ネットブラケット
【課題】ネットブラケットの、アーム部材を縮小した収納時の安定性の確保を実現する。
【解決手段】ネットブラケットを構成する取り付け部は、被取り付け対象に固定される。アーム取り付け部は、孔部を有し、取り付け部に固定される。基部側アーム部材は、孔部に入り込む回転軸を有し、アーム取り付け部に回転自在に取り付けられる。先端側アーム部材は、基部側アーム部材に伸縮自在に取り付けられる。孔部の一部をなすアーム部材伸縮方向ガイドは、アーム部材の伸縮方向の延長上に回転軸をガイドする。孔部の一部をなしアーム部材伸縮方向ガイドから枝分かれするアーム部材収納方向ガイドは、先端にガイド回転軸保留部を有し、アーム部材伸縮方向ガイドの一部からアーム部材伸縮方向ガイドと交差方向に回転軸をガイドする。
【解決手段】ネットブラケットを構成する取り付け部は、被取り付け対象に固定される。アーム取り付け部は、孔部を有し、取り付け部に固定される。基部側アーム部材は、孔部に入り込む回転軸を有し、アーム取り付け部に回転自在に取り付けられる。先端側アーム部材は、基部側アーム部材に伸縮自在に取り付けられる。孔部の一部をなすアーム部材伸縮方向ガイドは、アーム部材の伸縮方向の延長上に回転軸をガイドする。孔部の一部をなしアーム部材伸縮方向ガイドから枝分かれするアーム部材収納方向ガイドは、先端にガイド回転軸保留部を有し、アーム部材伸縮方向ガイドの一部からアーム部材伸縮方向ガイドと交差方向に回転軸をガイドする。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ネットブラケットに関する。詳細には、建築物の周囲に設置される仮設足場に基部が取り付けられ、その先端等で保護用ネットを掛け止めるネットブラケットに関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、ネットブラケットの基部は、仮設足場の足場支柱に取り付けられる。ネットブラケットからは、アーム部材が突設する。アーム部材の先端側の部分には、保護用ネットが掛け止められる。足場支柱から保護用ネットの掛け止め必要箇所までの距離は、保護用ネットを掛け止める場所の必要度によって異なる。そのため、従来、仮設足場の状況に応じて、アーム部材の長さが異なる数種類のネットブラケットを予め用意して、前記距離に応じてアーム部材の長さの異なるネットブラケットを選択して使用することが行われている。
【0003】
特許文献1、特許文献2および特許文献3に記載のネットブラケットにおいて、アーム部材は、基部側アーム部材と先端側アーム部材との二つの部材から構成される。ここで、先端側アーム部材は基部側アーム部材に対して伸縮自在である。そして、伸縮された先端側アーム部材は、蝶ネジで基部側アーム部材に固定されている。そのため、特許文献1ないし特許文献3によれば、各アーム部材は、それぞれ基部側アーム部材と先端側アーム部材とからなるアーム部材全長が調整可能となるので、敢えて数種類のネットブラケットを用意する必要はない、とされる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2002−147025号公報
【特許文献2】特開2004−238813号公報
【特許文献3】特開平7−317298号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載のネットブラケットは、アーム部材全長の伸縮長は充分なものとはいえない。また、特許文献2、特許文献3に記載のネットブラケットでは、スリットは設けられているものの、このスリットは鉛直方向等に設けられており、アーム部材の伸縮方向の延長上あるいは水平方向に設けられているものではない。したがって、これらは、アーム部材の伸縮方向の延長上に回転軸が移動するのをガイドするものでもない。そのためこれら文献記載のアーム部材全長の伸縮長は充分なものとは言えない。
【0006】
また、特許文献1ないし特許文献3のいずれに記載のネットブラケットも、アーム部材を縮小したネットブラケット収納時の安定性を考慮したものとは言えない。
【0007】
本発明の目的は、アーム部材全長の伸縮長さを拡大するとともに、アーム部材を縮小した収納時のネットブラケットの安定性の確保を実現することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1に記載のネットブラケットは、被取り付け対象に固定される取り付け部と、孔部を有し、前記取り付け部に固定されるアーム取り付け部と、前記孔部に入り込む回転軸を有して、前記アーム取り付け部に回転自在に取り付けられる基部側アーム部材と、前記基部側アーム部材に伸縮自在に取り付けられる先端側アーム部材と、前記孔部の一部を構成し、前記基部側アーム部材に対する前記先端側アーム部材の伸縮方向のほぼ延長上に前記回転軸が移動するのをガイドするアーム部材伸縮方向ガイドと、前記孔部の一部を構成して前記アーム部材伸縮方向ガイドから枝分かれし、当該アーム部材伸縮方向ガイドと交差する方向に前記回転軸が移動するのをガイドするアーム部材収納方向ガイドと、前記アーム部材伸縮方向ガイドと前記アーム部材収納方向ガイドとのいずれにも設けられ前記ガイド回転軸を保留するガイド回転軸保留部と、を備える。
【0009】
請求項2に記載のネットブラケットは、被取り付け対象に固定される取り付け部と、前記取り付け部に固定されるアーム取り付け部と、前記孔部に入り込む回転軸を有して、前記アーム取り付け部に回転自在に取り付けられる基部側アーム部材と、前記基部側アーム部材に伸縮自在に取り付けられる先端側アーム部材と、前記アーム取り付け部に形成され、前記基部側アーム部材に対する前記先端側アーム部材の伸縮方向のほぼ延長上に前記回転軸が移動するのをガイドするアーム部材伸縮方向ガイドと、前記アーム部材伸縮方向ガイドに設けられ前記ガイド回転軸を保留するガイド回転軸保留部と、を備える。
【0010】
請求項3に記載のネットブラケットは、被取り付け対象に固定される取り付け部と、前記取り付け部に固定されるアーム取り付け部と、前記孔部に入り込む回転軸を有して、前記アーム取り付け部に回転自在に取り付けられる基部側アーム部材と、前記基部側アーム部材に伸縮自在に取り付けられる先端側アーム部材と、前記アーム取り付け部に形成され、前記基部側アーム部材に対する前記先端側アーム部材の伸縮方向と交差する方向に前記回転軸を移動させ更にこの回転軸を前記伸縮方向と平行にガイドするアーム部材収納方向ガイドと、前記アーム部材収納方向ガイドに設けられ前記ガイド回転軸を保留するガイド回転軸保留部と、を備える。
【発明の効果】
【0011】
請求項1ないし3のいずれに記載のネットブラケットの発明によっても、基部側アーム部材に設けられた回転軸がアーム部材の伸縮方向の延長線上にガイドされて移動し、回転軸がガイド回転軸保留部に保留されるので、アーム部材全長の伸縮長さを拡大することができ、また、アーム部材を縮小したネットブラケット収納時に、ネットブラケットの安定性の確保を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】第一の実施の形態における、ネットブラケットの先端側アーム部材縮小状態の正面図である。
【図2】ネットブラケットのアーム取り付け部の右側面図である。
【図3】ネットブラケットの先端側アーム部材伸張状態かつ回転軸はアーム部材伸縮方向ガイドの取り付け部側に移動された状態の正面図である。
【図4】ネットブラケットの先端側アーム部材伸張状態かつ回転軸はアーム部材伸縮方向ガイドの先端側アーム部材側に移動された状態の正面図である。
【図5】ネットブラケットの先端側アーム部材伸張状態かつ回転軸はアーム部材伸縮方向ガイドの先端側アーム部材側に移動された状態の底面図である。
【図6】ネットブラケットの収納状態の正面図である。
【図7】ネットブラケットの収納状態の背面図である。
【図8】ネットブラケットのアーム取り付け部の正面拡大図である。
【図9】第二の実施の形態における、ネットブラケットの先端側アーム部材伸張状態かつ回転軸はアーム部材伸縮方向ガイドの先端側アーム部材側に移動された状態の正面図である。
【図10】第三の実施の形態における、ネットブラケットの先端側アーム部材伸張状態かつ回転軸はアーム部材収納方向ガイドの上端側に移動された状態の正面図である。
【図11】第三の実施の形態における、ネットブラケットの収納状態の正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
実施の一形態を、図1ないし図8に基づいて説明する。本実施の形態を、説明の便宜上、第一の実施の形態と呼ぶ。図1は、ネットブラケットの先端側アーム部材縮小状態の正面図である。また、図2は、ネットブラケットのアーム取り付け部の右側面図である。また、図3は、ネットブラケットの先端側アーム部材伸張状態かつ回転軸はアーム部材伸縮方向ガイドの取り付け部側に移動された状態の正面図である。また、図4は、ネットブラケットの先端側アーム部材伸張状態かつ回転軸はアーム部材伸縮方向ガイドの先端側アーム部材側に移動された状態の正面図である。また、図5は、ネットブラケットの先端側アーム部材伸張状態かつ回転軸はアーム部材伸縮方向ガイドの先端側アーム部材側に移動された状態の平面図である。また、図6は、ネットブラケットの収納状態の正面図である。また、図7は、ネットブラケットの収納状態の背面図である。また、図8は、ネットブラケットのアーム取り付け部の正面拡大図である。
【0014】
11は、ネットブラケットに設けられる取り付け部である。取り付け部11は、被取り付け対象(図示せず)に固定される。被取り付け対象となるのは、この実施の形態では、仮設足場の足場支柱である。このため、取り付け部11として、この実施の形態ではクランプが示されている。
【0015】
21は、アーム取り付け部である。アーム取り付け部21は、二枚の板状体22、23を有し、コ字形状をなしている。板状体22と板状体23とは、この実施の形態では金属板からなる。アーム取り付け部21は、取り付け部11に取り付けられる。板状体22と板状体23との間には、アーム支持具24が設けられている。アーム支持具24は、この実施の形態では、板状体22の外側からアーム取り付け部21に装着されるボルト、および、板状体23の外側からボルトの軸部に螺合するナットからなる。
【0016】
板状体22、板状体23には、それぞれ、孔部HLが設けられる。本実施の形態において、孔部HLは、アーム部材伸縮方向ガイド31及びアーム部材収納方向ガイド32を形成している。アーム部材伸縮方向ガイド31と、アーム部材収納方向ガイド32とは、金属板を貫通させて溝状に設けられる。
【0017】
25は、根元フックである。根元フック25には、ネットが掛止される。
【0018】
41は、基部側アーム部材である。基部側アーム部材41は、金属パイプで形成され、アーム部材の一部を構成する。基部側アーム部材41における取り付け部11側の端部には、回転軸42が設けられる。回転軸42は、この実施の形態では、ボルトおよびこれに螺合するナットからなる。回転軸42は、アーム取り付け部21の孔部HL内を移動可能に、この孔部HLに嵌め込まれて取り付けられる。本実施の形態において、回転軸42は、アーム部材伸縮方向ガイド31およびアーム部材収納方向ガイド32に沿って移動する。なお、回転軸42の両端部には抜止部が設けられていて、回転軸42は孔部HLから脱落しないようになっている。本実施の形態において、この抜止部の役割を果たすのは、ボルト頭及びナットである。
【0019】
アーム部材伸縮方向ガイド31は、孔部HLの一部をなしてアーム取り付け部21に設けられ、基部側アーム部材41の伸縮方向のほぼ延長上に回転軸42をガイドする。この「ほぼ延長上」というのは、全くの延長上でなくともよい、ということを意味する。一例として、アーム部材伸縮方向ガイド31がほぼ水平に延びているのに対し(図1参照)、基部側アーム部材41の伸縮方向は、このアーム部材伸縮方向ガイド31がなす水平に対してほぼ20度だけ傾いた方向である。とどのつまり、アーム部材伸縮方向ガイド31は、基部側アーム部材41の伸縮を邪魔しない範囲の角度をなすよう延びていればよい。好ましくは、アーム部材伸縮方向ガイド31は、根元フック25と先端フック47(後述)とを結ぶ仮想線を水平に保ったままで基部側アーム部材41を伸縮させるよう形成されていると良い。
【0020】
アーム部材収納方向ガイド32は、孔部HLの一部をなしてアーム取り付け部21に設けられる。このアーム部材収納方向ガイド32は、アーム部材伸縮方向ガイド31から枝分かれして延び、このアーム部材伸縮方向ガイド31に沿って移動する回転軸42をアーム部材伸縮方向ガイド31と交差する方向にガイドする。この実施の形態において、この「交差する方向」とは、アーム部材伸縮方向ガイド31に対しほぼ垂直となる方向である。
【0021】
33、34、36はガイド回転軸保留部である。そのうち、33、34は、伸縮方向ガイド回転軸保留部である。伸縮方向ガイド回転軸保留部33、34は、アーム部材伸縮方向ガイド31の両端部に、アーム部材収納方向ガイド32がアーム部材伸縮方向ガイド31から枝分かれして延びている方向とは反対方向に設けられる。本実施の形態において、伸縮方向ガイド回転軸保留部33、34は、アーム部材収納方向ガイド32から、上方に向けて溝状に設けられる。
【0022】
35は、収納方向補助ガイドである。収納方向補助ガイド35は、アーム部材収納方向ガイド32の先端の一部をなしていてアーム部材伸縮方向ガイド31と平行をなす方向に屈曲して設けられる。本実施の形態において、収納方向補助ガイド35は、水平方向に溝状に設けられる。
【0023】
36は、収納方向ガイド回転軸保留部である。収納方向ガイド回転軸保留部36は、収納方向補助ガイド35に設けられる。本実施の形態では、収納方向ガイド回転軸保留部36は、収納方向補助ガイド35の先端で、アーム部材伸縮方向ガイド31に向かう方向に溝状に設けられる。
【0024】
43は、先端側アーム部材である。また、44は、中間アーム部材である。中間アーム部材44は、基部側アーム部材41に伸縮自在に取り付けられる。先端側アーム部材43は、中間アーム部材44に伸縮自在に取り付けられる。このようにして、本実施の形態では、アーム部材は、基部側アーム部材41と中間アーム部材44と先端側アーム部材43とから構成される。
【0025】
45、46は蝶ネジである。蝶ネジ45は、基部側アーム部材41と中間アーム部材44とを相互に固定する。蝶ネジ46は、中間アーム部材44と先端側アーム部材43とを相互に固定する。蝶ネジ45、46を固定したり解除したりすることで、基部側アーム部材41と中間アーム部材44と先端側アーム部材43とは互いにスライドし、アーム部材全体が伸縮自在となる。
【0026】
47は、先端フックである。先端フック47は、先端側アーム部材43の先端に取り付けられ、ネットが掛止される。
【0027】
本実施の形態のネットブラケットでは、アーム部材(中間アーム部材44、先端側アーム部材43、基部側アーム部材41)の伸縮方向の延長上に回転軸42をガイドするアーム部材伸縮方向ガイド31によって、基部側アーム部材41がアーム取り付け部21に固定されることなく、アーム取り付け部21に対し移動自在となっている。これにより、アーム部材全長の伸縮長さを拡大することができる。
【0028】
更に、この実施の形態によれば、アーム部材伸縮方向ガイド31の一部からアーム部材伸縮方向ガイド31と交差する方向に、回転軸42をガイドするアーム部材収納方向ガイド32が枝分かれして延びている。このアーム部材収納方向ガイド32にしたがって基部側アーム部材41を移動させることで、アーム部材を縮小した収納時の安定性の確保を実現することができる。
【0029】
更に、伸縮方向ガイド回転軸保留部33、34、収納方向ガイド回転軸保留部36のいずれかに回転軸42を固定することで、アーム部材は動かなくなり、しかも確実に固定される。特に、このネットブラケットを収納する場合には、図6、図7に図示されるように、基部側アーム部材41の内部に収納されるように、先端側アーム部材43と中間アーム部材44とをスライドさせてアーム部材全体を縮小し、続いてこの縮小したアーム部材全体を取り付け部11側に折り曲げる。次いで、蝶ネジ45、46でアーム部材を構成する基部側アーム部材41と先端側アーム部材43と中間アーム部材44とを相互を固定し、回転軸42を収納方向ガイド回転軸保留部36に収納する。ここで、回転軸42がボルト及びナットで構成されている場合、回転軸42を収納方向ガイド回転軸保留部36に収納させた後にナットをボルトに対して回転して、板状体22,23をボルト頭及びナットで締め付けて固定するようにしてもよい。こうすると、回転軸42は、収納方向ガイド回転軸保留部36から移動しないし、特に、天地を逆にしてネットブラケットを設置しても、回転軸42は移動しなくなり、アーム部材全体が動かなくなる。
【0030】
本実施の形態のネットブラケットは、以下の事情に鑑みて生み出されたものである。すなわち、従来、建設現場等に設けられる足場支柱からこれに掛けられる保護用ネットの掛け止め必要箇所までの距離は、この支柱の設置位置と建築物との隙間の距離(一般には、500mm以下)によって異なる。このような事情から、ネットブラケットの設置を要するかかる隙間は、一般には、200mm〜500mmであることが多い。
【0031】
このため、従来、落下防止用として設置されるネットブラケットとしては、その距離の大小に応じて、一般には、単尺用(全長が200mm以上300mm以下のもの)と長尺用(300mm以上500mm以下のもの)との二種類のネットブラケットを適時使い分けていた。例えば、特許文献1のごとき二本の伸縮用アームにて構成されたネットブラケットでは、200mm〜300mmm用のものと、300mm〜500mm用のものとが多く用いられてきた。そのため、在庫スペースが二倍必要になっていた。
【0032】
また、ネットブラケットの使用に際して保護用ネットやアーム部材を建築物から一時的に離しておかなければならなくなる場合がある。この場合、アーム部に設けられた回転軸を支点としてアーム部を天井方向に折り曲げ、起立収納しておく必要がある。そのため、従来、特許文献3のごとく、支柱の取付部と建築物との距離方向(水平方向)に対して垂直となる方向(鉛直方向)に1軸の長孔溝(スリット)を基部に設け、回転軸を長孔溝下端に移動し、アーム部を起立させてコンパクトに収納していた。
【0033】
ここで、200mm〜500mmの伸縮を可能とするアーム機構を考えると、物理的な制約から四本以上のアーム部を要し、各中間アームを固定するための蝶ネジ等を多く設ける必要がある。また、先端側アーム部材の必要強度を考慮すると、基部側アーム部材の径が大きくなり、加えて、アーム部は一般に鋼製材で構成されるものであって過重量となるため、実用的でない。さらに、作業前後における部材の搬送に際してアーム部材の回転軸を起立収納用溝下端に移動させ起立収納状態で搬送するために天地逆転して搬送しようとすると、回転軸は、長孔溝(スリット)をガイドとして容易に移動してしまう。このため、アーム部が滑り出し、作業者の足元や階段等にぶつかり搬送作業性を悪化させる原因となっている。
【0034】
このような事情に鑑み、本実施の形態のネットブラケットに係る発明が生まれた。本実施の形態のネットブラケットは、足場支柱と建築物との隙間に設置される保護用ネットブラケットのうち200mm〜500mmの隙間を満足する三本以下の伸縮アーム部を要し、従来品(2〜3kg)並みの軽量化を実現する。且つ、本実施の形態のネットブラケットは、アーム部材を起立収納した後、搬送時に天地逆転しても収納用長孔溝(スリット)を回転軸が容易に移動しアーム部が滑り出ない構造を有している。このため、収納時の安定性の確保と、収納スペースのコンパクト化が実現されるのである。
【0035】
なお、別の実施の形態として、アーム部材は、中間アーム部材44を省略して部品数を少なくし、基部側アーム部材41及び先端側アーム部材43という二つのアーム部材からなってもよい。その場合のネットブラケットは、アーム部材伸縮方向ガイド長の長い溝形状を有するアーム取り付け部で構成されることとなり、収納時のアーム伸縮方向側の大きさがその分大きくなる。
【0036】
次いで、別の実施の一形態を、図9に基づいて説明する。本実施の形態を、説明の便宜上、第二の実施の形態と呼ぶ。この場合、第一の実施の形態と同一の部分には同一の符号を付し、説明を省略する。図9は、ネットブラケットの先端側アーム部材伸張状態かつ回転軸はアーム部材伸縮方向ガイドの先端側アーム部材側に移動された状態の正面図である。本実施の形態において、孔部HLは、枝分かれになっておらず、アーム部材伸縮方向ガイド31のみを形成している。
【0037】
本実施の形態のネットブラケットでは、アーム部材(中間アーム部材44、先端側アーム部材43、基部側アーム部材41)の伸縮方向の延長上に回転軸42をガイドするアーム部材伸縮方向ガイド31によって、基部側アーム部材41がアーム取り付け部21に固定されることなく、アーム取り付け部21に対し移動自在となり、アーム部材全長の伸縮長さを拡大することができる。そして、伸縮方向ガイド回転軸保留部33、34のいずれかに回転軸42を固定することで、アーム部材は動かなくなり、しかも確実に固定される。
【0038】
次いで、別の実施の一形態を、図10及び図11に基づいて説明する。本実施の形態を、説明の便宜上、第三の実施の形態と呼ぶ。この場合、第一の実施の形態と同一の部分には同一の符号を付し、説明を省略する。図10は、ネットブラケットの先端側アーム部材伸張状態かつ回転軸はアーム部材収納方向ガイドの上端側に移動された状態の正面図である。図11は、ネットブラケットの収納状態の正面図である。本実施の形態において、孔部HLは、枝分かれになっておらず、アーム部材収納方向ガイド32のみを形成している。そして、このアーム部材収納方向ガイド32は、第一の実施の形態における伸縮方向ガイド回転軸保留部34に対応する箇所に設けられる別のガイド回転軸保留部34’と、収納方向ガイド回転軸保留部36とを繋ぐように延びている。より詳細には、アーム部材収納方向ガイド32は、図10に示すように、伸縮方向に交差する方向にガイド回転軸保留部34’から延び、そこから収納方向補助ガイド35を設けて更に伸縮方向と平行に延び、その先端に収納方向ガイド回転軸保留部36を設けている。
【0039】
本実施の形態のネットブラケットでは、アーム部材収納方向ガイド32にしたがって回転軸42をアーム伸縮方向と同様の水平方向に設けられた収納方向補助ガイド35内の水平部位に移動させることで、ネットブラケットを天地逆転しても回転軸42がアーム部材収納方向ガイド32の状態にあるガイド回転軸保留部34’の位置に戻り、アーム部材が床面方向に飛び出すことが無くなり、さらに、アーム部材を縮小した収納時の安定性の確保を実現することができる。そして、ガイド回転軸保留部34’及び収納方向ガイド回転軸保留部36のいずれかに回転軸42を固定することで、アーム部材は動かなくなり、しかも確実に固定される。
【符号の説明】
【0040】
11 取り付け部
21 アーム取り付け部
31 アーム部材伸縮方向ガイド
32 アーム部材収納方向ガイド
35 収納方向補助ガイド
33、34(34’)、36 ガイド回転軸保留部
41 基部側アーム部材
42 回転軸
43 先端側アーム部材
HL 孔部
【技術分野】
【0001】
本発明は、ネットブラケットに関する。詳細には、建築物の周囲に設置される仮設足場に基部が取り付けられ、その先端等で保護用ネットを掛け止めるネットブラケットに関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、ネットブラケットの基部は、仮設足場の足場支柱に取り付けられる。ネットブラケットからは、アーム部材が突設する。アーム部材の先端側の部分には、保護用ネットが掛け止められる。足場支柱から保護用ネットの掛け止め必要箇所までの距離は、保護用ネットを掛け止める場所の必要度によって異なる。そのため、従来、仮設足場の状況に応じて、アーム部材の長さが異なる数種類のネットブラケットを予め用意して、前記距離に応じてアーム部材の長さの異なるネットブラケットを選択して使用することが行われている。
【0003】
特許文献1、特許文献2および特許文献3に記載のネットブラケットにおいて、アーム部材は、基部側アーム部材と先端側アーム部材との二つの部材から構成される。ここで、先端側アーム部材は基部側アーム部材に対して伸縮自在である。そして、伸縮された先端側アーム部材は、蝶ネジで基部側アーム部材に固定されている。そのため、特許文献1ないし特許文献3によれば、各アーム部材は、それぞれ基部側アーム部材と先端側アーム部材とからなるアーム部材全長が調整可能となるので、敢えて数種類のネットブラケットを用意する必要はない、とされる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2002−147025号公報
【特許文献2】特開2004−238813号公報
【特許文献3】特開平7−317298号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載のネットブラケットは、アーム部材全長の伸縮長は充分なものとはいえない。また、特許文献2、特許文献3に記載のネットブラケットでは、スリットは設けられているものの、このスリットは鉛直方向等に設けられており、アーム部材の伸縮方向の延長上あるいは水平方向に設けられているものではない。したがって、これらは、アーム部材の伸縮方向の延長上に回転軸が移動するのをガイドするものでもない。そのためこれら文献記載のアーム部材全長の伸縮長は充分なものとは言えない。
【0006】
また、特許文献1ないし特許文献3のいずれに記載のネットブラケットも、アーム部材を縮小したネットブラケット収納時の安定性を考慮したものとは言えない。
【0007】
本発明の目的は、アーム部材全長の伸縮長さを拡大するとともに、アーム部材を縮小した収納時のネットブラケットの安定性の確保を実現することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1に記載のネットブラケットは、被取り付け対象に固定される取り付け部と、孔部を有し、前記取り付け部に固定されるアーム取り付け部と、前記孔部に入り込む回転軸を有して、前記アーム取り付け部に回転自在に取り付けられる基部側アーム部材と、前記基部側アーム部材に伸縮自在に取り付けられる先端側アーム部材と、前記孔部の一部を構成し、前記基部側アーム部材に対する前記先端側アーム部材の伸縮方向のほぼ延長上に前記回転軸が移動するのをガイドするアーム部材伸縮方向ガイドと、前記孔部の一部を構成して前記アーム部材伸縮方向ガイドから枝分かれし、当該アーム部材伸縮方向ガイドと交差する方向に前記回転軸が移動するのをガイドするアーム部材収納方向ガイドと、前記アーム部材伸縮方向ガイドと前記アーム部材収納方向ガイドとのいずれにも設けられ前記ガイド回転軸を保留するガイド回転軸保留部と、を備える。
【0009】
請求項2に記載のネットブラケットは、被取り付け対象に固定される取り付け部と、前記取り付け部に固定されるアーム取り付け部と、前記孔部に入り込む回転軸を有して、前記アーム取り付け部に回転自在に取り付けられる基部側アーム部材と、前記基部側アーム部材に伸縮自在に取り付けられる先端側アーム部材と、前記アーム取り付け部に形成され、前記基部側アーム部材に対する前記先端側アーム部材の伸縮方向のほぼ延長上に前記回転軸が移動するのをガイドするアーム部材伸縮方向ガイドと、前記アーム部材伸縮方向ガイドに設けられ前記ガイド回転軸を保留するガイド回転軸保留部と、を備える。
【0010】
請求項3に記載のネットブラケットは、被取り付け対象に固定される取り付け部と、前記取り付け部に固定されるアーム取り付け部と、前記孔部に入り込む回転軸を有して、前記アーム取り付け部に回転自在に取り付けられる基部側アーム部材と、前記基部側アーム部材に伸縮自在に取り付けられる先端側アーム部材と、前記アーム取り付け部に形成され、前記基部側アーム部材に対する前記先端側アーム部材の伸縮方向と交差する方向に前記回転軸を移動させ更にこの回転軸を前記伸縮方向と平行にガイドするアーム部材収納方向ガイドと、前記アーム部材収納方向ガイドに設けられ前記ガイド回転軸を保留するガイド回転軸保留部と、を備える。
【発明の効果】
【0011】
請求項1ないし3のいずれに記載のネットブラケットの発明によっても、基部側アーム部材に設けられた回転軸がアーム部材の伸縮方向の延長線上にガイドされて移動し、回転軸がガイド回転軸保留部に保留されるので、アーム部材全長の伸縮長さを拡大することができ、また、アーム部材を縮小したネットブラケット収納時に、ネットブラケットの安定性の確保を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】第一の実施の形態における、ネットブラケットの先端側アーム部材縮小状態の正面図である。
【図2】ネットブラケットのアーム取り付け部の右側面図である。
【図3】ネットブラケットの先端側アーム部材伸張状態かつ回転軸はアーム部材伸縮方向ガイドの取り付け部側に移動された状態の正面図である。
【図4】ネットブラケットの先端側アーム部材伸張状態かつ回転軸はアーム部材伸縮方向ガイドの先端側アーム部材側に移動された状態の正面図である。
【図5】ネットブラケットの先端側アーム部材伸張状態かつ回転軸はアーム部材伸縮方向ガイドの先端側アーム部材側に移動された状態の底面図である。
【図6】ネットブラケットの収納状態の正面図である。
【図7】ネットブラケットの収納状態の背面図である。
【図8】ネットブラケットのアーム取り付け部の正面拡大図である。
【図9】第二の実施の形態における、ネットブラケットの先端側アーム部材伸張状態かつ回転軸はアーム部材伸縮方向ガイドの先端側アーム部材側に移動された状態の正面図である。
【図10】第三の実施の形態における、ネットブラケットの先端側アーム部材伸張状態かつ回転軸はアーム部材収納方向ガイドの上端側に移動された状態の正面図である。
【図11】第三の実施の形態における、ネットブラケットの収納状態の正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
実施の一形態を、図1ないし図8に基づいて説明する。本実施の形態を、説明の便宜上、第一の実施の形態と呼ぶ。図1は、ネットブラケットの先端側アーム部材縮小状態の正面図である。また、図2は、ネットブラケットのアーム取り付け部の右側面図である。また、図3は、ネットブラケットの先端側アーム部材伸張状態かつ回転軸はアーム部材伸縮方向ガイドの取り付け部側に移動された状態の正面図である。また、図4は、ネットブラケットの先端側アーム部材伸張状態かつ回転軸はアーム部材伸縮方向ガイドの先端側アーム部材側に移動された状態の正面図である。また、図5は、ネットブラケットの先端側アーム部材伸張状態かつ回転軸はアーム部材伸縮方向ガイドの先端側アーム部材側に移動された状態の平面図である。また、図6は、ネットブラケットの収納状態の正面図である。また、図7は、ネットブラケットの収納状態の背面図である。また、図8は、ネットブラケットのアーム取り付け部の正面拡大図である。
【0014】
11は、ネットブラケットに設けられる取り付け部である。取り付け部11は、被取り付け対象(図示せず)に固定される。被取り付け対象となるのは、この実施の形態では、仮設足場の足場支柱である。このため、取り付け部11として、この実施の形態ではクランプが示されている。
【0015】
21は、アーム取り付け部である。アーム取り付け部21は、二枚の板状体22、23を有し、コ字形状をなしている。板状体22と板状体23とは、この実施の形態では金属板からなる。アーム取り付け部21は、取り付け部11に取り付けられる。板状体22と板状体23との間には、アーム支持具24が設けられている。アーム支持具24は、この実施の形態では、板状体22の外側からアーム取り付け部21に装着されるボルト、および、板状体23の外側からボルトの軸部に螺合するナットからなる。
【0016】
板状体22、板状体23には、それぞれ、孔部HLが設けられる。本実施の形態において、孔部HLは、アーム部材伸縮方向ガイド31及びアーム部材収納方向ガイド32を形成している。アーム部材伸縮方向ガイド31と、アーム部材収納方向ガイド32とは、金属板を貫通させて溝状に設けられる。
【0017】
25は、根元フックである。根元フック25には、ネットが掛止される。
【0018】
41は、基部側アーム部材である。基部側アーム部材41は、金属パイプで形成され、アーム部材の一部を構成する。基部側アーム部材41における取り付け部11側の端部には、回転軸42が設けられる。回転軸42は、この実施の形態では、ボルトおよびこれに螺合するナットからなる。回転軸42は、アーム取り付け部21の孔部HL内を移動可能に、この孔部HLに嵌め込まれて取り付けられる。本実施の形態において、回転軸42は、アーム部材伸縮方向ガイド31およびアーム部材収納方向ガイド32に沿って移動する。なお、回転軸42の両端部には抜止部が設けられていて、回転軸42は孔部HLから脱落しないようになっている。本実施の形態において、この抜止部の役割を果たすのは、ボルト頭及びナットである。
【0019】
アーム部材伸縮方向ガイド31は、孔部HLの一部をなしてアーム取り付け部21に設けられ、基部側アーム部材41の伸縮方向のほぼ延長上に回転軸42をガイドする。この「ほぼ延長上」というのは、全くの延長上でなくともよい、ということを意味する。一例として、アーム部材伸縮方向ガイド31がほぼ水平に延びているのに対し(図1参照)、基部側アーム部材41の伸縮方向は、このアーム部材伸縮方向ガイド31がなす水平に対してほぼ20度だけ傾いた方向である。とどのつまり、アーム部材伸縮方向ガイド31は、基部側アーム部材41の伸縮を邪魔しない範囲の角度をなすよう延びていればよい。好ましくは、アーム部材伸縮方向ガイド31は、根元フック25と先端フック47(後述)とを結ぶ仮想線を水平に保ったままで基部側アーム部材41を伸縮させるよう形成されていると良い。
【0020】
アーム部材収納方向ガイド32は、孔部HLの一部をなしてアーム取り付け部21に設けられる。このアーム部材収納方向ガイド32は、アーム部材伸縮方向ガイド31から枝分かれして延び、このアーム部材伸縮方向ガイド31に沿って移動する回転軸42をアーム部材伸縮方向ガイド31と交差する方向にガイドする。この実施の形態において、この「交差する方向」とは、アーム部材伸縮方向ガイド31に対しほぼ垂直となる方向である。
【0021】
33、34、36はガイド回転軸保留部である。そのうち、33、34は、伸縮方向ガイド回転軸保留部である。伸縮方向ガイド回転軸保留部33、34は、アーム部材伸縮方向ガイド31の両端部に、アーム部材収納方向ガイド32がアーム部材伸縮方向ガイド31から枝分かれして延びている方向とは反対方向に設けられる。本実施の形態において、伸縮方向ガイド回転軸保留部33、34は、アーム部材収納方向ガイド32から、上方に向けて溝状に設けられる。
【0022】
35は、収納方向補助ガイドである。収納方向補助ガイド35は、アーム部材収納方向ガイド32の先端の一部をなしていてアーム部材伸縮方向ガイド31と平行をなす方向に屈曲して設けられる。本実施の形態において、収納方向補助ガイド35は、水平方向に溝状に設けられる。
【0023】
36は、収納方向ガイド回転軸保留部である。収納方向ガイド回転軸保留部36は、収納方向補助ガイド35に設けられる。本実施の形態では、収納方向ガイド回転軸保留部36は、収納方向補助ガイド35の先端で、アーム部材伸縮方向ガイド31に向かう方向に溝状に設けられる。
【0024】
43は、先端側アーム部材である。また、44は、中間アーム部材である。中間アーム部材44は、基部側アーム部材41に伸縮自在に取り付けられる。先端側アーム部材43は、中間アーム部材44に伸縮自在に取り付けられる。このようにして、本実施の形態では、アーム部材は、基部側アーム部材41と中間アーム部材44と先端側アーム部材43とから構成される。
【0025】
45、46は蝶ネジである。蝶ネジ45は、基部側アーム部材41と中間アーム部材44とを相互に固定する。蝶ネジ46は、中間アーム部材44と先端側アーム部材43とを相互に固定する。蝶ネジ45、46を固定したり解除したりすることで、基部側アーム部材41と中間アーム部材44と先端側アーム部材43とは互いにスライドし、アーム部材全体が伸縮自在となる。
【0026】
47は、先端フックである。先端フック47は、先端側アーム部材43の先端に取り付けられ、ネットが掛止される。
【0027】
本実施の形態のネットブラケットでは、アーム部材(中間アーム部材44、先端側アーム部材43、基部側アーム部材41)の伸縮方向の延長上に回転軸42をガイドするアーム部材伸縮方向ガイド31によって、基部側アーム部材41がアーム取り付け部21に固定されることなく、アーム取り付け部21に対し移動自在となっている。これにより、アーム部材全長の伸縮長さを拡大することができる。
【0028】
更に、この実施の形態によれば、アーム部材伸縮方向ガイド31の一部からアーム部材伸縮方向ガイド31と交差する方向に、回転軸42をガイドするアーム部材収納方向ガイド32が枝分かれして延びている。このアーム部材収納方向ガイド32にしたがって基部側アーム部材41を移動させることで、アーム部材を縮小した収納時の安定性の確保を実現することができる。
【0029】
更に、伸縮方向ガイド回転軸保留部33、34、収納方向ガイド回転軸保留部36のいずれかに回転軸42を固定することで、アーム部材は動かなくなり、しかも確実に固定される。特に、このネットブラケットを収納する場合には、図6、図7に図示されるように、基部側アーム部材41の内部に収納されるように、先端側アーム部材43と中間アーム部材44とをスライドさせてアーム部材全体を縮小し、続いてこの縮小したアーム部材全体を取り付け部11側に折り曲げる。次いで、蝶ネジ45、46でアーム部材を構成する基部側アーム部材41と先端側アーム部材43と中間アーム部材44とを相互を固定し、回転軸42を収納方向ガイド回転軸保留部36に収納する。ここで、回転軸42がボルト及びナットで構成されている場合、回転軸42を収納方向ガイド回転軸保留部36に収納させた後にナットをボルトに対して回転して、板状体22,23をボルト頭及びナットで締め付けて固定するようにしてもよい。こうすると、回転軸42は、収納方向ガイド回転軸保留部36から移動しないし、特に、天地を逆にしてネットブラケットを設置しても、回転軸42は移動しなくなり、アーム部材全体が動かなくなる。
【0030】
本実施の形態のネットブラケットは、以下の事情に鑑みて生み出されたものである。すなわち、従来、建設現場等に設けられる足場支柱からこれに掛けられる保護用ネットの掛け止め必要箇所までの距離は、この支柱の設置位置と建築物との隙間の距離(一般には、500mm以下)によって異なる。このような事情から、ネットブラケットの設置を要するかかる隙間は、一般には、200mm〜500mmであることが多い。
【0031】
このため、従来、落下防止用として設置されるネットブラケットとしては、その距離の大小に応じて、一般には、単尺用(全長が200mm以上300mm以下のもの)と長尺用(300mm以上500mm以下のもの)との二種類のネットブラケットを適時使い分けていた。例えば、特許文献1のごとき二本の伸縮用アームにて構成されたネットブラケットでは、200mm〜300mmm用のものと、300mm〜500mm用のものとが多く用いられてきた。そのため、在庫スペースが二倍必要になっていた。
【0032】
また、ネットブラケットの使用に際して保護用ネットやアーム部材を建築物から一時的に離しておかなければならなくなる場合がある。この場合、アーム部に設けられた回転軸を支点としてアーム部を天井方向に折り曲げ、起立収納しておく必要がある。そのため、従来、特許文献3のごとく、支柱の取付部と建築物との距離方向(水平方向)に対して垂直となる方向(鉛直方向)に1軸の長孔溝(スリット)を基部に設け、回転軸を長孔溝下端に移動し、アーム部を起立させてコンパクトに収納していた。
【0033】
ここで、200mm〜500mmの伸縮を可能とするアーム機構を考えると、物理的な制約から四本以上のアーム部を要し、各中間アームを固定するための蝶ネジ等を多く設ける必要がある。また、先端側アーム部材の必要強度を考慮すると、基部側アーム部材の径が大きくなり、加えて、アーム部は一般に鋼製材で構成されるものであって過重量となるため、実用的でない。さらに、作業前後における部材の搬送に際してアーム部材の回転軸を起立収納用溝下端に移動させ起立収納状態で搬送するために天地逆転して搬送しようとすると、回転軸は、長孔溝(スリット)をガイドとして容易に移動してしまう。このため、アーム部が滑り出し、作業者の足元や階段等にぶつかり搬送作業性を悪化させる原因となっている。
【0034】
このような事情に鑑み、本実施の形態のネットブラケットに係る発明が生まれた。本実施の形態のネットブラケットは、足場支柱と建築物との隙間に設置される保護用ネットブラケットのうち200mm〜500mmの隙間を満足する三本以下の伸縮アーム部を要し、従来品(2〜3kg)並みの軽量化を実現する。且つ、本実施の形態のネットブラケットは、アーム部材を起立収納した後、搬送時に天地逆転しても収納用長孔溝(スリット)を回転軸が容易に移動しアーム部が滑り出ない構造を有している。このため、収納時の安定性の確保と、収納スペースのコンパクト化が実現されるのである。
【0035】
なお、別の実施の形態として、アーム部材は、中間アーム部材44を省略して部品数を少なくし、基部側アーム部材41及び先端側アーム部材43という二つのアーム部材からなってもよい。その場合のネットブラケットは、アーム部材伸縮方向ガイド長の長い溝形状を有するアーム取り付け部で構成されることとなり、収納時のアーム伸縮方向側の大きさがその分大きくなる。
【0036】
次いで、別の実施の一形態を、図9に基づいて説明する。本実施の形態を、説明の便宜上、第二の実施の形態と呼ぶ。この場合、第一の実施の形態と同一の部分には同一の符号を付し、説明を省略する。図9は、ネットブラケットの先端側アーム部材伸張状態かつ回転軸はアーム部材伸縮方向ガイドの先端側アーム部材側に移動された状態の正面図である。本実施の形態において、孔部HLは、枝分かれになっておらず、アーム部材伸縮方向ガイド31のみを形成している。
【0037】
本実施の形態のネットブラケットでは、アーム部材(中間アーム部材44、先端側アーム部材43、基部側アーム部材41)の伸縮方向の延長上に回転軸42をガイドするアーム部材伸縮方向ガイド31によって、基部側アーム部材41がアーム取り付け部21に固定されることなく、アーム取り付け部21に対し移動自在となり、アーム部材全長の伸縮長さを拡大することができる。そして、伸縮方向ガイド回転軸保留部33、34のいずれかに回転軸42を固定することで、アーム部材は動かなくなり、しかも確実に固定される。
【0038】
次いで、別の実施の一形態を、図10及び図11に基づいて説明する。本実施の形態を、説明の便宜上、第三の実施の形態と呼ぶ。この場合、第一の実施の形態と同一の部分には同一の符号を付し、説明を省略する。図10は、ネットブラケットの先端側アーム部材伸張状態かつ回転軸はアーム部材収納方向ガイドの上端側に移動された状態の正面図である。図11は、ネットブラケットの収納状態の正面図である。本実施の形態において、孔部HLは、枝分かれになっておらず、アーム部材収納方向ガイド32のみを形成している。そして、このアーム部材収納方向ガイド32は、第一の実施の形態における伸縮方向ガイド回転軸保留部34に対応する箇所に設けられる別のガイド回転軸保留部34’と、収納方向ガイド回転軸保留部36とを繋ぐように延びている。より詳細には、アーム部材収納方向ガイド32は、図10に示すように、伸縮方向に交差する方向にガイド回転軸保留部34’から延び、そこから収納方向補助ガイド35を設けて更に伸縮方向と平行に延び、その先端に収納方向ガイド回転軸保留部36を設けている。
【0039】
本実施の形態のネットブラケットでは、アーム部材収納方向ガイド32にしたがって回転軸42をアーム伸縮方向と同様の水平方向に設けられた収納方向補助ガイド35内の水平部位に移動させることで、ネットブラケットを天地逆転しても回転軸42がアーム部材収納方向ガイド32の状態にあるガイド回転軸保留部34’の位置に戻り、アーム部材が床面方向に飛び出すことが無くなり、さらに、アーム部材を縮小した収納時の安定性の確保を実現することができる。そして、ガイド回転軸保留部34’及び収納方向ガイド回転軸保留部36のいずれかに回転軸42を固定することで、アーム部材は動かなくなり、しかも確実に固定される。
【符号の説明】
【0040】
11 取り付け部
21 アーム取り付け部
31 アーム部材伸縮方向ガイド
32 アーム部材収納方向ガイド
35 収納方向補助ガイド
33、34(34’)、36 ガイド回転軸保留部
41 基部側アーム部材
42 回転軸
43 先端側アーム部材
HL 孔部
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被取り付け対象に固定される取り付け部と、
孔部を有し、前記取り付け部に固定されるアーム取り付け部と、
前記孔部に入り込む回転軸を有して、前記アーム取り付け部に回転自在に取り付けられる基部側アーム部材と、
前記基部側アーム部材に伸縮自在に取り付けられる先端側アーム部材と、
前記孔部の一部を構成し、前記基部側アーム部材に対する前記先端側アーム部材の伸縮方向のほぼ延長上に前記回転軸が移動するのをガイドするアーム部材伸縮方向ガイドと、
前記孔部の一部を構成して前記アーム部材伸縮方向ガイドから枝分かれし、当該アーム部材伸縮方向ガイドと交差する方向に前記回転軸が移動するのをガイドするアーム部材収納方向ガイドと、
前記アーム部材伸縮方向ガイドと前記アーム部材収納方向ガイドとのいずれにも設けられ前記ガイド回転軸を保留するガイド回転軸保留部と、
を備えるネットブラケット。
【請求項2】
被取り付け対象に固定される取り付け部と、
前記取り付け部に固定されるアーム取り付け部と、
前記孔部に入り込む回転軸を有して、前記アーム取り付け部に回転自在に取り付けられる基部側アーム部材と、
前記基部側アーム部材に伸縮自在に取り付けられる先端側アーム部材と、
前記アーム取り付け部に形成され、前記基部側アーム部材に対する前記先端側アーム部材の伸縮方向のほぼ延長上に前記回転軸が移動するのをガイドするアーム部材伸縮方向ガイドと、
前記アーム部材伸縮方向ガイドに設けられ前記ガイド回転軸を保留するガイド回転軸保留部と、
を備えるネットブラケット。
【請求項3】
被取り付け対象に固定される取り付け部と、
前記取り付け部に固定されるアーム取り付け部と、
前記孔部に入り込む回転軸を有して、前記アーム取り付け部に回転自在に取り付けられる基部側アーム部材と、
前記基部側アーム部材に伸縮自在に取り付けられる先端側アーム部材と、
前記アーム取り付け部に形成され、前記基部側アーム部材に対する前記先端側アーム部材の伸縮方向と交差する方向に前記回転軸を移動させ更にこの回転軸を前記伸縮方向と平行にガイドするアーム部材収納方向ガイドと、
前記アーム部材収納方向ガイドに設けられ前記ガイド回転軸を保留するガイド回転軸保留部と、
を備えるネットブラケット。
【請求項1】
被取り付け対象に固定される取り付け部と、
孔部を有し、前記取り付け部に固定されるアーム取り付け部と、
前記孔部に入り込む回転軸を有して、前記アーム取り付け部に回転自在に取り付けられる基部側アーム部材と、
前記基部側アーム部材に伸縮自在に取り付けられる先端側アーム部材と、
前記孔部の一部を構成し、前記基部側アーム部材に対する前記先端側アーム部材の伸縮方向のほぼ延長上に前記回転軸が移動するのをガイドするアーム部材伸縮方向ガイドと、
前記孔部の一部を構成して前記アーム部材伸縮方向ガイドから枝分かれし、当該アーム部材伸縮方向ガイドと交差する方向に前記回転軸が移動するのをガイドするアーム部材収納方向ガイドと、
前記アーム部材伸縮方向ガイドと前記アーム部材収納方向ガイドとのいずれにも設けられ前記ガイド回転軸を保留するガイド回転軸保留部と、
を備えるネットブラケット。
【請求項2】
被取り付け対象に固定される取り付け部と、
前記取り付け部に固定されるアーム取り付け部と、
前記孔部に入り込む回転軸を有して、前記アーム取り付け部に回転自在に取り付けられる基部側アーム部材と、
前記基部側アーム部材に伸縮自在に取り付けられる先端側アーム部材と、
前記アーム取り付け部に形成され、前記基部側アーム部材に対する前記先端側アーム部材の伸縮方向のほぼ延長上に前記回転軸が移動するのをガイドするアーム部材伸縮方向ガイドと、
前記アーム部材伸縮方向ガイドに設けられ前記ガイド回転軸を保留するガイド回転軸保留部と、
を備えるネットブラケット。
【請求項3】
被取り付け対象に固定される取り付け部と、
前記取り付け部に固定されるアーム取り付け部と、
前記孔部に入り込む回転軸を有して、前記アーム取り付け部に回転自在に取り付けられる基部側アーム部材と、
前記基部側アーム部材に伸縮自在に取り付けられる先端側アーム部材と、
前記アーム取り付け部に形成され、前記基部側アーム部材に対する前記先端側アーム部材の伸縮方向と交差する方向に前記回転軸を移動させ更にこの回転軸を前記伸縮方向と平行にガイドするアーム部材収納方向ガイドと、
前記アーム部材収納方向ガイドに設けられ前記ガイド回転軸を保留するガイド回転軸保留部と、
を備えるネットブラケット。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2011−58207(P2011−58207A)
【公開日】平成23年3月24日(2011.3.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−207172(P2009−207172)
【出願日】平成21年9月8日(2009.9.8)
【出願人】(000210883)中央ビルト工業株式会社 (9)
【公開日】平成23年3月24日(2011.3.24)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年9月8日(2009.9.8)
【出願人】(000210883)中央ビルト工業株式会社 (9)
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