説明

ノイズ発生器及びこれを用いたCN比対ビット誤り率測定用装置

【課題】 外部に不要なノイズを放射しないノイズ発生器を、安価でかつ高寿命に構成する。
【解決手段】 ダイオード4のアノードを接地し、カソードを抵抗器6を介して接栓8に接続する。接栓8から直流電源が抵抗器6を介してダイオード4に供給される。ダイオード4で発生したノイズがコンデンサ10を介して接栓8に供給される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えばOFDM、64QAM、xPSK信号のようなデジタル信号の評価に使用するCN比対ビット誤り率測定に使用する装置と、この装置に使用するノイズ発生器に関する。
【背景技術】
【0002】
上述したデジタル信号の評価方法として、ビットエラーレート(BER)の測定がある。BERを測定したとき、エラー無しの結果がであることがある。この場合、その信号の品質が不明である。この場合、デジタル信号にノイズを加算して、CN比対BER特性を測定し、等価CN比や等価CN比劣化量を求めて、デジタル信号を評価する方法がある。CN比対BER特性を得るためには、デジタル信号にノイズを加える必要があり、ノイズ発生源が必要である。ノイズの発生源としては、高価な市販品を使用する必要があった。
【0003】
安価なノイズ発生装置としては、例えば特許文献1に開示されているようなものがあった。この特許文献1のノイズ発生器は、リレースイッチとリレーコイル、電源スイッチとを直列に直流電源に接続したものである。リレースイッチは、リレーコイルに電流が流れていないときに閉じており、リレーコイルに電流が流れたときに、開放される。電源スイッチを閉じることによって、リレーコイルに電流が流れ、リレースイッチが閉じられる。これによってリレーコイルへの電流が絶たれ、リレースイッチが閉じる。これに応動して、再びリレーコイルに電流が流れる。このようにリレースイッチが断続を繰り返す。これによってリレースイッチの接点間にアークが発生し、このアークによりノイズが発生する。
【0004】
【特許文献1】特開平8−204455号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、このノイズ発生器では、リレースイッチの断続によってノイズを発生させているので、リレースイッチの寿命が短い。また、リレースイッチの接点間のアークに発生に基づいてノイズを発生しているので、外部に不要なノイズを放射する可能性が高い。
【0006】
本発明は、安価で高寿命で外部に不要なノイズを放射しないノイズ発生器と、このノイズ発生器を用いたCN比対ビット誤り率測定用装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様のノイズ発生器は、ダイオードを含み、このダイオードのアノードとカソード間に直流電源が供給されている。このダイオードのアノードとカソードとに直流阻止手段を介して接栓が接続されている。なお、ダイオード及び接栓は、1つの筐体内に収容することが望ましい。
【0008】
この構成のノイズ発生器では、ダイオードに直流電源を供給したことにより、ダイオードが発生する熱雑音をノイズとして接栓に供給している。従って、機械的な部品を使用せずに、電気的部品のみで構成されているので、安価でかつ高寿命とすることができる。また、ダイオードで発生する熱雑音を用いているので、外部にノイズが放射されることもない。
【0009】
上記のノイズ発生器において、前記直流電源を前記接栓を介して外部電源供給装置から供給するように構成することもできる。この場合、ノイズ発生器自体が電源を備える必要がないので、小型軽量化することができ、このノイズ発生器の移動も容易に行える。
【0010】
上記のノイズ発生器において、前記直流電源を、当該ノイズ発生器が内蔵するバッテリーによって供給することもできる。このように構成すると、ノイズ発生器の使用場所の制約が無くなる。
【0011】
更に、前記接栓を介して外部直流電源装置からも直流電源を供給可能に構成することもできる。この場合、前記バッテリーと前記外部直流電源装置とを切り換えて、前記ダイオードに直流電源を供給する切換手段が設けられている。このように構成すると、ノイズ発生器の内部バッテリー及び外部電源装置のいずれによっても、ノイズ発生器を動作させることができるので、状況に応じた使用を行うことができる。
【0012】
上述した各ノイズ発生器のうちいずれかのノイズ発生器と、このノイズ発生器の接栓から供給されたノイズを増幅する利得可変ブースタと、このブースタの出力信号と被測定用デジタル信号とを混合して、ビットエラー測定装置に供給する混合手段とを、設けてCN比対ビット誤り率測定用装置とすることもできる。
【0013】
この構成では、ノイズ発生器からのノイズ信号をブースタによって増幅し、混合手段において被測定用デジタル信号と混合する。ブースタの利得を適切に調整することによって、混合手段からの出力信号を所望のCN比にして、ビットエラーレート測定装置に供給することができる。CN比対ビット誤り測定を、例えば共同受信システムのアンテナ出力端子、ヘッドエンド入力端子、同出力端子、伝送路の出力端子等において行うことがあるが、このような測定現場にはブースタが存在している確率が高く、このブースタを使用することによって所望のCN比を設定することができるので、ノイズのレベルの調整手段を別途用意する必要がなく、ビット誤り率測定装置に接続するだけでCN比対ビット誤り率を測定することができるCN比対ビット誤り率測定用装置を、測定現場で容易に構成することができる。
【0014】
更に、上記のノイズ発生器が、内蔵バッテリーのみで動作するものでない場合、ブースタを、電源装置を内蔵するものとすれば、この電源装置からノイズ発生器の接栓に直流電源を供給することができ、ノイズ発生器用の電源装置を別途設ける必要がない。
【発明の効果】
【0015】
以上のように、本発明によるノイズ発生器では、ダイオードに直流電源を供給したときに、ダイオード内で発生する熱雑音を用いてノイズを発生しているので、高寿命、安価、小型軽量化することができる。また、このノイズ発生器とブースタと混合器とを設けることによって、CN比対ビット誤り率測定用の装置を、測定現場で容易に構成することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
本発明の第1実施形態のノイズ発生器1は、図1に示すように小型のケース2を有している。このケース2は、例えば導電体製としてシールド効果を持つものとすることが望ましい。
【0017】
ケース2内には、ダイオード4が配置されている。ダイオード4のアノードは、基準電位、例えば接地電位に接続されている。ダイオード4のカソードは、電流制限用抵抗器6を介して接栓8の中心導体に接続されている。また、接栓の外部導体は接地電位に接続されている。また、抵抗器6に並列に、直流阻止手段、例えばコンデンサ10が接続さている。
【0018】
従って、接栓8の中心導体と外部導体との間に、外部から直流電源が供給されると、ダイオード4に抵抗器6を介して逆バイアス電圧が印加され、ダイオード4は、内部熱雑音を発生する。この内部熱雑音がコンデンサ10を介して接栓8に供給される。このようにノイズ発生器1は、外部から直流電源が供給されることによって、ノイズを発生する。
【0019】
このノイズ発生器1は全て電気部品によって構成されており、機械的部品は用いられていない。従って、高寿命である。また、ダイオード4の熱雑音に基づいてノイズを発生させているので、ノイズの発生によって外部に悪影響を与えることがない。また、ダイオード4、抵抗器6、接栓8及びコンデンサ10と僅かな部品によって構成されているので、小型化することができ、ケース2も小型のものを使用でき、携帯に便利である。
【0020】
例えば図2に示すように、このノイズ発生器1の接栓8をブースタ12の入力端子に伝送線路、例えば同軸ケーブル14を介して接続する。ブースタ12は、その利得を任意に可変することができるものである。また、ブースタ12は、内部に直流電源装置16を有し、これから同軸ケーブル14を介して接栓8に動作電源を供給する。従って、ブースタ12を動作させると、直流電源がノイズ発生器1に供給され、上述したようにノイズ発生器1が発生したノイズがブースタ12に供給される。ブースタ12は、このノイズを増幅して、混合手段、例えば混合器18に供給する。
【0021】
混合器18には、例えば共同受信システムのアンテナ出力端子、ヘッドエンド入力端子、ヘッドエンド出力端子、伝送線路出力端子いずれかからの被測定用デジタル信号、例えばOFDM、64QAM、xPSK信号が供給されている。従って、混合器18の出力には被測定用デジタル信号とノイズとの混合信号が出力される。ここで、ブースタ12の利得を適切に調整すると、混合器18の出力は、所望CN比の被測定用デジタル信号となる。これをビットエラーレート測定装置(図示せず)に供給して、ビットエラーレートを測定することによって、CN比対ビットエラーレート特性を測定することができる。CN比は、ブースタ12の利得を変更することによって異なる値にすることができ、異なるCN比ごとにビットエラーレートを測定することができる。
【0022】
このようにノイズ発生器1、ブースタ12及び混合器18によって、ビットエラーレート測定装置に混合器18の出力を供給することによって、CN比対ビット誤り率を測定可能とすると、CN比対ビット誤り率測定用の装置を構成することができる。この装置ではCN比を調整するために、汎用のブースタ12を使用しているので、CN比対ビット誤り率特性を測定しようとしている現場で容易にこの装置を構成することができる。更に、ブースタ12の内部直流電源装置16からノイズ発生器1に直流電源を供給しているので、ノイズ発生器1用に別途電源装置を用意する必要が無く、構成を更に簡略化することができる。
【0023】
本発明の第2実施形態のノイズ発生器1aは、図3に示すように、ケース2内にバッテリー20を有し、その負電極が接地電位に接続され、正電極が電流制限用抵抗器6を介してダイオード4のカソードに接続されている。ダイオード4のアノードは接地されている。ダイオード4のカソードはコンデンサ10を介して接栓8の中心導体に接続されている。
【0024】
この実施形態においても、第1実施形態のノイズ発生器1と同様にノイズを発生する。内蔵するバッテリー20によって駆動されるので、直流電源の供給の観点から設置場所が制約されることはない。
【0025】
このノイズ発生器1aを、図2に示したノイズ発生器1に代えて使用し、CN比対ビット誤り率測定用装置を構成することができる。但し、この場合には、ノイズ発生器1aがバッテリー20を内蔵しているので、ブースタ12の直流電源装置16から直流電源をノイズ発生器1aに供給する必要はない。
【0026】
第3実施形態のノイズ発生器1cを図4に示す。このノイズ発生器1cは、内蔵するバッテリー20から供給された直流電源、及び接栓8に外部から供給された直流電源のいずれによっても動作可能としたものである。
【0027】
即ち、接栓8の中心導体は、切換スイッチ22の接点22aに接続されている。切換スイッチ22の接点22bがバッテリー20の正電極に接続されている。切換スイッチ22の接触子22cがダイオード4のカソードに接続されている。無論、接栓8の外部導体、ダイオード4のアノード及びバッテリー20の負電極が接地されている。ダイオード4のカソードはコンデンサ10を介して接栓8の中心導体に接続されている。
【0028】
このノイズ発生器1cを、接栓8に外部から供給される直流電源で動作させる場合には、切換スイッチ22の接触子22cを接点22aに接触させるように切り換える。また、バッテリー20によって動作させる場合には、切換スイッチ22の接触子22cを接点22bに接触させるように切り換える。これによって内部及び外部いずれの電源によっても動作させることができる。
【0029】
このノイズ発生器1cを、図2に示すノイズ発生器1に代えて使用し、CN比対ビット誤り率測定用装置を構成することができる。但し、この場合には、ブースタ12の直流電源装置16から直流電源をノイズ発生器1cに供給して、ノイズ発生器1cを動作させることもできるし、或いはバッテリー20によって動作させることもできる。或いは、ブースタ12が直流電源装置を内蔵しない型のものであれば、バッテリー20によってノイズ発生器1cを動作させる。このように状況に応じて、バッテリーまたは外部電源いずれによってもノイズ発生器1cを動作させることができる。
【0030】
上記の各実施形態では、1つのダイオードのみを使用したが、複数のダイオードを直列または並列に接続して使用することもできる。また、ダイオードに逆バイアス電圧を印加した状態で内部雑音を発生させたが、ダイオードに順バイアス電圧を印加した状態で内部雑音を発生させてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】本発明の第1実施形態のノイズ発生器の回路図である。
【図2】図1のノイズ発生器を使用したCN比対ビット誤り率測定用装置のブロック図である。
【図3】本発明の第2実施形態のノイズ発生器の回路図である。
【図4】本発明の第3実施形態のノイズ発生器の回路図である。
【符号の説明】
【0032】
1 1a、1b 1c ノイズ発生器
2 ケース
4 ダイオード
8 接栓
12 ブースタ
18 混合器(混合手段)
20 バッテリー


【特許請求の範囲】
【請求項1】
アノードとカソード間に直流電源が供給されているダイオードと、
このダイオードのアノードとカソードとに直流阻止手段を介して接続されている接栓とを、
具備するノイズ発生器。
【請求項2】
請求項1記載のノイズ発生器において、前記直流電源が前記接栓を介して外部電源供給装置から供給されるノイズ発生器。
【請求項3】
請求項1記載のノイズ発生器において、前記直流電源が内蔵するバッテリーによって供給されるノイズ発生器。
【請求項4】
請求項3記載のノイズ発生器において、前記直流電源が、前記接栓を介して外部直流電源装置からも供給可能に構成され、前記バッテリーと前記外部直流電源装置とを切り換えて、前記ダイオードに直流電源を供給する切換手段が設けられているノイズ発生器。
【請求項5】
請求項1、2、3または4記載のノイズ発生器と、このノイズ発生器の前記接栓から供給されたノイズを増幅する利得可変ブースタと、このブースタの出力信号と被測定用デジタル変調信号とを混合して、ビットエラー測定装置に供給する混合手段とを、具備するCN比対ビット誤り率測定用装置。
【請求項6】
請求項2または4記載のノイズ発生器と、このノイズ発生器の接栓に接続された利得可変ブースタと、このブースタの出力信号と被測定用デジタル変調信号とを混合して、ビットエラー測定装置に供給する混合手段とを、具備し、前記ブースタは、前記外部電源装置を内蔵し、この外部電源装置から前記接栓に前記直流電源が供給されるCN比対ビット誤り率測定用装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2006−270337(P2006−270337A)
【公開日】平成18年10月5日(2006.10.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−83650(P2005−83650)
【出願日】平成17年3月23日(2005.3.23)
【出願人】(000109668)DXアンテナ株式会社 (394)
【Fターム(参考)】