とりわけ式(Iaa)の触媒は、たとえば国際公開第2008/034552 A1号パンフレット(Arltら)に示されている製造方法に類似の方法によって得ることができる。
【0070】
代わりの実施形態においては、本発明の方法において一般式(XIV)
【化14】

[式中、D、D、DおよびDはそれぞれ、式(XIV)のケイ素にメチレン基を介して結合している一般式(XV)
【化15】

(式中、
M、L、X、X、R、R、R、R、RおよびRは、一般式(I)について与えられた意味を有するかまたは上述の好ましいもしくは特に好ましい実施形態すべてについて与えられた意味を有することができる)
の構造を有する]
の樹枝状触媒を使用することもまた可能である。
【0071】
同様の式(XV)のそのような触媒は、米国特許出願公開第2002/0107138 A1号明細書から公知であり、そこに与えられた情報に従って製造することができる。
【0072】
式(I)、(Ia)、(IB)、(IV)〜(XIII)、(XIV)、(Iaa)および(XV)の上述の触媒はすべて、NBRのメタセシスのためにそのようなものとして使用することができるか、固体担体に適用するおよび固体担体上に固定化することができるかのどちらかである。固相または担体として、第一にメタセシスの反応混合物に対して不活性であり、第二に触媒の活性を損なわない材料を使用することが可能である。触媒を固定化するために、たとえば、金属、ガラス、ポリマー、セラミック、有機ポリマー球体または無機ゾル−ゲルを使用することが可能である。
【0073】
上述の一般的なおよび具体的な式(I)、(Ia)、(IB)、(IV)〜(XIII)、(XIV)、(Iaa)および(XV)は全て、ニトリルゴムのメタセシス分解に非常に好適である。
【0074】
本発明による方法において、ニトリルゴムは、一般式(I)の触媒の存在下にまたは式(Ia)または(Ib)の触媒の存在下に、メタセシス反応にかけられる。
【0075】
メタセシスのために本発明により使用される触媒の重量は、具体的な触媒の特質および触媒活性に依存する。使用される触媒の量は、使用されるニトリルゴムを基準として、1〜1000ppm、好ましくは5〜500ppm、特に5〜250ppmの貴金属である。同じ量の本発明による式(I)の触媒または式(Ia)もしくは(Ib)の触媒を使って、ニトリルゴムのメタセシスのために有用であるとして当該技術分野において公知の触媒、たとえばGrubb’s II触媒の使用と比較して、より低い分子量のNBRが得られることが、本発明の発明者らによって意外にも見いだされた。
【0076】
NBRメタセシスは、コオレフィンなしにまたはコオレフィンの存在下に実施することができる。これは好ましくは直鎖もしくは分枝のC〜C16オレフィンである。好適なコオレフィンは、たとえば、エチレン、プロピレン、イソブテン、スチレン、1−ヘキセンおよび1−オクテンである。1−ヘキセンおよび1−オクテンを使用することが好ましい。コオレフィンが液体である(たとえば、1−ヘキセンの場合のように)場合、コオレフィンの量は、使用されるニトリルゴムを基準として好ましくは0.2〜20重量%の範囲にある。コオレフィンが、たとえば、エチレンの場合のように、ガスである場合、コオレフィンの量は、1×10Pa〜1×10Paの範囲の圧力、好ましくは5.2×10Pa〜4×10Paの範囲の圧力が、室温で、反応容器において、確立されるように選択される。
【0077】
メタセシス反応は、好適な溶媒、好ましくは使用される触媒を不活性化せず、また、決して反応に悪影響を及ぼさない溶媒中で実施される。好ましい溶媒は有機溶媒であり、ジクロロメタン、ベンゼン、トルエン、メチルエチルケトン、アセトン、テトラヒドロフラン、テトラヒドロピラン、ジオキサンおよびシクロヘキサンを含むがそれらに限定されない。特に好ましい溶媒はクロロベンゼンである。コオレフィンそれ自体が溶媒として機能することができる、幾つかの場合には、たとえば1−ヘキセンの場合には、さらなる追加溶媒の添加はまた省略することができる。
【0078】
メタセシスの反応混合物中の使用されるニトリルゴムの濃度は決定的に重要であるわけではないが、反応混合物の過度に高い粘度とそれに関連した混合問題とによって反応が悪影響を受けないことを確実にするよう、当然注意されなければならない。反応混合物中のNBRの濃度は、全反応混合物を基準として、好ましくは1〜20重量%の範囲に、特に好ましくは5〜15重量%の範囲にある。
【0079】
メタセシス分解は、10℃〜150℃の範囲、好ましくは20℃〜100℃の範囲の温度で通常実施される。
【0080】
反応時間は、多数の因子に、たとえば、使用されるNBRのタイプ、触媒のタイプ、触媒濃度および反応温度に依存する。反応は典型的には、通常条件下に、3時間以内に、完了する。メタセシスの進行は、標準分析法によって、たとえばGPC測定によってまたは粘度の測定によって監視することができる。
【0081】
ニトリルゴム(「NBR」)として、少なくとも1種の共役ジエン、少なくとも1種のα,β−不飽和ニトリルおよび、所望ならば、1種以上のさらなる共重合可能なモノマーの繰り返し単位を含むコポリマーまたはターポリマーをメタセシス反応に使用することが可能である。
【0082】
共役ジエンは、任意の性質のものであることができる。(C〜C)共役ジエンを使用することが好ましい。1,3−ブタジエン、イソプレン、2,3−ジメチルブタジエン、ピペリレンまたはそれらの混合物が特に好ましい、1,3−ブタジエンおよびイソプレンまたはそれらの混合物が非常に特に好ましい。1,3−ブタジエンがとりわけ好ましい。
【0083】
α,β−不飽和ニトリルとして、あらゆる公知のα,β−不飽和ニトリル、好ましくは、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、エタクリロニトリルまたはそれらの混合物などの(C〜C)α,β−不飽和ニトリルを使用することが可能である。アクリロニトリルが特に好ましい。
【0084】
特に好ましいニトリルゴムは、したがってアクリロニトリルと1,3−ブタジエンとのコポリマーである。
【0085】
共役ジエンおよびα,β−不飽和ニトリルは別として、当業者に公知の1種以上のさらなる共重合可能なモノマー、たとえばα,β−不飽和モノカルボン酸もしくはジカルボン酸、それらのエステルまたはアミドを使用することが可能である。α,β−不飽和モノカルボン酸もしくはジカルボン酸として、フマル酸、マレイン酸、アクリル酸およびメタクリル酸が好ましい。α,β−不飽和カルボン酸のエステルとして、それらのアルキルエステルおよびアルコキシアルキルエステルを使用することが好ましい。α,β−不飽和カルボン酸の特に好ましいアルキルエステルは、メチルアクリレート、エチルアクリレート、ブチルアクリレート、ブチルメタクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、2−エチルヘキシルメタクリレートおよびオクチルアクリレートである。α,β−不飽和カルボン酸の特に好ましいアルコキシアルキルエステルは、メトキシエチル(メタ)アクリレート、エトキシエチル(メタ)アクリレートおよびメトキシエチル(メタ)アクリレートである。アルキルエステル、たとえば上述のものと、たとえば上述のものの形態での、アルコキシアルキルエステルとの混合物を使用することもまた可能である。
【0086】
使用されるべきNBRポリマー中の共役ジエンとα,β−不飽和ニトリルとの割合は、広い範囲内で変わることができる。共役ジエンのまたはそれらの合計の割合は通常、全ポリマーを基準として、40〜90重量%の範囲に、好ましくは55〜75重量%の範囲にある。α,β−不飽和ニトリルのまたはそれらの合計の割合は通常、全ポリマーを基準として、10〜60重量%、好ましくは25〜45重量%である。モノマーの割合はいずれの場合にも合計100重量%になる。追加モノマーは、全ポリマーを基準として、0〜40重量%、好ましくは0.1〜40重量%、特に好ましくは1〜30重量%の量で存在することができる。この場合には、共役ジエンもしくはジエン類のおよび/またはα,β−不飽和ニトリルもしくはニトリル類の相当する割合は、すべてのモノマーの割合がいずれの場合にも合計100重量%になる状態で、追加モノマーの割合に取って代わられる。
【0087】
上述のモノマーの重合によるニトリルゴムの製造は、当業者に十分知られており、ポリマー文献に包括的に記載されている。
【0088】
本発明の目的のために使用することができるニトリルゴムはまた、たとえば、Lanxess Deutschland GmbHから商品名Perbunan(登録商標)およびKrynac(登録商標)の取扱製品からの製品として、商業的に入手可能である。
【0089】
メタセシスのために使用されるニトリルゴムは、24〜70の範囲、好ましくは28〜40のムーニー粘度(100℃でのML 1+4)を有する。これは、200,000〜500,000の範囲、好ましくは200,000〜400,000の範囲の重量平均分子量Mに相当する。使用されるニトリルゴムはまた、2.0〜6.0の範囲、好ましくは2.0〜4.0の範囲の多分散性PDI=M/M(ここで、Mは重量平均分子量であり、Mは数平均分子量である)を有する。
【0090】
ムーニー粘度の測定は、ASTM標準D 1646に従って実施される。
【0091】
本発明によるメタセシス法によって得られるニトリルゴムは、1〜30の範囲、好ましくは10〜20のムーニー粘度(100℃でのML 1+4)を有する。これは、10,000〜250,000の範囲、好ましくは20,000〜150,000の範囲の重量平均分子量Mに相当する。得られたニトリルゴムはまた、1.5〜4.0の範囲、好ましくは1.7〜3の範囲の多分散性PDI=M/M(ここで、Mは重量平均分子量であり、Mは数平均分子量である)を有する。
【0092】
本発明によるメタセシス分解法に、得られた分解ニトリルゴムの水素化が続くことができる。これは、当業者に公知の方法で実施することができる。
【0093】
均一または不均一水素化触媒を使って水素化を実施することが可能である。水素化をその場で、すなわち、メタセシス分解が以前実施された同じ反応容器中で、分解ニトリルゴムを単離する必要なしに、実施することもまた可能である。水素化触媒が単に反応容器に加えられる。
【0094】
使用される触媒は通常、ロジウム、ルテニウムまたはチタンをベースとするが、金属として、または好ましくは金属化合物の形態のどちらかでの白金、イリジウム、パラジウム、レニウム、オスミウム、コバルトまたは銅を使用することもまた可能である(たとえば、米国特許第3,700,637号明細書、独国特許出願公開第A−25 39 132号明細書、欧州特許出願公開第A−0 134 023号明細書、独国特許出願公開第A−35 41 689号明細書、独国特許出願公開第A−35 40 918号明細書、欧州特許出願公開第A−0 298 386号明細書、独国特許出願公開第A−35 29 252号明細書、独国特許出願公開第A−34 33 392号明細書、米国特許第4,464,515号明細書および米国特許第4,503,196号明細書を参照されたい)。
【0095】
均一相における水素化のための好適な触媒および溶媒は以下に記載され、そしてまた独国特許出願公開第A−25 39 132号明細書および欧州特許出願公開第A−0 471 250号明細書から公知である。選択的な水素化は、たとえば、ロジウムまたはルテニウム含有触媒の存在下に達成することができる。たとえば、一般式
(R1’B)M’X’
(式中、M‘はルテニウムまたはロジウムであり、ラジカルR1’は同一であるかまたは異なり、それぞれC〜Cアルキル基、C〜Cシクロアルキル基、C〜C15アリール基またはC〜C15アラルキル基である。Bはリン、ヒ素、硫黄またはスルホキシド基S=Oであり、X’は水素またはアニオン、好ましくはハロゲン、特に好ましくは塩素もしくは臭素であり、lは2、3または4であり、mは2または3であり、nは1、2または3、好ましくは1または3である)の触媒を使用することが可能である。好ましい触媒は、トリス(トリフェニルホスフィン)ロジウム(I)クロリド、トリス(トリフェニルホスフィン)ロジウム(III)クロリドおよびトリス(ジメチルスルホキシド)ロジウム(III)クロリド、そしてまた式(CP)RhHのテトラキス(トリフェニルホスフィン)ロジウムヒドリドならびに式中トリフェニルホスフィンがトリシクロヘキシルホスフィンに完全にまたは部分的に取って代わられた相当する化合物である。触媒は少量で利用することができる。ポリマーの重量を基準として、0.01〜1重量%の範囲、好ましくは0.03〜0.5重量%の範囲、特に好ましくは0.1〜0.3重量%の範囲の量が好適である。
【0096】
式R1’B(式中、R1’、mおよびBは、触媒について上に与えられた意味を有する。好ましくは、mは3であり、Bはリンであり、ラジカルR1’は同一であるかまたは異なることができる)の配位子である助触媒と一緒に触媒を使用することが通常適切である。トリアルキル、トリシクロアルキル、トリアリール、トリアラルキル、ジアリール−モノアルキル、ジアリール−モノシクロアルキル、ジアルキル−モノアリール、ジアルキル−モノシクロアルキル、ジシクロアルキル−モノアリールまたはジシクロアルキル−モノアリールラジカルを有する助触媒が好ましい。
【0097】
助触媒の例は、たとえば、米国特許第4,631,315号明細書に見いだすことができる。好ましい助触媒はトリフェニルホスフィンである。助触媒は、水素化されるべきニトリルゴムの重量を基準として、0.3〜5重量%の範囲、好ましくは0.5〜4重量%の範囲の量で好ましくは使用される。さらに、ロジウム含有触媒対助触媒の重量比は、好ましくは1:3〜1:55の範囲に、より好ましくは1:5〜1:45の範囲にある。100重量部の水素化されるべきニトリルゴムを基準として、0.1〜33重量部、好ましくは0.5〜20重量部、非常に特に好ましくは1〜5重量部の助触媒、特に、水素化されるべきニトリルゴムの100重量部当たり2重量部超しかし5重量部未満の助触媒を使用することが適切である。
【0098】
この水素化の実用的な実施は、米国特許第6,683,136号明細書から当業者に十分に知られている。それは通常、トルエンまたはモノクロロベンゼンなどの溶媒中の水素化されるべきニトリルゴムを水素で、100〜150℃の範囲の温度および50〜150バールの範囲の圧力で2〜10時間処理することによって実施される。
【0099】
本発明の目的のためには、水素化は、少なくとも50%、好ましくは70〜100%、特に好ましくは80〜100%の程度までの出発ニトリルゴム中に存在する二重結合の反応である。
【0100】
不均一触媒が使用されるとき、これらは通常、炭素、シリカ、炭酸カルシウムまたは硫酸バリウム上に、たとえば、担持されているパラジウムをベースとする担持触媒である。
【0101】
水素化が終わった後に、1〜50の範囲、好ましくは10〜40の範囲の、ASTM標準D 1646に従って測定される、ムーニー粘度(100℃でのML 1+4)を有する水素化ニトリルゴムが得られる。これは、2000〜400,000g/モルの範囲、好ましくは20,000〜200,000g/モルの範囲の重量平均分子量Mに相当する。得られた水素化ニトリルゴムはまた、1〜5の範囲、好ましくは1.5〜3の範囲の多分散性PDI=M/M(ここで、Mは重量平均分子量であり、Mは数平均分子量である)を有する。
【実施例】
【0102】
様々なRu触媒の存在下でのニトリルゴムのメタセシス分解
以下の実施例において、いずれの場合にも同じ量のルテニウムで、一般構造式(I)の触媒のメタセシス活性は、Grubbs II触媒が使用されるときより高いことが示される。
【0103】
次の触媒を使用した:
「Arlt触媒」(本発明による):
【化16】

Arlt触媒は、Umicore AG & Co.から入手した。
【0104】
Grubbs II触媒(比較):
【化17】

Grubbs II触媒は、Materia(Pasadena/California)から入手した。
【0105】
下記の分解反応は、次の特有の性質を有するLanxess Deutschland GmbH製のニトリルゴムPerbunan(登録商標)NT 3429を使用して実施した。
アクリロニトリル含有率: 34重量%
ムーニー粘度(100℃でのML 1+4): 27ムーニー単位
残存含水率: <0,5重量%
: 255,000g/モル
: 76,000g/モル
PDI(M/M): 3,36
【0106】
以下に続く本文においては、このニトリルゴムは略してNBRと言われる。
【0107】
実施されるメタセシス反応の概要
メタセシス分解はいずれの場合にも500グラムのクロロベンゼン(本明細書においては以下「MCB」と言われ、それはAldrichから購入することができる)を使用して実施した。75gのNBRを10時間の期間にわたって室温でそれに溶解させた。3.0g(4phr)の1−ヘキセンをいずれの場合にもNBR含有溶液に加え、混合物を120分間撹拌してそれを均一にした。
【0108】
メタセシス反応は、室温で次表に示される量の出発原料を使用して実施した。
【0109】
Ru含有触媒をいずれの場合にも室温で20gのMCBに溶解させた。MCB中のNBR溶液への触媒溶液の添加は、触媒溶液の調製の直後に実施した。表において下に示される反応時間後に、ポリマー溶液を、水蒸気凝固またはアルコール沈澱によるなどの当該技術分野におけるものに標準の方法を用いて凝固させた。いったん固体ポリマーを単離すると、ポリマーを、揮発性物質含有率が2%未満、好ましくは1%未満になるまで、20〜140℃の範囲の、好ましくは40〜100℃の範囲の温度で熱乾燥させた。
【0110】
GPC測定は、DIN 55672−1バージョン2007に従って実施した。
【0111】
以下の特有の性質は、元のNBRゴム(分解前)についておよび分解ニトリルゴムについて両方ともGPC分析を用いて測定した:
[kg/モル]:重量平均モル質量
[kg/モル]:数平均モル質量
PDI:モル質量分布の幅(M/M
【0112】
実施例1.1
【0113】
【表1】

【0114】
【表2】

【0115】
実施例1.2(比較)
【0116】
【表3】

【0117】
【表4】

【0118】
元のPerbunan NT 3429と比較して、実施例1.1および1.2におけるムーニー粘度ならびに分子量特性MおよびMの低下は、0.003phrの触媒の量で「Arlt触媒」の活性が「Grubbs II触媒」のそれより高いことを示す。
【0119】
実施例2.1
【0120】
【表5】

【0121】
【表6】

【0122】
実施例2.2(比較)
【0123】
【表7】

【0124】
【表8】

【0125】
元のPerbunan NT 3429と比較して、実施例2.1および2.2におけるムーニー粘度ならびに分子量特性MおよびMの低下は、0.007phrの触媒の量で「Arlt触媒」の活性が「Grubbs II触媒」のそれより高いことを示す。
【0126】
実施例3.1
【0127】
【表9】

【0128】
【表10】

【0129】
実施例3.2(比較)
【0130】
【表11】

【0131】
【表12】

【0132】
元のPerbunan NT 3429と比較して、実施例3.1および3.2におけるムーニー粘度ならびに分子量特性MおよびMの低下は、0.015phrの触媒の量で「Arlt触媒」の活性が「Grubbs II触媒」のそれより有意に高いことを示す。
【0133】
「Arlt触媒」および「Grubbs II触媒」を両方使用する上で説明された実施例で分解されたニトリルゴムは、ゲルを含まなかった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般式(I)
【化1】

(式中、
Mはルテニウムまたはオスミウムであり、
Yは酸素(O)、硫黄(S)、NラジカルまたはPラジカルであり、
およびXは同一のまたは異なる配位子であり、
は水素またはアルキル、アルケニル、アルキニルもしくはアリールラジカルであり、
、R、R、Rは同一であるかまたは異なり、それぞれ水素、有機または無機ラジカルであり、
はアルキル、シクロアルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、アルコキシ、アルケニルオキシ、アルキニルオキシ、アリールオキシ、アルコキシカルボニル、アルキルアミノ、アルキルチオ、アリールチオ、アルキルスルホニルまたはアルキルスルフィニルラジカルであり、そのそれぞれは1つ以上のアルキル、ハロゲン、アルコキシ、アリールもしくはヘテロアリールラジカルで場合により置換されていてもよく、
は水素またはアルキル、シクロアルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、アルコキシ、アルケニルオキシ、アルキニルオキシ、アリールオキシ、アルコキシカルボニル、アルキルアミノ、アルキルチオ、アリールチオ、アルキルスルホニルもしくはアルキルスルフィニルラジカルであり、そのそれぞれは1つ以上のアルキル、ハロゲン、アルコキシ、アリールもしくはヘテロアリールラジカルで場合により置換されていてもよく、
Lは配位子である)
の少なくとも1種の触媒の存在下でのニトリルゴムのメタセシス方法。
【請求項2】
前記一般式(I)におけるLがP(Xラジカル(ここで、ラジカルXはそれぞれ、互いに独立して、C〜Cアルキル、C〜Cシクロアルキルもしくはアリールである)であるかまたはLが置換もしくは非置換イミダゾリジンラジカル(「Im」)である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記イミダゾリジンラジカル(Im)が一般式(IIa)または(IIb)
【化2】

(式中、
、R、R10、R11は同一であるかまたは異なり、それぞれ水素、直鎖もしくは分枝のC〜C30アルキル、C〜C20シクロアルキル、C〜C20アルケニル、C〜C20アルキニル、C〜C24アリール、C〜C20カルボキシレート、C〜C20アルコキシ、C〜C20アルケニルオキシ、C〜C20アルキニルオキシ、C〜C20アリールオキシ、C〜C20アルコキシカルボニル、C〜C20アルキルチオ、C〜C20アリールチオ、C〜C20アルキルスルホニル、C〜C20アルキルスルホネート、C〜C20アリールスルホネートまたはC〜C20アルキルスルフィニルである)
の構造を有する、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記イミダゾリジンラジカル(Im)が、構造(IIIa)、(IIIb)、(IIIc)、(IIId)、(IIIe)または(IIIf)
【化3】

(式中、Mesはいずれの場合にも2,4,6−トリメチルフェニルラジカルである)
を有する、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
一般式(IV)
【化4】

(式中、
M、L、X、X、R、R、R、R、R、R、Rは、請求項1における前記一般式(I)について与えられた意味を有する)
の触媒の存在下に実施される、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記一般式(IV)において、
Mがルテニウムであり、
およびXが両方とも塩素であり、
が水素であり、
、R、R、Rがすべて水素であり、
がメチルであり、
がメチルであり、
Lが式(IIa)または(IIb)
【化5】

(式中、
、R、R10、R11は同一であるかまたは異なり、それぞれ水素、直鎖もしくは分枝のC〜C30アルキル、C〜C20シクロアルキル、C〜C20アルケニル、C〜C20アルキニル、C〜C24アリール、C〜C20カルボキシレート、C〜C20アルコキシ、C〜C20アルケニルオキシ、C〜C20アルキニルオキシ、C〜C24アリールオキシ、C〜C20アルコキシカルボニル、C〜C20アルキルチオ、C〜C24アリールチオ、C〜C20アルキルスルホニル、C〜C20アルキルスルホネート、C〜C24アリールスルホネートまたはC〜C20アルキルスルフィニルである)
の置換もしくは非置換イミダゾリジンラジカルである、
請求項5に記載の方法。
【請求項7】
式中、Mesがいずれの場合にも2,4,6−トリメチルフェニルラジカルである、式(VI)、(VII)、(VIII)、(IX)、(X)、(XI)、(XII)および(X11)
【化6A】

【化6B】

の触媒である、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
一般式(XIV)
【化7】

[式中、
、D、DおよびDはそれぞれ、前記式(XIV)のケイ素にメチレン基を介して結合している一般式(XV)
【化8】

(式中、
M、L、X、X、R、R、R、R、RおよびRは、請求項1における前記一般式(I)について与えられた意味を有する)
の構造を有する]
の触媒の存在下に実施される、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
使用される触媒の量が、使用されるニトリルゴムを基準として、1〜1000ppm、好ましくは5〜500ppm、特に5〜250ppmの貴金属である、請求項1〜8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
使用される前記ニトリルゴムが、24〜70の範囲、好ましくは30〜50のムーニー粘度(100℃でのML 1+4)を有する、請求項1〜9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記メタセシスされたニトリルゴムがその後水素化される、請求項1〜10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
式(Ia)または(Ib)
【化9】

(ここで、
式(Ib)におけるMはルテニウムまたはオスミウムであり、
式(Ia)におけるYは酸素(O)、硫黄(S)、NラジカルまたはPラジカルであり、
式(Ib)におけるY’は硫黄(S)、NラジカルまたはPラジカルであり、
およびXは同一のまたは異なる配位子であり、
は水素またはアルキル、アルケニル、アルキニルもしくはアリールラジカルであり、
、R、R、Rは同一であるかまたは異なり、それぞれ水素、有機または無機ラジカルであり、
はアルキル、シクロアルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、アルコキシ、アルケニルオキシ、アルキニルオキシ、アリールオキシ、アルコキシカルボニル、アルキルアミノ、アルキルチオ、アリールチオ、アルキルスルホニルまたはアルキルスルフィニルラジカルであり、そのそれぞれは1つ以上のアルキル、ハロゲン、アルコキシ、アリールもしくはヘテロアリールラジカルで場合により置換されていてもよく、
は水素またはアルキル、シクロアルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、アルコキシ、アルケニルオキシ、アルキニルオキシ、アリールオキシ、アルコキシカルボニル、アルキルアミノ、アルキルチオ、アリールチオ、アルキルスルホニルもしくはアルキルスルフィニルラジカルであり、そのそれぞれは1つ以上のアルキル、ハロゲン、アルコキシ、アリールもしくはヘテロアリールラジカルで場合により置換されていてもよく、
Lは配位子である)
の触媒。
【請求項13】
前記一般式(Ia)および前記一般式(Ib)におけるLがP(Xラジカル(ここで、ラジカルXはそれぞれ、互いに独立して、C〜Cアルキル、C〜Cシクロアルキルもしくはアリールである)であるかまたはLは置換もしくは非置換イミダゾリジンラジカル(「Im」)である、請求項12に記載の触媒。
【請求項14】
一般式(Iaa)
【化10】

(式中、
およびXは同一のまたは異なる配位子であり、
は水素またはアルキル、アルケニル、アルキニルもしくはアリールラジカルであり、
、R、R、Rは同一であるかまたは異なり、それぞれ水素、有機もしくは無機ラジカルであり、
はアルキル、シクロアルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、アルコキシ、アルケニルオキシ、アルキニルオキシ、アリールオキシ、アルコキシカルボニル、アルキルアミノ、アルキルチオ、アリールチオ、アルキルスルホニルまたはアルキルスルフィニルラジカルであり、そのそれぞれは1つ以上のアルキル、ハロゲン、アルコキシ、アリールもしくはヘテロアリールラジカルで場合により置換されていてもよく、
は水素またはアルキル、シクロアルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、アルコキシ、アルケニルオキシ、アルキニルオキシ、アリールオキシ、アルコキシカルボニル、アルキルアミノ、アルキルチオ、アリールチオ、アルキルスルホニルまたはアルキルスルフィニルラジカルであり、そのそれぞれは1つ以上のアルキル、ハロゲン、アルコキシ、アリールもしくはヘテロアリールラジカルで場合により置換されていてもよく、
Lは配位子である)
を有する、請求項12または13のいずれかに記載の触媒。
【請求項15】
ニトリルゴムのメタセシスのための、請求項1〜8のいずれか一項に定義されるような触媒の、または請求項12〜14のいずれか一項に定義されるような触媒の使用。

【公表番号】特表2013−503221(P2013−503221A)
【公表日】平成25年1月31日(2013.1.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−526031(P2012−526031)
【出願日】平成22年8月24日(2010.8.24)
【国際出願番号】PCT/EP2010/062296
【国際公開番号】WO2011/023674
【国際公開日】平成23年3月3日(2011.3.3)
【出願人】(505422707)ランクセス・ドイチュランド・ゲーエムベーハー (220)
【Fターム(参考)】