説明

ネットワーク監視システム

【課題】 階層化されたネットワークにおいて構成要素の変更にも柔軟に対応できるNMメッセージを用いたネットワーク監視システムを提供する。
【解決手段】 第1ドメインは3つ、第2ドメインは4つ、第3ドメインは2つのECUから構成されており、それぞれ1つずつの代表ノードを有し、他のノードはこれに管理される子ノードとなる。代表ノードによるドメイン間のNMメッセージ送信(S)の1週休に、各ドメイン内のノード間のNMメッセージの送信個数を、図の例では3つに制限することで、周期中のNMメッセージの送信間隔を揃えることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は複数のドメインを接続して構成したネットワークであって、ネットワークマネージメントメッセージの送出により他のノードの異常を検出するネットワーク監視システムに関する。
【背景技術】
【0002】
複数のコンピュータや制御装置によりネットワークを構成する手法が知られている。このようなネットワークにおいては、特許文献1に開示されているようにネットワークマネージメントメッセージ(NMメッセージ)を用いてネットワークの管理を行う手法が用いられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−71773号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来のNMメッセージによるネットワーク管理は、NMメッセージをノード間で巡回させてその巡回所要時間に基づいてノードの異常を検出している。ネットワークを構成する要素の増大や各要素のメインテナンス性を確保する必要性からネットワークの構成要素を複数のグループに分けて、階層化して管理する手法が広く用いられている。このような階層化されたネットワークにおいて、従来のNMメッセージを用いたネットワーク管理を行うとグループの構成要素の変更にともなって管理アルゴリズムの修正を行う必要が生じるほか、実行時には他グループの構成要素の故障によってメッセージングに支障が生じる。
【0005】
そこで本発明は、階層化されたネットワークにおいて構成要素の変更にも柔軟に対応できるNMメッセージを用いたネットワーク監視システムを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するため、本発明に係るネットワーク監視システムは、ネットワーク接続された複数のドメインにより構成され、各ドメインは1つの代表ノードと該代表ノードによって管理される1つまたは複数の子ノードからなり、ドメイン中の少なくともひとつが他のドメインと所属する子ノードの数が異なる可能性のある階層化ネットワークにおいて、NMメッセージをノード間で巡回させてその巡回所要時間に基づいて他のノードの異常を検出するネットワーク監視システムであって、ドメイン間のNMメッセージ巡回は各ドメインの代表ノードが行い、ドメイン間のNMメッセージ巡回の1周期中において各ドメイン内のノード間で巡回させるNMメッセージの個数を子ノードの数によらずに一定数に制限することを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、ドメイン間のNMメッセージ巡回1周期中に巡回させるドメイン内のノード間の巡回NMメッセージの個数を一定数に制限しているため、ネットワーク中のあるドメイン内の子ノードの数を増やした場合でもドメイン数が同一であればドメイン間のNMメッセージ巡回周期を一定に維持することができるので、構成要素の変更にも受難に対応できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明のネットワーク監視システムの一形態である論理階層化されたネットワークの構成を示す図である。
【図2】図1のシステムにおけるNMフレームのスケジューリングを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、添付図面を参照して本発明の好適な実施の形態について詳細に説明する。説明の理解を容易にするため、各図面において同一の構成要素に対しては可能な限り同一の参照番号を附し、重複する説明は省略する。
【0010】
図1は本発明のネットワーク監視システムの一実施形態であるネットワークの構成を示す図である。ここでは、車両に搭載され、車内LANを構成するネットワークシステムを例に説明する。ECU1(10)〜ECU9(32)は同一の通信経路(4)に接続され、3つのドメイン(1)〜(3)に区分されることで論理階層化されている。
【0011】
第1ドメイン(1)はECU1(10)〜ECU3(12)を含み、ECU1(10)を代表ノード、その他のECU2(11)、ECU3(12)をECU1(10)に管理される子ノードとする。第2ドメイン(2)はECU4(21)〜ECU7(24)を含み、ECU4(21)を代表ノード、その他のECU5(22)〜ECU7(24)をECU4(21)に管理される子ノードとする。第3ドメイン(3)はECU8(31)、ECU9(32)を含み、ECU8(31)を代表ノード、ECU9(32)をECU8(31)に管理される子ノードとする。つまり、ドメイン内のノードの数は、第1ドメインが3つ、第2ドメインが4つ、第3ドメインが2つに設定されている。
【0012】
各ECU(10〜32)は、通信経路(4)と多重通信可能に接続されており、所定の形式のNMメッセージを送受信することでネットワーク協調制御やノードの動作状態の判定、ネットワークの構成確認を行うことができる。
【0013】
このNMメッセージは、通信経路(4)上を伝送されるデータメッセージと同一のフォーマットを有しており、データメッセージとNMメッセージとはメッセージに付与されている識別子(ID)によって区別される。
【0014】
図2は、本システムにおけるNMフレームのスケジューリングを示している。ここでS(i→j)と記載されているNMフレームはi番目のドメインからj番目のドメインに向けて送出されるドメイン間のNMフレームであり、各ドメイン内の代表ノードにより実行される。一方、Di(m→n)と記載されているNMフレームは、番i番目のドメイン内のm番目のノード(代表ノード、子ノードの双方を含む。)からn番目のノードへ向けて送出されるNMフレームである。
【0015】
このスケジューリングにおいては、第1ドメイン(1)→第2ドメイン(2)→第3ドメイン(3)→第1ドメイン(1)の循環ループとなるようドメイン間NMフレームの送出スケジュールを設定している。そして、これらのドメイン間NMフレームの間、具体的には、i番目のドメインからドメイン間のNMフレームが送出された直後に、i番目のドメイン内におけるECU間(代表ノード、子ノード間)のNMフレーム送出を実行する。ここで、次のドメイン間のNMフレーム送出までの間に送出されるドメイン内のNMフレームの送出個数は、本実施例では、3個に制限されている。
【0016】
このため、ECUが3個でノードも3個である第1ドメイン(1)については、ドメイン間のNMフレーム巡回の各周期中にドメイン内のNMフレームをちょうど1巡させることができる。一方、第2ドメイン(2)は、ECUが4個で、ノードも4個あるため、ドメイン間のNMフレーム巡回の1周期中では、ドメイン内のNMフレームを1巡させることができないが、余った分は、次のドメイン間のNMフレーム巡回周期に繰り越している。逆に、第3ドメイン(3)は、ECUが2個で、ノードも2個であり、ドメイン内のNMフレーム巡回には、送出個数が2個あれば足りるため、1個の送出時間分が余分になる。本実施形態では、この期間をアイドル期間に設定することで、全体の送出時間を一定に維持している。当然、1周期中に1巡を超えて巡回させてもよい。
【0017】
このようにドメイン間のNMフレーム送出間隔中に送出されるドメイン内のNMフレームの送出個数は一定個数(本実施形態では3個)に制限することで、ドメイン内の構成が変化して、ドメイン内のNMフレームの巡回に要する時間が変化した場合であっても、MMフレームのスケジューリングを同一に保つことができるため、ネットワークの構成変更に柔軟に対応することができる。例えば、上記形態から第1ドメイン(1)にさらにECUを1個追加した場合には、第1ドメイン(1)のドメイン内のNMメッセージの送出スケジュールは、図2に示される第2ドメイン(2)のドメイン内のNMメッセージの送出スケジュールとほぼ同じものとなる。さらに、ドメインを追加したり、削除したりした場合についても同様にスケジューリングの修正が容易であり、その構成変更に柔軟に対応できる。
【0018】
ここでは、論理階層化されたネットワークを例に説明してきたが、一部が物理階層化されているネットワークについても本発明は好適に適用できる。また、ネットワーク中には、子ノードを含まず、代表ノードのみで構成されるドメインが含まれていてもよい。
【符号の説明】
【0019】
1〜3…ドメイン、4…伝送経路、10〜12、21〜24、31、32…ECU。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ネットワーク接続された複数のドメインにより構成され、各ドメインは1つの代表ノードと該代表ノードによって管理される1つまたは複数の子ノードからなり、ドメイン中の少なくともひとつが他のドメインと所属する子ノードの数が異なる可能性のある階層化ネットワークにおいて、ネットワークマネージメントメッセージ(NMメッセージ)をノード間で巡回させてその巡回所要時間に基づいて他のノードの異常を検出するネットワーク監視システムであって、
ドメイン間のNMメッセージ巡回は各ドメインの代表ノードが行い、
前記ドメイン間のNMメッセージ巡回の1周期中において各ドメイン内のノード間で巡回させるNMメッセージの個数を子ノードの数によらずに一定数に制限することを特徴とするネットワーク監視システム。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2011−234092(P2011−234092A)
【公開日】平成23年11月17日(2011.11.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−102172(P2010−102172)
【出願日】平成22年4月27日(2010.4.27)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】