説明

ニューレグリン変異体、並びにそれをスクリーニングし、及び使用する方法

本発明は、ErbB3及び/又はErbB4に対して増強されたか、又は減少された結合親和性を有するニューレグリン-1β(NRG-1β)のポリペプチド変異体を提供する。また、本発明は、NRG-1βのポリペプチド変異体をスクリーニングし、及び産生する方法、並びに疾患を治療するためにNRG-1βのポリペプチド変異体を使用する方法を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
本出願は、一部継続であり、2005年12月2日に出願された米国特許出願第11/293,879号の優先権利益を主張する。前記出願は、その全体が引用として本明細書に組み込まれる。
【0002】
(本発明の分野)
本発明は、一般にErbB受容体を選択的に活性化するニューレグリン変異体に関する。本発明は、ニューレグリン変異体、並びにこのような変異体をスクリーニングし、及び使用するための方法を提供する。
【背景技術】
【0003】
(発明の背景)
4つのメンバーEGFR、ErbB2、ErbB3及びErbB4を含む表皮成長因子受容体ファミリーは、細胞増殖、分化及び生存を含む複数の細胞機能において重要な役割を果たすことが証明されてきた。これらは、細胞外リガンド-結合ドメイン、膜貫通ドメイン及び細胞質チロシンキナーゼドメインからなるタンパク質チロシンキナーゼ受容体である。結合により受容体ホモ-又はヘテロ-二量体化を媒介する複数の受容体リガンドが同定されてきた。特異的な受容体会合により、異なるパターンのリン酸化、複雑なシグナル伝達カスケード、並びに細胞増殖、アポトーシスの阻止、並びに腫瘍細胞移動性、接着及び浸潤の促進を含む複数の生物学的機能を生じる。
【0004】
ニューレグリン-1は、ErbB3及びErbB4受容体のリガンドである。15個をこえる異なるニューレグリン-1のアイソフォームが同定されてきた。ニューレグリン-1アイソフォームは、これらの必須上皮細胞成長因子(EGF)様ドメインの構造の相違に基づいて、α-及びβ-型として知られる2つの大きな群に分けることができる。ニューレグリン-1のEGF様ドメインは、50〜64アミノ酸の大きさの範囲であり、これらの受容体に結合し、及び活性化するために十分であることが示されている。以前の研究では、ニューレグリン-1β(NRG-1β)が高い親和性でErbB3及びErbB4に直接結合できることが示された。オーファン受容体のErbB2は、事前に活性化された高次構造を保持し、ErbB3及びErbB4ホモ二量体よりもおよそ100倍高い親和性でErbB3又はErbB4とのヘテロ-二量体化を促進する。ヘテロマー受容体は、異なる細胞型において作用し:ErbB2/ErbB3は、末梢神経系において、及びErbB2/ErbB4は、心臓において作用する。神経発生における研究では、交感神経系の形成には完全なNRG-1β、ErbB2及びErbB3シグナル伝達系が必要であることを示した。NRG-1β又はErbB2又はErbB4を標的とした破壊により、心臓発達欠損による胚性致死に至った。また、最近の研究では、心臓血管疾患発症における、並びに成体正常心機能の維持におけるNRG-1β、ErbB2及びErbB4の役割が脚光を浴びた。NRG-1βは、成体心筋細胞において筋節組織を増強することが示された。組換えNRG-1βEGFドメインの短期投与は、心不全の3つの異なる動物モデルにおいて、心筋動作の悪化を大幅に向上させ、又は保護する。更に重要なことに、NRG-1βは、心不全動物の生存を有意に延長する。これらの効果により、NRG-1βが種々の生活習慣病による心不全のための広域な治療化合物又はリード化合物となる。しかし、治療的使用のためにNRG-1βの変異体をデザインするためには、その受容体との複合体におけるNRG-1βの詳細な構造情報がさらに必要である。
【0005】
原子レベルでのリガンド-タンパク質及びタンパク質-タンパク相互作用に関して、相同性モデリング、分子動力学シミュレーション及び自由エネルギー計算を使用する多くの計算研究が実施されてきた。絶対リガンド-受容体結合自由エネルギーの予測は、構造に基づいたドラッグデザインなどの広範囲にわたる生物物理学的クエリーに必須である。最近では、タンパク質-タンパク相互作用を研究するために、新たな計算論的アプローチである分子力学ポアソンボルツマン表面積(Molecular Mechanics Poisson Boltzmann Surface Area(MM-PBSA))が使用されてきた。MM-PBSAは、中間状態の時間のかかるシミュレーションを回避するために、最終状態の自由エネルギーを直接算出する。この方法は、総自由エネルギーを見積もるために、溶質についての分子機械的エネルギーを連続溶媒アプローチ及び通常モード分析と組み合わせる。また、計算的アラニン走査方法論もタンパク質-タンパク相互作用を研究するために使用されてきた。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0006】
(本発明の簡単な要旨)
一つの態様において、本発明は、配列番号:1に示したアミノ酸配列を含むニューレグリン-1βのポリペプチド変異体であって、該ポリペプチド変異体は、配列番号:1のものとは異なるアミノ酸を含み、該ポリペプチド変異体は、配列番号:1のポリペプチドと比較してErbB3に対して増強された結合親和性を有し、かつ残基25にて、前記異なるアミノ酸は、A、C、E、F、G、H、I、K、L、M、N、P、Q、R、S、T、V、W若しくはYであり;残基35にて、前記異なるアミノ酸は、A、C、D、E、F、G、H、I、L、N、M、P、Q、R、S、T、V、W若しくはYであり;及び/又は残基46にて、前記異なるアミノ酸は、A、C、D、E、F、G、H、I、K、L、M、N、P、R、S、T、V、W若しくはYであるポリペプチド変異体を提供する。
【0007】
一部の実施態様において、ポリペプチド変異体は、配列番号:1に示したアミノ酸配列からなり、かつ残基25にて、前記異なるアミノ酸は、A、C、E、F、G、H、I、K、L、M、N、P、Q、R、S、T、V、W若しくはYであり;残基35にて、前記異なるアミノ酸は、A、C、D、E、F、G、H、I、L、N、M、P、Q、R、S、T、V、W若しくはYであり;及び/又は残基46にて、前記異なるアミノ酸は、A、C、D、E、F、G、H、I、K、L、M、N、P、R、S、T、V、W若しくはYである。
ポリペプチド変異体の一部の実施態様において、残基25にて、前記異なるアミノ酸は、Aであり;残基35にて、前記異なるアミノ酸は、Aであり;及び/又は残基46にて、前記異なるアミノ酸は、Aである。
【0008】
一部の実施態様において、ポリペプチド変異体は、配列番号:1のポリペプチドと比較してErbB4に対して減少されたか、又は同様の結合親和性を有する。ポリペプチド変異体の一部の実施態様において、残基25にて、前記異なるアミノ酸は、Aである。ポリペプチド変異体の一部の実施態様において、残基35にて、前記異なるアミノ酸は、Aである。ポリペプチド変異体の一部の実施態様において、残基46にて、前記異なるアミノ酸は、Aである。
【0009】
また、本発明は、配列番号:1のアミノ酸残基1〜52で構成されるニューレグリン-1βのポリペプチド変異体であって、該ポリペプチド変異体は、配列番号:1のものとは異なるアミノ酸を含み、該ポリペプチド変異体は、配列番号:1のアミノ酸残基1〜52からなるポリペプチドと比較してErbB3に対して増強された結合親和性を有し、かつ残基25にて、前記異なるアミノ酸は、A、C、E、F、G、H、I、K、L、M、N、P、Q、R、S、T、V、W若しくはYであり;残基35にて、前記異なるアミノ酸は、A、C、D、E、F、G、H、I、L、N、M、P、Q、R、S、T、V、W若しくはYであり;及び/又は残基46にて、前記異なるアミノ酸は、A、C、D、E、F、G、H、I、K、L、M、N、P、R、S、T、V、W若しくはYである、ポリペプチド変異体を提供する。
【0010】
ポリペプチド変異体の一部の実施態様において、残基25にて、前記異なるアミノ酸はAであり;残基35にて、前記異なるアミノ酸は、Aであり;及び/又は残基46にて、前記異なるアミノ酸は、Aである。
一部の実施態様において、ポリペプチド変異体は、配列番号:1のアミノ酸残基1〜52からなるポリペプチドと比較してErbB4に対して減少されたか、又は同様の結合親和性を有する。ポリペプチド変異体の一部の実施態様において、残基25にて、前記異なるアミノ酸は、Aである。ポリペプチド変異体の一部の実施態様において、残基35にて、前記異なるアミノ酸は、Aである。ポリペプチド変異体の一部の実施態様において、残基46にて、前記異なるアミノ酸は、Aである。
【0011】
また、本発明は、配列番号:1のポリペプチド又は配列番号:1のアミノ酸残基1〜52からなるポリペプチドと比較してErbB3に対して増強された結合親和性を有する、本明細書に記述されるポリペプチド変異体をコードする核酸配列を含むポリヌクレオチドを提供する。
また、本発明は、配列番号:1のポリペプチド若しくは配列番号:1のアミノ酸残基1〜52からなるポリペプチドと比較してErbB3に対して増強された結合親和性を有する、本明細書に記述したポリペプチド変異体又はポリペプチド変異体をコードするポリヌクレオチドの有効量と医薬として許容し得る賦形剤とを含む医薬組成物を提供する。
【0012】
また、本発明は、医薬組成物を含むキットを提供する。一部の実施態様において、キットは、ErbB2/ErbB3受容体を活性化することを介して個体における疾患を予防し、治療し、又は遅延させる際に医薬組成物を使用するための説明書を更に含む。
また、本発明は、哺乳類における統合失調症の発症を予防し、治療し、又は遅延させるための方法であって、このような予防、治療若しくは遅延が必要であるか、又は望ましい哺乳類に対して、医薬組成物の有効量を含む医薬組成物を投与することを含む、方法を提供する。一部の実施態様において、哺乳類は、ヒトである。
【0013】
別の態様において、本発明は、配列番号:1に示したアミノ酸配列を含むニューレグリン-1βのポリペプチド変異体であって、該ポリペプチド変異体は、配列番号:1のものとは異なるアミノ酸を含み、該ポリペプチド変異体は、配列番号:1のポリペプチドと比較してErbB4に対して減少された結合親和性を有し、かつ残基3にて、前記異なるアミノ酸は、A、C、D、E、F、G、H、I、K、M、N、P、Q、R、S、T、V、W又はYである、ポリペプチド変異体を提供する。
【0014】
一部の実施態様において、ポリペプチド変異体は、配列番号:1に示したアミノ酸配列からなり、残基3にて、前記異なるアミノ酸は、A、C、D、E、F、G、H、I、K、M、N、P、Q、R、S、T、V、W若しくはYである。
ポリペプチド変異体の一部の実施態様において、残基3にて、前記異なるアミノ酸は、Aである。
一部の実施態様において、ポリペプチド変異体は、配列番号:1のポリペプチドと比較してErbB3に対して増加されたか、又は同様の結合親和性を有する。ポリペプチド変異体の一部の実施態様において、残基3にて、前記異なるアミノ酸は、Aである。
【0015】
また、本発明は、配列番号:1のアミノ酸残基1〜52で構成されるニューレグリン-1βのポリペプチド変異体であって、該ポリペプチド変異体は、配列番号:1のものとは異なるアミノ酸を含み、該ポリペプチド変異体は、配列番号:1のアミノ酸残基1〜52からなるポリペプチドと比較してErbB4に対する減少された結合親和性を有し、かつ残基3にて、前記異なるアミノ酸は、A、C、D、E、F、G、H、I、K、M、N、P、Q、R、S、T、V、W又はYである、ポリペプチド変異体を提供する。
【0016】
ポリペプチド変異体の一部の実施態様において、残基3にて、前記異なるアミノ酸は、Aである。
一部の実施態様において、ポリペプチド変異体は、配列番号:1のアミノ酸残基1〜52からなるポリペプチドと比較してErbB3に対して増加されたか、又は同様の結合親和性を有する。ポリペプチド変異体の一部の実施態様において、残基3にて、前記異なるアミノ酸は、Aである。
【0017】
また、本発明は、配列番号:1のポリペプチド又は配列番号:1のアミノ酸残基1〜52からなるポリペプチドと比較してErbB4に対して減少された結合親和性を有する、本明細書に記述したポリペプチド変異体をコードする核酸配列を含むポリヌクレオチドを提供する。
また、本発明は、配列番号:1のポリペプチド若しくは配列番号:1のアミノ酸残基1〜52からなるポリペプチドと比較してErbB4に対して減少された結合親和性を有する、本明細書に記述したポリペプチド変異体又はポリペプチド変異体をコードするポリヌクレオチドの有効量と医薬として許容し得る賦形剤とを含む医薬組成物を提供する。
【0018】
また、本発明は、医薬組成物を含むキットを提供する。一部の実施態様において、キットは、ErbB2/ErbB3を活性化することを介して個体における疾患を予防し、治療し、又は遅延させる際に医薬組成物を使用するための説明書を更に含む。
また、本発明は、哺乳類における統合失調症の発症を予防し、治療し、又は遅延させるための方法であって、このような予防、治療若しくは遅延が必要であるか、又は望ましい哺乳類に対して、医薬組成物の有効量を含む医薬組成物を投与することを含む、方法を提供する。一部の実施態様において、哺乳類は、ヒトである。
【0019】
別の態様において、本発明は、配列番号:1に示したアミノ酸配列を含むニューレグリン-1βのポリペプチド変異体であって、該ポリペプチド変異体は、配列番号:1のものとは異なるアミノ酸を含み、該ポリペプチド変異体は、配列番号:1のポリペプチドと比較してErbB4に対して増強された結合親和性を有し、かつ残基16にて、前記異なるアミノ酸は、A、C、D、E、F、G、H、I、K、L、M、P、Q、R、S、T、V、W若しくはYであり;残基29にて、前記異なるアミノ酸は、A、C、D、E、F、G、H、I、K、L、M、N、Q、R、S、T、V、W若しくはYであり;残基31にて、前記異なるアミノ酸は、A、C、D、E、F、G、H、I、K、L、M、N、P、Q、S、T、V、W若しくはYであり;残基43にて、前記異なるアミノ酸は、A、C、E、F、G、H、I、K、L、M、N、P、Q、R、S、T、V、W若しくはYであり;及び/又は残基47にて、前記異なるアミノ酸は、A、C、D、E、F、G、H、I、K、L、M、P、Q、R、S、T、V、W若しくはYである、ポリペプチド変異体を提供する。
【0020】
一部の実施態様において、ポリペプチド変異体は、配列番号:1に示したアミノ酸配列からなり、かつ残基16にて、前記異なるアミノ酸は、A、C、D、E、F、G、H、I、K、L、M、P、Q、R、S、T、V、W若しくはYであり;残基29にて、前記異なるアミノ酸は、A、C、D、E、F、G、H、I、K、L、M、N、Q、R、S、T、V、W若しくはYであり;残基31にて、前記異なるアミノ酸は、A、C、D、E、F、G、H、I、K、L、M、N、P、Q、S、T、V、W若しくはYであり;残基43にて、前記異なるアミノ酸は、A、C、E、F、G、H、I、K、L、M、N、P、Q、R、S、T、V、W若しくはYであり;及び/又は残基47にて、前記異なるアミノ酸は、A、C、D、E、F、G、H、I、K、L、M、P、Q、R、S、T、V、W若しくはYである。
【0021】
ポリペプチド変異体の一部の実施態様において、残基16にて、前記異なるアミノ酸は、Aであるか;残基29にて、前記異なるアミノ酸は、Aであるか;残基31にて、前記異なるアミノ酸は、Aであるか;残基43にて、前記異なるアミノ酸は、Aであるか;又は残基47にて、前記異なるアミノ酸は、Aである。
一部の実施態様において、ポリペプチド変異体は、配列番号:1のポリペプチドと比較してErbB3に対して減少されたか、又は同様の結合親和性を有する。ポリペプチド変異体の一部の実施態様において、残基31にて、前記異なるアミノ酸は、Aである。ポリペプチド変異体の一部の実施態様において、残基43にて、前記異なるアミノ酸は、Aである。ポリペプチド変異体の一部の実施態様において、残基47にて、前記異なるアミノ酸は、Aである。
【0022】
また、本発明は、配列番号:1のアミノ酸残基1〜52からなるニューレグリン-1βのポリペプチド変異体であって、該ポリペプチド変異体は、配列番号:1のものとは異なるアミノ酸を含み、該ポリペプチド変異体は、配列番号:1のアミノ酸残基1〜52からなるポリペプチドと比較してErbB4に対して増強された結合親和性を有し、かつ残基16にて、前記異なるアミノ酸は、A、C、D、E、F、G、H、I、K、L、M、P、Q、R、S、T、V、W若しくはYであり;残基29にて、前記異なるアミノ酸は、A、C、D、E、F、G、H、I、K、L、M、N、Q、R、S、T、V、W若しくはYであり;残基31にて、前記異なるアミノ酸は、A、C、D、E、F、G、H、I、K、L、M、N、P、Q、S、T、V、W若しくはYであり;残基43にて、前記異なるアミノ酸は、A、C、E、F、G、H、I、K、L、M、N、P、Q、R、S、T、V、W若しくはYであり;及び/又は残基47にて、前記異なるアミノ酸は、A、C、D、E、F、G、H、I、K、L、M、P、Q、R、S、T、V、W若しくはYである、ポリペプチド変異体を提供する。
【0023】
ポリペプチド変異体の一部の実施態様において、残基16にて、前記異なるアミノ酸は、Aであり;残基29にて、前記異なるアミノ酸は、Aであり;残基31にて、前記異なるアミノ酸は、Aであり;残基43にて、前記異なるアミノ酸は、Aであり;及び/又は残基47にて、前記異なるアミノ酸は、Aである。
一部の実施態様において、ポリペプチド変異体は、配列番号:1のポリペプチドと比較してErbB3に対して減少されたか、又は同様の結合親和性を有する。ポリペプチド変異体の一部の実施態様において、残基31にて、前記異なるアミノ酸は、Aである。ポリペプチド変異体の一部の実施態様において、残基43にて、前記異なるアミノ酸は、Aである。ポリペプチド変異体の一部の実施態様において、残基47にて、前記異なるアミノ酸は、Aである。
【0024】
また、本発明は、配列番号:1のアミノ酸配列を含むニューレグリン-1βのポリペプチド変異体であって、該ポリペプチド変異体は、配列番号:1のものとは異なるアミノ酸を含み、該ポリペプチド変異体は、配列番号:1のポリペプチドと比較してErbB3に対して減少された結合親和性を有するが、配列番号:1のポリペプチドと同様のErbB4に対する結合親和性を有し、かつ残基33にて、前記異なるアミノ酸は、Aである、ポリペプチド変異体を提供する。
【0025】
また、本発明は、配列番号:1のアミノ酸残基1〜52からなるニューレグリン-1βのポリペプチド変異体であって、該ポリペプチド変異体は、配列番号:1のものとは異なるアミノ酸を含み、該ポリペプチド変異体は、配列番号:1のアミノ酸残基1〜52からなるポリペプチドと比較してErbB3に対して減少された結合親和性を有するが、配列番号:1のアミノ酸残基1〜52からなるポリペプチドと同様のErbB4に対する結合親和性を有し、かつ残基33にて、前記異なるアミノ酸は、Aである、ポリペプチド変異体を提供する。
【0026】
また、本発明は、配列番号:1のポリペプチド又は配列番号:1のアミノ酸残基1〜52からなるポリペプチドと比較してErbB4に対して増強された結合親和性を有する、本明細書に記述したポリペプチド変異体をコードする核酸配列を含むポリヌクレオチドを提供する。
また、本発明は、配列番号:1のポリペプチド若しくは配列番号:1のアミノ酸残基1〜52からなるポリペプチドと比較してErbB4に対して増強された結合親和性を有する、本明細書に記述したポリペプチド変異体又は該ポリペプチド変異体をコードするポリヌクレオチドの有効量と医薬として許容し得る賦形剤とを含む医薬組成物を提供する。
また、本発明は、医薬組成物を含むキットを提供する。一部の実施態様において、キットは、ErbB2/ErbB4受容体を活性化することを介して個体における疾患を予防し、治療し、又は遅延させる際に医薬組成物を使用するための説明書を更に含む。
【0027】
また、本発明は、個体におけるウイルス性心筋炎、拡張型(鬱血性)心筋症、心毒性、心不全、心筋梗塞の発症を予防し、治療し、又は遅延させるための方法であって、このような予防、治療若しくは遅延が必要であるか、又は望ましい個体に対して、医薬組成物の有効量を含む医薬組成物を投与することを含む、方法を提供する。一部の実施態様において、哺乳類は、ヒトである。
【0028】
別の態様において、本発明は、ErbB3に対して増強された結合親和性を有するニューレグリン-1βのポリペプチド変異体をスクリーニングするための方法であって:該方法には、(a)相同性モデリングにより、ニューレグリン-1β又はその断片、ErbB3及びニューレグリン-1β又はその断片とErbB3との複合体の三次元構造を確立することと;(b)分子動力学シミュレーション法により、溶液におけるニューレグリン-1β又はその断片とErbBと3との複合体の高次構造上の変化及び安定性データを確立すること;(c)分子力学ポアソンボルツマン表面領域(MM-PBSA)法により、ニューレグリン-1β又はその断片のErbB3とのサブトータル結合自由エネルギー(ΔGサブトータル野生型)を算出すること;(d)分子力学ポアソンボルツマン表面領域(MM-PBSA)法により、ニューレグリン-1β又はその断片のアラニン置換された変異体のErbB3とのサブトータル結合自由エネルギー(ΔGサブトータルアラニン置換変異体)を算出することであって、該アラニン置換された変異体は、アラニンによって置換されたニューレグリン-1β又はその断片のアミノ酸を含む;(e)ΔΔGサブトータル=ΔGサブトータル野生型−ΔGサブトータルアラニン置換変異体を算出すること;並びに(f)ニューレグリン-1β又はその断片とErbB3との複合体についてのΔΔGサブトータルについて正の値を有するアラニン置換された変異体を選択すること;を含み、これにより、ErbB3に対する増強された結合親和性を有するニューレグリン-1βのポリペプチド変異体が同定される、方法を提供する。
【0029】
また、本発明は、ErbB3に選択的な増強された結合親和性を有するニューレグリン-1βのポリペプチド変異体をスクリーニングするための方法であって:該方法には、(a)相同性モデリングにより、ニューレグリン-1β又はその断片、ErbB3、ErbB4、ニューレグリン-1β又はその断片とErbB3との複合体及びニューレグリン-1β又はその断片とErbB4との複合体の三次元構造を確立すること;(b)分子動力学シミュレーション法により、溶液におけるニューレグリン-1β又はその断片とErbB3との複合体及びニューレグリン-1β又はその断片とErbB4との複合体の高次構造上の変化及び安定性データを確立すること;(c)分子力学ポアソンボルツマン表面領域(MM-PBSA)法により、ニューレグリン-1β又はその断片のErbB3又はErbB4とのサブトータル結合自由エネルギー(ΔGサブトータル野生型)を算出すること;(d)分子力学ポアソンボルツマン表面領域(MM-PBSA)法により、ニューレグリン-1β又はその断片のアラニン置換された変異体のErbB3又はErbB4とのサブトータル結合自由エネルギー(ΔGサブトータルアラニン置換変異体)を算出することであって、該アラニン置換された変異体は、アラニンによって置換されたニューレグリン-1β又はその断片のアミノ酸を含む;(e)ΔΔGサブトータル=ΔGサブトータル野生型−ΔGサブトータルアラニン置換変異体を算出すること;(f)ニューレグリン-1β又はその断片とErbB3との複合体についてのΔΔGサブトータルについて正の値を有し、かつニューレグリン-1β又はその断片とErbB4との複合体についてのΔΔGサブトータルについて負の値又は約0の値を有するアラニン置換された変異体を選択すること;を含み、これにより、ErbB3に選択的な増強された結合親和性を有するニューレグリン-1βのポリペプチド変異体が同定される、方法を提供する。一部の実施態様において、ニューレグリン-1β又はその断片とErbB4との複合体についてのΔΔGサブトータルについて負の値を有するアラニン置換変異体が選択され、これにより、ErbB3に対して増強された結合親和性を有するが、ErbB4に対して減少された結合親和性を有するニューレグリン-1βのポリペプチド変異体が同定される。一部の実施態様において、ニューレグリン-1β又はその断片とErbB4との複合体についてのΔΔGサブトータルについて約0の値を有するアラニン置換変異体が選択され、これにより、ErbB3にそれは結合親和性が増強されているが、ErbB4に対する結合親和性が不変であるニューレグリン-1βのポリペプチド変異体が同定される。
【0030】
別の態様において、本発明は、ErbB4に対して増強された結合親和性を有するニューレグリン-1βのポリペプチド変異体をスクリーニングするための方法であって、方法には:(a)相同性モデリングにより、ニューレグリン-1β又はその断片、ErbB4及びニューレグリン-1β又はその断片とErbB4との複合体の三次元構造を確立すること;(b)分子動力学シミュレーション法により、溶液におけるニューレグリン-1β又はその断片とErbB4との複合体の高次構造上の変化及び安定性データを確立すること;(c)分子力学ポアソンボルツマン表面領域(MM-PBSA)法により、ニューレグリン-1β又はその断片のErbB4とのサブトータル結合自由エネルギー(ΔGサブトータル野生型)を算出すること;(d)分子力学ポアソンボルツマン表面領域(MM-PBSA)法により、ニューレグリン-1β又はその断片のアラニン置換された変異体のErbB4とのサブトータル結合自由エネルギー(<Gサブトータルアラニン置換変異体)を算出することであって、該アラニン置換された変異体は、アラニンによって置換されたニューレグリン-1β又はその断片のアミノ酸を含む;(e)ΔΔGサブトータル=ΔGサブトータル野生型−ΔGサブトータルアラニン置換変異体を算出すること;(f)ニューレグリン-1β又はその断片とErbB4との複合体について正の値のΔΔGサブトータルを有するアラニン置換された変異体を選択すること;を含み、これにより、ErbB4に対して増強された結合親和性を有するニューレグリン-1βのポリペプチド変異体が同定される、方法を提供する。
【0031】
また、本発明は、ErbB4に選択的な増強された結合親和性を有するニューレグリン-1βのポリペプチド変異体をスクリーニングするための方法であって、該方法には:(a)相同性モデリングにより、ニューレグリン-1β又はその断片、ErbB3、ErbB4、ニューレグリン-1β又はその断片とErbB3との複合体、及びニューレグリン-1β又はその断片とErbB4との複合体の三次元構造を確立すること;(b)分子動力学シミュレーション法により、溶液におけるニューレグリン-1β又はその断片とErbBと3の複合体及びニューレグリン-1β又はその断片とErbB4との複合体の高次構造上の変化及び安定性データを確立すること;(c)分子力学ポアソンボルツマン表面領域(MM-PBSA)法により、ニューレグリン-1β又はその断片のErbB3又はErbB4とのサブトータル結合自由エネルギー(ΔGサブトータル野生型)を算出すること;(d)分子力学ポアソンボルツマン表面領域(MM-PBSA)法により、ニューレグリン-1β又はその断片のアラニン置換された変異体のErbB3又はErbB4とのサブトータル結合自由エネルギー(ΔGサブトータルアラニン置換変異体)を算出することであって、該アラニン置換された変異体は、アラニンによって置換されたニューレグリン-1β又はその断片のアミノ酸を含む;(e)ΔΔGサブトータル=ΔGサブトータル野生型−ΔGサブトータルアラニン置換変異体を算出すること;(f)ニューレグリン-1β又はその断片とErbBと4の複合体について正の値のΔΔGサブトータルを有し、かつニューレグリン-1β又はその断片とErbB3との複合体についてのΔΔGサブトータルについて負の値又は約0の値を有するアラニン置換された変異体を選択すること;を含み、これにより、ErbB4に選択的な増強された結合親和性を有するニューレグリン-1βのポリペプチド変異体が同定される、方法を提供する。一部の実施態様において、ニューレグリン-1β又はその断片とErbB3との複合体についてのΔΔGサブトータルについて負の値を有するアラニン置換された変異体が選択され、これによりErbB4に対して増強された結合親和性を有するが、ErbB3に対して減少された結合親和性を有するニューレグリン-1βのポリペプチド変異体が同定される。一部の実施態様において、ニューレグリン-1β又はその断片とErbB3との複合体についてのΔΔGサブトータルについて約0の値を有するアラニン置換された変異体が選択され、これにより、ErbB4に対して増強された結合親和性を有するが、ErbB3に対する結合親和性が不変であるニューレグリン-1βのポリペプチド変異体が同定される。
【0032】
また、本発明は、ErbB4に対して不変の結合親和性を有するが、ErbB3に対して減少された結合親和性を有するニューレグリン-1βのポリペプチド変異体をスクリーニングするための方法であって、該方法には:(a)相同性モデリングにより、ニューレグリン-1β又はその断片、ErbB3、ErbB4、ニューレグリン-1β又はその断片とErbB3との複合体、及びニューレグリン-1β又はその断片とErbB4との複合体の三次元構造を確立すること;(b)分子動力学シミュレーション法により、溶液におけるニューレグリン-1β又はその断片とErbB3との複合体及びニューレグリン-1β又はその断片とErbB4との複合体の高次構造上の変化及び安定性データを確立すること;(c)分子力学ポアソンボルツマン表面領域(MM-PBSA)法により、ニューレグリン-1β又はその断片のErbB3又はErbB4とのサブトータル結合自由エネルギー(ΔGサブトータル野生型)を算出すること;(d)分子力学ポアソンボルツマン表面領域(MM-PBSA)法により、ニューレグリン-1β又はその断片のアラニン置換された変異体のErbB3又はErbB4とのサブトータル結合自由エネルギー(ΔGサブトータルアラニン置換変異体)を算出することであって、該アラニン置換された変異体は、アラニンによって置換されたニューレグリン-1β又はその断片のアミノ酸を含む;(e)ΔΔGサブトータル=ΔGサブトータル野生型−ΔGサブトータルアラニン置換変異体を算出すること;(f)ニューレグリン-1β又はその断片とErbB4との複合体についてのΔΔGサブトータルについて約0の値を有し、かつニューレグリン-1β又はその断片とErbB3との複合体についてのΔΔGサブトータルについて負の値を有するアラニン置換された変異体を選択すること;を含み、これにより、ErbB4に対して不変の結合親和性を有するが、ErbB3に対して減少された結合親和性を有するニューレグリン-1βのポリペプチド変異が同定される、方法を提供する。
また、本発明は、本明細書に記述した方法によって同定されるニューレグリン-1βのポリペプチド変異体を提供する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0033】
(発明の詳細な記載)
開示の明快さのために、かつ限定の目的ではなく、本発明の詳細な説明は、続く小区分に分けられる。
(A.定義)
他に定義されない限り、本明細書に使用される全ての専門的及び科学的用語は、本発明が属する技術分野において当業者によって一般に理解されているものと同じ意味を有する。本明細書において言及した全ての特許、出願、公開された出願及びその他の刊行物は、これらの全体が引用として組み込まれる。この節に記載された定義が、本明細書に引用として組み込まれた特許、出願、公開された出願及びその他の刊行物に記載された定義に反するか、又はそうでなければ不一致な場合、引用として本明細書に組み込まれた定義よりもこの節に記載された定義を採用する。
【0034】
本明細書に使用される、「1つの」は、「少なくとも1つの」又は「1つ以上の」を意味する。
本明細書に使用される「ニューレグリン」又は「NRG」は、全てのニューレグリンアイソフォーム、ニューレグリンEGFドメイン単独、ニューレグリン突然変異体及びまた上記受容体を活性化する任意の種類のニューレグリン様遺伝子産物などの、ErbB2/ErbB4又はErbB2/ErbB3ヘテロ二量体プロテインキナーゼに結合し、および活性化することができるタンパク質又はペプチドをいう。また、ニューレグリンには、NRG-1、NRG-2、NRG-3及びNRG-4を含む。これらのタンパク質及びポリペプチドは、上記ErbB受容体を活性化することができ、これらの生体反応を調整すること、例えば乳癌細胞分化及び乳タンパク質分泌を刺激すること;神経鳥冠細胞のシュワン細胞への分化を誘導すること;骨格筋細胞におけるアセチルコリン合成を刺激すること;並びに心筋細胞生存及びDNA合成を改善することができる。また、ニューレグリンは、これらの生物活性を実質的に変化させない保存的アミノ酸置換をもつこれらの変異体を含む。アミノ酸の適切な保存的置換は、当業者に公知であり、一般に生じる分子の生物活性を変化させることなく行われるであろう。当業者であれば、一般にポリペプチドの非必須領域における単一アミノ酸置換は、生物活性を実質的に変化させないことを認識する(例えば、Watsonらの文献、遺伝子の分子生物学(Molecular Biology of the Gene)、第4版、1987、Bejacmim/Cummings出版社、224ページを参照されたい)。ニューレグリンタンパク質には、ニューレグリンタンパク質及びペプチドを包含する。ニューレグリン核酸は、ニューレグリン核酸及びニューレグリンオリゴヌクレオチドを包含する。
【0035】
本明細書に使用される「上皮細胞成長因子様ドメイン」又は「EGF様ドメイン」は、ErbB2、ErbB3、ErbB4又はこれらの組み合わせに結合し、及び活性化するニューレグリン遺伝子によってコードされ、かつ国際公開第00/64400号、Holmesらの論文、Science、256:1205-1210(1992);米国特許第5,530,109号及び第5,716,930号;Hijaziらの論文、Int. J. Oncol.、13:1061−1067(1998);Changらの論文、Nature、387:509-512(1997);Carrawayらの論文、Nature、387:512-516(1997);Higashiyamaらの論文、J. Biochem.、122:675-680(1997);及び国際公開第97/09425号に開示されたような、EGF受容体-結合ドメインに対して構造類似性を有するポリペプチドモチーフをいう。EGF様ドメインは、NRG-1、NRG-1、NRG-3又はNRF-4に由来してもよい。EGF様ドメインは、α又はβサブタイプであってもよい。
【0036】
本明細書に使用されるニューレグリンの「機能的誘導体又は断片」は、なおも実質的にその抗ウイルス心筋炎活性、抗DCM活性、抗心毒性活性又は抗心筋梗塞活性を保持するニューレグリンタンパク質の誘導体若しくは断片又はそれをコードする核酸をいう。通常、誘導体又は断片は、その抗ウイルス心筋炎活性、抗DCM活性、抗心毒性活性又は抗心筋梗塞活性の少なくとも50%を保持する。好ましくは、誘導体又は断片は、その抗ウイルス心筋炎活性、抗DCM活性、抗心毒性活性又は抗心筋梗塞活性の少なくとも60%、70%、80%、90%、95%、99%及び100%を保持する。
【0037】
本明細書に使用される、「erb」は、赤芽球症ウイルス(急性形質転換レトロウイルス)と関連する2つの発癌遺伝子erb A及びerb Bをいう。
本明細書に使用される「特定の疾患を治療するための化合物の有効量」は、疾患と関連する症候を寛解させ、又はいくつかの様式において、減少させるのに十分である量である。このような量は、単一投薬量として投与してもよく、又はそれが有効な処方計画に従って投与してもよい。量は、疾患を治癒させてもよいが、典型的には疾患の症候を寛解させるために投与される。所望の症候の回復を達成するためには、繰り返し投与が必要かもしれない。
【0038】
本明細書に使用される「治療」又は「治療すること」は、状態、障害又は疾患の症候を寛解させ、又はさもなければ有利に変化させる任意の様式をいう。また、治療には、本明細書の組成物の任意の医薬用途を包含する。
本明細書に使用される、特定の医薬組成物の投与による特定の障害の症候の「寛解」は、それが組成物の投与に起因、又は関連し得る、任意の和らげること(永久的又は一時的であるかにかかわらず)、永続性のもの若しくは一過性のものをいう。
【0039】
本明細書に使用される「組換え手段による産生」は、クローン化された核酸によってコードされるタンパク質を発現するための分子生物学の周知の方法による組換え核酸方法を使用する製造方法をいう。
本明細書に使用される「相補的」とは、2つの核酸分子をいうときに、該2つのヌクレオチドの配列が、逆のヌクレオチドとの間のミスマッチを好ましくは25%未満で、より好ましくは15%未満で、最も好ましくは5%未満で、更により好ましくは伴わずに、ハイブリダイズすることができることを意味する。好ましくは、2つの分子は、高ストリンジェンシー条件下でハイブリダイズするであろう。
【0040】
本明細書に使用されるパーセンテージミスマッチを決定する際の「ハイブリダイゼーションのストリンジェンシー」は、以下の通りである:
1)高ストリンジェンシー:0.1×SSPE、0.1% SDS、65℃;
2)中程度ストリンジェンシー:0.2×SSPE、0.1% SDS、50℃(適度なストリンジェンシーともいう);及び、
3)低ストリンジェンシー:1.0×SSPE、0.1% SDS、50℃。
同等のストリンジェンシーが、代わりの緩衝液、塩及び温度を使用して達成され得ることが理解される。
【0041】
本明細書に使用される「ベクター(又はプラスミド)」は、その発現又はその複製のいずれかのために、異種DNAを細胞に導入するために使用される分離したエレメントをいう。このような媒体の選択及び使用は、当業者には周知である。発現ベクターには、このようなDNA断片の発現を遂行することができるプロモーター領域などの制御配列と機能的に連結されたDNAを発現することができるベクターを含む。従って、発現ベクターは、適切な宿主細胞への導入によりクローン化されたDNAの発現を生じる、プラスミド、ファージ、組換えウイルス若しくはその他のベクターなどの組換えDNA又はRNA構築物をいう。適切な発現ベクターは、当業者に周知であり、真核細胞及び/又は原核細胞において複製可能であるもの、並びにエピソームのままであるもの又は宿主細胞ゲノムに組み込まれるものを含む。
【0042】
本明細書に使用される「プロモーター領域又はプロモーターエレメント」は、それが機能的に連結されているDNA又はRNAの転写を制御するDNA又はRNAのセグメントをいう。プロモーター領域には、RNAポリメラーゼ認識、結合及び転写開始に十分である特異的配列を含む。プロモーター領域のこの部分は、プロモーターといわれる。加えて、プロモーター領域には、このRNAポリメラーゼの認識、結合及び転写開始活性を調整する配列を含む。これらの配列は、シス作動性であってもよく、又はトランス作動因子に応答性であってもよい。プロモーターは、調節の性質に応じて、恒常的又は調節されてもよい。原核生物における使用が想定される例示的プロモーターには、バクテリオファージT7及びT3プロモーター、その他を含む。
【0043】
本明細書に使用される「機能的に連結され、又は機能的に結合された」とは、プロモーター、エンハンサー、転写及び翻訳停止部位、並びにその他のシグナル配列などの、ヌクレオチドの調節配列及びエフェクター配列とのDNAの機能的関係をいう。例えば、プロモーターに対するDNAの機能的連結は、このようなDNAの転写がDNAを特異的に認識し、結合し、及び転写するRNAポリメラーゼによってプロモーターから開始されるような、DNAとプロモーターとの間の物理的な及び機能的な関係をいう。発現及び/又はインビトロでの転写を最適化するためには、余分なクローンの5'非翻訳部分を除去、付加、又は変化させて、潜在的に不適当な代わりの翻訳開始(すなわち、開始)コドン又は転写若しくは翻訳のレベルのいずれかで発現を妨害し、若しくは減少させるその他の配列を除去することが必要であろう。或いは、コンセンサスリボソーム結合部位(例えば、Kozakの論文、J. Biol. Chem.(266):19867-19870(1991)を参照されたい)を開始コドンの直ぐ5'に挿入することができ、発現を増強してもよい。このような修飾の望ましさ(又はその必要性)は、経験的に決定されるであろう。
本明細書に使用される、「心筋梗塞」は、重篤かつ持続的な虚血によって引き起こされる心筋の一部の限局的壊死を生じる冠動脈の遮断又は血流妨害をいう。
【0044】
(B. NRG-1β変異体及び医薬組成物)
本発明は、ポリペプチド変異体をコードするNRG-1ポリヌクレオチドのポリペプチド変異体及び医薬組成物を提供する。
【0045】
機能的ヒトNRG-1断片は、ヒトNRG-1のアミノ酸177〜237に対応するアミノ酸配列を有する:
【化1】


【0046】
断片をコードするヒト核酸配列は、下記の配列である:
【化2】


【0047】
本発明は、配列番号:1のアミノ酸配列を含み、かつ残基3、8、16、25、29、31、33、35、43、46又は47にて配列番号:1のものとは異なるアミノ酸を含むニューレグリン1β変異体を提供する。特定の実施態様において、本発明のニューレグリン1β変異体は、配列番号:1の残基3、8、16、25、29、31、33、35、43、46又は47にて単一アミノ酸置換を含む。特定の実施態様において、本発明のニューレグリン1β変異体は、配列番号:1の残基3、8、16、25、29、31、33、35、43、46又は47にて複数のアミノ酸置換を含む。一部の実施態様において、本発明のニューレグリン1β変異体は、配列番号:1の残基3、8、16、25、29、31、33、35、43、46又は47にて2つ、3つ、4つ、5つ又は6つのアミノ酸置換を含む。
【0048】
一つの態様において、本発明は、配列番号:1に示したアミノ酸配列を含むニューレグリン-1βのポリペプチド変異体であって、該ポリペプチド変異体は、配列番号:1のものとは異なるアミノ酸を含み、該ポリペプチド変異体は、配列番号:1のポリペプチドと比較してErbB3に対して増強された結合親和性を有し、かつ残基25にて、前記異なるアミノ酸は、A、C、E、F、G、H、I、K、L、M、N、P、Q、R、S、T、V、W若しくはYであり;残基35にて、前記異なるアミノ酸は、A、C、D、E、F、G、H、I、L、N、M、P、Q、R、S、T、V、W若しくは Yであり;及び/又は残基46にて、前記異なるアミノ酸は、A、C、D、E、F、G、H、I、K、L、M、N、P、R、S、T、V、W若しくはYである、ポリペプチド変異体に向けられる。
一部の実施態様において、ポリペプチド変異体は、配列番号:1に示したアミノ酸配列からなり、かつ残基25にて、前記異なるアミノ酸は、A、C、E、F、G、H、I、K、L、M、N、P、Q、R、S、T、V、W若しくはYであり;残基35にて、前記異なるアミノ酸は、A、C、D、E、F、G、H、I、L、N、M、P、Q、R、S、T、V、W若しくはYであり;及び/又は残基46にて、前記異なるアミノ酸は、A、C、D、E、F、G、H、I、K、L、M、N、P、R、S、T、V、W若しくはYである。
【0049】
ポリペプチド変異体の一部の実施態様において、残基25にて、前記異なるアミノ酸はAであり;残基35にて、前記異なるアミノ酸は、Aであり;及び/又は残基46にて、前記異なるアミノ酸は、Aである。
【0050】
一部の実施態様において、ポリペプチド変異体は、配列番号:1のポリペプチドと比較してErbB4に対して減少されたか、又は同様の親和性を有する。ポリペプチド変異体の一部の実施態様において、残基25にて、前記異なるアミノ酸は、Aである。ポリペプチド変異体の一部の実施態様において、残基35にて、前記異なるアミノ酸は、Aである。ポリペプチド変異体の一部の実施態様において、残基46にて、前記異なるアミノ酸はAである。
【0051】
また、本発明は、配列番号:1のアミノ酸残基1〜52からなるニューレグリン-1βのポリペプチド変異体であって、該ポリペプチド変異体は、配列番号:1のものとは異なるアミノ酸を含み、該ポリペプチド変異体は、配列番号:1のアミノ酸残基1〜52からなるポリペプチドと比較してErbB3に対して増強された結合親和性を有し、かつ残基25にて、前記異なるアミノ酸は、A、C、E、F、G、H、I、K、L、M、N、P、Q、R、S、T、V、W若しくはYであり;残基35にて、前記異なるアミノ酸は、A、C、D、E、F、G、H、I、L、N、M、P、Q、R、S、T、V、W若しくはYであり;及び/又は残基46にて、前記異なるアミノ酸は、A、C、D、E、F、G、H、I、K、L、M、N、P、R、S、T、V、W若しくはYである、ポリペプチド変異体を提供する。
ポリペプチド変異体の一部の実施態様において、残基25にて、前記異なるアミノ酸は、Aであり;残基35にて、前記異なるアミノ酸は、Aであり;及び/又は残基46にて、前記異なるアミノ酸は、Aである。
【0052】
一部の実施態様において、ポリペプチド変異体は、配列番号:1のアミノ酸残基1〜52からなるポリペプチドと比較してErbB4に対して減少されたか、又は同様の結合親和性を有する。ポリペプチド変異体の一部の実施態様において、残基25にて、前記異なるアミノ酸は、Aである。ポリペプチド変異体の一部の実施態様において、残基35にて、前記異なるアミノ酸は、Aである。ポリペプチド変異体の一部の実施態様において、残基46にて、前記異なるアミノ酸は、Aである。
【0053】
別の態様において、本発明は、配列番号:1に示したアミノ酸配列を含むニューレグリン-1βのポリペプチド変異体であって、該ポリペプチド変異体は、配列番号:1のものとは異なるアミノ酸を含み、該ポリペプチド変異体は、配列番号:1のポリペプチドと比較してErbB4に対する減少された結合親和性を有し、かつ残基3にて、前記異なるアミノ酸は、A、C、D、E、F、G、H、I、K、M、N、P、Q、R、S、T、V、W又はYである、ポリペプチド変異体を提供する。
【0054】
一部の実施態様において、ポリペプチド変異体は、配列番号:1に示したアミノ酸配列からなり、かつ残基3にて、前記異なるアミノ酸は、A、C、D、E、F、G、H、I、K、M、N、P、Q、R、S、T、V、W若しくはYである。
ポリペプチド変異体の一部の実施態様において、残基3にて、前記異なるアミノ酸は、Aである。
一部の実施態様において、ポリペプチド変異体は、配列番号:1のポリペプチドと比較してErbB3に対して増加されたか、又は同様の結合親和性を有する。ポリペプチド変異体の一部の実施態様において、残基3にて、前記異なるアミノ酸は、Aである。
【0055】
また、本発明は、配列番号:1のアミノ酸残基1〜52で構成されるニューレグリン-1βのポリペプチド変異体であって、該ポリペプチド変異体は、配列番号:1のものとは異なるアミノ酸を含み、該ポリペプチド変異体は、配列番号:1のアミノ酸残基1〜52からなるポリペプチドと比較してErbB4に対する減少された結合親和性を有し、かつ残基3にて、前記異なるアミノ酸は、A、C、D、E、F、G、H、I、K、M、N、P、Q、R、S、T、V、W若しくはYである、ポリペプチド変異体を提供する。
【0056】
ポリペプチド変異体の一部の実施態様において、残基3にて、前記異なるアミノ酸は、Aである。
一部の実施態様において、ポリペプチド変異体は、配列番号:1のアミノ酸残基1〜52からなるポリペプチドと比較してErbB3に対して増強されたか、又は同様である結合親和性を有する。ポリペプチド変異体の一部の実施態様において、残基3にて、前記異なるアミノ酸は、Aである。
また、本発明は、配列番号:1のポリペプチド又は配列番号:1のアミノ酸残基1〜52からなるポリペプチドと比較してErbB4に対して減少された結合親和性を有する、本明細書に記述したポリペプチド変異体をコードする核酸配列を含むポリヌクレオチドを提供する。
【0057】
また、本発明は、配列番号:1のポリペプチド若しくは配列番号:1のアミノ酸残基1〜52からなるポリペプチドと比較してErbB4に対して減少された結合親和性を有する、本明細書に記述したポリペプチド変異体又はポリペプチド変異体をコードするポリヌクレオチドの有効量と医薬として許容し得る賦形剤とを含む医薬組成物を提供する。
また、本発明は、医薬組成物を含むキットを提供する。一部の実施態様において、キットには、ErbB2/ErbB4受容体を活性化することを介して個体における疾患を予防し、治療し、又は遅延させる際に医薬組成物を使用するための説明書を更に含む。
【0058】
また、本発明は、配列番号:1に示したアミノ酸配列を含むニューレグリン-1βのポリペプチド変異体であって、該ポリペプチド変異体は、配列番号:1のものとは異なるアミノ酸を含み、該ポリペプチド変異体は、配列番号:1のポリペプチドと比較してErbB4に対して増強された結合親和性を有し、かつ残基16にて、前記異なるアミノ酸は、A、C、D、E、F、G、H、I、K、L、M、P、Q、R、S、T、V、W若しくはYであり;残基29にて、前記異なるアミノ酸は、A、C、D、E、F、G、H、I、K、L、M、N、Q、R、S、T、V、W若しくはYであり;残基31にて、前記異なるアミノ酸は、A、C、D、E、F、G、H、I、K、L、M、N、P、Q、S、T、V、W若しくはYであり;残基43にて、前記異なるアミノ酸は、A、C、E、F、G、H、I、K、L、M、N、P、Q、R、S、T、V、W若しくはYであり;及び/又は残基47にて、前記異なるアミノ酸は、A、C、D、E、F、G、H、I、K、L、M、P、Q、R、S、T、V、W若しくはYであるポリペプチド変異体を提供する。
【0059】
一部の実施態様において、ポリペプチド変異体は、配列番号:1に示したアミノ酸配列からなり、かつ残基16にて、前記異なるアミノ酸は、A、C、D、E、F、G、H、I、K、L、M、P、Q、R、S、T、V、W若しくはYであり;残基29にて、前記異なるアミノ酸は、A、C、D、E、F、G、H、I、K、L、M、N、Q、R、S、T、V、W若しくはYであり;残基31にて、前記異なるアミノ酸は、A、C、D、E、F、G、H、I、K、L、M、N、P、Q、S、T、V、W若しくはYであり;残基43にて、前記異なるアミノ酸は、A、C、E、F、G、H、I、K、L、M、N、P、Q、R、S、T、V、W若しくはYであり;及び/又は残基47にて、前記異なるアミノ酸は、A、C、D、E、F、G、H、I、K、L、M、P、Q、R、S、T、V、W若しくはYである。
【0060】
ポリペプチド変異体の一部の実施態様において、残基16にて前記異なるアミノ酸は、Aであるか;残基29にて、前記異なるアミノ酸は、Aであるか;残基31にて、前記異なるアミノ酸は、Aであるか;残基43にて、前記異なるアミノ酸は、Aであるか;又は残基47にて、前記異なるアミノ酸は、Aである。
一部の実施態様において、ポリペプチド変異体は、配列番号:1のポリペプチドと比較してErbB3に対して減少されたか、又は同様の結合親和性を有する。ポリペプチド変異体の一部の実施態様において、残基31にて、前記異なるアミノ酸は、Aである。ポリペプチド変異体の一部の実施態様において、残基43にて、前記異なるアミノ酸は、Aである。ポリペプチド変異体の一部の実施態様において、残基47にて、前記異なるアミノ酸はAである。
【0061】
また、本発明は、配列番号:1のアミノ酸残基1〜52からなるニューレグリン-1βのポリペプチド変異体であって、該ポリペプチド変異体は、配列番号:1のものとは異なるアミノ酸を含み、該ポリペプチド変異体は、配列番号:1のアミノ酸残基1〜52からなるポリペプチドと比較してErbB4に対して増強された結合親和性を有し、かつ残基16にて、前記異なるアミノ酸は、A、C、D、E、F、G、H、I、K、L、M、P、Q、R、S、T、V、W若しくはYであり;残基29にて、前記異なるアミノ酸は、A、C、D、E、F、G、H、I、K、L、M、N、Q、R、S、T、V、W若しくはYであり;残基31にて、前記異なるアミノ酸は、A、C、D、E、F、G、H、I、K、L、M、N、P、Q、S、T、V、W若しくはYであり;残基43にて、前記異なるアミノ酸は、A、C、E、F、G、H、I、K、L、M、N、P、R、Q、S、T、V、W若しくはYであり;及び/又は残基47にて、前記異なるアミノ酸は、A、C、D、E、F、G、H、I、K、L、M、P、Q、R、S、T、V、W若しくはYであるポリペプチド変異体を提供する。
【0062】
ポリペプチド変異体の一部の実施態様において、残基16にて、前記異なるアミノ酸は、Aであるか;残基29にて、前記異なるアミノ酸は、Aであるか;残基31にて、前記異なるアミノ酸は、Aであるか;残基43にて、前記異なるアミノ酸は、Aであるか;又は残基47にて、前記異なるアミノ酸はAである。
一部の実施態様において、ポリペプチド変異体は、配列番号:1のポリペプチドと比較してErbB3に対して減少されたか、又は同様の結合親和性を有する。ポリペプチド変異体の一部の実施態様において、残基31にて、前記異なるアミノ酸は、Aである。ポリペプチド変異体の一部の実施態様において、残基43にて、前記異なるアミノ酸は、Aである。ポリペプチド変異体の一部の実施態様において、残基47にて、前記異なるアミノ酸は、Aである。
【0063】
また、本発明は、配列番号:1のアミノ酸配列を含むニューレグリン-1βのポリペプチド変異体であって、該ポリペプチド変異体は、配列番号:1のものとは異なるアミノ酸を含み、該ポリペプチド変異体は、配列番号:1のポリペプチドと比較してErbB3に対して減少された結合親和性を有するが、配列番号:1のポリペプチドと同様のErbB4に対する結合親和性を有し、かつ残基33にて、前記異なるアミノ酸は、Aである、ポリペプチド変異体を提供する。
【0064】
また、本発明は、配列番号:1のアミノ酸残基1〜52からなるニューレグリン-1βのポリペプチド変異体であって、該ポリペプチド変異体は、配列番号:1のものとは異なるアミノ酸を含み、該ポリペプチド変異体は、配列番号:1のアミノ酸残基1〜52からなるポリペプチドと比較してErbB3に対して減少された結合親和性を有するが、配列番号:1のアミノ酸残基1〜52からなるポリペプチドと同様のErbB4に対する結合親和性を有し、かつ残基33にて、前記異なるアミノ酸は、Aである、ポリペプチド変異体を提供する。
【0065】
本発明のポリペプチドは、化学合成又は組換え法によって産生してもよい。ポリペプチドを化学的に合成する方法は、当該技術分野において周知である。また、組換え法を使用してポリペプチドを合成することも、当該技術分野において周知であり、本明細書に更に記述してある。産生されたポリペプチドは、当該技術分野において公知の方法を使用して、これらの受容体に対する結合親和性及び受容体の活性化について試験してもよい。
【0066】
また、本発明は、本明細書に記述した任意のポリペプチド変異体をコードする核酸配列を含むポリヌクレオチドを提供する。また、任意の配列に相補的なポリヌクレオチドも、本発明によって包含される。ポリヌクレオチドは、一本鎖(コード又はアンチセンス)又は二本鎖であってもよく、及びDNA(ゲノム、cDNA又は合成)又はRNA分子であってもよい。RNA分子には、イントロンを含み、かつ1対1の様式でDNA分子に対応するHnRNA分子、並びにイントロンを含まないmRNA分子を含む。更なるコード配列又は非コード配列が、本発明のポリヌクレオチド内に存在してもよいが、必要ではなく、ポリヌクレオチドは、その他の分子及び/又は支持物質に連結されていてもよいが、必要ではない。本発明のポリヌクレオチドは、化学合成、組換え法又はPCRを使用して得ることができる。
遺伝暗号の縮重の結果、本明細書に記述されたポリペプチドをコードする多くのヌクレオチド配列があることが、当業者には認識されるであろう。コドン選択性の相違によって異なるポリヌクレオチドが、特に本発明によって想定される。
【0067】
本明細書に記述されたポリヌクレオチドは、ベクター(発現ベクターなど)にクローニングして、及びポリペプチドの産生のために宿主細胞にトランスフェクトしてもよい。選択されるクローニングベクターは、使用することが意図される宿主細胞に従って変更してもよいが、有用なクローニングベクターは、一般に自己複製能力を有するであろうし、特定の制限エンドヌクレアーゼのための単一の標的を有していてもよく、及び/又はベクターを含むクローンを選択する際に使用することができるマーカーのための遺伝子を有していてもよい。適切な例には、プラスミド及び細菌ウイルス、例えばpUC18、pUC19、Bluescript(例えば、pBS SK+)及びその誘導体、mp18、mp19、pBR322、pMB9、ColE1、pCR1、RP4、ファージDNA、並びにpSA3及びpAT28などのシャトルベクターを含む。これらベクター及び多くのその他のクローニングベクターが、BioRad社、Strategene社及びInvitrogen社などの市販の売主から入手可能である。
【0068】
発現ベクターは、一般に本発明に従ったポリヌクレオチドを含む複製可能なポリヌクレオチド構築物である。発現ベクターは、宿主細胞において、エピソームとして、又は染色体DNAの一体的部分として複製可能でなければならないことが暗示される。適切な発現ベクターには、プラスミド、アデノウイルス、アデノ随伴ウイルス、レトロウイルスを含むウイルスベクター、コスミド、並びにPCT公開番号国際公開第87/04462号に開示された発現ベクターを含むが、限定されない。ベクター成分は、一般に以下の1つ以上を含むが、限定されない:シグナル配列;複製開始点:1つ以上のマーカー遺伝子;適切な転写調節エレメント(プロモーター、エンハンサー及びターミネーターなど)。発現(すなわち、翻訳)のためには、通常、リボソーム結合部位、翻訳開始部位及び終止コドンなどの、1つ以上の翻訳調節エレメントが必要とされる。
【0069】
関心対象のポリヌクレオチドを含むベクターは、電気穿孔法、塩化カルシウム、塩化ルビジウム、リン酸カルシウム、DEAE-デキストラン又はその他の物質を使用するトランスフェクション;微粒子銃;リポフェクション;並びに感染、(例えば、ベクターがワクシニアウイルスなどの感染因子である場合)を含む任意の多数の適切な手段によって細胞を宿主に導入することができる。導入するベクター又はポリヌクレオチドの選択は、宿主細胞の特色に依存することが多い。
【0070】
また、本発明は、本明細書に記述した任意のポリヌクレオチドを含む宿主細胞を提供する。哺乳動物宿主細胞の例には、COS、HeLa及びCHO細胞を含むが、限定されない。また、PCT公開番号国際公開第87/04462号を参照されたい。適切な非哺乳動物宿主細胞は、原核生物(大腸菌(E. coli)又は枯草菌(B. subtillis)など)及び酵母(例えば出芽酵母(S. cerevisae)、分裂酵母(S.pombe);又はK.ラクティス(K.lactis))を含む。
【0071】
また、本発明は、NRG-1のポリペプチド変異体又は本明細書に記述した任意のポリペプチド変異体をコードするポリヌクレオチドと医薬として許容し得る賦形剤又は担体とを含む医薬組成物を提供する。本明細書に使用される「医薬として許容し得る賦形剤又は担体」には、活性成分と組み合わせたときに、成分が生物活性を保持することができ、かつ対象の免疫系と非反応性である任意の材料を含む。例には、リン酸緩衝食塩水溶液、水などの任意の標準的な薬剤担体、油/水乳剤などの乳剤及び種々のタイプの湿潤剤を含むが、限定されない。エアロゾル又は非経口投与のために好ましい希釈剤は、リン酸緩衝食塩水又は通常の(0.9%)生理食塩水である。このような担体を含む組成物は、周知の従来法によって製剤化される(例えば、レミントン医薬品科学、第18版、 A. Gennaro編、Mack Publishing社、Easton、PA、1990(Remington's Pharmaceutical Sciences, 18th edition, A. Gennaro, ed., Mack Publishing Co., Easton, PA, 1990);及びレミントン、医薬品の科学及び実務、第20 版、Mack Publishing、2000(Remington, The Science and Practice of Pharmacy 20th Ed. Mack Publishing, 2000)を参照されたい。典型的には、医薬として許容し得る塩の適切な量は、等張性製剤を与えるための製剤に使用される。担体の例には、生理食塩水、リンゲル液及びデキストロース溶液を含む。溶液のpHは、好ましくは約5〜約8、より好ましくは約7〜約7.5である。更なる担体には、抗体を含む固体疎水性重合体の半透性マトリックスなどの徐放性製剤を含み、マトリックスは、造形品、例えばフィルム、リポソーム又は微小粒子の形態である。例えば投与の経路及びポリペプチドの濃度及び投与されるポリヌクレオチドに応じて、特定の担体がより好ましいであろうことは、当業者に明らかであろう。
【0072】
(C. NRG-1βのポリペプチド変異体をスクリーニングする方法)
また、本発明は、NRG-1βのポリペプチド変異体をスクリーニングする方法を提供する。例えば、NRG-1β/ErbB3及びNRG-1β/ErbB4複合体の溶媒平衡化されたモデルは、このリガンド及び受容体ファミリーの高い相同性により、出発点としてEGF/EGFR共結晶構造を使用して構築することができる(Ogiso, Hらの論文、ヒト上皮細胞成長因子と受容体細胞外ドメインとの複合体の結晶構造(Crystal structure of the complex of human epidermal growth factor and receptor extracellular domains.)、Cell 110、775-787(2002)を参照されたい。この内容は、引用として組み込まれる)。次いで、NRG-1β/ErbB3とNRG-1β/ErbB4との境界面間の原子相互作用の詳細分析を行う。MM-PBSA法を使用してNRG-1βに対するErbB3及びErbB4の結合についての自由エネルギーを算出する。加えて、結合部位の選択した残基の計算的アラニン走査突然変異誘発を行ってNRG-1βに対する2つの受容体の親和性を合理化する。作成されたNRG-1β/ErbB3及びNRG-1β/ErbB4の計算モデルにより、ErbB4に対する親和性及び選択性が増強され、従ってこれらの治療的特性が改善されたNRG-1β変異体のデザインが可能になるはずである。
【0073】
本発明は、ErbB3に対して増強された結合親和性を有するニューレグリン-1βのポリペプチド変異体をスクリーニングするための方法であって、該方法には:(a)相同性モデリングにより、ニューレグリン-1β又はその断片、ErbB3、及びニューレグリン-1β又はその断片とErbB3との複合体の三次元構造を確立すること;(b)分子動力学シミュレーション法により、溶液におけるニューレグリン-1β又はその断片とErbB3との複合体の高次構造上の変化及び安定性データを確立すること;(c)分子力学ポアソンボルツマン表面領域(MM-PBSA)法により、ニューレグリン-1β又はその断片のErbB3とのサブトータル結合自由エネルギー(ΔGサブトータル野生型)を算出すること;(d)分子力学ポアソンボルツマン表面領域(MM-PBSA)法により、ニューレグリン-1β又はその断片のアラニン置換された変異体のErbB3とのサブトータル結合自由エネルギー(ΔGサブトータルアラニン置換変異体)を算出することであって、該アラニン置換された変異体は、アラニンによって置換されたニューレグリン-1β又はその断片のアミノ酸を含む;(e)ΔΔGサブトータル=ΔGサブトータル野生型−ΔGサブトータルアラニン置換変異体を算出すること;(f)ニューレグリン-1β又はその断片とErbB3の複合体についての正の値のΔΔGサブトータルを有するアラニン置換された変異体を選択すること;を含み、これにより、ErbB3に対する増強された結合親和性を有するニューレグリン-1βのポリペプチド変異体が同定される、方法を提供する。
【0074】
また、本発明は、ErbB3に対する選択的な増強された結合親和性を有するニューレグリン-1βのポリペプチド変異体をスクリーニングするための方法であって、該方法には:(a)相同性モデリングにより、ニューレグリン-1β又はその断片、ErbB3、ErbB4、ニューレグリン-1β又はその断片とErbB3との複合体、及びニューレグリン-1β又はその断片とErbB4との複合体の三次元構造を確立すること;(b)分子動力学シミュレーション法により、溶液におけるニューレグリン-1β又はその断片とErbB3との複合体、及びニューレグリン-1β又はその断片とErbB4との複合体の高次構造上の変化及び安定性データを確立すること;(c)分子力学ポアソンボルツマン表面領域(MM-PBSA)法により、ニューレグリン-1β又はその断片のErbB3又はErbB4とのサブトータル結合自由エネルギー(ΔGサブトータル野生型)を算出すること;(d)分子力学ポアソンボルツマン表面領域(MM-PBSA)法により、ニューレグリン-1β又はその断片のアラニン置換された変異体のErbB3又はErbB4とのサブトータル結合自由エネルギー(ΔGサブトータルアラニン置換変異体)を算出することであって、該アラニン置換された変異体は、アラニンによって置換されたニューレグリン-1β又はその断片のアミノ酸を含む;(e)ΔΔGサブトータル=ΔGサブトータル野生型−ΔGサブトータルアラニン置換変異体を算出すること;(f)ニューレグリン-1β又はその断片とErbB3との複合体について正の値のΔΔGサブトータルを有し、かつニューレグリン-1β又はその断片とErbB4との複合体についてのΔΔGサブトータルについて負の値又は約0の値を有するアラニン置換された変異体を選択すること;を含み、これにより、ErbB3に選択的な増強された結合親和性を有するニューレグリン-1βのポリペプチド変異体が同定される、方法を提供する。一部の実施態様において、ニューレグリン-1β又はその断片とErbB4との複合体についてのΔΔGサブトータルについて負の値を有するアラニン置換変異体が選択され、これにより、ErbB3に対して増強された結合親和性を有するが、ErbB4に対して減少された結合親和性を有するニューレグリン-1βのポリペプチド変異体が同定される。一部の実施態様において、ニューレグリン-1β又はその断片とErbB4との複合体についてのΔΔGサブトータルについて約0の値を有するアラニン置換変異体が選択され、これにより、ErbB3に対して増強された結合親和性を有するが、ErbB4に対して不変の結合親和性であるニューレグリン-1βのポリペプチド変異体が同定される、方法を提供する。
【0075】
別の態様において、本発明は、ErbB4に対して増強された結合親和性を有するニューレグリン-1βのポリペプチド変異体をスクリーニングするための方法であって、該方法には:(a)相同性モデリングにより、ニューレグリン-1β又はその断片、ErbB4及びニューレグリン-1β又はその断片とErbB4との複合体の三次元構造を確立すること;(b)分子動力学シミュレーション法により、溶液におけるニューレグリン-1β又はその断片とErbB4との複合体の高次構造上の変化及び安定性データを確立すること;(c)分子力学ポアソンボルツマン表面領域(MM-PBSA)法により、ニューレグリン-1β又はその断片のErbB4とのサブトータル結合自由エネルギー(ΔGサブトータル野生型)を算出すること;(d)分子力学ポアソンボルツマン表面領域(MM-PBSA)法により、ニューレグリン-1β又はその断片のアラニン置換された変異体のErbB4とのサブトータル結合自由エネルギー(ΔGサブトータルアラニン置換変異体)を算出することであって、該アラニン置換された変異体は、アラニンによって置換されたニューレグリン-1β又はその断片のアミノ酸を含む;(e)ΔΔGサブトータル=ΔGサブトータル野生型−ΔGサブトータルアラニン置換変異体を算出すること;(f)ニューレグリン-1β又はその断片とErbB4との複合体について正の値のΔΔGサブトータルを有するアラニン置換された変異体を選択すること;を含み、これにより、ErbB4に対する増強された結合親和性を有するニューレグリン-1βのポリペプチド変異体が同定される、方法を提供する。
【0076】
また、本発明は、ErbB4に選択的な増強された結合親和性を有するニューレグリン-1βのポリペプチド変異体をスクリーニングするための方法であって、該方法には:(a)相同性モデリングにより、ニューレグリン-1β又はその断片、ErbB3、ErbB4、ニューレグリン-1β又はその断片とErbB3との複合体、及びニューレグリン-1β又はその断片とErbB4との複合体の三次元構造を確立すること;(b)分子動力学シミュレーション法により、溶液におけるニューレグリン-1β又はその断片とErbB3との複合体、及びニューレグリン-1β又はその断片とErbB4との複合体の高次構造上の変化及び安定性データを確立すること;(c)分子力学ポアソンボルツマン表面領域(MM-PBSA)法により、ニューレグリン-1β又はその断片のErbB3又はErbB4とのサブトータル結合自由エネルギー(ΔGサブトータル野生型)を算出すること;(d)分子力学ポアソンボルツマン表面領域(MM-PBSA)法により、ニューレグリン-1β又はその断片のアラニン置換された変異体のErbB3又はErbB4とのサブトータル結合自由エネルギー(ΔGサブトータルアラニン置換変異体)を算出することであって、該アラニン置換された変異体は、アラニンによって置換されたニューレグリン-1β又はその断片のアミノ酸を含む;(e)ΔΔGサブトータル=ΔGサブトータル野生型−ΔGサブトータルアラニン置換変異体を算出すること;(f)ニューレグリン-1β又はその断片とErbB4との複合体について正の値のΔΔGサブトータルを有し、かつニューレグリン-1β又はその断片とErbB3との複合体についてのΔΔGサブトータルについて負の値又は約0の値を有するアラニン置換された変異体を選択すること;を含み、これにより、ErbB4に選択的な増強された結合親和性を有するニューレグリン-1βのポリペプチド変異体が同定される、方法を提供する。一部の実施態様において、ニューレグリン-1β又はその断片とErbB3との複合体についてのΔΔGサブトータルについて負の値を有するアラニン置換された変異体が選択され、これによりErbB4に対して増強された結合親和性を有するが、ErbB3に対する結合親和性が減少されたニューレグリン-1βのポリペプチド変異体が同定される。一部の実施態様において、ニューレグリン-1β又はその断片とErbB3との複合体についてのΔΔGサブトータルについて約0の値を有するアラニン置換された変異体が選択され、これにより、ErbB4に対して増強された結合親和性を有するが、ErbB3に対して不変の結合親和性であるニューレグリン-1βのポリペプチド変異体が同定される。
【0077】
また、本発明は、ErbB4に対して不変の結合親和性を有するが、ErbB3に対して減少された結合親和性を有するニューレグリン-1βのポリペプチド変異体をスクリーニングするための方法であって、該方法には:(a)相同性モデリングにより、ニューレグリン-1β又はその断片、ErbB3、ErbB4、ニューレグリン-1β又はその断片とErbB3との複合体、及びニューレグリン-1β又はその断片とErbB4との複合体の三次元構造を確立すること;(b)分子動力学シミュレーション法により、溶液におけるニューレグリン-1β又はその断片とErbB3との複合体、及びニューレグリン-1β又はその断片とErbB4との複合体の高次構造上の変化及び安定性データを確立すること;(c)分子力学ポアソンボルツマン表面領域(MM-PBSA)法により、ニューレグリン-1β又はその断片のErbB3又はErbB4とのサブトータル結合自由エネルギー(ΔGサブトータル野生型)を算出すること;(d)分子力学ポアソンボルツマン表面領域(MM-PBSA)法により、ニューレグリン-1β又はその断片のアラニン置換された変異体のErbB3又はErbB4とのサブトータル結合自由エネルギー(ΔGサブトータルアラニン置換変異体)を算出することであって、該アラニン置換された変異体は、アラニンによって置換されたニューレグリン-1β又はその断片のアミノ酸を含む;(e)ΔΔGサブトータル=ΔGサブトータル野生型−ΔGサブトータルアラニン置換変異体を算出すること;(f)ニューレグリン-1β又はその断片とErbB4の複合体についてのGサブトータルについて約0の値を有し、かつニューレグリン-1β又はその断片とErbB3との複合体についてのΔΔGサブトータルについて負の値を有するアラニン置換された変異体を選択すること;を含み、これにより、ErbB4に対する結合親和性が不変であったが、ErbB3に対する結合親和性が減少されたニューレグリン-1βのポリペプチド変体が同定される、方法を提供する。
また、本発明は、本明細書に記述した方法によって同定されるニューレグリン-1βのポリペプチド変異体を提供する。
【0078】
(D.NRG-1β変異体を使用する方法)
また、本発明は、個体における疾患の発症を予防し、治療し、又は遅延させるための方法であって、ErbB2/ErbB3及び/又はErbB2/ErbB4受容体を活性化することを介して本明細書に記述したNRG-1βのポリペプチド変異体を含む医薬組成物を個体に投与することを含む、方法を提供する。
【0079】
発症を予防し、治療し、又は遅延させることができる疾患には、骨、耳、眼、眼瞼、頭部、頚部、心臓、咽喉、下顎、下顎顆状突起、上顎、口、鼻部、経鼻咽頭、口腔、膵臓、耳下腺、耳介、脳下垂体、前立腺、網膜、唾液腺、皮膚、筋肉、骨髄、甲状腺、扁桃腺、神経系、呼吸器系、消化器系、循環系、生殖器系、泌尿器系、内分泌系、心血管系及び造血系に生じる疾患を含む。
本明細書に使用される「個体」は、哺乳類、より好ましくはヒトである。哺乳類には、家畜(ウシ、ブタ、ヒツジ、ヤギなど)、スポーツ動物(sport animal)、ペット(ネコ、イヌ、ウマなど)、霊長類、マウス及びラットを含むが、限定されない。
【0080】
一部の実施態様において、疾患の発症を予防し、治療し、又は遅延させるために使用されるニューレグリン-lβのポリペプチド変異体は、ErbB2/ErbB3受容体に対して増強された結合親和性を有する。一部の実施態様において、ニューレグリン-1βのポリペプチド変異体は、配列番号:1に示したアミノ酸配列を含み、該ポリペプチド変異体は、配列番号:1のものとは異なるアミノ酸を含み、該ポリペプチド変異体は、配列番号:1のポリペプチドと比較してErbB3に対して増強された結合親和性を有し、かつ残基25にて、前記異なるアミノ酸は、A、C、E、F、G、H、I、K、L、M、N、P、Q、R、S、T、V、W若しくはYであり;残基35にて、前記異なるアミノ酸は、A、C、D、E、F、G、H、I、L、N、M、P、Q、R、S、T、V、W若しくはYであり;及び/又は残基46にて、前記異なるアミノ酸は、A、C、D、E、F、G、H、I、K、L、M、N、P、R、S、T、V、W若しくはYである。一部の実施態様において、ニューレグリン-1βのポリペプチド変異体は、配列番号:1のアミノ酸残基1〜52からなり、該ポリペプチド変異体は、配列番号:1のものとは異なるアミノ酸を含み、該ポリペプチド変異体は、配列番号:1のアミノ酸残基1〜52からなるポリペプチドと比較してErbB3に対して増強された結合親和性を有し、かつ残基25にて、前記異なるアミノ酸は、A、C、E、F、G、H、I、K、L、M、N、P、Q、R、S、T、V、W若しくはYであるか;残基35にて、前記異なるアミノ酸は、A、C、D、E、F、G、H、I、L、N、M、P、Q、R、S、T、V、W若しくはYであるか;又は残基46にて、前記異なるアミノ酸は、A、C、D、E、F、G、H、I、K、L、M、N、P、R、S、T、V、W若しくはYである。ポリペプチド変異体の一部の実施態様において、残基25にて、前記異なるアミノ酸は、Aであり;残基35にて、前記異なるアミノ酸は、Aであり;及び/又は残基46にて、前記異なるアミノ酸は、Aである。
ErbB2/ErbB3受容体を優先して活性化することを介して発症を予防し、治療し、又は遅延させることができる疾患は、神経系疾患(中枢神経系、末梢神経系など)、統合失調症、骨髄疾患、月経疾患(menix diseases)、脱髄疾患、錐体外路系疾患を含む。一部の実施態様において、神経系疾患は、統合失調症である。
【0081】
一部の実施態様において、疾患の発症を予防し、治療し、又は遅延させるために使用されるニューレグリン-1βのポリペプチド変異体は、ErbB2/ErbB4受容体に対して増強された結合親和性を有する。一部の実施態様において、ニューレグリン-1βのポリペプチド変異体は、配列番号:1に示したアミノ酸配列を含み、該ポリペプチド変異体は、配列番号:1のものとは異なるアミノ酸を含み、該ポリペプチド変異体は、配列番号:1のポリペプチドと比較してErbB4に対して増強された結合親和性を有し、かつ残基16にて、前記異なるアミノ酸は、A、C、D、E、F、G、H、I、K、L、M、P、Q、R、S、T、V、W若しくはYであり;残基29にて、前記異なるアミノ酸は、A、C、D、E、F、G、H、I、K、L、M、N、Q、R、S、T、V,W若しくはYであり;残基31にて、前記異なるアミノ酸は、A、C、D、E、F、G、H、I、K、L、M、N、P、Q、S、T、V、W若しくはYであり;残基43にて、前記異なるアミノ酸は、A、C、E、F、G、H、I、K、L、M、N、P、Q、R、S、T、V、W若しくはYであり;及び/又は残基47にて、前記異なるアミノ酸は、A、C、D、E、F、G、H、I、K、L、M、P、Q、R、S、T、V、W若しくはYである。一部の実施態様において、ニューレグリン-1βのポリペプチド変異体は、配列番号:1のアミノ酸残基1〜52からなり、該ポリペプチド変異体は、配列番号:1のものとは異なるアミノ酸を含み、該ポリペプチド変異体は、配列番号:1のアミノ酸残基1〜52からなるポリペプチドと比較してErbB4に対して増強された結合親和性を有し、かつ残基16にて、前記異なるアミノ酸は、A、C、D、E、F、G、H、I、K、L、M、P、Q、R、S、T、V、W若しくはYであり;残基29にて、前記異なるアミノ酸は、A、C、D、E、F、G、H、I、K、L、M、N、Q、R、S、T、V、W又はYであり;残基31にて、前記異なるアミノ酸は、A、C、D、E、F、G、H、I、K、L、M、N、P、Q、S、T、V、W若しくはYであり;残基43にて、前記異なるアミノ酸は、A、C、E、F、G、H、I、K、L、M、N、P、Q、R、S、T、V、W若しくはYであり;及び/又は残基47にて、前記異なるアミノ酸は、A、C、D、E、F、G、H、I、K、L、M、P、Q、R、S、T、V、W若しくはYである。ポリペプチド変異体の一部の実施態様において、残基16にて、前記異なるアミノ酸は、Aであるか;残基29にて前記異なるアミノ酸は、Aであるか;残基31にて、前記異なるアミノ酸は、Aであるか;又は残基47にて、前記異なるアミノ酸は、Aである。一部の実施態様において、疾患の発症を予防し、治療し、又は遅延させるために使用されるニューレグリン-1βのポリペプチド変異体は、配列番号:1のポリペプチド又は配列番号:1のアミノ酸残基1〜52からなるポリペプチドと同様のErbB2/ErbB4受容体に対する結合親和性を有するが、配列番号:1のポリペプチド又は配列番号:1のアミノ酸残基1〜52からなるポリペプチドよりもErbB3に対して減少された結合親和性を有する。一部の実施態様において、ポリペプチド変異体は、配列番号:1に示したアミノ酸配列を含み、該ポリペプチド変異体は、配列番号:1のものとは異なるアミノ酸を含み、該ポリペプチド変異体は、配列番号:1のポリペプチドと比較してErbB3に対して減少された結合親和性を有するが、配列番号:1のポリペプチドと同様のErbB4に結合親和性を有し、かつ残基33にて、前記異なるアミノ酸はAである。
【0082】
一部の実施態様において、疾患の発症を予防し、治療し、又は遅延させるために使用されるニューレグリン-1βのポリペプチド変異体は、ErbB2/ErbB4受容体に対して減少された結合親和性を有する。一部の実施態様において、ニューレグリン-1βのポリペプチド変異体は、配列番号:1に示したアミノ酸配列を含み、該ポリペプチド変異体は、配列番号:1のポリペプチドと比較してErbB4に対する減少された結合親和性を有し、かつ残基3にて、前記異なるアミノ酸は、A、C、D、E、F、G、H、I、K、M、N、P、Q、R、S、T、V、W若しくはYである。一部の実施態様において、ニューレグリン-1βのポリペプチド変異体は、配列番号:1のアミノ酸残基1〜52からなり、該ポリペプチド変異体は、配列番号:1のものとは異なるアミノ酸を含み、該ポリペプチド変異体は、配列番号:1のアミノ酸残基1〜52からなるポリペプチドと比較してErbB4に対して増強された結合親和性を有し、かつ残基3にて、前記異なるアミノ酸は、A、C、D、E、F、G、H、I、K、M、N、P、Q、R、S、T、V、W若しくはYである。ポリペプチド変異体の一部の実施態様において、残基16にて、前記異なるアミノ酸は、Aである。
ErbB2/ErbB4受容体を優先して活性化することを介して発症を予防し、治療し、又は遅延させることができる疾患には、心不全、心筋梗塞、拡張型心筋症及び心筋炎(例えば、ウイルス性心筋炎)、心毒性を含むが、限定されない。
【0083】
本明細書に記述したニューレグリン-1βのポリペプチド変異体、又はニューレグリン-1βのポリペプチド変異体をコードする核酸の、好ましくは医薬組成物の形態における、製剤、投薬量及び投与の経路は、当該技術分野において公知の方法に従って決定することができる(例えば、レミントン:医薬品の科学及び実務、Alfonso R. Gennaro(編集者)Mack出版社、1997年4月(Remington: The Science and Practice of Pharmacy, Alfonso R. Gennaro (Editor) Mack Publishing Company, April 1997);治療的ペプチド及びタンパク質:製剤、加工及び送達システム、Banga、1999年(Therapeutic Peptides and Proteins: Formulation, Processing, and Delivery Systems, Banga, 1999);並びにペプチド及びタンパク質の医薬品製剤開発、Hovgaard及びFrkjr(編)、Taylor & Francis社、2000年(Pharmaceutical Formulation Development of Peptides and Proteins, Hovgaard and Frkjr (Ed.), Taylor & Francis, Inc., 2000;リポソームの医療適用、Lasic及びPapahadjopoulos(編)、Elsevier Science、1998年(Medical Applications of Liposomes, Lasic and Papahadjopoulos (Ed.), Elsevier Science, 1998);遺伝子治療の教科書、Jain, Hogrefe & Huber Publishers、1998年(Textbook of Gene Therapy, Jain, Hogrefe & Huber Publishers, 1998);アデノウイルス:遺伝子療法のための基礎生物学、15巻、Seth、Landes Bioscience、1999年(Adenoviruses:Basic Biology to Gene Therapy, Vol. 15, Seth, Landes Bioscience, 1999);生物薬剤の薬物設計及び開発、Wu-Pong及びRojanasakul(編)、Humana Press、1999年(Biopharmaceutical Drug Design and Development, Wu-Pong and Rojanasakul (Ed.), Humana Press, 1999);治療的血管形成:基礎科学から臨床まで、28巻、Doleら(編)、Springer-Verlag New York、1999年(Therapeutic Angiogenesis: From Basic Science to the Clinic, Vol. 28, Dole et al. (Ed.), Springer-Verlag New York, 1999を参照されたい)。本明細書に記述したニューレグリン-1βのポリペプチド変異体又は該ポリペプチド変異体をコードする核酸は、経口、直腸、局所的、吸入、頬側(例えば、舌下)、非経口的(例えば、皮下、筋肉内、皮内又は静脈内)、経皮投与又は任意のその他の適切な投与の経路用にも製剤化することができる。任意の所与の場合における最も適切な経路は、治療される状態の性質及び重症度に、並びに使用される特定のNRG-1βのポリペプチド変異体又は該ポリペプチド変異体をコードする核酸の性質に依存する。
【0084】
本明細書に記述したようなニューレグリン-1βのポリペプチド変異体、又は該ポリペプチド変異体をコードする核酸は、単独で投与することができる。或いは、及び好ましくは、ニューレグリン-1βのポリペプチド変異体、又は該ポリペプチド変異体をコードする核酸は、医薬として許容し得る担体若しくは賦形剤と共に同時投与される。任意の適切な医薬として許容し得る担体又は賦形剤を本方法に使用することができる(例えば、レミントン:医薬品の科学及び実務、Alfonso R. Gennaro(編集者)Mack出版社、1997年4月(Remington: The Science and Practice of Pharmacy, Alfonso R. Gennaro (Editor) Mack Publishing Company, April 1997)を参照されたい)。
【0085】
NRG-1βのポリペプチド変異体をコードする核酸は、遺伝子送達系の成分として、裸のDNA、複合型DNA、cDNA、プラスミドDNA、RNA又はその他のこれらの混合物の形態で使用することができる。別の実施態様において、ニューレグリン-1βのポリペプチド変異体をコードする核酸は、ウイルスベクターに含まれる。遺伝子療法のために適している任意のウイルスのベクターを使用することができる。例えば、アデノウイルスベクター(米国特許第5,869,305号)、シミアンウイルスベクター(米国特許第5,962,274号)、条件つきで複製するヒト免疫不全症ウイルスベクター(米国特許第5,888,767号)、レトロウイルス、SV40、ヘルペス単純ウイルス単位複製配列ベクター及びワクシニアウイルスベクターを使用することができる。加えて、遺伝子は、脂質がDNA又はその他の生体材料を凝固の間の酸化から保護するリポソームなどの非ウイルスのベクター系において送達することができる。
【0086】
本発明に従って、本明細書に記述したニューレグリン-1βのポリペプチド変異体又は該ポリペプチド変異体をコードする核酸は、単独で、又はその他の薬剤、担体若しくは賦形剤と組み合わせて、空洞内注射、皮下注射、静脈内注射、筋肉内注射、皮内注射、経口又は局所的投与などの任意の適切な投与経路のために製剤化してもよい。本方法には、添加された保存剤と共に、単位剤形の、アンプルの、又は多用量容器の、注射用の投与のための製剤を使用してもよい。製剤には、油性又は水性媒体中の懸濁液、溶液又は乳剤などの形態を採用してもよく、懸濁剤、安定化剤及び/又は分散剤などの、製剤化薬を含んでいてもよい。或いは、活性成分は、使用前に適切な媒体、無菌の発熱物質を含まない水又はその他の溶媒での構成のための粉末形態であってもよい。本発明の局所的投与には、泡、ゲル、クリーム、軟膏、経皮パッチ又はペーストの使用を利用してもよい。
【0087】
本発明に使用するために使用してもよい医薬として許容し得る組成物及びこれらの投与のための方法は、米国特許第5,736,154号;第6,197,801 B1号;第5,741,511号;第5,886,039号;第5,941,868号;第6,258,374 B1号;及び第5,686,102号に記述したものを含むが、限定されない。
治療又は予防における治療用量の大きさは、治療される状態の重症度及び投与の経路により変化するであろう。また、用量及びおそらく用量頻度は、個々の患者の年齢、体重、状態及び反応に従っても変化するであろう。
【0088】
主治医であれば、毒性又は有害作用のため、より低い投薬量にするために、どのように、及びいつ療法を終結し、中断し、又は調整するかを知っているであろうことに留意すべきである。逆に、医師は、また、臨床反応が適切ではない(毒性副作用を妨げる)場合に、どのように、及びいつ治療を高レベルに調整するかも知っているであろう。
任意の適切な投与の経路を使用してもよい。剤形には、錠剤、トローチ、カシェ剤、分散剤、懸濁液、溶液、カプセル、パッチなどを含む。レミントン医薬品科学を参照されたい。
【0089】
実際の使用において、ニューレグリン-1βのポリペプチド変異体又は該ポリペプチド変異体をコードする核酸は、従来の医薬品配合技術に従って、単独で、又はその他の薬剤と組み合わせて、β-シクロデキストリン及び2-ヒドロキシ-プロピル-β-シクロデキストリンなどの薬剤担体又は賦形剤との均質な混合物中の活性薬剤として組み合わせてもよい。担体は、局所的又は非経口的投与のために望ましい製剤の広範な形態をしていてもよい。静脈内注射又は注入などの、非経口的剤形のための組成物を調製する際において、同様の医薬品媒体には、水、グリコール、油、緩衝液、糖、防腐剤、リポソーム、当業者に公知であるその他のものを使用してもよい。このような非経口的組成物の例には、デキストロース5% w/v、通常の生理食塩水又はその他の溶液を含むが、限定されない。ニューレグリン-1βのポリペプチド変異体、又は該ポリペプチド変異体をコードする核酸の全量は、単独で、又は投与されるその他の薬剤と組み合わせて、約1mlから2000mlにわたって静脈内補液のバイアルで投与してもよい。希釈液の体積は、投与される全量に従って変化するであろう。
【0090】
また、本発明は、本発明の治療計画を実施するためのキットを提供する。このようなキットは、1つ以上の容器内に、本明細書に記述したニューレグリン-1βのポリペプチド変異体又は該ポリペプチド変異体をコードする核酸の治療的有効量を、単独で、又はその他の薬剤と組み合わせて、医薬として許容し得る形態で含む。好ましい剤型は、無菌生理食塩水、デキストロース溶液若しくは緩衝溶液又はその他の医薬として許容し得る無菌の液体と組み合わせてあるだろう。或いは、組成物は、凍結乾燥し、又は乾燥させてもよく;この場合、キットには、任意に、複合体を再構成して注射のための溶液を形成するための、医薬として許容し得る、好ましくは無菌の溶液を、容器内に更に含む。例示的な医薬として許容し得る溶液は、生理食塩水及びデキストロース溶液である。
別の実施態様において、本発明のキットは、組成物を注射するための、好ましくは無菌の形態でパックされた、針又は注射器、及び/又はパックされたアルコールパッドを更に含む。説明書も、任意に医師によるか、又は患者による組成物の投与のために含まれる。
【実施例】
【0091】
(E.実施例)
以下の実施例は、説明目的でのみ含まれ、本発明の範囲を限定することは意図されない。
【0092】
(実施例1.ErbB受容体を選択的に活性化するNRG-1β変異体のスクリーニング)
(方法)
(1.タンパク質の3Dモデルの構築)
ヒトEGF及び受容体細胞外ドメイン(PDB登録1IVO)のX線結晶構造、並びにニューレグリン-α(NRG-α)上皮細胞成長因子(EGF)様ドメイン(PDB登録1HAF)のNMR構造は、プロテインデータバンクから得た。ErbB3(ERB3_HUMAN)、ErbB4(ERB4_HUMAN)及びNRG-1β(NRG1_HUMAN)のアミノ酸配列は、Swiss_Prot/TrEMBLデータベースから得た。
【0093】
全てのモデルは、Insight IIソフトウェア(Accelrys Corporate, San Diego, CA)の相同性モジュールを使用して作製した。ニューレグリン-αのNMR座標には、ニューレグリン-1β(NRG-1β177-229)の初期構造をモデルに使用した。ErbB3及びErbB4の標的配列と鋳型EGFR配列との間の対での配列整列を、各々の相同性配列に対してそれぞれ行った。システイン残基間のジスルフィド結合の位置は、整列させた標的のシステイン残基及び鋳型の対応するジスルフィド橋を使用して達成した。ギャップは、最適整列を見いだすように、6の長さ非依存的ギャップペナルティーで配列に挿入した。EGFRとErbB3及びErbB4の最終的な配列整列を図1に示してある。構造類似領域を自動的に選択して、モデル構造のためのフレームワークを構築するために使用した。2つの整列させた残基が同じである場合、鋳型側鎖形状を標的に採用した。そうでなければ、鋳型の側鎖を、Cα-Cβ結合を整列させることによって、対応する標的残基のものに置換した。ギャップ領域は、タンパク質データバンクスクリーニング及び組織内データベースから適切な断片を検索することによって作製した。最終的なループ高次構造は、標的と適切な断片との間で適合した形状をもつ、最も低い平方二乗平均(RMS)値を有した上位10個の構造のものから選択した。また、いくつかの失われた原子を、Syby1のバイオポリマー(Biopolymer)モジュールを使用してこれらのモデルのそれぞれの不完全な側鎖に付加して、水素及び原子電荷の適当な割当を確実にした。次いで、予備的モデルをPROCHECK及びProfiles-3Dによる評価に供して、モデルの立体化学的品質及びタンパク質構造を調べた。Profiles-3Dによるモデル評価において、自家和合性スコア(S)を配列のそれぞれの残基について決定した。
【0094】
ErbB3、ErbB4及びNRG-1βの初期モデルを別々に構築した後、NRG-1β/ErbB3及びNRG-1β/ErbB4複合体を、モデルをEGF/EGFR複合体と重ねることによって構成した。生じる構造を、Syby1ソフトウェアパッケージで実行されるアンバー力場(Amber force field)を使用するエネルギー極小化によって最適化した。全てのモデル残基のバックボーン原子は、最初に洗練の初期の間に固定して、バックボーンが有意に変形するのを防止した。次いで、モデルに適用される制約の数をその後のサイクルの間に減少させた。極小化のためには、以下のパラメーターを使用した:Kollman-融合原子力場及び融合原子電荷、4.0Rの距離依存的比誘電率、非結合算出について9.5Åカットオフ、並びにエネルギーの平方二乗平均(RMS)勾配が0.05kcal/mol・Å未満であるまでの共役勾配極小化(conjugate gradient minimization)。次いで、洗練したモデルを分子動力学シミュレーションに供した。
【0095】
(2. 受容体との複合体におけるNRG-1βの分子動力学シミュレーションによるリガンド結合寄与の評価)
分子動力学(MD)シミュレーションの数回のセットを、AMBER 7.0シミュレーションパッケージ及びParm99力場を使用して、タンパク質複合体及び突然変異体構造で別々に行った。複合体構造は、任意のタンパク質原子の境界から少なくとも10Å離れて延長するTIP3P水分子のボックスを使用して溶媒和させた。NRG-1β/ErbB3構造は、7976のTIP3P水の100×96×83Åボックスにおいて溶媒和させ、NRG-1β/ErbB4構造は、8075のTIP3P水分子の104×102×87Åボックスにおいて溶媒和させた。適切な数の対イオンを、系を中和するために付加した。Particle Mesh Ewald(PME)法を使用して、長距離静電相互作用を算出した。全てのMD実行は、同じプロトコル使用して準備した。最初に、溶媒和物を、最急降下法を使用して200工程の極小化に、続いて近いファンデルワールス接触を除去するために共役勾配に供した。次いで、全てのタンパク質-リガンド-水複合体に対して500工程の第2の極小化を行った。
【0096】
次いで、ほどけた構造をMDシミュレーションに供した。それぞれの系を、0から300Kまで15psにおいて3間隔で段階的に加熱し、次いで300Kにて25psの間平衡化し、続いて、データ収集を実行して、NRG-1β/ErbB3について1100ps及びNRG-1β/ErbB4について900psの総シミュレーション時間を与えた。非結合カットオフは、8.0Åに対してセットして、非結合対を25工程毎に更新した。SHAKE法を適用して、水素原子を含む全ての共有結合を制約した。それぞれのシミュレーションは、ベレンドセン(Berendsen)アルゴリズムを適用することによって、1.0気圧にて300Kの熱浴に連関させた。温度及び圧力連関パラメーターは、それぞれ0.2ps及び0.05psとしてセットした。分子動力学計算の積分時間ステップは、2fsであった。エネルギー極小化及び分子動力学シミュレーションにおいて、周期的境界条件を全方向に適用した。MDシミュレーションは、上海薬物研究所(Shanghai Institute of Materia Medica)にてSGI Origin3800コンピュータで実行した。
シミュレーションの分析は、生成段階に焦点を当てた。バックボーンの平方二乗平均偏差(RMSD)は、初期構造を参照として、1ps間隔にて軌道から算出した。それぞれの残基の平方二乗平均変動(RMSF)は、同様に算出した。受容体とリガンドとの間の結合相互作用は、プログラムLIGPLOTを使用して、完了したモデルで分析した。
【0097】
(3. MM-PBSA法による受容体との複合体におけるNRG-1βの自由エネルギーの算出)
動的軌道からの座標を4ps毎に使用して(400psのうちの100スナップショットを処理した)、AMBER 7.0プログラムを使用してこれらのそれぞれに対してMM-PBSA算出を行った。シミュレーションの間に収集したそれぞれのスナップショットについて、リガンド-タンパク質結合自由エネルギー(ΔG結合)を、式(1)を使用して算出した:
ΔG結合=ΔG複合体-[ΔGタンパク質+ΔGリガンド] (1)
式中、ΔG複合体、ΔGタンパク質及びΔGリガンドは、複合体、タンパク質及びリガンドの自由エネルギーである。式(1)におけるそれぞれの自由エネルギー項を、式(2)を使用して気相における種(タンパク質、リガンド及びこれらの複合体)の絶対自由エネルギー(E気体)、溶媒和自由エネルギー(ΔG溶媒和)及びエントロピー項(TΔS)で算出した:
ΔG= E気体+ΔG溶媒和- TΔS (2)
E気体は、内部歪エネルギー(Eint)、ファンデルワールスエネルギー(Evdw)及び静電エネルギー(E静電)の合計である(式(3))。Eintは、共有結合及び結合角の振動、単結合ねじれ角の回転と関連するエネルギーである(式(4))。
E気体=Eint+Evdw+E静電(3)
Eint=E結合+E角度+ Eねじれ(4)
溶媒和自由エネルギーΔG溶媒和は、溶媒の連続表現を使用して、極性の寄与(GPB)及び無極性の寄与(G無極性)の合計に近づく:
ΔG溶媒和= GPB+ G無極性(5)
【0098】
溶媒和エネルギーに対する極性の寄与(GPB)は、PARSE原子半径及びアミノ酸についての標準的なParm94電荷と共にDELPHIプログラム使用して算出した。使用した格子サイズは、0.5Åであった。比誘電率は、内部溶質について1及び外部水について80にセットした。それぞれのGPB算出について、より優れた収束を達成するために、合計1000回の反復を行った。無極性の寄与(G無極性)は、一次方程式:G無極性=γ×SASA +b kcal/molを使用して見積もった。SASAは、1.4Åのプローブ半径でMSMSアルゴリズムを使用して見積もられる溶媒最近接包絡面積である。位置溶質bについての表面張力比例定数γ及び無極性の救済手段の自由エネルギーは、それぞれ0.00542 kcal mol-1-2及び0.092 kcal mol-1にセットした。
エントロピー算出は、大きな系に対しては極めて時間がかかる。この研究では、ΔGサブトータル(-TΔSの項を伴わない)のみを見積もって、結合自由エネルギーに対する突然変異効果に対処した。
【0099】
(4. 計算的アラニン走査突然変異誘発の分析)
計算的アラニン走査法を適用して、ErbB3及びErbB4に対する異なるNRG-1β変異体の相対的結合親和性をそれぞれ見積もった。2つの方法を使用して、異なるペプチド突然変異体の相対的結合強度を算出した。第1のアプローチでは、複合体、タンパク質及びペプチドの構造を同じ複合体軌道のスナップショットから得た。アラニン突然変異体構造は、野生型軌道の座標を変化させることによって作製した。この方法には、原子を欠失させること、及び水素原子と置換することによってCγにて変異された残基を切断することを含んだ。そして、変異された残基に関する形態ファイルの全てのパラメーターをアラニン残基パラメーターで置換した。400psからの合計100スナップショット(4スナップショット毎)をエネルギー算出のために得た。相対的結合自由エネルギーは、野生型とアラニン変異との間の自由エネルギーの相違である。
相対的結合自由エネルギーを算出するための第2の方法では、本発明者らは、それぞれErbB3及びErbB4との複合体におけるアラニン変異したNRG-1βペプチドについて、数セットの別々の動的シミュレーションを行った。次いで、エネルギー成分を400psの収集された軌道のうちの100スナップショット(4スナップショット毎)から算出し、統計分析を実施した。
【0100】
(結果)
(1.モデリング結果及び評価)
ErbB3及びErbB4の3Dモデルは、ヒト上皮細胞成長因子(EGF)とEGF受容体(EGFR)の細胞外ドメインとの間で形成された複合体のX線結晶構造に基づいた相同性モデリングによって構築した。配列データベースのFASTA及びBLAST検索では、ErbB3及びErbB4に相同的であるいくつかの構造を生じた。EGFRファミリーの中で、本発明者らは、非リガンド結合ErbB3(PDB登録1M6B)、EGFとの複合体における不活性化されたEGFR(PDB登録1NQ1)、ハーセプチンFabに境界を接するErbB2(PDB登録1N8Z)及びEGF/EGFRの複合体(PDB登録1IVO)のX線構造が、ErbB3及びErbB4に対してより高い配列同一性をもつ相同タンパク質の一つであることを見いだした。ErbB2は、高親和性リガンドが見いだされていないEGFRファミリーにおいて珍しい受容体である。非リガンド結合ErbB3は、NRG-1β/ErbB3複合体の受容体と比較して、同一の配列を有する。リガンド/受容体相互作用に焦点をあてるために、構造モデリングのための鋳型としてEGF/EGFR複合体の構造を選択した。
【0101】
EGF受容体ファミリーメンバーの中の内部配列保存及び同一性に基づいて、細胞外ドメインは、4ドメイン(I〜IV)に分類された。ドメインII及びIVは、システイン残基により富んでおり、それぞれ24個及び21個のシステインを含む。EGFRの結晶構造において、ドメインIVの大部分(残基513〜619)は、構造的に無秩序である。従って、ドメインIVの領域は、本発明者らの相同性モデリングでは除外した。ErbB3(残基8〜511)及びErbB4(残基25〜533)の配列は、EGFR(残基3〜512)と44%及び48%の同一性を有する。更にまた、これらの残基の更に40%は、保存的置換であり、図1に示したように、EGFRに対して、ErbB3及びErbB4の両方について、全体的に約80%の配列類似性を示した。
【0102】
モデルの精度は、同じタンパク質の異なる領域内でさえも有意に変化し得るし:通常、高度に保存された領域は、可変ループ又は表面残基よりも非常に信頼できるモデル化ができる。ErbB3及びErbB4について、それぞれ合計7つ及び4つの構造的に保存された領域(SCR)が推定され、これらは、総配列の主要なセグメントを構成した(図1)。構造的に可変領域(SVR)と命名される、配列の残りの部分についての座標は、方法において上記したタンパク質構造データベースを検索することによって作製した。図2は、EGFRのX線構造と重ね合わせた洗練したモデルの2つの立体プロットを示す。鋳型タンパク質の全体の形態は受け継がれたが、いくつかの有意な局部的高次構造変化が可変領域に示されたことが明らかである。これらの鋳型から洗練したモデルのCαバックボーン平方二乗平均偏差(RMSD)は小さく、ErbB3について0.55Å及びErbB4について0.39Åであり、これらの高度の配列相同性から予想される通りの、高度な構造類似性を示す。
【0103】
EGFの残基と疎水的に相互作用するEGFRのLeu69、Leu98、Val350、Asp355及びPhe357などの、この受容体ファミリーのいくつかの重要な残基は、同様にErbB3及びErbB4においても保存されている。EGFRは、ドメインIの位置39、63、85及び122、並びにドメインIIIの343、379、404及び435にて、多くのグリシン残基を有する。これらの残基は、ErbB3及びErbB4モデルにおける対応する高次構造において保守的に保持されている。EGFRのように、ErbB3及びErbB4のドメインI及びIIIは両方とも、ヘリックス及びジスルフィド結合によってそれぞれの末端がおおわれた、β-ヘリックスの6つのターンを含む。ErbB3及びErbB4のドメインI及びIIIには、また、β-ヘリックスの第4と第5ターンとの間に挿入された保存されたトリプトファン(ErbB3についてTrp176、Trp492、及びErbB4についてTrp198、Trp513)がある。受容体のドメインIIは、EGFRの第2のドメインと同様の折り畳みを有し、これは、同様のジスルフィド結合結合性をもついくつかの小さなモジュールで構成されている。
【0104】
次いで、PROCHECKを使用して、ラマチャンドランプロット構造妥当性確認試験によって、本モデルを評価した。ラマチャンドランプロットは、タンパク質のバックボーンファイ(φ)、プサイ(ψ)、ねじれ角を分析して、タンパク質構造の品質測定として「好ましい」、「許容し得る」、「十分に許容し得る」及び「許容されない」領域についての占有割合を算出する。ErbB3及びErbB4のモデルについて得られた値を以下の表1に要約してある。ErbB3及びErbB4のモデルについて、それぞれ残基の全体の96.2%及び97.5%が、好ましい領域及び許容し得る領域にあった。モデルのための立体化学的品質の評価に加えて、本発明者らは、また、Profiles-3D分析を行って側鎖パッキングの品質を点検することによって更にモデルを評価した。ErbB3及びErbB4についての全体の品質スコアは、それぞれ230.51/257.48及び216/256.56であり、分母は、公知の構造に基づいてこの長さのタンパク質について予想されるスコアを意味する。比較のために、115.87/257.48及び115.45/256.56以下のスコアは、構造がほぼ確実に誤っていることを示唆するであろう。良好なバリデーション後に、ErbB3及びErbB4構造の品質は、更なる研究のために許容し得るようである。
【0105】
【表1】

【0106】
NRG-1β(177-229)についての相同性モデルは、80%の全体的な配列同一性をもつNRG-α構造(PDB登録1HAF)から構築した。便宜のために、本発明者らは、1から63まで続くこのNRG-αドメインの残基を番号付けるために選んだ。C-末端残基51〜63は、NRG-αの溶液構造を乱し、柔軟である。より規律正しい領域(残基1〜50)は、細胞受容体に対する結合のために必要とされる最小のサブユニットであることが示された。従って、残基1〜52からなるNRG-1βの切断モデルは、方法に記載されているように構築した。本モデルには、中央の3つのらせんのβ-シートを含むN末端のサブドメイン、らせん領域、及びC末端サブドメインの短いβ-シートを含む。NRG-1βは、3つのジスルフィド架橋、Cys6-Cys20、Cysl4-Cys34及びCys36-Cys45によって安定化されている。
【0107】
(2. 受容体に対するNRG-1β結合のモデリング)
NRG-1β/ErbB3及びNRG-1/ErbB4複合体の最終的3Dモデルを図3に示してある。それぞれの複合体において、受容体のドメインI、II及びIIIは、C形状に配置されており、NRG-1βは、ドメインIとIIIとの間に、EGFRに対するEGF結合と同様の方法で収容されている(図3)。これは、ErbB3のドメインI及びIIIがNRG-1β結合に関与するであろうという以前の生化学的結果と一致する。結合親和性研究は、ErbB3及びErbB4受容体上の結合決定因子は非常に類似するが、これらは実質的に全体的な配列多様性を有することを示唆する。また、突然変異誘発研究では、NRG-1βのN及びC末端がリガンド-受容体結合にとって重要であることを明らかにした。これらの2つの領域は、折り畳まれたタンパク質において互いに距離が遠く離れており、リガンド-受容体相互作用の複数の領域の役割をサポートしている。介在残基、特にNRG-1βとEGFとの間の保存されているものは、これらの2つの領域間の適切な距離及び配向を維持することによって、純粋に構造的な役割を果たし得る。非リガンド結合ErbB3のX線構造は、ドメインIとIIIとの間のリガンド結合部位のサイズが、ドメインII及びIVが相互作用するときのリガンドサイズの二倍大きいことを示す。ドメインIIとIVとの接触は、リガンド結合に関して、ドメインI及びIIIの相対的配向を拘束するようである。従って、ドメインI(又はドメインIII)のみに対して接触するリガンドは、受容体に結合するであろうが、シグナリングのために必要と思われるドメイン配置を誘導することができない。これらの結果に基づいて、本発明者らは、伝達に必要とされるシグナルのために必要とされる少なくとも2つの受容体結合部位があると結論することができる。
【0108】
NRG-1β構造のEGFとの比較では、高度な構造類似性が明らかになった(図4)。N末端領域(Ser1-Lys5)、乱れたΩ-ループ(Lys24-Ser30)及びC末端領域(Met50-Ser52)を除いて、NRG-1βのCα原子は、EGFのものと、〜1.3ÅのRMSDでうまく整列する。NRG-1βは、EGFの配列に関して、3残基挿入を有する。しかし、NRG-1βの残基21〜33の、EGFの残基21〜30との置換は、ニューレグリン受容体結合又はその受容体リン酸化を刺激する能力に対して効果を有さない。実験結果は、NRG-1βの3残基(残基28〜30)挿入の機能的有意性は、その領域における有意な構造的相違にもかかわらず、最小限であることを示唆した。従って、NRG-1βにおける延長されたループの配向は、受容体に対するNRG-1β結合のモデリングに影響を及ぼさないであろう。
【0109】
(3. 分子動力学シミュレーション)
受容体-リガンド複合体の挙動は、タンパク質柔軟性及び高次構造の変化を説明するための分子動力学シミュレーションによって研究した。NRG-1β/ErbB3及びNRG-1β/ErbB4の開始モデルを、それぞれ1.1ns及び0.9nsのMDシミュレーションに供した。これらの初期位置(t=0ps)からのCα原子の平方二乗平均偏差(RMSD)を使用して安定性を測定し、及び可能性のある構造変動に対する洞察を得た。
【0110】
NRG-1β/ErbB3及びNRG-1β/ErbB4複合体のCα原子RMSDの時間進化を図5に示してある。プロットでは、全ての残基RMSDにおいて最初の100psの間に急増が観察され、次いでそれが平らになる傾向があった。しかし、これらのRMSD曲線の大きさは、データ収集期間の間に増大し続けることはなく、NRG-1β/ErbB3及びNRG-1β/ErbB4の構造がこの時間尺度上で安定であったことを暗示する。平均RMSDは、NRG-1β/ErbB3及びNRG-1β/ErbB4複合体の両方について、全てのシミュレーションにわたって3.0Åを下回った。特に、リガンドNRG-1βとのErbB4のシミュレーション軌道は、最後の400psにわたって2.6Åの平均RMSD値で十分に平衡化されるようであった。NRG-1β結合ErbB3構造は、最後の400psシミュレーションの間に3.7Åの平均値で、より高いRMSDを示した。これは、NRG-1β結合構造の相対的安定性を示している。この傾向は、再び、残基に関するRMS変動の分析においても明らかであった。NRG-1β結合構造におけるErbB3の残基は、これらの平均位置について、ErbB4複合体における残基よりも変動する。
【0111】
全ての軌道の平均構造の、これらのそれぞれの開始構造との重ね合せにより、主要な高次構造変化の領域が明らかになった。NRG-1β/ErbB3構造において最も大きな偏差を示した残基(残基243〜256)は、NRG-1β/ErbB4複合体におけるものと(残基265〜278)同様であるが、程度は大きかった。これらの残基は、ErbB3のX線構造において、ドメインIIからほぼ20Å延長するβ-ヘアピンループの一部である。このβ-ヘアピンループは、EGFRファミリー内で高度に保存されており、ドメインIIとIVとの間の分子内の接触においてだけでなく、分子間の受容体-受容体相互作用においても主要な役割を果たす。ドメインIIとIVとの間の相互作用、並びに受容体-受容体接触を欠く本発明者らの1:1切断複合体モデルは、この領域においてかなり高いRMSDを生じ得る。しかし、全体の分析では、モデル化された構造が著しい構造変化を被ることなくシミュレーションの間に安定なままであることを示す。
【0112】
(4.リガンド-受容体相互作用)
それぞれの受容体でのリガンド-受容体相互作用は、EGF/EGFRにおける相互作用と同様に3つの部位からなり、以後ドメインIの部位1、並びに受容体のドメインIIIの部位2及び3と名づけた(図3)。NRG-1βの残基20〜35及びLeu3は、部位1と相互作用する。NRG-1βの残基10〜19及びArg44を含む領域は、部位2と相互作用する。残基Tyr48周辺のC末端領域は、部位3と相互作用する。これらのリガンドの残基は、受容体に対する様々な静電的結合、疎水性結合及び水素結合相互作用を形成する。
【0113】
リガンドと受容体との間の水素結合軌道の分析から、NRG-1β/ErbB3及びNRG-1β/ErbB4の側鎖残基との間の水素結合によって媒介される少数の重要な相互作用が検出された。これらの水素結合は、表2において距離と共に記載してある。この表2から、NRG-1βの残基Arg44及びTyr48(EGFにおけるArg41及びArg45)のものを含む、受容体との重要な相互作用が保持されていることが分かる。NRG-1βのArg44側鎖は、それぞれErbB3のAsp352側鎖及びErbB4のAsp376側鎖と水素結合を生じる。この結果は、アラニンによるArg44の置換が有意にNRG-1βのErbB3及びErbB4結合活性を減少させたという実験的知見によってサポートされる。
【0114】
【表2】

水素結合に加えて、NRG-1βとErbB3及びErbB4の部位1、2及び3の境界面との間の疎水的相互作用も広範である。
【0115】
NRG-1β/ErbB3複合体において、ErbB3の部位1のVal47、Leu48、Met72及びLeu102の側鎖は、NRG-1βのLeu3、Val23及びLeu33と疎水的に相互作用する(図6A)。ErbB3の部位2のTrp354側鎖は、NRG-1βのPhe13及びTyr32と疎水的に相互作用する(図6B)。更にまた、Arg44(NRG-1β)側鎖の長い脂肪族部分もTrp354(ErbB3)側鎖とファンデルワールス接触を提供する。ErbB3の部位3のTyr405、Phe409及びIle413の側鎖は、NRG-1βのTyr48のまわりの残基のものと疎水的相互作用ネットワークを形成する(図6C)。
【0116】
同様の疎水的相互作用は、NRG-1β/ErbB4複合体においても観察される。これらの相互作用の結果、3つの疎水的相互作用ネットワークがNRG-1βとErbB4との間に境界面に形成される。NRG-1βのLeu3、Val23及びLeu33の側鎖は、ErbB4の部位1のLeu36、Leu91及びLeu121とファンデルワールス接触を形成する(図7A)。NRG-1βのPhe13、Val15及びTyr48のまわりの残基の側鎖は、それぞれErbB4の部位2及び3と同様の相互作用を有する(図7B及び7C)。洗練したモデルから同定される両方の推定上の相互作用は、ErbB3又はErbB4の存在下におけるNRG-1βの突然変異誘発研究と一致する。
上で示したNRG-1βの受容体との結合分析は、本発明者らにErbB3及びErbB4がNRG-1βと相互作用するメカニズムに関する豊富な情報を提供する。これにより、次に計算的突然変異誘発アプローチによって、受容体に対するNRG-1β結合及び安定性のための相互作用成分を理解し、更に最適化する本発明者らの能力が促進する。
【0117】
(5. MM-PBSA法によるNRG-1βの計算的アラニン走査突然変異誘発)
リガンド-受容体結合の相互作用境界面におけるそれぞれの残基の寄与を決定するため、及び突然変異によるその結合親和性を潜在的に増加させることができるリガンドの重要な残基を同定するために、計算的アラニン走査突然変異誘発をNRG-1βに対して行い、受容体に対する変異したリガンドの結合自由エネルギーを、MM-PBSA法を使用して算出した。計算時間を減少させるために、結合自由エネルギーに対するエントロピー寄与(TΔS)は、この研究において算出しなかった。エントロピー寄与は、結合自由エネルギーの相違が野生型と突然変異体との間で算出されるときに、相殺されることが予想される。この仮定は、ヒトp53及びその突然変異体に由来する12残基ペプチドについてのTΔSのMassova及びKollman算出によって証明されるように、合理的なようである。従って、ΔGサブトータル(-TΔS項を伴わない)のみをΔG結合評価のための基準として使用した。
【0118】
表3は、NRG-1β及びその突然変異体の、それぞれErbB3及びErbB4に対する全てのエネルギー項及びサブトータル結合自由エネルギーを示す。表3に示したように、分子間ファンデルワールス相互作用及び無極性溶媒和項は、結合のための推進力を提供する。両方の複合体形成は、強く好ましい静電相互作用(Eele)を引き起こし、溶媒和自由エネルギー(GPB)の極性部分により、好適ではない寄与が対抗する。同様の結果は、いくつかのその他の研究において見いだすことができる。NRG-1β/ErbB3及びNRG-1β/ErbB4のための総静電的寄与(Eele+GPB)は、それぞれ110.2kcal mol-1及び112.5kcal mol-1であり、従って、再び前述の関連した研究と一致して、複合体形成を嫌う。
【0119】
【表3】

【0120】
リガンド-受容体相互作用の分子動力学シミュレーションに基づいて、本発明者らは、受容体残基に対する結合の役割を担うNRG-1βの重要な残基を同定した。表4は、ErbB3及びErbB4結合に寄与するNRG-1βの全部で52残基のうちの20残基についての、計算的アラニン走査突然変異誘発アプローチの結果を示す。正及び負の値のΔΔGサブトータル(ΔG野生型=ΔG変異体)はそれぞれ、好ましい置換及び好適ではない置換を示す。データは、図8にグラフとしても示してある。図8の結果は、NRG-1βのいくつかのアラニン突然変異体がErbB3及びErbB4と、特に位置44、48及び50にて、有意に減少したリガンド相互作用エネルギーを有することを示す。これは、構造的に説明することができる。残基Arg44及びTyr48は、受容体の極性残基と水素結合を形成し(図6及び7を参照されたい)、これが結合自由エネルギーに対する静電相互作用の主要寄与となる(ΔΔEeleの項;補充表1及び2を参照されたい)。Arg44Ala及びTyr48Ala突然変異は、リガンドと受容体との間の重要な水素結合を消滅させる。Tyr48Ala及びMet50Ala突然変異は、リガンドと受容体の間の好ましいファンデルワールス相互作用の有意な喪失を生じさせる(ΔΔEvdwの項;補充表1及び2を参照されたい)。
【0121】
【表4】

【0122】
それぞれのアラニン突然変異の寄与に対する更なる洞察を得るために、アラニン突然変異による分子間ファンデルワールス及び静電相互作用更に極性溶媒和自由エネルギーの変化を図8に示してある。ほとんどの場合、分子間静電エネルギーの変化は、極性溶媒和自由エネルギーの変化と反相関する。従って、寄与の共通の静電的起源に基づいて、ΔΔEeleとΔΔGPBとを組み合わせることが重要である。図8から、ΔΔG無極性は、その他の自由エネルギー成分の変化と比較して、非常に小さい。ΔΔEvdwの寄与は、大部分が負であり、これは、アラニン置換がビンディング接合部でのファンデルワールス接触を減少させることを示す。一方で、ΔΔEeleとΔΔGPBを組み合わせている項は、Ala突然変異によって最も優先される。一つの例外は、ファンデルワールス及び静電相互作用の両方(ΔΔEele+ΔΔGPB)を失うArg44の置換である。正に荷電したNRG-1βのArg44と負に荷電したErbB3のAsp352及びErbB4のAsp376との間の分子間相互作用は、野生型複合体において強く優先される。同様の結果は、ErbB3と相互作用するNRG-1βのArg31Ala置換についても観察されるが(図8A)、ErbB4では観察されない(図8B)。NRG-1β/ErbB3の構造により、Arg31側鎖がErbB3のGlu131側鎖に対する2つの水素結合を形成することが明らかになる(表2)。従って、Arg31Ala突然変異体は、水素結合相互作用を欠如する。しかし、NRG-1βのArg31は、ErbB4の受容体に対する水素結合に関与しない(表2)。
【0123】
(6. NRG-1βArg31Ala及びAsn47Ala突然変異体の別々の軌道からのΔΔG結合の比較研究)
アラニン突然変異がNRG-1β/ErbB3及びNRG-1β/ErbB4複合体の全体的構造に対して大きな高次構造上の変化を生じさせないかどうかの仮定の妥当性を点検するために、ErbB3及びErbB4との複合体におけるNRG-1βのArg31Ala及びAsn47Alaについての2つの分子動力学シミュレーションを行った。突然変異体複合体の軌道の平均構造と開始モデル構造との間のCα原子のRMSD値は小さく、1.9〜2.1Åの間を変動する。突然変異体複合体の新たな軌跡に基づいて再計算したΔGサブトータル値は、表5に収載したように、野生型複合体の修正軌跡に由来する結果とほぼ同一である。2つの方法を使用して算出されたΔGサブトータル値間の相違は、1kcal mol-1未満である(表5)。これはNRG-1β/ErbB3及びNRG-1β/ErbB4のその全体的高次構造は、単一のアラニン突然変異の後に劇的に変化しないことを示す。
【0124】
【表5】

【0125】
(7.ニューレグリン及びその突然変異の受容体結合親和性並びにシグナル伝達能力の比較研究)
ニューレグリン及びその突然変異の受容体結合親和性を研究するために、ErbB2&ErbB3又はErbB2&ErbB4を同時発現するCOS7を使用する。細胞は、80%コンフルエンスに培養する。午後に、細胞が80%コンフルエンスに到達した後、培地を無血清培地に変える。次いで、24時間後に、細胞を受容体結合親和性アッセイ法のために収集する。
同様に、ニューレグリン及びその突然変異のシグナル伝達能力を研究するために、ErbB2&ErbB3又はErbB2&ErbB4を同時発現するCOS7細胞を使用する。細胞は、80%コンフルエンスに培養する。午後に、細胞が80%コンフルエンスに到達した後、培地を無血清培地に変える。次いで、24時間後に、種々の量のニューレグリン又はニューレグリン変異体を、細胞を含む別々のウェルに添加する。10分後に、細胞を溶解するために添加液を添加する。次いで、試料を収集し、電気泳動及びウエスタンブロット分析のためのゲルの別々のウェルに充填する。
【0126】
ニューレグリン(ニューレグリン1β2の177〜237アミノ酸断片)並びにニューレグリン変異体L3A及びD43A(それぞれ、第3及び第43番目のアミノ酸に対するニューレグリン断片のアラニン置換)についての結果を表6、表7、図9及び図10に示してある。表6及び表7のデータは、L3A及びD43AがErbB2&ErbB3を同時発現する細胞に対してニューレグリンとほとんど同じ受容体結合親和性を有することを示し(EC50又はKD値がより高い場合、受容体結合親和性は、より低い)、一方ErbB2&ErbB4を同時発現する細胞に対して、D43Aはニューレグリンよりも非常に高く(表6)、及びL3Aはより低い(表7)、受容体結合親和性を有する。同様に、図9及び10は、L3A及びD43A結合がErbB2&ErbB4を同時発現する細胞におけるニューレグリンよりも多くのAKTリン酸化を誘導するが、ErbB2&ErbB3を同時発現する細胞におけるニューレグリンよりも少ないAKTリン酸化を誘導することを示す。これらの結果は、L3A及びD43A結合がErbB2&ErbB4を同時発現する細胞においてAKTシグナリング経路を強く活性化することができるが、ErbB2&ErbB3を同時発現する細胞において少し活性化するだけであることを示す。これらの結果は、心臓細胞が主にErbB2&ErbB4を発現するので有意であり、従って、D43A及びL3Aなどの変異体は、心臓血管疾患を治療するために使用することができ、一方で、ニューレグリンに結合するその他のErbB2&ErbB3を発現する細胞の副作用を減少させる。
【0127】
【表6】

【0128】
【表7】

【0129】
ニューレグリン二重突然変異体8A47A(ニューレグリン断片の第8及び第47番目のアミノ酸に対する同時アラニン置換)を構築した。上と同様の方法を使用して、ニューレグリン及びその二重突然変異体のシグナル伝達能力を研究した。ニューレグリン(ニューレグリンlβ2の177〜237アミノ酸断片)及びニューレグリン二重突然変異体8A47A(ニューレグリン断片の第8及び第47番目のアミノ酸に対する同時アラニン置換)についての結果を図11に示してある。図11は、8A47A結合がErbB2&ErbB4を同時発現する細胞におけるニューレグリンよりも多くのAKTリン酸化を誘導するが、ErbB2&ErbB3を同時発現する細胞におけるニューレグリンとほとんど同じAKTリン酸化を誘導することを示す。結果は、8A47A結合がErbB2&ErbB4を同時発現する細胞におけるAKTシグナリング経路を強く活性化することができるが、ErbB2&ErbB3を同時発現する細胞における経路を普通に活性化するだけであることを示す。心臓細胞が主にErbB2&ErbB4を発現するので該結果は非常に重要である。それゆえ、8A47Aは、心臓血管疾患を治療するために使用することができ、一方で、ニューレグリンに結合するその他のErbB2&ErbB3を発現する細胞の副作用を維持する。
【0130】
(結論)
相同性モデリング法、分子動力学法及び自由エネルギー計算法を使用して、NRG-1βとその受容体であるErbB3及びErbB4との間の相互作用を研究した。ErbB3及びErbB4に対するNRG-1βの結合特徴は、分子動力学(MD)シミュレーションを使用して対処した。リガンドと受容体との間の結合自由エネルギーは、MM-PBSA方法によって算出した。MDシミュレーションにより、Leu33、Arg44、Tyr48及びMet50などのNRG-1βの多数の構造的に重要な残基は、その受容体に対するEGFの対応する残基と比較して、受容体に対する結合を保持することが明らかになった。リガンドと受容体との間の自由エネルギー計算は、受容体に対するNRG-1βの結合親和性起源を分析するのを補助した。
【0131】
更に、計算的アラニン走査法を使用して、相互作用境界面におけるそれぞれの残基の結合親和性に対する寄与をマップし、結合部位にて個々の残基の機能を調べることによって、構築されたリガンド-受容体複合体のモデルを確認した。計算的アラニン走査結果により、例えばErbB3及びErbB4に対するNRG-1βの結合において、実験的突然変異誘発結果で優れた一致を示すいくつかの重要な相互作用残基対を同定した。これは、現在のNRG-1β/ErbB3及びNRG-1β/ErbB4複合体の構造モデルが信頼でき、かつ受容体に対する結合親和性及び選択性を増加させるようにNRG-1β上の望ましい突然変異を選択すること、及び心不全の治療のための新たな治療薬を発見するために役立つこと、並びにニューレグリン突然変異L3A及びD43Aは、このアイデアを強く支持することを示す。
【0132】
上記実施例は、説明の目的のみのために含まれ、本発明の範囲を限定することは意図されない。上記のものに対する多くの変更が可能である。上記実施例に対する修正変更が当業者には明らかであると考えられるので、本発明は、添付の特許請求の範囲の範囲のみによって限定されることが意図される。
【図面の簡単な説明】
【0133】
特許又は出願書類には、少なくとも1つのカラーで実行した図面を含む。カラー図面を伴う本特許又は特許出願公開の写しは、要請及び必要な料金の支払いに応じて事務局によって提供される。
【図1】相同性モデリングのために使用する(A)ErbB3とEGFR及び(B)ErbB4とEGFRとの間の対での整列を示す。配列において、「*」は、同一の残基を指し;「:」は、保存的置換を指し;及び「.」は、半保存的な置換を指す。ボックスは、構造的に保存された領域を示す。
【図2】EGFR(赤)のX線構造に重ね合わせた、精製された受容体(A)ErbB3(青)及び(B)ErbB4(青)Cαトレースの立体図を示す。
【図3】(A)NRG-1β/ErbB3及び(B)NRG-1β/ErbB4(B)モデルのリボン図を示す。複合体におけるNRG-1β鎖は、赤である。受容体におけるドメインI、II、III及びIVは、それぞれ青、緑、オレンジ及び灰色に着色した。境界面の3つの結合部位の輪郭を示してある。図は、プログラムMOLSCRIPTを使用して作成した。
【図4】(A)EGF(赤)上の最小化されたNRG-1β座標のCα原子の最適重ね合わせ(青)の立体図及び(B)これらのタンパク質の整列させたアミノ酸配列を示す。
【図5】ErbB3(破線)及びErbB4(実線)のNRG-1βとの複合体の動的シミュレーションの間のCα原子についての平方二乗平均偏差を示す。
【図6】3つの結合部位(A)部位1の境界面;(B)部位2の境界面;(C)部位3の境界面でのErbB3とNRG-1βとの間の相互作用を示す。相互作用する残基の側鎖のみを示してある。点線は、水素結合を表す。
【図7】3つの結合部位、(A)部位1の境界面;(B)部位2の境界面;(C)部位3の境界面でのErbB4とNRG-1βとの間の相互作用を示す。相互作用する残基の側鎖のみを示してある。点線は、水素結合を表す。
【図8】(A)NRG-1βとのErbB3複合体についての計算的アラニン走査突然変異誘発実験についての結合エネルギー変化;及び(B)NRG-1βとのErbB4複合体についての計算的アラニン走査突然変異誘発実験についての結合エネルギー変化を示す。ΔΔGサブトータルにおける負の値は、ひどく適していない置換を示す。ΔΔGサブトータルにおける正の値は、該残基について好ましいアラニン突然変異を示す。
【図9】ニューレグリン又はその突然変異(D43A)での処理後のErbB2&ErbB4及びErbB2&ErbB3を同時発現するCOS7細胞におけるAKTのリン酸化を示す。図中、Conはニューレグリンの濃度を意味し、P-AKTは、AKTのリン酸化を意味する。
【図10】ニューレグリン又はその突然変異(L3A)での処理後のErbB2&ErbB4及びErbB2&ErbB3を同時発現するCOS7細胞におけるAKTのリン酸化を示す。GAPDHは、タンパク質量の対照として示してある。
【図11】ニューレグリン又はその二重突然変異体(8A47A)での処理後のErbB2&ErbB4及びErbB2&ErbB3を同時発現するCOS7細胞におけるAKTのリン酸化を示す。GAPDHは、タンパク質量の対照として示してある。
【図1A】

【図1B】

【図2A】

【図2B】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
配列番号:1に示したアミノ酸配列を含むニューレグリン-1βのポリペプチド変異体であって、該ポリペプチド変異体は、配列番号:1のものとは異なるアミノ酸を含み、該ポリペプチド変異体は、配列番号:1のポリペプチドと比較してErbB3に対して増強された結合親和性を有し、かつ、
残基25にて、前記異なるアミノ酸は、A、C、E、F、G、H、I、K、L、M、N、P、Q、R、S、T、V、W若しくはYであるか;又は、
残基35にて、前記異なるアミノ酸は、A、C、D、E、F、G、H、I、L、N、M、P、Q、R、S、T、V、W若しくはYであるか;又は、
残基46にて、前記異なるアミノ酸は、A、C、D、E、F、G、H、I、K、L、M、N、P、R、S、T、V、W若しくはYである、前記ポリペプチド変異体。
【請求項2】
前記ポリペプチド変異体が配列番号:1に示したアミノ酸配列からなり、かつ、
残基25にて、前記異なるアミノ酸は、A、C、E、F、G、H、I、K、L、M、N、P、Q、R、S、T、V、W若しくはYであるか;又は、
残基35にて、前記異なるアミノ酸は、A、C、D、E、F、G、H、I、L、N、M、P、Q、R、S、T、V、W若しくはYであるか;又は、
残基46にて、前記異なるアミノ酸は、A、C、D、E、F、G、H、I、K、L、M、N、P、R、S、T、V、W若しくはYである、請求項1記載のポリペプチド変異体。
【請求項3】
残基25にて、前記異なるアミノ酸がAであるか;
残基35にて、前記異なるアミノ酸がAであるか;又は、
残基46にて、前記異なるアミノ酸がAである、請求項1記載のポリペプチド変異体。
【請求項4】
残基25にて、前記異なるアミノ酸がAであるか;
残基35にて、前記異なるアミノ酸がAであるか;又は、
残基46にて、前記異なるアミノ酸がAである、請求項2記載のポリペプチド変異体。
【請求項5】
前記ポリペプチド変異体が、配列番号:1のポリペプチドと比較してErbB4に対して減少されたか、又は同様の結合親和性を有する、請求項1記載のポリペプチド変異体。
【請求項6】
残基25にて、前記異なるアミノ酸がAである、請求項5記載のポリペプチド変異体。
【請求項7】
残基35にて、前記異なるアミノ酸がAである、請求項5記載のポリペプチド変異体。
【請求項8】
残基46にて、前記異なるアミノ酸がAである、請求項5記載のポリペプチド変異体。
【請求項9】
請求項1記載のポリペプチド変異体をコードする核酸配列を含むポリヌクレオチド。
【請求項10】
請求項1記載のポリペプチド変異体の有効量と医薬として許容し得る賦形剤とを含む医薬組成物。
【請求項11】
請求項5記載のポリペプチド変異体の有効量と医薬として許容し得る賦形剤とを含む医薬組成物。
【請求項12】
請求項9記載のポリヌクレオチドの有効量と医薬として許容し得る賦形剤とを含む医薬組成物。
【請求項13】
請求項10記載の医薬組成物と、ErbB2/ErbB3受容体を活性化することを介して個体における疾患を予防し、治療し、又は遅延させる際に医薬組成物を使用するための説明書とを含むキット。
【請求項14】
請求項11記載の医薬組成物と、ErbB2/ErbB3受容体を活性化することを介して個体における疾患を予防し、治療し、又は遅延させる際に医薬組成物を使用するための説明書とを含むキット。
【請求項15】
個体における統合失調症の発症を予防し、治療し、遅延させるための方法であって、このような予防、治療若しくは遅延が必要であるか、又は望ましい個体に対して、請求項1の記載のポリペプチド変異体の有効量と医薬として許容し得る賦形剤とを含む医薬組成物を投与することを含む、前記方法。
【請求項16】
前記哺乳類がヒトである、請求項15記載の方法。
【請求項17】
配列番号:1に示したアミノ酸配列を含むニューレグリン-1βのポリペプチド変異体であって、該ポリペプチド変異体は、配列番号:1のものとは異なるアミノ酸を含み、該ポリペプチド変異体は、配列番号:1のポリペプチドと比較してErbB4に対して増強された結合親和性を有し、かつ、
残基16にて、前記異なるアミノ酸は、A、C、D、E、F、G、H、I、K、L、M、P、Q、R、S、T、V、W若しくはYであるか;
残基31にて、前記異なるアミノ酸は、A、C、D、E、F、G、H、I、K、L、M、N、P、Q、S、T、 V、W若しくはYであるか;又は、
残基47にて、前記異なるアミノ酸は、A、C、D、E、F、G、H、I、K、L、M、P、Q、R、S、T、V、W若しくはYである、前記ポリペプチド変異体。
【請求項18】
前記ポリペプチド変異体が配列番号:1に示したアミノ酸配列からなり、かつ、
残基16にて、前記異なるアミノ酸がA、C、D、E、F、G、H、I、K、L、M、P、Q、R、S、T、V、W若しくはYであるか;
残基31にて、前記異なるアミノ酸がA、C、D、E、F、G、H、I、K、L、M、N、P、Q、S、T、V、W若しくはYであるか;又は、
残基47にて、前記異なるアミノ酸がA、C、D、E、F、G、H、I、K、L、M、P、Q、R、S、T、V、W若しくはYである、請求項17記載のポリペプチド変異体。
【請求項19】
残基16にて、前記異なるアミノ酸がAである、請求項17記載のポリペプチド変異体。
【請求項20】
残基16にて、前記異なるアミノ酸がAである、請求項18記載のポリペプチド変異体。
【請求項21】
残基31にて、前記異なるアミノ酸がAである、請求項17記載のポリペプチド変異体。
【請求項22】
残基31にて、前記異なるアミノ酸がAである、請求項18記載のポリペプチド変異体。
【請求項23】
残基47にて、前記異なるアミノ酸がAである、請求項17記載のポリペプチド変異体。
【請求項24】
残基47にて、前記異なるアミノ酸がAである、請求項18記載のポリペプチド変異体。
【請求項25】
配列番号:1のものとは異なるアミノ酸を更に含み、残基8にて、前記異なるアミノ酸がAである、請求項23記載のポリペプチド変異体。
【請求項26】
配列番号:1のものとは異なるアミノ酸を更に含み、かつ残基8にて、前記異なるアミノ酸がAである、請求項24記載のポリペプチド変異体。
【請求項27】
前記ポリペプチド変異体が、配列番号:1のポリペプチドと比較してErbB2/ErbB4発現細胞においてよりAktリン酸化を誘導する、請求項25記載のポリペプチド変異体。
【請求項28】
前記ポリペプチド変異体が、配列番号:1のポリペプチドと比較してErbB2/ErbB4発現細胞においてよりAktリン酸化を誘導する、請求項26記載のポリペプチド変異体。
【請求項29】
前記ポリペプチド変異体が、配列番号:1のポリペプチドと比較してErbB3に対して減少されたか、又は同様の結合親和性を有する、請求項17記載のポリペプチド変異体。
【請求項30】
請求項17記載のポリペプチド変異体をコードする核酸配列を含むポリヌクレオチド。
【請求項31】
請求項17記載のポリペプチド変異体の有効量と医薬として許容し得る賦形剤とを含む医薬組成物。
【請求項32】
請求項29記載のポリペプチド変異体の有効量と医薬として許容し得る賦形剤とを含む医薬組成物。
【請求項33】
請求項30記載のポリヌクレオチドの有効量と医薬として許容し得る賦形剤とを含む医薬組成物。
【請求項34】
請求項31記載の医薬組成物とErbB2/ErbB4受容体を活性化することを介して個体における疾患を予防し、治療し、又は遅延させる際に医薬組成物を使用するための説明書とを含むキット。
【請求項35】
請求項32記載の医薬組成物とErbB2/ErbB4受容体を活性化することを介して個体における疾患を予防し、治療し、又は遅延させる際に医薬組成物を使用するための説明書とを含むキット。
【請求項36】
個体におけるウイルス性心筋炎、拡張型(鬱血性)心筋症、心毒性又は心筋梗塞の発症を予防し、治療し、遅延させるための方法であって、このような予防、治療若しくは遅延が必要であるか、又は望ましい個体に対して、請求項17記載のポリペプチド変異体の有効量と医薬として許容し得る賦形剤とを含む医薬組成物を投与することを含む、前記方法。
【請求項37】
前記哺乳類がヒトである、請求項36記載の方法。
【請求項38】
ErbB3に選択的な増強された結合親和性を有するニューレグリン-1βのポリペプチド変異体をスクリーニングするための方法であって:該方法には、
(a)相同性モデリングにより、ニューレグリン-1β又はその断片、ErbB3、ErbB4、ニューレグリン-1β又はその断片とErbB3との複合体、及びニューレグリン-1β又はその断片とErbB4との複合体の三次元構造を確立することと;
(b)分子動力学シミュレーション法により、溶液におけるニューレグリン-1β又はその断片とErbB3との複合体、及びニューレグリン-1β又はその断片とErbB4との複合体の高次構造上の変化及び安定性データを確立すること;
(c)分子力学ポアソンボルツマン表面積(MM-PBSA)法により、ニューレグリン-1β又はその断片のErbB3又はErbB4とのサブトータル結合自由エネルギー(<Gサブトータル野生型)を算出すること;
(d)分子力学ポアソンボルツマン表面積(MM-PBSA)法により、ニューレグリン-1β又はその断片のアラニン置換された変異体のErbB3又はErbB4とのサブトータル結合自由エネルギー(<Gサブトータルアラニン置換変異体)を算出することであって、該アラニン置換された変異体は、アラニンによって置換されたニューレグリン-1β又はその断片のアミノ酸を含む;
(e)<<Gサブトータル=<Gサブトータル野生型−<Gサブトータルアラニン置換変異体を算出すること;
(f)ニューレグリン-1β又はその断片とErbB3との複合体について正の値の<<Gサブトータルを有し、かつニューレグリン-1β又はその断片とErbB4との複合体についての<<Gサブトータルについては負の値又は約0の値を有するアラニン置換された変異体を選択すること;
を含み、
これにより、ErbB3に選択的な増強された結合親和性を有するニューレグリン-1βのポリペプチド変異体が同定される、前記方法。
【請求項39】
請求項38記載の方法によって同定されたニューレグリン-1βのポリペプチド変異体。
【請求項40】
ErbB4に選択的な増強された結合親和性を有するニューレグリン-1βのポリペプチド変異体をスクリーニングするための方法であって、方法には:
(a)相同性モデリングにより、ニューレグリン-1β又はその断片、ErbB3、ErbB4、ニューレグリン-1β又はその断片とErbB3との複合体、及びニューレグリン-1β又はその断片とErbB4との複合体の三次元構造を確立すること;
(b)分子動力学シミュレーション法により、溶液におけるニューレグリン-1β又はその断片とErbB3との複合体、及びニューレグリン-1β又はその断片とErbB4との複合体の高次構造上の変化及び安定性データを確立すること;
(c)分子力学ポアソンボルツマン表面積(MM-PBSA)法により、ニューレグリン-1β又はその断片のErbB3又はErbB4とのサブトータル結合自由エネルギー(<Gサブトータル野生型)を算出すること;
(d)分子力学ポアソンボルツマン表面積(MM-PBSA)法により、ニューレグリン-1β又はその断片のアラニン置換された変異体のErbB3又はErbB4とのサブトータル結合自由エネルギー(<Gサブトータルアラニン置換変異体)を算出することであって、該アラニン置換された変異体は、アラニンによって置換されたニューレグリン-1β又はその断片のアミノ酸を含む;
(e)<<Gサブトータル=<Gサブトータル野生型−<Gサブトータルアラニン置換変異体を算出すること;
(f)ニューレグリン-1β又はその断片とErbB4との複合体について正の値の<Gサブトータルを有し、かつニューレグリン-1β又はその断片とErbB3との複合体についての<Gサブトータルについて負の値又は約0の値を有するアラニン置換された変異体を選択すること;
を含み、
これにより、ErbB4に選択的な増強された結合親和性を有するニューレグリン-1βのポリペプチド変異体が同定される、前記方法。
【請求項41】
請求項40記載の方法によって同定されるニューレグリン-1βのポリペプチド変異体。
【請求項42】
配列番号:1に示したアミノ酸配列を含むニューレグリン-1βのポリペプチド変異体であって、該変異体ポリペプチドは、配列番号:1のものとは異なるアミノ酸を含み、該ポリペプチド変異体は、配列番号:1のポリペプチドと比較してErbB2/ErbB4受容体に対して増強された結合親和性を有し、かつ残基43にて、前記異なるアミノ酸は、A、C、E、F、G、H、I、K、L、M、N、P、Q、R、S、T、V、W又はYである、前記ポリペプチド変異体。
【請求項43】
前記ポリペプチド変異体が配列番号:1に示したアミノ酸配列からなり、かつ残基43にて、前記異なるアミノ酸がA、C、E、F、G、H、I、K、L、M、N、P、Q、R、S、T、V、W又はYである、請求項42記載のポリペプチド変異体。
【請求項44】
残基43にて、前記異なるアミノ酸がAである、請求項42記載のポリペプチド変異体。
【請求項45】
残基43にて、前記異なるアミノ酸がAである、請求項43記載のポリペプチド変異体。
【請求項46】
前記ポリペプチド変異体が配列番号:1のポリペプチドと比較してErbB2/ErbB4発現細胞においてよりAktリン酸化を誘導する、請求項44記載のポリペプチド変異体。
【請求項47】
前記ポリペプチド変異体が配列番号:1のポリペプチドと比較してErbB2/ErbB4発現細胞においてよりAktリン酸化を誘導する、請求項45記載のポリペプチド変異体。
【請求項48】
配列番号:1のものとは異なるアミノ酸を更に含み、残基8にて、前記異なるアミノ酸がAである、請求項42記載のポリペプチド変異体。
【請求項49】
配列番号:1のものとは異なるアミノ酸を更に含み、残基8にて、前記異なるアミノ酸がAである、請求項43記載のポリペプチド変異体。
【請求項50】
配列番号:1のものとは異なるアミノ酸を更に含み、残基47にて、前記異なるアミノ酸がAである、請求項48記載のポリペプチド変異体。
【請求項51】
配列番号:1のものとは異なるアミノ酸を更に含み、残基47にて、前記異なるアミノ酸がAである、請求項49記載のポリペプチド変異体。
【請求項52】
配列番号:1のものとは異なるアミノ酸を更に含み、残基47にて、前記異なるアミノ酸がAである、請求項42記載のポリペプチド変異体。
【請求項53】
配列番号:1のものとは異なるアミノ酸を更に含み、残基47にて、前記異なるアミノ酸がAである、請求項43記載のポリペプチド変異体。
【請求項54】
前記ポリペプチド変異体が配列番号:1のポリペプチドと比較してErbB2/ErbB3受容体に対して減少されたか、又は同様の結合親和性を有する、請求項42記載のポリペプチド変異体。
【請求項55】
残基43にて、前記異なるアミノ酸がAである、請求項54記載のポリペプチド変異体。
【請求項56】
請求項42記載のポリペプチド変異体をコードする核酸配列を含むポリヌクレオチド。
【請求項57】
請求項42記載のポリペプチド変異体の有効量と医薬として許容し得る賦形剤とを含む医薬組成物。
【請求項58】
請求項43記載のポリペプチド変異体の有効量と医薬として許容し得る賦形剤とを含む医薬組成物。
【請求項59】
請求項56記載のポリヌクレオチドの有効量と医薬として許容し得る賦形剤とを含む医薬組成物。
【請求項60】
請求項57の医薬組成物と、ErbB2/ErbB4受容体を活性化することを介して個体における疾患を予防し、治療し、又は遅延させる際に医薬組成物を使用するための説明書とを含むキット。
【請求項61】
請求項58の医薬組成物と、ErbB2/ErbB4受容体を活性化することを介して個体における疾患を予防し、治療し、又は遅延させる際に医薬組成物を使用するための説明書とを含むキット。
【請求項62】
哺乳類における統合失調症の発症を予防し、治療し、又は遅延させるための方法であって、このような予防、治療若しくは遅延が必要であるか、又は望ましい哺乳類に対して、請求項42記載のポリペプチド変異体の有効量と医薬として許容し得る賦形剤とを含む医薬組成物を投与することを含む、前記方法。
【請求項63】
前記哺乳類がヒトである、請求項62記載の方法。
【請求項64】
哺乳類におけるウイルス性心筋炎、拡張型(鬱血性)心筋症、心毒性、心筋梗塞又は、心臓血管疾患の発症を予防し、治療し、又は遅延させるための方法であって、このような予防、治療若しくは遅延が必要であるか、又は望ましい哺乳類に対して、請求項42記載のポリペプチド変異体の有効量と医薬として許容し得る賦形剤とを含む医薬組成物を投与することを含む、前記方法。
【請求項65】
前記哺乳類がヒトである、請求項64記載の方法。
【請求項66】
配列番号:1に示したアミノ酸配列を含むニューレグリン-1βのポリペプチド変異体であって、該ポリペプチド変異体は、配列番号:1のものとは異なるアミノ酸を含み、該ポリペプチド変異体は、配列番号:1のポリペプチドと比較してErbB2/ErbB4受容体に対する減少された結合親和性を有し、かつ残基3にて、前記異なるアミノ酸は、A、C、D、E、F、G、H、I、K、M、N、P、Q、R、S、T、V、W又はYである、前記ポリペプチド変異体。
【請求項67】
前記ポリペプチド変異体が、配列番号:1に示したアミノ酸配列からなり、かつ残基3にて、前記異なるアミノ酸がA、C、D、E、F、G、H、I、K、M、N、P、Q、R、S、T、V、W又はYである、請求項66記載のポリペプチド変異体。
【請求項68】
残基3にて、前記異なるアミノ酸がAである、請求項66記載のポリペプチド変異体。
【請求項69】
残基3にて、前記異なるアミノ酸がAである、請求項67記載のポリペプチド変異体。
【請求項70】
前記ポリペプチド変異体が、配列番号:1のポリペプチドと比較してErbB2/ErbB4発現細胞においてよりAktリン酸化を誘導する、請求項68記載のポリペプチド変異体。
【請求項71】
前記ポリペプチド変異体が、配列番号:1のポリペプチドと比較してErbB2/ErbB4発現細胞においてよりAktリン酸化を誘導する、請求項69記載のポリペプチド変異体。
【請求項72】
前記ポリペプチド変異体が、配列番号:1のポリペプチドと比較してErbB2/ErbB3発現細胞においてよりAktリン酸化を誘導する、請求項66記載のポリペプチド変異体。
【請求項73】
残基3にて、前記異なるアミノ酸がAである、請求項72記載のポリペプチド変異体。
【請求項74】
請求項66記載のポリペプチド変異体をコードする核酸配列を含むポリヌクレオチド。
【請求項75】
請求項66記載のポリペプチド変異体の有効量と医薬として許容し得る賦形剤とを含む医薬組成物。
【請求項76】
請求項67記載のポリペプチド変異体の有効量と医薬として許容し得る賦形剤とを含む医薬組成物。
【請求項77】
請求項74記載のポリヌクレオチド変異体の有効量と医薬として許容し得る賦形剤とを含む医薬組成物。
【請求項78】
請求項75記載の医薬組成物と、ErbB2/ErbB3受容体を活性化することを介して個体における疾患を予防し、治療し、又は遅延させる際に医薬組成物を使用するための説明書とを含むキット。
【請求項79】
請求項76記載の医薬組成物と、ErbB2/ErbB3受容体を活性化することを介して個体における疾患を予防し、治療し、又は遅延させる際に医薬組成物を使用するための説明書とを含むキット。
【請求項80】
哺乳類における統合失調症の発症を予防し、治療し、又は遅延させるための方法であって、このような予防、治療若しくは遅延が必要であるか、又は望ましい哺乳類に対して、請求項66記載のポリペプチド変異体の有効量と医薬として許容し得る賦形剤とを含む医薬組成物を投与することを含む、前記方法。
【請求項81】
前記哺乳類がヒトである、請求項80記載の方法。
【請求項82】
哺乳類におけるウイルス性心筋炎、拡張型(鬱血性)心筋症、心毒性、心臓血管疾患又は、心筋梗塞の発症を予防し、治療し、又は遅延させるための方法であって、このような予防、治療若しくは遅延が必要であるか、又は望ましい哺乳類に対して、請求項66記載のポリペプチド変異体の有効量と医薬として許容し得る賦形剤とを含む医薬組成物を投与することを含む、前記方法。
【請求項83】
前記哺乳類がヒトである、請求項82記載の方法。
【請求項84】
配列番号:1に示したアミノ酸配列を含むニューレグリン-1βのポリペプチド変異体であって、該ポリペプチド変異体は、配列番号:1のものとは異なるアミノ酸を含み、該ポリペプチド変異体は、配列番号:1のポリペプチドと比較してErbB3に対して増強された結合親和性を有し、かつ
残基8にて、前記異なるアミノ酸は、A、C、D、F、G、H、I、K、L、M、N、P、Q、R、S、T、V、W若しくはYであり;及び/又は、
残基43にて、前記異なるアミノ酸は、A、C、E、F、G、H、I、K、L、M、N、P、Q、R、S、T、V、W若しくはYであり;及び/又は、
残基47にて、前記異なるアミノ酸は、A、C、D、E、F、G、H、I、K、L、M、P、Q、R、S、T、V、W若しくはYである、前記ポリペプチド変異体。
【請求項85】
前記ポリペプチド変異体が配列番号:1に示したアミノ酸配列からなり、かつ、
残基8にて、前記異なるアミノ酸がA、C、D、F、G、H、I、K、L、M、N、P、Q、R、S、T、V、W若しくはYであり;及び/又は、
残基43にて、前記異なるアミノ酸がA、C、E、F、G、H、I、K、L、M、N、P、Q、R、S、T、V、W若しくはYであり;及び/又は、
残基47にて、前記異なるアミノ酸がA、C、D、E、F、G、H、I、K、L、M、P、Q、R、S、T、V、W若しくはYである、請求項84記載のポリペプチド変異体。

【図3】
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【図4A】
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【図4B】
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【図5】
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【図6A】
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【図6B】
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【図6C】
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【図7A】
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【図7B】
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【図7C】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公表番号】特表2009−517055(P2009−517055A)
【公表日】平成21年4月30日(2009.4.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−542579(P2008−542579)
【出願日】平成18年12月4日(2006.12.4)
【国際出願番号】PCT/CN2006/003240
【国際公開番号】WO2007/062594
【国際公開日】平成19年6月7日(2007.6.7)
【出願人】(504274712)ゼンサン (シャンハイ) サイエンス アンド テクノロジー リミテッド (5)
【Fターム(参考)】