説明

ネットワーク装置、ネットワーク及びそれらに用いるLLDPフレーム処理方法

【課題】 LLDPフレームを一旦バッファに溜め込んだ後、実際にLLDP処理を開始する時点で、TTLで示される時間が経過してしまうことを回避する確率を上げることが可能なネットワーク装置を提供する。
【解決手段】 ネットワーク装置(1)は、ネットワーク上の機器に関する情報のディスカバリを行うためのLLDPフレームを処理するLLDP機能(LLDP処理部11)と、LLDPフレームをLLDP機能(LLDP処理部11)による処理前に格納しておくバッファ(12)と、受信したLLDPフレームからTTLを読取りかつLLDPフレームをTTLの短い順にバッファ(12)上に並べるバッファ挿入手段(TTL読取り・バッファ挿入機能121)とを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はネットワーク装置、ネットワーク及びそれらに用いるLLDPフレーム処理方法に関し、特にLLDP(Link Layer Discovery Protocol)フレームのバースト受信時における処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
LLDPは、ネットワークトポロジとネットワーク上の機器に関する情報のディスカバリを行うための標準プロトコル[IEEE(Institute of Electrical and Electronic Engineers)802.1ab]として規定されており、イーサネット(登録商標)機器が自身の情報を隣接する機器に通知し、他の機器から取得した情報を保存するための標準的な方法が定義されている。このLLDPフレームの転送方法については、例えば下記の特許文献1に記載された方法がある。
【0003】
LLDPプロトコルIEEE802.1abの機能を具備したネットワークにおいては、ある1つの機器が他の機器群からバースト的にLLDPフレームを受信した場合、バッファを設けておくことにより、バッファ格納分のフレーム廃棄を避けることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−005058号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記のネットワークでは、ある1つの機器が他の機器群からバースト的にLLDPフレームを受信した場合に、LLDPフレームがバッファにて停滞している間に、TTL(Time To Live)で示される時間が経過してしまうことがあるという課題がある。
【0006】
この場合、バッファに溜め込んだフレームを処理する方法は、通常、ファーストインファーストアウト(FIFO:First In First Out)が用いられるものと考えられる。これでは、バッファの最後の方に溜め込まれたLLDPフレームのTTLが短い場合、実際にLLDP処理部に取り込まれて処理が始まる頃にはすでにTTL時間分が経過してしまっている場合がある。
【0007】
また、上記のネットワークでは、LLDPフレームがバッファにて停滞している間に、そのLLDPフレームに該当する機器がネットワーク上から生存しなくなってしまうことがあるという課題がある。
【0008】
そこで、本発明の目的は上記の問題点を解消し、LLDPフレームを一旦バッファに溜め込んだ後、実際にLLDP処理を開始する時点で、TTLで示される時間が経過してしまうことを回避する確率を上げることができるネットワーク装置、ネットワーク及びそれらに用いるLLDPフレーム処理方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明によるネットワーク装置は、ネットワーク上の機器に関する情報のディスカバリを行うためのLLDP(Link Layer Discovery Protocol)フレームを処理するLLDP機能と、
前記LLDPフレームを前記LLDP機能による処理前に格納しておくバッファと、
受信した前記LLDPフレームからTTL(Time To Live)を読取りかつ前記LLDPフレームを前記TTLの短い順に前記バッファ上に並べるバッファ挿入手段とを備えている。
【0010】
本発明によるネットワークは、上記のネットワーク装置を含むことを特徴とする。
【0011】
本発明によるLLDPフレーム処理方法は、ネットワーク装置に、ネットワーク上の機器に関する情報のディスカバリを行うためのLLDP(Link Layer Discovery Protocol)フレームを処理するLLDP機能と、前記LLDPフレームを前記LLDP機能による処理前に格納しておくバッファとを設け、
前記ネットワーク装置が、受信した前記LLDPフレームからTTL(Time To Live)を読取りかつ前記LLDPフレームを前記TTLの短い順に前記バッファ上に並べるバッファ挿入処理を実行している。
【発明の効果】
【0012】
本発明は、上記のような構成及び動作とすることで、LLDPフレームを一旦バッファに溜め込んだ後、実際にLLDP処理を開始する時点で、TTLで示される時間が経過してしまうことを回避する確率を上げることができるという効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の第1の実施の形態によるネットワーク装置の構成例を示すブロック図である。
【図2】図1に示すバッファの構成例を示すブロック図である。
【図3】本発明の第1の実施の形態によるネットワークの構成例を示すブロック図である。
【図4】本発明の第2の実施の形態によるネットワークの構成例を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
次に、本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。まず、本発明によるネットワーク装置の概要について説明する。本発明によるネットワーク装置は、LLDP(Link Layer Discovery Protocol)プロトコルIEEE(Institute of Electrical and Electronic Engineers)802.1abの機能を具備したネットワークを構成している。
【0015】
上記のネットワークにおいては、ある1つの機器が他の機器群からバースト的にLLDPフレームを受信した場合、バッファを設けておくことにより、バッファ格納分のフレーム廃棄を避けることができる。ここで、LLDPフレームは、ネットワークトポロジとネットワーク上の機器に関する情報のディスカバリを行うためのフレームである。
【0016】
しかしながら、バッファに溜め込んだフレームを処理する方法としては、通常、ファーストインファーストアウト(FIFO:First In First Out)を用いることが考えられる。この方法では、バッファの最後の方に溜め込まれたLLDPフレームのTTL(Time To Live)が短い場合、実際にLLDP処理部に取り込まれて処理が始まるときにはすでにTTL時間分が経過してしまっている場合がある。
【0017】
本発明では、LLDP処理部の入口に設けるバッファにおいて、バッファに溜め込むLLDPフレームを出口に近い方からTTLの短い順に並べることで、TTLの短いものが優先的にLLDP受信処理が開始されることを特徴としている。
【0018】
これによって、本発明では、TTL(生存時間)の短い機器のLLDPフレームを優先的に処理することができ、バッファでの待ち時間のうちにTTL時間が経過してしまうことを回避する確率を上げることができる。
【0019】
図1は本発明の第1の実施の形態によるネットワーク装置の構成例を示すブロック図である。図1において、ネットワーク装置1は、LLDP処理部11と、バッファ12とを備えて構成されている。バッファ12は、TTL読取り・バッファ挿入機能121とバッファ本体122とを備えている。
【0020】
バッファ12は、LLDP処理部11の入口に設けられ、LLDPフレームをバッファ本体122に溜め込むためのものである。バッファ12では、LLDPフレームがバースト的に到着した場合(バーストLLDPフレーム101)に、LLDP処理部11がバースト処理に間に合わない分をバッファ本体122に溜め込んでいる。
【0021】
LLDP処理部11は、LLDPフレームを処理していき、新規フレームを受け入れられるようになると、バッファ12の先頭からLLDPフレーム102を1個取り出す。
【0022】
図2は図1に示すバッファ12の構成例を示すブロック図である。図2において、バッファ12は、TTL読取り・バッファ挿入機能121とバッファ本体122とを備えている。
【0023】
TTL読取り・バッファ挿入機能121は、受信したLLDPフレームからTTLのみ読取り、バッファ本体122において出口に近いほどTTLが小さくなるように、LLDPフレームをバッファ本体122の中へ挿入する。
【0024】
バッファ本体122の中では、LLDPフレーム#1、LLDPフレーム#2、・・・、LLDPフレーム#nというように、出口からTTLが小さい順にLLDPフレームが並んでいる。つまり、バッファ本体122においては、LLDPフレーム#1のTTL<LLDPフレーム#2のTTL<・・・<LLDPフレーム#nのTTLという関係にある。
【0025】
これによって、本実施の形態では、LLDP処理部11において、TTLの小さいLLDPフレームから順に、例えばLLDPフレーム#1、LLDPフレーム#2、・・・、LLDPフレーム#nの順に処理することができる。
【0026】
このように、本実施の形態では、LLDPフレームをバースト受信した場合(バーストLLDPフレーム101を受信した場合)、TTL(生存時間)の短い機器のLLDPフレームを優先的に処理することができ、バッファ12における待ち時間のうちにTTL時間が経過してしまうことを回避する確率を上げることができる。
【0027】
図3は本発明の第1の実施の形態によるネットワークの構成例を示すブロック図である。図3において、本発明の第1の実施の形態によるネットワークでは、ネットワークのセグメントが2つあり(セグメントA,B)、それらのセグメントA,Bがブリッジ2でつながって構成されている。
【0028】
セグメントAは装置A1〜Anから構成され、セグメントBは装置B1〜Bnから構成されている。装置A1〜An,B1〜Bn各々は、図1及び図2に示すネットワーク装置1と同様の構成であり、LLDP処理部11とバッファ12とを備えている。
【0029】
これら図1〜図3を参照して本発明の第1の実施の形態によるネットワークの動作について説明する。
【0030】
図3において、セグメントAの中には、装置A1〜Anまでn台の装置があり、装置A1〜An各々が機能している。これらの装置A1〜Anは、LLDP機能(LLDP処理部11)を有している。
【0031】
この状態で、セグメントAと同じように、n台の装置B1〜Bnを含むセグメントBがブリッジ2を介して新しく設置・接続されたとする。これらの装置B1〜Bnも、LLDP機能(LLDP処理部11)を有している。
【0032】
新しく設置されたセグメントBの各装置B1〜Bnは、LLDP機能(LLDP処理部11)によりマルチキャストで自装置情報を発出する。セグメントAの各装置A1〜Anは、セグメントBの各装置B1〜Bnからバースト的に新規のLLDPフレーム(バーストLLDPフレーム101)を受け取る。
【0033】
この場合の装置A1の動作について図2を参照して説明する。装置A1内のバッファ12は、バーストLLDPフレーム101を受信した場合、通常のファーストインファーストアウト(FIFO)でバッファに取り込むのではなく、まずTTL読取り・バッファ挿入機能121においてTTLを読取る。そして、TTL読取り・バッファ挿入機能121は、TTLが短いLLDPフレームほどバッファ本体122の出口に近くになるように、当該LLDPフレームをバッファ本体122に格納する。
【0034】
図1において、LLDP処理部11は、バッファ12からTTLが短い順にLLDPフレーム102を取り出すことができる。これによって、LLDP処理部11は、バースト的に受信したLLDPフレームをTTLが短い順に処理を開始する。
【0035】
このように、本実施の形態では、LLDPフレームをバースト的に受信した場合、バッファ12に溜め込んだLLDPフレームをTTLが小さい順にLLDP処理することができるので、LLDPフレームを一旦バッファ12に溜め込んだ後、実際にLLDP処理を開始する時点で、TTL時間分経過していることを回避する確率を上げることができる。
【0036】
また、本実施の形態では、LLDPフレームをバースト的に受信した場合に、実際にはすでに生存していない機器の処理をしてしまうことを回避する確率を上げることができる
【0037】
さらに、本実施の形態では、LLDPフレームをバースト的に受信してバッファ12に溜め込んで実際の処理開始まで待ち時間がある場合でも、該当機器が生存しているうちに処理を開始する確率を上げることができる。
【0038】
次に、本発明の第2の実施の形態として、ネットワーク上でセグメント間のリンクが断から復旧した場合について示す。この本発明の第2の実施の形態によるネットワークの構成例を図4に示す。尚、図4に示す装置A1〜An,B1〜Bn各々は、図1及び図2に示すネットワーク装置1と同様の構成であり、LLDP処理部11とバッファ12とを備えている。
【0039】
図4においては、LLDP機能を有した装置群(装置A1〜An)を含むセグメントAと、同じくLLDP機能を有した装置群(装置B1〜Bn)を含むセグメントBとの間にあるブリッジ2が故障していて、セグメントA,B間のフレーム通信が途絶えている状態を示している。
【0040】
この状態からブリッジ2が復旧した場合、それぞれのセグメントA,B内だけで流れていたLLDPフレームが一気に互いのセグメントへも流れる。この場合、両セグメントA,B上の各装置A1〜An,B1〜Bnは互いのLLDPフレームをバースト的に受信することになる。
【0041】
この場合の装置A1の動作について図2を用いて説明する。装置A1内のバッファ12は、バーストLLDPフレーム101を受信した場合、通常のファーストインファーストアウト(FIFO)でバッファ12に取り込むのではなく、まずTTL読取り・バッファ挿入機能121においてTTLを読取る。そして、TTL読取り・バッファ挿入機能121は、TTLが短いLLDPフレームほどバッファ本体122の出口に近くになるように、当該LLDPフレームをバッファ本体122に格納する。
【0042】
図1において、LLDP処理部11は、バッファ12からTTLが短い順にLLDPフレーム102を取り出せる。これによって、LLDP処理部11はバースト的に受信したLLDPフレームをTTLが短い順に処理を開始することができる。
【符号の説明】
【0043】
1 ネットワーク装置
2 ブリッジ
11 LLDP処理部
12 バッファ
101 バーストLLDPフレーム
102 LLDPフレーム
121 TTL読取り・バッファ挿入機能
122 バッファ本体
A,B セグメント
A1〜An,
B1〜Bn 装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ネットワーク上の機器に関する情報のディスカバリを行うためのLLDP(Link Layer Discovery Protocol)フレームを処理するLLDP機能と、
前記LLDPフレームを前記LLDP機能による処理前に格納しておくバッファと、
受信した前記LLDPフレームからTTL(Time To Live)を読取りかつ前記LLDPフレームを前記TTLの短い順に前記バッファ上に並べるバッファ挿入手段と
を有することを特徴とするネットワーク装置。
【請求項2】
前記LLDP機能は、前記LLDPフレームを前記バッファから読出す場合に前記TTLの短い方から読出して処理を開始することを特徴とする請求項1記載のネットワーク装置。
【請求項3】
前記LLDPフレームをバースト的に受信した場合に前記TTLが短いLLDPフレームほど優先的に前記LLDP機能による処理を開始することを特徴とする請求項2記載のネットワーク装置。
【請求項4】
上記の請求項1から請求項3のいずれかに記載のネットワーク装置を含むことを特徴とするネットワーク。
【請求項5】
ネットワーク装置に、ネットワーク上の機器に関する情報のディスカバリを行うためのLLDP(Link Layer Discovery Protocol)フレームを処理するLLDP機能と、前記LLDPフレームを前記LLDP機能による処理前に格納しておくバッファとを設け、
前記ネットワーク装置が、受信した前記LLDPフレームからTTL(Time To Live)を読取りかつ前記LLDPフレームを前記TTLの短い順に前記バッファ上に並べるバッファ挿入処理を実行することを特徴とするLLDPフレーム処理方法。
【請求項6】
前記LLDP機能が、前記LLDPフレームを前記バッファから読出す場合に前記TTLの短い方から読出して処理を開始することを特徴とする請求項5記載のLLDPフレーム処理方法。
【請求項7】
前記ネットワーク装置が、前記LLDPフレームをバースト的に受信した場合に前記TTLが短いLLDPフレームほど優先的に前記LLDP機能による処理を開始することを特徴とする請求項6記載のLLDPフレーム処理方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−231346(P2012−231346A)
【公開日】平成24年11月22日(2012.11.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−98862(P2011−98862)
【出願日】平成23年4月27日(2011.4.27)
【出願人】(000004237)日本電気株式会社 (19,353)
【Fターム(参考)】