説明

ネコトリプシノーゲン及び/又はネコトリプシンに対するモノクローナル抗体

【課題】
ネコトリプシノーゲン、ネコトリプシン及びそれに関連した物質からなる群から選択される物質の少なくとも1種と免疫反応するモノクローナル抗体及び該抗体を使用するネコトリプシンやネコトリプシン様免疫反応物質の免疫学的測定方法並びに該抗体を含有するネコトリプシンやネコトリプシン様免疫反応物質の免疫学的測定試薬を提供し、同時に安全かつ高感度に、各種の形態で存在するネコTLIの存在比率などの測定系を提供すること。
【解決手段】
ネコトリプシノーゲン及び/又はネコトリプシンと免疫反応するモノクローナル抗体、該抗体を使用した免疫学的測定方法及び該抗体を含有する免疫学的測定試薬。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ネコトリプシンあるいはそれに関連した物質に対するモノクローナル抗体、該抗体を使用するネコトリプシンやネコトリプシン様免疫反応物質の免疫学的測定方法並びに該抗体を含有するネコトリプシンやネコトリプシン様免疫反応物質の免疫学的測定試薬に関する。別の態様としては、本発明は上記免疫学的測定試薬又は上記免疫学的測定方法あるいはその両方を用いることによる急性膵炎、慢性膵炎、膵癌、膵外分泌不全などの膵臓疾患、腎不全などの内蔵疾患などの病気あるいは疾患の診断方法、更にはそのための診断薬に関する。
【背景技術】
【0002】
トリプシンは、ヒト、ネコ、イヌ、ウシ、ウマ、ブタ、ヒツジ、ヤギなどの種々の動物に存在するプロテアーゼ(蛋白分解酵素)の一種で、膵臓の膵腺房細胞で酵素前駆体であるトリプシノーゲンとして生合成され、十二指腸に分泌され、エンテロキナーゼ又はトリプシンによって加水分解を受けて活性型のトリプシンとなる。このトリプシンは主として腸内で食物タンパク質類の消化酵素として働く。また、トリプシンはキモトリプシノーゲン、プロカルボキシペプチダーゼ、プロホスホリパーゼなどの他の酵素前駆体を限定分解し、それらを活性化させる。また、ヒトトリプシノーゲンは、カチオニック型(Cationic
Trypsinogen)とアニオニック型(Anionic Trypsinogen)の二つのサブタイプがあることが知られている。
【0003】
トリプシンは膵臓のみで産生される臓器特異性の高い酵素であり、また膵酵素の中でも極めて特異性の高い酵素であり、その変動は膵臓の状態、例えば、膵疾患を示唆するなど注目されてきている。
血中においてトリプシンは、正常では不活性型のトリプシノーゲンとして存在しているが、膵炎などの疾患によって傷害を受けた膵臓細胞から活性型のトリプシンが滲出する。そのトリプシンは血中でα1−アンチトリプシンやα2−マクログロブリン等のプロテアーゼインヒビターと結合して複合体として存在する。通常、これら全ての血中トリプシンをTLI(Trypsin like imunoreactivity:トリプシン様免疫反応物質)と言っている。
【0004】
こうした血中TLIは、ヒトでは急性膵炎、膵癌、腎不全により上昇すること、他方、膵外分泌不全、慢性膵炎では低値を示すことが知られている(非特許文献1参照)。さらに、ヒトでは尿中トリプシン量を測定することにより、膵炎を診断できる可能性が示唆されている(非特許文献2参照)。
【0005】
トリプシンの測定法としては、ベンゾイル−L−アルギニンアミドなどの基質を用いてトリプシンの酵素活性を測定する方法が報告されている。しかし、この方法で血中トリプシンを測定する場合、上記のようにトリプシンが血中でα1−アンチトリプシンやα2−マクログロブリン等のプロテアーゼインヒビターと結合して不活性化されて存在するため、正確な測定ができないという問題がある。
【0006】
こうした欠点を解決するために、トリプシンを免疫学的に測定しようとする方法(イムノアッセイ)が開発されてきた。従来、このイムノアッセイに使用する抗体は、ウサギ等の動物を抗原で免疫して得られた血清より分離して作製されていた(こうして作製された抗体がポリクローナル抗体である)。
このような方法では、抗体を作製する毎に大量の精製された抗原が必要であること、得
られる抗体の量が少ないこと、あるいは、得られた抗体自体はその力価が必ずしも一定しない等その均質性に問題があることや該抗体には様々な抗原に対する抗体が混在すること等の問題があり、より精密で正確な、且つ再現性の高い測定を行うことは困難であった。
【0007】
そこで、より安価でより均一なヒトのトリプシンに対する抗体を得る目的で、細胞融合技術を利用して得られたハイブリドーマの産生するモノクローナル抗体の開発が進められ、ヒトアニオニック トリプシンを認識するモノクローナル抗体の報告がなされている(非特許文献2参照)。
【0008】
一方、獣医学領域でも、特にイヌにおいて血中TLIをポリクローナル抗体によって測定することが行われ、急性膵炎ではその量が初期に増加し(非特許文献3参照)、膵外分泌不全では著減することが知られている(非特許文献4および5参照)。
【0009】
ヒトにおいては、現在のところポリクローナル抗体及びモノクローナル抗体を組み合わせたRIA法(Radioimmunoassay)、EIA法(Enzyme immunoassay)等のキットが各種販売されており、尿中TLI測定を目指したラテラルフロー法(イムノクロマト法)を用いたヒト アニオニック トリプシンを認識するモノクローナル抗体を含むキットも存在しているが、これらキットではネコのTLIの測定はできない。
【0010】
イヌにおいても、現在のところポリクローナル抗体及びモノクローナル抗体を組み合わせたRIA法(Radioimmunoassay)、または本出願人が開発したモノクローナル抗体を用いたEIA法(Enzyme immunoassay)(非特許文献6参照)等のキットが各種販売されており、TLI測定を目指したラテラルフロー法を用いたイヌカチニオニック トリプシンを認識するモノクローナル抗体を含むキットも存在しているが、これらキットではネコのTLIの測定はできない。
【0011】
ネコトリプシンを測定するための測定系としては、ネコ膵臓より精製したカチオニック
トリプシンをウサギに免疫し、得られたポリクローナル抗体を使用したELISAが報告されている(非特許文献7参照)。しかし、ネコTLIは生体内で不活性型のトリプシノーゲン、遊離の活性型トリプシン、さらには活性型トリプシンとα1−アンチトリプシンやα2−マクログロブリン等のプロテアーゼインヒビターと結合した複合体など様々な形態で存在しているため、存在形態毎の割合などを測定することはできない。
【非特許文献1】血中酵素の免疫学的測定と臨床応用,pp.223−231,1984,へるす出版
【非特許文献2】N.Engl.J.Med.,336,pp.1788−1793,1997
【非特許文献3】Am.J.Vet.Res.,Vol.50,No.5,pp.629−632,1989
【非特許文献4】J.Am.Vet.Med.Assoc.,192,pp.195−201,1988
【非特許文献5】J.Small Anim.Pract.,24,pp.583−588,1983
【非特許文献6】Vet.Immunol.Immunopathol.,87,pp.41−49, 2002
【非特許文献7】Am.J.Vet.Res.,Vol.61,No.6,2000:620−623
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
上記のように生体内で様々な形態で存在しているトリプシンは、疾患に応じてその各種形態の割合などにも変化が起こっていると考えられているため、そうした割合などの変化を正確に把握することができれば、各種疾患の診断に利用できる。しかしながら、ヒトやイヌにおいて開発されているモノクローナル抗体を使用した測定系では、ネコトリプシンの測定は全く不可能であり、またポリクローナル抗体を使用したネコトリプシン測定系では、上記各種の形態で存在するトリプシンの割合などを測定することは不可能である。さらには、疾患に応じて変化するTLIの存在比率などを詳細に検討することはできない。一方、RIA法による測定では安全性の面で放射性ラベルの取扱に特別な注意が必要であり、測定後のラベルした試料などの廃棄も問題となる。
【0013】
従って本願発明の課題は、ネコトリプシノーゲン、ネコトリプシン及びそれに関連した物質からなる群から選択される物質の少なくとも1種と免疫反応するモノクローナル抗体及び該抗体を使用するネコトリプシンやネコトリプシン様免疫反応物質の免疫学的測定方法並びに該抗体を含有するネコトリプシンやネコトリプシン様免疫反応物質の免疫学的測定試薬を提供し、安全かつ高感度に、各種の形態で存在するネコTLIの存在比率などの測定系を提供することにある。
さらには、ネコに関する急性膵炎、慢性膵炎、膵癌、膵外分泌不全などの膵臓疾患、腎不全などの内蔵疾患などの病気あるいは疾患の診断方法、更にはそのための診断薬を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記の課題を解決するため、鋭意研究を行った結果、ネコトリプシンに対して免疫反応するモノクローナル抗体の作製に成功し、さらには該抗ネコトリプシン モノクローナル抗体を使用することにより、選択性の高いネコトリプシン測定系の開発に至った。
【0015】
すなわち、本発明は以下の通りである。
(1)ネコトリプシノーゲン及び/又はネコトリプシンと免疫反応するモノクローナル抗体。
(2)ネコトリプシノーゲン、ネコトリプシン、及びネコトリプシンとネコトリプシンに対するプロテアーゼインヒビターとの複合体からなる群から選択される物質の少なくとも1種と免疫反応することを特徴とする、(1)に記載のモノクローナル抗体
(3)上記ネコトリプシノーゲン及び/又は上記ネコトリプシンと免疫反応し、上記ネコトリプシンとネコトリプシンに対するプロテアーゼインヒビターとの複合体にも免疫反応することを特徴とする、(2)に記載のモノクローナル抗体。
(4)上記ネコトリプシノーゲン及び/又は上記ネコトリプシンと免疫反応し、上記ネコトリプシンとネコトリプシンに対するプロテアーゼインヒビターとの複合体とは免疫反応しないことを特徴とする、(2)に記載のモノクローナル抗体。
(5)上記ネコトリプシノーゲンがカチオニックネコトリプシノーゲンであり、上記ネコトリプシンがカチオニックネコトリプシンであることを特徴とする、(2)〜(4)のいずれか1項に記載のモノクローナル抗体。
(6)受託番号FERM P−20265又はFERM P−20266のハイブリドーマにより産生される、(1)〜(5)のいずれか1項に記載のモノクローナル抗体。
(7)(1)〜(5)のいずれか1項に記載のモノクローナル抗体を産生するハイブリドーマ。
(8)(1)〜(5)のいずれか1項に記載のモノクローナル抗体を産生する、受託番号FERM P−20265又はFERM P−20266のハイブリドーマ。
(9)(1)〜(6)のいずれか一項に記載のモノクローナル抗体の少なくとも1種を用いて、ネコトリプシノーゲン、ネコトリプシン、及びネコトリプシンとネコトリプシンに対するプロテアーゼインヒビターとの複合体からなる群から選択される物質の少なくとも1種を免疫学的に測定することを特徴とする免疫学的測定方法。
(10)(1)〜(6)のいずれか一項に記載のモノクローナル抗体の少なくとも1種を用いて、ネコトリプシノーゲン、ネコトリプシン、及びネコトリプシンとネコトリプシンに対するプロテアーゼインヒビターとの複合体からなる群から選択される物質の少なくとも1種と免疫反応する抗体を免疫学的に測定することを特徴とする免疫学的測定方法。
(11)ネコトリプシノーゲン及び/又はネコトリプシンと、ネコトリプシンとネコトリプシンに対するプロテアーゼインヒビターとの複合体とをそれぞれ免疫学的に分別定量することができる2種の抗体を含み少なくとも一方が(1)〜(6)のいずれか一項に記載のモノクローナル抗体であることを特徴とする、免疫学的測定方法。
(12)(1)〜(6)のいずれか一項に記載のモノクローナル抗体を少なくとも1種含むことを特徴とする、免疫学的測定試薬。
(13)免疫学的方法により検体中のネコトリプシノーゲン、ネコトリプシン、及びネコトリプシンとネコトリプシンに対するプロテアーゼインヒビターとの複合体からなる群から選択される物質の少なくとも1種又は前記物質の少なくとも1種と免疫反応する抗体を測定するための試薬であって、(1)〜(6)のいずれか一項に記載のモノクローナル抗体を含むことを特徴とする、免疫学的測定試薬。
(14)免疫学的方法により検体中のネコトリプシノーゲン、ネコトリプシン、及びネコトリプシンとネコトリプシンに対するプロテアーゼインヒビターとの複合体からなる群から選択される物質の少なくとも1種又は前記物質の少なくとも1種と免疫反応する抗体を測定することができる2種の抗体を含む試薬キットであって、少なくとも一方が(1)〜(6)のいずれか一項に記載のモノクローナル抗体であることを特徴とする、免疫学的測定試薬キット。
(15)免疫学的方法により検体中のネコトリプシノーゲン及び/又はネコトリプシンと、ネコトリプシンとネコトリプシンに対するプロテアーゼインヒビターとの複合体とをそれぞれ免疫学的に分別定量することができる2種の抗体を含み、少なくとも一方が(1)〜(6)のいずれか一項に記載のモノクローナル抗体であることを特徴とする、免疫学的測定試薬キット。
【0016】
また、本発明の別の態様としては、
(16)2種の抗体を用いて、ネコトリプシノーゲン、ネコトリプシン、及びネコトリプシンとネコトリプシンに対するプロテアーゼインヒビターとの複合体からなる群から選択される物質の少なくとも1種を免疫学的に測定する免疫学的測定方法であって、該抗体の一方が上記(1)〜(6)のいずれか一に記載の固相化されたモノクローナル抗体であり、他方が上記(1)〜(6)のいずれか一に記載の標識物質で標識化されたモノクローナル抗体であることを特徴とする免疫学的測定方法。
(17)上記標識物質は酵素又は金属粒子である、(16)に記載の方法。
(18)上記(1)〜(6)のいずれか一に記載のモノクローナル抗体のFab'化 抗体を標識化したモノクローナル抗体。
【0017】
また、別の態様に従えば、本発明は、
(19)測定には、血液、血清、血漿、関節液、尿、唾液、糞、組織抽出液、培養細胞抽
出液及び細胞培養上清からなる群から選ばれるものを用いることを特徴とする、(9)
、(10)、(11)、(16)及び(17)のいずれか一に記載の方法。
(20)(1)〜(6)のいずれか一に記載の抗体であり且つ固相化されたものと、(1
)〜(6)のいずれか一記載の抗体であり且つ標識化されたものとを少なくとも含む、
免疫測定用試薬キット。
(21)血漿を検体として使用した場合の測定値と血清を検体として使用した場合の測定値の相関が0.8−1.2である上記(12)又は(13)記載の試薬。
(22)血漿を検体として使用した場合の測定値と血清を検体として使用した場合の測定値の相関が0.9−1.1である上記(12)又は(13)記載の試薬。
(23)ネコトリプシノーゲン及び/又はネコトリプシン及び/又はネコトリプシンとネ
コトリプシンに対するプロテアーゼインヒビターとの複合体を測定する場合において血漿を検体として使用した場合の測定値と血清を検体として使用した場合の測定値の相関が0.8−1.2である上記(12)に記載の試薬。
(24)ネコトリプシノーゲン及び/又はネコトリプシン及び/又はネコトリプシンとネコトリプシンに対するプロテアーゼインヒビターとの複合体を測定する場合において血漿を検体として使用した場合の測定値と血清を検体として使用した場合の測定値の相関が0.9−1.1である上記(12)に記載の試薬。
【0018】
さらに、別の態様に従えば、本発明は、
(25)上記(1)〜(6)のいずれか一に記載の抗体と、被検試料及び標識化されたネコトリプシンあるいはネコトリプシン関連物質とを競合的に反応させ、該抗体に結合した標識化されたネコトリプシンあるいはネコトリプシン関連物質の割合を測定することを特徴とする被検試料中のトリプシン及び/又はトリプシン様免疫反応物質の定量方法。
(26)被検試料と担体上に不溶化した上記(1)〜(6)のいずれか一記載の抗体及び標識化された上記(1)〜(6)のいずれか一記載の抗体とを反応せしめ、不溶化担体上の標識あるいは不溶化担体と結合しない標識を測定することを特徴とする被検試料中のトリプシン及び/又はトリプシン様免疫反応物質の定量方法。
(27)(a)乾燥キャリアに液体試料(あるいは湿潤試料)が適用され得るように配置され、(b)(i)湿潤状態において該キャリア内部を自由に移動し得る、検体に対して特異結合性の標識された試薬と、(ii)キャリア材料上の検出区域に永久的に固定化されており、従って湿潤状態でも移動しない、同検体に対して特異結合性の無標識試薬とを含んでおり、(c)標識された試薬(i)と検出区域とは相互に空間的に分離されており、適用された液体試料(あるいは湿潤試料)が標識された試薬(i)を溶出化して後に検出区域に浸透するように該標識された試薬(i)と検出区域との位置関係が決定されており、さらに該標識された試薬(i)が検出区域において結合された程度などの結果を観察できる手段を含有している試験系(例えば、分析試験装置)であって、該検体はトリプシン及びトリプシン様免疫反応物質からなる群から選ばれたもので、該試薬のうち少なくとも一つが上記(1)〜(6)のいずれか一に記載の抗体であることを特徴とする試験系(例えば、分析試験装置)を提供する。
【0019】
以下に示す具体的な実施例等を含む記載は本発明の好ましい態様を示すものであり、その一例を示したに過ぎず、これらの記載によって限定されるものではない。また、本発明の開示した範囲内で、改変することは可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
<1>本発明のモノクローナル抗体
本発明のモノクローナル抗体はネコトリプシノーゲン及び/又はネコトリプシンと免疫反応し得る全てのモノクローナル抗体を包含し、由来動物、作出方法、イムノグロブリンクラス等は特に限定されない。本発明において、「ネコトリプシノーゲン及び/又はネコトリプシン」とは、天然及びリコンビナントのネコトリプシノーゲン及び/又はネコトリプシン、又はネコトリプシノーゲン及び/又はネコトリプシンを断片化したもの、若しくはクローニングされて配列決定されたcDNA配列から推定されるアミノ酸配列に基づき特徴的な配列領域を選び、ポリペプチドをデザインして化学合成して得られた合成ポリペプチド断片などのネコトリプシン関連物質等を含むものである。
【0021】
また、本発明においてモノクローナル抗体とは、モノクローナル抗体、モノクローナル抗体のフラグメント、F(ab’)2化抗体、F(ab’)化抗体、短鎖抗体(scFv)、ダイアボディ(Diabodies)、およびミニボディ(Minibodies)を包含する。
【0022】
ネコトリプシンでは、ネコ以外の他動物とは異なりカチオニック型のみが同定されており、ネコトリプシンはネコトリプシノーゲンがプロセッシングを受けて生成されたものである。さらに、ネコトリプシンは生体内、例えば、血中でα1−アンチトリプシン、α2−マクログロブリン等のプロテアーゼインヒビターと結合した複合体としても存在する。またネコトリプシンはペプチダーゼで分解され、生体内で代謝される。またネコトリプシン遺伝子から転写翻訳して得られる産物は、その配列中にトランスポート シグナル配列を含むが、それは分泌の過程で除去される。
【0023】
また、本発明のモノクローナル抗体は、ネコトリプシン様免疫反応物質と免疫反応することを特徴とする。ここで、ネコトリプシン様免疫反応物質とは、ネコ生体内、例えば、血中などでネコトリプシン様の免疫反応を示す物質である。例えば、ネコトリプシノーゲン、ネコトリプシン、または、ネコトリプシンとα1−アンチトリプシンあるいはα2−マクログロブリン等のネコトリプシンに対するプロテアーゼインヒビターと結合した複合体などをいう。
【0024】
本発明のモノクローナル抗体の免疫反応性の具体的な例示としては、本発明のモノクローナル抗体はネコトリプシノーゲン、ネコトリプシン、及び、ネコトリプシンとネコトリプシンに対するプロテアーゼインヒビターとの複合体からなる群から選択される物質の少なくとも1種と免疫反応性を有する。また、別の例示として、ネコトリプシノーゲン及び/又はネコトリプシンと免疫反応をするが、ネコトリプシンとネコトリプシンに対するプロテアーゼインヒビターとの複合体と免疫反応しないことを特徴する。これらの動態は各種の疾患、例えば、ネコに関する急性膵炎、慢性膵炎、膵癌、腎不全、さらには慢性膵炎の末期、膵外分泌不全などを診断してその病状の程度を判断する上で注目される。さらに臨床現場では、ネコからの大量採血が難しいため、血中のネコトリプシン様免疫反応物質を測定する際に、血漿又は血清の種類を問わず同等の測定値を示す測定系が望まれている。
【0025】
さらに、本発明のモノクローナル抗体としては、カチオニックネコトリプシノーゲン、カチオニックネコトリプシン及びカチオニックネコトリプシンとネコトリプシンに対するプロテアーゼインヒビターとの複合体からなる群から選択される物質の少なくとも1種と免疫反応するモノクローナル抗体が好ましく例示でき、別の形態としてカチオニックネコトリプシノーゲン及び/又はカチオニックネコトリプシンと免疫反応し、カチオニックネコトリプシンとネコトリプシンに対するプロテアーゼインヒビターとの複合体とは免疫反応しないモノクローナル抗体も好ましく例示できる。その中でも、受託番号がFERM P−20265、FERM P−20266であるハイブリドーマが産生するモノクローナル抗体を特に好ましく例示できる。
【0026】
<2>本発明のモノクローナル抗体の作製
本発明のモノクローナル抗体の作製方法は特に限定されず、その作製方法は公知の方法に準じてネコの膵臓あるいは膵液から精製されたネコトリプシンあるいはその断片を、免疫原として公知の方法により動物を免疫したりし、当該分野で知られているあるいは汎用されている方法、例えばケラー、ミルシュタインらの方法(Nature,256:495−97,1975)あるいはそれに準じて製造することができる。この方法において、免疫原としては、天然型トリプシン、天然型トリプシノーゲン、リコンビナント トリプシン及びトリプシンのアミノ酸配列中の適当な領域から選択されたアミノ酸配列を有する合成ペプチドあるいはタンパク質から得られた断片、例えば連続した少なくとも8個のアミノ酸からなるトリプシンの一部のアミノ酸配列を有する合成ペプチド、例えば14個のアミノ酸残基を有するアミノ酸配列を有する合成ペプチド、好ましくはトリプシンにおいて特徴的な配列部分を有するペプチド等の何れでも使用することができる。
【0027】
免疫原として、好ましくは、例えば、Steinerらの報告(Comp.Biochem.Physiol.,Vol.116b,No.1,87−93,1997)に準じてネコ膵臓から単離精製したネコトリプシン、すなわち、カチオニック ネコトリプシンを用いることができる。さらに、こうして精製されたカチオニック ネコトリプシンを使用して特異的なモノクローナル抗体が得られる。
【0028】
またネコトリプシノーゲンやネコトリプシンのうちの特定の抗原決定部位を認識する抗体を得る目的では、例えば、(i)ネコトリプシノーゲンに存在するが、ネコトリプシンでは活性化のプロセッシングの過程で除去されるN末端の残基、例えば、ネコトリプシノーゲンのN末の7〜8残基からなる配列領域あるいはその一部又は全部を含有する特徴的な配列領域を選択して抗原ペプチドをデザインし合成して免疫に使用し、ネコトリプシノーゲンとネコトリプシンとを選択的に測定することを可能にする抗体を作製したり、さらには(ii)ネコトリプシンインヒビターの結合する配列領域あるいはその近傍領域を選択して抗原ペプチドをデザインし合成して免疫に使用し、必要に応じて当該ネコトリプシンインヒビターに免疫反応する抗体も作製して使用し、ネコトリプシンとネコトリプシンインヒビター複合体とを選択的に測定することを可能にする抗体を作製できる。
【0029】
ネコトリプシンは、ネコ生体内外の産生細胞、例えば、培養細胞、摘出組織、培養組織などから得ることができ、例えば、膵臓の腺房細胞などの細胞、膵組織、膵液などから得ることができる。さらに、ネコトリプシンは、リコンビナント ネコトリプシンとして得ることができ、例えば、膵臓の腺房細胞、膵組織などのトリプシン産生細胞・組織から遺伝子組換えの技術を利用して得ることができる。本発明で調製したネコトリプシンあるいはそれから誘導されたものが免疫抗原として好適に使用できる。これらネコトリプシンは、各種原料、例えば培養細胞、培養組織など、形質転換体細胞などの抗原産生材料から従来公知の方法、例えば硫酸アンモニウム沈殿法などの塩析、セファデックスなどによるゲルろ過法、例えばジエチルアミノエチル基あるいはカルボキシメチル基などを持つ担体などを用いたイオン交換クロマトグラフィー法、例えばブチル基、オクチル基、フェニル基など疎水性基を持つ担体などを用いた疎水性クロマトグラフィー法、色素ゲルクロマトグラフィー法、電気泳動法、透析、限外ろ過法、アフィニティークロマトグラフィー法、高速液体クロマトグラフィー法などにより精製して得ることができる。好ましくは、ポリアクリルアミド電気泳動、モノクローナル抗体などの抗原と特異的に反応する抗体などを固定化したアフィニティークロマトグラフィーなどで処理し精製分離処理できる。精製したコンビナント ネコトリプシンは、モノクローナル抗体作製のための免疫抗原として好適に使用できる。例えば、ゼラチン−アガロース・アフィニティー・クロマトグラフィー、ヘパリン−アガロース・クロマトグラフィーなどにより精製したものなどが挙げられる。
またネコトリプシン遺伝子の情報を基にペプチドを合成して、その合成ペプチドをモノクローナル抗体作製のための免疫抗原として好適に使用できる。ペプチド若しくはペプチド誘導体は、ペプチド合成の公知の方法を用いて製造することができる。当該製造方法としては、固相法、液相法のいずれでも良く、例えば、Ed.by E.Gross & J.Meienhofer,"The Peptides:Analysis,Synthesis,Biology",Vol,1−5,Academic Press,New York,U.S.A.;Ed.by S.Udenfriend & J.Meienhofer,"The Peptides:Analysis,Synthesis,Biology",Vol.6−9,Academic Press,New York,U.S.A.;E.Atherton & R.C.Sheppard,"Solid Phase Peptide Synthesis,a Practical Approach",IRL Press,Oxford(1989);泉屋信夫ら著,"ペプチド合成",丸善株式会社(1975);泉屋信夫ら著,"ペプチド合成の基礎と実験",丸善株式会社(1985);矢島治明監修,岡田芳男ら編,"続医薬品の開発14,ペプチド合成",廣川書店(1991)などに記載されている方法が挙げられる。
【0030】
以下に本発明のモノクローナル抗体の作製について詳細に説明する。
本発明のモノクローナル抗体は、ミエローマ細胞を用いての細胞融合技術を利用して得られたモノクローナル抗体であり、例えば次のような工程により作製できる。しかし、ミエローマ細胞を用いた場合にだけ限定されるものではない。
【0031】
1.免疫原性抗原の調製
抗原としては、上記記載の方法に従い調製したリコンビナントのネコトリプシンあるいはネコトリプシノーゲン、さらにそこで決定されたネコトリプシンのアミノ酸配列の情報を基に、適当なオリゴペプチドを化学合成しそれを抗原として利用することができる。好ましくはSteinerらの論文(Comp.Biochem.Physiol.,Vol.116b,No.1,87−93,1997)に準じてネコ膵臓から単離精製されたネコトリプシン、すなわち、カチオニック ネコトリプシンを用いることができ、より好ましくは、こうして精製されたカチオニック ネコトリプシンを用いることができる。また、ネコトリプシンは、前駆体ネコトリプシン(ネコトリプシノーゲン)やネコトリプシンを用いることができる。
【0032】
また、上記の方法と、ヒトのトリプシン精製法(例えば、Biochemistry,Vol.8,No.7,pp.2884−2889,1969)、あるいは、ウシのトリプシン精製法(例えば、Sidney P.Colowick and Nathan O.Kaplan(Ed.),Methods in Enzymology,Vol.2"Preparation and Assay of Enzymes",1955,Academic Press(USA))の改変した方法とを組み合わせて、ネコの膵臓よりネコトリプシンを単離精製することもできる。
【0033】
さらに、免疫原として用いる抗原は、ネコトリプシンを断片化したもの、あるいはクローニングされて配列決定されたcDNA配列から推定されるアミノ酸配列に基づき特徴的な配列領域を選び、ポリペプチドをデザインして化学合成して得られた合成ポリペプチド断片であってもよい。抗原タンパク質やポリペプチドは、そのまま適当なアジュバントと混合して動物を免疫するのに使用できるが、さらに免疫原性コンジュゲートなどとして、必要に応じて適当なアジュバントと混合して動物を免疫することもできる。また、免疫原性コンジュゲートは、ポリペプチドなどの抗原断片を適当な縮合剤を介して種々の担体タンパク質類と結合させてハプテン−タンパク質の如きものとすることにより作製でき、これを用いて特定の配列のみと反応できる(あるいは特定の配列のみを認識できる)モノクローナル抗体をデザインするのに用いることもできる。デザインされるポリペプチドには予めシステイン残基などを付加し、免疫原性コンジュゲートの調製を容易にできるようにしておくことができる。担体タンパク質類と結合させるにあたっては、担体タンパク質類はまず活性化されることができる。こうした活性化にあたり活性化結合基を導入することが挙げられる。
【0034】
活性化結合基としては、(1)活性化エステルあるいは活性化カルボキシル基、例えばニトロフェニルエステル基、ペンタフルオロフェニルエステル基、1−ベンゾトリアゾールエステル基、N−スクシンイミドエステル基など、(2)活性化ジチオ基、例えば2−ピリジルジチオ基などが挙げられる。担体タンパク質類としては、キーホール・リンペット・ヘモシアニン(KLH)、牛血清アルブミン(BSA)、卵白アルブミン、グロブリン、ポリリジンなどのポリペプタイド、細菌菌体成分、例えばBCGなどが挙げられる。
【0035】
2.免疫原性抗原による動物の免疫
動物を免疫するには、例えば村松繁、他編、実験生物学講座14、免疫生物学、丸善株式会社、昭和60年、日本生化学会編、続生化学実験講座5、免疫生化学研究法、東京化
学同人、1986年、または、日本生化学会編、新生化学実験講座12、分子免疫学III、抗原・抗体・補体、東京化学同人、1992年などに記載されている方法に準じて行うことができる。抗原と共に用いられるアジュバントとしては、例えばフロイント完全アジュバント、リビ(Ribi)アジュバント、百日咳ワクチン、BCG、リピッドA、リポソーム、水酸化アルミニウム、シリカなどが挙げられる。免疫は、例えばBALB/cなどのマウスをはじめとする動物を使用して行われる。抗原の投与量は、例えばマウスに対して約1〜400μg/動物で、一般には宿主動物の腹腔内や皮下に注射し、以後1〜4週間おきに、より好ましくは1〜2週間ごとに腹腔内、皮下、静脈内あるいは筋肉内に追加免疫を2〜10回程度反復して行う。免疫用のマウスとしてはBALB/c系マウスの他、BALB/c系マウスと他系マウスとのF1マウスなどを用いることもできる。必要に応じて抗体価測定系を調製し、抗体価を測定して動物免疫の程度を確認できる。
【0036】
3.ミエローマ細胞(骨髄腫細胞)の調製
細胞融合に使用される無限増殖可能株(腫瘍細胞株)としては免疫グロブリンを産生しない細胞株から選ぶことができ、例えばP3−NS−1−Ag4−1(NS−1,Eur.J.Immunol.,6:511−519,1976)、SP2/0−Ag14(SP2,Nature,276:269〜270,1978)、マウスミエローマMOPC−21セルライン由来のP3−X63−Ag8−U1(P3U1,Curr.topics Microbiol.Immunol.,81:1−7,1978)、P3−X63−Ag8(X63,Nature,256:495−497,1975)、P3−X63−Ag8−653(653,J.Immunol.,123:1548−1550,1979)などを用いることができる。8−アザグアニン耐性のマウスミエローマ細胞株はダルベッコMEM培地(DMEM培地)、イスコフ改変ダルベッコ培地(IMDM培地)、RPMI−1640培地などの細胞培地に、例えばペニシリン、ストレプトマイシン、アミカシンなどの抗生物質、牛胎児血清(FCS)などを加え、さらに8−アザグアニン(例えば5〜45μg/ml)を加えた培地で継代されるが、細胞融合の2〜5日前に正常培地で継代して所要数の細胞株を用意することができる。また使用細胞株は、凍結保存株を約37℃で完全に解凍したのちRPMI−1640培地などの正常培地で3回以上洗浄後、正常培地で培養して所要数の細胞株を用意したものであってもよい。
【0037】
4.抗体産生細胞とミエローマ細胞との細胞融合
上記2.の工程に従い免疫された動物、例えばマウスは最終免疫後、2〜5日後にその脾臓が摘出され、それから脾細胞懸濁液を得る。脾細胞の他、生体各所のリンパ節細胞を得て、それを細胞融合に使用することもできる。こうして得られた脾細胞懸濁液と上記3.の工程に従い得られたミエローマ細胞株を、例えば最小必須培地(MEM培地)、DMEM培地、RPMI−1640培地などの細胞培地中に置き、細胞融合剤、例えばポリエチレングリコールを添加する。細胞融合剤としては、この他各種当該分野で知られたものを用いることができ、この様なものとしては不活性化したセンダイウイルス(HVJ:Hemagglutinating Virus of Japan)なども挙げられる。好ましくは、例えば30〜60%のポリエチレングリコールを0.5〜2ml加えることができ、分子量が1,000〜8,000のポリエチレングリコールを用いることができ、さらに分子量が1,000〜4,000のポリエチレングリコールがより好ましく使用できる。融合培地中でのポリエチレングリコールの濃度は、例えば30〜60%となるようにすることが好ましい。必要に応じて、例えばジメチルスルホキシドなどを少量加え、融合を促進することもできる。融合に使用する脾細胞(リンパ球):ミエローマ細胞株の割合は、例えば1:1〜20:1とすることができるが、より好ましくは4:1〜10:1とすることができる。融合反応を1〜10分間行い、次にRPMI−1640培地などの細胞培地を加える。融合反応処理は複数回行うこともできる。融合反応処理後、遠心などにより細胞を分離した後選択用培地に移す。
【0038】
5.ハイブリドーマ(融合細胞)の選択及びモノクローン化
選択用培地としては、例えばヒポキサンチン、アミノプテリン及びチミジンを含む、FCS含有MEM培地、DMEM培地、IMDM培地、RPMI−1640培地などの培地、所謂HAT培地が挙げられる。選択培地交換の方法は、一般的には培養プレートに分注した容量と等容量を翌日加え、その後1〜3日ごとにHAT培地で半量ずつ交換するように処理することができるが、適宜これに変更を加えて行うこともできる。また融合後8〜16日目には、アミノプテリンを除いた、所謂HT培地で1〜4日ごとに培地交換をすることができる。フィーダーとして、例えばマウス胸腺細胞を使用することもでき、それが好ましい場合がある。
ハイブリドーマの増殖の盛んな培養ウェルの培養上清を、例えば放射免疫分析(RIA)、酵素免疫分析(ELISA)、蛍光免疫分析(FIA)などの測定系、あるいは蛍光惹起細胞分離装置(FACS)などで、トリプシンあるいはその断片ペプチドを抗原として用いたり、あるいは標識抗マウス抗体を用いて目的抗体を測定するなどでスクリーニングする。その後、目的抗体を産生しているハイブリドーマをクローニングする。クローニングは、寒天培地中でコロニーをピック・アップするか、あるいは限界希釈法により行う。より好ましくは限界希釈法により行うことができる。クローニングは複数回行うことが好ましい。
【0039】
6.モノクローナル抗体の製造
得られたハイブリドーマ株は、FCS含有またはFCSを含まないMEM培地、DMEM培地、IMDM培地、RPMI−1640培地などの適当な増殖用培地中で培養し、その培地上清から所望のモノクローナル抗体を得ることができる。大量の抗体を得るためには、ハイブリドーマを腹水化することが挙げられる。この場合、ミエローマ細胞由来の動物と同系の組織適合性動物の腹腔内に各ハイブリドーマを移植し、増殖させるか、あるいはヌード・マウスなどに各ハイブリドーマを移植し、増殖させ、該動物の腹水中に産生されたモノクローナル抗体を回収して得ることができる。動物はハイブリドーマの移植に先立ち、プリスタン(2,6,10,14−テトラメチルペンタデカン)などの鉱物油を腹腔内投与しておくことができ、その処理後、ハイブリドーマを増殖させ、腹水を採取することもできる。その腹水液をそのまま、あるいは従来公知の方法、例えば硫酸アンモニウム沈殿法などの塩析、セファデックスなどによるゲルろ過法、イオン交換クロマトグラフィー法、電気泳動法、透析、限外ろ過法、アフィニティークロマトグラフィー法、高速液体クロマトグラフィー法などにより精製してモノクローナル抗体として用いることができる。より好ましくは、モノクローナル抗体を含有する腹水液を硫安分画した後、DEAB−セファロースのような陰イオン交換ゲル及びプロテインAカラムのようなアフィニティー・カラムなどを用いて精製分離処理できる。さらに好ましくは抗原又は抗原断片(例えば合成ペプチド、組換え抗原タンパク質あるいはペプチド、抗体が特異的に認識する部位など)を固定化したアフィニティークロマトグラフィー、プロテインAを固定化したアフィニティークロマトグラフィーなどを用いて精製分離処理できる。
【0040】
また、こうして大量に得られた抗体の核酸配列を決定したり、ハイブリドーマ株から得られた抗体をコードする核酸配列を利用して、遺伝子組換え技術により抗体を作製することも可能である。
さらに、これら抗体をトリプシン、パパイン、ペプシンなどの酵素により処理して、場合により還元して得られるFab、Fab'、F(ab')2といった抗体フラグメントにして使用してもよい。
標識物を付与する抗体としては、IgG画分、更にはペプシン消化後還元して得られる特異的結合部Fab'を用いることができる。これらの標識物の例としては、酵素(ペルオキシダーゼ、アルカリホスファターゼあるいはβ−D−ガラクトシダーゼなど)、化学物質、蛍光物質あるいは放射性同位元素などがある。
【0041】
<3>本発明の免疫的測定方法
本発明の免疫的測定方法(以下本発明の測定方法又は本発明の方法ということもある)は、本発明のモノクローナル抗体の少なくとも1種を用いて、ネコトリプシノーゲン、ネコトリプシン、及びネコトリプシンとネコトリプシンに対するプロテアーゼインヒビターとの複合体からなる群から選択される物質の少なくとも1種を免疫学的に測定することを特徴とする。
また、本発明の免疫的測定方法は、本発明のモノクローナル抗体の少なくとも1種を用いて、ネコトリプシノーゲン、ネコトリプシン、及びネコトリプシンとネコトリプシンに対するプロテアーゼインヒビターとの複合体からなる群から選択される物質の少なくとも1種と免疫反応する抗体を免疫学的に測定することを特徴とする。
さらに、本発明の免疫的測定方法は、ネコトリプシノーゲン及び/又はネコトリプシンと、ネコトリプシンとネコトリプシンに対するプロテアーゼインヒビターとの複合体とをそれぞれ免疫学的に分別定量することができる2種の抗体を含み少なくとも一方が本発明のモノクローナル抗体であることを特徴とする。
【0042】
本発明の測定方法は、上記の本発明の抗体と検体に存在する抗原との抗原抗体反応を利用して該抗原又は該抗原と反応する抗体を定量的または定性的に測定する方法であれば、イムノアッセイ(免疫測定法)の測定系の種類に関わらず全てを包含する。すなわち、沈降反応や凝集反応を光学的に検出する免疫比濁法(Turbidimetric Immunoassay)、ゲルを支持体として用いて抗原と抗体を拡散させ、沈降線または沈降輪を形成させる免疫拡散法(Immunodiffusion)、または分別検出の容易な物質で標識した抗原または抗体を用いる標識化免疫測定法(Labeled Immunoassay)、免疫細胞染色法、免疫組織染色法等の何れの測定系も本発明の測定法に適用できる。
より具体的には、免疫比濁法としては、本発明の抗体を結合したポリスチレン微粒子(ラテックス)、赤血球などを担体粒子として使用する凝集反応法などが例示され;免疫拡散法としては、本発明の抗体の担体として寒天ゲル、アガロースゲル、セルロースアセテート膜、デキストランゲルなどを使用するオクタロニー拡散法、ウーダン拡散法などが例示され;標識化免疫測定法としては、酵素を標識物質として使用するエンザイムイムノアッセイ(酵素免疫測定法,EIAまたはELISA(Enzyme Linked Immunosorbent Assay));放射性同位元素を標識物質として使用するラジオイムノアッセイ(放射線免疫測定法,RIA)、蛍光物質を標識物質として使用する蛍光イムノアッセイ(蛍光免疫測定法)などが例示される。また、これらイムノアッセイは競合型であっても非競合型であってもよく、サンドイッチ型アッセイとすることも可能である。さらに、B−F分離を行ってもよいし、あるいは行わないでその測定を行うことが可能である。これら測定は直接法でも間接法でもよく、間接法の変法、例えばPAP法(ペルオキシダーゼ・アンチペルオキシダーゼ法)、ABC法(アビジン・ビオチン・コンプレックス法)、プロテインA法などを用いることもできる。これらの測定法は、公知の方法に準じて実施することが可能である。
【0043】
例えば、サンドイッチ型アッセイでは、トリプシンに対する抗体の一方を検出可能に標識化し、同じ抗原を認識できる他の抗体を固相に固定化する。検体と標識化抗体及び固相化抗体を必要に応じ順次反応させるためインキュベーション処理し、ここで非結合抗体を分離後、標識物を測定する。ここで、測定された標識の量は抗原、すなわちトリプシンの量と比例する。このアッセイでは、不溶化抗体や、標識化抗体の添加の順序に応じて同時サンドイッチ型アッセイ、フォワード(forward)サンドイッチ型アッセイあるいは逆サンドイッチ型アッセイなどと呼ばれる。例えば洗浄、撹拌、震盪、ろ過あるいは抗原の予備抽出等は、特定の状況のもとでそれら測定工程の中で適宜採用される。
また、特定の試薬、緩衝液等の濃度、温度あるいはインキュベーション処理時間などのその他の測定条件は、検体中の抗原の濃度、検体試料の性質等の要素に従い変えることが
できる。当業者は通常の実験法を用いながら各測定に対して有効な最適の条件を適宜選定して測定を行うことが出来る。
【0044】
本発明の方法に用いることが可能な、抗原あるいは抗体を固相化できる多くの担体は公知であり、本発明ではそれらから適宜選んで用いることができる。上記担体としては、抗原抗体反応などに使用されるものが種々知られており、本発明においてもこれら公知のものの中から選んで使用できる。特に好適に使用されるものとしては、例えば活性化ガラス、多孔質ガラスなどのガラス、シリカゲル、シリカ−アルミナ、アルミナ、磁化鉄、磁化合金などの無機材料、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、ポリフッ化ビニリデン、ポリ酢酸ビニル、ポリメタクリレート、ポリスチレン、スチレン−ブタジエン共重合体、ポリアクリルアミド、架橋ポリアクリルアミド、スチレン−メタクリレート共重合体、ポリグリシジルメタクリレート、アクロレイン−エチレングリコールジメタクリレート共重合体など、架橋化アルブミン、コラーゲン、ゼラチン、デキストラン、アガロース、架橋アガロース、セルロース、微結晶セルロース、カルボキシメチルセルロース、セルロースアセテートなどの天然または変成セルロース、架橋デキストラン、ナイロンなどのポリアミド、ポリウレタン、ポリエポキシ樹脂などの有機高分子物質、さらにそれらを乳化重合して得られたもの、細胞、赤血球などで、必要に応じて、シランカップリング剤などで官能性基を導入してあるものが挙げられる。さらに、ろ紙、ビーズ、試験容器の内壁、例えば試験管、タイタープレート、タイターウェル、ガラスセル、合成樹脂製セルなどの合成材料からなるセル、ガラス棒、合成材料からなる棒、末端を太くしたりあるいは細くしたりした棒、末端に丸い突起をつけたりあるいは扁平な突起をつけた棒、薄板状にした棒などの固体物質(物体)の表面などが挙げられる。
【0045】
これらの担体へは抗体等を公知の方法を用いて結合させることができる。例えば、担体とこれら抗原抗体反応に関与するものとの結合は、吸着などの物理的な手法、あるいは縮合剤などを用いたり、活性化されたものなどを用いたりする化学的な方法、さらには相互の化学的な結合反応を利用した手法などが例示される。
【0046】
また、これら抗原抗体反応に関与するものの標識としては、酵素、酵素基質、酵素インヒビター、補欠分子類、補酵素、酵素前駆体、アポ酵素、蛍光物質、色素物質、化学ルミネッセンス化合物、発光物質、発色物質、磁気物質、金属粒子、例えば金コロイドなどのコロイド状金属粒子、コロイド状粒子、マイクロパーティクル、放射性物質、ビオチンなどを挙げることができる。酵素としては、脱水素酵素、還元酵素、酸化酵素などの酸化還元酵素、例えばアミノ基、カルボキシル基、メチル基、アシル基、リン酸基などを転移するのを触媒する転移酵素、例えばエステル結合、グリコシド結合、エーテル結合、ペプチド結合などを加水分解する加水分解酵素、リアーゼ、イソメラーゼ、リガーゼなどを挙げることができる。酵素は複数の酵素を複合的に用いて検知に利用することもできる。例えば酵素的サイクリングを利用することもできる。
【0047】
上記コロイド状金属粒子標識としては、目視可能な信号を与えるものが好ましく使用でき、それは金属、金属酸化物、金属水酸化物、金属塩などからなる粒子であってもよく、該粒子は純粋な金属からなるものでも、金属化合物あるいは混合物からなるものであってもよいし、また金属又は金属化合物などをコーティングした合成樹脂などの高分子物質からなる核を有するものであってもよい。
適当な金属あるいは金属化合物としては、例えば、金、銀、プラチナ、銅などの金属、水酸化銀、臭化銀、ヨウ化銀、酸化鉄、水酸化鉄、水酸化アルミニウム、酸化アルミニウム、水酸化クロム、硫酸銅、硫酸水銀、二酸化チタンなどの金属化合物などが挙げられる。好ましいコロイド状金属粒子標識としては、金コロイド、銀コロイド、酸化鉄コロイドなどが挙げられる。また標識としてのコロイド状粒子としては、セレン、テルル、硫黄などの非金属粒子であることもでき、さらには染料のゾル粒子であることもでき、比較的微
量で視覚的に検知可能なシグナルを与えるものが好適に使用できる。
【0048】
上記コロイド状粒子、例えばコロイド状金属粒子は、当該分野で一般に知られた方法に従って製造することができる。例えば、金コロイド粒子の製造方法は、Nature,241,20,(1973)などに開示されており、塩化金酸の溶液を加熱沸騰させ、そこにクエン酸ナトリウムなどの溶液を混合して、塩化金を還元するなどして行うことができ、上記二つの化合物を混合するとすぐに該沸騰溶液は薄い青色に変色して核形成の開始を示し、その後青色が赤色掛かった色に変化して単一分散の粒子の形成を示すようになる。得られる粒子の大きさは、クエン酸ナトリウム溶液などの濃度を変化させることにより調節することができる。金属粒子標識で与えられる視覚的に検知可能なシグナルは、金属粒子の種類や粒子径によって異なる。例えば、金コロイド標識の場合、ゾルの粒径に依存して、オレンジから赤紫にわたる色を生ずるが、そのコロイド粒子の粒径を適宜選択して最適な検出・測定感度が得られるようにすることができる。
【0049】
一方、代表的な酵素標識としては、西洋ワサビペルオキシダーゼなどのペルオキシダーゼ、大腸菌β−D−ガラクトシダーゼなどのガラクトシダーゼ、マレエート・デヒドロゲナーゼ、グルコース−6−フォスフェート・デヒドロゲナーゼ、グルコースオキシダーゼ、グルコアミラーゼ、アセチルコリンエステラーゼ、カタラーゼ、ウシ小腸アルカリホスファターゼ、大腸菌アルカリホスファターゼなどのアルカリフォスファターゼなどが挙げられる。アルカリホスファターゼを用いた場合、4−メチルウンベリフェリルフォスフェートなどのウンベリフェロン誘導体、ニトロフェニルホスフェートなどのリン酸化フェノール誘導体、NADPを利用した酵素的サイクリング系、ルシフェリン誘導体、ジオキセタン誘導体などの基質を使用したりして、生ずる蛍光、発光などにより測定できる。ルシフェリン、ルシフェラーゼ系を利用したりすることもできる。カタラーゼを用いた場合、過酸化水素と反応して酸素を生成するので、その酸素を電極などで検知することもできる。電極としてはガラス電極、難溶性塩膜を用いるイオン電極、液膜型電極、高分子膜電極などを用いることもできる。
【0050】
上記酵素標識は、ビオチン標識体と酵素標識アビジン(ストレプトアビジン)に置き換えることも可能である。標識は、複数の異なった種類の標識を使用することもできる。こうした場合、複数の測定を連続的に、あるいは非連続的に、そして同時にあるいは別々に行うことを可能にすることもできる。本発明においては、信号の形成に4−ヒドロキシフェニル酢酸、1,2−フェニレンジアミン、テトラメチルベンジジンなどと西洋ワサビペルオキシダーゼ、ウンベリフェリルガラクトシド、ニトロフェニルガラクトシドなどとβ−D−ガラクトシダーゼ、グルコース−6−リン酸・デヒドロゲナーゼなどの酵素試薬を組合わせて用いることもでき、ヒドロキノン、ヒドロキシベンゾキノン、ヒドロキシアントラキノンなどのキノール化合物、リポ酸、グルタチオンなどのチオール化合物、フェノール誘導体、フェロセン誘導体などを酵素などの働きで形成しうるものが使用できる。
【0051】
上記蛍光物質あるいは化学ルミネッセンス化合物としては、フルオレセインインチオシアネート、ローダミンBイソチオシアネート、テトラメチルローダミンイソチオシアネートなどのローダミン誘導体、ダンシルクロリド、ダンシルフルオリド、フルオレスカミン、フィコビリプロテイン、アクリジニウム塩、ルミフェリン、ルシフェラーゼ、エクォリンなどのルミノール、イミダゾール、シュウ酸エステル、希土類キレート化合物、クマリン誘導体などが挙げられる。
【0052】
これら物質を標識化するには、チオール基とマレイミド基の反応、ピリジルジスルフィド基とチオール基の反応、アミノ基とアルデヒド基の反応などを利用して行うことができ、公知あるいは公用の方法、さらにはそれらを修飾した方法の中から適宜選択して適用できる。また上記免疫原性複合体作製に使用されることのできる縮合剤、担体との結合に使
用されることのできる縮合剤などを用いることができる。
【0053】
上記縮合剤としては、例えばグルタルアルデヒド、ヘキサメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソチオシアネート、N,N'−ポリメチレンビスヨードアセトアミド、N,N'−エチレンビスマレイミド、エチレングリコールビススクシニミジルスクシネート、ビスジアゾベンジジン、1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド、スクシンイミジル 3−(2−ピリジルジチオ)プロピオネート(SPDP)、N−スクシンイミジル 4−(N−マレイミドメチル)シクロヘキサン−1−カルボキシレート(SMCC)、N−スルホスクシンイミジル 4−(N−マレイミドメチル)シクロヘキサン−1−カルボキシレート、N−スクシンイミジル(4−ヨードアセチル)アミノベンゾエート、N−スクシンイミジル4−(1−マレイミドフェニル)ブチレート、N−(ε−マレイミドカプロイルオキシ)コハク酸イミド(EMCS)、イミノチオラン、S−アセチルメルカプトコハク酸無水物、メチル−3−(4'−ジチオピリジル)プロピオンイミデート、メチル−4−メルカプトブチリルイミデート、メチル−3−メルカプトプロピオンイミデート、N−スクシンイミジル−S−アセチルメルカプトアセテートなどが挙げられる。
【0054】
本発明の測定法では、検出すべき物質を酵素などで標識したモノクローナル抗体などの標識化抗体と、担体に結合された固相化抗体とを順次反応させることができるし、同時に反応させることもできる。
上記検出すべき物質及び抗体を加える順序は選ばれた担体系の型により異なり、適宜順序を変えることができる。感作されたプラスチックなどのビーズを用いた場合には、酵素などで標識したモノクローナル抗体などの標識化抗体を測定すべき物質を含む検体試料と共に最初適当な試験管中に一緒に入れ、その後該感作されたプラスチックなどのビーズを加えることにより測定を行うことができる。
【0055】
本発明の測定法において、検出すべき物質を定量的に測定するためには、免疫学的測定法が用いられるが、その際の固相担体としては、抗体などタンパク質を良く吸着するポリスチレン製、ポリカーボネイト製、ポリプロピレン製あるいはポリビニル製のボール、マイクロプレート、スティック、微粒子あるいは試験管などの種々の材料および形態を任意に選択し、使用することができる。
測定にあたっては至適pH、例えばpH約4〜9に保つように適当な緩衝液系中で行うことができる。特に適切な緩衝剤としては、例えばアセテート緩衝剤、クエン酸塩緩衝剤、フォスフェート緩衝剤、トリス緩衝剤、トリエタノールアミン緩衝剤、ボレート緩衝剤、グリシン緩衝剤、炭酸塩緩衝剤、トリス−塩酸緩衝剤などが挙げられる。緩衝剤は互いに任意の割合で混合して用いることができる。抗原抗体反応は約0℃〜60℃の間の温度で行うことが好ましい。
【0056】
本発明の測定法において、酵素などで標識されたモノクローナル抗体などの標識化抗体及び担体に結合せしめられた固相化抗体、さらには測定すべき物質のインキュベーション処理は、平衡に達するまで行うことができるが、抗原抗体反応の平衡が達成されるよりもずっと早い時点で固相と液相とを分離して限定されたインキュベーション処理の後に反応を止めることができ、液相又は固相のいずれかにおける酵素などの標識の存在の程度を測ることができる。これら測定操作は、自動化された測定装置を用いて行うことが可能であり、ルミネセンス・ディテクター、ホト・ディテクターなどを使用して基質が酵素の作用で変換されて生ずる表示シグナルを検知して測定することもできる。
【0057】
本発明の測定法の抗体抗原反応においては、それぞれ用いられる抗体、検出すべき物質、さらには酵素などの標識を安定化したり、抗体抗原反応自体を安定化するように適切な手段を講ずることができる。さらに、非特異的な反応を除去し、阻害的に働く影響を減ら
したり、あるいは測定反応を活性化したりするため、タンパク質、安定化剤、界面活性化剤、キレート化剤などをインキュベーション溶液中に加えることもできる。キレート化剤としては、エチレンジアミン四酢酸塩(EDTA)がより好ましい。当該分野で公用の、あるいは公知の非特異的結合反応を防ぐためのブロッキング処理を施してもよく、例えば、哺乳動物などの正常血清タンパク質、アルブミン、スキムミルク、乳発酵物質、コラーゲン、ゼラチンなどで処理することができる。非特異的結合反応を防ぐ目的である限り、それらの方法は特に限定されずに用いることができる。
【0058】
本発明の測定方法で測定される試料としては、あらゆる形態の溶液やコロイド溶液などが使用できるが、生物由来の血液、血漿、関節液、脳脊髄液、唾液、羊水、尿、その他の体液、細胞培養液、組織培養液等の流体試料及び細胞、組織、臓器、腫瘍組織などの生検検体が好ましく挙げられ、血漿、血清などが特に好ましく挙げられる。
本発明の標識化モノクローナル抗体を用いた免疫細胞染色あるいは免疫組織染色では、生検検体、例えば細胞、組織、臓器、腫瘍組織などが好適に用いられ、それら試料は染色前に必要に応じ固定化することができる。組織の固定化には当該分野で広く使用されているものあるいはそれから誘導されたものを使用できる。例えば、ペリオデイト−リジン−パラホルムアルデヒド、グルタルアルデヒド、ブアン、ホルマリン、パラホルムアルデヒド、ザンボニー、アクロレインなどが使用できる。またパラフィンなどで固定化することもできる。
【0059】
さらに本発明の測定方法は、家庭、診療所、診察室等での使用など、測定を行う場所は規制されない。そして、簡易な適用が可能で、早急に分析結果を確実に得ることができるように構成して行うことができる。例えば、(a)乾燥キャリア(例えば、多孔質キャリアなど)に液体試料(あるいは湿潤試料)が適用され得るように配置され、(b)(i)湿潤状態において該キャリア内部を自由に移動し得る、検体に対して特異結合性の標識された試薬と、(ii)キャリア材料上の検出区域に永久的に固定化されており、従って湿潤状態でも移動しない、同検体に対して特異結合性の無標識試薬とを含んでおり、(c)標識された試薬(i)と検出区域とは相互に空間的に分離されており、適用された液体試料(あるいは湿潤試料)が標識された試薬(i)を溶出化して後に検出区域に浸透するように該標識された試薬(i)と検出区域との位置関係が決定されており、さらに該標識された試薬(i)が検出区域において結合された程度などの結果を観察できる手段を含有している試験系(例えば、分析試験装置)が挙げられる。該試験系(例えば、分析試験装置)の好ましいものとしては、一般にラテラル フロー装置として知られたものが挙げられ、例えば、特許第2705767号に開示されたようなものあるいはそれを参考にして改変されて構成されたものが挙げられる。
【0060】
代表的な該試験系の例では、標識された試薬(i)は乾燥キャリア(例えば、多孔質キャリアなど)の第一区域に含まれており、第一区域から空間的に区別される検出区域に無標識試薬が固定化されており、キャリア(例えば、多孔質キャリアなど)に適用された液体試料(あるいは湿潤試料)が第一区域から検出区域に浸透するように二つの区域が配置されるようになっている。こうして該試験系(例えば、分析試験装置)では、該標識された試薬(i)と該無標識試薬(ii)とは共に「サンドイッチ」アッセイ又は「競合」アッセイに参加できる試薬となっている。別の態様では、該試験系(例えば、装置)を用い、検体を含有すると考えられる水性などの液体試料をキャリア(例えば、多孔質キャリアなど)に適用し、試料を毛細管現象などによってキャリア(例えば、多孔質キャリアなど)を通して第一区域から第二区域へと浸透せしめ、試料と共に標識された試薬(i)を第一区域から第二区域へと移動せしめ、標識された試薬(i)が第二区域で結合された程度などの結果を観察することにより、試料中に検体が存在するか否かなどを判定する方法が提供される。
【0061】
例えば、標識された試薬(i)及び無標識試薬(ii)として、それぞれネコトリプシンに対するモノクローナル抗体を使用すると、標識された試薬(i)と試料中の検知すべき抗原と固定化された無標識試薬とが共同して「サンドイッチ」反応を生じ、その結果、試料中に検知すべき抗原が存在する場合は、第二区域で標識された試薬が結合されることになる。別の態様では、例えば、標識された試薬として、標識されたネコトリプシンなどの標識抗原そのもの、あるいは検知すべき抗原の類縁物などを使用し、キャリア(例えば、多孔質キャリアなど)を通って、該標識されたネコトリプシンなどの標識抗原あるいは検知すべき抗原の類縁物などを第二区域へ移動すると、固定化された無標識試薬と結合することになる。試料中に検知すべき抗原が存在すれば、それがこの結合反応において標識された試薬と競合する。このような競合の結果、第二区域で結合される標識された試薬の量が減少し、その結果、試料中に検知すべき抗原が存在しなかった場合と比較して第二区域において観察される信号の程度が弱くなる。
【0062】
該試験系の好ましい例では、液体試料(あるいは湿潤試料)を受容し、それをキャリア(例えば、多孔質キャリアなど)に放出させる機能を有する吸湿性試料受容部材を介して該キャリア(例えば、多孔質キャリアなど)に液体試料(あるいは湿潤試料)を適用し得るように構成することができる。こうした場合、該吸湿性試料受容部材に乾燥状態で標識された試薬(i)を含有せしめて置くことができる。該受容部材は、液体を急速に吸収できるものが好ましく、そうした性状を有するものであれば、吸湿性材料、多孔質材料、繊維質材料などの任意の材料で形成することができる、材料の孔の多くは一方向性あるいは多方向性又は全方向性の何れであってもよい。該一方向性の材料とは、気孔又は繊維の全部あるいは大部分が部材の軸に平行に通っているものを意味していてよく、材料が多方向性の孔部などを有していると、その部材は非晶質のスポンジ状の構造を有する。該材料としては、多孔質のプラスチック材料を使用することができ、例えば、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリフッ化ビニリデン、エチレン酢酸ビニル、アクリロニトリル、ポリテトラフルオロエチレンなどから構成されたものが挙げられる。該受容部材は、製造の段階で界面活性剤により予め処理しておくことができる。界面活性剤で処理しておくと、部材の固有の疎水性を低減でき、湿潤試料を速やかに吸収したり、移送したりできるのでより好ましい。該受容部材は、その他、紙やニトロセルロースなどのセルロース材料で形成することもできる。
【0063】
本試験系では、標識はその存在を容易に検出できる形態のものであれば如何なるものも好ましく使用でき、好適には直接標識、すなわち、その自然状態にある時に肉眼的に検知したり、あるいは光学フィルターを使用したり及び/又は紫外光などで励起させて蛍光などを生ぜしめるなどのことで容易に観察できるようなものとすることが好ましく、例えば、金コロイドなどのコロイド状金属粒子、染料コロイド状粒子、着色ラテックス粒子などのマイクロパーティクルなどが挙げられる。該キャリアとしては、通常多孔質キャリアが使用され、例えば、ニトロセルロースなどが好適に使用できるが、濾紙など天然及び合成ポリマー及びその誘導体から選択することができる。該ポリマー及びその誘導体の例としては、上記担体として挙げられたものなどがある。該キャリアは、例えば、ストリップあるいはシートの形状で好ましく使用できる。該キャリアを帯状あるいはシート状の形状とした場合、好ましくは試薬を空間的に別個の区域に塗布され、液体試料(あるいは湿潤試料)はシート又は帯状片の片側あるいは一端部から他方へ浸透させる。またキャリア材は、任意にプラスチックシートなどの透明な不透湿性材料層で裏打ちされていることができる。
【0064】
本試験系では、「対照」区域を設けておくことができる。該対照区域は、該試験系(例えば、分析試験装置)の動作あるいは操作が完了したこと及び/又は正常に達成できたことを使用者に示す信号を与えるように構成できる。例えば、第一区域からの標識された抗体と結合することのできる抗体などの結合試薬を該対照区域に含むようにして置くと、試
料などが浸透したことを確認できる。例えば、標識された抗体としてマウス由来のハイブリドーマの産生したモノクローナル抗体を使用した場合、該対照区域に「抗マウス抗体」を含むようにしておくなどである。該対照区域には、その他、湿潤した時に変色あるいは発色するような試薬など、適宜適当な試薬、手段を選んで適用することができる。
【0065】
試薬は様々な方法でキャリア材料に塗布あるいは保持せしめることができ、例えば、液体試薬を小型のシリンジ、マイクロピペット、制御装置付きペン状器具、インク噴射印刷装置などでキャリア材料に塗ったり、印刷したり、含浸させたりして適用できる。
【0066】
本発明の測定方法で測定される試料としては、あらゆる形態の溶液やコロイド溶液、非流体試料などが使用しうるが、好ましくは生物由来の試料、例えば血液、血清、血漿、関節液、唾液、尿、糞、膵臓、膵液、その他の体液、細胞培養液、組織培養液、組織ホモジュネート、生検試料、組織、細胞などが挙げられる。
【0067】
これら個々の免疫学的測定法を本発明の測定方法に適用するにあたっては、特別の条件、操作等の設定は必要とされない。それぞれの方法における通常の条件、操作法に当業者の通常の技術的配慮を加えて、天然のトリプシンあるいはそれと実質的に同等な活性を有するネコ由来のタンパク質に関連した測定系を構築すればよい。これらの一般的な技術手段の詳細については、総説、成書などを参照することができる〔例えば、入江 寛編,「ラジオイムノアッセイ」,講談社,昭和49年発行;入江 寛編,「続ラジオイムノアッセイ」,講談社,昭和54年発行;石川栄治ら編,「酵素免疫測定法」,医学書院,昭和53年発行;石川栄治ら編,「酵素免疫測定法」(第2版),医学書院,昭和57年発行;石川栄治ら編,「酵素免疫測定法」(第3版),医学書院,昭和62年発行;「Methods in Enzymology」Vol.70(Immunochemical Techniques(Part A));同書Vol.73(Immunochemical Techniques(Part B));同書Vol.74(Immunochemical Techniques(Part C));同書Vol.84(Immunochemical Techniques(Part D:Selected Immunoassays));同書Vol.92(Immunochemical Techniques(Part E:Monoclonal Antibodies and General Immunoassay Methods));同書Vol.121(Immunochemical Techniques(Part I:Hybridoma Technology and Monoclonal Antibodies))(以上、Academic Press社(USA)発行)など参照〕。
【0068】
<4>本発明の免疫学的測定試薬
本発明の免疫的測定試薬(以下本発明の試薬ということもある)は本発明のモノクローナル抗体を少なくとも1種含むことを特徴とする。本発明の免疫学的測定試薬は、上記の本発明の抗体と検体に存在する抗原との抗原抗体反応を利用して該抗原又は該抗原に反応する抗体を定量的または定性的に測定可能な試薬であれば、イムノアッセイ(免疫測定法)の測定系の種類に関わらず全てを包含する。
【0069】
また、本発明の試薬は、本発明のモノクローナル抗体を少なくとも1種含み、免疫学的方法により検体中のネコトリプシノーゲン、ネコトリプシン、及び、ネコトリプシンとネコトリプシンに対するプロテアーゼインヒビターとの複合体からなる群から選択される物質の少なくとも1種又は前記物質の少なくとも1種と免疫反応する抗体を測定することが可能である。
【0070】
本発明の免疫学的測定試薬は、測定試料が血清あるいは血漿である場合、ネコトリプシン様免疫反応物質の血清における測定値と血漿における測定値の相関は、好ましくは、0.
8〜1.2であり、更に好ましくは0.9〜1.1である。また、本発明の免疫学的測定試薬は、測定試料が血清あるいは血漿である場合、ネコトリプシノーゲン、ネコトリプシン、及び、ネコトリプシンとネコトリプシンに対するプロテアーゼインヒビターとの複合体からなる群から選択される物質の少なくとも1種の血清における測定値と血漿における測定値の相関は、好ましくは、0.8〜1.2であり、更に好ましくは0.9〜1.1である。
【0071】
<4>本発明の免疫学的測定試薬キット
本発明の免疫的測定試薬キット(以下本発明の試薬キットということもある)は、免疫学的方法により検体中のネコトリプシノーゲン、ネコトリプシン、及びネコトリプシンとネコトリプシンに対するプロテアーゼインヒビターとの複合体からなる群から選択される物質の少なくとも1種又は前記物質の少なくとも1種と免疫反応する抗体を測定することができる2種の抗体を含み、少なくとも一方が本発明のモノクローナル抗体であることを特徴とする。本発明の免疫学的測定試薬キットは、上記の本発明の抗体と検体に存在する抗原との抗原抗体反応を利用して該抗原又は該抗原と免疫反応する抗体を定量的または定性的に測定可能な試薬キットであれば、イムノアッセイ(免疫測定法)の測定系の種類に関わらず全てを包含する。
【0072】
本発明の試薬キットの一形態としては、2種の抗体を含み、一方が固相化された本発明のモノクローナル抗体であり他方が標識化された本発明のモノクローナル抗体であることを特徴とする。
また、別の形態として、本発明の試薬キットは、2種の抗体を含み、一方が本発明のモノクローナル抗体であり、他方がポリクローナル抗体であることを特徴とする。
さらに、別の形態として、本発明の試薬キットは、ネコトリプシノーゲン及び/又はネコトリプシンと、ネコトリプシンとネコトリプシンに対するプロテアーゼインヒビターとの複合体とをそれぞれ免疫学的に分別定量することができる2種の抗体を含み少なくとも一方が本発明のモノクローナル抗体であることを特徴とする。
さらに、別の形態として、本発明の試薬キットは、ネコトリプシノーゲン及び/又はネコトリプシンと、ネコトリプシンとネコトリプシンに対するプロテアーゼインヒビターとの複合体とをそれぞれ免疫学的に分別定量することができる2種の抗体を含み、一方がネコトリプシノーゲン及び/又はネコトリプシンと、ネコトリプシンとネコトリプシンに対するプロテアーゼインヒビターとの複合体双方と免疫反応するモノクローナル抗体であり、他方がネコトリプシノーゲン及び/又はネコトリプシンには免疫反応するが、ネコトリプシンとネコトリプシンに対するプロテアーゼインヒビターとの複合体には免疫反応しないモノクローナル抗体であることを特徴とする。
さらに、別の形態として、本発明の試薬キットは、ネコトリプシノーゲン及び/又はネコトリプシンと、ネコトリプシンとネコトリプシンに対するプロテアーゼインヒビターとの複合体とをそれぞれ免疫学的に分別定量することができる2種の抗体を含み、一方がネコトリプシノーゲン及び/又はネコトリプシンと、ネコトリプシンとネコトリプシンに対するプロテアーゼインヒビターとの複合体双方と免疫反応するモノクローナル抗体であり、他方がネコトリプシノーゲン及び/又はネコトリプシンには免疫反応しないが、ネコトリプシンとネコトリプシンに対するプロテアーゼインヒビターとの複合体には免疫反応するモノクローナル抗体であることを特徴とする。
さらに、別の形態として、本発明の試薬キットは、ネコトリプシノーゲン及び/又はネコトリプシンと、ネコトリプシンとネコトリプシンに対するプロテアーゼインヒビターとの複合体とをそれぞれ免疫学的に分別定量することができる2種の抗体を含み、一方がネコトリプシノーゲン及び/又はネコトリプシンには免疫反応するが、ネコトリプシンとネコトリプシンに対するプロテアーゼインヒビターとの複合体には免疫反応しないモノクローナル抗体であり、他方がネコトリプシノーゲン及び/又はネコトリプシンには免疫反応しないが、ネコトリプシンとネコトリプシンに対するプロテアーゼインヒビターとの複合体には免疫反応するモノクローナル抗体であることを特徴とする。
【0073】
本発明の試薬キットには、必要に応じて以下に示すようなその他の必要な試薬をセットにしてもよい。本発明のモノクローナル抗体又は抗原を固定化したプレート、ならびにこれに付随する、陰性コントロール血清、陽性コントロール血清、洗浄液、標識抗体溶液、血清希釈用液、発色基質および反応停止液はあらかじめ調製して安定な条件下、例えば凍結乾燥あるいは安定剤を添加した溶液状態で4℃〜8℃で保存すれば長期保存および即時使用可能となる。すなわち、測定用試薬キットは、上記の条件で調製した抗体固定化プレート又は抗原固定化プレート及びこれに付随する標識抗体溶液、血清希釈用液、発色基質、反応停止液等をセットとして含む。本発明の試薬キットは上述と同様の方法で使用する。
【0074】
本発明の方法および試薬キットは、ネコトリプシンに対するモノクローナル抗体及び固相担体用としてネコトリプシンに対するモノクローナル抗体を用い、あるいはさらに必要に応じ、ネコトリプシンに対する阻害物質を用い、被検試料中の遊離の前駆体やネコトリプシンを分別定量する優れた方法及びその為の試薬キットを提供することにある。本発明はこうした遊離の前駆体やネコトリプシンを分別定量することのできる試薬キットのうちの各試薬はすべてその実施態様に含まれる。
【0075】
さらに本発明の別の一つの目的は、上記定量法を用いて遊離の前駆体やネコトリプシンを分別定量することにより、膵臓疾患などをモニターし得る方法並びに試薬あるいは診断剤を提供することにある。したがって、医学的・生理学的分野における上記試薬の各種利用、膵臓を含めたネコなどの動物の細胞・組織の研究・解析・測定などの目的で上記試薬を使用することはすべて本発明のその実施態様に含まれる。
本発明の前述した種々の態様を利用することにより、ネコの急性膵炎、慢性膵炎、膵癌、膵外分泌不全などの膵臓疾患、腎不全などの内蔵疾患などの病気あるいは疾患、ネコの健康度の診断等に関わる研究に有用な検査・測定の手段として、あるいはその他の医学的生理学的用途に適用される種々の技術手段を提供することができる。
【実施例】
【0076】
以下実施例を掲げ、本発明を具体的に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されず、本発明に基づく様々な実施形態が可能である。なお、明細書及び図面において、用語は、IUPAC−IUB Commission on Biochemical Nomenclatureによるか、あるいは当該分野において慣用的に使用される用語の意味に基づくものである。
【0077】
<実施例1> ネコトリプシンの精製
ネコの膵臓(13.5g)に0.125Nの硫酸(50ml)を加え、ブレンダーでホモジネートした後、4℃で16時間インキュベーションした。次に遠心分離(1500×g)し、上清(1)を得た。得られた沈殿物に0.125Nの硫酸(50ml)を加え、ブレンダーでホモジネートした後、遠心分離(1500×g)し、上清(2)を得た。こうして得られた上清(1)及び(2)を一緒にした抽出液(100ml)中に硫酸アンモニウム(11.1g)を加えて、硫酸アンモニウムの最終濃度を0.8Mとした。この混合物を4℃で24時間インキュベーションした後、遠心分離(23,000×g)し、沈殿物と上清(a)に分けた。この沈殿物に0.8M硫酸アンモニウム(40ml)を加えて、沈殿物をよくほぐし、さらに遠心分離(23,000×g)し、沈殿物と上清(b)を分けた。得られた上清(a)及び(b)を一緒にした液(130ml)に硫酸アンモニウム(48g)を加えて、硫酸アンモニウムの最終濃度を3.0Mとした。この混合物を4℃で24時間インキュベーションした後、遠心分離(23,000×g)し、沈殿物と上清に分けた。得られた沈殿物に3.0M硫酸アンモニウム(30ml)を加えて、沈殿物をよくほぐし、次に遠心分離(23,000×g)して、沈殿物と上清に分けた。
こうして得られた沈殿物を塩溶液(0.2M NaCl/0.05M CaCl2,pH2.6)に溶解し、塩溶液(0.2M NaCl/0.05M CaCl2,pH2.6)で透析し、限外ろ過濃縮装置で濃縮した。
【0078】
この濃縮液をゲル濾過により精製した。ゲル濾過は、Sephadex G−75(ファルマシア社製,3.8cm2×90cm)のカラムを用い、0.2M NaCl/0.05M CaCl2(pH2.6、流速:12ml/hr、フラクション:5ml/本)を移動相として酵素を溶出させた。各フラクションの酵素活性を吸光度A280の値で測定した。酵素活性の測定は、1.7mlの2mM CaCl2/0.05M Tris−HCl(pH8.0)を入れた試験管に、溶出させた各フラクションのサンプルを適当に希釈したものを100μlずつ入れ、次に200μlの1mMベンゾイルアルギニンエチルエーテル(Benzoyl arginine ethyl ether;BAEE)を添加して、反応させ、吸光度A253を測定して経時的変化を観察した。なお、0.001/min.=1 BAEE Unitとして計算した。
ここで酵素活性が認められたフラクションNo.34〜50をまとめ、緩衝液(2mM
CaCl2/0.05M Tris−HCl,pH8.0)で透析し、限外ろ過濃縮装置で濃縮した。その濃縮液に1/2容量のエンテロペプチダーゼ(1mg/ml)を添加し、4℃で15時間インキュベーションした。得られた液(9.6ml)をアフィニティークロマトグラフィーにかけて精製した。アフィニティークロマトグラフィーは、Benzamidine Sepharose 6B(ファルマシア社製,0.8cm2×12cm)のカラムを用い、移動相:1)2mM CaCl2/0.05M Tris−HCl,pH8.0;2)2mM CaCl2/0.05M Tris−HCl,pH8.0−0.5M NaCl;3)2mM CaCl2/0.05M Sodium Acetate,pH4.25;及び4)2mM CaCl2/0.05M Sodium Acetate,pH3.25、流速24ml/hr、フラクション2ml/本の条件で行い、吸光度A280における各フラクションの酵素活性を測定した。酵素活性測定は、試験管に1.7mlの2mM CaCl2/0.05M Tris−HCl,pH8.0を入れ、そこに溶出した各サンプルを適当に希釈したものを100μlずつ入れ、次に200μlの1mMベンゾイルアルギニンエチルエーテル(Benzoyl arginine ethyl ether;BAEE)を添加して、反応させ、吸光度A253を測定して経時的変化を観察した。なお、0.001/min=1 BAEE Unitとして計算した。ここで酵素活性が認められたフラクションNo.56〜59をそれぞれ1mM塩酸で透析した。透析後、各サンプルを凍結乾燥物とした。このフラクションNo.56〜59の活性は、カチオニックトリプシンの活性を示した。このカチオニックトリプシンを定法によりN末端アミノ酸分析を行ったところ、Ile−Val−Gly−Gly−Tyr−Thr−X−Arg−Arg−Asnであり、ネコカチオニックトリプシンと同じ配列であった。
【0079】
<実施例2> モノクローナル抗体の調製
(a)抗体産生細胞の調製
上記実施例1で調製したカチオニックトリプシンを抗原として用いる。この抗原をpH7.4の0.1Mリン酸緩衝生理食塩液(PBS)で100μg/100μlとなるように希釈し、それを等量の完全フロイントアジュバント(ナカライテスク株式会社製)と混合し、エマルジョンを調製する。該エマルジョンを6週令Balb/c雌マウス(チャールスリバー社製)2匹に腹腔内投与(1匹あたりの投与量:100μg/200μl)し、初回免疫した。その後、10日〜2週間の間隔をあけて追加免疫した。この追加免疫では、抗原を100μg/100μlとなるように調製し、それを等量の不完全フロイントアジュバント(ナカライテスク株式会社製)と混合し、エマルジョンを調製し、該エマルジョンを腹腔内投与(1匹あたりの投与量:100μg/200μl)した。さらに、10日〜2週間の間隔をあけて免疫した。必要に応じて、この間隔で免疫を繰り返すこともできる。最終免疫として、抗原を100μg/200μlとなるように調製し、それをそ
のまま静脈内投与した。
【0080】
(b)細胞融合
(1)使用した培地は以下の通りである。
RPMI−1640培地:RPMI−1640(Flow Lab.製)に重炭酸ナトリウム(24mM)、ピルビン酸ナトリウム(1mM)、ペニシリンGカリウム(50U/ml)、硫酸アミカシン(100μg/ml)を加え、ドライアイスでpHを7.2にし、0.2μmメンブレンフィルター(アドバンテック東洋株式会社製)で除菌ろ過して調製した培地。
NS−1培地:上記RPMI−1640培地に除菌ろ過したウシ胎児血清(FCS,M.A.Bioproducts製)を15%(v/v)の濃度になるように加えて調製した培地。
50%PEG4000含有RPMI−1640培地:RPMI−1640培地にポリエチレングリコール4000(Merk &Co.)が50%(w/w)になるように調製した無血清培地。
【0081】
(2)上記(a)で得られた免疫マウスから最終免疫の3日後に脾臓を摘出し、細胞融合に用いる細胞を得た。この有核脾細胞(生細胞率100%)と8−アザグアニン耐性ミエローマ細胞SP2(生細胞率100%)とを5:1の比率で以下の手順で融合した。なお、8−アザグアニン耐性ミエローマ細胞SP2(SP2/0−Ag14)との融合は、Oi,V.T.らの方法(B.B.Mishell and S.M.Shiigi,eds.Selected Methods in Cellular Immunology,p.351〜372,1980,W.H.Freeman and Company)を若干改変して行った。上記の有核脾細胞とミエローマ細胞をそれぞれRPMI−1640培地で洗浄した。次に同じ培地にそれぞれ懸濁させ、さらに懸濁液を混合した。1×108〜6×108個の有核脾細胞に対して3×107〜2×108個のミエローマ細胞を混合した。
【0082】
次に遠心分離により細胞を沈殿させ、上清を完全に吸引除去した。沈殿した細胞に37℃に加温した50%(w/w)PEG4000含有RPMI−1640培地(ミエローマ細胞が3×107個/mlとなるよう体積を決定した)を1分間で滴下し、1分間撹拌して分散させ、細胞を再懸濁した。次に添加した50%(w/w)PEG4000含有RPMI−1640培地の2倍体積の37℃に加温したRPMI−1640培地を2分間で滴下した。さらに添加した50%(w/w)PEG4000含有RPMI−1640培地の7倍体積のRPMI−1640培地を2〜3分間で常時撹拌しながら滴下し、細胞を分散させた。これを遠心分離し、上清を完全に吸引除去した。
【0083】
次に、ミエローマ細胞が3×106個/mlとなるように37℃に加温したNS−1培地を、沈殿した細胞に速やかに加え、大きい細胞塊を注意深くピペットで分散させた。さらに同培地を加えて希釈し、ポリスチレン製96穴マイクロウェルにウェル当りミエローマ細胞が6.0×105個となるように接種した。細胞を加えた上記マイクロウェルを7%炭酸ガス/93%空気中で温度37℃、湿度100%で培養した。
【0084】
(c)選択培地によるハイブリドーマの選択的増殖
(1)使用した培地は以下の通りである。
HAT培地:上記(b)の(1)で述べたNS−1培地に、ヒポキサンチン(100μ
M)、アミノプテリン(0.4μM)およびチミジン(16μM)を加えて調製した培
地。
HT培地:上記HAT培地でアミノプテリン以外を含む同一組成の培地。
【0085】
(2)前記(b)の(2)の培養1日目で、融合細胞(ハイブリドーマ)にパスツールピペットでHAT培地2滴(約0.1ml)を加えた。2、3、5および8日目に培地の半分(約0.1ml)を新しいHAT培地で置き換え、11日目に培地の半分(約0.1ml)を新しいHT培地で置き換えた。14日目にハイブリドーマの生育が肉眼で認められた全ウェルについて、酵素免疫測定法(ELISA)によりウェルが陽性であることを確認した。
具体的には次の通りに操作を行った。先ず、実施例1で精製したカチオニックトリプシンでポリスチレン製96穴プレートをコートした。コートするカチオニックトリプシンを1μg/mlとなるように調製し、100μl/ウェルとなるように添加した。次に各ウェルを洗浄用PBS(0.05質量%Tween20含有)で洗浄して未吸着の抗原を取り除いた。さらに各ウェルの未コート部分を1質量%BSAでブロックした。洗浄後、この各ウェルにハイブリドーマの生育が確認された各ウェルの上清100μlを添加して、37℃で約1時間静置した。洗浄後、2次抗体として西洋わさびペルオキシダーゼ(HRP)標識ヤギ抗マウス免疫グロブリン(Cappel社製)を加え、さらに37℃で約1時間静置した。洗浄後、基質である過酸化水素と2,2'−アジノ−ビス(3−エチルベンゾチアゾリン−6−スルホン酸)を加え、発色の程度をマイクロプレート用吸光度測定機(MRP−A4、東ソー製)を用いて405nmの吸光度で測定した。
【0086】
(d)ハイブリドーマのクローニング
上記(c)の(2)でカチオニックトリプシンに対して陽性を確認したウェル中のハイブリドーマを、限界希釈法を用いてモノクローン化した。すなわち、NS−1培地1ml当りフィーダーとして107個のマウス胸腺細胞(Balb/cマウスより調製)を含むクローニング培地を調製し、96穴マイクロウェルにハイブリドーマをウェル当り5個、1個、0.5個になるように希釈し、それぞれ36穴、36穴、24穴に加えた。5日目、12日目に全ウェルに約0.1mlのNS−1培地を追加した。クローニング開始後約2週間で、肉眼的に十分なハイブリドーマの生育を認め、コロニー形成陰性ウェルが50%以上である群について前述したELISAで行った。調べた全ウェルが陽性でない場合、抗体陽性ウェル中のコロニー数が1個のウェルを4〜6個選択し、再クローニングを行った。最終的にそれぞれのカチオニックトリプシンに対するモノクローナル抗体を産生するハイブリドーマが得られた。
【0087】
(e)モノクローナル抗体のクラス、サブクラスの決定
前述したELISAに従い、カチオニックトリプシンをコートしたポリスチレン製96穴プレートに、(d)で得られたハイブリドーマの上清を加えた。次にPBSで洗浄後、アイソタイプ特異的ウサギ抗マウスIgG抗体(Zymed Lab.製)を加えた。さらにPBSで洗浄後、西洋わさびペルオキシダーゼ標識ヤギ抗ウサギIgG(H+L)を加え、基質として過酸化水素および2,2'−アジノ−ジ(3−エチルベンゾチアゾリン酸)を用いてクラス、サブクラスを決定した。実施例1で得られたカチオニックトリプシンを免疫して得られたモノクローナル抗体産生ハイブリドーマのクローン番号およびサブクラスを表1に示した。
【0088】
以下では、得られた10種類のハイブリドーマクローンをそれぞれ「ハイブリドーマ−020−205」、「ハイブリドーマ−020−206」、「ハイブリドーマ−021−213」、「ハイブリドーマ−021−215」、「ハイブリドーマ−027−305」、「ハイブリドーマ−028−201」、「ハイブリドーマ−028−202」、「ハイブリドーマ−028−205」、「ハイブリドーマ−031−302」及び「ハイブリドーマ−031−204」と呼び、各ハイブリドーマが産生するモノクローナル抗体をそれぞれ「020−205抗体」、「020−206抗体」、「021−213抗体」、「021−215抗体」、「027−305抗体」、「028−201抗体」、「028−202抗体」、「028−205抗体」、「031−302抗体」及び「031−204抗
体」と呼ぶ。
【0089】
なお、ハイブリドーマクローン「ハイブリドーマ−028−202」、「ハイブリドーマ−031−302」はそれぞれFERM P−20265及びFERM P−20266として、独立行政法人産業技術総合研究所特許生物寄託センターに寄託されている(寄託日:平成16年10月21日)。
【0090】
【表1】

【0091】
(f)ハイブリドーマの培養とモノクローナル抗体の精製
得られたハイブリドーマ細胞をNS−1培地で培養し、その上清から濃度10〜100μg/mlのモノクローナル抗体を得た。また、予め1週間前にプリスタンを腹腔内投与したマウス(Balb/c系、雌、6週齢)に、同じく得られたハイブリドーマ107個を腹腔内投与し、1〜2週間後、腹水中からも4〜7mg/mlのモノクローナル抗体を含む腹水を得ることができた。得られた腹水は飽和硫酸アンモニウムで塩析後、たとえば、028−202抗体は、腹水16mlをリン酸緩衝生理食塩液(pH7.4)で2倍希釈し、飽和硫酸アンモニウムを25.2ml加え、最終濃度40(w/w)%飽和とし、4℃で一夜インキュベートした。さらに、13500rpm,30分間で遠心分離し、沈殿を蒸留水で懸濁し、60mM NaCl/0.03M Tris−HCl(pH8.0)で透析した。DEAE−セファロース(ファルマシア社製)カラム(平衡化液及び溶出液:60mM NaCl/0.03M Tris−HCl(pH8.0))に通し、非吸着画分を3ml/画分で分取し、リン酸緩衝生理食塩液(pH7.4)で透析した。非吸着画分は1.38mg/mlで32ml得られ、−80℃で保存した。さらに、IgGクラスの抗体をプロテインAアフィゲル(Bio−Rad Lab.社製)(平衡化液:60mM NaCl/0.03M Tris−HCl(pH8.0))に吸着させ、0.1Mクエン酸緩衝液(pH5.0)で溶出することにより精製した。
【0092】
<実施例3> ネコトリプシンに対する反応性
実施例2で調製した各モノクローナル抗体についてカチオニックネコトリプシンとの反応性を調べた。カチオニックネコトリプシンは実施例1に従ってネコ膵臓より精製したものを用いた。このカチオニックネコトリプシン100ngを96穴ミクロタイトレーションプレート(costar社製)に加え、4℃で一晩コートした。1質量%BSA、0.1M塩化ナトリウム及び10mM EDTA含有30mMリン酸緩衝液(pH7.0,緩衝液A)を各ウェルに300μlずつ加え、4℃で保存した。これに、抗ネコトリプシンモノクローナル抗体を1μg/ml加えて、37℃で1時間インキュベートし、さらに抗マウスIgG・IgM・IgA−HRP抗体(KPL社製)1μg/ml加え、37℃で1時間インキュベートした。次に基質であるH22及び2,2'−アジノ−ビス(3−エチルベンゾチアゾリン−6−スルホン酸)を加え、マイクロプレートリーダー(MRP−
A4、東ソー)を用いて405nmの吸光度を測定した。吸光度の程度により、反応性を次の基準で△〜◎で表して判定した。(△:0.2以上0.6未満、○:0.6以上1.0未満、◎:1.0以上)その結果は、表1に示した通りである。
【0093】
<実施例4> サンドイッチアッセイ
下記の方法に従えば、実施例2で調製した抗ネコトリプシンモノクローナル抗体から適当な2種の抗体の組み合わせ(例えば031−302抗体および028−202抗体との組み合わせ)によって、ネコトリプシンを特異的に検出・測定するサンドイッチ系が構成できる。測定の目的に応じて、各反応緩衝液の組成を変更することで反応の短縮、延長などが調整できる。また標準抗原のネコトリプシンは、ネコ膵臓あるいはその組織培養上清、または膵液から精製することができる。
【0094】
(a)標識用金コロイドの調製
200mlの蒸留水を沸騰させ、その中に4mlの塩化金酸(HAuCl4)を添加し、さらに、4mlの1質量%クエン酸ナトリウムを添加した。この溶液の色が、青色から赤紫色になるまで加熱後、室温になるまで冷却した。得られた金コロイド溶液は0.2μmのフィルターに通し、標識として使用した。得られた金コロイド溶液を安定化させるタンパク量は、次のようにして決定した。すなわち、1mlずつ金コロイド溶液を試験管にとり、それに抗体溶液を順次0,1,2,3,・・・,15μgとなるように添加し、2分間攪拌した後、それぞれに100μlの10質量%NaCl水溶液を添加し、さらに5分間攪拌した後に吸光度A530を測定した。吸光度A530が最大になるタンパク質濃度を金コロイド溶液を安定化させるタンパク量とした。
【0095】
(b)標識抗体の調製
上記(a)で得られた金コロイド溶液50mlをpH9に調整したものに、2mMのBorax(和光純薬工業(株)製)で透析して得られた実施例2の1mg/ml濃度の抗トリプシンモノクローナル抗体を5ml添加し、5分間攪拌した。そこへ10質量%牛血清アルブミン(BSA)含有2mMのBoraxを5.5ml添加した。得られた混合物を10,000rpmで30分間遠心分離し、分離して得られた沈殿に1質量%BSA含有2mM Boraxを添加してほぐし、再度10,000rpmで30分間遠心分離し、こうして分離して得られた沈殿に1質量%BSA含有10mM TBS(和光純薬工業(株)製,pH8.2)を添加してほぐした。得られた標識抗体は0.2μmメンブレンフィルター(アドバンテック東洋株式会社製)に通し、測定に使用した。
【0096】
(c)抗マウスIgGポリクローナル抗体の作製
精製マウスIgG(Jackson Immuno Research Labs.製)を抗原として用いて抗マウスIgGポリクローナル抗体を作製した。すなわち、上記抗原を1mg/100μlとなるように0.1Mリン酸緩衝生理食塩液(PBS,pH7.4)で調製し、それを等量の完全フロイントアジュバント(ナカライテスク株式会社製)と混合し、エマルジョンを調製する。該エマルジョンを2kg日本白色種ウサギの背に皮下投与し(1mg/200μl/羽)、初回免疫した。その後、10日〜2週間間隔をあけて、追加免疫した。この追加免疫では抗原を1mg/100μlとなるように調製し、それを等量の不完全フロイントアジュバント(ナカライテスク株式会社製)と混合し、エマルジョンを調製し、該エマルジョンをウサギの背に皮下投与(1mg/200μl/羽)した。必要に応じて、この間隔で免疫を繰り返すこともできる。
最終免疫として、抗原を1mg/200μlとなるように調製し、それをそのまま静脈内投与した。その3日後、耳静脈より、60mlの採血を行った。採血した血液を4℃で一夜保存し、3000rpm×20分間遠心分離を行い、上清(血清)を30ml採取した。この血清に等量のPBS(pH7.4)30mlを加え、飽和硫酸アンモニウム溶液を30ml加え、最終濃度を33%(w/w)とした。4℃で一夜放置し、13000r
pm×30分間遠心分離を行い、沈殿をとった。この沈殿に蒸留水を加え、懸濁し、0.03M Tris−HCl(pH8.3)−0.05M NaClで透析した。この透析サンプルを、DEAE−セファロース(ファルマシア製)で、0.03M Tris−HCl(pH8.3)−0.05M NaClを移動相とし、イオン交換クロマトグラフィーを行った。フロースルーを分取し、抗マウスIgGポリクローナル抗体として、4.56mg/ml濃度の抗体27.5mlが得られ、−80℃で保存した。
【0097】
(d)モノクローナル抗体結合担体の調製
抗トリプシンモノクローナル抗体を0.01Mリン酸緩衝液(pH7.5)に溶解し、1mg/mlの濃度に調製した。このモノクローナル抗体溶液と上記c)で作製した抗マウスIgGポリクローナル抗体を0.01Mリン酸緩衝液(pH7.5)に溶解し、1mg/mlの濃度に調製したポリクローナル抗体溶液を抗体結合用膜SNHF膜(ミリポア社製)上の異なる場所に1アッセイ当たり1μl/lineとなるように付着させた。抗体溶液を付着させた膜は、室温で30分間減圧乾燥した。
【0098】
(e)標識抗体結合パットの調製
コンジュゲートパット(ミリポア社製)に1質量%BSAを含む10mM炭酸−リン酸緩衝液(pH7.5)を添加し、58℃で60分間乾燥した。乾燥したコンジュゲートパットに、2質量%BSA及び10質量%ショ糖を含む2mMのBoraxで希釈した金コロイド標識した抗ネコトリプシンモノクローナル抗体を染み込ませ、58℃で60分間乾燥した。
【0099】
(f)1ステップサンドイッチアッセイ
上記(d)及び(e)で調整されたパーツを組立て、ラテラルフロー装置(図1)を作製し、アッセイに使用した。実施例1においてアフィニティークロマトグラフィーで精製したネコトリプシンを牛胎仔血清(FBS)に溶解し、濃度既知の標準抗原(1〜100ng/ml)として使用した。それを検体として40μlを、上記のラテラルフロー装置に適用した。金コロイド標識抗体として028−202抗体を用い、膜担体結合抗体として031−302抗体を用いた場合、もっとも優れた検出感度(10ng/ml)が得られた。
【0100】
g)ラテラルフロー装置の製造
臨床上必要とされるキットとするために、ネコトリプシンの血中正常値範囲(12−82ng/mL)を考慮し、感度およびカットオフ値の調節をした。すなわち、80ng/mL以下では陰性判定(金コロイドによる発色:サンプルライン<コントロールライン)となり、200ng/mL以上で陽性判定(金コロイドによる発色:サンプルライン>コントロールライン)となるように、サンプルラインおよびコントロールラインの抗体濃度を調整し、ラインの発色強度の大小で判定可能な装置を作製した(表2)。
【0101】
【表2】



【0102】
<実施例5> サンドイッチEIA
(a)酵素標識抗体(IgG−HRP複合体)の調製
(1)SH基標識IgGの調製
Ishikawa et al.の方法(J.Immunoassay,4(3),209〜327,1983)に従って、抗ネコトリプシンIgG−HRP複合体を調製する。実施例2で得られた031−302抗体(サブクラス:IgG)を約0.1Mリン酸緩衝液(pH約6.5)に対し透析し、その溶液に含有される該抗体(5mg/ml、0.8ml)に対して約100倍モルのS−アセチルメルカプト無水コハク酸をDMF溶液(20μl)として加え、約30℃,約30分間インキュベーションする。次に、約100μlの約0.1Mトリス−塩酸緩衝液(pH約7.0)、約10μlの約0.1M EDTA溶液(pH約6.0)、約100μlの約1Mヒドロキシルアミン溶液(pH約7.0) を加え、約30℃、約5分間静置後、約5mM EDTA含有約0.1Mリン酸緩衝液(pH約6.0)で平衡化したSephadex G−25(ファルマシア製)でゲルろ過し、SH基標識抗ネコトリプシンIgG画分を得る。
【0103】
(2)マレイミド標識HRPの調製
西洋わさびペルオキシダーゼ(HRP)(ロッシュダイアグノスティックス社製)を15mg/mlの濃度になるように0.1Mリン酸緩衝液(pH7.0)1mlに溶解し、これにDMF90μlに溶解したコハク酸イミド(EMCS)9.0mgをHRP量に対して25倍モル量加え、30℃、30分間反応させた。この反応液を0.1Mリン酸緩衝液(pH6.0)で平衡化したSephadex G−25カラムでゲルろ過し、マレイミド標識HRP画分を10.3mg分取した。
【0104】
(3)IgG−HRP複合体の調製
上記(1)で調製したSH基標識IgG約1モルに上記(2)で得られたマレイミド標識HRP約5モルを加え、約4℃で約20時間静置する。この混合液を約0.1Mリン酸緩衝液(pH約6.5)で平衡化したウルトロゲルAcA44カラム(ファルマシア社製)でゲルろ過し、抗ネコトリプシンIgG−HRP複合体画分を分取し、約4℃で保存する。
【0105】
(b)酵素標識抗体(Fab'−HRP複合体)の調製
(1)Fab'の調製
実施例2で得られた031−302抗体(サブクラス:IgG)90mgを0.1M NaClを含む0.1M酢酸緩衝液(pH4.2)7mlに溶解し、その溶液を以下示すようにしてペプシンで消化した。すなわち、上記IgGに対して2%(w/w)のペプシン700μl(1.8mg)を加え、37℃,24時間消化した。さらにその消化物に、3M Tris−HCl溶液(pH7.5)1.2mlを加えてpHを7.0に調整することによって反応を停止させ、0.1Mリン酸緩衝液(pH7.0)で平衡化したウルトロゲルAc A44カラムを用いたゲルろ過により、F(ab')2画分を分取し、15mgのF(ab')2を得た。次に、このF(ab')2を15mg用い、5mM EDTA含有0.1Mリン酸緩衝液(pH6.0)中で透析し、最終濃度10mMとなるようにアミノエタンチオール塩酸塩を加え、37℃で90分間還元した後、5mM EDTA含有0.1Mリン酸緩衝液(pH6.0)で平衡化したウルトロゲルAc A44カラムを用いてゲルろ過し、Fab'画分を分取し、Fab'を8.2mg得た。
【0106】
(2)Fab'−HRP複合体の調製
前記(1)項で調製したFab'8mgに対して、上記(a)(2)項で得られた画分中のマレイミド標識HRP7mgを等モルになるように混合し、さらにFab'及びマレイミド標識HRPの最終濃度が50μMとなるように、5mM EDTA含有0.1Mリン酸緩衝液(pH6.0)で2.4mlに調製した。この混合液を4℃、20時間反応後
、Fab'の10倍モル量の0.1M N−エチルマレイミド8.87μlを加え、未反応のSH基をブロックした。これを0.1Mリン酸緩衝液(pH6.5)で平衡化したウルトロゲルAc A44カラムを用いてゲルろ過し、Fab'−HRP複合体画分を分取し、204μg/mlで24ml得て、これに0.1質量%BSAおよび0.001質量%クロルヘキシジンを添加して、−80℃で保存した。
【0107】
(c)モノクローナル抗体結合担体の調製
J.Immunoassay,4,209〜327,1983に記載のIshikawa et al.の方法に従って、実施例2で得られた028−202抗体を0.1%アジ化ナトリウム含有0.1Mリン酸緩衝液(pH7.5)に溶解し、その濃度が100μg/mlとなるように調製した。このモノクローナル抗体溶液を96穴マイクロプレートにウェル当たり100μlずつ加え、4℃、24時間静置した。次にモノクローナル抗体溶液を除去し、1質量%BSA,0.1M塩化ナトリウム及び10mM EDTA含有30mMリン酸緩衝液(pH7.0,緩衝液A)を各ウェルに300μlずつ加え、4℃で24時間静置した。この96ウェルマイクロプレートを精製水で2回洗浄し、減圧下室温で3時間乾燥し、プレートシールをして4℃で保存した。
【0108】
(d)1ステップサンドイッチEIA法
ネコトリプシン(標準試料:2,5,10,20,50,100,200ng/ml)を含む牛胎仔血清(FBS)を検体として調製し96穴マイクロプレートに各々20μl加えた。次に、上記(a)及び(b)で調製した酵素標識抗体をそれぞれ100ng/mlとなるように0.5質量%BSA含有0.05Mリン酸緩衝液(pH8.0,緩衝液B)で希釈し、上記マイクロプレートに100μlずつ加え混和した。この混合液を前記(c)で調製した抗体結合プレートに100μl加え、37℃で1時間反応させ、洗浄緩衝液(0.05質量% Tween20,70mM NaCl含有80mMリン酸緩衝液(pH7.0))で3回洗浄した。次に、0.02%過酸化水素含有0.1Mクエン酸−リン酸緩衝液(pH4.9)に溶解した0.1mg/ml 2,2'−アジノ−ビス(3−エチルベンゾチアゾリン−6−スルホン酸)をウェル当たり100μl加え、37℃で15分間反応後、1質量%ドデシル硫酸ナトリウム(SDS:ナカライテスク社製)溶液100μlを添加し反応を停止させた。この反応混液の405nmの吸光度(A405)をマイクロプレートリーダーで測定した。ネコトリプシン標準試料の濃度の上昇に伴ってA405は直線的に増加した(図2)。該検量線により検体中のネコトリプシン濃度を求めることが可能であった。
【0109】
(e)再現性試験
前記(d)に記載した方法に従い、同時再現性試験及び測定日間再現性試験を行った。上記で調製したモノクローナル抗体結合担体と酵素標識抗体(Fab'−HRP)を用いて、正常ネコ血清について、同時再現性試験(表3)及び測定日間再現性試験(表4)を実施した。いずれも良好な再現性が得られた。
【0110】
【表3】

【0111】
【表4】

【0112】
(f)添加回収試験
予め、ネコ血清(ネコトリプシン含有)7.5μlに標準試料液(20〜200ng/ml)7.5μlを加え、さらに200μlの酵素標識抗体(Fab'−HRP)液を加えた。この混合液を抗体結合プレートに100μl加え、前記(d)に記載した方法と同様にしてネコトリプシン量を測定し回収率を算出した。その結果、実測値で85.5〜114.8%、平均値98.8%の添加回収率となり、いずれも十分な回収率が得られた(表5)。
【0113】
【表5】

【0114】
以上の測定系を使用して、各種検査を行い、病理学的検査において判断で膵炎と診断されたネコにおいて、前記(d)に記載した方法と同様にしてネコトリプシン量を測定した。膵炎2例において、279、186ng/mlと高値を示した。正常ネコ54例での測定値の平均は47.4 ± 22.2ng/mlであり、ネコトリプシンを測定することにより、膵炎の診断に有用であることが示された。
【0115】
<実施例6> 抗ネコトリプシンモノクローナル抗体を用いたウエスタンブロッティング
実施例1に従いネコ膵臓より精製したカチオニックネコトリプシン標品(5,2.5,1.13,0.7g/レーン)を還元条件下SDS−PAGE(10%total Acrylamide)に供した後、サンプルをニトロセルロース・フィルターに転写した。次に実施例5で調整したHRP標識化031−302抗体(0.01mg/ml)を反応させ、Nomura,H.,et al.,Cancer Res.,55,3263−3266(1995)に記載の方法に従って可視化した(ウエスタンブロッティング)。その結果を図3に示した。抗ネコトリプシン モノクローナル抗体(031−302抗体)
が、ネコトリプシン標品(カチオニックネコトリプシン)と反応することを確かめることができた。
【0116】
<実施例7> サンドイッチEIAの評価
a)同一のネコから血清と血漿を調製し、血漿を検体として使用した場合の測定値と血清を検体として使用した場合の測定値の相関を7検体について検討した(図4)。測定は、実施例5(d)に記載の方法に従った。その結果、傾き1.0193、相関係数R=0.975という成績が得られ、検体として血漿及び血清のいずれも使用可能であると判断した。
【0117】
b)検体中のトリプシン様免疫反応物質の存在状態に測定値が影響を受けるかどうかを検討した(表6)。測定は実施例5(d)の方法に従い、固相抗体、標識抗体は表6に記載の構成とした。表6中、陽性抗原0.5μg/mLとはネコトリプシン0.5μg/mLのことを意味し、陰性抗原0μg/mLとはネコトリプシンが含まれていないことを意味する。また、抗原希釈液50%FBS/PBSにはα1−アンチトリプシンが含まれており、従って、陽性抗原(ネコトリプシン)を50%FBS/PBSで希釈すればネコトリプシン−α1−アンチトリプシン複合体が形成されることになる。
結果は表6に示すように、028−202抗体と031−302抗体及び028−202抗体と031−204抗体の組み合わせではネコトリプシンでも、ネコトリプシンとネコトリプシンに対するプロテアーゼインヒビターとの複合体(ネコトリプシンとα1−アンチトリプシンとの複合体)でもほぼ同等の測定値が得られた。すなわち、ネコトリプシンとネコトリプシン−α1−アンチトリプシン複合体の両方が測定できた。 このことは、028−202抗体、031−302抗体及び031−204抗体はネコトリプシン及びネコトリプシン−プロテアーゼインヒビター複合体の双方と免疫反応することが示された。
これに対し、028−202抗体と027−305抗体の組み合わせでは、ネコトリプシンは測定できたが、ネコトリプシン−プロテアーゼインヒビター複合体(ネコトリプシンとα1−アンチトリプシンとの複合体)については、陽性抗原と陰性抗原の測定値に差がほとんどなく、その測定はできなかった。本結果から、027−305抗体はネコトリプシンとは免疫反応するがネコトリプシン−プロテアーゼインヒビター複合体とは免疫反応しないことが示された。
従って、ネコトリプシン及びネコトリプシン−プロテアーゼインヒビター複合体の両方が測定できる測定系(028−202抗体と031−302抗体及び028−202抗体と031−204抗体の組み合わせ)とネコトリプシンのみ測定でき、ネコトリプシン−プロテアーゼインヒビター複合体は測定できない測定系(028−202抗体と027−305抗体の組み合わせ)の2種類で測定することにより、ネコトリプシンおよびネコトリプシン−プロテアーゼインヒビター複合体のそれぞれを免疫学的に分別定量することが可能である。
【0118】
【表6】

【産業上の利用可能性】
【0119】
本発明は、ネコトリプシンに特異的に反応するモノクローナル抗体を作成し、免疫学的組織染色などトリプシンの検出手段及びそのための試薬を提供できる。また、本発明は、トリプシンを検出、測定する方法、例えば、EIA系が提供できる。本発明は、前述の説明及び実施例に記載したことに限定されることはなく、上述の教示に鑑みて、多くの改変及び変形が可能であり、それらも本発明の技術的範囲に属する。
【図面の簡単な説明】
【0120】
【図1】ラテラルフロー装置の測定模式図である。フィルターに検体を滴下すると金コロイド標識マウス抗体と検体が反応し、抗原抗体複合体を形成しながら、サンプルラインに到達する。サンプルラインで抗原抗体複合体ともう一つのマウス抗体が反応し、ラインを形成する。さらに過剰な金コロイド標識抗体はコントロールラインで抗マウス抗体と反応し、ラインを形成する。
【図2】1ステップサンドイッチEIA法により得られた検量線を示す図である。TLI濃度2-200ng/mLの範囲で直線的に405nmの吸光度の上昇が認められる。
【図3】左のカラムのレーン1〜4は精製カチオニックネコトリプシンの電気泳動後の染色図を示す図である。また、右のカラム(レーン1〜4)のウエスタンブロットでは抗マウス抗体は精製カチオニックネコトリプシンに特異的に反応している。レーン 1: 5μg/lane、レーン 2 : 2.5μg/ lane、レーン 3 : 1.13μg/ lane、レーン 4 : 0.7μg/ lane
【図4】サンドイッチEIA法で、ネコトリプシンを含むネコ血漿を検体として使用した場合の測定値とネコトリプシンを含むネコ血清を検体として使用した場合の測定値の相関を示す図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ネコトリプシノーゲン及び/又はネコトリプシンと免疫反応するモノクローナル抗体。
【請求項2】
ネコトリプシノーゲン、ネコトリプシン、及びネコトリプシンとネコトリプシンに対するプロテアーゼインヒビターとの複合体からなる群から選択される物質の少なくとも1種と免疫反応することを特徴とする、請求項1に記載のモノクローナル抗体。
【請求項3】
前記ネコトリプシノーゲン及び/又は前記ネコトリプシンと免疫反応し、前記ネコトリプシンとネコトリプシンに対するプロテアーゼインヒビターとの複合体にも免疫反応することを特徴とする、請求項2に記載のモノクローナル抗体。
【請求項4】
前記ネコトリプシノーゲン及び/又は前記ネコトリプシンと免疫反応し、前記ネコトリプシンとネコトリプシンに対するプロテアーゼインヒビターとの複合体とは免疫反応しないことを特徴とする、請求項2に記載のモノクローナル抗体。
【請求項5】
前記ネコトリプシノーゲンがカチオニックネコトリプシノーゲンであり、前記ネコトリプシンがカチオニックネコトリプシンであることを特徴とする、請求項2〜4のいずれか1項に記載のモノクローナル抗体。
【請求項6】
受託番号FERM P−20265又はFERM P−20266のハイブリドーマにより産生される、請求項1〜5のいずれか1項に記載のモノクローナル抗体。

【請求項7】
請求項1〜5のいずれか1項に記載のモノクローナル抗体を産生するハイブリドーマ。
【請求項8】
請求項1〜5のいずれか1項に記載のモノクローナル抗体を産生する、受託番号FERM P−20265又はFERM P−20266のハイブリドーマ。
【請求項9】
請求項1〜6のいずれか一項に記載のモノクローナル抗体の少なくとも1種を用いて、ネコトリプシノーゲン、ネコトリプシン、及びネコトリプシンとネコトリプシンに対するプロテアーゼインヒビターとの複合体からなる群から選択される物質の少なくとも1種を免疫学的に測定することを特徴とする免疫学的測定方法。

【請求項10】
請求項1〜6のいずれか一項に記載のモノクローナル抗体の少なくとも1種を用いて、ネコトリプシノーゲン、ネコトリプシン、及びネコトリプシンとネコトリプシンに対するプロテアーゼインヒビターとの複合体からなる群から選択される物質の少なくとも1種と免疫反応する抗体を免疫学的に測定することを特徴とする免疫学的測定方法。
【請求項11】
ネコトリプシノーゲン及び/又はネコトリプシンと、ネコトリプシンとネコトリプシンに対するプロテアーゼインヒビターとの複合体とをそれぞれ免疫学的に分別定量することができる2種の抗体を含み少なくとも一方が請求項1〜6のいずれか一項に記載のモノクローナル抗体であることを特徴とする、免疫学的測定方法。

【請求項12】
請求項1〜6のいずれか一項に記載のモノクローナル抗体を少なくとも1種含むことを特徴とする、免疫学的測定試薬。

【請求項13】
免疫学的方法により検体中のネコトリプシノーゲン、ネコトリプシン、及びネコトリプシンとネコトリプシンに対するプロテアーゼインヒビターとの複合体からなる群から選択される物質の少なくとも1種又は前記物質の少なくとも1種と免疫反応する抗体を測定するための試薬であって、請求項1〜6のいずれか一項に記載のモノクローナル抗体を含むことを特徴とする、免疫学的測定試薬。
【請求項14】
免疫学的方法により検体中のネコトリプシノーゲン、ネコトリプシン、及びネコトリプシンとネコトリプシンに対するプロテアーゼインヒビターとの複合体からなる群から選択される物質の少なくとも1種又は前記物質の少なくとも1種と免疫反応する抗体を測定することができる2種の抗体を含む試薬キットであって、少なくとも一方が請求項1〜6のいずれか一項に記載のモノクローナル抗体であることを特徴とする、免疫学的測定試薬キット。
【請求項15】
免疫学的方法により検体中のネコトリプシノーゲン及び/又はネコトリプシンと、ネコトリプシンとネコトリプシンに対するプロテアーゼインヒビターとの複合体とをそれぞれ免疫学的に分別定量することができる2種の抗体を含み、少なくとも一方が請求項1〜6のいずれか一項に記載のモノクローナル抗体であることを特徴とする、免疫学的測定試薬キット。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2006−265138(P2006−265138A)
【公開日】平成18年10月5日(2006.10.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−83778(P2005−83778)
【出願日】平成17年3月23日(2005.3.23)
【出願人】(000006091)明治製菓株式会社 (180)
【Fターム(参考)】