説明

ニューロン始原細胞特性を示す細胞

【課題】ニューロン始原細胞特性を示す細胞、ならびに骨髄付着幹細胞の神経膠トランス分化と関連する骨髄付着幹細胞中の細胞経路を調節することにより骨髄付着幹細胞からそれらを作製する方法の提供。
【解決手段】中枢又は抹消神経系の疾患の治療のための細胞をインビトロで生産する方法であって、該細胞は、以下のステップ:
培養中の骨髄付着幹細胞(MASCs)を、JAK/STATシグナル伝達の阻害剤とともにインキュベートする、ここで、該MASCsは、ノッチ細胞内ドメインをコードするポリヌクレオチドでトランスフェクションされていない、
により得られる前記方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の分野
本発明は、ニューロン始原細胞特性を示す細胞に、ならびに骨髄付着幹細胞の神経膠トランス分化と関連する骨髄付着幹細胞中の細胞経路を調節することにより骨髄付着幹細胞からそれらを作製する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
中枢神経系(CNS)または末梢神経系(PNS)疾患の研究および治療における制限は、最終分化ニューロンが、増殖するそれらの能力を有意に制限されることである、と慣用的に認識されている。したがって最終分化ニューロンの移植片を要するCNSまたはPNSの任意の治療は、成し遂げるのが困難である。
【0003】
この困難を克服するために提唱された一アプローチは、ニューロン始原細胞特性を示す多数の有糸分裂細胞(「CPC」)を培養することであった。このような細胞は、理論的に、CNSおよび/またはPNS疾患の治療において機能し得るニューロンにin vivoで分化し得る。あるいはCPCは、in vitroでニューロンに分化され、次に患者に移植され得る。しかしながらこのようなCPCはまれであり、そしてドナーから単離するのが難しい。したがって慣用的には、処置胚および胎児幹細胞(本明細書中では以後、集合的に「胚性幹細胞」と呼ばれる)からCPCを得るための研究が試みられてきた。
【0004】
多能性細胞である胚性幹細胞は、多数の種々の組織型を生じるために用いられてきており、そしてCPCの供給源であり得る(I. Weissman, Stem cells: units of development, units of regeneration, and units in evolution (Review). Cell 100, 157-168 (2000))。しかしながら胚性幹細胞の使用は多数の倫理的問題を提起し、それゆえCPCの産生のための幹細胞の好ましくない供給源である。さらに胚性幹細胞は腫瘍形成性であり、このことは、胚性幹細胞からのCPC移植片の作製といったような患者への胚性幹細胞の送達を潜在的に生じ得る任意の移植片手法に関して安全性問題を引き起こし得る。
【0005】
いくつかの研究は、CPCの産生において、他の種類の幹細胞、例えば間葉幹細胞を利用することを試みてきた。米国特許出願第20030003090号(Prockop等、2003年1月2日提出、表題「Directed in vitro differentiation of marrow stromal cells into neural cell progenitors」)は、0.5ミリモルのIBMXおよび1ミリモルのdbcAMPとのそれらのインキュベーション後に、NSEおよびビメンチンの両方の発現レベルがヒト間葉幹細胞中で増大された、ということを開示する。NSEおよびビメンチンmRNAにおける増大は、培養中の神経細胞の出現と一致する。しかしながら、MAP1BまたはTuJ‐1のいずれかの発現レベルにおける変化は認められなかった、とProckop等は報告した。NSE、MAP1BおよびTuJ‐1は早期ニューロン特性マーカーであり、そしてビメンチンは神経膠に関する早期マーカーであるため、hMSCはin vitroでニューロンまたは神経膠のいくつかの早期始原細胞にトランス分化する、ということをProckop等は示唆した。しかしながらProckopの早期始原細胞は、それらがその臨床効能が十分には理解されていない極未熟ニューロン表現型を表示すると思われるため、使用が望ましくない可能性がある。
【0006】
したがって、例えばCNSまたはPNS疾患の研究および治療に用いるためのCPCの慣用的に利用可能な且つ適切な供給源の不足が認められる。さらに使用するのに適した適切な方法でこのようなCPCを産生するために用いられ得る方法の不足が認められる。必要とされるのは、このような問題を克服する方法および組成物である。
【発明の概要】
【0007】
発明の要約
一態様において、本発明は、骨髄付着幹細胞を含む物質からのニューロン始原細胞特性を示す細胞の産生方法であって、以下の:骨髄付着幹細胞の神経膠トランス分化(trans differentiation)と関連する骨髄付着幹細胞中の細胞経路を調節し;この場合、細胞経路はニューロン始原細胞特性を示す細胞にトランス分化するために骨髄付着幹細胞の少なくとも一部を誘導するのに十分に調節されるが;但し調節はノッチ細胞内ドメインによる骨髄付着幹細胞のトランスフェクションを包含しない、ということを包含する方法に関する。
【0008】
別の態様では、本発明は、ニューロン始原細胞特性を示す細胞の産生方法であって、以下の:ニューロン始原細胞特性を示す細胞にトランス分化するよう骨髄付着幹細胞の少なくとも一部を誘導するのに十分な量の神経膠調節剤とともに骨髄付着幹細胞をインキュベートするが;但し相互作用がノッチ細胞内ドメインによる骨髄付着幹細胞のトランスフェクションを含まないことを包含する方法に関する。
【発明を実施するための形態】
【0009】
発明の詳細な説明
上記の問題および制限は本明細書中に開示された本発明を実施することにより克服され得るということを、本発明人は、予期せぬことにそして意外にも、発見した。本発明は、骨髄付着幹細胞(MASC)の神経膠トランス分化に関連するMASC中の細胞経路を調節することによりMASCからのCPCの産生を取り扱う。本発明の製造および使用方法が本明細書中で開示される。
【0010】
本明細書中で引用される参考文献はすべて、個々の出版物または特許または特許出願の各々が特定的におよび個別に全目的のためにその記載内容中の参考文献によりこれらの記載内容が各々、参照により本明細書中で援用されるよう示されたのと同程度に、それらの記載内容が参照によりならびに全目的のために本明細書中で援用される。本明細書中での参考文献の考察は、それらの著者等によりなされる主張を単に要約するよう意図するに過ぎず、任意の参考文献が従来技術を構成するということを認めるものではない。出願人等は、引用参考文献の正確性および関連性に異議申し立てをする権利を保有する。
【0011】
ニューロン始原細胞特質を示す細胞(「CPC」)は、本発明の目的のために、有糸分裂性であり、神経前駆細胞/神経始原細胞に特異的なネスチンおよびその他の細胞マーカーを発現し、そしてMASCから得られる細胞であると定義される。CPCは、ニューロン、神経膠および乏突起膠細胞ならびに前述のいずれかの前駆体に分化し得る。CPCは、本明細書中に開示される方法に従って、MASCから得られる。一実施形態では、ヒトCPCはEfnB2+、CD90‐およびPDGF受容体ベータである。これらのマーカーは、本発明によるMASCの神経膠トランス分化後にFACSを用いてMASCからCPCを分離するために用いられ得る。CPCの適切な取扱い方法は慣用的に既知であり、例としては公開済み米国特許出願第20020012903号(Goldman等)に開示された方法が挙げられる。
【0012】
一般に本発明によるCPCは、MASCの神経膠トランス分化に関連するMASC中の細胞経路を調節することにより産生され、細胞経路はCPCにトランス分化するためにMASCの少なくとも一部を誘導するよう十分に調節される。
【0013】
広範な種々の調節方法は、本発明の実施において有用であり得る。これらの例としては、ex-vivoで増殖される場合、細胞が増殖される培地および条件の修正;in vivoで増殖される場合、MASCが存在する組織環境の修正;あるいは神経膠調節剤を伴うMASCのインキュベーションが挙げられるが、これらに限定されない。MASCの神経膠トランス分化が有効に調節され、したがってCPCへのMASCの分化を可能にする限り、調節の的確な方法は本発明の目的のために問題ではない。一般にMASCの神経膠トランス分化に関連するMASC中の細胞経路の調節は、有糸分裂性および生育可能状態で任意のMASCまたはCPCを保持するのに適している条件下で起こる。このような条件は当業者に既知であり、例えばM. Kallos et al., Large-scale expansion of mammalian neural stem cells: a review. Med Boil Eng Comput. 2003 May; 41 (3): 271-82に見出され得る。適切な条件および技法は、細胞培養およびin vivo環境の両方に関して文献中の他の箇所でも見出され得る。
【0014】
本発明の好ましい実施形態では、MASCの神経膠トランス分化に関連するMASC中の細胞経路の調節は、神経膠調節剤とともにMASCをインキュベートすることにより成し遂げられ得る。さらに好ましい実施形態では、MASCの神経膠トランス分化に関連するMASC中の細胞経路の調節は、CPCにトランス分化するようMASCの少なくとも一部を誘導するのに十分な量の神経膠調節剤とともにMASCをインキュベートすることにより成し遂げられ得る。神経膠調節剤がMASC細胞表面受容体と相互作用するかまたはMASCの内部に輸送されて内部細胞経路と相互作用するという意図で、本発明の情況におけるインキュベーションは、神経膠調節剤の存在下でMASCを培養する。このような輸送は、受動的、例えば拡散輸送であるか、または能動的、例えば能動輸送体によるか、あるいは2つの混合物であり得る。in vitroインキュベーションは、慣用的方法により、例えば神経膠調節剤(単数または複数)を付加されるα‐MEMまたは類似の培地中のMASCの培養をインキュベートすることにより実施され得る。適切なインキュベーション技法は、一般に文献中に、例えばM. Kallos et al., Large-scale expansion of mammalian neural stem cells: a review. Med Boil Eng Comput. 2003 May; 41 (3): 271-82中に見出され得る。インキュベーションはin vivo環境においても起こり得るが、この場合、本発明による神経膠調節剤は全身的にまたは局所的に、そして慣用的方法を用いて投与され得る。
【0015】
インキュベーションの好ましい実施形態では、神経膠調節剤がタンパク質またはペプチドである場合、インキュベーションの方法は、そのタンパク質またはペプチドをコードするDNAのMASCへのトランスフェクションであり得る。トランスフェクションは、商業的に利用可能なトランスフェクションプロトコール、例えばリポフェクタミンTM2000系(Invitrogenから入手可能)またはエフェクテンTMトランスフェクション系(Qiagenから入手可能)、あるいはその他の慣用的トランスフェクションプロトコールを用いて実施され得る。インキュベーションの別の好ましい実施形態では、神経膠調節剤がタンパク質またはペプチドである場合、インキュベーション方法は、慣用的ウイルスベクター、例えば安定発現のためのレンチウイルスベクター系(BLOCK‐iTTMレンチウイルスRNAi発現系、Invitrogen)および一過性発現のためのアデノウイルスベクター系(BLOCK‐iTTMアデノウイルスRNAi発現系、Invitrogen)を用いた、神経膠調節剤のウイルス送達であり得る。
【0016】
インキュベーションは、種々の時点で、即ち逐次的に、平行してまたは種々の神経膠調節剤(単数または複数)を伴うMASCの逐次および平行インキュベーションの組合せで、起こり得る。
【0017】
本発明の実施形態では、MASCの神経膠トランス分化に関連するMASC中の細胞経路の調節がノッチ遺伝子の細胞内ドメインによるMASCのトランスフェクションを含まない、という但し書きが存在する。本発明の実施形態では、神経膠調節剤とともにMASCをインキュベートすることがノッチ遺伝子の細胞内ドメインによるMASCのトランスフェクションを含まない、という但し書きが存在する。
【0018】
骨髄付着幹細胞(MASC)は、本発明の目的のために、主に結合組織中に見出されるいくつかの種類の細胞、例えば骨芽細胞、脂肪細胞、軟骨細胞および筋細胞(これらに限定されない)に分化すると慣用的に認識されている幹細胞であると定義される。MASCは、胚性幹細胞および胎児幹細胞を特定的に除外する。MASCは、広範な種々の動物、例えばヒト、ならびにその他の哺乳類、例えばラット、マウス、霊長類、ブタ、ウシおよびヒツジ(これらに限定されない)から得られる。MASCは、種々の組織から得られる:好ましい供給源は、骨髄および臍帯血を包含する。MASCのための有用な供給源、ならびにそれらを得るための方法は、以下の実施例1に、そして本明細書中の他の箇所に記載されている。一実施形態では、本発明の実施において有用なヒトMASCはCD29およびCD90を発現するが、しかしCD15、CD34、CD11b/c、CD31、CD45およびフォン・ビレブランド因子に対しては陰性である。
【0019】
一実施形態では、MASCは、文献中に記載された技法を用いて臍帯血から単離され得る。例えばC. Campagnoli等(Identification of mesenchymal stem/progenitor cells in human first-trimester fetal blood, liver, and bone marrow. 1: Blood. 2001 Oct 15; 98 (8): 2396-402)は、胎児血液MASCを得るのに一般的に有用な方法を記載する。A. Erices等(Mesenchymal progenitor cells in human umbilical cord blood. 1: Br J Haematol. 2000 Apr; 109 (1): 235-42)においては、臍帯血からMASCを得るのに一般的に有用な方法が記載されている。L. Hou等(Induction of umbilical cord blood mesenchymal stem cells into neuron-like cells in vitro. Int J Hematol. 2003 Oct; 78 (3): 256-61)は、ヒト臍帯血MASCを採取し、精製し、そして増幅するのに一般的に有用な方法を記載する。
【0020】
神経膠調節剤は、本発明の目的のために、神経膠細胞へのMASCのトランス分化を抑制し、そして他の特性の中でも特にそれらのCPCへのトランス分化を促すという特性を保有する物質、と定義される。神経膠調節剤は、神経膠の運命とは別の方向にMASCを向けるための種々の異なるメカニズムにより作用し得る。例えば前神経塩基性へリックス・ループ・へリックス転写因子、例えばMash 1、Math 1およびニューロゲニン1は、ニューロン遺伝子発現の活性剤であると考えられる。
【0021】
前神経遺伝子は、神経膠トランス分化を抑制しながら、MASCのニューロン・トランス分化を推し進める、と考えられる。神経膠トランス分化が抑制され得る一メカニズムは、STAT媒介性シグナル伝達の調節によるものである。STATによるシグナル伝達は、ヤヌス・ファミリーのチロシンキナーゼ(JAK)により触媒されると考えられるリン酸化により誘発されると思われる。したがってJAK‐STATシグナル伝達の抑制は、神経膠トランス分化経路を調節し、MASCのニューロン運命を促進し得る。
【0022】
本発明による神経膠調節剤は、神経膠形成因子に関するシグナル伝達経路を妨害する阻害剤またはアンタゴニストまたは作用物質を含み得る。神経膠調節剤は、神経形成のためのアゴニスト、例えば神経形成因子も含み得る。これらのアゴニストまたは因子の使用は、本発明の実施においてMASCの神経膠形成を陰性制御し得る。本発明の実施による神経膠調節剤は、慣用的形態の治療用分子、例えば小分子、ペプチド、ならびに全部または一部の遺伝子産物(これらに限定されない)を含み得る。
【0023】
一実施形態では、本発明による神経膠調節剤としては、JAK/STAT阻害剤、例えばSTAT1およびSTAT3の阻害剤が挙げられるが、これらに限定されない。ある種の実施形態では、このようなJAK/STAT阻害剤は、JAK/STAT経路の遺伝子サイレンシングのためのRNAi、JAK/STAT経路を下向き調節するためのアンチセンスオリゴヌクレオチド、あるいは小分子JAK阻害剤4‐(4’‐ヒドロキシフェニル)アミノ‐6,7‐ジメトキシキナゾリンを含み得る。付加的JAK/STAT阻害剤は、米国特許出願第20040209799号(George Vasios、2004年10月21日公開);および米国特許出願第20040052762号(Hua Yu等、2004年3月18日公開)に開示されている。
【0024】
一実施形態では、本発明による神経膠調節剤としては、BMP2または7(骨形態形成タンパク質)のアンタゴニストが挙げられるが、これらに限定されない。このようなアンタゴニストは、ノギン、コルジン、フォリスタチン、ソニックヘッジホッグ(SHH)を発現する遺伝子からの全部または一部の遺伝子産物、あるいはこれらの遺伝子のアゴニストを含み得る。
【0025】
一実施形態では、本発明による神経膠調節剤としては、Hes阻害剤、例えばHes 1および/またはHes 5阻害剤(これらに限定されない)が挙げられる。ある種の実施形態では、このようなHes阻害剤は、Hesの遺伝子サイレンシングに関するRNAi、あるいはHesを下向き調節するためのアンチセンスオリゴヌクレオチドを含み得る。
【0026】
一実施形態では、本発明による神経膠調節剤としては、Id‐1の阻害剤が挙げられるが、これに限定されない(S. Tzeng et al., Id1, Id2, and Id3 gene expression in neural cells during development. Glia. 1998 Dec; 24(4): 372-81参照)。ある種の実施形態では、このようなId‐1阻害剤は、Id‐1の遺伝子サイレンシングのためのRNAi、あるいはId‐1を下向き調節するためのアンチセンスオリゴヌクレオチドを含み得る。
【0027】
一実施形態では、本発明による神経膠調節剤としては、ショウジョウバエglide/gcm(神経膠細胞喪失)の哺乳類相同体、例えばGcm1(ネズミ)またはGCMB(ヒト)(これらに限定されない)の阻害剤が挙げられるが、これらに限定されない(Y. Iwasaki et al., The potential to induce glial differentiation is conserve between Drosophila and mammalian glial cells missing genes. Development. 2003 Dec; 130 (24): 6027-35. Epub 2003 Oct 22およびM. Kammerer et al., GCMB, a second human homolog of the fly glide/gcm gene. Cytogene Cell Genet. 1999; 84 (1-2): 43-7参照)。ある種の実施形態では、このようなglide/gcm相同体阻害剤は、glide/gcm相同体(例えばGcm1(ネズミ)またはGCMB(ヒト))の遺伝子サイレンシングのためのRNAi、あるいはglide/gcm相同体(例えばGcm1(ネズミ)またはGCMB(ヒト))を下向き調節するためのアンチセンスオリゴヌクレオチドを含み得る。
【0028】
一実施形態では、本発明による神経膠調節剤としては、乏突起膠細胞系列のための転写因子であり得るSox9の阻害剤が挙げられるが、これらに限定されない(C. Stolt et al., The Sox9 transcription factor determines glial fate choice in the developing spinal cord. Genes Dev. 2003 Jul 1; 17 (13): 1677-89参照)。ある種の実施形態では、このようなSox9阻害剤は、Sox9の遺伝子サイレンシングのためのRNAi、あるいはSox9を下向き調節するためのアンチセンスオリゴヌクレオチドを含み得る。
【0029】
一実施形態では、本発明による神経膠調節剤としては、神経膠形成のための転写因子であり得るニューロゲニン3の阻害剤が挙げられるが、これらに限定されない。ある種の実施形態では、このようなニューロゲニン3阻害剤は、ニューロゲニン3の遺伝子サイレンシングのためのRNAi、あるいはニューロゲニン3を下向き調節するためのアンチセンスオリゴヌクレオチドを含み得る。
【0030】
一実施形態では、本発明による神経膠調節剤としては、毛様体神経栄養因子(CNTF)の阻害剤が挙げられるが、これらに限定されない。ある種の実施形態では、このようなCNTF阻害剤は、CNTFの遺伝子サイレンシングのためのRNAi、あるいはCNTFを下向き調節するためのアンチセンスオリゴヌクレオチドを含み得る。
【0031】
ある種の実施形態では、神経膠調節剤は、神経膠形成を強力に抑制するWnt1を発現する遺伝子からの全部または一部の遺伝子産物を含み得る(K. Tang et al., Wnt-1 promotes neuronal differentiation and inhibits gliogenesis in P19 cells. Biochem Biophys Res Commun. 2002 Apr 26; 293 (1): 167-73参照)。Wnt1を発現する遺伝子からの全部または一部の遺伝子産物は、トランスフェクションあるいはその他の慣用的方法により、例えばウイルスベクターを含めた遺伝子療法により投与され得る。
【0032】
ある種の実施形態では、神経膠調節剤は、神経形成中に構成的役割を演じるか、あるいはCPCを増殖するに際して発現される神経塩基性へリックス・ループ・へリックス(bHLH)因子を発現する遺伝子からの全部または一部の遺伝子産物を含み得る。このような神経膠調節剤は、ニューロゲニン1、Mash1、Math1、Math6またはニューロDを発現する遺伝子からの全部または一部の遺伝子産物を含み得る。ニューロゲニン1、Mash1、Math1、Math6またはニューロD(これらに限定されない)を含めた神経塩基性へリックス・ループ・へリックス(bHLH)因子のサブセットを発現する遺伝子からの全部または一部の遺伝子産物は、トランスフェクションあるいはその他の慣用的方法により、例えばウイルスベクターを含めた遺伝子療法により投与され得る。
【0033】
さらに神経膠調節剤は、単一でまたは組合せて投与され得る。好ましい実施形態では、神経膠調節剤の組合せが本発明の実施において用いられる場合には、異なる神経膠調節経路に作用する神経膠調節剤が選択され得る。これは、神経膠調節剤の全体的神経膠調節作用を増強するのに役立ち得る。
【0034】
本発明の目的のために、CPCを単離することは、CPCにトランス分化しなかったMASCのような試料中の非CPC細胞からCPCを単離することを包含する。このような単離は、1回単離または多数回単離を含み得る。多数回単離が実施されるべきものである場合、異なる種類または技法の単離が好ましくは用いられ得るが、これはこのような異なる種類または技法の単離が単離結果を増強し得るからである。広範な種々の単離方法は、本発明の実行において有用である。このような単離方法の例としては、フローサイトメトリー(akaFACS分類)、磁気分離技法および視覚的分類が挙げられるが、これらに限定されない。免疫細胞化学も、例えば細胞成育可能性が重要でない場合に用いられ得る。
【0035】
FACS分類は、CPCの1つまたは複数の特性に関連するエピトープに特異的である抗体を用いる慣用的FACS装置およびプロトコールを用いて実施され得る。このような一エピトープは、ヒトCPCの場合はEfnB2であり得る(N. Ivanova et al., A stem cell molecular signature. Science 298 (5593): 601-4 (Oct 18, 2002))。本発明の実行(必ずしもFACS分類のためではないが)に付加的に有用な抗体は、抗CD15、抗CD29、抗CD34、抗CD90、抗CD31、抗CD45、抗CD11b/cおよび抗フォン・ビレブランド因子を含む。本発明の実行に有用な細胞集団FACS装置としては、CellQuestTMソフトウエア(Becton Dickinson, Franklin Lakes, NJ)を用いたFACScaliburTM分析機、あるいはGuava Technologies(Hayward, California)から入手可能なFACS装置が挙げられるが、これらに限定されない。
【0036】
あるいは単離は、磁気分離技法、例えばQiagenからのキット形態で利用可能であるBioMagTMプロトコールおよび試薬を用いて、実施され得る。免疫細胞化学は、本発明の実行に有用な別の分離技法である;有用な免疫細胞化学的方法は、M. Dezawa et al., Sciatic nerve regeneration in rats induced by transplantation of in vitro differentiated bone-marrow stromal cells. Eur. J. Neurosci. 14, 1771-1776 (2001)に記載されている。免疫細胞化学的検査は、例えばRadians 2000(Bio-Rad, Hertfordshire, UK)のような共焦点レーザー走査顕微鏡下でなされ得る。慣用的視覚的細胞分類技法は、本発明の実行に用いられ得る。
【0037】
ニューロンは、本発明の目的のために、1つまたは複数の樹状突起および単一軸索を有する有核細胞体からなる脳、脊柱および神経を構成するインパルス伝達細胞のいずれかである、と定義される。生化学的にはニューロンは、神経細繊維‐M、ベータ3‐チューブリンおよびTuJ‐1に対する抗体との反応により特性化される。これらの反応は、FACS分類のような技法を用いて、ニューロン、あるいはニューロンの1つまたは複数の特性を示す細胞を単離するために用いられ得る。神経細胞は、神経伝達物質、神経伝達物質合成酵素または神経伝達物質関連タンパク質、例えば神経ペプチドYおよびサブスタンスPを分泌することによっても特性化される。
【0038】
神経栄養因子作用物質は、本発明の目的のために、他の特性の中でも特に、ニューロン、あるいはニューロンの1つまたは複数の特性を示す細胞へのCPCの分化を引き起こすかまたは促進するという特性を保有する。本発明の実行に有用な神経栄養因子作用物質は、塩基性繊維芽細胞増殖因子(bFGF)、毛様体神経栄養因子(CNTF)およびフォルスコリン(FSK)を含むが、これらに限定されない。神経栄養因子作用物質は、当該技術分野で既知の細胞取扱い技法を用いて本発明のCPCと併合され得る。好ましい方法は、PCT/JP03/01260(Dezawa等)中に一般に見出され得る。好ましい実施形態では、bFGF、CNTFおよびFSKは、ニューロンあるいはニューロンの1つまたは複数の特性を示す細胞へのCPCの分化を引き起こすかまたは促すのに有効な量で、細胞培養中でCPCと併合される。
【0039】
神経膠細胞は、本発明の目的のために、中枢神経系の組織を支持する分枝化細胞および繊維の網目構造を作り上げる細胞のいずれかである、と定義される。神経膠細胞としては、星状細胞、シュワン細胞、乏突起膠細胞および小神経膠細胞が挙げられるが、これらに限定されない。
【0040】
遺伝子は、本発明の目的のために、一組の結合転写物と定義されるが、この場合、転写物は転写と(任意に)その後の前mRNAスプライシングにより産生される一組のエキソンである。遺伝子産物は、本発明の目的のために、遺伝子から翻訳されるタンパク質であると定義される。遺伝子の部分は、本発明の目的のために、遺伝子の一サブセットであると定義される。遺伝子産物の部分は、本発明の目的のために、遺伝子産物の一サブセットであると定義される。
【0041】
患者は、医学的観察または研究の被験者である動物、典型的には哺乳類、さらに典型的にはヒトを意味する。
【0042】
本発明に従って産生されるCPCは、種々の方法により、例えば注射カニューレ、針またはシャントにより、あるいはキャリヤー内の埋め込み、例えば生分解性カプセルにより(これらに限定されない)患者に投与され得るが、しかし他の投与経路も本発明の範囲内である。本発明の投与経路は、局所および全身経路を包含する。局所投与としては、好ましくはCNSまたはPNSの標的化部分への投与が、そして好ましくは実質組織内経路が挙げられる。全身投与経路は、非経口経路を含み、静脈内(i.v.)または動脈内(例えば内頚動脈または外頚動脈を通しての)投与が全身投与の好ましい経路である。全身投与技法は、一般的には前駆細胞を投与するために用いられる技法、例えばD Lu et al., Intraarterial administration of stromal cells in a rat model of traumatic brain injury. J Neurotrauma. 2001 Aug; 18 (8): 813-9に開示された技法から適合され得る。
【0043】
患者に投与されるCPCの量は、慣用的用量変動技法ならびに特定患者の疾患の臨床的査定を用いて臨床的に確定され得る。
【0044】
本発明は、本発明の個々の態様の単独例証として意図される本出願に記載された特定の実施形態に関して限定されるべきものでない。当業者に明らかであるように、その本質および範囲を逸脱しない限り、本発明の多数の修正および変更がなされ得る。本発明の範囲内の機能的に等価の方法は、本明細書中に列挙されたもののほかに、前記の説明から当業者に明らかになる。このような修正および変更は、添付の特許請求の範囲内に入るよう意図される。このような特許請求の範囲が権利を授与される等価物の全範囲とともに、添付の特許請求の範囲の条項によってのみ、本発明は限定されるべきである。
【0045】
下記の実施例は例証的であるよう意図され、いかなる点でも本発明の範囲を限定するものではない。
【実施例】
【0046】
実施例
材料および方法
MASC
M. Dezawa et al., Sciatic nerve regeneration in rats induced by transplantation of in vitro differentiated bone-marrow stromal cells. Eur. J. Neurosci. 14, 1771-1776 (2001)に記載されているように、ラットMASC(ウィスター系)を単離し、培養する。ヒトMASCに関する場合と同様に、市販MASC(PT‐2501、BioWhittaker. Walkersville, MD)および健常ドナーから得られるMASCを用いる。10%ウシ胎仔血清(FBS)を含有するα‐MEM(Sigma、M‐4526)中に、細胞を保持し得る。
【0047】
健常ドナーからMASCを得る場合、第一段階は、慣用的吸引技法を用いて健常ドナーから骨髄吸引液を得ることである。次に細胞吸引液は、50 ml試験管中に移される。次に10 mlピペットを用いて、13 ml Histopaqueを注意深く下に敷く。次に試験管を@2000 rpmで20分間遠心分離する。次に中間期の細胞を収穫する。次にPBSを付加し(中間期の容積の少なくとも3倍)、混合物を@1200 rpmで遠心分離する。細胞をPBSで2回以上洗浄する。次に細胞ペレットをDMEM+10%FCS中に再懸濁し、細胞を計数する。5×106個の細胞をT‐75組織培養フラスコ当たりで再プレート化し、3日間インキュベートする。4日目に、非付着細胞を除去し、フラスコを培地で3回洗浄する。付着細胞をフラスコ中で増殖させる。細胞が集密度20〜30%に達したら、2〜3本のフラスコの内容物をプールし、1つのT‐75フラスコ中で再プレート化する。プールされたこの中の細胞が集密に達したら、0.05%トリプシンおよび0.02%EDTAを用いて細胞をトリプシン処理する。次に細胞を洗浄し、計数する。次に細胞をSigmaアルファMEM+10%FBS(M‐4526)中に再懸濁する。リポフェクチンが用いられるべき実験では、培地はI‐gluを含有しない、ということを保証することが重要である。グルタミンを付加しない。細胞を2〜4週間増幅して、早期継代で凍結する。
【0048】
蛍光活性化細胞分析(FACS)を用いて、ラットおよびヒトMASCにおける細胞表面マーカーを分析する。一実施形態では、MASCは、M. Pittenger et al., Multilineage potential of adult human mesenchymal stem cells. Science 284, 143-147 (1999)およびJ. Kohyama et al., Brain from bone: efficient “meta-differentiation” of marrow stroma-derived mature osteoblasts to neurons with Noggin or a demethylating agent. Differentiation 68, 235-244 (2001)と一致して、CD29およびCD90を発現するが、しかしCD34、CD31、CD45、CD11b/cおよびフォン・ビレブランド因子に対しては陰性である(図1A)。免疫細胞化学により、同一結果が得られる。M. Pittenger et al., Multilineage potential of adult human mesenchymal stem cells. Science 284, 143-147により記載された方法に従って、ラットおよびヒトMASCの脂肪原性、軟骨原性および骨原性分化を確証する。
【0049】
FACS分析
最終濃度1×107個/mlの最終濃度の細胞を、リン酸塩緩衝生理食塩水(PBS)中の1 mgのモノクローナル抗体とともにインキュベートする。非特異的抗体結合を防止するために、10 mgのマウス免疫グロブリンの存在下でインキュベーションを実施し得る。ラットMASCでは、マウス抗CD34(Santa Cruz Antibodies)およびハムスター抗CD29(PharMingen, San Diego, CA)をFITCで標識し、対照をFITC標識抗マウスまたはハムスターIgGとともにインキュベートし得る。マウス抗CD54およびCD11b/cはすべて、PharMingenから購入し得る。本発明の実行に際して必要とされるマウス抗フォン・ビレブランド因子およびその他の抗体は、商業的に入手可能であり得る。対照としては、何れかの非免疫マウス血清で染色される細胞が挙げられ得る。これらの抗体がFITCと接合される場合、細胞はその後、1 mgのFITC接合抗マウスIgGとともにインキュベートされ得る。ヒトMASCでは、フィコエリトリン標識マウス抗CD34、CD29、CD54、CD11b/cおよびフォン・ビレブランド因子を用い得るし、対照としては、フィコエリトリン標識抗マウスIgGで染色される細胞が挙げられ得る。CellQuestソフトウエア(Becton Dickinson, Franklin Lakes, NJ)を用いてFACScaliburで、データを獲得し、分析し得る。
【0050】
免疫細胞化学
一般的手法は、M. Dezawa et al., Sciatic nerve regeneration in rats induced by transplantation of in vitro differentiated bone-marrow stromal cells. Eur. J. Neurosci. 14, 1771-1776 (2001)に記載されている。リン酸塩緩衝生理食塩水(PBS)中の4%パラホルムアルデヒドで細胞を固定後、それらを4℃で一晩、第一抗体とともにインキュベートする。ネスチンに対する抗体は、PharMingenから購入し得る。次に細胞を、Alexa Fluor488または546接合抗マウスIgG、IgMまたはウサギIgGに対する第二抗体(Molecular Probes, Eugene, OR)とともに室温で1時間インキュベートし、TOTO‐3ヨウ化物(Molecular Probes)対比染色を実施し得る。共焦点レーザー走査顕微鏡(Radians 2000, Bio-Rad, Hertfordshire, UK)下で,検査をなし得る。
【0051】
実施例1:
一般的にE. Sudbeck et al., Structure-based design of specific inhibitors of Janus kinase 3 as apoptosis-inducing antileukemic agents. Clin. Cancer Res. 5, 1569-1582 (1999)に従って、ヒトMASC(PT‐2501、BioWhittaker. Walkersville, MD)を、10%FBSを含有するα‐MEM中で増殖させた。MASCを、40 ug/mlの4‐(4’‐ヒドロキシフェニル)アミノ‐6,7‐ジメトキシキナゾリン(WHI‐131、Calbiochem, San Diego, CA)とともに2日間インキュベートした。2日後に、WHI‐131を洗い落とした。
【0052】
実施例2:
材料および方法の節に従って調製したヒトMASCを、一般的にE. Sudbeck et al., Structure-based design of specific inhibitors of Janus kinase 3 as apoptosis-inducing antileukemic agents. Clin. Cancer Res. 5, 1569-1582 (1999)に従って、10%FBSを含有するα‐MEM中で増殖させる。一旦培養が集密度90%に達したら、BLOCK‐iTTMRNAiデザイナー(Invitrogen)を用いて設計されるいくつかのRNAを、Invitrogenから利用可能なBLOCK‐iTTMを用いて、Sox9発現をサイレンシングするのに十分な時間、培養とともにインキュベートする。その結果生じるCPCを、適切な抗体、例えば抗EfnB2(CPCに関して陽性選択)、抗CD90(CPCに関して陰性選択)および抗PDGF受容体ベータ(CPCに関して陰性選択)で被覆された磁気ビーズを用いて、逐次選択により、非トランス分化化MASCから単離する。抗体および被覆ビーズは、商業的供給元から入手し得る。PBS中の細胞を、被覆ビーズとともに@室温で1時間インキュベートする。細胞結合ビーズを、磁気を用いて除去する。CPCを抗体なしで洗浄し、10%FBSを含有するα‐MEM中に再懸濁して、増殖させる。
【0053】
実施例3:
材料および方法の節に従って調製したヒトMASCを、一般的にE. Sudbeck et al., Structure-based design of specific inhibitors of Janus kinase 3 as apoptosis-inducing antileukemic agents. Clin. Cancer Res. 5, 1569-1582 (1999)に従って、10%FBSを含有するα‐MEM中で増殖させる。H. Moulton et al., Peptide-assisted delivery of steric-blocking antisense oligomers. Curr Opin Mol Ther. 2003 Apr; 5(2): 123-32;C. Stein et al., Antisense oligonucleotides as therapeutic agents−is the bullet really magical? Science. 1993 Aug 20; 261(5124): 1004-12またはC. Helene, The anti-gene strategy: control of gene expression by triplex-forming-oligonucleotides. Anticancer Drug Des. 1991 Dec; 6(6): 569-84のいずれか一つに開示された技法に従って、Hes 1に対するアンチセンスオリゴマーを生成する。一旦MASC培養が集密度90%に達したら、本実施例中に引用した3つの参考文献のいずれかに開示された技法に従って、Hes‐1発現を下向き調節するのに十分な期間、MASCとともにHes‐1アンチセンスオリゴマーをインキュベートする。その結果生じるCPCを、適切な抗体、例えば抗EfnB2(CPCに関して陽性選択)、抗CD90(CPCに関して陰性選択)および抗PDGF受容体ベータ(CPCに関して陰性選択)で被覆された磁気ビーズを用いて、逐次選択により、非トランス分化化MASCから単離する。抗体および被覆ビーズは、商業的供給元から入手し得る。PBS中の細胞を、被覆ビーズとともに@室温で1時間インキュベートする。細胞結合ビーズを、磁気を用いて除去する。CPCを抗体なしで洗浄し、10%FBSを含有するα‐MEM中に再懸濁して、増殖させる。
【0054】
実施例4:
M. Sen et al., Regulation of fibronectin and metalloproteinase expression by Wnt signaling in rheumatoid arthritis synoviocytes. Arthritis Rheum. 2002 Nov; 46(11): 2867-77に従って、Wnt‐1発現プラスミドを生成する。材料および方法の節に従って調製したヒトMASCを、一般的にE. Sudbeck et al., Structure-based design of specific inhibitors of Janus kinase 3 as apoptosis-inducing antileukemic agents. Clin. Cancer Res. 5, 1569-1582 (1999)に従って、10%FBSを含有するα‐MEM中で増殖させる。一旦培養が集密度90%に達したら、リポフェクタミンTM2000試薬およびプロトコール(Invitrogenから入手可能)を用いて、37℃で5%CO2で2日間、Wnt‐1発現プラスミドとともにMASCをインキュベートする。2日間のインキュベーション後、10日間の期間中、慣用的選択技法を用いてトランスフェクト化細胞に関して、培養を選択する。その結果生じるCPCを、適切な抗体、例えば抗EfnB2(CPCに関して陽性選択)、抗CD90(CPCに関して陰性選択)および抗PDGF受容体ベータ(CPCに関して陰性選択)で被覆された磁気ビーズを用いて、逐次選択により、非トランス分化化MASCから単離する。抗体および被覆ビーズは、商業的供給元から入手し得る。PBS中の細胞を、被覆ビーズとともに@室温で1時間インキュベートする。細胞結合ビーズを、磁気を用いて除去する。CPCを抗体なしで洗浄し、10%FBSを含有するα‐MEM中に再懸濁して、増殖させる。
【0055】
実施例5:
実施例1に従って産生した細胞を、20%ウシ胎仔血清(14‐501F、ロット番号61-1012、BioWhittaker Co.)を含有する最小必須培地α‐イーグル変法溶液(M4526、Sigma Co.)中に入れた。5 μMのフォルスコリン(344273, Calbiochem, La Jolla, CA)、10 ng/mlの組換えヒト塩基性繊維芽細胞増殖因子(100‐18B、Peprotech EC, Ltd., London, UK)および10 ng/mlの毛様体神経栄養因子(557‐NT、R&D Systems, Minneapolis, MN)を付加した。培養を3日間増殖させて、この時点で、29.46+/−3.0%のMAP‐2ab陽性細胞の結果を用いて、ニューロンの1つ又は複数の特性を示す細胞を認識した。インキュベート細胞から調製した細胞溶解物、ならびに5%および10%SDS‐ポリアクリルアミドゲル上で電気泳動処理した溶解物タンパク質50 ugとともに、ウエスタンブロッティングを用いて、MAP‐2abを分析した。アルカリ性ホスファターゼを用いて、MAP‐2(1:500, Chemicon)に対する抗原を検出した。
【0056】
実施例6:
実施例5のニューロンの1つ又は複数の特性を示す細胞を収穫し、一般的にE. Sudbeck et al., Structure-based design of specific inhibitors of Janus kinase 3 as apoptosis-inducing antileukemic agents. Clin. Cancer Res. 5, 1569-1582 (1999)に従って、10%FBSを含有するα‐MEM中の培養中で集密度90%に増殖させる。次に5 mMのフォルスコリン(344273, Calbiochem)、10 ng/mlの塩基性繊維芽細胞増殖因子(100‐18B、Peprotech EC, Ltd.)および50 ng/mlの毛様体神経栄養因子(557‐NT、R&D Systems)を細胞培養に付加する。
【0057】
神経栄養性作用物質の存在下で細胞を10日間増殖させて、次に神経細胞の特徴的形態学に関して、ならびにMAP‐2(MAB364、Chemicon)、神経細繊維(814342、Boehringer Manheim)およびネスチン(BMS4353、Bioproducts)に対する抗体に関する陽性反応に関して、分析する。
【0058】
参考文献
【化1】

【0059】
【化2】

【0060】
【化3】

【0061】
【化4】

【0062】
【化5】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
中枢又は抹消神経系の疾患の治療のための細胞をインビトロで生産する方法であって、該細胞は、以下のステップ:
培養中の骨髄付着幹細胞(MASCs)を、JAK/STATシグナル伝達の阻害剤とともにインキュベートする、ここで、該MASCsは、ノッチ細胞内ドメインをコードするポリヌクレオチドでトランスフェクションされていない、
により得られる前記方法。
【請求項2】
前記骨髄付着幹細胞が、ヒト骨髄付着幹細胞、ラット骨髄付着幹細胞、マウス骨髄付着幹細胞、霊長類骨髄付着幹細胞、ブタ骨髄付着幹細胞、ウシ骨髄付着幹細胞、及びヒツジ骨髄付着幹細胞からなる群から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記骨髄付着幹細胞が、ヒト骨髄付着幹細胞である、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記JAK/STATシグナル伝達の阻害剤は、STAT1又はSTAT3の阻害剤を含む、請求項1〜3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
前記JAK/STAT阻害剤はポリペプチドである、請求項1〜4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
前記インキュベーションは、前記JAK/STAT阻害剤をコードするポリヌクレオチドで前記MASCsをトランスフェクションすることを含む、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記JAK/STAT阻害剤は、4−(4’−ヒドロキシフェニル)アミノ−6,7−ジメトキシキナゾリンである、請求項1〜4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
前記MASCsが、骨髄から得られる、請求項1〜7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
前記MASCsが、臍帯血から得られる、請求項1〜7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
前記培養物から、以下の:
(i)有糸分裂性であり、
(ii)EfnB2を発現し、
(iii)ネスチンを発現し、そして
(iv)PDGF受容体ベータを発現しない、
である1以上の細胞を、単離するステップをさらに含む、請求項1〜9のいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
以下の:
(i)有糸分裂性であり、
(ii)EfnB2を発現し、
(iii)ネスチンを発現し、そして
(iv)PDGF受容体ベータを発現しない、
である、請求項1〜10のいずれか1項に記載の方法により得られた単離細胞。
【請求項12】
骨髄付着幹細胞の子孫である単離細胞集団であって、該集団は、以下の:
(i)有糸分裂性であり、
(ii)EfnB2を発現し、
(iii)ネスチンを発現し、そして
(iv)PDGF受容体ベータを発現しない、
である複数の細胞を含み、そしてさらに、該骨髄付着幹細胞は、ノッチ細胞内ドメインをコードするポリヌクレオチドでトランスフェクションされていない、前記単離細胞集団。
【請求項13】
請求項11に記載の1以上の細胞又は請求項12に記載の細胞集団を含む、中枢神経系の疾患又は末梢神経系の疾患の治療用医薬組成物。

【公開番号】特開2012−130348(P2012−130348A)
【公開日】平成24年7月12日(2012.7.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−37551(P2012−37551)
【出願日】平成24年2月23日(2012.2.23)
【分割の表示】特願2007−507475(P2007−507475)の分割
【原出願日】平成17年4月7日(2005.4.7)
【出願人】(503235673)サンバイオ,インコーポレイティド (4)
【Fターム(参考)】