説明

ノックアウト動物

【課題】ヘパラン硫酸の合成系に障害を有するノックアウトマウスを提供する。
【解決手段】ヘパラン硫酸の基本骨格中に存在するヘキソサミン残基の6位炭素原子に硫酸基を転移する活性を有する酵素をコードする特定な配列からなる塩基配列又はそれに90%以上の相同性を有する塩基配列からなる遺伝子を欠失させ、かかる遺伝子がコードするヘパラン硫酸の基本骨格中に存在するヘキソサミン残基の6位炭素原子に硫酸基を転移する活性を有するタンパク質の酵素活性の発現を抑制又は欠損させたノックアウトマウス。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ヘパリン・ヘパラン硫酸のヘキソサミン残基の6位炭素原子に硫酸基を転移する機能を有する酵素をノックアウトして得られるノックアウト動物に関する。
【背景技術】
【0002】
高等動物において、ヘパラン硫酸はヘパラン硫酸プロテオグリカンの形態で合成される。ヘパラン硫酸プロテオグリカンは細胞膜タンパク質、細胞外マトリックスタンパク質として広範に分布し、その糖鎖部分は細胞表面上で成長因子、細胞外マトリックス分子、接着分子などと分子間相互作用を示すことにより細胞間コミュニケーション、細胞-細胞外マトリックス間の情報伝達などの重要な生物現象の担い手となっている。
【0003】
ヘパラン硫酸6硫酸基転移酵素はヘパリン・ヘパラン硫酸の生合成においては必須の酵素であり、これまでにヒトでは4種類の同位酵素(HS6ST1、HS6ST2、HS6ST3、HS6ST2v、これらを総合してHS6STと記載する)が存在することが知られている(特許文献1及び特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平11−69983号公報
【特許文献2】特開平8−33483号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ヘパラン硫酸はヒトの様々な疾患や体調変化に関係しており、その作用メカニズムを解明することは、前記疾患等の治療法や治療薬の開発に必須である。そしてそれらの疾患等は、生体内の様々な組織、器官の相互作用によって顕在化することから、モデル動物を用いたin vivo系における検討が不可欠である。特に様々な同位酵素が存在するHS6STについては、それをコードする遺伝子の生体における機能の検討は不可欠であった。
【0006】
このため、HS6STに変異を導入し、ヘパラン硫酸の硫酸化度を変化させたときの効果を正確に判定することのできるモデル動物系の開発が強く望まれていた。またこのようなモデル動物は、ヘパラン硫酸が関係する各種疾患等に対する治療薬等の開発のための強力なツールとなるものと期待されていた。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者等は上記課題を解決するために鋭意検討した結果、HS6STのノックアウト動物を生産することに成功し、本発明に想到した。
【0008】
すなわち、本発明は、以下のとおりである。
(1) ヘパラン硫酸の基本骨格中に存在するヘキソサミン残基の6位炭素原子に硫酸基を転移する活性を有する酵素タンパク質をコードする遺伝子を欠失させ、前記遺伝子がコードするタンパク質の機能をもった前記酵素の発現を抑制又は欠損させたノックアウト非ヒト動物。
(2) 配列番号1、配列番号3、配列番号5、及び配列番号7いずれかに記載された塩基配列又はそれらに90%以上の相同性を有する塩基配列からなる遺伝子を欠失させ、かかる遺伝子がコードするタンパク質の酵素活性の発現を抑制又は欠損させたノックアウト非ヒト動物。
(3) 動物がマウスであることを特徴とする(1)又は(2)記載のノックアウト非ヒト動物。
(4) ヘパラン硫酸の基本骨格中に存在するヘキソサミン残基の6位炭素原子に硫酸基を転移する活性を有する酵素タンパク質をコードする遺伝子を欠損させ、「機能を持った前記酵素」の発現を抑制又は欠失させた胚幹細胞。
【発明の効果】
【0009】
本発明により、ヘパリン・ヘパラン硫酸の基本骨格におけるヘキソサミン残基の6位炭素原子に硫酸基を転移する働きを有する酵素(HS6ST)の発現が抑制又は欠失させたノックアウト非ヒト動物が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】HS6ST1を欠失させたノックアウトマウスを構築するための、ターゲッティングベクターの構築ストラテジーを示す図である。
【図2】HS6ST1を欠失させたノックアウトマウスにおける、HS6ST1遺伝子の発現の変異状態を確認するためのノザンブロッティングの像を示す図である。
【図3】HS6ST1を欠失させたノックアウトマウスのゲノムDNAにおける、HS6ST1遺伝子が破壊された状態を確認するためのサザンブロッティングの像を示す図である。
【図4】HS6ST1を欠失させたノックアウトマウスの成長過程における体重に起こる変化を示す図である。
【図5】HS6ST2を欠失させたノックアウトマウスを構築するための、ターゲッティングベクターの構築ストラテジーを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、発明を実施するための最良の形態により本発明を詳説する。
【0012】
本発明ノックアウト動物は、ヘパラン硫酸の基本骨格中に存在するヘキソサミン残基の6位炭素原子に硫酸基を転移する活性を有する酵素タンパク質をコードする遺伝子を欠失させ、前記遺伝子がコードするタンパク質の機能を持った前記酵素の発現を抑制又は欠損させたノックアウト非ヒト動物である。
【0013】
本発明ノックアウト動物における「ヘパラン硫酸の基本骨格」とは、ヘパリン、ヘパラン硫酸が有する基本骨格であり、具体的にはヘキスロン酸(L-イズロン酸又はD-グルクロン酸)残基とヘキソサミン(グルコサミン)残基とが、β1,4グリコシド結合で結合した二糖が、β1,4グリコシド結合で繰り返し結合した構造を指称する。かかる構造を以下「ヘパリン骨格」とも記載する。
【0014】
本発明ノックアウト動物は、かかるヘパリン骨格中のヘキソサミン残基の6位炭素原子に硫酸基を転移する酵素(すなわち、HS6ST)の遺伝子を欠失させ、かかる遺伝子がコードしていたHS6STの発現を抑制又は欠損させたノックアウト動物である。欠失させるHS6STは、HS6ST1(例えばマウスのHS6ST1遺伝子の塩基配列は配列番号1に記載された配列である)、HS6ST2(マウスのHS6ST2遺伝子の塩基配列は配列番号3に記載された配列である)、HS6ST3(マウスのHS6ST3遺伝子の塩基配列は配列番号5に記載された配列である)、及びHS6ST2v(ヒトのHS6ST2v遺伝子の塩基配列は配列番号7に記載された配列である)のいずれの遺伝子であっても良いが、好ましくはHS6ST1及びHS6ST2のいずれか一方又は双方であり、かかる遺伝子のいずれか一方を欠失させることが最も好ましい。なお、上述したHS6ST遺伝子の塩基配列は、上記で例示した動物以外においても同様に存在しているため、配列番号1、配列番号3、配列番号5、及び配列番号7と、各々アミノ酸の数で90%以上の相同性を有する配列からなる遺伝子を、ヒト以外の各々の動物で改変することで様々なノックアウト動物を調製することが可能である。
【0015】
本発明ノックアウト動物は、例えば「ジーンターゲティングの最新技術」(八木健編集 羊土社)、「ジーンターゲティング」(野田哲生監訳 メディカル・サイエンス・インターナショナル社)、Science 244:1288-1292, 1989などの記載に従って行うことができる。
【0016】
例えば、ノックアウトしたいHS6STの遺伝子(HS6ST1(配列番号1)、HS6ST2(配列番号3)、HS6ST3(配列番号5)又はHS6ST2v(配列番号7))の活性硫酸(PAPS)結合ドメインを含むexon(例えばHS6ST1の場合にはORF部分の最初のexon(図1参照)を含む断片、HS6ST2の場合にはORF部分の最初のexon(図5参照)を含む断片)を中心としたゲノム断片(約10kb)を挿入したターゲティングベクターを調製する。かかるターゲッティングベクターは、常法(例えば、Science 244:1288-1292, 1989)に準じて作製することができる。例えば、HS6ST遺伝子のゲノムDNAの一部をG418等の薬剤に耐性の遺伝子(例えば、ネオマイシン耐性遺伝子)に置換することにより、あるいは薬剤耐性遺伝子をHS6ST遺伝子のゲノムDNAの一部に挿入することで、HS6STゲノムDNAと相同な配列を両端に有する変異遺伝子を保有する組換えプラスミドDNA、すなわちターゲティングベクターを作製することができる。なお、細胞毒に対する耐性遺伝子には、その発現を制御するためのPGK1プロモーター等の配列およびポリアデニレーションシグナル等を連結することもできる。薬剤耐性遺伝子により置換、または挿入されるHS6ST遺伝子のゲノムDNA部位は、開始コドンや機能ドメインを含んだエクソン領域を含むゲノムDNA領域であることが好ましい。なお、目的の相同組換が起こらなかった場合に発現して選別を行うことのできる陰性マーカーである細胞毒に対する耐性遺伝子には、チミジンキナーゼ遺伝子、ジフテリア毒素A遺伝子などがあげられる。細胞毒に対する耐性遺伝子により置換、または挿入されるHS6ST遺伝子のゲノムDNA部位は、開始コドンや機能ドメインを含んだエクソン領域を含むゲノムDNA領域であることが好ましい。陰性マーカー遺伝子はゲノムDNAの外側に配置することが好ましい。
【0017】
次に、調製したターゲッティングベクターを分化全能性細胞(例えばES(embryonic stem)細胞にエレクトロポレーション法、リポソーム法、リン酸カルシウム法等の公知の方法により導入する(導入遺伝子の相同遺伝子組換え効率を勘案した場合、ES細胞への電気パルス法が好ましい)。ES細胞としては、マウス(Nature 292:154-156, 1981)、ラット(Dev. Biol. 163(1):288-292, 1994)、サル(Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 92(17):7844-7848, 1995)、ウサギ(Mol. Reprod. Dev. 45(4):439-443, 1996)などの動物由来のES細胞を使用することができる。従って本発明のHS6ST欠損動物は、これらの動物種を対象に作製することができる(特に遺伝子ノックアウト動物の作製に関して技術が整っているマウスが好ましい)。
【0018】
この様に遺伝子導入された各ES細胞のゲノムDNAを抽出し、サザンブロット分析やPCRアッセイ等により、染色体上に存在する野生型HS6ST遺伝子と、導入したHS6ST変異遺伝子断片との間で正しく相同遺伝子組換えが起こり、染色体上のHS6ST遺伝子に変異が導入された細胞を選択する。
【0019】
こうして得た変異遺伝子を持つES細胞を野生型動物の胚盤胞に注入し、つづいてこのキメラ胚を仮親の子宮に移植する。出生した動物を里親につけて飼育させた後、HS6ST変異遺伝子が生殖系細胞に入ったキメラ動物を選別する。選別は毛色の違いや、尾部先端からゲノムDNAを抽出し、サザンブロット分析やPCRアッセイ等により分析することによって行う。HS6ST変異遺伝子が生殖系細胞に入ったキメラ動物と野生型動物の交配により得られる子孫について、さらに尾部先端からの抽出ゲノムDNAを材料とした、サザンブロット分析やPCRアッセイ等を行い、HS6ST変異遺伝子が導入されたヘテロ接合体を同定する。さらにヘテロ接合体同士の交配により、HS6ST変異遺伝子に関してホモ接合体となった個体動物を得ることができる。作出されたHS6ST変異遺伝子を保有するヘテロ接合体、あるいはホモ接合体は生殖細胞および体細胞のすべてに安定的にHS6ST遺伝子変異を保有しており、交配等により、効率よくその変異を子孫動物に伝達することができる。
【0020】
このようにして作製されたHS6ST遺伝子に変異を有する本発明ノックアウト動物は、例えばHS6ST遺伝子産物を全く持たないホモ接合体の場合、HS6STが発現している領域においてヘパラン硫酸への硫酸基付加が低下するため、関連する各種疾患の発症メカニズムの解明や、同疾患治療用の薬剤スクリーニングのための最適のモデル動物となる。
【実施例1】
【0021】
<HS6ST1ノックアウトマウス>
1-1:ターゲッティングベクターの構築
マウスcDNAライブラリーより得られるHS6ST1のcDNA断片をプローブ(配列番号9)として、マウスゲノムDNAライブラリーbacteriophage mouse (strain 129/Sv) genomic library (Stratagene社製)をスクリーニングして、HS6ST1の翻訳開始部分およびPAPS結合領域を含む第一エキソン及びその両側のイントロン部分からなる約18kbのゲノムDNAを得た(図1)。Targeting vectorは図1に示すように第一エキソンにある制限酵素Eco47 III領域から第一イントロンにある制限酵素BamHI領域の0.7kbを欠損させこの部分にネオマイシン耐性遺伝子を挿入し短腕として欠損部位の5'側0.9kb, 長腕として欠損部位の3'側6kbのHS6ST1遺伝子を含むものを作成した。この全フラグメントをチミジンキナーゼ遺伝子(tk)を含むベクターへ常法に従ってクローン化して、目的のターゲッティングベクターを構築した。
1-2:ES細胞の樹立
上記のターゲッティングベクターを制限酵素Bbs Iで直鎖にした後、マウスE14のES細胞にGene Pulser II(商標名:バイオラッド社製)を用いてエレクトロポレーション法にて導入した。すなわち、上記ターゲッティングベクターを線状化したDNAをフェノール/クロロホルムで抽出後、エタノールで沈殿させ、遠心処理後、得られる沈殿を70%エタノールで洗浄して乾燥させた。この乾燥物をTE緩衝液(10 mmol/l Tris-HCl(pH8.0)/1mmol/l EDTA)を用いて60nmol/lの濃度に溶解し、プラスミド溶液とした。
【0022】
また、ES細胞はトリプシン処理とピペッティングによって単細胞として遊離させ、細胞数をカウント後、ES細胞をリン酸緩衝生理的食塩水(PBS(-))に2.5×107個/mlとなるように懸濁した。
【0023】
この細胞懸濁液0.4mlを前記プラスミド溶液100μlと混合した後、エレクトロポレーション用キュベットに移し、細胞に電気パルス(800V, 3μF)を加えた。室温で10分間放置した後、予めフィーダー細胞を播種した100mm径の培養皿6枚に3.3×106個の細胞を播種した。
【0024】
24時間後、抗生物質G418(200μg/ml)を培地に添加し、遺伝子導入されたES細胞の陽性選択を行なった。また、培養開始3日後さらにガングシクロビルを終濃度2μmol/lとなるように加えて、陰性選択を開始した。さらに培養開始9日目から顕微鏡下で培養中のES細胞を観察、400個のコロニーを採取した。単離した約400のクローンからゲノムDNAを抽出し、相同組換え体となったことを示すクローンを5'プライマー(SA5':配列番号10)及び3'プライマー(SA3':配列番号11)を用いてPCR法で1次スクリーニングした。さらに、8クローンについて各ゲノムDNAを抽出し、制限酵素Sph I消化物の750-bp フラグメント(SphI領域よりも5'側の領域)をプローブ(5'-outoprobe)としてサザンブロット分析を行い、染色体上に存在する野生型HS6ST1遺伝子と、導入した変異HS6ST1遺伝子断片の間で正しく相同遺伝子組換えが起こり、染色体上のHS6ST1遺伝子に変異が移ったことが確認できた細胞3クローン選択した。
1-3:ノックアウトマウスの作製
こうして得た相同組換えES細胞を、凝集法によってマウス(C57BL/6)の8細胞胚に組み込み、キメラマウスを調製した。得られたキメラマウスを(雄4匹)を雌C57BL/6マウスと交配させ、産まれた仔マウス(F1)の尾先端から抽出したDNAを後述のノーザンブロット分析法およびサザンハイブリダイジェーション法により検査して、ヘテロマウス(+/-)を選別した。そのヘテロマウスを交配させてホモ(-/-)のマウスを調製した。
1-4:ノーザンブロット分析
野生型(+/+)、ヘテロ(+/-)、ホモ(-/-)それぞれのマウス胴体から採取した poly Aを持つmRNAサンプル(各2μg)を0.7%アガロース電気泳動を行い、分離したRNAを常法にしたがってナイロン膜に転写した。その転写したナイロン膜を50% ホルムアミド/ 5×デンハルト液/5×SSPE/ドデシル硫酸ナトリウムを含む溶液(solution A) に浸し、42℃で2時間プレハイブリダイジェーションを行った後、32Pでラベルした下記プローブ(2×106cpm/ml)を添加して42℃で一晩ハイブリダイジェーションを行った。そのプローブにはHS6ST1のmRNAの翻訳領域中の298塩基断片(200-497NT)、HS2STmRNA翻訳領域の1056塩基断片(特開平11-69983に開示されたマウスのHS2ST塩基配列における1-1056NT)およびHS6ST2mRNA翻訳領域の1501塩基断片(1-1501NT)を用いた。それらのプローブに [a-32P]dCTP(2'-デオキシシチジン三リン酸)をReady-to-Go DNA labeling kit(アマシャムバイオサイエンス株式会社製) を用いてrandom oligonucleotide priming法によりラベルした。ハイブリダイズした膜は0.05%(w/v)ドデシル硫酸ナトリウム(SDS)を含む2×SSC(w/v)溶液で室温で2回洗浄し、さらに65℃で2回、0.1% (w/v)SDSを含む0.1×SSC(w/v)で洗浄した。膜上のmRNAにハイブリダイズしたラベル化したプローブの検出にはBAS-5000(富士フイルム株式会社製)を用いた(図2)。その結果、HS6ST2、HS2ST、およびコントロールのGAPDHのブロットには野生型、ヘテロ、ホモマウスに変化はないが、HS6ST1はヘテロ(+/-)マウスで野生型の約半分、ホモ(-/-)マウスでは全くHS6ST1のmRNAの発現がなかった。
1-5:サザンハイブリダイゼーション法によるHS6ST1変異遺伝子の同定
コロニーを形成したES細胞あるいは仔マウスの尾部先端からゲノムDNAを抽出して解析に用いた。当該DNAを制限酵素SphIで37℃条件下18時間消化した後、0.7%アガロースゲルで電気泳動を行い分離したDNA断片をナイロン膜に常法に従って転写した。ターゲッティングベクターのさらに5'側に含まれるSphI-Eco47III切断サイトに挟まれたDNA断片約0.75kbをプローブ(5'-outprobe)とした。プローブを常法に従って[32P]ラベルし、上記ナイロン膜上のDNA断片にハイブリダイズさせた。ナイロン膜は十分洗浄した後に、オートラジオグラフィーによって生じたバンドを検出した(図3)。
【0025】
その結果、SphIで切断したDNA断片では野生型で3.9kbのバンドが観察され、ヘテロタイプ(+/-)では3.9kbのバンドに加え、2.4kbのバンドが観察され、ホモタイプ(-/-)では2.4kbのバンドのみが観察された。この結果からも、得られた組換体は目的の通りHS6ST1染色体遺伝子の位置にターゲッティングベクターが組み込まれたことを示された。
1-6:HS6ST1ノックアウトマウスの解析
雄雌ヘテロ(+/-)マウス同士の交配により、出生後24時間における仔マウス133匹の遺伝子型を調べたところ、野生型(+/+)およびヘテロ(+/-)マウスはほぼメンデルの法則に従って存在するのにもかかわらず、ホモ(-/-)マウスは極端に少なかった(表1:かっこ内は存在比%を示す)。これは、HS6ST1遺伝子が欠損することで、出生直後あるいは胎性期に何らかの影響が起きているためと推察される。
【0026】
【表1】

【0027】
また、ホモ(-/-)マウスが生育した6例の同一交配マウス(4組)からの仔マウスの体重を比較すると(図4、左上は出生後の日にち、縦軸は体重 g )、野生型(+/+)・ヘテロ(+/-)マウスに比べ、いずれのホモ(-/-)マウスは体重が低く、小さい体格であった(図4)。このことも、HS6ST1遺伝子の欠損の影響と思われる。
1-7:遺伝子操作マウス組織のヘパラン硫酸硫酸基転移酵素活性測定
野生型(+/+)およびヘテロタイプ(+/-)の腎臓および肝臓を摘出し、湿重量で5倍量の10mmol/l Tris-HCl, pH 7.2, 1.0 % (w/v) Triton X-100, 0.15 mol/l NaCl, 20% glycerol, 10 mmol/l MgCl2, and 2 mmol/l CaCl2.を加えてホモジナイズした。その懸濁液を4℃で16時間撹拌後、10,000×gで30分間遠心処理し、その抽出液を得た。硫酸基転移活性はHabuchiらの方法(J. Biol.Chem.,(2000) 275, 2859-2568)に準じて行い、HS2ST(特開平9-28374、特開平11-69983)の活性とHS6STの活性を以下に述べる方法で分別定量した。2.5μmolの塩酸イミダゾール, pH6.8と3.75μgのプロタミン、25nmolの受容体基質である完全脱硫酸化N-再硫酸化)-ヘパリン(生化学工業株式会社製)(以下「CDSNSヘパリン」とも記載する)、50pmolの[35S]PAPS(約5×105cpm)、1μmolのNaF、100nmolのアデノシン一リン酸(AMP)、および酵素液としての上記組織抽出液を含み全量を50μlに調製したものを標準反応混液とした。さらにHS2ST活性のみを測定する時は10mmol/lのジチオスレイトール(DTT)を加えた。37℃で20分間インキュベーションした後、100℃で1分間加熱処理して酵素反応を止めた。反応液にコンドロイチン硫酸A(グルクロン酸量に換算して0.1μmol)を加えて、1.3%酢酸カリウムと0.5mmol/lのEDTAを含んだエタノールを加え、析出沈殿を遠心分離により採取した。沈殿を50μlの蒸留水に再溶解し Fast Desalting column(アマシャムバイオサイエンス株式会社製)のゲルクロマトグラフィーにより、アイソトープ[35S]-ラベルされた多糖体と[35S]PAPSやその分解物と分離した。添加する酵素液の量は[35S]硫酸の取り込みがリニアリティを持つ領域を選んだ。硫酸基転位酵素活性は1分あたり1pmolの硫酸をCDSNSヘパリンに転移するのに必要な酵素を1単位(U)とした。
【0028】
【表2】

【0029】
その結果、腎臓・肝臓ともにHS6ST活性はヘテロ(+/-)マウスが野生型マウスに比べ約半分の活性しか発現していなかった。また、HS2ST活性はヘテロ(+/-)マウスの方が増加する傾向にあった。なお、ホモ(-/-)マウスは前述ように極端に出生・発育する個体が少なかったため、分析に給することが出来なかった。
1-8:遺伝子操作マウス組織のヘパラン硫酸組成分析
各遺伝子型のマウス組織(肝臓、肺、腎臓、脾臓)を凍結乾燥後、アセトンで脱脂した後、室温で16時間、0.2mol/l NaOH で処理した。その後、4mol/l酢酸で中和し、DNA分解酵素IとRNA分解酵素A(共にシグマ社製)を加え、37℃で2時間インキュベートした。さらにプロテアーゼK(ベーリンガーマンハイム社製)を加えて37℃で16時間インキュベートした。酵素反応を100℃で5分間の加熱で停止させ、冷却後13,000rpm、10分間の遠心分離で不溶物を除いた。その上清を等量の 20 mmol/l Tris-HCl緩衝液(pH7.2)で希釈して、0.2mol/lのNaClを含有した0.2mol/lのTris-HCl緩衝液で平衡化したDEAE Sephacel(アマシャム バイオサイエンス株式会社製)カラムにアプライし、カラム体積の10倍量の0.2mol/lのNaClを含有した20mmol/lのTris-HCl緩衝液で洗浄した後、4倍量の2mol/l NaClを含有した同Tris-HCl緩衝液で溶出させた。溶出液に2.5倍量の冷却した1.3%酢酸カリウム含有95%エタノールを加え、析出したグリコサミノグリカンを含む沈殿を遠心分離により採取した。グリコサミノグリカンを含む沈殿は2mUのヘパリチナーゼI、1mUのヘパリチナーゼIIそして1mUのヘパリチナーゼIIIの混合酵素を含む50mmol/lのTris-HCl緩衝液(pH7.2、1mmol/lのCaCl2と5μgの牛血清アルブミンとを含む)溶液(50μl)に溶解し、37℃で2時間消化した。消化液をUltrafree-MC(ミリポア社製)濾過後、濾液中の不飽和2糖消化物をfluorometric post-column high performance liquid chromatography (HPLC) 法(Toyodaら.J. Biol. Chem. (2000) 275, 2269-2275)で分析した。
【0030】
その結果、いずれの臓器でも、ホモ(-/-)マウスのヘパラン硫酸の6位硫酸基(グルコサミン残基の6位硫酸化構造体)を含む二糖単位の含量が、野生(+/+)型やヘテロ(+/-)型に比べ少なくなっていた。
【0031】
従って、このノックアウトマウスは、ヘパラン硫酸の6位硫酸化構造体量の変化の影響による、胎性期あるいは出生後の仔マウスの成長と深く関わる病態を検査する恰好のモデル動物となりうる。
【実施例2】
【0032】
2-1:ノックアウトマウスの作製
マウスcDNAライブラリーより得られるHS6ST2のcDNA断片をプローブとして、マウスのゲノムDNAライブラリー(129/λファージライブラリー))をスクリーニングし、HS6ST2遺伝子の翻訳開始コドンを含む約26kbのゲノムDNA断片を得た。ゲノムDNA断片のエキソン、イントロン境界部は、cDNAの塩基配列とデータベース上に報告されているマウスX染色体の塩基配列情報の比較、及び上記HS6ST2ゲノムクローンの塩基配列を決定することにより、その当該部分のゲノム構造を決定した。コンディショナルノックアウト用のベクター(pKSTKNeoloxP)のSalIサイトに第1エキソンを含むNotI-BstEII消化断片(約1.6 kbのゲノムDNA断片)を遺伝子組換えにより挿入した。次に制限酵素ClaI領域に第1エキソンより3'側のBstEII-SalI消化断片(約1.3 kbのゲノムDNA断片)を挿入した。最後に制限酵素NotI領域に、第1エキソンより5'側のSpeI-NotI消化断片(約5kbのゲノムDNA断片)を挿入し、目的のHS6ST2特異的ターゲッティングベクター(コンストラクト)を構築した。これによりエキソン1の領域をloxP配列で挟み、さらにloxPで挟んだネオマイシン耐性遺伝子を含むカセットをエキソン1の下流に挿入したターゲティングベクターを作成することが出来た。このターゲティングベクターは、loxPカセットの両端に、相同領域として2つのHS6ST2ゲノムDNA断片(5kb及び1.3kb)を有し、さらに相同組換えを起こしたES細胞を濃縮するため、ヘルペスウイルスのチミジンキナーゼ遺伝子を末端に付加した構造を有する(図5)。
【0033】
上記のターゲティングベクターを制限酵素PvuIにて消化して線状化した後、マウスE14 ES細胞にBioRad社のGene Pulser IIを用いてエレクトロポレーション法で導入した。
【0034】
すなわち、上記ターゲッティングベクターを線状化したDNAをフェノール/クロロホルムで抽出後エタノール沈殿し、遠心後、沈殿を70%エタノールで洗浄して乾燥し、この乾燥物をTE緩衝液(10 mmol/l Tris-HCl(pH8.0)/1 mmol/l EDTA)を用いて60 nmol/lの濃度に溶解し、プラスミド溶液とした。また、ES細胞はトリプシン処理とピペッティングによって単細胞として遊離させ、細胞数をカウント後、ES細胞をリン酸緩衝生理的食塩水(PBS(-))に2.5×107個/mlとなるように懸濁した。この細胞懸濁液0.4 mlを前記プラスミド溶液100μlと混合した後、エレクトロポレーション用キュベットに移し、細胞に電気パルス(800V, 3μF)を加えた。室温で10分間放置した後、予めフィーダー細胞を播種した100mm径の培養皿6枚に3.3×106個の細胞を播種した。
【0035】
24時間後、G418(200μg/ml)の培地添加により、遺伝子導入されたES細胞を選別を開始した。8日目から顕微鏡下で培養中のES細胞を観察、400個のコロニーを採取した。単離した約400のクローンからゲノムDNAを抽出しPCR法で1次スクリーニングした後に、8クローンについて各ゲノムDNAを抽出しサザンブロット分析を行い、染色体上に存在する野生型HS6ST2遺伝子と、導入した変異HS6ST2遺伝子断片の間で正しく相同遺伝子組換えが起こり、染色体上のHS6ST2遺伝子に変異が移った3つのクローン選択した。
【0036】
こうして得た変異遺伝子を持つES細胞を野生型マウスの胚盤胞に注入し、つづいてこのキメラ胚を常法に従って仮親の子宮に移植し、個体へと発生させ、出生させた。出生した動物を里親につけて飼育させた後、HS6ST2変異遺伝子が生殖系細胞に入ったキメラ動物を選別した。選別は毛色の違い、および尾部先端からDNAを抽出したゲノムDNAを用いてのサザンブロット分析およびPCRアッセイを組み合わせて行った。HS6ST2変異遺伝子が生殖系細胞に入ったオスのキメラ動物と野生型マウスメスC57BL/6の交配によりヘテロ接合体マウスを含む子孫マウスを得た。得られたマウス個体の尾部先端からゲノムDNAを抽出し、PCRアッセイを行い、HS6ST2変異遺伝子が導入されたヘテロあるいはヘミ接合体を選別した。このようにして、HS6ST2変異遺伝子に関するヘテロあるいはヘミ接合体が得られ、さらに、C57BL/6への戻し交配により、生殖細胞および体細胞染色体に安定的にHS6ST2遺伝子変異を保有するマウス系統が作成された。
【0037】
HS6ST2遺伝子変異をもつヘテロ個体メスとCreリコンビナーゼを体中の全ての細胞で発現しているオスマウスを交配することにより、産まれた子供においてHS6ST2のエキソン1が欠損した個体を得ることが出来た。HS6ST2欠損遺伝子に関してホモ接合体となった個体動物は、ヘテロ接合体とヘミ接合体の交配により得られ、その遺伝子型の同定はPCRアッセイにより行った。
2-2:PCR法によるHS6ST2欠損遺伝子の同定
コロニーを形成したES細胞、あるいは仔マウスの尾部先端からゲノムDNAを抽出して解析に用いた。
【0038】
正常HS6ST2遺伝子(HS6ST2+)を保持していることの同定には、エキソン1領域の正方向(2-51S:配列番号12)および逆方向(2-431R:配列番号13)をプライマーとして次の条件でPCR反応を行った。94℃で2分間変性させた後、変性94℃ 30秒、アニーリング61℃ 30秒、伸長72℃ 30秒からなるサイクルを40回繰り返し、最後に72℃で5分間伸長反応を行った。
【0039】
また、相同組換が起こり、loxPで挟まれた第1エキソンを持つHS6ST2loxP遺伝子の同定には、ネオマイシン耐性遺伝子の逆方向の配列を有するプライマー(CV-neor:配列番号14)とHS6ST2のゲノムDNA領域の逆方向の配列を有するプライマー(CV6ST2f:配列番号15)とを用いて次の条件でPCR反応を行った。94℃で2分間変性させた後、変性94℃ 30秒、アニーリング61℃ 30秒、伸長72℃ 30秒からなるサイクルを40回繰り返し、最後に72℃で5分間伸長反応を行った。
【0040】
また、Creリコンビナーゼにより、loxPで挟まれた第1エキソンが切り出されたHS6ST2遺伝子の同定には、HS6ST2のゲノムDNA領域を挟む正方向プライマー(ko-forward:配列番号16)と逆方向プライマー(ko-reverse:配列番号17)をプライマーとして次の条件でPCR反応を行った。94℃で2分間変性させた後、変性94℃ 30秒、アニーリング61℃ 30秒、伸長72℃ 30秒からなるサイクルを40回繰り返し、最後に72℃で5分間伸長反応を行った。
【0041】
これらのPCR反応液をアガロースゲル電気泳動にかけ、エチジウムブロマイドで染色した後紫外線ランプを当ててバンドを検出した。HS6ST2+のプライマーセットで増幅された約0.4 kbのDNA断片はワイルドタイプ(X+/X+、X+/Y)とヘテロタイプ(X+/X-)に現れ、HS6ST2loxPのプライマーセットで増幅された約2kbのDNA断片はヘテロタイプ(X+/XloxP)とヘミタイプ(XloxP/Y)に現れ、HS6ST2-のプライマーセットで増幅された約0.7kbのDNA断片はヘテロタイプ(X+/X-)、ヘミタイプ(X-/Y)、ホモタイプ(X-/X-)に現れた。
2-3:サザン・ハイブリダイゼーション法によるHS6ST2変異遺伝子の同定
コロニーを形成したES細胞あるいは仔マウスの尾部先端からゲノムDNAを抽出して解析に用いた。当該DNAを制限酵素EcoRI、あるいはBstEIIとStuIで37℃、18時間消化した後、1%アガロースゲル電気泳動を行い分離したDNA断片をナイロン膜に定法に従って転写した。ターゲッティングベクターのさらに3'側に含まれるBstEII-BglII切断サイトに挟まれたDNA断片約0.8kbをプローブp3(配列番号18)とし、ターゲッティングベクターのさらに5'側に含まれるBglII-SpeI切断サイトに挟まれたDNA断片約0.5kbをプローブp5(配列番号19)とし、ターゲッティングベクターのneo遺伝子領域にあたるDNA断片約2.0kbをプローブneo(配列番号20)とした。それぞれのプローブを常法に従ってラベルし、上記ナイロン膜上のDNA断片にハイブリダイズさせた。ナイロン膜は十分洗浄した後に、オートラジオグラフィーによって生じたバンドを検出した。
【0042】
その結果、プローブp3を用いた場合、X+の遺伝子型で23kb、XloxPの遺伝子型で約5kbのバンドを検出することができた。プローブp5を用いた場合、X+の遺伝子型で約8.6kb、XloxPの遺伝子型で約10.7kbのバンドを検出することができた。プローブneoを用いた場合、約5kbのバンド1本のみを検出することができた。
【0043】
PCRアッセイとサザン・ハイブリダイゼーション法の結果から、得られた組み換え体は目的の通りHS6ST2遺伝子がターゲッティングベクターの変異HS6ST2遺伝子と組み換えを起こしたものであることが確認された。また、Creレコンビナーゼを発現するトランスジェニックマウスとの交配によりHS6ST2のエキソン1が正確に切り出されたことが示された。
2-4:RT-PCRによるmRNAの発現解析
HS6ST-2ノックアウトマウス作製に伴い関連する分子の発現について調べるためにRT-PCRを行った。以下のプライマーセットを用いて行った。
【0044】
HS6ST2 5':2-51S(配列番号12)、2-431R(配列番号13)
HS6ST2 middle: 2-406S(配列番号21)、2-681AS(配列番号22)
HS6ST-2 3': 2-1235S(配列番号23)、2-1910AS(配列番号24)
X-/X-、X-/YマウスではHS6ST2 5'やHS6ST2 middleのプライマーセットでバンドの増幅が見られなかったが、HS6ST2 3'のプライマーセットで約0.7kbの増幅バンドが観察された。このことから、HS6ST2は5'側が欠失した、機能を持たない短縮型として発現しているものと思われ、HS6ST2の機能欠失という当初の目的は達成されたものと考えられる。
2-5:HS6ST2ノックアウトマウスの解析
X+/X-とX-/Yマウスを交配して産まれた仔マウスの遺伝子型を調べた結果、以下のようになった。
【0045】
X+/Y 21匹、X-/Y 6匹、X+/X- 14匹、X-/X- 17匹(11ペア)
雄マウスX+/YとX-/Yの間で数にばらつきがみられるが、統計学的に有意であるとは認められなかった。
【0046】
また、X-/X-マウス、X-/Yマウスは雌雄とも正常に産まれ、成長、行動にも異常は見られなかった。雌雄マウスとも繁殖能力も正常であった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
配列番号3に記載された塩基配列又はそれに90%以上の相同性を有する塩基配列からなる遺伝子を欠失させ、かかる遺伝子がコードするタンパク質の酵素活性の発現を抑制又は欠損させたノックアウトマウス。
【請求項2】
配列番号3に記載された塩基配列からなる遺伝子を欠失させ、かかる遺伝子がコードするタンパク質の酵素活性の発現を抑制又は欠損させたノックアウトマウス。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate


【公開番号】特開2010−11854(P2010−11854A)
【公開日】平成22年1月21日(2010.1.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−193909(P2009−193909)
【出願日】平成21年8月25日(2009.8.25)
【分割の表示】特願2003−295726(P2003−295726)の分割
【原出願日】平成15年8月19日(2003.8.19)
【出願人】(000195524)生化学工業株式会社 (143)
【Fターム(参考)】