説明

ネビボロールの調製プロセス

本発明は、ネビボロールの調製方法に関し、より詳細にはネビボロール調製に有用な中間体である、式(I)で表わされるα−ハロケトンの立体選択的還元の方法に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はネビボロール調製のためのプロセスに関し、より詳細にはネビボロールの調製における有用な中間体である次式:
【0002】
【化1】

で表されるα−ハロケトンの立体選択的な還元方法に関する。
【背景技術】
【0003】
ネビボロール(以後NBVと称する)は式(IA):
【0004】
【化2】

で表される[2S[2R*[R[R*]]]]α,α’−[イミノ−ビス(メチレン)]ビス[6−フルオロ−クロマン−2−メタノール](以後、d−NBVと称する)と、式(IB):
【0005】
【化3】

で表されるその[2R[2S*[S[S*]]]]エナンチオマー(以後、/−NBVと称する)の等量混合物である。
【0006】
ネビボロールは、β−アドレナリン遮断特性を特徴とし、本態性高血圧の治療に有用である。ネビボロールは塩基性であり、適切な酸で処理することによりその付加塩に変換される。ネビボロールの塩酸付加塩は市販されている。
【0007】
4個の不斉炭素原子により16種の立体異性体の混合物(非対称置換の場合)又は10種の立体異性体の混合物(対称置換の場合)が生じるため、α,α’−[イミノ−ビス(メチレン)]ビス[クロマン−2−メタノール]という分子構造体の合成は当業者にとって難しいことが当技術分野で知られている。ネビボロール構造は対称性を有することから明らかなように、計10種の立体異性体が生成され得る。
【0008】
ネビボロール調製のためのプロセス数例が文献に報告されている。
特許文献1(ヤンセンファーマ、NV)は、次の合成スキームに従う、クロマンエポキシド誘導体のジアステレオ異性体の混合物の合成を含むNBVの調製法を開示している。
【0009】
【化4】

【0010】
6−フルオロクロマンカルボン酸エチルエステルは対応する酸のエステル化により誘導され、ジヒドロビス−(2−メトキシエトキシ)アルミン酸ナトリウムにより第一級アルコールに還元される。この生成物は塩化オキサリル、続いてトリエチルアミンと−60℃で反応し、対応するラセミアルデヒドを生じる。ラセミアルデヒドは次いで(R,S)、(S,R)、(R,R)及び(S,S)立体異性体の混合物としてのエポキシドに変換される。この立体異性体混合物は次いでクロマトグラフィーにより二種のラセミ混合物(R,S)−、(S,R)−エポキシド(混合物A)と(S,S)−、(R,R)−エポキシド(混合物B)にそれぞれ分割される。
該エポキシド誘導体はこのプロセスにおける重要な中間体である。
【0011】
特許文献2(ヤンセンファーマ、NV)は主に前記特許文献に報告される合成プロセスと同様のプロセスを開示し、特にNBVの単一光学異性体(R,S,S,S)及び(S,R,R,R)の調製に関する。
【0012】
この場合、6−フルオロクロマンカルボン酸は、(+)−デヒドロアビエチルアミンで処理することにより個々の単一エナンチオマーに分割される。該単一エナンチオマーは、それぞれ対応するエポキシドに変換され、2種のジアステレオ異性体の混合物を生じる。次の合成スキームは、例えばS酸誘導体の変換を示す。
【0013】
【化5】

【0014】
本願出願人による同時係属出願(特許文献3)は、6−フルオロクロマンエポキシド合成の改良合成法を開示し、この方法は、アルキル又はアリール6−フルオロ−3,4−ジヒドロ−2H−クロメン−2−カルボキシレートからスルホキソニウムイリドを経て2−ハロ−1−(6−フルオロ−3,4−ジヒドロ−2H−クロメン−2−イル)エタノン(以後、α−ハロケトンと称す)へ変換することと、該α−ハロケトンを還元して対応する2−ハロ−1−(6−フルオロ−3,4−ジヒドロ−2H−クロメン−2−イル)エタノール(以後、ハロヒドリンと称す)を得ることと、塩基の存在下に環化して対応するエポキシド誘導体をそれぞれ4種の立体異性体(R,S)、(S,R)、(R,R)、(S,S)として得ることとを含む。
【0015】
還元反応は公知の技法に従って行われる。
具体的には、該α−ハロケトン中間体はアルコール性溶媒の存在下、水素化ホウ素ナトリウムにより還元される。アルコール性溶媒としては、エタノール(水性混合物であってもよい)が好ましい。
【0016】
特許文献4及び5(シメックスファーマAG及びチューリッヒ大学)はラセミ体及び純粋なエナンチオマーとしてのNBVの他の調製プロセスを開示している。
【0017】
このプロセスはとりわけ、少なくとも95%のRS/SR又はRR/SS立体配置を有するジアステレオ異性的に純粋な次式:
【0018】
【化6】

(式中、PGは水素又はアミン保護基を表わす)で表わされる化合物を提供することを狙いとする。
【0019】
式VIIIで表わされる化合物の提供は、次式:
【0020】
【化7】

(式中、LGは塩素原子又は臭素原子を表わす)で表わされるラセミ化合物を調製することと、式Vで表わされるラセミ化合物を溶媒中、必要に応じてルイス酸の存在下、還元して、次式:
【0021】
【化8】

で表わされる化合物のジアステレオ異性体混合物を得ることと、
次式:
【0022】
【化9】

で表わされる化合物のジアステレオ異性体混合物を生成することと、式VIIで表わされる化合物のジアステレオ異性体をNH2PGと反応させて式VIIIで表わされる化合物をジアステレオ異性体混合物として得ることと、前記ジアステレオ異性体混合物から式VIIIで表わされる化合物のジアステレオ異性体を分別結晶(必要に応じ、塩を生成した後)にて光学分割することとを含む。
【0023】
該プロセスにおいて、式Vの中間体を還元して、sin(RR/SS)又はanti(RS/SR)配置を有する二種の可能なラセミ混合物の形態の式VIで表わされる化合物を得る方法が数種記載されている。
【0024】
特に、NBVの調製に有用なラセミ混合物を得ることを目的として、一連の還元剤、触媒、溶媒及び反応条件が試験されている(特許文献4、表2、p.33〜37参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0025】
【特許文献1】欧州特許第145067号明細書
【特許文献2】欧州特許第334429号明細書
【特許文献3】国際公開2007/008549号
【特許文献4】欧州特許第1803715号明細書
【特許文献5】欧州特許第1803716号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0026】
しかしながら、これまでに試みられた還元においては、RS/SR配置に対するRR/SS配置の比が異なるラセミ混合物が得られた。
【0027】
高ジアステレオ異性体過剰をもたらすジアステレオ選択的還元によりクロマトグラフィー分離を回避できるという仮説が成立しないことにより、本願は、クロマンエポキシドVIIを経由して、合成の継続に有用な立体異性体混合物が分別結晶により得られるであろう式VIIIで表わされる化合物に変換される式VIで表わされる化合物の混合物を提供する。
【0028】
晶析後、望まない立体異性体対が約5%存在することは注目に値する。
当業界において、NBVの調製における6−フルオロ−クロマンエポキシド化合物の基本的な役割は知られている。
活性成分の特異的な立体化学に注目すると、有用なラセミ混合物の形態或いは関連する単一の立体異性体の形態の該エポキシドの役割は、非常に重要である。
【0029】
従って、従来技術により開示されるプロセスが示す問題点を克服することができる、該中間体調製の他の方法が研究されることが望まれている。
【発明を実施するための形態】
【0030】
驚くべきことに本発明者らは、NBVの調製に有用なラセミ混合物の形態の6−フルオロ−クロマンエポキシドの簡便且つ効果的な合成であって、(+)−又は(−)−B−クロロジイソピノカンフェイルボランを還元剤として使用することによる公知のα−ハロケトン誘導体の立体選択的還元を経由する合成を見出した。
【0031】
従って、本発明の第一の目的は、次式:
【0032】
【化10】

(式中、Xはハロゲン、ヒドロキシ基、アルキルスルホニルオキシ基又はアリールスルホニルオキシ基を表わす)で表わされる化合物を還元して、次式:
【0033】
【化11】

で表わされる化合物をRS/SR配置のジアステレオ異性的に純粋な化合物として得るプロセスであって、前記還元を(+)−B−クロロジイソピノカンフェイルボラン又は(−)−B−クロロジイソピノカンフェイルボランを使用して行うことを特徴とするプロセスである。
【0034】
式Iで表わされる化合物は公知の技法、特に同時係属出願(特許文献3)及び特許出願(特許文献4、5)に記載のプロセスによって調製することができる。
(+)−B−クロロジイソピノカンフェイルボランは、通常(+)−DIP−Chloride(登録商標)として、固体商品として入手可能な公知の還元剤である。
(−)−B−クロロジイソピノカンフェイルボランも、通常(−)−DIP−Chloride(登録商標)として、固体又は溶液の商品として入手可能な公知の還元剤である。
【0035】
オルガノボラン等の還元剤、特に本発明の目的に適う特定の還元剤の使用によるケトン基の還元は当業界において知られている。
【0036】
通常、式IIで表わされる化合物を得る、式Iで表わされる化合物と(+)−又は(−)−DIP−Chloride(登録商標)との反応は、一種以上の有機溶媒(混和物であってもよい)の存在下で行われる。
【0037】
本発明の目的である還元は、大量規模で行うこともできる。
本発明の目的である還元に適切な溶媒は不活性な有機溶媒で、例としてはベンゼン、キシレン、トルエン、ヘキサン、シクロヘキサン、ヘプタン、オクタン等の炭化水素; メチレンクロリド、エチレンジクロリド、四塩化炭素等の塩素化炭化水素; アセトニトリル、ベンゾニトリル等のニトリル類;ジメチルスルホキシド、ジメチルホルムアミド等の非プロトン性双極性溶媒;ジオキサン、テトラヒドロフラン等の環状エーテル;エチルエーテル、メチル-tert-ブチルエーテル等の鎖状エーテル; 及びこれらの混合物が挙げられる。
【0038】
溶媒としては、メチル-tert-ブチルエーテル、テトラヒドロフラン、ヘプタン、ヘキサン、トルエン及びこれらの混合物が好ましい。
これら溶媒のうち、トルエンが更に好ましい。
【0039】
通常、式IIで表わされる化合物を得る、式Iで表わされる化合物と(+)−又は(−)−DIP−Chloride(登録商標)との反応は、−78℃〜100℃の間の温度で行われる。
好ましくは、この還元は−25℃〜25℃の間の温度で行われる。
より好ましくは、この還元は約0℃で行われる。
【0040】
本発明の一態様においては、式Iで表わされる化合物と本発明の目的に適う還元剤との反応で得られる混合物は、通常の技法に従ってボラナート錯体(complex boranate)を副生し得る誘導体を添加することにより中和することができる。
【0041】
通常、エタノールアミンを用いて、生成するジエタノールアミン‐ホウ素結晶性錯体を濾過して除去する。
本発明の目的である還元において、還元剤と基質とのモル比は通常1以上である。
好ましくは、本発明の目的である還元は、(+)−B−クロロジイソピノカンフェイルボランを用いて行う。
【0042】
本発明の一態様においては、式Iで表わされる化合物の適切な溶媒での溶液を、還元剤、好ましくは(+)−B−クロロジイソピノカンフェイルボランの−78℃〜100℃の間の温度に保持した適切な溶媒の溶液に添加することにより反応を行う。
【0043】
本発明の好適な一態様においては、式Iで表わされる化合物を−25℃〜25℃の間の温度で還元剤に添加する。
好ましくは、式Iで表わされる化合物を約0℃において還元剤に添加する。
【0044】
本発明の他の目的は、次式:
【0045】
【化12】

で表わされる化合物をRR/SS配置のジアステレオ異性的に純粋な化合物として調製するプロセスであって、前述の還元プロセスを含むプロセスである。
【0046】
本発明の他の目的は、次式:
【0047】
【化13】

で表わされる前述の化合物を調製するプロセスにおいて、更に式IIで表わされる化合物と塩基との反応で式IIIで表わされるエポキシド化合物を得ることを含むプロセスである。
【0048】
式IIIで表わされる化合物を与える式IIで表わされる化合物の反応は、公知の技法に従って行う。
【0049】
本発明の一態様においては、式IIIで表わされるエポキシド化合物を与える式IIで表わされる化合物の環化は、前述の同時係属出願(特許文献3)のごとく行う。
【0050】
一般に、環化は式IIで表わされる化合物をアルコール溶媒又はエーテル(混和物であってもよい)の存在下、アルコキシド又はアルカリヒドロキシドと反応させて行う。
【0051】
本発明の好適な一態様に従えば、この反応はイソプロパノール/THF混合物の存在下、カリウムt−ブトキシド等の塩基と共に行う。
或いは、この反応はイソプロパノールの存在下、水酸化ナトリウム等の塩基と共に行う。
反応温度は通常−25℃〜100℃である。
この環化反応は約0℃で行うことが好ましい。
【0052】
本発明においては、「ハロゲン」とはフッ素、塩素、臭素及びヨウ素の各原子を意味する。
アルキルスルホネートやアリールスルホネート等の適切な脱離基は、当業者に知られている。
Xはハロゲン、ヒドロキシ基又はメシレートやトシレート等の適切な脱離基であることが好ましい。
Xはヒドロキシ基であることがより好ましい。
Xは塩素原子であることがより好ましい。
【0053】
本発明においては、「式IIで表わされる化合物をRS/SR配置のジアステレオ異性的に純粋な化合物として得る」という表現は、RS配置及びSR配置の光学異性体、即ちエナンチオマー(S)−2−クロロ−1−((R)−6−フルオロ−3,4−ジヒドロ−2H−クロメン−2−イル)−エタノール及びエナンチオマー(R)−2−クロロ−1−((S)−6−フルオロ−3,4−ジヒドロ−2H−クロメン−2−イル)−エタノールの実質的に純粋な混合物として得られた化合物を意味する。
【0054】
本発明においては、「式IIIで表わされる化合物をRR/SS配置のジアステレオ異性的に純粋な化合物として得る」という表現は、RR配置及びSS配置の光学異性体、即ちエナンチオマー(R)−6−フルオロ−3,4−ジヒドロ((R)−オキシラン−2−イル)−2H−クロメン及びエナンチオマー(S)−6−フルオロ−3,4−ジヒドロ((S)−オキシラン−2−イル)−2H−クロメンの実質的に純粋な混合物として得られた化合物を意味する。
【0055】
本発明の目的からすれば、先に定義した式II及び/又は式IIIで表わされる化合物のラセミ混合物を適切に処理するとNBV最終製品を調製でき、このラセミ混合物を得ることが好ましいということは非常に明白である。
よく知られているように、該部分分割エポキシド誘導体はNBV調製プロセスの重要な中間体である。
【0056】
本発明の他の目的は、次式:
【0057】
【化14】

(式中、Xは先の定義と同様)で表わされる化合物を還元することを含む、ネビボロールの合成プロセスであって、次式:
【0058】
【化15】

で表わされる化合物を上述のRR/SS配置のジアステレオ異性的に純粋な化合物として得るプロセスである。
【0059】
本発明の目的であるプロセスは、市場から容易に入手できる試薬の使用を含む。
DIP−Chloride(登録商標)はよく知られたキラル試薬ではあるが、通常プロキラルケトン性基質の不斉還元やエナンチオ選択的還元に使用される。
【0060】
従って、まず驚くべきことに、本発明に係る還元反応において(+)−及び(−)−Dip−Chloride(登録商標)が共に、高ジアステレオ異性体過剰(RS/SR、約99%de(ハロヒドリンレベル)及びRR/SS、約98%de、クロマンエポキシドの環化後))、更に低エナンチオマー過剰を特徴とする生成物を提供することができる優れたジアステレオ選択的還元剤であることが判明したことは、注目に値する。
【0061】
更に、本発明のプロセスと最も関連し得る発明の態様は、NBVのラセミ混合物の調製プロセスに有用な光学的配置を有する中間体のクロマトグラフィーによる単離を回避する可能性があることに疑う余地はない。
【0062】
従って、本発明の目的である還元方法が、活性成分であるNBVの調製における重要な中間体の調製において効果的且つ経済的な代替合成法を構成することは非常に明らかである。
【0063】
本発明の他の目的は、ネビボロールの調製における有用な中間体としての次の化合物、(S*)−2−クロロ−1−((R*)−6−フルオロ−3,4−ジヒドロ−2H−クロメン−2−イル)−エタノール(ジアステレオ異性体過剰:99%以上)及び(R*)−6−フルオロ−3,4−ジヒドロ((R*)−オキシラン−2−イル)−2H−クロメン(ジアステレオ異性体過剰:98%以上)である。
【0064】
本発明の他の目的は、上述の式Iで表わされる化合物の還元プロセスであって、式IIで表わされる化合物、(S*)−2−クロロ−1−((R*)−6−フルオロ−3,4−ジヒドロ−2H−クロメン−2−イル)−エタノールをジアステレオ異性体過剰99%以上で得ることを特徴とするプロセスである。
【0065】
本発明の更なる目的は、上述の式IIIで表わされる化合物の調製プロセスであって、該式IIIで表わされる化合物、(R*)−6−フルオロ−3,4−ジヒドロ−2−((R*)−オキシラン−2−イル)−2H−クロメンをジアステレオ異性体過剰98%以上で得ることを特徴とするプロセスである。
【0066】
本発明の更に他の目的は、(+)−又は(−)−DIP−Chloride(登録商標)のNBV調製における使用である。
【0067】
本発明の目的のプロセスの一実施形態は、式Iで表わされるラセミα−ハロケトンを(+)−又は(−)−Dip−Chloride(登録商標)を用いて式IIで表わされるハロヒドリンに還元することと、塩基の存在下、式IIIで表わされるエポキシド誘導体に環化することとを含む。
【0068】
本発明の目的のプロセスの好適な一実施形態は、式Iで表わされるラセミα−クロロケトンを、有機溶媒、好ましくは芳香族炭化水素の存在下、(+)−Dip−Chloride(登録商標)と−25℃〜25℃の間の温度、好ましくは約0℃において反応させ、式IIで表わされるクロロヒドリンに還元することと、混和物であってもよいアルコール溶媒又はエーテルの存在下、アルコキシド又はアルカリヒドロキシドとの反応で式IIIで表わされるエポキシド誘導体に環化することとを含む。
【実施例】
【0069】
以下、本発明を実施例により詳細に説明する。
【0070】
[実施例1](S*)−2−クロロ−1−((R*)−6−フルオロ−3,4−ジヒドロ−2H−クロメン−2−イル)−エタノールの合成
(+)−B−クロロジイソピノカンフェイルボラン[(+)−DIP−クロライド(登録商標)](2.10g、6.55mmol)のトルエン溶液(7mL)を窒素雰囲気下で0℃に冷却し、磁気攪拌下、2−クロロ−1−(6−フルオロ−3,4−ジヒドロ−2H−クロメン−2−イル)エタノン(1.0g、4.373mmol)のトルエン溶液(3mL)を3時間かけて添加した。添加終了後、この混合物を0℃で更に20時間攪拌した。反応混合物にアセトン(0.5g)を加えた後、10%w/w炭酸ナトリウム水溶液(5mL)を加え、更に脱塩水(demi water)(5mL)を加えた。添加終了後、反応混合物を20℃に加熱し、分液漏斗に移した。この混合物を脱塩水(5mL)とトルエン(5mL)で希釈し、分相した。次いで有機層を更に脱塩水(15mL)で洗浄し、真空濃縮乾燥して、未精製の(S*)−2−クロロ−1−((R*)−6−フルオロ−3,4−ジヒドロ−2H−クロメン−2−イル)−エタノール(99%de、GC)を得た。かかる生成物を溶離液としてトルエン:エチルアセテート=9:1を用いるシリカゲルカラムクロマトグラフィーにより精製した。分離後、(S*)−2−クロロ−1−((R*)−6−フルオロ−3,4−ジヒドロ−2H−クロメン−2−イル)−エタノールを無色の油状物として単離した(0.64g、63%)。
【0071】
Diast. (SR,RS): δH (400 MHz; CDCl3) 6.83-6.73 (3H, m), 4.21-4.16 (1H, m), 3.94-3.88 (1H, m), 3.83-3.77 (1H, m), 3.74-3.68 (1H, m), 2.97-2.75 (2H, m), 2.45-2.33 (1H, -OH, b), 2.02-1.96 (2H, m);
m/z (EI) 230.050989 (M+. C11H12ClFO2 理論値 230.05067).
【0072】
[実施例2](S*)−2−クロロ−1−((R*)−6−フルオロ−3,4−ジヒドロ−2H−クロメン−2−イル)−エタノールの合成
(−)−B−クロロジイソピノカンフェイルボラン[(−)−DIP−クロライド(登録商標)](2.10g、6.55mmol)のトルエン溶液(7mL)を窒素雰囲気下で0℃に冷却し、磁気攪拌下、2−クロロ−1−(6−フルオロ−3,4−ジヒドロ−2H−クロメン−2−イル)エタノン(1.0g、4.373mmol)のトルエン溶液(3mL)を3時間かけて添加した。添加終了後、この混合物を0℃で更に20時間攪拌した。反応混合物にアセトン(0.5g)を加えた後、10%w/w炭酸ナトリウム水溶液(5mL)を加え、次いで更に脱塩水(5mL)を添加した。添加終了後、反応混合物を20℃に加熱し、分液漏斗に移した。この混合物を脱塩水(5mL)とトルエン(5mL)で希釈し、分相した。次いで有機層を更に脱塩水(15mL)で洗浄し、真空濃縮乾燥し、未精製の(S*)−2−クロロ−1−((R*)−6−フルオロ−3,4−ジヒドロ−2H−クロメン−2−イル)−エタノール(98%de、GC)を得た。かかる生成物を溶離液としてトルエン:エチルアセテート=9.5:0.5を用いるシリカゲルカラムクロマトグラフィーにより精製した。分離後、(S*)−2−クロロ−1−((R*)−6−フルオロ−3,4−ジヒドロ−2H−クロメン−2−イル)−エタノールを無色の油状物として単離した(0.31g、31%)。
【0073】
Diast. (SR,RS): δH (400 MHz; CDCl3) 6.83-6.73 (3H, m), 4.21-4.16 (1H, m), 3.94-3.88 (1H, m), 3.83-3.77 (1H, m), 3.74-3.68 (1H, m), 2.97-2.75 (2H, m), 2.45-2.33 (1H, -OH, b), 2.02-1.96 (2H, m);
m/z (EI) 230.050989 (M+. C11H12ClFO2 理論値 230.05067).
【0074】
[実施例3](R*)−6−フルオロ−3,4−ジヒドロ−2−((R*)−オキシラン−2−イル)−2H−クロメンの合成
実施例1で得られた化合物(S*)−2−クロロ−1−((R*)−6−フルオロ−3,4−ジヒドロ−2H−クロメン−2−イル)−エタノール(320mg、1.387mmol)を窒素雰囲気下でi−PrOH(2mL)に溶解し、反応混合物を0℃に冷却した。2Mの水酸化ナトリウム水溶液(1.39mL)を磁気攪拌下で10分かけて混合物に添加した。この混合物を0℃で2時間攪拌した後、トルエン(5mL)で希釈し、分液漏斗に移した。二相混合物を更にトルエン(5mL)と脱塩水(5mL)で希釈し、分相した。有機相を脱塩水(10mL)で洗浄し、真空濃縮して、(R*)−6−フルオロ−3,4−ジヒドロ((R*)−オキシラン−2−イル)−2H−クロメンを黄色の油状物として得た(200mg、74%、98%de、GC)。
【0075】
Diast. (RR,SS): δH (400 MHz; CDCl3) 6.81-6.72 (3H, m), 3.88-3.82 (1H, m), 3.21-3.17 (1H, m), 2.89-2.76 (4H, m), 2.1-2.00 (1H, m), 1.97-1.87 (1H, m).
【0076】
[実施例4](R*)−6−フルオロ−3,4−ジヒドロ−2−((R*)−オキシラン−2−イル)−2H−クロメンの合成
実施例2で得られた化合物(S*)−2−クロロ−1−((R*)−6−フルオロ−3,4−ジヒドロ−2H−クロメン−2−イル)−エタノール(200mg、0.867mmol)を窒素雰囲気下でi−PrOH(1.6g)に溶解し、反応混合物を0℃に冷却した。2Mの水酸化ナトリウム水溶液(0.9mL)を磁気攪拌下で10分かけて混合物に添加した。この混合物を0℃で1時間攪拌した後、トルエン(5mL)で希釈し、分液漏斗に移した。二相混合物を更にトルエン(5mL)と脱塩水(5mL)で希釈し、分相した。有機相を脱塩水(10mL)で洗浄し、真空濃縮して、(R*)−6−フルオロ−3,4−ジヒドロ((R*)−オキシラン−2−イル)−2H−クロメンを黄色の油状物として得た(110mg、87%、95%de、GC)。
【0077】
Diast. (RR,SS): δH (400 MHz; CDCl3) 6.81-6.72 (3H, m), 3.88-3.82 (1H, m), 3.21-3.17 (1H, m), 2.89-2.76 (4H, m), 2.1-2.00 (1H, m), 1.97-1.87 (1H, m).

【特許請求の範囲】
【請求項1】
次式(I):
【化1】

(式中、Xはハロゲン、ヒドロキシ基、アルキルスルホニルオキシ基又はアリールスルホニルオキシ基を表わす)で表される化合物を還元して、次式(II):
【化2】

で表わされる化合物をRS/SR配置のジアステレオ異性体的に純粋な化合物として得るプロセスであって、前記還元を(+)−B−クロロジイソピノカンフェイルボラン又は(−)−B−クロロジイソピノカンフェイルボランを使用して行うことを特徴とするプロセス。
【請求項2】
前記還元が、一種以上の有機溶媒の存在下で行われ、該溶媒は混和物であってもよい請求項1に記載のプロセス。
【請求項3】
前記還元が、トルエン中で行われる請求項2に記載のプロセス。
【請求項4】
前記還元が、−25℃〜25℃の温度で行われる請求項1に記載のプロセス。
【請求項5】
前記還元が、還元剤/基質モル比を1以上として行われ、請求項1に記載のプロセス。
【請求項6】
次式(III):
【化3】

で表わされる化合物をRR/SS配置のジアステレオ異性体的に純粋な化合物として調製するプロセスであって、請求項1に記載の還元プロセスを含むプロセス。
【請求項7】
更に、式(II)で表わされる化合物を塩基で環化して、式(III)で表わされる化合物と得ることを含む請求項6に記載のプロセス。
【請求項8】
前記環化を、混和物であってもよいアルコール溶媒又はエーテルの存在下、式(II)で表わされる化合物とアルコキシド又はアルカリヒドロキシドとを反応させることにより行う請求項7に記載のプロセス。
【請求項9】
請求項1に記載の還元プロセスを含むネビボロールの調製プロセス。
【請求項10】
前記還元を、(+)−B−クロロジイソピノカンフェイルボランを用いて行う先の請求項のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項11】
Xが、塩素原子又はヒドロキシ基である先の請求項のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項12】
99%以上のジアステレオ異性体過剰であることを特徴とする、式(S*)−2−クロロ−1−((R*)−6−フルオロ−3,4−ジヒドロ−2H−クロメン−2−yl)−エタノールで表される化合物。
【請求項13】
98%以上のジアステレオ異性体過剰であることを特徴とする、式(R*)−6−フルオロ−3,4−ジヒドロ((R*)−オキシラン−2−イル)−2H−クロメンで表される化合物。

【公表番号】特表2011−516418(P2011−516418A)
【公表日】平成23年5月26日(2011.5.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−501173(P2011−501173)
【出願日】平成21年3月16日(2009.3.16)
【国際出願番号】PCT/EP2009/053051
【国際公開番号】WO2009/121710
【国際公開日】平成21年10月8日(2009.10.8)
【出願人】(307041023)
【氏名又は名称原語表記】ZaCh System S.p.A.
【Fターム(参考)】