説明

ネギ属植物中におけるACSOsの測定方法

【課題】ネギ属植物中におけるACSOsの含有量を迅速且つ簡便に測定する方法を提供すること。
【解決手段】ネギ属植物中におけるACSOsの含有量を測定する方法であって、
(a)ネギ属植物を砕くことなくマイクロ波により加熱して該植物細胞内の酵素alliinaseを失活させる工程と、
(b)前記工程(a)で酵素alliinaseを失活させたネギ属植物を砕いて試料液を調製する工程と、
(c)前記工程(b)で得られた試料液を用いて、HPLC分析によりACSOsの含有量を測定する工程とを含むことを特徴とするネギ属植物中におけるACSOsの測定方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タマネギやネギ等のネギ属植物中におけるACSOsの含有量を測定する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
アリルシステインスルフォキシド(Alkyl cysteine sulfoxide)、アルケニルシステインスルフォキシド(Alkenyl cysteine sulfoxide)は、cysteineのイオウ原子に炭化水素鎖と酸素が結合したアミノ酸の一種であり、タマネギやネギ等のネギ属植物に多く含まれている化合物(ACSOs)として知られている。これらACSOsはネギ属植物の種によってその種類や組成比の異なることが知られており、その種類や組成比がネギ属植物の香りや味に影響を与えている。
【0003】
ネギ属植物は調理や加工等に伴う細胞破砕が起きると、酵素alliinaseによるACSOsの分解がトリガーとなって一連の反応が引き起こされ、その反応過程で生成される種々の物質が香りや味の質を特徴付けている。例えば、ニンニクには2−propenyl L−cysteine sulfoxide(alliin)が多量に含まれており、そのalliinase反応分解物が2分子結合して生成されるthiosulfinateの一種であるalicinはニンニク臭の本体であり、その生理活性についても多くの研究が行われている。また、タマネギにおける主要なACSOはtrans1−propenyl cysteine sulfoxide(PRENCSO)であり、この物質のalliinase反応分解物が催涙因子合成酵素(LFS)の働きを受け、催涙因子(LF)になることが報告されている(非特許文献1)。
【0004】
ネギ属植物の種によって異なる香りや味の特性を解明するために、そのネギ属植物の香りや味の質を特徴付けている物質の含有量を測定することが行われている。しかし、一連の反応過程で生成される物質の中には、不安定で、また機器分析によって捉え難いものも含まれているため、その測定が困難な場合がある。こうしたことから、一連の反応の出発物質である酵素alliinaseの活性の強さを測定することや(非特許文献2)、ACSOsの含有量を測定することも行われている。
【0005】
非特許文献3には、タマネギ中におけるACSOsの含有量を測定するに当たり、有機溶媒を用いてタマネギ組織からACSOsを抽出する方法が開示されている。具体的には、タマネギを−20℃下でメタノール:クロロホルム:水(12:5:3)の溶媒に一晩浸漬した後、更にメタノール:クロロホルム:水(12:5:3)の溶媒を交換して3〜4時間抽出し、その後、80%エタノールで2時間抽出する方法が記載されている。また、非特許文献4には、有機溶媒による抽出時にhydroxyamineを添加しておく方法、抽出に供するニンニクを予め液体窒素で凍結しておく方法が開示されている。
【非特許文献1】Nature vol.419 p.685 (2002)
【非特許文献2】J.Agric.Food Chem.Vol.50 p.2884−2890 (2002)
【非特許文献3】J.Amer.Soc.Hort.Sci.vol124(2) p.177−183 (1999)
【非特許文献4】Phytochemical analysis vol.4 p.4−9 (1994)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ネギ属植物中におけるACSOsの測定において、非特許文献3及び非特許文献4に開示される有機溶媒を用いてACSOsを抽出する方法は、ACSOsの抽出に一晩以上の長い時間が必要である。また、この方法では最終的なHPLC分析に当たり、挟雑物を除去するための前処理として、イオン交換樹脂への吸着、洗浄及び酸溶液での溶出工程を経る必要があった。したがって、非特許文献3及び非特許文献4に開示される有機溶媒を用いてACSOsを抽出する方法は、迅速性及び簡便性の点で課題がある。
【0007】
そこで、本発明の目的は、ネギ属植物中におけるACSOsの含有量を迅速且つ簡便に測定する方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
かかる技術的課題は、ネギ属植物中におけるACSOsの含有量を測定する方法であって、(a)ネギ属植物を砕くことなくマイクロ波により加熱して該植物細胞内の酵素alliinaseを失活させる工程と、(b)前記工程(a)で酵素alliinaseを失活させたネギ属植物を砕いて試料液を調製する工程と、(c)前記工程(b)で得られた試料液を用いて、HPLC分析によりACSOsの含有量を測定する工程とを含むことを特徴とするネギ属植物中におけるACSOsの測定方法により達成される。
【0009】
本発明の測定方法によれば、ネギ属植物を砕くことなく植物組織内で酵素alliinaseとACSOsとが別々の場所に存在し両者が出会う前の状態で、マイクロ波により加熱して酵素alliinaseを失活させ、その後、酵素alliinaseを失活させたネギ属植物を砕いて試料液を調製し、この試料液を用いてHPLC分析によりACSOsの含有量を測定することにより、ネギ属植物中におけるACSOsの含有量を迅速且つ簡便に測定することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明の測定方法が適用される「ネギ属植物」とは、分類学的にネギ属(Allium)に属する植物であり、その代表的な植物としては、タマネギ、ネギ、ラッキョウ、ニンニク、リーキ等が挙げられる。また、本発明において「ACSOs」とは、アリルシステインスルフォキシド(Alkyl cysteine sulfoxide)と、アルケニルシステインスルフォキシド(Alkenyl cysteine sulfoxide)との両方を包含する用語である。このACSOsの具体例としては、タマネギやネギ、ラッキョウ、ニンニク、リーキに含まれているtrans1−propenyl cysteine sulfoxide(PRENCSO)、ネギやラッキョウに含まれているMethy L−cysteine sulfoxide(MeCSO)、ニンニクに含まれている2−propenyl L−cysteine sulfoxide(alliin)等が挙げられる。
【0011】
本発明の測定方法は、
(a)ネギ属植物を砕くことなくマイクロ波により加熱して該植物細胞内の酵素alliinaseを失活させる工程と、
(b)前記工程(a)で酵素alliinaseを失活させたネギ属植物を砕いて試料液を調製する工程と、
(c)前記工程(b)で得られた試料液を用いて、HPLC分析によりACSOsの含有量を測定する工程とを含む。
【0012】
工程(a)では、具体的には、ネギ属植物を必要により剥皮し、適当な大きさに切るか又は切ることなく、電子レンジ等を用いてマイクロ波により加熱して該植物細胞内の酵素alliinaseを失活させる。これにより、酵素alliinaseよるACSOsの分解反応が進む前に、酵素alliinaseを短時間で失活させることができる。マイクロ波による加熱条件は、植物組織中のalliinaseが失活するのに十分な処理条件であればよいが、後述する実施例において、タマネギを用いたマイクロ波による加熱条件の設定例について詳述する。
【0013】
次に、工程(b)では、具体的には、ネギ属植物の植物組織が均一になるまで破砕し、遠心分離する等して試料液を調製する。ネギ属植物を破砕する方法としては、破砕する植物組織の大きさを基にして選択すればよい。ネギ属植物を破砕する方法として、具体的には、例えば、家庭用のミキサーを用いて破砕する方法、乳鉢と乳棒を用いて破砕する方法、エッペンドルフチューブに入れた組織片をマイクロ乳棒を用いて破砕する方法、QIAGEN社MM300等のビーズミルを用いて破砕する方法が挙げられる。
【0014】
工程(b)では、ネギ属植物に蒸留水を添加し、これを砕いて試料液を調製してもよい。これにより、ネギ属植物の破砕が容易になると共に、ACSOsの抽出効率を高めることができる。ここで、蒸留水の添加量としては、例えばネギ属植物と同重量を好適な量として挙げることができる。このようにして得られた試料液は、そのまま冷凍保存することが可能であり、多検体の分析を行うのに適しているという利点がある。
【0015】
工程(c)では、上述のようにして得られた試料液を前処理の必要なく、HPLC分析に供することができる。すなわち、本発明の測定方法においては、ACSOs分析の障害となる挟雑物を除去するための前処理を行う必要がなく、工程(b)で得られた試料液をそのままHPLC分析に供することができ作業工程が少なくてよいこともからも迅速且つ簡便であり、また前処理段階の各操作に起因する誤差を排除することができるという利点も有している。
【0016】
HPLC分析における移動相としては、酸性溶液(pH2〜6程度)を用いるのがよい。酸性溶液としては、酸性水だけであってもよいし、酸性水に有機溶媒(メタノール、アセトニトリル等)を加えたものであってもよく、酸性水と有機溶媒との体積比率が100対0〜70対30の酸性溶液を用いることができる。移動相として用いる酸性溶液を酸性に調整するには、例えばTFAを用いればよいが、TFAに限らずリン酸バッファー等の試薬を用いることもできる。
【0017】
工程(c)において、HPLC分析に用いるカラムとしては、上記移動相を用いたときに、ACSOsを分離できるのであれば如何なる樹脂が充填されたカラムでもよい。具体的には、Pegasil ODS (センシュウ科学)のようなODS樹脂の充填されたHPLCカラムやAquasil (センシュウ科学)のような水系シリカゲル樹脂の充填されたHPLCカラムが挙がられる。但し、MeCSOは側鎖が短いので、ODS樹脂への吸着が弱く、保持時間が短くなる。このため、測定したいACSOsの中にMeCSOが含まれている場合には、ODS樹脂よりも保持力の強い水系シリカゲル樹脂が充填されたHPLCカラムを用いるのが好ましい。
【0018】
HPLC分析における検出は、目的とするACSOsがピークとして検出されるのであれば如何なる紫外波長であってもよいが、検出波長は220nm〜230nmであるのがよい。より具体的には、検出波長の選択基準としては、例えば、PRENCSOだけを測定すればよい場合には230nmを用いるのがよく、MeCSOも測定対象である場合には検出波長を短く設定し、220nmを用いるとよい。さらに低波長側であっても測定可能ではあるが、より低波長になるにしたがって、ベースラインが安定するまでに時間がかかったり、炭水化物由来と推定される不要ピークが観察されやすくなり、それらのピークが分析結果に影響を与えやすくなる傾向があることに留意すべきである。
【実施例】
【0019】
1.MeCSOとPRENCSOの精製標品を用いたHPLC分析
(1)酸性水(pH 3.3 TFA sol.)の調製
蒸留水2リットルを密栓できる容器に注ぎ、アスピレーターを用いて脱気した。脱気した蒸留水2リットルにTFA(アミノ酸配列分析用特製試薬 ナカライテスク 34902−11 1mlアンプル×5本入り)1mlを加え、ストック溶液(TFA溶液(X10))とした。そのストック溶液を、脱気した蒸留水で10倍に希釈して、酸性水(pH 3.3 TFA sol.)を調製した。
【0020】
(2)HPLC分析
ラッキョウから精製したMeCSOと、タマネギから精製したPRENCSOの両方を含む試料溶液を調製した。HPLC用カラム(Aquasi 4.6mmφ×25cmセンシュー科学)をShimadzu 10−AD HPLC systemに接続し、酸性水(pH 3.3 TFA sol.)を移動相として、30分以上送液してベースラインを安定させてから、上記試料溶液1μl〜5μlをHPLCに注入した。尚、HPLC条件は、流速0.6ml/min、検出波長220nm、カラム温度35℃とした。
この結果、図1に示すHPLCチャートが得られた。MeCSOとPRENCSOの夫々を単独で含む試料溶液を注入した時の保持時間データと照らし合わせ、先に出てくるのがMeCSO(M)で、後に出てくるのがPRENCSO(P)と特定した。ここで、MeCSOとPRENCSOは、共に充分カラムに保持されており且つ両化合物の保持時間の差が約3minあることから、両化合物の一斉分析が可能であった。
【0021】
(3)定量性データ
ラッキョウから精製したMeCSOと、タマネギから精製したPRENCSOとを、2mg/ml、0.667mg/ml、0.222mg/ml、0.074mg/ml、0.025mg/ml含む溶液を調製し、前記(2)と同じ条件でHPLC分析を行った。それぞれの混合標品の分析結果(220nmでの検出ピーク面積)とそれぞれの化合物の量(μg)の関係を図2に示す。両化合物とも、回帰直線のR値が0.9999(PRENCSO)、1(MeCSO)という高い直線性を示し、定量性があった。上記濃度範囲は、タマネギのPRENCSO含量から見積もっており、実際のネギ属植物の分析時で得られるデータをカバーできると考えられる。
【0022】
2.タマネギ中のPRENCSO含有量の測定
市販のタマネギ1、2の茶色の皮を剥き、縦半分に切って重さを量った。半球をラップに包んで電子レンジ加熱した(650W×5分間)。家庭用電動ミキサーに加熱処理した半球を入れ、さらに、その半球と同重量の蒸留水を加えて10秒間破砕した。このタマネギ破砕液を10000rpm×10分、25℃の条件で遠心分離し、遠心上清を取り、その体積を記録した。遠心上清液を新しいエッペンドルフチューブに1ml量り取って、15000rpm×5minの遠心分離を行い、その遠心上清を試料液とした。得られた試料液を用い、HPLC用カラム(Pegasil ODS 4.6mmφ×25cmセンシュー科学)を用いること及び検出波長が230nmであること以外は前記(2)と同じ条件でHPLC分析を行い、その結果を表1に示す。表1に示すように、市販のタマネギ1中におけるPRENCSOの含有量は1g当たり0.562mgであり、市販のタマネギ2中におけるPRENCSOの含有量は1g当たり0.525mgであった。
【0023】
【表1】

【0024】
3.ネギ中のMeCSO及びPRENCSO含有量の測定
高知県産の細いネギ(以下、細いネギ)と、産地不明の太いネギ(以下、太いネギ)の2種類のネギを生鮮スーパーで購入し、細いネギは1本全量(6.2g)、太いネギは緑色と白色の境目付近の5cmほど(10.7g)を手早くラップで包んだ。ラップで包んだネギを直ちに電子レンジで加熱した(650W x 2min)。電子レンジで加熱したネギを乳鉢に入れ、加熱による蒸散のために失った量(Yg)と加熱前の重量(Xg)を合わせた重さの蒸留水を加えた後、乳棒を用いて細かくすり潰して破砕した(約10min)。得られた破砕液を50ml容polypropyrene遠沈管(Falcon 2070)に移し、4,000rpm×10min.室温で遠心分離を行って沈殿物を取り除き、得られたネギ破砕液の遠心上清液を回収し、体積を記録した。尚、この遠心上清は別の容器に取って冷凍保存が可能だった。
【0025】
次に、体積を記録した遠心上清液から1mlを新しいエッペンドルフチューブに分取し、そのエッペンドルフチューブをさらに15000rpm×2minの遠心分離に供し、低速遠心では除去できなかった浮遊物を取り除いた。遠心後のエッペンドルフチューブから沈殿を取らないようにして、上清を別のエッペンドルフチューブに移して試料液とした。こうして調製した試料液を前記(2)に記載のHPLC条件で分析に供した時のHPLCチャートを図3に示す。
【0026】
図3に示すHPLCチャートに現れたピークのうち、標品(MeCSO、PRENCSO)のHPLC保持時間と一致するピーク、或いは、ネギ試料と標品を混合してHPLC分析した時、大きくなるピークという2点からMeCSOピーク、PRENCSOピークを特定した。それらのピーク面積を両化合物の検量線から得られた回帰直線の式に代入し、MeCSO、PRENCSOの夫々の含有量を算出した結果を表2に示す。表2に示すように、細いネギ中におけるMeCSOの含有量は1g当たり0.084mgであり、太いネギ2中におけるMeCSOの含有量は1g当たり0.226mgであった。また、細いネギ中におけるPRENCSOの含有量は1g当たり0.486mgであり、太いネギ2中におけるPRENCSOの含有量は1g当たり0.925mgであった。
【0027】
【表2】

【0028】
4.マイクロ波による加熱条件の設定例
市販のタマネギ1球を縦に凡そ同じぐらいの重量になるように4つに切り分け、夫々1/4の重量を測定した(66.7g〜73.1g)。一つずつ別々にラップで包んでから、650W出力の電子レンジを用いて、それぞれ1分、2分、3分、5分加熱した。加熱後のタマネギ片(約1/4球)をそれぞれ別々に等重量の蒸留水を加えてから、家庭用電動ミキサーで10−20秒間破砕した。このようにして調製した加熱時間の異なるタマネギ破砕液を10000rpm×10分、25℃の条件で遠心分離し、それぞれの遠心上清を取り、それぞれの体積を記録した。遠心上清液を新しいエッペンドルフチューブに1ml量り取って、15000rpm×5minの遠心分離を行い、その遠心上清をACSOs分析試料液とした。
【0029】
得られた試料液を前記同様のHPLC条件(Pegasil ODSカラム、230nm検出)で分析に供した。その結果、電子レンジによる加熱時間とPRENCSO測定値(タマネギ1gあたりのPRENCSO量(mg))の関係を図4に示す。図4に示すように、650W出力の電子レンジを用いる場合、タマネギ65g〜75g当たり2分以上が好ましく、より好ましくは3分から5分程度であった。尚、タマネギの場合は、マイクロ波による加熱が不十分であるときは組織破砕後に催涙性が感じられることから判断することもできる。
【0030】
5.移動相として酸性水に有機溶媒を加えた液体を用いた場合のHPLC分析
MeCSO、alliin及びPRENCSOの標準物質を夫々0.5mg/ml濃度ずつ含むように調整した混合標準試料液を用い、移動相として表3に示す体積比で有機溶媒(メタノール、アセトニトリル)を加えた酸性水を用いてHPLC分析を行い、MeCSO、alliin及びPRENCSOのリテンションタイムを表3に示す。尚、ここでのHPLC条件は、Aquasilカラム、検出波長が220nmであった。
【0031】
【表3】

【0032】
表3に示すように、酸性水と有機溶媒との体積比率が95対5の液体を用いた場合には、MeCSOとPRENCSOのリテンションタイムが十分に離れているので、両者の一斉分析が可能である。他方、酸性水と有機溶媒との体積比率が85対15の液体、70対30の液体を用いた場合には、alliinとPRENCSOのリテンションタイムが同じでありこれらの一斉分析には適していないが、例えばタマネギ中のACSOsの含有量を測定する場合には、タマネギはACSOsとしては殆どPRENCSOしか含んでいないため、酸性水と有機溶媒との体積比率が85対15の液体、70対30の液体を用いることも可能である。
【0033】
6.移動層としてpHの異なる酸性溶液を用いた場合のHPLC分析
MeCSO、alliin及びPRENCSOの標準物質を夫々0.5mg/ml濃度ずつ含むように調整した混合標準試料液を用い、移動相として表4に示す酸性溶液を用いてHPLC分析を行い、MeCSO、alliin及びPRENCSOのリテンションタイムを表4に示す。尚、ここでのHPLC条件は、Aquasilカラム、検出波長が220nmであった。
【0034】
【表4】

【0035】
表4に示すように、pH2.4〜pH5.8までの間では、pHの違いによる影響は小さく、移動相としていずれのpHの酸性溶液を用いても、MeCSO、alliin、PRENCSOの分離は良好だった。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】MeCSOとPRENCSOの標品のHPLCチャートである。
【図2】MeCSOとPRENCSOの定量範囲を示すグラフである。
【図3】市販のネギでのHPLCチャートである。
【図4】電子レンジによるタマネギの加熱時間とPRENCSOの測定結果を示すグラフである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ネギ属植物中におけるACSOsの含有量を測定する方法であって、
(a)ネギ属植物を砕くことなくマイクロ波により加熱して該植物細胞内の酵素alliinaseを失活させる工程と、
(b)前記工程(a)で酵素alliinaseを失活させたネギ属植物を砕いて試料液を調製する工程と、
(c)前記工程(b)で得られた試料液を用いて、HPLC分析によりACSOsの含有量を測定する工程とを含むことを特徴とするネギ属植物中におけるACSOsの測定方法。
【請求項2】
前記工程(b)で、前記工程(a)で酵素alliinaseを失活させたネギ属植物に蒸留水を添加し且つ砕いて試料液を調製する、請求項1に記載の測定方法。
【請求項3】
前記工程(c)で、HPLC分析における移動相として酸性溶液を用いる、請求項1又は2に記載の測定方法。
【請求項4】
前記工程(c)で、HPLC分析における検出波長が220nm〜230nmである、請求項1〜3の何れか1項に記載の測定方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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