説明

ニュ−マチックケ−ソン工法における揚土装置

【発明の詳細な説明】
[産業上の利用分野]
本発明は、ニューマチックケーソン工法における揚土装置に関する。
[従来の技術]
原油貯蔵タンクなどの巨大な地下構造物を構築するに際しての地盤掘削には、止水、地盤崩壊防止等の見地からしてニューマチックケーソン工法が多く採用され、地盤掘削にはブルトーザ等による機械掘削が行なわれている。
ところで、地盤状況、掘削深度等にもよるが、最高沈設時の函内気圧は5kg/cm2以上にも達することがあり、安全上、函内掘削機械を自動運転および遠隔操作化することにより無人化を計ることが要望されている。
この要望に対し本出願人は特開昭58−13829号公報において、刃口内側からケーソンセンターのズリ出し位置に向って掘削し、集土するニューマチックケーソン工法における函内の掘削方法を提案した。この方法によれば、函内掘削の無人化が達成され、安全性の向上を計ることができる。
ところで集土したズリの函外への搬出は従来バケットによる場合が多かったが、バケットによる場合は搬出が不連続であって作業性が悪く、また函内の気密保持に特殊なロック装置を備えねばならない。
そこで特開昭61−186622号公報に見られるように、ニューマチックケーソン工法において、掘削ズリをオーガにより函外に搬出する方法が提案された。
前記工法に見られるズリ搬出法によれば、ズリは連続して搬出されバケットによる場合に比べ作業性は良いものであるが、それには次の問題点があった。
オーガ掘削やオーガの不使用時などに、オーガ全体を昇降させるオーガ昇降装置が設けられるが、前記工法に見られるズリ搬出法で実施される装置は、オーガケーシングに支持部材を固設し、作業室を区画するスラブ上に複数台のジャッキを設け、そのジャッキのロッドと前記支持部材とを連接する手段によっていたので、装置が大掛りになり、かつコスト高になる。また、該装置による場合は、オーガケーシングがスラブを貫通する部分に、作業室内の圧気の漏れを防止し、かつオーガケーシングが円滑に上下移動する摺動シール部材を設ければならず一層コスト高にしている。さらに、該装置による場合は、ズリの搬出に際しオーガケーシングはズリ釜揚(ズリの収集穴)の入口までしか下降できず、ズリ釜揚内のズリを排出するために、オーガシャフトの下端にオーガ羽根よりも大径の掘削具を設けた特殊のオーガを用いねばならない。
[発明が解決しようとする課題]
本発明は、掘削ズリの搬出にオーガを用いるものであるが、オーガ掘削やオーガの不使用時などに、オーガ全体を昇降させるオーガ昇降装置をオーガケーシングを利用した油圧ジャッキとすることにより、コスト低減を計ることができ、また、オーガケーシングがスラグを貫通する部分に特殊なシール装置を施す必要はなく、さらにはオーガ自体としては通常使用されているオーガを用いることのできるニューマチックケーソン工法における揚土装置を提供することを目的としてなされたものである。
[課題を解決する手段]
本発明によれば、作業室を区画するケーソンのスラブを貫通して形成された貫通孔上にアウターケーシングを立設し、そのアウターケーシング内に、内部にオーガスクリュを設けたオーガのインナーケーシングを挿入し、前記アウターケーシングとそのインナーケーシングのアウターケーシングを貫通する部分とでインナーケーシング、オーガスクリュ等のオーガ全体を昇降させる油圧ジャッキを形成し、その油圧ジャッキはインナーケーシングの外周に固設したオーガケーシング固定シールとアウターケーシングの上下端に設けられたアウターケーシング固定シールと、アウターケーシングに設けた油孔とにより構成され、インナーケーシングの上方部に排土口を設け、オーガスクリュを回転させ、かつ押圧するオーガの駆動部をオーガシャフトに連結し、前記スラブ上にオーガの駆動部を係脱自在に案内するリーダを立設してある。
[作用]
オーガ全体を作業室外に格納した状態で、ズリ釜揚にブルトーザ等で掘削ズリを集土する。
オーガ駆動装置によりオーガを駆動しながら、油圧ジャッキに圧油を供給してオーガ全体を下降しオーガ掘削する。
ズリ釜揚底部あるいはさらに深くオーガ掘削し、ズリはインナーケーシングとオーガシャフト間に充満し、次いでインナーケーシング上端排土口より排土する。
所定ストローク分の掘削ズリ取り込み後、油圧ジャッキに圧油を供給しオーガ全体を上昇させて作業室外に格納し、作業室内での掘削機による掘削作業に支障がないようにする。
[実施例]
以下、図面を参照して本発明の実施例を説明する。
第1図ないし第3図において、ケーソン本体の下方部にはスラブ1が設けられていて、その下方に作業室を区画している。スラブ1のセンターには貫通孔1Aが形成されており、その貫通孔1A上にアウターケーシング2が気密に立設されている。アウターケーシング2内に、内部にオーガシャフト12に取付けられたオーガスクリュ11を有するオーガのインナーケーシング6が挿入されており、アウターケーシング2とこのインナーケーシング6のアウターケーシング2を貫通する部分とで、インナーケーシング6、オーガスクリュ11等のオーガ全体を昇降させる油圧ジャッキ10を形成している。
すなわち、アウターケーシング2の上端及び下端にはシール材3が固設されてり、また、インナーケーシング6の外周にはシール材7が固定されており、かつアウターケーシング2の上部及び下部に油孔8、9が設けられている。上方の油孔8から圧油を供給し、下方の油孔9から油を排出することによりオーガ全体が下降し、逆に下方の油孔9から圧油を供給し、上方の油孔8から油を排出することによりオーガ全体が上昇する。4はガイドローラであり、5は荷重用シャフトである。
インナーケーシング6の上部には排土ドア14を備えた排土口13が設けられており、排土口13の直下にはズリを搬送するベルトコンベア15が設けられている。
オーガシャフト12に連結されていて、オーガスクリュ11を回転させるオーガ駆動モータ16及びオーガスクリュ11を押圧する圧入ジャッキ19が設けられている。そして、駆動モータ16、圧入ジャッキ19からなるオーガの駆動部はスラブ1上に立設されたリーダ17に係脱され、案内されて上下移動する。
次に、第4図ないし第7図を参照して作動について説明する。
油圧ジャッキ10の下方の油孔9より圧油を供給し、上方の油孔8より油を排出して、オーガ全体を作業室1B外に格納し、その状態でズリ釜揚Bにブルトーザ等でズリCを集土する。その状態ではオーガをリーダ17にロックしておく(第4図)。
オーガのリーダ17へのロックを解除し、オーガ駆動モータ16及び圧入ジャッキ19を作動してオーガを駆動し、それと同時に油圧ジャッキ10の上方の油孔8より圧油を供給し、下方の油孔9より油を排出して、インナーケーシング6を伴いオーガ全体を下降させてオーガ掘進を行う(第5図)。
ズリ釜揚Bの底部あるいはさらに深くオーガ掘削し、ズリCはインナーケーシング6とオーガシャフト12の間に充満し、ケーシング6内が満杯になった場合は、インナーケーシング6の上端に設けた排土口13より排出され、コンベア15により搬出する(第6図)。
所定ストローク分の掘削ズリ取込み後、油圧ジャッキ10の下方の油孔9より圧油を供給し、上方の油孔8より油を排出することによりオーガ全体を上昇させて作業室1B外に格納し、作業室1B内における掘削機の掘削作業に支障がないようにする(第7図)。
以上の操作でズリ出しの1サイクルが完了し、以下同様の手順でズリ出しを行う。これ等の作動は、すべて自動運転及び遠隔操作により行うものとする。
[発明の効果]
本発明は、次の優れた効果を奏するものである。
(i)ケーソンスラブ下の作業室のズリ釜揚に集土されたズリをオーガスクリュにより排出するようにしているので、連続的に効率よく排出することができる。
(ii)インナーケーシングやオーガスクリュ等のオーガ全体を昇降させる手段は、アウターケーシングとインナーケーシングのアスターケーシングを貫通する部分とで形成される油圧ジャッキで行うので、オーガを昇降させる昇降用ジャッキを別設する必要はなく、装置をコンパクトに、かつ安価に提供することができる。(iii)オーガケーシングであるインナーケーシングはアウターケーシング内を摺動するものであり、オーガケーシングがケーソンスラブに形成した貫通孔内を直接摺動するもののように、貫通孔に摺動シール部材を施す必要がなく、作業室内の圧気の洩れ防止対策が容易かつ確実である。
(iv)オーガケーシングであるインナーケーシングをズリ釜揚の底まで下降させることにより、ズリ釜揚内のズリをオーガケーシングをオーガスクリュとで排土するこどができ、ズリ釜揚内のズリを排土するのに特殊のオーガを用いる必要はない。
【図面の簡単な説明】
第1図は本発明の一実施例を示す側断面図、第2図は第1図1図のA矢視図、第3図は第1図のB−B線の断面図、第4図、第5図、第6図および第7図はズリ出しの態様を説明する側断面図である。
B……集土孔、1B……作業室、C……ズリ、1……ケーシングのスラブ、1A……貫通孔、2……アウターケーシング、6……インナーケーシング、10……油圧ジャッキ、11……オーガスクリュ、12……オーガシャフト、13……排土口、16……オーガ駆動モータ、17……リーダ、18……ホルダーアーム、19……圧入ジャッキ

【特許請求の範囲】
【請求項1】作業室を区画するケーソンのスラブを貫通して形成された貫通孔上にアウターケーシングを立設し、そのアウターケーシング内に、内部にオーガスクリュを設けたオーガのインナーケーシングを挿入し、前記アウターケーシングとそのインナーケーシングのアウターケーシングを貫通する部分とでインナーケーシング、オーガスクリュ等のオーガ全体を昇降させる油圧ジャッキを形成し、その油圧ジャッキはインナーケーシングの外周に固設したオーガケーシング固定シールとアウターケーシングの上下端に設けられたアウターケーシング固定シールと、アウターケーシングに設けた油孔とにより構成され、インナーケーシングの上方部に排土口を設け、オーガスクリュを回転させ、かつ押圧するオーガの駆動部をオーガシャフトに連結し、前記スラブ上にオーガの駆動部を係脱自在に案内するリーダを立設してなることを特徴とするニューマチックケーソン工法における揚土装置。

【第3図】
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【第1図】
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【第2図】
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【第4図】
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【第5図】
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【第6図】
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【第7図】
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【特許番号】第2524596号
【登録日】平成8年(1996)5月31日
【発行日】平成8年(1996)8月14日
【国際特許分類】
【出願番号】特願昭62−181247
【出願日】昭和62年(1987)7月22日
【公開番号】特開平1−24915
【公開日】平成1年(1989)1月26日
【審判番号】平6−20253
【出願人】(999999999)鹿島建設株式会社
【合議体】
【参考文献】
【文献】特開昭61−186622(JP,A)
【文献】特開昭61−155598(JP,A)