説明

ノイズ特性測定装置及びノイズ特性測定方法

【課題】撮像センサのノイズ特性を簡便に測定することができるノイズ特性測定装置及びノイズ特性測定方法を提供する。
【解決手段】平均・偏差演算回路23は、撮像センサ11を画素位置に基づき複数分割した画像領域ごとに該画像領域内の画素値の平均値及び分散度合いを表す値を演算する。領域選択回路24は、撮像センサの画素値の取り得る範囲を該画素値に基づき複数分割した領域に、演算された平均値を対応する分散度合いを表す値とともに分類する。レジスタ及び更新回路27は、分割された領域ごとに、演算された分散度合いを表す値がより小さくなるように該分散度合いを表す値を対応する平均値とともに更新する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、撮像センサのノイズ特性を測定するノイズ特性測定装置及びノイズ特性測定方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、撮像センサの画素値の増大化などの要因によって、撮像データのS/N比が悪化している。なお、画素値とは、撮像データに基づく撮像センサの各画素の特徴量であって、例えば濃度、明度、輝度、色差、強度等の値をいう。
【0003】
撮像データのノイズ要因にはさまざまなものがあるが、得られる画素値をPo、真の画素値をPt、ノイズをPnとすると、下式(1)のように表される。
Po=Pt+Pn (1)
ここで、ノイズPnの支配的なものは主に正規分布と見なせることが知られている。図7は、真の画素値Ptを基準とする画素値に応じたノイズPnの分布特性を示すものである。
【0004】
さて、式(1)におけるノイズPnの標準偏差σ(あるいはこれに準じた偏差又は分散)は、真の画素値Ptに依存しており、図8に示されるように、真の画素値Ptが大きくなるに従って標準偏差σ、即ちノイズPnも大きくなる特性を有する。
【0005】
例えばデジタルカメラに搭載される撮像センサにおいて、こうしたノイズ特性を測定するためには、測定者は、当該デジタルカメラ(試作機含む)を用いて、例えば図9に示したマクベスチャート91に代表される色見本などを撮影し、その撮像データのなかで画像として平坦な部分92を正方形に近い形で複数箇所について切り出して、それら切り出した箇所について画素値の平均値及び偏差値を求め、ノイズ特性を得るのが一般的である。
【特許文献1】特開昭63−253481号公報
【特許文献2】特開2003−85553号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、この手法では、上述した平坦な部分92を持つ被写体(色見本)を撮影しないと、求めるノイズ特性が得られず、必要な作業量も多く煩雑である。
また、こうした色見本の画像によらず、任意の画像を利用して画素値の大きさを反映したノイズ特性を撮影と同時に取得する手法はない。
【0007】
なお、例えば特許文献1には、ノイズ特性の測定に関し、画素値の平均値を決定する手段や画素値の分散を決定する手段を備えたものが提案されており、ガウスデータ雑音分散や画像雑音分散を決定することも併せて提案されている。
【0008】
また、特許文献2には、ノイズ特性の測定に関し、撮像センサを画素位置に基づき複数の小領域に分割するとともに、小領域ごとの画素値の平均値及び分散をそれぞれ出力する回路を備えたものが提案されており、これら平均値及び分散に基づく各種値を利用することが提案されている。
【0009】
本発明の目的は、撮像センサのノイズ特性を簡便に測定することができるノイズ特性測定装置及びノイズ特性測定方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記問題点を解決するために、請求項1に記載の発明は、撮像センサの画素値の取り得る範囲を該画素値に基づき複数分割した領域に、各画素の画素値を分類する分類手段と、前記分割された領域ごとに、該領域に分類された画素値の分散度合いを表す値を演算する演算手段とを備えたことを要旨とする。
【0011】
同構成によれば、前記分割された領域ごとに、該領域に分類された画素値の分散度合いを表す値が演算されることで、前記領域における画素値とその分散度合いを表す値との関係、即ち画素値の大きさを反映した撮像センサのノイズ特性を簡便に得ることができる。
【0012】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載のノイズ特性測定装置において、前記撮像センサを画素位置に基づき複数分割した画像領域ごとに該画像領域内の画素値の平均値を演算する平均値演算手段を備え、前記分類手段は、前記複数分割した領域に、前記演算された平均値を分類してなり、前記演算手段は、前記複数分割した画像領域ごとに該画像領域内の画素値の分散度合いを表す値を演算し、該画素値の分散度合いを表す値の前記平均値に基づき分類された各領域内の最小値を最終的な画素値の分散度合いを表す値として演算してなることを要旨とする。
【0013】
同構成によれば、前記分割された画像領域ごとに、該画像領域内の画素値の平均値及び分散度合いを表す値が演算され、該画素値の分散度合いを表す値の前記平均値に基づき分類された各領域内の最小値が最終的な画素値の分散度合いを表す値として演算される。これにより、前記画素値の分散度合いを表す値の前記平均値に基づき分類された各領域内の最小値、即ち最も平坦な画像領域の前記画素値の分散度合いを表す値が、これに対応する画素値の平均値とともに演算される。従って、最も平坦な画像領域において、画素値の平均値と分散度合いを表す値との関係、即ち画素値の大きさを反映した撮像センサのノイズ特性を簡便に得ることができる。
【0014】
請求項3に記載の発明は、請求項2に記載のノイズ特性測定装置において、前記撮像センサは、ベイヤ配列されてなり、前記平均値演算手段は、前記ベイヤ配列における同色画素の画素値の平均値を演算してなり、前記演算手段は、前記ベイヤ配列における同色画素の画素値の分散度合いを演算してなることを要旨とする。
【0015】
同構成によれば、前記撮像センサの前記ベイヤ配列における同色画素ごとに、画素値の平均値と分散度合いを表す値との関係、即ち画素値の大きさを反映した撮像センサのノイズ特性を得ることができる。
【0016】
請求項4に記載の発明は、請求項2又は3に記載のノイズ特性測定装置において、前記画像領域は、前記撮像センサの水平方向に並設された画素位置からなることを要旨とする。
【0017】
同構成によれば、前記平均値演算手段による前記画像領域内の画素値の平均値の演算等に際しては、前記撮像センサの画素値を表す信号の水平方向転送に併せて行うことができるため、例えば該撮像センサの画素値を垂直方向に複数ライン分だけ記憶・保持したりする必要がなく、ライン保持メモリを割愛するなど構造をより簡易化することができる。
【0018】
請求項5に記載の発明は、請求項2又は3に記載のノイズ特性測定装置において、前記画像領域は、前記撮像センサの水平方向及び垂直方向に並設された画素位置からなることを要旨とする。
【0019】
同構成によれば、前記平均値演算手段による前記画像領域内の画素値の平均値の演算等に際しては、前記撮像センサの水平方向及び垂直方向に並設された画素位置の画素値を利用できるため、より設定自由度の高い画像領域での平均値の演算等、ひいてはノイズ特性の測定を行うことができる。
【0020】
請求項6に記載の発明は、撮像センサを画素位置に基づき複数分割した画像領域ごとに該画像領域内の画素値の平均値を演算する平均値演算手段と、前記画像領域ごとに該画像領域内の画素値の分散度合いを表す値を演算する分散度合い演算手段と、前記撮像センサの画素値の取り得る範囲を該画素値に基づき複数分割した領域に、前記演算された平均値を対応する分散度合いを表す値とともに分類する分類手段と、前記分割された領域ごとに、前記演算された分散度合いを表す値がより小さくなるように該分散度合いを表す値を対応する平均値とともに更新する更新手段とを備えたことを要旨とする。
【0021】
請求項7に記載の発明は、請求項6に記載のノイズ特性測定装置において、前記分割された領域ごとの前記画素値の分散度合いを表す値の初期値は、該分散度合いを表す値の取り得る最大値であることを要旨とする。
【0022】
上記各構成によれば、前記分割された領域ごとに、前記演算された分散度合いを表す値がより小さくなるように該分散度合いを表す値が対応する平均値とともに更新されることで、最終的に画素値の分散度合いを表す値の最小値が対応する平均値とともに取得される。従って、前記分割された領域ごとに、前記画素値の分散度合いを表す値が最小値となる画像領域、即ち最も平坦な画像領域において、画素値の平均値と分散度合いを表す値との関係、即ち画素値の大きさを反映した撮像センサのノイズ特性を簡便に得ることができる。
【0023】
請求項8に記載の発明は、撮像センサを画素位置に基づき複数分割した画像領域ごとに該画像領域内の画素値の平均値を演算する平均値演算段階と、前記画像領域ごとに該画像領域内の画素値の分散度合いを表す値を演算する分散度合い演算段階と、前記撮像センサの画素値の取り得る範囲を該画素値に基づき複数分割した領域に、前記演算された平均値を対応する分散度合いを表す値とともに分類する分類段階と、前記分割された領域ごとに、前記演算された分散度合いを表す値がより小さくなるように該分散度合いを表す値を対応する平均値とともに更新する更新段階とを備えたことを要旨とする。
【0024】
同構成によれば、前記分割された領域ごとに、前記演算された分散度合いを表す値がより小さくなるように該分散度合いを表す値が対応する平均値とともに更新されることで、最終的に画素値の分散度合いを表す値の最小値が対応する平均値とともに取得される。従って、前記分割された領域ごとに、前記画素値の分散度合いを表す値が最小値となる画像領域、即ち最も平坦な画像領域において、画素値の平均値と分散度合いを表す値との関係、即ち画素値の大きさを反映した撮像センサのノイズ特性を簡便に得ることができる。
【発明の効果】
【0025】
本発明では、撮像センサのノイズ特性を簡便に測定することができるノイズ特性測定装置及びノイズ特性測定方法を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
以下、本発明をデジタルカメラに適用した一実施形態を図面に従って説明する。
図1は、デジタルカメラ10のシステム構成を示すブロック図である。同図に示すように、デジタルカメラ10は、撮像センサ11、検波部12、ノイズ測定回路13、信号処理部14、JPEG(Joint Photographic Experts Group)エンコード部15、外部メモリインターフェース16、SDRAM(Synchronous DRAM)17、CPU18及びCFやSDなどの携帯型メモリカードからなる外部記録媒体19を備えて構成される。
【0027】
撮像センサ11は、例えばCCDイメージセンサやCMOSイメージセンサからなり、水平方向及び垂直方向に平面状に配置された複数の画素を有する。撮像センサ11は、光学レンズ等を通じて被写体から入射した光をこれらの画素において電気信号に変換するとともに、該電気信号をA/D変換部(図示略)でデジタル信号に変換してなる撮像データを、前記検波部12を通じてSDRAM17に格納する。同時に、撮像センサ11は、この撮像データをノイズ測定回路13に出力する。
【0028】
なお、撮像センサ11は、水平方向のラインをなす一連の画素の電気信号を垂直方向に順次転送しつつ、垂直方向端部に転送された一連の画素の電気信号を水平方向に順次転送する態様で、画像全体の撮像データを形成・出力する。撮像センサ11を構成する複数の画素は、RGBのフィルタを介したいわゆるベイヤ配列となっており、前記撮像データは、ベイヤ配列のデータ(ベイヤデータ)として取得される。そして、撮像データを形成する各画素の特徴量である画素値は、RGBのいずれかと関連付けられて取得される。なお、検波部12は、撮像データを通じて画像全体から評価値を取得する。
【0029】
ノイズ測定回路13は、前記撮像センサ11からの撮像データを入力するとともに、該撮像データに基づきノイズ特性を測定する。
信号処理部14は、SDRAM17に格納された撮像データを入力するとともに、ベイヤ配列である撮像データを補間しYCbCr信号に変換する。この際、信号処理部14は、設定された画像処理パラメータに従って、ノイズリダクション、輪郭強調、色変換などのフィルタ処理や、画像の解像度変換などの各種処理を行う。そして、信号処理部14は、変換されたYCbCr信号をSDRAM17に格納する。
【0030】
JPEGエンコード部15は、SDRAM17に格納されたYCbCr信号を入力するとともに、該YCbCr信号をJPEGコードに変換してSDRAM17に格納する。
外部メモリインターフェース16は、前記外部記録媒体19に接続されており、SDRAM17に格納されたJPEGコードを入力するとともに、該JPEGコードを外部記録媒体19に出力する。
【0031】
CPU18は、検波部12、ノイズ測定回路13、信号処理部14、JPEGエンコード部15及び外部メモリインターフェース16とCPUバスを通じて電気的に接続されそれらの動作等を制御する。例えば、CPU18は、ノイズ測定回路13において測定されたノイズ特性をCPUバスを介して読み込むとともに、該ノイズ特性に基づいて前記信号処理部14における画像処理パラメータを決定し、更に該信号処理部14に当該画像処理パラメータを設定する。
【0032】
次に、ノイズ測定回路13の構成及び該ノイズ測定回路13によるノイズ測定態様について説明する。
図2は、ノイズ測定回路13の電気的構成を示すブロック図である。同図に示すように、ノイズ測定回路13は、前記撮像センサ11からの撮像データを入力するライン保持メモリ21、複数(3個)の遅延FF群22、平均・偏差演算回路23、領域選択回路24、平均・偏差選択回路25、偏差比較選択回路26、並びに、レジスタ及び更新回路27を備えて構成される。
【0033】
ライン保持メモリ21は、撮像センサ11から出力される現在の水平方向のラインの画素の画素値を入力するとともに、直前に入力した複数ライン(4ライン)分の画素の画素値を蓄え、更に複数ライン(3ライン)分の画素の画素値を対応する遅延FF群22にそれぞれ出力する。
【0034】
各遅延FF群22は、ライン保持メモリ21から入力した該当ラインの画素の画素値をそのFF(フリップフロップ)に複数サイクル分蓄えるとともに、注目するRGBの同色画素の画素値を平均・偏差演算回路23に出力する。
【0035】
ここで、ライン保持メモリ21が入力等する複数ラインと、遅延FF群22が出力する画素値に対応する画素との関係について図3に基づき説明する。同図において、ライン保持メモリ21が入力等する複数ライン(5ライン)をラインL1〜L5とする。このとき、各遅延FF群22が注目する同色画素がR(赤)の画素であって、前記ライン保持メモリ21がラインL1,L3,L5の画素の画素値を対応する遅延FF群22にそれぞれ出力するとすれば、各遅延FF群22は、対応するラインL1,L3,L5の画素の画素値を複数サイクル分蓄えるとともに、注目するRの複数(各4個、合計12個)の画素(図3において○を付した画素)の画素値を平均・偏差演算回路23に出力する。
【0036】
図3において、全遅延FF群22の出力に係る太線で囲んだ水平方向及び垂直方向に隣り合う画素の領域は、撮像センサ11を画素位置に基づき複数分割した画像領域DGを形成する。つまり、全遅延FF群22により、画像領域DG内の注目するRの画素の画素値が平均・偏差演算回路23に出力される。
【0037】
なお、ライン保持メモリ21が入力等する複数ライン及び各遅延FF群22が蓄える複数サイクル分の画素値を順次切り替えることで、複数の画像領域DGが順次形成されるとともに、各画像領域DGにおいて注目する同色画素の画素値が平均・偏差演算回路23に順次出力される。
【0038】
平均・偏差演算回路23は、各画像領域DGに対応する全遅延FF群22からの複数(12個)の同色画素の画素値を入力するとともに、これら画素値の平均値及び分散度合いを表す値としての平均偏差を演算する(平均値演算段階、分散度合い演算段階)。具体的には、各画像領域DGの同色画素の個数(標本数)をN(=12)として、その画素値のそれぞれをxj(j=1〜N)とすると、平均・偏差演算回路23は、これら画素値xj(j=1〜N)の平均値Mx及び平均偏差ADevxを下記の式(2)及び式(3)に従ってそれぞれ演算する。
【0039】
【数1】

【0040】
【数2】

そして、平均・偏差演算回路23は、平均値Mxを領域選択回路24及び偏差比較選択回路26に出力するとともに、平均偏差ADevxを偏差比較選択回路26に出力する。
【0041】
領域選択回路24は、平均・偏差演算回路23からの平均値Mxを入力するとともに、前記撮像センサ11の画素値の取り得る範囲を該画素値に基づき複数分割した領域のいずれに該平均値Mxが属するかを判定し(分類段階)、更に選択された領域を示す領域選択信号を平均・偏差選択回路25並びにレジスタ及び更新回路27に出力する。
【0042】
ここで、領域選択回路24の選択に係る領域について説明する。
図4は、前記撮像センサ11の画素値の取り得る範囲を該画素値に基づき複数分割した領域を示す説明図である。同図に示すように、撮像センサ11の画素値の取り得る範囲が「0」からその許容される所定の最大値までの範囲であるとして、これら「0」及び最大値の間に間隔をおいて「0」側から順番に設定された所定の画素値B1,B2,B3により、複数(4つ)に分割された領域D1〜D4が定義されている。従って、領域選択回路24は、前記平均値Mxに基づいて該平均値Mxが領域D1〜D4のいずれに属するかを判定する。
【0043】
レジスタ及び更新回路27は、演算された平均偏差ADevxの領域D1〜D4ごとの最小値mAD1〜mAD4をそれぞれ記憶する第1〜第4領域平均偏差格納レジスタRmAD1〜RmAD4及び対応する平均値mM1〜mM4をそれぞれ記憶する第1〜第4領域平均値格納レジスタRmM1〜RmM4を有する。平均・偏差選択回路25は、これら第1〜第4領域平均偏差格納レジスタRmAD1〜RmAD4及び第1〜第4領域平均値格納レジスタRmM1〜RmM4に接続されており、入力した領域選択信号が示す領域D1〜D4の最小値mAD1〜mAD4及び平均値mM1〜mM4を偏差比較選択回路26に出力する。
【0044】
偏差比較選択回路26は、平均・偏差演算回路23からの今回の平均偏差ADevx及び平均・偏差選択回路25からの前回までの最小値mAD1〜mAD4を比較し、小さい方の値及びこれと対をなす平均値をレジスタ及び更新回路27に出力する。これにより、レジスタ及び更新回路27は、これらの値を前記領域選択信号が示す領域D1〜D4の新たな最小値mAD1〜mAD4及び平均値mM1〜mM4として、第1〜第4領域平均偏差格納レジスタRmAD1〜RmAD4及び第1〜第4領域平均値格納レジスタRmM1〜RmM4を更新する(更新段階)。従って、第1〜第4領域平均偏差格納レジスタRmAD1〜RmAD4には、領域D1〜D4ごとに全画像領域DGにおいて最小となる平均偏差ADevxが最終的に記憶されるとともに、第1〜第4領域平均値格納レジスタRmM1〜RmM4には、対応する平均値Mxが最終的に記憶される。なお、最小値mAD1〜mAD4の初期値は、平均偏差ADevxとして取り得る最大の値に設定されている。
【0045】
図5は、撮像センサ11の全画像領域DGについて、レジスタ及び更新回路27による上述した領域D1〜D4ごとの平均偏差ADevx及び平均値Mxの更新態様を示す説明図である。同図に示すように、全画像領域DGについて、平均偏差ADevx及び平均値Mxの演算と選択された領域D1〜D4に対応するレジスタの更新を繰り返すことで、黒点にて図示するように、各領域D1〜D4において、常に最小となる平均偏差ADevx(最小値mAD1〜mAD4)及びこれと対をなす平均値Mx(平均値mM1〜mM4)に順次更新され、最終的に全画像領域DGにおいて最小となる、即ち最も平坦な画像領域DGの平均偏差ADevx及びこれと対をなす平均値Mx(黒点を丸で囲んで図示)が記憶される。図5に実線にて併せ示したように、これら最終的な平均偏差ADevx及び平均値Mxを、例えば最小自乗法などで近似した直線は、画素値に対する平均偏差ADevxの関係、即ち画素値に対するノイズ特性を表すことが確認される。つまり、ノイズ測定回路13は、これら最終的な平均偏差ADevx及び平均値Mxを取得することで、ノイズ特性を測定する。なお、画素値に対するノイズ特性は、最終的な平均偏差ADevx及び平均値Mxを適宜の曲線で近似(例えば多項式近似、三角近似、指数近似、累乗近似、対数近似など)して取得してもよい。
【0046】
CPU18は、CPUバスを通じてこれら最終的な平均偏差ADevx及び平均値Mx、即ちノイズ測定回路13において測定されたノイズ特性を読み込むことで、前記信号処理部14の動作等を制御する。
【0047】
以上詳述したように、本実施形態によれば、以下に示す効果が得られるようになる。
(1)本実施形態では、分割された領域D1〜D4ごとに、平均偏差ADevxがより小さくなるように該平均偏差ADevxが対応する平均値Mxとともに更新されることで、最終的に平均偏差ADevxの最小値mAD1〜mAD4が対応する平均値mM1〜mM4とともに取得される。従って、前記分割された領域D1〜D4ごとに、平均偏差ADevxが最小値mAD1〜mAD4となる画像領域DG、即ち最も平坦な画像領域DGにおいて、画素値の平均値Mxと平均偏差ADevxとの関係、即ち画素値の大きさを反映した撮像センサ11のノイズ特性を簡便に得ることができる。
【0048】
そして、このノイズ特性に基づき、信号処理部14において高機能なノイズリダクションを行うことができる。
(2)本実施形態では、撮像センサ11のベイヤ配列における同色画素ごとに、画素値の平均値Mxと平均偏差ADevxとの関係、即ち画素値の大きさを反映した撮像センサ11のノイズ特性を得ることができる。
【0049】
(3)本実施形態では、画像領域DG内の画素値の平均値Mxの演算等に際しては、前記撮像センサ11の水平方向及び垂直方向に並設された画素位置の画素値を利用できるため、より設定自由度の高い画像領域DGでの平均値Mxの演算等、ひいてはノイズ特性の測定を行うことができる。
【0050】
(4)本実施形態では、最終製品としてのデジタルカメラ10において、その撮影と同時に撮像データのノイズ特性を得ることができるため、該ノイズ特性に応じた画像処理パラメータを前記信号処理部14において動的に設定することができ、常時最適な画像処理パラメータを適用することで、よりよい最終画像を得ることができる。
【0051】
(5)本実施形態では、デジタルカメラ10のファームウェア開発時において、煩雑な作業を経ることなく、簡便にノイズ特性を得ることができる。そして、例えばデジタルカメラ10の試作機を使用して、ISO感度、露光時間などの代表的な撮影条件ごとに上記ノイズ特性を測定しておくことで、撮影条件からおおよそのノイズ量を予測でき、各撮影条件における最適な画像処理パラメータをファームウェアによって選択することが可能になる。
【0052】
(6)また、デジタルカメラ10のハードウェア試作時においても、簡便にノイズ特性を得ることができるため、基板のレイアウト変更などノイズ対策に有効に活用することができる。例えばデジタルカメラ10の基板試作において、試作ハードウェア(ボード)を複数準備しておき、同一撮影条件で上記ノイズ特性を測定することで、基板のレイアウトの改善など、よりノイズの少ないデジタルカメラ10の開発に役立てることができる。
【0053】
なお、上記実施形態は以下のように変更してもよい。
・前記実施形態において、分散度合いを表す値として、下式(4)に従って演算される分散(不偏分散)を採用してもよい。
【0054】
【数3】

また、分散度合いを表す値として、下式(5)に従って演算される標準偏差を採用してもよい。
【0055】
【数4】

さらに、分散度合いを表す値として、式(3)(4)(5)の(N−1)に代えてNで除した平均偏差や分散(標本分散)、標準偏差を採用してもよい。さらにまた、各画像領域DG内の画素数(平均値Mxの演算時等のサンプル数)が一定であるならば、式(3)(4)(5)の(N−1)で除する前の値を採用してもよい。
【0056】
また、分散度合いを表す値として、標本値(xj)と平均値(Mx)との差を利用した適宜の値を利用してもよい。
・前記実施形態において、平均値Mxの演算等に係る画像領域DGの範囲設定は変更してもよい。この場合、画像領域DG内の画素数(平均値Mxの演算時等のサンプル数)を変更しないとすれば、該画像領域DGを水平方向(撮像データの出力方向)に長い形状に範囲設定することで、例えば正方形に近い形状に範囲設定する場合に比べてライン保持メモリの容量を削減することができる。
【0057】
・前記実施形態において、平均値Mxの演算等に係る画像領域DGの範囲設定は、図6に示したように、前記撮像センサ11の水平方向に並設された画素位置のみで行ってもよい。この場合、平均値Mxの演算等に際しては、前記撮像センサ11の画素値を表す信号の水平方向転送に併せて行うことができるため、例えば該撮像センサ11の画素値を垂直方向に複数ライン分だけ記憶・保持したりする必要がなく、ライン保持メモリを割愛するなど構造をより簡易化することができる。
【0058】
・前記実施形態において、平均値Mxの演算等に係る画像領域DG内の画素数(平均値Mxの演算時等のサンプル数)は変更してもよい。ただし、統計的な見地から、画素(同色画素)の個数は10個以上であることが好ましい。
【0059】
・前記実施形態においては、各画像領域DGの画素値の平均値Mxに基づき領域D1〜D4への分類を行った。これに対し、画像領域DGの有無に関わらず、画素値に基づき領域D1〜D4への分類をそのまま行ってもよい。この場合、分割された各領域D1〜D4において、該領域D1〜D4に属する全ての画素値に基づき分散度合いを表す値(平均偏差等)を演算する。このように変更しても、領域D1〜D4における画素値とその分散度合いを表す値との関係、即ち画素値の大きさを反映した撮像センサ11のノイズ特性を簡便に得ることができる。なお、撮像センサ11のノイズ特性に相関する画素値の大きさは、各領域D1〜D4に属する全ての画素値の平均値、該領域D1〜D4を区画する画素値の上限値若しくは下限値(0,B1,B2,B3,最大値)、又はこれら上限値及び下限値の中間値(平均値)などを採用すればよい。
【0060】
・前記実施形態において、画素値に基づく領域の分割数は変更してもよい。例えば8分割や16分割などを採用してもよい。
・前記実施形態において、撮像センサ11の画素ごとのYCbCr信号に基づいて分散度合いを表す値等を演算し、ノイズ特性を取得するようにしてもよい。
【0061】
・前記実施形態において、撮像センサ11は、RGBフィルタを割愛したモノクロのイメージセンサであってもよい。
・前記実施形態において、ノイズ特性の取得に係る画素値としては、例えば濃度、明度、輝度、色差、強度等の値を採用すればよい。
【0062】
・本発明は、イメージスキャナやファックスなど、撮像センサ11を備えたその他の画像記録装置(試作機を含む)に適用してもよい。あるいは、こうした画像記録装置において、よりノイズの少ないシステムを開発するための評価ボードに適用してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0063】
【図1】デジタルカメラのシステム構成を示すブロック図。
【図2】ノイズ測定回路の電気的構成を示すブロック図。
【図3】画像領域を示す説明図。
【図4】画素値に基づく領域を示す説明図。
【図5】領域ごとの平均偏差及び平均値の更新態様を示す説明図。
【図6】変形形態の画像領域を示す説明図。
【図7】ノイズの分布特性を示すグラフ。
【図8】画素値に対するノイズ特性を示すグラフ。
【図9】マクベスチャートを示す模式図。
【符号の説明】
【0064】
D1〜D4 領域
DG 画像領域
23 平均・偏差演算回路(演算手段、平均値演算手段、分散度合い演算手段)
24 領域選択回路(分類手段)
27 レジスタ及び更新回路(更新手段)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
撮像センサの画素値の取り得る範囲を該画素値に基づき複数分割した領域に、各画素の画素値を分類する分類手段と、
前記分割された領域ごとに、該領域に分類された画素値の分散度合いを表す値を演算する演算手段とを備えたことを特徴とするノイズ特性測定装置。
【請求項2】
請求項1に記載のノイズ特性測定装置において、
前記撮像センサを画素位置に基づき複数分割した画像領域ごとに該画像領域内の画素値の平均値を演算する平均値演算手段を備え、
前記分類手段は、前記複数分割した領域に、前記演算された平均値を分類してなり、
前記演算手段は、前記複数分割した画像領域ごとに該画像領域内の画素値の分散度合いを表す値を演算し、該画素値の分散度合いを表す値の前記平均値に基づき分類された各領域内の最小値を最終的な画素値の分散度合いを表す値として演算してなることを特徴とするノイズ特性測定装置。
【請求項3】
請求項2に記載のノイズ特性測定装置において、
前記撮像センサは、ベイヤ配列されてなり、
前記平均値演算手段は、前記ベイヤ配列における同色画素の画素値の平均値を演算してなり、
前記演算手段は、前記ベイヤ配列における同色画素の画素値の分散度合いを演算してなることを特徴とするノイズ特性測定装置。
【請求項4】
請求項2又は3に記載のノイズ特性測定装置において、
前記画像領域は、前記撮像センサの水平方向に並設された画素位置からなることを特徴とするノイズ特性測定装置。
【請求項5】
請求項2又は3に記載のノイズ特性測定装置において、
前記画像領域は、前記撮像センサの水平方向及び垂直方向に並設された画素位置からなることを特徴とするノイズ特性測定装置。
【請求項6】
撮像センサを画素位置に基づき複数分割した画像領域ごとに該画像領域内の画素値の平均値を演算する平均値演算手段と、
前記画像領域ごとに該画像領域内の画素値の分散度合いを表す値を演算する分散度合い演算手段と、
前記撮像センサの画素値の取り得る範囲を該画素値に基づき複数分割した領域に、前記演算された平均値を対応する分散度合いを表す値とともに分類する分類手段と、
前記分割された領域ごとに、前記演算された分散度合いを表す値がより小さくなるように該分散度合いを表す値を対応する平均値とともに更新する更新手段とを備えたことを特徴とするノイズ特性測定装置。
【請求項7】
請求項6に記載のノイズ特性測定装置において、
前記分割された領域ごとの前記画素値の分散度合いを表す値の初期値は、該分散度合いを表す値の取り得る最大値であることを特徴とするノイズ特性測定装置。
【請求項8】
撮像センサを画素位置に基づき複数分割した画像領域ごとに該画像領域内の画素値の平均値を演算する平均値演算段階と、
前記画像領域ごとに該画像領域内の画素値の分散度合いを表す値を演算する分散度合い演算段階と、
前記撮像センサの画素値の取り得る範囲を該画素値に基づき複数分割した領域に、前記演算された平均値を対応する分散度合いを表す値とともに分類する分類段階と、
前記分割された領域ごとに、前記演算された分散度合いを表す値がより小さくなるように該分散度合いを表す値を対応する平均値とともに更新する更新段階とを備えたことを特徴とするノイズ特性測定方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2008−205829(P2008−205829A)
【公開日】平成20年9月4日(2008.9.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−39706(P2007−39706)
【出願日】平成19年2月20日(2007.2.20)
【出願人】(000005223)富士通株式会社 (25,993)
【Fターム(参考)】