説明

ニードルパンチ機

【課題】ニードルパンチ機について、そのパンチ針の針板への衝突を確実に防止する。
【解決手段】針棒22下降時にパンチ針22cのすべてが挿通する大きな1つの針孔11aを針板11に設ける。針孔11aのパンチ針22cが多少針振れしてもこの針孔11a内に収まり、針板11に衝突することが防止される。また、針板11の下方から針孔11a上に筒形の支持体12を延出する。繊維集積体はパンチ針22cの挿抜時に、支持体12に支持されて針孔11a内に落ち込むことが防止され、ニードルパンチ作業が精度よく円滑になされる。支持体12は筒形なので針棒22下降時にこの筒内に挿通するパンチ針22cを増設することができるので、繊維の絡ませ合いの効率が向上する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、布地、フェルト材などの繊維集積体を重ね合わせ、これにパンチ針を挿抜することで繊維集積体同士を絡み合わせて固着させるニードルパンチ機に関する。
【背景技術】
【0002】
モータの駆動によって昇降動される針棒の下端に針留を取付け、その針留の下面に固定された複数のパンチ針を、針板上に重ね合わせられた布地やフェルト材などの繊維集積体に挿抜させ、各パンチ針に形成されたバーブに繊維を引っ掛けることで、繊維集積体同士を絡ませ合って固着できるようにしたニードルパンチ機が知られている(特許文献1参照)。
【0003】
このような従来のニードルパンチ機においては、針棒の下降時に重ね合わせられた繊維集積体を突き抜けたパンチ針が針板と干渉しないように、各パンチ針の下降位置に合致するように針板に複数の小さな針孔が設けられている。
【0004】
しかし、このように各パンチ針に対応して針板に小さな針孔を設ける構成では、パンチ針が針振れ等して位置が少しでもずれると、その下降時に針板に衝突してしまい、パンチ針が折損してしまう恐れがあり、改善の余地が残されていた。
【特許文献1】特開2007−131975号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
そこで、この発明の解決すべき課題は、ニードルパンチ機について、そのパンチ針の針板への衝突を確実に防止することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記した課題を解決するため、昇降動可能な針棒と、この針棒の下端に取り付けられた針留めと、この針留めの下面に固定され、繊維を引っ掛けるためのバーブが形成された複数のパンチ針と、前記針棒の下方に配置され、前記パンチ針の挿抜により互いの繊維が絡み合うように重ね合わせられた2以上の繊維集積体を載置するための針板と、を備えるニードルパンチ機において、前記針板が、前記針棒の下降時に前記針留めに固定された複数のパンチ針のすべてが挿入される1の針孔をさらに備える構成を採用したのである。
【0007】
針板に針棒の下降時に複数のパンチ針のすべてが挿入される1の大きな針孔を設けたため、パンチ針が多少針振れ等してずれ動いてもこの針孔内に収まり、針板に衝突することが防止される。
【0008】
この場合において、前記針板の下方から前記針孔上に前記パンチ針と干渉しないように延出し、針板に載置された繊維集積体の針孔上部分を針板の板面と同一平面上に支持する繊維集積体の支持体、をさらに備えるようにするのが好ましい。
このようにすると、繊維集積体に対するパンチ針の挿抜時に、繊維集積体が針孔内に落ち込むことが防止され、ニードルパンチ作業が精度よく円滑になされる。
【0009】
前記繊維集積体の支持体を筒体とすると、支持体が中実の場合と比較して、針棒下降時にこの筒体内に挿入されるパンチ針をさらに増設することできる。
そのため、繊維集積体が針孔内に落ち込むのを防止しつつ、パンチ針の数を増やすことで繊維の絡ませ合いの効率をさらに向上させることができる。
【発明の効果】
【0010】
針板に針棒の下降時に複数のパンチ針のすべてが挿入される1の大きな針孔を設けたため、パンチ針が多少針振れしてもこの針孔内に収まり、パンチ針の針板への衝突およびこれにともなう折損が防止される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
図1から図3に示すように、ニードルパンチ機1はベッド10およびアーム20を有し、そのアーム20のヘッド部内には、上下方向に延びるガイド21が図示省略のブラケットを介して固定されている。
このガイド21には、上下一対の筒形の支持片21a、21bが間隔をおいて設けられている。
上下方向に細長い針棒22は、この下支持片21aに挿通することでガイド21に支持されており、また針棒22の上下方向の中程には、一対のスラストカラー22aが間隔を置いてねじ止めされている。
【0012】
一方、アーム20内には図示省略のモータによって駆動される駆動軸23が、ベッド10の上面とほぼ平行をなすようにして設けられている。
また、この駆動軸23の先端には、クランク24が取り付けられ、クランク24のクランクピン24aにはコネクティングロッド25の一端が回転自在に連結されている。
このコネクティングロッド25の他端には、取り付け筒26のピン状の後端部26aが回転自在に連結されており、針棒22の上記一対のスラストカラー22a間の部分がこの取り付け筒26に挿通している。
すなわち、取り付け筒26は、スラストカラー22aに挟み込まれて、針棒22の上下にスライドできないようになっている。
【0013】
したがって、駆動軸23が回転すると、その回転運動がクランク24、コネクティングロッド25および取り付け筒26を介して針棒22の昇降運動に変換されるようになっている。
ここで針棒22が上昇したときは、その上端部がガイド21の上支持片21bに挿通することで、支持される。
ここで、針棒22は取り付け筒26に挿通しているだけであるから、その軸心周りに回転自在となっている。
【0014】
さらに、針棒22の下端部には針留22bがねじ止めされている。
針留22bの下面には、複数の針挿入孔が同心円上に等間隔に設けられている。
これに加えて、この同心円の円心上にも針挿入孔が設けられている。
そして、これら各針挿入孔には、図示省略のバーブが形成されたパンチ針22cの上部が挿し込まれてねじ止めされている。
【0015】
また、針棒22の下部はガイド21の下支持片21aの下面に固定された筒状の固定ねじ27に挿通されている。
この固定ねじ27は、その上部が大径の固定部27aとなっており、その下部が小径で外周にねじ山が形成されたねじ部27bとなっている。
この固定ねじ27のねじ部27bには、内周にねじ山が形成された筒状のロックねじ28がねじ合わせられており、針棒22はこのロックねじ28を挿通している。
さらにねじ部27bには、同じく内周にねじ山が設けられた筒状の可動ねじ29がねじ合わせられており、針棒22はこの可動ねじ29を挿通している。
したがって、可動ねじ29はねじ送りすることで、固定ねじ27およびガイド21に対して昇降動可能となっている。
同時にロックねじ28を昇降動させて可動ねじ29に対して締め付ける方向にねじ送りすることで、可動ねじ29を所定の昇降位置でロックできるようになっている。
また、可動ねじ29はその外周に全周に連続する取り付け溝29aを有している。
【0016】
一方、針棒22の下方には円板形の布押え板30が配置されており、この布押え板30の中心の円孔である挿通孔31には、パンチ針22cが挿通している。
また、布押え板30の周縁の等間隔を置いた3箇所から上方に向けてサイドカバー32が延びており、隣接するサイドカバー32の間隔は間からパンチ針22cを交換できる程度となって、針交換窓32bを構成している。
ここでサイドカバー32の上端には内向きのフランジ32aが形成され、このフランジ32aが可動ねじ29の取り付け溝29aにはまり込んでいる。
そのため、サイドカバー32および布押え板30は可動ねじ29に対して、その周方向に回転可能に支持されている。
そしてこの構成により、可動ねじ29の昇降動に連動して、布押え板30が昇降動可能となっている。
ここで、布押え板30とサイドカバー32は透明の合成樹脂を一体成型してなっており、透明のサイドカバー32を通じてパンチ針22c等の状態が視認できるようになっている。
【0017】
また、針棒22の真下であってベッド10の上面には針板11が固定されている。
この針板11には、針棒22の下降時にすべてのパンチ針22cが挿入される円孔としての針孔11aが設けられている。
この針孔11aは、その円心が針留め22b上に並列するパンチ針22cが描く同心円の円心と一致しており、さらにその径はパンチ針22cの同心円の径よりも若干大きくなっている。
【0018】
さらに、針孔11aの真下のベッド10の底面には、円筒形の支持体12が固定されている。
この支持体12は、その上端部が針板とほぼ同一平面となるように針孔11aの円心に向けて延びている。
そのため、針留め22b上の前記同心円の中心に取り付けられたパンチ針22cは、針棒22の下降時にこの支持体12の円筒内に挿入されるようになっている。
【0019】
実施形態のニードルパンチ機1は以上の構造からなる。
図4のように、使用の際には、針板11上にたとえば布地などの繊維集積体F1を載置し、その上にたとえばフェルト材などの他の繊維集積体F2を重ね合わせる(以下、それぞれ布地F1、フェルト材F2と略す。)。
この状態で、可動ねじ29をねじ送りして布押え板30を下降させ、重ね合わせた布地F1とフェルト材F2がずれ動かないように、布押え板30で上から押さえつける。
【0020】
次にモータを駆動させて針棒22を昇降動させ、重ね合わせた布地F1とフェルト材F2にパンチ針22cを挿抜させる。
図5のように、針棒22が下降すると、パンチ針22cはフェルト材F2の上からフェルト材F2、布地F1の順に突き抜けて針板11の針孔11aおよび支持体12に先端部が挿通する。
ついで針棒22が上昇すると、パンチ針22cは針板11の針孔11aおよび支持体12から抜け出て布地F1の下から布地F1、フェルト材F2の順に突き抜ける。
この動作が高スピードで連続的に繰り返される。
【0021】
このように、パンチ針22cを挿抜させることによってパンチ針22cのバーブにかかるフェルト材F2の繊維が、布地F1の上面側から内部を通り背面側に押し込まれることで布地F1の繊維に絡み合い、この絡み合いによってフェルト材F2は布地F1に固着される。
こうしてフェルト材F2の一部を布地F1に一旦固着し、ついで布地F1を送っていくと、パンチ針22cの挿抜により順次連続してフェルト材F2が布地F1に固着されてゆくことになる。
【0022】
ここで、布押え板30およびその昇降機構をなす、固定ねじ27、ロックねじ28、可動ねじ29は、針棒22の下部に一体的に配置されているため、作業の邪魔にならず、作業者はどの方向からも作業を円滑に行うことができ、布地F1をどの方向にもスムーズに送ることができる。
また、布押え板30およびサイドカバー32は透明の合成樹脂から形成されているため、サイドカバー32等を通じて作業状態を円滑に視認することができる。
さらに、パンチ針22cが折損したばあいにも、その破片はサイドカバー32に当たるため、破片が飛散することなく、作業者の安全性が確保されている。
さらに、布押え板30は回転可能であるため、布送り方向を切り替えた場合に布押え板30はその切り替え方向に沿って随時回転するため、布送り方向の切り替えがスムーズとなる。
【0023】
また、針棒22の下降時には、図6のように、すべてのパンチ針22cが針板11の一つの大きな針孔11aに挿通される。
そのため、パンチ針22cが多少針振れしても、針板11に衝突することはなく、パンチ針22cの折損が防止されている。
さらに、針孔11aの中心には、布地F1やフェルト材F2を針板11と同一平面上に支える支持体12が配置されているため、パンチ針22cの布地F1等への挿抜時に布地F1等が針孔11aからベッド10内に落ち込むことはなく、作業の精度がよい。
【0024】
さらに、針棒22がその軸心周りに回転するため、布地F1やフェルト材F2に対するパンチ針22cの挿抜箇所が不規則にずれるようになっている。
したがって、ニードルパンチが満遍なくなされ、布地F1とフェルト材F2を絡ませ合う効率が向上している。
【0025】
また、パンチ針22cを交換する際には、まず針棒22を手で回転操作することで、交換対象となるパンチ針22cを作業者の作業位置と正対する位置に持ってくる。
そしてサイドカバー32を可動ねじ29に対して回転操作することで、サイドカバー32間の針交換窓32bを作業者の作業位置に正対する位置に持ってくる。
このようにして、作業者が作業位置から移動することなく、針交換窓32bを通じて容易にパンチ針22cの交換作業を行うことができる。
【0026】
布押え板30の昇降機構は、実施形態に限定されず、ロックねじ28を省略してもよい。また、昇降機構として、たとえばラッチ送り機構等他の機構を用いてもよい。
また、サイドカバー32を可動ねじ29に対して、回転可能に取り付ける構成は、実施形態に限定されず、例えばサイドカバー32の内周に取り付け溝を形成し、可動ねじ29の外周にフランジを形成し、これらをはめ込むことによってもよい。
布押え板30の上面に筒状体を連設し、針棒22の下降時にはこの筒状体にパンチ針22cが収まるようにして、パンチ針22cの折損に伴う破片の飛散防止に十全を期してもよい。
【0027】
この実施形態では、針棒22をその軸心周りに自由回転可能に構成しているが、針棒22を軸心周りに強制的に回転させる回転駆動機構を別途設けてもよい。
針棒22を強制回転させると、布地F1等へのニードルパンチが一層満遍なくなされ、絡ませ合いの効率がさらに向上する。
【0028】
また、針棒22を昇降動させる機構に対して軸心周りに回転可能とする構成は、実施形態に限られず、たとえば針棒22の周方向に連続する凹条を設け、取り付け筒の内周に凸条を設け、これらをはめ込むことによってもよい。
【0029】
また、支持体12の形状はパンチ針22cと干渉しない限りにおいて限定されず、円柱体、角筒体、角柱体などとしてもよい。
また、針孔11aの形状もパンチ針22cと干渉しない限りにおいて限定されず、パンチ針22cの配置に適宜対応させて角孔等に変更してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】ニードルパンチ機の要部を示す側面断面図
【図2】ニードルパンチ機の正面断面図
【図3】ニードルパンチ機の針棒部の断面図
【図4】ニードルパンチ機の針棒が上昇した状態を示す要部側面図
【図5】ニードルパンチ機の針棒が下降した状態を示す要部側面図
【図6】ニードルパンチ機のベッドの上面図
【符号の説明】
【0031】
1 ニードルパンチ機
10 ベッド
11 針板
11a 針孔
12 支持体
20 アーム
21 ガイド
21a 上支持片
21b 下支持片
22 針棒
22a スラストカラー
22b 針留め
22c パンチ針
23 駆動軸
24 クランク
24a クランクピン
25 コネクティングロッド
26 取り付け筒
26a 後端部
27 固定ねじ
27a 固定部
27b ねじ部
28 ロックねじ
29 可動ねじ
29a 取り付け溝
30 布押え板
31 挿通孔
32 サイドカバー
32a フランジ
32b 針交換窓

【特許請求の範囲】
【請求項1】
昇降動可能な針棒と、
この針棒の下端に取り付けられた針留めと、
この針留めの下面に固定され、繊維を引っ掛けるためのバーブが形成された複数のパンチ針と、
前記針棒の下方に配置され、前記パンチ針の挿抜により互いの繊維が絡み合うように重ね合わせられた2以上の繊維集積体を載置するための針板と、を備えるニードルパンチ機において、
前記針板が、前記針棒の下降時に前記針留めに固定された複数のパンチ針のすべてが挿入される1の針孔をさらに備えることを特徴とするニードルパンチ機。
【請求項2】
前記針板の下方から前記針孔上に前記パンチ針と干渉しないように延出し、針板に載置された繊維集積体の針孔上部分を針板の板面と同一平面上に支持する繊維集積体の支持体、をさらに備える請求項1に記載のニードルパンチ機。
【請求項3】
前記繊維集積体の支持体は、筒体である請求項2に記載のニードルパンチ機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2009−150020(P2009−150020A)
【公開日】平成21年7月9日(2009.7.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−330206(P2007−330206)
【出願日】平成19年12月21日(2007.12.21)
【出願人】(501332633)株式会社タナカアンドカンパニーリミテッド (6)
【Fターム(参考)】