説明

ノニオン性アルキレンオキシド系樹脂の製造方法

【課題】 カラーフィルター保護膜、レジスト用材料、ポリマー電池用セパレーター、電極、高分子電解質等に用いた場合に、有用な高分子材料として所望の特性を発揮するノニオン性アルキレンオキシド系樹脂の製造方法を提供する。
【解決手段】 このノニオン性アルキレンオキシド系樹脂の製造方法は、含有水分量が7000ppm未満であるノニオン性アルキレンオキシド系樹脂を得る工程と、この工程で得たノニオン性アルキレンオキシド系樹脂を貯蔵容器に充填する工程を備え、ノニオン性アルキレンオキシド系樹脂を得てからこれを貯蔵容器に充填するまでの間、ノニオン性アルキレンオキシド系樹脂がその含有水分量を7000ppm未満の所望の含有水分量に保つよう雰囲気管理するか、ノニオン性アルキレンオキシド系樹脂がその含有水分量を7000ppm未満の所望の含有水分量になるよう水を添加する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ノニオン性アルキレンオキシド系樹脂の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ノニオン性アルキレンオキシド系樹脂は、これまで、接着剤、塗料、シーリング剤、エラストマー、床材等のポリウレタン樹脂の他、硬質、軟質もしくは半硬質のポリウレタン樹脂、さらには、界面活性剤、サニタリー製品、脱墨剤、潤滑油、作動液などの各種用途における高分子材料として有用であり、近年は、その可能性に鑑みて、上に述べた以外の様々な新用途への利用が考えられつつある(例えば、非特許文献1,2参照。)。
しかしながら、ノニオン性アルキレンオキシド系樹脂を、カラーフィルター保護膜、レジスト用材料、ならびに、ポリマー電池用のセパレーター、電極および高分子電解質等の所定の用途に用いた場合に、その製造工程中に必要な特性も含めて高分子材料として所望の有用な特性を発揮し得ないことが度々問題となっており、その改善が求められていた。
【非特許文献1】Herman F. Mark、Norbert M. Bikales、Charles G. Overberger、Georg Menges 編,「Encyclopedia of Polymer science and engineering」,volume 6,(米国),Wiley Interscience,1986年,p.225-322
【非特許文献2】「多機能プラスチック アルコックス ポリ(エチレンオキサイド)」(明成化学工業株式会社)技術資料14頁
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明の課題は、従来公知の各種用途、なかでも特に上記の用途に用いた場合に、有用な高分子材料として所望の特性を発揮し得るノニオン性アルキレンオキシド系樹脂の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明者は、上記課題を解決するため鋭意検討した。その過程において、ノニオン性アルキレンオキシド系樹脂が、上記の用途に用いた場合に有用な高分子材料として所望の特性を発揮するためには、該樹脂の含有水分量をコントロールすることが非常に重要である点に気付いた。具体的には、含有水分量が所定の値(7000ppm)未満であれば、その優れた物性を十分に発揮させ得ることも知り得た。
さらに、ノニオン性アルキレンオキシド系樹脂は、吸湿しやすいという点に着目し、その取扱い環境(例えば、輸送、保存および貯蔵の環境)によって含有水分量が様々に異なることが多く、これが樹脂物性を不安定にしている最大の要因ではないかと推測した。実測の結果、ノニオン性アルキレンオキシド系樹脂の含有水分量にはその取扱い環境によって看過できないばらつきがあること、および、該樹脂の物性(例えば融点等)は含有水分量に依存して顕著にばらつくことを確認した。
【0005】
かかる知見に基づき、本発明者は、各種重合方法によりノニオン性アルキレンオキシド系樹脂を製造する場合において、重合で得られた樹脂の含有水分量を上記の範囲内で所望の値に調整するとともに、その後、最終的に製品として各種容器に充填する工程以前のすべての樹脂取扱い環境において、該樹脂の含有水分量が、上記の範囲内で所望の値となるように雰囲気を管理するようにすれば、前述の各種用途、その他の用途において非常に有用な高分子材料としての樹脂製品が得られることを見出し、これを確認して、本発明を完成した。
すなわち、本発明にかかるノニオン性アルキレンオキシド系樹脂の製造方法は、含有水分量が7000ppm未満であるノニオン性アルキレンオキシド系樹脂を得る工程と、前記工程で得たノニオン性アルキレンオキシド系樹脂を貯蔵容器に充填する工程とを備え、ノニオン性アルキレンオキシド系樹脂を得てからこれを貯蔵容器に充填するまでの間、前記ノニオン性アルキレンオキシド系樹脂がその含有水分量を7000ppm未満の所望の含有水分量に保つよう雰囲気管理するか、または、前記ノニオン性アルキレンオキシド系樹脂がその含有水分量を7000ppm未満の所望の含有水分量になるよう水を添加する、方法である。
【0006】
本発明は、上記において、ノニオン性アルキレンオキシド系樹脂を得てからこれを貯蔵容器に充填するまでの間、ノニオン性アルキレンオキシド系樹脂の含有水分量を50ppm以上、7000ppm未満に調整するための調湿工程をも備える、ことができる。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、従来公知の各種用途、なかでも特にカラーフィルター保護膜、レジスト用材料、並びに、ポリマー電池用のセパレーター、電極および高分子電解質等の所定の用途に用いた場合に、有用な高分子材料として所望の特性を発揮し得るノニオン性アルキレンオキシド系樹脂の製造方法を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下、本発明にかかるノニオン性アルキレンオキシド系樹脂の製造方法(以下、「本発明の製造方法」と略することがある。)について詳しく説明するが、本発明の範囲はこれらの説明に拘束されることはなく、以下の例示以外についても、本発明の趣旨を損なわない範囲で適宜変更実施し得る。
以下では、ノニオン性アルキレンオキシド系樹脂、その製造(重合とそれ以降の処理)と製品化(用途)について説明し、そののち、ノニオン性アルキレンオキシド系樹脂の含有水分量の制御について説明することとする。
<ノニオン性アルキレンオキシド系樹脂とその製造>
(ノニオン性アルキレンオキシド系樹脂)
ノニオン性アルキレンオキシド系樹脂(以下では、エチレンオキシド系共重合体をも含める意味である。)は、その分子構造については、主鎖にエチレンオキシドモノマー等のアルキレンオキシドモノマーに由来するエーテル結合を有する構造でありさえすれば、その他の部分の構成は特に限定されない。
【0009】
ノニオン性アルキレンオキシド系樹脂としては、エチレンオキシドと下記構造式(1)で示される置換オキシラン化合物とを含む原料モノマーを重合してなるものが好ましい。この場合の重合は置換オキシラン化合物に由来するオキシラン基の開環重合である。
【0010】
【化1】

【0011】
(ただし、R1はRa基または-CH2-O-Re-Ra基であり、該基において、Raは炭素数1〜16の、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アラルキル基、(メタ)アクリロイル基およびアルケニル基の中のいずれかであり、Reは−(CH2-CH2-O)p−の構造を有する基(pは0から10までの整数)である。)
上記構造式(1)におけるR基は置換オキシラン化合物における置換基である。
置換オキシラン化合物は、上記構造式(1)で示す化合物のうちの1種のみからなるものであってもよく、2種以上からなるものであってもよい。
構造式(1)で示される置換オキシラン化合物としては、具体的には、プロピレンオキシド、ブチレンオキシド、1,2−エポキシペンタン、1,2−エポキシへキサン、1,2−エポキシオクタン、シクロヘキセンオキシドおよびスチレンオキシド、または、メチルグリシジルエーテル、エチルグリシジルエーテルおよびエチレングリコールメチルグリシジルエーテルなどを挙げることができ、さらに、置換基Rが架橋性の置換基である場合、つまり、置換基Rがアリール基、アルケニル基、アクリロイル基およびメタクリロイル基などを有する場合として、エポキシブテン、3,4−エポキシ−1−ペンテン、1,2−エポキシ−5,9−シクロドデカジエン、3,4−エポキシ−1−ビニルシクロへキセン、1,2−エポキシ−5−シクロオクテン、アクリル酸グリシジル、メタクリル酸グリシジル、ソルビン酸グリシジルおよびグリシジル−4−ヘキサノエート、または、ビニルグリシジルエーテル、アリルグリシジルエーテル、4−ビニルシクロヘキシルグリシジル、α−テルペニルグリシジルエーテル、シクロヘキセニルメチルグリシジルエーテル、p−ビニルベンジルグリシジルエーテルおよびアリルペニルグリシジルエーテルなども挙げることができる。
【0012】
ノニオン性アルキレンオキシド系樹脂を架橋体にして用いるためには、置換オキシラン化合物として、置換基Rが架橋性置換基である置換オキシラン化合物を用いることが好ましい。
特に限定する訳ではないが、ノニオン性アルキレンオキシド系樹脂としては、その分子構造中に、エチレンオキシドモノマー由来の構成単位を90〜97モル%有するものが好ましい。同様に、置換オキシラン化合物群に含まれる化合物モノマー由来の構成成分が、特に限定はされないが、好ましくは3〜10モル%である。
ノニオン性アルキレンオキシド系樹脂は、その分子構造中、エチレンオキシドおよび置換オキシラン化合物群に含まれる化合物以外のモノマー由来の構成成分を、上記各種モノマー(エチレンオキシドおよび置換オキシラン化合物群)の含有割合範囲が満たされる範囲内で含んでいてもよい。
【0013】
ノニオン性アルキレンオキシド系樹脂の重量平均分子量は、好ましくは20,000〜500,000、より好ましくは50,000〜200,000、さらに好ましくは80,000〜130,000である。重量平均分子量が20,000未満であると成形物にタックの生じる傾向があり、500,000を超えると、成形が困難となり、加工性およびハンドリング性が低下する傾向がある。
ノニオン性アルキレンオキシド系樹脂の分子量分布は、好ましくは3以下、より好ましくは2以下である。分子量分布が3を超えると、成形体にした時にタックが生じ、ハンドリングが悪くなる傾向がある。ここに、分子量分布とは、数平均分子量に対する重量平均分子量の比(重量平均分子量/数平均分子量)の意味である。
【0014】
(重合反応)
ノニオン性アルキレンオキシド系樹脂を重合により得る際に採用できる重合方法としては、特に限定はされないが、例えば、溶液重合法、沈殿重合法、バルク重合(塊状重合)法などが挙げられる。なかでも、溶液重合法が生産性等に優れているため好ましく、予め仕込んだ溶媒にモノマー成分をフィードしながら重合を行う溶液重合が、反応熱を除熱しやすいなど、安全性に優れるため特に好ましい。
溶液重合において溶媒として用い得る溶剤としては、ベンゼン、トルエン、キシレンおよびエチルベンゼンなどの芳香族炭化水素系溶媒;ヘプタン、オクタン、n−へキサン、n−ペンタン、2,2,4−トリメチルペンタンなどの脂肪族炭化水素系溶媒;シクロへキサン、メチルシクロへキサンなどの脂環式炭化水素系溶媒;ジエチルエーテル、ジブチルエーテル、メチルブチルエーテルなどのエーテル系溶媒;ジメトキシエタン、エチレングリコールジメチルエーテル、プロピレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジプロピレングリコールジメチルエーテルなどのエチレングリコールジアルキルエーテル類の溶媒;THF(テトラヒドロフラン)、ジオキサンなどの環状エーテル系溶媒;などが好ましく挙げられ、なかでもトルエンおよびキシレンが特に好ましい。
【0015】
溶液重合反応は、例えば、エチレンオキシド95モル部および構造式(1)で示される置換オキシラン化合物5モル部と、これらの合計100モル部に対しその他のモノマー0〜5モル部とからなる原料モノマーを、原料モノマー100重量部に対し10〜300重量部の溶媒の存在下、温度90〜120℃で1〜10時間、行うようにすることが好ましい。
(精製)
溶液重合反応においては、該重合により得られるノニオン性アルキレンオキシド系樹脂溶液の含有水分量が7000ppm未満となるようにすることが、最終製品となるノニオン性アルキレンオキシド系樹脂の含有水分量をコントロールし易い点で好ましく、より好ましくは200ppm未満、さらに好ましくは50ppm未満である。
【0016】
溶液重合以外の沈殿重合やバルク重合等のその他の重合方法の場合においても、これら重合により得られるノニオン性アルキレンオキシド系樹脂の含有水分量が7000ppm未満となるようにすることが、最終製品としてのノニオン性アルキレンオキシド系樹脂の含有水分量をコントロールし易い点で好ましく、上記含有水分量は、より好ましくは250ppm未満、さらに好ましくは50ppm未満である。なお、沈殿重合等の場合は、重合後、溶媒から分離した樹脂の含有水分量であるとする。
上記において、各種重合工程後の樹脂または樹脂溶液の含有水分量が7000ppm以上であると、低含有水分量(特に100ppm程度)の製品を得る場合、製造コストが大幅に上昇することとなるおそれがある。
【0017】
各種重合工程後の樹脂または樹脂溶液の含有水分量を上記のように調整・制御する手段としては、例えば、重合反応に使用するモノマー(コモノマー)や溶媒の含有水分量や、重合反応を行うために用いる装置(例えば、反応釜、原料タンク、配管、バルブなど)に付着している水分を管理すること等が挙げられる。重合反応に使用するモノマー(コモノマー)や溶媒の含有水分量をより低く抑えておくためには、重合反応に使用する前に、脱水設備に通して脱水処理したもの等を用いることが好ましい。
なお、本明細書中に記載の、ノニオン性アルキレンオキシド系樹脂溶液およびノニオン性アルキレンオキシド系樹脂(脱揮後の樹脂や、さらにペレット化した樹脂も含む。)の含有水分量は、後述の実施例に記載の方法を用いて測定するようにする。
【0018】
(精製以降の処理)
本発明の製造方法は、重合工程により得られた樹脂の含有水分量を所定の値、具体的には7000ppm未満となるように調整する工程を備える。上記調整をしておくことで、最終製品としてのノニオン性アルキレンオキシド系樹脂の含有水分量をコントロールし易くなる。上記調整後の含有水分量は、より好ましくは250ppm未満、さらに好ましくは50ppm未満である。
含有水分量の調整方法としては、特に限定されないが、例えば、バルク重合により樹脂を得た場合であれば、得られた樹脂を外気等水分を含んだ気体または設備に接触させずに容器に充填するか、精製工程に移送する方法が好ましく、沈殿重合により樹脂を得た場合であれば、得られた樹脂を沈殿重合溶媒とともに外気等水分を含んだ気体または設備に接触させずに容器に充填するか精製工程に移送する方法が好ましく、溶液重合後に貧溶媒を用いた再沈により樹脂を得た場合であれば、上記沈殿重合の場合と同様の方法が採用できる。
【0019】
溶液重合により樹脂を得た場合においては、後述するように、重合後に得られた反応液(樹脂溶液)から溶剤を揮発させて、すなわち、重合後に得られた樹脂溶液に対し加温下での脱揮を行って、含有水分量が上記所望の値のノニオン性アルキレンオキシド系樹脂を得ることが、効率的であり調整も容易となる点で好ましい。つまり、上記樹脂溶液の脱揮を行うとともに、脱揮後に得られる樹脂の含有水分量を調整するようにする。
−ノニオン性アルキレンオキシド系樹脂の回収−脱揮工程−
溶液重合反応によってノニオン性アルキレンオキシド系樹脂を得た場合、重合後の反応液(樹脂溶液)からノニオン性アルキレンオキシド系樹脂を得るためには、貧溶媒を用いた再沈等により樹脂分を溶媒から分離し、遠心分離や濾過によって樹脂分を回収した後、この樹脂分を乾燥する、などの方法もあるが、溶液重合を行った場合には、加温下での脱揮を行うことで樹脂を回収することが好ましい。この方法によれば、貧溶媒を使用しないため、経済的であり、環境負荷を少なくすることができ、かつ、ノニオン性アルキレンオキシド系樹脂から溶剤とともに水分をも十分に除去することができる利点がある。この方法は、後に樹脂を成形(例えばペレット化)する場合等を考慮すれば、重合後に分離し一旦加熱乾燥して粉体状で回収したノニオン性アルキレンオキシド系樹脂を溶融させたりする必要がなく、初めから加温下の流動性のある状態でノニオン性アルキレンオキシド系樹脂を回収することができるので、非常に生産性良好であり、かつ、経済性に優れた容易な製造方法となる。
【0020】
ここで脱揮とは、ノニオン性アルキレンオキシド系樹脂と、溶媒として用いた溶剤と、残存モノマーとを含む重合反応液(樹脂溶液)から溶剤と残存モノマーとを揮発除去させることによりノニオン性アルキレンオキシド系樹脂を得ることを言う。脱揮の程度は、ノニオン性アルキレンオキシド系樹脂が完全に溶媒を含まないものになっていることは必要でなく、溶媒が所望の濃度以下となっていればよい。
脱揮後のノニオン性アルキレンオキシド系樹脂における溶媒濃度は、好ましくは0.01〜30重量%、より好ましくは0.05〜10重量%、さらに好ましくは0.1〜2重量%である。溶媒濃度を0.01重量%未満にしようとすると、脱揮条件を厳しくする必要があり、そうすると、ノニオン性アルキレンオキシド系樹脂の熱劣化につながり、性能低下が生じることとなるおそれがある。他方、溶媒濃度が30重量%を超えると、脱揮後のノニオン性アルキレンオキシド系樹脂にタックが生じ、ブロッキングなどが生じることとなるおそれがある。
【0021】
なお、重合反応液中の溶媒成分は、通常は、重合する際に用いる溶媒をいうが、重合後に他の溶媒を反応液(樹脂溶液)に含めた場合の他の溶媒も上記溶媒成分として含むものとする。
脱揮の方法、脱揮する際に用いる装置および各種条件としては、通常公知の脱揮の方法、使用可能な装置および設定される条件等を採用すればよく、特に限定されるわけではない。脱揮する際に用いる装置(脱揮装置)としては、撹拌槽蒸発器、下流液柱蒸発器、薄膜蒸発器、高粘度用薄膜蒸発器、表面更新型重合器、ニーダー、ロールミキサー、インテンシブミキサー(いわゆるバンバリーミキサー)、KRCニーダー、押出機などが好ましく挙げられ、用いる装置によって適宜使用条件が設定され得る。
【0022】
脱揮時の温度については、好ましくは40〜300℃、より好ましくは60〜250℃、さらに好ましくは90〜200℃である。この温度範囲を満たすようにすることによって、上述したような溶媒濃度に調整することができ、また、含有水分量についても減少させることができる。脱揮時の温度が40℃未満の場合は、残存する溶媒が多くなるおそれがあり、300℃を超える場合は、ノニオン性アルキレンオキシド系樹脂自体が熱分解するおそれがある。ここで、上記脱揮時の温度とは、具体的には、脱揮装置内のノニオン性アルキレンオキシド系樹脂の温度であるとする。
脱揮時の圧力は、好ましくは13〜100,000Pa、より好ましくは133〜70,000Pa、さらに好ましくは1333〜40,000Paである。この圧力の範囲を満たすようにすることによって、脱揮後に、上述した溶媒濃度に調整することができ、また、含有水分量についても前述した範囲に調整することが有利に働く。上記脱揮時の圧力が13Pa未満の場合は溶媒がフラッシュしてフォーミングが起こるおそれがあり、100,000Paを超える場合はノニオン性アルキレンオキシド系樹脂が分解するぐらいまで温度をかけなければならないおそれがある。ここで、上記脱揮時の圧力とは、具体的には、脱揮装置の樹脂に接する空間部分の圧力である。
【0023】
脱揮後のノニオン性アルキレンオキシド系樹脂は、上述した加温下の脱揮により得られた樹脂であり、温かく流動性を有する樹脂である。脱揮後のノニオン性アルキレンオキシド系樹脂の温度は、好ましくは40〜300℃、より好ましくは60〜250℃、さらに好ましくは90〜200℃である。
脱揮後のノニオン性アルキレンオキシド系樹脂における含有水分量は、前述したように、溶媒として用いた溶剤の脱揮の際に同時に調整されることも出来る。最終製品としての樹脂の含有水分量を考慮した場合、該含有水分量が、脱揮終了の時点(具体的には脱揮装置から排出された時点)で、前述した範囲(7000ppm未満)となっていることが好ましい。ここで言う水分は、通常、重合の際に用いたモノマー(コモノマー)や溶媒のほか、前述した重合反応を行うために用いる装置などに含まれていたものであり、樹脂の重合の際に樹脂中に含まれ得る。脱揮時の含有水分量の調整は、特に限定はされないが、例えば、脱揮時の温度を適宜高くすること、および/または、脱揮時の減圧度を適宜大きくするということ等により行えばよい。
【0024】
脱揮後のノニオン性アルキレンオキシド系樹脂は、帯電防止剤を含まないものとすることができる。該ノニオン性アルキレンオキシド系樹脂においては、沈殿重合するか、溶液重合後に貧溶媒を加えて再沈させるかした後、樹脂を濾過や遠心分離で分離し、加熱乾燥する方法ではなく、溶液重合後の反応液(樹脂溶液)を脱揮する方法により得られるノニオン性アルキレンオキシド系樹脂においては、加熱乾燥下における樹脂(樹脂粉体)どうしの摩擦等で生じる帯電を考慮して帯電防止剤を含めておく必要がないためである。しかし、脱揮後の必要であれば、ノニオン性アルキレンオキシド系樹脂であっても、必要に応じ、帯電防止剤を含むことができる。
【0025】
本発明の製造方法においては、脱揮工程により除去した溶媒を回収等して、溶液重合する工程において再利用してもよい。具体的には、揮発させた溶剤から軽質分および重質分を除く精製処理をし、その後、さらに脱水塔に通して処理する等して脱水しておき、再利用することが好ましい。上記精製処理や脱水処理を行うための装置や条件等は、特に限定はされず、通常の処理装置や条件等を適宜選択採用すればよい。なお、上記再利用に関しては、精製・脱水する溶剤に、モノマー成分が含まれていても何ら問題はなく、再利用時の重合反応に使用され得る。
脱揮等を経て回収した後のノニオン性アルキレンオキシド系樹脂の粘度は、固形分99重量%以上で100℃の場合、好ましくは5000〜100000ポイズ、より好ましくは10000〜80000ポイズ、さらに好ましくは15000〜60000ポイズである。5000ポイズ未満であると発泡およびタックが生じるおそれがあり、100000ポイズを超えると粘度が高すぎて脱揮ができないおそれがある。
【0026】
−安定剤などの添加−添加工程−
本発明の製造方法においては、後述のペレット化工程や成形工程等を行うまでに、ノニオン性アルキレンオキシド系樹脂および/またはその樹脂溶液に、酸化防止剤に代表される安定剤などの各種添加剤を含有させておくことがある。すなわち、重合工程中や重合工程後のノニオン性アルキレンオキシド系樹脂溶液に、あるいは溶液重合後に脱揮を行った場合であれば該脱揮工程中のノニオン性アルキレンオキシド系樹脂溶液や該脱揮工程後のノニオン性アルキレンオキシド系樹脂に、各種添加剤を添加し、必要に応じて混合・混練等しておくことができる。
【0027】
樹脂溶液の脱揮を行う場合にあっては、具体的には、脱揮工程により流動状態のノニオン性アルキレンオキシド系樹脂を得た後、この樹脂に各種添加剤を添加して混合等するのが一般的であるが、特に限定はされず、例えば、少量生産プロセスであれば、溶液重合工程後の樹脂溶液や脱揮工程途中の樹脂溶液に各種添加剤を添加しておくようにすると、脱揮工程とともに添加工程も行うようにすることができる。
上記添加剤としては、熱安定剤、光安定剤、紫外線吸収剤、抗酸化剤(酸化防止剤)、防腐剤、耐光性向上剤、可塑剤(ジオクチルフタレート、低分子量ポリエーテル化合物等)、フィラー(カーボン、ガラス繊維、無機繊維等)、界面活性剤(エチレンオキシド系非イオン性活性剤等)、滑剤(ステアリン酸カルシウム等)などを挙げることができる。
【0028】
この添加工程においては、上記の添加剤のほかに、有機質微粒子や無機質微粒子、低分子化合物(溶媒など)も添加することもできる。有機質または無機質の微粒子は、ノニオン性アルキレンオキシド系樹脂の使用目的や使用形態に応じて、ブロッキング防止等の機能を発揮し得る。有機質微粒子としては、ポリスチレン、ポリエチレン、ポリプロピレンなどの微粒子を挙げることができ、無機質微粒子としては、シリカ、アルミナ、チタニア、ジルコニア等の無機酸化物またはこれらの複合酸化物などを挙げることができる。
添加工程では、最終製品としてのノニオン性アルキレンオキシド系樹脂において必要な成分であるとして重合開始時や重合反応時等から既に添加していた添加剤等であっても、重合後の加熱時や溶融時、あるいは、脱揮工程等において減少してしまったり除去されたりすることもあるので、そのような場合は同様の添加剤を適量再度追加して添加してもよい。
【0029】
添加工程では、添加した添加剤等を樹脂中に均一に混合させる必要がある場合は、混練機等を用いる。具体的には、例えば、前述したように、溶液重合後の脱揮工程とともに添加工程をも行うようにする場合は、通常、脱揮装置において混合・混練処理も出来ることがある、一方、添加剤等を添加しさえすればそれ以外に混合等を行う必要はないが、脱揮工程後に添加剤等を添加した場合であれば、より均一に添加剤等を含有させるため、混合処理も行うようにすることが好ましい。
添加工程において用いる機器としては、混練機として、例えば、ノリタケ社製、製品名:スタティックミキサーやスルザー社製、製品名:スルザーミキサーなど、単軸型押出機として、例えば、プラスティック工学研究所製、製品名:GTシリーズなど、二軸型押出機が挙げられる。さらに、二軸型混練機として、例えば、KRCニーダー(栗本鉄工所社製、製品名:KRCニーダー;モリヤマ社製、製品名:ニーダールーダー)などが挙げられ、これらを用いるにあたっては、これらを、重合槽や樹脂溶融槽に、また、脱揮工程後の場合であれば脱揮に供する装置に、ポリマーポンプやギアポンプ等を介して連結しておくことが好ましい。
【0030】
<ノニオン性アルキレンオキシド系樹脂の製品化>
−ノニオン性アルキレンオキシド系樹脂の冷却と固化−冷却固化工程−
本発明の製造方法においては、溶液重合・脱揮後のノニオン性アルキレンオキシド系樹脂は、流動状態であり温かい状態であるため、これを冷却して固化させる(以下、冷却固化と称することがある。)ことが好ましい。
沈殿重合やバルク重合等のその他の重合方法により該樹脂を得る場合においても、二軸混練機などで脱揮・溶融を行うなど、樹脂は流動状態であり温かい状態であることが通常であるため、冷却固化させることが好ましい。すなわち、沈殿重合によりノニオン性アルキレンオキシド系樹脂を得た場合においては、所望の形状に成形等することを目的として、重合後にそのまま、または、粉体化させた樹脂を、通常一旦加熱溶融させて取り扱うため、冷却固化させることが必要となる場合がある。溶液重合の後、脱揮は行わずに、貧溶媒を用いて樹脂を再沈させた場合においても、上記沈殿重合を行った場合と同様に、通常、一旦加熱溶融して取り扱うため、冷却固化させることが必要となる。バルク重合によりノニオン性アルキレンオキシド系樹脂を得た場合であれば、一般的には、得られた樹脂は分子量が低く、ある程度流動性を有する状態で得られることが多いため、通常、重合後は粉体化等することなく、重合後の樹脂温度を保つことのできる、または、加温することが可能な、輸送用または貯蔵用容器などに充填して取り扱うようにするが、所望の形状に成形等するために冷却固化を行うようにする。なお、バルク重合であっても、粉体化できる程度の樹脂を得た場合は、上記沈殿重合等により得た場合と同様に、通常一旦加熱溶融して取り扱うこともあり、やはり、冷却固化させることが必要となる。
【0031】
以下においては、冷却固化工程に供するノニオン性アルキレンオキシド系樹脂は、脱揮後の樹脂のほか、上述の沈殿重合やバルク重合等のその他の重合方法で得られた樹脂をも含むこととする。
冷却固化させる工程(以下、冷却固化工程と称することがある。)では、限定する訳ではないが、流動状態のノニオン性アルキレンオキシド系樹脂を金属板に接触させて冷却固化させることが好ましい。
冷却固化工程において用い得る金属板としては、例えば、ドラムクーラー(例えば、ツバコー・ケー・アイ社製、製品名:COMPACT CONTI COOLER;三菱化学エンジニアリング社製、製品名:ドラムクーラーDC;モダンマシナリー(株)製、製品名:ラミネーター)、シングルベルトクーラー(例えば、サンドビック社製、製品名:スチールベルトクーラー;日本スチールコンベア(株)製、製品名:スチールベルトシングルクーラー)、ダブルベルトクーラー(例えば、サンドビック社製、製品名:ダブルスチールベルトクーラー)などの冷却装置における、樹脂と接触し得る、冷却用金属板・金属面を挙げることが出来る。金属板・金属面はその裏側から冷媒を吹き付ける等して所望の温度に冷やしている。ダブルベルトクーラー、シングルベルトクーラーおよびドラムクーラーを用いた場合、冷却ベルト、冷媒の温度、冷媒の種類の選択、および、Tダイの幅やドラムおよびベルトの幅などの選択により、任意の生産量の条件を容易に得ることができる。
【0032】
金属板・金属面の冷却温度は、例えば、ノニオン性アルキレンオキシド系樹脂等を結晶化温度および/または融点以下の温度にすることができる温度であり、具体的には、好ましくは−20〜40℃、より好ましくは0〜30℃、さらに好ましくは5〜25℃である。
冷却固化工程においては、通常、上記いずれの冷却装置を用いた場合でも、ノニオン性アルキレンオキシド系樹脂を金属板・金属面上に吐出して、金属板・金属面上を搬送しつつ冷却固化するようにする。
−ノニオン性アルキレンオキシド系樹脂の成形−成形工程−
本発明の製造方法においては、上述のように、ノニオン性アルキレンオキシド系樹脂を冷却固化させる冷却固化工程を行うに当たり、予め、ノニオン性アルキレンオキシド系樹脂を成形しておく成形工程を含んでいてもよい。
【0033】
成形工程としては、具体的には、(1)ノニオン性アルキレンオキシド系樹脂を、押出機等で予めシート状、ひも状(ストランド状)、板状および粒状などに成形しておくことや、(2)ノニオン性アルキレンオキシド系樹脂を、成形用の型となる容器などに流し込んで成形しておくこと等が好ましく挙げられ、特にこれらに限定されるわけではないが、本発明においては、ノニオン性アルキレンオキシド系樹脂をそのまま冷却固化用の金属板に接触させる場合、接触させると共にシート状に広げること等ができるので、このような方法も成形工程に含むこととする。
上記例示した成形工程の具体例のなかでも、後の冷却固化工程において効率良く十分に冷却するためには、上記(1)の成形工程によりシート状または板状に成形しておくことが好ましい。具体的には、脱揮装置の出口あるいは重合槽や加熱溶融槽等のその他の装置の樹脂排出口に、ポリマーポンプやギアポンプなどを取り付けて、上記樹脂を脱揮装置等から抜き取りつつ、さらに押出機を連結しておき上記樹脂を押出す方法や、上記押出機の代わりにTダイやロールを用いる方法等が好ましい。
【0034】
押出機としては、単軸型押出機、二軸型押出機(例えば、製品名:SUPERTEXαII)、SCRセルフクリーニング式リアクター(三菱重工(株)製)などが挙げられるが、一定の厚さのシート状または板状に押出すためには、押出機にTダイを設置して押出すことが好ましい。ペレット状(粒状)に押出すには、ドロップフォーマー(製品名:ロートフォーム、サンドビック社製)を設置することが好ましい。
押出し厚みは、冷却固化工程での冷却効率や、冷却固化後にペレット状にする場合であればそのサイズ等も考慮して、0.1〜50mmとすることが好ましく、より好ましくは1〜5mm、さらに好ましくは1.5〜2.5mmである。
【0035】
−ノニオン性アルキレンオキシド系樹脂のペレット化−ペレット化工程−
本発明の方法においては、最終製品としてのノニオン性アルキレンオキシド系樹脂をペレット状にする工程(ペレット化工程)を備えていてもよい。各種重合工程ならびに必要に応じて行う脱揮工程および添加工程等を経て得られたノニオン性アルキレンオキシド系樹脂を、最終製品としてペレット状にする。一般的には、各種重合工程や脱揮工程等を経て得られたノニオン性アルキレンオキシド系樹脂を、前述のように冷却固化および成形することにより、ペレット状にし易い形状にしておき、これを引き続きペレット化工程に用いるようにするが、特に限定はされない。ここで、ペレット状とは、一般的に、粉体とは区別される程度の粒状であればよく、また、円柱状、短冊状、球状、半球状、ラグビーボール状、直方体状のような定形性を有するものであっても、樹脂を砕いたチップ状のものや、フレーク状のもののような不定形性のものであってもよく、特に限定はされない。
【0036】
得られるペレットは、特に限定はされないが、最小外径が0.1〜1.0mmであり最大外径が1.0〜50mmであることが好ましく、より好ましくは、最小外径が0.3〜0.8mmであり最大外径が2.5〜6.0mmである。
具体的に、ペレット状にする方法としては、前述の冷却固化に先立って、または、冷却固化と同時に、ペレット化に用いるノニオン性アルキレンオキシド系樹脂を、成形しておき(第1成形工程)、この成形物をペレット状に加工する(ペレット化する)(第2成形工程)ことが好ましいが、初めからペレット状に成形し且つ冷却するようにしてもよい。例えば、脱揮後等の流動状態のノニオン性アルキレンオキシド系樹脂を、側面に複数の孔(所望の径)の開いた円筒ドラムに仕込み、このドラムを中心軸(円軸)を水平にして回転させることで、その孔から流動状態の樹脂を冷却固化用の金属板上に滴下し、粒状(ペレット状)の樹脂を成形すること等が、初めからペレット状に成形し且つ冷却することとして例示される。なお、上記第1成形工程を行うに当たっては、前述した成形工程の説明中の(1)および(2)における、成形方法や用いる装置、および、得られる成形物の形状やサイズ等が、すべて同様に採用できる。
【0037】
第2成形工程、すなわち、ペレット化工程に用いる装置としては、例えば、シートペレタイザー(例えば、ホーライ社製、製品名:シートペレタイザSG(E)−220)、クラッシャー(例えば、ホーライ社製のクラッシャー)、ストランドカッターなどが挙げられる。なかでも、得られるペレットの粒度が揃いやすいという点で、シートペレタイザーが好ましい。シートペレタイザーとしては、低流動点を有する樹脂を切断する場合などでは、カッター部分、特にスリッターロール部分を冷媒で冷却したり、それらの部分において樹脂を冷風で冷却したりすることができる機能を有するものが好ましい。この目的での冷却温度としては、ペレット状にしようとするノニオン性アルキレンオキシド系樹脂を結晶化温度および/または融点以下の温度にすることができる温度であることが好ましい。したがって、冷却温度は、好ましくは−20〜40℃、より好ましくは0〜30℃、さらに好ましくは5〜25℃である。
【0038】
−ノニオン性アルキレンオキシド系樹脂ペレットの分級−分級工程−
本発明の製造方法においては、ペレット化工程で得られたノニオン性アルキレンオキシド系樹脂のペレットを、所定の粒径に分級(所定の粒径のものを選別)する分級工程を含んでいてもよい。分級工程においては、通常、ふるいを用いるが、樹脂ペレットの生産性を考慮すれば、振動する傾斜面のふるいの上に樹脂ペレットを流して分級することや、横型ラッパ状ふるいの傾斜面で樹脂ペレットを回転させながら分級すること等が好ましい。分級工程は、通常ペレット化する工程に直結して引き続き行うようにすることが好ましいが、例えば、ペレット化後に樹脂ペレット同士が融着しているような場合にあっては、必要に応じ、解砕機等を用いて融着している樹脂ペレット同士を分離してから分級を行うようにしてもよい。
【0039】
本発明の製造方法においては、上記分級工程を備えるとともに、分級後における、選別した所定の粒径以外の残留ペレットを、前述した溶液重合する工程後であって前記揮発させる工程以前の少なくとも1つの工程(例えば、重合後の熟成工程や脱揮工程等)におけるノニオン性アルキレンオキシド系樹脂および/またはその溶液に混合してもよい。通常、分級後、所定の粒径以外ものは廃棄されるが、再度流動性のある状態に戻してリサイクル(再使用)すれば、生産性、経済性が大きく向上する。また、本発明の製造方法において、前述した添加工程を備えるようにする場合は、リサイクルのために残留ペレットを混合する工程は、前述した溶液重合する工程後であって前記添加する工程以前の少なくとも1つの工程(例えば、重合後の熟成工程や脱揮工程や添加工程等)におけるノニオン性アルキレンオキシド系樹脂および/またはその溶液に混合することができる。すなわち、本発明では、前述した溶液重合する工程後であって、樹脂を成形および/または冷却する工程以前の少なくとも1つの工程に、残留ペレットを混合してリサイクルできる。
【0040】
同様に、本発明の製造方法においては、前述した第1成形工程および第2成形工程において、余分に余った樹脂残渣を、上記残留ペレットと同様の工程に混合してリサイクルすることができ、生産性、経済性の面で同様の効果が得られる。例えば、シート化した樹脂をシートペレタイザーでペレット化した際に、樹脂ペレットに供されなかったシートの端などの余分な樹脂残渣などが挙げられる。
−ノニオン性アルキレンオキシド系樹脂の充填−充填工程−
本発明の製造方法においては、前述の冷却固化や成形の工程、および必要に応じて行うペレット化の工程により得られたノニオン性アルキレンオキシド系樹脂を、輸送用や貯蔵用等の容器に充填する工程(充填工程)を備えている。この充填工程を備える目的は、含有水分量等の樹脂物性をできるだけ保持したまま、その後の輸送や貯蔵を行うためである。充填に用いる容器は、固定形状ものであっても袋などのように固定形状ではないものであってもよく、該容器の材質としては、例えば、アルミフィルムラミネートおよびポリエチレンフィルムなどが好ましく挙げられる。
【0041】
<ノニオン性アルキレンオキシド系樹脂の含有水分量の制御>
本発明の製造方法においては、所定の段階において、ノニオン性アルキレンオキシド系樹脂の取扱い環境の雰囲気を管理することで、含有水分量の制御を行うようにする。また、この雰囲気管理をしながら、ノニオン性アルキレンオキシド系樹脂の調湿(加湿および/または乾燥)を行うことで含有水分量をコントロールすることもできる。上記雰囲気管理および調湿について、以下に説明する。
−ノニオン性アルキレンオキシド系樹脂の雰囲気管理による調湿工程−
上記所定の段階、すなわち、重合後の樹脂の含有水分量を調整する工程後、充填工程以前において、ノニオン性アルキレンオキシド系樹脂の含有水分量が、所定の範囲、具体的には7000ppm未満、好ましくは5000ppm未満、より好ましくは4000ppm未満の所望の含有水分量となるように、雰囲気管理するようにする。
【0042】
雰囲気管理は、上記所定の段階のすべてにおいて、具体的には上記所定の段階において行う全工程および各工程間の移送等の段階を含めたすべてにおいて、行うようにすることが、樹脂の含有水分量をコントロールする上では最も好ましいが、特にこれに限定はされず、上記所定の段階の少なくとも一部(例えば、少なくとも1つの工程、あるいは、工程間の移送段階のみ等)において行うようにしてもよい。
雰囲気管理は、前記調整する工程において調整したノニオン性アルキレンオキシド系樹脂の含有水分量の範囲(7000ppm未満)内の所望の値になるよう、前記充填工程の終了時点まで保持するようにする。なお、ここでいう保持とは、樹脂の含有水分量が少なくとも所定の値(7000ppm未満)の範囲内の特定の値になるようにすることである。
【0043】
雰囲気管理の方法としては、具体的には、上記所定の段階における各種装置、各種機器および樹脂移送経路等のうちの所望の領域を、機密性の高い材料で覆うなどして実質的な閉鎖系を設け、その中に所望の含有水分量に対応する露点を有する気体を送り込むことで系内の雰囲気をコントロールする方法などを好ましく挙げることができる。
このような露点管理により、ノニオン性アルキレンオキシド系樹脂の含有水分量を7000ppm未満の所望の量に調整することが容易となる。
系内に送り込む気体の圧力は、系外から空気(特に水分を多く含んだ空気など)を吸い込まないように、大気圧を超えるようにすることが好ましい。
【0044】
系内に気体送り込む装置は、特に限定されることはなく、例えば、軸流通風機(プロベラファン)、多翼通風機(シロッコファン)、プレートファン、リミットロードファンやターボファンなどの通風機(ファン)類や、ターボブロワー、ロータリーブロワー、プロペラブロワーやルーツブロワーなどの送風機(ブロワー)類、レシプロコンプレッサー、ターボコンプレッサーやプロペラコンプレッサーなどの圧縮機(コンプレッサー)類などを挙げることができる。
系内に気体が送り込まれるときの速度は、特に限定はされないが、製品に接触する面での送風方向の線速度として、0.01m/秒〜100m/秒とすることが好ましい。100m/秒を超える場合は、圧力損失が大きくなったり、ノニオン性アルキレンオキシド系樹脂が気体に同伴されて、装置を運転できなくなるおそれがあり、0.01m/秒未満の場合は、一定の水分量に到達するまでの時間が長くかかりすぎるおそれがある。
【0045】
送り込んだ気体が計内で滞留しないように、例えば、実質的な閉鎖系の中で、周囲に比べ期待の線速度が特に遅くなる部分には、気体を逃すための小さな排風口を設けることが好ましい。
−ノニオン性アルキレンオキシド系樹脂の乾燥と加湿による調湿工程−
本発明では、上記所定の段階において、雰囲気管理を行うとともに、必要に応じて、これとは別に、樹脂の含有水分量を所定の値にコントロールする調湿工程を備えていてもよい。最終製品としての樹脂の含有水分量をほぼ正確にかつ効率良くコントロールできる点で、雰囲気管理および調湿工程を共に行うのが好ましい。ここで、調湿とは、上記所定の段階におけるノニオン性アルキレンオキシド系樹脂に対して積極的に加湿および/または乾燥を行うことで、意図的に所望の含有水分量となるように処理することである。
【0046】
調湿工程は、上記所定の段階中のどの段階で行うかは特に限定されず、その工程数についても1回であってもよいし複数であってもよく特に限定はされないが、例えば、充填工程の直前で所望の含有水分量となるように調湿すれば、最終製品としての樹脂の含有水分量を適切にコントロールすることができ品質のばらつきも抑えることができ、また、脱揮工程等の前記調整する工程の直後において雰囲気管理での変化を見越して調湿しておけば、充填工程の直前等といった最終段階で調湿を行うよりも経済性や生産性の面で好ましい場合もある。
加湿による調湿の方法としては、特に限定はされないが、例えば、水を吹きかける方法等が挙げられる。
【0047】
水を吹きかける方法としては、具体的には、ナウターミキサーやコニカルドライヤー等の装置にノニオン性アルキレンオキシド系樹脂を投入して攪拌しながら水を吹きかける方法等がある。吹きかける水の量、吹きかける時間、吹きかける時の装置内の温度、水自体の温度および装置の攪拌回転速度などは、所望の含有水分量所望に応じて適宜設定すればよい。
乾燥による調湿の方法としては、特に限定はされないが、例えば、(1)減圧下乾燥気体(空気、窒素、アルゴン、イリウムなど)を通過させて乾燥させる方法、(2)ノニオン性アルキレンオキシド系樹脂をサイロに投入後、圧縮空気を上下から吹きかけ、循環させて乾燥させる方法、(3)ノニオン性アルキレンオキシド系樹脂をナウターミキサーやコニカルドライヤーに投入後、圧縮空気を通気させて乾燥させる方法、(4)ノニオン性アルキレンオキシド系樹脂を通気回転乾燥機(例えばロータリーキルン等)に投入後、圧縮空気を通気させて乾燥させる方法等が挙げられる。これら方法において、乾燥温度(空気の温度)や乾燥時間などは、所望の含有水分量所望に応じて適宜設定すればよい。
【0048】
本発明においては、周りの空気が非常に乾燥しておりかつ目標とする含有水分量が高い(例えば4000ppm)ケースなど、特定の場合に限り、雰囲気管理を行う必要性に乏しい場合もある。このような場合、雰囲気管理を行わずに調湿工程のみを行うようにすることもできる。
<得られるノニオン性アルキレンオキシド系樹脂とその用途>
本発明の製造方法により得られるノニオン性アルキレンオキシド系樹脂は、含有水分量が7000ppm未満であることが好ましく、より好ましくは5000ppm未満、さらに好ましくは4000ppm未満である。ここでいう含有水分量は、最終製品段階でのノニオン性アルキレンオキシド系樹脂、具体的には、前記充填工程終了時点(充填し終えた時点)での樹脂、における値を意味し、本発明の方法における製造過程の一部または全てにおいて達成されている必要はない。上記含有水分量が7000ppm以上の場合は、樹脂の誘電率が必要以上に大きくなるため、例えば、カラーフィルターの保護膜などの用途に用いた場合は、樹脂が実質的に導電性を有し上記保護膜としては致命的な機能低下を引き起こしてしまうおそれがあり、また、水分が金属イオン分などと反応して水酸化物等を生成してしまうため、例えば、ポリマー電池の電解質層などの用途に用いた場合は、金属と電解質層との界面に絶縁層を形成してしまい、電位低下するとともに、定電流下での電圧が上昇し続け、電池のサイクル特性も悪化するおそれがある。また、半導体用粘着テープに用いた場合は、水分により誤動作が誘発されるおそれがあり、ウレタンフォームでは水分がイソシアネート基と反応して十分に反応が進行しないため物性が低下したり発泡が生じたりするおそれがある。
【0049】
本発明の方法により得られるノニオン性アルキレンオキシド系樹脂は、特に限定はされないが、例えば、接着剤、塗料、シーリング剤、エラストマー、床材等のポリウレタン樹脂の他、硬質、軟質もしくは半硬質のポリウレタン樹脂、さらには、界面活性剤、サニタリー製品、脱墨剤、潤滑油、作動液、ポリマー電池に用いるセパレーター、電極および高分子電解質層や、カラーフィルター保護膜、レジストやフレキソ印刷版材等に用い得る感光性樹脂、半導体用粘着テープ、および、ウレタンフォームなどの広範囲な用途に対し、有用な高分子材料として好ましく使用することができる。
【実施例】
【0050】
以下に、実施例により、本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらにより何ら限定されるものではない。
溶媒中の含有水分量の測定:カールフィッシャー水分測定器(電量滴定法、平沼産業社製のAQ−7)を用いて測定した。
重量平均分子量(Mw)と極限粘度の測定:ポリエチレンオキシドの標準分子量サンプルを用いて検量線を作成したGPC装置により測定した。反応後に得られた反応混合物(ポリマーを含む)を所定の溶媒に溶解後、測定した。また、極限粘度は、オズワルド粘度計にて測定した。
【0051】

〔実施例1〜15、比較例1〕
これらの例は、所定の露点のガス雰囲気においてポリマーの含有水分量を調節する例である。
1Lの容器に0.43kgのポリマーを詰め、所定の露点に調整したガスを1L/minの速度で流し、5時間毎に約0.5gのポリマーをサンプリングしポリマーの含有水分量を測定し、ポリマーの含有水分量の経時変化を調べ、含有水分量が変化しなくなった時の含有水分量とそれまで掛かった時間を、表1にまとめた。これらの実施例、比較例に用いたポリマーの物性とポリマーの調製の参考にした文献を表2に示す。
【0052】
【表1】

【0053】
【表2】



【0054】
〔実施例16〕
この例は、ポリマーを乾燥して含水量調節をする例である。
表3に示す乾燥機を用いて表4に示す乾燥条件でペレット状のポリマーを乾燥した。実験開始時、3.2時間後、6時間後、8時間後のポリマーをサンプリングし、ポリマーの含有水分量を測定し、ポリマーの含有水分量の経時変化を調べ、結果を表5に示した。
【0055】
【表3】

【0056】
【表4】

【0057】
【表5】



【0058】
〔実施例17〕
この例は、ポリマーに直接に水を加えることにより、ポリマーの含有水分量を調節する例である。
図1、図2に示す実験装置を用いて、調湿実験を行った。これらの装置は、いずれも、調湿水ポット1につながれたスプレーノズル2を有するナウターミキサー(混合容量100L)3を備えている。スプレーノズル2の駆動ガスは露点−50℃の窒素(N)ガスである。ナウターミキサー3は、系内圧力を常圧とし、そのジャケット31には常温の水が通されている。図1の装置のノズル2は1流体ノズルであり、図2の装置のノズル2は2流体ノズルである。各装置のナウターミキサー3にペレット状ポリマー52.0kgを仕込み、スプレーノズル2からペレット状ポリマーに水を噴霧した。噴霧条件は表6に示す。噴霧終了後、自転回転数90rpm、好転回転数4.3rpmの条件で2時間、攪拌したのち、ナウターミキサー3の底部からペレット状ポリマー10.0kgづつを抜き出し、その3箇所からそれぞれ20gずつサンプリングして、Nパージしたアルミラミネート袋にそれぞれを納め、それぞれの含有水分量を測定し、表7に示す調湿結果を得た。
【0059】
【表6】

【0060】
【表7】

【産業上の利用可能性】
【0061】
本発明の製造方法で得られるノニオン性アルキレンオキシド系樹脂は、カラーフィルター保護膜、レジスト用材料、ポリマー電池用のセパレーター、電極、高分子電解質等に用いた場合に、有用な高分子材料として所望の特性を発揮し得る。
【図面の簡単な説明】
【0062】
【図1】実施例17において用いた実験装置を示す説明図である。
【図2】実施例17において用いたもう1つの実験装置を示す説明図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
含有水分量が7000ppm未満であるノニオン性アルキレンオキシド系樹脂を得る工程と、前記工程で得たノニオン性アルキレンオキシド系樹脂を貯蔵容器に充填する工程とを備え、
ノニオン性アルキレンオキシド系樹脂を得てからこれを貯蔵容器に充填するまでの間、前記ノニオン性アルキレンオキシド系樹脂がその含有水分量を7000ppm未満の所望の含有水分量に保つよう雰囲気管理するか、または、前記ノニオン性アルキレンオキシド系樹脂がその含有水分量を7000ppm未満の所望の含有水分量になるよう水を添加する、
ノニオン性アルキレンオキシド系樹脂の製造方法。
【請求項2】
ノニオン性アルキレンオキシド系樹脂を得てからこれを貯蔵容器に充填するまでの間、前記ノニオン性アルキレンオキシド系樹脂の含有水分量を50ppm以上、7000ppm未満の所望の含有水分量に調整するための調湿工程をも備える、請求項1に記載のノニオン性アルキレンオキシド系樹脂の製造方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate