説明

ネットワーク印刷システム

【課題】プリンタドライバおよびプリンタと接続するためのインタフェースを備えない携帯端末から,容易にプリンタに印刷することができ,かつプリンタは特定の専用プリンタではなく,従来から存在するプリンタを用いることができるシステムを提供することを目的とする。
【解決手段】携帯端末が変換前印刷データをネットワーク上のサーバに送り,当該サーバは,受信した変換前印刷データを,自身が予め備えるプリンタドライバを用いて特定のプリンタに適合した印刷データに変換し,これを所定の領域にて保持する。次いで,プリンタに接続しているプリンタ管理装置が当該印刷データを取得しプリンタに送信することで印刷を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願発明は,コンピュータネットワークにおける印刷システムに関するものであり,特に,処理の多くをクライアントではなくサーバ側で行う,いわゆるクラウドコンピューティングに関するものである。
【背景技術】
【0002】
コンピュータネットワークの発達により,近年では,クラウドコンピューティングと呼ばれるものが普及し始めている(非特許文献1)。クラウドコンピューティングとは,従来は,PC等のローカルにて管理されているデータや行われていた処理といったものをネットワーク(多くはインターネット)上のサーバがローカルのクライアントに代わって担うものである。よって,ユーザが用意するものとしては,ネットワークに接続する手段だけでよく,データ管理等の手間が軽減できることから,主に企業において利用されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【非特許文献1】日経BP社 ホームページ<http://itpro.nikkeibp.co.jp/article/Keyword/20080708/310352/>
【0004】
ところで近年は,スマートフォンに代表される携帯端末が急速に普及している。ユーザは,携帯端末を使用することで,電話を掛けたり,メールを送受信したり,写真を撮るなど多くのことが行えるようになっている。
【0005】
このように様々なことが行える携帯端末であるが,印刷に限っては,容易に行うことができなかった。通常,プリンタで印刷を行うには,PCなどのホストにプリンタの機種に適合したドライバをインストールしておき,このドライバを用いて個々のプリンタに適合した印刷データを生成(変換)する必要がある。ところが,現実には携帯端末用,より具体的には携帯端末のオペレーティングシステムで動作するプリンタドライバはほとんど存在しない。また,携帯端末にはプリンタと接続するためのインタフェースが備えられてないことも多い。このような事情があり,携帯端末から印刷を行うことが困難であった。
【0006】
このような課題を解決する手段として非特許文献2にかかるシステムが開示されている。これは,携帯端末からインターネットのクラウド上に存在するサーバに印刷したいファイルを送信し,サーバがプリンタに適合した印刷データに変換した後,所定のプリンタでこのデータを印刷するというものである。
【0007】
【非特許文献1】Google社 ホームページ<http://code.google.com/intl/ja/apis/cloudprint/docs/overview.html>
【0008】
しかし,非特許文献2に開示のシステムでは,当該システム専用のプリンタが必要となる。つまり,サーバが変換する印刷データは,特定の形式に固定されているものであって,従来から存在する多種多様のプリンタに適合可能なものではない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本願発明はかかる課題を解決するためのものである。すなわち,プリンタドライバおよびプリンタと接続するためのインタフェースを備えない携帯端末から,容易にプリンタに印刷することができ,かつプリンタは特定の専用プリンタではなく,従来から存在するプリンタを用いることができるシステムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本願発明にかかる第1の形態は,プリンタ管理装置とサーバ,および印刷クライアントと当該サーバとがネットワーク接続されているネットワーク印刷システムであって,プリンタ管理装置は,所定のプリンタの識別情報(プリンタ識別情報)を取得する手段と,取得したプリンタ識別情報と自身の識別情報(プリンタ管理装置識別情報)とを,サーバに送信する手段と,サーバが指定する所定の領域から,自身の識別情報(プリンタ管理装置識別情報)に関連付けられた印刷データを読み出す手段と,読み出した印刷データを所定のプリンタに送信する手段と,を備え,サーバは,プリンタ管理装置から送信されたプリンタ識別情報とプリンタ管理装置識別情報とを受信する手段と,受信したプリンタ識別情報とプリンタ管理装置識別情報とを関連付けて記憶するプリンタ情報記憶手段と,印刷クライアントから,プリンタ管理装置識別情報と,所定のプリンタに適合した印刷データに変換される前の変換前印刷データ,とを受信する手段と,印刷クライアントから受信したプリンタ管理装置識別情報と一致するプリンタ管理装置識別情報をプリンタ情報記憶手段から検索するプリンタ情報検索手段と,一致するプリンタ管理装置識別情報を検出した場合に,印刷クライアントから受信した変換前印刷データを,当該プリンタ管理装置識別情報に関連付けられた所定のプリンタ識別情報によって特定されるプリンタ(特定プリンタ)に適合した印刷データに変換する手段と,変換した印刷データを所定の領域に保持する手段と,を備えることを特徴とするネットワーク印刷システムである。
【0011】
好ましくは,印刷クライアントは,特定プリンタに適合した印刷データに変換する手段を備えないこと,を特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本願発明では,携帯端末が変換前印刷データをネットワーク上のサーバに送り,当該サーバは,受信した変換前印刷データを,自身が予め備えるプリンタドライバを用いて特定のプリンタに適合した印刷データに変換し,これを所定の領域にて保持する。次いで,プリンタに接続しているプリンタ管理装置が当該印刷データを取得しプリンタに送信することで印刷を行う。
【0013】
このシステムによれば,所定のプリンタに適合した印刷データへの変換はサーバ上にて行われるため,携帯端末からは単に印刷したい変換前の印刷データをサーバに送るだけで,所望のデータの印刷を行うことができる。勿論,プリンタドライバは,従来から存在するものを利用するので,プリンタ自身も特定の専用プリンタではなく,従来から存在するプリンタを用いることが可能である。
【0014】
また,変換後の印刷データは,プリンタに接続されたプリンタ管理装置がサーバをポーリングして読み出すようにしているため,サーバがプリンタ管理装置のアドレスを特定し直接送信する必要がない。つまり,サーバは数多く存在するプリンタ管理装置のアドレスを管理する必要がなく,本願発明にかかるシステムを容易に運用することができる。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下では図面を参照し本願発明に係る実施例を説明する。
[システム全体図]
【0016】
図1は本願発明にかかるシステムの全体図である。プリンタ101はプリンタ管理装置102およびルータ103を介してクラウド上のサーバ104と接続されており,同様に携帯端末106もサーバ104と接続されている。携帯端末106がサーバ104に接続する手段としては,図示するように,アクセスポイント105とルータ103を介したもののほか,携帯端末用の公衆回線を介したものが利用可能である。
【0017】
サーバ104には,本図におけるプリンタ101のドライバも含めあらかじめ各種プリンタドライバが備えられている。本図において特徴となる要素はプリンタ管理装置102とサーバ104であるが,詳細は後述する。その他の要素は通常のネットワークと同じであるため説明は省略する。なお,本実施例では,携帯端末106から印刷指示を行い,プリンタ101で出力することを想定する。
[プリンタからの情報取得]
【0018】
図2はプリンタ管理装置102の機能の一部である。プリンタ管理装置102とプリンタ101とは,USBなど周辺機器用のインタフェースを介して相互に接続されており,プリンタ管理装置102はプリンタ101の接続を検出すると,プリンタ101を識別するための識別情報を取得する。識別情報とは具体的には,プリンタ101のVendor ID,Product ID,Manufacture Name,Product NameおよびPrinter Device IDなどのことである。これらの識別情報はプリンタ101が予め備えているものであり,プリンタ管理装置102はこれらをプリンタ101から取得する。
[プリンタ管理装置からサーバへの情報]
【0019】
図3はプリンタ管理装置102からサーバ104に送信する情報である。プリンタ101から取得した識別情報に付加して,プリンタ管理装置102自身のMACアドレスが送信される。
[管理テーブル]
【0020】
図4はプリンタ管理装置102から送信された情報を受信したサーバ104が管理している情報である。図示するように,サーバ104は受信した情報をテーブル形式で登録する。本図では3台分のプリンタ管理装置からの情報が登録されている場合を例示している。
[携帯端末からサーバへの情報]
【0021】
図5は携帯端末106からサーバ104に送信される情報を示したものである。図示するように送信される情報は,プリンタ管理装置102のMACアドレスおよび印刷データである。携帯端末106がプリンタ管理装置のMACアドレスを取得する手段としては,どのようなものでもよいが,例えばプリンタ管理装置102の本体に記載されているものを携帯端末にて手入力したり,バーコードを読み取って入力するなどの方法などが利用可能である。
【0022】
なお,送信される印刷データは,プリンタドライバによって変換される前の中間データであり,例えばGDI(Graphics Device Interface)形式にて表現されたものである。また,当然のことであるが,GDIによる印刷データ生成にはプリンタドライバは不要であるため,携帯端末106単体で行える。この場合の動作イメージとしては,携帯端末106上に予め登録されている仮想のプリンタドライバなどに対して印刷を実行することで行える。勿論,この仮想のプリンタドライバにはサーバ104のアドレスが登録されている必要がある。
【0023】
なお,サーバ104に送信される印刷データは上記したGDI形式に限らず,元データであるファイルをそのままサーバ104に送ってもよい。この場合,印刷出力のためのすべての変換動作はサーバ104上にて行われることとなる。
[プリンタ管理装置の動作フロー]
【0024】
図6はプリンタ管理装置102の動作フローである。図示するように,プリンタ情報取得タスクおよび印刷タスクの2つのタスクから構成されている。プリンタ情報取得タスクは,図2で説明した動作のことである。
【0025】
ステップ601にて,プリンタ101が接続されたかどうかを判断する。判断の結果,接続されていれば次のステップに進み,そうでなければ当該判断を繰り返す。
【0026】
ステップ602にて,プリンタ101の識別情報を取得する。
【0027】
ステップ603にて,取得した識別情報と自身であるプリンタ管理装置102のMACアドレスをサーバ104に送信する。
【0028】
印刷タスクは,サーバ104が所定の領域に保持している印刷データの存否を判断し,存在すれば当該印刷データを受信しプリンタ101に送信するタスクである。
【0029】
ステップ611にて,所定の領域に印刷データがあるかどうかを判断する。判断の結果,印刷データがあれば次のステップに進み,そうでなければ当該判断を繰り返す。なお,判断の際,自身のMACアドレスをキーとして所定の領域上の印刷データを探索する。こうすることで,自身に接続されているプリンタ101宛ての印刷データの存否を判断することができるわけである。
【0030】
ステップ612にて,所定の領域にある印刷データを読み出し,これをプリンタ101に送信する。
【0031】
[サーバの動作フロー]
図7はサーバ104の動作フローである。図示するように,プリンタ情報登録タスクおよび印刷データ受信タスクの2つのタスクから構成されている。
【0032】
プリンタ情報登録タスクは,図3で説明した情報をテーブルに登録するタスクであり,テーブルの具体的形式は,図4にて示したとおりである。
【0033】
ステップ701にて,プリンタ管理装置102から情報(識別情報+MACアドレス)を受信したかどうかを判断する。判断の結果,受信していれば次のステップに進み,そうでなければ当該判断を繰り返す。
【0034】
ステップ702にて,受信した情報をテーブルに登録する。
【0035】
印刷データ受信タスクは,図5で説明した様に,携帯端末106から受信した印刷データに関連する処理を行うタスクである。
【0036】
ステップ711にて,携帯端末106から印刷データを受信したかどうかを判断する。判断の結果,受信していれば次のステップに進み,そうでなければ当該判断を繰り返す。
【0037】
ステップ712にて,受信した印刷データに付随するプリンタ管理装置102のMACアドレスをキーとして管理テーブルの照合を行い,これから印刷出力を行うべきプリンタを特定する。この特定されたプリンタがプリンタ管理装置102に接続されているプリンタ101である。
【0038】
ステップ713にて,特定されたプリンタ101に対応するプリンタドライバを用いて,受信した印刷データをプリンタ101に適合した形式に変換する。
【0039】
ステップ714にて,変換された印刷データを所定の領域に保持する。
【0040】
[シーケンス図]
図8は本願発明にかかるシステムのシーケンス図である。なお,本シーケンス図はある動作パターンを例示したものである。
【0041】
ステップ801にて,プリンタ管理装置102はプリンタ101より識別情報を取得する。
【0042】
ステップ802にて,プリンタ管理装置102は識別情報と自身のMACアドレスをサーバ104に送信する。
【0043】
ステップ803にて,サーバ104は受信した情報を管理テーブルに登録する。
【0044】
ステップ804にて,携帯端末106はプリンタ管理装置102のMACアドレスと印刷データをサーバ104に送信する。
【0045】
ステップ805にて,サーバ104は受信したMACアドレスをキーとして管理テーブルを照合し,プリンタ101を特定する。
【0046】
ステップ806にて,サーバ104は特定したプリンタ101のプリンタドライバを使用してステップ804にて受信した印刷データを変換する。
【0047】
ステップ807にて,サーバ104は変換した印刷データを所定の領域に保持する。
【0048】
ステップ808にて,プリンタ管理装置102は保持されている印刷データを検出する。なお,図6で説明した通り,印刷データの検出は印刷タスクが担っているため,図示した様にステップ808以外のタイミングにおいても常に検出動作を繰り返し(ポーリング)ている。
【0049】
ステップ809にて,プリンタ管理装置102は保持されている印刷データを取得し,これをプリンタ101に送信する。
[まとめ]
【0050】
本願発明では,携帯端末が変換前印刷データをネットワーク上のサーバに送り,当該サーバは,受信した変換前印刷データを,自身が予め備えるプリンタドライバを用いて特定のプリンタに適合した印刷データに変換し,これを所定の領域にて保持する。次いで,プリンタに接続しているプリンタ管理装置が当該印刷データを取得しプリンタに送信することで印刷を行う。
【0051】
このシステムによれば,所定のプリンタに適合した印刷データへの変換はサーバ上にて行われるため,携帯端末からは単に印刷したい変換前の印刷データをサーバに送るだけで,所望のデータの印刷を行うことができる。
【0052】
また,変換後の印刷データは,プリンタに接続されたプリンタ管理装置がサーバをポーリングして読み出すようにしているため,サーバがプリンタ管理装置のアドレスを特定し直接送信する必要がない。つまり,サーバは数多く存在するプリンタ管理装置のアドレスを管理する必要がなく,本願発明にかかるシステムを容易に運用することができる。

【図面の簡単な説明】
【0053】
【図1】システム全体図
【図2】プリンタからの情報取得
【図3】プリンタ管理装置からサーバへの情報
【図4】管理テーブル
【図5】携帯端末からサーバへの情報
【図6】プリンタ管理装置の動作フロー
【図7】サーバの動作フロー
【図8】シーケンス図
【符号の説明】
【0054】
101 プリンタ
102 プリンタ管理装置
104 サーバ
106 印刷クライアント
801 識別情報取得
802 識別情報,MACアドレス送信
803 テーブル登録
804 MACアドレス,印刷データ受信
805 テーブル照合
806 印刷データ変換
807 印刷データ保持
808 印刷データ検出
809 印刷データ読み出し,送信


【特許請求の範囲】
【請求項1】
プリンタ管理装置とサーバ,および印刷クライアントと当該サーバとがネットワーク接続されているネットワーク印刷システムであって,
(1)プリンタ管理装置は,
所定のプリンタの識別情報(プリンタ識別情報)を取得する手段と,
取得したプリンタ識別情報と自身の識別情報(プリンタ管理装置識別情報)とを,前記サーバに送信する手段と,
サーバが指定する所定の領域から,自身の識別情報(プリンタ管理装置識別情報)に関連付けられた印刷データを読み出す手段と,
読み出した印刷データを所定のプリンタに送信する手段と,を備え,
(2)サーバは,
前記プリンタ管理装置から送信されたプリンタ識別情報とプリンタ管理装置識別情報とを受信する手段と,
受信したプリンタ識別情報とプリンタ管理装置識別情報とを関連付けて記憶するプリンタ情報記憶手段と,
前記印刷クライアントから,プリンタ管理装置識別情報と,所定のプリンタに適合した印刷データに変換される前の変換前印刷データ,とを受信する手段と,
前記印刷クライアントから受信したプリンタ管理装置識別情報と一致するプリンタ管理装置識別情報を前記プリンタ情報記憶手段から検索するプリンタ情報検索手段と,
一致するプリンタ管理装置識別情報を検出した場合に,前記印刷クライアントから受信した変換前印刷データを,当該プリンタ管理装置識別情報に関連付けられた所定のプリンタ識別情報によって特定されるプリンタ(特定プリンタ)に適合した印刷データに変換する手段と,
変換した印刷データを所定の領域に保持する手段と,
を備えることを特徴とするネットワーク印刷システム。
【請求項2】
前記印刷クライアントは,前記特定プリンタに適合した印刷データに変換する手段を備えないこと,を特徴とする請求項1に記載のネットワーク印刷システム。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2013−89160(P2013−89160A)
【公開日】平成25年5月13日(2013.5.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−231542(P2011−231542)
【出願日】平成23年10月21日(2011.10.21)
【出願人】(500112146)サイレックス・テクノロジー株式会社 (74)
【Fターム(参考)】