ネット又はシートのウインチを用いた移動システム
【課題】 本発明は、従来の装置の欠点であったワイヤロープのテンションを問題とすることなく、また、ネット又はシートの荷重を問題とすることなくワイヤーロープをスムーズに移動することができるウインチを用いた移動システム、ネット又はシートのウインチを用いた移動システムを提供することを解決する。
【解決手段】 吊張されたワイヤーロープをウインチで移動することで各種作業を行うウインチを用いた移動システムにおいて、該ワイヤロープに発生する弛みをウインチで解消しながらワイヤーロープを移動することであり、また、吊張されたワイヤーロープに沿ってワイヤロープに発生する弛みをウインチで解消しながらウインチをワイヤーロープに沿って移動することである。
【解決手段】 吊張されたワイヤーロープをウインチで移動することで各種作業を行うウインチを用いた移動システムにおいて、該ワイヤロープに発生する弛みをウインチで解消しながらワイヤーロープを移動することであり、また、吊張されたワイヤーロープに沿ってワイヤロープに発生する弛みをウインチで解消しながらウインチをワイヤーロープに沿って移動することである。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、壁面間、天井部分等に吊張されたワイヤーロープを移動するためのウインチ、吊張されたワイヤーロープに沿ってウインチを移動することで、各種の作業現場を行うのに使用したり、工事現場、野外のプールを覆設されるUVカットネット又はシート部材、擁壁工事等の工事現場の雨避け用として覆設されるシート部材、仮設用屋根のシート部材を移動するために使用するウインチを用いた移動システム、ネット又はシートのウインチを用いた移動システムに関する。
【背景技術】
【0002】
ウインチを用いた移動システムの一例として建設物の壁面点検作業がある。この壁面点検作業としては、上下方向に吊張されたワイヤーロープをウインチで移動しながら作業者を直接/間接的に昇降移動するシステムがあり、また他の例としては、ホテル等の非難用としては高い場所の壁面より屋外に固定されたウインチに設けられたワイヤーロープを利用して降下移動するシステムがある。
【0003】
また、ネット又はシートのウインチを用いた移動システムとしては、工事現場での強い日差しを避け、雨を避けるために作業場の所望のスペースにネット又はシートを用いて仮設屋根を設け、該ネット又はシートをウインチを用いて開閉するシステムがあり、また、他の装置として、設置スペースに立設した支柱間に架設されて並行して延長する複数の支持索と、隣接する支持索間に張設された膜屋根とから構成され、ウインチにより横行索と開閉索とを移動して膜屋根をスライド開閉するシステムがある。
【0004】
上記建設物の壁面点検用としては、壁面より横方向に突出して設けられたアームと該アームに取り付けられたワイヤーロープ巻き取り用のウインチと、該ウインチのワイヤーロープに固定された荷台と、アームと地上部と間に設けられた補助ワイヤーロープとから構成され、ウインチよりのワイヤーロープの引き出し又は巻き取りにより作業者の乗った荷台を昇降して壁面の点検作業を行う。この際、安全性の面で補助ワイヤーロープ及びウインチよりのワイヤーロープは常にテンションがかかった(緊張)状態とし、補助のブレーキを用いて安全性を確保している。また、非難用としては、高い場所の壁面より屋外に設けられた支柱と、該支柱に固定されたウインチと、該ウインチに設けられたワイヤーロープとから構成され、安全ベルトを取り付けた人をワイヤーロープの先端に連結し、ウインチを作動してワイヤーロープを下降されて降下非難するシステムがある。
【0005】
上記仮設屋根は、設置場所に平行に設けられた2つのガイドと、ガイドに対して直角方向を向き、相互に平行となってガイドに移動可能に装着された複数の梁部材と、梁部材間に取り付けられたシート部材と、ガイドに相対する一端部側に取り付けられる一端側滑車と、ガイドに相対する他端部側に取り付けられる他端側滑車と、一端側滑車と他端側滑車とにループ状に設けられたワイヤロープと、ワイヤロープを移動する手動ウインチとから構成され、手動ウインチで滑車に張設されたワイヤロープを正逆に送り移動することで、平行に設けられたガイドに沿って複数の梁部材を移動して該梁部材に設けられたシート部材の開閉を行う。
また、他の装置は、ウインチにより横行索と開閉索とを移動して膜屋根をスライド開閉している。 支柱により支持される荷重は、支持索や膜屋根などによる軽量のものに留めて対応している。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記壁面点検用等で使用するウインチはワイヤーロープ巻き取り用のウインチが使用されているためにワイヤーロープに常にテンションがかかった状態で使用しなければならず、巻き取られたワイヤーロープに少しでも弛みがあれば荷台が急降下したりするために、常にワイヤーロープのテンションを確認する作業が必要であり、また別体のブレーキ機構をウインチ内に又は別体として取り付ける必要であった。
【0007】
また、ワイヤーロープの巻き取り装置が別体として設けられたエンドレス(無端状)のウインチを使用する場合も同様に、ウインチよりのワイヤーロープの引き出し側及びワイヤーロープの取り込み側ともにテンションがかかった状態でなければスムーズなワイヤーロープの移動ができないという欠点があった。
【0008】
また、仮設屋根の梁部材に取り付けられたシート部材は、滑車を支柱に固定して取り付けているだけであり、設置スペースが広い場合にはループ状に設けられたワイヤロープにかかるシート部材の荷重により、ウインチでのワイヤロープの移動時にワイヤロープの一方側に弛みが生じ、スムーズなワイヤロープ移動ができずシート部材の開閉移動ができない場合がある。
【0009】
また、隣接する支持索間に張設された膜屋根の場合は、膜屋根が複数に分割され、支持索や膜屋根なとの材料の軽量を図っているもの、斜面に対して膜屋根が設けられているために膜屋根の開閉時には、横行索と開閉索とに弛みが生じ、上記と同様にスムーズな支持索の移動ができず膜屋根の開閉移動ができない場合があり、頻繁なメンテナンスを必要とする。
【0010】
上記ワイヤロープ(支持索)の弛みの防止用として、各滑車をテンション機構を用いて取り付け、ワイヤを常時緊張状態で設けることが一般的に用いられているが、この場合その構造が複雑となり、装置全体がコスト高となる問題点があった。
【0011】
本発明は、従来の上記装置の欠点であったワイヤロープのテンションを問題とすることなく、また、ネット又はシートの荷重を問題とすることなくワイヤーロープをスムーズに移動することができるウインチを用いた稼働システム、ネット又はシートのウインチを用いた稼働システムを提供することで上記課題を解決する。
【問題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、吊張されたワイヤーロープをウインチで移動することで各種作業を行うウインチを用いた移動システムにおいて、該ワイヤロープに発生する弛みをウインチで解消しながらワイヤーロープを移動することを特徴とするウインチを用いた移動システムである。
【0013】
また、吊張されたワイヤーロープに沿ってワイヤロープに発生する弛みをウインチで解消しながらウインチをワイヤーロープに沿って移動するウインチを用いた移動システムである。
【0014】
また、風、紫外線をカットするためのネット又はシート、又は空間部を覆設するためのネット又はシートの吊張用として設けられているワイヤーロープにかかるネット又はシートの荷重による弛みをウインチで解消しながらワイヤーロープを無端状に移動することで、ネット又はシートを開閉移動することを特徴とするネット又はシートのウインチを用いた移動システムである。
【0015】
また、ネット又はシートが複数に分割され、該分割されたネット又はシートを分割方向に沿ってそれぞれ吊張されたワイヤーロープを無端状に移動することで、分割された各ネット又はシートの同方向に又は対向する方向に開閉移動することを特徴とするネット又はシートのウインチを用いた移動システムである。
【発明の作用】
【0016】
本発明のウインチを用いた移動システムは、地面に対して垂直方向、又は水平方向に無端状に吊張されたワイヤーロープを固定されたウインチを用いて移動する。ワイヤーロープ移動時に、該ワイヤーロープに十分な荷重がかかっていない場合にワイヤーロープに弛みが発生するが、ウインチでワイヤロープの弛みを解消しながらワイヤーロープを移動する。
【0017】
また、地面に対して垂直方向、又は水平方向に吊張されたワイヤーロープに沿ってウインチを移動する場合に、吊張されたワイヤロープに弛みが生じても、ウインチでワイヤロープの弛みを解消しながらウインチを移動することで各種の作業を行う。
【0018】
また、ネット又はシートを開閉する場合は、設置場所の外周に支柱を立設し、該支柱間にワイヤーロープをウインチを介して無端状に吊張する。このワイヤーロープを無端状に吊張する方法は、支柱間毎にワイヤーロープを吊張することで複数本のワイヤーロープを吊張することも可能であり、また1本のワイヤーロープで掛け渡すことでも可能である。
【0019】
次に、ネット又はシートを前記対向するワイヤーロープに直接又は間接的に連結し、1つの支柱に固定したウインチを作動してワイヤーロープを移動することで、ワイヤーロープに沿って直接又は間接的にネット又はシートを自在に開閉移動することができる。
【0020】
上記ネット又はシートの荷重は無端状に吊張されたワイヤーロープに直接又は間接的にかかるために、ネット又はシートの開閉移動時において、ウインチを駆動してワイヤーロープを移動すると、ウインチへのワイヤーロープの取り入れ側と取り出し側(ウインチの駆動部に対して)とでワイヤーロープにかかる荷重が相違するために、特にワイヤーロープのウインチへの取り出し側に弛みが発生することがおこりやすい。本発明はこの弛みをウインチ部分で解消しながらワイヤーロープを無端状に移動することができるので、常にスムーズなネット又はシートの開閉移動を行うことができる。
【0021】
上記ウインチでのワイヤーロープの弛みの解消は、ウインチ内においてワイヤーロープが常にテンションがかかった状態で移動することとなるために、ワイヤーロープのウインチへの取り出し側又は取り入れ側の弛みがあっても問題とすることなくウインチ内で弛みを解消して、スムーズなワイヤーロープの移動を行うことができる。
【発明の効果】
【0022】
本発明は、ワイヤーロープの弛みをウインチで解消しながらワイヤーロープを移動することができるので、ワイヤーロープの弛みによるトラブルの発生がなく、安全性の面において特に効果があり、各種の作業に対応することができる。
【0023】
また、ワイヤーロープにネット又はシートの荷重がかかり、ウインチへのワイヤーロープ取り出し側又は取り入れ側に弛みが発生しても、ワイヤーロープを移動することができるので、ワイヤーロープの弛みによるトラブルの発生がなく、メンテナンスの必要性を最小限に押さえ、維持コストを軽減することができることとなる。
【0024】
また、スムーズなネット又はシートの開閉移動により、例えば、突風等の風の強い日において、ネット又はシートをすばやく開放することで、風の影響を排除することができ、風によるトラブルを最小限に押さえることができる。
【0025】
さらに、ワイヤーロープにかかるネット又はシートの荷重をウインチで解消できるので、従来必要であったワイヤーロープ及びネット又はシートの吊張設備である複数のテンション手段が必要でなく、大きなスペースに設置されたほど特に設置コストの大幅な削減を可能とした。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
本発明のウインチを用いた移動システム、ネット又はシートのウインチを用いた移動システムについて、図面に沿って説明する。
【0027】
図1は、本発明のウインチを用いた移動システムの一実施例を示す概略説明図であり、図2は本発明に使用するウインチを示す概略説明図であり、図3はウインチによるワイヤーロープの取り入れ及び取り出し移動を示す概略説明図であり、図4はウインチによるワイヤーロープの駆動移動を示す概略説明図であり、図5はウインチを用いた移動システムの使用例を示す概略説明図であり、図6、図7、図8はウインチを用いた移動システムの他使用例を示す概略説明図であり、図9はネット又はシートのウインチを用いた移動システムを示す概略説明図であり、図10、図11はネット又はシートのウインチを用いた移動システムの他実施例を示す概略説明図であり、図12、図13、図14はネット又はシートのウインチを用いた移動システムの他実施例を示す概略説明図であり、図15は、ネット又はシートの開閉装置の他実施例を示す概略説明図である。
【0028】
本発明のウインチを用いた移動システム1は、一端側を天井等の上方部に連結具2を介して固定し、他端側を下方に垂らしたワイヤーロープ3と、該ワイヤーロープ3に設けられたウインチ4と、該ウインチ4の下端に設けられた鍵状フック5とから構成され、ウインチ4が作動することで該ウインチ4をワイヤーロープ3に沿って昇降移動すべく構成されている。
【0029】
前記ウインチ4の基本的な構成は、駆動源(手動、又は自動)により回転駆動する巻取リング6にワイヤーロープ3を巻き付けて、ワイヤーロープ3を無端状に移動すべく構成されている。前記巻取リング6へのワイヤーロープ3の取り入れ及び取り出しに関しては、3個の回転自在な案内リング7と、該案内リング7に近接して設けられ、ワイヤーロープ3の取り入れ及び取り出しの道筋の役割(各道が例えば溝状、又は筒状に形成され、しかもワイヤーロープ3の径と略同一の径)をする案内ガイド8とで行われ、ワイヤーロープ3を案内ガイド8に沿って取り入れ、該案内ガイド8と案内リング7とでワイヤーロープ3を挟持し押圧しながら巻取リング6へワイヤーロープ3を移動し、巻取リング6の駆動でワイヤーロープ3を巻取リング6の外周に巻き付けて、該ワイヤーロープ3を再度、案内ガイド8に沿って取り出し、案内ガイド8と案内リング7とでワイヤーロープ3を挟持し押圧しながらワイヤーロープ3をウインチ4より取り出す。
【0030】
ワイヤーロープ3を巻取リング6の外周に巻き付ける際、両端側にテンションが設けられ、巻取リング6の外周に沿って設けられた押圧体9で、ワイヤーロープ3を巻取リング6の外周側に押圧しているために、巻取リング6の回転駆動時にワイヤーロープ3が空回りすることなく、確実にワイヤーロープ3を移動することができる。
【0031】
即ち、上記案内ガイド8と案内リング7とでのワイヤーロープ3の挟持、押圧及び押圧体9によるワイヤーロープ3を巻取リング6の外周側への押圧というワイヤーロープ3の弛み解除手段により、ワイヤーロープ3の取り入れ側に弛みが発生しても、ワイヤーロープ3の弛みに関係することなく、ウインチ4により無端状にワイヤーロープ3を移動することができる。
【0032】
本発明のウインチを用いた移動システム1は上記のように構成され、次に該移動システム1を使用する場合の一例について説明する。
【0033】
大空間部を有するスポーツ用等の屋内施設の天井部の設けられた照明器具を昇降する場合は、先ず天井部に所定間隔をあけて4個の連結具2を取り付け、該連結具2にワイヤーロープ3の他端側をそれぞれ固定したウインチ4を取り付ける。そして、該ワイヤーロープ3それぞれにウインチ4を設け、該ウインチ4のフック5に、照明器具の設けられた矩形の枠体20の四隅を連結し、ウインチ4を作動することで、枠体を昇降移動する。ウインチの作動は例えば制御盤(図示せず)と無線式の遠隔操作盤(図示せず)を用いて行う。この際、従来のウインチで上記と同様の構成を設けた場合、各ウインチに設けられるワイヤーロープ3に十分なテンションをかけた状態で、初期設定しなければ枠体20をスームズに昇降移動することができず、また昇降移動中に1つのウインチに使用するワイヤーロープ3に弛みが発生すると初期設定のやり直しを必要とする等の問題点があったが、本発明のウインチを用いた移動システム1を使用すると、初期設定時にワイヤーロープ3に十分なテンションをかけた状態としなくても、ワイヤーロープ3の長さ調整だけで十分であり、初期設定時が簡易に行われ、また、昇降移動中にワイヤーロープ3の1本に弛みが発生しても、ウインチ4で解消することができるので、再度の初期設定のやり直しをする必要がなく継続して使用することができる。
【0034】
ワイヤーロープ3のウインチ4による弛みの解消は、ウインチ4に取り入れられるワイヤーロープ3は、案内ガイド8に沿って取り入れ、該案内ガイド8と案内リング7の回転とでワイヤーロープ3を挟持し押圧しながら巻取リング6へワイヤーロープ3を移動し、巻取リング6の駆動でワイヤーロープ3を巻取リング6の外周に巻き付けて、該ワイヤーロープ3を再度、案内ガイド8に沿って取り出し、案内ガイド8と案内リング7の回転とでワイヤーロープ3を挟持し押圧しながらワイヤーロープ3をウインチ4より取り出すことで行われるために、ワイヤーロープ3の弛みの大小に関係することなく、一定の状態でワイヤーロープ3を移動することができる。また、巻取リング6の外周に巻き付けられたワイヤーロープ3は押圧体9で巻取リング6の外周側に押圧されているために、巻取リング6の回転駆動時に押圧体9が巻取リング6の回転方向にテンションがかかった状態で移動しながらワイヤーロープ3を空回りすることなく確実に移動することができる。
【0035】
上記実施例では、照明器具の吊り上げ用として使用したが、本発明の使用はこれに限定されるものでなく、例えば、舞台装置の吊り上げ用として、建築部材の吊り上げ用として、又はその他の吊り上げ用として使用することができる。
【0036】
また、上記本発明の実施は、ウインチ4をワイヤーロープ3に沿って上下方向に移動すべく構成したが、壁面間にワイヤーロープ3を吊張(地面に対して平行方向)し、該ワイヤーロープ3に沿って横方向に移動すべく構成することも可能であり、この場合、ネット又はシート16の先端側をフック5に引っ掛けて横方向に移動することも可能であり、またワイヤーロープ3の上方に安全用吊り張りロープ21を設け該安全用吊り張りロープ21に荷台22を移動可能に設け、巻取リング6に設けられたハンドル23を回転することで横方向に移動すべく構成することも可能であり、また上記ウインチ4に巻取リング6を2個設け、一方の巻取リング6でウインチ4が横方向にワイヤーロープ3に沿って横方向に移動し所定の位置で停止した後、クラッチ機構等で他方の巻取リング6と切り替えて、巻取リング6を回転駆動することで、フック5をウインチ4より昇降すべく構成することで、ウインチを用いた移動システム1の使用範囲をさらに拡大することも可能である。
【0037】
また、例えば、ウインチ4を上方で固定し、該ウインチ4を作動してワイヤーロープ3を昇降移動すべく構成することも可能である。この場合(ウインチ4を固定する場合)において、ワイヤーロープ3に荷重のかからない初期の状態時にワイヤーロープ3に弛みが生じてもウインチ4で解消しながらスムーズなワイヤーロープ3の移動が可能である。
【0038】
次に、ネット又はシートのウインチを用いた移動システム1Aを用いた一実施例について説明する。
【0039】
ネット又はシートのウインチを用いた移動システム1Aは、1本のワイヤーロープ3を支柱(図示せず)に設けられた複数の滑車14を介してシート16を覆設する方向に沿って無端状に吊張し、その端部側をウインチ4で正逆方向に移動するように設ける。そして、平行方向に吊張されたワイヤーロープ3間(A間及びB間)に複数に分割されたシートを取り付ける。シート16を取り付け方法は、複数のシート16の開閉方向に応じて、ワイヤーロープ3の無端状の吊張方向を変更して、同方向に又は対向する方向等自在に取り付けることが可能である。
【0040】
上記ウインチ4の基本的な構成は、上記ウインチを用いた移動システム1に使用するウインチ4と同一の構成である。
【0041】
シート16のワイヤーロープ3への取り付け方法は、開閉方向に沿って平行に吊張りされた吊張りワイヤー17に挿通体18を介してシート16が波状になるように取り付け、シート16の先端側をワイヤーロープ3に固定具19を介して固定する。尚、シート16のワイヤーロープ3への取り付け方法これに限定されるものでなく、例えば、ワイヤーロープ3に直接挿通体18と固定具19とを介してシート16を取り付けることも可能である。
【0042】
上記ネット又はシートのウインチを用いた移動システム1Aは以上より構成され、次に、該システム1Aを野外のプールに使用する場合について説明する。
【0043】
プールの外周に一定間隔で支柱を立設し、対向する支柱間に滑車14を取り付け、複数の滑車14間にワイヤーロープ3を張りし、一つ柱にウインチ4に取り入れ及び取り出し、無端状に吊張りする。プールの大きさ(設置面積)に応じて、同様の無端状に吊張したワイヤーロープ3と該ワイヤーロープ3を移動するウインチ4とをプール全体に吊張した後、前記対向する支柱間すべての滑車14の取り付け位置の下方側に吊張りワイヤー17を固定する。
【0044】
次に、吊張したワイヤーロープ3の同一の移動方向に沿ってUVカット機能を有する分割されたシート16を取り付ける。シート16の取り付け方法は、シート16の対向する両側にそれぞれ等間隔で取り付けられた挿通体18を平行して設けられた吊張りワイヤー17に挿通してシート16を波状になるように取り付け、シート16の移動方向の先端両端側に設けられた固定具19を同一の移動方向のワイヤーロープ3に固定する。
【0045】
上記一定の間隔で支柱に設けられたウインチ4は、例えば、操作盤(図示せず)によって同期させて駆動する。また、ウインチ4の駆動源に関しては、シート16の設置面積の大きさにより手動式と電動式と選択し、また、電源確保が難しい場合は、環境を考えてソーラー電源又は充電式のアシスト駆動付きのウインチ4を選択する。
【0046】
上記取り付けられたシート16は、プールの使用時には各ウインチ4を駆動して、ワイヤーロープ3を移動することでワイヤーロープ3に沿って固定具19が移動し、吊張りワイヤー17に沿ってシート16が移動し、分割されたシート16でプールを覆設する。
また、覆設した状態時に風が強くなると、各ウインチ4を逆方向に駆動しワイヤーロープ3を逆方向に移動することでワイヤーロープ3に沿って固定具19が逆方向に移動し、吊張りワイヤー17に沿ってシート16が収納状態の方向に移動し、分割されたシート16を全て収納してプールを開放状態とする。このため、プールは風の影響を受けることなく安全な状態で使用することができる。
【0047】
ワイヤーの正方向(シート16を閉塞する覆設方向)移動時には、ワイヤーロープ3のウインチ4へ取り入れる側(b方向)には、シート16の荷重がかかりワイヤーロープ3は常に引っ張られた状態となるが、ワイヤーロープ3のウインチ4より引き出す側(a方向)にはシート16の荷重が直接かからないために弛みが発生する。また、ワイヤーロープ3の逆方向(シート16を開放する収納方向)移動時には、ワイヤーロープ3のウインチ4への取り入れ側(a方向)に荷重がかかり弛みが発生するが、ワイヤーロープ3のウインチ4より引き出す側(b方向)はシート16の荷重がかかり常に引っ張られた状態となる。
【0048】
上記弛みの解消手段として、従来はテンションを介して滑車14を支柱に取り付け該テンションにより、弛みを解消しようとしたが、野外の設置面積が広いシート16の場合は、分割したとはいえテンションのみでは弛みを解消することができない場合が多く発生する。そこで、本発明では、ワイヤーロープ3を移動するウインチ4により弛みを解消し、スムーズなシート16の開閉移動を可能とした。
【0049】
具体的には、常に引っ張られた状態のウインチ4への取り入れ側のワイヤーロープ3と弛みの発生するウインチ4より引き出し側のワイヤーロープ3との場合は、引っ張られた状態のワイヤーロープ3は案内ガイド8の溝に沿って取り入れられ、しかも案内ガイド8と案内リング7とでワイヤーロープ3を挟持又は/及び押圧するようにして取り入れられ、巻取リング6にワイヤーロープ3が巻き取られた際、押圧体9によりワイヤーロープ3を巻取リング6の外周側へ押圧することで、巻取リング6の回転駆動を空回りすることなくワイヤーロープ3に伝達して移動し、さらに、ワイヤーロープ3の引き出し側も取り入れ側と同様に案内ガイド8の溝に沿って引き出し、しかも案内ガイド8と案内リング7とでワイヤーロープ3を挟持又は/及び押圧するようにして引き出す。このために、引っ張られた状態のワイヤーロープ3も一定の状態でウインチ4へ取り入れることができ、また、ウインチ4より引き出し側のワイヤーロープ3の弛みに関係することなくワイヤーロープ3をウインチ4より引き出し移動することができる。
【0050】
また、弛みのあるワイヤーロープ3がウインチ4に取り入れられる際は、ワイヤーロープ3は案内ガイド8の溝に沿って取り入れられ、しかも案内ガイド8と案内リング7とでワイヤーロープ3を挟持又は/及び押圧するようにして取り入れられるために、この部分のみでも充分にワイヤーロープ3の弛みを解消しながら一定の状態で取り入れすることができ、さらに、巻取リング6にワイヤーロープ3が巻き取られた際は、押圧体9によりワイヤーロープ3を巻取リング6の外周側へ押圧することで、巻取リング6の回転駆動を空回りすることなくワイヤーロープ3に伝達して移動できる。さらに、ワイヤーロープ3の引き出し側も取り入れ側と同様に案内ガイド8の溝に沿って引き出し、しかも案内ガイド8と案内リング7とでワイヤーロープ3を挟持又は/及び押圧するようにして引き出しできる。
【0051】
以上のワイヤーロープ3の取り入れ側、巻取リング6の駆動部分、及び引き出し側と3重にワイヤーロープ3のスムーズな移動手段が設けられているために、ウインチ4へのワイヤーロープ3の取り入れ側、引き出し側のどちらかに弛みじ発生しても、又は取り入れ側、引き出し側の両側に弛みが発生しても、常にスムーズなワイヤーロープ3の移動を可能とするために、従来必要とされたワイヤーロープ3への各種テンションを必要としない。
【0052】
従って、各種テンション取り付けの柱等が必要でなく、設備コストを大幅に削減することができる他、全体の構造が簡易であるためにメンテナンスにかかる費用も格段に削減することができる。
【0053】
しかも、野外に特有の風の影響に対しても、確実にシート16を収納することができるので、安全性及び耐久性の面においても格段に優れている。
【0054】
尚、上記実施例では、分割したシート16を同時に移動する方法を説明したが、本発明において、シート16の移動は分割したシート16の一部のみを開放移動するように制御盤で制御することも当然可能である。
【0055】
上記実施例は、プールのUVカットシート用としてシート16を設置面に対して平行に設ける方式でネット又はシートのウインチを用いた移動システム1Aを使用したが、本発明のネット又はシートのウインチを用いた移動システム1Aの使用はこれに限定されるものでない。例えば、下記のように使用することも可能である。
【0056】
立設した複数の支柱24の内、隣接した支柱24間の上部側に滑車14を取り付け該滑車14間にワイヤーロープ3を掛け渡し、さらに1つの支柱24の下方側に取り付けたウインチ4にワイヤーロープ3を掛け渡し、さらに、前記ワイヤーロープ3に近接した下方側に平行して吊張りワイヤー17を掛け渡し、該吊張りワイヤー17に挿通体18を介してシート16を縦方向に吊張りし、シート16の移動方向の先端両端側に設けられた固定具19をワイヤーロープ3に固定する。
【0057】
上記縦方向に吊張されたシート16の使用は、例えば、高速道路における防霧用として使用する。即ち、高速道路の両側に対向するようにシート16を縦方向に吊張りし設ける。
【0058】
高速道路において、霧が発生した場合には、例えばセンサーで感知してウインチ4を作動し、ワイヤーロープ3をループ状に移動させ、ワイヤーロープ3に先端側を固定されたシート16を縦方向で移動して高速道路への霧の進入を防ぐ、また、風が強い場合は、逆方向にシート16を縦方向で移動して一方の支柱24側にシート16を収納することで、風の影響を回避することができる。
【0059】
この場合も、実施例の場合と同様に、ウインチ4によりワイヤーロープ3の弛みを解消することができるので、従来のテンション構成による弛みの解消に比しメンテナンスの必要が激減することができる。
【0060】
また、ワイヤーロープ3をループ状に掛け渡す場合、複数の支柱24間に渡って掛け渡すことも可能であるために、ネット又はシートのウインチを用いた移動システム1Aの簡略化を図ることができ、コストの削減を可能とした。
【0061】
上記のように、シート16を設置面に対して平行移動する場合と、垂直方向で移動する場合とを説明したが、本発明においてはこれらの組み合わせによるシート16の移動も可能である。
【0062】
すなわち、設置スペースに複数の支柱24や梁25で骨組みをし、各面(屋根部分A,B面、側壁部分C面,D面,E面)にそれぞれ掛け渡された吊張りワイヤー17を介してシート16を吊張し、該吊張りワイヤー17の近接した上部側にワイヤーロープ3をループ状に掛け渡すことにより、それぞれの面のシート16を独立して開閉移動(例えは、B面とD面のシート16のみを開放し、他の面は閉覆した状態)することも可能である。
【0063】
作業現場において、作業現場の全体スペースをテント風に支柱や梁で骨組みし、全ての面に分割したシート16をそれぞれ吊張する(シート16の長さや、シート16の移動方向により、ウインチ4を所定数設置(複数の分割されたシート16を1台のウインチ4で移動(移動方向が相違しても)する。)し、それぞれウインチ4を中心としてワイヤーロープ3をループ状に掛け渡す。各ウインチ4ははそれぞれ制御盤(図示せず)により独立して制御されている。
【0064】
そして、必要な面(例えば、夏日のときは、日差し避けとして作業部分のみ閉覆移動、他の部分は風通しを考えて開放移動させる)のみ開放、又は閉覆移動して目的に応じた使用を可能とする。
【0065】
この場合も、各ワイヤーロープ3に弛みが生じてもウインチ4部分でその弛みを解消することができるので、メンテナンスの必要がなく、作業の遅延等をおこすことなく使用することができる。
【0066】
本発明のネット又はシートのウインチを用いた移動システム1Aの使用は、上記の実施例に限定されるものでなく、大きな面積のネット又はシートを用いる場合のあらゆる工事現場で使用することができる。一例として、集合住宅等の補修点検用として建物全体に枠体(足場)を設け、該枠体に沿ってネット又はシートを取り付け、該ネット又はシートをウインチを用いて開閉可能に設置するように構成することも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0067】
【図1】本発明のウインチを用いた移動システムの一実施例を示す概略説明図
【図2】本発明に使用するウインチを示す概略説明図
【図3】ウインチによるワイヤーロープの取り入れ及び取り出し移動を示す概略説明図
【図4】ウインチによるワイヤーロープの駆動移動を示す概略説明図
【図5】ウインチを用いた移動システムの使用例を示す概略説明図
【図6】ウインチを用いた移動システムの他使用例を示す概略説明図
【図7】ウインチを用いた移動システムの他使用例を示す概略説明図
【図8】ウインチを用いた移動システムの他使用例を示す概略説明図
【図9】ネット又はシートのウインチを用いた移動システムを示す概略説明図
【図10】ネット又はシートのウインチを用いた移動システムの他実施例を示す概略説明図
【図11】ネット又はシートのウインチを用いた移動システムの他実施例を示す概略説明図
【図12】ネット又はシートのウインチを用いた移動システムの他実施例を示す概略説明図
【図13】ネット又はシートのウインチを用いた移動システムの他実施例を示す概略説明図
【図14】ネット又はシートのウインチを用いた移動システムの他実施例を示す概略説明図
【図15】ネット又はシートのウインチを用いた移動システムの他実施例を示す概略説明図
【符号の説明】
【0068】
1…ウインチを用いた移動システム、3…ワイヤーロープ、4…ウインチ、6…巻取リング、14…滑車、16…ネット又はシート、20…支柱
【技術分野】
【0001】
本発明は、壁面間、天井部分等に吊張されたワイヤーロープを移動するためのウインチ、吊張されたワイヤーロープに沿ってウインチを移動することで、各種の作業現場を行うのに使用したり、工事現場、野外のプールを覆設されるUVカットネット又はシート部材、擁壁工事等の工事現場の雨避け用として覆設されるシート部材、仮設用屋根のシート部材を移動するために使用するウインチを用いた移動システム、ネット又はシートのウインチを用いた移動システムに関する。
【背景技術】
【0002】
ウインチを用いた移動システムの一例として建設物の壁面点検作業がある。この壁面点検作業としては、上下方向に吊張されたワイヤーロープをウインチで移動しながら作業者を直接/間接的に昇降移動するシステムがあり、また他の例としては、ホテル等の非難用としては高い場所の壁面より屋外に固定されたウインチに設けられたワイヤーロープを利用して降下移動するシステムがある。
【0003】
また、ネット又はシートのウインチを用いた移動システムとしては、工事現場での強い日差しを避け、雨を避けるために作業場の所望のスペースにネット又はシートを用いて仮設屋根を設け、該ネット又はシートをウインチを用いて開閉するシステムがあり、また、他の装置として、設置スペースに立設した支柱間に架設されて並行して延長する複数の支持索と、隣接する支持索間に張設された膜屋根とから構成され、ウインチにより横行索と開閉索とを移動して膜屋根をスライド開閉するシステムがある。
【0004】
上記建設物の壁面点検用としては、壁面より横方向に突出して設けられたアームと該アームに取り付けられたワイヤーロープ巻き取り用のウインチと、該ウインチのワイヤーロープに固定された荷台と、アームと地上部と間に設けられた補助ワイヤーロープとから構成され、ウインチよりのワイヤーロープの引き出し又は巻き取りにより作業者の乗った荷台を昇降して壁面の点検作業を行う。この際、安全性の面で補助ワイヤーロープ及びウインチよりのワイヤーロープは常にテンションがかかった(緊張)状態とし、補助のブレーキを用いて安全性を確保している。また、非難用としては、高い場所の壁面より屋外に設けられた支柱と、該支柱に固定されたウインチと、該ウインチに設けられたワイヤーロープとから構成され、安全ベルトを取り付けた人をワイヤーロープの先端に連結し、ウインチを作動してワイヤーロープを下降されて降下非難するシステムがある。
【0005】
上記仮設屋根は、設置場所に平行に設けられた2つのガイドと、ガイドに対して直角方向を向き、相互に平行となってガイドに移動可能に装着された複数の梁部材と、梁部材間に取り付けられたシート部材と、ガイドに相対する一端部側に取り付けられる一端側滑車と、ガイドに相対する他端部側に取り付けられる他端側滑車と、一端側滑車と他端側滑車とにループ状に設けられたワイヤロープと、ワイヤロープを移動する手動ウインチとから構成され、手動ウインチで滑車に張設されたワイヤロープを正逆に送り移動することで、平行に設けられたガイドに沿って複数の梁部材を移動して該梁部材に設けられたシート部材の開閉を行う。
また、他の装置は、ウインチにより横行索と開閉索とを移動して膜屋根をスライド開閉している。 支柱により支持される荷重は、支持索や膜屋根などによる軽量のものに留めて対応している。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記壁面点検用等で使用するウインチはワイヤーロープ巻き取り用のウインチが使用されているためにワイヤーロープに常にテンションがかかった状態で使用しなければならず、巻き取られたワイヤーロープに少しでも弛みがあれば荷台が急降下したりするために、常にワイヤーロープのテンションを確認する作業が必要であり、また別体のブレーキ機構をウインチ内に又は別体として取り付ける必要であった。
【0007】
また、ワイヤーロープの巻き取り装置が別体として設けられたエンドレス(無端状)のウインチを使用する場合も同様に、ウインチよりのワイヤーロープの引き出し側及びワイヤーロープの取り込み側ともにテンションがかかった状態でなければスムーズなワイヤーロープの移動ができないという欠点があった。
【0008】
また、仮設屋根の梁部材に取り付けられたシート部材は、滑車を支柱に固定して取り付けているだけであり、設置スペースが広い場合にはループ状に設けられたワイヤロープにかかるシート部材の荷重により、ウインチでのワイヤロープの移動時にワイヤロープの一方側に弛みが生じ、スムーズなワイヤロープ移動ができずシート部材の開閉移動ができない場合がある。
【0009】
また、隣接する支持索間に張設された膜屋根の場合は、膜屋根が複数に分割され、支持索や膜屋根なとの材料の軽量を図っているもの、斜面に対して膜屋根が設けられているために膜屋根の開閉時には、横行索と開閉索とに弛みが生じ、上記と同様にスムーズな支持索の移動ができず膜屋根の開閉移動ができない場合があり、頻繁なメンテナンスを必要とする。
【0010】
上記ワイヤロープ(支持索)の弛みの防止用として、各滑車をテンション機構を用いて取り付け、ワイヤを常時緊張状態で設けることが一般的に用いられているが、この場合その構造が複雑となり、装置全体がコスト高となる問題点があった。
【0011】
本発明は、従来の上記装置の欠点であったワイヤロープのテンションを問題とすることなく、また、ネット又はシートの荷重を問題とすることなくワイヤーロープをスムーズに移動することができるウインチを用いた稼働システム、ネット又はシートのウインチを用いた稼働システムを提供することで上記課題を解決する。
【問題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、吊張されたワイヤーロープをウインチで移動することで各種作業を行うウインチを用いた移動システムにおいて、該ワイヤロープに発生する弛みをウインチで解消しながらワイヤーロープを移動することを特徴とするウインチを用いた移動システムである。
【0013】
また、吊張されたワイヤーロープに沿ってワイヤロープに発生する弛みをウインチで解消しながらウインチをワイヤーロープに沿って移動するウインチを用いた移動システムである。
【0014】
また、風、紫外線をカットするためのネット又はシート、又は空間部を覆設するためのネット又はシートの吊張用として設けられているワイヤーロープにかかるネット又はシートの荷重による弛みをウインチで解消しながらワイヤーロープを無端状に移動することで、ネット又はシートを開閉移動することを特徴とするネット又はシートのウインチを用いた移動システムである。
【0015】
また、ネット又はシートが複数に分割され、該分割されたネット又はシートを分割方向に沿ってそれぞれ吊張されたワイヤーロープを無端状に移動することで、分割された各ネット又はシートの同方向に又は対向する方向に開閉移動することを特徴とするネット又はシートのウインチを用いた移動システムである。
【発明の作用】
【0016】
本発明のウインチを用いた移動システムは、地面に対して垂直方向、又は水平方向に無端状に吊張されたワイヤーロープを固定されたウインチを用いて移動する。ワイヤーロープ移動時に、該ワイヤーロープに十分な荷重がかかっていない場合にワイヤーロープに弛みが発生するが、ウインチでワイヤロープの弛みを解消しながらワイヤーロープを移動する。
【0017】
また、地面に対して垂直方向、又は水平方向に吊張されたワイヤーロープに沿ってウインチを移動する場合に、吊張されたワイヤロープに弛みが生じても、ウインチでワイヤロープの弛みを解消しながらウインチを移動することで各種の作業を行う。
【0018】
また、ネット又はシートを開閉する場合は、設置場所の外周に支柱を立設し、該支柱間にワイヤーロープをウインチを介して無端状に吊張する。このワイヤーロープを無端状に吊張する方法は、支柱間毎にワイヤーロープを吊張することで複数本のワイヤーロープを吊張することも可能であり、また1本のワイヤーロープで掛け渡すことでも可能である。
【0019】
次に、ネット又はシートを前記対向するワイヤーロープに直接又は間接的に連結し、1つの支柱に固定したウインチを作動してワイヤーロープを移動することで、ワイヤーロープに沿って直接又は間接的にネット又はシートを自在に開閉移動することができる。
【0020】
上記ネット又はシートの荷重は無端状に吊張されたワイヤーロープに直接又は間接的にかかるために、ネット又はシートの開閉移動時において、ウインチを駆動してワイヤーロープを移動すると、ウインチへのワイヤーロープの取り入れ側と取り出し側(ウインチの駆動部に対して)とでワイヤーロープにかかる荷重が相違するために、特にワイヤーロープのウインチへの取り出し側に弛みが発生することがおこりやすい。本発明はこの弛みをウインチ部分で解消しながらワイヤーロープを無端状に移動することができるので、常にスムーズなネット又はシートの開閉移動を行うことができる。
【0021】
上記ウインチでのワイヤーロープの弛みの解消は、ウインチ内においてワイヤーロープが常にテンションがかかった状態で移動することとなるために、ワイヤーロープのウインチへの取り出し側又は取り入れ側の弛みがあっても問題とすることなくウインチ内で弛みを解消して、スムーズなワイヤーロープの移動を行うことができる。
【発明の効果】
【0022】
本発明は、ワイヤーロープの弛みをウインチで解消しながらワイヤーロープを移動することができるので、ワイヤーロープの弛みによるトラブルの発生がなく、安全性の面において特に効果があり、各種の作業に対応することができる。
【0023】
また、ワイヤーロープにネット又はシートの荷重がかかり、ウインチへのワイヤーロープ取り出し側又は取り入れ側に弛みが発生しても、ワイヤーロープを移動することができるので、ワイヤーロープの弛みによるトラブルの発生がなく、メンテナンスの必要性を最小限に押さえ、維持コストを軽減することができることとなる。
【0024】
また、スムーズなネット又はシートの開閉移動により、例えば、突風等の風の強い日において、ネット又はシートをすばやく開放することで、風の影響を排除することができ、風によるトラブルを最小限に押さえることができる。
【0025】
さらに、ワイヤーロープにかかるネット又はシートの荷重をウインチで解消できるので、従来必要であったワイヤーロープ及びネット又はシートの吊張設備である複数のテンション手段が必要でなく、大きなスペースに設置されたほど特に設置コストの大幅な削減を可能とした。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
本発明のウインチを用いた移動システム、ネット又はシートのウインチを用いた移動システムについて、図面に沿って説明する。
【0027】
図1は、本発明のウインチを用いた移動システムの一実施例を示す概略説明図であり、図2は本発明に使用するウインチを示す概略説明図であり、図3はウインチによるワイヤーロープの取り入れ及び取り出し移動を示す概略説明図であり、図4はウインチによるワイヤーロープの駆動移動を示す概略説明図であり、図5はウインチを用いた移動システムの使用例を示す概略説明図であり、図6、図7、図8はウインチを用いた移動システムの他使用例を示す概略説明図であり、図9はネット又はシートのウインチを用いた移動システムを示す概略説明図であり、図10、図11はネット又はシートのウインチを用いた移動システムの他実施例を示す概略説明図であり、図12、図13、図14はネット又はシートのウインチを用いた移動システムの他実施例を示す概略説明図であり、図15は、ネット又はシートの開閉装置の他実施例を示す概略説明図である。
【0028】
本発明のウインチを用いた移動システム1は、一端側を天井等の上方部に連結具2を介して固定し、他端側を下方に垂らしたワイヤーロープ3と、該ワイヤーロープ3に設けられたウインチ4と、該ウインチ4の下端に設けられた鍵状フック5とから構成され、ウインチ4が作動することで該ウインチ4をワイヤーロープ3に沿って昇降移動すべく構成されている。
【0029】
前記ウインチ4の基本的な構成は、駆動源(手動、又は自動)により回転駆動する巻取リング6にワイヤーロープ3を巻き付けて、ワイヤーロープ3を無端状に移動すべく構成されている。前記巻取リング6へのワイヤーロープ3の取り入れ及び取り出しに関しては、3個の回転自在な案内リング7と、該案内リング7に近接して設けられ、ワイヤーロープ3の取り入れ及び取り出しの道筋の役割(各道が例えば溝状、又は筒状に形成され、しかもワイヤーロープ3の径と略同一の径)をする案内ガイド8とで行われ、ワイヤーロープ3を案内ガイド8に沿って取り入れ、該案内ガイド8と案内リング7とでワイヤーロープ3を挟持し押圧しながら巻取リング6へワイヤーロープ3を移動し、巻取リング6の駆動でワイヤーロープ3を巻取リング6の外周に巻き付けて、該ワイヤーロープ3を再度、案内ガイド8に沿って取り出し、案内ガイド8と案内リング7とでワイヤーロープ3を挟持し押圧しながらワイヤーロープ3をウインチ4より取り出す。
【0030】
ワイヤーロープ3を巻取リング6の外周に巻き付ける際、両端側にテンションが設けられ、巻取リング6の外周に沿って設けられた押圧体9で、ワイヤーロープ3を巻取リング6の外周側に押圧しているために、巻取リング6の回転駆動時にワイヤーロープ3が空回りすることなく、確実にワイヤーロープ3を移動することができる。
【0031】
即ち、上記案内ガイド8と案内リング7とでのワイヤーロープ3の挟持、押圧及び押圧体9によるワイヤーロープ3を巻取リング6の外周側への押圧というワイヤーロープ3の弛み解除手段により、ワイヤーロープ3の取り入れ側に弛みが発生しても、ワイヤーロープ3の弛みに関係することなく、ウインチ4により無端状にワイヤーロープ3を移動することができる。
【0032】
本発明のウインチを用いた移動システム1は上記のように構成され、次に該移動システム1を使用する場合の一例について説明する。
【0033】
大空間部を有するスポーツ用等の屋内施設の天井部の設けられた照明器具を昇降する場合は、先ず天井部に所定間隔をあけて4個の連結具2を取り付け、該連結具2にワイヤーロープ3の他端側をそれぞれ固定したウインチ4を取り付ける。そして、該ワイヤーロープ3それぞれにウインチ4を設け、該ウインチ4のフック5に、照明器具の設けられた矩形の枠体20の四隅を連結し、ウインチ4を作動することで、枠体を昇降移動する。ウインチの作動は例えば制御盤(図示せず)と無線式の遠隔操作盤(図示せず)を用いて行う。この際、従来のウインチで上記と同様の構成を設けた場合、各ウインチに設けられるワイヤーロープ3に十分なテンションをかけた状態で、初期設定しなければ枠体20をスームズに昇降移動することができず、また昇降移動中に1つのウインチに使用するワイヤーロープ3に弛みが発生すると初期設定のやり直しを必要とする等の問題点があったが、本発明のウインチを用いた移動システム1を使用すると、初期設定時にワイヤーロープ3に十分なテンションをかけた状態としなくても、ワイヤーロープ3の長さ調整だけで十分であり、初期設定時が簡易に行われ、また、昇降移動中にワイヤーロープ3の1本に弛みが発生しても、ウインチ4で解消することができるので、再度の初期設定のやり直しをする必要がなく継続して使用することができる。
【0034】
ワイヤーロープ3のウインチ4による弛みの解消は、ウインチ4に取り入れられるワイヤーロープ3は、案内ガイド8に沿って取り入れ、該案内ガイド8と案内リング7の回転とでワイヤーロープ3を挟持し押圧しながら巻取リング6へワイヤーロープ3を移動し、巻取リング6の駆動でワイヤーロープ3を巻取リング6の外周に巻き付けて、該ワイヤーロープ3を再度、案内ガイド8に沿って取り出し、案内ガイド8と案内リング7の回転とでワイヤーロープ3を挟持し押圧しながらワイヤーロープ3をウインチ4より取り出すことで行われるために、ワイヤーロープ3の弛みの大小に関係することなく、一定の状態でワイヤーロープ3を移動することができる。また、巻取リング6の外周に巻き付けられたワイヤーロープ3は押圧体9で巻取リング6の外周側に押圧されているために、巻取リング6の回転駆動時に押圧体9が巻取リング6の回転方向にテンションがかかった状態で移動しながらワイヤーロープ3を空回りすることなく確実に移動することができる。
【0035】
上記実施例では、照明器具の吊り上げ用として使用したが、本発明の使用はこれに限定されるものでなく、例えば、舞台装置の吊り上げ用として、建築部材の吊り上げ用として、又はその他の吊り上げ用として使用することができる。
【0036】
また、上記本発明の実施は、ウインチ4をワイヤーロープ3に沿って上下方向に移動すべく構成したが、壁面間にワイヤーロープ3を吊張(地面に対して平行方向)し、該ワイヤーロープ3に沿って横方向に移動すべく構成することも可能であり、この場合、ネット又はシート16の先端側をフック5に引っ掛けて横方向に移動することも可能であり、またワイヤーロープ3の上方に安全用吊り張りロープ21を設け該安全用吊り張りロープ21に荷台22を移動可能に設け、巻取リング6に設けられたハンドル23を回転することで横方向に移動すべく構成することも可能であり、また上記ウインチ4に巻取リング6を2個設け、一方の巻取リング6でウインチ4が横方向にワイヤーロープ3に沿って横方向に移動し所定の位置で停止した後、クラッチ機構等で他方の巻取リング6と切り替えて、巻取リング6を回転駆動することで、フック5をウインチ4より昇降すべく構成することで、ウインチを用いた移動システム1の使用範囲をさらに拡大することも可能である。
【0037】
また、例えば、ウインチ4を上方で固定し、該ウインチ4を作動してワイヤーロープ3を昇降移動すべく構成することも可能である。この場合(ウインチ4を固定する場合)において、ワイヤーロープ3に荷重のかからない初期の状態時にワイヤーロープ3に弛みが生じてもウインチ4で解消しながらスムーズなワイヤーロープ3の移動が可能である。
【0038】
次に、ネット又はシートのウインチを用いた移動システム1Aを用いた一実施例について説明する。
【0039】
ネット又はシートのウインチを用いた移動システム1Aは、1本のワイヤーロープ3を支柱(図示せず)に設けられた複数の滑車14を介してシート16を覆設する方向に沿って無端状に吊張し、その端部側をウインチ4で正逆方向に移動するように設ける。そして、平行方向に吊張されたワイヤーロープ3間(A間及びB間)に複数に分割されたシートを取り付ける。シート16を取り付け方法は、複数のシート16の開閉方向に応じて、ワイヤーロープ3の無端状の吊張方向を変更して、同方向に又は対向する方向等自在に取り付けることが可能である。
【0040】
上記ウインチ4の基本的な構成は、上記ウインチを用いた移動システム1に使用するウインチ4と同一の構成である。
【0041】
シート16のワイヤーロープ3への取り付け方法は、開閉方向に沿って平行に吊張りされた吊張りワイヤー17に挿通体18を介してシート16が波状になるように取り付け、シート16の先端側をワイヤーロープ3に固定具19を介して固定する。尚、シート16のワイヤーロープ3への取り付け方法これに限定されるものでなく、例えば、ワイヤーロープ3に直接挿通体18と固定具19とを介してシート16を取り付けることも可能である。
【0042】
上記ネット又はシートのウインチを用いた移動システム1Aは以上より構成され、次に、該システム1Aを野外のプールに使用する場合について説明する。
【0043】
プールの外周に一定間隔で支柱を立設し、対向する支柱間に滑車14を取り付け、複数の滑車14間にワイヤーロープ3を張りし、一つ柱にウインチ4に取り入れ及び取り出し、無端状に吊張りする。プールの大きさ(設置面積)に応じて、同様の無端状に吊張したワイヤーロープ3と該ワイヤーロープ3を移動するウインチ4とをプール全体に吊張した後、前記対向する支柱間すべての滑車14の取り付け位置の下方側に吊張りワイヤー17を固定する。
【0044】
次に、吊張したワイヤーロープ3の同一の移動方向に沿ってUVカット機能を有する分割されたシート16を取り付ける。シート16の取り付け方法は、シート16の対向する両側にそれぞれ等間隔で取り付けられた挿通体18を平行して設けられた吊張りワイヤー17に挿通してシート16を波状になるように取り付け、シート16の移動方向の先端両端側に設けられた固定具19を同一の移動方向のワイヤーロープ3に固定する。
【0045】
上記一定の間隔で支柱に設けられたウインチ4は、例えば、操作盤(図示せず)によって同期させて駆動する。また、ウインチ4の駆動源に関しては、シート16の設置面積の大きさにより手動式と電動式と選択し、また、電源確保が難しい場合は、環境を考えてソーラー電源又は充電式のアシスト駆動付きのウインチ4を選択する。
【0046】
上記取り付けられたシート16は、プールの使用時には各ウインチ4を駆動して、ワイヤーロープ3を移動することでワイヤーロープ3に沿って固定具19が移動し、吊張りワイヤー17に沿ってシート16が移動し、分割されたシート16でプールを覆設する。
また、覆設した状態時に風が強くなると、各ウインチ4を逆方向に駆動しワイヤーロープ3を逆方向に移動することでワイヤーロープ3に沿って固定具19が逆方向に移動し、吊張りワイヤー17に沿ってシート16が収納状態の方向に移動し、分割されたシート16を全て収納してプールを開放状態とする。このため、プールは風の影響を受けることなく安全な状態で使用することができる。
【0047】
ワイヤーの正方向(シート16を閉塞する覆設方向)移動時には、ワイヤーロープ3のウインチ4へ取り入れる側(b方向)には、シート16の荷重がかかりワイヤーロープ3は常に引っ張られた状態となるが、ワイヤーロープ3のウインチ4より引き出す側(a方向)にはシート16の荷重が直接かからないために弛みが発生する。また、ワイヤーロープ3の逆方向(シート16を開放する収納方向)移動時には、ワイヤーロープ3のウインチ4への取り入れ側(a方向)に荷重がかかり弛みが発生するが、ワイヤーロープ3のウインチ4より引き出す側(b方向)はシート16の荷重がかかり常に引っ張られた状態となる。
【0048】
上記弛みの解消手段として、従来はテンションを介して滑車14を支柱に取り付け該テンションにより、弛みを解消しようとしたが、野外の設置面積が広いシート16の場合は、分割したとはいえテンションのみでは弛みを解消することができない場合が多く発生する。そこで、本発明では、ワイヤーロープ3を移動するウインチ4により弛みを解消し、スムーズなシート16の開閉移動を可能とした。
【0049】
具体的には、常に引っ張られた状態のウインチ4への取り入れ側のワイヤーロープ3と弛みの発生するウインチ4より引き出し側のワイヤーロープ3との場合は、引っ張られた状態のワイヤーロープ3は案内ガイド8の溝に沿って取り入れられ、しかも案内ガイド8と案内リング7とでワイヤーロープ3を挟持又は/及び押圧するようにして取り入れられ、巻取リング6にワイヤーロープ3が巻き取られた際、押圧体9によりワイヤーロープ3を巻取リング6の外周側へ押圧することで、巻取リング6の回転駆動を空回りすることなくワイヤーロープ3に伝達して移動し、さらに、ワイヤーロープ3の引き出し側も取り入れ側と同様に案内ガイド8の溝に沿って引き出し、しかも案内ガイド8と案内リング7とでワイヤーロープ3を挟持又は/及び押圧するようにして引き出す。このために、引っ張られた状態のワイヤーロープ3も一定の状態でウインチ4へ取り入れることができ、また、ウインチ4より引き出し側のワイヤーロープ3の弛みに関係することなくワイヤーロープ3をウインチ4より引き出し移動することができる。
【0050】
また、弛みのあるワイヤーロープ3がウインチ4に取り入れられる際は、ワイヤーロープ3は案内ガイド8の溝に沿って取り入れられ、しかも案内ガイド8と案内リング7とでワイヤーロープ3を挟持又は/及び押圧するようにして取り入れられるために、この部分のみでも充分にワイヤーロープ3の弛みを解消しながら一定の状態で取り入れすることができ、さらに、巻取リング6にワイヤーロープ3が巻き取られた際は、押圧体9によりワイヤーロープ3を巻取リング6の外周側へ押圧することで、巻取リング6の回転駆動を空回りすることなくワイヤーロープ3に伝達して移動できる。さらに、ワイヤーロープ3の引き出し側も取り入れ側と同様に案内ガイド8の溝に沿って引き出し、しかも案内ガイド8と案内リング7とでワイヤーロープ3を挟持又は/及び押圧するようにして引き出しできる。
【0051】
以上のワイヤーロープ3の取り入れ側、巻取リング6の駆動部分、及び引き出し側と3重にワイヤーロープ3のスムーズな移動手段が設けられているために、ウインチ4へのワイヤーロープ3の取り入れ側、引き出し側のどちらかに弛みじ発生しても、又は取り入れ側、引き出し側の両側に弛みが発生しても、常にスムーズなワイヤーロープ3の移動を可能とするために、従来必要とされたワイヤーロープ3への各種テンションを必要としない。
【0052】
従って、各種テンション取り付けの柱等が必要でなく、設備コストを大幅に削減することができる他、全体の構造が簡易であるためにメンテナンスにかかる費用も格段に削減することができる。
【0053】
しかも、野外に特有の風の影響に対しても、確実にシート16を収納することができるので、安全性及び耐久性の面においても格段に優れている。
【0054】
尚、上記実施例では、分割したシート16を同時に移動する方法を説明したが、本発明において、シート16の移動は分割したシート16の一部のみを開放移動するように制御盤で制御することも当然可能である。
【0055】
上記実施例は、プールのUVカットシート用としてシート16を設置面に対して平行に設ける方式でネット又はシートのウインチを用いた移動システム1Aを使用したが、本発明のネット又はシートのウインチを用いた移動システム1Aの使用はこれに限定されるものでない。例えば、下記のように使用することも可能である。
【0056】
立設した複数の支柱24の内、隣接した支柱24間の上部側に滑車14を取り付け該滑車14間にワイヤーロープ3を掛け渡し、さらに1つの支柱24の下方側に取り付けたウインチ4にワイヤーロープ3を掛け渡し、さらに、前記ワイヤーロープ3に近接した下方側に平行して吊張りワイヤー17を掛け渡し、該吊張りワイヤー17に挿通体18を介してシート16を縦方向に吊張りし、シート16の移動方向の先端両端側に設けられた固定具19をワイヤーロープ3に固定する。
【0057】
上記縦方向に吊張されたシート16の使用は、例えば、高速道路における防霧用として使用する。即ち、高速道路の両側に対向するようにシート16を縦方向に吊張りし設ける。
【0058】
高速道路において、霧が発生した場合には、例えばセンサーで感知してウインチ4を作動し、ワイヤーロープ3をループ状に移動させ、ワイヤーロープ3に先端側を固定されたシート16を縦方向で移動して高速道路への霧の進入を防ぐ、また、風が強い場合は、逆方向にシート16を縦方向で移動して一方の支柱24側にシート16を収納することで、風の影響を回避することができる。
【0059】
この場合も、実施例の場合と同様に、ウインチ4によりワイヤーロープ3の弛みを解消することができるので、従来のテンション構成による弛みの解消に比しメンテナンスの必要が激減することができる。
【0060】
また、ワイヤーロープ3をループ状に掛け渡す場合、複数の支柱24間に渡って掛け渡すことも可能であるために、ネット又はシートのウインチを用いた移動システム1Aの簡略化を図ることができ、コストの削減を可能とした。
【0061】
上記のように、シート16を設置面に対して平行移動する場合と、垂直方向で移動する場合とを説明したが、本発明においてはこれらの組み合わせによるシート16の移動も可能である。
【0062】
すなわち、設置スペースに複数の支柱24や梁25で骨組みをし、各面(屋根部分A,B面、側壁部分C面,D面,E面)にそれぞれ掛け渡された吊張りワイヤー17を介してシート16を吊張し、該吊張りワイヤー17の近接した上部側にワイヤーロープ3をループ状に掛け渡すことにより、それぞれの面のシート16を独立して開閉移動(例えは、B面とD面のシート16のみを開放し、他の面は閉覆した状態)することも可能である。
【0063】
作業現場において、作業現場の全体スペースをテント風に支柱や梁で骨組みし、全ての面に分割したシート16をそれぞれ吊張する(シート16の長さや、シート16の移動方向により、ウインチ4を所定数設置(複数の分割されたシート16を1台のウインチ4で移動(移動方向が相違しても)する。)し、それぞれウインチ4を中心としてワイヤーロープ3をループ状に掛け渡す。各ウインチ4ははそれぞれ制御盤(図示せず)により独立して制御されている。
【0064】
そして、必要な面(例えば、夏日のときは、日差し避けとして作業部分のみ閉覆移動、他の部分は風通しを考えて開放移動させる)のみ開放、又は閉覆移動して目的に応じた使用を可能とする。
【0065】
この場合も、各ワイヤーロープ3に弛みが生じてもウインチ4部分でその弛みを解消することができるので、メンテナンスの必要がなく、作業の遅延等をおこすことなく使用することができる。
【0066】
本発明のネット又はシートのウインチを用いた移動システム1Aの使用は、上記の実施例に限定されるものでなく、大きな面積のネット又はシートを用いる場合のあらゆる工事現場で使用することができる。一例として、集合住宅等の補修点検用として建物全体に枠体(足場)を設け、該枠体に沿ってネット又はシートを取り付け、該ネット又はシートをウインチを用いて開閉可能に設置するように構成することも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0067】
【図1】本発明のウインチを用いた移動システムの一実施例を示す概略説明図
【図2】本発明に使用するウインチを示す概略説明図
【図3】ウインチによるワイヤーロープの取り入れ及び取り出し移動を示す概略説明図
【図4】ウインチによるワイヤーロープの駆動移動を示す概略説明図
【図5】ウインチを用いた移動システムの使用例を示す概略説明図
【図6】ウインチを用いた移動システムの他使用例を示す概略説明図
【図7】ウインチを用いた移動システムの他使用例を示す概略説明図
【図8】ウインチを用いた移動システムの他使用例を示す概略説明図
【図9】ネット又はシートのウインチを用いた移動システムを示す概略説明図
【図10】ネット又はシートのウインチを用いた移動システムの他実施例を示す概略説明図
【図11】ネット又はシートのウインチを用いた移動システムの他実施例を示す概略説明図
【図12】ネット又はシートのウインチを用いた移動システムの他実施例を示す概略説明図
【図13】ネット又はシートのウインチを用いた移動システムの他実施例を示す概略説明図
【図14】ネット又はシートのウインチを用いた移動システムの他実施例を示す概略説明図
【図15】ネット又はシートのウインチを用いた移動システムの他実施例を示す概略説明図
【符号の説明】
【0068】
1…ウインチを用いた移動システム、3…ワイヤーロープ、4…ウインチ、6…巻取リング、14…滑車、16…ネット又はシート、20…支柱
【特許請求の範囲】
【請求項1】
吊張されたワイヤーロープをウインチで移動することで各種作業を行うウインチを用いた移動システムにおいて、該ワイヤロープに発生する弛みをウインチで解消しながらワイヤーロープを移動することを特徴とするウインチを用いた移動システム。
【請求項2】
吊張されたワイヤーロープに沿ってワイヤロープに発生する弛みをウインチで解消しながらウインチをワイヤーロープに沿って移動するウインチを用いた移動システム。
【請求項3】
風、紫外線をカットするためのネット又はシート、又は空間部を覆設するためのネット又はシートの吊張用として設けられているワイヤーロープにかかるネット又はシートの荷重による弛みをウインチで解消しながらワイヤーロープを無端状に移動することで、ネット又はシートを開閉移動することを特徴とするネット又はシートのウインチを用いた移動システム。
【請求項4】
前記ネット又はシートが複数に分割され、該分割されたネット又はシートを分割方向に沿ってそれぞれ吊張されたワイヤーロープを無端状に移動することで、分割された各ネット又はシートの同方向に又は対向する方向に開閉移動することを特徴とするネット又はシートのウインチを用いた移動システム。
【請求項1】
吊張されたワイヤーロープをウインチで移動することで各種作業を行うウインチを用いた移動システムにおいて、該ワイヤロープに発生する弛みをウインチで解消しながらワイヤーロープを移動することを特徴とするウインチを用いた移動システム。
【請求項2】
吊張されたワイヤーロープに沿ってワイヤロープに発生する弛みをウインチで解消しながらウインチをワイヤーロープに沿って移動するウインチを用いた移動システム。
【請求項3】
風、紫外線をカットするためのネット又はシート、又は空間部を覆設するためのネット又はシートの吊張用として設けられているワイヤーロープにかかるネット又はシートの荷重による弛みをウインチで解消しながらワイヤーロープを無端状に移動することで、ネット又はシートを開閉移動することを特徴とするネット又はシートのウインチを用いた移動システム。
【請求項4】
前記ネット又はシートが複数に分割され、該分割されたネット又はシートを分割方向に沿ってそれぞれ吊張されたワイヤーロープを無端状に移動することで、分割された各ネット又はシートの同方向に又は対向する方向に開閉移動することを特徴とするネット又はシートのウインチを用いた移動システム。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【公開番号】特開2007−161476(P2007−161476A)
【公開日】平成19年6月28日(2007.6.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−380995(P2005−380995)
【出願日】平成17年12月14日(2005.12.14)
【出願人】(592206156)東田商工株式会社 (54)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成19年6月28日(2007.6.28)
【国際特許分類】
【出願日】平成17年12月14日(2005.12.14)
【出願人】(592206156)東田商工株式会社 (54)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]