説明

ネコ免疫不全ウイルスの検出のための方法と装置

動物におけるネコ免疫不全ウイルスの感染またはワクチン接種の判定のための方法と装置。方法にはネコの生体サンプルと様々なFIVポリペプチドの接触およびサンプル中の抗体とポリペプチドの結合の判定が含まれる。動物のFIV envポリペプチドに対する免疫反応を測定することにより、その動物がFIVに感染しているか、FIVワクチンを接種されたことがあるかを判定することができる。FIV抗体を検出するための装置を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連する出願との相互参照
本出願は、2004年6月30日に出願された米国特許仮出願番号60/584,694および2003年12月18日に出願された米国特許仮出願番号60/530,564に基づく優先権を主張する。
【0002】
発明の分野
本発明はネコ免疫不全ウイルスに対する抗体の検出に関するものである。
【背景技術】
【0003】
発明の背景
従来ネコTリンパ球レンチウイルスと呼ばれていたネコ免疫不全ウイルス(FIV)は、1986年にカリフォルニア州ペタルマ(Petaluma)の大きな飼いネコ集団から初めて発見された(Pederson et al., Science (1987) 235: 790)。ネコがFIVに感染するとエイズ様症候群を呈する。FIVは形態的および病理学的にヒト免疫不全ウイルス(HIV)と似ているが、抗原性ではHIVと明確に区別される。HIVと同様、ネコが一旦FIVに感染すると初期感染期(ウイルス血症、発熱、一般的なリンパ節炎)から長期の無症候期を経てCD4リンパ球の減少による極めて難治性の免疫機能障害が出現し、二次感染を併発して遂には死に至る。
【0004】
FIVはレトロウイルス科レンチウイルス亜科に分類される。レトロウイルス科にはヒト免疫不全ウイルス、サル免疫不全ウイルス、ウマ伝染性貧血ウイルス、ヒツジのマエディ・ビスナ・ウイルス、ヤギ関節炎脳炎ウイルス(CAEV)が含まれる。FIV遺伝子は他のレンチウイルスと同様に、gag、polおよびenvに対応する3つの長いオープン・リーディング・フレームを有する構造をしている(Talbott et al., Proc. Natl. Acad. Sci. (1989) 86: 5743; Olmsted et al., Proc. Natl. Acad. Sci. (1989) 86: 2448)。gag遺伝子はウイルスの主要な構造要素、env遺伝子はエンベローブの糖タンパク質、pol遺伝子はポリメラーゼ・タンパク質をコードしている。
【0005】
gag遺伝子からは55kDのポリタンパク質が発現し、これはp15マトリックス・タンパク質、p24カプシド・タンパク質、p10核カプシド・タンパク質の3つのサブユニットにプロセシングされる。pol遺伝子は、プロテアーゼ、逆転写酵素、それに機能不明のp14.6タンパク質の3つのタンパク質をコードしている。この遺伝子のプロテアーゼ部分の自動処理により、pol領域の3つのタンパク質すべての産生が増加する。さらに、このプロテアーゼはgag前駆物質の処理にも重要な働きをする。pol遺伝子はgag-pol融合タンパク質として発現する。エンベローブ遺伝子は160 kDの糖タンパク質gp160として発現する。FIVコア・タンパク質の抗原性は他のレンチウイルスとよく似ている。
【0006】
世界中でいくつかのウイルス株が分離され、ウイルスの構造を決定するためいくつかの独立した研究が実施されてきた。用いられた分離株は米国のペタルマ株(Talbott et al. Natl. Acad. Sci. USA, 1989, 86, 5743-5747; Philipps et al., J. Virol., 1990, 64, 10, 4605-4613)、日本のTM1株とTM2株(Miyazawa et al., Arch.Virol., 1989, 108, 59-68)、スイスのFIVZ1株とFIVZ2株(Morikawa et al., Virus Research, 1991, 21, 53-63)である。
【0007】
米国のFIV分離株(ペタルマ株)から得られた3つのプロウイルス・クローン(FIV34TF10、FIV14、分離PPRの各クローン)のヌクレオチド配列が誌上発表され(Olmsted, et al. 1989; Philipps et al., 1990; Talbott et al., 1989)、2つのスイス株と比較されている(Morikawa et al. 1991)。 Morikawa らはこの比較研究により、FIVのenv遺伝子にはいくつかの不変領域と可変領域が存在することを明らかにした。フランス株(Wo株とMe株)も分離されている(Moraillon et al., 1992, Vet. Mic., 31, 41-45)。
【0008】
このウイルスは血液中の単核球の中で複製されて増殖し、Tリンパ球、腹水マクロファージ、脳マクロファージ、星状膠細胞を刺激する。他のレトロウイルスで一般的なように、FIVの遺伝子物質はRNAであり、ウイルスRNAからDNAをコピーを産生する過程は宿主中のFIVが自己複製するために必要不可欠なステップである。このステップには侵入したウイルスが宿主に持ち込んだ逆転写酵素が必要である。ウイルス遺伝子のこのDNA版は、ウイルスがプロウイルスの形で住み続ける感染宿主細胞の遺伝物質の中に挿入される。このプロウイルスは細胞が分裂するたびに複製され、新しいウイルス粒子を産生するために細胞を常にコードすることができる。FIVに感染した細胞は死ぬまで感染したままである。
【0009】
感染したネコの唾液には相当量のウイルスが存在することから(Yamamoto et al., Am. J. Vet. Res. 1988, 8:1246)、このウイルスは通常、主に感染したネコが噛んだ傷からの水平感染で伝染すると考えられる。垂直感染の報告もあるが、これはまれである。
【0010】
FIV感染の現在の診断スクリーニング試験では、血清中の抗FIV抗体(Ab)を検出している。ウイルス検出キットも入手できるが、普及していない。感染動物中の抗FIV抗体の存在を判定する診断試験が多数利用できるようになってきている。例えば、PetChek(登録商標) FIV抗体試験キットおよびSNAP(登録商標) Combo FeLV Ag/FIV抗体試験キット(IDEXX Laboratories, Westbrook, Maine)は免疫測定法に基づいたFIV感染の診断試験である。
【0011】
FIV感染が世界中で広がっていることがいくつかの研究により明らかになっていることから、FIV感染の検出は益々重要となっている。この疾患に対処するためにワクチンが開発されていることから、ワクチンの効果を判定すること、またワクチン接種されたネコと自然感染したネコを識別することがさらに重要となってきている。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0012】
発明の要約
1つの面では、本発明は新規のFIVポリペプチドに関する。1つの面として、本発明はFIV envポリペプチドのようなFIVポリペプチドに対するネコの免疫反応を調べることにより、ネコがFIVのワクチン接種を受けたことがあるか、またはFIVに自然感染しているかを判定する方法を提供する。
【0013】
別の面では、本発明は、FIVに自然感染した動物とFIV未感染動物やFIVワクチン接種された動物を鑑別する方法に関する。本方法には、FIVワクチンに対する動物の免疫反応の重要な要素であるFIV抗体が実質的に結合しないポリペプチドと動物から得た生体サンプルと接触させることが含まれる。そのポリペプチドに実質的に結合するサンプル中のFIV抗体を検出する。検出ステップの陽性結果は自然感染に相応することからその動物は自然感染であると判定され、陰性結果はワクチン接種または未感染に相応することからその動物はワクチン接種または未感染であると判定される。このポリペプチドはFIV envに由来するものでありうる。
【0014】
さらに別の面では、本発明はネコがFIVワクチンを接種されたことがあるのかFIVに自然感染しているのかを判定する方法に関する。この方法は、(a) ワクチン接種後、ワクチンに反応して産生されるある種のFIV抗原に対する特異抗体が検出されない十分な期間が過ぎる前に、ネコがFIVペプチドに対する抗体を持っているかを検出する、(b) ワクチン接種後、ワクチンに反応して産生されるある種のFIV抗原に対する特異抗体が検出されない十分な期間が過ぎた後、ネコがFIVポリペプチドに対する抗体を持っているかを検出する、(c) ステップaで抗体を検出するがステップbでは検出しないことにより動物がワクチン接種されたと判定する、(d) ステップaとステップbで抗体を検出することにより動物が自然感染したと判定することを含んでいる。
【0015】
本発明はネコがFIVに感染したことがないか、またはFIVワクチンを接種されたことがあるかを判定する方法をも提供する。この方法は、FIV由来のポリペプチドに対する抗体を検出するためネコの生体サンプルを分析すること、そのような抗体が検出されないことによって、そのネコが感染したことがないかまたはワクチンを接種されたことがあるかを判定することを含んでいる。
【0016】
さらに別の面では、本発明はネコがFIVワクチンを接種されたことがあるかないか、あるいはFIVに自然感染したことがあるかないかを判定する方法を提供する。本方法は、ポリペプチドを含む試験装置の提供、ネコからの採血、血液サンプルの試験装置での測定、試験装置でのデータ読み取りを含んでいる。陽性の結果はネコがFIVに自然感染したことがある、またはFIVワクチンを接種されたことがあること、陰性の結果はネコがFIVに自然感染したことがない、またはFIVワクチンを接種されたことがないことを示す。
【0017】
さらに本発明は、乾燥した有孔キャリアーからなり、有孔キャリアー上に固定化された第1の検出試薬と第2の検出試薬を有する診断装置に関し、第1の検出試薬にはFIV自然感染またはFIVワクチン接種のいずれに対する反応でも宿主が産生するFIV抗体を捕捉するタンパク質が含まれ、第2の検出試薬にはFIV自然感染に対する反応で宿主が産生するFIV抗体を捕捉するがFIVワクチン接種に対する反応で宿主が生成するFIV抗体は実質的に捕捉しないタンパク質が含まれる。第1の検出試薬はFIV p15抗原またはFIV p24抗原であり得、第2の検出試薬はFIV envタンパク質であり得る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
詳細な説明
ここに記載する発明を詳細に説明する前に、いくつかの用語の定義を記す。本明細書において使用する場合、単数形の“a”、“an”、および“the”は文脈が明らかに示しているのでない限り複数形の関係項も含めるものとする。
【0019】
本明細書において使用する場合、「ポリペプチド」という用語はペプチド結合でつながっているアミノ酸残基の単鎖もしくは2つ以上の鎖の複合体からなる化合物を指す。ペプチド鎖はどのような長さでも良い。タンパク質はポリペプチドであり、これらは同義語として扱う。本発明の範囲内では、機能上同等のFIVポリペプチドの変異体および断片も含める。ポリペプチドはそのポリペプチドに特異的な1つまたは複数の抗体と結合することができる。
【0020】
FIV由来のポリペプチドには、例えばgagおよびenv領域の部分およびそれらのミミトープを含むFIVプロテオームのいかなる領域も含まれる。参照のためここにそのまま全体が組み込まれている米国特許番号5,648,209、5,591,572、6,458,528には、FIVのenvおよびgagタンパク質に由来するFIVポリペプチドが記述されている。envおよびgagタンパク質由来のこれらのペプチドおよびこれに類するペプチドは、ここに示す発明の方法に使用するのに適している。適切なenvポリペプチドの例には以下のものがある。
CVVPEEVMEYKPRRKRAAIH [配列番号1]
配列番号1は表面エンベローブ・タンパク質(SU3)由来の元来のenv配列(アミノ酸597〜615)であり、ここに元来のものではないN末端システイン残基とともに示す。
【0021】
「結合特異性」または「特異結合」とは、第1の分子が第2の分子、例えば、ポリペプチドとそのポリペプチドに特異的なポリクローナル抗体またはモノクローナル抗体、あるいは抗体の断片(例えば、Fv、単鎖Fv、Fab’、またはF(ab’)2断片)、を実質的に認識することである。
【0022】
「実質的な結合」または「実質的に結合する」とは、特定の測定条件下における測定混合液中の分子間の特異的な結合あるいは認識の程度をいう。最も範囲を広げるならば、実質的な結合は第1の分子が第2の分子と結合する、または第2の分子を認識する能力の欠如の程度と第1の分子が第3の分子と結合する、または第3の分子を認識する能力の大きさの差、すなわち分子の相対濃度やインキュベーションの時間と温度を含む特定の測定条件下において特異的な結合を識別する意味ある測定を実施するための十分な差に関係している。また分子の相対濃度やインキュベーションを含む特定の測定条件下において、第1の分子の第2の分子に対する反応が第3の分子に対する反応の25%以下、好ましくは10%以下、さらに好ましくは5%以下である交叉反応という意味において1つの分子が別の分子と結合する、または別の分子を認識する能力が実質的に欠如している。特異的な結合は広く知られている多くの方法、すなわち免疫組織化学法、酵素免疫測定法(ELISA)、放射性免疫測定法(RIA)、またはウェスタン・ブロット法で試験することができる。
【0023】
FIVに感染する動物はネコ類であり、飼いネコ、ライオン、トラ、ジャガー、ヒョウ、ピューマ、オセロットなどネコ目のすべての動物が含まれると理解されている。本明細書において使用する場合、「ネコ」「動物」の用語はすべてのネコ類を指す。
【0024】
「生体サンプル」とは唾液、全血、血清、血漿、その他FIV抗体を含んでいると考えられるサンプルなど、動物から得られたサンプルを指す。
【0025】
「FIVワクチンに対する動物の免疫反応の重要な要素である抗体」とは、FIVワクチンの接種により誘導された抗体を指す。この抗体はFIV自然感染の結果誘導される抗体と全く同じか同等のものである。ワクチン接種の成功とは、FIVワクチンの重要な要素である抗体が測定可能なレベルまで産生されることである。
【0026】
FIVワクチンは、例えば米国特許番号6,667,295、5,833,993、6,447,993、6,254,872、6,544,528に記述され、米国特許出願番号20040096460に公表されており、それぞれはその全体が参照としてここに組み込まれている。米国特許番号6,447,993および6,254,872は、異なるFIV亜種の細胞フリー分離株、または異なる亜種からの異なるプロトタイプFIVウイルスに感染したいくつかの細胞株の組み合わせから用意されたワクチンを記述している。米国特許番号5,833,933は、FIV gagタンパク質およびFIV envタンパク質をコードしているDNA配列を含むワクチンを記述している。これらのワクチンにはその配列を発現するための発現システムが含まれている。利用できるワクチンの1つに、FEL-O-VAX(登録商標) FIV(Fort Dodge Animal Health, Overland Park, Kansas)がある。
【0027】
FIV感染に対するワクチン接種された動物の生体サンプルは、ワクチンに反応して動物が生成した抗体が存在しているため、FIV感染に対する試験で陽性結果を示す可能性がある。また本発明は、FIVに自然感染した動物とFIV未感染動物やFIVワクチンを接種された動物を鑑別する方法を提供する。本方法には、動物の生体サンプルをFIVワクチンに対する動物の抗体反応の重要な要素である抗体が実質的に結合しないFIV由来のポリペプチドに接触させることが含まれる。
【0028】
また本発明は、ネコがFIVに感染したことがなくFIVワクチンを接種されたこともないかを判定する方法を含んでいる。FIV envおよび/またはgag由来のポリペプチドに対する抗体を検出するため、ネコの生体サンプルを分析する。次に、そのような抗体がないことを調べて、その動物が感染したことがなくワクチンを接種されたこともないことを判定する。
【0029】
場合によっては、ワクチン接種後の初期段階において、動物はワクチン成分である特異FIVポリペプチドに対するある種の抗体を、自然感染に対する反応で生成される量に比べて低濃度ながら一時的(一過性)に産生する。この抗体レベルは経時的に先細りとなり、初期段階が過ぎた後このポリペプチドに対する抗体は検出できなくなる。一般的にこの期間は約10〜12週間であるが、動物種や個々の動物によって様々である。一過性の抗体はワクチンに対する動物の免疫反応の重要な要素ではない。
【0030】
例えば、ワクチンに対する動物のFIV抗体産生はワクチンに依存している。例えば、FEL-O-VAX(登録商標) ワクチンを接種してから約2〜4週間後、動物は血清学的にp24(gag)に対するFIV抗体が陽性となることが知られている。しかしながら、そのようにワクチンを接種された動物は、envタンパク質がワクチンの成分に含まれているにもかかわらず、その1つまたは複数の領域に対する抗体を恒久的なレベルで産生することがない。それとは対照的に、自然感染した動物は通常、FIV gagおよびenvタンパク質の両方に対する抗体を恒久的なレベルで産生する。
【0031】
ワクチンを接種された動物と自然感染した動物の間に見られる免疫反応の相違は、動物がワクチンを接種されたのか自然感染したのかを鑑別する手段を提供する。本発明の方法を用いて、FIVに自然感染した動物を感染したことがない動物およびFIV感染に対するワクチンを接種されている動物から識別することが可能である。したがって、FIV由来のポリペプチドとワクチンに対する動物の免疫反応の重要な要素ではない抗体の間の実質的な結合の検出は、自然感染を意味することになる。そのような結合の相対的欠如は、ワクチンを接種されたか、もしくは感染していないことを意味する。さらに、ワクチン接種および/または自然感染に反応して産生されるp15またはp24タンパク質のような抗体と実質的に結合する第2の別の抗体捕捉反応物質を試験系に組み込むことができる。そのように、個々の捕捉反応物質の様々な組み合わせにより、被検動物のワクチン接種後状態および/または感染後状態を判定する道が開かれる。
【0032】
例えば、FIV gagタンパク質のp15およびp24は死滅ウイルス全体によるFIVワクチンの免疫抗原成分である。これらの成分は接種された動物に恒久的な抗体反応を誘導するものと考えられる。他方、ワクチンの中には免疫学的に意義ある量のFIV envタンパク質を含まないもの、そのタンパク質がウイルス不活性化の過程で変質してしまったもの、さらにはある期間内にそれに対して産生された抗体が、もしあったとしても、p15およびp24に対する抗体よりも少なく検出されるレベルまでワクチン接種によるこのタンパク質の抗原呈示が自然感染における抗原呈示とは異なるものなどがある。このように、ワクチン接種後の初期段階で動物は一過性にenvタンパク質に結合する抗体を低レベルながら産生するが、時間経過と共に抗体産生は減少し約12週間後には検出されなくなる。この例では、一過性に産生された抗体は一定期間の後、ワクチンに対する動物の免疫反応の重要な要素ではなくなる。
【0033】
特異的なFIV envポリペプチドに対する検出可能な抗体の産生は、通常ワクチン接種が完了してから約12週間後にはなくなっていることを考えて、本発明の1つの面では、この生体サンプルは過去12週間以内にFIVのワクチンを接種されていない動物から得られている。ワクチン接種状態が不明で試験が感染を示唆する(抗体捕捉タンパク質との反応に基づく)場合、12週間後に再試験することが勧められる。
【0034】
特異抗体のレベルおよび/または抗原抗体結合反応の動的パラメータ(例えば、親和性、アビジチー)のような、ワクチンを接種された動物と自然感染した動物の間の免疫反応の相違は、ワクチンを接種された動物と自然感染した動物を鑑別するための測定法のデザインにおいて考慮されるべきである。免疫反応の相違は大きく、ワクチン接種後の初期段階の後でさえ、動物が特定のFIVポリペプチドに対する抗体および/または自然感染に対する反応で産生された抗体とは結合性が異なる抗体を低値ながら持続的に産生する場合がある。
【0035】
本発明の方法は様々な方法により適正化が可能であり、当業者によりFIV感染とワクチン接種に対する抗体を有する血清の鑑別を実施する方法に使用されるサンプル希釈、試薬濃度、インキュベーションの温度と時間を同時に調整することができる。例えば、特異ポリペプチドに対する抗体のための免疫測定法においてサンプル希釈とその他の条件が最適化されている場合、ある特定のFIVポリペプチドに関しワクチン接種された動物からのサンプルは陰性の測定結果となり得、感染動物からのサンプルは陽性の測定結果となる。第2のFIVポリペプチドに関しては、両方のサンプルが陽性結果となり得る。
【0036】
本発明の1つの面では、タンパク質は適切な固形支持体の上に固定化される。サンプル中に抗体が存在する場合、その抗FIV抗体が結合する相手であるタンパク質に生体サンプルが接触するようにする。結合していることは、酵素、放射性物質、粒子化、蛍光標識など適切な方法によって検出できる。適切な実施形態では、検出試薬は抗FIV抗体(もし存在するなら)を捕捉するのに使用されるものと同じか似ているタンパク質と関連させることができる。
【0037】
さらにこの方法は、ネコがFIVワクチンを接種されたことがあるのか、あるいはFIVに自然感染したことがあるのかを判定する試験装置に関する。この試験装置を使用する方法には、分離されたFIV envタンパク質およびFIV gagタンパク質を備えている試験装置を提供することが含まれる。本装置は、装置を生体サンプルに接触させることによりネコの生体サンプルを試験するのに使用することができる。装置の読み取りにおいて、抗体とgagタンパク質の結合の検出(gagタンパク質の陽性結果)は、そのネコがFIVに自然感染したことがあるかFIVのワクチンを接種されたことがあることを示す。同時にenvタンパク質の結果が陽性になるときは、自然感染(または、恐らく一過性のワクチン接種後反応)を意味し、同時にenvタンパク質の結果が陰性になるときは、ワクチン接種を意味する。上述内容を下表に要約する。
【0038】
【表1】

【0039】
本発明に使用するポリペプチドは、元来のFIVタンパク質の1つおよびミミトープおよび機能的に同等のその変異体に見出される少なくとも6個のアミノ酸、通常は少なくとも9個のアミノ酸、さらに通常は12個以上のアミノ酸を含む。
【0040】
「機能上の同等」または「機能的に同等」とは、元来のFIVエンベローブ(env)およびウイルス・コア(gag)のポリペプチド配列に関係する、または由来するポリペプチドのことを指し、そのアミノ酸配列が1個または複数のアミノ酸の置換、挿入、欠落により修飾されている、あるいはアミノ酸類似物などアミノ酸が化学的に修飾されているが、それにもかかわらず実質的に同等の機能を保持している場合である。機能的に同等の変異体は、自然の生物学的多様性として発生することもあり、また化学合成、部位特定の突然変異、無作為突然変異、アミノ酸の酵素的切断および/または結合などの既知の技術を使って作製することもできる。このように、変異体配列を作るためのアミノ酸配列の修飾は、ポリペプチドの機能が影響されない限り起こり得る。
【0041】
本発明の範囲内における機能的に同等のFIV変異体は、保存的に置換された配列からなり得る。すなわち、FIVポリペプチドの1個または複数のアミノ酸残基がFIVポリペプチドの二次元および/または三次元構造を変えないような別の残基で置き換えられている。そのような置換には、荷電密度、大きさ、構成、親水性/疎水性など同じような生理化学的特性を持つ残基によるアミノ酸の置き換えが含まれる。例としてのみの目的で挙げれば、そのような置換には1つの脂肪族残基(Ile、Val、Leu、Ala)を別の脂肪族残基に置き換える、あるいは塩基性残基(LysとArg)、酸性残基(GluとAsp)、アミド残基(GlnとAsn)、ヒドロキシ残基(SerとTyr)、芳香族残基(PheとTyr)を互いに置き換えることが含まれる。保存的な変異体は通常、本発明のポリペプチド配列を修飾し、修飾されたポリペプチドの抗原性を、例えば免疫組織化学法、酵素免疫測定法(ELISA)、放射性免疫測定法(RIA)、またはウェスタン・ブロット法によって評価することにより同定できる。表現形質的に表立たないアミノ酸変換体の作製に関する詳細は、ボーウィらの論文(Bowie et al., Science 247:1306-1310, 1990)に見ることができる。
【0042】
配列番号1の機能上同等物の例を、ペプチドの様々な修飾に関する説明とともにここに示す。
【表2】

【0043】
その他の変異体も本発明の範囲内で企図されており、そのような変異体には、例えば1つまたは複数のアミノ酸の配列内への挿入のほか不特定数の残基のアミノ酸配列の追加により得られるアミノおよび/またはカルボキシル末端の融合が含まれる。例えば、追加されたアミノ酸配列には別のポリペプチドまたはタンパク質の全体または一部に由来するものがあり、またFIVのエンベローブまたはウイルスのタンパク質の対応する位置に提供されているものがある。より長いペプチドは1つまたは複数のポリペプチド配列の多数の複製からできている。さらに、ポリペプチドの多数の複製は、多抗原ペプチド(MAP)を形成するポリリジンの主骨格のようなポリアミノ酸の主骨格と結合させることができる。
【0044】
アミノ酸配列の欠落変異体は、配列から1つまたは複数のアミノ酸残基が脱落している変異体である。挿入変異体は、1つまたは複数のアミノ酸がタンパク質のあらかじめ定められた部位に組み込まれている場合に存在するが、無作為挿入法は結果的な産物の適切なスクリーニングを有するオプションである。いずれの場合も、これらおよびその他の使用されたFIV変異体は実質的にFIVポリペプチドと同じ抗原性を保持している。このタンパク質の抗原認識領域以外の領域のアミノ酸が置換されているものも含め、その他の変異体も企図されている。FIVの2つ以上のポリペプチド配列を含む融合タンパク質も、その配列が適切な抗原性を提示しているなら、本発明の範囲内にある。そのようなポリペプチドは一般的に、FIVの特徴であるエピトープまたはミミトープの少なくとも1つに対応している。エピトープまたはミミトープは性質上、生体サンプル中のFIVに対する抗体の免疫学的検出を妥当な確かさで可能にすることを意味する。通常、エピトープまたはミミトープ、変異体または融合タンパク質は、免疫学的にFIV以外のウイルスから明確に区別されること(すなわち、FIV以外のウイルスを認識する抗体と交叉反応しないこと)が望ましい。
【0045】
抗原性を発揮する変異体は、配列番号 1とは、配列番号 2〜4に示すように例えば1、2、3、5、6、10、15、または20個のアミノ酸残基数が異なり、その断片からも同様に異なる。この比較にアライメントが必要なときは、配列を最大相同性に対してアライメントする。欠落、挿入、置換、反復、逆位、あるいは不一致は相違と考える。相違は非必須な残基での相違または変化、あるいは保存的な置換であることが好ましい。でき上がった変異ポリペプチドが抗原的に、例えば配列番号 2〜4に示す変化のように配列番号 1と実質的に類似している限り、ポリペプチドのどこでも多様性がある部位になる可能性がある(表2および表3参照)。機能的に同等の典型的な変異体には50%以上のアミノ酸が相同性を示すものが含まれる。相同性は60%、70%、あるいは80%より大きいことが好ましい。しかし、そのような変異体は全体的に少量の割合の相同性を示すかもしれないが、相同性の領域が保存されている点で本発明の範囲内である。
【0046】
本発明のポリペプチドは配列番号 1〜4の断片からもなっている。例えば、ポリペプチドの断片は配列番号 2〜4に示すポリペプチドの少なくとも5、6、8、10、12、15、18個の隣接するアミノ酸を構成することができる。
【0047】
場合によっては、特異的なキャリアーとの結合を促進するため、あるいはジスルフィド結合が抗原ループを模倣できるようにして抗原性を高めるために、1個または複数のシステイン残基をポリペプチドの末端に付加することができる。さらに、デリバリー溶媒への混入を容易にし抗原性を増すため、ペプチドに脂肪酸または疎水性尾部を付加することもできる。
【0048】
検出試薬として使用するFIVポリペプチドは自然のもの、すなわち自然界から分離されたFIVタンパク質全体または断片、または合成されたものであり得る。自然のタンパク質はアフィニティ・クロマトグラフィなど従来の方法でFIVウイルス全体から分離することができる。既知の技術でポリクローナル抗体あるいはモノクローナル抗体を使用して適切なアフィニティ・カラムを準備できる。
【0049】
自然界のFIVタンパク質と免疫学的に交叉反応するタンパク質を化学的に合成することができる。例えば、アミノ酸を連続的に付加して長くしてゆく、既知のMerrifield固相合成法により、約100個以下、もっと一般的に約80個以下、典型的には約50個以下のアミノ酸からなるポリペプチドを合成することができる。Merrifield, 1963, J. Am. Chem. Soc., 85:2149-2156).組み換えタンパク質を使用することもできる。これらのタンパク質は、FIV遺伝子の目的部位をコードしている組み換えDNA分子を持った培養細胞に発現させて産生することができる。FIV遺伝子の部分はそれ自体自然でも合成でもよく、自然の遺伝子は分離されたウイルスから従来の技術で手に入れることができる。もちろんFIVの遺伝子はRNAであり、逆転写酵素を使った従来の技術で自然のRNAをDNAに転写する必要がある。ポリヌクレオチドも既知の技術で合成することができる。例えば、短い単鎖DNA断片はBeaucageおよびCarruthersによって記載されているフォスフォアミダイト法を用いて用意できる(Beaucage and Carruthers, 1981, Tett. Letters 22:1859-1862)。二重鎖断片は、相補性の鎖を合成した後それを適当な条件下でともにアニールするか、適当なプライマー配列を有するDNAポリメラーゼを使って相補性の鎖を加えてゆくことにより作製できる。
【0050】
目的のFIVタンパク質または断片をコードした自然のまたは合成のDNA断片は、生体外(in vitro)で細胞培養に導入でき発現させることができるDNA構造体の中に組み込むことができる。通常、DNA構造体は酵母や細菌のような単細胞内で複製させるのが適している。それらを哺乳動物の培養細胞または他の真核細胞の遺伝子に導入し一体化させることも意図している。細菌や酵母に導入するために用意されたDNA構造体には、宿主細胞に認識される複製システム、目的のポリペプチド産物をコードしているFIV DNA断片、その断片の3'末端に結合しているFIV DNA終末制御配列の5'末端に結合している転写および翻訳の開始制御配列が含まれている。転写制御配列には宿主細胞によって認識される異種プロモーターが含まれている。便利なことに、多数の宿主細胞のための多くの適切な発現ベクターは市販されている。
【0051】
本発明の検出方法に有用であるためには、ポリペプチドは実質的に純粋な形、すなわち典型的には純度が約50%w/w以上で干渉するタンパク質や不純物が実質的に含まれていない形で得る。FIVポリペプチドは少なくとも80% w/wの純度で分離あるいは合成するのが好ましく、少なくとも95% w/wの純度ならさらに好ましい。従来のタンパク質精製法を使って少なくとも約99% w/wの純度の同種ポリペプチド成分を手に入れることができる。例えば、上述のイムノアフィニティ・カラムを使用し以下に示す抗体を用いてタンパク質を精製することができる。
【0052】
本発明の方法は、マイクロプレートや側方流(lateral flow)装置などを含む(ただしこれらに限定されない)、当業者には周知の免疫測定技術を用いて行なうことができる。1つの実施形態では、FIVタンパク質は固形支持体上の特定の部分で固定化される。固形支持体上のタンパク質抗体複合体の検出は、当技術分野で周知の方法で可能である。例えば、参照のためここにその全体が組み込まれている米国特許番号5,726,010には、本発明に有用な側方流(lateral flow)装置であるSNAP(登録商標) 免疫測定装置(IDEXX Laboratories)の例が記載されている。市販されているWITNESS(登録商標) FIV診断試験(Synbiotics Corporation, Lyon, France)のようなコロイド粒子に基づく試験も使用可能である。
【0053】
分析物捕捉試薬がサンプル、希釈液および/または洗浄操作により洗い流されないように、例えばFIVタンパク質など1つまたは複数の分析物捕捉試薬を装置あるいは固形支持体上に固定化させる。物理的な吸収(すなわち、化学リンカーを使用せず)または化学的結合(すなわち、化学リンカーを使用して)によって、1つまたは複数の分析物捕捉試薬を表面に添加することができる。化学的結合は、特異的な結合物質を表面により強く取り付け、表面結合分子の明確な方向と配座を提供することができる。
【0054】
本発明の別の実施形態では、側方流(lateral flow)測定法に適切な装置を提供する。例えば、試験サンプルを第1の領域(サンプル適用ゾーン)でフロー・マトリックスに添加する。試験サンプルは毛細管現象により液体流路に沿って流れ、試験サンプル中の分析物と結合し第1の複合体を形成することができる標識物質があるフローマトリックスの2番目の領域に運ばれる。第1の複合体は、FIVタンパク質が明確な部位に固定化されているフローマトリックスの3番目の領域に運ばれる。第2の複合体は、固定化されたタンパク質とサンプル中の抗体を含む第1の複合体の間で形成される。例えば、FIV抗体に結合しているFIVタンパク質と金ゾル粒子を含む第1の複合体は、第2の固定化FIVタンパク質またはネコの抗体に対する第2の抗体と特異的に結合し第2の複合体を形成する。第2の複合体の一部を成す標識物質は直接可視化できる。
【0055】
また本発明は、装置に適用する前に試験サンプルと混合できる1つまたは複数の標識化特異的結合試薬を含む。この場合、標識化特異的結合試薬を装置の特異的結合試薬パッドに沈殿させ乾燥させる必要はない。標識化特異的結合試薬は、例えば試験サンプルに加えるにしても装置にあらかじめ沈殿させるにしても、FIVに対する抗体に特異的に結合する標識化FIVタンパク質となり得る。
【0056】
上記の実施形態のどれもまたはすべてをキットとして提供できる。1つの具体的な例において、そのようなキットに、特異的結合試薬(例えば、非固定化標識化特異的結合試薬および固定化分析物捕捉試薬)と洗浄試薬、さらに検出試薬および陽性コントロール、陰性コントロールで完全装備した装置を含む。さらに、安定化剤、バッファなどのような添加物を含むことができる。種々の試薬の相対量は、測定法の感度に実質的に最適な溶液中の試薬濃度を提供するため変えることができる。特に、試薬は乾燥粉末(通常は凍結乾燥)で提供することができ、溶解時にサンプルと混合するための適切な濃度の試薬溶液にする。
【0057】
FIVタンパク質は反応ゾーン(固相)の固定化分析物捕捉試薬になり得る。標識物質と抱合した第2の分析物捕捉試薬、すなわち第2のFIVタンパク質は、サンプルを装置に適用する前にサンプルに添加することも、装置に組み込むこともできる。例えば、標識化特異的結合試薬は、サンプル適用ゾーンと固相の間の液体による通信系となる液体流路に沈殿させ乾燥させることができる。標識化特異的結合試薬が液体サンプルに接触すると、標識化特異的結合試薬が溶け出す。
【0058】
この装置には、結合していない物質(例えば、未反応の液体サンプルや未結合の特異的結合試薬)を反応ゾーン(固相)から除去する液体試薬を含めることができる。液体試薬は洗浄試薬であり得、未結合物質を反応ゾーンから除去することのみに利用するか、検出試薬を含み、未結合物質を除去し分析物の検出を促進することの両方に利用することができる。例えば抗体への特異的結合試薬複合体の場合、検出試薬は反応ゾーンに酵素抗体抱合体と反応して検出可能信号を発する基質を含む。放射性物質、蛍光物質、吸光分子と抱合させた標識化特異的結合試薬の場合、検出試薬は単に未結合の標識試薬を洗い流すことによって反応ゾーンでの複合体形成の検出を促進する洗浄液としての役目のみを果たす。
【0059】
装置には2つ以上の液体試薬、例えば洗浄試薬として働く液体試薬と検出試薬として働き分析物の検出を促進する液体試薬、が存在可能である。
【0060】
液体試薬にはさらに限定された用量の「阻害物質」、すなわち検出可能な最終産物の成長を阻止する物質を含むことが可能である。限定された用量とは、検出可能な最終産物が産生され過剰の未結合物質のほとんどまたはすべてが第2の領域から運び出されるまで最終産物の成長を阻止するのに十分な阻害物質の量である。
【0061】
以下は例示目的のためだけに提供し、上記の広範な項で記述した本発明の範囲を限定することを意図するものではない。この開示で引用しているすべての参考文献は、参照としてここに組み入れられている。
【実施例】
【0062】
実施例1
SNAP(登録商標) FeLV Ag/FIV Ab 試験キットでFIVが陰性結果となった8匹のネコに、Fel-O-Vax(登録商標)FIVワクチン(Fort Dodge Animal Health, Fort Dodge Iowa)でワクチン接種した。このワクチンは多数のFIVウイルス株の死滅物全体から生成されている。製造元の使用法に従って、ネコに試験0日、14日、および28日にワクチンを接種した。FIV試験で陰性結果が出た2匹のネコにはワクチン接種を行わず、本試験の対照群に含めた。
【0063】
ワクチン接種試験の第0日およびそれ以降第12週まで7日ごとに、10匹のネコから血液サンプルを採取し測定時まで冷凍保存した。それに加えて、ウェスタン免疫ブロット確認試験によりFIV Ab陰性または陽性と確認されたFIV自然感染ネコおよびFIV陰性ネコの血液サンプルも同じく試験した。
【0064】
サンプルの測定はSNAP(登録商標) ELISA法により実施した。米国特許番号5,726,010に記述されているように、サンプルの逆行クロマトグラフィ・フローと洗浄溶液および酵素基質溶液の自動連続フローの固相を提供するためにSNAP(登録商標)装置技術を使用した。
【0065】
SNAP(登録商標) 装置については、固相上に単体抗体捕捉スポットを形成するためにFIV gag p24(組み換えDNA)およびN末端システイン−CELGCNQNQFFCK [配列番号5] −タンパク質付加のFIV env 696-707を沈殿させた。SNAP(登録商標) 装置の固相上に陰性コントロールスポットを形成するために陰性コントロール試薬を、また陽性コントロールスポットを形成するために陽性コントロール試薬を沈殿させた。gag もしくはenvタンパク質は酵素のホースラディッシュペルオキシダーゼに化学的に抱合し、バッファ、洗浄剤および動物の血清成分から構成された溶液に入れて用意した。
【0066】
血清サンプルはgagもしくはenvタンパク質-酵素抱合溶液と混合して、SNAP(登録商標) 装置に塗布した。短時間インキュベーションしたのち、装置の作動を開始した。陽性コントロールスポットが発色したことから適正な試験であったことが示された。サンプルスポットの発色が陰性コントロールスポットの発色よりも大きかったことから、サンプル内にFIV抗体が存在していたことを示し、陽性の試験結果とされた。試験結果は視覚的に判定し、表 1に示した。
【0067】
【表3】

【0068】
【表4】

【0069】
【表5】

【0070】
実施例2
FIVが陰性と確認された感染ネコおよびFEL-O-VAX(登録商標) FIVワクチンを接種されたネコから採取した血清サンプルに対して、固相上の個々の動物のFIVポリペプチドと抗ネコIgG-ペルオキシダーゼ抱合体を用いた間接測定法によりマイクロプレートELISA解析を実施した。env FIVタンパク質に対する抗体は、以下のペプチドを抗原試薬として用いて検出した。
CVVPEEVMEYKPRRKRAAIH [配列番号1]
CLVPEEVMEYKPSQKRAAIH [配列番号2]
【0071】
ポリペプチドは市販の機器を用い製造元の使用説明書に従って合成した。ポリペプチド保存試薬はDMSOに5 mg/ml で溶解して準備した。次にポリペプチドをマイクロプレートウエルにコーティングした(ペプチドを50 mM Tris-HCl pH 7.4に10 ug/mlの濃度で溶解し 100 ul/ウエルの割合でコーティング)。次にプレートを2%ツイーン-20/2.5%ショ糖によりブロック/コーティングし、吸湿剤入りマイラーバッグで乾燥させた。
【0072】
分析試験については、ネコの血清サンプル(100 ul/ウエル, 1/1000 in 50%に希薄された胎児ウシの血清)がウエルに加えられ、プレートは室温で10分間培養された。インキュベーション後、マイクロプレートをPBS/ツイーン溶液で洗浄した。ヤギ抗(ネコIgG):ペルオキシダーゼ抱合体をウエルに加えた(100 ul/ウエル、50%胎児ウシ血清で希釈した抗ネコIgG:ぺルオキシダーゼ)。プレートをさらに室温で15分間インキュベーションし、PBS/ツイーンで2回目の洗浄を行なった。ペルオキシダーゼの基質を加え(100 ul/ウエル、テトラメチル・ベンチジン・ペルオキシダーゼ基質)、プレートを室温で10分間3回目のインキュベーションを行なった。フッ酸停止液(50 ul/ウエル)をプレートに添加した。分光光度計(A650 nm)でペルオキシダーゼ活性(発色産物)を判定することによりサンプル抗体結合を測定した。サンプルに対する有意義な実質的抗体結合は0.200よりA650nm大きいこととした。参照試験としてこれらのサンプルをIDEXX PetChek(登録商標) Anti-FIV抗体試験キットでも測定した。結果を表2に示す。
【0073】
【表6】

【0074】
実施例3
実施例2のように、FIVが陰性と確認された感染ネコおよびFEL-O-VAX(登録商標) FIVワクチンを接種されたネコから採取した血清サンプルについてマイクロプレートELISA解析を実施した。FIV envに対する抗体は、以下のペプチドを抗原試薬として用いて検出した。
CVVPEEVMEYKPRRKRAAIH [配列番号1]
CLVPEEVMEYKPSQKRAAIH [配列番号2]
CVVPGEVMDYKPRRKSKRAAIH [配列番号3]
CVVPEEVMEYKPRRKR...AIH [配列番号4]
【0075】
サンプルに対する有意義な実質的抗体結合は0.200よりA650nm大きいこととした。結果を表3に報告する。
【0076】
【表7】

【0077】
本発明の様々な特定の実施形態をここに記述したが、本発明はそれらの厳密な実施形態に限られるわけではなく、本発明の範囲や精神からかけ離れることなく当業者によりそれらに様々な変更や修飾が可能である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
配列番号1、配列番号2、配列番号3、配列番号4からなる群から選択されるポリペプチド。
【請求項2】
FIVに自然感染した動物とFIV未感染動物およびFIVワクチンを接種された動物を鑑別する方法であって、
動物からの生体サンプルを請求項1記載のポリペプチドと接触させ、
サンプル中のFIV抗体が実質的にポリペプチドに結合するかを検出し、
サンプル中の抗体がFIVポリペプチドに実質的に結合していることを検出することによりその動物が自然感染していると判定し、サンプル中の抗体がFIVポリペプチドに実質的に結合していないことを検出することによりその動物がワクチンを接種されているかまたは未感染であると判定する、
ことを含む方法。
【請求項3】
生体サンプルが過去約12週間以内にFIVワクチンを接種されていない動物から得られたものである、請求項2記載の方法。
【請求項4】
ネコがFIVワクチンを接種されたことがあるのか、またはFIVに自然感染しているのかを判定する方法であって、
(a) ワクチン接種後、FIVワクチンに対する動物の免疫反応の重要な要素ではない抗体がネコから実質的に排除されるのに十分な期間が過ぎる前に、ネコが請求項1記載のFIVペプチドに対する抗体を持っているかを検出し、
(b) ワクチン接種後、FIVワクチンに対する動物の免疫反応の重要な要素ではない抗体がネコから実質的に排除されるのに十分な期間が過ぎた後に、ネコがFIVポリペプチドに対する抗体を持っているかを検出し、
(c) ステップaで抗体が検出されるが、ステップbでは検出されないことにより、ネコが成功裏にワクチン接種されていると判定し、
(d) ステップaおよびステップbで抗体が検出されることにより、ネコが自然感染していると判定する、
ことを含む方法。
【請求項5】
ネコがFIVに感染したことがないか、またはFIVワクチンを接種されたことがあるかを判定する方法であって、
ネコの生体サンプルを分析して、請求項1記載のFIVタンパク質に対する抗体が存在するかしないかを検出し、
そのような抗体が存在していないと判定することにより動物が感染したことがないか、またはワクチンを接種されたことがあると判定する、
ことを含む方法。
【請求項6】
ネコがFIVワクチンを接種されたことがあるか否か、またはFIVに自然感染しているか否かを判定する方法であって、
請求項1記載のポリペプチドを含む試験装置を提供し、
ネコから生体サンプルを取得し、
サンプルがポリペプチドと接触するように試験装置上に生体サンプルを流し、
試験装置の結果を読み取り、ここで、陽性の結果はネコがFIVに自然感染したことがあるかまたはFIVワクチンを接種されたことがあることを示し、陰性の結果はネコがFIVに自然感染したことがないかまたはFIVワクチンを接種されたことがないことを示す、
ことを含む方法。
【請求項7】
自然にFIV感染しているか、またはFIVワクチンを接種されたことがあることが疑われる動物から得られた生体サンプル中のFIVポリペプチドの由来を判定する方法であって、
過去約12週間以内にFIVワクチンを接種されたことがない動物から生体サンプルを取得し、
動物から得た生体サンプルを以下のものと接触させ、
(a) FIVワクチンに対する動物の抗体反応の重要な要素に実質的に結合する第1のポリペプチド、
(b) 請求項1記載のポリペプチド
サンプル中の抗体が一方または両方に実質的に結合するかを検出し、
抗体が実質的に (a) および (b) の両方のペプチドに結合した場合に動物が自然感染していると判定し、抗体が (a) のペプチドのみに結合した場合に動物がワクチンを接種されたことがあると判定する、
ことを含む方法。
【請求項8】
第2のポリペプチドはFIV p15を含む、請求項7記載の方法。
【請求項9】
第2のポリペプチドはFIV p24を含む、請求項7記載の方法。
【請求項10】
乾燥した有孔キャリアー;
有孔キャリアー上に固定化された第1の検出試薬であって、ここで、前記第1の検出試薬はFIVの自然感染またはFIVワクチン接種に反応して動物が産生したFIV抗体を捕捉するタンパク質を含み、
有孔キャリアー上に固定化された第2の検出試薬であって、ここで前記第2の検出試薬は請求項1記載のポリペプチドを含む、
を含む診断装置。
【請求項11】
第1の検出試薬はFIV p15を含む、請求項9記載の診断装置。
【請求項12】
第1の検出試薬はFIV p24を含む、請求項9記載の診断装置。
【請求項13】
ネコがFIVワクチンを接種されたことがあるか、FIVに自然感染しているかを判定する方法であって、
生体サンプルを請求項9記載の診断装置と接触させ、
サンプル中の抗体が第1の検出試薬と第2の検出試薬の一方または両方と実質的に結合するかを検出する、
ことを含む方法。
【請求項14】
第1の検出試薬が固定化された第1の有孔キャリアーであって、ここで前記第1の検出試薬はFIVの自然感染またはFIVワクチン接種に反応して動物が産生したFIV抗体を捕捉するポリペプチドを含み、
第2の検出試薬が固定化された第2の有孔キャリアーであって、ここで第2の検出試薬は請求項1記載のポリペプチドを含む、
を含む診断装置。
【請求項15】
第1の検出試薬はFIV p15を含む、請求項14記載の診断装置。
【請求項16】
第1の検出試薬はFIV p24を含む、請求項14記載の診断装置。
【請求項17】
ネコのワクチン接種状態を判定する方法であって、
請求項1記載のポリペプチドを提供し、
ネコの生体サンプルをポリペプチドを接触させて、ポリペプチド/抗体複合体を形成させ、
ポリペプチド/抗体複合体の有無を判定し、ここで、複合体が存在することは自然感染を表わし、複合体が存在しないことはワクチンを接種されているか未感染のいずれかを表わす、
ことを含む方法。
【請求項18】
生体サンプルは過去約12週間以内にFIVワクチンを接種されていない動物から取得したものである、請求項16記載の方法。
【請求項19】
請求項1記載のポリペプチドに対するネコの免疫反応を決定することにより、ネコがFIVワクチンを接種されたことがあるか、FIVに自然感染したかを判定する方法。
【請求項20】
ネコがFIVワクチンを接種されたことがあるかを診断するためのキットの製造におけるFIV envに由来するポリペプチドの使用。
【請求項21】
さらにネコがFIVに感染したことがあるかを判定することを含む、請求項20記載の使用。

【公表番号】特表2007−514753(P2007−514753A)
【公表日】平成19年6月7日(2007.6.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−545477(P2006−545477)
【出願日】平成16年12月17日(2004.12.17)
【国際出願番号】PCT/US2004/042446
【国際公開番号】WO2005/062053
【国際公開日】平成17年7月7日(2005.7.7)
【出願人】(300004500)アイデックス ラボラトリーズ インコーポレイテッド (30)
【Fターム(参考)】